明 細 書 均一なミク口組織および均一な機械特性を有する圧延 H形鋼とその 製造方法 技術分野
本発明は、 建築構造物用部材として用いられる H形鋼に関し、 特 に、 この H形鋼において均一なミク口組織および均一な機械特性を 有する圧延 H形鋼とその製造方法に関するものである。 背景技術
熱間圧延で製造される形鋼、 例えば H形鋼は製品サイズによ り断 面寸法が大きく異なり圧延時の各部位の圧下量、 圧延中および圧延 後の温度履歴が大きく異なる場合が発生する。 特に、 H形鋼におい ては、 フランジ部の中でフランジとウェブが結合する 1 / 2フラン ジ部 (以下フィ レッ ト部という。 ) は、 他のフラ ンジ部と比較して 圧延加工による歪量は小さい上に高温域での加工を強いられるとい う特徴を持っている。 その結果、 同一部材内でフランジ部の中の断 面各部位においてミクロ組織格差が生じてしまう。 このミク ロ組織 格差は、 強度 · 靱性等の機械的特性に影響を及ぼし、 具体的には、 フィ レッ ト部の強度 ' 靱性の低下が生じる主原因となる。 この断面 内における材質格差は、 大型サイズ、 厚肉サイズで顕著になり、 こ のよ うな H形鋼を使用する重構造建造物において顕著になる傾向が ある。
上述したような問題に対し、 従来は最弱部であるフィ レツ ト部の 強度 · 靱性の低下分を合金添加量の増加等の方法によ り捕う ことで 規格の強度 · 靱性等の機械的特性値を保証している。 この場合、 フ
ィ レツ ト部以外の部位の機械的特性はフィ レッ ト部のそれよ り も優 れており、 規格値を十分に満足するレベルで分布するものの、 フラ ンジ断面部以内で生じる材質格差のため、 よ り厳密な鋼構造設計に 用いられる部材に適さない場合が生じてしまう。 すなわち、 突発的 な大荷重の負荷がかかるような場合にはフィ レツ ト部より亀裂が発 生するという問題がある。 例えば、 耐震設計を施した構造物におい て部材に従来の H形鋼を使用する場合、 断面部材以内で生じる材質 格差に起因して大地震発生時に設計段階では予測しえない倒壊パタ ーンが生じる危険性を有することになる。
一方、 最弱部であるフィ レツ ト部の機械的特性を保証する合金 · プロセス等の製造条件を採用するために、 他の断面部位では機械特 性の規格下限値を越えて過大に保証していることは非効率的であり 、 不要な鋼材価格の上昇を伴い不経済であるという問題を抱えてい る。 また、 フランジ部とウェブ部とでは各々圧下率および圧延温度 履歴が異なるためにミ ク ロ組織に差が生じているという問題を抱え ている。 従って、 同一の規格の H形鋼をよ り経済的に製造するには 、 この断面内における材質格差を縮小することが必須となる。
上述した問題点を踏まえながらより均一な機械特性を有する H形 鋼を製造する技術と しては、 例えば特開平 6 _ 2 2 8 6 3 4号公報 に示される制御圧延とフランジ外側面の水冷による加速冷却を組み 合わせた製造法が考えられるが、 この技術によ りフランジ外側面の 幅方向の水量を調節、 すなわち、 フィ レッ トに相当するフランジ幅 中央近傍を集中的に水冷することによ り、 1 / 4フランジとフィ レ ッ トの圧延温度履歴を近づけて、 フランジ部断面の機械特性を均一 化することは可能であるが、 ウェブを含めた全断面にわたって水冷 開始前および水冷中の温度分布を水冷単独で制御してミクロ組織を 均一化し強度の偏差を充分に抑制させることは難しい。
また、 圧延加工段階において大圧下圧延による加工歪の導入、 後 続する回復および再結晶現象を利用したミクロ組織制御方法が考え られるが、 H形鋼を圧延する場合、 従来は以下に示す製造上の制約 があり、 ミク ロ組織を均一化することができなかった。
H形鋼の製造は、 加熱鋼片を H形の粗形状 (以下粗形鋼片と称す ) まで圧延するブレークダウン工程と製品サイズまで厚み、 幅およ び高さ等の寸法まで成形する中間および仕上げ圧延工程から構成さ れる。 従来の製造法ではブレークダウン工程で仕上げられる粗形鋼 片のフランジ厚とウェブ厚の比が、 製品のフランジ厚とウェブ厚の 比に近い値まで成形されていた。 これは、 後続の中間および仕上げ 圧延工程において、 特にユニバーサル圧延と呼ばれるフランジ、 ゥ ェプの同時圧下プロセスにおいて、 フランジ厚とウェブ厚の圧下パ ランスが 1から大きく外れる場合に発生するウェブ波 (ウェブの座 屈) 、 フランジ裂け (端部の延伸差) 等の鋼材長手方向の形状不良 、 厚み · 幅 · 高さ等の寸法不良を防止するためである。
殆どの H形鋼のサイズにおいてウェブ厚はフランジ厚より も薄い ため、 上述の圧延方法では圧延中のウェブの温度低下が顕著となり 、 H断面内の温度偏差が大きく なる傾向にあった。 このときの温度 分布はフィ レッ トで最大、 ウェブ中央で最小となり、 その温度差は 場合により 1 5 0力、ら 2 0 0 °Cにまで及ぶこともある。
この H断面内の温度偏差が存在しているなかでミクロ組織の均一 微細化を目的と した回復再結晶を利用した圧延制御を実施する場合 、 フランジ、 フィ レッ トおよびウェブ各々において別々のタイ ミ ン グで大圧下圧延が必要となる。 先述したように、 フランジ厚とゥェ ブ厚の圧下パランスを 1 に近い値で圧延することを前提とすると、 幅広い温度範囲で大圧下圧延を行なわなければならないことになる
これを実現するにはブレークダウン工程で仕上げられる粗形鋼片 の断面サイズを大きくすることが必須であるが、 素材である鋼片の サイズ拡大およびブレークダウン工程での大断面の粗形鋼片を製造 する新造形技術が必要とされる。 これらは、 铸造作業効率の低下等 による経済的問題および未実現である大断面粗形鋼片製造方法の開 発等の技術的問題を抱え、 その実現は困難であった。
従って現状のプロセスでは、 9 5 0〜 1 1 0 0 °Cの間において 1 パスあたりのフランジ、 ゥェブ圧下率にして高々 1 5〜 1 8 %程度 でユニバーサル圧延が行なわれていた。
