明 細 書 抗体含有溶液の凝集物生成または白濁抑制方法 発明の分野
本発明は、 抗体含有溶液を圧力ス ト レス (shear s t r e s s ) に対し て安定化させる方法に関し、 さらに詳しく は抗体含有溶液の限外濾 過に際し、 抗体含有溶液中の凝集物の生成又は白濁を抑制する方法 に関する。 本発明はさ らに、 上記の手段によ り、 圧力ス ト レスに対 して安定化された抗体含有組成物に関する。 本発明は、 医薬の製造 において特に有用である。 背景技術
抗体は疾患の予防又は治療剤の成分として、 あるいは診断薬等の 成分として重要であり、 広く使用されている。 抗体の原体の製造及 び製剤化に当っては、 抗体含有溶液の濃縮等種々の目的で抗体含有 液を限外濾過する必要がある場合がある。 これらの限外濾過に際し て、 抗体含有溶液中に凝集物や白濁が生成する場合があり、 これは 、 限外濾過により抗体含有溶液に負荷されるス ト レスにより溶液中 の抗体蛋白質自体又は随伴する他の夾雑物が不溶化、 凝集すること によ り生ずるものと予想される。 抗体蛋白質を治療薬あるいは診断 薬と して使用するには凝集物または白濁が生じることは、 特に注射 剤と しては許容されない。
従って、 抗体含有液の限外濾過処理においては、 凝集物の生成や 白濁化を抑制することが重要であるが、 従来この凝集物の生成や白 濁化を効果的に防止するための方法は知られていなかった。
発明の開示
従って本発明は、 抗体含有溶液の限外濾過に当って、 凝集物の生 成又は白濁化を効果的に抑制するための新規な方法、 及びこの方法 によ りス トレスに対して安定化された抗体含有組成物を提供しよう とするものである。
本発明者らは、 上記の課題を解決すべく種々検討した結果、 抗体 含有溶液にある種の界面活性剤を添加することにより、 限外濾過に よるス ト レスを緩和し、 凝集物の生成や白濁化を抑制することがで きることを見出した。
従って、 本発明は、 抗体含有溶液に界面活性剤を添加することを 特徴とする、 限外濾過における抗体溶液中の凝集物の生成又は白濁 化の抑制方法を提供する。 前記抗体は好ましくはモノクローナル抗 体であり、 また好ましく は抗 IL一 6 レセプタ一抗体である。
本発明はまた、 物理的ス トレスに対して安定化された抗体含有組 成物において、 界面活性剤を 0. 00025〜0. 5 重量%含有する組成物 を提供する。 この組成物は、 好ましく は塩類を実質的に含有しない 。 前記抗体は好ましく はモノ ク ローナル抗体であり、 また好ましく は抗 IL一 6レセプター抗体である。
上記の方法及び組成物において使用する界面活性剤としてはポリ ソルベー ト、 プル口ニックが好ましく、 特にポリ ソルベート 20及び ポリ ソルベー ト 80が好ましい。 また、 界面活性剤の、 抗体含有溶液 に対する濃度は 0. 00025〜0. 5 重量%が好ましい。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の実験に用いた装置の模式図である。
図 2は、 図 1の装置を用いて実験を行った場合の圧力比の効果お よびポリ ソルベー ト 80の添加効果を示すグラフである。
図 3は、 抗体含有溶液中の凝集物の生成の抑制に対するポリ ソル ベー ト 80の濃度の効果を示すダラフである。
図 4は、 抗体含有溶液中の凝集物の生成の抑制に対するポリ ソル ベー ト 80の濃度の効果を示すグラフである。
図 5は、 抗体含有溶液中での凝集物の生成に対する NaClの影響を 示すダラフである。 発明の実施の形態
