明 細 書
(R) -N- ( 1—ェチル一 1 H—へキサヒ ドロアゼピン— 3—ィル) — 6—メ 卜キシ— 1 H—ベンゾト リァゾールー 5—カルボキサミ ド 1フマル酸塩 1水和物 及びその製造方法 技術分野
本発明は、 優れた制吐作用と消化管機能亢進作用を併有し消化管機能改善薬と して有用であり、 且つ医薬原末として工業的に安定して供給することができる (R) - N - ( 1—ェチルー 1 H—へキサヒ ドロアゼピン一 3—ィル) 一 6—メ トキシ— 1 H—ベンゾト リァゾール— 5—カルボキサミ ド · 1フマル酸塩 · 1水 和物並びにその製造方法に関する。 背景技術
特開平 8— 2 0 8 6 4 3号公報 (パテン トフア ミ リー : WO 9 6Z1 6 0 5 9) には、 優れた制吐作用と消化管機能亢進作用を併有し消化管機能改善薬と して有 用な下記式 ( l a)
で表される (R) — N— ( 1—ェチル一 1 H—へキサヒ ドロアゼピン— 3—ィ ル) — 6—メ トキシ _ 1 H—べンゾト リァゾールー 5—カルボキサミ ド及びその 生理的に許容される酸付加塩並びにその製造方法が開示されている。
上記特許公報には、 式 ( I a) の化合物をフマル酸で処理して 3Z2フマル酸 塩を結晶として得たことが記載されている。
本発明者らは、 この式 ( I a) の化合物の 3 Z 2フマル酸塩の結晶について融
点測定、 粉末 X線回折、 熱分析等を行った結果、 式 ( I a) の化合物の 3ノ 2フ マル酸塩には結晶多形が存在し、 該フマル酸塩を工業的に大量に合成しょうとす ると、 製造ロッ ト間でこれらの結晶多形が混在することがあり、 特定の結晶形の 原体を工業的に安定供給するには必ずしも満足できるものではないことが判明し た。
そこで、 本発明者らは、 式 ( I a) の化合物の結晶多形を生じない安定な形態 の塩を得るべく、 一つの試みとして、 式 ( I a) の化合物をエタノールのような アルコール系溶媒を用い 1フマル酸塩を形成させる目的でほぼ等モル量のフマル 酸で処理したところ、 意図した式 ( I a) の化合物の 1フマル酸塩は得られず、 式 ( I a) の化合物の 1フマル酸塩 'アルコール系溶媒和物の結晶が得られるの みであつた。
式 ( I a) の化合物の 1フマル酸塩 'アルコール系溶媒和物の結晶は吸湿性を 示し、 本発明者らは、 この吸湿性について詳細に検討したところ、 式 ( I a) の 化合物の 1フマル酸塩 ·アルコール系溶媒和物の結晶を高湿度の雰囲気に曝すと、 意外なことに、 該アルコール系溶媒和の結晶中に含まれるアルコール系溶媒が水 と徐々に置換して、 最終的に式 ( l a) の化合物の 1フマル酸塩 · 1水和物の結 晶に変化することが判明した。 しかも得られた 1フマル酸塩 · 1水和物は多形を 形成せず、 吸湿性もなく、 物理的に極めて安定であることがわかり、 医薬原末と して工業的に安定供給することができることを見い出した。 発明の開示
かく して、 本発明によれば、 下記式 ( I )
で表される (R) -N- ( 1ーェチルー 1 H—へキサヒ ドロアゼピン一 3—ィ ル) 一 6—メ トキシ一 1 H—ベンゾ卜リァゾール一 5—カルボキサミ ド ' 1フマ ル酸塩 · 1水和物が提供される。
