明 細 書 神経変性疾患の予防 ·治療剤 技術分野
本発明は、 神経変性疾患の予防 '治療剤ならびにそのスクリーニング、 およ び神経変性疾患の診断薬などに関する。 さらには、 虚血性脳疾患、 癌などの予 防 -治療剤および診断薬などに関する。 背景技術
アルツハイマー病 (Al zhe imer's d i sease) は進行性痴呆および認知能力の失 調を伴う神経変性疾患の代表的なものであるが、 これまでに効果的な治療法は 見出されていない。 アルツハイマー病は高齢化社会を迎えつつある現在におい て最も重要な疾患の一つであることは言うまでもなくその治療薬の開発は医療 経済的にも極めて大きな意義を有する。
一方、 ヒートショックやグルコース飢餓などタンパク質の生合成に影響を与 える因子により小胞体に異常タンパク質が蓄積し、 小胞体にストレスがかかる ことが知られている (小胞体ストレス) 。 生体に小胞体ストレスがかかると、 シャペロン分子をはじめとする小胞体ストレス応答遺伝子群が発現し、 異常夕 ンパク質を修復または分解し、 恒常性の維持を行なう。
' 近年、 種々の神経変性疾患と小胞体ストレスとの関連性が重要視されるよう になった。 遺伝性のパーキンソン氏病である常染色体劣性遺伝性若年性パーキ ンソニズム (AR-JP) の病因遺伝子として Parki nが同定され (Nature, 392巻, 605- 608頁, 1998年) 、 タンパク分解系に関与するュビキチンリガ一ゼである ことが報告されている (Nat . Gene t , 25巻, 302- 305頁, 2000年) 。 さらに Parki nの基質として Pael (Parkin assoc i at ed endo the l i n receptor - 1 ike) 受容体が同定された。 この受容体は高次構造形成が困難なタンパク質で、 この タンパク質の高次構造形成不全体は通常、 速やかに parki nの作用で分解され るが、 タンパク質分解系を抑制すると、 異常 Pae l受容体が小胞体に蓄積し、
その細胞は小胞体ストレスによる細胞死に陥ることが報告されている (Cell, 105巻, 891-902頁, 2001年) 。 さらに家族性アルツハイマー病の原因遺伝子 であるプレセニリン 1の変異を有する細胞が小胞体ストレスに対して脆弱とな ること、 および、 小胞体ストレス応答に関与する Irelの欠失により) 3アミ口 イドの産生が上昇すること (Biochem. Biophysic. Acta, 1536巻, 85-96頁, • 2001年; J. Biol. Chem. , 276巻, 2108- 2114頁, 2001年) が報告されている。
一方、 遺伝子発現を網羅的に解析するために、 cDNAまたはオリゴヌクレオチ ドを固定化したマイクロアレイ法が開発され、 疾患特異的な遺伝子発現の変化 を見出す技術が普及し、 その有用性が確認されている。 例えば、 Affymetrix社 の GeneChipシステムはがんなどの疾患の診断や創薬標的遺伝子の発見に多用さ れつつある。
Sestrin2 (Ses2) (GenBank Accession No. BC013304) は、 p53により発現制 御を受けている PA26と弱い相同性を有する遺伝子である。 PA26は DNA傷害などに より発現上昇する GADDファミリ一の一種として報告されている (Oncogene, 18 巻, 127- 137頁, 1999年)。 また、 Ses2は癌細胞株においては、 虚血、 酸化スト レスにより P53非依存的に発現が上昇し、 DNA損傷を伴う刺激 (UV照射、 ドキソ ルビシン) により、 p53依存的に発現が上昇する。 さらに、 Ses2を高発現させた 癌細胞株は、 血清除去、 DNA損傷による細胞死に感受性であるが、 酸化ストレス、 虚血による細胞死に抵抗性を示す (Oncogene, 21巻, 6017-6031頁, 2002年) 。 安全で優れた神経変性疾患の予防 ·治療剤が求められている。 発明の開示
'本発明者らは、 上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、 小胞体 ストレスを伴う神経細胞死誘導の時に発現が顕著に増加する遺伝子を見出し、 この知見に基づいて、 さらに検討を重ねた結果、 本発明を完成するに至った。 すなわち、 本発明は、
( 1 ) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一の アミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分べプチドまたはその塩の 発現を調節する化合物またはその塩を含有してなる神経変性疾患の予防 ·治療
剤、
(2) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一の アミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の 遺伝子の発現を調節する化合物またはその塩を含有してなる神経変性疾患の予 防 ·治療剤、
(3) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一も.しくは実質的に同一の アミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリ ヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはそ の一部分を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、
(4) 上記 (3) 記載のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
(5) 神経変性疾患の予防 ·治療剤である上記 (4) 記載の医薬、
(6) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一の アミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対 する抗体、
(7) 上記 (6) 記載の抗体を含有してなる医薬、
(8) 神経変性疾患の予防 ·治療剤である上記 (7) 記載の医薬、
(9) 上記 (6) 記載の抗体を含有してなる診断薬、
(10) 神経変性疾患の診断薬である上記 (9) 記載の診断薬、
(1 1) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一 のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポ リヌクレオチドを含有してなる神経変性疾患の診断薬、
(12) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一おしくは実質的に同一 のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分べプチドまたはその塩 を用いることを特徴とする、 上記夕ンパク質もしくはその部分べプチドまたは その塩の発現を調節する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(13) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一 のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩 を含有することを特徴とする、 上記夕ンパク質もしくはその部分べプチドまた はその塩の発現を調節する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(14) 上記 (12) 記載のスクリーニング方法または上己 (13) 記載の スクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩、
(15) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一 のァミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分べプチドをコードするポ リヌクレオチドを用いることを特徴とする、 上記タンパク質遺伝子の発現を調 節する化合物またその塩のスクリーニング方法、
(16) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一 のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポ リヌクレオチドを含有することを特徴とする、 上記夕ンパク質遺伝子の発現を 調節する化合物またその塩のスクリーニング用キット、
(17) 上記 (15) 記載のスクリーニング方法または上記 (16) 記載の スクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またその塩、 '
(18) 上記 (14) または (1 7) 記載の化合物またその塩を含有してな る医薬、
(19) 神経変性疾患の予防 ·治療剤である上記 (18) 記載の医薬、
(20) 哺乳動物に対して、 上記 (14) または (17) 記載の化合物また その塩の有効量を投与することを特徴とする神経変性疾患の予防 ·治療法、 .
(21) 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一 のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドの発現を調節す る、 または上記タンパク質遺伝子の発現を調節することを特徴とする神経変性 疾患の予防 ·治療法 .
(22) 神経変性疾患の予防 ·治療剤を製造するための上記 (14) または (17) 記載の化合物またその塩の使用などを提供する。 図面の簡単な説明
図 1は、 ッニカマイシン刺激 24時間後における細胞の DNA切断量を OD 405— 492で表す図である。 図中、 縦軸は吸光度を、 横軸はッニカマイシ ンの濃度を示す。 _〇一は対照細胞における DNA切断量を、 一口—は S e s 2遺伝子形質導入細胞における DNA切断量を示す。
図 2は、 ッニカマイシン刺激 4 8時間後における細胞の D N A切断量を O D 4 0 5— 4 9 2で表す図である。 図中、 縦軸は吸光度を、 横軸はッニカマイシ ンの濃度を示す。 —〇一は対照細胞における D N A切断量を、 —ローは S e s 2遺伝子形質導入細胞における D N A切断量を示す。
図 3は、 タブシガーギン刺激 2 4時間後における細胞の D NA切断量を〇D 4 0 5— 4 9 2で表す図である。 図中、 縦軸は吸光度を、 横軸は夕プシガーギ ンの濃度を示す。 一〇—は対照細胞における D N A切断量を、 一口—は S e s 2遺伝子形質導入細胞における D N A切断量を示す。 発明を実施するための最良の形態
本発明で用いられる配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実 質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質 (以下、 本発明のタンパク質 または本発明で用いられるタンパク質と称することもある) は、 ヒトゃ温血動 物 (例えば、 モルモット、 ラット、 マウス、 ニヮトリ、 ゥサギ、 ブ夕、 ヒッジ、 ゥシ、 サルなど) の細胞 (例えば、 肝細胞、 脾細胞、 神経細胞、 グリア細胞、 塍臓 3細胞、 骨髄細胞、 メサンギゥム細胞、 ランゲル八ンス細胞、 表皮細胞、 上皮細胞、 杯細胞、 内皮細胞、 平滑筋細胞、 線維芽細胞、 繊維細胞、 筋細胞、 脂肪細胞、 免疫細胞 (例、 マクロファージ、 T細胞、 B細胞、 ナチュラルキラ 一細胞、 肥満細胞、 好中球、 好塩基球、 好酸球、 単球) 、 巨核球、 滑膜細胞、 軟骨細胞、 骨細胞、 骨芽細胞、 破骨細胞、 乳腺細胞、 肝細胞もしくは間質細胞、 またはこれら細胞の前駆細胞、 幹細胞もしくはガン細胞など) もしくはそれら の細胞が存在するあらゆる組織、 例えば、 脳、 脳の各部位 (例、 嗅球、 扁桃核、 大脳基底球、 海馬、 視床、 視床下部、 大脳皮質、 延髄、 小脳) 、 脊髄、 下垂体、 胃、 滕臓、 腎臓、 肝臓、 生殖腺、 甲状腺、 胆のう、 骨髄、 副腎、 皮膚、 筋肉、 肺、 消化管 (例、 大腸、 小腸) 、 血管、 心齓 胸腺、 脾齓 顎下腺、 末梢血、 前立腺、 睾丸、 卵巣、 胎盤、 子宮、 骨、 関節、 骨格筋などに由来するタンパク 質であってもよく、 合成タンパク質であってもよい。
配列番号: 1で表されるァミノ酸配列と実質的に同一のァミノ酸配列として は、 配列番号: 1で表わされるアミノ酸配列と約 5 0 %以上、 好ましくは約 6
0%以上、 さらに好ましくは約 70%以上、 より好ましくは約 80%以上、 特 に好ましくは約 90%以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性を有するァ ミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号: 1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有 するタンパク質としては、 例えば、 前記の配列番号: 1で表されるアミノ酸配 列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、 配列番号: 1で表されるアミノ酸 配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好 ましい。 具体的には、 配列番号: 7で表されるアミノ酸配列を含有するタンパ ク質などが挙げられる。
実質的に同質とは、 それらの性質が性質的に (例、 生理学的に、 または薬理 学的に) 同質であることを示す。 したがって、 上記活性が同等 (例、 約 0. 0 1〜100倍、 好ましくは約 0. 1〜10倍、 より好ましくは 0. 5〜2倍) であることが好ましいが、 これらの活性の程度、 タンパク質の分子量などの量 的要素は異なっていてもよい。
また、 本発明で用いられるタンパク質としては、 例えば、 (1) (i) 配列番 号: 1で表されるアミノ酸配列中の 1または 2個以上 (例えば 1〜100個程 度、 好ましくは 1〜30個程度、 好ましくは 1〜10個程度、 さらに好ましく は数 (1〜5) 個) のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、 (Π) 配列番号: 1 で表されるアミノ酸配列に 1または 2個以上 (例えば 1〜100個程度、 好ま しくは 1〜30個程度、 好ましくは 1〜10個程度、 さらに好ましぐは数 .(1 〜5) 個) のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、 (iii) 配列番号: 1で表され るアミノ酸配列に 1または 2個以上 (例えば 1〜100個程度、 好ましくは 1 〜30個程度、 好ましくは 1〜10個程度、 さらに好ましくは数 (1〜5) 個) のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、 (iv) 配列番号: 1で表されるァ ミノ酸配列中の 1または 2個以上 (例えば 1〜100個程度、 好ましくは 1〜 30個程度、 好ましくは 1〜10個程度、 きらに好ましくは数 (1〜5) 個) のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、 または (V) それらを組 み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含ま れる。
上記のようにアミノ酸配冽が挿入、 欠失または置換されている場合、 その挿 入、 欠失または置換の位置としては、 とくに限定されない。
本明細書におけるタンパク質は、 ペプチド標記の慣例に従って左端が N末端 (ァミノ末端) 、 右端が C末端 (カルボキシル末端) である。 配列番号: 1で 表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質をはじめとする、 本発明で用い られるタンパク質は、 C末端が力ルポキシル基 (_ C〇OH) 、 カルボキシレ —ト(― C O O— ) 、 アミド (― C O NH 2) またはエステル (一 C O O R) の 何れであってもよい。
ここでエステルにおける Rとしては、 例えば、 メチル、 ェチル、 n—プロピ ル、 イソプロピル、 n _ブチルなどの C i _ 6アルキル基、 例えば、 シクロペン チル、 シクロへキシルなどの C 3 _ 8シクロアルキル基、 例えば、 フエニル、 α —ナフチルなどの C 1 2ァリール基、 例えば、 ベンジル、 フエネチルなどのフ ェニル アルキル基もしくは α—ナフチルメチルなどの a—ナフチル— C , _ 2アルキル基などの C 7 _ i 4ァラルキル基、 ピバロィルォキシメチル基など が用いられる。
本発明で用いられるタンパク質が C末端以外にカルボキシル基 (またはカル ポキシレート) を有している場合、 カルボキシル基がアミド化またはエステル 化されているものも本発明で用いられるタンパク質に含まれる。 この場合のェ ステルとしては、 例えば上記した C末端のエステルなどが用いられる。
さらに、 本発明で用いられるタンパク質には、 N末端のアミノ酸残基 (例、 メチォニン残基) のァミノ基が保護基 (例えば、 ホルミル基、 ァセチル基など の アルカノィルなどの
ァシル基など) で保護されているもの、 生体 内で切断されて生成する N末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したも の、 分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基 (例えば—〇H、 ― S H、 アミノ基、 イミダゾール基、 インドール基、 グァニジノ基など) が適当な保護基 (例えば、 ホルミル基、 ァセチル基などの Cェ _
6アル力ノィル基などの Cェ―
6ァシル基な ど) で保護されているもの、 あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質な どの複合タンパク質なども含まれる。
本発明で用いられるタンパク質の具体例としては、 例えば、 配列番号: 1で
表されるァミノ酸配列を含有する夕ンパク質などがあげられる。
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドとしては、 前記した本発明で 用いられるタンパク質の部分ペプチドであって、 好ましくは、 前記した本発明 で用いられるタンパク質と同様の性質を有するものであればいずれのものでも よい。
具体的には、 後述する本発明の抗体を調製する目的には、 配列番号: 1で表 されるアミノ酸配列において第 1〜3 0番目、 第 2 5 0〜 2 8 0番目のァミノ 酸配列を有するペプチドなどがあげられる。 例えば、 本発明で用いられるタン パク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも 2 0個以上、 好ましくは 5 0個以 上、 さらに好ましくは 7. 0個以上、 より好ましくは 1 0 0個以上、 最も好まし くは 2 0 0個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。
また、 本発明で用いられる部分ペプチドは、 そのアミノ酸配列中の 1または 2個以上 (好ましくは、 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは数 (1〜5 ) 個) のアミノ酸が欠失し、 または、 そのアミノ酸配列に 1または 2個以上 (好まし くは、 1〜2 0個程度、 より好ましくは 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは数 ( 1 - 5 ) 個) のアミノ酸が付加し、 または、 そのアミノ酸配列に 1または 2 個以上 (好ましくは、 1〜2 0個程度、 より好ましくは 1〜1 0個程度、 さら に好ましくは数 (1.〜5 ) 個) のアミノ酸が挿入され、 または、 そのアミノ酸 配列中の 1または 2個以上 (好ましくは、 1〜1 0個程度、 より好ましくは数 個、 さらに好ましくは 1〜5個程度) のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されて いてもよい。
また、 本発明で用いられる部分ペプチドは C末端がカルボキシル基 (一 C O O H) 、 カルボキシレート (一 C O O— ) 、 アミド (_ C〇NH 2) またはエス テル (一 C O O R) の何れであってもよい。
さらに、 本発明で用いられる部分ペプチドには、 前記した本発明で用いられ るタンパク質と同様に、 C末端以外にカルボキシル基 (またはカルポキシレ一 ト) を有しているもの、 N末端のアミノ酸残基 (例、 メチォニン残基) のアミ ノ基が保護基で保護されているもの、 N端側が生体内で切断され生成したダル 夕ミン残基がピログルタミン酸化したもの、 分子内のアミノ酸の側鎖上の置換
基が適当な保護基で保護されているもの、 あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖 ぺプチドなどの複合べプチドなども含まれる。
本発明で用いられる部分ペプチドは抗体作成のための抗原としても用いるこ とができる。
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドの塩としては、 生理学的 に許容される酸 (例、 無機酸、 有機酸) や塩基 (例、 アルカリ金属塩) などと の塩が用いられ、 とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。 この様 な塩としては、 例えば、 無機酸 (例えば、 塩酸、 リン酸、 臭化水素酸、 硫酸) との塩、 あるいは有機酸 (例えば、 酢酸、 ギ酸、 プロピオン酸、 フマル酸、 マ レイン酸、 コハク酸、 酒石酸、 クェン酸、 リンゴ酸、 蓚酸、 安息香酸、 メタン スルホン酸、 ベンゼンスルホン酸) との塩などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質もしくはその部分べプチドまたはその塩は、 前述したヒトや温血動物の細胞または組織から自体公知のタンパク質の精製方 法によって製造することもできるし、 夕ンパク質をコードする D N Aを含有す る形質転換体を培養することによつても製造することができる。 また、 後述の ぺプチド合成法に準じて製造することもできる。
ヒトゃ哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、 ヒトゃ哺乳動物の組織 または細胞をホモジナイズした後、 酸など e抽出を行ない、 該抽出液を逆相ク 口マトグラフィー、 イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー を組み合わせることにより精製単離することができる。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩、 または そのアミド体の合成には、 通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることがで きる。 そのような樹脂としては、 例えば、 クロロメチル榭脂、 ヒドロキシメチ ル榭脂、 ベンズヒドリルアミン榭脂、 アミノメチル樹脂、 4一べンジルォキシ ベンジルアルコール樹脂、 4一メチルベンズヒドリルァミン樹脂、 P AM樹脂、 4—ヒドロキシメチルメチルフエニルァセトアミドメチル樹脂、 ポリアクリル アミド樹脂、 4一 (2 ' , 4, —ジメトキシフエ二ル―ヒドロキシメチル) フ エノキシ樹脂、 4— ( 2 ' , 4, ージメトキシフエ二ルー F m o cアミノエチ ル) フエノキシ榭脂などを挙げることができる。 このような榭脂を用い、 α—
ァミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、 目的とするタンパク質の 配列通りに、 自体公知の各種縮合方法に従い、 樹脂上で縮合させる。 反応の最 後に榭脂からタンパク質または部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を 除去し、 さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフイ ド結合形成反応を実施し、 目 的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。 上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、 タンパク質合成に使用できる各種 活性化試薬を用いることができるが、 特に、 カルポジイミド類がよい。 カルボ ジイミド類としては、 D C C、 N, Ν'—ジイソプロピルカルポジイミド、 Ν— ェチル— N'— (3—ジメチルァミノプロリル) カルポジイミドなどが用いられ る。 これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤 (例えば、 H〇B t, H O O B t ) とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、 対称酸無水物ま たは H O B tエステルあるいは HO O B tエステルとしてあらかじめ保護アミ ノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、 タンパク 質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。 例え ば、 N, N—ジメチルホルムアミド, N, N—ジメチルァセトアミド, N—メ チルピロリドンなどの酸アミド類、 塩化メチレン, クロ口ホルムなどのハロゲ ン化炭化水素類、 トリフルォロェ夕ノールなどのアルコール類、 ジメチルスル ホキシドなどのスルホキシド類、 ピリジン, ジォキサン, テ卜ラヒドロフラン などのエーテル類、 ァセトニトリル, プロピオ二卜リルなどの二トリル類、 酢 酸メチル, 酢酸ェチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが 用いられる。 反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られ ている範囲から適宜選択され、 通常約— 2 0 t:〜 5 0 の範囲から適宜選択さ れる。 活性化されたアミノ酸誘導体は通常 1 . 5〜4倍過剰で用いられる。. ニン ヒドリン反応を用いたテストの結果、 縮合が不十分な場合には保護基の脱離を 行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができ る。 反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、 無水酢酸またはァ セチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をァセチル化することによって、 後の反応に影響を与えないようにすることができる。
原料のァミノ基の保護基としては、 例えば、 Z、 Bo c、 t—ペンチルォキ シカルボニル、 イソポルニルォキシカルボニル、 4 _メトキシベンジルォキシ 力ルポニル、 C I— Z、 B r— Z、 ァダマンチルォキシカルボニル、 トリフル ォロアセチル、 フタロイル、 ホルミル、 2—二トロフエニルスルフエニル、 ジ フエニルホスフイノチオイル、 Fmo cなどが用いられる。
カルボキシル基は、 例えば、 アルキルエステル化 (例えば、 メチル、 ェチル、 プロピル、 ブチル、 t—ブチル、 シクロペンチル、 シクロへキシル、 シクロへ プチル、 シクロォクチル、 2—ァダマンチルなどの直鎖状、 分枝状もしくは環 状アルキルエステル化) 、 ァラルキルエステル化 (例えば、 ベンジルエステル、 4—ニトロべンジルエステル、 4—メトキシベンジルエステル、 4—クロ口べ ンジルエステル、 ベンズヒドリルエステル化) 、 フエナシルエステル化、 ベン ジルォキシカルボニルヒドラジド化、 t一ブトキシカルポニルヒドラジド化、 トリチルヒドラジド化などによつて保護することができる。
セリンの水酸基は、 例えば、 エステル化またはエーテル化によって保護する ことができる。 このエステル化に適する基としては、 例えば、 ァセチル基など の低級 (Ci_6) アルカノィル基、 ベンゾィル基などのァロイル基、 ベンジル ォキシカルボニル基、 ェトキシカルポニル基などの炭酸から誘導される基など が用いられる。 また、 エーテル化に適する基としては、 例えば、 ベンジル基、 テトラヒドロビラ二ル基、 t _ブチル基などである。
チロシンのフエノール性水酸基の保護基としては、 例えば、 Bz 1、 C 12 — Bz l、 2_ニトロベンジル、 B r— Z、 t _ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾ一ルの保護基としては、 例えば、 To s、 4ーメトキ シ— 2, 3, 6—トリメチルベンゼンスルホニル、 DNP、 ベンジルォキシメ チル、 Bum、 Bo c、 Tr t、 Fmo cなどが用いられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、 例えば、 対応する酸無 水物、 アジド、 活性エステル 〔アルコール (例えば、 ペンタクロロフエノール、 2, 4, 5—トリクロ口フエノール、 2, 4ージニトロフエノール、 シァノメ チルアルコール、 パラニトロフエノール、 HONB、 N—ヒドロキシスクシミ ド、 N—ヒドロキシフタルイミド、 HOB t) とのエステル〕 などが用いられ
る。 原料のァミノ基の活性化されたものとしては、 例えば、 対応するリン酸ァ ミドが用いられる。
保護基の除去 (脱離) 方法としては、 例えば、 P d—黒あるいは P d—炭素 などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、 また、 無水フッ化水素、 メタンスルホン酸、 トリフルォロメタンスルホン酸、 トリフルォロ酢酸あるい はこれらの混合液などによる酸処理や、 ジイソプロピルェチルァミン、 トリェ チルァミン、 ピぺリジン、 ピぺラジンなどによる塩基処理、 また液体アンモニ ァ中ナトリゥムによる還元なども用いられる。 上記酸処理による脱離反応は、 一般に約— 2 O t:〜 4 0での温度で行なわれるが、 酸処理においては、 例えば、 ァニソール、 フエノール、 チオアニソール、 メタクレゾ一ル、 パラクレゾ一ル、 ジメチルスルフイ ド、 1, 4—ブタンジチオール、 1, 2—エタンジチオール などのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。 また、 ヒスチジンのイミダ ゾール保護基として用いられる 2, 4—ジニトロフエニル基はチォフエノール 処理により除去され、 トリブトフアンのインドール保護基として用いられるホ ルミル基は上記の 1 , 2—エタンジチオール、 1, 4—ブタンジチオールなど の存在下の酸処理による脱保護以外に、 希水酸化ナトリウ'ム溶液、 希アンモニ ァなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、 およびその保 護基の脱離、 反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段 から適宜選択しうる。
タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、 例えば、 まず、 カルポキシ末端アミノ酸の α—力ルポキシル基をアミド化して保護した 後、 アミノ基側にペプチド (タンパク質) 鎖を所望の鎖長まで延ばした後、 該 ペプチド鎖の Ν末端のひーァミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部 分ペプチドと C末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質また は部分ペプチドとを製造し、 これらのタンパク質またはペプチドを上記したよ うな混合溶媒中で縮合させる。 縮合反応の詳細については上記と同様である。 縮合により得られた保護タンパク質またはペプチドを精製した後、 上記方法に よりすベての保護基を除去し、 所望の粗タンパク質またはペプチドを得ること
ができる。 この粗タンパク質またはペプチドは既知の各種精製手段を駆使して 精製し、 主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質またはペプチドのァ ミド体を得ることができる。
タンパク質またはペプチドのエステル体を得るには、 例えば、 力ルポキシ末 端アミノ酸の α—カルボキシル基を所望の 7ルコール類と縮合しアミノ酸エス テルとした後、 タンパク質またはペプチドのアミド体と同様にして、 所望の夕 ンパク質またはペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明で用いられる部分ペプチドまたはそれらの塩は、 自体公知のペプチド の合成法に従って、 あるいは本発明で用いられるタンパク質を適当なぺプチダ ーゼで切断することによって製造することができる。 ペプチドの合成法として は、 例えば、 固相合成法、 液相合成法のいずれによっても良い。 すなわち、 本 発明で用いられる部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と 残余部分とを縮合させ、 生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離すること により目的のぺプチドを製造することができる。 公知の縮合方法や保護基の脱 離としては、 例えば、 以下の (i) 〜 (V) に記載された方法が挙げられる。
(i) M. Bodanszky および M.A. Ondetti, ペプチド 'シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(i i) Schroederおよび Luebke、 ザ-ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(iii) 泉屋信夫他、 ペプチド合成の基礎と実験、 丸善 (株) (1975年)
(iv) 矢島治明 および榊原俊平、 生化学実験講座 1、 タンパク質の化学 IV、 205、 (1977年)
(V) 矢島治明監修、 続医薬品の開発、 第 14巻、 ペプチド合成、 広川書店 また、 反応後は通常の精製法、 例えば、 溶媒抽出 ·蒸留,カラムクロマトグ ラフィー ·液体クロマトグラフィー ·再結晶などを組み合わせて本発明で用い られる部分ペプチドを精製単離することができる。 上記方法で得られる部分べ プチドが遊離体である場合は、 公知の方法あるいはそれに準じる方法によって 適当な塩に変換することができるし、 逆に塩で得られた場合は、 公知の方法あ るいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる,
本発明で用いられるタンパク質をコ一ドするポリヌクレオチドとしては、 前 述した本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列を含有するもので あればいかなるものであってもよい。 好ましくは DNAである。 DNAとして は、 ゲノム DNA、 ゲノム DNAライブラリー、 前記した細胞 ·組織由来の c DNA、 前記した細胞 ·組織由来の c DNAライブラリー、 合成 DN Aのいず れでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、 バクテリオファージ、 プラスミド、 コ スミド、 ファージミドなどいずれであってもよい。 また、 前記した細胞 ·組織 より totalRNAまたは mRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction (以下、 RT— PCR法と略称す る) によって増幅することもできる。
本発明で用いられるタンパク質をコードする DNAとしては、 例えば、 配列 番号: 2で表される塩基配列を含有する DNA、 または配列番号: 2で表され る塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイプリダイズする塩基配列を 含有し、 前記した配列番号: 1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質 と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードする DN Aであれば何れの ものでもよい。
配列番号: 2で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブ リダィズできる DNAとしては、 例えば、 配列番号: 2で表される塩基配列と 約 50%以上、 好ましくは約 60%以上、 さらに好ましくは約 70%以上、 よ り好ましくは約 80%以上、 特に好ましくは約 90%以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性を有する塩基配列を含有する DNAなどが用いられる。 具 体的には、 配列番号: 8で表される塩基配列を含有する DNAなどが挙げられ る。 - ハイブリダィゼ一シヨンは、 自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、 例 えば、 モレキュラー ·クローニング (Molecular Cloning) 2nd (J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法などに従って行 なうことができる。 また、 市販のライブラリーを使用する場合、 添付の使用説 明書に記載の方法に従って行なうことができる。 より好ましくは、 ハイストリ
ンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェン卜な条件とは、 例えば、 ナトリゥム濃度が約 19〜 40 mM、 好ましくは約 19〜2 OmMで、 温度が約 50〜70°C、 好ましくは約 60〜65 の条件を示す。 特に、 ナトリウム濃度が約 19 mMで温度が約 6 5 の場合が最も好ましい。
より具体的には、 配列番号: 1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク 質をコードする DNAとしては、 配列番号: 2で表される塩基配列を含有する DNA、 配列番号: 7で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコード する DNAとしては、 配列番号: 8で表される塩基配列を含有する DNAなど が用いられる。 .
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド (例、 DN A) としては、 前述した本発明で用いられる部分ペプチドをコードする塩基配 列を含有するものであればいかなるものであってもよい。 また、 ゲノム DNA, ゲノム DNAライブラリー、 前記した細胞 ·組織由来の cDNA、 前記した細 胞 ·組織由来の c DNAライブラリー、 合成 DNAのいずれでもよい。
本発明で用いられる部分ペプチドをコードする DNAとしては、 例えば、 配 列番号: 2で表される塩基配列を含有する DNAの一部分を有する DNA、 ま たは配列番号: 2で表される塩基配列とハイストリンジェン卜な条件下でハイ ブリダィズする塩基配列を含有し、 本発明のタンパク質と実質的に同質の活性 を有するタンパク質をコードする DNAの一部分を含有する DNAなどが用い られる。
配列番号: 2で表される塩基配列とハイブリダィズできる DNAは、 前記と 同意義を示す。
ハイブリダィゼーシヨンの方法およびハイストリンジェン卜な条件は前記と 同様のものが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質、 部分ペプチド (以下、 これらをコードする DNAのクローニングおよび発現の説明においては、 これらを単に本発明の夕 ンパク質と略記する場合がある) を完全にコードする DN Aのクローニングの 手段としては、 本発明のタンパク質をコードする塩基配列,の一部分を有する合
成 DNAプライマ一を用いて PC R法によって増幅するか、 または適当なべク 夕一に組み込んだ DN Aを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコード する DN A断片もしくは合成 DN Aを用いて標識したものとのハイブリダィゼ ーシヨンによって選別することができる。 ハイブリダィゼーシヨンの方法は、 例えば、 Molecular Cloning 2nd (J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法などに従って行なうことができる。 また、 市 販のライブラリ一を使用する場合、 添付の使用説明書に記載の方法に従って行 なうことができる。
DNAの塩基配列の変換は、 PCR、 公知のキット、 例えば、 MutanTM-super Express Km (宝酒造 (株) ) 、 Mutan™- K (宝酒造 (株) ) 等を用いて、 0DA - LA PCR法、 Gapped duplex法、 Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じ る方法に従って行なうことができる。
クローン化されたタンパク質をコードする DN Aは目的によりそのまま、 ま たは所望により制限酵素で消化したり、 リンカ一を付加したりして使用するこ とができる。 該 DN Aはその 5' 末端側に翻訳開始コドンとしての AT Gを有 し、 また 3' 末端側には翻訳終止コドンとしての T A A、 TG Aまたは TAG を有していてもよい。 これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、 適当な合 成 DN Aアダプタ一を用いて付加することもできる。
本発明のタンパク質の発現ベクターは、 例えば、 (ィ) 本発明のタンパク質 をコードする DNAから目的とする DNA断片を切り出し、 (口) 該 DNA断 片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造す ることができる。
ベクターとしては、 大腸菌由来のプラスミド (例、 pBR 322, pBR 3 25, pUC 12, pUC 13) 、 枯草菌由来のプラスミド (例、 pUB 1 1 0, pTP 5, pC 194) 、 酵母由来プラスミド (例、 pSH19, p SH 15) 、 λファージなどのバクテリオファージ、 レトロウイルス, ワクシニア ウィルス, バキュロウィルスなどの動物ウィルスなどの他、' PA1— 1 1、 p XT 1、 pRcZCMV、 pRcZRSV、 p c DNA I ZN e oなどが用い られる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、 遺伝子の発現に用いる宿主に対 応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。 例えば、 動物細胞 を宿主として用いる場合は、 S R aプロモー夕一、 SV40プロモーター、 L TRプロモー夕一、 CMVプロモーター、 HS V- TKプロモー夕一などが挙げ られる。
これらのうち、 CMV (サイトメガロウィルス) プロモ一夕一、 SR aプロ モーターなどを用いるのが好ましい。 宿主がェシエリヒア属菌である場合は、 t r pプロモーター、 l a cプロモーター、 r e c Aプロモーター、 A PLプ 口モーター、 ι ρ ρプロモータ—、 T7プロモーターなどが、 宿主がバチルス 属菌である場合は、 S P〇 1プロモーター、 S PO 2プロモーター、 p e n P プロモー夕一など、 宿主が酵母である場合は、 PH05プロ ΐ一夕一、 PGK プロモーター、 GAPプロモーター、 ADHプロモ一夕一などが好ましい。 宿 主が昆虫細胞である場合は、 ポリヘドリンプロモーター、 P 1 0プロモー夕一 などが好ましい。
発現ベクターには、 以上の他に、 所望によりェンハンサ一、 スプライシング シグナル、 ポリ A付加シグナル、 選択マーカー、 SV40複製オリジン (以下、 S V40 o r iと略称する場合がある) などを含有しているものを用いること ができる。 選択マ一カーとしては、 例えば、 ジヒドロ葉酸還元酵素 (以下、 d h f rと略称する場合がある) 遺伝子 〔メソトレキセ一ト (MTX) 耐性〕 、 アンピシリン耐性遺伝子 (以下、 Amp rと略称する場合がある) 、 ネオマイ シン耐性遺伝子 (以下、 Ne ο 1·と略称する場合がある、 G4 1 8耐性) 等が 挙げられる。 特に、 d h f r遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いて d h f r遺伝子を選択マーカ一として使用する場合、 目的遺伝子をチミジンを 含まない培地によっても選択できる。
また、 必要に応じて、 宿主に合ったシグナル配列を、 本発明のタンパク質の N端末側に付加する。 宿主がェシエリヒア属菌である場合は、 PhoA ·シグナル 配列、 0即 A ·シグナル配列などが、 宿主がバチルス属菌である場合は、 a—了 ミラーゼ*シグナル配列、 サブチリシン ·シグナル配列などが、 宿主が酵母で ある場合は、 MF a · シグナル配列、 SUC 2 'シグナル配列など、 宿主が動
物細胞である場合には、 インシュリン 'シグナル配列、 α—インターフエ口 ン ·シグナル配列、 抗体分子 ·シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のタンパク質をコードする DN Αを含有す るベクターを用いて、 形質転換体を製造することができる。
宿主としては、 例えば、 ェシエリヒア属菌、 バチルス属菌、 酵母、 昆虫細胞、 昆虫、 動物細胞などが用いられる。 ' ェシエリヒア属菌の具体例としては、 例えば、 ェシエリヒア 'コリ
(Escherichia col i) K 12 · DH 1 〔プロシージングズ ·ォブ ·ザ ·ナショ ナル ·アカデミー ·ォブ ·サイェンシィズ ·ォブ'ザ'ユーエスエー (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) , 60巻, 160 (1968)〕 , J M 103 〔ヌクイ レック .ァシッズ · リサーチ (Nucleic Acids Research) , 9卷, 309 (19 81)〕 , J Α221 〔ジャーナル ·ォブ ·モレキュラー ·バイオロジー
(Journal of Molecular Biology) , 120卷, 517 (1978)〕 , HB 1 01 〔ジャーナル 'ォブ 'モレキュラー ·バイオロジー, 41巻, 459 (19 69)] , C 600 〔ジェネティックス (Genetics) , 39巻, 440 (195 4)〕 などが用いられる。
' バチルス属菌としては、 例えば、 バチルス ·サブチルス (Bacillus
subtil is) M I 1 14 〔ジーン, 24卷, 255 (1983)〕 , 207 -21 〔ジャーナル 'ォブ 'バイオケミストリ一 (Journal of Biochemistry) , 95 巻, 87 (1984)〕 などが用いられる。
酵母としては、 例えば、 サッカロマイセス. セレピシェ (Saccharomyces cerevisiae) AH22, AH22R―, NA87 - 1 1 A, DKD— 5D, 2 0B— 12、 シゾサッカロマイセス ボンべ (Schizosaccharomyces pombe) N CYC 1913, NCYC 2036、 ピキア パストリス (Pichia pastoris) KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、 例えば、 ウィルスが Ac NPVの場合は、 夜盗蛾の幼虫 由来株化細胞 (Spodoptera frugiperda cell; S f細胞) 、 Trichoplusia niの 中腸由来の MG 1細胞、 Trichoplusia niの卵由来の High Five™細胞、
Mamestra brassicae由来の細胞または Est igmena acrea由来の細胞などが用いら