圧延および水冷制御に代替するミク口組織微細化方法として、 特 開平 4— 2 7 9 2 4 7号公報、 特開平 4一 2 7 9 2 4 8号公報に示 されるように粒内フェライ ト変態核をオーステナイ ト中に分散させ 低圧下条件でもミク口組織を微細かつ均一にする製造方法があるが 、 これは製鋼段階における溶存酸素量および粒内フェライ ト変態核 となる酸化物の分散生成等の制御を必要と し、 大量生産に対応する には二次精鍊工程能力の増強等のコス トアップ要因が加わる。 した がって、 この製造方法では大量生産が前提となる汎用鋼の製造には 適合しない。
更に、 上述した問題点を踏まえながら大型サイズ或いは厚肉サイ ズ H形鋼を製造する技術と しては、 例えば、 特公昭 6 2— 5 0 5 4 8号公報、 特公昭 6 2 - 5 4 8 6 2号公報および特開平 1 0— 6 0 5 7 6号公報において、 V Nの析出を利用してミク口組織を細粒化 させる技術が提案されている。 しかしながら、 これらの技術で H形 鋼を製造した場合、 H形鋼断面部位内のミク口組織格差は幾分緩和 されることは可能であるが、 均一なミク口組織および/または機械 特性を得られるほど十分な対策というには至っていない。 また、 V 添加による製造原価の上昇が懸念され、 経済性の観点からも問題が
あるのが現状である。
更に、 上述した問題を解決するために、 鋼板を溶接して製造する 所謂、 溶接 H形鋼があるが、 圧延 H形鋼と'比較して製造工程を多く 抱えていることに加え、 生産効率は低いために H形鋼市場で経済性 および市場供給能力に問題がある。 また、 溶接条件によっては溶接 部機械特性が母材のそれと異なる場合が生じ、 必ずしも H形鋼断面 内で均一なミク口組織および/または機械特性を得られるまでには 至らない。 発明の開示
本発明は、 上述した各種問題点を解決し、 熱間圧延で製造する各 種サイズの H形鋼、 特に大型サイズ、 厚肉サイズの H形鋼の各部位 においてミク口組織偏差を小さく し、 H形鋼断面内で均一な機械特 性を有する圧延 H形鋼およびその製造方法を提供するものである。 本発明は、 上記目的を達成するためになされたもので、 その要旨 は次の通りである。
( 1 ) 炭素当量式 Ceq = C+S i/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 で 0 . 1 5〜 0 . 4 0質量%の化学成分を有する鋼片から製造する H形鋼で、 前記 H形鋼断面において 1 Z 4フランジ部を基準と して ミク 口組織が下記のいずれか 1以上を満足することを特徵とする均 一なミク口組織および均一な機械特性を有する圧延 H形鋼。
1 ) ミクロ組織中のフェライ ト粒径平均値が 1 / 2フランジ部およ びフィ レツ ト部で ± 1 5 %以内であること。
2 ) ミクロ組織中のフェライ ト粒径平均値が 1 / 2 ウェブ部で士 1 5 %以内であること。
3 ) ミクロ組織中のパーライ ト分率平均値が 1 Z 2フランジ部およ びフィ レツ ト部で ± 8 %以内であること。.
4 ) ミ ク口組織中のパーライ ト分率平均値が 1 Z 2 ウェブ部で ± 8 %以內であること。
( 2 ) 炭素当量式 Ceq. = C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 で 0. 1 5〜 0. 4 0質量%の化学成分を有する鋼片から製造する H形鋼断面において圧延仕上時の表面温度で示される圧延仕上温度 が 1 / 4フランジ部、 フィ レツ ト部および 1 / 2 ウェブ部の 3点間 で 5 0 °C以内である仕上げ圧延を施すことにより、 H形鋼断面にお いて 1 / 4フランジ部を基準としてミクロ組織が下記のいずれか 1 つ以上を満たすことを特徴とする均一なミクロ組織および均一な機 械特性を有する圧延 H形鋼の製造方法。
1 ) ミクロ組織中のフェライ ト粒径平均値が 1 2フランジ部およ びフィ レツ ト部で ± 1 5 %以内である。
2 ) ミクロ組織中のフェライ ト粒径平均値が 1 / 2ウェブ部で ± 1 5 %以内である。
3 ) ミク口組織中のパーライ ト分率平均値が 1 / 2フランジ部およ びフィ レツ ト部で ± 8 %以内である。
4 ) ミクロ組織中のパーライ ト分率平均値が 1 / 2 ウェブ部で ± 8 %以内である。
( 3 ) 上記 ( 2 ) 記載の化学成分に、 更に、 N bを 0. 0 0 5〜 0. 0 3 5質量%含有する鋼片を鋼材表面温度が 9 5 0 °C以下での 総圧下率がフランジ部、 ウェブ部いずれも 6 0 %以上である仕上げ 圧延を施すことを特徴とする上記 ( 2 ) 記載の均一なミクロ組織お よび均一な機械特性を有する圧延 H形鋼の製造方法。
( 4 ) 上記 ( 2 ) または ( 3 ) 記載の圧延 H形鋼の製造方法にお いて、
1 ) 鋼片を 1 1 0 0〜 1 3 0 0 °Cの温度域に加熱後に圧延を開始し 、 フランジ、 ウェブ各部位における板厚平均温度が 9 5 0〜 1
1 0 0 °Cの間で 1パスあたりのフランジ、 ウェブ圧下率が 2 0 %以上となる圧延を各々 1回以上実施するか、
2 ) 1ノ 4フランジ部、 フィ レッ ト部および 1 Z 2 ウェブ部 3点の 圧延仕上温度がいずれも 6 5 0 °C以上 8 6 0 °C以下である仕上 げ圧延を施すか、
いずれか 1種の圧延法またはこれら両者の組合せによる圧延を施す ことを特徴とする均一なミク口組織および均一な機械特性を有する 圧延 H形鋼の製造方法。
( 5 ) 上記 ( 3 ) または ( 4) のいずれかに記載の製造方法にお いて、 更に、
1 ) 中間圧延工程のリパース圧延のパス間でフランジを水冷し、 表 層部の温度を 7 5 0 °C以下に冷却し、 かつ前記リバース圧延の パス間の復熱過程で圧延する工程を 1回以上実施する。
2 ) 仕上げ圧延工程の圧延終了後に 5 0 0 °Cまでの平均冷却速度が
0. 5〜 1 0 °C/ sで水冷による加速冷却を実施する。
のいずれか、 または複数のプロセスを組み合わせて製造することを 特徴とする均一なミク口組織および均一な機械特性を有する圧延 H 形鋼の製造方法。 (ただし、 2 ) を含まない場合は圧延終了後 5 0 0 °Cまで自然放冷する) 図面の簡単な説明
図 1 は、 H形鋼の部位と試験片採取位置を示す図。
