JPWO2020219774A5 - - Google Patents

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JPWO2020219774A5
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[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年4月24日に出願された米国仮出願第62/838,267号に対して優先権を主張する。その優先出願の内容は、本出願に参照により取り込まれる。
[配列表]
この出願には、ASCIIフォーマットで電子的に提出された、及びその全体が本出願に参照により取り込まれる配列表(Sequence Listing)が含まれる。前記ASCIIコピーは、2020 年4 月17 日に作成され、M103034_2140WO_SL.txtと名付けられ、サイズは317,476バイト である。
[分野]
本開示は、抗-CD117抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、及び治療目的で抗-CD117抗体-薬物コンジュゲートを使用する方法、に関するものである。
モノクローナル抗体(mAb)は、治療剤にコンジュゲートし、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を形成することがある。ADCは、コンジュゲートしていない抗体と比較して、高い有効性を示すことがある。前記抗体が薬物(例えば、細胞毒性薬物)に結合することは、直接的、又はリンカーを介して間接的であることがある。成功している治療用ADCの重要な側面は、ADCに有効性があるだけでなく、十分に忍容でもあることである。細胞毒素は、しばしば有効性と忍容性の両方に影響を及ぼす。
ADCは、移植及び幹細胞療法のために、患者に対して準備を行うための治療レジメンとして提案されてきている。患者を細胞特異的なADCでコンディショニングすることにより、患者の残存する免疫系を、ほとんどインタクト(intact)なままにしながら、幹細胞又は免疫細胞を、選択的に減少させることができる。例えば、Palchaudhuri et al. (2016) Nat. Biotechnol. 34, 738-745は、抗-CD45 ADCを単回用量で使用すること、を記載する、そこでは、抗-CD45抗体はサポリン(SAP)にコンジュゲートしている、及びそれには、鎌状赤血球貧血モデルにおける治療のために、ドナー細胞の生着を可能にする作用能がある。放射線照射とは異なり、CD45-SAP ADCでは、好中球減少症及び貧血が回避された、及びT細胞及びB細胞を迅速に回復させて全体的な毒性は最小限であった、と報告されている。しかしながら、非-遺伝毒性的で、ターゲットを絞ったADC-コンディショニングに使用することができる、有効な細胞ターゲット及び毒素の組み合わせは、依然として必要とされている。
[概要]
本開示は、ターゲット細胞に送達するための、アントラサイクリン(例えば、PNU)を含む抗-CD117抗体薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。
1つの態様では、本開示は、リンカー(L)を介して細胞毒素(Cy)にコンジュゲートした、抗-CD117抗体又はその抗原結合部分(Ab)を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、ここで、前記細胞毒素はアントラサイクリンを含む、及びここで、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合部分は、以下を含む、配列番号(SEQ ID NO):11、12、及び13に記載のアミノ酸配列を、それぞれ含む重鎖(HC)-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3、を含む重鎖、並びに配列番号(SEQ ID NO): 14、15、及び16に記載のアミノ酸配列を、それぞれ含む軽鎖(LC)-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3、を含む軽鎖;又は、配列番号(SEQ ID NO): 245、246、及び247に記載のアミノ酸配列を、それぞれ含む重鎖(HC)-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3、を含む重鎖、並びに配列番号(SEQ ID NO): 248、249、及び250に記載のアミノ酸配列を、それぞれ含む軽鎖(LC)-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3、を含む軽鎖、を提供する。
別の態様では、本開示は、リンカー(L)を介して細胞毒素(Cy)にコンジュゲートした、抗-CD117抗体又はその抗原結合部分(Ab)を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、ここで、前記細胞毒素はアントラサイクリンを含む、及びここで、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合部分は、以下を含む、配列番号(SEQ ID NO):9 に記載のアミノ酸配列を含む可変領域、を含む重鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):10 に記載のアミノ酸配列を含む可変領域、を含む軽鎖;又は、配列番号(SEQ ID NO):243 に記載のアミノ酸配列を含む可変領域、を含む重鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):244 に記載のアミノ酸配列を含む可変領域、を含む軽鎖、を提供する。
別の態様では、本開示は、リンカー(L)を介して細胞毒素(Cy)にコンジュゲートした、抗-CD117抗体又はその抗原結合部分(Ab)を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、ここで、前記細胞毒素はアントラサイクリンを含む、及びここで、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合部分は、以下を含む、配列番号(SEQ ID NO): 109に記載のアミノ酸を含む重鎖、及び配列番号(SEQ ID NO): 110、111、112、113又は114に記載のアミノ酸を含む軽鎖;又は、配列番号(SEQ ID NO): 284に記載のアミノ酸を含む重鎖、及び配列番号(SEQ ID NO): 275、276、277又は278に記載のアミノ酸を含む軽鎖、を提供する。
別の態様では、本開示は、リンカー(L)を介して細胞毒素(Cy)にコンジュゲートした、抗-CD117抗体又はその抗原結合部分(Ab)を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、ここで、前記細胞毒素はアントラサイクリンを含む、及びここで、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合部分は、以下を含む、HC-CDR1, HC-CDR2, 及びHC-CDR3 若しくは、Ab55, Ab54, Ab56, Ab57, Ab58, Ab61, Ab66, Ab67, Ab68, Ab69, Ab85, Ab86, Ab87, Ab88, Ab89, Ab77, Ab79, Ab81, Ab85, 若しくは Ab249、の重鎖可変領域アミノ酸配列に由来する可変領域、を含む重鎖、並びに、LC-CDR1, LC-CDR2, 及びLC-CDR3 若しくは、Ab55, Ab54, Ab56, Ab57, Ab58, Ab61, Ab66, Ab67, Ab68, Ab69, Ab85, Ab86, Ab87, Ab88, Ab89, Ab77, Ab79, Ab81, Ab85, 若しくは Ab249、の軽鎖可変領域アミノ酸配列に由来する可変領域、を含む軽鎖、又は、HC-CDR1, HC-CDR2, 及びHC-CDR3 若しくは、配列番号(SEQ ID NO): 147, 164, 166, 168, 170, 172, 174, 176, 178, 180, 183, 185, 187, 189, 191, 193, 195, 197, 199, 201, 202, 204, 206, 208, 210, 212, 214, 216, 218, 220, 222, 224, 226, 238, 若しくは 243、の重鎖可変領域アミノ酸配列に由来する可変領域、を含む重鎖、並びに、LC-CDR1, LC-CDR2, 及びLC-CDR3 若しくは、配列番号(SEQ ID NO): 148, 149, 150, 151, 152, 153, 154, 155, 156, 157, 158, 159, 160, 161, 162, 163, 165, 167, 169, 171, 173, 175, 177, 179, 181, 182, 184, 186, 188, 190, 192, 194, 196, 198, 200, 203, 205, 207, 209, 211, 213, 215, 217, 219, 221, 223, 225, 227, 228, 229, 230, 231, 232, 233, 234, 235, 236, 237, 239, 240, 241, 242, 若しくは 244、の軽鎖可変領域アミノ酸配列に由来する可変領域、を含む軽鎖、を提供する。
いくつかの実施形態では、前記アントラサイクリンはPNU-159682である。
いくつかの実施形態では、前記ADCは、式(VI)又は式(VII)で表される:
Figure 2020219774000001
Figure 2020219774000002
ここで、Zは、前記抗体又はその抗原結合フラグメントにある反応性置換基と前記リンカーにある反応性置換基との間のカップリング反応によって形成される、化学的な部分構造である。
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、1種以上のペプチド、オリゴ糖、-(CH2)p-, -(CH2CH2O)q-, -(C=O)(CH2)r-, -(C=O)(CH2CH2O)t-, -(NHCH2CH2)u-, -PAB, -(NHCH2CH2)u-, -NHCH2CH2NH-, -N(CH3)CH2CH2NH-, 又は -N(CH3)CH2CH2N(CH3)-、を含む、ここで、p、q、r、t、及びuの各々は、1~12の整数であり、各場合毎に、独立して選択される。
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、1種以上の-(CH2)p-, -(CH2CH2O)q-, -(C=O)(CH2)r-, -(C=O)(CH2CH2O)t-, -(NHCH2CH2)u-, Val-Cit-PAB, Val-Ala-PAB, gly-gly-gly, gly-gly-gly-gly-gly, -NHCH2CH2NH-, -N(CH3)CH2CH2NH-, 又は -N(CH3)CH2CH2N(CH3) 、を含む、ここで、p、q、r、t、及びuの各々は、1~12の整数であり、各場合毎に、独立して選択される。
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合部分は、Fcドメインを含む、及びここで、前記抗体又はその抗原結合部分は、前記Fcドメインの中のシステイン残基によって、アントラサイクリンにコンジュゲートする。ある特定の実施形態では、前記システイン残基は、前記Fcドメインの中のアミノ酸置換によって、導入される。いくつかの実施形態では、前記アミノ酸置換は、D265C (EU番号付けによる)である。
いくつかの実施形態では、前記ADCは、1、2、3、4、5、6、7、又は8の薬物対抗体比(DAR)を有する。
いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合フラグメントは、D265C、H435A、L234A、又はL235A(EU番号付けによる)からなる群より選択される少なくとも1つの変異、を含むFc領域を含む。
いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合フラグメントは、D265C、H435A、L234A、又はL235A(EU番号付けによる)変異、を含むFc領域を含む。
いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体は、インタクトな抗体である。
いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体は、IgG1又はIgG4である。
別の態様では、本開示は、ヒト対象において、CD117+細胞の集団を減少させる方法、ここで、前記方法は、前記対象に、本出願に記載のADCを投与することを含む、を提供する。
別の態様では、本開示は、細胞移植のために、ヒト対象をコンディショニングする方法、ここで、前記方法は、前記ヒト対象において、内因性の幹細胞又は内因性のCD117+幹細胞が減少するように、前記ヒト対象に、本出願に記載のADCを投与することを含む、を提供する。
いくつかの実施形態では、前記CD117+細胞は、造血幹細胞(HSC)である。
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記ヒト対象に、同種異系幹細胞(allogenic stem cells)又は同種異系幹細胞(allogeneic stem cells)を投与することを更に含む。
いくつかの実施形態では、前記対象は、がん又は自己免疫疾患を有する。ある特定の実施形態では、前記がんは、血液がんである。いくつかの実施形態では、前記がんは、骨髄性白血病又は骨髄異形成症候群である。
別の態様では、本開示は、本出願に記載のADC、及び薬学的に許容可能な担体、を含む医薬組成物、を提供する。
図1A~1Cは、ヒトCD34+骨髄細胞の生存性に対する、示したADCの用量依存性の効果を示す、in vitro細胞傷害アッセイの結果をグラフで示す。抗-CD117 (CK6) PNUコンジュゲート又はコントロール(hIgG1 アイソタイプ-PNU)の存在下で、ADC又はコントロールの濃度を変化させた場合の(x-軸)、全生細胞数(図1A)又は生存CD34+ CD90+ 細胞数(図1B及び図1C)を(y-軸)、示す。図1Cは、アイソタイプ:ADCには、1000倍の傷害ウィンドウ(killing window)があることを示す。 図2A~2Cは、抗-CD117-PBD、抗-CD117-PNU、抗-CD117-DM (デュオカルマイシン)、抗-CD117-カリケアマイシン(D4)について、Kasumi-1細胞(図2A及び2B)、又は初代ヒト幹細胞(図2C)、の両方における、in vitro細胞傷害アッセイの結果をグラフで示す。図2A及び図2Bは、示したADCの濃度を変化させて、Celltiter Gloによるルミネッセンス(RLU)で測定した場合の、Kasumi-1細胞の生存性(図2A)又はCD117(-)Kasumi-1細胞の生存性(図2B)、を示したin vitro細胞傷害アッセイの結果をグラフで示す。図2Cは、生存しているCD34+CD90+細胞の数に基づくヒトCD34+骨髄細胞の生存性(y軸)に与える、各々示したADCの用量依存性の効果を示す、in vitro細胞傷害アッセイの結果をグラフで示す。 図3A~3Cは、PNU、PBD、D4(カリケアマイシン)、又はDM1(デュオカルマイシン)にコンジュゲートした抗-CD117抗体を使った、hNSGマウスにおけるin vivo HSC減少アッセイの結果をグラフで示す。図3Aは、示した抗-CD117 ADC及び用量で処置したマウスにおける、投与後7日目、14日目、又は21日目の、ベースラインに対して標準化した、hCD33細胞の割合をグラフで示す。図3Bは、hCD34+細胞のパーセンテージをグラフで示す、及び図3Cは、示した抗-CD117-ADC及び用量で処置したマウスにおける、投与後21日目の、大腿骨当たりのhCD34+数をグラフで示す。
[発明の詳細な説明]
なお、本開示を明瞭にするために、限定ではなく、本開示の詳細を、以下のサブセクションに分けて説明する。
[定義]
別段の記載をしない場合、本出願で使用する以下の用語及び表現は、以下の意味を有することが意図される。
本出願で使用される用語「アシル」は、-C(=O)Rを指す、ここで、本出願で定義するように、Rは水素(「アルデヒド」)、C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C3-C7カルボシクリル、C6-C20アリール、5-10員ヘテロアリール、又は5-10員ヘテロシクリルである。非-限定的な例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾイル、及びアクリロイルが挙げられる。
本出願で使用される用語「C1-C12アルキル」は、1~12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の飽和炭化水素を指す。典型的なC1-C12アルキル基としては、限定されるものではないが、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、及び-n-ヘキシルが挙げられる;一方、分岐C1-C12アルキルとしては、限定されるものではないが、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、及び2-メチルブチルが挙げられる。C1-C12のアルキル基は、置換されていない、又は置換されていることがある。
本出願で使用される用語「アルケニル」は、不飽和の少なくとも1つの部位、即ち、炭素-炭素、sp2二重結合、を有する、通常の、第2級の、又は第3級の炭素原子を含むC2-C12炭化水素を指す。例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:エチレン又はビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブテニルなどが挙げられる。アルケニル基は、置換されていない、又は置換されていることがある。
本出願で使用される「アルキニル」は、不飽和の少なくとも1つの部位、即ち、炭素-炭素、sp三重結合を有する、通常の、第2級の、又は第3級の炭素原子を含むC2-C12炭化水素を指す。例としては、限定されるものではないが、アセチレン及びプロパルギルが挙げられる。アルキニル基は、置換されていない、又は置換されていることがある。
本出願で使用される「アリール」は、C6-C20炭素環芳香族基を指す。アリール基の例としては、限定されるものではないが、フェニル、ナフチル及びアントラセニルが挙げられる。アリール基は、置換されていない、又は置換されていることがある。
本出願で使用される「アリールアルキル」は、炭素原子(典型的には末端又はsp3炭素原子)に結合した水素原子の1つがアリール・ラジカルで置換されている、非環状アルキル・ラジカルを指す。典型的なアリールアルキル基としては、限定されるものではないが、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イルなどが挙げられる。前記アリールアルキル基は6~20個の炭素原子を含み、例えば、アリールアルキル基のアルキル部分構造(例えば、アルカニル、アルケニル又はアルキニル基等が挙げられる)は1~6個の炭素原子であり、アリール部分構造は5~14個の炭素原子である。アルカリル基は、置換されていない、又は置換されていることがある。
本出願で使用される「シクロアルキル」は、飽和炭素環ラジカルを指し、これは単環式又は二環式であることがある。シクロアルキル基としては、単環として3~7個の炭素原子を有する環、又は二環として7~12個の炭素原子を有する環が挙げられる。単環式シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキル基は、置換されていない、又は置換されていることがある。
本出願で使用される「シクロアルケニル」は不飽和炭素環ラジカルを指し、これは単環式又は二環式であることがある。シクロアルケニル基としては、単環として3~6個の炭素原子を有する環、又は二環として7~12個の炭素原子を有する環が挙げられる。単環式シクロアルケニル基の例としては、1-シクロペント-1-エニル、1-シクロペント-2-エニル、1-シクロペント-3-エニル、1-シクロヘキス-1-エニル、1-シクロヘキス-2-エニル、及び1-シクロヘキス-3-エニルが挙げられる。シクロアルケニル基は、置換されていない、又は置換されていることがある。
本出願で使用される「ヘテロアラルキル」は、炭素原子(典型的には末端又はsp3炭素原子)に結合した水素原子の1つがヘテロアリール・ラジカルで置換されている、非環状アルキル・ラジカルを指す。典型的なヘテロアリールアルキル基としては、限定されるものではないが、2-ベンズイミダゾリルメチル、2-フリルエチル等が挙げられる。前記ヘテロアリールアルキル基は6~20個の炭素原子を含み、例えば、ヘテロアリールアルキル基のアルキル部分構造(アルカニル、アルケニル又はアルキニル基等が挙げられる)は1~6個の炭素原子である、並びにヘテロアリール部分構造は5~14個の炭素原子である並びにN、O、P、及びSより選択される1~3個のヘテロ原子である。前記ヘテロアリールアルキル基のヘテロアリール部分構造は、3~7個の環員(2~6個の炭素原子)を有する単環であることがある、又は7~10個の環員(4~9個の炭素原子並びにN、O、P、及びSより選択される1~3個のヘテロ原子)を有する二環であることがある(例えば:二環[4,5]、[5,5]、[5,6]、又は[6,6]システム)。
本出願で使用される「ヘテロアリール」及び「ヘテロシクロアルキル」は、それぞれ芳香族又は非-芳香族環システムを指し、ここで1つ以上の環原子は、ヘテロ原子、例えば窒素、酸素、及び硫黄である。ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキル・ラジカルは、2~20個の炭素原子及びN、O、P、及びSより選択される1~3個のヘテロ原子を含む。ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルは、3~7個の環員(2~6個の炭素原子並びにN、O、P、及びSより選択される1~3個のヘテロ原子)を有する単環であることがある、又は7~10個の環員(4~9個の炭素原子並びにN、O、P、及びSより選択される1~3個のヘテロ原子)を有する二環であることがある(例えば:二環[4,5]、[5,5]、[5,6]、又は[6,6]システム)。ヘテロアリール及びヘテロシクロアルキルは、置換されていない、又は置換されていることがある。
ヘテロアリール及びヘテロシクロアルキル基は、Paquette, Leo A.; "Principles of Modern Heterocyclic Chemistry" (W. A. Benjamin, New York, 1968), 特に1, 3, 4, 6, 7, 及び 9章; "The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs" (John Wiley & Sons, New York, 1950 to present), 特に13, 14, 16, 19, 及び 28巻; 並びに J. Am. Chem. Soc. (1960) 82:5566、に記載されている。
ヘテロアリール基の例としては、例えば、限定されるものではないが、ピリジル、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、イソキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、1H-インダゾリル、プリニル、4H-キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH-カルバゾリル、カルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、及びイサチノイルが挙げられる。
ヘテロシクロアルキルの例としては、例えば、限定されるものではないが、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、2-ピロリドニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ビス-テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、ピペラジニル、キヌクリジニル、及びモルホリニルが挙げられる。
限定ではなく例として、炭素結合ヘテロアリール類及びヘテロシクロアルキル類は、ピリジンの2、3、4、5、若しくは6位、ピリダジンの3、4、5、若しくは6位、ピリミジンの2、4、5、若しくは6位、ピラジンの2、3、5、若しくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール若しくはテトラヒドロピロールの2、3、4、若しくは5位、オキサゾール、イミダゾール若しくはチアゾールの2、4、若しくは5位、イソオキサゾール、ピラゾール、若しくはイソチアゾールの3、4、若しくは5位、アジリジンの2、若しくは3位、アゼチジンの2、3若しくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7、若しくは8位、又はイソキノリンの1、3、4、5、6、7、若しくは8位、で結合する。更により典型的には、炭素結合ヘテロ環類としては、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリジル、6-ピリジル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、6-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピラジニル、5-ピラジニル、6-ピラジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、又は5-チアゾリルが挙げられる。
限定ではなく例として、窒素結合ヘテロアリール類及びヘテロシクロアルキル類は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H-インダゾールの1位で、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾール又はベータ・カルボリンの9位、で結合する。更により典型的には、窒素結合ヘテロ環類としては、1-アジリジル、1-アゼテジル(1-azetedyl)、1-ピロリル、1-イミダゾリル、1-ピラゾリル、及び1-ピペリジニルが挙げられる。
本出願で使用される、並びに上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルなどの何れかに適用される、「置換された」とは、1個以上の水素原子がそれぞれ独立して置換基で置換されていることを意味する。個々の置換基の定義によって他に制約されない限り、前述の化学的部分構造は、例えば、"アルキル"、"アルキレン"、"ヘテロアルキル"、"ヘテロアルキレン"、"アルケニル"、"アルケニレン"、"ヘテロアルケニル"、"ヘテロアルケニレン"、"アルキニル"、"アルキニレン"、"ヘテロアルキニル"、"ヘテロアルキニレン"、"シクロアルキル"、"シクロアルキレン"、"ヘテロシクロアルキル"、ヘテロシクロアルキレン"、"アリール"、"アリーレン"、"ヘテロアリール"、及び "ヘテロアリーレン" 基は、任意選択的に置換されている。典型的な置換基としては、限定されるものではないが、-X, -R, -OH, -OR, -SH, -SR, NH2, -NHR, -N(R)2, -N+(R)3, -CX3, -CN, -OCN, -SCN, -NCO, -NCS, -NO, -NO2, -N3, -NC(=O)H, -NC(=O)R, -C(=O)H, -C(=O)R, -C(=O)NH2, -C(=O)N(R)2, -SO3-, -SO3H, -S(=O)2R, -OS(=O)2OR, -S(=O)2NH2, -S(=O)2N(R)2, -S(=O)R, -OP(=O)(OH)2, -OP(=O)(OR)2, -P(=O)(OR)2, -PO3, -PO3H2, -C(=O)X, -C(=S)R, -CO2H, -CO2R, -CO2-, -C(=S)OR, -C(=O)SR, -C(=S)SR, -C(=O)NH2, -C(=O)N(R)2, -C(=S)NH2, -C(=S)N(R)2, -C(=NH)NH2, 及び-C(=NR)N(R)2、が挙げられる;ここで、各Xは、F、Cl、Br、及びIから、それぞれの場合毎について独立に選択される;及び、各Rは、C1-C12アルキル、C6-C20アリール、C3-C14ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール、保護基及びプロドラック部分構造から、それぞれの場合毎について独立に選択される。基が「任意選択的に置換される」と記載されている場合はどんな場合でも、その基は、それぞれの場合毎について独立に、1個以上の上記の置換基で置換されることがある。前記置換には、隣接する置換基が閉環した、例えば、近接する官能置換基が閉環して、例えば、閉環により形成される、ラクタム、ラクトン、環状無水物、アセタール、ヘミアセタール、チオアセタール、アミナール、及びヘミアナールを形成し、例えば、保護基が提供される、状況を含むことがある。
あるラジカルの命名規則には、状況に応じて、モノ-ラジカル又はジ-ラジカルの何れかが含まれうることを理解しておく必要がある。例えば、置換基が分子の残りの部分への2つのアタッチメント(attachment)の位置を必要とする場合、前記置換基はジ-ラジカルであると理解される。例えば、2つのアタッチメント(attachment)の位置を必要とするアルキルとして識別される置換基としては、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、等のジ-ラジカルが挙げられる。他のラジカル命名規則は、前記ラジカルが「アルキレン」、「アルケニレン」、「アリーレン」、「ヘテロシクロアルキレン」等のようなジ-ラジカルであることを明確に示す。
