明 細 書
HHV— 6または HHV— 7由来の組換ウィルスベクター、その製造方法、そ れを用いた宿主細胞の形質転換方法、それにより形質転換された宿主細胞およ びそれを用いた遺伝子治療方法
技術分野
[0001] 本発明は、組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターに関する。さらに詳しくは、本 発明は、ヘルぺスウィルスに属する HHV— 6、 HHV— 7ウィルス由来の組換ウィルス および組換ウィルスベクターに関する。
[0002] また、本発明は、上記の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターの製造方法に関 する。さら〖こ、本発明は、上記の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターを用いた宿 主細胞の形質転換方法に関する。そして、本発明は、上記の組換ウィルスおよび組 換ウィルスベクターにより形質転換された宿主細胞に関する。カロえて、本発明は、上 記の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターを用いた遺伝子治療方法に関する。 背景技術
[0003] 近年、分子生物学や分子遺伝学などにおける知識の蓄積やさまざまな技術開発に より生命科学は大きく発展し、生命現象に関して多くの情報が得られるようになつてき ている。
[0004] そのため、現在、生命科学の種々の分野にぉ 、て活発な研究開発が行われて!/、る 。これらの中でも、遺伝子機能の解析は大きな比重を占めており、単離した遺伝子を 細胞や生物個体に導入するためのさまざまな技術やそのためのベクターが開発され ている。
[0005] 医療などへの応用を目的として、哺乳類の細胞への遺伝子導入に用いられるベタ ターも数多く開発されている。これらのベクターの中でも、最近はウィルスを利用した ベクター(ウィルスベクター)が注目されて 、る。
[0006] ウィルスベクターは、いくつかの公知のベクターの中でも、外来遺伝子をタンパク質 として発現され得るように細胞に導入するのに有用なものである。ウィルスベクターの 中心要素は、ウィルスが本来持っている感染 (増殖感染、潜伏感染、流産感染を含
む)という性質を利用して、外来遺伝子を感染細胞に導入し、プロモーター配列のコ ントロール下である外来遺伝子により、形質を導入することにある。
[0007] 既知の形質導入技術としては、非ウィルス的な方法も用いられて ヽる。たとえば、遊 離 DNAとしての標的遺伝子構築体の単なる添加、標的 DNAと標的細胞への DNA の取込みのためにデザインされた特異的なタンパク質との複合体とのインキュベーシ ヨン、ならびにリボソームまたはその他の脂質を基礎とする感染遺伝子の中に封入さ れた標的 DNAとのインキュベーションなどの技術が用いられている。し力し、これらの 非ウィルス的な形質導入技術は、導入効率が低い傾向があり、導入された遺伝子の 発現効率も低 、場合が多 、。
[0008] さらに、既知の形質導入技術としては、必須の標的遺伝子を含むように操作され、 かつ標的細胞に感染でき、それゆえ細胞の中に標的遺伝子を発現できる状態で運 び込む組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターの利用が実施されて 、る。多種多 様なウィルス、たとえばレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウィルスがこ の目的のために利用されている。し力し、これらのウィルスには以下の欠点が認めら れる。
[0009] たとえば、レトロウイルスは本来発癌ウィルスであり、実際に遺伝子治療にともなう発 癌性が指摘されている。さらに、導入できる遺伝子が小さぐまた遺伝子を発現するこ とができる細胞の種類が限られる点が挙げられる。
[0010] アデノウイルスは、遺伝子治療などで使用した場合、アデノウイルスに対する強 ヽァ レルギ一反応が起きる場合があり、実際に遺伝子治療にともなう死亡例が確認されて いる。さらに、血液細胞に対する遺伝子導入の効率が悪ぐベクターとして用いること が困難であることが挙げられる。
[0011] アデノ随伴ウィルスは、形質導入できる遺伝子の大きさが小さぐさらに遺伝子の発 現効率が悪い欠点をもつ。また、アデノ随伴ウィルスのベクター作製は困難であり、 宿主の遺伝子に組み込まれるので発癌性が否定できない点が挙げられる。
[0012] ヘルぺスウィルス科のウィルスは、主としてヒトに感染するものだけで、現在 8種類 同定されている。ヘルぺスウィルスは大型の DNAウィルスで、主としてその進化の系 統榭に従って、 な、 β、 γの 3亜科に分類され、亜科ごとに共通した生物学的性質を
持つ。たとえば、 α—へルぺスウィルスは神経細胞で潜伏感染、再活性化を生じる神 経向性のウィルスで、 γ—へルぺスウィルスは腫瘍原性を持つ。
[0013] ヒトの 13ヘルぺスウィルスには、ヒトサイトメガロウィルス(HCMV:ヒトヘルぺスウィル ス 5、 HHV-5)、ヒトヘルぺスウィルス 6 (HHV-6)およびヒトヘルぺスウィルス(ΗΗ V-7)が属している。
[0014] 特に HHV— 6および HHV— 7は、発現する疾患の症状が穏やかであり(たとえば、 非特許文献 1参照。)、遺伝子治療に用いるウィルスベクターの候補として注目され ている (たとえば、非特許文献 2参照。 ) 0
[0015] ヘルぺスウィルス、特に HHV— 6および HHV— 7を組換ウィルスまたは組換ウィル スベクターとして用いた場合、病原性が低いことをはじめ、 Τ細胞やマクロファージな どの血液細胞に遺伝子を形質導入しゃす!/ヽ、比較的大きな遺伝子を形質導入でき る、といった利点が考えられる。
[0016] さらに、 HHV— 6を利用した組換ウィルスまたは組換ウィルスベクターを利用した場 合、他のベクターでは難 、マクロファージへの遺伝子の形質導入が可能であること 、マクロファージに潜伏感染状態で遺伝子を導入できるため、アデノウイルスに見ら れるアレルギー症状を引き起こさないこと、といった利点が考えられる。
[0017] し力し、 HHV— 6または HHV— 7由来の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクター の作製は困難であり、従来の技術では作製することができな力つた。 HHV— 6および HHV— 7の組換が困難であった原因としては、技術的な要因に加え、 HHV— 6およ び HHV— 7に備わる遺伝子の性質に由来すると考えられる。
[0018] HHV— 6および HHV— 7の遺伝子の大きさは HCMVよりも小さぐ HCMVで知ら れて 、るウィルス増殖に不必要な遺伝子がほとんど含まれて 、な 、ことが知られて!/ヽ る (たとえば、非特許文献 3および非特許文献 4参照。 ) 0
[0019] 通常、相同組換法を用いてヘルぺスウィルスの組換ウィルスおよび組換ウィルスべ クタ一を作製する場合、 1つ以上の部位をー且破壊しなければならない。しかし、 HC MVの組換ウィルスの作製過程で従来使用されてきた組換可能な部位は、 HHV-6 および HHV— 7に必ずしも含まれな!/、ため、 HHV— 6および HHV— 7の組換ウィルス および組換ウィルスベクターを作製するためには、新 ヽ作製方法の開発が必要で
ある。
[0020] ヘルぺスウィルス由来のウィルスベクターとしては、ゲノムのプロモーター調節領域 のコントロール下で単純へルぺスウィルスゲノムの中に挿入され、それゆえ外来遺伝 子の発現のためのベクターを担う外来遺伝子が開示されている(たとえば、特許文献
1参照。;)。さらに、 DNA構築体、外来遺伝子の発現のために有用な構築体を含む プラスミドベクター、このベクターにより製造された組換ウィルスおよび関連の方法が 開示されている。しかしながら、これらの文献には、単純へルぺスウィルス 1型(HSV -1)ベクターおよびその作製方法にっ 、ての記載しかなぐ HHV— 6由来あるいは H HV-7由来のウィルスベクターに関する記載はな 、。
単純へルぺスウィルス 1型(HSV— 1)と HHV— 6または HHV— 7は、進化的には同じ 祖先力 発生している力 遺伝子の構造が全く異なり、互いの遺伝子配列の相同性 が低ぐベクターの作成や遺伝子治療を行なう際に重要である細胞指向性 (cellular tropism)が全く異なる。このため、 HHV— 6または HHV— 7由来ベクターの作成には、 単純へルぺスウィルス 1型(HSV— 1)ベクターとは異なった技術開発が必要である。
[0021] また、ヘルぺスウィルスベクターを利用した結果、たとえば造血細胞系の悪性細胞 を形質転換し、かかる細胞における外来性遺伝子材料の発現と誘導するための方法 も開示されている(たとえば、特許文献 2参照)。しかし、単純へルぺスウィルス 1型に 関する記述しかなぐ HHV— 6または HHV— 7由来のベクターまたは作製方法は開 示されておらず、遺伝子治療に伴う副作用につ ヽての記載もな 、。
[0022] 〔特許文献 1〕欧州特許第 176170号
〔特許文献 2〕特表平 11 513565号公報
〔非特許文献 l〕Clin. Microbiol. Rev. , 1997年 7月,第 10卷,第 3号, p. 5 21-567
〔非特許文献 2〕J. Virol. Meth. , 2002年 9月,第 105卷,第 2号, p. 331— 3 41
〔非特許文献 3〕Yuji Isegawa et. al, J. Virol. , 1999年 10月,第 73卷,第 10号, p. 8053-8063
〔非特許文献 4〕 A. George Megaw et. al, Virology, 1998年,第 244号,
p. 119-132
本発明の課題は、外因性ヌクレオチド配列を挿入することができ、哺乳類の宿主細 胞に容易に導入することができ、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿 主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低ぐ哺乳類の遺伝子 治療に好適に用いることができる、ウィルスベクターを提供することである。
[0023] 本発明の他の課題は、外因性ヌクレオチド配列を挿入することができ、哺乳類の宿 主細胞に容易に導入することができ、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子 を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低ぐ哺乳類の遺 伝子治療に好適に用いることができる、ウィルスベクターを容易かつ安全に製造可能 な製造方法を提供することである。
[0024] 本発明の別の課題は、哺乳類の宿主細胞に容易に外因性ヌクレオチド配列が導 入でき、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させるこ とができ、病原性を有する危険性を低く抑えることができ、哺乳類の遺伝子治療に好 適に用いることができる、ウィルスベクターによる宿主細胞の形質転換方法を提供す ることである。
[0025] 本発明のさらに別の課題は、ウィルスベクターにより形質転換されて外因性ヌクレオ チド配列が挿入されており、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細 胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低ぐ遺伝子治療および細 胞治療に好適に用いることのできる、形質転換宿主細胞を提供することである。
[0026] 本発明のもう一つの課題は、哺乳類の宿主細胞に容易に外因性ヌクレオチド配列 が導入でき、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現さ せることができ、病原性を有する危険性を低く抑えることができる、ウィルスベクターを 用いた哺乳類の遺伝子治療方法を提供することである。
[0027] 本発明のさらにもう 1つの課題は、従来の方法では効率よく遺伝子導入できなかつ た場合や安定な遺伝子発現を得ることができな力つた場合および発癌が引き起こる 危険性が高カゝつた場合に対して、これまでに使用されてなカゝつたウィルスを利用した 遺伝子治療法、組換えウィルスおよび組換えウィルスベクターを開発することである。 発明の開示
[0028] 本発明者は、上記の課題を解決するためには、発現する疾患の症状が非常に穏 やかであり、健康な成人の体内にほぼ 100%の割合で感染 '潜伏している HHV— 6 または HHV— 7を、遺伝子治療に用いるウィルスベクターとして好適に用いることが できるようにすればよ!、との着想を得、鋭意研究に励んだ。
[0029] 具体的には、本発明者は、相同組換技術によって組換ウィルスを作るために、薬剤 耐性遺伝子に置換することができる欠失可能領域を見出すベぐ後述する実施例に 示す実験を試行錯誤のもと実施した。
[0030] その結果、本発明者は、下記の実施例に記載するように、ヒトヘルぺスウィルス 6 (H HV-6)およびヒトヘルぺスウィルス 7 (HHV-7)の複製と潜伏感染のために必須で はな 、ため欠失可能な遺伝子クラスターを発見した。
