明 細 書
サ一ボモ一夕の制御方法
技 術 分 野
本発明は、 工作機械やロ ボッ ト の駆動源と して使用 され るサーボモータの制御方法に関する。
背 景 技 術
工作機械の送 り軸やロボヅ 卜のアーム等はサーボモー 夕で駆動され、 該サ一ボモータ によって速度ループ制御 や位 gループ制御が行われて いる。 この従来のサーボ乇 一夕の制御においては、 速度ループのゲイ ンは常に一定 にされ、 機械的な共振を引 き起こすゲイ ン レベルに対 し てある程度のマージンをもった値に設定されて いる。
図 1 はサーボモータ位置制御系の一例のブロ ッ ク図で、 1 は位置制御部で、 K p は位置ループゲイ ンである。 2 は速度制御部で、 k 1 は積分ゲイ ン、 k 2 は比例ゲイ ン である。 3 はモータ, 機械系である。 4 は速度を積分 し て位 gを求める項を示 して いる。
位置指令 0 d から位置検出器等で検出される位置 0 を 減じて位置偏差を求め、 該位置偏差に位置ループゲイ ン K p を乗 じて速度指令 V d を求め、 該速度指令 v dか ら 速度検出器等で検出される実速度 V を減 じて速度偏差を 求める。 さ ら に該速度偏差を積分 して、 その積分値に積 分ゲイ ン k l を乗 じた値と、 上記速度偏差に比例ゲイ ン k 2 を乗 じた値とを加算して トルク指令 (電流指令) T c を求める。 そ して この ト ルク指令に基づいて ( さ ら に
は鼋流ループ制御を行って) サーボモ一夕を駆動するこ とが一般的に行われている。 また、 位置ループ制御を行 わず、 速度ループ制御のみのサーボモ一夕の制御も一般 的に行われている。
上述したようなサーボモータの制御において、 位 偏 差が小さくなり、 かつ速度偏差も小さ くなると、 当然 卜 ルク指令 T c も小さ く なつて、 サーボモー夕の出力 トル クが小さ くなることから、 位 S偏差や速度偏差の速やか な収束が難し く なる。 そこで、 速度制御部の稹分ゲイ ン k 1 , 比例ゲイン k 2を高い値のものにすれば、 上記収 束は速くなると共に、 応答性も高く なり外乱要素にも強 く なつて制御系の性能は向上する。 しかし、 積分, 比例 のゲイ ンが高いという ことは、 トルク指令が大き くなつ たときには機械的な共振を引き起こ し、 また、 速度指令 の変化が大きいと、 オーバシュー ト, アンダーシュー ト が生じふらつきが生じるということに結びつく。
そこで、 従来のゲイ ンを固定する方法では機械的な兵 振が生じる発振限界によって上記ゲイ ンが制限されて し まい、 サーポの制御性能もこれによ り制限を受けるこ と になる。
発 明 の 開 示
本発明の目的は、 位 偏差や速度偏差の収束を速く す ると共に、 応.答性がよ く外乱にも強く、 かつ機械的兵振 が生じないサ一ボ乇一夕の制御方法を提供するこ とにあ る。
上記目的を達成するために、 本発明は、 サーボモ一夕 の制御において、 速度ループ制御によ り 出力される トル ク指令の大き さ に依存 して速度ループのゲイ ンを調整す るよう に して いる。 すなわち、 速度ル一ブ制御によ り 出 力される トルク指令の大き さ を検出 して、 検出 トルク指 令が大き い場合は速度ループのゲイ ンを低 く 調整 し、 検 出 トルク指令が小さ い場合は速度ループのゲイ ンを高 く 調整して制御する。
好ま し く は、 サーボモ一夕の制御にお いて、 速度ルー ブ制御によ り'出力される トルク指令の大き さを予め複数 の段階の領域に分割 し、 その各領域ごと に調整用のゲイ ンの値を設定しておいたう えで、 速度ループ制御によ り 出力される トルク指令の大きさがどの段階の領域に属す るかを判断してその領域に対応する調整用のゲイ ンを上 記 トルク指令に適用するよ う に して いる。