置換基がジ-ラジカルとして示される(即ち、分子の残りの部分への2つのアタッチメント(attachment)の位置を有する)場合はいつでも、前記置換基は、特に断らない限り、任意の方向性配置でアタッチメントすることができることを理解されたい。
「異性 (Isomerism)」とは、同一の分子式を有するが、その原子の結合の配列、又はその原子の空間配置が異なる化合物を意味する。その原子の空間配置が異なる異性体を「立体異性体」と呼ぶ。互いに鏡像関係にない立体異性体を「ジアステレオマー」と呼ぶ、及び互いに重ね合わせることができない、鏡像関係にある立体異性体を「エナンチオマー」と呼び、時には「光学異性体」と呼ぶ。
4つの非-同一置換基に結合した炭素原子を「キラル中心」と呼ぶ。「キラル異性体」とは、少なくとも1つのキラル中心を有する化合物を意味する。1つ以上のキラル中心を有する化合物は、個々のジアステレオマーとして、又は「ジアステレオマー混合物(diastereomeric mixture)」と呼ばれるジアステレオマーの混合物として存在することがある。1つのキラル中心が存在する場合、立体異性体は、そのキラル中心の絶対配置(R又はS)によって特徴付けることができる。絶対配置とは、前記キラル中心に結合した置換基の空間配置をいう。検討するキラル中心に結合した置換基を、Cahn、Ingold及びPrelogの配列規則に従ってランク付けする。(Cahn et al., Angew. Chem. Inter. Edit. 1966, 5, 385; errata 511; Cahn et al., Angew. Chem. 1966, 78, 413; Cahn and Ingold, J. Chem. Soc. 1951 (London), 612; Cahn et al., Experientia 1956, 12, 81; Cahn, J. Chem. Educ. 1964, 41, 116)。キラリティーが反対である個々のエナンチオマー形態を等量で含む混合物を、「ラセミ混合物」と呼ぶ。
本明細書及び特許請求の範囲に開示される化合物は、1つ以上の不斉中心を含むことがある、及び、各化合物の異なるジアステレオマー及び/又はエナンチオマーが存在することがある。この明細書及び特許請求の範囲において、任意の化合物についての記載は、別段の記載がない限り、全てのエナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物を含むことを意味する。更に、この明細書及び特許請求の範囲において、任意の化合物についての記載は、別段の記載がない限り、個々のエナンチオマー、並びに前記エナンチオマーの任意の混合物、ラセミ体又は他のものを含むことを意味する。化合物の構造を特定のエナンチオマーとして描いた場合、本出願の開示は、その特定のエナンチオマーに限定されないことを理解されたい。従って、本開示の各々の構造式のエナンチオマー、光学異性体、及びジアステレオマーが、本出願で企図される。本明細書において、前記化合物の構造式は、便宜上、いくつかの場合において、特定の異性体を表すが、本開示は、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体等のような全ての異性体を含み、全ての異性体が同じレベルの活性を有するわけではないことが理解される。これらの化合物類は、異なる互変異性体形態で存在することがある。本開示による化合物は、別段の記載がない限り、全ての互変異性体形態を含むことを意味する。化合物の構造を特定の互変異性体として描いた場合、本出願の開示は、その特定の互変異性体に限定されないことが理解されるべきである。
本出願に記載する任意の式の化合物は、適用可能であれば、化合物自体、並びにそれらの塩、及びそれらの溶媒和物を含む。例えば、塩は、アニオンと本開示の化合物上の正に荷電した基(例えば、アミノ)との間で形成されることがある。好適なアニオンとしては、塩化物、臭化物(ブロミド)、ヨウ化物、硫酸塩、重硫酸塩、スルファミン酸塩(スルファメート)、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、グルクロン酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、サリチル酸塩、乳酸塩、ナフタレンスルホン酸塩及び酢酸塩(例、トリフルオロ酢酸塩)が挙げられる。用語「薬学的に許容可能なアニオン」は、薬学的に許容可能な塩を形成するための好適なアニオンをいう。同様に、塩は、カチオンと本開示の化合物上の負に荷電した基(例えば、カルボキシレート)との間で形成されることがある。好適なカチオンとしては、ナトリウム・イオン、カリウム・イオン、マグネシウム・イオン、カルシウム・イオン、及びテトラメチルアンモニウム・イオンなどのアンモニウム・カチオンが挙げられる。いくつかの好適な置換アンモニウム・イオンの例としては、以下から誘導されるものが挙げられる:エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、リジン及びアルギニンなどのアミノ酸。本開示の化合物はまた、第四級窒素原子を含有する塩を含む。
好適な無機アニオンの例としては、限定されるものではないが、以下の無機酸から誘導されるものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン(phosphoric)及びリン(phosphorous)。好適な有機アニオンの例としては、限定されるものではないが、以下の有機酸から誘導されるものが挙げられる:2-アセトキシ安息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、桂皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルケプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレン・カルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルフォン酸、及び吉草酸。好適なポリマー有機アニオンの例としては、限定されるものではないが、以下のポリマー酸から誘導されるものが挙げられる:タンニン酸、カルボキシメチル・セルロース。
更に、本開示の化合物(例えば、前記化合物の塩)は、水和物の若しくは非水和物(無水)の形態で、又は他の溶媒分子との溶媒和物として存在することがある。水和物の非-限定的な例としては、一水和物、二水和物などが挙げられる。溶媒和物の非-限定的な例としては、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。「溶媒和物」は、化学量論的な量又は非化学量論的な量の何れかの溶媒を含有する、溶媒が付加された形態を意味する。いくつかの化合物は、結晶性の固相中に、固定したモル比率の溶媒分子を捕捉する傾向を有し、それによって溶媒和物を形成する。そして、前記溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である;及び前記溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は、1分子の物質と1分子以上の水の組合せによって形成され、その中では、水がH2Oとしての分子状態を保持する。水和物とは、例えば、一水和物、二水和物、三水和物などを指す。
更に、本出願に開示する式が表す化合物又はその塩について、結晶多型が存在することがある。任意の結晶形態、結晶形態の混合物、又はそれらの無水物若しくは水和物が、本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
本出願で使用される場合、用語「約」は、記載される値より10%高い値又は低い値をいう。例えば、用語「約5 nM」は、4.5 nMから5.5 nMの範囲を示す。
本出願で使用される場合、用語「抗体」は、特定の抗原に特異的に結合するか、又は特定の抗原と免疫学的に反応性である免疫グロブリン分子のことを指す。抗体としては、限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マルチスペシフィック抗体(例えば、バイスペシフィック抗体)、遺伝子工学的に操作した抗体、及びその他の改変した形態の抗体(例えば、限定されるものではないが、脱-免疫化抗体(de-immunized antibody)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヘテロコンジュゲート抗体[例えば、バイ-、トリ-及びクアッド-スペシフィック抗体、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディ]、並びに抗体フラグメント[即ち、抗体の抗原結合フラグメント][例えば、Fab'、F(ab')2、Fab、Fv、rlgG、及びscFvフラグメントなど]、それらが所望の抗原結合活性を示す限り含まれる)、が挙げられる。
本出願で使用される用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、任意の真核生物、原核生物、又はファージ・クローンを含む単一のクローンから、当技術分野で利用可能な、又は公知の任意の手段によって、得られる抗体を指す、並びにハイブリドーマ技術によって産生される抗体に限定されない。本開示で有用なモノクローナル抗体を、ハイブリドーマ、組換え、及びファージ・ディスプレイ技術、又はそれらの組合せを使用することを含む、当技術分野で公知の多種多様な技術を使用して調製することができる。用語「モノクローナル抗体」は、ターゲット・タンパク質に特異的に結合することができる、インタクトな分子及び抗体フラグメント(例えば、Fab及びF(ab')2フラグメント等を含む)の両方を含むことを意味する。本出願で使用される場合、Fab及びF(ab')2フラグメントは、インタクトな抗体のFcフラグメントを欠く抗体フラグメントを指す。これらの抗体フラグメントの例を、本出願で記載する。
本開示の抗体は、一般に、単離されたものか、又は組換えである。「単離された」とは、本出願で使用される場合、それを発現する細胞又は細胞培養物から同定及び分離並びに/又は回収されたポリペプチド(例えば、抗体)を指す。通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。従って、「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。例えば、CD117に特異的に結合する単離された抗体は、CD117以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。
本出願で使用される場合、用語「抗原-結合フラグメント」は、ターゲット抗原に特異的に結合する作用能を保持する抗体の1つ以上の部分をいう。抗体の抗原-結合機能を、全長抗体のフラグメントによって果たすことができる。前記抗体フラグメントは、例えば、Fab、F(ab')2、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、アフィボディ、ナノボディ、アプタマー、又はドメイン抗体であることがある。抗体の「抗原-結合フラグメント」という用語に包含される結合フラグメントの例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した、2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii) VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;(v) VH及びVLドメインを含むdAb;(vi) VHドメインからなるdAbフラグメント(例えば、Ward et al., Nature 341:544-546、1989を参照のこと);(vii) VH又はVLドメインからなるdAb;(viii)単離した相補性決定領域(CDR);並びに(ix)合成リンカーによって任意選択的に連結することがある2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ)の単離したCDRの組み合わせ。更に、Fvフラグメントの2つのドメイン(VL及びVH)は、別々の遺伝子によってコードされているが、それらを、組換え方法を使用することで、リンカーによって連結して、その結果、単一タンパク質鎖(VL及びVH領域が対になって一価分子を形成する)とすることができる(単鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、Bird et al., Science 242:423-426, 1988 及び Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883, 1988を参照のこと)。これらの抗体フラグメントを、当業者に公知の従来の技術を使用して入手することができ、及び前記フラグメントを、インタクトな(intact)抗体と同じ様式で、有用性についてスクリーニングすることができる。抗原-結合フラグメントを、組換えDNA技術、インタクトな免疫グロブリンの酵素的な又は化学的な切断によって、又は、ある場合には、当該技術分野で公知の化学的ペプチド合成手順によって、産生することができる。
本出願で使用される場合、用語「抗-CD117抗体」又は「CD117に結合する抗体」は、抗体が、CD117をターゲットとする診断薬剤及び/又は治療薬剤として有用であるように、十分な親和性でCD117(例えば、ヒトCD117)に結合することができる抗体
を指す。ヒトCD117の2つの主要なアイソフォームのアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 145(アイソフォーム1)及びSEQ ID NO: 146(アイソフォーム2)に示されている。
本出願で使用される場合、用語「バイスペシフィック抗体(bispecific antibody)」は、同一の又は異なる抗原上にあることがある、少なくとも2種の異なるエピトープに結合することができる抗体(例えば、モノクローナルの、例えば、脱-免疫化の、ヒト又はヒト化抗体)を指す。例えば、結合特異性のうちの1つを、造血幹細胞表面抗原、例えば、CD117(例えば、GNNK+ CD117)にあるエピトープに向けることができ、他方を、特に細胞増殖を増強するシグナル伝達経路に関与するレセプター又はレセプター・サブユニットのような、様々な造血幹細胞表面抗原又は別の細胞表面タンパク質にあるエピトープに特異的に結合させることができる。いくつかの実施形態では、その結合特異性を、同一のターゲット抗原上の、ユニークな、重複しないエピトープに向けることがある(即ち、バイパラトピック抗体[biparatopic antibody])。
本出願で使用される場合、用語「相補性決定領域」(CDR)は、抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方に見出される超可変領域のことを指す。可変ドメインのより高度に保存された部分は、骨格領域(FR)と呼ばれる。抗体の超可変領域を表すアミノ酸の位置は、文脈及び当該技術分野で公知の種々の定義に依存して、変化することがある。可変ドメイン内のいくつかの位置は、ハイブリッド超可変位置と見なされることがあり、これらの位置は、ある組の基準の下では超可変領域内にあると見なされることがあり、一方、別の組の基準の下では超可変領域外にあると見なされることがある。これらの位置の1つ以上はまた、拡張超可変領域において見出されることもある。本出願に記載される抗体は、これらのハイブリッド超可変位置に、改変を含むことがある。生来の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、主にβ-シート構造をとり、3つのCDRによって連結した(CDRは、β-シート構造を連結し、場合によってはその一部を形成する、ループを形成する)、4つの骨格領域を含む。各々の鎖中のCDRは、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順序で、骨格領域によって近接して一緒にまとまり、そして他の抗体鎖由来のCDRと共に、抗体のターゲット結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institute of Health, Bethesda, MD., 1987を参照のこと)。ある特定の実施形態では、免疫グロブリンのアミノ酸残基の番号付けは、特に断らない限り、Kabatらの免疫グロブリンのアミノ酸残基の番号付けシステムに従って行う(しかし、限定されるものではないが、IMGT及びChothia等を含む、任意の抗体の番号付けスキームを利用することがある)。
用語「脱-免疫化された(“de-immunized")」又は「脱-免疫化("de-immunization")」とは、本出願で使用される場合、野生型構築物をヒトにおいて非-免疫原性にすることによって、又はより減弱した免疫原性にすることによって、元の前記野生型構築物(又は親抗体)を改変することに関する。脱-免疫化抗体は、非-ヒト起源の部分(例えば、骨格領域及び/又はCDR)を含む。本出願で使用される場合、用語「脱-免疫化された抗体」は、対象の免疫システムを活性化しないように、変異によって脱-免疫化した抗体を指す(例えば、Nanus et al., J. Urology 170:S84-S89、2003;WO98/52976;WO00/34317)。
本出願で使用される場合、用語「コンディショニングをする」及び「コンディショニング」は、移植片(例えば、造血幹細胞を含む移植片)を受けるために、患者に対して準備を行うプロセスのことを指す。このような手順によって、造血幹細胞の移植片の生着は促進される(例えば、コンディショニング手順及び続いて行った造血幹細胞移植の後に、患者から単離した血液サンプル内の生存可能な造血幹細胞の量が持続的に増大していることから推測される)。本出願に記載する方法に従って、造血幹細胞が発現する抗原(例えば、CD117[例えば、GNNK+ CD117])に結合し得るADC、抗体、又はその抗原結合フラグメントを患者に投与することによって、造血幹細胞移植療法に備えて、前記患者をコンディショニングすることがある。本出願に記載するように、前記抗体を、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を形成するように、細胞毒素に共有結合的にコンジュゲートさせることがある。上記の抗原の1種以上に結合し得る、ADC、抗体、又はその抗原-結合フラグメントを、造血幹細胞移植療法を必要とする患者に投与することによって、例えば、内因性の造血幹細胞が選択的に減少し、それによって、外因性の造血幹細胞の移植片によって埋められる空きができることにより、造血幹細胞移植片の生着が促進されることがある。
本出願で使用される場合、用語「コンジュゲート」又は「抗体薬物コンジュゲート」又は「ADC」は、細胞毒素に結合した抗体を指す。ADCは、抗体、又はその抗原結合フラグメントのようなある分子の反応性官能基と、本出願に記載する細胞毒素のような別の分子の適切な反応性官能基との化学的な結合によって形成される。コンジュゲートは、互いに結合した2つの分子間(例、抗体と細胞毒素の間)に、リンカーを含むことがある。コンジュゲートの形成に用いることができるリンカーの例としては、ペプチド含有リンカー(例えば、天然に存在する又は天然に存在しないアミノ酸、例えば、D-アミノ酸を含有するリンカー)が挙げられる。リンカーを、本出願に記載する、及び当該技術分野で公知である、種々のストラテジー(strategies)を使用して調製することがある。その中の反応性成分に依存して、リンカーを、例えば、酵素的加水分解、光分解、酸性条件下での加水分解、塩基性条件下での加水分解、酸化、ジスルフィド還元、求核切断、又は有機金属切断によって、切断することがある(例えば、Leriche et al., Bioorg. Med. Chem., 20:571-582, 2012を参照のこと)。特に、用語「コンジュゲート」(化合物についていう場合)は、本出願では、「薬物コンジュゲート」、「抗体薬物コンジュゲート」、又は「ADC」とも、互換的にいう。
本出願で使用される場合、用語「カップリング反応」は、互いに反応するのに適した2つ以上の置換基が反応して、それぞれの置換基に結合した分子フラグメントを(例えば、共有結合的に)結合させる化学的な部分構造を形成する化学反応を指す。カップリング反応には、細胞毒素(例えば、当該技術分野で公知の又は本出願に記載する細胞毒素)であるフラグメントに結合した反応性置換基が、抗体、又はその抗原結合フラグメント(例えば、当該技術分野で公知の若しくは本出願に記載される、CD117[例えば、GNNK+ CD117]に結合する、抗体、その抗原結合フラグメント、又は特異的な抗-CD117抗体)であるフラグメントに結合した好適な反応性置換基と反応する反応が含まれる。好適な反応性置換基の例としては、求核/求電子対(例えば、特に、チオール/ハロアルキル対、アミン/カルボニル対、又はチオール/α, β-不飽和カルボニル対等)、ジエン/ジエノフィル対(例えば、とりわけ、アジド/アルキン対)等が挙げられる。カップリング反応としては、限定されるものではないが、チオール・アルキル化、ヒドロキシル・アルキル化、アミン・アルキル化、アミン縮合、アミド化、エステル化、ジスルフィド形成、環化付加(例えば、特に、[4+2]Diels-Alder環化付加、[3+2]Huisgen環化付加)、芳香族求核置換、芳香族求電子置換、及び当該技術分野で知られているか又は本出願に記載される他の反応様式が挙げられる。
本出願で使用される場合、「CRU(競合的再生着ユニット(competitive repopulating unit))」は、in vivo移植後に検出され得る、長期生着する幹細胞に関する測定の単位のことを指す。
本出願で使用される場合、用語「ドナー(donor)」は、レシピエントに細胞又はその後代を投与する前に、その1つ以上の細胞を単離したヒト又は動物を指す。前記1つ以上の細胞は、例えば、造血幹細胞の集団であることがある。
本出願で使用される場合、用語「ダイアボディ」は、2つのポリペプチド鎖を含む二価抗体を指す、ここで、各々のポリペプチド鎖は、同じペプチド鎖上のVH及びVLドメインの分子内会合が不可能であるくらい短いリンカー(例えば、5つのアミノ酸から構成されるリンカー)によって連結されたVH及びVLドメインを含む。この構成によって、それぞれのドメインは、別のポリペプチド鎖上の相補的ドメインと対になって、ホモ二量体構造を形成する。従って、用語「トリアボディ」は、3つのペプチド鎖を含む三価抗体を指し、その各々は、同じペプチド鎖内のVH及びVLドメインの分子内会合を可能にするには非常に短すぎるリンカー(例えば、1~2アミノ酸から構成されるリンカー)によって連結された1つのVHドメイン及び1つのVLドメインを含む。このようにして構成されたペプチドは、その生来の構造に折りたたまれるために、通常は、隣接するペプチド鎖のVHドメイン及びVLドメインが空間的に互いに近接するように、三量体化する(例えば、Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-48, 1993を参照)。
本出願で使用される場合、「薬物対抗体比(drug-to-antibody ratio)」又は「DAR」は、コンジュゲートの抗体にアタッチメントした(attached)薬物(例えば、アントラサイクリン)の数を指す。抗体上の連結部位の個数に応じて、より高い搭載数も考えられるが、ADCのDARは1~8の範囲であることがある。ある特定の実施形態では、前記コンジュゲートは、1、2、3、4、5、6、7、又は8のDARを有する。
本出願で使用される場合、用語「内因性」は、ヒト患者のような特定の生命体に天然に見出される分子、細胞、組織、又は臓器(例えば、造血幹細胞、又は巨核球、血小板(thrombocyte)、血小板(platelet)、赤血球、マスト細胞、骨髄芽球(myeloblast)、好塩基球、好中球、好酸球、ミクログリア細胞、顆粒球、単球、破骨細胞、抗原提示細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラル・キラー細胞、T-リンパ球、又はB-リンパ球のような造血系列の細胞)のような物質を記載する。
本出願で使用される場合、用語「生着能力(engraftment potential)」は、造血幹細胞及び造血前駆細胞が組織に再生着する能力を指すために使用され、そのような細胞が天然に循環しているか、又は移植によって提供されるかに関わらない。前記用語は、注目する組織内での、細胞の組織ホーミング及び細胞のコロニー形成のような、生着を取り巻くか、又は生着に至るすべての事象を包含する。生着の効率又は生着の割合は、当業者に公知の任意の臨床的に許容されるパラメータを用いて評価又は定量することができ、例えば、競合的再生着ユニット(competitive repopulating unit)(CRU)を評価すること;幹細胞がホーミングした、コロニー形成をした、若しくは生着した組織において、マーカーが取り込まれること若しくは発現すること;又は、疾患の進行、造血幹細胞及び造血前駆細胞の生存、若しくはレシピエントの延命により、対象の進行を評価すること、を挙げることができる。生着は、移植後の末梢血中の白血球細胞数を測定することによっても判定することができる。生着を、骨髄吸引サンプルにおけるドナー細胞による骨髄細胞の回復率を測定することによって、評価することもできる。
本出願で使用される場合、用語「外因性」は、ヒト患者のような特定の生命体に天然に見出されない分子、細胞、組織、又は臓器(例えば、造血幹細胞、又は巨核球、血小板(thrombocyte)、血小板(platelet)、赤血球、マスト細胞、骨髄芽球(myeloblast)、好塩基球、好中球、好酸球、ミクログリア細胞、顆粒球、単球、破骨細胞、抗原提示細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラル・キラー細胞、T-リンパ球、又はB-リンパ球のような造血系列の細胞)のような物質を記載する。レシピエント生命体(例えば、レシピエント患者)にとって外因性の物質は、前記物質の由来である、ドナー生命体(例えば、ドナー対象)の中に自然に存在することがある。例えば、同種異系の細胞移植片は、前記レシピエントに対しては外因性であるが、前記ドナーに対しては生来的である細胞を含む。外因性物質には、外部供給源から生命体に又はそこから抽出した培養物に、提供されるものが含まれる。
用語「有効量」とは、治療薬剤(例えば、抗-CD117抗体、又は抗-CD117 ADC)の、所望のアウトカムをもたらすのに十分な、量又は用量を意味する。
用語「Fc」、「Fc領域」、及び「Fcドメイン」は、本出願で使用される場合、免疫グロブリンの一部(例えば、IgG分子のパパイン消化によって得られる結晶化可能なフラグメントに関するIgG分子)を指す。前記Fc領域は、ジスルフィド結合によって連結した、IgG分子の2本の重鎖のC末端側の半分を含む。これは、抗原結合活性を有さないが、糖部分構造を含む、並びに補体及びFcRnレセプター等を含むFcレセプターに対する結合部位を含む(下記参照)。例えば、Fc領域は、第2の定常ドメインCH2(例えば、IgG1のEU位置231~340の残基)及び第3の定常ドメインCH3(例えば、ヒトIgG1のEU位置341~447の残基)を含む。本出願で使用される場合、前記Fc領域は、「ロワー・ヒンジ領域(lower hinge region)」(例えば、ヒトIgG1のEU位置233-239の残基)を含む。
Fcは、単離されたこの領域、又は抗体、抗体フラグメント、若しくはFc融合タンパク質の文脈におけるこの領域、を指すことがある。多型が、限定されるものではないが、EU位置270、272、312、315、356、及び358等を含む、Fcドメイン内の多くの位置で観察されてきており、従って、本出願で提示される配列と当該技術分野で知られている配列との間にわずかな差異が存在することがある。従って、「野生型IgG Fcドメイン」又は「WT IgG Fcドメイン」は、任意の自然に発生するIgG Fc領域(即ち、任意のアレル)を指す。ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の重鎖の配列は、多くの配列データベース中に見つけることができ、例えば、Uniprotデータベース(www.uniprot.org)では、それぞれ、アクセション番号P01857(IGHG1_human)、P01859(IGHG2_human)、P01860(IGHG3_human)及びP01861(IGHG1_human)である。「WT」Fc領域の例は、配列番号(SEQ ID NO): 122 (Fc 領域を含む重鎖定常領域を提供する) で提供される。
本出願で使用される場合、用語「改変したFc領域」又は「バリアントFc領域」は、Fc領域内の任意の位置に導入された、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、挿入又は改変を含むIgG Fcドメインを指す。ある特定の態様では、バリアントIgG Fcドメインは、1つ以上のアミノ酸置換を含まない野生型Fcドメインと比較して、FcガンマR及び/又はC1qに対する結合親和性が減少する又は無くなるという結果を産む、1つ以上のアミノ酸置換を含む。更に、Fc結合相互作用は、様々なエフェクター機能及び下流のシグナル伝達イベント(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody dependent cell-mediated cytotoxicity (ADCC))及び補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity (CDC))等を含むが、これらに限定されない)にとって必須である。従って、ある特定の態様では、バリアントFcドメインを含む抗体(例えば、抗体、融合タンパク質、又はコンジュゲート)は、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、挿入、又は改変を含まない (例えば、Fc領域中の対応する位置に天然に存在するアミノ酸残基を含む、改変していないFc領域)が他の点では同じアミノ酸配列を有する、対応する抗体と比較して、少なくとも1種以上のFcリガンド(例えば、FcガンマR)に対する結合親和性が変わることがある。