[0031] この発見に基づき、本発明者は、 HHV— 6または HHV— 7の特定領域に外来ヌクレ ォチド配列を挿入しても、 HHV— 6または HHV— 7のウィルスベクターとしての機能 は失われないことを見出し、従来の技術では作製が非常に困難であった HHV— 6ま たは HHV— 7由来の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターの作製を可能にし、本 発明を完成した。
[0032] すなわち、本発明の組換ウィルスベクターは、 HHV— 6由来の組換ウィルスベクタ 一であって、 HHV— 6の U2、 U3、 U4、 U5、 U6、 U7、 U8、 U24および U25領域力 らなる群より選ばれる少なくとも 1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を 備える、組換ウィルスベクターである。
[0033] ここで、この部位は、配列番号 1で表される HHV— 6の DNA配列におけるヌクレオ チド番号 9041— 17446または 36250— 37775の範囲に存在すること力好まし!/、。 また、本発明の組換ウィルスベクターは、組換ウィルス H6R28または H6R24— 25か らなることが望ましい。
[0034] そして、本発明の組換ウィルスベクターは、 HHV— 7由来の組換ウィルスベクター であって、 HHV— 7の U2、 U3、 U4、 U7、 U8、 U24、 U24aまたは U25領域からな る群より選ばれる少なくとも 1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を備え る、組換ウィルスベクターであってもよい。
[0035] ここで、この部位は、配列番号 2で表される HHV— 7の DNA配列におけるヌクレオ
チド番号 10558— 18483または 34744— 36118の範囲に存在することが好ましい 。また、本発明の組換ウィルスベクターは、組換ウィルス H7R28または H7R24— 25 力もなることが望ましい。
[0036] そして、この外因性ヌクレオチド配列は、 DNA配列および Zまたは RNA配列であ つてもよい。
[0037] また、この外因性ヌクレオチド配列は、 bacterial artificial chromosome (BA C)、サイト力イン遺伝子、リボザィム、 interference RNA、免疫学的補助刺激分子 、シグナル伝達分子、酵素およびィ匕学誘引物質カゝらなる群より選ばれる 1種以上をコ ードするヌクレオチド配列であってもよ 、。
[0038] さらに、この外因性ヌクレオチド配列は、哺乳類の遺伝子治療に用いられるための 配列であってもよい。そして、この外因性ヌクレオチド配列は、マーカー遺伝子をコー ドするヌクレオチド配列を含んでもょ 、。
[0039] 本発明の組換ウィルスベクターの製造方法は、 HHV— 6由来の組換ウィルスベクタ 一の製造方法であって、 HHV— 6の U2、 U3、 U4、 U5、 U6、 U7、 U8、 U24および U25領域力もなる群より選ばれる少なくとも 1領域に相当する部位に、外因性ヌクレ ォチド配列を挿入するステップを備える、組換ウィルスベクターの製造方法である。
[0040] ここで、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号 1で表される HHV— 6の DNA配列におけるヌクレオチド番号 9041— 17446または 36250— 37 775の範囲に外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含むことが好ましい。
[0041] また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、それぞれ配列番号 3— 4 および 5— 6に示す配列のプライマーの組合せまたは配列番号 36— 37および 38— 39 に示す配列のプライマーの組合せを用いて増幅される DNA配列と、 HHV— 6の DN A配列との相同組換を行なうステップを含んでもよ!、。
[0042] そして、本発明の組換ウィルスベクターの製造方法は、 HHV— 7由来の組換ウィル スベクターの製造方法であって、 HHV— 7の U2、 U3、 U4、 U7、 U8、 U24、 U24a または U25領域力もなる群より選ばれる少なくとも 1領域に相当する部位に、外因性 ヌクレオチド配列を挿入するステップを備える、組換ウィルスベクターの製造方法であ つてもよい。
[0043] ここで、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号 2で表される HHV— 7の DNA配列におけるヌクレオチド番号 10558— 18483または 34744— 3 6118の範囲に外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもよ!、。
[0044] また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、それぞれ配列番号 30— 3 1および 34— 35に示す配列のプライマーの組合せまたは配列番号 40— 41および 42 43に示す配列のプライマーの組合せを用いて増幅される DNA配列と、 HHV— 7の DNA配列との相同組換を行なうステップを含んでもよ!、。
[0045] また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、正常かつ Zまたは臍帯 血由来の細胞内においてこの外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んで ちょい。
[0046] そして、本発明の宿主細胞の形質転換方法は、上記の組換ウィルスベクターによる 哺乳類の宿主細胞の形質転換方法であって、この組換ウィルスベクターにより、ヒト、 ヒト以外の霊長類および HHV— 6または HHV— 7の感染可能な宿主力 なる群より選 ばれる 1種以上の哺乳類由来のこの宿主細胞を形質転換するステップを備える、宿 主細胞の形質転換方法である。
[0047] ここで、この形質転換するステップは、この組換ウィルスベクターにより、 T細胞、マ クロファージ、末梢血単核球細胞、血液幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、繊維芽細 胞、グリア細胞、ァストロサイト、 CD4陽性 T細胞、 CD8陽性 T細胞、榭状細胞および ナチュラルキラー細胞力 なる群より選ばれる 1種以上のこの宿主細胞を形質転換す るステップを含んでもよい。
[0048] そして、本発明の形質転換宿主細胞は、上記の宿主細胞の形質転換方法により得 られる、形質転換宿主細胞である。また、本発明の形質転換宿主細胞は、哺乳類の 遺伝子治療方法に用いられてもよ ヽ。
[0049] さらに、この遺伝子治療は、ヒト免疫不全ウィルス (HIV)に対する易感染性細胞内 における HIVウィルス感染を予防するための遺伝子治療および Zまたは癌の免疫治 療のための遺伝子治療であってもよい。また、この宿主細胞は、この遺伝子治療を行 なう対象となる種類の哺乳類と同種の哺乳類由来の宿主細胞であってもよい。
[0050] そして、本発明の遺伝子治療方法は、ヒト以外の哺乳類の遺伝子治療方法であつ
て、上記の形質転換細胞をこの哺乳類へ投与するステップを備える、遺伝子治療方 法である。
[0051] あるいは、本発明の遺伝子治療方法は、ヒト以外の哺乳類の遺伝子治療方法であ つて、上記の組換ウィルスベクターにより、この哺乳類の体内の宿主細胞を 0. 01— 2 0の感染多重度 (MOI)で形質転換するステップを備える、遺伝子治療方法であって ちょい。
[0052] また、本発明の遺伝子治療方法は、さらにこの組換ウィルスベクターに備わる外因 性ヌクレオチド配列にコードされる遺伝子を発現させるステップを備えてもよい。
[0053] 本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十 分わ力るであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白にな るだろう。
図面の簡単な説明
[0054] [図 1]H6R28のゲノムの構造を表わす模式図である。
[図 2(A)]野生型(wt)ウィルス DNAと H6R28ウィルス DNAの U2領域と U8領域を挟 む PCR増幅を表わす電気泳動写真の図である。
[図 2(B)]図 2 (A)の増幅産物を制限酵素で消化した断片の電気泳動写真の図である
[図 2(C)]H6R28ウィルス DNAの EGFP— puroカセットの挿入位置を確認するための PCR増幅を表わす電気泳動写真の図である。
[図 2(D)]野生型(wt)ウィルス DNAと H6R28ウィルス DNAの U3— U7領域をそれ ぞれ増幅する PCR増幅を表わす電気泳動写真の図である。
[図 3(A)]H6R28を感染させた細胞における抗 HHV— 6モノクローナル抗体陽性細胞 の増加を示すグラフ図である。
[図 3(B)]H6R28を感染させた細胞の培養上清中のウィルス活性 (生存ウィルスの個 数)の変化を示すグラフ図である。
[図 4]H6R24—25のゲノムの構造を表わす模式図である。
[図 5(A)]H6R24— 25を感染させた細胞における抗 HHV— 6モノクローナル抗体陽性 細胞の増加を示すグラフ図である。
[図 5(B)]H6R24— 25を感染させた細胞の培養上清中のウィルス活性 (生存ウィルス の個数)の変化を示すグラフ図である。
[図 6(A)]H6R28を潜伏感染させた細胞における HHV-6DNA陽性細胞の割合を 示すグラフ図である。
[図 6(B)]H6R28を潜伏感染させた細胞における再活性ィ匕細胞の割合を示すグラフ 図である。
[図 7(A)]H6R28を潜伏感染させたマクロファージの蛍光顕微鏡像を表す画像である
[図 7(B)]プラスミド pU2— U8EGFP— puroをトランスフエタトした潜伏感染マクロファー ジの蛍光顕微鏡像を表す画像である。
圆 7(C)]再活性ィ匕誘導したマクロファージの蛍光顕微鏡像を表す画像である。
[図 7(D)]H6R28を感染させた CBMCsの蛍光顕微鏡像を表す画像である。
[図 7(E)]H6R28を感染させた Molt - 3細胞の蛍光顕微鏡像を表す画像である。
[図 7(F)]H6R28を感染させた HeLa細胞の蛍光顕微鏡像を表す画像である。
[図 8(A)]H6R28を感染させて!/、な!/、ナチュラルキラー細胞の EGFP発現を FACSで 調べた結果を示す図である。
[図 8(B)]H6R28を感染させたナチュラルキラー細胞の EGFP発現を FACSで調べた 結果を示す図である。
[図 8(C)]図 8 (A)および図 8 (B)の結果をまとめた図である。
[図 9]H6R28を感染させた感染させたァストロサイトの EGFPの発現を蛍光顕微鏡像 で観察した画像である。
[図 10]H6R28を感染させた CD4陽性 T細胞の EGFP発現を FACSで調べた結果を 示す図である。
[図 11]H6R28を感染させた CD8陽性 T細胞の EGFP発現を FACSで調べた結果を 示す図である。
[図 12]H6R28を感染させた榭状細胞の EGFP発現を FACSで調べた結果を示す図 である。
[図 13(A)]H6R28潜伏感染時の HCMVプロモーターの機能を調べるための 5,RA
CEの方法を示す模式図である。
[図 13(B)]5'RACEにより増幅された断片の電気泳動写真の図である。
[図 14]H7R28のゲノムの構造を表わす模式図である。
[図 15(A)]H7R28を感染させた細胞における抗 HHV— 7モノクローナル抗体陽性細 胞の増加を示すグラフ図である。
[図 15(B)]H7R28を感染させた細胞の培養上清中のウィルス活性 (生存ウィルスの個 数)の変化を示すグラフ図である。
[図 16]H7R24—25のゲノムの構造を表わす模式図である。
[図 17(A)]H7R24—25を感染させた細胞における抗 HHV— 7モノクローナル抗体陽 性細胞の増加を示すグラフ図である。
[図 17(B)]H7R24— 25を感染させた細胞の培養上清中のウィルス活性 (生存ウィルス の個数)の変化を示すグラフ図である。
[図 18]H7R28を感染させたマクロファージの EGFP発現を FACSで調べた結果を示 す図である。
[図 19]H7R28を感染させた CD4陽性 T細胞の EGFP発現を FACSで調べた結果を 示す図である。
[図 20]H7R28を感染させた榭状細胞の EGFP発現を FACSで調べた結果を示す図 である。
[図 21]H6R28 BACのゲノムの構造を表わす模式図である。
[図 22]H6R28 BACを感染させた Molt— 3細胞の蛍光顕微鏡像を表す画像である
[図 23]H7R28 BACのゲノムの構造を表わす模式図である。
[図 24]H7R28 BACを感染させた SupTl細胞の蛍光顕微鏡像を表す画像である。 発明を実施するための最良の形態
[0055] 以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
[0056] <定義 >
本明細書において、 HHV— 6とは、ヒトヘルぺスウィルス 6 (Human herpesvirus 6)の variant Aおよび Bを意味するものとする。