本発明はポリ クローナル抗体に対しても適用可能であるが、 単一 分子種から成る抗体に対して適用するのが特に好ましい。 単一分子 種から成る抗体とは、 例えばモノ ク ローナル抗体、 ヒ ト抗体、 キメ ラ抗体、 ヒ ト型化抗体、 1本鎖抗体等、 あるいはこれらの種々の形 態の抗体の断片を包含する。 特に、 キメラ抗体、 ヒ ト型化抗体、 1 本鎖抗体は、 天然の抗体に比べ、 不安定であり、 本発明の方法を使 用することが好ましい。
モノク ローナル抗体は、 例えば、 マウス、 ラッ ト、 ゥシ、 ヒッジ 等の動物を抗原によ り免疫して得られる抗体産生細胞と、 骨髄腫細 胞等の永久化された培養細胞との細胞融合によ り得られるハイプリ ドーマによ り産生される抗体であり、 特定の抗原に対するモノク 口 ーナル抗体は周知の方法によ り製造することができる。
ヒ ト抗体は、 トランスジヱニック動物を使用して周知の技術でよ り製造するこ とができる。
また、 キメラ抗体は、 ある生物由来のハイプリ ドーマによ り生産 されるモノ ク ローナル抗体の定常領域 (C 一領域) と他の生物由来 のハイプリ ドーマにより生産されるモノクローナル抗体の可変領域
( V —領域) とを連結することによ り人工的に構成された抗体であ る。 キメラ抗体と しては、 任意の抗原に対するモノク ローナル抗体
が入手可能である点で有利な、 ヒ ト以外の動物、 例えばマウス等の モノ ク ローナル抗体の V—領域をヒ トのモノ ク ロ一ナル抗体の C一 領域により置換したものが重要である。 任意のキメラ抗体を周知技 術により製造することができる。
ヒ ト型化抗体は、 所望の免疫原に対して生成されたヒ ト以外の動 物由来のモノクローナル抗体の V—領域中の相補性決定領域(CDR) によ り、 ヒ トの抗体の CDR を置換したものであって、 ヒ ト抗体の C 一領域、 及び V—領域中のフ レームワーク領域 (FR) と、 ヒ ト以外 の動物由来の抗体の CDR とから成り、 抗体分子中のヒ ト以外の動物 由来の領域が非常に少いので、 ヒ トに対する免疫原性が非常に低い という特徴を有する。 任意のヒ ト型化抗体が周知技術により製造さ れ得る。
1本鎖の抗体は、 軽鎖 (L 一鎖) の V—領域と重鎖 (H—鎖) の V—領域とを適当なリ ンカーにより連結して 1本鎖にしたものであ り、 L鎖 V領域及び H鎖 V領域は、 同一の抗体に由来してもよく、 また異る抗体に由来してもよい。 1本鎖抗体も周知技術によ り製造 することができる。
本発明はまた、 上記種々の形態の抗体の断片、 例えば Fab 、 F ( ab ) 2等にも適用可能である。
キメラ抗体、 ヒ ト型化抗体、 1本鎖抗体等は、 遺伝子組換えによ り宿主細胞を用いて産生される。 宿主細胞と しては微生物あるいは 動物の培養細胞が挙げられ、 例えば大腸菌、 酵母、 枯草菌、 C H O 細胞、 C O S細胞、 B H K細胞、 ヒ ト由来の細胞等が使用でき、 特 に C H O細胞が好ましい。
本発明においては、 本発明を適用する抗体の具体例と して IL一 6 レセプターに対する抗体であるヒ ト型化 PM— 1抗体を用いるが、 本 発明を適用できる抗体がこれに限定されるものではないことは言う
までもない。 なおヒ ト型化 PM— 1抗体は、 PM _ 1抗体をヒ ト型化し たものであり、 PM— 1抗体は抗原 IL— 6 レセプターに対するモノク 口ーナル抗体である。