バリアントFcドメインは、それらを構成するアミノ酸改変に従って定義される。Fc領域に関して本出願で議論される全てのアミノ酸置換について、番号付けは、常にKabatにあるようなEUインデックスに従う。従って、例えば、D265Cは、親Fcドメインに対して、EU位置265のアスパラギン酸(D)がシステイン(C)で置換されたFcバリアントである。置換を示す順序は任意であることに留意されたい。同様に、例えば、D265C/L234A/L235Aは、親Fcドメインに対して、EU位置265(DからCへ)、234(LからAへ)、及び235(LからAへ)に置換を有するFcバリアントを定義する。バリアントはまた、変異EUアミノ酸位置における、その最終的なアミノ酸組成に従って指定されることもある。例えば、L234A/L235A変異は、「LALA」と呼ぶことがある。更なる例として、E233P.L234V.L235A.delG236(236の欠失)変異は、「EPLVLAdelG」と呼ぶことがある。更に別の例として、I253A.H310A.H435A変異は、「IHH」と呼ぶことがある。置換を示す順序は任意であることに留意されたい。
用語「Fcガンマ・レセプター」又は「FcガンマR」は、本出願で使用される場合、IgG抗体Fc領域に結合する、及びFcガンマR遺伝子によってコードされるタンパク質のファミリーの任意のメンバーを指す。ヒトにおいては、このファミリーは、限定されるものではないが、FcガンマRI (CD64)(例えば、アイソフォーム FcガンマRIa、FcガンマRIb、及びFcガンマRIcなど);FcガンマRII (CD32)(例えば、アイソフォームFcガンマRIIa[例えば、アロタイプH131及びR131]、FcガンマRIIb[例えば、FcガンマRIIb-1 及び FcガンマRIIb-2]、並びにFcガンマRIIcなど);並びにFcガンマRIII (CD16)(例えば、アイソフォームFcガンマRIIIa[例えば、アロタイプV158及びF158]並びにFcガンマRIIIb[例えば、アロタイプFcガンマRIIIb-NA1及びFcガンマRIIIb-NA2]、並びに任意の未発見のヒトFcガンマR又はFcガンマRのアイソフォーム若しくはアロタイプ、を含む。FcガンマRは、任意の生命体(例えば、限定されるものではないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサルなど)に由来することがある。マウスFcガンマRは、限定されるものではないが、FcガンマRI (CD64)、FcガンマRII (CD32)、FcガンマRIII (CD16)、及びFcガンマRIII-2 (CD16-2)、並びに任意の未発見のマウスFcガンマR又はFcガンマRのアイソフォーム若しくはアロタイプ、を含む。
用語「エフェクター機能」は、本出願で使用される場合、FcドメインとFcレセプターとの相互作用から生じる、生化学的な事象を指す。エフェクター機能としては、限定されるものではないが、ADCC、ADCP、及びCDCが挙げられる。本出願で使用される「エフェクター細胞」は、1つ以上のFcレセプターを発現する、及び1つ以上のエフェクター機能を媒介する、免疫システムの細胞をいう。エフェクター細胞としては、限定されるものではないが、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板(platelets)、B細胞、大顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラル・キラー(NK)細胞、及びガンマ・デルタT細胞、が挙げられる、並びに任意の生命体(例えば、限定されるものではないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサル)に由来する。
本出願で使用される場合、用語「サイレント(silent)」、「サイレンス化(silenced)」又は「サイレンシング(silencing)」は、改変していないFc領域を含む同じ抗体のFcガンマ・レセプター(FcγR)への結合と比較して、Fcガンマ・レセプター(FcγR)への結合が減少した、本出願に記載の改変したFc領域を有する抗体を指す(例えば、BLIで測定した場合、例えば、改変していないFc領域を含む同じ抗体のFcγRへの結合と比較して、FcγRへの結合の減少が、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%、である)。いくつかの実施形態では、Fcサイレンス化(Fc silenced)抗体は、FcγRに、検出可能な結合を示さない。改変したFc領域を有する抗体のFcγRへの結合を、当技術分野で公知の様々な技術(例えば、限定されるものではないが、平衡方法[例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);KinExA、Rathanaswami et al. Analytical Biochemistry, Vol. 373:52-60, 2008;ラジオイムノアッセイ(RIA)]、又は表面プラズモン共鳴アッセイ若しくは他のメカニズムの動態に基づくアッセイ[例えば、BIACORETM解析若しくはOctetTM解析(forteBIO)]、並びに他の方法[例えば、間接的結合アッセイ、競合的結合アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動及びクロマトグラフィー(例えば、ゲルろ過)など])を使用して、測定することができる。これらの及び他の方法は、1つ以上の評価する構成成分上にある標識を利用することがある、及び/又は、様々な検出方法(例えば、限定されるものではないが、発色性標識、蛍光性標識、発光性標識、又は同位体標識など)を使用することがある。結合親和性及び動態に関しては、Paul, W. E., ed., Fundamental Immunology, 4th Ed., Lippincott-Raven, Philadelphia (1999)(これは、抗体-免疫原相互作用に焦点を当てている)に、詳細に記載されている。競合的結合アッセイの一例は、標識抗原と目的の抗体とを、非-標識の抗原の量を増やしながら、その存在下で、インキュベーションすること、及び前記標識抗原に結合した抗体を検出すること、を含むラジオイムノアッセイである。そのデータから、スキャッチャード・プロット解析により、特定の抗原に対する目的の抗体の親和性及び結合オフ-レート(off-rate)を決定することがある。第2の抗体との競合を、ラジオイムノアッセイを使用して、測定することもある。この場合、前記抗原を、標識化合物にコンジュゲートした目的の抗体と、非-標識の第2の抗体の量を増やしながら、その存在下で、インキュベーションする。
本出願で使用される場合、用語「改変していないFc領域を含む同じ抗体」は、列挙したアミノ酸置換(例えば、D265C、H435A 、L234A、及び/又はL235A)を欠くが、他の点では、比較されるFcを改変した抗体と、同じアミノ酸配列を有する抗体を指す。
用語「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody dependent cell-mediated cytotoxicity)」又は「ADCC」は、細胞傷害性の一形態を指し、そこでは、Fcドメインを含むポリペプチド(例えば、抗体)が、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、主にNK細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcR)に結合する、並びにこれらの細胞傷害性エフェクター細胞が、抗原を有する「ターゲット細胞」に特異的に結合するようになる、及び続いてその細胞毒素によって前記ターゲット細胞を傷害する(Hogarth et al., Nature review Drug Discovery 2012, 11:313)。抗体及びそのフラグメントに加えて、抗原保有ターゲット細胞に特異的に結合する能力を有する、Fcドメインを含む他のポリペプチド(例えば、Fc融合タンパク質及びFcコンジュゲート・タンパク質)は、細胞媒介性細胞傷害をもたらすことが企図される。
単純化のために、Fcドメインを含むポリペプチドの活性から生じる細胞媒介性細胞傷害も、本出願では、ADCC活性と呼ぶ。本開示の任意の特定のポリペプチドの、ADCCによるターゲット細胞の溶解を媒介する能力を、アッセイすることができる。ADCC活性を評価するために、目的のポリぺプチド(例えば、抗体)を、免疫エフェクター細胞と一緒に、ターゲット細胞に添加し、その結果、前記ターゲット細胞を細胞溶解させる。細胞溶解を、一般的に、溶解した細胞から、標識(例えば、放射活性基質、蛍光色素又は天然の細胞内タンパク質)が放出されることによって、検出する。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラル・キラー(NK)細胞、が挙げられる。in vitro ADCCアッセイの具体例は、Bruggemann et al., J. Exp. Med. 166:1351 (1987); Wilkinson et al., J. Immunol. Methods 258:183 (2001); Patel et al., J. Immunol. Methods 184:29 (1995)、に記載されている。或いは、又は更に、目的の抗体のADCC活性を、in vivoで(例えば、Clynes et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:652 (1998)に開示されるような動物モデルで)、評価することがある。
用語「完全長抗体」又は「インタクトな抗体」は、本出願では、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために互換的に使用され、本出願で定義されるような抗体フラグメントではない。このように、IgG 抗体については、インタクトな抗体は、可変領域、定常領域、及びFc領域をそれぞれ含む2つの重鎖、並びに可変領域、及び定常領域をそれぞれ含む2つの軽鎖、を含む。より具体的には、インタクトなIgGは、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)をそれぞれ含む2つの軽鎖を含む、並びに重鎖可変領域(VH)及び3つの重鎖定常領域(CH1, CH2,及びCH3)をそれぞれ含む2つの重鎖を含む。CH2及びCH3は、重鎖のFc領域を表す。1つの実施形態では、本出願に記載のADCは、抗-CD117のインタクトな抗体を含む。
本出願で使用する場合、用語「骨格領域」又は「FW領域」は、抗体又はその抗原結合フラグメントのCDRに隣接するアミノ酸残基を含む。 FW領域の残基は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、Fabフラグメント、単鎖抗体フラグメント、scFvフラグメント、抗体ドメイン、及びバイスペシフィック抗体などに存在することがある。
また、本出願に記載の配列番号に記載の配列の「保存的な配列改変("conservative sequence modifications")」、即ち、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の改変であって、前記ヌクレオチド配列がコードする抗体又は前記アミノ酸配列を含む抗体、の抗原への結合が無くならない、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の改変、も提供される。このような保存的な配列改変としては、保存的なヌクレオチドの及びアミノ酸の置換、並びにヌクレオチドの及びアミノ酸の付加及び欠失、が挙げられる。例えば、部位特異的な変異誘発及びPCRを介した変異誘発など、当技術分野で公知の通常の技術によって、改変を、本出願に記載の配列番号の中に導入することがある。保存的な配列改変としては、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換する保存的なアミノ酸置換が挙げられる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。従って、好ましくは、抗-CD117抗体中の予測される非必須アミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置換する。抗原結合を無くすことが無いヌクレオチド及びアミノ酸の保存的置換を同定する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32:1180-1187 (1993); Kobayashi et al. Protein Eng. 12(10):879-884 (1999); 及び Burks et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:412-417 (1997))。
本出願で使用される場合、用語「半減期」は、対象、例えば、ヒト対象において、体内での抗体薬物の血漿中濃度が半分又は50%減少するのにかかる時間を指す。この血清濃度の50%の低下は、循環する薬物の量を反映する。
本出願で使用される場合、用語「造血幹細胞」(「HSC」)とは、自己複製する能力、及び顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球,好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(thrombocyte)(例えば、巨核芽球、血小板(platelet)産生巨核球、血小板(platelets))、単球(例えば、単球、マクロファージ)、樹状細胞、ミクログリア、破骨細胞、及びリンパ球(例えば、NK細胞、B細胞及びT細胞)を含むがこれらに限定されない多様な系列を含む成熟血液細胞に分化する能力、を有する未成熟血液細胞を指す。そのような細胞は、CD34+細胞を含むことがある。CD34+細胞は、CD34細胞表面マーカーを発現する未成熟細胞である。ヒトでは、CD34+細胞は、上記に定義された幹細胞の特性を有する細胞の亜集団を含むと考えられているが、一方マウスでは、HSCはCD34-である。更に、HSCはまた、長期再生着HSC(LT-HSC)及び短期再生着HSC(ST-HSC)も指す。LT-HSC及びST-HSCは、機能的な可能性及び細胞表面マーカーの発現に基づいて区別される。例えば、ヒトHSCは、CD34+、CD38-、CD45RA-、CD90+、CD49F+、及びlin-(CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD10、CD11B、CD19、CD20、CD56、CD235A等を含む成熟系列マーカーについてネガティブ)である。マウスでは、骨髄LT-HSCは、CD34-、SCA-1+、C-kit+、CD135-、Slamfl/CD150+、CD48-、及びlin-(Ter119、CD11b、Gr1、CD3、CD4、CD8、B220、IL7ra等を含む成熟系列マーカーについてネガティブ)であるが、一方、ST-HSCは、CD34+、SCA-1+、C-kit+、CD135-、Slamfl/CD150+、及びlin-(Ter119、CD11b、Gr1、CD3、CD4、CD8、B220、IL7ra等を含む成熟系列マーカーについてネガティブ)である。加えて、ST-HSCは、ホメオスタシス条件下で、LT-HSCよりも静止性が低く、増殖性が高い。しかし、LT-HSCは、自己複製能がより高い(即ち、LT-HSCは、成人期を通して生存し、レシピエントを代々介して連続的に移植することができる)のに対し、ST-HSCは、自己複製能が限られている(即ち、ST-HSCは、限られた期間のみ生存し、連続して移植することはできない)。これらのHSCの何れも、本出願に記載される方法において使用され得る。ST-HSCは、それらが高度に増殖性であり、それ故、分化した後代をより迅速に生じ得るので、特に有用である。
本出願で使用される場合、用語「造血幹細胞の機能的な可能性」は、1)多能性(multi-potency)(これは、限定されるものではないが、顆粒球[例えば、前骨髄球、好中球,好酸球、好塩基球]、赤血球[例えば、網状赤血球、赤血球]、血小板(thrombocyte)[例えば、巨核芽球、血小板(platelet)産生巨核球、血小板(platelets)]、単球[例えば、単球、マクロファージ]、樹状細胞、ミクログリア、破骨細胞、及びリンパ球[例えば、NK細胞、B-細胞及びT-細胞]等を含む、複数の様々な血液系列に分化する能力を指す)、2)自己複製(これは、母細胞と同等の可能性を有する娘細胞を生じさせる造血幹細胞の能力を指す、更に、この能力は消耗することなく個々の生存期間を通して繰り返し起こりうる)、並びに3)造血幹細胞又はその後代が、移植レシピエントに再導入されると、造血幹細胞ニッチにホーミングし、生産的で持続的な造血を再確立する作用能、を含む、造血幹細胞の機能的な特性を指す。
本出願で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムな若しくは部位特異的な変異誘発によって導入された変異、又はin vivoでの遺伝子再構成若しくは体細胞変異によって導入された変異)を含むことがある。しかし、本出願で使用される場合、用語「ヒト抗体」に、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列をヒトの骨格配列上に移植した抗体が含まれることを、意図していない。ヒト抗体を、ヒト細胞において(例えば、組換え発現によって)、又は機能的に再構成したヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を発現し得る非-ヒト動物又は原核若しくは真核細胞によって、産生することがある。ヒト抗体が単鎖抗体である場合、それは生来のヒト抗体には見出されないリンカー・ペプチドを含むことがある。例えば、Fvは、2個~約8個のグリシン又は他のアミノ酸残基のようなリンカー・ペプチドを含むことがあり、リンカー・ペプチドは前記重鎖の可変領域及び前記軽鎖の可変領域を連結する。このようなリンカー・ペプチドは、ヒト起源であると見なされる。ヒト抗体を、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用するファージ・ディスプレイ法を含む、当該技術分野で公知の種々の方法によって作製することがある。ヒト抗体はまた、機能的な内因性の免疫グロブリンを発現することはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニック・マウスを使用して産生することもある(例えば、PCT公開番号WO 1998/24893; WO 1992/01047; WO 1996/34096; WO 1996/33735;米国特許第5,413,923号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,569,825号;第5,661,016号;第5,545,806号;第5,814,318号;第5,885,793号;第5,916,771号;及び第5,939,598号を参照のこと)。
非-ヒト(例えば、マウス又はラット)抗体の「ヒト化」形態は、非-ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限に含む免疫グロブリンである。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的な全てを含み、ここで、CDR領域の全て又は実質的な全ては非-ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的な全てはヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリン・コンセンサス配列の少なくとも一部を含むことがある。抗体をヒト化する方法は、当技術分野で公知である、及び、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-7, 1988; 米国特許 5,530,101; 5,585,089; 5,693,761; 5,693,762; 及び 6,180,370 to Queen et al.; EP239400; PCT公開 WO 91/09967; 米国特許 5,225,539; EP592106; EP519596; Padlan, 1991, Mol. Immunol., 28:489-498; Studnicka et al., 1994, Prot. Eng. 7:805-814; Roguska et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. 91:969-973; 及び 米国特許5,565,332に記載されている。
本出願で使用される場合、造血幹細胞移植を「必要とする」患者は、1種以上の血液細胞の型に欠陥又は欠損を示す患者、並びに幹細胞障害、自己免疫疾患、がん、又は本出願に記載する他の病態を有する患者を含む。造血幹細胞は、一般に、1)多能性(multi-potency)、従って、限定されるものではないが、顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球,好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(thrombocyte)(例えば、巨核芽球、血小板(platelet)産生巨核球、血小板(platelets))、単球(例えば、単球、マクロファージ)、樹状細胞、ミクログリア、破骨細胞、及びリンパ球(例えば、NK細胞、B-細胞及びT-細胞)等を含む、複数の様々な血液系列に分化することができる、2)自己複製、従って、母細胞と同等の可能性を有する娘細胞を生じさせることができる、並びに3)移植レシピエントに再導入されると、造血幹細胞ニッチにホーミングし、生産的で持続的な造血を再確立する作用能、を示す。従って、造血系列の1種以上の細胞型において欠陥がある又は欠損した患者に、in vivoで、その欠陥がある又は欠損した細胞の集団を再構成するために、造血幹細胞を投与することがある。例えば、前記患者は、がんに罹患していることがあり、前記欠損は、がん性細胞集団を選択的に又は非-特異的に減少させる化学療法剤又は他の薬剤を投与することによって引き起こされることがある。更に、又はその代替として、前記患者は鎌状赤血球貧血、サラセミア、ファンコニ貧血、再生不良性貧血、及びウィスコット-アルドリッチ症候群等の異常ヘモグロビン症(例えば、非-悪性異常ヘモグロビン症)に罹患していることがある。前記対象は、アデノシン・デアミナーゼ重度複合免疫不全症(ADA SCID)、HIV/AIDS、異染性白質ジストロフィー、ダイアモンド-ブラックファン貧血、及びシュワックマン-ダイアモンド症候群に罹患している対象であることがある。前記対象は遺伝性の血液障害(例えば、鎌状赤血球貧血)又は自己免疫疾患を有するか、又はその影響を受けていることがある。更に、又はその代替として、前記対象は、神経芽細胞腫又は血液がん等の悪性腫瘍を有するか、又はその影響を受けていることがある。例えば、前記対象は、白血病、リンパ腫又は骨髄腫を有していることがある。いくつかの実施形態では、前記対象は、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫又は非-ホジキン・リンパ腫(non-Hodgkin’s lymphoma)を有する。いくつかの実施形態では、前記対象は骨髄異形成症候群を有する。いくつかの実施形態では、前記対象は、強皮症、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、I型糖尿病等の自己免疫疾患、又は本出願に記載の別の自己免疫性の病態を有する。いくつかの実施形態では、前記対象は、キメラ抗原レセプターT-細胞(CART)療法を必要とする。いくつかの実施形態では、前記対象は、代謝性貯蔵障害を有するか、又はその影響を受けている。前記対象は、グリコーゲン蓄積症、ムコ多糖症、ゴーシェ病、ハーラー病、スフィンゴ脂質症、異染性白質ジストロフィー、からなる群より選択される代謝障害、又は本出願に開示される治療及び療法から恩恵を得ることができる任意の他の疾患又は障害(限定されるものではないが、重度複合免疫不全症、ウィスコット-アルドリッチ症候群、高免疫グロブリンM症候群、チェディアック-東病、遺伝性リンパ組織球症、大理石骨病、骨形成不全症、貯蔵疾患、サラセミア・メジャー、鎌状赤血球症、全身性硬化症、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、若年性関節リウマチ)、並びに"Bone Marrow Transplantation for Non-Malignant disease"、ASH Education Book、1:319-338(2000)(この開示は、造血幹細胞移植療法を処方することによって治療される可能性のある病態に関するものであり、その全体が本出願に参照により取り込まれる)に記載されている疾患又は障害、に罹患している、又はその影響を受けていることがある。更に又は代わりに、造血幹細胞移植を「必要とする」患者は、前述の病態のうちの1種に罹患している又は罹患していない患者(それにもかかわらず、巨核球、血小板(thrombocyte)、血小板(platelet)、赤血球、マスト細胞、骨髄芽球、好塩基球、好中球、好酸球、ミクログリア、顆粒球、単球、破骨細胞、抗原提示細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラル・キラー細胞、T-リンパ球、及びB-リンパ球等の造血系列内の1種以上の内因性の細胞型のレベルの低下[例えば、その他の点では健康である対象のレベルと比較して、低下]を示す)であることがある。当業者の中のある者は、例えば、当該技術分野で公知の手順の中でも特に、フロー・サイトメトリー及び蛍光活性化細胞選別(FACS)方法によって、前記の細胞型又は他の血液細胞の型のうちの1種以上のもののレベルが、その他の点では健康である対象に対して、低下しているかどうかを容易に決定することができる。
本出願で使用される場合、「中性抗体(neutral antibody)」は、レセプターのリガンドへの結合又は酵素の基質との相互作用等を含む、個別のターゲット又は特定のターゲット(例えば、CD117)の活性を有意に中和、遮断、阻害、無効化、減少又は妨害することができない抗体、又はその抗原結合フラグメントをいう。1つの実施形態では、中性抗-CD117抗体、又はそのフラグメントは、SCF依存性の細胞増殖を実質的に阻害せず、SCFがCD117に結合することをクロス・ブロックしない抗-CD117抗体である。中性抗体(neutral antibody)の例は、Ab67(又はAb67の結合領域を有する抗体)である。対照的に、「アンタゴニスト」抗-CD117抗体は、SCF依存性の増殖を阻害し、SCFがCD117に結合することをクロス・ブロックすることができる。アンタゴニスト抗体の例は、Ab55(又はAb55の結合領域を有する抗体)である。
本出願で使用される場合、用語「レシピエント」は、造血幹細胞の集団を含む移植片等の移植片を受ける患者を指す。レシピエントに投与される移植細胞は、例えば、自家、同系、又は同種異系細胞であることがある。
本出願で使用される場合、用語「サンプル」は、対象から採取された検体(例えば、血液、血液成分(例えば、血清又は血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、胎盤又は真皮)、膵液、絨毛膜絨毛サンプル、及び細胞)を指す。
本出願で使用される場合、用語「scFv」は、抗体由来の重鎖の可変ドメインと軽鎖の可変ドメインとが結合して1本の鎖を形成している、単鎖Fv抗体を指す。scFv断片は、リンカーによって分離された、抗体軽鎖の可変領域(VL) (例えば、CDR-L1、CDR-L2、及び/又はCDR-L3)及び抗体重鎖の可変領域(VH) (例えば、CDR-H1、CDR-H2、及び/又はCDR-H3)を含む単一のポリペプチド鎖を含む。scFvフラグメントのVL領域及びVH領域を連結するリンカーは、タンパク質を構成するアミノ酸から構成されるペプチド・リンカーであることがある。代替のリンカーを、タンパク質分解に対するscFvフラグメントの耐性を増大させるために(例えば、D-アミノ酸を含有するリンカー)、scFvフラグメントの溶解性を増大させるために(例えば、ポリエチレン・グリコール含有リンカー又は繰り返しのグリシン及びセリン残基を含有するポリペプチド等の親水性リンカー)、前記分子の生物物理学的安定性を改善するために(例えば、分子内又は分子間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を含有するリンカー)、又は前記scFvフラグメントの免疫原性を弱めるために(例えば、グリコシル化部位を含有するリンカー)、使用することがある。本出願に記載されるscFv分子の可変領域を、それらが由来する抗体分子からアミノ酸配列が変化するように、改変することができることもまた、当業者は理解する。例えば、scFvの作用能(対応する抗体が認識する抗原に結合する作用能)を保存又は増強するために、アミノ酸残基での保存的置換又は変化をもたらすヌクレオチド又はアミノ酸置換を(例えば、CDR及び/又は骨格残基において)行うことがある。
「特異的な結合」又は「特異的に結合する」という用語は、本出願で使用される場合、抗体(又はADC)が、タンパク質を広く認識し及び結合するというよりも、寧ろ特異的なタンパク質構造(エピトープ)を認識し及び結合する作用能のことをいう。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識した「A」と前記抗体とを含有する反応物中に、エピトープA(又は遊離の非標識A)を含有する分子が存在すると、前記抗体に結合する標識Aの量が減少する。例えば、抗体は、もし前記抗体が、標識されている場合、対応する非標識抗体によって、そのターゲットから競合的に解離することがあるならば、ターゲットに「特異的に結合する」。1つの実施形態では、抗体はターゲット(例えば、CD117)に特異的に結合する(もし前記抗体が前記ターゲットに対して、少なくとも約10-4 M、10-5 M、10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 M又は未満(未満は10-12未満である数字を意味する、例えば、10-13)のKDを有する場合である)。1つの実施形態では、本出願で使用される場合、用語「CD117への特異的結合」又は「CD117に特異的に結合する」は、抗体又はCD117に結合し、表面プラズモン共鳴によって測定した場合、1.0×10-7 M以下の解離定数(KD)を有する抗体(又はADC)を指す。1つの実施形態では、KD(M)を、標準的なバイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry) (BLI)に従って測定する。1つの実施形態では、Koff(1/s)を、標準的なバイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry) (BLI)に従って測定する。しかし、前記抗体は、配列が関連している2種以上の抗原に特異的に結合することができることを理解されたい。例えば、1つの実施形態では、抗体は、CD117のヒト及び非-ヒト(例えば、マウス又は非-ヒトの霊長類)オルソログの両方に特異的に結合することがある。
