WO2004020635A1 - バクテリオファージおよび細菌感染症治療剤 - Google Patents

バクテリオファージおよび細菌感染症治療剤 Download PDF

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Description

明 細 書
パクテリオファージおよび細菌感染症治療剤
技 術 分 野
本発明は、 黄色ブドウ球菌 (Staohylococcus aureus)感染症、 特に
MRSA(methicillin-resistant S. aureus)感染症の予防および治療に有用なバクテ リオファージ、 該黄色ブドウ球菌の細胞壁分解酵素および細胞表面レセプ夕一 に対するリガンド並びにこれらの医療分野における利用に関する。
背 景 技 術
バクテリオファージ (ファージ)は、 20世紀の初めに発見された細菌に感染す るウィルスである。 該ファージは、 現在、 分子生物学 (例えば遺伝子ベクターと して)、 医療診断 (例えば細華のファージ夕ィビング)などの分野で広く使用され てきている。
また近年、 ファージ療法が、 従来の抗生物質療法に代わる新たな細菌感染症 の治療法として再認識されつつある。 これは、 各種の抗生物質に耐性を獲得し た細菌、 例えば多剤耐性型黄色ブドウ球菌(MRSA)、 バンコマイシン耐性
MRSA (VRSA, vancomycin-resistant MRS A)などによる難治性感染症 (MRS A院 内感染)の出現、 バイオテクノロジー技術の急速な進歩などの理由による。 ファージは、 抗生物質とは本質的に異なる溶菌機構を持ち、 宿主細菌を特異 的に溶菌すること、 新たな耐性菌を産む危険が少ないこと、 真核細胞には感染 せず、 元来ヒト体内に常在し生体に対して安全であることなどの理由から、 抗 生物質に代わる理想的な抗菌活性物質と考えられる。
従つて、 新たなファ一ジ療法の開発ないしはこれに利用できるファージの探 索が、 医療分野において要望されている。 このような新しいファージが提供で きれば、 ファージ感染機構、 溶菌活性発現機序などの解明が可能であり、 また 遺伝子改変による更に改良されたファージゃファージに由来する溶菌活性酵素 剤などの作製も可能であると考えられる。
発 明 の 開 示
本発明の目的は、 パクテリオファ一ジ療法のためのパクテリオファージ、 特 に MRSAなどの多剤耐性型黄色ブドウ球菌による感染症の治療に有効な、 非毒 性で宿主特異的で且つ宿主範囲の広いパクテリオファージを提供することにあ る。
本発明の他の目的は、 上記パクテリオファージが保有する溶菌活性酵素、 即 ち黄色ブドゥ球菌の細胞壁分解酵素 (endolysin)を提供することにある。
本発明の他の目的は、 上記バクテリオファージ由来の細菌細胞表面レセプ夕
—に対するリガンドを提供することにある。
本発明の他の目的は、 上記バクテリオファージ、 細胞壁分解酵素およびリガ ンドの製造方法並びにこれらの酵素およびリガンドをコードする DNA分子を 提供することにある。
本発明者は、 上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。 その結果、 該目 的に合致する新たなパクテリオファ一ジの単離に成功すると共に、 その投与が マウスにおける MRSA感染症を有意に防御できることを見出した。
また、 本発明者は、 該ファージのゲノム上にコードされる溶菌活性酵素およ び細菌細胞表面レセプ夕一に対するリガンドの各 DNA配列のシークェンシン グおよび単離に成功し、 これらの DNA配列およびアミノ酸配列を解明した。 本発明は、 上記知見を基礎として完成されたものである。 その要旨は、 以下 の項 1 -27に示されるとおりである。
項 1. 以下の (a)または (b)の蛋白質をコードする DNA配列を含むことを特徴 とする単離されたパクテリオファ一ジ;
(a) 配列番号: 1のァミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号: 1のアミノ酸配列において 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したァミノ酸配列からなり、 黄色ブドゥ球菌の細胞壁分解酵 素活性を有する蛋白質。
項 2. 以下の (c)または (d)の蛋白質をコードする DNA配列を含むことを特徴 とする単離されたバクテリオファージ;
(C) 配列番号: 2のァミノ酸配列からなる蛋白質、
(d) 配列番号: 2のアミノ酸配列において 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドゥ球菌の細菌表面レセ プターに対するリガンドとしての機能を有する蛋白質。 項 3. 以下の (a)または (b)の蛋白質をコードする DNA配列と、 以下の (c)また は (d)の蛋白質をコードする DNA配列とを含むことを特徴とする単離されたバ クテリオファージ;
(a) 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号: 1のアミノ酸配列において 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドゥ球菌の細胞壁分解酵 素活性を有する蛋白質。
(c) 配列番号: 2のァミノ酸配列からなる蛋白質、
(d) 配列番号: 2のアミノ酸配列において 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドウ球菌の細菌表面レセ プターに対するリガンドとしての機能を有する蛋白質。
項 4. 黄色ブドウ球菌の溶菌活性を有するものである項 1 -3のいずれかに記 載のバクテリオファージ。
項 5. 黄色ブドウ球菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)である項 4 に記載のパクテリオファージ。
項 6. 配列番号: 3の DNA配列からなる単離されたバクテリオファージ。 項 7. 配列番号: 7の DNA配列からなる単離されたバクテリオファージ。 項 8. 項 1-7のいずれかに記載のバクテリオファージを有効成分として、 製 剤学的に許容される担体と共に含有する医薬組成物。
項 9. 黄色ブドウ球菌感染症の予防および治療剤である項 8に記載の医薬組 成物。
項 10. MRSA感染症の予防および治療剤である項 9に記載の医薬組成物。 項 11 . 腹腔内投与形態、 皮下投与形態および鼻腔内投与形態から選ばれる 投与形態である項 8-10のいずれかに記載の医薬組成物。
項 12. 黄色ブドウ球菌による感染症を予防もしくは治療するための方法で あって、 該感染症に罹患しているかそのおそれのある哺乳動物に項 1 -7のいず れかに記載のパクテリオファージの有効量を投与することを特徴とする方法。 項 13. 以下に示される各工程を含む項 1 -7のいずれかに記載のパクテリオ ファージの製造方法; (a)黄色ブドゥ球菌からマイトマイシン C誘発によつて溶原バクテリオファージ を含有する試料を得る工程、
(b)該試料をフィルターに通してパクテリオファージを通過させる工程、
(c)フィル夕一を通過したバクテリオファージを精製する工程、
(d)精製されたパクテリオファージを、 黄色ブドウ球菌を含有する培地中で増殖 させる工程、
(e)増殖したバクテリオファージを単離する工程、
(f)単離されたパクテリオファージを精製する工程。
項 14. 以下の (a)または (b)の蛋白質をコードする遺伝子;
(a) 配列番号: 1のァミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号: 1のアミノ酸配列において 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したァミノ酸配列からなり、 黄色ブドゥ球菌の細胞壁分解酵 素活性を有する蛋白質。
項 15. 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする遺伝子であ る項 14に記載の遺伝子。
項 16. 配列番号: 8のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする遺伝子であ る項 14に記載の遺伝子
項 17. 以下の (a)または (b)の蛋白質;
(a) 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号: 1のアミノ酸配列において 1 もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドゥ球菌の細胞壁分解酵 素活性を有する蛋白質。
項 18. 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質である項 17に記載の蛋 項 19. 配列番号: 8のアミノ酸配列からなる蛋白質である項 17に記載の蛋 白質。
項 20. 項 17-19のいずれかに記載の蛋白質を有効成分として、 製剤学的に 許容される担体と共に含有する酵素製剤。
項 21 . 黄色ブドウ球菌感染症の予防または治療剤である項 20に記載の酵素 項 22. MRSA感染症の予防および治療剤である項 21に記載の酵素製剤。 項 23. 項 21または 22に記載の酵素製剤の有効量を、 黄色ブドウ球菌によ る感染症に罹患しているかそのおそれのある哺乳動物に投与することを特徴と する黄色ブドウ球菌感染症の予防または治療方法。
項 24. 黄色ブドウ球菌感染症の除菌剤である項 20に記載の酵素製剤。
項 25. MRSAの除菌剤である項 24に記載の酵素製剤。
項 26. 配列番号: 2のアミノ酸配列からなる黄色ブドウ球菌の細胞表面レセ プターに対するリガンドをコ一ドする遺伝子。
項 27. 配列番号: 2のアミノ酸配列からなる黄色ブドウ球菌の細胞表面レセ プターに対するリガンド。 本明細書において、 アミノ酸、 (ポリ)ペプチド、 (ポリ)ヌクレオチドなどの略 号による表示は、 IUPAC-IUBの規定 〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)] 「塩基配列又はアミノ酸配 列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」 (日本国特許庁編)および当該 分野における慣用記号に従う。
本明細書において 「遺伝子」 または 「DNA分子」 とは、 2本鎖 DNAおよび それを構成するセンス鎖およびァンチセンス鎖という各 1本鎖 DNAの両者を 包含する趣旨で用いられる。 またその長さに特に制限されるものではない。 従 つて、 本明細書における遺伝子 (DNA分子)には、 特に言及しない限り、 ゲノム DNAを含む 2本鎖 DNAおよび cDNAを含む 1本鎖 DNA (正鎖)並びに該正鎖と 相補的な配列を有する 1本鎖 DNA (相補鎖)およびこれらの断片のいずれもが含 まれる。
また、 当該 「遺伝子」 または 「DNA分子」 には、 特定の塩基配列で示される
「遺伝子」 または 「DNA分子」 だけでなく、 これらによりコードされる蛋白質 と生物学的機能が同等である蛋白質 (例えば、 同族体、 変異体、 誘導体など)を コードする 「遺伝子」 または 「DNA分子」 も包含される。 具体的には、 ストリ :条件下で前記特定の塩基配列で示される 「遺伝子」 または 「DNA 分子」 とハイブリダィズするものを挙げることができる。 なお、 遺伝子または DNA分子は、 機能領域の別を問うものではなく、 例えば発現制御領域、 コード 領域、 ェキソンまたはイントロンを含むことができる。
本明細書において 「蛋白質」 または 「(ポリ)ペプチド」 には、 特定塩基配列 の遺伝子によりコードされるアミノ酸配列からなる 「蛋白質」 または 「(ポリ) ペプチド」 だけでなく、 これらと生物学的機能が同等である 「蛋白質」 または 「(ポリ)ペプチド」 (例えば、 同族体、 変異体、 誘導体など)が包含される。 その 例としては、 天然に存在するアレル変異体、 天然に存在しない変異体および人 為的に欠失、 置換もしくは付加されることによって改変されたアミノ酸配列か らなる変異体が包含される。 力 る変異体としては、 変異のない蛋白質または (ポリ)ペプチドと、 少なくとも 70%、 好ましくは 80%、 より好ましくは 95%、 さらにより好ましくは 98%相同なものを挙げることができる。 なお、 アミノ酸 配列の相同性は、 アミノ酸配列相同性検索のための既知のプログラムである
FASTAもしくは BLASTプログラム (Clustal, V·, Methods Mol. Biol., 25, 307- 318 (1994))によって検索されるものとする。
以下、 本発明バクテリオファ一ジ (以下、 単に 「ファージ」 ということがあ る)、 溶菌活性酵素 (細胞壁分解酵素)および細菌細胞表面レセプ夕一に対するリ ガンドにっき順次詳述する。 但し、 以下の説明および例は、 本発明の好適な実 施態様を示すものであり、 本発明はこれらに限定されるものではない。
(1) 本発明パクテリオファージ
本発明バクテリオファージは、 黄色ブドゥ球菌 (Staphylococcus aureus、 以 下単に 「細菌」 ということがある)の細胞壁分解酵素 (溶菌酵素)をコードする特 定の DNA配列および Zまたは細菌細胞表面レセプターに対してリガンドとし て機能する蛋白質をコードする特定の DNA配列を保有することにより特徴づ けられる。
上記溶菌酵素をコードする特定の DNA配列としては、 代表的には、 配列番 号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする DNA配列を挙げることがで きる。 この DMA配列は、 後記実施例において詳述する 0 MR11の保有する溶菌 酵素をコードしており、 配列番号: 3に示される * MR11の全 DNA配列の 40,527-41 ,969番目の DNA配列 (ORF65、 全長 1443bps)に相当する。
本発明ファージの有する溶菌酵素をコードする DNA配列は、 上記 <i> MR11が 保有する配列番号: 1のアミノ酸配列をコードするものに限定されず、 該配列 番号: 1のアミノ酸配列において、 1 もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換も しくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドウ球菌の細胞壁分解酵素活性 を有する蛋白質をコードするものであることができる。