好ま し く は、 サ一ボモータの制御において、 設定され た速度ループゲイ ンで速度ループ制御を行って トルク指 令値 T elを求め、 その求めた トルク指令値 T elに対して 当該 トルク指令値 T elに対応して予め定めておいた調整 用のゲイ ン Gを乗じて、 その値をモー夕への ト ルク指令 とする。 具体的には、 この調整用のゲイ ン Gは、 変数で ある上記 トルク指令値 T elと、 定数である出力可能な ト ルク指令の最大値 I max 及び制御系によって設定 したゲ イ ン調整値 <5 と によ り、
G = l + { I max / ( | T cl | + (5 ) }
の式によ り求める。 なお、 この式における上記ゲイ ン調 整値(5は上記出力可能な トルク指令の最大値 I max の値 によって決めてもよい。
また、 上記サーボ乇一ダの制御は、 速度ループのほか に位 Sループをも有す
る、 さらには位 ループ制御にフィ 一 ドフォヮー ド制御 をも導入してもよい。
また、 上記サ一ポモータの制御はデジタルサーボまた はアナログサ一ボのいずれでも行ってもよい。
上述のように、 本発明によれば、 速度偏差が小さ く ト ルク指令が小さい場合には速度制御部のゲイ ンを高く し て応答性をよく し、 位 傭差や速度倔差を急速に収束す ることができる。 一方、 トルク指令が大きいときには速 度制御部のゲイ ンを高く しないことによつて機械的共振 の発生を防止する。 その結果、 速度指令の変化が大き く ても、 速度のふらつきやオーバシュー ト, アンダーシュ ー トを低減させ、 .外乱に強いサーボ制御方法を得ること ができる。
図 面 の 簡 単 な 説 明 図 1 は速度制御を含むサーボモータの位置制御系のブ Πヅク図、
図 2は本発明の一実施例における速度制御部のブロ ッ ク図、
図 3 は同実施例におけるゲイ ン調整用プロックによ り 求められる調整用ゲイ ンを説明する説明図、
図 4 は本発明の一実施例を実施する機械のサ一ボモー 夕制御の要部ブロ ッ ク図、
図 5 は同一実施例におけるディ ジタルサ一ボ回路のブ 口セヅサが実施する処理のフ ローチヤ一 ト、
図 6 は従来の方法で高速位置決めを行った と きの位置 偏差の様子を示す図、
図 7 は本発明の方法によ り、 図 6 と同 じ条件で高速位 置決めを行った と きの位置偏差の様子を示す図、
図 8 は従来の方法で円弧切削を行った と きの様子を示 す図、 及び、
図 9 は本発明の方法によ り、 図 8 と同 じ条件で円弧切 削を行ったと きの様子を示す図である。
発 明 を 実 施 す る た め の 最 良 の 形 態
図 2 は、 本発明の速度制御部の一実施例のブロ ッ ク図 で、 図 1 に示す速度制御部 (比例 · 積分制御) 2 と同等 の制御部 2 a にゲイ ン調整用 のブロ ヅ ク 2 bが追加され、 これら 2つのブロ ッ ク 2 a, 2 b によって速度制御部を 構成 して いる。 すなわち、 制御部 2 a には従来の速度制 御部 2 と同様に速度偏差 ( v d — V ) が入力され、 比例 · 積分制御を行って トルク指令 T e l を出力する。 そ し て、 ゲイ ン調整用のブロ ッ ク 2 b では、 この トルク指令 T e l の大きさ によって調整用のゲイ ン G を求め、 この 求め られたゲイ ン Gを トルク指令 T c 1 に乗 じてモー夕, 機械系への トルク指令 T c 2 と して出力する。
上記ゲイ ン調整用ブロ ッ ク 2 b で求めるゲイ ンは、 本
実施例においては次の ( 1 ) 式の演算を行つて求めるよ う にしている。
G= T c 2/T c 1
= 1 + 1 max ( | T c 1 I + <5 ) … ( 1 ) なお、 上記 ( 1 ) 式において、 (5は制御対象によって 調整用のゲイ ンの大きさを決めるパラメ一夕であ り、 サ ーボモータによって駆動される機械及び動作に応じて設 定する値である。 また、 I max は当該サーボモータに対 し出力可能な トルク指令 (駆動電流) の最大値である。 上記 ( 1 ) 式で示される トルク指令 T e l とゲイ ン G との閼係の一例をグラフで表すと図 3に示すよう になる。 なお、 この図 3の横軸は制御部 2 aから出力される トル ク指令 T e lの値 ( 0〜土 I max ) であ り、 上記パラメ 一夕 <5が小さ くなる程調整用ゲイ ン Gは大きく なる。 ま た、 制御部 2 aから出力される トルク指令 T e lの絶対 値が小さ くなる程調整用ゲイ ン Gは大き くなり、 反対に トルク指令 T c 1の絶対値が大きく なる程調整用ゲイ ン Gは 1に近く なる。