本発明において使用する界面活性剤と しても、 抗体含有溶液をス ト レスに対して安定化し、 特に限外濾過における凝集物の発生又は 白濁化を防止できるものであればよく、 ポリ ソルベート、 プルロニ ック等が挙げられるが、 ポリ ソルベー トが好ましく、 ポリ ソルべ一 ト 20及びポリ ソルベート 80が特に好ましい。 その添加濃度は、 溶液 に対して 0. 00025°〜0. 5 重量%が好ましい。
ポリ ソルベートは、 無水ソルビトールの水酸基の一部を脂肪酸で エステル化したもののポリオキシエチレンエーテルである。 ポリ ソ ルベート 20はその脂肪酸がラウ リ ン酸であり、 ポリ ソルベート 80は 脂肪酸がォレイン酸である。
本発明の抗体含有溶液は、 リ ン酸緩衝剤、 酢酸緩衝剤、 クェン酸 緩衝剤等の公知の緩衝剤を含んでいてもよく、 このときの pHは特に 限定すれば、 5〜7 , 5 が好ましい。
抗体含有溶液中の凝集物の生成又は白濁化は、 これらを測定する ための任意の方法により測定することができるが、 本発明において は具体例として、 ろ過前後の測定対象サンプルを 340nm における吸 光度によ りそれぞれ測定し、 その差を濁度とする。 本発明における 、 ス ト レスに対する安定化効果、 又は凝集物生成もしくは白濁化抑 制効果は、 例えば下に説明する 「濁度の傾き」 を指標と して表わす ことができる。
すなわち、 例えば、 図 1 に示すよ うな限外濾過濃縮装置を用いる 。 まず、 図中 1で示す容器 1に、 被験界面活性剤を添加してあるか 又は添加してない (対照) 抗体含有溶液を入れ、 この溶液をポンプ 2によ り限外濾過器 3に輸送する。 限外濾過器 3においては、 抗体
含有溶液を構成していた溶媒が限外濾過膜を限外濾過して排出路 4 から排出され、 濃縮された抗体含有溶液は管 5を通って容器 1 に返 送される。 この循環を反復すれば容器中又は管 5中の溶液の抗体濃 度が上昇する。
今、 限外濾過処理によるス トレスが抗体含有溶液に全くかからな い場合、 すなわち限外濾過処理によっても凝集物の生成又は白濁が 全く生じない場合には、 容器 1又は管 5中の溶液の抗体濃度は経時 的に上昇するが、 濁度すなわち 340nm における吸光度は上昇しない 。 従って、 容器 1から経時的にサンプルを採取し、 その抗体濃度と 濁度を測定し、 抗体濃度を横軸に、 濁度を縦軸に取ってプロ ッ トす れば、 そのプロッ トから得られる回帰線は横軸に平行となり、 「濁 度の傾き」 は 0 となる。
他方、 限外濾過により抗体含有溶液にス ト レスがかかり、 凝集物 又は白濁が生ずる場合には、 経時的に抗体濃度が上昇すると共に、 濁度も上昇する。 従って、 上記のグラフにおいて、 得られた回帰線 は一定の 「傾き」 (濁度の傾き) を示す。 そして、 限外濾過処理に より抗体含有溶液中に凝集や白濁が生じやすい程、 「濁度の傾き」 は大きくなる。 従って、 被験界面活性剤を添加した抗体含有溶液、 及び界面活性剤を添加しない抗体含有溶液について 「濁度の傾き」 を測定し、 比較することによ り、 被験界面活性剤の抗ス ト レス効果 、 すなわち凝集物生成又は白濁化に対する抑制効果を測定すること ができる。
また、 抗体含有溶液に種々の濃度の塩化ナト リ ウムを添加し、 上 記の試験において 「濁度の傾き」 を測定したところ、 塩濃度が高く なるに従って濁度の傾きが上昇し、 限外濾過におけるス ト レスに対 抗するためには、 塩濃度が低い方がよいことが明らかになった。
本発明の方法の実施に当っては、 限外濾過に先立って、 抗体含有
溶液に所定の界面活性剤の所定量を添加すればよい。