図 2は、 圧延温度履歴による再結晶後オーステナイ ト平均粒径の 変化を示す図。 発明を実施するための最良の形態
前述したよ うに、 H形鋼においては、 フランジ部の中でフランジ
とウェブが結合する 1 / 2フランジ部 (フィ レッ ト部) は、 他のフ ランジ部と比較して圧延加工による歪量は小さい上に高温域での加 ェを強いられるために同一部材内でフランジ部の中の断面各部位に おいてミクロ組織格差が生じ、 このミ ク ロ組織格差はフィ レッ ト部 の強度 · 靱性の低下が生じる。 すなわち、 ウェブ部はフランジ部と 比較して肉厚の薄い H形鋼を従来の熱間圧延工程で製造する場合に は、 ウェブ部が比較的低温大圧下の製造条件となるために、 ウェブ 部はフランジ部に比較してミクロ組織が細粒化する傾向にある。 ま た、 これと同時にウェブ部はフランジ部よ り も焼き入れ性が低下し 、 パーライ ト分率が低下する傾向になる。
このミクロ組織格差は、 強度 ·靱性に多大な影響を及ぼし、 具体 的にはウェブ部の降伏比が上昇する原因となる。 また、 このミクロ 組織格差および材質格差は、 ウェブ、 フランジ間の厚み比が大きい サイズ、 およびウェブ部の薄肉サイズで顕著となる特徴がある。 従 来はウェブ部の低温大圧下条件を緩和させ、 フランジ部の圧延温度 履歴に近づけるために圧延製造までの所要時間を短縮させる方法、 具体的には鋼材の伸び長さ制限、 すなわち鋼片重量の軽量化や圧延 • 搬送の高速化も図られてきたが、 断面各部位で均一なミク口組織 が得られるほど十分な対策が講じられていない状況にある。 このよ うに、 従来の製造プロセスで製造される H形鋼は、 ウェブ、 フラン ジ間で材質格差が存在し、 条件によっては厳密な鋼構造設計に用い られる部材に適合しない場合が発生することもある。 例えば、 耐震 設計を施した構造物において、 部材に従来の H形鋼を使用する場合 、 断面部以内で生じる材質格差に起因して、 大地震発生時には設計 段階では予測しえない倒壊パターンが生じる危険性を有することに なる。
そこで、 本発明においては上述したミク口組織格差を解消するた
めに種々検討した結果、 H形鋼断面において、 1 / 4フランジ部を 基準としてミク口組織中のフェライ ト粒径平均値或いはパーライ ト 分率平均値を制御すること、 および/または 1 / 2 フランジ部、 ゥ エブ部およびフィ レツ ト部での降伏強度、 引張強度等の機械特性を 制御することが重要な要素を占めることを見いだした。 これについ て詳細に説明する。
ミ クロ組織が主と してフェライ ト相とパーライ ト相から構成され る鋼材の機械特性はフェライ トの粒径およびパーライ ト分率から予 測することが可能である。 この鋼材に変形が加えられた場合、 パー ライ ト相より も軟質であるフェライ ト相の塑性変形が開始すること によ り降伏する。 一般の鋼材に見られる多結晶体においては、 機械 特性はこのフェライ トの結晶粒径に依存することが一般に知られて いる。 すなわち、 降伏強度はフェライ ト粒径依存性を有し、 具体的 には、 フェライ ト粒径の一 1 / 2乗と線形的な関係を有することが 理論的にも実験的にも示されている。 特に同一成分の鋼材の場合、 フェライ ト粒径の一 1ノ 2乗と降伏強度とは 1本の直線的な関係で 結ばれる。 これは同一成分の鋼材のミ クロ組織中のフヱライ ト粒径 平均値がほぼ均一であれば降伏強度はほぼ同一になることを示して いる
一方、 引張強度は軟質相であるフェライ トのみならず硬質相であ るパーライ トの強度にも依存する。 これは引張強度を示す引張試験 での破断限界がフェライ ト、 パーライ ト双方の塑性変形に起因する ためである。 複合組織の引張強度は構成各相の引張強度の加重平均 と一般に考えられるから、 構成各相における強度と組織分率の積の 総和が引張強度の予測式と して成立する。 主としてフ ライ ト相と パーライ ト相から構成される鋼材においては、 フェライ ト相の強度 とフヱライ ト分率の積に、 パーライ ト相の強度とパーライ ト分率の
積を加えた値が引張強度と線形が関係する。 このとき、 主構成相は
2相であることから、 フェライ ト分率は 1からパーライ ト分率を引 いた値に等しいこと、 パーライ トの塑性変形はフェライ トの塑性変 形と比較して極く微小であることからパーライ ト粒径依存性は無視 できることの 2つの理由から、 引張強度はフェライ ト粒径およびパ 一ライ ト分率に依存する量となる。 例えば、 鋼材の引張強度は Pic keringによると下記 ( 1 ) 式の実験式で示され、 圧延鋼の強度レべ ルは合金設計された化学成分値、 パーライ ト分率、 フェライ ト粒径 でほぼ決定される。
引張強さ (MP a ) = 1 5. 4 ( 1 9. 1 + 1. 8 〔Mn〕
+ 5. 4 〔 S i 〕 + 0. 2 5 〔%
パーライ ト〕 + 0. 5 d 一 1 ( 1 ) ただし、 d : フェライ ト粒径 (mm)
これは、 同一成分の鋼材ミク口組織中のフェライ ト粒径平均値お よびパーライ ト分率平均値がほぼ均一であれば引張強度はほぼ同一 となることを示している。 従って、 H型鋼断面において均一な強度 を保っためには、 断面内各部位で圧延と冷却のプロセス制御が不可 欠となる。
フェライ ト結晶粒径は、 オーステナイ トからフェライ トへの変態 においてフェライ ト変態サイ ト数とそのフェライ ト結晶の成長速度 によ り決定され、 1 ) フェライ ト変態直前のオーステナイ ト粒径、 2 ) 加速冷却型制御圧延 (TMC P) に代表される加工熱処理の加 ェ温度と歪量、 変態域の冷却速度等、 の条件に主に支配される。 ま た、 パーライ ト割合は主にパーライ ト変態温度によ り決定される。 本発明は、 上記の原理を基本とし、 圧延により造形する H型鋼の ウェブ、 フランジとフィ レッ トのミク ロ組織差を以下に示す方法に よ り縮小させることで、 H型鋼断面内のミクロ組織と機械特性の均
一化を実現するものである。 1 / 4フランジ部と 1 / 2フランジ部 およびフィ レツ ト部との間のミク口組織差を解消すると共に機械特 性を均一化させる方法として以下の対策が挙げられる。
