リガンド特異性の検定方法
技術分野
本発明は、 固相担体を用いた分子間相互作用における基盤技術に関する。 より詳 しくは、 解析を目的とする分子を固相担体に固定化し、 当該固相担体上での分子間 相互作用を利用し、 当該相互作用を測定、 解析することによって、 解析を目的とす る分子に特異的な相互作用を有する分子を選別、 精製する、 あるいは分子間の特異 的な相互作用を解析する技術に関する。
背景技術
ァフィ二ティー樹脂を用いたターゲットタンパク質探索研究において、 アブイ二 ティ一に結合したタンパク質がリガンド特異的なものであるか、 あるいは非特異的 なものであるかを判定することは重要である。 従来、 この目的には材料となるタン パク質混合物に、 非修飾の対象リガンドを予めあるいはァフイエティ一樹脂と同時 に加え、 対象タンパク質量の減少あるいは消失を確認する、 いわゆる拮抗実験が汎 用されてきた。 つまり、 拮抗剤としてのリガンドが共存することによって、 ァフィ ユティー樹脂へのタンパク質の結合が阻害されることが、 そのタンパク質がリガン ドに特異的であると考えるのに必要な条件と考えられてきた。 し力し、 この方法を 適用する場合、 必要量のリガンドを対象タンパク質混合物に溶解させることが困難 である場合が多く、 現実的には実験が遂行できないという弊害があった。 特に医薬 品を対象とする場合、 医薬品がある程度の脂溶性を有している場合が多いため (特 に経口投与可能な医薬品は受動拡散による膜透過性を担保するためある程度以上の 脂溶性の性質を有する) 、 充分なリガンド濃度を達成することが出来ず拮抗実験に よるァフィ二ティー樹脂上に見出されたタンパク質に関する検討実験が断念されて きた経緯がある。 具体的には、 拮抗実験を行うためにはタンパク質が存在する水溶 液に数百〃 g Zm 1の濃度のリガンド (例えば T O Y O P E A R L 1 0 μ 1 = 1 β m o 1を使用するとすれば、 分子量 5 0 0のリガンド (拮抗剤) の場合、 薬 剤を樹脂上のリガンドと等量共存させる場合でも 0 · 5 m g Zm 1以上の溶解度が
必要) を溶解させる必要があるが、 一般には、 各種のイオンやタンパク質等の溶質 がかなりの量溶け込んでいる生体材料溶液にこのような高濃度のリガンドを溶解さ せることは困難である。 このことは医薬品に限らず、 経口投与で興味ある薬理作用 を示す化合物、 例えば環境物質、 毒物等にも共通する問題であり、 本制限は創薬タ ーゲット探索研究全体の問題としてその解決が求められてきた。 .
また、 従来方法では拮抗効果を明確にするために樹脂上のリガンド量以上のリガ ンドを加える場合が多いが、 その時にライセート (1 y s a t e ) 等の生体材料溶 液中に存在することになる数 m g Zm 1という高濃度のリガンドの存在によるタン パク質の変性も大きな問題であった。 すなわち、 ァフィ二ティー実験により見出さ れたァフィ-ティ一樹脂結合タンパク質の特異生検定のために行う拮抗実験時にリ ガンド添加によるバンドの消失が観察されても、 それが拮抗作用によるものか、 あ るいはリガンドによる非特異的なタンパク質変性作用によるタンパク質の失活に由 来するものかの判別が困難になるのである。
従って、 上記したような従来の拮抗実験で問題となっていた、 1 ) 対象リガンド の溶解度の問題、 ならびに 2 ) 添加する対象リガンドによるタンパク質の非特異的 な変性作用の問題を解決し得る、 ァフィ二ティ一樹脂に結合するタンパク質のリガ ンド特異性の検定方法が求められていた。
本発明は、 ァフィ二ティ一樹脂に結 ,合するタンパク質のリガンド特異性を検定す る方法の提供を目的とし、 特にリガンドの溶解度の問題ならびに添加する対象リガ ンドによるタンパク質の非特異的な変性作用の問題が改善された、 検定方法の提供 を目的とする。
発明の開示
本発明者らは、 上記課題に鑑み、 種々検討を行った結果、 従来方法である拮抗実 験で実施されていた工程、 「未修飾リガンドを直接タンパク質混合物に添加するェ 程」 に代えて 「リガンドを固定化したァフィユティー樹脂で前処理する」 工程を行 うことによって、 従来法で問題とされていた 1 ) 対象リガンドの溶解度の問題、 2 ) 添加する対象リガンドによるタンパク質の非特異的変性作用の問題等を一度に
解決することができることを見出し、 一連の検定方法を確立して本発明を完成する に至った。
試料、 特に生体試料中には、 特定のリガンドに特異的に結合するタンパク質以外 に非特異的に結合、 吸着するタンパク質が存在する。 本発明はかかる状況下、 リガ ンドに結合する種々のタンパク質について、 そのリガンド特異性を検定する方法に 関するものである。 本努明は、 リガンドに特異的に結合するタンパク質はその結合 定数が高く、 優先的にリガンド固定化固相担体に結合するという新たな知見に基づ くものである。
即ち本発明は下記の通りである。
〔1〕 リガンドと結合し得る分子の、 そのリガンドとの結合が特異的であるか否か を検定する方法であって、 以下の工程を含む方法;
( 1 ) 試料をリガンド固定化固相担体で処理し、 処理液を得る一方で固相担体上に 結合したタンパク質を抽出し、 リガンド固定ィヒ固相担体抽出液 1を得る工程、
( 2 ) 前工程で得られた処理液をリガンド固定化固相担体 (前工程で用いたリガン ド固定化固相担体と同種のリガンドを固定ィ匕してなる別の固相担体) で処理し、 処 理液を得る一方で固相担体上に結合したタンパク質を抽出し、 リガンド固定化固相 担体抽出液 2を得る工程、
( 3 ) リガンド固定化固相担体抽出液 1に含まれるタンパク質とリガンド固定化固 相担体抽出液 2に含まれるタンパク質とを比較解析する工程、
( 4 ) 工程 ( 3 ) で得られた解析結果をもとにリガンド固定化固相担体抽出液 1で 検出され、 且つリガンド固定化固相担体抽出液 2で検出されないかまたは検出され ても、 他のタンパク質に比較し、 リガンド固定ィヒ固相担体抽出液 1に対する減少が 有意なタンパク質を同定し、 当該タンパク質をリガンド特異的と判定する工程。 〔2〕 工程 (2 ) を 2回以上繰り返すことを特徴とする、 上記 〔1〕 記載の方法。 〔3〕 リガンドと結合し得る分子の、 そのリガンドとの結合が特異的である力、否か を検定する方法であって、 以下の工程を含む方法;
