明 細 書
超高強度コンク リートの自己収縮低減法 技術分野
本発明は, 超高強度コンクリー卜の自己収縮低減法に関する。 背景技術
従来より, 建築分野では, 1 0 0〜 1 5 0 N/mm2 級の超高強度コン クリートの適用実績がある (例えば非特許文献 1 ) 。 土木分野ではほとん ど実績がないと言ってもよいが, プレキャスト部材を使用した橋梁構造物 で, 圧縮強度 2 0 0 N/mm2 を有する鋼繊維補強モルタル (2 mm以下 の粒子と金属繊維で構成された粗骨材を含まないモルタル) が最近実用化 された (山形県の酒田みらい橋) 。 しかし, この特殊モルタルは強度は高 いがコス トも高い。 前記の建築分野で実績のある圧縮強度 1 0 0〜 1 5 0 N/mm2 レベルのコンクリートは自己収縮が大きいので, そのままでは 一般に土木分野での大型のコンクリ一ト構造物には不適である。
非特許文献 1 :建築技術 2 0 0 2. 0 7. P 1 8 4〜: L 8 8, P 1 8 9〜 1 9 3 発明の目的
超高強度コンクリ一卜の自己収縮はひび割れ発生や, P C部材のせん断 耐力の低下, P C部材とした時の有効プレストレスの低下を引起こす原因 となるので, 構造物の設計 ·耐久性の両面からなるべく 自己収縮を小さく することが肝要であるが, 補強繊維なしの圧縮強度 1 5 O N/mm2 以上 の超高強度コンクリートでは, 材齢 9 1 日での自己収縮量が 4 0 0 ^m/ m以上, 場合によっては 5 0 0 /m/m以上を示す。 このため, 目標とす る強度および施工性を損なわずに且つ経済的に, 超高強度コンクリートの
自己収縮量を低減することが望まれている。 本発明はこの要求を満たすこ とを目的とする。 発明の開示
本発明によれば, 圧縮強度 1 0 0 N Z m m 2 を超える超高強度コンクリ ートの配合において, 粗骨材の 3 Q容積%以下を人工軽量骨材で置換し, コンク リート 1 m 3 当り 3 0 K g以下の膨張材および Zまたは単位結合材 量に対し 4重量%以下の収縮低減剤を配合して材齢 9 1 日での自己収縮量 を 0 ~ 6 0 0 m / mにする超高強度コンクリー卜の自己収縮低減法を提 供する。 使用する人工軽量骨材は, 吸水率 5 %を超え〜 2 0 % , 圧壊荷重 1 0 0 0〜 2 0 0 0 N, 絶乾密度 1 . 4〜 2 . 0 g /cm3のものであるのがよ い。 この超高強度コンクリートは, さらに JIS A 6204 「コンクリート用化 学混和剤」 に従う減水剤, 高性能減水剤, A E減水剤または高性能 A E減 水剤の少なく とも 1種を配合することができ, 水とセメ ントを含む結合材 との比 (水結合材比) が 1 0〜 2 5 %, 粗骨材量が 0〜 4 0 0 L / m 3で あるのがよい。 セメントを含む結合材は, 好ましくはセメントとシリカフ ユームカ、らなる。 図面の簡単な説明
図 1は, 超高強度コンク リ一卜の配合例とスランプフローとの関係を示 す図である。
図 2は, 超高強度コンクリ一卜の配合例と凝結始発時間との関係を示す 図である。
図 3は, 超高強度コンクリ一卜に膨張材および Zまたは収縮低減剤を配 合した場合の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図 4は, 超高強度コンク リー卜に人工軽量骨材を配合した場合の圧縮強 度の経時変化を示す図である。
図 5は, 超高強度コンクリ一卜に人工軽量骨材と膨張材および Zまたは 収縮低減剤を配合した場合の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図 6は, 超高強度コンクリー卜に膨張材および/または収縮低減剤を配 合した場合の自己収縮ひずみの挙動を示す図である。
図 7は, 超高強度コンクリ一卜に人工軽量骨材を配合した場合の自己収 縮ひずみの挙動を示す図である。
図 8は, 超高強度コンクリートに人工軽量骨材と膨張材および Zまたは 収縮低減剤を配合した場合の自己収縮ひずみの挙動を示す図である。
図 9は, 粗骨材の吸水率と自己収縮ひずみ (自己長さ変化) との関係を 示す図である。 発明の好ましい形態
本発明が対象とするのは, 1 0 0 N / m m 2 を超える圧縮強度 ( 9 1 日 圧縮強度) , さらには 1 3 0 N / m m 2 以上の圧縮強度 ( 9 1 日圧縮強度) を示す超高強度コンクリートである。 このような超高強度コンクリートは, 水, セメ ン トを含む結合材, 細骨材, 最大寸法 2 0 m m以下の粗骨材, JIS A 6204 「コンク リート用化学混和剤」 に準ずる減水剤, 高性能減水剤, A E減水剤または高性能 A E減水剤の少なく とも 1種を, 水結合材比 1 0〜
2 5 % , 粗骨材量 4 0 0 L Zm 3以下の配合基準で混練することによって 製造することができる。 セメ ン トを含む結合材とは, ポルトラン ドセメ ン ト, ポゾラン系およびスラグ系混和材料を含む混合セメ ン ト, またはこれ らにシリカフュームを混和したもの (シリカフュームセメ ン トとも呼ばれ る) を包含する。 .