①例えば、 圧下率で 2 0 %以上の大圧下圧延を行う ことによ り、 1 / 4フランジ部のみならず 1 / 2フランジ部およびフィ レツ ト部 を再結晶後のオーステナイ ト組織を十分細粒化させることによ り 最終的なミ ク口組織を微細化する。
②再結晶温度域 (例えば 9 5 0 °C以上) の中で比較的低い温度域で 圧延することにより、 1 / 4フランジ部のみならず 1 / 2フラン ジ部およびフィ レツ ト部において再結晶後のオーステナイ ト組織 を十分細粒化させることにより最終的なミク口組織を微細化する 。 この比較的低い温度域での圧延を実現するために、 圧延パス間 でフランジを水冷する方法が考えられる。
③圧延終了後水冷による加速冷却によ り フェライ トの粒成長を抑制 し、 パーライ ト組織比率を増加させる。
また、 1 Z 4フランジ部と 1 2 ゥェブ部との間のミクロ組織差 を解消する方法には以下の対策が挙げられる。
1 ) ブレークダウン工程での平パス圧延と称する孔型によるゥェ ブの単独圧延パスを廃止し、 圧延中のウェブの温度低下を抑制する 。 なお、 このプロセスを実現するためにはブレークダウン工程に後 続するユニバーサル圧延工程でのウェブの単独圧延パスを行う。 所 謂ユニバーサルブレークダゥン圧延プロセスが必須となる。
2 ) 圧延に要する時間を短縮し、 H型鋼断面部位間の温度格差の 拡大を抑制する。
3 ) 大圧下圧延を行なう ことにより 1 / 4フランジ部のみならず フィ レツ ト部を再結晶後のオーステナイ ト組織を充分に細粒化させ ることによ り最終的なミク口組織を微細化する。
4 ) 再結晶温度域 (例えば 9 5 0 °C以上) のなかで比較的低い温 度域で圧延することによ り 1 / 4フランジ部のみならずフィ レッ ト 部において再結晶後のオーステナイ ト組織を細粒化し最終的なミク 口組織を微細化する。 この比較的低い温度域での圧延を実現させる ために、 圧延パス間で鋼材を水冷する方法が考えられる。
5 ) 未再結晶温度域での圧延温度履歴をフランジとフィ レッ ト、 ウェブの 3点間で近接化させる。 具体的方法と して以下の項目を制 御すれば良い。
•未再結晶温度域での総圧下率の部位間差を抑制する
未再結晶温度域上限 (例えば本発明の成分のうち N b含有鋼にお いて鋼材表面温度で 9 5 0 °C程度) における板厚から製品厚までの 総圧下率が 6 0 %以上確保できれば、 圧延加工による導入歪量の部 位間差は減少する。
• 仕上げ温度の部位間差を抑制する
フランジとフィ レツ ト、 ウェブの 3点間の仕上げ圧延における銅 材表面温度 (以降仕上げ温度と称す) がいずれも 8 6 0 °C以下であ れば、 ミクロ組織は充分に細粒化されるが、 6 5 0 °Cを下回ると、 ミクロ組織の一部がフェライ ト変態して圧延で加工フェライ トを生 成することになり、 機械特性特に靱性を低下させることになるので 、 仕上げ温度の下限値を 6 5 0 °Cとする。 さ らに、 3点の仕上げ温 度の部位間差が 5 0 °C以内に抑制できればミクロ組織の部位間差が 減少する。
6 ) 圧延終了後、 冷却速度 : 0 . 5〜: L 0 . 0 。じ/ s の加速冷却 によ りフェライ トの粒成長を抑制し、 パーライ トおよびべィナイ ト 組織比率を増加させる。
本発明においては、 前述したフェライ ト粒径平均値或いはパーラ ィ ト分率平均値が 1 Z 4フランジ部を基準としてミク ロ組織中のフ
エライ ト粒径平均値が 1 / 2フランジ部およびフィ レツ ト部で ± 1 5 %以内であること、 或いはミクロ組織中のパーライ ト分率平均値 が 1 Z 2フランジ部およびフィ レツ ト部で ± 8 %以内である必要が ある。 ここで、 均一なミクロ組織の範囲をフェライ ト粒径平均値で ± 1 5 %以内、 パーライ ト分率平均値を ± 8 %以内と限定した理由 は、 この範囲内であれば強度 ·靱性などの機械的特性のパラツキが 約 ± 5 %以内に制御できること、 すなわち、 フ ライ ト粒径平均値 およびパーライ ト分率平均値が前述した範囲内にある場合にほぼ均 質な機械的特性が得られることが実験の結果から明らかになったも のである。
しかしながら、 工業生産する場合はある程度の許容範囲が必要で ある。 引張強度 * 降伏強度に関しては、 そのばらつきの範囲が降伏 強度および引張強度のばらつきで 5 %以内、 降伏比のばらつきで 3 %以内であれば、 均一であると判断できると して、 例えば、 下記の いずれか 1つ以上の条件を満たしていれば H形鋼断面内で機械特性 が均一であると判定するが、 本発明における製造方法を採用するこ とによ り、 これを十分満足する H形鋼を得ることができる。
1 / 4フランジ部を基準と して
1 ) 1 2 フランジ部およびフィ レツ ト部で降伏強度が ± 5 %以 内である均一な機械特性を有する圧延 H形鋼
2 ) 1ノ 2 フランジ部およびフィ レッ ト部で降伏比 (降伏強度/ 引張強度) が ± 3 %以内である。
3 ) 1 Z 2 フランジ部およびフィ レッ ト部で降伏強度が ± 5 %以 内であり、 かつ引張強度が ± 5 %以内である。
4 ) 1 Z 2フランジ部およびフィ レッ ト部で降伏比 (降伏強度/ 引張強度) が ± 3 %以内であり、 かつ引張強度が ± 5 %以内である
5 ) 1 Z 2 ウェブ部で降伏強度が ± 5 %以内である。
6 ) 1 Z 2 ゥヱブ部で降伏比が ± 3 %以内である。
7 ) 1 2 ウェブ部で降伏強度が ± 5 %以内であり、 かつ引張強 度が ± 5 %以内である。
8 ) 1 / 2 ウェブ部で降伏比が 3 %以内であり、 かつ引張強度が ± 5 %以内である。