[0057] 本明細書において、 HHV— 7とは、ヒトヘルぺスウィルス 7 (Human herpesvirus 7)を意味するものとする。
[0058] 本明細書において、組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターとは、ウィルス遺伝子 に外来遺伝子を組み込んだもので、宿主細胞に感染させた時に、増殖性感染、潜伏 感染及び/または再活性化、流産感染の 、ずれかの状態をとるものとする。
[0059] 本明細書にぉ 、て、欠失可能領域とは、欠失してもウィルスの増殖性が完全には 失われないウィルス遺伝子上の領域を意味するものとする。
[0060] 本明細書にぉ 、て、外因性ヌクレオチド配列とは、本来そこに存在するべきウィル ス遺伝子以外の核酸の配列を意味するものとする。
[0061] 本明細書にぉ ヽて、潜伏感染とは、ウィルスがウィルス遺伝子を保持したまま、感 染性のウィルスの産生を停止することを意味するものとする。
[0062] 本明細書において、感染とは、ウィルスが細胞内に進入することを指し、増殖感染、 潜伏感染、流産感染を含むことを意味する。
[0063] 本明細書において、流産感染とは、細胞内に進入したウィルス力 感染性のウィル スを産生しない状態で、ウィルス遺伝子を積極的には保持しない状態を意味する。
[0064] 本明細書において、遺伝子治療とは、外来遺伝子を細胞内に導入することによつ て、細胞の形質を転換することによる治療を指し、体外に取出した細胞を遺伝子導入 によって形質転換した後に、生体に戻す狭義の細胞治療や、感染性のウィルスを体 内の細胞に感染させて、産生されたウィルスによる宿主細胞の修飾を期待する狭義 のウィルス治療を含むことを意味する。
[0065] < HHV-6由来の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクター >
本発明の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターは、 HHV— 6由来の組換ウィル スおよび組換ウィルスベクターであって、 HHV— 6の U2、 U3、 U4、 U5、 U6、 U7、 U8、U24および U25領域力もなる群より選ばれる少なくとも 1領域に相当する部位 に、外因性ヌクレオチド配列を備える、組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターであ る。
[0066] HHV— 6の U2は、配列番号 1に示す HHV— 6のヌクレオチド番号 10768 (開始)一 9467 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、 HCMV
の US22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
[0067] HHV— 6の U3は、配列番号 1に示す HHV— 6のヌクレオチド番号 12051 (開始)一
10891 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、 HCM
Vの US22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
[0068] HHV— 6の U4は、配列番号 1に示す HHV— 6のヌクレオチド番号 13883 (開始)一
12276 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能は 未知である。
[0069] HHV— 6の U5は、配列番号 1に示す HHV— 6のヌクレオチド番号 15333 (開始)一 14002 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能は 未知である。
[0070] HHV— 6の U6は、配列番号 1に示す HHV— 6のヌクレオチド番号 15395 (開始)一 15652 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能は 未知である。
[0071] HHV— 6の U7は、配列番号 1に示す HHV— 6のヌクレオチド番号 16802 (開始)一
15678 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、 HCM
Vの US22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
[0072] HHV— 6の U8は、配列番号 1に示す HHV— 6のヌクレオチド番号 18041 (開始)一
16806 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、 HCM
Vの US22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
[0073] HHV— 6の U24は、配列番号 1に示す HHV— 6のヌクレオチド番号 36616 (開始) 一 36350 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能 は未知である。
[0074] HHV— 6の U25は、配列番号 1に示す HHV— 6のヌクレオチド番号 38770 (開始) 一 37883 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、 HC MVの US22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
[0075] ここで、 HHV— 6の上記の部位は、配列番号 1で表される HHV— 6の DNA配列に おけるヌクレ才チド番号 9041— 17446または 36250— 3777の範囲に存在する咅 位であってもよ 、。後述する実施例にお 、て欠失可能であることが示唆されて 、る H
HV— 6の U2— U8がヌクレオチド番号 9041— 17446の範囲に含まれ、 U24— U25 がヌクレオチド番号 36250— 3777の範囲に含まれるからである。
[0076] また、 HHV— 6の上記の部位は、配列番号 1で表される HHV— 6の DNA配列にお けるヌクレ才チド番号 10216— 16547または 36250— 37775の範囲に存在する咅 位であってもよい。この範囲については、後述する実施例において前者は欠失可能 である事力 後者は組み換え可能であることが実験的に確認されているからである。
[0077] これらの部位に存在する制限酵素切断部位を適当な条件のもと市販の制限酵素に て切断し、相補的な末端配列を有する外因性ヌクレオチドと混合して市販のリガーゼ により適当な条件でライゲーシヨンすることにより、これらの部位に容易に所望の外因 性ヌクレオチドを挿入することができる。
[0078] なお、 US22ファミリー遺伝子の機能は、 HHV— 6、 HHV— 7と同じ 13 ヘルぺスゥ ィルスに属するヒトサイトメガロウィルスやマウスサイトメガロウィルスに関しては、少し 判っている力 HHV— 6および HHV— 7に関しては全く未知である。このため、 HHV —6および HHV— 7の US22ファミリー遺伝子についての増殖や潜伏に関する機能は 本発明にお ヽてはじめて機能解析が試みられたものである。
[0079] また、 HHV— 6および HHV— 7の US22ファミリー遺伝子は、機能などが確定して!/ヽ ないアミノ酸配列上の仮想的なモチーフを用いた分類に過ぎず、このファミリーに属 すること力ら、何らかの機能が予測されるわけではない。さらに、 HHV— 6および HH V— 7とサイトメガロウィルスなどの相同するタンパク質に高 、アミノ酸ホモロジ一の存 在も認められない。
[0080] < HHV-7由来の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクター >
本発明の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターは、 HHV— 7由来の組換ウィル スおよび組換ウィルスベクターであって、 HHV— 7の U2、 U3、 U4、 U7、 U8、 U24、 U24aおよび U25領域力もなる群より選ばれる少なくとも 1領域に相当する部位に、 外因性ヌクレオチド配列を備える、組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターであって ちょい。
[0081] HHV— 7の U2は、配列番号 2に示す HHV— 7のヌクレオチド番号 11637 (開始)一 10558 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、 HCM
Vの US22遺伝子ファミリーである。
[0082] HHV— 7の U3は、配列番号 2に示す HHV— 7のヌクレオチド番号 12953 (開始)一
11799 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、 HCM
Vの US22遺伝子ファミリーである。
[0083] HHV— 7の U4は、配列番号 2に示す HHV— 7のヌクレオチド番号 14603 (開始)一
12975 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、 U7の ェキソン 2と関連のある遺伝子である。
[0084] HHV— 7の U7のェキソン 1 (別名 U5)は、配列番号 2に示す HHV— 7のヌクレオチ ド番号 17324 (開始)一 16348 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(
ORF)であって、 HCMVの US22遺伝子ファミリーと共通のモチーフをもつ。
[0085] HHV— 7の U7のェキソン 2 (別名 U7)は、配列番号 2に示す HHV— 7のヌクレオチ ド番号 16266 (開始)一 14628 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(
ORF)であって、 U4と関連のある遺伝子である。
[0086] HHV— 7の U24は、配列番号 2に示す HHV— 7のヌクレオチド番号 34992 (開始) 一 34744 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機能 不明である。
[0087] HHV— 7の U24aは、配列番号 2に示す HHV— 7のヌクレオチド番号 35166 (開始 )一 34996 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、機 能不明である。
[0088] HHV— 6の U25は、配列番号 2に示す HHV— 7のヌクレオチド番号 36118 (開始) 一 35156 (終了)にコードされるオープンリーディングフレーム(ORF)であって、 HC MVの US22遺伝子と共通のモチーフをもつ。
[0089] ここで、 HHV— 7の上記の部位は、配列番号 2で表される HHV— 7の DNA配列に おけるヌクレオチド番号 10558— 18483または 34744— 36118の範囲に存在する 部位であってもよ 、。後述する実施例にお 、て欠失可能であることが示唆されて!、る HHV— 7の U2、 U3、 U4、 U7および U8がヌクレオチド番号 10558— 18483の範 囲に含まれ、 U24、 U24aおよび U25がヌクレオチド番号 34744— 36118の範囲に 含まれる力 である。
また、 HHV— 7の上記の部位は、配列番号 2で表される HHV— 7の DNA配列におけ るヌクレオチド番号 11631— 17221または 34744— 36118の範囲に存在する部位 であってもよい。この範囲については、後述する実施例において前者は欠失可能で ある事力 後者は組み換え可能であることが実験的に確認されている力もである。
[0090] これらの部位に存在する制限酵素切断部位を適当な条件のもと市販の制限酵素に て切断し、相補的な末端配列を有する外因性ヌクレオチドと混合して市販のリガーゼ により適当な条件でライゲーシヨンすることにより、これらの部位に容易に所望の外因 性ヌクレオチドを挿入することができる。
[0091] <外因性ヌクレオチド配列 >
上記の外因性ヌクレオチド配列は、 DNA配列および Zまたは RNA配列であっても よい。 DNA配列はゲノム DNA配列であってもよぐ cDNA配列であってもよい。
[0092] さらに、この外因性ヌクレオチド配列は、 bacterial artificial
chromosome (BAC)、サイト力イン遺伝子、リボザィム、 interference RNA、 免疫学的補助刺激分子およびィ匕学誘引物質力 なる群より選ばれる 1種以上をコー ドするヌクレオチド配列であってもよ 、。
[0093] そして、この外因性ヌクレオチド配列は、哺乳類の遺伝子治療に用いられるための 配列であってもよい。また、この外因性ヌクレオチド配列は、哺乳類の腫瘍治療およ び Zまたは免疫治療において有用な免疫調節タンパク質をコードするヌクレオチド配 列であってもよい。