本発明は, このような超高強度コンクリートにおいて, 前記の粗骨材の
3 0容積%以下を人工軽量骨材で置換し, コンク リー ト l m 3 当り 3 0 K g以下の膨張材および/または単位結合材量に対し 4重量%以下の収縮低 減剤を配合して材齢 9 1 日での自己収縮量を 0〜 6 0 0 m /mに低減す
る。
コンクリー卜の自己収縮は, コンクリート內部におけるセメ ン卜の水和 反応の進行によって細孔空隙中の水が消費され, 水面がより細孔径の小さ な空隙に移動し, これによつて水の表面張力に起因する毛細管張力が増大 することによって起こる現象であると説明されている。 いわゆる 「自己乾 燥」 が原因である。 水セメント比の小さな高強度コンクリ一トではとくに これが顕著となり, シリカフユーム等を用いて組織を緻密化するとさらに 毛細管張力が大きくなり, 収縮量も大きくなる。
本発明に従って人工軽量骨材を適量配合すると, 前記の自己乾燥を低減 する作用を果たす。 人工軽量骨材が保有する水分がコンクリート中の 「貯 水池」 として機能し, 水和反応によって消費される.水分を補償し, 細孔空 隙中の乾燥を低減する 「セルフキュアリング効果」 を発揮し, これによつ て自己収縮や乾燥収縮の低減を図ることができる。
本発明で使用する人工軽量骨材は, 吸水率が 5 %を超え〜 2 0 %, 圧壌 荷重が 1 0 0 0〜 2 0 0 0 N, 絶乾密度が 1 . 4〜 2 . 0 g /cm3のものが好 ましい。
このような人工軽量骨材の代表的な製造例を挙げると, 下記の化学成分 をもつ火力発電所副生の石炭灰粗粉 (a ) と下記の化学成分をもつ頁岩の 微粉末 (b ) とを (a ) : ( b ) の重量比が 4 : 6〜6 : 4の割合で混合 し, バインダーを加えて造粒したあと, これをロータリキルンで約 1 1 0 0〜1 2 0 0 °Cで焼成し, その冷却過程においてほぼ 1 0 0〜2 0 0 °Cか ら水中に急冷する。 得られた焼成品は粗砕し分級して 5 m m以下の細骨材 分と 5〜1 5 m mの粗骨材分とに分別することができる。
( a ) 石炭灰の化学成分値 (質量 = S i 0 2 :約 5 4 %, A 1 2 0 3 : 約 2 9 %, F e 2 0 3 + F e 0 :約 4 . 5 %, C a 0 :約 3 . 5 M g 0 : 約 1 . 0 %, 強熱減量:約 4 . 7 %
( b ) 頁岩の化学成分値 (質量%) = S i 0 2 :約 7 0 % , A 1 2 0 3 :
約 1 3 %, F e 203 + F e O :約 4. 2 %, C a O :約 1. 6 %, M g 0 : 約 1. 6 %, 強熱減量:約 5. 6 %
このようにして得られた 5〜 1 5 mmの粗骨材分は, 例えば絶乾密度 1. 5 2 g/cm3, 熱間吸水率 = 1 5 %, JIS Z 8841に従う圧壤荷重 = 1 1 3 O Nを示す。 ここで, 熱間吸水率とは, この人工軽量骨材の焼成過程に おいて 1 0 0〜2 0 0 °Cから水冷した後, 常温状態にて, これを表乾状態 で吸水率を測定した値を言う。 このものは, 細孔半径 5 0〜 6 0 0 0 n m において細孔量がほぼ均等に分布しており, 累積細孔量 (総細孔量) は約 •1 1 0 m3 / gに達する。 このこと力^ 低比重でありながら高強度化に寄 与し且つ保水性能を高めるのに有効に作用する。 同様の原理に従い, 原材 料の選定と焼成条件の適正な制御を行うことによって, JIS Z 8841に従う 圧壌荷重が 1 0 0 0〜 2 0 0 0 Nの範囲, 絶乾密度が 1. 4〜 2. 0 g/cm3 の範囲, 吸水率が 5 %を超え〜 2 0 %の範囲にある人工軽量骨材を製造す ることができ, この人工軽量骨材を用いることによって, 自己収縮量が少 ない超高強度コンクリ一トを製造することができる。