次に本発明鋼の炭素当量範囲を 0. 1 5〜 0. 4 0質量%に限定 した理由について説明する。 本発明における炭素当量は、 炭素当量 式 C e q . = C + S i / 2 4 +Mn / 6 +N i / 4 0 + C r / 5 + Μ ο / 4 +V/ l 4 , で求められ、 その範囲は 0. 1 5〜 0. 4 0 質量%である。 この成分範囲は J I S規格において S N 4 0 0, S S 4 0 0 , SM 4 0 0 , S N 4 9 0 , SM 4 9 0等で示される一般 構造用圧延鋼材、 溶接構造用圧延鋼材および建築構造用圧延鋼材等 の化学成分に相当する。 引張強度で 4 0 0 MPa力、ら 6 1 0 MPaを示し 、 かつ高靱性および高い溶接性能を達成する成分範囲である。 また この炭素当量範囲であれば、 該成分鋼のミクロ組織はフェライ ト相 とパーライ ト相を主体として構成され、 上述したようにミクロ組織 が機械特性へおよぼす影響の機構が成立する。 なお、 請求項に示さ れた炭素当量式は J I S規格にも記載されており、 低値であるほど 溶接性能が優れていることを示す。 また、 靱性に関しては炭素当量 式で低値な程、 良好な値が得られることが経験的に知られている。
また、 本発明においては、 上記炭素当量式の限定範囲に加えて、 N b量を 0. 0 0 5〜 0. 0 3 5質量%を強度、 靱性向上を図るた めに添加する。 この N bの添加は鋼の再結晶抑制に作用することが 知られており、 例えば、 N b添加の最小量である 0. 0 0 5質量% の場合でも本発明範囲内の炭素当量であるなら、 例えば 9 5 0 °C程 度の温度域まで未再結晶温度域を上昇させることが可能である。 ま
た、 N b添加濃度が 0 . 0 3 5質量%を超える場合、 粗大な N b系 の炭化物が分散し、 母材靱性および溶接性を阻害することがあるの で上限を 0 . 0 3 5質量%とした。
次に本発明の特徴である制御圧延、 制御'冷却条件の限定理由につ いて述べる。
H形鋼を圧延開始するに際し、 鋼片の再加熱温度を 1 1 0 0〜 1 3 0 0 °Cの温度域に限定したのは、 熱間圧延によ り形鋼を製造する には塑性変形を容易にするために 1 1 0 0 °c以上の加熱が必要であ り、 またその上限を 1 3 0 0 °Cにしたのは加熱炉の性能、 経済性か らである。
次に加熱された鋼材は粗圧延、 中間圧延、 仕上げ圧延の各工程に よ り圧延造形されるが、 本発明法の圧延工程における特徴と して、 中間圧延工程において 1パスあたりの圧下率で 2 0 %以上の大圧下 圧延が挙げられる。 1パスあたりの圧下率で 2 0 %以上の大圧下圧 延を 9 5 0〜 1 1 0 0 °Cの温度域で実施するように限定したのは、 この温度域での再結晶によるオーステナイ ト組織の細粒化効果を最 大限に発揮させるためである。 圧延で加えられる歪が大きい程、 再 結晶後のオーステナイ ト組織は細粒化される。 従来実施されている 圧下率 2 0。/。未満の圧延加工では、 ゥエブおよびフランジの再結晶 組織は充分に細粒化されていたが、 フィ レツ ト部は導入される加工 歪が比較的小さいことから再結晶組織は充分に細粒化されなかった 。 ところが、 上記温度域での圧下率 2 0 %以上の圧延により、 フィ レッ トの再結晶組織の細粒化が十分に進行し、 ウェブ、 フランジ部 とほぼ同等の細粒なオーステナイ ト組織を得ることが可能となった また、 図 2に示すよ うに、 この圧下率は 2 0 %以上の大圧下圧延 加工の回数は多いほどオーステナイ ト組織の細粒化は進むものの、
再結晶後のオーステナイ ト平均粒径は加工条件に依存する値に収斂 するため、 回数が多い場合再結晶による 1パスあたりの細粒化効果 は次第に小さくなる傾向にあるが、 この場合の加工歪の一部はォー ステナイ ト粒に蓄積されオーステナイ ト粒内でフェライ ト変態核と して作用し、 最終的にミクロ組織細粒化に機能する。
また、 大圧下圧延加工を製造プロセスに加えることによ り、 圧延 パス回数が減少し鋼片の再加熱後所定の H形鋼サイズへの圧延まで の所要時間が短縮され、 H形鋼断面各部位の温度の格差が減少する 。 すなわち圧延パス時の各部位の温度差が減少することによ り、 各 部位の温度履歴のばらつきが減少する。
この大圧下の圧延条件に加えて圧延パス間および圧延終了後にフ ランジ部に水冷を実施することによ り、 断面各部位におけるミクロ 組織の均一化、 機械特性の均一化がさらに促進される。
圧延パス間でラゥンジ部に水冷を実施することにより、 フィ レツ ト温度はウェブ温度あるいはフランジ温度により漸近し、 断面部以 内のミクロ組織偏差はさらに縮小される。 なお、 圧延パス間に実施 されるフランジ水冷は、 フランジ部の表面温度が水冷直後で 7 5 0 °C以下に冷却し、 鋼材表面が復熱する過程で圧延する方法がミクロ 組織の細粒化に効果的であり、 この方法を少なく とも 1回のみなら ず複数回実施する とさらに細粒化効果が発揮される。 加えて、 この 水冷によ りフランジ表層部から内部にかけて温度勾配が付与され、 水冷のない場合と比較して圧延による内部への加工浸透が増し、 板 厚内部の細粒化を補助する効果も付与される。
この水冷と復熱圧延の繰り返し数は被圧延材の厚み、 例えばフラ ンジ厚みに応じ、 厚みの大きい場合には複数回行なう。 ここでフラ ンジ表層部の温度を 7 5 0 °C以下に限定し冷却する理由は単に被圧 延材の温度を低下させるだけでなく、 表層部の焼入れ硬化を抑制す
る作用を発揮させる効果を取り入れるために行なう。 すなわち、 水 冷によ りー且オーステナイ ト→フェライ ト変態温度 (A r 3 温度) 以下にしてフェライ ト変態させ、 オーステナイ ト +フェライ トのニ 相域圧延プロセス、 および次の圧延パスまでに復熱昇温し変態した フェライ トを再びオーステナイ トへの逆変態プロセスを経ることに より、 表層部ミクロ組織が細粒化し、 焼入れ性を著しく低減でき、 圧延後に加速冷却した場合でも表層部の焼入れ硬化を防止できる。
また、 圧延終了後に引き続きフランジ部を 0 . 5〜 1 0 °C / s の 冷却速度で冷却し終了すると したのは、 加速冷却によ り フェライ ト の粒成長を抑制させ断面各部位でミク口組織を細粒のまま均一にす るためと、 パーライ ト耝織比率を増加させ低合金で目標の強度を得 るためである。 実施例
以下に本発明を実施例に基づいて説明する。
<実施例 1 >
試作鋼は転炉で溶製し、 連続铸造法によ り 2 4 0〜 3 0 0 m m厚 スラブ铸片に铸造した鋼片を加熱後、 H形鋼に圧延した。