また、 本発明によれば、 (R) -N- ( 1一ェチル _ 1 H—へキサヒ ドロアゼ ピン一 3 _ィル) 一 6—メ トキシ一 1 H—べンゾト リァゾ一ルー 5—力ルポキサ ミ ド . 1フマル酸塩のアルコール系溶媒和物を、 50 °C以下の温度において、 相 対湿度が 60 %以上の雰囲気と接触させることを特徴とする (R) -N- ( 1 - ェチル一 1 H—へキサヒ ドロアゼピン一 3—ィル) 一 6—メ トキシー 1 H—ベン ゾ卜 リァゾールー 5—カルボキサミ ド · 1フマル酸塩 · 1水和物の製造方法が提 供される。
以下、 本発明の式 ( I ) の化合物の製造方法及び該化合物の特性についてさら に詳細に説明する。 発明の実施の形態
式 ( I ) の化合物の製造に際して原料と して使用される (R) -N- ( 1—ェ チル一 1 H—へキサヒ ドロアゼピン一 3—ィル) 一 6—メ トキシ一 1 H—ベンゾ ト リァゾ一ル— 5—カルボキサミ ド ' 1フマル酸塩のアルコール系溶媒和物は、 例えば、 次のようにして製造することができる。
下記式 ( l a)
で表される (R) —N— ( 1—ェチルー 1 H—へキサヒ ドロアゼピン一 3—ィ ル) — 6—メ トキシ— 1 H—ベンゾト リァゾールー 5—カルボキサミ ドを適当量 のアルコール系溶媒に溶解し、 これにほぼ等モル量のフマル酸を加えて加熱溶解
した後、 冷却すると、 上記式 ( l a ) の化合物の 1 フマル酸塩のアルコール系溶 媒和物 (以下、 単に 「溶媒和物」 と称することもある) の結晶が析出する。 この 結晶を回収した後、 約 5 0 °C以下の温度で十分に乾燥する (工程 1 ) 。
次いで、 かく して得られる溶媒和物の結晶を高湿度の雰囲気と接触させると、 その溶媒和物がその 1水和物に変換され、 最終的に、 本発明の下記式 ( I )
H00C '-"L■' H,0
COOH
で表される (R ) — N— ( 1 —ェチル— 1 H—へキサヒ ドロアゼピン一 3—ィ ル) _ 6—メ トキシー 1 H—べンゾト リアゾール— 5—カルボキサミ ド · 1 フマ ル酸塩 · 1水和物 (以下、 単に 「 1水和物」 と称することもある) を得ることが できる (工程 2 ) 。
上記工程 1及び 2について以下に詳しく説明する。
工程 1 :式 ( I a ) の化合物 · 1 フマル酸塩の溶媒和物の製造
本工程は、 式 ( I a ) の化合物を適当なアルコール系溶媒に溶かし、 これにほ ぼ等モル量のフマル酸を加えて 1 フマル酸塩を形成させることにより行われる。 式 ( I a ) の化合物の 1 フマル酸塩の形成に用いられるアルコール系溶媒の具 体例としては、 メタノール, エタノール, プロパノール, イソプロパノール等が 挙げられ、 これらの溶媒はそれぞれ単独で或いは 2種以上混合して用いることが できる。 好ましい溶媒は、 メタノールとイソプロパノールとの混台溶媒又はエタ ノールである力 <、 特にエタノールが好ま しい。 従って、 本工程で生成される溶媒 和物としてはエタノール和物が最も好ましい。
また、 これらのアルコール系溶媒に他の溶媒が含まれていても、 もしそれがァ ルコール系溶媒和物の生成を実質的に妨げないものである限り、 他の溶媒の存在
は許容される。
式 ( I a) の化合物の 1フマル酸塩を形成させるのに必要な溶媒量は、 通常、 式 ( I a) の化合物や加えるフマル酸が溶けるのに十分な量であるが、 結晶の生 成量を多くするためには、 式 ( I a) の化合物及びフマル酸が溶ける必要最小限 の量が好ましい。