れる。 ウィルスが BmNP Vの場合は、 蚕由来株化細胞 (Bombyx mori 細 胞; BmN細胞) などが用いられる。 該 S f細胞としては、 例えば、 S f 9細 胞 (ATCC CRL1711) 、 S f 2 1細胞 (以上、 Vaughn, J.しら、 イン ·ヴイボ (In Vivo) , 13, 213-217, (1977)) などが用いられる。
昆虫としては、 例えば、 カイコの幼虫などが用いられる 〔前田ら、 ネィチヤ 一 (Nature) , 3 15巻, 592 (1985)〕 。
動物細胞としては、 例えば、 サル細胞 COS— 7, Ve r o, チャイニーズ ハムスター細胞 CHO (以下、 CHO細胞と略記) , dh f r遺伝子欠損チヤ ィニーズハムスター細胞 CHO (以下、 CHO (d h f r— ) 細胞と略記) , マウス L細胞, マウス A t T— 20, マウスミエローマ細胞, マウス ATDC 5細胞, ラット GH3, ヒト FL細胞などが用いられる。
ェシエリヒア属菌を形質転換するには、 例えば、 プロシージングズ *ォブ ' ザ ·ナショナル,アカデミー ·ォブ ·サイェンジィズ ·ォブ ·ザ ·ュ一エスェ - (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) , 69巻, 2 1 10 ( 1972)やジーン (Gene) , 1 7巻, 107 (1982 )などに記載の方法に従って行なうことが できる。
バチルス属菌を形質転換するには、 例えば、 モレキュラー ·アンド ·ジエネ ラル ·ジエネティックス (Molecular & General Genetics) , 168巻, 1 1 1 (1 979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、 例えば、 メソッズ ·イン 'ェンザィモ口ジー
(Methods in Enzymology) , 1 94巻, 182— 187 (1 991) 、 プロシ —ジングズ ·ォブ ·ザ ·ナショナル ·アカデミー ·ォブ ·サイェンシィズ ·ォ ブ .ザ.ユーエスエー (Pro Natl. Acad. Sci. USA) , 75巻, 1 929 (1 978) などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆 細胞または昆虫を形質転換するには、 例えば、 バイオ テクノロジー
(Bio/Technology) ,6, 47 - 55 (1988)などに記載の方法に従って行なうことがで さる。
動物細胞を形質転換するには、 例えば、 細胞工学別冊 8 新細胞工学実験プ ロトコール. 263— 267 (1 9.95) (秀潤社発行) 、 ヴイロロジー
(Virology) , 52巻, 456 ( 1973 )に記載の方法に従って行なうことが できる。
このようにして、 タンパク質をコードする DNAを含有する発現ベクターで 形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がェシエリヒア属菌、 バチルス属菌である形質転換体を培養する際、 培 養に使用される培地としては液体培地が適当であり、 その中には該形質転換体 の生育に必要な炭素源、 窒素源、 無機物その他が含有せしめられる。 炭素源と しては、 例えば、 グルコース、 デキストリン、 可溶性澱粉、 ショ糖など、 窒素 源としては、 例えば、 アンモニゥム塩類、 硝酸塩類、 コーンスチープ' リカー, ペプトン、 カゼイン、 肉エキス、 大豆粕、 バレイショ抽出液などの無機または 有機物質、 無機物としては、 例えば、 塩化カルシウム、 リン酸二水素ナトリウ ム、 塩^マグネシウムなどが挙げられる。 また、 酵母エキス、 ビタミン類、 成 長促進因子などを添加してもよい。 培地の p Hは約 5〜 8が望ましい。
ェシエリヒア属菌を培養する際の培地としては、 例えば、 グルコース、 カザ ミノ酸を含む M 9培地 〔ミラー (Miller) , ジャーナル ·ォブ ·ェクスぺリメ ンッ 'イン 'モレキュラー 'ジェネティックス (Journal of Experiments in Molecular Genetics) , 431—433, Cold Spring Harbor laboratory, New York 1972〕 が好ましい。 ここに必要によりプロモーターを効率よく働 かせるために、 例えば、 3 /3—インドリルアクリル のような薬剤を加えるこ とができる。
宿主がェシエリヒア属菌の場合、 培養は通常約 15〜43 で約 3〜24時 間行ない、 必要により、 通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、 培養は通常約 30〜4 Ot:で約 6〜24時間行 ない、 必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、 培地としては、 例えば、 バーク ホールダー (Burkholder) 最小培地 〔Bostian, K. L. ら、 プロシージングズ. ォブ ·ザ ·ナショナル ·アカデミー ·ォブ ·サイェンシィズ ·ォブ ·ザ ·ユー エスェ一 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) , 77巻, 4505 (1980)〕 や 0.5%カザミノ酸を含有する SD培地 〔Bitter, G. A. ら、 プロシージング
ズ.ォブ ·ザ ·ナショナル ·アカデミー ·ォブ ·サイェンシィズ ·ォブ ·ザ · ュ一エスエー (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) , 81巻, 5330 ( 198 4) 〕 が挙げられる。 培地の pHは約 5〜 8に調整するのが好ましい。 培養は 通常約 20ΐ:〜 35でで約 24〜 72時間行ない、 必要に応じて通気や撹拌を 加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、 培地としては、 Grace s Insect Medium (Grace, T. C.,不イチヤー
(Nature) , 195,788 (1962)) に非動化した 10 %ゥシ血清等の添加物を適宜カロ えたものなどが用いられる。 培地の pHは約 6. 2〜6. 4に調整するのが好 ましい。 培養は通常約 27 で約 3〜 5日間行ない、 必要に応じて通気や撹拌 を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、 培地としては、 例えば、 約 5〜 20%の胎児牛血清を含む MEM培地 〔サイエンス (Science) , 122巻, 501 (1952)〕 , DMEM培地 〔ヴイロロジー (Virology) , 8巻, 39 6 (1959)) , RPM I 1640培地 〔ジャーナル'ォブ ·ザ ·アメリカ ン ·メアイカル ·アソシエーション (The Journal of the American Medical Association) 199巻, 519 (1967)〕 , 199培地 〔プロシ一ジング' ォブ ·ザ ·ソサイエティ ·フォー ·ザ ·バイオロジカル ·メディスン
(Proceeding of the Society for the Biological Medicine) , 73巻, 1 (1950)〕 などが用いられる。 pHは約 6〜8であるのが好ましい。 培養は 通常約 30t:〜 40 で約15〜60時間行ない、 必要に応じて通気や撹拌を 加える。
以上のようにして、 形質転換体の細胞内、 細胞膜または細胞外に本発明の夕 ンパク質を生成せしめることができる。
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、 例えば、 下記の方 法により行なうことができる。'
本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、 培養 後、 公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、 これを適当な緩衝液に懸濁し、 超 音波、 リゾチームおよび Zまたは凍結融解などによつて菌体ぁるいは細胞を破
壊したのち、 遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適 宜用いられる。 緩衝液の中に尿素や塩酸グァニジンなどの蛋白質変性剤や、 ト リトン X— 1 0 0 TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。 培養液中に夕シ パク質が分泌される場合には、 培養終了後、 それ自体公知の方法で菌体あるい は細胞と上清とを分離し、 上清を集める。
このようにして得られた培養上清、 あるいは抽出液中に含まれるタンパク質 の精製は、 自体公知の分離 ·精製法を適切に組み合わせて行なうことができる < これらの公知の分離、 精製法としては、 塩析ゃ溶媒沈澱法などの溶解度を利用 する方法、 透析法、 限外ろ過法、 ゲルろ過法、 および S D S—ポリアクリルァ ミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、 イオン交換ク 口マトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、 ァフィ二ティークロマトグ ラフィ一などの特異的親和性を利用する方法、 逆相高速液体クロマトグラフィ 一などの疎水性の差を利用する方法、 等電点電気泳動法などの等電点の差を利 用する方法などが用いられる。
かくして得られるタンパク質が遊離体で得られた場合には、 自体公知の方法 あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、 逆に塩で得られ た場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、 遊離体または他 の塩に変換することができる。
なお、 組換え体が産生するタンパク質を、 精製前または精製後に適当な蛋白 修飾酵素を作用させることにより、 任意に修飾を加えたり、 ポリペプチドを部 分的に除去することもできる。 蛋白修飾酵素としては、 例えば、 トリプシン、 キモトリフ°シン、 アルギニルエンドべプチダ一ゼ、 プロテインキナーゼ、 ダリ コシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する本発明のタンパク質の存在は、 特異抗体を用いたェンザィ ムィムノアッセィやウエスタンプロッティングなどにより測定することができ る。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する 抗体は、 本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩を 認識し得る抗体であれば、 ポリクローナル抗体、 モノクローナル抗体の何れで
あってもよい。
本発明で用いられるタンパク質もしぐは部分べプチドまたはその塩 (以下、 抗体の説明においては、 これらを単に本発明のタンパク質と略記する場合があ る) に対する抗体は、 本発明のタンパク質を抗原として用い、 自体公知の抗体 または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a) モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のタンパク質は、 温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位 にそ 自体あるいは担体、 希釈剤とともに投与される。 投与に際して抗体産生 能を高めるため、 完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバン トを投与してもよい。 投与は通常 2〜 6週毎に 1回ずつ、 計 2〜10回程度行 われる。 用いられる温血動物としては、 例えば、 サル、 ゥサギ、 ィヌ、 モルモ ット、 マウス、 ラット、 ヒッジ、 ャギ、 ニヮトリが挙げられるが、 マウスおよ びラッ卜が好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、 抗原で免疫された温血動物、 例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の 2〜 5日後に脾 臓またはリンパ節を採取し、 それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種 動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、 モノク口一ナル抗体産生ハイブリ ドーマを調製することができる。 抗血清中の抗体価の測定は、 例えば、 後記の 標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、 抗体に結合した標識剤の活性 を測定することにより行なうことができる。 融合操作は既知の方法、 例えば、 ケーラーとミルスタインの方法 〔ネイチヤー (Nature)、 256、 495 (1975)] に 従い実施することができる。 融合促進剤としては、 例えば、 ポリエチレンダリ コール (PEG) やセンダイウィルスなどが挙げられるが、 好ましくは PEG が用いられる。
骨髄腫細胞としては、 例えば、 NS— 1、 P 3U1、 SP 2/0、 AP— 1 などの温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、 P 3 U 1が好ましく用いられる。 用いられる抗体産生細胞 (脾臓細胞) 数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は . 1 : :!〜 20 : 1程度であり、 PEG (好ましくは PEG 1000〜PEG6
0 0 0 ) が 1 0〜8 0 %程度の濃度で添加され、 2 0〜4 0 °C、 好ましくは 3 0〜3 7 °Cで 1〜 1 0分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を 実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイプリドーマのスクリーニングには種々の方法が 使用できるが、 例えば、 タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させ た固相 (例、 マイクロプレート) にハイプリドーマ培養上清を添加し、 次に放 射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体 (細胞融合に用いられる 細胞がマウスの場合、 抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる) またはプロ ティン Aを加え、 固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、 抗免疫 グロブリン抗体またはプロテイン Aを吸着させた固相にハイプリドーマ培養上 清を添加し、 放射性物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、 固相に結合 したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、. 自体公知あるいはそれに準じる方法に従って 行なうことができる。 通常 HA T (ヒポキサンチン、 アミノプテリン、 チミジ ン) を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。 選別および育種用培地 としては、 ハイプリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても 良い。 例えば、 1〜2 0 %、 好ましくは 1 0〜2 0 %の牛胎児血清を含む R P M l 1 6 4 0培地、 1〜 1 0 %の牛胎児血清を含む G I T培地 (和光純薬工業 (株) ) あるいはハイプリドーマ培養用無血清培地 (S F M— 1 0 1、 日水製 薬 (株) ) などを用いることができる。 培養温度は、 通常 2 0〜4 0 :、 好ま しくは約 3 7でである。 培養時間は、 通常 5日〜 3週間、 好ましくは 1週間〜 2週間である。 培養は、 通常 5 %炭酸ガス下で行なうことができる。 ハイプリ ドーマ培養上清の抗体価は、 上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定 できる。
( b ) モノクローナル抗体の精製 ' モノクローナル抗体の分離精製は、 自体公知の方法、 例えば、 免疫グロプリ ンの分離精製法 〔例、 塩析法、 アルコール沈殿法、 等電点沈殿法、 電気泳動法、 イオン交換体 (例、 D E A E ) による吸脱着法、 超遠心法、 ゲルろ過法、 抗原 結合固相あるいはプロテイン Aあるいはプロテイン Gなどの活性吸着剤により
抗体のみを採取し、 結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕 に従って行な うことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、 それ自体公知あるいはそれに準じる方法に 従って製造することができる。 例えば、 免疫抗原 (タンパク質抗原) 自体、 あ るいはそれとキャリア一蛋白質との複合体をつくり、 上記のモノクローナル抗 体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、 該免疫動物から本発明のタンパ ク質に対する抗体含有物を採取して、 抗体の分離精製を行なうことにより製造 することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合 体に関し、 キヤリァ一蛋白質の種類およびキヤリァ一とハプテンとの混合比は、 キヤリァ一に架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、 どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、 例えば、 ゥシ血清アルブ ミンゃゥシサイログロプリン、 へモシァニン等を重量比でハプテン 1に対し、 約 0 . 1〜2 0、 好ましくは約 1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる c また、 ハプテンとキャリアーの力プリングには、 種々の縮合剤を用いること ができるが、 グルタルアルデヒドやカルポジイミド、 マレイミド活性エステル、 チオール基、 ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。 縮合生成物は、 温血動物に対して、 抗体産生が可能な部位にそれ自体あるい は担体、 希釈剤とともに投与される。 投与に際して抗体産生能を高めるため、 完全フロイントアジュバントゃ不完全フロイントアジュバントを投与してもよ い。 投与は、 通常約 2〜 6週毎に 1回ずつ、 計約 3〜1 0回程度行なわれる。 ポリクロ一ナル抗体は、 上記の方法で免疫された温血動物の血液、 腹水など、 好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、 上記の抗血清中の抗体価の測定 と同様にして測定できる。 ポリクローナル抗体の分離精製は、 上記のモノクロ ーナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうこ とができる。
本発明で用いられるタンパク質または部分べプチドをコードするポリヌクレ
ォチド (例、 DNA (以下、 アンチセンスポリヌクレオチドの説明においては、 これらの DNAを本発明の DNAと略記する場合がある) ) の塩基配列に相補 的な、 または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンス ボリヌクレオチドとしては、 本発明の DNAの塩基配列に相補的な、 または実 質的に相補的な塩基配列またはその一部を有し、 該 DNAの発現を抑制し得る 作用を有するものであれば、 いずれのアンチセンスポリヌクレオチドであって もよいが、 アンチセンス DNAが好ましい。
本発明の DNAに実質的に相補的な塩基配列とは、 例えば、 本発明の DNA に相補的な塩基配列 (すなわち、 本発明の DNAの相補鎖) の全塩基配列ある いは部分塩基配列と約 70%以上、 好ましくは約 80%以上、 より好ましくは 約 90%以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性を有する塩基配列などが 挙げられる。 特に、 本発明の DNAの相補鎖の全塩基配列うち、 (ィ) 翻訳阻 害を指向したアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、 本発明のタンパク質の N末端部位をコードする部分の塩基配列 (例えば、 開始コドン付近の塩基配列 など) の相補鎖と約 70%以上、 好ましくは約 80%以上、 より好ましくは約 90%以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性を有するアンチセンスポリ ヌクレオチドが、 (口) RNa s eHによる RNA分解を指向するアンチセン スポリヌクレオチドの場合は、 イントロンを含む本発明の DN Aの全塩基配列 の相補鎖と約 70%以上、 好ましくは約 80%以上、 より好ましくは約 90% 以上、 最も好ましくは約 95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレ ォチドがそれぞれ好適である。
具体的には、 配列番号: 2で表わされる塩基配列を含有する DN Aの塩基配 列に相補的な、 もしくは実質的に相補的な塩基配列、 またはその一部分を有す るアンチセンスポリヌクレオチド、 好ましくは例えば、 配列番号: 2で表わさ れる塩基配列を含有する DN Aの塩基配列に相補な塩基配列、 またはその一部 分を有するアンチセンスポリヌクレオチド (より好ましくは、 配列番号: 2で 表わされる塩基配列を含有する DNAの塩基配列に相補な塩基配列、 またはそ の一部分を有するアンチセンスポリヌクレオチド) などが挙げられる。
アンチセンスポリヌクレオチドは通常、 10〜40個程度、 好ましくは 15
〜 3 0個程度の塩基から構成される。
ヌクレア一ゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、 アンチセンス D N Aを構成する各ヌクレオチドのりん酸残基 (ホスフェート) は、 例えば、 ホ スホロチォエート、 メチルホスホネート、 ホスホロジチォネートなどの化学修 飾りん酸残基に置換されていてもよい。 また、 各ヌクレオチドの糖 (デォキシ リポース) は、 2, —0 _メチル化などの化学修飾糖構造に置換されていても よいし、 塩基部分 (ピリミジン、 プリン) も化学修飾を受けたものであっても よく、 配列番号: 2で表わされる塩基配列を有する D N Aにハイブリダィズす るものであればいずれのものでもよい。 これらのアンチセンスポリヌクレオチ ドは、 公知の D N A合成装置などを用いて製造することができる。
本発明に従えば、 本発明のタンパク質遺伝子の複製または発現を阻害するこ とのできるアンチセンスポリヌクレオチドを、 クローン化した、 あるいは決定 されたタンパク質をコードする D N Aの塩基配列情報に基づき設計し、 合成し うる。 かかるヌクレオチド (核酸) は、 本発明のタンパク質遺伝子の R N Aと ハイブリダィズすることができ、 該 R N Aの合成または機能を阻害することが できるか、 あるいは本発明のタンパク質関連 R N Aとの相互作用を介して本発 明のタンパク質遺伝子の発現を調節 ·制御することができる。 本発明のタンパ ク質関連 R N Aの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、 および本発明 のタンパク質関連 R N Aと特異的にハイブリダィズすることができるポリヌク レオチドは、 生体内および生体外で本発明のタンパク質遺伝子の発現を調節 - 制御するのに有用であり、 また病気などの治療または診断に有用である。 用語 「対応する」 とは、 遺伝子を含めたヌクレオチド、 塩基配列または核酸の特定 の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。 ヌクレオチド. 塩基配列または核酸とペプチド (蛋白質) との間で 「対応する」 とは、 ヌクレ ォチド (核酸) の配列またはその相補体から誘導される指令にあるペプチド