[0094] さらに、この外因性ヌクレオチド配列は、マーカー遺伝子をコードするヌクレオチド 配列を含んでもよい。そして、このマーカー遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子であって ちょい。
[0095] <組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターの製造方法 >
本発明の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターの製造方法は、 HHV— 6由来 の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターの製造方法であって、 HHV— 6の U2、 U 3、 U4、 U5、 U6、 U7、 U8、 U24および U25領域からなる群より選ばれる少なくとも 1領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを備える、組 換ウィルスおよび組換ウィルスベクターの製造方法である。
[0096] ここで、上記の外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、上記の部位に存在 する制限酵素切断部位を適当な条件のもと市販の制限酵素にて切断するステップと 、上記のようにして切断されたウィルスベクターを相補的な末端配列を有する外因性 ヌクレオチドと混合して市販のリガーゼにより適当な条件でライゲーシヨンするステツ プと、を含むことが好ましい。このようにして市販の制限酵素およびリガーゼにより、こ れらの部位に容易に所望の外因性ヌクレオチドを挿入することができるからである。
[0097] ここで、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号 1で表される HHV— 6の DNA配列におけるヌクレオチド番号 9041— 17446または 36250— 37 775の範囲にこの外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもょ 、。後述 する実施例において欠失可能であることが示唆されている HHV— 6の U2— U8がヌ クレオチド番号 9041— 17446の範囲に含まれ、 U24— U25がヌクレオチド番号 36 250— 37775の範囲に含まれる力らである。
[0098] また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号 1で表される H HV— 6の DNA配列におけるヌクレオチド番号 10216— 16547または 36250— 377 75の範囲にこの外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもよ!、。この範 囲については、後述する実施例において前者が欠失可能で後者が組み換え可能で あることが実験的に確認されているからである。
[0099] また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、それぞれ表 1に示す配列 番号 3— 4および 5— 6に示す配列のプライマーの組合せまたは配列番号 36— 37およ び 38— 39に示す配列のプライマーの組合せを用いて増幅される DNA配列と、 HHV — 6の DNA配列との相同組換を行なうステップを含んでもよ!、。
本発明の組換ウィルスおよぴ組換ウィルスベクターの製造方法は、 HHV— 7由来 の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターの製造方法であって、 HHV— 7の U2 U 3 U4 U7 U8 U24 U24aおよび U25領域力もなる群より選ばれる少なくとも 1
領域に相当する部位に、外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを備える、組換 ウィルスおよび組換ウィルスベクターの製造方法であってもよい。
[0101] ここで、上記の外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、上記の部位に存在 する制限酵素切断部位を適当な条件のもと市販の制限酵素にて切断するステップと 、上記のようにして切断されたウィルスベクターを相補的な末端配列を有する外因性 ヌクレオチドと混合して市販のリガーゼにより適当な条件でライゲーシヨンするステツ プと、を含むことが好ましい。このようにして市販の制限酵素およびリガーゼにより、こ れらの部位に容易に所望の外因性ヌクレオチドを挿入することができるからである。
[0102] ここで、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号 2で表される HHV— 7の DNA配列におけるヌクレオチド番号 10558— 18483または 34744— 3 6118の範囲に外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもょ 、。後述す る実施例において欠失可能であることが示唆されている HHV— 7の U2、 U3、 U4、 U7および U8がヌクレオチド番号 10558— 18483の範囲に含まれ、 U24、 U24aお よび U25がヌクレオチド番号 34744— 36118の範囲に含まれるからである。
また、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、配列番号 2で表される HH V— 7の DNA配列におけるヌクレオチド番号 1163— 17221または 34744— 36118 の範囲にこの外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んでもょ 、。この範囲 につ 、ては、後述する実施例にお!、て前者が欠失可能で後者が組み換え可能であ ることが実験的に確認されている力 である。
[0103] なお、この外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップは、正常かつ Zまたは臍帯 血由来の細胞内において前記外因性ヌクレオチド配列を挿入するステップを含んで もよい。ここで、従来公知の組換ウィルスベクターの構築に用いられるアデノウイルス は、腎臓の癌細胞由来の HEK293と 、う細胞株内でなければ組換ウィルスの構築 が困難であるという欠点を有する力 本発明の組換ウィルスベクターは、正常細胞内 にお 、て、好ましくは正常な臍帯血由来の細胞内にぉ 、て構築することができると ヽ ぅ禾 IJ点がある。
[0104] <宿主細胞の形質転換方法 >
本発明の宿主細胞の形質転換方法は、上記の組換ウィルスおよび組換ウィルスべ
クタ一による哺乳類の宿主細胞の形質転換方法であって、上記の組換ウィルスおよ び組換ウィルスベクターにより上記の宿主細胞を 0. 01— 20の感染多重度(MOI)で 形質転換するステップを備える、宿主細胞の形質転換方法である。
[0105] ここで、この形質転換するステップは、上記の組換ウィルスおよび組換ウィルスべク ターにより、ヒト、ヒト以外の霊長類および HHV— 6または HHV— 7の感染可能な宿主 力 なる群より選ばれる 1種以上の哺乳類由来の宿主細胞を形質転換するステップ を含んでもよい。
[0106] また、この形質転換するステップは、上記の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクタ 一により、 T細胞、マクロファージ、末梢血単核球細胞、血液幹細胞、肝細胞、血管 内皮細胞、繊維芽細胞、グリア細胞、ァストロサイト、 CD4陽性 T細胞、 CD8陽性 T細 胞、榭状細胞およびナチュラルキラー細胞力 なる群より選ばれる 1種以上のこの宿 主細胞を形質転換するステップを含んでもょ ヽ。
ここで、これらの細胞は、従来のベクターでは導入効率や発現などに問題があつたが
、本発明の組換ウィルスベクターを用いることにより、これらの細胞にも外来遺伝子を 導入して発現させることが可能になる利点がある。
[0107] さらに、この形質転換するステップは、宿主の体外(ex vivo)または体内(in vivo
)であってもよい。
[0108] <形質転換宿主細胞 >
本発明の形質転換宿主細胞は、上記の宿主細胞の形質転換方法により得られる 形質転換宿主細胞である。
[0109] ここで、本発明の形質転換宿主細胞は、哺乳類の遺伝子治療方法に用いられても よい。また、この遺伝子治療は、ヒト免疫不全ウィルス (HIV)に対する易感染性細胞 内における HIVウィルス感染を予防するための遺伝子治療および Zまたは癌の免疫 治療のための遺伝子治療であってもよ 、。
[0110] さらに、この宿主細胞は、この遺伝子治療を行なう対象となる種類の哺乳類と同種 の哺乳類由来の宿主細胞であってもよい。
[0111] <遺伝子治療方法 >
本発明の遺伝子治療方法は、ヒト以外の哺乳類の遺伝子治療方法であって、上記
の形質転換細胞をこの哺乳類へ投与するステップを備える、遺伝子治療方法である
[0112] 本発明の遺伝子治療方法は、遺伝子治療をはじめウィルス治療および細胞治療方 法であってもよい。細胞治療とは、遺伝子導入によって形質転換した細胞を患者に 投与する治療方法である。ウィルス治療とは、感染性があって、ヒトの体内で増殖す ることを前提としたウィルスを患者に投与する治療方法である。
[0113] 本発明の遺伝子治療方法は、ヒト以外の哺乳類の遺伝子治療方法であって、上記 の組換ウィルスおよび組換ウィルスベクターにより、この哺乳類の体内の宿主細胞を 0. 01— 20の感染多重度 (MOI)で形質転換するステップを備える、遺伝子治療方 法であってもよい。
[0114] 本発明の遺伝子治療方法は、さらにこの組換ウィルスおよび組換ウィルスベクター に備わる外因性ヌクレオチド配列にコードされる遺伝子を発現させるステップを備え てもよい。
[0115] 以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定され るものではない。
[0116] なお、下記の実施例は、インフォームド 'コンセントの条件を満たした上で、本研究 に参加して 、る献血者力も得られた試料を用いて実施した。
[0117] < HHV— 6の組換ウィルスベクター H6R28の構築 >
ヒトヘルぺスウィルス 6 (HHV-6)の U3— U7遺伝子クラスターを、ヒトサイトメガロウ ィルスの主要な即時型ェンハンサ一一プロモーター(MIEP)の制御下にある増強さ れた緑色: ¾:光タンノ ク質 (enhanced green fluorescent protein :EGFP)と、 S V40初期プロモーターの制御下にあるピューロマイシン耐性遺伝子と、を含む遺伝 子カセット(EGFP— puroカセット)に置換した、組換えウィルス H6R28を構築した。 相同組換によって EGFP— puroカセットを HHV— 6ゲノムに挿入するために、ウィル スのゲノムの約 1キロベース(kb)の部分がカセット(図 1)のそれぞれの末端に挿入さ れた。
[0118] 続いて、次の遺伝子クラスターについて調査した:ウィルスのゲノムで繰返し存在す る DR2— DR7遺伝子、 U95、ウィルスの複製において欠失可能であることが知られ
て!ヽる murineサイトメガロウィルス(MCMV)の即時型(IE) 2遺伝子の位置の同族 体および U3-U7遺伝子である。それらの遺伝子について、本発明者は、 U3-U7 遺伝子を EGFP— puroに置換しても複製能を有するウィルスが得られることに気付い た。
[0119] 以下に具体的な構築手順を説明する。
[0120] 図 1は、組換えウィルス H6R28の構造を表わす模式図である。
[0121] 図 1においては、最上部に HHV— 6B HST株ゲノムの地図を示し、その下(中段) に U1— U9領域を拡大して示して 、る。
[0122] 中段に灰色三角印で示された U3— U7の ORFを EGFP— puroカセットによって置 換したものが H6R28である。
[0123] 下段は、 EGFP— puroカセットの両端に相同組換えに利用する U2DNA断片およ び U8DNA断片を挿入した相同組換え用プラスミド pU2— U8 EGFP— puroを表す
[0124] 左右向きの短い矢印はプライマーのアニーリング位置を示し、上下向きの短い矢印 は制限酵素認識部位を示す。破線の矢印は増幅断片または消化された断片の大き さを表す。
[0125] EGFP— puroカセットの EGFP遺伝子および MIEPは、 pEGFP— CI (CLONTEC H)のヌクレオチド番号 8— 1640に由来する。 Pstlサイトを含む pEGFP— C1のマル チクロ一-ングサイトは除去されて 、る。
[0126] EGFP— puroカセットのピューロマイシン N—ァセチルー転移酵素遺伝子(pac)と SV40即時型プロモーター遺伝子は、 pPUR (CLONTECH)のヌクレオチド番号 408— 1392に由来する。
[0127] まず、プライマー U2 Xbalと U2 Aflllとを用いた PCRにより U2遺伝子を増幅し、 プライマー U8 BamHIと U8 EcoRIとを用いた PCRにより U8遺伝子を増幅した。 増幅断片を制限酵素処理した後、それぞれ EGFP— puroカセットの両端に挿入し、 p U2-U8 EGFP— puroを構築した。