1フマル酸塩を形成するのに必要なフマル酸量としては、 通常、 式 ( I a) の 化合物 1モルに対し、 約 1モルのフマル酸が好適であるが、 約 0.8 〜約 1.2 モル 当量の範囲内で用いることも可能である。
式 ( I a) の化合物はアルコール系溶媒に室温でも容易に溶解するが、 その溶 液中へのフマル酸の溶解は、 通常、 該溶液を約 4 5〜約 8 0°C、 好ましくは約 5 0〜約 8 0 °C、 特に好ましくは約 6 0〜約 8 0 °Cの温度に加熱することによつ て行われる。
フマル酸を加熱溶解した溶液は約 4 0 °C以下の温度まで冷却する。 好ましくは 室温付近 (約 1 0〜約 3 0 °C) の温度になるまで放冷すると、 式 ( I a) の化合 物の 1フマル酸塩 ·アルコール系溶媒和物の結晶が析出してくる。
結晶の析出量を多くするためには、 通常、 約 2 4時間以上放置することが望ま しい。
析出する結晶は、 濾過などの方法により回収し、 約 5 0°C以下の温度で十分乾 燥させて付着溶媒を除去する。
工程 2 : 1水和物への変換
式 ( I a) の化合物, 1フマル酸塩の溶媒和物をその 1水和物に変換する方法 としては、 処理すべき溶媒和物が少量の場合には、 加湿条件下の密閉容器を使用 する方法、 例えば、 デシケータ一を使用する方法が挙げられるが、 大量の結晶を 処理する場合は、 高湿度の空気を常時送風できる装置内で行う方法が好ましい。
1水和物形成のための高湿度の雰囲気としては、 通常、 相対湿度が約 6 0%以 上の雰囲気であればよく、 相対湿度が約 7 0 %〜約 9 0 %、 殊に 7 0 %〜約 8 5 %が好ましい。 また、 雰囲気温度は、 通常、 5 0 °C以下とすることができ、 約 1 0°C〜約 5 0°Cが好ましく、 さらに約 1 5°C〜約 4 5°Cが好ましい。 特に好まし い温度は約 2 0°C〜約 4 0°Cである。
1水和物形成に必要な時間は、 接触する雰囲気の湿度と温度に依存し、 例えば、 湿度が高い条件では 1水和物の形成が速くなり、 反対に湿度が低い条件では 1水 和物の形成が遅くなるので、 一律に決めることはできないが、 1 H— N M Rゃガ スクロマ トグラフィー等により、 結晶中のエタノールの消失を追跡することによ り、 所定の雰囲気条件 (温度及び湿度) に最適の接触時間を決定することができ る。 通常、 その時間は溶媒和物の量が少量の場合に少なく とも数時間であり、 大 量の場合には少なく とも 1 日以上、 好ましく は 3 日以上である。 相対湿度が 8 5 %以上の雰囲気と接触させる場合には、 さらに短時間で 1水和物を形成させるこ とができるが、 その場合には 1水和物の形成が完了した後、 結晶に水が余分に付 着することがあるので、 このような場合には付着水を取り除く操作により、 目的 の 1水和物を得ることができる。 また、 溶媒和物を大量に用いる場合には、 溶媒 和物の結晶をかき混ぜることによつても 1水和物を形成させる時間を短縮するこ とができる。
1水和物形成の完了は熱分析により確認することができ、 その水分含量は力一 ルフィ ッシャー法により定量することができる。
上記製造法において、 例えば、 1 フマル酸塩形成において溶媒としてエタノー ルを用いた場合、 中間体として得られるエタノール和物は、 通常、 約 5重量%の エタノールを含有しており、 これは式 ( l a ) の化合物 · 1 フマル酸塩の約 1 / 2エタノール和物に相当する。