( 1 ) 試料を 2分割し、 その一方を不活性物質固定化固相担体で処理し、 処理液を 得る工程、
( 2 ) 前工程で得られた、 不活性物質固定化固相担体で処理した後の処理液をリガ ンド固定化固相担体 (後述する工程 (3 ) および工程 (4 ) で用いるリガンド固定 化固相担体と同種のリガンドを固定化してなる別の固相担体) で処理し、 処理液を 得る一方で固相担体上に結合したタンパク質を抽出し、 リガンド固定化固相担体抽 出液 1を得る工程、
( 3 ) 工程 (1 ) で 2分割した残りの一方の試料をリガンド固定ィヒ固相担体で処理 し、 処理液を得る工程、
( 4 ) 前工程で得られた、 リガンド固定化固相担体で処理した後の処理液をリガン ド固定化固相担体 (前工程 (3 ) で用いたリガンド固定化固相担体と同種のリガン ドを固定化してなる別の固相担体) で処理し、 処理液を得る一方で固相担体上に結 合したタンパク質を抽出し、 リガンド固定化固相担体抽出液 2を得る工程、
( 5 ) リガンド固定化固相担体抽出液 1に含まれるタンパク質とリガンド固定化固 相担体抽出液 2に含まれるタンパク質とを比較解析する工程、
( 6 ) 工程 (5 ) で得られた解析結果をもとにリガンド固定化固相担体抽出液 1で 検出され、 且つリガンド固定化固相担体抽出液 2で検出されないかまたは検出され ても、 他のタンパク質に比較し、 リガンド固定化固相担体抽出液 1に対する減少が 有意なタンパク質を同定し、 当該タンパク質をリガンド特異的と判定する工程。 〔4〕 不活性物質がステアリン酸である、 上記 〔3〕 記載の方法。
〔5〕 不活性物質が、 対象となる当該リガンドと構造的に類似し、 且つ当該リガン ドが有する生理活性は有さないものである、 上記 〔3〕 記載の方法。
〔6〕 試料が生体試料である、 上記 〔1〕 または 〔3〕 記載の方法。
〔7〕 さらに、 比較解析によって、 試料中のタンパク質のリガンドへの結合定数を 算出する工程を含む上記 〔1〕 または 〔3〕 記載の方法。
図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の一実施態様を模式的に示す図である。
図 2は、 本発明の一実施態様を模式的に示す図である。
図 3は、 リガンドと結合し得る分子の、 そのリガンドの結合が特異的であること を示す図である (リガンド: F K 5 0 6 ) 。 図中 A〜Eは任意に選択した、 F K 5 0 6に特異的ではないと予想されるタンパク質の結果である。
発明の詳細な説明
本発明の一実施態様を模式的に図 1に表す (実施態様 1 ) 。
( 1 ) 試料をリガンド固定化固相担体で処理し、 処理液を得る一方で固相担体上に 結合したタンパク質を抽出し、 リガンド固定化固相担体抽出液 1を得る工程。 本工程において用いる試料は、 対象となるリガンドに特異的に結合する物質を含 み得るものであって、 複数の物質を含む。 全て公知化合物から構成されるものであ つても、 一部新規な化合物を含むものであっても、 さらには全て新規な化合物から 構成されるものであってもよい。 全て公知な化合物から構成される試料としては、 大腸菌等によって遺伝子工学的に調製された精製タンパク質の混合物等であり、 一 部新規な化合物を含むものとしては血液、 血漿、 血清、 尿、 細胞や組織の抽出液あ るいは溶解液 (1 y s a t e ) 等の生体試料であり、 また全て新規な化合物から構 成されるものとしては、 まだその機能や構造が知られていない新規なタンパク質や 新しく合成された化合物等の混合物が挙げられる。 試料が混合物の場合、 特に公知 化合物を含む場合には、 任意にこれらの化合物の試料中の含有量を所望の値に設定 しておくこともできるが、 特に決める必要はない。
含められる物質としては、 タンパク質、 核酸、 糖質、 脂質等種々の物質が挙げら れる。 当該タンパク質には単純タンパク質に加え、 糖タンパク質ゃリポタンパク質 等の複合タンパク質が包含される。
試料の由来や性状、 後述の固相担体との処理方法等によっても異なるが、 必要に 応じて試料は適当な緩衝液で希釈して用いることができる。 緩衝液としては、 リガ ンドとターゲット分子との特異的な相互作用に不都合な影響を与えないものであれ ば特に限定されないが、 例えば生理食塩水、 リン酸緩衝液、 トリス塩酸緩衝液等が 挙げられ、 所望により安定剤や防腐剤等を添加して用いてもよい。
本発明において固相担体に固定化するリガンドは特に限定されず、 公知の化合物 であっても今後開発される新規な化合物であってもよい。 また、 低分子化合物であ つても高分子化合物であってもかまわない。 ここで低分子化合物とは分子量 1 0 0 0未満程度の化合物であって、 例えば医薬品として通常使用し得る有機化合物およ びその誘導体や無機化合物が挙げられ、 有機合成法等を駆使して製造される化合物 やその誘導体、 天然由来の化合物やその誘導体、 プロモーター等の小さな核酸分子 や各種の金属等であり、 望ましくは医薬品として使用し得る有機化合物およびその 誘導体、 核酸分子をいう。 また、 高分子化合物としては分子量 1 0 0 0以上程度の 化合物であって、 タンパク質、 ポリ核酸類、 多糖類、 およびこれらを組み合わせた ものなどが挙げられ、 望ましくはタンパク質である。 これらの低分子化合物あるい は高分子化合物は、 公知のものであれば商業的に入手可能であるか、 各報告文献に 従って採取、 製造、 精製等の工程を経て得ることができる。 これらは、 天然由来で あっても、 また遺伝子工学的に調製されるものであってもよく、 また半合成等によ つても得ることができる。