ここで 「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸 配列」 におけるアミノ酸配列の改変は、 改変されたアミノ酸配列からなり蛋白 質が、 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質と同一の機能、 即ち細菌細 胞壁分解酵素活性を有する同効物であることを前提として、 その程度および位 置を任意に選択することができる。 かかるアミノ酸配列の改変 (変異) は、 天 然において例えば突然変異や翻訳後の修飾などにより生じることもあり、 また 天然由来の遺伝子 (例えば (i> MR11の有する遺伝子) の配列を人為的に改変する こともできる。 本発明は、 このような改変 '変異の原因および手段を問わず、 上記細菌細胞壁分解酵素活性を有する改変アミノ酸配列をコードする DNA配 列を包含する。
該改変アミノ酸配列の一具体例としては、 後述する実施例に示される本発明 ファージ * MR25の有する DNA配列 (配列番号: 7に示す全配列)中、 ORF68に よってコードされるアミノ酸配列を挙げることができる。 該アミノ酸配列は、 配列番号: 8で示されるとおり、 481アミノ酸残基からなっており、 ファージ Φ ΜΒ11の ORF65によってコ一ドされるアミノ酸配列とは、 98.1%の相同性を 有している (図 13参照)。 その詳細は、 後記実施例 4の (3)において説明する。 配列番号: 1のアミノ酸配列の好適な改変アミノ酸配列としては、 元のアミ ノ酸配列と一定の相同性を有するもの、 例えば少なくとも 80%、 好ましくは少 なくとも 90%、 より好ましくは少なくとも 95%、 最も好ましくは少なくとも 98%の相同性を有するものを挙げることができる。
かかる特定の細菌細胞壁分解酵素 (溶菌酵素)をコ一ドする DNA配列を有する 本発明ファージは、 特に強い溶菌活性を有しており且つ MRSAに対して有効で あることを利用して、 細菌、 殊に MRSAを十分に死滅させる効果を奏し得る。 従って、 該ファージは細菌感染症、 特に MRSAの予防および治療剤として有用 である。
また、 本発明ファージの保有する細菌細胞表面レセプ夕一に対してリガンド として機能する蛋白質をコードする DNA配列としては、 代表的には、 配列番 号: 2のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする DNA配列を挙げることがで きる。 この DNA配列は、 本発明ファ一ジ <|)Mmiが保有するものであり、 配列 番号: 3に示される <i MR11の全 DNA配列の 36,593-38,464番目の DNA配列 (ORF61、 全長 1872bps)に相当する。 より詳しくは、 該 DNA配列はその C末 端側が溶菌酵素 (lysin)をコードしており、 N末端側がレセプターに対するリガ ンドをコードしている。
本発明ファ一ジの有する上記特定のリガンドをコードする DNA配列は、 Φ MR11 が保有する配列番号: 2 のアミノ酸配列をコードするものに限定されず、 該配列番号: 2のアミノ酸配列において、 1 もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドウ球菌の細胞表面レセ プ夕一に対してリガンドとして機能する蛋白質をコードするものであることが できる。
かかる特定のリガンドとして機能する蛋白質をコードする DNA配列を有す る本発明ファージは、 該リガンドとしての機能が特に広範囲の宿主細菌に対す るものである。 この性質を利用して、 該ファージは広範な宿主細菌に特異的且 つ効果的に吸着することができる。 従って、 該ファージは、 その広範囲に亘る 細菌吸着能を利用して、 例えば、 新たに開発される抗菌有効成分や細菌に対す る毒素などを含む各種の外来 DNAを、 宿主細菌に輸送、 伝達することができ る。
特に本発明ファージは、 例えば (i> MR11のように、 特定の溶菌酵素をコード する DNA配列 (ORF65)と、 特定のリガンドをコードする DNA配列 (ORF61)と の両者を有するものであるのが好ましい。
本発明ファ一ジの溶菌機構につき、 上記 <i> MR11を例にとり詳述すれば、 該 ファージ Φ ΜΒ11は、 そのリガンド (ORF61の N末端側がコードするもの)の作 用により標的細菌 (黄色ブドウ球菌)に吸着すると共に、 細菌細胞壁を破壊 (lysis from without, ORF61の C末端側がコードする溶菌酵素による)して、 そのゲノ ムを細菌細胞内に注入して感染を成立させる。 その後、 細菌細胞内のファージ ゲノムは、 これが溶菌サイクルに入ったときに溶菌酵素 (ORF65がコードする もの)を産生し、 該酵素は holin(ORF64がコードするもの)のいわゆる 「穴あ け」 作用によって細菌細胞壁を経て菌体外に放出され、 細胞壁を菌体外から破 壌して (lysis from within)、 細菌自体を溶菌により死滅させ、 また菌体内に産生 された子ファージを菌体外に放出させる。 このように、 本発明ファージ φ MR1 1における ORF61は、 リガンドをコ一ドするものであると同時に菌体内 にゲノムを注入するために細胞壁を一部溶解させる溶菌酵素 (lysis from without) をコードする DNA配列であり、 ORF65は、 ファージの複製増殖の繰り返しに よって産生され続けて、 最終的に標的菌を完全に死滅させる溶菌酵素 (lysis from within)である。 両者は、 細菌を死滅させ、 ひいては細菌感染症を予防および治 療するためのファージにとって重要なものである。
本発明ファージ (/ MR1 1の他の特徴点としては、 溶菌サイクルのスィッチの オン Zオフに関与する抑制蛋白 (repressor, ORF4)をコードする配列の結合部位 (repressor binding site, RBS)が、 0RF4と ORF4.1 (溶菌サイクルの開始に最初 に必要な遺伝子)とに挟まれた部位に存在すると考えられる点である。 更に、 本 発明ファ—ジ MR11は、 溶原化に必須の部位特異的組換え酵素 (recombinase) として、 既知のファージが有する integrase familyに属する酵素群とは異なって、 ファージ或いは宿主菌由来の他の蛋白因子を必要としない resolvase familyに 属する新しい酵素をコードする DNA配列を有している。 この <i> MR11の部位特 異的組換えシステムはユニークなものであると考えられる。 更に、 本発明ファ ージ <i) MR1 1は、 他のファージにみられることがある毒素遺伝子や薬剤耐性遺 伝子を有していない点をも特徴としている。 これらのことからも本発明 Φ
MR1 1は、 医療分野における利用に好適なものである。
本発明ファージは、 黄色ブドウ球菌を含む微生物の存在下で増殖させること により調製することができる。 より詳しくは、 本発明ファージは、
(a)黄色ブドウ球菌からマイトマイシン C誘発によって溶原ファージを含有する 試料を得る工程、
(b)該試料をフィルターに通してファージを通過させる工程、
(c)フィルタ一を通過したファージを精製する工程、
(d)精製されたファージを、 黄色ブドウ球菌を含有する培地中で増殖させる工程、 (e)増殖したファージを単離する工程、 および
(f)単離されたパクテリオファージを精製する工程により調製することができる。 各工程は、 以下の記載および後記実施例の記載から明らかである。
本発明バクテリオファージは、 代表的には細菌感染症に感染した哺乳動物由 来の細菌含有試料、 例えば血液、 尿、 便、 髄液、 鼻粘膜、 皮膚、 咽頭や気管の 洗浄液などから得ることができる。 好ましくは、 本発明ファージは MRSA由来 の細菌感染試料から得ることができる。 より好ましくは該試料にマイトマイシ ン Cを添加して溶原ファ一ジを誘発させて得ることができる。 また、 本発明フ ァ一ジは、 種々の保存機関に保存されている細菌から得ることもできる。
本発明ファージの単離は、 例えば、 細菌中で繰り返し増殖させた後、 ブラー ク形成単位から、 常法に従いファージを選択することにより実施できる。 より 詳しくは、 一般的な方法、 例えば、 濾過、 プラーク形成、 およびショ糖、 フィ コール、 パーコールもしくは塩化セシゥムのような勾配液中の分析的密度勾配 遠心分離に従ってファージを単離することができる。 これらの詳細は、 後記実 施例において説明する。
また、 得られるファージはさらに精製処理することができる。 該精製は例え ば限外濾過、 超遠心分離、 サイズ排除クロマトグラフィー、 ァフィ二テイク口 マトグラフィ一のような、 当分野における公知の方法に従って行うことができ る。
本発明ファージは、 黄色ブドウ球菌の溶菌活性を有しており、 該細菌を死滅 させることができる。 従って、 これは、 ファージ療法剤として細菌感染症の治 療および予防に特に、 MRSA院内感染の予防および治療に有効である。
本発明はかかる細菌感染症治療および予防剤などの医薬組成物を提供する。 本発明医薬組成物は、 その有効成分として本発明ファージを含有することを 必須の要件として、 他は、 基本的には従来知られているファージ療法剤などと 同様のものとすることができる。 通常、 該組成物は、 その投与に適した製剤形 態に調製され、 治療もしくは予防処置を必要とする感染症患者または健常者に 投与される。
製剤形態は、 投与経路に応じて適宜決定することができる。 該投与経路の具 体例としては、 腹腔内投与、 皮下投与、 鼻腔内投与、 経口投与、 静脈内投与な ど、 好ましくは腹腔内投与、 皮下投与および鼻腔内投与を挙げることができる これらの投与経路に適した製剤形態は、 一般には注射剤形態、 エアゾ一ル剤形 態などの液剤形態を挙げることができる。.勿論、 本発明医薬組成物は、 これら の形態に限定されるものではなく、 例えば有効成分とする本発明ファージをリ ポゾームに包埋したリボソーム製剤形態や、 脂溶性マイクロカプセル、 デンド リマ一 (dendrimers)などの形態とすることもできる。 これらの形態の調製は、 常法に従うことができる。
各製剤形態は、 常法に従い、 本発明ファージを製剤学的に許容される適当な 担体 (医薬担体ないしは希釈剤)と共に利用して調製することかできる。 注射剤 形態に調製される場合、 医薬担体乃至希釈剤としては、 通常のリン酸緩衝液な どの緩衝液、 生理食塩水、 蒸留水、 リンゲル液その他の細胞保存液などの水性 媒体、 およびプロピレングリコール、 ポリエチレングリコール、 植物油、 ォレ イン酸ェチルなどの注射可能な非水性媒体を挙げることができる。 また、 製剤 には、 一般的な蛋白製剤などと同様に、 安定化剤、 緩衝剤、 等張化剤、 キレー ト剤、 pH調整剤、 界面活性剤、 保存剤、 抗酸化剤、 不活性ガスなどを適宜添加 配合することもできる。
本発明組成物中に含有される活性成分としてのファージの配合量、 これを含 む組成物の投与量などは、 該組成物の投与によって細菌感染症が治療もしくは 予防できる限り特に限定されるものではなく、 その投与経路、 処置を必要とす る細菌 (感染症)の種類および数などに応じて当業者にとり適宜決定することが できる。 例えば、 後述する実施例に示すマウスを利用した試験例では、 標的細 胞に対して 1 -200 MOIの腹腔内投与量で、 所望の効果が認められており、 こ の投与量を目安とすることかできる。 一般に、 本発明ファ一ジの投与量は、 約 106— 101 3 PFU/ka/dayの範囲から選択することができる。 本発明医薬組成物は、 細菌感染した哺乳動物の処置、 即ち細菌微生物を十分 に死滅または排除して当該微生物の宿主動物への感染を無効にする処置に使用 することができる。 特に、 本発明組成物は広範な各種細菌微生物のいずれに感 染した哺乳動物の処置にも適用できる利点があり、 更に MRSA、 VRSAなどの 細菌感染症の処置にも適用できる利用がある。
本発明医薬組成物は、 その単独投与によって (ファージ療法)、 充分に各種細 菌感染症の処置を行い得るものではあるが、 必要に応じて、 各種抗生物質を利 用した化学療法などと組合せて細菌感染症の処置に利用することも可能である < (2) 細菌細胞壁溶解酵素およびこれをコ一ドする遺伝子
本発明は、 ファージ療法に有用なパクテリオファージ自体と共に、 これが保 有する細菌細胞壁分解酵素 (溶菌酵素)および該酵素をコードする遺伝子をも提 供する。
上記細菌細胞壁分解酵素は、 細菌細胞壁を溶解し、 該細菌を死滅させる作用 を奏し得るものであり、 従って、 その利用 (投与)によって細菌感染症に罹患し た哺乳動物の感染症を治療することができ、 また、 哺乳動物が細菌感染症に罹 患するおそれを未然に予防することができる。 特に、 本発明の溶菌酵素は、
MRSAを死滅させるのに有効である。 本発明溶菌酵素は、 細菌との接触によつ て該細菌を死滅させ得るものであり、 例えば病院などにおいて殺菌消毒液 (除 菌液) として利用することによって、 医療従事者や入院患者などが MRSAに院 内感染するおそれなどを未然に防止することができる。
本発明溶菌酵素の具体例としては、 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋 白質を挙げることができる。 このものは本発明ファージ <i) MR11の DNA配列に よってコードされている。 より詳しくは、 後記実施例 4の (3)に説明する通り、 ORF65として示される (i> MFmの DNA配列の 40,527-41 ,969番目の DNA配 列がコ一ドするものである。
本発明溶菌酵素は、 該配列番号: 1のアミノ酸配列に限らず、 該配列番号: 1 のアミノ酸配列において、 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付 加したァミノ酸配列からなり、 黄色ブドゥ球菌の細胞壁分解酵素活性を有する 蛋白質であることができる。 その具体例としては、 例えば図 13に示す本発明 ファージ 0 MR25の DNA配列によってコードされるアミノ酸配列を挙げること ができる。 この蛋白質 (改変されたアミノ酸配列を有するもの)は、 配列番号: 8(全 481アミノ酸残基) で示されるアミノ酸配列からなっており、 そのアミノ 酸配列は、 配列番号: 1のアミノ酸配列 (全 481アミノ酸残基)と 98.3%同一で ある。