本発明の製造方法によれば、 上記工程 1及び工程 2のいずれの工程も大規模で 行うことができ、 殊に工程 2の 1水和物への変換工程は、 溶媒和物の結晶を高湿 度の条件下におくだけで容易に 1水和物への変換が行われるので、 式 ( I ) の化 合物の工業的な規模での大量生産に特に適している。
工程 1 において出発原料と して用いられる式 ( l a ) の化合物はそれ自体は既 知のものであり、 例えば、 特開平 8 - 2 0 8 6 4 3号公報 (パテン トファ ミ リ - : W O 9 6 / 1 6 0 5 9 ) に記載の方法に従い、 下記反応式 1に示される方法 により製造することができる。 その反応の詳細については後記実施例 1 ( 1 ) 及 び ( 2 ) 参照のこと。
反応式 1
CH3OH
(la) 式 ( I ) の化合物 (即ち、 1水和物) 及び式 ( l a) の化合物の 3/2フマル 酸塩について安定性試験の結果を示し、 本発明の式 ( I ) の化合物の優れた物理 化学的安定性を立証する。
試験化合物
式 ( I ) の化合物: (R) -N- ( 1一ェチル— 1 H—へキサヒ ドロアゼピン 一 3—ィル) 一 6—メ トキシ— 1 H—べンゾト リァゾ一ル— 5—力ルポキサミ ド • 1 フマル酸塩 · 1水和物
化合物 A : (R) — N— ( 1—ェチル— 1 H—へキサヒ ドロアゼピン— 3—ィ ル) 一 6—メ トキシー 1 H—ベンゾト リアゾ一ルー 5—カルボキサミ ド · 3Z2 フマル酸塩 (融点 1 3 1 ~ 1 3 3 °C)
試験例 1 :湿度に対する安定性試験
試験化合物 100 mg をはかり瓶 ( J P乾燥減量試験法) に入れ、 2 0°Cで相対 湿度 0〜8 1 %の条件のデシケーター中で保存し、 経時的に重量を測定し、 試験 開始時に対する重量変化率を求めた。 試験化合物の 1力月後の重量変化を表 1に 示す。 なお、 2 0 °Cで相対湿度 0 %は塩化カルシウムで、 1 5%から 8 1 %は表 2に示す化合物で飽和塩溶液を作成し、 調湿した。
表 1 :湿度に対する安定性
相対湿度
( % ) 式 ( I ) の化合物 化合物 A
U 0 一 0 . 6 7
1 ϋ U . U ύ 0 . 8 4
2 0 0 . 2 2 1 . 1 7
3 2 . 3 0 . 1 9 0 . 2 2
4 5 0 . 1 8 0 . 5 9
5 2 0 . 0 9 0 . 3 0
6 6 0 . 0 9 0 . 2 7
7 6 0 . 1 4 1 . 0 0
8 1 0 . 1 9 0 . 6 9
表 2
表 1 に示すように、 化合物 Aは、 相対湿度 1 5 2 0 %で約 1 %の重量増加が、 そして相対湿度 7 6 8 1 %で 1 %近い重量増加が認められた。 一方、 式 ( I ) の化合物は、 相対湿度 0 8 1 %の全範囲で重量増加が 0. 3 %以下であり、 ほと んど重量変化がみられず、 湿度に対して安定であった。
試験例 2 :熱に対する安定性試験
試験化合物約 1 mgを精密に抨量し、 無色ガラスアンプルに入れ、 密封し、 5 0 °Cの恒温器中で 3 0日間保存し、 高速液体クロマトグラフィーで試験化合物の残 存率の測定を行った。 その結果を表 3に示す。 表 3 :熱に対する安定性 ( 5 0 °C )
表 3に示すように、 式 ( I ) の化合物及び化合物 Aはいずれも残存率に変化が みられず、 熱に対して安定であった。