リガンドの固相担体への固定化は通常当分野で実施されている方法に準じて行う ことができる。 簡便且つ確実な手段としてアミド結合形成反応を利用する方法が挙 げられる。 本反応は、 例えば 「ぺプチド合成の基礎と実験」 (I S B N 4 - 6 2 1— 0 2 9 6 2— 2、 丸善、 昭和 6 0年初版) に従って実施できる。 各反応に用い られる試薬や溶媒については当分野で通常用いられるものが利用でき、 採用する結 合反応によつて適宜選択される。
本発明において用いられる固相担体は、 その上でリガンドとターゲット分子との 特異的な相互作用が生じるものであれば特に限定されず、 当分野で通常使用される ものが利用でき、 試料との処理やリガンド固定化固相担体抽出液を調製する為に行 われる方法に応じて適宜決定される。 材質としては、 例えば、 樹脂 (ポリスチレン メタタリレート系樹脂、 ポリアクリルアミド等) 、 ガラス、 金属 (金、 銀、 鉄、 シ リコン等) 等が用いられる。 これらの固相は、 いかなる形状のものであってもよく また上記した材質の種類や、 試料との処理やリガンド固定化固相担体抽出液を調製
する為に行われる方法に応じて適宜決定される。 例えば板状、 ビーズ状、 薄膜状、 糸状、 コイル状等が挙げられる。
試料のリガンド固定化固相担体での処理は、 簡便には、 リガンド固定ィヒ固相担体 と試料を混合することによって実施される。 例えばビーズ状のリガンド固定化固相 担体を試料 (好ましくは液状) と 4°C〜室温で 30分〜一晚、 ゆるやかに撹拌しな がら混合する。 試料が液状でない場合には、 上記したように適当な緩衝液等で溶解 し予め液状としておくのが好ましい。 処理後、 リガンド固定化固相担体と試料とを 分離する。 かかる分離する手段もリガンド固定化固相担体の形状や材質等によって 適宜設定されるが、 例えばビーズ状の固相担体を用いる場合には、 遠心分離操作や 濾過による分離が好適である。 遠心分離操作の各条件は、 通常当分野で実施される 各条件が採用される。 具体的には 4 °C〜室温で、 1 00〜1 5000 g、 1秒から 1 0分間の遠心分離操作や固相担体が通過しないメッシュの膜を用いた濾過操作が 例示される。 これらの操作により得られる上澄み液あるいは濾液等を処理液と称す る。
上記したように処理液を得る一方で、 遠心分離操作あるいは濾過操作により得ら れる沈殿あるいは残渣、 すなわちリガンド固定化固相担体から、 当該固相担体上に 結合したタンパク質を抽出し、 リガンド固定ィ匕固相担体抽出液を得る。 試料を最初 にリガンド固定ィヒ固相担体で処理して得られるリガンド固定化固相担体抽出液を便 宜上 「リガンド固定化固相担体抽出液 1」 と称する。
リガンド固定化固相担体上に結合したタンパク質を抽出する方法は、 当分野で通 常行われている種々の方法が利用できるが、 例えば、 リガンド固定化固相担体を界 面活性剤を含有する抽出液で処理することによって行う。 界面活性剤としてはドデ シル硫酸ナトリウム (SD S) や、 ポリオキシエチレン ソルビタン モノラウレ ート (例えば、 商品名: Twe e n 20) 、 ポリオキシエチレン (9) オタチノレフ ェニル エーテル (例えば、 商品名 NP— 40) 等が挙げられる。 後述するが、 タ ンパク質の検出に S D S— PAGEを用いる場合には、 S D Sを含有する S D S— PAGE用サンプルバッファーで直接タンパク質を抽出することが好適である。
( 2 ) 前工程 (工程 ( 1 ) ) で得られた処理液をリガンド固定化固相担体で処理し、 処理液を得る一方で固相担体上に結合したタンパク質を抽出し、 リガンド固定化固 相担体抽出液 2を得る工程。
本工程で用いるリガンド固定化固相担体は、 前工程 (工程 (1 ) ) で用いたリガ ンド固定化固相担体と同種のリガンドを固定ィ匕してなる別の固相担体である。
処理液のリガンド固定化固相担体での処理は、 工程 (1 ) で実施した試料のリガ ンド固定化固相担体での処理と同様にして行うが、 簡便には、 リガンド固定化固相 担体と処理液を混合することによ.つて実施される。 例えばビーズ状のリガンド固定 化固相担体を処理液と 4 °C〜室温で 3 0分〜ー晚、 ゆるやかに撹拌しながら混合す る。 処理後、 リガンド固定化固相担体と処理液とを分離する。 かかる分離する手段 もリガンド固定化固相担体の形状や材質等によって適宜設定されるが、 例えばビー ズ状の固相担体を用いる場合には、 遠心分離操作や濾過による分離が好適である。 遠心分離操作の各条件は、 通常当分野で実施される各条件が採用される。 具体的に は 4 °C〜室温で、 1 0 0〜1 5 0 0 0 g、 1秒から 1 0分間の遠心分離操作や固相 担体が通過しないメッシュの膜を用いた濾過操作が例示される。
遠心分離操作あるいは濾過操作により得られる沈殿あるいは残渣、 すなわちリガ ンド固定ィヒ固相担体から、 当該固相担体上に結合したタンパク質を抽出し、 リガン ド固定化固相担体抽出液を得る。 処理液をリガンド固定ィ匕固相担体で処理して得ら れるリガンド固定化固相担体抽出液を便宜上 「リガンド固定化固相担体抽出液 2」 と称する。 本工程を 2回以上繰り返した場合には、 その回数に応じて複数のリガン ド固定化固相担体抽出液 2が得られる、 そのような場合には混同を避けるため、 リ ガンド固定化固相担体抽出液 2 a、 2 b、 2 c ■ ■ '等と区別してもよい。
本工程でリガンド固定化固相担体上に結合したタンパク質を抽出する方法も前ェ 程 (工程 (1 ) ) で実施した方法と同様なものが用いられる。
( 3 ) リガンド固定化固相担体抽出液 1に含まれるタンパク質とリガンド固定化固 相担体抽出液 2に含まれるタンパク質とを比較解析する工程。