本発明蛋白質は、 これをコードする DNA配列を利用して、 常法に従い、 遺 伝子工学的手法により製造することができる。
本発明蛋白質の遺伝子工学的手法において利用される DNA配列は、 これを 保有する起源、 例えば本発明ファージから、 常法に従い cDNAライブラリ一を 調製し、 該ライブラリーから上記 DNA配列に特有の適当なプローブや抗体な どを用いて所望クロ一ンを選択することにより単離することかできる。 所望ク ローンの選択のための一般的方法としては、 特異抗体を利用する免疫的スクリ 一二ング方法、 プローブを用いるプラークハイブリダィゼーシヨン法、 コロニ —ハイブリダイゼーション法などを挙げることができる。 所望 DNA配列の取 得は、 好適には、 PCR法 (Science, 230, 1350 (1985))による DNA/RNA増幅法 によることができ、 その精製は例えばゲル電気泳動法によることができる。 ま た、 各操作における DNA断片の配列の決定は、 ジデォキシ法、 マキサムーギ ルバ一ト法、 市販シークェンスキットを用いる方法などによることができる。 上記 DNA配列を利用した本発明蛋白質の製造は、 例えば該 DNA断片を宿主 細胞中で発現できる組換え DNA (発現ベクター)を作成し、 これを宿主細胞に導 入して形質転換し、 該形質転換体を培養する方法によることができる。 ここで、 宿主細胞としては、 一般には大腸菌 (Escherichia coli)株などの原核生物、 CHO 細胞、 COS細胞、 酵母細胞、 昆虫細胞などの真核生物がよく用いられる。 本発 明では、 特に該宿主細胞として、 黄色ブドウ球菌を用いることもできる。 組換 え DNAの調製、 その宿主細胞への導入および所望蛋白質の発現方法 (形質転換 体の培養方法)も、 基本的に一般的方法に従うことができる。 得られる蛋白質の 分離、 精製も一般的技術に従うことかできる。
尚、 本発明蛋白質の製造のための遺伝子発現ベクターとしては、 通常の融合 蛋白発現ベクターも好ましく利用することができる。 該ベクターの具体例とし ては、 ダル夕チオン- S-トランスフエラーゼ (GST)との融合蛋白として発現させ るための pGEX(Promega社)、 ヒスチジン ·タグ融合蛋白質として発現させる ためのヒスチジンリピートを付与したものなどを例示することができる。 特に、 pGEXの利用によれば、 得られる融合蛋白質は、 GSTがダルタチオンと結合す る性質を利用して、 ァフィ二ティクロマトグラフィーによって容易に精製する ことができる利点がある。 また、 所望の蛋白質の N末端あるいは C末端に His の 6個をタグ (目印)として結合させた融合蛋白質は、 コバルトなどの金属や二 ッケル NTA (Nitrilotriacetic acid)ァガロースに特異的に吸着する性質がある。 こ の性質を利用して、 タグのついた組換え蛋白質のみを一段階で且つ高純度に精 製することができる利点がある。
上記で得られる組換え蛋白質は、 所望により、 その物理的性質、 化学的性質 などを利用した各種の分離操作 [ 「生化学データーブック II」 、 1 175-1259頁、 第 1版第 1刷、 1980年 6月 23日株式会社東京ィ匕学同人発行; Biochemistry, £§(25), 8274-8277 (1986); Eur.丄 Biochem., 163, 313-321 (1987) など参照]により分離、 精製できる。 該方法としては、 具体的には例えば通常の再構成処理、 蛋白沈澱 剤による処理 (塩析法)、 遠心分離、 浸透圧ショック法、 超音波破砕、 限外濾過、 分子篩クロマトグラフィー (ゲル濾過)、 吸着クロマトグラフィー、 イオン交換ク 口マトグラフィー、 ァフィ二ティクロマトグラフィー、 高速液体クロマトダラ フィ一 (H P L C)などの各種液体クロマトグラフィー、 透析法、 これらの組合せ などを例示できる。 特に好ましい分離、 精製方法としては所望の蛋白質を結合 させたカラムを利用したァフイエティクロマトグラフィーを例示できる。
また、 本発明蛋白質は、 そのアミノ酸配列情報に基づいて、 一般的なぺプチ ド合成方法に従つて化学合成することも可能である。
本発明蛋白質は、 細菌細胞壁溶解酵素 (溶菌酵素)活性を有しており、 特に該 酵素活性が強くしかも MRSAに対して有効な該酵素活性を有しており、 従って 該蛋白質は、 細菌感染症の治療および予防に、 殊に MRSA感染症の治療および 予防に利用することかできる。
本発明はかかる特定の溶菌酵素活性を有する蛋白質を有効成分とする医薬組 成物 (細菌感染症治療および予防のための酵素製剤)を提供する。
該医薬組成物は、 前述した本発明ファージを有効成分とする医薬組成物と同 様に、 製剤学的に許容される担体を利用して、 投与に適した各種の製剤形態に 調製され、 治療もしくは予防処置を必要とする感染症患者または健常者に、 腹 腔内投与、 皮下投与、 鼻腔内投与、 経口投与、 静脈内投与、 皮膚塗布などに従 い投与できる他、 局所投与することもできる。 その投与量は、 投与経路、 処置 対象細菌、 特に MRSAなどの黄色ブドウ球菌の種類や量などに応じて異なるが、 処置対象細菌を殺菌、 死滅できる範囲から適宜決定することかできる。
更に、 本発明酵素は、 一般的な殺菌、 消毒剤 (除菌剤) と同様にして、 処置 を必要とする細菌の殺菌、 消毒剤として、 例えば病院内の各種設備、 手術用具 などの殺菌消毒や、 医者、 患者などの手指、 衣服などの殺菌、 消毒に利用する こともできる。 かくして、 院内感染を未然に防ぐことができる。 該殺菌、 消毒 剤 (除菌剤) は、 その有効成分として本発明酵素を利用することを除いて、 一 般的な殺菌、 消毒剤と同様に、 製剤学的に許容される担体を用いて、 適当な製 剤形態に調製される。 製剤形態中に配合される本発明酵素の量は、 得られる製 剤の形態、 用いる担体の種類、 適用箇所などに応じて適宜決定することができ る。 その際には、 本発明酵素がその 10 x g (精製酵素剤として、 濃度約 0.1 g/ し)で、 107個の黄色ブドウ球菌を完全破壊することができる優れた殺菌効果 を奏し得ることを考慮することができる。
(3) 細菌細胞表面レセプターに対するリガンドおよびこれをコードする遺伝子 本発明は、 細菌細胞表面レセプ夕一に対してリガンドとして機能する蛋白質 およびこれをコードする DNA配列をも提供する。 該リガンドとして機能する 蛋白質の代表例としては、 本発明ファージ <i> MR11が保有している配列番号: 2 のアミノ酸配列からなる蛋白質を挙げることかできる。 この蛋白質 (リガンド) は、 より詳しくは、 後記実施例 4の (4)に記載するとおり、 本発明ファージ ψ MR11が保有する配列番号: 3の DNA配列中、 ORF61 として示される 36,593- 38,464の DNA配列 (全長 1872bps)によってコ一ドされるものである。
本発明リガンドは、 上記 (i) MR11が保有する配列番号: 2のアミノ酸配列か らなる蛋白質に限らず、 該配列番号: 2のアミノ酸配列において、 1 もしくは 数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブ ドウ球菌の細胞表面レセプ夕一に対してリガンドとして機能する蛋白質である こともできる。
本発明リガンドは、 該リガンドとしての機能が特に広範囲の宿主細菌に対す るものであることを利用して、 免疫原性の異なる各種ファージにこれを組み込 むことによって、 該ファージに広範な宿主細菌に対して特異的且つ効果的に吸 着する性質を付与することができ、 ファージの繰り返し投与の際の中和抗体に よる失活のおそれを最小限に抑えることができる。 また、 かくして得られるリ ガンドを有する本発明ファージは、 広範囲に亘る細菌吸着能を利用して、 例え ば、 新たに開発される抗菌有効成分や細菌に対する毒素、 自殺遺伝子などを含 む各種の外来 DNAを、 宿主細菌に輸送、 伝達することができる。 発明の効果
本発明によれば、 特に MRSAなどの多剤耐性型黄色ブドウ球菌による感染症 の治療に有効な、 非毒性で宿主特異的で且つ宿主範囲の広いバクテリオファー ジ、 並びに該バクテリオファ一ジに由来する溶菌活性酵素、 即ち黄色ブドウ球 菌の細胞壁分解酵素 (endolysin)および該バクテリオファージに由来する細菌細 胞表面レセプ夕一に対するリガンドが提供される。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明ファ一ジ ψ Mm 1の電子顕微撮影結果を示す。
図 2は、 実施例 1の (4)に従い本発明ファージ * MR11の細菌に対する吸着速 度、 潜伏期間およびパーストサイズを調べた結果を示すグラフである。
図 3は、 実施例 1の (7)に示す試験における細菌の感染マウスに対する致死量 を求めた結果を示すグラフである。
図 4は、 細菌感染マウスの生存率を調べた結果を示すグラフである。
図 5は、 実施例 1の (9)に従って細菌感染マウスに対する本発明ファージの延 命効果を調べた結果を示すグラフである。 図 6は、 実施例 1の (1 1)に従って細菌感染マウスに対する本発明ファージの 投与時期と保護効果との関連を調べた結果を示すグラフである。
図 7は、 実施例 1の (12)に従う試験における循環血流中に存在するファージ 数および細菌数を調べた結果を示すグラフである。
図 8は、 実施例 1の (13)に従って求められた MRSA感染マウスに対する本発 明ファージの有効性を調べた結果を示すグラフである。
図 9は、 実施例 2の (1)に従う腹腔内投与後の本発明ファージの各種臓器およ び組織への分布を示すグラフである。
図 10は、 実施例 2の (2)に従う本発明ファージの投与経路と血中ファージ濃 度との関連を示すグラフである。
図 1 1は、 実施例 3に従う本発明ファ一ジの延命効果 (細菌致死抑制効果)を調 ベた結果を示すグラフである。
図 12は、 本発明ファージ Φ ΜΙ Μのゲノム DNAの特徴を示す図である。 図 13〜20は、 それぞれ、 本発明細菌細胞壁分解酵素のアミノ酸配列を他の 溶菌酵素のそれと対比した図である。
図 21〜25は、 それぞれ、 細菌表面レセプタ一に対する本発明リガンドのァ ミノ酸配列を他の蛋白のそれと対比した図である。
図 26は、 本発明細菌細胞壁溶解酵素の遺伝子工学的製造のための、 プライ マーおよび発現べクタ一 (pTrc99A/65)の概略を示す図である。
図 27 (27-1〜27-4)は、 本発明細菌細胞壁分解粗酵素の各種黄色ブドゥ球菌に 対する溶菌活性を調べたグラフである。
図 28 (28-1および 28-2)は、 本発明細菌細胞壁分解粗酵素の黄色ブドウ球菌 以外の各種菌に対する溶菌活性を調べたグラフである。
図 29は、 本発明細菌細胞壁溶解酵素の遺伝子工学的製造のための、 プライ マーおよび発現べク夕一 (pTrc99A/65-6xHis)の概略を示す図である。
図 30 (30-1〜30-4)は、 本発明細菌細胞壁分解粗酵素の各種黄色ブドゥ球菌に 対する溶菌活性を調べたグラフである。
図 31 (31 -1および 31 -2)は、 本発明細菌細胞壁分解粗酵素の黄色ブドウ球菌 以外の各種菌に対する溶菌活性を調べたグラフである。 図 32は、 本発明細菌細胞壁分解粗酵素の MRSA株 85/2082に対する溶菌活 性の長期効果を調べたグラフである。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げるが、 本発明はこれら の実施例によって限定されるものではない。
尚、 各例で利用した試薬および培地は、 特筆しない限り、 ナカライテスク社 から購入した。 TBS培地 (tryptic soy broth)および H旧培地 (heart infusion broth) は、 ディフコ社 (Difco Laboratories)のものを用いた。 TSBMは TSB培地に
20mM CaCI2を添加した培地である。 H旧 MC培地は、 H旧培地に 20mM MgCI2 および 20mM CaCI2を添加した培地である。
また、 ファージプラーク形成およびスポットテストには、 ァガロースの 1.5% および 0.5%を含有する TSBM-固体培地をそれぞれ下層および上層として用い た。
細菌の増殖は、 Klett-Summersonカラーメーター (フィルタ一 #54)にて濁度 を測定することによりモニターした。 1 Klett単位は 6.4X 106個/ mlに相当する c この換算は、 予め Petroff-Hausser counting chamber (Hausser Scientific
Partnership, Horsham, PA)にて直接測定した細菌数と上記濁度との標準化され た関連を基礎としている。 実施例 1
(1) 黄色ブドウ球菌株およびその調製
利用した黄色プドゥ球菌は、 メチシリン感受性 (methicillin-sensitive)黄色ブド ゥ球菌 (MSSA)43株 (株番号の頭に SAを付して呼ぶ)、 標準 MSSA株 (209P株) および MRSA30株 (株番号の頭に MRを付して呼ぶ)の合計 74株である。
殆どの MSSAは健常者 162名の鼻腔スヮッブ由来であり且つ全ての MRSA は高知大学病院患者の臨床サンプル由来である。 鼻腔スワップおよび臨床サン プルは卵黄加マンニット食塩培地 (黄色ブドウ球菌の選択的且つセミ特異的増殖 培地、 Nissui Pharmaceutical Co., Ltd)上に拡散させた。 全ての単離した株が黄色ブドウ球菌であることは、 API-STAPH同定キット (Biomerieux社)を用いて、 また凝固酵素試験および顕微鏡観察によって確認さ れた。
MRSA株の同定は、 ォキサシリン (oxacillin)6 g/mlを含む選択塩寒天プレー ト (MSO培地、 Nissui社)上コロニー形成により行った。 MSOプレート上にコ ロニーを形成した株は、 更に PCR検出キット (PCR-based detection kit)を用い て mecA遺伝子試験 (MecA test "Wakunaga", Wakunaga Pharmaceutical Co.)を 行った。
MSO上で生育し得ない株を MSSAと判定した。 標準 MSSA株としての
209 P株 (Research Institute for Microbial Diseases of Osaka Unuversityかり人 手)および 2種の VRSA株 (Mu3(hetera-VRSA)および Mu50(VRSA), K.