(蛋白質) のアミノ酸を通常指している。 タンパク質遺伝子の 5 ' 端ヘアピン ループ、 5 ' 端 6—ベースペア ' リピート、 5 ' 端非翻訳領域、 ポリペプチド 翻訳開始コドン、 蛋白質コード領域、 O R F翻訳終止コドン、 3 ' 端非翻訳領 域、 3 ' 端パリンドローム領域、 および 3 ' 端ヘアピンループは好ましい対象
領域として選択しうるが、 タンパク質遺伝子内の如何なる領域も対象として選 択しうる。
目的核酸と、 対象領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関 係は、 対象物とハイブリダィズすることができるポリヌクレオチドとの関係は、 「アンチセンス」 であるということができる。 アンチセンスポリヌクレオチド は、 2—デォキシ— D—リポースを含有しているポリヌクレオチド、 D—リポ ースを含有しているポリヌクレオチド、 プリンまたはピリミジン塩基の N—グ 'リコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、 あるいは非ヌクレオチド 骨格を有するその他のポリマー (例えば、 市販の蛋白質核酸および合成配列特 異的な核酸ポリマー) または特殊な結合を含有するその他のポリマー (但し、 該ポリマーは D N Aや R N A中に見出されるような塩基のペアリングゃ塩基の 付着を許容する配置をもつヌク 1 ォチドを含有する) などが挙げられる。 それ らは、 2本鎖 D N A、 1本鎖 D NA、 2本鎖 R N A、 1本鎖 R NA、 さらに D NA: R N Aハイブリッドであることができ、 さらに非修飾ポリヌクレオチド (または非修飾オリゴヌクレオチド) 、 さらには公知の修飾の付加されたもの、 例えば当該分野で知られた標識のあるもの、 キャップの付いたもの、 メチル化 されたもの、 1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、 分子内 ヌクレオチド修飾のされたもの、 例えば非荷電結合 (例えば、 メチルホスホネ ート、 ホスホトリエステル、 ホスホルアミデート、 力ルバメートなど) を持つ もの、 電荷を有する結合または硫黄含有結合 (例えば、 ホスホロチォエート、 ホスホロジチォエートなど) を持つもの、 例えば蛋白質 (ヌクレア一ゼ、 ヌク レア—ゼ*インヒビ夕—、 トキシン、 抗体、 シグナルペプチド、 ポリ一 L—リ ジンなど) や糖 (例えば、 モノサッカライドなど) などの側鎖基を有している もの、 インターカレント化合物 (例えば、 ァクリジン、 ソラレンなど) を持つ もの、 キレート化合物 (例えば、 金属、 放射活性をもつ金属、 ホウ素、 酸化性 の金属など) を含有するもの、 アルキル化剤を含有するもの、 修飾された結合 を持つもの (例えば、 ひァノマ一型の核酸など) であってもよい。 ここで 「ヌ クレオシド」 、 「ヌクレオチド」 および 「核酸」 とは、 プリンおよびピリミジ ン塩基を含有するのみでなく、 修飾されたその他の複素環型塩基をもつような
ものを含んでいて良い。 こうした修飾物は、 メチル化されたプリンおよびピリ ミジン、 ァシル化されたプリンおよびピリミジン、 あるいはその他の複素環を 含むものであってよい。 修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチ ドはまた糖部分が修飾されていてよく、 例えば、 1個以上の水酸基がハロゲン とか、 脂肪族基などで置換されていたり、 あるいはエーテル、 ァミンなどの官 能基に変換されていてよい。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、 R NA、 D N A、 あるいは修飾 された核酸 (R N A、 D NA) である。 修飾された核酸の具体例としては核酸 の硫黄誘導体ゃチォホスフェート誘導体、 そしてポリヌクレオシドアミドゃォ リゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、 それに限定さ れるものではない。 本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設 計されうる。 すなわち、 細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする. アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、 目標とするセンス鎖に対する親 和性をより大きなものにする、 そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の 毒性をより小さなものにする。
こうして修飾は当該分野で数多く知られており、 例えば J. Kawakami et al . , P arm Tech Japan, Vol . 8, pp. 247, 1992 ; Vol . 8, pp. 395, 1992 ; S. T.
Crooke et al . ed. , Ant i sense Research and Appl icat ions, CRC Press, 1993 などに開示がある。
本発明のアンチセンス核酸は、 変化せしめられたり、 修飾された糖、 塩基、 結合を含有していて良く、 リボゾーム、 ミクロスフエアのような特殊な形態で 供与されたり、 遺伝子治療により適用されたり、 付加された形態で与えられる ことができうる。 こうして付加形態で用いられるものとしては、 リン酸基骨格 の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、 細胞膜との 相互作用を高めたり、 核酸の取込みを増大せしめるような脂質 (例えば、 ホス ホリピド、 コレステロールなど) といった疎水性めものが挙げられる。 付加す るに好ましい脂質としては、 コレステロールやその誘導体 (例えば、 コレステ リルクロ口ホルメート、 コール酸など) が挙げられる。 こうしたものは、 核酸 の 3 ' 端あるいは 5 ' 端に付着させることができ、 塩基、 糖、 分子内ヌクレオ
シド結合を介して付着させることができうる。 その他の基としては、 核酸の 3 ' 端あるいは 5, 端に特異的に配置されたキャップ用の基で、 ェキソヌクレ ァ一ゼ、 R N a s eなどのヌクレア一ゼによる分解を阻止するためのものが挙 げられる。 こうしたキャップ用の基としては、 ポリエチレングリコール、 テト ラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水 酸基の保護基が挙げられるが、 それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は; 本発明の形質転換体、 本発明の生体内や生 体外の遺伝子発現系、 あるいは本発明のタンパク質の生体内や生体外の翻訳系 を用いて調べることができる。 該核酸それ自体公知の各種の方法で細胞に適用 できる。 以下に、 本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩 (以下、 本 発明のタンパク質と略記する場合がある) 、 本発明のタンパク質または部分べ プチドをコードするポリヌクレオチド (例、 D N A (以下、 本発明の D N Aと 略記する場合がある) ) 、 本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそ の塩に対する抗体 (以下、 本発明の抗体と略記する場合がある) 、 および本発 明の D NAのアンチセンスポリヌクレオチド (以下、 本発明のアンチセンスポ リヌクレオチドと略記する場合がある) の用途を説明する。 ( 1 ) 疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
本発明のタンパク質は小胞体ストレスを伴う神経細胞死により発現が上昇し、 小胞体ストレス依存性の細胞死を抑制する。 一方、 癌細胞株においては、 虚血、 酸化ストレスにより P53非依存的に発現が上昇し、 DNA損傷を伴う刺激 (UV照射、 ドキソルビシン) により、 P53依存的に発現が上昇する。 さらに、 本発明のタン パク質を高発現させた癌細胞株は、 血清除去、 DNA損傷による細胞死に感受性で あるが、 酸化ストレス、 虚血による細胞死に抵抗性を示す。 従って、 本発明の タンパク質の活性を調節する化合物またはその塩は、 例えば、 神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬
化症、 プリオン病、 クロイツフェルト一ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿 病性ニュ一ロバチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも 膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝 臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 塍臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などの予防 ·治療剤として使用することがで きる。
したがって、 本発明のタンパク質は、 本発明のタンパク質の活性を調節する 化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
すなわち、 本発明は、 本発明のタンパク質を用いることを特徴とする本発明 のタンパク質の活性を調節 (促進または阻害) する化合物またはその塩のスク リーニング方法を提供する。
具体的には、 (i) 本発明のタンパク質の活性と、 (i i ) 本発明のタンパク質 と試験化合物の混合物の活性との比較をすることを特徴する本発明のタンパク 質の活性を調節 (促進または阻害) する化合物またはその塩のスクリーニング 方法が用いられる。
上記の本発明の夕ンパク質は、 本発明の夕ンパク質を産生する能力を有する 細胞を培養することによって製造されたものなどが用いられる。 さらには、 前 記細胞の培養液、 その上清、 細胞破碎物などを用いてもよい。
本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞としては、 例えば、 前述し た本発明のタンパク質をコードする D N Aを含有するベクターで形質転換され た宿主 (形質転換体) が用いられる。 宿主としては、 例えば、 C O S 7細胞、 C H O細胞、 H E K 2 9 3細胞などの動物細胞が好ましく用いられる。 該スク リーニングには、 例えば、 前述の方法で培養することによって、 本発明のタン パク質を細胞外に分泌させる、 または細胞内に発現させる形質転換体が好まし く用いられる。 本発明のタンパク質を発現し得る細胞の培養方法は、 前記した 本発明の形質変換体の培養法と同様である。
試験化合物としては、 例えばペプチド、 タンパク質、 非ペプチド性化合物、 合成化合物、 発酵生産物、 細胞抽出液、 植物抽出液、 動物組織抽出液などがあ げられる。
例えば、 上記 (i i) の場合における活性が上記 (i ) の場合に比べて、 約 2 0 %以上、 好ましくは 3 0 %以上、 より好ましくは約 5 0 %以上上昇させる試 験化合物を、 本発明のタンパク質の活性を促進する化合物として、 上記 (i i ) の場合における活性が上記 (i) の場合に比べて、 約 2 0 %以上、 好ましくは 3 0 %以上、 より好ましくは約 5 0 %以上減少させる試験化合物を本発明のタン パク質の活性を阻害する化合物として選択することができる。
本発明のタンパク質の活性を促進する活性を有する化合物は、 本発明のタン パク質の作用を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のタンパク質の活性を阻害する活性を有する化合物は、 本発明のタン パク質の生理活性を抑制する めの安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られ る化合物またはその塩は、 例えば、 ペプチド、 タンパク、 非 プチド性化合物、 合成化合物、 発酵生産物、 細胞抽出液、 植物抽出液、 動物組織抽出液、 血漿な どから選ばれた化合物である。 該化合物の塩としては、 前記した本発明のぺプ チドの塩と同様のものが用いられる。
さらに、 本発明のタンパク質をコードする遺伝子も、 小胞体ストレスを伴う 神経細胞死誘導により発現が増加するので、 本発明のタンパク質をコードする 遺伝子の発現をする化合物またはその塩は、 例えば、 神経変性疾患 〔例、 アル ッハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性ァ ルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プ リオン病、 グロイツフェルト一ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性ニュ 一口パチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血 など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆 道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などの予防 .治療剤として使用することができる。
したがって、 本発明のポリヌクレオチド (例、 D N A) は、 本発明のタンパ ク質をコ一ドする遺伝子の発現を調節する化合物またはその塩のスクリーニン グのための試薬として有用である。
スクリ "^ニング方法としては、 (H i) 本発明のタンパク質を産生する能力を
有する細胞を培養した場合と、 (iv) 試験化合物の存在下、 本発明で用いられ るタンパク質を産生する能力を有する細胞を培養した場合との比較を行うこと を特徴とするスクリーニング方法が挙げられる。
上記方法において、 (i i i ) と (iv) の場合における、 前記遺伝子の発現量 (具体的には、 本発明のタンパク質量または前記タンパク質をコードする mR N A量) を測定して、 比較する。
試験化合物および本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞としては、 上記と同様のものが挙げられる。
タンパク質量の測定は、 公知の方法、 例えば、 本発明のタンパク質を認識す る抗体を用いて、 細胞抽出液中などに存在する前記タンパク質を、 ウエスタン 解析、 E L I S A法などの方法またはそれに準じる方法に従い測定することが できる。
mR NA量の測定は、 公知の方法、 例えば、 プローブとして配列番号: 2ま たはその一部分を含有する核酸を用いるノーザンハイブリダィゼーシヨン、 あ るいはプライマーとして配列番号: 2またはその一部分を含有する核酸を用い る P C R法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
例えば、 上記 (iv) の場合における遺伝子発現量を、 上記 (i i i) の場合に比 ベて、 約 2 0 %以上、 好ましくは 3 0 %以上、 より好ましくは約 5 0 %以上上 昇させる試験化合物を、 本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進 する化合物として、 約 2 0 %以上、 好ましくは 3 0 %以上、 より好ましくは約 5 0 %以上阻害する試験化合物を、 本発明のタンパク質をコードする遺伝子の 発現を抑制する化合物として選択することができる。
本発明のスクリーニング用キットは、 本発明で用いられるタンパク質もしく は部分ペプチドまたはその塩、 または本発明で用いられるタンパク質もしくは 部分ペプチドを産生する能力を有する細胞を含有するものである。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られ る化合物またはその塩は、 上記した試験化合物、 例えば、 ペプチド、 タンパク、 非ペプチド性化合物、 合成化合物、 発酵生産物、 細胞抽出液、 植物抽出液、 動 物組織抽出液、 血漿などから選ばれた化合物またはその塩であり、 本発明の夕
ンパク質の活性を調節する化合物またはその塩である。
該化合物の塩としては、 前記した本発明のタンパク質の塩と同様のものが用 いられる。
本発明の夕ンパク質の活性を調節する化合物またはその塩、 および本発明の タンパク質をコ一ドする遺伝子の発現を調節する化合物またはその塩はそれぞ れ、 例えば、 神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮 '14.側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェルト—ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロバチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性 脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前 立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精 巣癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などの予防,治療 剤として有用である。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られ る化合物またはその塩を上述の予防 '治療剤として使用する場合、 常套手段に 従って製剤化することができる。
例えば、 経口投与のための組成物としては、 固体または液体の剤形、 具体的 には錠剤 (糖衣錠、 フィルムコーティング錠を含む) 、 丸剤、 顆粒剤、 散剤、 カプセル剤 (ソフトカプセル剤を含む) 、 シロップ剤、 乳剤、 懸濁剤などがあ げられる。 かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、 製剤分野におい て通常用いられる担体、 希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。 例えば、 錠剤用の担体、 賦形剤としては、 乳糖、 でんぷん、 蔗糖、 ステアリン酸マグネ シゥムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、 例えば、 注射剤、 坐剤などが用いられ、 注射剤は静脈注射剤、 皮下注射剤、 皮内注射剤、 筋肉注射剤、 点滴注射剤、 関 節内注射剤などの剤形を包含する。 かかる注射剤は、 自体公知の方法に従って、 例えば、 上記抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは 油性液に溶解、 懸濁または乳化することによって調製する。 注射用の水性液と しては、 例えば、 生理食塩水、 ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが
用いられ、 適当な溶解補助剤、 例えば、 アルコール (例、 エタノール) 、 ポリ アルコール (例、 プロピレングリコール、 ポリエチレングリコール) 、 非ィォ ン界面活性剤 〔例、 ポリソルベート 80、 HCO- 50 (polyoxyethylene (5 Omol) adduct of hydrogenated castor oil) 〕 なとこ併用してもよレ 。 油性 液としては、 例えば、 ゴマ油、 大豆油などが用いられ、 溶解補助剤として安息 香酸ベンジル、 ベンジルアルコールなどを併用してもよい。 調製された注射液 は、 通常、 適当なアンプルに充填される。 直腸投与に用いられる坐剤は、 上記 抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。 上記の経口用または非経口用医薬組成物は、 活性成分の投与量に適合するよ うな投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。 かかる投薬単位の剤形 としては、 錠剤、 丸剤、 カプセル剤、 注射剤 (アンプル) 、 坐剤などが例示さ れ、 それぞれの投薬単位剤形当たり通常 5〜5 Q.0mg、 とりわけ注射剤では 5〜100mg、 その他の剤形では 10〜250 m gの上記化合物が含有され ていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、 上記化合物との配合により好ましくない相互作用 を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、 例えば、 ヒトまた は温血動物 (例えば、 マウス、 ラット、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブ夕、 ゥシ、 ゥマ、 トリ、 ネコ、 ィヌ、 サル、 チンパンジーなど) に対して経口的にまたは非経口 的に投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、 その作用、 対象疾患、 投与対象、 投与ル ートなどにより差異はあるが、 例えば、 アルツハイマー病の治療の目的で本発 明のタンパク質の活性を調節する化合物またはその塩を経口投与する場合、 一 般的に成人 (体重 60 kgとして) においては、 一日につき該化合物またはそ の塩を約 0.1〜: L 0 Omg、 好ましくは約 1. 0〜 50 mg、 より好ましくは 約 1. 0〜20mg投与する。 非経口的に投与する場合は、 該化合物またはそ の塩の 1回投与量は投与対象、 対象疾患などによっても異なるが、 例えば、 ァ ルツハイマー病の治療の目的で本発明のタンパク質の活性を調節する化合物ま たはその塩を注射剤の形で通常成人 (体重 60 kgとして) に投与する場合、
一日につき該化合物またはその塩を約 0. 01〜30mg程度、 好ましくは約 0. 1〜2 Omg程度、 より好ましくは約 0. 1〜1 Omg程度を静脈注射に より投与するのが好都合である。 他の動物の場合も、 体重 6 O kg当たりに換 算した量を投与することができる。
(2) 本発明のタンパク質、 その部分ペプチドまたはその塩の定量
本発明のタンパク質に対する抗体 (以下、 本発明の抗体と略記する場合があ る) は、 本発明のタンパク質を特異的に認識することができるので、 被検波中 の本発明のタンパク質の定量、 特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに 使用することができる。
すなわち、 本発明は、
(i) 本発明の抗体と、 被検液および標識化された本発明のタンパク質とを競 合的に反応させ、 該抗体に結合した標識化された本発明のタンパク質の割合を 測定することを特徴とする被検波中の本発明のタンパク質の定量法、 および (ii) 被検波と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の 別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、 不溶化担体上の標識剤の 活性を測定することを特徴とする被検波中の本発明のタンパク質の定量法を提 供する。
上記 (ii) の定量法においては、 一方の抗体が本発明のタンパク質の N端部 を認識する抗体で、 他方の抗体が本発明のタンパク質の C端部に反応する抗体 であることが望ましい。
また、 本発明のタンパク質に対するモノクローナル抗体 (以下、 本発明のモ ノクローナル抗体と称する場合がある) を用いて本発明のタンパク質の定量を 行なえるほか、 組織染色等による検出を行なうこともできる。 これらの目的に は、 抗体分子そのものを用いてもよく、 また、 抗体分子の F(al)')2 、 Fa ある いは Fab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いる本発明のタンパク質の定量法は、 特に制限されるべき ものではなく、 被測定液中の抗原量 (例えば、 タンパク質量) に対応した抗体、 抗原もしくは抗体—抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、
これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定 法であれば、 いずれの測定法を用いてもよい。 例えば、 ネフロメトリー、 競合 法、 ィムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、 感度、 特異性の点で、 後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、 例えば、 放射性同位 元素、 酵素、 蛍光物質、 発光物質などが用いられる。 放射性同位元素としては、 例えば、 〔1 2 5 I〕 、 〔1 3 1 I〕 、 〔3 H〕 、 〔1 4 C〕 などが用いられる。 上記 酵素としては、 安定で比活性の大きなものが好ましく、 例えば、 0—ガラクト シダーゼ、 /3—ダルコシダーゼ、 アルカリフォスファタ一ゼ、 パーォキシダー ゼ、 リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。 蛍光物質としては、 例えば、 フル ォレスカミン、 フルォレツセンイソチオシァネートなどが用いられる。 発光物 質としては、 例えば、 ルミノール、 ルミノール誘導体、 ルシフェリン、 ルシゲ ニンなどが用いられる。 さらに、 抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビォチ ン一アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、 物理吸着を用いてもよく、 また通常 タンパク質あるいは酵素等を不溶化、 固定化するのに用いられる化学結合を用 いる方法でもよい。. 担体としては、 ァガロース、 デキストラン、 セルロースな どの不溶性多糖類、 ポリスチレン、 ポリアクリルアミド、 シリコン等の合成榭 脂、 あるいはガラス等が挙げられる。
サンドィツチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液 を反応させ (1次反応) 、 さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体 を反応させ (2次反応) たのち、 不溶化担体上の標識剤の活性を測定すること により被検液中の本発明のタンパク質量を定量することができる。 1次反応と 2次反応は逆の順序に行っても、 また、 同時に行なってもよいし時間をずらし て行なってもよい。 標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じること ができる。 また、 サンドイツ,チ法による免疫測定法において、 固相用抗体ある いは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも 1種類である必要はなく、 測定感 度を向上させる等の目的で 2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による本発明のタンパク質の測定法においては、 1
次反応と 2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、 本発明のタン パク質の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。 すなわち、 1次 反応および 2次反応に用いられる抗体は、 例えば、 2次反応で用いられる抗体 が、 本発明のタンパク質の C端部を認識する場合、 1次反応で用いられる抗体 は、 好ましくは C端部以外、 例えば N端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、 例えば、 競合法、 ィムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができ る。
競合法では、 被検波中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させ たのち、 未反応の標識抗原(F ) と、 抗体と結合した標識抗原 (B) とを分離し ( B Z F分離) 、 B, Fいずれかの標識量を測定し、 被検波中の抗原量を定量 する。 本反応法には、 抗体として可溶性抗体を用い、 B / F分離をポリエチレ ングリコール、 前記抗体に対する第 2抗体などを用いる液相法、 および、 第 1 抗体として固相化抗体を用いるか、 あるいは、 第 1抗体は可溶性のものを用い 第 2抗体として固相化抗体を用いる固相化法.とが用いられる。
ィムノメトリック法では、 被検波中の坊原と固相化抗原とを一定量の標識化 抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離する力、、 あるいは、 被検液中 の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、 次に固相化抗原を加え未反応の標 識化抗体を固相に結合させたのち、 固相と液相を分離する。 次に、 いずれかの 相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、 ネフロメトリ一では、 ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生 じた不溶性の沈降物の量を測定する。 被検液中の抗原量が僅かであり、 少量の 沈降物しか得られない場合にもレーザ一の散乱を利用するレーザ一ネフロメト リーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、 特別の条件、 操作等の設定は必要とされない。 それぞれの方法における通常の 条件、 操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明の夕ンパク質の測定 系を構築すればよい。 これらの一般的な技術手段の詳細については、 総説、 成 書などを参照することができる。
例えば、 入江 寛編 「ラジオィムノアツセィ」 (講談社、 昭和 49年発行) 、 入江 寛編 「続ラジオィムノアツセィ」 (講談社、 昭和 54年発行) 、 石川栄 治ら編 「酵素免疫測定法」 (医学書院、 昭和 53年発行) 、 石川栄治ら編 「酵 素免疫測定法」 (第 2版) (医学書院、 昭和 57年発行) 、 石川栄治ら編 「酵 素免疫測定法」 (第 3版) (医学書院、 昭和 62年発行) 、 「Methods in ENZYMOLOGYj Vol. 70 (Immunochemical Techniques (Par t A))、 同書 Vol.
73 (Immunochemical Techniques (Part B))、 同書 Vol. 74 (Immunochemical Techniques (Part C))、 同書 Vol. 84 (Immunochemical Techniques (Part
D:Selected Immunoassays)) , 同書 Voし 92 (Immunochemical Techniques (Part E:Monoclonal Ant ibodies and General Immunoassay Methods)) , 同書 Vol. 121 (Immunochemical Techniques (Part I: Hybridoma Technology and
Monoclonal Ant ibodies)) (以上、 アカデミックプレス社発行)などを参照するこ とができる。
以上のようにして、 本発明の抗体を用いることによって、 本発明のタンパク 質を感度良く定量することができる。
さらには、 本発明の抗体を用いて本発明のタンパク質の濃度を定量すること によって、 本発明のタンパク質の濃度の増加または減少が検出された場合、 例 えば、 神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若年 性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウ ン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェルト—ヤコブ病、 ハン チントン舞踏病、 糖尿病性ニューロパチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾 患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺 癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などである、 または将来 罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、 本発明の抗体は、 体液や組織などの被検体中に存在する本発明のタン パク質を検出するために使用することができる。 また、 本発明のタンパク質を 精製するために使用する抗体カラムの作製、 精製時の各分画中の本発明の夕ン パク質の検出、 被検細胞内における本発明のタンパク質の挙動の分析などのた
めに使用することができる。
(3) 遺伝子診断薬
本発明の DN Aは、 例えば、 プローブとして使用することにより、 ヒトまた は温血動物 (例えば、 ラット、 マウス、 モルモット、 ゥサギ、 トリ、 ヒッジ、 ブ夕、 ゥシ、 ゥマ、 ネコ、 ィヌ、 サル、 チンパンジーなど) における本発明の タンパク質またはその部分ペプチドをコードする DN Aまたは mRN Aの異常 (遺伝子異常) を検出することができるので、 例えば、 該 DN Aまたは mRN Aの損傷、 突然変異あるいは発現低下や、 該 DNAまたは mRNAの増加ある いは発現過多などの遺伝子診断薬として有用である。
本発明の DNAを用いる上記の遺伝子診断は、 例えば、 自体公知のノーザン ハイブリダィゼーションゃ PCR— SSCP法 (Genomics,第 5巻, 874〜879頁 (1989年)、 Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,第 86巻, 2766〜2770頁(1989年))などにより実施することが できる。
例えば、 ノーザンハイプリダイゼーシヨンにより発現過多または減少が検出 された場合や P C R— S SCP法により D N Aの突然変異が検出された場合は、 例えば神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若年 性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウ ン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェルト—ヤコブ病、 ハン チントン舞踏病、 糖尿病性ニューロバチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾 患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺 癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 塍臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などである可能性が高い と診断することができる。
(4) アンチセンスポリヌクレオチドを含有する医薬
本発明の DN Aに相補的に結合し、 該 DN Aの発現を抑制することができる 本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは低毒性であり、 生体内における本発
明のタンパク質または本発明の D N Aの機能を抑制することができるので、 例 えば、 神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若年 性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウ ン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェルト一ヤコブ病、 ハン チントン舞踏病、 糖尿病性ニューロパチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾 患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺 癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 塍臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などの予防 ·治療剤とし て使用することができる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドを上記の予防 ·治療剤として使用する場 合、 自体公知の方法に従って製剤化し、 投与することができる。
また、 例えば、 前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独あるいはレトロ ウィルスベクタ一、 アデノウイルスベクタ一、 アデノウイルスァソシエーテツ ドウィルスベクタ一などの適当なベクターに挿入した後、 常套手段に従って、 ヒトまたは哺乳動物 (例、 ラット、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブ夕、 ゥシ、 ネコ、 ィヌ、 サルなど) に対して経口的または非経口的に投与することができる。 該アンチ センスポリヌクレオチドは、 そのままで、 あるいは摂取促進のために補助剤な どの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、 遺伝子銃やハイド口ゲル力 テ一テルのようなカテーテルによって投与できる。 あるいは、 エアロゾル化し て吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、 体内動態の改良、 半減期の長期化、 細胞内取り込み効率の改善を目 的に、 前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独またはリボゾームなどの担 体とともに製剤 (注射剤) 化し、 静脈、 皮下、 病変部等に投与してもよい。
該アンチセンスポリヌクレオチドの投与量は、 対象疾患、 投与対象、 投与ル —卜などにより差異はあるが、 例えば、 アルツハイマー病の治療の目的で本発 明のアンチセンスポリヌクレオチドを投与する場合、 一般的に成人 (体重 6 0 k g ) においては、 一日につき該アンチセンスポリヌクレオチドを約 0 . 1〜 1 0 O m g投与する。
さらに、 該アンチセンスポリヌクレオチドは、 組織や細胞における本発明の
DN Aの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプロ一 ブとして使用することもできる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様に、 本発明のタンパク質をコード する RNAの一部を含有する二重鎖 RNA、 本発明のタンパク質をコードする RN Aの一部を含有するリボザィムなども、 本発明の遺伝子の発現を抑制する ことができ、 生体内における本発明で用いられるタンパク質または本発明で用 いられる DN Aの機能を抑制することができるので、 例えば、 神経変性疾患
〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬 化症、 プリオン病、 クロイツフェルト—ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿 病性ニューロパチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも 膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 龍、 肝 臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 塍臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などの予防 ·治療剤などとして使用すること ができる。
二重鎖 RNAは、 公知の方法 (例、 Nature, 411巻, 494頁, 2001年) に準じ て、 本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。 リポザィムは、 公知の方法 (例、 TRENDS in Molecular Medicine, 7巻, 221 頁, 2001年) に準じて、 本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造 することができる。 例えば、 本発明のタンパク質をコードする RNAの一部に 公知のリポザィムを連結することによって製造することができる。 本発明の夕 ンパク質をコードする RN Aの一部としては、 公知のリボザィムによって切断 され得る本発明の RNA上の切断部位に近接した部分 (RNA断片) が挙げら れる。 '
上記の二重鎖 RNAまたはリボザィムを上記予防 ·治療剤として使用する場 合、 アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、 投与することがで さる。
(5) 本発明の抗体を含有する医薬
本発明の抗体は、 例えば神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アル ッハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パ 一キンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェル トーヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロパチ一、 多発性硬化症 など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱 癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 塍臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) な どの予防 ·治療剤として使用することができる。
本発明の抗体は、 それ自体または適当な医薬組成物として投与することがで きる。 上記投与に用いられる医薬組成物は、 上記抗体またはその塩と薬理学的 に許容され得る担体、 希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。 かかる組成 物は、 経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
すなわち、 例えば、 経口投与のための.組成物としては、 固体または液体の剤 形、 具体的には錠剤 (糖衣錠、 フィルムコーティング錠を含む) 、 丸剤、 顆粒 剤、 散剤、 カプセル剤 (ソフトカプセル剤を含む) 、 シロップ剤、 乳剤、 懸濁 剤などがあげられる。 かかる組成物は公知の方法によって製造され、 製剤分野 において通常用いられる担体、 希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。 例えば、 錠剤用の担体、 賦形剤としては、 乳糖、 でんぷん、 蔗糖、 ステアリン 酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、 例えば、 注射剤、 坐剤などが用いられ、 注射剤は静脈注射剤、 皮下注射剤、 皮内注射剤、 筋肉注射剤、 点滴注射剤など の剤形を包含する。 かかる注射剤は、 公知の方法に従って、 例えば、 上記抗体 またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、 懸 濁または乳化することによって調製する。 注射用の水性液としては、 例えば、 生理食塩水、 ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、 適当な 溶解補助剤、 例えば、 アルコール (例、 エタノール) 、 ポリアルコール (例、 プロピレングリコール、 ポリエチレングリコール) 、 非イオン界面活性剤 〔例、 ポリソルべ一ト 8 0、 H C O - 5 0 (po l yoxye thyl ene (50mo l) adduc t o f hydrogenated cas tor o i l ) 〕 などと併用してもよい。 油性液としては、 例え
ば、 ゴマ油、 大豆油などが用いられ、 溶解補助剤として安息香酸ベンジル、 ベ ンジルアルコールなどを併用してもよい。 調製された注射液は、 通常、 適当な アンプルに充填される。 直腸投与に用いられる坐剤は、 上記抗体またはその塩 を通常の坐薬用基剤に混合することによつて調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、 活性成分の投与量に適合するよ うな投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。 かかる投薬単位の剤形 としては、 錠剤、 丸剤、 カプセル剤、 注射剤 (アンプル) 、 坐剤などが例示さ れ、 それぞれの投薬単位剤形当たり通常 5〜5 0 0 m g、 とりわけ注射剤では 5〜 1 0 0 m g、 その他の剤形では 1 0〜 2 5 0 m gの上記抗体が含有されて いることが好ましい。
なお前記した各組成物は、 上記抗体との配合により好ましくない相互作用を 生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
本発明の抗体を含有する上記疾患の予防 ·治療剤は低毒性であり、 そのまま 液剤として、 または適当な剤型の医薬組成物として、 ヒトまたは哺乳動物 (例、 ラット、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブ夕、 ゥシ、 ネコ、 ィヌ、 サルなど) に対して経口 的または非経口的 (例、 静脈投与) に投与することができる。 投与量は、 投与 対象、 対象疾患、 症状、 投与ルートなどによっても異なるが、 例えば、 成人の アルツハイマー病の治療のために使用する場合には、 本発明の抗体を 1回量と して、 通常 0 . 0 1〜2 O m gZ k g体重程度、 好ましくは 0 . 1〜: L O m g Z k g体重程度、 さらに好ましくは 0 . l〜5 m g Z k g体重程度を、 1日 1〜5 回程度、 好ましくは 1日 .1〜3回程度、 注射剤として投与するのが好都合であ る。 他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することが できる。 症状が特に蓽ぃ場合には、 その症状に応じて増量してもよい。
また、 本発明の抗体は、 例えば、 神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家 族性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病な ど) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイ ッフェルト一ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロバチ一、 多発 性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎
癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍 など) などの診断薬としても有用である。
(6) DNA転移動物
本発明は、 外来性の本発明のタンパク質をコードする DNA (以下、 本発明 の外来性 DNAと略記する) またはその変異 DNA (本発明の外来性変異 DN Aと略記する場合がある) を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、 本発明は、
(1) 本発明の外来性 DNAまたはその変異 DNAを有する非ヒト哺乳動物、 (2) 非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第 (1)記載の動物, .