試験例 3 :光に対する安定性試験
試験化合物約 1 mgを精密に秤量し、 無色ガラスアンプルに入れ、 密封し、 北向 きの窓際でガラス越しの室内 (室温 2 3 °C ~ 3 0 °C ) に放置し、 高速液体クロマ トグラフィ一で経時的に試験化合物の残存率の測定を行った。 その結果を表 4に 示す。
光に対する安定性
¾ 4 残存率 (%) 日数 式 ( I ) の化合物 化合物 A
0 1 0 0 1 0 0
1 0 1 0 0 9 6 . 2
2 0 1 0 0 9 5 . 7
3 0 9 9 . 4 9 3 . 8
表 4に示すように、 化合物 Aでは 3 0日後の残存率に 6. 2 %の減少がみられ、 光に対してやや不安定であった。 一方、 式 ( I ) の化合物では 3 0日後において も残存率がほとんど変化せず、 光に対して極めて安定であった。
上記の安定性試験の結果から明らかなように、 本発明の 1水和物、 即ち、 式 ( I ) の化合物は湿度、 熱、 及び光のいずれに対しても安定である。 また、 本発 明の 1水和物は、 化合物 Aと比較して、 湿度及び光に対して明らかに安定である c 従って、 本発明の 1水和物は、 化合物 Aに比べ、 種々の製剤化における原体とし て遙に適している。
式 ( I ) の化合物 (即ち、 1水和物) の薬理試験の結果を示せば、 以下のとお りである。
薬理試験例 1 : アポモルヒネ誘発嘔吐に対する抑制作用
1群 4匹のビーグル犬 (体重 8〜 kg)を用い、 Chenと Ensor の方法 〔J.
Pharmaco l. Exp. Ther. , 98, 245-250 (1950)参照〕 に準じて、 アポモルヒネによ り誘発される嘔吐に対する試験化合物の抑制作用を検討した。 0. 5 %トラガント 溶液に溶解又は懸濁した所定用量の試験化合物を経口投与し、 2時間後に塩酸ァ ポモルヒネ (0. 3 mg/kg)を皮下に注射し、 その後 1時間にわたって嘔吐回数を測 定した。 試験化合物投与群の嘔吐回数を対照群のそれと比較して抑制率を算出し た。
式 ( I ) の化合物は、 化合物 Aと同様に、 1 mg/kg の投与量で 100 %の抑制率 を示した。
薬理試験例 2 : 胃排出能亢進作用
本試験は、 Scarp ignato らの方法 CArch. I nt. Pharmacodyn. , 246, 286-294 (1980)参照〕 に準じて行った。 1群 5匹のウィスター系雄性ラッ ト (体重 130 ~ 150 g)を 18時間絶食した後、 フ ノールレツ ドを 0. 05%の割合で含有する 1. 5 % メチルセルロース溶液 1. 5 mlを経口投与した。 投与 15分後に胃を摘出し、 胃内に 残存するフ ノールレツ ド量を測定した。 なお、 試験化合物は 0. 5 %トラガント 溶液に溶解又は懸濁し、 フエノールレッ ド投与の 60分前に経口投与した。 胃内残 存フエノールレツ ド量に基づいて胃排出率を算出し、 さらに対照群の胃排出率と 比較して亢進率を求めた。