Hiramatsu of Juntendo Universityより入手、 Hiramatsu, K., et al. Lancet 1997; 350:1670-1673. 参照)も使用した。
本例では、 MSSA株 SA37(MecA-negative)を健常者の鼻孔から単離し、 本発 明ファージの伝搬宿主および Zまたは試験的標的とした。 また、 動物試験のた めに SA37の 2種の変異株を確立した。 その一つは生体内における細菌動態試 験のために、 リフアンピシン耐性 (rifampicin-resistant)変異株 (SA37-RIF2)を使 用した。 該変異株は、 SA37親株をリファンピシン 2 x g/ml含有する選択 TSB 寒天培地に播種することによって単離した。 この変異株は SA37と同じ増殖性 およびファージ MFI11に対する感受性より確認した。 もう一つの変異株である
SA37の MR11-溶原 (MR11-lysogen)株 (SA37/ <i) Mm i)は、 (i> MR11の生体内効 果の比較試験に利用した。 この変異株は TSBMプレートに拡散させた <i) MR11- 暴露 SA37細胞の中で希に出現する細菌コロニーに由来する。
SA37/0 MR11における * MR11の溶原性を、 Hindlllまたは Xbal消化分析結 果が元の (i> Mm i のそれと同じであることから、 予備確認した。 該消化分析は、 後記するマイトマイシン C(MMC)誘発によって SA37/(i) MR11から放出される ファージの開裂 DNA断片パターンを示す。 この溶原性は親株 SA37と同じ生物 学的性質であった。 (2) マイトマイシン C誘発溶原ファージの調製
以下の手順に従って、 各種黄色ブドウ球菌から、 マイトマイシン C(MMC)誘 発により溶原ファージを分離した。
即ち、 黄色ブドウ球菌 MR11株を液体丁 SB培地に、 6X 107個/ ml接種後、 37 で 2時間振盪培養して菌数を 6X 108個/ mlとした後、 培養液にマイトマイシ ン Cを l g/mL添加し更に 30分間培養を継続した。 その後、 培養液を 8000 Xgで 10分間遠心し、 得られる菌ペレツトに等量の新鮮 TSB培地を加えてよ く懸濁させた後、 再遠心し、 菌ペレットに新鮮 TSB培地を加えて培養を再開し た。 菌が約 3X 109個/ mlまで増殖した後、 内在ファージの放出が始まり、 培養 再開後約 4時間で溶菌は完了した。
培養物 (溶菌液)を、 遠心し、 フィルタ一 (孔径 0.45 m)で濾過し、 濾液を希釈 後、 黄色ブドウ球菌を宿主としてブラ一ク (1個のファージに由来する溶菌斑)を 作らせて、 単一ファージを分離した。 (3) スポットテスト
上記 (2)で得られた溶菌液濾液 (上清)を細菌溶解活性のためのスポットテスト スクリーニングに供した。 該スクリーニングには 73の黄色ブドウ球菌 (野生型)、 標準 MSSA株 (209P)、 VRSA株 (Mu3および Mu50株)を用いた。 もし、 上清が ファージを含むなら、 このスクリ一ニングはその細菌溶解性宿主範囲の確立に も利用できる。
各上清 1白金耳 (約 5 L)を直接細菌株のローン (lawn)上に置き、 37°Cで 24時 間インキュベーション後、 溶菌スポットの形成を評価した。
上記スポットテストによって選別された溶菌活性陽性の培養上清を、 次に、 適当な宿主菌を用いた single-plaque isolationに供した。 選び取ったプラークを より大容量の培地で大量培養した。
その結果、 次のことが明らかとなった。
(a) 72の上清中、 36サンプルが、 少なくとも一つの細菌のローン上に溶菌スポ ットを産生し、 MMCによる溶原性ファージの複製が誘導されたことを明らか にした。 該 36のスポット陽性上清の内で、 8つが大部分の細菌ローン上に溶菌 スポットを形成し、 広宿主域ファージを含有することを明らかにした (後記ブラ —ク形成アツセィおよび電子顕微鏡写真にて確認)。
(b) その内の一つ、 即ち * MR1 1 と名付けた最も広い宿主範囲を有するファー ジは、 試験した殆ど全ての黄色ブドウ球菌に対してスポットを形成した。 従つ てこのものは、 黄色ブドウ球菌の表面に普遍的に発現されるレセプター分子を 介して、 広範な黄色ブドゥ球菌に効果的に吸着できることが明らかとなった。
(c) 更に、 この MR11は、 最も数多くの細菌 (試験した 75株中の 30株)上に大 きくて鮮明なプラークを産生した。
(d) また、 MR1 1 と同様に広い宿主範囲を有する他の一つとして <i> MR25と名 付けたファ一ジを得た。
上記スポットテストの結果とプラーク形成分析結果との相違は、 ファージの 細菌溶解性 (bacteriolysis)に 2つの異なるメカ二ズムがあることを反映している (Nelson, D., et al" Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 2001 ; 98: 4107-4112, Young, R. Y., Microbiol. Rev., 1992; 56: 430-481参照)。
即ち、 溶菌スポット形成は、 ファージ複製サイクル (phage replication (lyt ) cycle)に関連する菌体内部からの溶菌 (lysis from within)と、 ファージが細菌に結 合すること (Young, R. Y., Microbiol. Rev., 1992; 56: 430-481参照)によって惹起 される菌体外からの溶菌 (lysis from without)との両者の総和を表している。 一方、 プラーク形成は、 上記菌体内部からの溶菌メカニズムのみを示している (Young, R. Y., Microbiol. Rev., 1992; 56: 430-481参照)。 従って、 スポット陽性である がプラーク陰性という結果を呈した菌株では、 単にファージが細菌表面に吸着 したことによつて溶菌が弓 Iき起こされており、 引き続く子ウィルスの増殖過程 が溶菌サイクルのいずれかのステップで抑制されていることを示している。
以下の試験には、 このファ一ジ * MR11または <i) MR25(いずれも SA37株を 宿主として単離された単一ファ一ジ)を利用した。
(4) MR1 1の生物学的およびウィルス学的特徴
<i) MR1 1の電子顕微撮影結果を図 1に示す。
図 1は、 SMC中の精製ファージサンプルを 5%ホルマリンで固定し、 2%酢 酸ゥラニル (PH4.0)を用いてネガティブ染色後、 トランスミツション電子顕微鏡 (Hitachi H-7100, Hitachi Co. Ltd.)を用いて 75kVにて撮影したものであり、 図中、 黒棒は 100nmを示す。
該図より、 ファ一ジ * MR1 1は、 直径 56±2mmの等角的六角頭および長さ 175±5mmの非収縮性の尾を有し、 尾部の遠心位末端にノブ状構造.を持つこと が判る。 従って、 形態学的に、 シフオビリデ (Siphoviridae)形態型 B1
(Ackermann H-W., et al., General properties of bacteriophages, Florida; CRC Press, 1987)ファミリ一に分類される。
上記と同様にして、 本発明ファージ (i) MR25を電子顕微鏡観察した結果、 こ のファージは、 <i> MR11 と実質的に同等の形状、 構造を有していることが確認 された。
また、 Φ ΜΡΜ 1の吸着速度、 潜伏期間およびバーストサイズを、 アダムスら の方法 (Adams, K. H., et al., Wiley-lnterscience Publications, 1959)に従って決定 した。 全ての分析のためのインキュベーションは、 TSBM培地中で 37°C下に実 施した。
吸着速度の試験では、 <i> MR1 1の 1.5 X 103PFUを SA37細胞 109個/ mlと混 合し、 クロロホルム処理 (lnoue,丁., et al., FEMS Microbiol. Lett., 1995; 125:
101 -106)後に菌に吸着せずに残った感染性ファージ粒子の数を計数した。
潜伏期間およびバース卜サイズの試験では、 SA37細胞 5.8 X 108個/ mlを、 (i> MR11の 2.4 X 103 PFUと 5分間接触させ、 冷 TSBM培地で十分に洗浄して 非結合ファージを除去した後、 菌を新鮮な培地に再浮遊させ、 得られる細胞浮 遊液の一定量を 37°Cで所定時間培養した。 培養後、 各々の培養液を SA37の口 ーン上に接種し、 新たに産生された遊離ファージぉよび細胞結合性ファージの 両者を一括してファージビリオン数として計測した。
P及着速度の試験結果を図 2に示す。
図 2中、 Aは吸着速度 (縦軸:試験開始時のファ一ジ数に対する非吸着ファー ジ数の%、 横軸:時間 (分)を示す)の結果であり、 Bは潜伏期間およびバースト サイズ (縦軸:新たに産生されたファージ数 (log10)、 横軸:時間 (分)を示す)の結 果である。 図 2に示されるとおり、 0 MR11は、 (1)迅速な吸着速度、 (2)短い潜伏期間お よび (3)100以上の比較的大きいバーストサイズを有することが明らかとなった。 即ち、 感受性細菌宿主が十分な数で存在する場合、 90%を越える Φ ΜΒ1 1粒子 が 1分以内にそれらに結合 (図 2の A参照)し、 約 25分の短い潜伏期間を経て、 親 (i> MR1 1粒子 1個当たり 100以上の子ファージ粒子を新たに産生する能力が あることが判つた (図 2の B参照)。
* MR1 1の効果的な宿主細胞溶解能は、 典型的な溶菌ファージ、 例えば大腸 菌の T偶数ファ一ジ (Ackermann H-W., et al., General properties of
bacteriophages, Florida; CRC Press, 1987)と類似の高い溶菌能を示唆する。 一 般に、 ファージの増殖は、 感受性宿主細菌の増殖が休止期に入ると、 それに同 調して低下するが、 興味深いことに、 (i> MR1 1はたとえ宿主細菌の増殖が休止 する安定飽和状態にあっても、 効率的に増殖する能力、 即ち溶菌能を有してい る。 (5) ファージ粒子の精製
MR1 1ファ一ジを、 基本的には数種の T4型ファージを用いる方法
(Matsuzaki, S., et al., Microbiol. Immunol., 1992; 36: 93-97、 Matsuzaki, S., et aに Viology, 1998; 242: 314-318、 Matsuzaki, S., et aに, Gene, 1998; 222: 25-30、 Matsuzaki, et al., Arch. Virol., 1999; 144: 1647-1651、 Matsuzaki, et al., Arch. Virol., 1999; 144: 2007-2012、 Matsuzaki, et aに, Microbiol. Immunol" 2000; 44:
953-956参照)に従つて精製した。
即ち、 TSBM培地 500mlに 1.2X 108細胞/ mlの濃度で懸濁させた SA37宿主 細胞を、 (i> MR11の粗含有物を 0.01の感染価 (MOI)にて接種し、 約 4時間 37°C で激しく振盪して完全に溶菌させた。 37 下に 1 %クロ口ホルムで 5分間処理 した後、 培養液を 8000 X gで 10分間、 4°C下に遠心して細胞残渣を除去した。 得られた上清にポリエチレングリコ一ル (平均分子量 6000)および NaCIをそれ ぞれ終濃度が 10%および 0.5Mとなるように加え、 3日間 4°Cに放置し、 沈殿 させた。 かくしてファージ粒子を含有する沈殿を、 8000Xgで 20分間、 4°C下 に遠心分離して集め、 TMバッファ(1 OmM Tris-HCI, 5mM MaCI2, pH7.2)に再懸 濁させ、 20 g/ml DNase I (Type II, Sigma Chemical Co.) および 10 g/ml RNase A (Type IA, Sigma Chemical Co.) にて 30分間、 37°Cで処理した。
次いで、 得られたファージ懸濁液を塩化セシウム (CsCI)不連続密度勾配(|0 =1.3, 1.5および 1.7)上に置き、 100000 X gにて 1時間、 4°C下に遠心分離した c ファ一ジ粒子の濃縮バンドを回収し、 20mM MgCI2および 20mM CaCI2(SMC) を含む生理食塩水に対して 2時間、 4°Cで透析した。 塩化セシウム不連続密度 勾配分離および透析 (1時間)を再度繰り返し、 更に H旧 MC培地に対する透析を 1時間、 4°C下に実施した。
精製されたファ一ジ懸濁液を濾過 (0.45 mの孔径フィルターを使用)し、 一 定量に分割し、 4°Cで使用時まで貯蔵した。
精製ファージ標品は菌への感染の直前に H旧 MC にて適宜希釈して使用した 精製ファージ標品の感染力価 (PFU/ml)は、 該標品を SA37株に接種することに よって決定した。
マウスへの MRSA株の感染実験では、 <i MR11の投与前に、 一度 (i) MR11を 各 MRSA内で増殖させて、 細菌による制限一修飾系の可能性を最小限に抑えた。 制限—修飾系はファージ複製の抑制機序のひとつとして知られているためであ る (Matsuzaki, S., et al., FEMS Microbiol. Lett., 1992; 94: 191 -194)。 MRSA株を 用いる本感染実験においても、 (i> MR1 1の精製は、 前述した方法に従い実施し た。 尚、 上記の宿主 MRSA株に適応させた精製 (i) MR1 1の感染力価は、 それぞ れ対応する MRSA株を用いて新たに測定した。
(6) 黄色ブドウ球菌毒素のバイオアツセィ
一部の黄色ブドウ球菌は、 病原性毒素を産生する。 ファージはそのうちのい くつかの毒素の遺伝子を伝達することが知られている。 本試験は、 MR11お よび Φ ΜΙ=125が分離された親菌株 MR1 1および MR25について、 これらの菌が 既知の毒素を産生するか否かを、 逆受身ラテックス凝集法 (RPLA, Fujikawa, H., et al., Appl. Environ. Microbiol., 1988; 54: 2345-2348)により検討した。
黄色ブドウ球菌のエンドトキシンおよび毒素性ショック症候群トキシン- 1 (TSST-1)を、 37°Cで 18-20時間培養後の MR1 1および MR25のそれぞれの培 養上清を用いて測定した。 該測定はアツセィキット (SET-RPLA "Seiken" and TST-RPI_A"Seiken", Denka Seiken Co., Ltd.)のプロトコールに従った。