本工程は、 通常のタンパク質の解析方法が利用できる。 例えば S D S— P A G E による解析が簡便である。 リガンド固定化固相担体抽出液 1とリガンド固定化固相 担体抽出液 2を同一条件下で S D S— P A G Eに付し、 得られる電気泳動のパタ一 ンを比較することによって各抽出液中のタンパク質の相違を調べることができる。 ( 4 ) 工程 ( 3 ) で得られた解析結果をもとにリガンド固定化固相担体抽出液 1で 検出され、 且つリガンド固定化固相担体抽出液 2で検出されないかまたは検出され ても、 他のタンパク質に比較し、 リガンド固定化固相担体抽出液 1に対する減少が 有意なタンパク質を同定し、 当該タンパク質をリガンド特異的と判定する工程。 かかる工程は、 特異性の高いタンパク質ほど (高い結合定数を有するタンパク 質) 、 1回目のリガンド固定化固相担体処理で試料中 (あるいは処理液中) から消 失する割合が高くなるという本願発明で得られた知見に基づいている。 「他のタン ノ、。ク質に比較し、 リガンド固定化固相担体抽出液 1に対する減少が有意である」 こ とは肉眼で判定可能であり、 また、 通常当分野で実施されている統計学的処理 (例 えば、 全体のタンパク質の変化と特定のタンパク質の減少率を比較する) によって 判断してもよい。
さらに、 本発明の別の一実施態様を図 2に示す。 本実施態様は、 不活性物質が固 定化された固相担体で処理する工程を含む。 以下に本実施態様について説明する (実施態様 2 ) 。
( 1 ) 試料を 2分割し、 その一方を不活性物質固定化固相担体で処理し、 処理液を 得る工程。
本工程において用いる試料は、 上記したものと同様なものである。 試料はあらか じめ 2分割し、 その一方を本工程に使用し、 残る一方を後述の工程 (3 ) で用いる ( 工程 (5 ) で比較解析を行う為には、 工程 (1 ) および工程 (3 ) の出発原料とな る試料は同一のもの (即ち同一の組成を有する) である必要があり、 従ってあらか じめ 2分割しておくことが好ましい。 リガンド特異的な分子がリガンド固定化固相 担体上に結合することができれば、 当該試料は等しく 2分割してもよいし、 互いに 異なる量で 2分割してもよい。
本発明において固相担体に固定ィヒされる不活性物質とは、 例えばターゲット分子 を探索する目的となるリガンド以外の物質であり、 当該リガンドが有する生理活性 を有さない物質である。 非特異的なタンパク吸着に関してほぼ同様な挙動を示すこ とが期待されることから、 特徴的な官能基や母核が当該リガンドと類似している物 質であることがより好ましい。 例えばターゲット分子の探索を目的とするリガンド
1 抗炎症作用を有する物質であれば、 不活性物質とは抗炎症作用を有さない物質 であり、 好ましくは構造が類似し物理化学的性質が類似している物質である。 当該 リガンドの構造活性相関の情報が予め入手でき利用し得る場合には、 その情報に応 じて適宜不活性物質を選択し固定化固相担体を調製することができる。 一方、 予め そのような情報がない場合には、 通常、 非特異的なタンパク質吸着を生じることが 予測される疎水性物質を固定ィ匕してもよい。 疎水性物質としては例えばステアリン 酸等が例示される。 疎水性の程度は、 一般的に疎水性パラメーターによって表すこ とができるが、 本発明においては 「疎水性物質」 の疎水性は、 分配係数、 具体的に は LOG Pによって規定することができる。 LOGPの算出には、 簡便には、 CL OGP (化合物の疎水性パラメータ一を計算機によって見積もるソフトによって得 られる予測値;例えば C o r w i n/L e o ' s r o g r am (C LOG P: Da y l i gh t Ch emi c a l I n f o rma t i on Sy s t em Co. , L t d) を使用して計算できる) 等が利用されるが、 疎水性のパラメ一 ターは CLOGPに限定されるものではない。 CLOGPが大きい程、 疎水性が高 いことを意味する。 非特異的物質の除去という目的の達成に鑑みると、 本発明の疎 水性物質の LOG Pは、 C LOG Pとして算出した場合 4以上、 好ましくは 6以上 である。 4未満では十分な非特異的物質の除去効果が得られない。 また、 LOGP が大きい程疎水性が高く、 かかる高い疎水性を有する物質は好適に本発明の目的を 達成し得るが、 C L O G Pとして算出した場合 20程度を超えてもその効果に顕著 な上昇が見られず、 また合成の容易性という観点から通常 CLOGPは 20以下で ある。 また、 問題となるのは固相担体上での疎水的相互作用に基づく非特異的相互
作用であるから、 「疎水性物質」 の疎水性の程度は、 より厳密には固相担体に固定 化された状態、 すなわち疎水性物質固定化固相担体全体の疎水性として定義されて よい。
本発明において使用し得る疎水性物質としては、 上記の性質を有するものであれ ば特に限定されないが、 例えば上記の性質 (即ち L O G Pが C L O G Pとして算出 された場合、 4以上、 好ましくは 6以上) を有するものである。 より具体的には疎 水性物質は、 ゥンデカン酸、 ミリスチン酸、 パルミチン酸、 リノール酸、 ァラキド ン酸、 リノレン酸、 ォレイン酸、 ステアリン酸、 9一 (ナフタレン一 1—ィル) 一 ノナン酸、 ドデカンスルフォン酸、 ォクタデカンス /レフォン酸およびへキサデ力ン スルフォン酸からなる群より選択される少なくとも 1種であり、 好ましくは、 ミリ スチン酸、 パルミチン酸、 リノール酸、 ァラキドン酸、 リノレン酸、 ォレイン酸、 ステアリン酸、 ォクタデカンスルフォン酸およびへキサデカンスルフォン酸からな る群より選択される少なくとも 1種であり、 特に好ましくはステアリン酸またはォ 上記 「疎水性物質」 は、 公知の物質であれば、 商業的に入手可能か、 あるいは各 種文献に準じて調製することができる。 また、 新規な物質についても、 当分野で通 常実施される有機合成における各種の反応を利用することによつて適宜調製するこ とが可能である。
本発明において用いられる 「不活性物質」 についても、 公知の物質であれば、 商 業的に入手可能か、 あるいは各種文献に準じて調製することができる。 また、 新規 な物質についても、 当分野で通常実施される有機合成における各種の反応を利用す ることによって適宜調製することが可能である。 新規な物質の場合には予め、 目的 とする生理活性を有していないこと、 好ましくは試験対象となるリガンドと構造的 に類似し、 物理化学的性質が類似していることを確認する。