人工軽量骨材の圧壊荷重が 1 0 0 O N未満では 1 0 O N/mm2 以上の コンクリート強度を得ることができず, 逆に 2 0 0 0 Nを超えるものでは 十分な細孔量を確保できなくなり, このために吸水率が低下するので自己 収縮量の低減に寄与することができない。 したがって, 本発明で用いる人 ェ軽量骨材の圧壊荷重は 1 0 0 0〜 2 0 0 0 N, 好ましくは 1 1 0 0〜 2 0 0 0 N, さらに好ましくは 1 2 0 0〜 1 8 0 0 Nである。 また, 該人工 軽量骨材の絶乾密度が 1. 4 g/cm3未満では圧壌荷重 1 0 0 O N以上を確 保するのが困難となり, 該密度が 2. 0 g/cm3を超えると十分な吸水率を 確保するのが困難となるので, 本発明で用いる人工軽量骨材の絶乾密度は 1. 4 - 2. 0 g/cm3好ましくは 1. 4 0〜: 1. 7 0 g /cm3であるのがよい。 吸水率については 5 %以下ではコンクリ一トの自己収縮や乾燥収縮に対す る改善効果が十分に現れず, 2 0 %を超えると密度 2. 0 g/cm3以下で圧
壊強度 1 0 0 0 N以上を確保するのが困難となるので, 本発明で用いる人 ェ軽量骨材の吸水率は 5 %を超え〜 2 0 %, 好ましくは?〜 2 0 % , さら に好ましくは 1 0〜 1 8 %であるのが望ましい。
超高強度コンクリ一卜への人工軽量骨材の配合に際しては, 粗骨材の配 合量の 3 0容積%以下をこの人工軽量骨材で置換するといぅ処法でよい。 粗骨材の 3 0容積%より多くを人工軽量骨材で置換すると超高強度コンク リ一トが本来有すべき性質'を損なうおそれがでてくるからである。
本発明においては, このように粗骨材の一部を人工軽量骨材で置換した うえ, さらに自己収縮量を確実かつ精密にコントロールするために, 膨張 材および Zまたは収縮低減剤を所定量配合する。 すなわち, 人工軽量骨材 を適量配合したうえで, 膨張材または収縮低減剤をそれぞれ単独で配合す るか, または膨張材と収縮低減剤を併用して配合する。
使用する膨張材としては, 水と反応してエトリ ンガイ 卜と呼ばれる針状 結晶を生成し, これが通常のセメ ント反応生成物よりも粗な組織を形成し, これによる見かけの体積が大きくなることを利用してコンクリートを膨張 させるものが好ましい。 このような市販の膨張材としては, 例えば電気化 学工業株式会社製の商品名パワー C S A, パワー C S A type R等が挙げ られる。 膨張剤の配合量としては, 超高強度コンクリート 1 m 3 当り 3 0 K g以下とすればよい。
収縮低減剤については, コンクリー卜の収縮の原因となる毛細管張力を 低減させる作用をもつもの, すなわち細孔中の水の表面張力を低減する効 果をもち, ことによって, 自己収縮や乾燥収縮を低減する効果を発揮する ものが好ましい。 このような市販の収縮低減剤としては, 低級アルコール 付加物のもの, 例えば太平洋マテリアル株式会社製の商品名テトラガード A S 2 1等が使用できる。 収縮低減剤の配合量としては, 超高強度コンク リ―トの単位結合材量に対し 4重量%以下とすればよい。
本発明の超高強度コンクリー卜に用いる結合材としては, ポルトランド
P T/JP2004/009509
セメ ン トのほか, 次のような結合材例えば, シリカフューム, フライアツ シュ, 石炭ガス化フライアッシュ, 高炉スラグ微粉末などを使用すること ができる。
本発明の超高強度コンクリートに用いる化学混和剤 (JIS A 6204に準ず る減水剤, 高性能減水剤, A E減水剤または高性能 A E減水剤の少なく と も 1種) としては, ポリカルボン酸系, ポリエーテル系, ナフタレン系, メラミ ンスルホン酸系, アミノスルホン酸系等のものが使用できるが, と くにポリカルボン酸系もしくはポリエーテル系のものが好ましい。 また, その助剤として消泡剤を使用することができる。