その結果、 MR1 1および MR25両菌株とも、 上記毒素を産生しないことが判 つた。 従って、 ファージ (i> MR1 1および MR25は上記毒素の遺伝子をコード していないと判断された。 この毒素遺伝子の非存在は、 後述する DNA配列の 解読結果からも明らかである。 ファージ (i) MR1 1および (i> MR25が黄色ブドウ 球菌について知られている毒素遺伝子を有していないという事実は、 これらフ ァージの生体内への投与の安全性を支持する。 (7) 黄色ブドウ球菌の動物への感染試験
6-8週齢 BALB/c雌マウス (体重約 20g)を使用した。 黄色ブドウ球菌細胞を TSB培地 100ml中、 37°Cで生育させ、 定常状態の初期 (約 250 Klett単位)に、 8000 X gで 5分間遠心して集菌した。 細胞ペレツトを生理食塩水 100mlで洗浄 後、 同一条件下に遠心し、 最終的に生理食塩水 5mlに浮遊させた。 適当に希釈 後、 濁度 (Klett単位)を測定して細胞数を計数した。
生理食塩水 0.5mlに浮遊させた所定数の細菌細胞をマウスの腹部の片側から 腹腔内に注入し、 また H旧 MC 1 mlに懸濁させた精製ファージ液を腹部の他方 から注入した。 コントロールとして、 生理食塩水または H旧 MCのみの同量を 腹腔内注入した。 その後、 被験動物を 1週間から 1ヶ月間観察した。
約 0.5mlの血液を被験マウスの眼窩静脈穿刺によりキヤビラリ一チューブを 用いて採取し、 直ちにへパリン 50 _t l(1000U/ml, Aventis Pharma Ltd.)を混合し た。 へパリン加血液を SMCで希釈後、 SA37-RIF2の血中濃度 (CFU/ml)をリフ アンピシン添加 TSBプレート上で測定した。 また、 * MR1 1の血中濃度
(PFU/ml)を、 宿主として SA37を用いて TSBMプレート上で測定した。
対照としての無処置マウスについも同様に、 血液サンプルを採取して検索を 行い、 本試験に利用したマウスが自然に、 または偶発的にファージないし細菌 に感染していないこと、 実験操作の過程で人為的汚染、 混入がないことを確か めた。
得られたデ一夕の統計的有意差をフィッシヤー正確確率検定 (Fisher's exact test)により検定した。
2X 102から 2 X 101 Q細胞の範囲の菌量で SA37株をマウスに注入して、 黄色 ブドウ球菌のマウスに対する致死量を求めた結果を図 3に示す。
図 3は、 マウス 1頭当たりに腹腔内注入した SA37株の菌数 (横軸)別にみた マウスの生存率 (%)をプロットしたグラフであり、 図中、 白丸は菌注入 1 日後 の生存率を、 黒丸は菌注入 7日後の生存率をそれぞれ示す。 また、 各プロット 上の数値は、 被験マウス頭数を示す。 尚、 菌接種量 「0」 は、 生理食塩水 0.5ml のみを注入したコントロール試験の結果を示す。
該図に示されるとおり、 2X 102から 2X 108個の SA37株の腹腔内注入では、 注入後 7日間の観察期間中マウスの生存率は低下しなかったが、 3X 108から 1 X 109個では、 接種菌量に依存してマウスの生存率が低下した。 8X 108
SA37の接種は 24時間以内で 80%のマウスに対して致死的であり、 更に 7日 では 100%致死的であったので、 この接種菌量がファ一ジによる救命効果を観 察するのに適した最少注入菌量と判断された。
以下の試験においては、 従って、 黄色ブドウ球菌の接種量は 8X 108個に固定 した。
より詳細な時間追跡分析の結果を図 4に示す。 該図 4は、 被験マウス 10頭 のそれぞれに SA37株 (8 X 108個)を腹腔内注入し、 それらの生存を 24時間に亘 つて観察した結果を示すグラフであり、 横軸は SA37株の菌接種後の経過時間 (時間)を、 縦軸はマウスの生存率 (%)を示す。
該図に示される結果より、 8X 108SA37株の腹腔内接種は、 菌注入後 6-7時 間でマウスの殆どを、 菌血症を伴って死亡させることが判った。 尚、 上記菌注 入の 6時間後に、 感染死したマウスを解剖した結果、 巨脾症および急性腹水症 を伴つた重篤な全身性鬱血が認められた。
(8) 黄色ブドゥ球菌の物理的破砕標本液の調製
SA37株を TSB 100ml中、 37°Cで約 250 Klett単位となるまで培養し、
12,000 X g、 5分間、 4°Cで遠心し、 生理食塩水で洗浄後、 2X 109細胞/ mlの濃 度となるように生理食塩水に再懸濁させた。 得られた懸濁液 5mlからの細胞べ レツトを 4°C下に乳鉢および乳棒を用いて機械的に粉碎し、 生理食塩水を用い て全容量を 5mlに調製した。 次いで、 菌破碎液を孔径 0.45 x mの濾過膜を通し て生細胞残渣を除去した。 濾液を黄色ブドウ球菌の 「物理的菌破碎液」 として 利用した。
(9) マウスにおける SA37株に対するファージ投与の救命効果および安全性
SA37株 (8X 108個)を腹腔内注入したマウスに、 直ちに、 精製 <i> MR11を
0.01-200の範囲の所定量 (MOI)にて、 菌注入側とは異なる腹壁側から腹腔内に 注射投与して、 マウスの生存を観察した。
その結果を図 5に示す。 図 5中、 横軸は投与された Φ ΜΙ Μの MOIを示し、 縦軸はマウス生存率 (%)を示す。 また図の各プロット (黒丸)上に示された数値は、 被験マウス頭数を示す。
図 5に示されるように、 0.1-200 ΜΟΙの <i) MR11の投与は、 マウスの SA37 感染死を顕著に阻止した。
一方、 (i> MR11 の多量 p.OX IO pFU)の単独投与では、 1 ヶ月の観察期間中、 30頭のマウスの身体的健康状態および生存率に悪影響を与えなかった。 良好な 身体的健康状態と一致して、 上記ファージ単独の処置 6時間並びに 1 , 7および 14日後のマウスの各種組織および臓器は、 無処置のコントロールマウスおよび HIBMC培地のみを注射したマウスと対比して、 病理学的に異なるものではなか つ丁。
これらの知見は、 0 MR11それ自体が、 少なくとも腹腔内接種した場合、 迅 速に流血 (循環系)中に移行し、 おそらくは更に全身の諸臓器 ·組織にも速やか に播種されるにもかかわらず、 生体内に検出可能ないかなる副作用をも与えな いことを明らかにしている (後述する図 7参照)。
(10) (f) MR11の救命効果のメカニズム
この試験は、 観察された救命効果が、 真に <i> MR11の溶菌活性に基づくもの であるかどうかを確認するために行われたものである。
1 X 109の SA37株から調製されたファ一ジ溶菌液のアナログである物理的菌 破砕液 (前記 (8)で調製したもの)を、 1X109の SA37株生菌の注入に続いて、 マ ウスに腹腔内注入した。 その結果、 物理的菌破碎液はマウスの死を防止できな かった。 従って、 細菌成分自体は、 たとえこれがファージ溶菌によって得られ たものであっても、 救命効果を発揮することはないと考えられる。 一方、 2倍 の数 (2.0X109)の SA37株から調製した物理的菌破碎液を単独でマウスに注射 した場合は、 なんら影響は認められなかった。 このことからマウスでの致死作 用は、 この試験に用いた多量の菌破砕液によるものではないことが判った。
加えて、 c|)MR11ビリオン自体が抗菌免疫応答を刺激する可能性を検討する ために、 標的菌として 0MR11を人工的に溶原ィ匕させた SA37亜株菌 (SA37/(i MR11)を用いて次の試験を実施した。 この SA37誘導体は、 ΦΜΙ=Μ1の溶菌活 性に対して抵抗性を獲得した以外は、 親 SA37株と同じ生物学的性質および遺 伝的背景を有している。 もし、 正味の救命効果が、 <f)MR11による溶菌作用で はなくて、 ビリオン自体による免疫応答の刺激 (サイトカインの生産など)を介 しているならば、 ファージの投与が SA37/(i)MR11感染に対しても、 SA37感 染と同様に、 治療効果を発揮するはずである。
精製 0MR11(MOI 10)の投与は、 SA37を注入接種されたマウスを救命したが、 SA37/*MR11を接種されたマウスは救命できなかった。 この結果は、 0MR11 による直接的な溶菌活性が、 マウスを用いる試験で観察される救命 (治療)効果 の発現に最も重要であり且つ唯一の決定因子であるという結論を支持する。
(11) ΦΜΒ11の投与時期と救命効果との関連
精製 (i>MR11を、 SA37株 (8X108個)注入の所定時間後 (0,5, 10, 20および 60 分経過後)に、 マウス 5頭のそれぞれに ΜΟΙ 200となる量で腹腔内注入した (フ ァージ処理群)。 コントロール (ファージ未処理群)として、 HHBMC培地 (ファー ジ不含有) 1mlを腹腔内注射する群を設けた。
投与 24時間後 (図 6中 A)および 7日後 (図 6中 B)、 両群での被験マウスの生 存数を計数して生存率を求めた。
結果を図 6(横軸: SA37株注射からファージ投与までの時間間隔 (分)、 縦軸: マウス生存率)に示す。 図中、 網掛けした棒グラフはファージ処理群を示し、 斜 線を付した棒グラフはファージ未処理群を示す。 また、 ※印はコントロールに 対する統計学的有意差の程度がそれぞれ次の通りであることを示す。
*: P<0.05; **: P<0.01 ; ***: P<0.002
図 6に示される結果から次のことが明らかである。 即ち、 ファージ処理群マ ウスの殆どは、 検討したいずれの時間間隔で精製 (|) MR11を投与した場合でも 生存していたが、 ファ一ジ未処理群マウスでは、 80-100%が死亡した。
尚、 SA37株を単独で注入した全てのコントロールマウスは、 例えば行動力 低下および体毛のケバ立ちや乱れ (ruffled hair)などの身体的変調を呈したのに対 して、 <|) Mm iを注入したマウスでの治療効果は、 細菌接種の 60分後でも明ら かに認識可能であった。 * MR11処置マウス群では、 引き続く 6日間の観察期 間中に衰弱死したが例が少数認められたが、 全ての処置マウスの生存率は、 常 に非処置コントロールマウスのそれに比して有意に高いものであった (図 6参 照)。 (12) 変異株を用いた試験 (投与ファージ並びに接種細菌の体内動態)
SA37のリファンピシン耐性変異株である SA37-RIF2を標的細胞として用い て、 次の試験を行った。 尚、 リファンピシン耐性変異株を用いたのは、 マウス に常在している他の黄色ブドウ球菌と区別するためである。
SA37-RIF2の 8X 108個を単独で (SA37-RIF2単独接種群、 図 7中白抜き四角 印で表示)、 または (i> MR11 (I .SX IOUPFU)と共に (SA37-RIF2- MR11 併用群、 図 7中黒丸印または黒四角印で表示)、 または < ) MR11の I ^X IOU PFUを単独 で (<i) MR11単独接種群、 図中白丸印で表示)、 1群 5頭からなる各群マウスに腹 腔内注射した。 注射の 2, 4, 6および 24時間後に、 各群マウスの 1頭から末梢 血を採血し、 血流中におけるファージまたは細菌の数の経時変化を計測した。 結果を図 7に示す。
図 7は、 血流中におけるファージ <i) MR11 の迅速な出現を示すグラフであり、 横軸は細菌またはファージの投与後時間 (時間)を、 縦軸は細菌数 (CFU/ml)また はファージ数 (PFU/ml)を示す。 尚、 図 7中、 6時間における白抜き四角印の上 に付したマークは、 SA37-RIF2単独接種群マウスではこの時点で全例が死亡し たことを示す。
図 7に示される結果から次のことが判る。 即ち、 マウスにおいてはファ一ジ 処置の有無に拘わらず菌血症が SA37-RIF2注射後 2時間以内に起こり、 持続し た。 しかしながら、 血液中細菌量は、 試験期間中、 |) MR11処理マウスにおい ては未処理マウスに比して有意に低下していた。 前述した図 4に示す結果と同 様に、 SA37-RIF2を単独注射したマウスは全例 6時間以内に死亡したが、 Φ MR11処理マウスは 24時間以内に敗血症の減退に一致して、 生存することがで きた。 他方、 Φ ΜΙ Ι 1を腹腔内に注射 2時間後では、 SA37-RIF2感染および非 感染マゥスの両者の血液サンプル中に、 共に多量の (それぞれ力価 1.3 X 108お よび 7.7X 1O8PFU/ml) MR11が検出された。 この時点での循環血中ファージ の力価の差は、 おそらく投与された * MR11が標的細菌により急激に消費され たことを反映していると考えられる。 注目に値することは、 2つのマウス群の 間での循環血中 (i> MR11の相対レベルがその後の経過中において逆転すること である。 即ち、 SA37-RIF2を接種しなかったマウスでは、 上記力価は経時的に 低下するのに対して、 SA37-RIF2接種マウスでは高値を維持する。 6時間後に 測定した上記力価の代表的数値は、 SA37-RIF2非接種マウスの場合 4.7X 105 PFU/mlであり、 接種されたマウスの場合 5.5X 108PFU/mlである。
以上の結果は、 投与された Φ ΜΙ=Μ 1が、 共存する標的細菌によって増幅し、 血流により多量のファージが移行し、 更に全身に送達されるという生体内動態 をよく示している。 循環血中 <|) MR11量は、 標的細胞が体内から完全に駆逐さ れるまで有意なレベルを持続し、 菌血症の進行を抑止する。 黄色ブドウ球菌感 染の治癒過程における <i) MR11の生体内動態はまた、 他の様々な細菌感染症に 対するファージの治療学的適用の可能性 (Nakai, T., et al., Dis. Aquat. Org., 1999; 37: 33-41参照)とも合致している。
(13) MRSA感染症に対する cf) MR11の治療効果
この試験は φ MR11が致死的 MRSA感染症に対しても有効であることを明ら かにするためのものであり、 以下の通り実施された。 即ち、 4種の臨床分離 MRSA株 iMR1 , MR13, MR18または MR28)を標的菌として、 マウスに腹腔内接 種 (8 X 108細胞)した。 この試験では、 細菌保有の制限-修飾系の影響
(Matsuzaki, S., et al., FEMS Micolbiol. Lett., 1992, 94: 191-194参照)を最小限に とどめるために、 予め対応する各 MRSA株で Φ ΜΙ= 1を増殖させた上で、 塩ィ匕 セシウム密度勾配により精製したファージを用いた。 該ファージ ( MR11)を、 対応する MRSA株を接種した各マウスに、 その接種後直ちに腹腔内投与