[0128] 上記 pU2— U8 EGFP— puroをフイトヘムァグルチュン(PHA)で刺激した末梢血 液単核細胞(PBMCs)中に導入した。プラスミドの導入は、 Nucleofector TM el
ectroporator (Amaxa Bio systems^ドイツ)を用い、推奨されるプロトコ一ノレにし たがって行った。
[0129] すなわち、 5 X 106個の細胞を、プラスミド 5 μ gおよび Τ細胞用 Nucleofector (ΤΜ )溶液 100 μ 1と混和し、プログラム U— 14を用いた Nucleofector (ΤΜ)によりエレク トロポレーシヨンを行った。
[0130] 同時に、従来のエレクト口ポレーシヨン法も実施した。すなわち、 1 X 107個の細胞と 500 1の K— PBS溶液(30. 8mMの NaCl、 120. 7mMの KC1、 8. ImMの Na H
2
PO、 1. 46mMの KH POおよび 25mMの MgCl )中に懸濁した 50 μ gのプラスミ
4 2 4 2
ドと混合し、混合液をエレクト口ポレーシヨンキュベット(ジーンパルサーキュベット 4c m、 Bio-Rad)内に入れた。
[0131] エレクト口ポレーシヨンは、ジーンパルサー Π エレクト口ポレーシヨンシステム(Bio— Rad)を用いて、抵抗無限大、電圧 300V、キャパシタンス 960 μ F以下の条件下で 行った。 6時間後に、 HST株の HHV— 6variantBを、染多重度(MOI) O. 5で遠心 法により細胞に感染させた。
[0132] 10%牛胎児血清を添加した RPMI 1640培地で、 3日間、細胞を培養し、ウィルス ストックとして凍結した。組換ウィルスを増やすために、 PHAで刺激した臍帯血単核 細胞(CBMCs)に上記ウィルスストックを感染させて 1日間培養し、 7. 5 μ gZmlのピ ユーロマイシンで 1日間処理し、培地で洗浄し、 3日間 CBMCsと一緒に培養した。感 染細胞を新たなウィルスストックとして凍結した。
[0133] この選択処理を 5回繰り返し、その後、 96穴のプレートで培養された CBMCsを使 つて、限界希釈培養法により組換ウィルス (H6R28)をクローンィ匕した。
[0134] く HHV— 6の組換えウィルスベクター H6R28構築の確認 >
予想される領域の中に EGFP— puroカセットが挿入されたことを確認するために、 相同ヒンジ領域の外側の領域に設計されたプライマー (外側のプライマーセット: U2 R2-U8F2,内側のプライマーセット: U2R1— U8F1、図 1参照)を用いて、二重ネス ト PCRによりウィルスの DNAを増幅した。 PCRには KODプラス DNAポリメラーゼ( 東洋紡)を用いた。
[0135] 増幅産物を電気泳動に供した。ゲルは 0. 6%ァガロースゲルを用いた。結果を図 2
(A)に示した。野生型ウィルス (wt)の増幅産物は約 8. 5kbであり(レーン 1)、期待 値(図中の白色矢印)と一致した。また、 H6R28の増幅産物は約 5. Okbであり(レー ン 2)、期待値(図中の黒色矢印)と一致した。なお、 H6R28の 3つのクローンにおい て約 5. Okbの増幅産物が観察された。
[0136] 増幅断片は、部分的な配列決定によって確認された (資料を示さな ヽ)。組換ウイ ルス(H6R28)において 8. 5kbの増幅産物が検出されなかったことから、組換ウィル ス (H6R28)に野生型ウィルスが混入して ヽな 、ことが示された。
[0137] 上記増幅産物を制限酵素(Pstl、 Aflllおよび BamHI、図 1参照)で消化し、 1. 0 %ァガロースゲル電気泳動に供した。結果を図 2 (B)に示した。図中左端の白色矢 印は野生型ウィルスの消化断片の期待されるサイズを示す。図中右端の黒色矢印は H6R28の消化断片の期待されるサイズを示す。図 2 (B)から明らかなように野生型ゥ ィルス(レーン 3)および H6R28 (レーン 4一 6)の!、ずれも期待されるサイズのバンド が検出された。
[0138] 次に、 EGFP— puroカセットの挿入部位を確認した。すなわち、 H6R28の DNAを 铸型としてプライマー U2R1— EGFPprimおよびプライマー U8F1— PACprimを用 いてそれぞれ PCRを行い、増幅産物を 1. 0%ァガロースゲル電気泳動に供した。
[0139] 結果を図 2 (C)に示した。図中右端の黒色矢印は、プライマー U2R1— EGFPprim により増幅される断片の期待されるサイズ(1582bp)およびプライマー U8F1—PAC primにより増幅される断片の期待されるサイズ(1760bp)を示す。図 2 (C)から明ら かなように、プライマー U2R1— EGFPprimにより増幅された断片(レーン 1)およびプ ライマー U8Fl—PACprimにより増幅された断片(レーン 2)とも期待されるサイズの バンドが検出された。
[0140] さらに、 U3— U7遺伝子の異所性の発現の可能性を検討した。すなわち、 EGFP- puroカセットと置換されて欠失していると考えられる U3— U7遺伝子のそれぞれの O RFの増幅を試みた。 U3の増幅にはプライマーペア U3F1— U3R1、 U4の増幅には プライマーペア U4F1— U4R1、 U5の増幅にはプライマーペア U5F1— U5R1、 U6 の増幅にはプライマーペア U6F1— U6R1、 U7の増幅にはプライマーペア U7F1— U7R1をそれぞれ用いて、野生型ウィルスの DNAまたは H6R28の DNAを錶型とし
て PCRを行い、 1. 0%ァガロースゲル電気泳動に供した。
[0141] 結果を図 2 (D)に示した。図中左右端の黒色矢印は、各プライマーペアにより増幅 される断片の期待されるサイズを示す。 U3F— U3Rの大きさは、 1161bpであり、 U4 F— U4Rの大きさは、 1338bpであり、 U5F— U5Rの大きさは、 1275bpであり、 U6F — U6Rの大きさは、 171bpであり、 U7F— U7Rの大きさは、 1094bpである。
[0142] 図 2 (D)から明らかなように、野生型ウィルス(レーン 1一 5)では、各プライマーペア によりそれぞれ期待されるサイズの断片が増幅された力 H6R28 (レーン 6— 10)で は、増幅断片が検出されな力つた。
[0143] < HHV— 6の組換えウィルスベクター H6R28の増殖感染 >
本発明者は、独立した 3つの個別のエレクト口ポレーシヨンにより 3つの個別の H6R 28を作出して、 CBMCsで複製の動態を調べた。前述のように、ウィルス力価の測定 は CBMCsを用いて Asadaらの方法(H. Asada, et. al, J. Clin. Microbiol.
27:2204-2207, 1989)により行われた。 CBMCsに MOIO. 05の条件で感染させると 、 3つの H6R28クローンと wtウィルスとはウィルスの感染の拡大(図 3 (A) )およびゥ ィルス生産(図 3 (B) ) 1S 長 、時間にわたって類似の水準であった。
[0144] 図 3は、 H6R28の生産的感染を表わすグラフ図である。
[0145] 図 3 (A)は、 wtウィルスと H6R28に感染している細胞の増殖速度を示す。 CBMC 細胞は、感染多重度(MOI) O. 05において、 wtウィルスまたは H6R28の 3つの独 立したクローンに、組織培養感染投与量 50 (TCID50) Z細胞の量で投与されて感 染した。そして、糖タンパク質 Bと糖タンパク質 Hに対するモノクローナル抗体の混合 液に反応して 、る細胞の存在割合は、モノクローナル抗体を使って免疫蛍光抗体 (I FA)染色によって決定された。 wt (〇)、 H6R28クローン 1 (黒三角印)、クローン 2 ( 參)、クローン 3 (黒四角印)に感染している細胞の存在割合を示す。 3回の繰返し培 養の平均値が示される。
[0146] 図 3 (B)は、 wtウィルスと H6R28の増殖曲線を示す。
[0147] CBMCsは、上述のように感染させられ、感染細胞が示された時間に回収されて 8 0°Cで凍結された。子孫ウィルスは、 CBMCsにおいて IFA染色を使って力価測定し た。ウィルス力価は、 1ミリリットルあたりの TCID50として示された。 wt (口)、 H6R28
クローン 1 (黒三角印)、クローン 2 (參)およびクローン 3 (黒四角印)で感染した細胞 における力価を示す。 0日目における値が投与されたウィルスの力価を表す。 3回の 繰返し培養の平均値が示される。
[0148] 図 3 (A)および図 3 (B)に示した結果から、 H6R28は野生型ウィルスと同等の増殖 能力を保持していることが明ら力となった。すなわち、 U2— U8の部位に外来遺伝子 を挿入してもウィルスの増殖に影響を及ぼさないことが示された。
[0149] < HHV— 6の組換ウィルスベクター H6R24— 25の構築 >
HHV— 6の U24と U25を組み換え部位に使用した組み換えウィルス H6R24— 25 を構築した。
[0150] 図 4は、組換えウィルス H6R24— 25の構造を表わす模式図である。
[0151] 図 4においては、最上部に HHV— 6BHSTゲノムの地図を示し、その下(中段)に U
24— U25領域を拡大して示して!/、る。
[0152] 下段は、 EGFP— puroカセットの両端に相同組換えに利用する U24DNA断片お よび U25DNA断片を挿入した相同組換え用プラスミド pHHV— 6 U24-U25 EG
FP— IRES— puroを表す。
[0153] 左右向きの短い矢印はプライマーのアニーリング位置を示す。
[0154] 図中の数字 36250, 36980, 37775は、 HHV— 6HST株の塩基の番号を示す。
[0155] 前記の組換ウィルス H6R28よりも短 、組換え部位に遺伝子を挿入するために、 int ernal ribosomal entry site (IRES)を用いて挿入遺伝子を小型化した。
[0156] 構築手順は、相同組換えに利用する U24— U25遺伝子の増幅にプライマー U24
Spelと U25 EcoRIおよびプライマー U25 Mlulと U25 Kpnlを用いたことを除い て、上記 H6R28の構築手順と同様である。
[0157] また、 H6R24— 25構築の確認は、上記 H6R28構築の確認と同様に行い、同様の 結果を得た。なお、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
[0158] さらに、上記 H6R28と同様に、 H6R24— 25の細胞から細胞への広がりの効率およ び感染細胞でのウィルス産生の効率を検討した。なお、実験方法は上記 H6R28と 同じである。
[0159] 図 5 (Α)にウィルス抗原陽性細胞の増加を示した。また、図 5 (Β)にウィルスの増殖
曲線を示した。図中〇が野生型ウィルス、園が H6R24-25を表す。
[0160] 図 5 (A)および図 5 (B)に示した結果から、 H6R24— 25は野生型ウィルスと同等の 増殖能力を保持していることが明ら力となった。すなわち、 U24— U25の部位に外来 遺伝子を挿入してもウィルスの増殖に影響を及ぼさないことが示された。
[0161] 以上、 H6R28および H6R24—25のデータより、 HHV— 6では、 U3、 U4、 U5、 U
6、 U7、 U8、 U24、 U25が外来遺伝子の挿入部位として使用可能である事が判明 した。
[0162] <HHV— 6の組換ウィルスベクターの潜伏感染能力および再活性ィ匕効率 >
本発明者は次に潜伏感染を確立する能力、再活性ィ匕の効率に関し H6R28を用い て実験した。
[0163] 潜伏感染の確立を評価するために、末梢血液マクロファージに wtウィルスと H6R2 8を感染させた。 HHV— 6DNA陽性細胞の存在割合は Kondoらの方法 (J. Gen. Virol.72: 1401-1408, 1991、 J. Virol.77:2258-2264, 2003、 J. Virol.76:4145-4151, 2002)によりモニターされた。
[0164] 手短かに言えば、末梢血液マクロファージは、コラーゲンコートしたプラスチックプレ ート(住友ベークライト社 日本)で、 25%の馬血清を添カ卩した RPMI 1640培地を 用いて培養した。培養 7日目に HHV— 6をマクロファージに感染させ、さらに 4一 6週 の間培養した。感染しているマクロファージをプレートから剥がし、糖タンパク質 Bと糖 タンパク質 Hに対するモノクローナル抗体を使って、免疫蛍光抗体 (IFA)染色によつ て、ウィルスが複製をしていないことを確認した。
[0165] 細胞を段階希釈し(104— lcell/tube)、各チューブごとに DNAを分離した。なお、 1 希釈段階あたり 4本のチューブを使用した。ウィルス DNAは二重ネスト PCRによって 検出し(K Kondo, et. al, J. Infect. Dis. 167:1197-1200, 1993)、 HHV— 6DNA陽性 細胞の数は、 Reed— Muench法(Reed, L. J., and H. Muench, Am. J.