図 4は本発明のサーボ制御方法を実施する一実施例の 機械のサーボモータ制御の要部ブロック図で、 図中、 1 0は機搣を制御する数値制御装置等の制御装置、 1 1は 該制御装置 1 0から出力されるサーボモータへの各種指 令等を受信し、 デジタルサーボ回路 1 2のプロセヅサに 受け渡すための共有メモリである。 1 2はデジタルサ一
ボ回路であ り、 プロセ ヅサ, R O M, R A M等で構成さ れ、 プロセッサによってサーボモータ 1 4の位置, 速度: 電流制御の処理を行う。 1 3 は ト ラ ン ジ ス タ イ ンパー夕 等で構成されるサーボアンブ、 1 4 はサーボモータ、 1 5 はサ一ボモ一夕 1 4の回転位置及び速度を検出 しデジ タルサーボ回路 1 2 に位置 · 速度をフ ィ ー ドバ ヅ クする 位置 · 速度検出器である。
上記構成はロ ボヅ トゃ工作機械等のサーボモータの制 御における公知のデジタルサーポ回路の構成と同一であ る。
図 5 は上記ディ ジタルサーボ回路 1 2のプロセ ッサが 位置 · 速度ル一ブ処理周期毎実施する処理のフ ローチヤ 一. トである。
ディ ジタルサーボ回路 1 2のプロセッサは、 共有メ モ リ 1 1 を介して制御装置 1 0から送られて きた移動指令 を読み取 り、 従来の位置ループ制御と同様に、 位置 * 速 度ループ処理周期毎の移動指令 0 d を求め該移動指令 0 から、 位置 · 速度検出器 1 5から出力される位置のフ イ ー ドバック量を減じて位置偏差を求め、 この位置偏差 にポジシ ョ ンゲイ ン K pを乗 じて速度指令を求める ( ス テツブ S l ) 。 次に、 求め られた速度指令から位置 · 速 度検出器 1 5 からの速度フ ィ ー ドバッ ク量を減 じて速度 偏差を求め、 従来の速度制御と同様に比例 · 積分制御を 行って トルク指令 T e l を求める (ステ ップ S 2 ) 。 こ の求め られた トルク指令 T c 1 と予め設定されて いるパ
ラメータ値 (5と駆動電流の最大値 I max よ り上記 ( 1 ) 式の演算を行って調整用ゲイ ン Gを求める (ステップ S 3 ) 。 そして、 求められたゲイ ン Gをステヅブ S 2で求 められた トルク指令 T e lに乗じて調整された トルク指 令 T c 2を求め、 この トルク指令 T c 2を亀流ループに 引き渡して当該周期の位 · 速度ループ処理を終了する (ステップ S 4, S 5 ) 。 以下各位 S · 速度ループ処理 周期毎上記ステップ S 1〜 S 5の処理を繰り返し実施す る。
以上のように、 通常の速度ループ制御処理、 すなわち 制御部 2 aの処理で求められる トルク指令 T c 1 に対し て、 ステヅブ S 3で調整用ゲイ ン Gを求め、 この求めた ゲイ ン Gを上記 トルク指令 T c 1 に乗じてモー夕への ト ルク指令 T c 2を得るよう に したから、 位置偏差, 速度 偏差が小さく、 トルク指令 T c 1の値が小さいときには、 大きな調整用ゲイ ン Gがこの トルク指令 T c 1に乗じら れて速度ループゲイ ンが高く されるため、 位 偏差及び 速度偏差は急速に収束することにな り、 応答性のよい制 御系を得ることができる。 また、 位置偏差, 速度偏差が 大きく トルク指令 T c 1が大きいときには調整用ゲイ ン Gは小さな値となるので、 全体的の速度ループゲイ ンは 格別高く なることはなく、 機械的共振が生じるようなこ とはない。
図 6及び図 7は、 移動指令と して 2 5. 4 mmの移動 指令を出 し高速位置決めを行ったときの従来の方法 (図