疎水性物質等の 「不活性物質」 を固定化する固相担体は、 当分野で通常使用され るものが好適に使用できる。 材質としては、 例えば、 樹脂 (ポリスチレン、 メタク リレート系樹脂、 ポリアクリルアミド等) 、 ガラス、 金属 (金、 銀、 鉄、 シリコン
等) 等が用いられる。 これらの固相担体は、 いかなる形状のものであってもよく、 また上記した材質の種類や、 その後に実施する分子間の特異的な相互作用の解析の 為に行われる方法に応じて適宜決定される。 例えば板状、 ビーズ状、 薄膜状、 糸状、 コィル状等が挙げられるが、 樹脂からなるビーズであれば力ラムに充填することに よりその後の操作を簡便にし、 また金属の薄膜やガラスプレートもまた好適である。 固相担体への不活性物質の固定化は、 通常当分野で実施される公知の方法おょぴ それらを適宜組み合わせた方法によつて実施され、 例えばァミド結合や、 シッフ塩 基形成、 C一 C結合、 エステル結合、 水素結合、 疎水相互作用等の共有結合あるい は非共有結合による固定ィヒが挙げられる。 いずれも当分野で公知の材料ならびに反 応により実施される。 個々の結合は、 通常当分野で実施される反応を利用して実施 される。 簡便且つ確実な手段としてアミド結合形成反応を利用する方法が挙げられ る。 本反応は、 例えば 「ペプチド合成の基礎と実験」 (ISBN 4- 621- 02962-2、 丸善、 昭和 60年初版) に従って実施できる。 各反応に用いられる試薬や溶媒については 当分野で通常用いられるものが利用でき、 採用する結合反応によつて適宜選択され る。 疎水性物質が固相担体に固定化されたか否かは、 例えば反応前後の固相担体表 面上のアミノ基の定量 (例えば二ンヒドリン試験)によって測定される反応率から確 認することができる。
試料の不活性物質固定化固相担体での処理は、 簡便には、 不活性物質固定化固相 担体と試料を混合することによつて実施される。 例えばビーズ状の不活性物質固定 化固相担体を試料 (好ましくは液状) と 4 °C〜室温で 3 0分〜ー晚、 ゆるやかに撹 拌しながら混合する。 試料が液状でない場合には、 上記したように適当な緩衝液等 で溶解し予め液状としておくのが好ましい。 処理後、 不活性物質固定化固相担体と 試料とを分離する。 かかる分離する手段も不活性物質固定化固相担体の形状や材質 等によって適宜設定されるが、 例えばビーズ状の固相担体を用いる場合には、 遠心 分離操作や濾過による分離が好適である。 遠心分離操作の各条件は、 通常当分野で 実施される各条件が採用される。 具体的には 4 °C〜室温で、 1 0 0〜1 5 0 0 0 g、 1秒から 1 0分間の遠心分離操作や固相担体が通過しないメッシュの膜を用いた濾
過操作が例示される。 これらの処理により得られる上澄み液あるいは濾液を処理液 と称する。 尚、 上記処理の方法ならびにその手順は上記したようにして適宜行うこ とができる力 好ましくは後述するリガンド固定化固相担体と試料 (あるいは処理 液) との処理と同様な条件下、 同様な方法ならぴに手順で実施することが、 比較の 上でも好ましい。
( 2 ) 前工程 (工程 (1 ) ) で得られた、 不活性物質固定化固相担体で処理した後 の処理液をリガンド固定化固相担体で処理し、 処理液を得る一方で固相担体上に結 合したタンパク質を抽出し、 リガンド固定化固相担体抽出液 1を得る工程。
本工程で用いるリガンド固定化固相担体は、 後述する工程 (工程 (3 ) およびェ 程 (4 ) ) で用いるリガンド固定ィヒ固相担体と同種のリガンドを固定化してなる別 の固相担体である。
処理液のリガンド固定化固相担体での処理は、 工程 ( 1 ) で実施した、 試料の不 活性物質固定化固相担体での処理と同様にして行うことができる。 処理後、 固相担 体上に結合したタンパク質を抽出し、 リガンド固定化固相担体抽出液 1を得る。 か 力る操作も実施態様 1で詳述したのと同様な条件、 手順で行うことができる。
( 3 ) 試料をリガンド固定化固相担体で処理、 処理液を得る工程。
本工程において用いる試料は、 上記工程 (1 ) で 2分割して残ったもう一方の試 料である。
本工程において用いるリガンド固定ィヒ固相担体は、 工程 (2 ) で用いたリガンド 固定ィヒ固相担体と同種のリガンドを固定化してなる別の固相担体であり、 実施態様 1において詳述した 「リガンド固定化固相担体」 と同様にして調製することができ る。 また、 試料のリガンド固定化固相担体での処理ならぴに処理液の回収も、 上記 実施態様 1で実施した処理と同様にして行うことができる。
( 4 ) 前工程 (工程 (3 ) ) で得られた、 リガンド固定化固相担体で処理した後の 処理液をリガンド固定化固相担体 (前工程 (3 ) で用いたリガンド固定化固相担体 と同種のリガンドを固定化してなる別の固相担体) で処理し、 処理液を得る一方で
固相担体に結合したタンパク質を抽出し、 リガンド固定化固相担体抽出液 2を得る 工程。
処理液のリガンド固定化固相担体での処理、 処理液の回収ならびに固相担体に結 合したタンパク質を抽出しリガンド固定化固相担体抽出液 2を得るといった一連の 各操作は、 上記実施態様 1に準じて実施する。
( 5 ) リガンド固定化固相担体抽出液 1に含まれるタンパク質とリガンド固定化固 相担体抽出液 2に含まれるタンパク質とを比較解析する工程。 ' 本工程は、 通常のタンパク質の解析方法が利用できる。 例えば S D S— P A G E による解析が簡便である。 リガンド固定化固相担体抽出液 1とリガンド固定化固相 担体抽出液 2を同一条件下で S D S— P A G Eに付し、 得られる電気泳動のパター ンを比較することによって各抽出液中のタンパク質の相違を調べることができる。