以下に, 本発明の超高強度コンクリ一卜の自己収縮低減法を本発明者ら が行つた代表的な試験例によって具体的に説明する。 試験例 1
〔使用材料〕
セメ ン ト : シリ カフュームセメ ン ト (密度 3.08 g /cm3, 比表面積 4050cm2/g) 細骨材:段戸産石英片岩砕砂 (表乾密度 2.62g/cm3, 吸水率 0.72%,粗粒率 3.10)
粗骨材:段戸産石英片岩砕石 (最大寸法 20mm, 表乾密度 2.62 ん]]]3, 吸水 率 0.57%, 実績率 63.1%)
混和剤 : ポリカルボン酸エーテル系高性能減水剤 (花王株式会社製の商品 名マイティ 3 0 0 0 TH 2 )
人工軽量骨材:石炭灰系の人工軽量骨材 (日本メサライ ト工業株式会社の 商品名 J ライ ト, 粒径 5〜10匪, 絶乾密度 1.40〜1.60g/cm3, 吸水率 12.2 %, 圧壊荷重 1 1 0 0〜 1 3 0 0 N)
膨張材:石灰ーェト リ ンガイ ト系膨張材 (密度 3.02 gん m3, 比表面積 3500 cm2/g,電気化学工業株式会社製の商品名パワー C S A type R)
収縮低減剤 :低級アルコール付加物 (太平洋マテリ アル株式会社製の商品
名テトラガード A S 2 1 )
表 1に試験の水準とコンクリ一卜の配合条件を示した。 表 1中の記号は 次のとおりである。 W =水, C =シリカフユ一ムセメ ン ト, G =粗骨材, S P =高性能減水剤, J L =人工軽量骨材, E X =膨張材, R A =収縮低 減剤。 表 1のとおりの 1 2の配合ケースについて, 以下の試験を行った。 表 2にその基本配合を示した。
表 1
〔試験方法〕
コンク リートは強制二軸式ミキサ (容量 1 0 0 リ ッ トル, 回転数 6 0 r p m ) を用いて練り混ぜた。 粗骨材 (人工軽量骨材含む) 以外の材料をミ キサに投入後 1 2 0秒練り混ぜ, 一旦ミキサを停止して内壁や羽に付着し たセメ ン トを搔き落とした後に再びミキサを作動して 1 8 0秒練り混ぜた。 さらに粗骨材 (人工軽量骨材含む) 投入後 1 8 0秒練り混ぜ, ミキザから 排出した。 コンクリ一卜練上がり後は直ちにスランプフローと空気量, コ ンク リート温度を測定し, 圧縮強度, 凝結時間および自己収縮を測定する
ための供試体を作製した。 圧縮強度は J 1 S A 1 1 0 8— 1 9 9 9に準じ, 材齢 7, 2 8 , 5 6, 9 1 日の 4材齢で測定した。 凝結時間は J 1 S A 1 1 4 7 - 2 0 0 1に準じて測定したが, 自己収縮の測定開始時間を知るた めに始発時間までの計測とした。 自己収縮は J C I 自己収縮委員会一 1 9 9 6の方法に準拠したが, ひずみの測定は低剛性タイプの埋込みひずみ計 によって行った。
〔スランプフローおよび凝結時間〕
図 1に各配合のスランプフローを示した。 図 1の結果から, 膨張材の添 加によってスランプフローは低下し, 施工性を損なう傾向があることがわ かる。 逆に収縮低減剤はスランプフローを増大させる効果が見られた。 ま た, 人工軽量骨材の置換率が高いほどスランプフローは増大傾向を示し, 施工性が向上することがわかる。 スランプフロー 5 5 0 m m以上の配合に ついては, 良好な自己充てん性を有しているものと判断された。 なお, 空 気量はすべてのケースにおいて 1 . 3〜 2 . 5 %の範囲に調整されたもので め 。
図 2に各配合の凝結始発時間の結果を示した。 膨張材および人工軽量骨 材を単独で使用した場合には, 基本配合と比較して凝結始発時間に大きな 差は見られない。 し力、し, これらを併用したケース ( J L 2 0 E 1 0 ) で は凝結始発時問は早くなる結果が得られた。 また, 収縮低減剤は明らかに 凝結を遅延させる影響のあることが確認された。