本発明はまた、 界面活性剤を含有することによって、 限外濾過に よるス ト レスに対して安定化された、 抗体含有組成物に関する。 こ の組成物は、 本発明の方法を実施した結果と して得られる。 本発明 の安定化された組成物はまた、 凍結乾燥、 真空乾燥等の常用の乾燥 手段により固体化された組成物であってもよい。 固体化された安定 化組成物において、 上記の抗体含有量は、 固体化する前の液体状態 での濃度を意味する。 本発明のス ト レスに対して安定化された抗体 含有組成物はまた、 所定量の界面活性剤が添加された未限外濾過の 抗体含有溶液又はその乾燥生成物であってもよい。 これらの組成物 は、 その後の限外濾過に際して、 安定化効果を発揮する。 実施例
次に、 実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例 1
図 1に模式的に示す装置を具体化したものと して、 Millipore 社 の Labscale TFF System を使用し、 限外濾過膜と して Mill ipore 社 の Pell icon Biomax 5 を使用した。 抗体と してヒ ト型化 PM— 1抗体 を使用し、 抗体溶液の濃度は 340ηιη において分光光度計により測定 した。 またヒ ト型化 PM_ 1抗体の濃度はゲルろ過ク口マ トグラフ法 によ り測定した。
抗体溶液と して、 ヒ ト型化 PM_ 1抗体約 1 mg/ mL、 リ ン酸ナ ト リ ゥム (緩衝液) 15mM (ρΗ6· 5)及び NaCl 120mM、 並びに実験目的によ り所定量のポリ ソルベー ト 80を含有する溶液を調製し、 ヒ ト型化 PM 一 1抗体濃度が約 3〜 4mg/mLに濃縮されるまで限外濾過処理を続 けた。
限外濾過によるス ト レスは、 レオロジ一理論から限外濾過速度の
関数であると予想される。 また、 限外濾過速度は限外濾過膜の前後 における圧力比の関数であることが確認された。 そこで、 ポリ ソル ベート 80を 0. 005 %添加した抗体溶液及びポリ ソルベート無添加の 抗体溶液について、 種々の圧力比における 「濁度の傾き」 を測定し た。
なお、 「濁度の傾き」 は、 経時的に採取したサンプル中の濁度と ヒ ト型化 PM— 1抗体の濃度を測定し、 340nm において測定した吸光 度の数値を濁度と し、 ヒ ト型化 PM— 1抗体の濃度と して 「mg mL」 の数値を用い、 横軸にヒ ト型化 PM— 1抗体濃度 〔mgZ mL〕 及び縦軸 に吸光度を取って、 測定値をプロッ ト し、 それによ り得られた回帰 直線の傾斜を算出した数値である。
実験の結果を図 2に示す。 この図から明らかな通り、 限外濾過に よるス ト レス、 すなわち凝集物の生成又は白濁化は、 圧力比の上昇 (すなわち限外濾過速度の上昇) と共に大きくなり 、 これはポリ ソ ルベー トの添加によ り抑制される。
実施例 2 . ポリ ソルベー ト 80の濃度の効果
実施例 1 に記載した装置及び方法を用い、 但し圧力比として 3及 び 1. 5 を用い、 ポリ ソルベート 80を 0 %、 0. 001 %及び 0. 005 %濃 度で添加して、 「濁度の傾き」 を求めた。 結果を図 3に示す。
実施例 1 の場合と同様に、 圧力比の大きさに従って、 ス ト レスが 上昇した。 また、 いずれの圧力比においても、 ポリ ソルベー ト 80を 0. 001 %以上添加した場合に 「濁度の傾き」 が低下し、 凝集物の生 成が抑制された。
実施例 3 . ポリ ソルベー トの濃度の効果
実施例 1 に記載したのと同じ装置、 及び同様の方法を用いたが、 圧力比は 3に固定し、 ポリ ソルベー ト 80の濃度を 0 %、 0. 00025 % 、 0. 0005 %、 0. 0010 %、 0. 002 %、 及び 0. 004%と して、 「濁度の