熱間圧延条件と しては、 基本的に孔型圧延によるブレークダウン 工程、 エッジヤー圧延機とユニバーサル圧延機から構成される中間 ユニバーサル圧延機群による中間圧延工程、 ユニバーサル圧延機に よる仕上げ圧延工程によ り構成される H形鋼製造方法を採用する。 なお、 この方法の中には H型鋼のウェブ高を制御するスキューロー ル圧延工程が加えられた場合も含まれている。
この圧延製造方法において、 ブレークダウン工程で孔底中央に突 起を有し、 孔底幅の異なる孔型を複数配置した圧延ロールで鋼片の 幅方向に圧延加工することにより適正なフランジ幅およびウェブ高
さまで成形する。 続いて、 中間圧延工程においてエッジヤー圧延機 でフランジ幅をユニバーサル圧延機でウェブ厚、 フランジ厚の成形 を行う。 更に仕上げ圧延機で所定の H形鋼サイズに成形する。
これに対し従来は、 ブレークダウン工程において前述の圧延加工 の後、 平パス圧延と称する孔型によるウェブの単独圧延工程を経て いたが、 ウェブの単独圧延に伴う ウェブ厚みの早い段階での減少に より、 以降の工程でのウェブ温度降下が顕著となり、 他の部位と比 較して低温域での圧延加工を余儀なく されていた。 また、 中間圧延 工程ではユニバーサル圧延機での 1パス当たりの圧下率が比較的小 さいために圧延製造に要する時間が延び、 その分だけ部位による温 度偏差が拡大することにより圧延温度履歴に差異が生じる原因とな つていた。
本実施例では、 ブレークダウン工程における平パス圧延の廃止、 中間圧延工程での大圧下圧延による圧延製造所要時間の短縮によ り ミク口組織の均一化および引張強度、 降伏強度等の機械特性の均一 化を実現した。 例えば、 ウェブ厚 : 9 m m、 フランジ厚 : 1 2 mm 、 ウェブ高さ : 5 0 0 mm、 フランジ幅 : 2 0 0 mmの H形鋼から 、 ウェブ厚 : 4 0 mm、 フランジ厚 : 6 0 mm、 ウェブ高さ : 5 0 0 mm、 フランジ幅 : 5 0 0 mmの大型 H形鋼を上述のプロセスで 製造した場合、 表 1 に示すミクロ組織が得られた。 なお、 断面内で 強度が均一化する本発明の機械特性は、 上述したサイズのみならず 、 例えば、 ウェブ厚 : 4 0 mm、 フランジ厚 : 6 0 mm、 ウェブ高 さ : 5 0 0 mm、 フランジ幅 : 5 0 0 mm等の厚肉 H形鋼や、 ゥェ ブ厚 : 1 9 mm、 フランジ厚 : 3 7 mm、 ウェブ高さ : 3 0 0 mm 、 フランジ幅 : 9 0 0 mm等の大型 H形鋼においても同様にして得 られる。
このよ う にして製造された H形鋼の機械的特性は、 図 1に示すフ
ランジ 2の板厚 t 2の中心部 ( 1 / 2 t 2 ) でフランジ幅全長 (B ) の 1ノ4、 1Z2幅 (1/ 4 B、 1 / 2 B ) およびウェブ 3の板 厚中心部でウェブ高さの 1 / 2 Hから試験片を採取して求めた。 な お、 1 Z 4 Bは 1 4フランジ部、 1 / 2 Bはフィ レッ ト部或いは 1 / 2 フランジ部、 1 Z 2 Hは 1 / 2ウェブ部と称する部位に相当 する。 これらの各部位の特性を求めたのは、 フランジ 1 / 4部 ( 1 / 4 B ) とフィ レッ ト部 ( 1 / 2 B ) は H形鋼フランジ部の特性を 代表できると したためである。 なお、 測定は何れも C断面で行った 表 1は、 試作鋼のフランジ 1 / 4部、 フィ レッ ト部、 1Z2ゥェ ブ部のミクロ組織中のフェライ ト粒径平均値、 パーライ ト分率平均 値の測定結果およびフランジ 1 / 4部、 フィ レッ ト部 2部位間、 お よびフランジ 1ノ 4部、 1 / 2ウェブ部 2部位間の比率を示す。 製 造段階において本発明鋼のフェライ ト粒径平均値、 パーライ ト分率 平均値が本発明で規定した範囲内で分布する一方、 従来鋼 (比較鋼 ) では、 本発明鋼で規定した範囲を満足せず、 そのため所望の強度 、 靱性に達していない。 なお、 ミクロ組織観察からのフヱライ ト粒 径平均値、 パーライ ト分率平均値の測定方法はと くに限定しないが 、 少なく とも光学顕微鏡で観察可能であり、 平均値を求めるに当た り観察部位において局所的なパラツキが十分に小さいと判断される 視野 : 約 0 . 4111111 約 0 . 4 mm以上の領域から測定することが 望ましい。
〔表 1〕 発明鋼および従来鋼 (比較鋼) のフラ ンジ部ミ クロ組織測定結果
'1: ( (フ^ット部 1/4フランジ部)- 1)*100(%)または((1/2ゥ:ブ部 Z1/4フランジ部) - υ*ιοο(%)
〔表 1のつづき〕 発明鋼および従来鋼 (比較鋼) のフランジ部ミ クロ組織測定結果
'1: ((フィ hト部 Z1/4フランジ部) -1)*100(%)または((1/2ゥ ブ部ノ 1/4フランジ部) -1 100(%) ぐ実施例 2 >
実施例 1 において記载した圧延方法において、 中間圧延工程での 大圧下圧延の圧延率を 2 0 %以上と し、 更に下記の圧延温度条件お よび圧延パス間 · 圧延後冷却条件を表 2に示すよ うに適宜組み合わ せることによ り、 1 / 4フランジ部、 フィ レッ ト部および 1 Z 2 ゥ エブ部の 3点において均一なミ ク ロ組織を有する H形鋼を製造する
ことが可能であるこ とが明らかとなった。
• 圧延仕上温度が 1 Z 4フランジ部、 フィ レ ッ ト部および 1 Z2ゥ エブ部の 3点間で 5 0 °C以内
• 1 Z 4 F部、 フィ レツ ト部および 1 Z 2 W部 3点の圧延仕上温度 が 6 5 0 °C以上 8 6 0 °C以下 ;
. 9 5 0 °C以下での総圧下率がフランジ部、 ウェブ部いずれも 6 0 %以上 (ただし、 N bが添加された場合のみに限定)
- パス間でフランジを水冷し表層部の温度を 7 5 0 °C以下に冷却し 、 パス間の復熱過程で圧延
• 圧延終了後に 5 0 0 °Cまでの水冷による加速冷却で平均冷却速度 が 0. 5〜: L 0 °C / s
なお、 表 1 中の本発明鋼における製造条件の組合せは表 2に示す通 りである。
表 2
図 1中 大圧下パス 水冷パス 圧延 仕上敵差 950 C以下 圧延後 炭素当量 フェライト *5 パーライト *5 大区分 1 0. l DiHiS.