(MOI=50)した (ファ一ジ処理群、 10頭のマウスからなる)。 また、 ファ一ジを腹 腔内投与しないコント口ール群 (10頭のマウスからなる)を設けた。 ファージ投 与 7日後の各群マウスの生存率 (%)を求めた。
得られた結果を図 8に示す。 図 8中、 編みかけ印を付した棒グラフはファー ジ処理群の結果であり、 斜線を付した棒グラフはファージ非処理群 (コントロー ル群)の結果である。 また、 対となっているファージ非処理群に対するファージ 処理群における有意差検定結果は、 P<0.0002である。
図 8に示されるように、 (i> MR11 (MOI 50)を適用された被験マウスは、 MRSA 接種の 7日後も全例生存していた。 これに対してファージ未処理のコントロー ルマウスの生存率は 10%以下であった。 このことから、 <i> MR1 1はヒト MRSA 感染症の治療にも有効であることが明らかである。 実施例 2
(1) 腹腔内投与後の (i) MR1 1の各臓器、 組織における分布
BALB/cマウス腹腔内に投与された (i> Mm iは、 血中に速やかに移行し (投与
2時間後には多量のファージが血中に出現する)、 遅くとも 4時間後には全身の 臓器、 組織に分布する (実施例 1の (12)参照)。
この試験は、 ファージの各臓器、 組織における分布の動態を調べたものであ る。 即ち、 <i) MR1 1の I .eX I OU pFUを腹腔内投与し、 その後、 経時的に各臓 器、 組織を摘出し、 直ちに 20mM MgCI2および 20mM CaCI2加生理食塩水に て 5回洗浄して付着する血液を十分に除去した後、 各臓器、 組織の 1 g当たり に存在するファージ数を計数した。 得られた結果を図 9(横軸:経過時間 (時間)、 縦軸:ファージ数/ g)に示す。
図 9中、 (1)は脾臓を示す。 (2)は腎臓を示す。 (3)は肝臓を示す。 (4)は肺を示 す。 (5)は筋肉を示す。 (6)は骨髄を示す。 (7)は脳を示す。 (8)は血液を示す。
該図 9 に示されるとおり、 血液中に存在するファージ数と対比して、 各臓器、 組織におけるファージ数は、 ほぼ同等もしくはこれより高値を示しており、 こ のことはファージが血中に移行後、 各臓器、 組織に浸潤、 拡散ないしは集積す ることを明らかにしている。
(2) ファージの投与経路の検討
<i) MR11を、 以下の通り、 腹腔内、 皮下および経口経路により投与して、 そ の血中への移行を検討した。
即ち、 腹腔内投与および皮下投与の場合は、 (^Mmici.ex ioupFU)を
20mM MgCI2および 20mM CaCI2を含有するハ一トインフュージョンブロス
(H旧 MC)に浮遊させた溶液 0.5mlを直接、 マウスの腹腔内もしくは背部皮下に 注入した。
経口投与の場合は、 被験マウスを 2時間絶食させた後、 胃酸分泌抑制剤とし て 4mM omeprazole水溶液 0.5mlを経口投与し、 更に 2時間絶食させた後、 Φ
MRI I ^X IO^PFU)を H旧 MCに浮遊させた溶液 (或いは Φ MR11の 2X 101 1 PFUを 10%グリセロール加 H旧 MC溶液に浮遊させた溶液) 0.5mlを直接胃内に 注入した。
その後、 経時的に血中ファージ濃度を測定した。
結果を図 10(横軸:投与後時間 (時間)、 縦軸:ファージの血中濃度 (/ml))に示 す。 図 10中、 (1)は腹腔内投与を、 (2)は皮下投与を、 (3)は経口投与 (H旧 MC使 用の場合)、 また (4)は経口投与 (グリセ口一ル加 H旧 MC使用の場合)を示す。
図 10から、 次のことが判る。 即ち、 腹腔内、 皮下および経口のいずれの投 与経路の場合も、 ファージは速やかに流血中に移行する。 腹腔内および皮下投 与の場合、 投与されたファージは比較的高い血中濃度を保つが、 経口投与の場 合、 血中ピーク値は比較的低い。 但し、 ファージの投与量を多くすれば、 その 改善は可能である。 経口投与の場合、 ファージ液にグリセロールを添加する方 が、 非添加に比して、 投与後の血中ファージ濃度のピーク値は低いが、 濃度の 維持は長い。 また、 腹腔内投与と皮下投与とを比較した場合、 血中ファージ濃 度のピーク値は腹腔内投与の場合の方が大きく、 血中ファージ濃度の持続は皮 下投与の場合の方が長い。
(3) (f)MR11投与療法に対する免疫反応の検討
(3-1) (i)MR11単独投与の繰り返しによる副作用などの検討
(f)MR11(1.8X1012/マウス)を、 BALB/cマウスの腹腔内に投与した後、 63 日後に再度同量を腹腔内投与し、 繰り返し投与による副作用などを検討した。 その結果、 初回投与から 84日後において、 全例健常であった。 このことか ら、 繰り返し投与によってもアナフィラキシ一などのアレルギー副反応は認め られないことが明らかとなった。 また、 同時に血中ファージ量を測定した所、 ファージ量も初回投与に測定した値とほぼ同レベルであり、 このことから中和 抗体などによるファ一ジの失活は認められないことが判つた。
(3-2) 菌接種マウスに対するファージ投与の繰り返しによる副作用などの検討 実施例 1の (7)と同様にして、 黄色ブドウ球菌 (8X108CFU)を接種したマウス に*1\/11={11(4ズ101°? リ)を腹腔内投与してー旦感染死から救命し、 その 10日 後に、 試験マウスを 1群 5頭からなる 3群に分け、 その 1群 ((i>MR11投与群) には黄色ブドウ球菌 (8X108CFU)接種と共に *MR11(4X101QPFU)を腹腔内投 与し、 他の 1群 ( MR25投与群)には黄色ブドウ球菌 (8X108CFU)接種と共に <i>MR25(4X10lQPFU)を腹腔内投与し、 最後の 1群 (ファージ非投与対照群)に は黄色ブドウ球菌 (8X108CFU)のみを接種した。 試験開始より 40日間各群マ ウスの生存、 健康状態を観察した。
その結果、 ファ一ジ非投与対照群では 5頭中 4頭が死亡した (生存率: 20%) のに対して、 *MR11投与群および (i>MR25投与群の両群では、 被験マウスの 全例が生存しており(生存率: 100%)且つ健常であった。 このことから、 ファー ジの治療的再投与は、 ファージの種類に拘わらず、 中和抗体によるファージの 失活を起こさず、 またアレルギー反応などの副作用も惹起せず、 従って、 安全 であることが判った。 実施例 3
Φ MR25投与による細菌感染抑制効果
ΜΠ1 1に代えて Φ Μ!=Ι25を用いて実施例 1の (9)と同様にして、 マウスにお ける SA37株に対するファージ投与の救命効果 (細菌感染抑制効果)を検討した c その結果を、 図 5と同様にして図 1 1に示す。
図 11から明らかなとおり、 マウス腹腔内に投与された (i> MR25は、 MR1 1 とほぼ同様に、 延命効果、 即ち細菌感染による致死に対して抑制効果を奏する ことが判った。 実施例 4
(1) ファージ DNAの調製
Φ MR1 1のゲノム DNAを文献記載の方法 (Matsuzaki, S., et al., Microbiol.
Immunol., 1992; 36: 93-97)に従い抽出した。 即ち、 SA37株を宿主として
100ml TSBM培地で MR1 1を増殖させ、 溶菌後、 遠心により細胞残渣を除去 し、 次いで上清に 10%ポリエチレングリコール 6,000および 0.5M塩化ナトリ ゥムを添加し、 一晩 4tで静置培養した。 8,000Xg、 4°Cで 20分間遠心後、 ぺ レットを TM溶液 (1 OmM Tris-HCIおよび 5mM MgCI2、 pH7.2)に懸濁させ、 20 a g/ml DNasel (Sigma社) + 10 g/ml RNaseA (Sigma社)で、 37°C、 30分間処 理した。 次に、 得られた懸濁液を 3層塩化セシウム溶液 (下から密度 1.7, 1.5お よび 1.3)からなる不連続密度勾配の上部に載せ、 100,000 Xg 4 で 1時間超 遠心し、 ファージバンドを回収した。 その後、 AAS (100mM酢酸アンモニゥム、 10mM NaCI、 1 mM CaCI2および 1 mM MgCI2、 pH7.2)中で透析した。 ファ一ジ 液を 100,O00X g、 4°Cで 1時間超遠心し、 ファージペレツトを 0.1 % SDSを含 む 0.5ml TE液に懸濁させた後、 37°Cで 10分間保温した。 その後、 等量の水和 フエノールを加えてよく混和後、 20,000 X gで 5分間遠心し、 上部の水相を回 収し、 等量のエタノールを加えてよく混和させ、 20,000Xg、 4 で 20分間遠 心した。 ペレットに 1 mlの 70%エタノ一ルを加えて更に 20,000Xg、 4°Cで 20 分間遠心し、 100 Iの滅菌水に溶かして、 ファージ DNAとして使用した。
同様にして、 ファージ (i> MR25についても、 そのファ一ジゲノム DNAを調製 した。
121 DNAシニ
上記 (1)で調製したファージゲノム DNAを、 Oiidlllで消化して 16断片を得、 各断片を、 予め ndlllで開裂したプラスミドベクター pUC18に T4リガーゼを 用いて結合させ、 次いでこれを大腸菌 JM109(または DH5 Q!)に導入して、 各断 片をクローニングした。
プラスミドの調製には FlexiPrep-Miniキット(フアルマシア社)を用いた。
塩基配列の決定は、 上記クロ一ンを錶型として、 フルォレツセインで標識し たジデォキシチェインタ一ミネ一ティングヌクレオチド (ABI PRISM, BigDye
Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit, Applied Biosystems Inc.シー クェンシング用酵素と基質とを含む混合液)を用いた PCR増幅法によって実施 した。 その方法および操作は製品に添付の操作プロトコールに従った。 尚、 初 回のシークェンシング用プライマーとしては、 ベクタ一に対応する合成プライ マ一を使用した。 この初回のシ一クェンシングによって明らかとなった配列を 元にして、 更にプライマーを合成し、 次のシークェンシングを行い、 この操作 を hiiiidlll挿入断片が終了するまで繰り返した(この方法はプライマ一ゥォーキ ング法として知られている)。
各断片の連結部の確認はファ一ジ DNAをそのまま铸型として断片両端部分 を元に合成したプライマーでシークェンシングすることにより行った。
また、 得られた PCR産物は AutoSeq G-50カラム (Amersham-Pharmada Biotech Inc.)にて精製し、 自動 DNAシークェンサ一 (Model 310; Applied
Biosystems Inc.)にて解析した。
かくして、 <i> MR1 1ゲノムは、 塩基数 43011の円順列構造であることが確認 された。 その全配列を配列番号: 3に示す。
該ゲノム DNAの特徴を図 12に示すと共に、 それらに含まれるオープンリー ディングフレーム (ORF、 全 67個)の開始位置 (First)および終止位置 (End)並びに これらによりコードされる蛋白のアミノ酸残基数 (No.aa)を下記表 1および表 2 に示す。
Figure imgf000038_0001
L 拏
9680T0/C00Zdf/X3d S£90請 00Ζ OAV 表 2
Figure imgf000039_0001
また、 i> MR25ゲノム DNAを同様にしてシークェンシングした結果、 これは 配列番号: 4、 5および 6に示される 3つの部分 DNA配列 (それぞれ 1 1 ,848、
13,954および 110,365 bps)を有することが明らかとなった。 尚、 各部分 DNA 配列の間には約 200-2,500の DNA配列が存在している。 後記する細胞壁分解 酵素をコ一ドする DNA配列および細菌細胞表面レセプ夕一に対するリガンド をコ一ドする DNA配列は、 いずれも配列番号: 6の DNA配列中に存在してお り、 その位置は、 それぞれ 5,425-6,867番目および 1 ,467-3,362番目であるこ とが確認されている。
また、 上記 Φ ΜΙ=Ι25ゲノム DNAの全配列は、 配列番号: 7に示すとおりであ り、 総塩基数 44,342であることが確認された。 該ゲノム DNAに含まれる ORF (全 70個)の開始位置 (First)および終止位置 (End)並びにこれらによりコードされ る蛋白のアミノ酸残基数 (No.aa)を下記表 3および表 4に示す。
表に示される ORF64が細菌細胞表面レセプターに対するリガンドをコード する DNA配列であり、 (i> MR11の ORF61に対応する。 また、 ORF68が細胞 壁分解酵素をコードする DNA配列であり、 (i> MR11の ORF65に対応する。
Figure imgf000041_0001
ε 拏
968010/C00Zdf/X3d S£90請 ΟΟί OAV
Figure imgf000042_0001
セ 拏
9680T0/C00Zdf/X3d S£90請 00Z OAV (3) 細胞壁分解酵素をコ一ドする DNA配列
上記 (2)に従つて解析された φ M R1 1ファージの有する細胞壁分解酵素をコ一 ドする DNA配列は、 前記表 2に ORF65として示す通り、 配列番号: 3の全長 配列の 40,527-41 ,969に位置しており(全長 1,443bps)、 これによりコードされ る酵素の推定アミノ酸配列は、 配列番号: 1 として示される全 481アミノ酸残 基からなるものであることが確認された。
この蛋白のアミノ酸配列を、 他のファージ (本発明 (i> MR25由来 (図 13)を含 む)の同種溶菌酵素 (蛋白)のそれらと対比した結果を図 13-20に示す。
図 14-20に示される比較アミノ酸配列は、 それぞれ DDBJGeneBank/EMBL に登録されたものであり、 それらについての報文は次の通りである。 但し、 phi53, phほ 0 alphaの報文は未発行である。
図 13: Φ MR25-ORF65 like: 本発明 Φ MR11の ORF65に対応する Φ MR25の
ORF68 DNA配列
図 14: phi11 -AMIDASE: landolo, J.J. et al. 2002. Comparative analysis of the genomes of the temperate bacteriophages, phil 1, phi12 and phi13 of
Staphylococcus aureus 8325, Gene 289:109-1 18.