( 6 ) 工程 (5 ) で得られた解析結果をもとにリガンド固定化固相担体抽出液 1で 検出され、 且つリガンド固定化固相担体抽出液 2で検出されないかまたは検出され ても他のタンパク質に比較し、 リガンド固定化固相担体抽出液 1に対する減少が有 意なタンパク質を同定し、 当該タンパク質をリガンド特異的と判定する工程。
力、かる工程は、 実施態様 1同様、 特異性の高いタンパク質ほど (高い結合定数を 有するタンパク質) 、 1回目のリガンド固定化固相担体処理で試料中 (あるいは処 理液中) 力 ら消失する割合が高くなるという本願発明で得られた知見に基づいてい る。 すなわち、 先に不活性物質固定ィヒ固相担体であらかじめ処理しても、 試料中か らリガンド特異的タンパク質が消失することはなく、 むしろ試料中に存在するリガ ンド特異的タンパク質の割合が増加する (不活性物質固定化固相担体での処理によ り試料中の非特異的タンパク質が除去される) 。 一方、 不活性物質固定化固相担体 での前処理を行なわない場合、 実施態様 1から明らかなように、 1回目のリガンド 固定化固相担体処理で試料中からリガンド特異的タンパク質が消失する (すなわち、 該処理に用いた固定ィ匕固相担体にリガンド特異的タンパク質が結合し、 したがって 1回目のリガンド固定化固相担体処理後に得られるリガンド固定化固相担体抽出液 にリガンド特異的タンパク質が高濃度で含まれることになる) 。
「他のタンパク質に比較し、 リガンド固定化固相担体抽出液 1に対する減少が有 意である」 ことは肉眼で判定可能であり、 また、 通常当分野で実施されている統計 学的処理 (例えば、 全体のタンパク質量の変化と特定のタンパク質量の減少率を比 較する) によって判断してもよい。
本発明の方法を用いて、 あるタンパク質がリガンド特異的であるか否かを判定す る場合、 より定量的に判定を行いたい場合は、 当該タンパク質のリガンドへの結合 定数を算出する工程を、 上記一連の工程に含めてもよい。
結合定数を算出する方法としては、 当分野で通常行われている方法が利用でき、 例えばラベル化されたリガンドを用いた EL I SA実験や B I ACORE (Wh i t e s i d eらによる An a l y t i c a l Ch e m i s t r y (1999; , 71, 777-790等を参照) 等を用いた実験等の方法が挙げられる。
実施例
以下、 実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、 本発明はこれらの実施例 によりなんら限定されるものではない。 また、 用いる各化合物や試薬等は特に言及 しない限り、 商業的に入手可能であるか、 また既知の報告等に基づいて調製するこ とができる。
'固定化固相担体の作成
製造例 1 : 17—ァリル一 14— ( t e r t一プチルージメチルーシラニルォキ シ) 一 1ーヒドロキシ一 12— { 2 - [4一 (7 - (t e r t—ブチノレ一ジメチノレ ーシラニルォキシーカルボニル) ヘプタノィルーォキシ) 一 3—メ トキシーシクロ へキシル] — 1—メチル一ビニル } 一 23, 25—ジメ トキシー 13, 19, 21 27—テトラメチル一 1 1, 28—ジォキサー 4—ァザ一トリシクロ [22. 3. 1. 0
4'
9] ォクタコス一 18—ェン一 2, 3, 10, 16—テトラオンの合成
17—ァリル一 14一 ( t e r t—プチグレージメチル一シラ二/レオキシ) 一 1一 ヒドロキシ一 12— [2 - (4ーヒドロキシー 3—メ トキシーシクロへキシル) 一 1ーメチルービュル] 一 23, 25—ジメ トキシー 13, 19, 21, 27—テト ラメチル一1 1, 28—ジォキサー 4—ァザートリシクロ [22. 3. 1.
04' 9] ォクタコス一 18—ェンー 2, 3, 10, 16—テトラオン (FK50 6 ; 138mg, 0. 15 mm o 1 ) 、 O—モノ ( t e r t—プチノレージメチノレー シラ -ル) オクタン二酸 (86. 7mg, 0. 218mmo 1 ) 、 ジメチルァミノ ピリジン (DMA P ; 16. 5mg, 0. 098 mm o 1 ) 、 1一 [ 3— (ジメチ ノレアミノ) プロピル] — 3—ェチルカルポジイミド塩酸塩 (EDC/HC 1 ; 69. lmg, 0. 26 lmmo 1 ) および塩化メチレン (CH2C 12; lm l) の混合 物を室温で 1. 5時間撹拌した。 反応物を酢酸ェチルー水混合液に注ぎ、 抽出した 得られた有機相を水、 食塩水で洗浄後、 硫酸マグネシウム (Mg S04) で乾燥し た。 Mg S04を濾別後、 減圧下濃縮した。 こうして得られた残渣をシリカゲル力 ラムで精製し (20%AcOE t (n—へキサン中) で溶出) 、 目的とする 1 7— ァリルー 14一 ( t e r t—ブチルージメチノレーシラニルォキシ) 一 1ーヒドロキ シー 12— { 2 - [4一 (7— (t e r t—ブチノレ一ジメチノレ一シラニノレオキシ一 カルボニル) ヘプタノィルーォキシ) 一 3—メ トキシーシクロへキシル] 一 1ーメ チルービュル } —23, 25—ジメ トキシー 1 3, 19, 21, 27—テトラメチ
ルー 1 1 , 2 8—ジォキサー 4ーァザートリシクロ [2 2. 3. 1. 04' 9] オタ タコス一 1 8—ェン一 2, 3, 1 0, 1 6—テトラオン (4'4mg, 24. 6 %) を得た。
aH-NMR (CDC 1 3) δ : - 0. 1— 0. 1 (1 2Η, m) , 0. 7 - 2. 6 (4 7Η, m) , 0. 8 5 a n d 0. 8 6 ( 1 8 H, s ) , 1. 5 0 (3 H, s ) , 1. 6 3 (3H, s ) , 2. 7 5 ( 1 H, m) , 3. 3 1 (3H, s) , 3
3 5 (3 H, s ) , 3. 3 9 (3 H, s ) , 4. 0 5 ( 1 H, m) , 3. 0— 4.
4 (6 H) , 4. 5 - 5. 8 (9 H, m) .