本出願で使用される場合、用語「対象」及び「患者」は、本出願に記載されるような特定の疾患又は症状に対して治療を受ける、ヒトのような生命体をいう。例えば、ヒト患者のような患者は、外因性の造血幹細胞の生着を促進するために、造血幹細胞移植療法の前に治療を受けることがある。
本出願で使用される場合、語句「血液から実質的にクリアランスされる」は、治療薬剤(例えば、アントラサイクリンを含むADC)を患者に投与した後の時点であって、前記患者から単離された血液サンプル中の前記治療薬剤の濃度が、前記治療薬剤を従来の方法によって検出できないようなものである場合(例えば、前記治療薬剤が、前記治療薬剤を検出するために使用されるデバイス又はアッセイのノイズ閾値を超えて検出できないような場合)のことをいう。当該技術分野で知られている、様々な技法(例えば、当該技術分野で知られている又は本出願に記載されるELISAベースの検出アッセイなど)を使用して、抗体、又は抗体フラグメントを検出することがある。抗体、又は抗体フラグメントを検出するために使用され得る更なるアッセイには、とりわけ当該技術分野で公知の、免疫沈降法及びイムノブロット・アッセイが含まれる。
本出願で使用される場合、語句「幹細胞障害」は、対象のターゲット組織をコンディショニングすることによって、及び/又はターゲット組織中の内因性の幹細胞集団を除去することによって(例えば、対象の骨髄組織から内因性の造血幹細胞集団又は造血前駆細胞集団を除去することによって)、及び/又は対象のターゲット組織中に幹細胞を生着させる又は移植することによって、治療又は治癒され得る任意の疾患、障害、又は症状を広く指す。例えば、I型糖尿病は、造血幹細胞移植によって治癒されることが示されており、本出願に記載の組成物及び方法に従ってコンディショニングすることから恩恵を得ることができる。本出願に記載される組成物及び方法を使用して治療され得る更なる障害には、限定されるものではないが、鎌状赤血球貧血、サラセミア、ファンコニー貧血、再生不良性貧血、ウィスコット‐アルドリッチ症候群、ADA SCID、HIV/AIDS、異染性白質ジストロフィー、ダイアモンド‐ブラックファン貧血、及びシュワックマン‐ダイアモンド症候群が挙げられる。本出願に記載される患者コンディショニング及び/又は造血幹細胞移植の方法を用いて治療することができる更なる疾患には、遺伝性血液疾患(例えば、鎌状赤血球貧血)及び強皮症、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、及びクローン病等の自己免疫疾患が含まれる。本出願に記載されるコンディショニング及び/又は移植方法を使用して治療され得る更なる疾患には、悪性腫瘍(例えば、神経芽細胞腫)、又は血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫)が含まれる。例えば、前記がんは、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、又は非-ホジキン・リンパ腫(non-Hodgkin’s lymphoma)であることがある。本出願に記載のコンディショニング及び/又は移植方法を用いて治療可能な更なる疾患には、骨髄異形成症候群が含まれる。いくつかの実施形態では、前記対象は、代謝性貯蔵障害を有するか、又はそれによって影響を受けている。例えば、前記対象は、グリコーゲン蓄積症、ムコ多糖症、ゴーシェ病、ハーラー病、スフィンゴ脂質症、異染性白質ジストロフィー、から選択される代謝性障害、又は本出願に開示される治療及び療法から恩恵を受けることができる任意の他の疾患又は障害(限定されるものではないが、重度複合免疫不全症、ウィスコット‐アルドリッチ症候群、高免疫グロブリンM(IgM)症候群、チェディアック‐東病、遺伝性リンパ組織球症、大理石骨病、骨形成不全症、貯蔵疾患、サラセミア・メジャー、鎌状赤血球症、全身性硬化症、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)、多発性硬化症、若年性関節リウマチ)、並びに"Bone Marrow Transplantation for Non-Malignant disease"、ASH Education Book、1:319-338(2000)(本開示は、造血幹細胞移植療物を投与する療法によって治療される可能性のある病態に関するものであり、その全体が参照により本出願に取り込まれる)に記載されている疾患又は障害、に罹患している、又は影響を受けていることがある。
本出願で使用される場合、用語「トランスフェクション」は、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラン・トランスフェクション等のような、原核宿主細胞又は真核宿主細胞に外因性のDNAを導入するために一般的に使用される、任意の多種多様な技術のことをいう。
本出願で使用される場合、用語「治療する」又は「治療」は、疾患症状の重篤度及び/又は頻度を減少させること、疾患症状及び/又は前記症状の根本的な原因を取り除くこと、疾患症状及び/又はその根本的な原因の頻度又は可能性を減少させること、並びに疾患によって直接的又は間接的に引き起こされる損傷を改善又は修復すること、生存期間の延長、病的状態の減少、及び/又は別の治療モダリティ(alternative therapeutic modality)の副産物である副作用の減少などの、疾患のあらゆる結果に関するあらゆる改善;をいい、当技術分野で容易に理解されるように、疾患を完全に根絶することは、好ましいことではあるが、治療行為の要件ではない。有益な又は所望の臨床的な結果としては、限定されるものではないが、本出願に記載されるような抗体コンディショニング療法及び続いて行う造血幹細胞移植療法後に、患者において外因性の造血細胞の生着が促進されることが含まれる。更なる有益な結果としては、造血幹細胞移植を必要としている患者において、コンディショニング療法及び続いて外因性の造血幹細胞グラフトを前記患者に投与した後、造血幹細胞の細胞数が増加すること又は相対濃度が増加すること、が挙げられる。本出願に記載される療法の有益な結果としてはまた、コンディショニング療法及び続いて行う造血幹細胞移植療法の後、造血系列の1種以上の細胞(巨核球、血小板(thrombocyte)、血小板(platelet)、赤血球、マスト細胞、骨髄芽球、好塩基球、好中球、好酸球、ミクログリア細胞、顆粒球、単球、破骨細胞、抗原提示細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラル・キラー細胞、T-リンパ球、又はB-リンパ球等)の細胞数が増加すること又は相対濃度が増加すること、が挙げられることもある。更なる有益な結果としては、がん細胞 (例えば、CD117+白血病細胞)又は自己免疫細胞(例えば、自己抗原と交差反応するT-細胞レセプターを発現するCD117+ T-細胞等のCD117+自己免疫リンパ球) の集団等の、疾患を引き起こす細胞集団、の量が減少すること、が挙げられることがある。本開示の方法が障害を予防することを対象とする限り、用語「予防する」は、疾患の状態が完全に阻止されることを必要としないことが理解される。むしろ、本出願で使用される場合、予防するという用語は、疾患に感受性がある集団を同定し、疾患の発症前に本開示の化合物を投与すること等を、当業者ができることをいう。前記用語は、疾患の状態が完全に回避されることを意味するものではない。
本出願で使用される場合、用語「バリアント」及び「誘導体」は、互換的に使用され、そして本出願に記載される化合物、ペプチド、タンパク質、又は他の基質の天然に存在する、合成の、及び半合成の類似体のことをいう。本出願に記載の化合物、ペプチド、タンパク質、又は他の物質のバリアント又は誘導体は、元の物質の生物学的活性を保持又は改善することがある。
本出願で使用される場合、用語「ベクター」は、プラスミド、DNAベクター、プラスミド、RNAベクター、ウイルス、又は他の好適なレプリコン等の、核酸ベクターを含む。本出願に記載される発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列、並びに、例えば、タンパク質を発現させる及び/又は哺乳動物細胞のゲノムの中にこれらのポリヌクレオチド配列を組み込ませるために使用する、更なる配列エレメントを含むことがある。本開示の抗体及び抗体フラグメントを発現させるのに用いることができる特定のベクターとしては、遺伝子転写を指示するプロモータ領域及びエンハンサー等の、調節配列を含むプラスミド、が挙げられる。抗体及び抗体フラグメントを発現させるための他の有用なベクターは、これらの遺伝子の翻訳速度を増強するか、又は遺伝子転写から生じるmRNAの安定性又は核外への移行を改善するポリヌクレオチド配列を含む。これらの配列要素としては、例えば、発現ベクター上にある遺伝子を効率的に転写するようにする、5'及び3'非翻訳領域及びポリアデニル化シグナル部位、が挙げられることがある。本出願に記載される発現ベクターはまた、このようなベクターを含む細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含むこともある。好適なマーカーの例としては、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、及びノウルセオスリシン(nourseothricin)等の抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子、が挙げられる。
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)
本出願に記載されるように、CD117に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントは、細胞毒素分子(即ち、PNUのような細胞毒素)にコンジュゲート(結合)することがあり、それによって、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を形成する。本出願で用いる場合、用語「細胞毒素」、「細胞毒素部分構造」及び「薬物」を、互換的に使用する。
特に、本出願に開示されるADCは、CD117(その抗原結合フラグメントを含む)を細胞毒素部分構造(例えば、PBD)にコンジュゲートさせた(即ち、リンカーによって共有結合アタッチメントさせた)抗体を含み、ここで、前記細胞毒素部分構造は、抗体部分構造にコンジュゲートしていない場合、細胞傷害性効果又は細胞増殖抑制効果を有する。様々な実施形態では、細胞毒素部分構造は、コンジュゲート中で結合している場合、細胞傷害性が減少している又は全く無くなっているが、前記リンカーから切断された後に細胞傷害性を再び発揮するようになる。様々な実施形態では、前記細胞毒素部分構造は、前記リンカーから切断されること無しに、細胞毒性を維持する。いくつかの実施形態では、細胞毒素分子は、本出願に開示されているように、細胞内部に取り込まれる抗体、又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートする、その結果、前記抗体、又はそのフラグメントが細胞内に取り込まれた後、前記細胞毒素は、その細胞内のターゲットにアクセスすることがある、及び、例えば、血液細胞死を媒介することがある。従って、本開示のADCは、一般的な式
Ab-(Z-L-Cy)n
であることがある。ここで、抗体又はその抗原結合フラグメント(Ab)は、化学的な部分構造(Z)を介して、リンカー(L)にコンジュゲート(共有結合)し、細胞毒素部分構造(Cy)にコンジュゲート(共有結合)することがある。
従って、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、整数nによって示されるような多数の薬物部分構造にコンジュゲートすることがある、ここで、整数nは抗体当たりの細胞毒素の平均個数を表す、ここで、整数nは、例えば約1~約20の範囲であることがある。いくつかの実施形態では、nは1~4である。いくつかの実施形態では、nは2である。いくつかの実施形態では、nは1である。コンジュゲーション反応によるADCの調製物中の抗体当たりの薬物部分構造の平均個数を、質量分析、ELISAアッセイ、及びHPLCのような従来の手段によって明らかにすることができる。nに関するADCの定量的な分布も決定することができる。場合によっては、逆相HPLC又は電気泳動のような手段によって、nが特定の数値である均質なADCを、他の薬物搭載量を有するADCから、分離する、精製する、及び特性評価することができる。
いくつかの抗体-薬物コンジュゲートについて、nは、その抗体上のアタッチメント(attachment)部位の数によって制限されることがある。例えば、アタッチメント(attachment)がシステインのチオールである場合、抗体は1個だけ又は数個のシステインのチオール基を持つ、又はリンカーがアタッチメントする(attached)のに十分な反応性をもつチオール基を1個だけ又は数個持つ。一般に、抗体は、薬物部分構造に結合することができる遊離及び反応性システイン基を多くは含まない;主に、抗体中のシステインのチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在する。ある特定の実施形態では、抗体を、ジチオトレイトール(DTT)又はトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤で還元して、部分的還元条件下又は全還元条件下で、反応性システインのチオール基を生成させることがある。
ある特定の実施形態では、コンジュゲーション反応の間に、理論上の最大よりも少ない薬物部分構造が、抗体にコンジュゲートする。抗体は、例えば、以下に論じるように、薬物-リンカー中間体又はリンカー試薬と反応しないリジン残基を含むことがある。最も反応性の高いリジン基のみがアミン反応性リンカー試薬と反応することができる。ある特定の実施形態では、抗体を、変性条件下に供し、リジン又はシステインのような反応性求核基を表に露出させる。
ADCの搭載(薬物/抗体比)を、種々の方法で(例えば、(i)抗体に対する、薬物-リンカー中間体又はリンカー試薬のモル過剰を制限すること、(ii)コンジュゲーション反応の時間又は温度を制限すること、(iii)システインのチオール修飾のために、部分的な又は制限的な還元条件下にすること、(iv)リンカー-薬物アタッチメント(attachment)の数及び/又は位置をコントロールするために、システイン残基の数及び位置を改変するように、抗体のアミノ酸配列を組換え技術によって操作すること、によって)、コントロールすることがある。
細胞毒素:アントラサイクリン
本出願に記載されるように、CD117に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントは、細胞毒素分子(即ち、アントラサイクリンのような細胞毒素)にコンジュゲート(結合)することがあり、それによって、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を形成する。本出願で用いる場合、用語「細胞毒素」、「細胞毒素部分構造」及び「薬物」を、互換的に使用する。
特に、本出願に開示されるADCは、細胞毒素部分構造(例えば、アントラサイクリン)にコンジュゲートさせた(即ち、リンカーによって共有結合アタッチメントさせた)、CD117に結合する抗体(その抗原結合フラグメントを含む)を含む、ここで、前記細胞毒素部分構造は、抗体部分構造にコンジュゲートしていない場合、細胞傷害性効果又は細胞増殖抑制効果を有する。様々な実施形態では、細胞毒素部分構造は、コンジュゲート中で結合している場合、細胞傷害性が減少している又は全く無くなっているが、前記リンカーから切断された後に細胞傷害性を再び発揮するようになる。様々な実施形態では、前記細胞毒素部分構造は、前記リンカーから切断されること無しに、細胞毒性を維持する。いくつかの実施形態では、細胞毒素分子は、本出願に開示されているように、細胞内部に取り込まれる抗体、又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートする、その結果、前記抗体、又はそのフラグメントが細胞内に取り込まれた後、前記細胞毒素は、その細胞内のターゲットにアクセスすることがある、及び、例えば、血液細胞死を媒介することがある。従って、本開示のADCは、一般的な式
Ab-(Z-L-Cy)n
であることがある。ここで、抗体又はその抗原結合フラグメント(Ab)は、リンカー(L)にコンジュゲート(共有結合)し、化学的な部分構造(Z)を介して、細胞毒素部分構造(Cy)にコンジュゲート(共有結合)することがある。
従って、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、整数nによって示されるような多数の薬物部分構造にコンジュゲートすることがある、ここで、整数nは抗体当たりの細胞毒素の平均個数を表す、ここで、整数nは、例えば約1~約20の範囲であることがある。いくつかの実施形態では、nは1~4である。いくつかの実施形態では、nは1である。コンジュゲーション反応によるADCの調製物中の抗体当たりの薬物部分構造の平均個数を、質量分析、ELISAアッセイ、及びHPLCのような従来の手段によって明らかにすることができる。nに関するADCの定量的な分布も決定することができる。場合によっては、逆相HPLC又は電気泳動のような手段によって、nが特定の数値である均質なADCを、他の薬物搭載量を有するADCから、分離する、精製する、及び特性評価することができる。
いくつかの抗体-薬物コンジュゲートについて、nは、その抗体上のアタッチメント(attachment)部位の数によって制限されることがある。例えば、アタッチメント(attachment)がシステインのチオールである場合、抗体は1個だけ又は数個のシステインのチオール基を持つ、又はリンカーがアタッチメントする(attached)のに十分な反応性をもつチオール基を1個だけ又は数個持つ。一般に、抗体は、薬物部分構造に結合することができる遊離及び反応性システイン基を多くは含まない;主に、抗体中のシステインのチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在する。ある特定の実施形態では、抗体を、ジチオトレイトール(DTT)又はトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤で還元して、部分的還元条件下又は全還元条件下で、反応性システインのチオール基を生成させることがある。ある特定の実施形態では、薬物搭載が高くなると(例えば、n > 5)、ある特定の抗体-薬物コンジュゲートの凝集性、不安定性、毒性、又は細胞透過性が無くなること、を引き起こすことがある。
ある特定の実施形態では、コンジュゲーション反応の間に、理論上の最大よりも少ない薬物部分構造が、抗体にコンジュゲートする。抗体は、例えば、以下に論じるように、薬物-リンカー中間体又はリンカー試薬と反応しないリジン残基を含むことがある。最も反応性の高いリジン基のみがアミン反応性リンカー試薬と反応することができる。ある特定の実施形態では、抗体を、変性条件下に供し、リジン又はシステインのような反応性求核基を表に露出させる。
ADCの搭載(薬物/抗体比)を、種々の方法で(例えば、(i)抗体に対する、薬物-リンカー中間体又はリンカー試薬のモル過剰を制限すること、(ii)コンジュゲーション反応の時間又は温度を制限すること、(iii)システインのチオール修飾のために、部分的な又は制限的な還元条件下にすること、(iv)リンカー-薬物アタッチメント(attachment)の数及び/又は位置をコントロールするために、システイン残基の数及び位置を改変するように、抗体のアミノ酸配列を組換え技術によって操作すること、によって)、コントロールすることがある。
本出願に記載されるように、抗-CD117抗体及びその抗原結合フラグメントは、細胞毒素にコンジュゲート(連結)することがある。いくつかの実施形態では、本出願に記載の抗-CD117抗体及びその抗原結合フラグメントは、アントラサイクリン分子又はその誘導体である細胞毒素に、コンジュゲートすることがある。アントラサイクリンは、ストレプトミセス(Streptomyces)属のバクテリアから単離され、細胞毒性活性を示す、抗腫瘍抗生物質のサブクラスである。複数の研究により、アントラサイクリンが、以下を含む、多くの様々なメカニズムによって、細胞を傷害することがあることが、示されてきている:1)薬物分子が、前記細胞のDNAの中にインターカレーションし、それによってDNA-依存性の核酸合成が阻害されること;2)前記薬物により、フリー・ラジカルが産生され、次いで、それが細胞性高分子と反応して、前記細胞に損傷を引き起こすこと、又は3)前記薬物分子と前記細胞の膜とが相互作用すること(例えば、Peterson et al., "Transport And Storage Of Anthracycline In Experimental Systems And Human Leukemia" in Anthracycline Antibiotics In Cancer Therapy; 及び N.R. Bachur, "Free Radical Damage," Id, pp.97-102、を参照)。それらの細胞傷害能のために、アントラサイクリンは、多くのがん(例えば、白血病、乳がん(carcinoma)、肺がん、卵巣腺がん及び肉腫など[例えば、Wiernik, P.H., "Anthracycline: Current Status and New Developments," p 11、を参照])の治療に使用されてきている。
アントラサイクリンの代表的な例としては、限定されるものではないが、ダウノルビシン(セルビジン[Cerubidine; Bedford Laboratories])、ドキソルビシン(アドリアマイシン[Adriamycin; Bedford Laboratories];ドキソルビシン塩酸塩、水酸基-ダウノルビシン[hydroxy-daunorubicin]、及びルベックス[Rubex]とも呼ばれる)、エピルビシン(エレンス[Ellence; Pfizer])、及びイダルビシン(イダマイシン[Idamycin; Pfizer Inc.])が挙げられる。ドキソルビシンは、インターカレーションし、酵素トポイソメラーゼII(これは、転写のためにDNAをほどく)の進行を阻害することによって、DNAと相互作用すると考えられている。ドキソルビシンは、トポイソメラーゼII複合体が複製のためにDNA鎖を切断した後、そのトポイソメラーゼII複合体を安定化し、DNA二重らせんが再びシールするのを妨げ、それによって、複製過程を停止させる。ドキソルビシン及びダウノルビシン(DAUNOMYCIN)は、原型の細胞傷害性である天然物アントラサイクリン化学療法剤である(Sessa et al., (2007) Cardiovasc. Toxicol. 7:75-79)。
本出願で使用するのに適したアントラサイクリンの非限定的な一例は、PNU-159682(「PNU」)(ネモルビシンの非常に強力な主要代謝産物)である。PNUは、親ネモルビシンに対して3000倍を超える細胞毒性を示す(Quintieri et al., Clinical Cancer Research 2005, 11, 1608-1617)。PNUは、以下の構造式によって表される:
Figure 2020219774000003
PNUなどのアントラサイクリン上の複数の位置は、連結部分に、及びそれ故に、本出願に記載の抗-CD117抗体又はその抗原-結合フラグメント)に、共有結合する位置として役割を果たすことがある。例えば、リンカーは、ヒドロキシメチル・ケトン側鎖への改変を介して導入され得ることがある。
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素は、以下の構造式(I)で表されるPNU誘導体である:
Figure 2020219774000004

ここで、波線は、本出願に記載されるADCのリンカーへの、共有結合アタッチメント(attachment)の位置を示す。
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素は、以下の構造式(II)で表されるPNU誘導体である:
Figure 2020219774000005

ここで、波線は、本出願に記載されるADCのリンカーへの、共有結合アタッチメント(attachment)の位置を示す。
リンカー
本出願で使用される用語「リンカー」は、抗-CD117抗体又はそのフラグメント(Ab)を細胞毒素(例えば、PNU誘導体)に共有結合させて、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を形成する、共有結合又は原子鎖を含む2価の化学的な部分構造を意味する。
前記抗体及び前記薬物部分構造の共有結合アタッチメント(attachment)は、前記リンカーが2つの反応性官能基を有することを要求する(即ち反応性の意味での二価である)。ペプチド、核酸、薬物、毒素、抗体、ハプテン、及びレポーター基等の2つ以上の機能的な又は生物学的に活性な部分構造を結合させるのに役立つ二価のリンカー試薬が知られており、それらのコンジュゲートを得る方法については記載されている(Hermanson,G.T.(1996)Bioconjugate Techniques; Academic Press: New York、p.234-242)。
従って、現在のリンカーは、2つの反応性末端を有する。1つは、抗体にコンジュゲートするためのものである、もう1つは、細胞毒素にコンジュゲートするためのものである。前記リンカーの抗体コンジュゲーション反応性末端(本出願では、Z'として定義する反応性部分構造)は、典型的には、例えば、前記抗体にあるシステイン・チオール基又はリジン・アミン基を経て、前記抗体にコンジュゲートすることができる化学的な部分構造である、従って、典型的には、マイケル・アクセプター(マレイミドのような)のようなチオール反応性基、クロロ、ブロモ、ヨード若しくはR-スルファニル基のような脱離基、又はカルボキシル基のようなアミン反応性基である。前記抗体に、前記リンカーをコンジュゲートさせることについては、本出願中以下により詳しく説明する。
前記リンカーの細胞毒素コンジュゲーション反応性末端は、典型的には、前記細胞毒素分子内の反応性置換基との結合を形成することによって、前記細胞毒素にコンジュゲートすることができる化学的な部分構造である。非-限定的な例としては、例えば、前記リンカーにあるカルボキシル基又は塩基性アミン基を経由して、それぞれ、前記細胞毒素にある塩基性アミン基又はカルボキシル基とアミド結合を形成すること、又は、前記細胞毒素にあるOH基の又はNH基のアルキル化を経て、それぞれエーテル、アミド又はそれに類するものを形成すること、が挙げられる。
前記用語「リンカー」を、コンジュゲートした形態のリンカーを説明する際に使用する場合、反応性末端の一方又は両方は、前記リンカー及び/又は前記細胞毒素間の、並びに前記リンカー及び/又は前記抗体若しくはその抗原結合フラグメント間の、結合が形成されているので、存在しない(例えば、本出願の以下に記載されるように、反応性部分構造Z′、化学的な部分構造Zに変換されている)か、又は反応途中にある(例えば、カルボン酸のカルボニルだけになっている等)。このようなコンジュゲートさせる反応を、本出願中以下に更に記載する。
種々のリンカーを使用して、記載された抗体、抗原-結合フラグメント、及びリガンドを、細胞毒素分子にコンジュゲートさせることがある。一般的には、本開示に適したリンカーは、循環中は実質的に安定的であるが、そのターゲット細胞の中で又は近傍で、アントラサイクリンを放出することを可能にする。いくつかの実施形態では、本開示に適した、ある特定のリンカーを、「切断可能」又は「非-切断可能」としてカテゴリー化することがある。一般に、切断可能なリンカーは、生理学的な環境に応じて切断される1つ以上の官能基を含む。例えば、切断可能なリンカーには、細胞内酵素(例えば、カテプシンB)の存在下で分解する酵素基質(例えば、バリン-アラニン)、細胞コンパートメントの酸性環境下で分解する酸性-切断可能基(例えば、ハイドロゾン(hydrozone))、又は細胞内の還元環境下で分解する還元可能な基(例えば、ジスルフィド)、が含まれることがある。対照的に、一般的に、非-切断可能なリンカーは、ターゲット細胞内で、前記ADCの抗体部分構造が分解(例えば、リソソーム分解)される中で、前記ADCから放出される。
非-切断可能なリンカー
本出願での使用に適した、非-切断可能なリンカーは、結合、 -(C=O)-, C1-C12アルキレン、C1-C12ヘテロアルキレン、C2-C12アルケニレン、C2-C12ヘテロアルケニレン、C2-C12アルキニレン、C2-C12ヘテロアルキニレン、C3-C12 シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、及びそれらの組合せから選択される1つ以上の基を更に含むことがある。そして、これらの各々は、任意選択的に置換されていることがある、及び/又は1つ以上のヘテロ原子(例えば、S、N、又はO)を1つ以上の炭素原子の代わりに含むことがある。このような基の非-限定的な例としては、アルキレン(CH2)p, (C=O)(CH2)r,及びポリエチレングリコール(PEG; (CH2CH2O)q)、ユニット、-(NHCH2CH2)u-、こここで、p、q、r、t、及びuの各々は、1~12の整数であり、各場合毎に、独立して選択される、が挙げられる。