傾きを」 測定した。 結果を図 4に示す。 ポリ ソルベー ト 80の濃度が 0.00025%において十分な抗ス トレス効果、 すなわち凝集物生成抑 制効果が得られることが明らかになつた。
実施例 4. 塩化ナ ト リ ゥムの効果
実施例 1 に記載したのと同一の装置及び同様の方法を用いたが、 圧力比を約 1.5に固定し、 ポリ ソルベートを添加せず、 NaCl濃度を 無添加、 120mM 及び lOOOmMとした。 ヒ ト型化 PM_ 1抗体濃度約 1 mg /mLの初期濃度から約 40mg/mLに濃縮されるまで限外濾過を行った 。 結果を図 5に示す。 NaCl無添加において 「濁度の傾き」 が最低で あり、 NaClは抗体溶液中の凝集物の生成を促進することが明らかに なった。
参考例 1 . ヒ ト IL一 6 レセプター抗体 PM— 1の調製
Hirataらの方法 (J. Immunol. , 14 3 : 2900 - 2906, 1989)によ り 作成した抗 IL一 6R抗体 MT18を CNBrによ り活性化させたセファロース 4 B (Pharmacia Fine Chemicals製、 Piscataway, NJ) と添付の処 方にしたがって結合させ、 IL—6R (Yamasakiら、 Science 241 : 82 5-828, 1988 ) を精製した。
すなわち、 ヒ ト ミ エローマ細胞株 U266を 1 %ジギトニン ( Wako C hemicals製) 、 10mMト リエタノールァミ ン(pH7.8) および 0, 15M N aCl を含む I mM p—パラアミ ノフエ二ノレメ タ ンスノレフォ -ルフノレ ォライ ドハイ ドロク ロ リ ド (Wako Chemicals製) (ジギトニン緩衝 液) で可溶化し、 セファロース 4Bビーズと結合させた MT18抗体と混 合した。 その後、 ビーズをジギトニン緩衝液で 6回洗浄し、 免疫に 用いる部分精製 IL一 6Rとした。
BALB/ cマウスを 3 X109 個の U266細胞から得た上記部分精製 IL — 6Rで 10日おきに 4回免疫し、 その後常法によ りハイプリ ドーマを 作成した。 成長陽性ゥエルからのハイプリ ド一マ培養上清を下記の
方法にて IL一 6Rへの結合活性を調べた。 5 X107 個の U266細胞を 35 S—メチォニン (2.5mCi) で標識し、 上記ジギトニン緩衝液で可溶 化した。
可溶化した U266細胞を 0.04ml容量のセファ口ース 4Bビーズと結合 させた MT18抗体と混合し、 その後、 ジギトニン緩衝液で 6回洗浄し 、 0.25mlのジギトニン緩衝液(pH3.4) によ り 35 S—メチォニン標識 IL— 6Rを流出させ、 0.025ml の 1 M Tris (pH7.4) で中和した。 0. 05mlのハイブリ ドーマ培養上清を 0.01mlの ProteinGセファ ロース ( Phramacia 製) と混合した。
洗浄した後、 セファロースを上記で調製した 0.005mlの35 S標識 IL—6R溶液と ともにィンキュベートした。 免疫沈降物質を SDS - PAGE で分析し、 IL— 6Rと反応するハイプリ ドーマ培養上清を調べた。 そ の結果、 反応陽性ハイプリ ドーマクローン PM_ 1 を樹立した。 ハイ プリ ドーマ PM— 1から産生される IL—6R抗体 PM— 1は、 IgGl K型の サブタイプを有する。