(3) ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第 (2) 記載の動物、 および
(4) 本発明の外来性 DN Aまたはその変異 DN Aを含有し、 哺乳動物におい て発現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性 DNAまたはその変異 DNAを有する非ヒト哺乳動物 (以下、 本発明の DNA転移動物と略記する) は、 未受精卵、 受精卵、 精子およびその 始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、 好ましくは、 非ヒト哺乳動物の発生に おける胚発生の段階 (さらに好ましくは、 単細胞または受精卵細胞の段階でか つ一般に 8細胞期以前) に、 リン酸カルシウム法、 電気パルス法、 リボフェク シヨン法、 凝集法、 マイクロインジェクション法、 パーティクルガン法、 DE AE—デキス卜ラン法などにより目的とする DNAを転移することによって作 出することができる。 また、 該 DNA転移方法により、 体細胞、 生体の臓器、 組織細胞などに目的とする本発明の外来性 DNAを転移し、 細胞培養、 組織培 養などに利用することもでき、 さらに、 これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公 知の細胞融合法により融合させることにより本発明の DN A転移動物を作出す ることもできる。
非ヒト哺乳動物としては、 例えば、 ゥシ、 ブ夕、 ヒッジ、 ャギ、 ゥサギ、 ィ ヌ、 ネコ、 モルモット、 ハムスター、 マウス、 ラットなどが用いられる。 なか でも、 病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的 短く、 また、 繁殖が容易なゲッ歯動物、 とりわけマウス (例えば、 純系として、
C 57BLZ6系統, DBA 2系統など、 交雑系として、 B6 C3 Fi系統, BDFi系統, B6D2 F!系統, BALBZc系統, I CR系統など) または ラット (例えば、 Wi s t a r, SDなど) などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける 「哺乳動物」 としては、 上記の非ヒ卜哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
本発明の外来性 DNAとは、 非ヒト哺乳動物が本来有している本発明の DN Aではなく、 いったん哺乳動物から単離 ·抽出された本発明の DNAをいう。 本発明の変異 DN Aとしては、 元の本発明の DN Aの塩基配列に変異 (例え ば、 突然変異など) が生じたもの、 具体的には、 塩基の付加、 欠損、 他の塩基 への置換などが生じた DNAなどが用いられ、 また、 異常 DN Aも含まれる。 該異常 DN Aとしては、 異常な本発明のタンパク質を発現させる DN Aを意 味し、 例えば、 正常な本発明のタンパク質の機能を抑制するタンパク質を発現 させる DN Aなどが用いられる。
本発明の外来性 DNAは、 対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺 乳動物由来のものであってもよい。 本発明の DNAを対象動物に転移させるに あたっては、 該 DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合し た DNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。 例えば、 本発明 のヒト DNAを転移させる場合、 これと相同性が高い本発明の DNAを有する 各種哺乳動物 (例えば、 ゥサギ、 ィヌ、 ネコ、 モルモット、 ハムスター、 ラッ ト、 マウスなど) 由来の DNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、 本 発明のヒト DNAを結合した DNAコンストラクト (例、 ベクタ一など) を対 象哺乳動物の受精卵、 例えば、 マウス受精卵へマイクロインジェクションする ことによって本発明の DN Aを高発現する DN A転移哺乳動物を作出すること ができる。
本発明のタンパク質の発現ベクターとしては、 大腸菌由来のプラスミド、 枯 草菌由来のプラスミド、 酵母由来のプラスミド、 λファージなどのバクテリオ ファージ、 モロニ一白血病ウィルスなどのレトロウイルス、 ワクシニアウィル スまたはバキュロウィルスなどの動物ウィルスなどが用いられる。 なかでも、 大腸菌由来のプラスミド、 枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミ
ドなどが好ましく用いられる。
上記の DN A発現調節を行なうプロモー夕一としては、 例えば、 (i) ウィル ス (例、 シミアンウィルス、 サイトメガロウィルス、 モロニ一白血病ウィルス、 J Cウィルス、 乳がんウィルス、 ポリオウイルスなど) に由来する DNAのプ 口モーター、 (ii) 各種哺乳動物 (ヒ卜、 ゥサギ、 ィヌ、 ネコ、 モルモット、 ハムスター、 ラット、 マウスなど) 由来のプロモーター、 例えば、 アルブミン、 インスリン I I、 ゥロプラキン I I、 エラスター '、 エリスロポエチン、 ェン ドセリン、 筋クレアチンキナーゼ、 グリア線維性酸性タンパク質、 ダル夕チォ ン S—トランスフェラ一ゼ、 血小板由来成長因子 )3、 ケラチン K l, K 1 0お よび K 1 4、 コラーゲン I型および I I型、 サイクリック AMP依存タンパク. 質キナーゼ /3 Iサブユニット、 ジストロフィン、 酒石酸抵抗性アルカリフォス ファターゼ、 心房ナトリウム利尿性因子、 内皮レセプターチ口シンキナーゼ (一般に T i e 2と略される) 、 ナトリゥムカリゥムアデノシン 3リン酸化酵 素 (Na, K-ATP a s e) 、 ニューロフィラメント軽鎖、 メタロチォネィ ン Iおよび I I A、 メタ口プロティナ一ゼ 1組織インヒビ夕一、 MHCクラス I抗原 (H— 2 L) 、 H— r a s、 レニン、 ド一パミン )3—水酸化酵素、 甲状 腺ペルォキシダ一ゼ (TPO) 、 ペプチド鎖延長因子 1ひ (EF- 1 α) 、 βァ クチン、 αおよび 3ミオシン重鎖、 ミオシン軽鎖 1および 2、 ミエリン基礎夕 ンパク質、 チログロブリン、 Thy— 1、 免疫グロブリン、 H鎖可変部 (VN P) 、 血清アミロイド Pコンポーネント、 ミオグロビン、 トロポニン C、 平滑 筋 aァクチン、 プレプロエンケフアリン A、 バソプレシンなどのプロモータ一 などが用いられる。 なかでも、 全身で高発現することが可能なサイトメガロウ ィルスプロモーター、 ヒトペプチド鎖延長因子 1 a (EF- 1 α) のプロモー ター、 ヒトおよびニヮトリ /3ァクチンプロモーターなどが好適である。
上記べクタ一は、 DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャー R ΝΑの転写を終結する配列 (一般にタ一ミネタ一と呼ばれる) を有している,こ とが好ましく、 例えば、 ウィルス由来および各種哺乳動物由来の各 DN Αの配 列を用いることができ、 好ましくは、 シミアンウィルスの SV40ターミネ夕 一などが用いられる。
その他、 目的とする外来性 DN Aをさらに高発現させる目的で各 DN Aのス プライシングシグナル、 ェンハンサー領域、 真核 DN Aのイントロンの一部な どをプロモーター領域の 5'上流、 プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳 領域の 3' 下流 に連結することも目的により可能である。
正常な本発明のタンパク質の翻訳領域は、 ヒトまたは各種哺乳動物 (例えば、 ゥサギ、 ィヌ、 ネコ、 モルモット、 ハムスター、 ラット、 マウスなど) 由来の 肝臓、 腎臓、 甲状腺細胞、 線維芽細胞由来 DNAおよび市販の各種ゲノム DN Aライブラリーよりゲノム DNAの全てあるいは一部として、 または肝臓、 腎 臓、 甲状腺細 J3¾、 線維芽細胞由来 RN Aより公知の方法により調製された相補 DN Aを原料として取得することが出来る。 また、 外来性の異常 DN Aは、 上 記の細胞または組織より得られた正常なタンパク質の翻訳領域を点突然変異誘 発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうる DNAコンストラクトとして、 前 記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通 常の DN A工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性 DN Aの転移は、 対象哺乳動物の胚 芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。 DN A転移後の作 出動物の胚芽細胞において、 本発明の外来性 DNAが存在することは、 作出動 物の後代がすべて、 その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性 D N Aを保持することを意味する。 本発明の外来性 DN Aを受け継いだこの種の動 物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性 DN Aを有す る。
本発明の外来性正常 DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、 交配により外来 性 DN Aを安定に保持することを確認して、 該 DN A保有動物として通常の飼 育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性 DN Aの転移は、 対象哺乳動物の胚 芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。 DNA転移後 の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性 DN Aが過剰に存在することは、 作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性 DN
Aを過剰に有することを意味する。 本発明の外来性 D NAを受け継いだこの種 の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性 D N Aを過 剰に有する。
導入 D N Aを相同染色体の両方に持つホモザィゴート動物を取得し、 この雌 雄の動物を交配することによりすべての子孫が該 D N Aを過剰に有するように 繁殖継代することができる。
本発明の正常 D N Aを有する非ヒト哺乳動物は、 本発明の正常 D N Aが高発 現させられており、 内在性の正常 D NAの機能を促進することにより最終的に 本発明のタンパク質の機能亢進症を発症することがあり、 その病態モデル動物 として利用することができる。 例えば、 本発明の正常 D N A転移動物を用いて、 本発明のタンパク質の機能亢進症や、 本発明のタンパク質が関連する疾患の病 態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である また、 本発明の外来性正常 D N Aを転移させた哺乳動物は、 遊離した本発明 の夕ンパク質の増加症状を有することから、 本発明のタンパク質に関連する疾 患に対する予防 ·治療剤、 例えば神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族 性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病な ど) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイ ッフェルト—ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロバチ一、 多発 性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎 癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍 など) などの予防 ·治療剤のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、 本発明の外来性異常 D NAを有する非ヒト哺乳動物は、 交配により外 来性 D N Aを安定に保持することを確認して該 D N A保有動物として通常の飼 育環境で継代飼育することが出来る。 さらに、 目的とする外来 D N Aを前述の プラスミドに組み込んで原科として用いることができる。 プロモーターとの D N Aコンストラクトは、 通常の D N A工学的手法によって作製することができ る。 受精卵細胞段階における本発明の異常 D N Aの転移は、 対象哺乳動物の胚 芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。 D N A転移後の作出
動物の胚芽細胞において本発明の異常 D N Aが存在することは、 作出動物の子 孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常 D N Aを有すること を意味する。 本発明の外来性 D N Aを受け継いだこの種の動物の子孫は、 その 胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常 D N Aを有する。 導入 D N Aを相 同染色体の両方に持つホモザィゴート動物を取得し、 この雌雄の動物を交配す ることによりすべての子孫が該 D N Aを有するように繁殖継代することができ る。
本発明の異常 D NAを有する非ヒト哺乳動物は、 本発明の異常 D N Aが高発 現させられており、 内在性の正常 D N Aの機能を阻害することにより最終的に 本発明のタンパク質の機能不活性型不応症となることがあり、 その病態モデル 動物として利用することができる。 例えば、 本発明の異常 D N A転移動物を用 いて、 本発明のタンパク質の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの 疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、 具体的な利用可能性としては、 本発明の異常 D N A高発現動物は、 本 発明のタンパク質の機能不活性型不応症における本発明の異常タンパク質によ る正常タンパク質の機能阻害 (dominant negat ive作用) を解明するモデルとな る。
また、 本発明の外来異常 D N Aを転移させた哺乳動物は、 遊離した本発明の タンパク質の増加症状を有することから、 本発明のタンパク質または機能不活 性型不応症に対する予防 ·治療剤、 例えば神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー 病 (家族性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性ァルツハイマ 一病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェルト—ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロパチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓 癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血 液腫瘍など) などの予防 ·治療剤のスクリーニング試験にも利用可能である。 また、 上記 2種類の本発明の D N A転移動物のその他の利用可能性として、 例えば、
(i) 組織培養のための細胞源としての使用、
(ii) 本発明の DNA転移動物の組織中の DNAもしくは RNAを直接分析す るか、 または DN Aにより発現されたペプチド組織を分析することによる、 本 発明のタンパク質により特異的に発現あるいは活性化するペプチドとの関連性 についての解析、
(iii) DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、 これらを 使用して、 一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
(iv) 上記 (iii) 記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬 剤のスクリーニング、 および
(V) 本発明の変異タンパク質を単離精製およびその抗体作製などが考えられる c さらに、 本発明の DN A転移動物を用いて、 本発明のタンパク質の機能不活 性型不応症などを含む、 本発明のタンパク質に関連する疾患の臨床症状を調べ ることができ、 また、 本発明のタンパク質に関連する疾患モデルの各臓器にお けるより詳細な病理学的所見が得られ、 新しい治療方法の開発、 さらには、 該 疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、 本発明の DNA転移動物から各臓器を取り出し、 細切後、 トリプシン などのタンパク質分解酵素により、 遊離した DNA転移細胞の取得、 その培養 またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。 さらに、 本発明の夕 ンパク質産生細胞の特定化、 アポトーシス、 分化あるいは増殖との関連性、 ま たはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、 それらの異常を調べることなど ができ、 本発明のタンパク質およびその作用解明のための有効な研究材料とな る。
さらに、 本発明の DN A転移動物を用いて、 本発明のタンパク質の機能不活 性型不応症を含む、 本発明のタンパク質に関連する疾患の治療薬の開発を行な うために、 上述の検査法および定量法などを用いて、 有効で迅速な該疾患治療 薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。 また、 本発明の DNA転 移動物または本発明の外来性 DN A発現ベクターを用いて、 本発明のタンパク 質が関連する疾患の DN A治療法を検討、 開発することが可能である。
(7) ノックアウト動物
本発明は、 本発明の DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および 本発明の DNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、 本発明は、
(1) 本発明の DN Aが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2) 該 DNAがレポ一夕一遺伝子 (例、 大腸菌由来の 3—ガラクトシダ一ゼ 遺伝子) を導入することにより不活性化された第 (1) 項記載の胚幹細胞、
(3) ネオマイシン耐性である第 (1) 項記載の胚幹細胞、
(4) 非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第 (1) 項記載の胚幹細胞、 (5) ゲッ歯動物がマウスである第 (4) 項記載の胚幹細胞、
(6) 本発明の DNAが不活性化された該 DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
(7) 該 DNAがレポ一夕一遺伝子 (例、 大腸菌由来の |3—ガラクトシダーゼ 遺伝子) を導入することにより不活性化され、 該レポーター遺伝子が本発明の DNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第 (6) 項記載の非ヒト哺 乳動物、
(8) 非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第 (6) 項記載の非ヒト哺乳動物、
(9) ゲッ歯動物がマウスである第 (8) 項記載の非ヒト哺乳動物、 および
(10) 第 (7) 項記載の動物に、 試験化合物を投与し、 レポーター遺伝子の 発現を検出することを特徴とする本発明の DN Aに対するプロモーター活性を 促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。 本発明の DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、 該非ヒト哺 乳動物が有する本発明の DNAに人為的に変異を加えることにより、 DNAの 発現能を抑制するか、 もしくは該 DNAがコードしている本発明のタンパク質 の活性を実質的に喪失させることにより、 DN Aが実質的に本発明のタンパク 質の発現能を有さない (以下、 本発明のノックアウト DN Aと称することがあ る) 非ヒト哺乳動物の胚幹細胞 (以下、 ES細胞と略記する) をいう。
非ヒト哺乳動物としては、 前記と同様のものが用いられる。
本発明の DN Aに人為的に変異を加える方法としては、 例えば、 遺伝子工学 的手法により該 DNA配列の一部又は全部の削除、 他 DN Aを挿入または置換
させることによって行なうことができる。 これらの変異により、 例えば、 コド ンの読み取り枠をずらしたり、 プロモーターあるいはェキソンの機能を破壊す ることにより本発明のノックアウト D N Aを作製すればよい。
本発明の DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞 (以下、 本発明の DNA不活性化 ES細胞または本発明のノックアウト ES細胞と略記する) の 具体例としては、 例えば、 目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明の DNA を単離し、 そのェキソン部分にネオマイ'シン耐性遺伝子、 ハイグロマイシン耐 性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、 あるいは l a c Z (/3—ガラクトシダ ーゼ遺伝子) 、 c a t (クロラムフエニコ一ルァセチルトランスフェラーゼ遺 伝子) を代表'とするレポーター遺伝子等を挿入することによりェキソンの機能 を破壊するか、 あるいはェキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結さ せる DNA配列 (例えば、 p o 1 yA付加シグナルなど) を挿入し、 完全なメ ッセンジャー RN Aを合成できなくすることによって、 結果的に遺伝子を破壊 するように構築した DNA配列を有する DNA鎖 (以下、 夕ーゲッティングべ クタ一と略記する) を、 例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、 得られた ES細胞について本発明の DN A上あるいはその近傍の DN A配列を プローブとしたサザンハイブリダィゼ一ション解析あるいは夕ーゲッティング ベクター上の DNA配列とターゲッティングベクタ一作製に使用した本発明の DN A以外の近傍領域の DN A配列をプライマーとした PC R法により解析し, 本発明のノックアウト ES細胞を選別することにより得ることができる。
また、 相同組換え法等により本発明の DNAを不活化させる元の ES細胞と しては、 例えば、 前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、 また公知 Evansと Kaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。 例えば、 マウスの ES細胞の場合、 現在、 一般的には 129系の ES細胞が使用されているが、 免疫学的背景がはっきりしていないので、 これに代わる純系で免疫学的に遺伝 的背景が明らかな ES細胞を取得するなどの目的で例えば、 C 57BLZ6マ ウスや C 57 BLZ 6の採卵数の少なさを DBAZ 2との交雑により改善した BDFiマウス (C 57 BLZ6と DB AZ2との F を用いて樹立したもの なども良好に用いうる。 BDF マウスは、 採卵数が多く、 かつ、 卵が丈夫で
あるという利点に加えて、 C 57 BL/6マウスを背景に持つので、 これを用 いて得られた ES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、 C 57 BLZ6マ ウスとバッククロスすることでその遺伝的背景を C 57 BLZ6マウスに代え ることが可能である点で有利に用い得る。
また、 ES細胞を樹立する場合、 一般には受精後 3.5日目の胚盤胞を使用す るが、 これ以外に 8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効 率よく多数の初期胚を取得することができる。 .