いくつかの実施形態では、前記リンカーLは、1つ以上の、結合、-(C=O)-、-C(O)NH- 基、-OC(O)NH-基、C1-C12アルキレン、C1-C12ヘテロアルキレン、C2-C12 アルケニレン、C2-C12ヘテロアルケニレン、C2-C12アルキニレン、C2-C12 ヘテロアルキニレン、C3-C12シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、qが1-12からの整数である-(CH2CH2O)q- 基、uが1-12からの整数である-(NHCH2CH2)u- 基、又は溶解性増強基を含む;
ここで、各々のC1-C12アルキレン、C1-C12ヘテロアルキレン、C2-C12アルケニレン、C2-C12 ヘテロアルケニレン、C2-C12 アルキニレン、C2-C12 ヘテロアルキニレン、C3-C12 シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルカリル、アルキル・ヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイド、カルバメート、アリール、ヘテロアリール、スルフィニル、スルフォニル、ヒドロキシル、アルコキシ、スルファニル、ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、及びニトロ、からなる群より、それぞれの場合毎に独立して選択される、1から5個の置換基で、任意選択的に置換されることがある。
いくつかの実施形態では、各々のC1-C12アルキレン、C1-C12ヘテロアルキレン、C2-C12アルケニレン、C2-C12ヘテロアルケニレン、C2-C12 アルキニレン、C2-C12 ヘテロアルキニレン、C3-C12 シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンには、任意選択的に、O、S及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子が割り込むことがある。
いくつかの実施形態では、各々のC1-C6アルキレン、C1-C12ヘテロアルキレン、C2-C12アルケニレン、C2-C12 ヘテロアルケニレン、C2-C12 アルキニレン、C2-C12 ヘテロアルキニレン、C3-C12 シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、又はヘテロアリーレンには、任意選択的に、O、S及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子が割り込むことがある、並びにアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルカリル、アルキルヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイド、カルバメート、アリール、ヘテロアリール、スルフィニル、スルフォニル、ヒドロキシル、アルコキシ、スルファニル、ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、及びニトロ、からなる群より、それぞれの場合毎に独立して選択される、1から5個の置換基で、任意選択的に置換されることがある。
いくつかの実施形態では、前記リンカーLは、溶解性増強基(例えば、米国特許第9,636,421号及び米国特許出願公開第2017/0298145号に開示されている、溶解性増強基など[これらの各々の開示は、その全体が本出願に参照により取り込まれる])を含む。
切断可能なリンカー
いくつかの実施形態では、抗-CD117抗体又はその抗原結合フラグメントと細胞毒素(例えば、PNU誘導体)をコンジュゲートするリンカーは、細胞内の条件下において、切断可能である、その結果、前記リンカーの切断により、細胞内環境において、前記抗体から前記細胞毒素ユニットが放出される。切断可能なリンカーは、局所環境(例えば、細胞外及び細胞内環境[例えば、pH、還元電位、又は酵素濃度])における違いを利用して、ターゲット細胞内で細胞毒素の放出を引き起こすように設計されている。一般的に、切断可能なリンカーは、循環中において比較的安定であるが、1種以上のメカニズム(例えば、限定されるものではないが、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、及びグルクロニダーゼの活性など)を通して、細胞内環境において、特に切断されやすい。本出願で使用される切断可能なリンカーは、循環している血漿の中で、及び/又はターゲット細胞の外側で、安定している、並びにターゲット細胞の内側で、又はターゲット細胞の近傍で、ある効率的な速度で切断されることがある。
好適な切断可能なリンカーとしては、例えば、酵素的加水分解、光分解、酸性条件下での加水分解、塩基性条件下での加水分解、酸化、ジスルフィド還元、求核切断、又は有機金属切断、によって切断され得るリンカーが挙げられる (例えば、Leriche et al., Bioorg. Med. Chem., 20:571-582, 2012,を参照のこと、その開示は、共有結合的なコンジュゲートに適したリンカーに関連するとして、本出願に参照により取り込まれる)。好適な切断可能なリンカーは、例えば、ヒドラジン、ジスルフィド、チオエーテル又はジペプチドなどの化学的な部分構造を含むことがある。
酸性条件下で加水分解可能なリンカーとしては、例えば、ヒドラゾン類、セミカルバゾン類、チオセミカルバゾン類、cis-アコニット・アミド類、オルトエステル類、アセタール類、ケタール類、などが挙げられる。(例えば、U.S. Pat. Nos. 5,122,368; 5,824,805; 5,622,929; Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123; Neville et al., 1989, Biol. Chem. 264:14653-14661, を参照、これら開示のそれぞれは、共有結合的なコンジュゲートに適したリンカーに関連するとして、本出願に参照により取り込まれる)。このようなリンカーは、中性のpH条件下(例えば、血液中)では比較的安定であるが、pH 5.5又は5.0(リソソームの凡そのpH)より下では不安定である。
還元条件下で切断可能なリンカーとしては、例えば、ジスルフィドが挙げられる。例えば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP (N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB (N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)酪酸)及びSMPT (N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、SPDB及びSMPTを用いて形成することができるジスルフィド・リンカー等、種々のジスルフィド・リンカーが当該技術分野において公知である(例えば、Thorpe et al., 1987, Cancer Res. 47:5924-5931; Wawrzynczak et al., In Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer (C. W. Vogel ed., Oxford U. Press, 1987. 以下も参照 U.S. Pat. No. 4,880,935, この開示は、共有結合的なコンジュゲートに適したリンカーに関連するとして、本出願に参照により取り込まれる)。
酵素的加水分解を受けるリンカーは、例えば、細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素(例えば、限定されるものではないが、リソソーム・プロテアーゼ又はエンドソーム・プロテアーゼが挙げられる)によって切断されるペプチド含有リンカーであることがある。細胞内タンパク質分解による治療薬剤の放出を利用することの1つの利点は、前記薬剤は、コンジュゲートしている場合に典型的には減弱していること、及びコンジュゲートの血清安定性が典型的には高いこと、である。いくつかの実施形態では、ペプチジル・リンカーは、少なくとも2アミノ酸長、又は少なくとも3アミノ酸長、である。例示的なアミノ酸リンカーとしては、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドが挙げられる。好適なペプチドの例としては、バリン、アラニン、シトルリン(Cit)、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、及びグリシンのようなアミノ酸を含有するペプチド、が挙げられる。アミノ酸リンカー構成要素を構成するアミノ酸残基としては、天然のアミノ酸残基、並びにマイナーなアミノ酸類及びシトルリン等の非-天然のアミノ酸アナログ類、が挙げられる。例示的なジペプチド類としては、バリン-シトルリン (vc 又な val-cit) 及び アラニン-フェニルアラニン (af 又は ala-phe)、が挙げられる。例示的なトリペプチド類としてはグリシン-バリン-シトルリン (gly-val-cit) 及び グリシン-グリシン-グリシン (gly-gly-gly)、が挙げられる。1つの例示的なペンタペプチドは、グリシン-グリシン-グリシン-グリシン-グリシン (gly-gly-gly-gly-gly)である。いくつかの実施形態では、前記リンカーとしては、ジペプチド(例えば、Val-Cit, Ala-Val, 若しくはPhe-Lys, Val-Lys, Ala-Lys, Phe-Cit, Leu-Cit, Ile-Cit, Phe-Arg, 又は Trp-Citなど)、が挙げられる。Val-Cit 又は Phe-Lys のようなジペプチドを含むリンカーは、例えば、U.S. Pat. No. 6,214,345,に開示されている、この開示は、共有結合的なコンジュゲートに適したリンカーに関連するとして、本出願に参照により取り込まれる。いくつかの実施形態では、前記リンカーは、Val-Ala及びVal-Citから選択されるジペプチドを含む。いくつかの実施形態では、前記リンカーは、Val-Ala及びVal-Citより選択されるジペプチドを含む、並びに更に、gly-gly-gly又はgly-gly-gly-gly-gly(配列番号(SEQ ID NO): 291)を含む。
本出願に記載のCD117抗体及び抗原-結合フラグメントを、細胞毒素分子にコンジュゲートするのに適したリンカーとしては、1,6-脱離プロセスによって、細胞毒素を放出することができるリンカー、が挙げられる。この脱離プロセスが可能な化学的な部分構造としては、p-アミノベンジル(PAB)基、6-マレイミドヘキサン酸、pH感受性炭酸塩、及びJain et al., Pharm. Res. 32:3526-3540, 2015に記載されているような他の試薬、が挙げられる、この開示は、共有結合的なコンジュゲートに適したリンカーに関連するとして、本出願に参照により取り込まれる。
いくつかの実施形態では、前記リンカーとしては、前述のPAB又はPABC(パラ-アミノベンジルオキシカルボニル)等の「自壊(self-immolative)」基が挙げられ、これらは、例えば、Carl et al., J. Med. Chem. (1981) 24:479-480; Chakravarty et al (1983) J. Med. Chem. 26:638-644; US Pat. Nos. 6,214,345; 6,218,519; 6,835,807; 6,268,488; US6,759,509; 6,677,435; 5,621,002; US 特許出願公開 Nos. US20030130189; US20030096743; US20040052793; US20040018194; US20040052793; US20040121940; 並びに国際特許出願公開 Nos. W098/13059 及び W02004/032828、に開示されている。このプロセスが可能な他のこのような化学的な部分構造(「自壊リンカー」)としては、メチレン・カルバメート類及びヘテロアリール基、例えばアミノチアゾール類、アミノイミダゾール類、アミノピリミジン類などが挙げられる。このようなヘテロ環式自壊(self-immolative)基を含むリンカーは、例えば、米国特許出願公開20160303254 及び 20150079114、並びに米国特許第7,754,681; Hay et al. (1999) Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:2237; US 2005/0256030; de Groot et al (2001) J. Org. Chem. 66:8815-8830; 及び US 7,223,837に開示されている。いくつかの実施形態では、ジペプチドを、自壊リンカーと併せて使用する。
いくつかの実施形態では、前記リンカーLは、1つ以上の、ヒドラジン、ジスルフィド、チオエーテル、アミノ酸、最大10個のアミノ酸からなるペプチド、p-アミノベンジル(PAB)基、ヘテロ環式自壊(self-immolative)基、C1-C12 アルキル、C1-C12 ヘテロアルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12 ヘテロアルケニル、C2-C12 アルキニル、C2-C12 ヘテロアルキニル、C3-C12 シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-(C=O)-基、-C(O)NH-基、-OC(O)NH-基、pが1-12の整数である-(CH2CH2O)q-基、-(NHCH2CH2)u-、又は溶解性増強基、を含む;
ここで、各々のC1-C12アルキル、C1-C12ヘテロアルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12 ヘテロアルケニル、C2-C12 アルキニル、C2-C12 ヘテロアルキニル、C3-C12 シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルカリル、アルキル・ヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイド、カルバメート、アリール、ヘテロアリール、スルフィニル、スルフォニル、ヒドロキシル、アルコキシ、スルファニル、ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、及びニトロ、からなる群より、それぞれの場合毎に独立して選択される、1から5個の置換基で、任意選択的に置換されることがある。
いくつかの実施形態では、各々のC1-C12 アルキル、C1-C12ヘテロアルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12 ヘテロアルケニル、C2-C12 アルキニル、C2-C12 ヘテロアルキニル、C3-C12 シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリール基には、任意選択的に、O、S及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子が割り込むことがある。
いくつかの実施形態では、各々のC1-C12 アルキル、C1-C12ヘテロアルキル、C2-C12アルケニル、C2-C12 ヘテロアルケニル、C2-C12 アルキニル、C2-C12 ヘテロアルキニル、C3-C12 シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリール基には、任意選択的に、O、S及びNから選択される1つ以上のヘテロ原子が割り込むことがある、並びにアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルカリル、アルキル・ヘテロアリール、アミノ、アンモニウム、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、ウレイド、カルバメート、アリール、ヘテロアリール、スルフィニル、スルフォニル、ヒドロキシル、アルコキシ、スルファニル、ハロゲン、カルボキシ、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、及びニトロ、からなる群より、それぞれの場合毎に独立して選択される、1から5個の置換基で、任意選択的に置換されることがある。
当業者は、1つ以上の列記した基は、二価(ジラジカル)種(例えば、C1-C12アルキレン等)の形態で存在することがあると認識するであろう。
いくつかの実施形態では、前記リンカーLは、部分構造 *-L1L2-** を含む、ここで:
L1は存在しない、又は-(CH2)mNR1C(=O)-, -(CH2)mNR1-, -(CH2)mX3(CH2)m-,
Figure 2020219774000006
である;
L2は存在しない、又は-(CH2)m-, -NR1(CH2)m-, -(CH2)mNR1C(=O)(CH2)m-, -X4, -(CH2)mNR1C(=O)X4, - (CH2)mNR1C(=O)-, -((CH2)mO)n(CH2)m-, -((CH2)mO)n(CH2)mX3(CH2)m-, - NR1((CH2)mO)nX3(CH2)m-, -NR1((CH2)mO)n(CH2)mX3(CH2)m-, -X1X2C(=O)(CH2)m-, - (CH2)m(O(CH2)m)n-, -(CH2)mNR1(CH2)m-, -(CH2)mNR1C(=O)(CH2)mX3(CH2)m-, - (CH2)mC(=O)NR1(CH2)mNR1C(=O)(CH2)m-, -(CH2)mC(=O)-, - (CH2)mNR1(CH2)mC(=O)X2X1C(=O)-, -(CH2)mX3(CH2)mC(=O)X2X1C(=O)-, - (CH2)mC(=O)NR1(CH2)m-, -(CH2)mC(=O)NR1(CH2)mX3(CH2)m-, -(CH2)mX3(CH2)mNR1C(=O)(CH2)m-, -(CH2)mX3(CH2)mC(=O)NR1(CH2)m-, - (CH2)mO)n(CH2)mNR1C(=O)(CH2)m-, -(CH2)mC(=O)NR1(CH2)m(O(CH2)m)n-, - (CH2)m(O(CH2)m)nC(=O)-, -(CH2)mNR1(CH2)mC(=O)-, -(CH2)mC(=O)NR1(CH2)mNR1C(=O)-, -(CH2)m(O(CH2)m)nX3(CH2)m-, - (CH2)mX3((CH2)mO)n(CH2)m-, -(CH2)mX3(CH2)mC(=O)-, - (CH2)mC(=O)NR1(CH2)mO)n(CH2)mX3(CH2)m-, - (CH2)mX3(CH2)m(O(CH2)m)nNR1C(=O)(CH2)m-, -(CH2)mX3(CH2)m(O(CH2)m)nC(=O)-, -(CH2)mX3(CH2)m(O(CH2)m)n-, -(CH2)mC(=O)NR1(CH2)mC(=O)-, -(CH2)mC(=O)NR1(CH2)m(O(CH2)m)nC(=O)-, -((CH2)mO)n(CH2)mNR1C(=O)(CH2)m-, -(CH2)mC(=O)NR1(CH2)mC(=O)NR1(CH2)m-, -(CH2)mNR1C(=O)(CH2)mNR1C(=O)(CH2) -(CH2)mX3(CH2)mC(=O)NR1-, -(CH2)mC(=O)NR1-, -(CH2)mX3-, -C(R1)2(CH2)m-, -(CH2)mC(R1)2NR1-, -(CH2)mC(=O)NR1(CH2)mNR1-, - (CH2)mC(=O)NR1(CH2)mNR1C(=O)NR1-, -(CH2)mC(=O)X2X1C(=O)-, - C(R1)2(CH2)mNR1C(=O)(CH2)m-, -(CH2)mC(=O)NR1(CH2)mC(R1)2NR1-, - C(R1)2(CH2)mX3(CH2)m-, -(CH2)mX3(CH2)mC(R1)2NR1-, -C(R1)2(CH2)mOC(=O)NR1(CH2)m-, -(CH2)mNR1C(=O)O(CH2)mC(R1)2NR1-, -(CH2)mX3(CH2)mNR1-, -(CH2)mX3(CH2)m(O(CH2)m)nNR1-, -(CH2)mNR1-, -(CH2)mC(=O)NR1(CH2)m(O(CH2)m)nNR1-, -(CH2)m(O(CH2)m)nNR1-, -(CH2CH2O)n(CH2)m-, -(CH2)m(OCH2CH2)n;-(CH2)mO(CH2)m-, -(CH2)mS(=O)2-, - (CH2)mC(=O)NR1(CH2)mS(=O)2-, -(CH2)mX3(CH2)mS(=O)2-, -(CH2)mX2X1C(=O)-, -(CH2)m(O(CH2)m)nC(=O)X2X1C(=O)-, -(CH2)m(O(CH2)m)nX2X1C(=O)-, - (CH2)mX3(CH2)mX2X1C(=O)-, -(CH2)mX3(CH2)m(O(CH2)m)nX2X1C(=O)-, - (CH2)mX3(CH2)mC(=O)NR1(CH2)mNR1C(=O)-, -(CH2)mX3(CH2)mC(=O)NR1(CH2)mC(=O)-, -(CH2)mX3(CH2)mC(=O)NR1(CH2)m(O(CH2)m)nC(=O)-, -(CH2)mC(=O)X2X1C(=O)NR1(CH2)m-, -(CH2)mX3(O(CH2)m)nC(=O)-, -(CH2)mNR1C(=O)((CH2)mO)n(CH2)m-, -(CH2)m(O(CH2)m)nC(=O)NR1(CH2)m-, -(CH2)mNR1C(=O)NR1(CH2)m- 又は -(CH2)mX3(CH2)mNR1C(=O)-
である;
ここで、X1
Figure 2020219774000007
である;
X2
Figure 2020219774000008
である;
X3
Figure 2020219774000009
である;及び、
X4
Figure 2020219774000010
である;
ここで、
R1は、H及びC1-C6アルキル、から、それぞれの場合毎に独立して選択される;
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10、から、それぞれの場合毎に独立して選択される;
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、及び14、から、それぞれの場合毎に独立して選択される;並びに、
ここで、1個の星印(*)は、細胞毒素(例えば、PBD)へのアタッチメント(attachment)の位置を示し、2個の星印(**)は、反応性置換基Z'又は化学的な部分構造Zへのアタッチメント(attachment)の位置を示す、但し、L1とL2の両方が存在しないことは無い。
いくつかの実施形態では、前記リンカーLは、1つ以上の結合、-(C=O)-, -C(O)NH- 基, -OC(O)NH- 基, -(CH2)p, -(CH2CH2O)q- -(NHCH2CH2)u-, -NHCH2CH2NH-, -N(CH3)CH2CH2NH-, 又は -N(CH3)CH2CH2N(CH3)-、を含む。
いくつかの実施形態では、前記リンカーとしては、p-アミノベンジル基(PAB)を含む。1つの実施形態では、前記p-アミノベンジル基は、前記細胞毒性薬物と前記リンカー内のプロテアーゼ切断部位との間に、配置される。1つの実施形態では、前記p-アミノベンジル基は、p-アミノベンジルオキシカルボニル・ユニットの一部である。1つの実施形態では、前記p-アミノベンジル基は、p-アミノベンジルアミド・ユニットの一部である。
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、Phe-Lys, Val-Lys, Phe-Ala, Phe-Cit, Val-Ala, Val-Cit, 及び Val-Arg、からなる群より選択されるジペプチドを含む。いくつかの実施形態では、前記リンカーは、1つ以上のPAB, Val-Cit-PAB, Val-Ala-PAB, Val-Lys(Ac)-PAB, Phe-Lys-PAB, Phe-Lys(Ac)-PAB, D-Val-Leu-Lys, Gly-Gly-Arg, Ala-Ala-Asn-PAB, 又は Ala-PAB、を含む。
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、前記リンカーは、Val-Ala及びVal-Citより選択されるジペプチドを含む、並びに更に、gly-gly-gly又はgly-gly-gly-gly-gly(配列番号(SEQ ID NO): 291)を含む。
いくつかの態様において、前記リンカーは、1つ以上のペプチド、オリゴ糖, -(CH2)p-, -(CH2CH2O)q-, -(C=O)(CH2)r-, -(C=O)(CH2CH2O)t-, -(NHCH2CH2)u-, -PAB, Val-Cit-PAB, Val-Ala-PAB, Val-Lys(Ac)-PAB, Phe-Lys-PAB, Phe-Lys(Ac)-PAB, D-Val-Leu-Lys, Gly-Gly-Arg, Ala-Ala-Asn-PAB, Ala-PAB, gly-gly-gly, gly-gly-gly-gly-gly, -(NHCH2CH2)u-, -NHCH2CH2NH-, -N(CH3)CH2CH2NH-, 又は-N(CH3)CH2CH2N(CH3)-、を含む、ここで、p、q、r、t、及びuの各々は、1~12の整数であり、各場合毎に、独立して選択される。
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、PAB-Ala-Val- 又は PAB-Cit-Val-, -(C=O)-, -N(CH3)CH2CH2N(CH3)-,及び -(CH2)p-、を含む。具体的な実施形態では、前記リンカーは、式(III)で表される:
Figure 2020219774000011
ここで、mは、1から6の整数である。mが5であり、PNUにコンジュゲートした、1つのそのようなリンカーは、例えば、Yu et al., Clin. Cancer Res. 21(14), 2015, p. 3298-3306、に開示される(その全体が本出願に参照により取り込まれる)。
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、PAB-Ala-Val- 又は PAB-Cit-Val-, -(C=O)-, -N(CH3)CH2CH2NH-, 及び gly-gly-gly、を含む。具体的な実施形態では、前記リンカーは、式(IV)で表される:
Figure 2020219774000012
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、PAB-Ala-Val- 又は PAB-Cit-Val-, -(C=O)-, --NHCH2CH2NH-, 及び gly-gly-gly-gly-gly (配列番号(SEQ ID NO): 291)、を含む。具体的な実施形態では、前記リンカーは、式(V)で表される:
Figure 2020219774000013
式(IV)及び(V)のリンカーのようなリンカーは、例えば、Beerli et al., Mol. Cancer Ther. 2017; doi/10.1158/1535-7163.MCT-16-0688(その全体が本出願に参照により取り込まれる)に、開示されている。
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、
Figure 2020219774000014
を含む。
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、MCC (4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレートを含む。
当該技術分野の当業者は、本出願で開示されるような化学的な基、部分構造、及び特徴の何れか1つ以上を、複数の方法によって組み合わせて、本出願で開示されるような、抗体と細胞毒素とをコンジュゲートするのに有用なリンカーを形成することがある、と認識するであろう。
リンカー-細胞毒素及びリンカー-抗体のコンジュゲーション
ある特定の実施形態では、前記リンカーを適切な条件下で前記細胞毒素と反応させて、リンカー-細胞毒素コンジュゲートを形成する。ある特定の実施形態では、反応性の基を、前記細胞毒素又はリンカーにおいて使用し、共有結合アタッチメントを形成する。
いくつかの実施形態では、前記細胞毒素は、式(I)又は式(II)によるPNUその誘導体である。細胞毒素-リンカー・コンジュゲートを、続いて、適切な条件下で、CD117に結合する、前記抗体、誘導体化した抗体、又はそれらの抗原結合フラグメントと反応させて、ADCを形成する。或いは、前記リンカーを、まず最初に、CD117に結合する、前記抗体、誘導体化した抗体、又はそれらの抗原結合フラグメントと反応させて、リンカー-抗体コンジュゲートを形成し、それから、前記細胞毒素(例えば、PNU誘導体)と反応させて、ADCを形成する。そのようなコンジュゲーション反応を、これからより詳しく説明する。
前記抗体又はその抗原結合フラグメントに、リンカー又は細胞毒素-リンカー・コンジュゲートを共有結合アタッチメントさせるために、多くの様々な反応を利用することができる。前記抗体分子上の好適なアタッチメントの位置としては、限定されるものではないが、リジンのアミン基、グルタミン酸及びアスパラギン酸の遊離カルボン酸基、システインのスルフヒドリル基、及び芳香族アミノ酸の種々の部分構造が挙げられる。例えば、リンカー上のカルボキシ(又はアミノ)基を抗体部分構造上のアミノ(又はカルボキシ)基に結合させるために、非-特異的な共有結合を、カルボジイミド反応を用いて行うことがある。更に、リンカー上のアミノ基を抗体部分構造上のアミノ基に結合させるために、ジアルデヒド又はイミドエステルなどの二官能基性の薬剤を使用することもある。細胞毒素を抗体部分構造に結合させることには、シッフ塩基反応を利用することも可能である。この方法は、前記抗体又はリンカーのどちらかのグリコール又は水酸基を過ヨウ素酸酸化させることを含み、このようにしてアルデヒドを形成させ、次いで、これを、それぞれ、前記リンカー又は抗体と反応させる。共有結合は、前記アルデヒドとアミノ基との間にシッフ塩基を形成することを介して、形成される。イソチオシアネート類を、細胞毒素又は抗体部分構造をリンカーに共有結合アタッチメントさせるためのカップリング剤として使用することもある。他の技術は当業者に知られており、本開示の範囲内である。