図 15: 80 ALPHA-AMIDASE:文献未発行
図 16: ETA ORF65: Yamaguchi, T" et al. 2000. Phage conversion of exfoliative toxin A, production in Staphylococcus aureus., Mol. Microbiol. 38:694-705.
図 17: TWORT-AMIDASE: Loessner.M.J. ,et aに G 1998. The two-component lysis system of Staphylococcus aureus bacteriophage Twort: a large TTG-start holin and an associated amidase endolysin, FEMS Microbiol. Lett. 162: 265-274. 図 18: SLT ORF484: Narita, S. et al. 2001. Phage conversion of Panton- Valentine leukocidin in Staphylococcus aureus: molecular analysis of a PVL- converting phage, phi SLT., Gene 268:195-206.
図 19: 12 amidase: landolo, J.J. et al. 2002. Comparative analysis of the genomes of the temperate bacteriophages phil 1 , phi12 and phi13 of
Staphylococcus aureus 8325., Gene 289:109-1 18.
図 20: 13 amidase: 同上。 また、 同様にして解析された MR25ファージの有する細胞壁分解酵素のァ ミノ酸配列(<i) MR11 -ORF65に対応する DNA配列によってコードされる蛋白質 のアミノ酸配列)は、 配列番号: 8に示す通りであり、 全 481アミノ酸残基から なるものであることが確認された。
(4) 細菌細胞表面レセプ夕一に対するリガンドをコードする DNA配列の決定 上記 (2)に従って解析された <i) MR1 1ファージの有する細菌細胞表面レセプ夕 一に対するリガンドをコードする DNA配列は、 前記表 2に ORF61として示す とおり、 配列番号: 3の全長配列の 36,593-38,464に位置しており (全長
1,872bps)であり、 これによりコードされる蛋白質の推定アミノ酸配列は、 配列 番号: 2として示される全 624アミノ酸残基からなるものであることが確認さ れた。
この蛋白のアミノ酸配列を、 他のファージ (本発明 * MR25由来を含む)の同 種リガンド (蛋白)のそれらと対比した結果を図 21 -25に示す。
各図に示される比較アミノ酸配列は、 それぞれ DDBJGeneBank/EMBLに登 録されたものであり、 それらについての報文は、 次の通りである。 但し、 phi53, phi80 alphaの報文は未発行である。
図 21 : MR25-ORF61 like: 本発明 (i> MR11の ORF61に対応する c/) MR25の
ORF64 DNA配列
図 22: ETA ORF61: Yamaguchi, T., et al. 2000. Phage conversion of exfoliative toxin A, production in Staphylococcus aureus., Mol. Microbiol. 38:694-705.
図 23: 187-PLY187: Loessner'M.丄, et al. 1999., Evidence for a holin-like protein gene fully embedded out of frame in the endolysin gene of Staphylococcus aureus bacteriophage 187., J. Bacteriol. 181 : 4452-4460.
図 24: phil 1 -ORF61 like: landolo, J.J. et al. 2002. Comparative analysis of the genomes of the temperate bacteriophages phi" , phi12 and phi13 of
Staphylococcus aureus 8325., Gene 289:109-118.
図 25: ph 3-61 like: 文献未発行
また、 同様にして解析された (i MR25ファ一ジの有する細菌細胞表面レセプ ターに対するリガンド部分のアミノ酸配列((|) MR11 -ORF61に対応する DNA配 列によってコードされる蛋白質のアミノ酸配列)は、 配列番号: 9に示す通りで あり、 全 632ァミノ酸残基からなることが確認された。 実施例 5
ファージ製剤の調製
例えば、 精製ファージ調製物 Φ Μΐ=η ιをリボソームマイクロカプセルにパッ ケージングして、 全身感染の処置のための経口投与用ファージ製剤を調製する, このものはスプレー形態として経鼻噴霧投与することもできる。 実施例 6
() MR11の有する細胞壁分解酵素 (ORF65によりコードされるアミノ酸配列の ポリペプチド、 以下 「qp65」 という)の溶菌活性と特異性の検討
(1) 細胞壁分解酵素遺伝子のクローニング
(i> MR1 1ゲノム中の ORF65の塩基配列をもとに、 完全長の遺伝子 (以下
rgene65J という)を増幅するために、 配列番号: 10および 11に示す塩基配 列のプライマ一 1および 2のプライマ一対を自動合成機により作成した。
これらのプライマーの塩基配列の詳細は、 図 26に示すとおりであり、 各プ ライマーは、 その後のクロ一ニングに使用するために、 5'端に制限酵素 E£2RI 認識部位およびリボソーム結合部位が生じるように、 また 3'端に iamHi認識 部位が生じるように、 それぞれの塩基配列を付加したものである。
これらのプライマーを使用して、 Φ ΜΙ=Ι1 1 DNA (配列番号: 3)を铸型にして PCR反応を行った。
得られた増幅産物を ££2RIおよび旦 gmHIで消化し、 べクター pTrc99A
(4176bps, Amersham-Pharmacia社)の EcoRI-BamHI部位にライゲ一シヨンし て、 目的遺伝子発現プラスミド pTrc99A/65(5676bps、 クロ一ン化 gene^_プラ スミド)を調製した。 このものの概略を、 原料として用いた起源ベクター
pTrc99Aのそれと共に、 図 26に示す。
図 26中、 laclqはレブレッサ一遺伝子を、 oriは複製開始起源配列を、 Ptacは 転写プロモーターを、 MCSはマルチクローニング部位を、 amp rはアンピシリ ン耐性遺伝子を示す。
なお、 目的遺伝子発現プラスミド pTrc99A/65の有する gene^_は、 その塩基 配列を解読した結果、 元の Φ ΜΡΜ 1が有する ORF65の塩基配列と一致するこ とが確認された。
上記で調製した発現プラスミド PTrc99A/65を用いて、 大腸菌 BL21株を形質 転換し、 形質転換株をアンピシリン耐性で選択して、 目的の細胞壁分解酵素遺 伝子導入大腸菌 BL21 (pTrc99A/65))を得た。 (2) 細胞壁分解酵素の発現誘導および粗酵素液試料の調製
(1 )で得られた目的遺伝子導入大腸菌を 5mL LB培地に接種 (開始濁度 KU=10 となる濃度、 約 6X 107個/ mL) し、 37°Cで約 2.5時間振盪培養し、 培養液の KUが 120に達した時点で、 gene§§_の発現を誘導するために、 終濃度が 1 mM となるようにィソプロピル- β -D-チォガラクトピラノシド (IPTG; lsopropyl- β - D-thiogalactopyranoside)を培地に添加し、 更に 37°Cで 2時間振盪培養を継続し た。 培養終了後、 培養液 5mLをとり、 20000X g、 4°C、 1分間遠心処理して菌 ペレットを得た。
得られた菌ペレツトを PBS (生理食塩加リン酸緩衝液) 5mLに再懸濁させ、 同 条件で再度遠心処理した。 この操作を繰り返した。
最終的に得られた菌ペレツトを 1 mM EDTA2Na加 PBSの 1 mLに懸濁させた 後、 超音波処理 (200W、 50%パルス、 5分間)して菌体を破碎した。 この菌体破 碎液を 20000Xg、 4°C、 10分間遠心処理し、 上清を粗酵素液として引き続く酵 素活性測定試験に使用した。 尚、 上記で得られた上清は、 SDS-PAGEによる分 析の結果、 gp65の存在が確認された。
また、 酵素活性測定試験のための対照試料として、 前記 (1)と同様にして起源 ベクタ一である pTrc99Aにて形質転換した大腸菌 BL21株を同様に培養して、 培養上清を調製した。
(3) 酵素活性測定 酵素活性測定は、 次の通り実施した。 即ち、 上記 (2)で得た粗酵素液および対 照試料 (培養上清) の各 50 i Lと、 別個に調製した標的菌 (各黄色ブドウ球菌 株を TSB培地中、 37°Cで KU=60となるまで培養したもの) 50^ Lとを混合し、 混合直後および 37°Cで所定時間放置後の混合物の波長 600nmにおける吸光度 (OD600)をマイクロプレートリーダ一にて測定して、 溶菌活性を求めた。
標的菌としては、 以下の黄色ブドウ球菌を用いた。
•メチシリン感受性黄色ブドゥ球菌 (MSSA) 計 2株
209P株:黄色ブドウ球菌の標準株。 大阪大学微生物研究所付属菌株保存 施設より分与。 菌株番号 IID671。
SA37株:当教室にてヒト健康人鼻腔より分離し、 (i) MR11の増殖用宿主 菌として使用。
•メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 計 34株
高知医大付属病院で分離された M RSA29株および順天堂大学より分与され た臨床分離株 5株。
MRSA株 Mu50
順天堂大学より分与 (Hiramatsu, K., et al.. Lancet, 350: 1670-1673, 1997
(4) 結果
gene クローン化プラスミド (pTrc99A/65)で形質転換した大腸菌 BL21- pTrc99A/65より調製した本発明酵素 (gp65)含有溶液試料、 および同様にべク夕 一プラスミド (pTrc99A)のみで形質転換した大腸菌 BL21 -pTrc99Aより調製した 対照試料を用いて、 両者の各黄色ブドウ球菌に対する溶菌活性を比較検討した 結果を、 図 27(-1〜- 4)に示す。
図 27に示される結果から次のことが判る。 即ち、 検討したすべての MSSA 株 (計 2株) 、 MRSA臨床分離株 (計 34株) および Mu3株に対して、 本発明 酵素 gp65溶液試料のみが強い溶菌活性を示した (酵素液添加後 15-30分以内 で、 ほぼ濁度が 0に近くなる) 。 この成績は、 gp65が普逼的に黄色ブドウ球菌 を溶菌できることを示している。
なお、 Mu50株に対しては増殖阻害のみが認められたが、 これは通常の
MRSAに比べ、 Mu50の細胞壁が突然変異により肥厚しており (Hanaki, H., et al., J. Antimicrob. Chemother., 42 (2): 199-209, 1998) 、 今回用いた酵素量が相 対的に少なかったためと予想される。 本発明酵素が、 Mu50株に対しても溶菌 活性を示すことは、 後記実施例 8に示す試験から明白である。 実施例 7
ヒト皮膚、 口腔内に常在する表皮ブドウ球菌 (Staohylococcus eoidermidis)に 対する本発明酵素 qp65の影響
実施例 6の (2)で調製した本発明酵素 gp65試料 (粗酵素液)を用いて、 実施例 6 の (3)と同様にして、 該酵素の黄色ブドウ球菌以外の各菌に対する酵素活性 (細胞 壁分解活性)を測定した。 即ち、 本発明酵素 gp65液 50 Lと、 別個に調製した 下記供試菌 (各菌株を TSB培地中、 37°Cで KU=60となるまで培養したもの) 50 x Lとを混合し、 混合直後および所定時間 37 で放置後の混合物の波長
600nmにおける吸光度 (OD600)をマイクロプレートリーダーにて測定して、 溶 菌活性を求めた。
供試菌としては、 以下の菌を用いた。
•表皮フトゥ球菌 (Staphylococcus epidermidis)
標準株 (IID866、 大阪大学微生物病研究所付属菌株保存施設より分与)およ び健康人の口腔、 皮膚より分離された 13株 (高知学園短大より分与)の計 14株。
• S. saprophvticus GIFU3170標準株 (岐阜大より分与)
• intermedius GIFU3171標準株 (岐阜大ょり分与)
· S. simulans GIFU9127標準株 (岐阜大より分与)
• Enterococcus faecalis ENT1 (高知医大付属病院で分離同定したもの) 得られた結果を、 図 27と同様にして、 図 28(-1および- 2)に示す。
図 28から、 本発明酵素 gp65は、 検討したすべての表皮ブドウ球菌に対して 溶菌活性を示さなかった。 伹し、 供試菌の種類によっては、 増殖開始の遅延が 若干認められるものがあつた。
また、 S. saproohvticus、 S. intermediusおよび Enterococcus faecal is に対し ては溶菌活性を示さなかった。 更に、 S. simulansに対しては弱い溶菌が認めら れた。 このことから、 S, simulansには細胞壁組成に S. aureusとの類似性があ ると推測される。
実施例 6および 7に示した試験の結果から、 本発明に係る (i> MR11由来の細 胞壁分解酵素 gp65は、 MSSA、 MRSA、 VRSAを含む黄色ブドウ球菌株に対し て強い溶菌活性を発揮することが判った。 また、 該酵素の溶菌活性は、 黄色ブ ドウ球菌に対して非常に高い特異性を示しており、 黄色ブドウ球菌以外の例え ば表皮ブドウ球菌などのヒトの皮膚、 口腔内に常在する菌に対しては実質的に 認められず、 このことから菌交代症は起こり難いことが確認できた。 従って、 本発明酵素 gp65は、 黄色ブドウ球菌のみを標的とする除菌薬として有用であ ると考えられる。 実施例 8
ヒスチジン ·タグ (His taq)を付加した MR11 の有する細胞壁分解酵素 (αο65- 6xHis)の精製、 溶菌活性およびその特異性