部位 回数 (回) * 1 回数 (回) * 2仕上離 最大値 総圧下率 艇 (°C ) * 3 (%)* 4 平嫩径 取大1 分率 最大偏差 発明鋼 1 1/4フランジ 1/4F フランジ: 0 0 879 37 (60%未満) (自舰冷) 0.36 0.000% 10.5 12.4% 18.8% 1.6% フィレツ卜 1/2F 900 (60%未満) 11.8 -2.9% 17.6% -6.4%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 0 863 (60%未満) 10.2 19. 1%
2 1/4フランジ 1/4F フランジ: 3 0 910 31 (60%未満) (自纖冷) 0.30 0. 000% 11.8 4.2% 14.8% 2.0% フィレツト 1/2F 922 (60%未満) 12.3 - 5.1% 15. 1% -3.4%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 3 891 (60%未満) 11.2 14.3%
3 1/4フランジ 1/4F フランジ: 3 0 886 25 84.6 (自髓冷) 0.36 0.014% 6.3 8.6% 20. 1% 5.0% フィレツ卜 1/2F 911 62.6 6.8 -1. % 21. 1% 0.0%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 3 889 68.5 6.2 20.5%
4 1/4フランジ 1/4F フランジ: 3 0 845 20 80.0 (自餘冷) 0.38 0.010% 8.7 11.5% 19.6% 1.5% ブイレツト 1/2F 853 59.8 9.7 - 10.3% 19.9% - 2.0%
1/2ウェブ 1/2W ゥェプ :4 833 66. 1 7.8 19.2%
5 1/4フランジ 1/4F フランジ: 2 0 799 22 76.0 (白餘冷) 0.38 0.009% 6.4 3. 1% 19. 9% 1. 0% t
00 フィレツ卜 1/2F 812 63.4 6.6 - 1.6% 19.5% -2.0%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 2 790 70.4 6.3 20. 1%
6 1/4フランジ 1/4F フ ンジ: 3 2 884 17 (60%未満) (自餓冷) 0.29 0.000% 8.8 11. % 15. 1% 1.3% フィレツト 1/2F 901 (60%未満) 9.8 0.0% 15.3% -3.3%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 2 887 (60%未満) 8.8 14.6%
7 1/4フランジ 1/4F ラン、、5: 3 2 862 28 84.6 (自纖冷) 0.38 0.014% 6.5 0.0% 20.0% 4.5% フィレツ卜 1/2F 887 62.6 6.5 -3. 1% 20.9% -1.0%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 3 859 68.5 6.3 19.8%
8 1/4フランジ 1/4F 0 834 35 (60%未満) (自纖冷) 0.29 0.000% 8.3 9.6% 15. 1% 2.6% フィレツ卜 1/2F 852 (60%未満) 9. 1 - 4.8% 15.5% -1.3%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 3 817 (60%未満) 7.9 14. 9%
9 1/4フランジ 1/4F 4 807 27 (60%未満) (自髓冷) 0.32 0.000% 8.6 3.5% 15.2% 1.3% フィレツ卜 1/2F 820 (60%未満) 8.9 -5.8% 15. % - 1.3%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 1 793 (60%未満) 8.1 15.0%
10 1/4フランジ 1/4F 4 796 33 80.0 (自餘冷) 0.36 0.010% 6.3 8.6% 18.6% 1. 1% フィレツ卜 1/2F 807 61.0 6.8 -1. % 18.8% -3.8%
1/2ウェブ 1/2W ゥ ブ:4 774 66. 1 6.2 17.9%
2 のつづ
*l ir 図 1中 大圧下パス 水冷パス 圧延 仕上 SS¾ 950°C以下 圧延後御 炭素当 フェライト *5 パーライト *5 部位 回数 (回) * 1 回数 (回) * 2仕上赚 最大値 総圧下率 & C/sT 3 (%)* 4 平均粒径 最大偏差 分率 最大偏差 発明銅 11 1/4フランジ 1/4F フランジ: 3 0 901 36 (60%未満) 1.8 0.36 0.000% 10.1 6.9% 16.1% 6.8% フィレツト 1/2F 934 (60%未満) 1.6 10.8 -4.0% 17.2% -1.9%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 3 898 (60%未満) 1.8 9.7 15.8%
12 1/4フランジ 1/ F フランジ: 3 0 887 33 84.6 0.9 0.38 0. 011% 9.9 9. 1% 18.4% 6.0% フィレツ卜 1/2F 902 62.6 0.8 10.8 -1.0% 19.5% -4.9%
1/2ウ^:プ 1/2W ウェブ: 3 869 68.5 0.9 9.8 17.5%
13 1/4フランジ 1/4F フランジ: 3 0 842 24 (60%未満) 1.8 0.28 0.000% 8.9 3. % 15. 1% 2.6% ブイレツト 1/2F 855 (60%未満) 1.6 9.2 -2.2% 15.5% -5.3%
1/2ウェブ 1/2 ウェブ: 3 831 (60%未満) 1.8 8.7 14.3%
14 1/4フランジ 1/4F フランジ: 3 0 831 11 80.0 1.5 0.36 0.010% 6.3 8.6% 19.0% 1.6% ブイレツト 1/2F 842 61.0 1.2 6.8 -1.4% 19.3% -3.7%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 4 841 66.1 1.6 6.2 18.3%
15 1/4フランジ 1/4F フラン、 :2 2 863 38 (60%未満) 1.6 0.29 0.000% & 2 4. 9% 15.3% 5. 9%
D
フィレツト 1/2F 872 (60%未満) 1.4 8. 6 -3.7% 16.2% -5.2%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 2 834 (60%未満) 1.7 7.9 14.5%
16 1/4フランジ 1/4F マラン、、: 5:2 1 877 24 84.6 1.4 0.38 0.014% 9.1 3.3% 17.8% 6.7% フィレツト 1/2F 889 62.6 1.3 9.4 -3.3% 19.0% -7.9%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 3 865 68.5 1.6 8.8 16. %
17 1/4フランジ 1/4F フランジ 4 796 41 (60%未満) 3.1 0.30 0.000% 7.7 0.0% 14.6% 0.7% フィレツト 1/2F 815 (60%未満) 2. 7 7. 6 -2.6% 14.7% -3.4%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 1 774 (60%未満) 3.2 7.5 14.1%
18 1/4フランジ 1/4F 2 804 23 78.0 0.9 0.38 0.010% 8. 7 11.5% 18.2% 3.3% フィレツ卜 1/2F 820 (60%未満) 0.8 9.7 -10.3% 18.8% - 1. 1%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 4 797 64.0 0.9 7.8 1& 0%
19 1/4フランジ 1/4F 4 796 27 84.6 3.4 0.36 0.014% 6.3 8.6% 18.5% 0.0% フィレツ卜 1/2F 801 62.6 3.2 6.8 -1.4% 18.5% -2.2%
1/2ウェブ 1/2 ウェブ: 3 774 68.5 3.6 6.2 18. 1%
20 1/4フランジ 1/4F 0 807 37 80.0 (自餘冷) 0.34 0.010% 8.7 11.5% 18.9% 5.9% フィレツ卜 1/2F 820 (60%未満) 9. 7 -10.3% 18. 7% - 1. 1%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 0 783 66.1 7.8 20.0%
表 2 のつづき
図 1中 大圧下パス 水冷パス 圧延 仕上?