また、 雌雄いずれの ES細胞を用いてもよいが、 通常雄の ES細胞の方が生 殖系列キメラを作出するのに都合が良い。 また、 煩雑な培養の手間を削減する ためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、 例えば、 PCR法により Y染色体上の 性決定領域の遺伝子を増幅、 検出する方法が、 その 1例としてあげることがで きる。 この方法を使用すれば、 従来、 核型分析をするのに約 106個の細胞数 を要していたのに対して、 1コロニー程度の ES細胞数 (約 50個) で済むの で、 培養初期における ES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうこ とが可能であり、 早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間 は大幅に削減できる。
また、 第二次セレクションとしては、 例えば、 G—バンデイング法による染 色体数の確認等により行うことができる。 得られる ES細胞の染色体数は正常 数の 100 %が望ましいが、 樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、 ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、 正常細胞 (例えば、 マウスでは染色 体数が 2 n = 40である細胞) に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、.通常その増殖性は大変良いが、 個体 発生できる能力を失いやすいので、 注意深く継代培養することが必要である。 例えば、 S TO繊維芽細胞のような適当なフィーダ一細胞上で L I F (1〜
10000U/ml) 存在下に炭酸ガス培養器内 (好ましくは、 5%炭酸ガス、 95 %空 気または 5%酸素、 5%炭酸ガス、 90%空気) で約 37 で培養するなどの 方法で培養し、 継代時には、 例えば、 トリプシン ZED T A溶液 (通常 0.001〜 0.5%トリプシン /0. l〜5mM EDTA、 好ましくは約 0.1%トリプシン/ ImM EDTA)
処理により単細胞化し、 新たに用意したフィーダ一細胞上に播種する方法など がとられる。 このような継代は、 通常 1一 3日毎に行なうが、 この際に細胞の 観察を行い、 形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄す ることが望まれる。
ES細胞は、 適当な条件により、 高密度に至るまで単層培養するか、 または 細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、 頭頂筋、 内臓筋、 心筋など の種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり 〔M. J. Evans及び H. Kaufman, ネイチヤー (Nature) 第 292巻、 154頁、 1981年; G. R. , Martin プロ シーディングス 'ォブ ·ナショナル ·アカデミー ·ォブ ·サイエンス ·ユーェ スエー (Proc. Natl. Acad. Scに U.S.A.) 第 78卷、 7634頁、 1981年; T. C.
Doetschman ら、 ジャーナル ·ォブ ·ェンブリオロジー ·アンド ·ェクスぺリメ ン夕ル ·モルフォロジ一、 第 87巻、 27頁、 1985年〕 、 本発明の ES細胞を分化 させて得られる本発明の DNA発現不全細胞は、 インビト口における本発明の タンパク質の細胞生物学的検討において有用である。
本発明の DN A発現不全非ヒト哺乳動物は、 該動物の mRNA量を公知方法 を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、 正常動物と区別 することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、 前記と同様のものが用いられる。
本発明の DNA発現不全非ヒト哺乳動物は、 例えば、 前述のようにして作製 した夕一ゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し, 導入により夕一ゲッティングベクタ一の本発明の D N Aが不活性化された D N A配列が遺伝子相同組換えにより、 マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色 体上の本発明の DNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、 本発明の DN Aをノックアウトさせることができる。
本発明の DN Aがノックアウトされた細胞は、 本発明の DN A上またはその 近傍の D N A配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼ一ション解析または ターゲッティングベクター上の DNA配列と、 ターゲッティングベクターに使 用したマゥス由来の本発明の D N A以外の近傍領域の D N A配列とをプライマ 一とした P C R法による解析で判定する.ことができる。 非ヒト哺乳動物胚幹細
胞を用いた場合は、 遺伝子相同組換えにより、 本発明の D N Aが不活性化され た細胞株をクローニングし、 その細胞を適当な時期、 例えば、 8細胞期の非ヒ ト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、 作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒ ト哺乳動物の子宮に移植する。 作出された動物は正常な本発明の D N A座をも つ細胞と人為的に変異した本発明の D N A座をもつ細胞との両者から構成され るキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明の D N A座をもつ場合、 こ のようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、 全 ての組織が人為的に変異を加えた本発明の D N A座をもつ細胞で構成された個 体を、'例えば、 コートカラーの判定等により選別することにより得られる。 こ のようにして得られた個体は、 通常、 本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個 体であり、 本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体同志を交配し、 それらの 産仔から本発明のタンパク質のホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、 例えば、 卵細胞核内にマイクロインジェクション 法で D NA溶液を注入することにより夕ーゲッティングベクタ一を染色体内に 導入したトランスジエニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、 これらのトラ ンスジヱニック非ヒト哺乳動物に比べて、 遺伝子相同組換えにより本発明の D N A座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明の D NAがノックアウトされている個体は、 交配によ り得られた動物個体も該 D N Aがノックアウトされていることを確認して通常 の飼育環境で飼育.継代を行なうことができる。
さらに、 生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。 すなわち, 該不活化 D N Aの保有する雌雄の動物を交配することにより、 該不活化 D N A を相同染色体の両方に持つホモザィゴート動物を取得しうる。 得られたホモザ ィゴ一ト動物は、 母親動物に対して、 正常個体 1, ホモザィゴート複数になる ような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。 ヘテロザィゴ一 ト動物の雌雄を交配することにより、 薛不活化 D N Aを有するホモザィゴート およびへテロザィゴート動物を繁殖継代する。
本発明の D N Aが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、 本発明の D N
A発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、 非常に有用である。
また、 本発明の D N A発現不全非ヒト哺乳動物は、 本発明のタンパク質によ り誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、 本発明のタンパク質の生物活 性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、 これらの疾病の原因 究明及び治療法の検討に有用である。
( 7 a ) 本発明の D N Aの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療 ·予防 効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明の D NA発現不全非ヒト哺乳動物は、 本発明の D N Aの欠損や損傷な どに起因する疾病に対して治療 ·予防効果を有する化合物のスクリーニングに 用いることができる。
すなわち、 本発明は、 本発明の D NA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物 を投与し、 該動物の変化を観察 ·測定することを特徴とする、 本発明の D N A の欠損や損傷などに起因する疾病、 例えば神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー 病 (家族性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性ァルツハイマ —病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェルト一ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロバチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌
(例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓 癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 塍臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血 液腫瘍など) などに対して治療 ·予防効果を有する化合物またはその塩のスク リーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明の D N A発現不全非ヒト哺 乳動物としては、 前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、 例えば、 ペプチド、 タンパク、 非ペプチド性化合物、 合成化合物、 発酵生産物、 細胞抽出液、 植物抽出液、 動物組織抽出液、 血漿な どがあげられ、 これら化合物は新規な化合物であってもよいし、 公知の化合物 であってもよい。
具体的には、 本発明の D N A発現不全非ヒト哺乳動物を、 試験化合物で処理 し、 無処理の対照動物と比較し、 該動物の各器官、 組織、 疾病の症状などの変
化を指標として試験化合物の治療 ·予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、 例えば、 経口投与、 静脈注 射などが用いられ、 試験動物の症状、 試験化合物の性質などにあわせて適宜選 択す
ることができる。 また、 試験化合物の投与量は、 投与方法、 試験化合物の性質 などにあわせて適宜選択することができる。
例えば神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若 年性ァルツハイ 一病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダ ゥン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェルト—ヤコブ病、 ハ ンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロパチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳 疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立 腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣 癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などに対して治療- 予防効果を有する化合物をスクリーニングする場合、 本発明の D N A発現不全 非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、 試験化合物非投与群と神経細胞死数の 違い、 種々のタンパク質量の違いなどを上記組織で経時的に観察する。
該スクリーニング方法において、 試験動物に試験化合物を投与した場合、 該 試験動物の上記疾患症状が約 1 0 %以上、 好ましくは約 3 0 %以上、 より好ま しくは約 5 0 %以上改善した場合、 該試験化合物を上記の疾患に対して治療 - 予防効果を有する化合物として選択することができる。
該スクリ一二ング方法を用いて得られる化合物は、 上記した試験化合物から 選ばれた化合物であり、 本発明のタンパク質の欠損や損傷などによって引き起 こされる疾患に対して治療 ·予防効果を有するので、 該疾患に対する安全で低 毒性な予防 ·治療剤などの医薬として使用することができる。 さらに、 上記ス クリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることがで きる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、 該化合 物の塩どしては、 生理学的に許容される酸 (例、 無機酸、 有機酸など) や塩基 (例、 アルカリ金属など) などとの塩が用いられ、 とりわけ生理学的に許容さ
れる酸付加塩が好ましい。 この様な塩としては、 例えば、 無機酸 (例えば、 塩 酸、 リン酸、 臭化水素酸、 硫酸など) との塩、 あるいは有機酸 (例えば、 酢酸、 ギ酸、 プロピオン酸、 フマル酸、 マレイン酸、 コハク酸、 酒石酸、 クェン酸、 リンゴ酸、 蓚酸、 安息香酸、 メタンスルホン酸、 ベンゼンスルホン酸など) と の塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、 前 記した本発明のタンパク質を含有する医薬と同様にして製造することができる。 このようにして得られる製剤は、 安全で低毒性であるので、 例えば、 ヒ卜ま たは哺乳動物 (例えば、 ラット、 マウス、 モルモット、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブタ、 ゥシ、 ゥマ、 ネコ、 ィヌ、 サルなど) に対して投与することができる。
' 該化合物またはその塩の投与量は、 対象疾患、 投与対象、 投与ルートなどに より差異はあるが、 例えば、 該化合物を経口投与する場合、 一般的に成人 (体 重 60 kgとして) のアルツハイマー病患者においては、 一日につき該化合物 を約 0.1〜: I 00mg、 好ましくは約 1. 0〜50mg、 より好ましくは約 1. 0〜20mg投与する。 非経口的に投与する場合は、 該化合物の 1回投与量は 投与対象、 対象疾患などによっても異なるが、 例えば、 該化 物を注射剤の形 で通常成人 (60 kgとして) のアルツハイマー病患者に投与する場合、 一日 にっき該化合物を約 0. 01〜3 Omg程度、 好ましくは約 0. l〜20mg 程度、 より好ましくは約 0. 1〜1 Omg程度を静脈注射により投与するのが 好都合である。 他の動物の場合も、 60 kg当たりに換算した量を投与するこ とができる。
(7 ) 本発明の DN Aに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化 合物をスクリーニング方法
本発明は、 本発明の DNA発現不全非ヒト哺乳動物に、 試験化合物を投与し、 レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明の DN Aに対する プロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニン グ方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、 本発明の DNA発現不全非ヒト哺乳動物 としては、 前記した本発明の DN A発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、 本発明
の DN Aがレポーター遺伝子を導 することにより不活性化され、 該レポ一タ 一遺伝子が本発明の D N Aに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが 用いられる。
試験化合物としては、 前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、 前記と同様のものが用いられ、 —ガラクトシ ダーゼ遺伝子 ( 1 a c Z) 、 可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはル シフェラ一ゼ遺伝子などが好適である。
本発明の DNAをレポ一夕一遺伝子で置換された本発明の D N A発現不全非 ヒト哺乳動物では、 レポ一ター it伝子が本発明の DNAに対するプロモーター の支配下に存在するので、 レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレー スすることにより、 プロモー夕一の活性を検出することができる。
例えば、 本発明のタンパク質をコードする DNA領域の一部を大腸菌由来の )3—ガラクトシダーゼ遺伝子 ( 1 ac Z) で置換している場合、 本来、 本発明 の夕ンパク質の発現する組織で、 本発明の夕ンパク質の代わりに) 3—ガラクト シダ一ゼが発現する。 従って、 例えば、 5—ブロモ—4一クロ口— 3—インド リル一 j3_ガラクトピラノシド (X—g a l) のような ]3—ガラクトシダ一ゼ の基質となる試薬を用いて染色することにより、 簡便に本発明のタンパク質の 動物生体内における発現状態を観察することができる。 具体的には、 本発明の タンパク質欠損マウスまたはその組織切片をダルタルアルデヒドなどで固定し, リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) で洗浄後、 X— g a 1を含む染色液で、 室温 または 37T:付近で、 約 30分ないし 1時間反応させた後、 組織標本を ImM EDTAZPBS溶液で洗浄することによって、 i3—ガラクトシダ一ゼ反応を 停止させ、 呈色を観察すればよい。 また、 常法に従い、 1 a c Zをコードする mRN Aを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、 上記した 試験化合物から選ばれた化合物であり、 本発明の D N Aに対するプロモーター 活性を促進または阻害する化合物である。
該スクリ一ニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、 該化合 物の塩としては、 生理学的に許容される酸 (例、 無機酸など) や塩基'(例、 ァ
ルカリ金属など) などとの塩が用いられ、 とりわけ生理学的に許容される酸付 加塩が好ましい。 この様な塩としては、 例えば、 無機酸 (例えば、 塩酸、 リン 酸、 臭化水素酸、 硫酸など) との塩、 あるいは有機酸 (例えば、 酢酸、 ギ酸、 プロピオン酸、 フマル酸、 マレイン酸、 コハク酸、 酒石酸、 クェン酸、 リンゴ 酸、 蓚酸、 安息香酸、 メタンスルホン酸、 ベンゼンスルホン酸など) との塩な どが用いられる。
本発明の D N Aに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物また はその塩は、 本発明のタンパク質の発現の調節、 該タンパク質の機能を調節す ることができるので、 例えば神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性ァ ルツハイマ一病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフエ ルトーヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロバチ一、 多発性硬化 症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱 癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) な どの予防 ·治療剤として有用である。
さらに、 上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様 に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、 前 記した本発明のタンパク質またはその塩を含有する医薬と同様にして製造する ことができる。
このようにして得られる製剤は、 安全で低毒性であるので、 例えば、 ヒトま たは哺乳動物 (例えば、 ラッ卜、 マウス、 モルモット、 ゥサギ、 ヒッジ、 ブ夕、 ゥシ、 ゥマ、 ネコ、 ィヌ、 サルなど) に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、 対象疾患、 投与対象、 投与ルートなどに より差異はあるが、 例えば、 本発明の D N Aに対するプロモータ一活性を阻害 する化合物を経口投与する場合、 一般的に成人 (体重 6 0 k gとして) のアル ッハイマー病患者においては、 一日につき該化合物を約 0 . 1〜 1 0 0 m g、 好 ましくは約 1 . 0〜5 O m g、 より好ましくは約 1 . 0〜2 0 m g投与する。
非経口的に投与する場合は、 該化合物の 1回投与量は投与対象、 対象疾患など によっても異なるが、 例えば、 本発明の DNAに対するプロモーター活性を阻 害する化合物を注射剤の形で通常成人 (60 kgとして) のアルツハイマー病 患者に投与する場合、 一日につき該化合物を約 0. 01〜30mg程度、 好ま しくは約 0. 1〜2 Omg程度、 より好ましくは約 0. l〜10mg程度を静 脈注射により投与するのが好都合である。 他の動物の場合も、 6 O kg当たり に換算した量を投与することができる。
このように、 本発明の DNA発現不全非ヒト哺乳動物は、 本発明の DNAに 対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその ί^.をスクリ —ニングする上で極めて有用であり、 本発明の DN Α発現不全に起因する各種 疾患の原因究明または予防 ·治療剤の開発に大きく貢献することができる。
また、 本発明のタンパク質のプロモーター領域を含有する DNAを使って、 その下流に種々のタンパクをコードする遺伝子を連結し、 これを動物の卵細胞 に注入していわゆるトランスジエニック動物 (遺伝子移入動物) を作成すれば、 特異的にそのタンパク質を合成させ、 その生体での作用を検討することも可能 となる。 さらに上記プロモー夕一部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、 これが発現するような細胞株を樹立すれば、 本発明のタンパク質そのものの体 内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探 索系として使用できる。
(8) 本発明のタンパク質が関与する各種疾病の予防,治療剤