(1) C末端にヒスチジン ·タグ (6xHis)を付加した Φ Μ(=Μ 1由来溶菌酵素 (65- 6xHis)の精製
3'-末端側に連続する 6個のヒスチジン残基のコドンを付加した溶菌酵素遺伝 子 (qene 65-6xHis)発現用クローン化プラスミド (pTrc99A/65-6xHis)を、 以下の通 り作製した。 尚、 ヒスチジン ·タグを付加した融合蛋白は、 該ヒスチジン ·夕 グがコバルト (Co)などの金属に特異的に吸着するので、 精製が非常に容易とな る利点がある。
即ち、 配列番号: 12および 13に示す塩基配列のプライマ一 3および 4のプ ライマー対を自動合成機により作成した。 これらのプライマーの塩基配列の詳 細は、 図 29に示すとおりであり、 各プライマーは、 その後のクロ一ニングに 使用するために、 5'端に制限酵素 ESQRI認識部位およびリボソーム結合部位が 生じるように、 また 3'端に BamHI認識部位が生じるように、 それぞれの塩基 配列を付加したものである。
これらのプライマーを使用して、 d MR11 DNA (配列番号: 3)を铸型にして PCR反応を行い、 得られた増幅産物を EcoRIおよび BamHIで消化後、 ベクタ 一 pTrc99A (4176bps, Amersham-Pharmacia社)の EcoRl-BamHI部位にライゲ ーシヨンして、 目的遺伝子発現プラスミド pTrc99A/65-6xHis(5656bps、 クロー ン化 aene 65-6xHisプラスミド)を調製した。 このものの概略を、 原料として用 いた起源べクタ一 pTrc99Aのそれと共に、 図 26と同様に図 29に示す。 図 29 中の各記号は図 26のそれらと同じである。
得られた目的遺伝子発現プラスミド pTrc99A/65-6xHisは、 シークェンシン グの結果、 元の (i) MR1 1が有する ORF65と同一の塩基配列に 6個のヒスチジ ン ·コドンが付加されていることを確認した。
上記で調製した発現プラスミド pTrc99A/65-6xHisを用いて、 大腸菌 BL21株 を形質転換し、 形質転換株をアンピシリン耐性で選択して、 目的の細胞壁分解 酵素遺伝子導入大腸菌 (E.coli BL21 (pTrc99A/65-6xHis))を得た。
(2) 細胞壁分解酵素の発現誘導および精製酵素液試料の調製
(1)で得た pTrc99A/65-6xHisで形質転換した大腸菌 BL21 - pTrc99A/65-6xHis を 200mL LB培地に接種 (開始濁度 KU=10となる濃度、 約 6X 107 /mL) し、 37°Cで約 2.5時間振盪培養し、 培養液の KUが 120に達した時点で、 gene^ 6xHisの発現を誘導するために、 終濃度が 1 mMとなるように IPTGを培地に添 加し、 更に 37 で 2時間振盪培養を継続した。 培養終了後、 培養液を 12000X g、 4°C、 10分間遠心処理して菌ペレットを得た。
得られた菌ペレツトを PBS (生理食塩カ卩リン酸緩衝液) 50mLに再懸濁させ、 同条件で再度遠心処理した。 この操作を繰り返した。
最終的に得られた菌ぺレットを Na-PBS (50mM Sodium phosphate buffer, pH7 + 300mM NaCI)の 25mLに懸濁させた後、 超音波処理 (200W、 50%パルス、 5分間)して菌体を破碎した。 この菌体破砕液を 12000 X g、 4°C、 10分間遠心 処理し、 上清 25mLに 1 mLのコバルトーセファロ一スレジン (TALON, Metal Affinity Resin, Clontech社)を加え、 4°Cで 30分間反応させた後、 反応したレジ ンをカラムに充填し、 Na-PBS 200mLで洗浄し、 150mM imidazole加 Na-PBS で目的酵素を溶出させて、 得られた 6つの画分を SDS-PAGEにかけて、 酵素 の精製状態を確認した。
その結果、 画分 1 -4に塩基配列から予想されるサイズ 55kDaの単一の蛋白バ ンドが検出された。 これらの画分を精製酵素 (gp65-6xHis)試料として引き続く 酵素活性測定試験に使用した。
(3) 酵素活性測定
上記 (2)で得た精製酵素試料 50 L (蛋白 0.1 g/^ L)を用いて、 実施例 6-(3)と 同様にして、 標的菌に対する上記精製酵素の溶菌活性を求めた。
標的菌としては、 実施例 6-(3)に記載の黄色ブドウ球菌を用いた。
(4) 結果
結果を、 図 30(-1〜- 4)に示す。
図 30に示される結果から次のことが判る。 即ち、 溶出に使用した 150 mM imidazole加 Na-PBS溶液を対照にして、検討したすべての MSSA株
(計 2株) 、 MRSA臨床分離株 (計 34株) および Mu3株に対して、 本発 明酵素 gp65-6xHis試料は強い溶菌活性を示した。 また Mu50に対しても弱 いながらも溶菌活性を示した。 これらのことから本発明酵素は、 普週的に黄 色ブドゥ球菌を溶菌できることが明らかとなつた。 実施例 9
ヒト皮膚、 口腔内に常在する表皮ブドウ球菌 (Staohylococcus eoidermidis、に 対する本発明酵素 ao65-6xHisの影響
実施例 8の (2)で調製した本発明酵素 gp65-6xHis (精製酵素、 画分 2-3) 試料
50 し(蛋白0.1 9/ 1_)を用ぃて、 実施例 8の (3)と同様にして、 該酵素の黄色 ブドウ球菌以外の各菌に対する酵素活性 (細胞壁分解活性)を測定した。
供試菌は実施例 7で用いたものと同一であり、 表皮ブドゥ球菌
Staphylococcus epidermidisk S. saprophvticus G1FU3170標準株、 S. intermedius GIFU3 71標準株、 S. simulans GIFU9127標準株および
Enterococcus faecal is ENT1株を用いた。
得られた結果を、 図 30と同様にして、 図 31 (-1および- 2)に示す。
図 31から、 本発明酵素 gp65-6xHisは、 検討したすべての表皮ブドウ球菌に 対して溶菌活性を示さなかった。 伹し、 供試菌の種類によっては、 増殖速度へ の影響が若干認められるものがあつた。
また、 S. saprophvticus S. intermediusおよび Enterococcus faecal isに対し ては溶菌活性を示さなかった。 S. simulansに対しては溶菌が認められた。 これ は該株がその細胞壁組成において、 S. aureusと類似性を有するためと推測され る。
実施例 8および 9に示す試験の結果から、 本発明に係る * MR1 1由来の細胞 壁分解酵素 gp65-6xHisは、 MSSA、 MRSA、 VRSAを含む黄色ブドウ球菌株に 対して強い溶菌活性を発揮することが判った。 また、 該酵素の溶菌活性は、 黄 色ブドゥ球菌に対して非常に高い特異性を示しており、 黄色ブドゥ球菌以外の 例えば表皮ブドウ球菌などのヒトの皮膚、 口腔内に常在する菌に対しては実質 的に認められず、 このことから菌交代症は起こり難いことが確認できた。 従つ て、 本発明酵素 gp65-6xHisは、 黄色ブドウ球菌のみを標的とする除菌薬として 有用であると考えられる。 実施例 10
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 85/2082株に対する本発明酵素 qp65-6xHisの 長期効果
実施例 8の (2)で調製した本発明酵素 gp65-6xHis (精製酵素) 試料 50 L (蛋白 0.1 i g/ L)を用いて、 実施例 8の (3)と同様にして、 メチシリン耐性黄色ブドウ 球菌 MRSA85/2082株 (順天堂大より分与)に対する酵素活性 (細胞壁分解活性) を測定した。
得られた結果を、 図 30と同様にして、 図 32に示す。
図 32から、 MRSA85/2082株については、 本発明酵素 gp65-6xHisによる処 理後 15分で OD600が 0となった。 即ち、 当初存在した菌数 1 X 107個は酵素 試料の添加により速やかに完全溶菌したと考えられる。 また、 試験開始より 4 時間後まで全く菌の再増殖を認めなかった。 更にその後 48時間経過観察を継 続したが、 全く再増殖は認められなかつ。 このことから、 本発明酵素は、 MRSA85/2082株を速やかに且つ完全に死滅させる強い溶菌活性を示すること が判った。

Claims

請 求 の 範 囲
1 . 以下の (a)または (b)の蛋白質をコードする DNA配列を有することを特徴とす る単離されたバクテリオファ一ジ;
(a) 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号: 1のアミノ酸配列において 1 もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドゥ球菌の細胞壁分解酵 素活性を有する蛋白質。
2. 以下の (c)または (d)の蛋白質をコードする DNA配列を有することを特徴とす る単離されたパクテリオファージ;
(c) 配列番号: 2のァミノ酸配列からなる蛋白質、
(d) 配列番号: 2のアミノ酸配列において 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドゥ球菌の細菌表面レセ プターに対するリガンドとしての機能を有する蛋白質。
3. 以下の (a)または (b)の蛋白質をコードする DNA配列と、 以下の (c)または (d) の蛋白質をコードする DNA配列とを有することを特徴とする単離されたパク テリオファージ;
(a) 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号: 1のアミノ酸配列において 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドゥ球菌の細胞壁分解酵 素活性を有する蛋白質。
(c) 配列番号: 2のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(d) 配列番号: 2のアミノ酸配列において 1 もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドウ球菌の細菌表面レセ プターに対するリガンドとしての機能を有する蛋白質。
4. 黄色ブドウ球菌の溶菌活性を有するものである請求項 1 -3のいずれかに記載 のバクテリオファージ。
5. 黄色ブドゥ球菌がメチシリン耐性黄色ブドゥ球菌 (MRSA)である請求項 4に 記載のパクテリオファージ。
6. 配列番号: 3の DNA配列からなる単離されたバクテリオファージ。
7.配列番号: 7の DNA配列からなる単離されたパクテリオファージ。
8.請求項 1 -7のいずれかに記載のパクテリオファージを有効成分として、 製剤 学的に許容される担体と共に含有する医薬組成物。
9.黄色ブドウ球菌感染症の予防および治療剤である請求項 8に記載の医薬組成 物。
10. MRSA感染症の予防および治療剤である請求項 9に記載の医薬組成物。
1 1.腹腔内投与形態、 皮下投与形態および鼻腔内投与形態から選ばれる形態で ある請求項 8-10のいずれかに記載の医薬組成物。
12. 黄色ブドウ球菌による感染症を予防もしくは治療するための方法であって、 該感染症に罹患しているかそのおそれのある哺乳動物に請求項 1-6のいずれか に記載のパクテリオファージの有効量を投与することを特徴とする方法。
13. 以下に示される各工程を含む請求項 1 -6のいずれかに記載のパクテリオフ ァ一ジの製造方法;
(a)黄色ブドゥ球菌からマイトマイシン C誘発によつて溶原バクテリオファ一ジ を含有する試料を得る工程、
(b)該試料をフィルタ一に通してパクテリオファ一ジを通過させる工程、
(c)フィルターを通過したバクテリオファ一ジを精製する工程、 (d)精製されたパクテリオファ一ジを、 黄色ブドウ球菌を含有する培地中で増殖 させる工程、
(e)増殖したパクテリオファージを単離する工程、
(f)単離されたバクテリオファ一ジを精製する工程。
14. 以下の (a)または (b)の蛋白質をコードする遺伝子;
(a) 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号: 1のアミノ酸配列において 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドウ球菌の細胞壁分解酵 素活性を有する蛋白質。
15. 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする遺伝子である請 求項 14に記載の遺伝子。
16.配列番号: 8のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする遺伝子である請 求項 14に記載の遺伝子。
17. 以下の (a)または (b)の蛋白質;
(a) 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b) 配列番号: 1のアミノ酸配列において 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、 黄色ブドゥ球菌の細胞壁分解酵 素活性を有する蛋白質。
18. 配列番号: 1のアミノ酸配列からなる蛋白質である請求項 17に記載の蛋白
19. 配列番号: 8のアミノ酸配列からなる蛋白質である請求項 17に記載の蛋白
20. 請求項 17-19のいずれかに記載の蛋白質を有効成分として、 製剤学的に許 容される担体と共に含有する酵素製剤。
21.黄色ブドウ球菌感染症の予防または治療剤である請求項 20に記載の酵素製 剤。
22. MRSA感染症の予防および治療剤である請求項 21に記載の酵素製剤。
23. 請求項 21または 22に記載の酵素製剤の有効量を、 黄色ブドウ球菌による 感染症に罹患しているかそのおそれのある哺乳動物に投与することを特徴とす る黄色ブドウ球菌感染症の予防または治療方法。
24. 黄色ブドウ球菌に対する除菌剤である請求項 20に記載の酵素製剤。
25. MRSAに対する除菌剤である請求項 24に記載の酵素製剤。
26.配列番号: 2のアミノ酸配列からなる黄色ブドウ球菌の細胞表面レセプ夕 一に対するリガンドをコ一ドする遺伝子。
27.配列番号: 2のアミノ酸配列からなる黄色ブドウ球菌の細胞表面レセプタ
—に対するリガンド。
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