Hyg. 27:493, 1938)によって計算した。
[0166] 再活性化効率を検討するために、 Kondoらの方法 (J. Gen. Virol.72: 1401- 1408, 1991、 J. Virol.76:4145-4151, 2002)にしたがって、テトラデカノィルホルボール酢酸 塩 (TPA)処理によりウィルスの再活性ィ匕が誘導された。手短かに言えば、潜伏感染
細胞を培養皿力も剥がし、段階希釈し、未感染のマクロファージをフィーダ一レイヤ 一として共培養した。その後、細胞は TPA(20ngZml)で 7日間処理されて、 CBM Csと一緒に 7日間共培養された。ウィルスの再活性化の効率は Reed— Muench法( Reed, L. J., and H. Muench, Am. J. Hyg. 27:493, 1938)によって計算した。
[0167] 結果を図 6 (A)および図 6 (B)に示した。
図 6 (A)は、 HHV— 6の DNA陽性細胞の存在割合を示す。 HHV— 6の DNAが検 出される細胞の存在割合は、感染後 4週目と 6週目に調べられた。 wtウィルスと H6R 28の 3つのクローンの 3回の繰返し培養の平均値と標準偏差が示される。白色柱は、 野生型ウィルスを示し;灰色柱は、 H6R28を示す。
[0168] 図 6 (B)は、再活性化陽性細胞の存在割合を示す。ウィルスの再活性ィ匕が誘導さ れ、そして再活性ィ匕陽性細胞の存在割合が計算された。 wtウィルスと H6R28の 3つ のクローンの 3回の繰返し培養の平均値と標準偏差が示される。白色柱は、野生型ゥ ィルスを示し、灰色柱は、 H6R28を示す。
[0169] 図 6 (A)および図 6 (B)から明らかなように、 HHV— 6の DNA陽性細胞および再活 性ィ匕陽性細胞の割合は野生型ウィルスと H6R28との間に差は認められな力つた。し たがって、潜伏感染の確立と再活性ィ匕プロセスが U3— U7遺伝子の削除によって失 われないことが明ら力となった。
[0170] <HHV— 6組換ウィルスベクターの様々な細胞への導入 >
(1)マクロファージ、 CBMCsゝ Molt— 3、 HeLa
興味深いことに、 HHV— 6の潜伏感染の間に、本発明者は HCMVの主要な即時 型ェンハンサ一とプロモーター遺伝子(MIEP)によって促進される EGFPの発現を 認めることができな力つた(図 7 (A) )。他方、 EGFPの発現力 図 1に示したプラスミド pU2—U8EGFP—puroをトランスフエタトされた、潜伏感染して!/、るマクロファージ( 図 7 (B) )、再活性化 誘導マクロファージ(図 7 (C) )、生産的感染した CBMC細胞と Molt— 3細胞(図 7 (D)と 7 (E) )、流産感染した Hela細胞(図 7 (F) )で観察された。
[0171] 図 7は、種々のタイプの細胞の中の EGFP発現を表わす蛍光顕微鏡写真の図であ る。図 7においては、これらの写真は、培養生細胞が螢光性の照明の下で観察され た。
[0172] 07 (A)においては、 H6R28に潜在的に感染したマクロファージが示される。図 7 ( B)においては、図 1に示されるプラスミド pU2— U8 EGFP— puroがトランスフエタトさ れた、潜在感染しているマクロファージが示される(トランスフエクシヨンは、 Kondoら の方法 (J. Virol.77:2258-2264, 2003)でおこなった。;)。図 7 (C)においては、 7日間 にわたり 201¾7!111の丁?八処理をして、再活性ィ匕を誘導されたマクロファージが示さ れる。
[0173] 図 7 (D)においては、 H6R28で処理して感染させた CBMC細胞が示される。図 7 (
E)においては、 H6R28に感染している Molt— 3細胞が示される。図 7 (F)において は、 H6R28に感染して!/、る Hela細胞が示される。
[0174] これらの細胞は感染後 4週目(A— C)、感染後 2日目(E-F)に観察された。形質導 入された細胞は、形質移入後 1日目(B)に観察された。
[0175] (2)ナチュラルキラー(NK)細胞
H6R28の free virusを、 interleukin-2 (IL- 2)存在下で培養した成人末梢血由来単 核球に multiplicity of infection (MOI)lで感染させた。 CD56陽性細胞 (NK細胞)への 遺伝子導入を、感染 3日後に FACSを用いて EGFP発現で確認した。
[0176] 結果を図 8 (A)、図 8 (B)および図 8 (C)に示した。図 8 (A)は H6R28を感染させて
Vヽな 、細胞の結果を示し、図 8 (B)は H6R28を感染させた細胞の結果を示して 、る
。また、図 8 (C)は上記図 8 (A)および図 8 (B)の結果をまとめたグラフである。
[0177] 図 8 (A)、図 8 (B)および図 8 (C)から明らかなように、 HHV— 6は高率に外来遺伝 子 EGFPを NK細胞に導入可能であることが判明した。導入率は、 88% [39.8%÷(5.5%
+ 39.8%)]であった。
[0178] (3)ァストロサイト
H6R28の free virusを、 basic fibroblast growth factor (bFGF)存在下で培養したヒト 初代培養ァストロサイトに multiplicity of infection (MOI)lで感染させた。遺伝子導入 は 2日後に蛍光顕微鏡を用いて EGFPの発現で確認した。
[0179] 図 9に蛍光顕微鏡写真を示した。 HHV— 6は、約 40%のヒト初代培養ァストロサイト に、外来遺伝子 EGFPを導入可能であった。
[0180] (4) CD4陽性 T細胞
H6R28の free virusを、 phytohemagglutinin (PHA)存在下で培養した成人末梢血由 来単核球に multiplicity of infection (MOI)lで感染させた。 CD4陽性 T細胞への遺伝 子導入を、感染 1日後に FACSを用いて EGFP発現で確認した。
[0181] 結果を図 10に示した。 HHV— 6は、 CD4陽性 T細胞の内、約 3O%[19.6%÷(50.8%
+ 19.6%)]に、外来遺伝子 EGFPを導入可能であった。
[0182] (5) CD8陽性 T細胞
H6R28の free virusを、 phytohemagglutinin (PHA)存在下で培養した成人末梢血由 来単核球に multiplicity of infection (MOI)lで感染させた。 CD8陽性 T細胞への遺伝 子導入を、感染 3日後に FACSを用いて EGFP発現で確認した。
[0183] 結果を図 11に示した。 HHV— 6は、 CD8陽性 T細胞の内、約 4O%[30.1%÷(38.3%
+ 30.1%)]に、外来遺伝子 EGFPを導入可能であった。
[0184] (6)榭状細胞
H6R28の free virus 、 interieukin- 4 (IL- 4)と granulocyte- macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF)存在下で培養した成人末梢血由来単球に multiplicity of infection (MOI)lで感染させた。 CD83陽性細胞 (榭状細胞)への遺伝 子導入を、感染 3日後に FACSを用いて EGFP発現で確認した。
[0185] 結果を図 12に示した。 HHV— 6は、 CD83陽性の榭状細胞の内、約 60%[43.2%÷ (26.6%+43.2%)]に、外来遺伝子 EGFPを導入可能であった。
なお、実施例には記載しないが、血液幹細胞、肝細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞 においても、野生株の HHV— 6が感染することは報告されており(参考文献 1一 5参 照)、 H6R28の free virusが上記細胞に感染することが示唆される。
(参考文献 1)
Luppi M, Barozzi P, et. al, J Virol, 1999年 1月第 73卷、 第 1号、 P. 754-9.「 Human herpesvirus 6 latently infects early bone marrow progenitors in vivo.J (参考文献 2)
Tajiri H, Tanaka- Taya K, et. al, Pediatr., 1997年 9月、第 131巻、 第 3号、 P. 4/3-5.「Chromc hepatitis in an infant, in association with human herpesvirus- o infection.」
(参考文献 3)
Wu CA, Shanley JD. 1998年 3月、第 79卷、 第 5号、 P. 1247-56.
「し hronic infection of human umbilical vein endothelial cells by numan
herpesvirus— 6.」
(参考文献 4)
Rotola A, Di Luca D, et. al, J Clin Microbiol, 2000年 8月、第 38卷、 第 8号、 P. 3135-り「Human herpesvirusり infects and replicates in aortic endotnenum.J (参考文献 5)
Luka J, Okano M, Thiele G" J Clin Lab Anal. 1990年、第 4卷、 第 6号、 P. 483-6.「 Isolation of human herpesvirus— 6 rrom clinical specimens using human fioroolast cultures.」
<潜伏感染 HHV— 6における HCMVプロモーターの機能 >
IE1/IE2プロモーター遺伝子からの遺伝子発現を検討するために、 5 'RACEを 行なった(J. Virol.77:2258-2264, 2003、 J. Virol.76:4145-4151, 2002、 Proc. Natl. Acad. Sci.USA, 93:11137-11142, 1996)。手短かに言えば、 cDNAの 5' 末端は dA tailが付加されて、そしてアンカープライマー、 RL— 1と一緒にアニーリングされた。 PCRの最初の 10のサイクルは、 Taqポリメラーゼ(Roche Diagnostics)を用いて 以下の条件で行なった。変性は 94° Cにおいて 1分間、アニーリングは 55° Cにお いて 1分間、伸長は 72° Cにおいて 1分間の条件で行なった。
[0186] PCR増幅は、 KODプラス DNAポリメラーゼ (東洋紡、大津、日本)を用いた PCR により、プライマー N1と EGFP— R1を用いて、続いてプライマー N2と EGFP— R2を 用いて、次の条件の下で行なった(図 13 (A)参照)。変性は 94° Cにおいて 1分間、 アニーリングは 65° Cにおいて 30秒間、伸長は 68° Cにおいて 1分間(増幅毎に 15 サイクル)の条件で行なった。増幅断片は配列決定した。
[0187] 上記の潜伏感染した細胞では、通常の転写開始部位 (生産的感染の転写開始部 位: PSS)からの mRNAの転写が検出されなかった(図 13 (B) )。し力し、 HCMVの 潜伏感染に関する転写物を発現させるために使われる、 HCMVの潜伏感染の転写 開始部位 (LSSs) 1と 2から少量の mRNAが転写された。
[0188] それと対照的に、 PSSは、プラスミド pU2— U8 EGFP— puroが形質導入された潜 伏感染マクロファージ、再活性ィ匕が誘導されたマクロファージ、生産的感染した Molt 3細胞、流産感染 HeLa細胞において使われた(図 13 (B) )。 HCMV
MIEPが HHV— 6潜伏感染条件で潜伏感染と関係のある性質を示したので、 HH V - 6潜伏感染の転写調節が HCMV潜伏感染と若干の共通の機構を共有するかも しれないことが示唆される。これらの知見は、潜伏感染の部位の場合のように、 HHV —6と HCMVとが比較的共通した性質を示すと 、う事実と関係がある力もしれな!、。
[0189] 図 13は、潜在感染している HHV— 6での HCMVプロモーター遺伝子の機能を表 わす模式図および電気泳動写真の図である。
[0190] 図 6 (A)は、 HCMV IE1ZIE2プロモーター遺伝子と PCRプライマーを示す。 EG FP遺伝子と転写開始部位は一定の比率で縮尺して描かれて 、る。生産的感染によ る転写の IE1 ZIE2の mRNA (PSSは + 1として示されて!/、る)の開始部位と、 2つの 潜伏感染の転写開始部位 (LSS1と LSS2)が示される。 PCRプライマーの位置も描 写されている。そして、模式図はアンカープライマー RL— 1の使用法を示している。な お、プライマー配列は表 1に示される。