ハイブリ ドーマ PM— 1が産生する抗体のヒ ト IL一 6Rに対する IL一 6Rの結合阻害活性をヒ ト ミ エローマ細胞株 U266を用いて調べた。 ヒ ト組換型 IL一 6Rを大腸菌よ り調製し (Hiranoら、 Immunol. Lett. , 17 : 41, 1988)、 ボノレ 卜 ン—ノヽンター試薬 (New England Nuclear, Boston, MA)によ り 125 I標識した (Tagaら、 J. Exp. Med. 166 : 967, 1987)
4 X 105 個の U266細胞を、 100倍量の過剰な非標識 IL—6Rの存在 下で室温にて、 1時間、 70% ( V / V ) のハイプリ ドーマ PM— 1の 培養上清及び 14000CPMの 125 I標識 IL一 6Rと ともに培養した。 70 1 のサンプルを 400 μ 1 のマイクロフュージポ リ エチレンチューブ に入れた 300 μ 1 の FCS 上に重層し、 遠心の後、 細胞上の放射活性 を測定した。 その結果、 ハイプリ ドーマ ΡΜ— 1 が産生する抗体は、
IL— 6Rの IL一 6Rに対する結合を阻害することが明らかとなった。 参考例 2. ヒ ト型化 PM— 1抗体の作成
ヒ ト型化 PM_ 1抗体を国際特許出願公開番号 W092- 19759に記載の 方法によ り得た。 参考例 1で作成されたハイプリ ドーマ PM— 1から 常法で全 RNA を調製し、 これより一本鎖 cDNAの合成を行った。 ポリ メ ラーゼ連鎖反応(PCR) 法によ りマウス PM— 1の V領域の DNA を増 幅した。 PCR 法に使用するプライマーは、 S. T. Jonesら、 Bio/Tech nology, 9, 88, 1991 に記載されたものを用いた。
PCR 法により増幅した DNA 断片を精製し、 マウスカッパ型 L鎖 V 領域をコー ドする遺伝子を含む DNA 断片、 及びマウスガンマ型 H鎖 可変領域をコー ドする遺伝子を含む DNA 断片を得た。 これらの DNA 断片をブラスミ ド PUC19 に連結し、 大腸菌 DH5 αのコンビテン ト細 胞に導入して大腸菌形質転換体を得た。 この形質転換体から上記プ ラスミ ドを得、 プラスミ ド中の cDNAコー ド領域の塩基配列を、 常法 にしたがい決定し、 さらに各 V領域の相補性決定領域(CDR) を決定 した。
キメ ラ PM_ 1抗体を発現するべクターを作製するため、 それぞれ マウス PM— 1 K L鎖及び H鎖の V領域をコー ドする cDNAを HCMV発現 ベクターに揷入した。 ヒ ト型化 PM_ 1抗体を作製するために、 CDR 移植法によりマウス PM— 1の V領域 CDR をヒ ト抗体へ移植した。 ヒ ト型化抗体の CDR が適切な抗原結合部位を形成するよ うに抗体の可 変領域のフレームワーク (FR) 領域のアミ ノ酸を置換した。
このようにして作成したヒ ト型化 PM— 1抗体の L鎖および H鎖の 遺伝子を哺乳類細胞中で発現させるために、 ヒ トェロンゲーシヨ ン ファクター l a (HEF- 1 a ) プロモーターを含有するベクターに各 々導入し、 ヒ ト型化 PM— 1抗体 L鎖および H鎖を発現するベクター を作成した。 これら二つの発現ベクターを CH0 細胞に同時に揷入す
るこ とによ り、 ヒ ト型化 PM— 1抗体を産生する細胞株を樹立した。 得られたヒ ト型化抗体のヒ ト IL— 6Rへの結合能は ELI SA にて確認し た。 さ らに、 hPM— 1 はマウス抗体およびキメ ラ抗体と同様に、 ヒ ト IL— 6のヒ ト IL—6Rへの結合を阻害した。