本出願に記載する、抗体又は抗原結合フラグメントへのコンジュゲーションに有用なリンカーとしては、限定されるものではないが、以下の表1に示すような、前記抗体にある反応性置換基と前記リンカーにある反応性の化学的な部分構造(本出願では、反応性置換基、Z'、と呼ぶ)との間のカップリング反応によって形成される、化学的な部分構造Zを含むリンカー、が挙げられる。波線は、それぞれ、前記抗体又は抗原結合フラグメント、及び細胞毒素分子、へのアタッチメントの位置を示す。
表1.抗体-薬物コンジュゲートを形成する際のカップリング反応により形成される例示的な化学的な部分構造Z。
Figure 2020219774000015
Figure 2020219774000016
Figure 2020219774000017
Figure 2020219774000018
当業者の中のある者は、前記リンカーに結合した反応性置換基Z'、及び前記抗体又はその抗原-結合フラグメントにある反応性置換基が、化学的な部分構造Zを生成する共有結合カップリング反応に関与するものであることを認識し、前記反応性置換基Z'を認識する。従って、本出願に記載の方法と併せることにおいて有用な抗体-薬物コンジュゲートは、抗体、又はその抗原-結合フラグメントが、リンカー又は細胞毒素-リンカー・コンジュゲートと反応することによって形成されることがあり、本出願に記載するように、前記リンカー又は細胞毒素-リンカー・コンジュゲートは反応性置換基Z'等を含み、抗体、又はその抗原結合フラグメントにある反応性置換基との反応に適していて、化学的な部分構造Zを形成する。
表1に示されるように、前記リンカーにある好適な反応性置換基Z'、及び抗体、又はその抗原結合フラグメントにある反応性置換基の例としては、求核/求電子対(例えば、チオール/ハロアルキル対、アミン/カルボニル対、又はチオール/α, β-不飽和カルボニル対など)、ジエン/ジエノフィル対(例えば、とりわけ、アジド/アルキン対、又はジエン/α,β-不飽和カルボニル対)などが挙げられる。化学的な部分構造Zを形成するための反応性置換基間のカップリング反応としては、限定されるものではないが、チオール・アルキル化、ヒドロキシル・アルキル化、アミン・アルキル化、アミン又はヒドロキシルアミン縮合、ヒドラジン形成、アミド化、エステル化、ジスルフィド形成、環化付加(例えば、とりわけ、[4+2]Diels-Alder環化付加、[3+2]Huisgen環化付加)、芳香族求核置換、芳香族求電子置換、及び当該技術分野で知られているか又は本出願に記載されている他の反応様式が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記反応性置換基Z'は、前記抗体、又はその抗原結合フラグメント上の求核性官能基との反応に好適な求電子性官能基である。
本出願で開示するように、抗体、又はその抗原-結合フラグメント内に存在し得る反応性置換基としては、限定されるものではないが、(i)N-末端アミン基、(ii)側鎖アミン基(例えば、リジン)、(iii)側鎖チオール基(例えば、システイン)、及び(iv)糖水酸基又はアミノ基(ここで、前記抗体はグリコシル化されている)、のような求核基が挙げられる。本出願で開示するように、抗体、又はその抗原結合フラグメント内に存在し得る反応性置換基としては、限定されるものではないが、セリン、スレオニン、及びチロシン残基のヒドロキシル部分構造;リジン残基のアミノ部分構造;アスパラギン酸及びグルタミン酸残基のカルボキシル部分構造;並びにシステイン残基のチオール部分構造、並びに、非-天然アミノ酸のプロパルギル、アジド、ハロアリール(例えば、フルオロアリール)、ハロヘテロアリール(例えば、フルオロヘテロアリール)、ハロアルキル、及びハロヘテロアルキル部分構造が挙げられる。いくつかの実施形態では、本出願で開示するように、抗体、又はその抗原-結合フラグメント内に存在する反応性置換基としては、アミン又はチオール部分構造が挙げられる。ある特定の抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド(即ち、システイン架橋)を有する。抗体は、DTT(ジチオトレイトール)等の還元剤で処理することによって、リンカー試薬とコンジュゲーションさせるために、反応性にすることができる。従って、各システイン架橋は、理論的には、2つの反応性チオール求核基を形成する。リジンと2-イミノチオラン(トラウト試薬)との反応によって、更なる求核基を抗体中に導入して、アミンをチオールに転化させることができる。1個、2個、3個、4個、又はそれ以上のシステイン残基を導入することによって(例えば、1個以上の非-生来的なシステイン・アミノ酸残基を含む変異抗体を調製することによって)、反応性チオール基を、抗体(又はそのフラグメント)に導入することがある。米国特許第7,521,541号は、反応性システイン・アミノ酸を導入することによる工学的に操作した抗体を教示している。
いくつかの実施形態では、前記リンカーに結合した反応性置換基Z'は、抗体上に存在する求電子基と反応性である求核基である。抗体上の有用な求電子基としては、限定されるものではないが、アルデヒド及びケトンのカルボニル基が挙げられる。求核基のヘテロ原子は、抗体上の求電子基と反応し、前記抗体と共有結合を形成することがある。有用な求核基としては、限定されるものではないが、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドロキシル、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジン・カルボキシレート、及びアリールヒドラジド、が挙げられる。
いくつかの実施形態では、化学的な部分構造Zは、抗体、又はその抗原結合フラグメント内に存在する反応性求核置換基(例えば、アミン及びチオール部分構造)と前記リンカーに結合した反応性求電子置換基Z'との間の反応の生成物である。例えば、Z'は、とりわけ、マイケル・アクセプター(例えば、マレイミド)、活性化エステル、電子欠損カルボニル化合物、又はアルデヒドであることがある。
反応性置換基Z'とその結果として得られる化学的な部分構造Zのいくつかの代表的で非-限定的な例を、表2に示す。
表2.補完的な反応性置換基及び化学的な部分構造
Figure 2020219774000019
例えば、リンカー-抗体コンジュゲート及びADCの合成に好適なリンカーとしては、限定されるものではないが、前記リンカーに結合した反応性置換基Z'(例えば、マレイミド又はハロアルキル基など)が挙げられる。これらは、試薬類(例えば、特に、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-L-カルボキシレート(SMCC)、N-スクシンイミジル・ヨードアセテート(SIA)、スルホ-SMCC、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミジル・エステル(MBS)、スルホ-MBS、及びスクシンイミジル・ヨードアセテート、等であり、例えば、Liu et al., 18:690-697, 1979に記載されている[この開示は、化学的にコンジュゲートさせるためのリンカーに関するものとして、本出願に参照により取り込まれる])によって、前記リンカーに結合することがある。
いくつかの実施形態では、Z'は、-NR1C(=O)CH=CH2, -N3, -SH, -S(=O)2(CH=CH2), -(CH2)2S(=O)2(CH=CH2), -NR1S(=O)2(CH=CH2), -NR1C(=O)CH2R2, -NR1C(=O)CH2Br, -NR1C(=O)CH2I, -NHC(=O)CH2Br, -NHC(=O)CH2I, -ONH2, -C(O)NHNH2, -CO2H, -NH2, -NH(C=O), -NC(=S),
Figure 2020219774000020
Figure 2020219774000021
である;
ここで、
R1は、H及びC1-C6アルキル、から、それぞれの場合毎に独立して選択される;
R2は、-S(CH2)nCHR3NHC(=O)R1
R3は、R1又は-C(=O)OR1
R4は、H、C1-C6アルキル、F、Cl、及び-OH、から、それぞれの場合毎に独立して選択される;
R5は、H, C1-C6 アルキル, F, Cl, -NH2, -OCH3, -OCH2CH3, -N(CH3)2, -CN, -NO2,及び -OH、から、それぞれの場合毎に独立して選択される;並びに、
R6は、H、C1-C6 アルキル、F、-C(=O)OHで置換されたベンジルオキシ、-C(=O)OHで置換されたベンジル、-C(=O)OHで置換されたC1-C4アルコキシ、及び-C(=O)OHで置換されたC1-C4アルキル、から、それぞれの場合毎に独立して選択される。
いくつかの実施形態では、リンカーLに結合した反応性置換基Z'は、マレイミド、アジド、又はアルキンである。マレイミド含有リンカーの例は、非-切断可能なマレイミドカプロイル-ベースのリンカーであり、これは、アウリスタチンなどの微小管破壊剤をコンジュゲートするのに特に有用である。このようなリンカーはDoronina et al., Bioconjugate Chem. 17:14-24, 2006に記載されている(この開示は、化学的にコンジュゲーションさせるためのリンカーに関するものとして、本出願に参照により取り込まれる)。
いくつかの実施形態では、反応性置換基Z'は-(C=O)-又は-NH(C=O)-であり、その結果、前記リンカーは、それぞれ、-(C=O)-又は-NH(C=O)-基と抗体又はその抗原結合フラグメントのアミノ基との反応から生じるアミド又は尿素の部分構造によって、前記抗体又はその抗原-結合フラグメントに結合することがある。
いくつかの実施形態では、前記反応性置換基Z'は、N-マレイミジル基、ハロゲン化N-アルキルアミド基、スルホニルオキシN-アルキルアミド基、カーボネート基、ハロゲン化スルホニル基、チオール基又はその誘導体、内部に炭素-炭素の三重結合を含むアルキニル基、(ヘテロ)シクロアルキニル基、ビシクロ[6.1.0]ノン-4-イン-9-イル基(bicyclo[6.1.0]non-4-yn-9-yl group)、内部に炭素-炭素の二重結合を含むアルケニル基、シクロアルケニル基、テトラジニル基、アジド基、ホスフィン基、ニトリル・オキシド基、ニトロン基、ニトリル・イミン基、ジアゾ基、ケトン基、(O-アルキル)ヒドロキシルアミノ基、ヒドラジン基、ハロゲン化N-マレイミジル基、1,1-ビス(スルホニルメチル)メチルカルボニル基又はその脱離誘導体、ハロゲン化カルボニル基、又はアレンアミド基であり、これらはそれぞれ任意選択的に置換されることがある。いくつかの実施形態では、前記反応性置換基は、シクロアルケン基、シクロアルキン基、又は任意選択的に置換された(ヘテロ)シクロアルキニル基を含む。
いくつかの実施形態では、化学的な部分構造Zを、表1から選択する。いくつかの実施形態では、化学的な部分構造Zは、以下のとおりである:
Figure 2020219774000022
ここで、Sは、ヒトの幹細胞又はT細胞の細胞表面上で発現する抗原に特異的に結合する、抗体の又はその抗原-結合フラグメントの、中に存在する反応性置換基を表す硫黄原子である(例えば、システイン残基の-SH基に由来する)。
いくつかの実施形態において、前記細胞毒素は、構造式(I)で表されるPNU誘導体である、及び前記リンカーは、ヒドロキシメチル酸素に介して結合する。そのような実施形態では、前記ADCは、式(VI)で表されることがある:
Figure 2020219774000023

ここで、L, Z 及びAbは、それぞれ本出願に記載の通りである。
いくつかの実施形態において、前記細胞毒素は、構造式(II)で表されるPNU誘導体である、及び前記リンカーは、C13カルボニルのアミド基に介して結合する。そのような実施形態では、前記ADCは、式(VII)で表されることがある:
Figure 2020219774000024
ここで、L, Z 及びAbは、それぞれ本出願に記載の通りである。
いくつかの実施形態では、式(VI)又は(VII)のADCのリンカーLは、切断可能なリンカーである。いくつかの実施形態では、前記切断可能なリンカーLとしては、以下のうちの1種が挙げられる:
Figure 2020219774000025
いくつかの実施形態では、PNU-リンカー・コンジュゲートは、Cy-Lとして一緒になり、以下のうちの1種によって表されることがある:
Figure 2020219774000026

ここで、波線は、波線は、化学的な部分構造Zへの、及びそれ故に、前記抗体Abへの、アタッチメント(attachment)の位置を示す。
抗体-薬物コンジュゲートの調製
式(VI)又は式(VII)のADCのような、本出願に開示される式Ab-(Z-L-Cy)nのADCにおいて、抗-CD117抗体又はその抗原結合フラグメント(Ab)は、本出願に開示されるようなリンカーL及び化学的な部分構造Zを介して、1個以上の細胞毒性薬物部分構造(Cy;例えば、PNU誘導体)(例えば、抗体あたり約1個から約20個の細胞毒素部分構造)にコンジュゲートする。任意の数の細胞毒素が、前記抗-CD117抗体にコンジュゲートすることがある(例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8)。いくつかの実施形態では、nは1から4である。いくつかの実施形態では、nは2である。
本開示のADCは、以下を含む、当業者に公知の有機化学反応、条件、及び試薬を使用するいくつかの経路によって調製され得る:(1)抗体、又はその抗原結合フラグメントの反応性置換基を、2価リンカー試薬と反応させて、本出願中上記のようなAb-Z-Lを形成させる、続いて、細胞毒素部分構造Cyと反応させる;又は、(2)細胞毒素部分構造の反応性置換基を、2価リンカー試薬と反応させて、Cy-L-Z'を形成させる、続いて、本出願中上記のような抗体又はその抗原結合フラグメントの反応性置換基と反応させて、式Ab-(Z-L-Cy)nのADCを形成させる。ADCを調製するための更なる方法を、本出願に記載する。
1つの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、1つ以上のスルフヒドリル基を有するように化学的に修飾され得る1つ以上の糖基(carbohydrate groups)を有することがある。次いで、本出願中上記に記載されるように、スルフヒドリル基の硫黄原子を介してコンジュゲートさせることによって、前記ADCを形成する。
別の実施形態では、前記抗体は、酸化されてアルデヒド(-CHO)基を提供し得る1つ以上の糖基(carbohydrate groups)を有することがある(例えば、Laguzza, et al., J. Med. Chem. 1989, 32(3), 548-55を参照のこと)。次いで、本出願中上記に記載されるように、対応するアルデヒドを介してコンジュゲートさせることによって、前記ADCを形成する。細胞毒素をアタッチメント(attachment)させる又は会合させるためのタンパク質を改変する他のプロトコールは、Coligan et al., Current Protocols in Protein Science, vol. 2, John Wiley & Sons (2002)に記載されている(本出願に参照により取り込まれる)。
抗体、免疫グロブリン又はそのフラグメント等の、細胞をターゲットにするタンパク質に、リンカー-薬物部分構造をコンジュゲートさせるための方法は、例えば、米国特許第5,208,020号; 米国特許第6,441,163号; WO2005037992; WO2005081711; 及びWO2006/034488に記載されている(これらの全ては、その全体が本出願に明確に参照により取り込まれる)。
或いは、前記抗体及び細胞毒性薬剤を含む融合タンパク質を、例えば、組換え技術又はペプチド合成によって、作製することがある。DNAの長さは、互いに隣接した、又は前記コンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカー・ペプチドをコードする領域によって分離された、前記コンジュゲートの2つの部分をコードするそれぞれの領域を、含むことがある。
抗-CD117抗体
本出願で開示される抗-CD117 ADC組成物及び方法は、ターゲット組織内の細胞集団(例えば、骨髄幹細胞ニッチの造血幹細胞)に、そのようなADCを選択的に送達することを促進する薬剤を含む。
ある特定の実施形態では、本出願で記載されるADC中の、抗体、又はその抗原結合フラグメントは、コンジュゲートの一部として使用する場合に、特に有益である、ヒトCD117に対する特定の解離速度を有する。例えば、抗-CD117抗体は、ある特定の実施形態では、ヒトCD117及び/又はアカゲザルCD117に対して、バイオレイヤー干渉法(BLI)によって測定した場合、1×10-2~1×10-3、1×10-3~1×10-4、1×10-5~1×10-6、1×10-6~1×10-7又は1×10-7~1×10-8の解離速度定数(Koff)を有する。いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、バイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry)(BLI)アッセイによって測定した場合、約100 nM以下、約90 nM以下、約80 nM以下、約70 nM以下、約60 nM以下、約50 nM以下、約40 nM以下、約30 nM以下、約20 nM以下、約10 nM以下、約8 nM以下、約6 nM以下、約4 nM以下、約2 nM以下、約1 nM以下のKDで、細胞表面抗原(例えば、ヒトCD117及び/又はアカゲザルCD117)に結合する。
1つの実施形態では、本開示は、CD117(例えば、GNNK+ CD117など)に特異的に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントを含むADC、を含む。そのようなADCを、例えば、(i)CD117+細胞を特徴とするがん及び自己免疫疾患を治療するため、及び(ii)移植療法を必要とする患者において、移植された造血幹細胞の生着を促進するため、の治療薬剤として使用することがある。これらの治療活性は、例えば、がん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞のような細胞の表面に発現しているCD117(例えば、GNNK+ CD117)に結合する、単離された抗-CD117抗体、その抗原-結合フラグメントが結合すること、及び続いて細胞死を誘導すること、に起因することがある。内因性の造血幹細胞を減少させることにより、移植した造血幹細胞がホーミングすることができるニッチが提供され、その後、生産的な造血が確立される。このようにして、移植した造血幹細胞は、本出願に記載の幹細胞障害に罹患しているヒト患者などの患者に、うまく生着することがある。
ヒトCD117(c-Kitとも呼ばれる、mRNA NCBI参照配列: NM_000222.2、タンパク質NCBI参照配列: NP_000213.1)に結合することができる抗体及び抗原-結合フラグメント(例えば、GNNK+CD117に結合することができる抗体及び抗原-結合フラグメントなど)を、造血幹細胞移植療法に向けて患者をコンディショニングするために、本出願に記載される組成物及び方法と組み合わせて使用することがある。集団のかなりの割合で存在する、CD117のコーディング領域又は細胞外ドメインに影響を及ぼす多型は、現在のところ、腫瘍以外の適応症ではよく知られていない。CD117には少なくとも4種類のアイソフォームが同定されており、腫瘍細胞では、更なるアイソフォームが発現している可能性がある。CD117アイソフォームのうち2つは、タンパク質の細胞内ドメインに局在し、2つは外側の膜近傍領域に存在する。2つの細胞外アイソフォーム、GNNK+とGNNK-は、4アミノ酸の配列が存在する(GNNK+)又は存在しない(GNNK-)点で異なる。これらのアイソフォームはリガンド(SCF)に対して同じ親和性を有することが報告されているが、GNNK-アイソフォームへのリガンド結合は、細胞内部への取り込み及び分解を増大させることが報告されている。GNNK+アイソフォームは、このアイソフォームに対して生成される抗体がGNNK+及びGNNK-タンパク質を含むので、CD117に結合し得る抗体を生成するための免疫原として使用することがある。ヒトCD117アイソフォーム1及び2のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号(SEQ ID Nos): 145及び146として記載する。ある特定の実施形態では、本出願に開示される抗-ヒトCD117(hCD117)抗体は、ヒトCD117のアイソフォーム1及びアイソフォーム2の両方に結合することができる。
以下に記載するように、ヒト抗体の酵母ライブラリーをスクリーニングして、診断的に及び治療的に使用する新規な抗-CD117抗体、及びそのフラグメントを同定した。抗体54(Ab54)、抗体55(Ab55)、抗体56(Ab56)、抗体57(Ab57)、抗体58(Ab58)、抗体61(Ab61)、抗体66(Ab66)、抗体67(Ab67)、抗体68(Ab68)、及び抗体69(Ab69)は、このスクリーニングで同定されたヒト抗体であった。これらの抗体はヒトCD117及びアカゲザルCD117と交差反応する。更に、本出願で開示されるこれらの抗体は、ヒトCD117の両方のアイソフォーム(即ち、アイソフォーム1(配列番号(SEQ ID NO):145)及びアイソフォーム2(配列番号(SEQ ID NO):146))に結合し得る。
抗-CD117抗体(例えば、Ab54、Ab55、Ab56、Ab57、Ab58、Ab61、Ab66、Ab67、Ab68及びAb69など)の種々の結合領域のアミノ酸配列を以下の配列表に記載する。下記の配列表に記載したCDRを含むヒト抗-CD117抗体、並びに下記の配列表に記載した可変領域を含むヒト抗-CD117抗体、を含むADCは、本開示に含まれる。
1つの実施形態では、本開示は、抗体55の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体55(即ち、Ab55)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):19に示す(配列表参照)。抗体55のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):21(VH CDR1);配列番号(SEQ ID NO):22(VH CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):23(VH CDR3)に示す。抗体55の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):20に示す(配列表参照)。抗体55のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):24(VL CDR1);配列番号(SEQ ID NO):25(VL CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):26(VL CDR3)に示す。抗体55の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):122に示す。抗体55の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):121に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID Nos): 21、22、及び23に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2、及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID Nos): 24、25、及び26に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):20に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):19に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体54の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体54(即ち、Ab54)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):29に示す(配列表参照)。抗体54のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):31(VH CDR1);配列番号(SEQ ID NO):32(VH CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):33(VH CDR3)に示す。抗体54の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):30に示す(配列表参照)。抗体54のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):34(VL CDR1);配列番号(SEQ ID NO):35(VL CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):36(VL CDR3)に示す。抗体54の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):122に示す。抗体54の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):121に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID Nos): 31、32、及び33に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2、及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID Nos): 34、35、及び36に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):30に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):29に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体56の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体56(即ち、Ab56)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):39に示す(配列表参照)。抗体56のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):41(VH CDR1);配列番号(SEQ ID NO):42(VH CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):43(VH CDR3)に示す。抗体56の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):40に示す(配列表参照)。抗体56のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):44(VL CDR1);配列番号(SEQ ID NO):45(VL CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):46(VL CDR3)に示す。抗体56の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):122に示す。抗体56の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):121に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID Nos): 41、42、及び43に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2、及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID Nos): 44、45、及び46に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):40に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):39に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体57の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体57(即ち、Ab57)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):49に示す(配列表参照)。抗体57のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):51(VH CDR1);配列番号(SEQ ID NO):52(VH CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):53(VH CDR3)に示す。抗体57の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):50に示す(配列表参照)。抗体57のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):54(VL CDR1);配列番号(SEQ ID NO):55(VL CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):56(VL CDR3)に示す。