式 ( I ) の化合物は、 化合物 Aと同様に、 3 mg/kg の投与量で 59%の亢進率を 示した。 式 ( I ) の化合物は上記のとおり、 化合物 Aと同等の優れた制吐作用と消化管 機能亢進作用を併有し、 消化管機能改善薬として、 各種の疾患、 治療等に伴う種 々の消化器機能異常の処置及び予防のために用いることができる。 具体的には、 急 ·慢性胃炎、 逆流性食道炎、 胃,十二指腸潰瘍、 胃神経症、 胃下垂、 術後の麻 痺性ィレウス、 老人性ィ レウス、 胃切除後症候群、 強皮症、 糖尿病、 食道 ·胆道 系疾患、 小児の周期性嘔吐症、 上気道感染症などの疾患における食欲不振、 悪心- 嘔吐、 腹部膨満感、 上腹部不快感、 腹痛、 胸やけ、 曖気等の治療及び予防に、 ま た、 過敏性腸症候群、 便秘、 乳幼児下痢症などの処置及び予防のために用いるこ とがきる。 更に、 各種抗癌剤もしくはレボド一パ製剤投与時又は放射線照射時の 悪心又は嘔吐の処置及び予防のために用いることができる。
式 ( I ) の化合物の投与経路としては、 経口投与, 非経口投与或いは直腸内投 与のいずれでもよい。 その投与量は、 投与方法、 製剤形態、 患者の症状,年齢等 により異なるが、 成人の場合、 通常、 0. 01〜10 mg/kg/ 日、 好ましくは 0. 1 〜 3 mg/kg/ 日の範囲である。
式 ( I ) の化合物は、 上記の如き医薬用途に使用する場合、 通常、 製剤用担体 と混合して調製した製剤の形で投与される。 製剤用担体としては、 製剤分野にお いて常用される物質が用いられる。 具体的には、 例えば、 乳糖, イノシトール,
ブドウ糖, マンニトール, デキス トラン. ソルビトール, シクロデキス ト リ ン, デンプン, 部分アルファ一化デンプン, 白糖, メタケイ酸アルミ ン酸マグネシゥ ム, 合成ゲイ酸アルミニウム, 結晶セルロース, カルボキシメチルセルロースナ ト リ ウム, ヒ ドロキシプロピルデンプン, カルボキシメチルセルロースカルシゥ ム, イオン交換榭脂, メチルセルロース, ゼラチン, アラビアゴム, プルラン, ヒ ドロキシプロピルセルロース, 低置換度ヒ ドロキシプロピルセルロース, ヒ ド ロキシプロピルメチルセルロース, ポリ ビニルピロリ ドン, ポリ ビニルアルコー ル, アルギン酸, アルギン酸ナトリウム, 軽質無水ゲイ酸, ステアリ ン酸マグネ シゥム, ステアリ ン酸アルミニウム, タルク, トラガント, ベントナイ ト, ビー ガム, カルボキシビ二ルポリマー, 酸化チタン, ソルビタン脂肪酸エステル, ラ ゥリル硫酸ナト リウム, グリセリ ン, 脂肪酸グリセリ ンエステル, 精製ラノ リ ン, グリセ口ゼラチン, ポリソルベー 卜, マクロゴール, 植物油, ロウ, 水, プロピ レングリコール, エタノール, 塩化ナ ト リ ウム, 水酸化ナ ト リウム, 塩酸, クェ ン酸, ベンジルアルコール, グルタ ミ ン酸, グリ シン, パラォキシ安息香酸メチ ル, パラォキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
剤型としては、 錠剤, カプセル剤, 顆粒剤, 散剤, シロップ剤, 懸濁剤, 注射 剤, パップ剤, 坐剤等が挙げられる。 これらの製剤は常法に従って調製すること ができる。 なお、 液体製剤にあっては、 用時、 水又は他の適当な媒体に溶解又は 懸濁する形のものであってもよい。 また、 錠剤, 顆粒剤は周知の方法でコーティ ングしてもよい。
式 ( I ) の化合物は、 水溶性が良好であるので、 液体製剤には特に好都合であ る。
これらの製剤は、 式 ( I ) の化合物を 0. 01%以上、 好ましく は 0. 1 〜70%の割 合で含有することができる。 これらの製剤はまた、 治療上価値ある他の成分を含 有していてもよい。