本発明のタンパク質は小胞体ストレスを伴う神経細胞死により発現が上昇し、 小胞体ストレス依存性の細胞死を抑制する。 一方、 癌細胞株においては、 虚血、 酸化ストレスにより P53非依存的に発現が上昇し、 DNA損傷を伴う刺激 (UV照射、 ドキソルビシン) により、 P53依存的に発現が上昇する。 さらに、 本発明のタン パク質を高発現させた癌細胞株は、 血清除去、 DNA損傷による細胞死に感受性で あるが、 酸化ストレス、 虚血による細胞死に抵抗性を示す。
したがって、 本発明のタンパク質をコードする DN Aに異常があったり、 欠 損している場合あるいは本発日 の夕ンパク質め発現量が減少している場合には、
例えば、 神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若 年性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダ ゥン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェルト一ヤコブ病、 ハ ンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロパチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳 疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立 腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣 癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などの種々の疾患が 発症する。
したがって、 本発明のタンパク質および本発明の D N Aは、 例えば、 神経変 性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若年性ァルツハイ マー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮 性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェルト—ヤコブ病、 ハンチントン舞踏 病、 糖尿病性ニューロパチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗 塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、.肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などの予防 ·治療剤として使用する ことができる。
例えば、 生体内において本発明のタンパク質が減少あるいは欠損しているた めに、 本発明のタンパク質の活性が十分に、 あるいは正常に発揮されない患者 がいる場合に、 (ィ) 本発明の D NAを該患者に投与し、 生体内で本発明の夕 ンパク質を発現させることによって、 (口) 細胞に本発明の D NAを挿入し、 本発明のタンパク質を発現させた後に、 該細胞を患者に移植することによって, または (八) 本発明のタンパク質を該患者に投与することなどによって、 該患 者における本発明のタンパク質の役割を十分に、 あるいは正常に発揮させるこ とができる。
本発明の D N Aを上記の予防 ·治療剤として使用する場合は、 該 D NAを単 独あるいはレトロウイルスベクタ一、 アデノウイルスベクター、 アデノウィル スァソシエーテツドウィルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、 常 套手段に従って、 ヒトまたは温血動物に投与することができる。 本発明の D N
Aは、 そのままで、 あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認めら れる担体とともに製剤化し、 遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテ 一テルによって投与できる。
本発明のタンパク質を上記の予防 ·治療剤として使用する場合は、 少なくと も 9 0 %、 好ましくは 9 5 %以上、 より好ましくは 9 8 %以上、 さらに好まし くは 9 9 %以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
本発明のタンパク質は、 例えば、 必要に応じて糖衣を施した錠剤、 カプセル 剤、 エリキシル剤、 マイクロカプセル剤などとして経口的に、 あるいは水もし くはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、 または懸濁液剤などの 注射剤の形で非経口的に使用できる。 例えば、 本発明のタンパク質を生理学的 に認められる担体、 香味剤、 賦形剤、 べヒクル、 防腐剤、 安定剤、 結合剤など とともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和すること によって製造することができる。 これら製剤における有効成分量は指示された 範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、 カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、 例えば、 ゼ ラチン、 コーンスターチ、 トラガント、 アラビアゴムのような結合剤、 結晶性 セルロースのような賦形剤、 コーンスターチ、 ゼラチン、 アルギン酸などのよ うな膨化剤、 ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、 ショ糖、 乳糖または サッカリンのような甘味剤、 ペパーミント、 ァカモノ油またはチェリ一のよう な香味剤などが用いられる。 調剤単位形態がカプセルである場合には、 前記夕 ィプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。 注射のた めの無菌組成物は注射用水のようなべヒクル中の活性物質、 胡麻油、 椰子油な どのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施 に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、 例えば、 生理食塩水、 ブドウ糖やその他の補助薬 を含む等張液 (例えば、 D—ソルビトール、 D—マンニトール、 塩化ナトリウ ムなど) などが挙げられ、 適当な溶解補助剤、 例えば、 アルコール (例えば、 エタノールなど) 、 ポリアルコール (例えば、 プロピレングリコール、 ポリエ チレングリコールなど) 、 非イオン性界面活性剤 (例えば、 ポリソルべ一ト 8
0TM、 HCO— 50など) などと併用してもよい。 油性液としては、 例えば、 ゴマ油、 大豆油などが挙げられ、 溶解補助剤として安息香酸ベンジル、 ベンジ ルアルコールなどと併用してもよい。 また、 緩衝剤 (例えば、 リン酸塩緩衝液、 酢酸ナトリウム緩衝液など) 、 無痛化剤 (例えば、 塩化ベンザルコニゥム、 塩 酸プロ力インなど) 、 安定剤 (例えば、 ヒト血清アルブミン、 ポリエチレング リコールなど) 、 保存剤 (例えば、 ベンジルアルコール、 フエノールなど) 、 酸化防止剤などと配合してもよい。 調製された注射液は、 通常、 適当なアンプ ルに充填される。
本発明の DNAが挿入されたベクターも上記と同様に製剤化され、 通常、 非 経口的に使用される。
このようにして得られる製剤は、 安全で低毒性であるので、 例えば、 温血動 物 (例えば、 ヒト、 ラット、 マウス、 モルモット、 ゥサギ、 トリ、 ヒッジ、 ブ 夕、 ゥシ、 ゥマ、 ネコ、 ィヌ、 サル、 チンパンジーなど) に対して投与するこ とができる。
本発明のタンパク質の投与量は、 対象疾患、 投与対象、 投与ルートなどによ り差異はあるが、 例えば、 アルツハイマー病の治療目的で本発明のタンパク質 を経口投与する場合、 一般的に成人 (体重 60 kgとして) においては、 一日 にっき該タンパク質を約 0.1〜100mg、 好ましくは約 1. 0〜50mg、 より好ましくは約 1. 0〜20mg投与する。 非経口的に投与する場合は、 該 タンパク質の 1回投与量は投与対象、 対象疾患などによっても異なるが、 例え ば、 アルツハイマー病の治療目的で本発明のタンパク質を注射剤の形で成人 ( 体重 60 kgとして) に投与する場合、 一日につき該タンパク質を約 0. 01 〜3 Omg、 好ましくは約 0. 1〜2 Omg、 より好ましくは約 0. :!〜 10 mgを患部に注射することにより投与するのが好都合である。 他の動物の場合 も、 体重 60 kg当たりに換算した量を投与することができる。 本明細書において、 塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、 IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野におけ る慣用略号に基づくものであり、 その例を下記する。 またアミノ酸に関し光学
異性体があり得る場合は、 特に明示しなければ L体を示すものとする <
DNA デォキシリポ核酸
c DNA 相補的デォキシリポ核酸
A アデニン
T チミン
G グァニン
C シ卜シン
RNA リボ核酸
mRNA メッセンジャーリポ核酸
d ATP デォキシアデノシン三リン酸
dTTP デォキシチミジン三リン酸
dGTP デォキシグァノシン三リン酸
d CTP デォキシシチジン三リン酸
ATP アデノシン三リン酸
EDTA エチレンジァミン四酢酸
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
G 1 y ダリシン
A l a ァラニン
V 1 バリン
Le u ロイシン
I 1 e
S e r セリン
Th r スレオニン
Cy s
Me t メチォニン
G 1 u グルタミン酸
As p ァスパラギン酸
L y s リジン
Ar g アルギニン
H i s : ヒスチジン
Ph e : フエ二ルァラニン
Ty r :チロシン
Tr p : トリブトファン
P r o : プロリン
As n :ァスパラギン
G i n : グル夕ミン
p G 1 υ : ピログルタミン酸
S e c :セレノシステ^!ン selenocys teine)
また、 本明細書中で繁用される置換基、 保護基および試薬を下記の記号で表 記する。
Me メチル基
E t ェチル基
Bu ブチル基 .
P h フエニル基
TC チアゾリジン— 4 (R) —カルポキサミド基
To s p—トルエンスルフォニル
CHO ホルミル
B z 1
Cl2-Bzl 2, 6—ジクロ口べンジル
Bom ベンジルォキシメチル
Z ベンジルォキシカルポニル
C 1一 z 2—クロ口べンジルォキシカルポニル
B r -Z 2 _ブロモベンジルォキシカルポニル
B o c t一ブトキシカルボニル
DNP ジニトロフエニル
T r t 卜リチル
Bum t一ブトキシメチル
Fm o c N— 9—フルォレニルメトキシカルポニル
HOB t 1ーヒドロキシベンズ卜リアゾール
HOOB t 3, 4—ジヒドロー 3—ヒドロキシー 4—ォキソ一
1, 2, 3—ベンゾトリアジン
HONB 1-ヒドロキシ- 5-ノルボルネン -2, 3-ジカルボキシィミド DCC 本願明細書の配列表の配列番号は、 以下の配列を示す。
〔配列番号: 1〕
配列番号: 2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号: 2〕 .
GenBank Accession No. BC013304 (ヒト Ses2) の塩基配列を示す。
〔配列番号: 3〕
実施例 3で用いられたプライマ一の塩基配列を示す。
〔配列番号: 4〕
実施例 3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号: 5〕
実施例 3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号: 6〕
実施例 3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号: 7〕
配列番号: 8で示される塩基配列がコ一ドするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号: 8〕
配列番号: 2で示される塩基配列の 958番目の Aが Gに置換された配列を示 す。 以下において、 実施例により本発明をより具体的にするが、 この発明はこれ らに限定されるものではない。
実施例 1
小胞体ストレスで発現変動する遺伝子群を明らかにするため、 以下のような
実験を行った。
タイプ I型コラーゲンコート 24穴プレート (SUMIL0N) に TP-17の CDラット (日 本チャールズリバ一) より調製したラット初代神経細胞を B27含 Neurobasaけ咅地
(NB培地: GIBC0) に懸濁した後、 25万個 Zwellで播種し 3日間培養した。 (i) 上記培養細胞に最終濃度 ΙΟΟηΜとなるようッニカマイシン (Tnc) を添加し、
(ii) 上記培養細胞に最終濃度 2nMとなるよう夕プシガーギン (Thap) を添加し、 または (iii) 上記培養細胞を、 グルコースを含まない B27含 DMEM培地で 2回培地 交換した後、 3mMとなるよう 2-デォキシグルコース (2DG) を添加し、 それぞれ 4、 8および 24時間後に細胞より RNeasy Mini kit (キアゲン) を用いて実験手引き 書に従い total RNAを抽出した。 対照として上記薬剤 (Tnc、 Thapおよび 2DG) の 代わりに、 各培地を添加した細胞 (薬剤非添加細胞) を用いた。 これらを材料 として ol igo匿 leotide microarray (Rat Genome U34B; Affymetrix社) を用レ て遺伝子発現解析を行った。
実験方法は、 Affymetrix社の実験手引き書 (Expression analysis technical manual) に従った。 各薬剤刺激した細胞と非添加の細胞の遺伝子発現プロファ ィルを比較した結果、 GenBank No. AI013865が、 各小胞体ストレス刺激 〔上記
(0 、 (ii) および (iii) 〕 により発現亢進していた (表 1) 。
〔表 1〕
細胞— 遺伝子発現 J
Tnc刺激 4時間後 4.86
非刺激 4時間後 1.29
Tnc刺激 8時間後 5.73
非刺激 8時間後 1.24
Tnc 24時間後 7.31
非刺激 24時間後 1.48
Thap刺激 4時間後 10.57
非刺激 4時間後 1.79
Thap 8時間後 12.93
非刺激 4時間後 1.61
Thap刺激 24時間後 12.31
非刺激 24時間後 1.78
2DG添加 4時間後 12.48
非刺激 4時間後 1.43
2DG添加 8時間後 12.44
非刺激 8時間後 1.05
2DG添加 24時間後 12.73
非刺激 24時間後 1.07
a遺伝子発現量は、 oligonucleotide microarrayで発現が検出された presenceを示す遺伝子の発現量の中央値を 1として標準化した。 実施例 2
小胞体ストレスにより発現亢進した GenBank No. AI013865の発現に )3アミ口 イド刺激が影響を与えるか否かを検討する目的で、 0アミロイド刺激した細胞 を用いて実施例 1と同様に遺伝子発現解析を行なった。
実施例 1と同様に調製したラット初代神経細胞を N2含 DMEM培地 (GIBC0) に懸 濁した後、 25万個 Zwellで播種し 4日間培養した。 培養後、 最終濃度 25^Μとな るよう上記培地で懸濁した3アミロイドを添加し、 4、 8、 24時間後に実施例 1 と同様に、 細胞より total RNAを抽出し、 遺伝子解析を行なった。 対照には /3ァ ミロイドの代わりに上記培地を添加した細胞を用いた。 対照と比較して、 )3ァ ミロイドで刺激した細胞で GenBank No. AI013865遺伝子の発現が亢進していた (表 2) 。
〔表 2〕
細胞 遺伝子発現量
/3アミ Πイド刺激 4時間後 1.86
非刺激 4時間後 . 1.68
0アミロ仆'刺激 8時間後 3.03
非刺激 8時間後 1.44
0アミロイド刺激 24時間後 5.17
非刺激 24時間後 ― 1.88
a遺伝子発現量は、 oligonucleotide microarrayで発現が検出された
presenceを示す遺伝子の発現量の中央値を 1として標準化した。 . 実施例 3
Sestrin2 (Ses2) が細胞死に与える影響を検討する目的で、 ヒト Ses2のクロ —ニングを行ない、 一過性形質導入を用いて Ses2遺伝子発現細胞を作製し、 細 胞死誘導系に供した。
(1) GenBank No. AI013865に対応するヒトオルソログの同定
GenBank No. AI013865をクエリ一にして GenBankにおいて Blast N検索を行つ たところ、 マウス由来の GenBank No. BC005672と高い相同性 (約 90%) を有し ていた。 次に、 このマウスの配列をクエリ一にして、 Genbankにおいて Blast N 検索を行ったところ、 Sestrin2 (GenBank No. BC013304) が最も高い相同性を 有していた。 よって、 GenBank No. AI013865に対応するヒトオルソログは、 Sestrin2である。
(2) ヒト Ses2の細胞死誘導に対する影響
ヒト神経芽細胞腫 SK- N-AS細胞 (ATCCより購入) に最終濃度 500nMとなるよう タブシガーギンを添加し 8時間培養した。 培養後、 IS0GEN (二ツボンジーン) を 用いて total RNAを抽出した。 得られた total RNAを铸型として RNA PCR kit
(TAKARA) を用いて逆転写反応を行なった。 ヒト Ses2遺伝子の増幅のため、 合 成プライマ一 (配列番号: 3および配列番号: 4) と、 酵素として Pfu turbo (ストラタジーン) を用い、 以下の (1) 〜 (5) の条件で PCRを行ない、 特異的 な PCR産物を得た。
(1) 95X: 30秒
(2) 95 10秒— 68で 10秒一 72T 2分を 3回
(3) 95 10秒— 66°C 10秒— 72で 2分を 3回
(4) 95 10秒— 64で 10秒— 72 2分を 3回
(5) 95t: 10秒一 62°C 10秒一 72°C 2分を 35回
(5) 1T 5分
得られた PCR産物 ¾;、 pCDNA3.1-/V5-His T0P0 (インビトロジェン) へクロー エングし、 大腸菌 DH 5 αを形質転換した。
得られたコロニー、 合成プライマ一 (配列番号: 5および配列番号: 6) お よび酵素として ExTaq (TAKARA) を用いて PCRを行ない、 PCR産物を得た。. この PCR産物中の基質を ExoSAP-IT (アマシャムフアルマシア) により分解後、 これ をテンプレー卜として BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction
(ABI) を用いてシーケンス反応を行ない、 シーケンス産物を 3100 Genetic analyzer (ABI) で解析した。 ヒト Ses2遺伝子の挿入されたプラスミドを含有す るコロニーを LB培地で培養し、 QUAGEN plasmid midi kit (キアゲン) を用いて ベクターを回収した。 この Ses2遺伝子発現べクタ一を Nucleofector (AMAXA) を 用い、 SK-N- AS細胞へ形質導入した。 対照として PCDNA3.1を SK-N-AS細胞へ形質 導入した。
各形質導入細胞をタイプ Iコラーゲンコート 96穴プレート (IWAKI) へ 7500個 Zゥエルで播種し、 1晚培養後、 ッニカマイシンを種々の濃度で添加し 1日また は 2日間培養し、 またはタブシガーギンを種々の濃度で添加し 1日間培養し、 そ れぞれ細胞死を誘導した。 培養後、 細胞死に伴う DNA切断を、 CELL DEATH DETECTION EL ISA PLUS kit (ロッシュ) を用い検出した。 実験方法は、 キットに 添付された実験手引き書に従った。
結果を図 1〜図 3に示す。
PCDNA3.1形質導入 SK- N- AS細胞 (対照細胞) と比較して、 ヒト Ses2遺伝子形質 導入細胞では DNA切断が抑制されていた。 これより、 Ses2が細胞死抑制作用を有 することが明らかである。 産業上の利用可能性
本発明のタンパク質およびポリヌクレオチドは、 例えば神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発 性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、
プリオン病、 クロイツフェルト一ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性二 ユーロバチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出 血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 滕臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などの診断マーカー等として有用であり、 該夕ンパク 質、 ポリヌクレオチドまたは該タンパク質に対する抗体などを用いるスクリー ニングにより得られる調節剤、 該タンパク質に対する中和抗体などは、 例えば、 神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家族性アルツハイマー病、 若年性アル ッハイマー病、 孤発性アルツハイマー病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイツフェルト—ヤコブ病、 ハンチント ン舞踏病、 糖尿病性ニューロバチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道 癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺 癌、 塍臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍など) などの予防 ·治療剤として使用 することができる。
また、 本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、 本発明のタンパク質の発 現を抑制することができ、 例えば、 神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病 (家 族性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー病な ど) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 クロイ ッフェルト一ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロパチ一、 多発 性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌 (例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓癌、 腎 癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 fl萃臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血液腫瘍 など) などの疾病の予防 ·治療剤として使用することができる。 さらに、 本発 明の各種のポリヌクレオチドは例えば神経変性疾患 〔例、 アルツハイマー病
(家族性アルツハイマー病、 若年性アルツハイマー病、 孤発性アルツハイマー 病など) 、 パーキンソン病、 ダウン症、 筋萎縮性側索硬化症、 プリオン病、 ク 口イツフェルト—ヤコブ病、 ハンチントン舞踏病、 糖尿病性ニューロバチ一、 多発性硬化症など〕 、 虚血性脳疾患 (例、 脳梗塞、 くも膜下出血など) 、 癌
(例、 大腸癌、 乳癌、 肺癌、 前立腺癌、 食道癌、 胃癌、 肝臓癌、 胆道癌、 脾臓 癌、 腎癌、 膀胱癌、 子宮癌、 精巣癌、 甲状腺癌、 J3萃臓癌、 脳腫瘍、 卵巣癌、 血 ,液腫瘍など) などの診断、 予防または治療に有用である。