抗体57の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):122に示す。抗体57の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):121に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID Nos): 51、52、及び53に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2、及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID Nos): 54、55、及び56に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):50に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):49に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体58の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体58(即ち、Ab58)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):59に示す(配列表参照)。抗体58のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):61(VH CDR1);配列番号(SEQ ID NO):62(VH CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):63(VH CDR3)に示す。抗体58の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):60に示す(配列表参照)。抗体58のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):64(VL CDR1);配列番号(SEQ ID NO):65(VL CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):66(VL CDR3)に示す。抗体58の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):122に示す。抗体58の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):121に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID Nos): 61、62、及び63に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2、及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID Nos): 64、65、及び66に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):60に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):59に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体61の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体61(即ち、Ab61)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):69に示す(配列表参照)。抗体61のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):71(VH CDR1);配列番号(SEQ ID NO):72(VH CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):73(VH CDR3)に示す。抗体61の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):70に示す(配列表参照)。抗体61のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):74(VL CDR1);配列番号(SEQ ID NO):75(VL CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):76(VL CDR3)に示す。抗体61の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):122に示す。抗体61の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):121に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID Nos): 71、72、及び73に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2、及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID Nos): 74、75、及び76に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):70に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):69に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体66の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体66(即ち、Ab66)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):79に示す(配列表参照)。抗体66のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):81(VH CDR1);配列番号(SEQ ID NO):82(VH CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):83(VH CDR3)に示す。抗体66の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):80に示す(配列表参照)。抗体66のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):84(VL CDR1);配列番号(SEQ ID NO):85(VL CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):86(VL CDR3)に示す。抗体66の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):122に示す。抗体66の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):121に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID Nos): 81、82、及び83に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2、及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID Nos): 84、85、及び86に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):80に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):79に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体67の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体67の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):9に示す(配列表参照)。抗体67のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号11(VH CDR1);配列番号(SEQ ID NO):12(VH CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):13(VH CDR3)に示す。抗体67の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):10に示す(配列表参照)。抗体67のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号14(VL CDR1);配列番号(SEQ ID NO):15(VL CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):16(VL CDR3)に示す。抗体67の全長重鎖(HC)を配列番号(SEQ ID NO):110に示し、抗体67の全長重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):122に示す。抗体67の軽鎖(LC)を配列番号(SEQ ID NO):109に示す。抗体67の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):121に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID Nos): 11、12、及び13に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2、及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID Nos): 14、15、及び16に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):9に示すアミノ酸残基を含む可変重鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):10に示す重鎖可変領域、を含む。更なる実施形態では、抗-CD117抗体は、配列番号(SEQ ID NO):110を含む重鎖及び配列番号(SEQ ID NO):109を含む軽鎖、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体68の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体68(即ち、Ab68)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):89に示す(配列表参照)。抗体68のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):91(VH CDR1);配列番号(SEQ ID NO):92(VH CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):93(VH CDR3)に示す。抗体68の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):90に示す(配列表参照)。抗体68のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):94(VL CDR1);配列番号(SEQ ID NO):95(VL CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):96(VL CDR3)に示す。抗体68の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):122に示す。抗体68の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):121に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID Nos): 91、92、及び93に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2、及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID Nos): 94、95、及び96に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):90に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):89に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体69の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体69(即ち、Ab69)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):99に示す(配列表参照)。抗体69のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):101(VH CDR1);配列番号(SEQ ID NO):102(VH CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):103(VH CDR3)に示す。抗体69の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):100に示す(配列表参照)。抗体69のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):104(VL CDR1);配列番号(SEQ ID NO):105(VL CDR2)及び配列番号(SEQ ID NO):106(VL CDR3)に示す。抗体69の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):122に示す。抗体69の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):121に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID Nos): 101、102、及び103に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2、及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID Nos): 104、105、及び106に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):100に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):99に示す重鎖可変領域、を含む。
更に、抗-CD117抗体Ab77、Ab79、Ab81、Ab85、Ab86、Ab87、Ab88、及びAb89の種々の結合領域のアミノ酸配列を、以下の配列表に記載する。これらの配列を有する抗-CD117抗体を、本出願に記載のADCで使用することもある。
1つの実施形態では、本開示は、抗体77の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体77(即ち、Ab77)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):147に示す(配列表参照)。抗体77のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):263(VH CDR1); 配列番号(SEQ ID NO):2(VH CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):3(VH CDR3)に示す。抗体77の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 231に示す(配列表参照)。抗体77のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 264(VL CDR1)、配列番号(SEQ ID NO):265(VL CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):266(VL CDR3)に示す。抗体77の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):269に示す。抗体77の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):283に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):263、2及び3に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID NO):264、265及び266に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):231に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):147に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体79の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体79(即ち、Ab79)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):147に示す(配列表参照)。抗体79のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):263(VH CDR1); 配列番号(SEQ ID NO):2(VH CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):3(VH CDR3)に示す。抗体79の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 233に示す(配列表参照)。抗体79のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 267(VL CDR1)、配列番号(SEQ ID NO): 265(VL CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):266(VL CDR3)に示す。抗体79の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):269に示す。抗体79の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):283に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):263、2及び3に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID NO):267、265及び266に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):233に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):147に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体81の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体81(即ち、Ab81)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):147に示す(配列表参照)。抗体81のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):263(VH CDR1); 配列番号(SEQ ID NO):2(VH CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):3(VH CDR3)に示す。抗体81の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 235に示す(配列表参照)。抗体81のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 264(VL CDR1)、配列番号(SEQ ID NO):268(VL CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):266(VL CDR3)に示す。抗体81の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):269に示す。抗体81の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):283に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):263、2及び3に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID NO):264、268及び266に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):235に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):147に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体85の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体85(即ち、Ab85)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):243に示す(配列表参照)。抗体85のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):245(VH CDR1); 配列番号(SEQ ID NO):246(VH CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):247(VH CDR3)に示す。抗体85の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 242に示す(配列表参照)。抗体85のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 248(VL CDR1)、配列番号(SEQ ID NO):249(VL CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):250(VL CDR3)に示す。抗体85の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):269に示す。抗体85の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):283に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):245、246及び247に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID NO):248、249及び250に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):244に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):243に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体86の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体86(即ち、Ab86)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):251に示す(配列表参照)。抗体86のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):245(VH CDR1); 配列番号(SEQ ID NO):253(VH CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):3(VH CDR3)に示す。抗体86の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 252に示す(配列表参照)。抗体86のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 254(VL CDR1)、配列番号(SEQ ID NO):249(VL CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):255(VL CDR3)に示す。抗体86の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):269に示す。抗体86の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):283に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):245、253及び3に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID NO):254、249及び255に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):252に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):251に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体87の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体87(即ち、Ab87)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):243に示す(配列表参照)。抗体87のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):245(VH CDR1); 配列番号(SEQ ID NO):246(VH CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):247(VH CDR3)に示す。抗体87の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 256に示す(配列表参照)。抗体87のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 257(VL CDR1)、配列番号(SEQ ID NO): 5(VL CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):255(VL CDR3)に示す。抗体87の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):269に示す。抗体87の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):283に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):245、246及び247に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID NO):257、5及び255に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):256に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):243に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体88の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体88(即ち、Ab88)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):258に示す(配列表参照)。抗体88のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):245(VH CDR1); 配列番号(SEQ ID NO):259(VH CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):3(VH CDR3)に示す。抗体88の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 256に示す(配列表参照)。抗体88のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 257(VL CDR1)、配列番号(SEQ ID NO): 5(VL CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):255(VL CDR3)に示す。抗体88の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):269に示す。