以下、 実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、 本発明はこれらの 実施例のみに限定されるものではない。 化合物の同定は、 元素分析値, マス . ス ベク トル, I Rスペク トル, N M Rスペク トル等により行った。
また、 以下の実施例において、 記載の簡略化のために次の略号を使うこともあ
る。
〔NMR〕
J :結合定数
s :一重線
d :二重線
t :三重線
q :四重線
m:多重線
DMS 0 : ジメチルスルホキシド
実施例 1
(R) — N— ( 1—ェチルー 1 H—へキサヒ ドロアゼピン— 3—ィル) 一 6— メ トキシ— 1 H—べンゾト リァゾ一ルー 5—カルボキサミ ド · 1フマル酸塩 ·ェ タノール和物の製造
( 1 ) 6—メ トキシー 1 H—べンゾト リァゾ一ルー 5—カルボン酸 100 g (0.4 3 mol)、 ト リェチルアミ ン 45 g (0.45 mol) 及び酢酸ェチル 2000 mlの懸濁液に クロル炭酸ェチル 46 g (0.42 mol) の酢酸ェチル 50 πι 溶液を内温 5 °C〜 8 °Cに 保ちながら滴下した。 氷冷下で約 2時間攪拌した後、 W09 6Z 1 6 0 5 9号公 報の実施例 1 8に記載の方法で得た (R) — 3—アミ ノー 1—ェチル— 1 H—へ キサヒ ドロアゼピン 79 g (0.56 mol) の酢酸ェチル 30 ml 溶液を内温 3°C~7°C に保ちながら滴下した。 氷冷下で約 1時間攪拌した後、 室温に昇温し、 さらに一 晚攪拌した。 反応液中の不溶物を濾去し、 濾液を飽和炭酸水素ナ トリゥム 500 ml 及び水 500 mlで洗浄した後、 無水硫酸マグネシウムで乾燥した。 溶媒を減圧で留 去して、 (R) — 1—ァセチルー N— ( 1一ェチル一 1 H—へキサヒ ドロアゼピ ンー 3—ィル) — 6—メ トキシ— 1 H—ベンゾト リァゾ一ルー 5—カルボキサミ ドを含む残渣を得た。
( 2 ) 上記 (R) — 1—ァセチル _N— ( 1—ェチル— 1 H—へキサヒ ドロア ゼピン一 3—ィル) 一 6—メ トキシ一 1 H—ベンゾト リァゾールー 5 _カルボキ サミ ドを含む残渣をメタノール 500 mlに溶かし、 室温で 1.5 時間放置した。 溶媒 を減圧で留去後、 エタノール 1500 ml 及びフマル酸 42 g (0.36 mol) を加え、 加
熱して混合物を溶解し、 室温で 24時間静置した。 析出した結晶を濾取し、 これを エタノール 500 mlで 2回洗浄した後、 得られた結晶を 30°Cで 3日間送風乾燥し、 標題の目的物 120 g を得た。
なお、 下記に示す NMRスぺク トルのデータにより本実施例の目的物には約 1 / 2エタノールが含まれていることを確認した。
NMRスぺク トル (300 MHz, DMS0-d8, <5 ppm): 1.06 (1.5H, t, J=6.96Hz, -CHzCl^), 1.11 (3H, t, J=7.14Hz), 1.56 (1H, m), 1.6-1.9 (5H, m), 2.82 (1H, m), 2.85 (2H, q, J=7.14Hz), 2.9-3.1 (3H, m), 3.45 (1H, q, J=6.96, -CHzCHs), 3.96 (3H, s), 4.22 (1H, m), 6.57 (2H, s), 7.37 (1H, s), 8.26 (1H, s), 8.58 (1H, d, J=7.71Hz).