製造例 2 : 1 7—ァリル一 1, 1 4一ジーヒドロキシー 1 2— { 2 - [4— (7— カルボキシーヘプタノィルーォキシ) 一 3—メ トキシーシクロへキシル] 一 1ーメ チルービュル } - 2 3, 2 5ージメ トキシー 1 3, 1 9, 2 1 ' 2 7—テトラメチ ルー 1 1, 2 8—ジォキサ一 4ーァザ一トリシクロ [2 2. 3. 1. 04> 9] オタ タコス一 1 8—ェンー 2, 3, 1 0, 1 6—テトラオンの合成
製造例 1で調製した 1 7—ァリル一 1 4— ( t e r t—プチル一ジメチルーシラ ニルォキシ) 一 1ーヒドロキシー 1 2— { 2— [4一 (7 _ ( t e r t—プチルー ジメチルーシラニルォキシーカルボニル) ヘプタノィルーォキシ) 一 3—メ トキシ
ーシクロへキシル] 一 1ーメチルービュル } 一 23, 25—ジメトキシー 13, 1 9, 21, 27—テトラメチル一 11, 28—ジォキサー 4ーァザ一トリシクロ [22. 3. 1. 0
4'
9] ォクタコスー 18—ェンー 2, 3, 10, 16—テトラ オン (44mg, 0. 037mmo 1 ) とァセトニトリノレ (0. 88ml) の混合 物に 46— 48%のフッ化水素 (HF) 水 (0. 12ml) を静かに加え室温にて 終夜撹拌した。 反応物を酢酸ェチルー水混合液に注ぎ、 抽出した。 得られた有機相 を水、 食塩水で洗浄後、 硫酸マグネシウム (Mg S0
4) で乾燥した。 Mg S0
4を 濾別後、 減圧下濃縮した。 こうして得られた残渣をシリカゲルカラムで精製し
(5%メタノール (クロ口ホルム中) ) 、 目的とする 17—ァリル一 1, 14ージ ーヒドロキシー 12— {2- [4一 (7—力ルポキシ一ヘプタノィルーォキシ) 一 3—メトキシ一シクロへキシル] _1一メチル一ビュル } —23, 25—ジメトキ シ一 13, 19, 21, 27—テトラメチル一 1 1 , 28—ジォキサ一 4ーァザ一 トリシクロ [22. 3. 1. 04' 9] ォクタコスー 18—ェン一 2, 3, 10, 1 6—テトラオン (14. 2mg, 40%) を得た。
iH— NMR (CDC 13) 6 : 0. 7— 2. 6 (47H, m) , 1. 50 (3H, s) , 1. 63 (3H, s) , 2. 75 (1H, m) , 3. 31 (3H, s) , 3. 35 (3H, s) , 3. 39 (3H, s) , 4. 05 (1H, m) , 3. 0— 4. 4 (6H) , 4. 5-5. 8 (11 H, m) .
MS (m/z) : 960 (M+)
製造例 3 : FK506結合 TOYOパール樹脂 (TOYO— P e a r 1 r e s i n ; T SK g e 1 AF— am i n o) の合成
製造例 2で調製した 17—ァリル一 1 , 14一ジーヒドロキシー 12— { 2— [4— (7—カルボキシ一ヘプタノィルーォキシ) 一 3—メトキシ一シクロへキシ
ル] 一 1—メチルービュル } 一 2 3, 25—ジメ トキシー 1 3, 1 9, 2 1, 2 7 ーテトラメチル一 1 1, 28—ジォキサ一 4—ァザ一トリシクロ [22. 3. 1. 0
4'
9] ォクタコス一 1 8 _ェン一 2, 3, 10, 1 6—テトラオン (3 8. 4m g, 0. 04mmo 1 ) 、 TOYOパール樹脂 (TSKg e 1 AF— am i n o 1 00 μ 1, 遊離ァミノ基 (a v a i l a b l e am i n o g r o u p) ίま 0 0 lmmo 1 ;東ソー株式会社製) 、 EDC/HC 1 (9. 2mg, 0. 048m mo l ) 、 1—ヒ ドロキシベンゾトリアゾール (HOB t ; 6. 5mg, 0. 04 8mmo 1 ) およびジメチルホルムアミ ド (DMF ; lm l ) の混合物を室温で 6 時間撹拌した。 反応の終点は二ンヒ ドリン反応で残存ァミノ基が肉眼で観測できな くなることで確認した。 この時の反応率を換算すると約 24 %であった (推定リガ ンド濃度 = 24 μ m o 1 /m 1 ) 。 反応終了確認後、 DMFで樹脂を 5回洗浄した, ここに無水酢酸 ( 1 00 μ 1 ) および DMF (400 1 ) を加え 1時間室温で撹 拌した。 その後 DMFで十分洗浄し、 得られた FK506結合 TOYOパール樹脂 は後述する結合実験に用いた。
疎水性物質固定化固相担体の作成
製造例 4 : ステアリン酸固定化樹脂 〔TOYO +ステアリン酸〕 の合成
TOYOパール樹脂 (TSKg e 1 AF- a m i n o ) にステアリン酸を固定 化した。 TOYOパール樹脂 1 00 μ 1に、 DMF (0. 25m l ) とジクロロメ タン (0. 2 5m l ) の混合溶媒に溶解したステアリン酸 (1 1. 38mg, 0. 04mmo 1 ) を加え、 更にべンゾトリアゾール一 1—ィルーォキシートリスーピ ロリジノーホスホユウム へキサフノレオ口ホスフェート (P yBOP ; 26mg, 0. 0 5mmo 1 ) 、 及ぴ N, N—ジイソプロピルェチルァミン (1 7 // 1, 0. 1 0mm ο 1 ) を加え、 室温で 4時間振とうした。 反応終了後、 樹脂を DMFで+ 分に洗浄した後、 ニンヒドリンテス トにより縮合収率を測定した (約 9 1%) 。
実施例 1
(1-1) 1 y s a t eの調製
ラットの脳 (2. 2 g) を混合液 A (0. 25Mシュクロース, 25mM T r i sバッファー (ρΗ7. 4) , 22ml) に混ぜ、 ホモジネートを作成後、 95 00 r p mで 10分間遠心分離した。 遠心分離上清を取り、 50000 r pmでさ らに 30分間遠心分離した。 こうして得られた上清を 1 y s a t eとして使用した なお、 実験はすべて 4°Cあるいは氷上で行った。
(1-2) 結合実験 (本願発明)
製造例 3で合成した FK506を結合したァフィ二ティ一樹脂およぴ製造例 4で 作成したステアリン酸固定化樹脂を用いて以下の手順で 1 y s a t eとの結合実験 を行つた。 なお、 1 y s a t eは混合液 Aで 1ノ 2に希釈して使用した。
各樹脂 (10 1) と l y s a t e (1m l) を 4°Cで約 1時間、 静かに振とう した。 その後、 遠心分離操作を行い、 夫々'の上澄みを注意深く採集した。 そして、 各上澄み液を再びフレッシュな F K 506結合樹脂 ( 10 1 ) と混合した。 約 3 時間静かに撹拌した後に、 遠心分離操作を行い、 上澄み液を除去した。 得られた F K506結合樹脂を混合液 Aにて 5回程度丁寧に洗浄し、 樹脂上に結合するタンパ グ質以外を出来る限り除いた。