〔圧縮強度〕
図 3〜 5に圧縮強度の試験結果を示した。 基本配合のものは, 材齢 2 8 日で 1 6 4 N Z m m 2 , 9 1 日で 1 9 0 N / m m 2 の高い圧縮強度を示し た。 図 3〜 5の全体から言えることは, 自己収縮を意図したいずれのケ一 スにおいても, 基本配合の圧縮強度を下回る結果となっているが, 材齢 5 6 日では全ての配合で目標とする 1 5 0 N / m m 2 以上の圧縮強度が得ら れている。
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1 0 より具体的には, 図 3は膨張材および収縮低減剤を単独使用もしくは併 用した場合における強度発現履歴を比較したものである。 膨張材のみを使 用した場合 (E 2 0, E 2 5 , E 3 0 ) は, 材齢 7 日では添加量が多いほ ど低い強度を示しているが, 2 8 日以降はほぼ同じ強度となり, 9 1 日で は 1 7 O N/mm2 程度に達した。 収縮低減剤を添加率 2 %で使用した場 合 (R 2 ) は, 長期強度が膨張材を使用した場合よりもやや大きくなり, 材齢 9 1 日で 1 7 6 N/mm2 である。 膨張材と収縮低滅剤を併用した E
2 5 R 2では, 材齢 5 6 日の試験結果がやや小さいものの, それ以外の材 齢ではほぼ E 3 0 と同様の強度履歴となっている。
図 4は人工軽量骨材の置換率別に圧縮強度の発現履歴を示している。 全 ての材齢において置換率が大きいほど圧縮強度は小さくなり, 特に置換率
3 0 % ( J L 3 0 ) では材齢 2 8 日以降ほぼ頭打ちの状況が見られ, 1 5 0 NZmm2 前後で横ばいとなった。 し力、し, 置換率 2 0 %までは材齢 9 1 日に至るまで圧縮強度の増進が認められ, 置換率 2 0 % ( J L 2 0 ) で 1 7 0 N/mm2 に達した。
図 5は人工軽量骨材の置換率を 2 0 %で一定とし, さらに膨張材および /または収縮低減剤を併用した場合の圧縮強度の発現履歴を示したもので ある。 いずれの配合においても, J L 2 0よりも圧縮強度が低滅する結果 となったが, J L 2 0 E 1 0, J L 2 0 R 1 , J L 2 0 E 1 0 R 0 5間の 差異は小さく, 3ケースとも材齢 5 6 日以降ほぼ頭打ちの状況となった。 これらでは材齢 9 1 日で 1 4 9〜 1 5 5 N/mm2 程度の圧縮強度が得ら れた。
〔自己収縮〕
図 6〜8に自己収縮の測定結果を示した。 各配合ケースとも, 凝結始発 時のひずみを 0 とし, それ以降の 2 0 °C非乾燥状態における自由収縮 (膨 張) ひずみを計測したものである。 基本配合 (讕印) のものでは, 材齢 9 1 日で 6 5 0 m/mという大きな自己収縮が計測された。
図 6は, 膨張材および/または収縮低減剤を使用した場合における自己 収縮の経時変化を示しているが, 膨張材を 2 0 K g/m3使用すると材齢
9 1 日で 3 7 0 m/m (E 2 0 ) となり, 基本配合よりも 4 0 %以上自 己収縮を低減することができる。 さらに添加量を増すごとに低減効果は大 きくなり, 3 0 K gズ m3 (E 3 0 ) で 1 8 0 ^ m/m (材齢 9 1 日) と なり, 7 0 %以上の低減効果を示す。 収縮低減剤は添加率 2 % (R 2 ) で 膨張材 2 0 K gZm3のケース (E 2 0 ) とほぼ同じ程度の収縮低減効果
( 4 0 %) を示す。 膨張材 2 5 K g/m3と収縮低滅剤 2 %を併用したケ —ス (E 2 5 R 2 ) では, 両者単独使用の場合の効果を足し合わせた以上 の効果が現れ, 材齢初期に 1 1 0 imZmの膨張が確認された後, 材齢 9