[0191] 図 6 (B)は、 EGFPの転写物の 5 'RACE法による増幅を示す。
[0192] 1 X 105個の潜在的に感染したマクロファージ(M φ )から得られる RNAを示す(レ ーン 1)。図 1に示すプラスミド pU2— U8 EGFP— puroを形質導入した 1 X 105個の 潜在的に感染したマクロファージを示す (レーン 2)。 1 X 105個の再活性化を誘導さ れたマクロファージを示す(レーン 3)。 1 X 102個の生産的に感染した Molt 3細胞を 示す(レーン 4)。 1 X 103個の未感染 Hela細胞を示す(レーン 5)。
[0193] これらは、 5 'RACE法によって分析された。使われた RACE法としては通常に用い られる方法を採用した。転写物の 5' 末端は dAティルであって、そしてアンカーブラ イマ一 RL— 1とともにアニーリングした(図 6 (A) )。そして最初にプライマー N2— EGF P R2と共に、それからプライマー N1— EGFP R1と共に増幅した。 PSS (— 360bp )、 LSS1 (— 720bp)、そして Zある ヽ ίま LSS2 (— 650bp)で始まる転写物の 5' 末 端が検出された。 Hae IIIによって切断された ΦΧ174 DNA断片がサイズマーカ 一(ΦΧ)として用いられた。
[0194] < HHV— 7の組換ウィルスベクター H7R28の構築 >
ヒトヘルぺスウィルス 7 (HHV-7)の U2— U8遺伝子クラスターを、ヒトサイトメガロウ ィルスの主要な即時型ェンハンサ一一プロモーター(MIEP)の制御下にある増強さ れた緑色: ¾:光タンノ ク質 (enhanced green fluorescent protein: EGFP)と、 S V40初期プロモーターの制御下にあるピューロマイシン耐性遺伝子と、を含む遺伝 子カセット (EGFP— puroカセット)に置換した組換えウィルス H7R28を構築した。相 同組換によって EGFP— puroカセットを HHV— 7ゲノムに挿入するために、ウィルス のゲノムの約 1キロベース(kb)の部分がカセット(図 14)のそれぞれの末端に挿入さ れた。
[0195] 続いて、次の遺伝子クラスターについて調査した: U2— U8遺伝子である。それらの 遺伝子について、本発明者は、 U2— U8遺伝子を EGFP— puroに置換しても複製能 を有するウィルスが得られることに気付 、た。
[0196] 以下に具体的な構築手順を説明する。
[0197] 図 14は、組換えウィルス H7R28の構造を表わす模式図である。
[0198] 図 14においては、最上部に HHV— 7RKゲノムの地図を示し、その下(中段)に U2
U8領域を拡大して示して 、る。
[0199] 下段は、 EGFP— puroカセットの両端に相同組換えに利用する DNA断片を挿入し た相同組換え用プラスミド 'HHV— 7pU2— U8 EGFP— puroを表す。
[0200] 左右向きの短い矢印はプライマーのアニーリング位置を示す。
[0201] 図中の数字 10558, 11637, 17395, 18483は、 HHV— 7RK株の塩基の番号を示す。
[0202] プライマー配列は、下記の表 2で示す。
[0203] [表 2]
プライマー名配列番号 プライマ一配列
7U2F1 28 5' - CAGCGTTTCCTGATGTTGGAACCCAG - 3'
7U2R1 29 5' - GCATCTTACCAATGATGATCGCAAGC - 3
7U2FBam 30 5' - TTGGATCCTGATCATTTGCATGTTGCTAGTATGTCAG - 3
7U2RSpe 31 5' - GACTAGTCTCCGAATCGAAGCTAATCTGAGAGC - 3'
7U8F1 32 5' - CCGATTCCTACTTTCGACAAGAGG -3'
7U8R1 00 S—し Iしし (j I Aしし Aし Alj Iし I (j Iし I A jO Iし
7U8FSal 34 5' - GCGTCGACAGCCAGTTGACGTTGCTGGTTACTCAG一 3'
7U7RBam 35 5' - TTGGATCCATGCCTTCTCCATATGAAGACAGCAGC - 3'
7U24 Spe I 40 5' - GGACTAGTCACTGCGCAATTAGAAGAAGCCTAG -3'
7U25 Eco RI 41 5' - GGAATTCGATGATGAACAAATCATTTTTCTCGCAC - 3'
7U25 lu I 42 5' - CGACGCGTCACCAAAAATTTTCCCATTCACATCG -3'
7U25 Kpn I 43 5' - GGGGTACCGCATGGATTTCTTAGCGAATTTGTGCTG - 3'
まず、プライマー 7U2FBam— 7U2RSpeとを用いた PCRにより U2遺伝子を増幅し 、プライマー 7U8FSal— 7U7RBamとを用いた PCRにより U7— U8遺伝子を増幅し た。
[0204] 増幅された U2遺伝子産物は Spel— BamHIで、 U7U8遺伝子産物は Sail— BamH
Iでそれぞれ消化され、 pEGFP— puro (図 14での HHV— 7pU2— U8 EGFP— puro
)のそれぞれの末端に挿入された。
[0205] 上記 HHV— 7pU2— U8 EGFP— puroをフイトヘムァグルチュン(PHA)で刺激し た末梢血液単核細胞(PBMCs)中に導入した。プラスミドの導入は、 Nucleofector TM electroporator (Amaxa Biosystems、ドイツ)を用い、推奨されるプロトコ ールにしたがって行った。
[0206] すなわち、 5 X 106個の細胞を、プラスミド 5 IX gおよび T細胞用 Nucleofector (TM
)溶液 100 /z 1と混和し、プログラム U— 14を用いた Nucleofector (TM)によりエレク トロポレーシヨンを行った。
[0207] 同時に、従来のエレクト口ポレーシヨン法も実施した。すなわち、 1 X 107個の細胞と 500 1の K一 PBS溶液(30. 8mMの NaCl、 120. 7mMの KC1、 8. ImMの Na H
2
PO 、 1. 46mMの KH POおよび 25mMの MgCl )中に懸濁した 50 μ gのプラスミ
4 2 4 2
ドと混合し、混合液をエレクト口ポレーシヨンキュベット(ジーンパルサーキュベット 4c m、 Bio-Rad)内に入れた。
[0208] エレクト口ポレーシヨンは、ジーンパルサー II エレクト口ポレーシヨンシステム(Bio— Rad)を用いて、抵抗無限大、電圧 300V、キャパシタンス 960 μ F以下の条件下で 行った。 6時間後に、 HHV— 7 KHR株を染多重度(ΜΟΙ) Ο. 5で遠心法により細胞 に感染させた。
[0209] 10%牛胎児血清を添加した RPMI 1640培地で、 3日間、細胞を培養し、ウィルス ストックとして凍結した。組換ウィルスを増やすために、 ΡΗΑで刺激した臍帯血単核 細胞(CBMCs)に上記ウィルスストックを感染させて 1日間培養し、 7. 5 μ gZmlのピ ユーロマイシンで 1日間処理し、培地で洗浄し、 3日間 CBMCsと一緒に培養した。感 染細胞を新たなウィルスストックとして凍結した。
[0210] この選択処理を 5回繰り返し、その後、 96穴のプレートで培養された CBMCsを使 つて、限界希釈培養法により組換ウィルス (H7R28)をクローンィ匕した。
[0211] < HHV— 7の組換えウィルスベクター H7R28構築の確認 >
HHV— 7の組換えウィルスベクター構築の確認は、 HHV— 6の組換えウィルスべク ター H6R28構築の確認の方法と同様の方法により行われ、同様の結果を得た。な お、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
[0212] < HHV— 7の組換えウィルスベクター H7R28の増殖感染 >
H7R28の細胞から細胞への広がりの効率および感染細胞でのウィルス産生の効 率を検討した。なお、実験方法は、抗 HHV— 6モノクローナル抗体の代わりに、抗 H HV— 7モノクローナル抗体 (KR4)を使用したこと以外は、前記 H6R28と同じである
[0213] 図 15 (A)にウィルス抗原陽性細胞の増加を示した。また、図 15 (B)にウィルスの増 殖曲線を示した。図中〇が野生型ウィルス、園が H7R28を表す。
[0214] 図 15 (A)および図 15 (B)に示した結果から、 H7R28は野生型ウィルスと同等の増 殖能力を保持していることが明らかとなった。すなわち、 U2、 U3、 U4、 U5、 U7、 U 8の部位に外来遺伝子を挿入してもウィルスの増殖に影響を及ぼさないことが示され た。
[0215] < HHV— 7の組換ウィルスベクター H7R24— 25の構築 >
HHV— 7の U24と U25を組み換え部位に使用した組み換えウィルス H7R24— 25
を構築した。
[0216] 図 16は、組換えウィルス H7R24— 25の構造を表わす模式図である。
[0217] 図 16においては、最上部に HHV— 7RKゲノムの地図を示し、その下(中段)に U2
4 U25領域を拡大して示して ヽる。
[0218] 下段は、 EGFP— puroカセットの両端に相同組換えに利用する DNA断片を挿入し た相同糸且換え用プラスミド pHHV— 7U24— U25 EGFP— IRES— puroを表す。
[0219] 左右向きの短い矢印はプライマーのアニーリング位置を示す。
[0220] 図中の数字 34744, 35420, 36118は、 HHV— 7RK株の塩基の番号を示す。
[0221] 前記の組換ウィルス H7R28よりも短 、組換え部位に遺伝子を挿入するために、 int ernal ribosomal entry site (IRES)を用いて挿入遺伝子を小型化した。
[0222] 構築手順は、相同組換えに利用する U24— U25遺伝子の増幅にプライマー 7U24
Spelと 7U25 EcoRIおよびプライマー 7U25 Mlulと 7U25 Kpnlを用いたことを 除いて、上記 H7R28の構築手順と同様である。
[0223] また、 H7R24—25構築の確認は、前記 H6R28構築の確認と同様に行い、同様の 結果を得た。なお、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
[0224] さらに、前記 H6R28と同様に、 H7R24— 25の細胞から細胞への広がりの効率およ び感染細胞でのウィルス産生の効率を検討した。なお、実験方法は、抗 HHV - 6モ ノクローナル抗体の代わりに、抗 HHV— 7モノクローナル抗体 (KR4)を使用したこと 以外は、前記 H6R28と同じである。
[0225] 図 17 (Α)にウィルス抗原陽性細胞の増加を示した。また、図 17 (Β)にウィルスの増 殖曲線を示した。図中〇が野生型ウィルス、園が H7R24-25を表す。
[0226] 図 17 (A)および図 17 (B)に示した結果から、 H7R24— 25は野生型ウィルスと同等 の増殖能力を保持していることが明ら力となった。すなわち、 U24— U25の部位に外 来遺伝子を挿入してもウィルスの増殖に影響を及ぼさないことが示された。
[0227] 以上、 H7R28および H7R24—25のデータより、 HHV— 7では、 U3、 U4、 U5、 U
7、 U8、 U24、 U24a、 U25が外来遺伝子の挿入部位として使用可能である事が判 明した。
[0228] <HHV— 7の組換ウィルスベクターの潜伏感染能力および再活性ィ匕効率 >
HHV— 7の組換えウィルスベクターの潜伏感染能力および再活性ィ匕効率は、 HH V— 6の組換えウィルスベクターの潜伏感染能力および再活性ィ匕効率の確認の方法 と同様の方法により行われ、同様の結果を得た。なお、重複記載を避けるため、説明 を繰返さない。
[0229] < HHV— 7組換ウィルスベクターの様々な細胞への導入 >
,ージ
H7R28の free virusを、コラーゲンコートディッシュで培養した成人末梢血由来単球 に multiplicity of infection (MOI)lで感染させた。接着細胞でかつ CDl lc陽性の細 胞 (マクロファージ)への遺伝子導入を、感染 3日後に FACSを用いて EGFP発現で 確認した。