WO. as¾ 950。C以下 圧延後;^] 炭素当量 フェライ卜 *5 パーライト *5 部位 回数 (回) * 1 回数 (回) * 2仕上? £g 最大値 総圧下率 itS(°C/s)* 3 (%)* 4 平均粒径 取大 分率 最大偏差 発明鋼 21 1/4フランジ 1/4F フランジ: 0 0 796 41 84.6 (自麵冷) 0.36 0.010% 6.3 8.6% 20.1% 0.0% フィレツ卜 1/2F 815 62.6 6.8 -1. % 18.9% -6.0%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 0 774 68.5 6.2 20.0%
22 1/4フランジ 1/4F フランジ: 0 1 866 44 84.6 (自纖冷) 0.35 0.011% 8.4 8.3% 18. 1% 7.2% フィレツ卜 1/2F 876 62.6 9. 1 -11.9% 19.4% -3.3%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 0 832 68.5 7.4 17.5%
23 1/4フランジ 1/4F フランジ: 0 1 874 39 84.6 (自纖冷) 0.35 0.011% 8.4 9.5% 18. % 4.9% フィレツ卜 1/2F 886 62.6 9.2 -6.0% 19.3% -2. 7%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 0 847 68.5 7.9 17.9%
24 1/4フランジ 1/4F フランジ: 0 0 881 38 84.6 0.9 0.36 0.014% 8.8 9. 1% 17.9% 5.6% フィレツト 1/2F 895 62.6 0.8 9.6 -5.7% 18. 9% - 45%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 0 857 68.5 0.9 8.3 17. 1%
25 1/4フランジ 1/4F :7ランジ: 0 0 880 30 80.0 1.5 0.36 0. 025% 8.5 0. 0% 17.6% 5.7% フィレット 1/2F 891 61.0 1.3 8.2 -7.1% 18.6% -3. %
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 0 861 €6.1 1.7 7.9 17.0%
26 1/4フランジ 1/4F フランジ: 0 4 841 29 80.0 1.4 0.32 0.020% 8.4 1.2% 14.1% 7.8% フィレツ卜 1/2F 849 61.0 1.3 8.5 -11.9% 15.2% -2.1%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 0 812 66. 1 1.6 7. 4 13.8%
27 1/4フランジ 1/4F :7ランジ: 0 4 822 27 80.0 3.3 0.32 0.020% 7.8 5. 1% 12.9% 2.3% フィレツト 1/2F 829 61.0 3.2 8.2 -6. % 13.2% -2.3%
1/2ウェブ l/2ff ウェブ: 0 802 66. 1 3.5 7.3 12.6%
28 1/4フランジ 1/4F 0 830 42 (60%未満) (自餓冷) 0.38 0.000% 8. 1 9.9% 20.6% 3.9% フィレツ卜 1/2F 854 (60%未満) & 9 - 3.7% 19.9% - 3.4%
1/2ウェブ 1/2W ゥェプ :0 812 (60%未満) 7.8 21. %
29 1/4フランジ 1/4F 0 795 14 (60%未満) (自纖冷) 0.39 0.000% 6.5 0.0% 21. 1% 0.5% フィレツ卜 1/2F 800 (60%未満) 6.5 -3.1% 20.5% -2.8%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 0 786 (60%未満) 6.3 21.2%
30 1/4フランジ 1/4F 2 829 29 (60%未満) (自餘冷) 0.32 0.000% 6.8 4.4% 13. 1% 7.6% フィレツ卜 1/2F 838 (60%未満) 7. 1 -10.3% 14.1% -3.8%
1/2ウェブ 1/2W ウェブ: 0 809 (60%未満) 6.1 12.6%
2のつづき
表 2のつづ
大区分
比翻
C
1 : 950 1100°Cの間で 1パスあた り の圧下率が 20%以上の圧延パス回数
2: フ ラ ンジ水冷によ り表層部の温度を 750°C以下まで冷却するパス回数
3: 800 500°Cまでの平均冷却速度 (水冷による加速冷却の場合のみ記载)
4: 炭素当量 = C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
5: 偏差 = ((フィ レツ ト部/ 1/4フラ ンジ部)- 1) X100(% ) または = ((フィ レツ ト部/ 1/2ゥ ブ部)- 1) Χ 100(% )
<実施例 3 >
実施例 1 と同様の方法によ り製造した H形鋼の機械特性を表 3に 示した。
表 3は、 試作鋼のフランジ 1 / 4部、 フィ レッ ト部、 1 / 2ゥェ ブ部の降伏強度、 引張強度の測定結果およびフランジ 1 Z 4部、 フ ィ レッ ト部 2部位間、 およびフランジ 1 / 4部、 1 / 2ウェブ部 2 部位間の比率を示す。 製造段階において本発明鋼の降伏強度、 引張 強度が本発明で規定した範囲内で分布する一方、 従来鋼 (比較鋼) では、 本発明鋼で規定した範囲を満足せず、 そのため所望の強度、 靱性に達していない。 なお、 引張強度、 降伏強度を測定するための 引張試験片のサイズは特に限定しないが、 少なく とも J I S規格お よび J I S規格に準拠した方法で行う ことが望ましい。
〔表 3〕発明鋼および ¾έ¾| (比較鋼) の Η形鋼断面各部位の霞特性
"1:炭素当量 =C+Si/24+ n/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
*2: ((フィレ ト部 /1/4フランジ部 )-1 100(%)または ((1/2ウェブ部 /1/4フランジ部 H 00W) 注) 降伏嫉比率および引張弓艘比率が ±5%以内、 降伏 I t匕率が ±3%以内のデータを灰色で塗り つぶした
〔表 3のつづき〕 発明鋼および (比較鋼) の Η形鋼断面各部位の機械榭生
当量 =C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/U
*2: ( (7ィ ト部 /1/47ランジ部 H) *100 )または ( (1/2ゥュブ部 /1/4フランジ部) -1) '100(%)
注) 降伏 比率および引張赚比率が ±5%以内、 降伏 itfc匕率が ±3%以内のデータを灰色で塗り つぶした 産業上の利用可能性
以上述べたように、 本発明は H形鋼の各部位においてミク ロ組織 格差が小さく 、 H形鋼断面内で均一な機械的特性を有する H形鋼の
提供が可能になる