1 日に至るまでその膨張量は漸減する。
図 7は人工軽量骨材の置換率別に自己収縮の経時変化を示したものであ るが, 材齢 9 1 日での低減率は, それぞれ 2 4 % ( J L 1 0 ) , 3 4 % (
J L 2 0 ) , 5 7 % ( J L 3 0 ) となり, 置換率が高いほど自己収縮の低 滅効果は大きいことがわかる。
以上の試験例 1の結果から, 次のことが要約される。
( 1 ) 基本配合では, 材齢 9 1 日で 1 9 0 N/mm2 の高い圧縮強度を示 すが 6 5 0 zm/mの自己収縮が起きる。
( 2 ) 膨張材 2 0〜 3 0 8/1113では, 収縮低滅効率は大きいが, 施工 性が低下する。
( 3 ) 収縮低減剤 2 %では, 収縮低減効率が大きく, 施工性も低下しない。
(4 ) 膨張材 2 5 K gZm 3と収縮低減剤 2 %を併用すると, 自己収縮を ゼロにすることができる。
( 5 ) 人工軽量骨材は粗骨材に対する置換率に応じて自己収縮を低減する ことができるが, 強度低下も置換率に応じて大きくなる。
( 6 ) 人工軽量骨材の置換率を最大 2 0容積%とし, 少量の膨張材 ·収縮 低減剤を併用すると, 比較的低コス卜で高い収縮低減効率が実現できる。
試験例 2
本試験は, 人工軽量骨材の吸水率がコンクリ一トの自己収縮率に及ぼす 影響を見たものである。
〔使用材料〕
• セメ ント :低熱ポルトランドセメ ント (記号し) (住友大阪セメント株 式会社製, 密度 3.22 g /cm3)
•細骨材: 陸砂 (静岡産:表乾密度 2.62 g /cm3, 吸水率 1.38%)
•粗骨材:
(1) 天然骨材 (記号 N) : (奥多摩産砕石:表乾密度 2.65g/cm3, 吸水率 0.50%)
(2) 人工軽量骨材 (記号; r ) : (日本メサライ ト工業株式会社製の商品名
Jライ ト, 絶乾密度 1.41g/cm3, 吸水率を 5 %, 1 0 %または 1 2. 5 % に調整したもの)
(3) 人工軽量骨材 (記号 M) : (日本メサライ ト工業株式会社製の商品名 メサライ ト, 絶乾密度 1.29gん m3, 吸水率 2 8 %)
•混和剤:高性能 A E減水剤 (ポゾリス株式会社製の商品名 S P 8 S B s ) •水:調布市の上水道水
表 3にコンクリ一卜の調合 (実験 No. 1〜 5 ) を示した。 各実験におけ る記号は前記の材料を表記しており, 例えば L J一 5 %は, 低熱ポルトラ ンドセメントを使用し, 粗骨材として Jライ 卜の吸水率 5 %のものを使用 したことを示す。
表 3
各調合のコンクリートを練り混ぜ, 試験例 1 と同様にして自己収縮を測 定するための供試体を作製し, 試験例 1 と同様にして自己収縮を測定した。 その結果を図 9に示した。
図 9に見られるように, 吸水率 0 . 5 %の天然粗骨材では自己収縮を示 す。 吸水率 5 %の】ライ トを用いた場合には自己長さ変化はマイナス方向 となり, 自己収縮の低減効果は見られない。 これに対して, 吸水率 1 0 %, 1 . 2 . 5 %の Jライ 卜を用いた場合には, 自己長さ変化はプラス方向とな り, 自己収縮の低減効果を示す。 吸水率 2 8 %のメサライ 卜を用いた場合 には, 吸水率 1 0 %の .了ライ 卜と同様に自己長さ変化は + 2 0 0 z m程度 で頭打ちにある。
以上説明したように, 本発明によると, 目標とする強度および施工性を 損なわずに且つ経済的に超高強度コンクリ一卜の自己収縮量を低減するこ とができる。 このため, 建築分野のみならず, 土木分野において超高強度 コンクリー卜の適用が可能となり, P C部材とした時にも自己収縮に基づ く有効プレス ト レス低下の問題も解消される。