[0230] 結果を図 18に示した。 HHV— 7は、マクロファージの約 80%[45.7%÷(12.1%+ 45.7%)]に、外来遺伝子 EGFPを導入可能であった。
[0231] (2) CD4陽性 T細胞
H7R28の free virusを、 phytohemagglutinin (PHA)存在下で培養した成人末梢血由 来単核球に multiplicity of infection (MOI)lで感染させた。 CD4陽性 T細胞への遺伝 子導入を、感染 3日後に FACSを用いて EGFP発現で確認した。
[0232] 結果を図 19に示した。 HHV— 7は、 CD4陽性 T細胞の約 48%[34.8%÷(6.8%+ 34.8%)] 〖こ、外来遺伝子 EGFPを導入可能であった。
[0233] (3)榭状細胞
H7R28の free virus 、 interieukin- 4 (IL- 4)と granulocyte- macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF)存在下で培養した成人末梢血由来単球に multiplicity of infection (MOI)lで感染させた。 CD83陽性細胞 (榭状細胞)への遺伝 子導入を、感染 3日後に FACSを用いて EGFP発現で確認した。
[0234] 結果を図 20に示した。 HHV— 7は、 CD83陽性の榭状細胞の内、約 70%[46.4%÷ (17.9% +46.4%)]に、外来遺伝子 EGFPを導入可能であった。
[0235] < HHV— 6および HHV— 7における、 BAC (Bacterial artificial chromosome)の複 製開始点の導入 >
HHV— 6、 HHV— 7ともに、 U2— U8の外来遺伝子挿入可能部位が大きいので、
比較的大きな遺伝子の導入が可能である。特に Bacterial artificial chromosome (BA C)の複製開始点を挿入できれば、所謂 BACシステムによるベクター産生が可能とな る。 BACシステムによる組み換えウィルス作製は、他のへルぺスウィルスなど、多くの ウィルスで確立して!/、るが、 HHV— 6および HHV— 7にお!/、ては未だ確立されて!、な い。
[0236] (l) BACの複製開始点を挿入した組換え HHV— 6の作製:(H6R28 BAC)
図 21は、 H6R28 BACの構造を表す模式図である。
[0237] 前記 H6R28と同様に、 U2と U8の配列を相同組み換えに使用した。 EGFPと puromycin耐'性 ¾fe子 (pac)を internal ribosomal entry site (IRES)でつない 7こものを糸且 換えウィルスの選択マーカーとし、 BAC複製開始点 [クロラムフエ-コール耐性遺伝 子 (CMR)、 BAC複製開始点 (Ori S, rep E, par A, par B, par C)を相同組み換え部位 の内側に配したプラスミド (pHHV- 6 U2-8 EGFP-puro BAC)を作製した。
[0238] 相同組み換えによるウィルス作製法は、前記 H6R28構築の項に記載した方法と同 様であるので、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
[0239] 次に、相同組み換え後、 6回の puromycin選択により、 BAC複製開始点をもった組 み換えウィルスを作製した。
[0240] 組み換えウィルスは、安定に増殖し、 6回の puromycin選択で全体の約 90%に達し た。図 22は、 H6R28 BAC感染 Molt— 3細胞の蛍光顕微鏡写真である。この結果 は、上記の方法で、 BAC複製開始点を持つ HHV— 6を作製できたことを示す。
[0241] (2) BACの複製開始点を挿入した組換え HHV— 7の作製:(H7R28 BAC)
図 23は、 H7R28 BACの構造を表す模式図である。
[0242] 前記 H7R28と同様 U2と U8の配列を相同組み換えに使用した。 EGFPと
puromycin耐'性 ¾fe子 (pac)を internal ribosomal entry site (IRES)でつない 7こものを糸且 み換えウィルスの選択マーカーとし、 BAC複製開始点 [クロラムフエ-コール耐性遺 伝子 (CMR)、 BAC複製開始点 (Ori S, rep E, par A, par B, par C)を相同組み換え部 位の内側に配したプラスミド (pHHV- 7 U2-8 EGFP-puro BAC)を作製した。
[0243] 相同組み換えによるウィルス作製法は、前記 H7R28構築の項に記載した方法と同 様であるので、重複記載を避けるため、説明を繰返さない。
[0244] 次に、相同組み換え後、 6回の puromycin選択により、 BAC複製開始点をもった組 み換えウィルスを作製した。
[0245] 組み換えウィルスは、安定に増殖し、 6回の puromycin選択で全体の約 90%に達し た。図 24は、 H7R28 BACが感染した SupTl細胞の蛍光顕微鏡写真である。この 結果は、上記の方法で、 BAC複製開始点を持つ HHV— 7を作製できたことを示す。
[0246] <評価結果のまとめ >
上記のように、全体的に、糸且換ウィルス H6R28〖こより、 HHV— 6のかなり大きい遺 伝子クラスター U3— U7がウィルスの複製、潜伏感染と再活性ィ匕のために欠失可能 であることが明ら力となった。削除された遺伝子について、 U4と U6の機能は報告さ れていない。
また、 H7R28により HHV— 7のかなり大きい遺伝子クラスター U3— U7がウィルスの 複製、潜伏感染と再活性ィ匕のために欠失可能であることが明らかとなった。
[0247] ここで、 HHV— 6の遺伝子 U3、 U5、 U7と U25は、 HHV— 7の遺伝子 U3、 U7と U 25は、 HCMV US22遺伝子と機能不明の共通のモチーフを持ち、 US22遺伝子 系統群に属する。すべての 13ヘルぺスウィルス力 つの保存されたモチーフの少なく とも 1をコードするいくつかの US22系統群遺伝子をコードする。 US22系統群遺伝 子の大部分の機能が未知であるけれども、 murineサイトメガロウィルス(MCMV)の 即時型 2 (IE2)遺伝子、 HCMV UL36— 38遺伝子などは、ともにトランス活性化機 能を有するタンパク質をコードする。
[0248] し力しながら、 MCMV IE2はウィルスの複製と潜伏感染/再活性ィ匕のために欠 失可能であることを知られている。 H6R28の US22系統群遺伝子の削除により、そ れらと類似の特性を持っていることが示された。 HHV-6 U3は弱い再活性化機能 を有するタンパク質をコードする。そして本発明者は wtと組換体ウィルスの間にお ヽ て、どのようなウィルス複製あるいは潜伏感染 Z再活性ィ匕においても、相違を見出す ことができな力 た。
[0249] HCMVの US22系統群遺伝子 UL36と UL37は抗アポトーシス機能を持って!/ヽる 。しかしながら、本発明者は、本研究において、 H6R28または H7R28に感染した細 胞で細胞自滅の増加を観察しな力つた。
[0250] MCMV M140と M141遺伝子のような、他の US22系統群の遺伝子は、細胞と 組織の向性を変化させる。 HHV— 6は、生体上の宿主組織の適合範囲が広ぐ種々 のタイプの細胞に感染するので、 HHV— 6 US22系統群遺伝子がこのウィルスの幅 広 、臓器への向性の一因になることは可能であると考えられる。
[0251] H6R28は、 HHV— 6潜伏感染と再活性ィ匕の研究のために有用な材料であるように 思われる。また、 H7R28も HHV— 7の潜伏感染と再活性ィ匕の研究に有用と思われる 。さらに、両ウィルスにおいて、バクテリアの人工染色体(BAC)ベクターのように、大 き 、遺伝子を挿入するために、この大き!/、欠失可能位置は有用な部位であり得るし、 実際に BAC遺伝子が安定して挿入可能である事を示した。
[0252] 本発明者は、これが HHV— 6組換ウィルスベクターおよび HHV— 7組み換えべクタ 一と、それをなし得るための詳細なプロトコールを HHV— 6と HHV— 7の研究者に提 供することができる、成功した最初の報告であると信じる。
[0253] なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様ま たは実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのよう な具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなぐ本発明の精神と次に 記載する請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。 産業上の利用の可能性
[0254] 本発明のウィルスベクターは、外因性ヌクレオチド配列を挿入することができ、哺乳 類の宿主細胞に容易に導入することができ、外因性ヌクレオチド配列にコードされた 遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低ぐ哺乳 類の遺伝子治療に好適に用いることができる、ウィルスベクターである。
[0255] さらに、本発明のウィルスベクターの製造方法は、外因性ヌクレオチド配列を挿入 することができ、哺乳類の宿主細胞に容易に導入することができ、外因性ヌクレオチ ド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する 危険性が低ぐ哺乳類の遺伝子治療に好適に用いることができる、ウィルスベクター を容易に製造可能な、ウィルスベクターの製造方法である。
さらに、本発明のウィルスベクターの製造方法で使用されたウィルスの組み換え方法 は、他のベクター開発技術である BACシステムやアンプリコンシステムを HHV— 6お
よび HHV— 7に応用しょうとする際に、必要不可欠な技術である。
[0256] また、本発明の宿主細胞の形質転換方法は、哺乳類の宿主細胞に容易に外因性 ヌクレオチド配列が導入でき、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主 細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性を低く抑えることができ、哺乳 類の遺伝子治療に好適に用いることができる、ウィルスベクターによる宿主細胞の形 質転換方法である。
[0257] そして、本発明の形質転換宿主細胞は、ウィルスベクターにより形質転換されて外 因性ヌクレオチド配列が挿入されており、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺 伝子を宿主細胞内で発現させることができ、病原性を有する危険性が低ぐ遺伝子 治療に好適に用いることのできる、形質転換宿主細胞である。
[0258] また、本発明の遺伝子治療方法は、哺乳類の宿主細胞に容易に外因性ヌクレオチ ド配列が導入でき、外因性ヌクレオチド配列にコードされた遺伝子を宿主細胞内で発 現させることができ、病原性を有する危険性を低く抑えることができる、ウィルスベクタ 一を用いた哺乳類の遺伝子治療方法である。
[0259] よって、本発明のウィルスベクターは、 HHV— 6、 HHV— 7がともに、 HIVと同じ CD 4陽性 T細胞に感染することを利用して、 AIDS治療に利用可能である。この場合、 本発明のウィルスベクターには、リボザィム、干渉 RNAなどの抗 HIV遺伝子を挿入 することが好ましい。
[0260] また、本発明のウィルスベクターは、 HHV— 6が HIVと同じくマクロファージで潜伏 感染を成立させることを利用して、 AIDS治療に利用可能である。この場合も、本発 明のウィルスベクターには、リボザィム、干渉 RNAなどの抗 HIV遺伝子を挿入するこ とが好ましい。
[0261] さらに、本発明のウィルスベクターは、 HHV— 6、 HHV— 7が CD4陽性 T細胞、マク 口ファージ、ナチュラルキラー細胞、 Lymphokine activated killer (LAK)細胞 などの免疫担当細胞に感染することを利用して、これらの細胞にサイト力インを導入 するために利用可能である。このことにより、本発明のウィルスベクターは、癌の免疫 療法への応用が可能となる。
[0262] そして、本発明のウィルスベクターは、 HHV— 6が脾癌などの難治性の消ィ匕器系腫
瘍に大量に発現している CD46分子を受容体として細胞に侵入することを利用して、 脾癌に HHV— 6を感染させ、癌を死滅させるなどの抗腫瘍治療にも応用可能である