こうして得られた各 FK 506結合樹脂に 25/x lの SDS用 l o a d i n g b u f f e r (n a k a l a i c a t. NO= 30566— 22、 電気泳動用 s am l e b u f f e r s o l u t i o n w i t h 2—ME 、 2— m e r c a p t o e t h a n o l) (2 x) f o r SDS PAGE) を加え、 2 5 °Cで 10分間撹拌した。 こうして得られたサンプル液を市販の S D Sゲル (B i oR a d r e a d y G e 1 J, 1 5% SDS, c a t. NO= 161 - J 34 1) で分離し、 その SDSゲノレを角军析した。
結果、 1回目の樹脂処理をステアリン酸固定ィ匕樹脂で行った場合に比べて FK 5 06結合榭脂で行った場合は、 FK506結合樹脂上に特異的に結合すると考えら れている F KB P 12のバンドが明らかに減少しており拮抗が観察された。
なお、 この結果は、 下記で述べる通常の実験 (従来法) の結果と酷似する内容で めった。
(1-3) 結合実験 (従来法)
製造例 3で合成した FK 506を結合したァフィ二ティー樹脂を用いて従来の方 法による結合実験を行った。 なお、 1 y s a t eは実施例 2で調製したものと同じ ものを分割して使用した。
製造例 3で合成した FK506を結合したァフイエティー樹脂 (10 1、 FK 506量は約 0. 24/zmo l) を 2つ用意し、 片方には 1 y s a t e (lml) と混合し、 10 μ 1の DMSOを加え (下記の実験との条件を同一にするため) 4°Cで約 1時間、 静かに振とうした。 また、 もう片方に使用する 1 y S a t eは樹 脂との混合前に FK506 (2. 83mg) を 100 μ 1の DM S Oで溶解した溶 液を 10 1 (0. 35 μιηο 1 , 樹脂上のリガンドの約 1. 5倍) 予め加え 1時 間静かに撹拌したものを使用した。 なお、 事前の調査により、 この量の DMS〇お よび FK506添加は先に示したようなタンパク質の変性および凝集は見られない ことが確認されている。 各混合物を 3時間ほど静かに撹拌した後に、 遠心分離操作 を行い、 上澄み液を除去した。 得られた F K 506結合樹脂を混合液 Aにて 5回程 度丁寧に洗浄し、 樹脂上に結合するタンパク質以外を出来る限り除いた。
こうして得られた各 FK 506結合樹脂に 25 μ 1の SDS用 1 o a d i n g b u f f e r (n a k a l a i c a t. NO- 30566— 22、 電気泳動用 s am l e b u f f e r s o l u t i o n w i t h 2—ME ( 2— m e r c a p t o e t h a n o l) (2 x) f o r SDS PAGE) をカ卩え、 2 5°Cで 10分間撹拌した。 こうして得られたサンプル液を市販の SDSゲル (B i o R a d r e a d y G e 1 J , 15% SDS, c a t. NO= 161 - J 34 1) で分離し、 その SDSゲルを解析した。
結果、 樹脂上に特異的に結合すると考えられている FKB P 12のバンドが予め 拮抗剤の FK506を添加した場合には消失し、 拮抗が観察された。
(1-4) 結合実験 (本願発明)
なお、 上記 「 (1— 2) 結合実験」 と同じ結果は下記のような手順においても得 ることが出来る。
製造例 3で合成した FK 506を結合したァフィ二ティー樹脂を用いて以下の手 順で 1 y S a t eとの結合実験を行った。 なお、 1 y s a t eは混合液 Aで 1/2 に希釈して使用した。
樹脂 (10 i l ) と l y s a t e (lm l ) を 4°Cで約 1時間、 静かに振とうし た。 その後、 遠心分離操作を行い、 夫々の上澄みを注意深く採集した。 この時、 分 離した FK506結合樹脂を 1回目の結合実験樹脂として 4 °Cにて静かに保存して おく。 そして、 各上澄み液を再びフレッシュな FK 506結合樹脂 (Ι Ο μ 1 ) と 混合した。 3時間ほど静かに撹拌した後に、 遠心分離操作を行い、 上澄み液を除去 した。 こうして 2回目の結合実験で得られた F Κ 506結合樹脂と 1回目で得られ た樹脂とを混合液 Αにて 5回程度丁寧に洗浄し、 樹脂上に結合するタンパク質以外 を出来る限り除いた。 こうして得られた各 FK506結合樹脂に 25 μ 1の SDS 用 l o a d i n g b u f f e r a k a 1 a i c a t. NO=30566— 22、 電気泳動用 s amp l e b u f f e r s o l u t i o n w i t h 2 -ME (2 -me r c a p t o e t h a n o l ) ( 2 x) f o r SDS PA GE) を加え、 2 5°Cで 1 0分間撹拌した。 こうして得られたサンプル液を市販の SD Sゲル (B i oR a d r e a d yG e l J, 1 5% SDS, c a t. NO = 1 6 1- J 34 1) で分離し、 その S D Sゲルを解析した。
結果、 1回目の樹脂上には、 上記 「 (1— 2) 結合実験」 におけるステアリン酸 固定ィヒ樹脂処理の結果とほぼ同様な結果が、 また 2回目の樹脂からは上記 「 (1一
2) 結合実験」 における FK506結合樹脂処理とほぼ同様な結果を得ることが出 来た。 なお、 この結果は、 先の 「 (1— 2) 結合実験 (本願発明) 」 、 「 (1一
3) 結合実験 (従来法) 」 で述べた結果と酷似する内容であった。
また、 (1— 4) で述べた操作を計 6回まで繰り返したときの結果を図 3に示す。 図 3に示すように、 リガンドとして用いた FK506に特異的に結合することが知 られている FKB P 1 2のバンドは 1回目の操作後にのみ確認され 2回目以降には
まったく確認されなかった。 また、 非特異的タンパク質と考えられているチューブ リンゃァクチン等の他のタンパク質の結合量は操作の繰り返し回数によらずほぼ一 定であった。
産業上の利用可能性
アブイ二ティー樹脂を用いたターゲット探索において拮抗実験は観察されたパン ドの特異性を確認するのに重要な役割を演じている。 本願発明は、 従来懸念されて いた対象リガンドの溶角早度の問題がなく、 また添加する対象リガンドによるタンパ ク質の非特異的変性作用の問題が低減された拮抗実験の一手法を提供するものであ り、 ァフィ二ティー樹脂研究の基盤技術となると考えられる。 本出願は、 日本で出願された特願 2 0 0 3 - 3 5 4 5 0 3を基礎としておりその 内容は本明細書に全て包含されるものである。