実施例 2
(R) — N— ( 1 —ェチル— 1 H—へキサヒ ドロアゼピン一 3—ィル) — 6— メ 卜キシ _ 1 H—ベンゾト リァゾ一ルー 5—カルボキサミ ド · 1 フマル酸塩 · 1 水和物 〔式 ( I ) の化合物〕 の製造
(R) — N— ( 1 —ェチルー 1 H—へキサヒ ドロアゼピン一 3—ィル) — 6— メ 卜キシー 1 H—べンゾト リアゾ一ル— 5 —カルボキサミ ド · 1 フマル酸塩 ·ェ 夕ノール和物の結晶 100 g を、 温度約 25°C及び相対湿度 76%〜80%の密閉容器中 に 1週間放置し、 標記の目的物 93 gを得た。
融点 1 2 8〜 1 3 4 °C 表 5 :元素分析値、 水分含量値 * 及びフマル酸含量値 **
C16H23N502 · C4H4O4 · H2O として
カールフイ ツ シャ一法による測定
'高速液体クロマ 卜グラフィー (HP L C) による測定
フマル酸の保持時間 : 4.6 分
[H P L C条件〕
検 出 : UV 210 nm
カラム : YMC- Pack NH2 A- 612 (6 mmx 15 cm)
カラム温度 : 4 0 °C
移動相 : pH 7 [50 mM K2HP04 · CH3CN (1:1)]
流 量 : 0.8 mlZ分
注入量: 20// 1
なお、 1水和物の形成は、 実施例 1のエタノール和物と比較して粉末 X線回折 パターンが下記に示すように変化したこと、 及び熱分析において熱量の変化 (D S C) で約 60°C付近に吸熱ピークが認められ、 それに対応して重量変化 (TG) で 1水分子分に相当する約 4 %の減量が認められたことにより確認した。
粉末 X線回折パターンの変化 :
2 e =12.5° , 23° 付近のピークが消失
2 0 =10.5° , 19° , 21.5° , 23.5° 付近にピークが出現
実施例 3
(R) - N - ( 1 ーェチルー 1 H—へキサヒ ドロアゼピン— 3—ィル) 一 6— メ トキシ一 1 H—べンゾト リァゾールー 5—カルボキサミ ド · 1 フマル酸塩 · 1 水和物 〔式 ( I ) の化合物〕 の製造 (その 2 )
(R) 一 N— ( 1 —ェチル一 1 H—へキサヒ ドロアゼピン一 3—ィル) 一 6— メ トキシ— 1 H—べンゾト リァゾールー 5—カルボキサミ ド · 1 フマル酸塩 · ェ タノール和物各 100 mgを用い、 下記表 6に示す条件で保存して標題の目的物各 97 m を得た。
表 6 温度 (°c) 相対湿度 (%) 期間
2 0 7 6 2 9時間
2 0 7 6 1 力月
2 0 8 1 1 力月
なお、 1水和物の形成の確認は実施例 1 と同様にして行った。
製剤例 1
錠剤の製造 ( 1 0 0 0錠あたり)
( R ) - N - ( 1 —ェチルー 1 H—へキサヒ ドロアゼピン— 3 —ィル) ― 6 —メ トキシー 1 H —ベンゾトリアゾールー 5 —カルボキサミ ド '
1 フマル酸塩 · 1水和物 10 g 乳糖 72 g 低置換度ヒ ドロキシプロピルセルロース 16 g ステアリ ン酸アルミニウム 2. 0 g 上記成分、 即ち、 (R ) _ N— ( 1—ェチルー 1 H—へキサヒ ドロアゼピン— 3 —ィル) _ 6 —メ トキシ一 1 H—ベンゾト リアゾ一ルー 5 —カルボキサミ ド . 1 フマル酸塩 · 1水和物、 乳糖 (商品名 : タブレ トース) 、 低置換度ヒ ドロキシ プロピルセルロース (商品名 : L H— 1 1 ) 及びステアリ ン酸アルミ二ゥムを混 合したのち、 直接打錠して 1錠あたりの重量が 100 の錠剤を 1000錠製造した。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 (R ) — N— ( 1 ーェチルー 1 H—へキサヒ ドロアゼピン— 3 —ィル) 一 6—メ トキシ— 1 H —ベンゾト リアゾール一 5 —カルボキサミ ドを 1 フマル酸塩 · 1水和物とすることにより物理的に安定な結晶として得られ、 且 っ該 1水和物は簡便な方法で大量に製造され、 医薬原末として工業的に安定に供 給することができる。