6 ) と本実施例による方法 (図 7 ) による位 S偏差の状 態を検出 したものであ り、 本実施例においては上記パラ 一夕 (5の値を I max/ 2 と して実験したものである。 図 6, 図 7の横軸は時間で縦軸は位置偏差であり、 1パル スは l At m ( l P = l m ) である。 図 6 に示す従来の 方法ではオーバシュー ト, アンダシュー トが生 じ位置偏 差の収束も 1 8 0 m s e c程度で、 位置ぎめに時間を要 している。 一方、 図 7 に示す本発明の方法では、 オーバ シュー ト, アンダシュー トは生ぜず、 位 g偏差の収束も 1 20 m s e c と短い時間で収束していることが分かる。 また、 図 8は半径 1 0 m mの円弧切削を従来の方法で 行ったときの切削形状をを表したものである。 また、 図 9は上記パラメータ (5の値を I maxZ 2 と して本発明の方 法で切削を行ったときの切削形状を表したものである。 図 8, 図 9において、 符号 2 0に示す円は指令円弧形状 であ り、 符号 2 1は切削円弧形状を示すものである。 こ の図 8, 図 9から、 本発明の方法の方が切削精度が各段 に向上していることが分かる。
なお、 上述した実施例では、 調整用のゲイ ン Gを上記 の ( 1 ) 式の演算を行う こ と によって求めるよう に した が、 必ずしも上記 ( 1 ) 式の演算を行って調整用ゲイ ン Gを求めな く ても従来の速度制御部 (制御部 2 a ) から 出力される トルク指令 T e lの大きさによって、 該 トル ク指令 T e lが大きいときは小さ く、 トルク指令 T e l が小さいときには大きな調整用ゲイ ン Gにする他の方法
でもよい。 また、 上記実施例ではパラメ一夕 <ϊの値を I max/ にして、 結局、 ( 1 ) 式で調整用ゲイ ン Gを ト ルク指令 T e l (変数) とモータ齄動電流の最大値 I ma X (定数) とから求めるよう にしたが、 パラメータ (5の 値は必ずしも I maxZ 2 でなくてもよく、 またモ一夕駆 勖鼋流の最大値 I max と関連した値でなく てもよい。 さ らに、 ( 1 ) 式のような演算を行って調整用ゲイ ン Gを 求めなく ても、 従来の速度制御部 (制御部 2 a ) から出 力される トルク指令 T c 1の大きさを何段かの領域に分 割し、 各領域毎に調整用ゲイ ンを設定しておき、 上記 卜 ルク指令 T c 1がどの領域かを判断し、 対応する領域の 鼯整用ゲイ ン Gを求めるよう にしてもよい。
-また、 上記実施例では、 サーボ制御をディ ジタルサー ボで行った例を説明したが、 ディ ジタルサーボ制御では なく、 アナログのサーボ制御においても、 本発明は適用 できるものである。
さらに、 サーポモータの制御に閼して、 本実施例では 速度制御部の制御を比例 · 稹分制御の例で説明したが、 積分 · 比例制御の場合にも本発明は適用できる。 また、 位 ループ制御にフ ィ ー ドフォワー ド制御を導入したと きにも本発明は適用できるものである。 また、 位 ルー ブ制御を行わず、 速度制御のみを行う ときも本発明は適 用できるものである。 要するに、 速度制御部から出力さ れる トルク指令 T e lの大きさが大きいときは低く、 小 さいときには高く調整用ゲイ ン Gを変化させるこ とによ
つて、 位 g偏差, 速度偏差の収束を速 く し、 応答性を向 上させ、 かつ、 機械的共振を発生させず、 速度指令の変 化が大きいと き にもふ らつきやオーバシュー ト, アンダ シュー ト を発生させず、 外乱に対 して強いサ一ボ制御方 法を得る こ とができ るものである。
以上述べたよ う に、 本発明によれば、 速度制御によ り 出力される トルク指令の大きさが小さ い と き には、 ゲイ ンをあげて、 トルク指令を大き く しサーボモータ を駆動 する。 その結果、 位 偏差及び速度偏差の収束は速く な り応答性は向上する。 一方、 トルク指令が大き い と き に は、 も と も と制御量が大きいので、 ゲイ ンを余 り高く せ ず、 機械的共振が起きないよ う にする。 その結果、 応答 性がよ く な り かつ外乱に対 しても強 く なる と共に機械的 共振も生 じな く、 優れたサーボ制御特性が得られる。