抗体88の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):283に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):245、259及び3に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID NO):257、5及び255に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):256に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):258に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体89の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体89(即ち、Ab89)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):260に示す(配列表参照)。抗体89のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):245(VH CDR1); 配列番号(SEQ ID NO):2(VH CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):3(VH CDR3)に示す。抗体89の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 252に示す(配列表参照)。抗体89のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 254(VL CDR1)、配列番号(SEQ ID NO):249(VL CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):255(VL CDR3)に示す。抗体89の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):269に示す。抗体89の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):283に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):245、2及び3に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID NO):254、249及び255に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):252に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):260に示す重鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本開示は、抗体249の結合領域に対応する結合領域(例えば、CDRs、可変領域)を含む、抗-CD117、又はその抗原-結合フラグメント、を含むADC、を提供する。抗体249(即ち、Ab249)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):238に示す(配列表参照)。抗体249のVH CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO):286(VH CDR1); 配列番号(SEQ ID NO):2(VH CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):287(VH CDR3)に示す。抗体249の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 242に示す(配列表参照)。抗体249のVL CDRドメインのアミノ酸配列を配列番号(SEQ ID NO): 288(VL CDR1)、配列番号(SEQ ID NO):249(VL CDR2)、及び配列番号(SEQ ID NO):289(VL CDR3)に示す。抗体249の重鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):269に示す。抗体249の軽鎖定常領域を配列番号(SEQ ID NO):283に示す。従って、ある特定の実施形態では、抗-CD117、又はその抗原-結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):286、2及び287に示す可変重鎖CDRセット(CDR1、CDR2及びCDR3)、並びに配列番号(SEQ ID NO):288、249及び289に示す軽鎖可変領域CDR、を含む。他の実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):242に示すアミノ酸残基を含む可変軽鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):238に示す重鎖可変領域、を含む。
さらに、本開示には、配列番号(SEQ ID NO):147から168に示す結合領域(重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域)を含む抗-CD117薬物コンジュゲート(ADC)が含まれる。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):148のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):149のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):150のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):151のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):152のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):153のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):154のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):155のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):156のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):157のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):158のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):159のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):160のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):161のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):162のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):163のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):164のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):165のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):166のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):167のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):168のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):169のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):170のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):171のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):172のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):173のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):174のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):175のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):176のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):177のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):178のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):179のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):180のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):181のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):172のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):182のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):183のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):184のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):185のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):186のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):187のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):188のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):189のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):190のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):191のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):192のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):193のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):194のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):195のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):196のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):197のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):198のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):199のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):200のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):201のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):190のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):202のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):203のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):204のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):205のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):206のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):207のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):208のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):209のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):210のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):211のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):212のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):213のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):214のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):215のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):216のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):217のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):218のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):219のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):220のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):221のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):222のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):223のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):224のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):225のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):226のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):227のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):228のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):229のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):230のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):231のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):232のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖




可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):233のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):234のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):235のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):236のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。
1つの実施形態では、本出願に記載のADCの、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):237のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):243のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):244のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):251のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):252のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):243のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):256のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):258のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):256のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):260のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):252のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):238のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):239のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):239のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):147のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):240のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):238のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):241のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。1つの実施形態では、抗-CD117抗体、又はその抗原結合部分は、配列番号(SEQ ID NO):238のアミノ酸配列に示す重鎖可変領域、及び配列番号(SEQ ID NO):242のアミノ酸配列に示す軽鎖可変領域、を含む。
本出願に記載される抗-CD117抗体のあるものは、前記抗体がCD117発現細胞上のCD117活性を実質的に阻害しないという点で、中性抗体(neutral antibody)である。中性抗体(neutral antibody)は、例えば、in vitro幹細胞因子(SCF)依存性細胞増殖アッセイを使用して同定することができる。SCF依存性細胞増殖アッセイでは、中性CD117抗体は、SCFに依存して分裂するCD34+細胞を死滅させることはないであろう。
なぜならば、中性抗体(neutral antibody)がSCFのCD117への結合を遮断し、CD117活性を阻害することはないからである。
中性抗体(neutral antibody)は、それらがヒトCD117に特異的に結合することができることを考えると、診断目的に使用することができるが、本出願に記載される細胞毒素等の細胞毒素にコンジュゲートした場合に、CD117発現細胞を死滅させることにも効果的である。典型的には、コンジュゲートに使用される抗体は、前記抗体に特有のアゴニスト活性又はアンタゴニスト活性を有する。しかしながら、本出願に記載されているのは、コンジュゲートに対するユニークな手法であり、とりわけ、前記コンジュゲートを、幹細胞移植の前に、コンディショニング剤として使用する状況における手法である。アンタゴニスト抗体単独又はコンジュゲートとしての細胞毒素との組合せは、細胞毒素に加えて抗体単独の傷害能があるならば、効果的であり得る。その一方で、中性抗-CD117抗体を含むコンジュゲートを使用したコンディショニングは、前記抗体の活性が細胞毒素の効果に対して二次的ではあるが、前記抗体の細胞内部への取り込み及び親和性特性(例えば、解離速度)が前記細胞毒素を効果的に送達することにとって重要である場合に、別の代替ストラテジー(strategy)を提示する。
中性抗-CD117抗体の例としては、Ab58、Ab61、Ab66、Ab67、Ab68、及びAb69が挙げられる。中性抗-CD117抗体CDRのアミノ酸配列を比較すると、同定された中性抗体(neutral antibody)の2つの群の間のコンセンサス配列が明らかになる。Ab58及びAb61は、同じ軽鎖CDR及びHC CDR3を共有し、HC CDR1及びHC CDR2に僅かな違いがある。HC CDR1及びCDR2のコンセンサス配列を、配列番号(SEQ ID Nos): 133及び134に記載する。Ab66、Ab67、Ab68、及びAb69も中性抗体(neutral antibody)である。Ab66、Ab67、Ab68、及びAb69は、同じ軽鎖CDR及び同じHC CDR3を共有するが、これらの抗体には、それらのHC CDR1及びHC CDR2領域内で違いがある。HC CDR1及びHC CDR2領域におけるこれらの抗体のコンセンサス配列を、それぞれ、配列番号(SEQ ID Nos): 139及び140に記載する。
例えばAb54、Ab55、Ab56、及びAb57などの、アンタゴニスト抗体もまた、本出願に記載される。Ab54、Ab55、Ab56、及びAb57は、同じ軽鎖CDR及び同じHC CDR3を共有するが、これらの抗体には、それらのHC CDR1及びHC CDR2領域内で違いがある。HC CDR1及びHC CDR2領域におけるこれらの抗体のコンセンサス配列を、それぞれ、配列番号(SEQ ID Nos): 127及び128に記載する。
1つの態様では、本開示は、配列番号(SEQ ID NO):290のT67、K69、T71、S81、Y83、T114、T119又はK129のアミノ酸残基のうち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、又は8つ全て、を含む、CD117のエピトープに結合する、CD117に結合することができる、抗体、又はその抗原結合フラグメント、に関する。別の態様では、本開示は、配列番号(SEQ ID NO):290の、少なくともアミノ酸67-83及び114-129内の残基を有するエピトープに結合する、CD117に結合することができる、抗体、又はその抗体抗原結合フラグメント、に関する。
別の態様では、本開示は、配列番号(SEQ ID NO):290のS236、H238、Y244、S273、T277又はT279のアミノ酸残基のうち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は6つ全て、を含む、CD117のエピトープに結合する、CD117に結合することができる、抗体、又はその抗原結合フラグメント、に関する。1つの態様では、本開示は、配列番号(SEQ ID NO):290の、少なくともアミノ酸236-244及び273-279内の残基を有するエピトープに結合する、CD117に結合することができる、単離した抗-CD117抗体、又はその抗体抗原結合フラグメント、を提供する。
Figure 2020219774000027
1つの実施形態では、前記抗-CD117抗体、又はその抗原結合フラグメントは、本出願で開示される配列番号(SEQ ID NO)と、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列、を有する可変領域、を含む。或いは、抗-CD117抗体、又はその抗原結合フラグメントは、本出願で開示される配列番号(SEQ ID NO)と、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列、を有する本出願に記載される可変領域の骨格領域、を有する、本出願に開示される配列番号(SEQ ID NO)を含むCDR、を含む。
本出願に記載される抗-CD117抗体は、全長抗体、バイスペシフィック抗体(bispecific antibody)、二重可変ドメイン抗体、多重鎖又は単鎖抗体、及び/又はヒトCD117に特異的に結合する結合フラグメントの形態であることがあり、これにはFab、Fab'、(Fab')2、Fv、scFv(単鎖Fv)、サロボディ(surrobodies)(代理軽鎖構築物を含む)、単一ドメイン抗体、ラクダ化抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。それらはまた、例えば、IgA(例えば、IgA1又はIgA2)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)、又はIgMなどの、任意のアイソタイプ、であることもある、又は、に由来することもある。いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)である。
本出願に記載される方法と併せて使用するための抗体には、Fcドメインを含有する又は欠損する抗体フラグメント、並びに本出願に記載される非-ヒト抗体のヒト化バリアント、並びに本出願に記載される抗体、又は抗体フラグメントのCDR又はその相当領域の1つ以上、又は全てを含有する抗体様タンパク質スキャッフォルド(例えば、10Fn3ドメイン)などの、上記の抗体のバリアントが含まれる。前記の抗体の例示的な抗原結合フラグメントとしては、とりわけ、二重可変免疫グロブリン・ドメイン(dual-variable immunoglobulin domain)、単鎖Fv分子(scFv)、ダイアボディ、トリアボディ、ナノボディ、抗体様タンパク質スキャッフォルド、Fvフラグメント、Fabフラグメント、F(ab')2分子、及びタンデムdi-scFv、が挙げられる。
1つの実施形態では、1つ以上の放射性標識アミノ酸を含む抗-CD117抗体が提供される。放射性標識された抗-CD117抗体は、診断及び治療の両方の目的のために使用され得る(放射性標識された分子にコンジュゲートすることは、可能性がある別の特徴である)。ポリペプチドの標識に関する限定されない例としては、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc及び125I、131I及び186Reが挙げられるが、これらに限定されない。放射性標識アミノ酸及び関連ペプチド誘導体を調製するための方法は当該技術分野で公知である(例えば、Junghansら、Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686、2d版、Chafner及びLongo編、Lippincott Raven(1996)及び米国特許第4,681,581号、米国特許第4,735,210号、米国特許第5,101,827号、米国特許第5,102,990[U.S. RE35,500号]、米国特許第5,648,471号、米国特許第5,697,902号を参照のこと)。例えば、放射性同位体を、クロラミンTの方法によって結合することがある。
更に、ある特定の実施形態では、本出願に記載される抗-CD117抗体は、約3日以下の
、ヒト対象における血清半減期を有する。ある特定の実施形態では、本出願に記載される抗-CD117抗体は、約24時間以下、約23時間以下、約22時間以下、約21時間以下、約20時間以下、約19時間以下、約18時間以下、約17時間以下、約16時間以下、約15時間以下、約14時間以下、約13時間以下、約12時間以下、又は約11時間以下の、(例えば、ヒトにおける)半減期を有する。
1つの実施形態では、本出願に記載される抗-CD117抗体は、約1~5時間、約5~10時間、約10~15時間、約15~20時間、又は約20~25時間の、(例えば、ヒトにおける)半減期を有する。
Fc改変抗体
本開示は、例えば、骨髄細胞ニッチの造血幹細胞、又はCD117+白血球若しくはCD117+自己免疫リンパ球が発現する抗原(例えば、CD117など)に結合することができる、Fcサイレンシングを可能にするFc改変を有する、抗体又はその抗原結合フラグメントを、単独の治療薬剤として、又はADCとして、利用し、(i)移植療法を必要とする患者において、移植した造血幹細胞の生着を促進する、(ii)がん及び自己免疫疾患を治療する、という発見に、部分的に基づく。これらの治療活性は、例えば、細胞が発現するCD117に結合する、抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメントの結合によって、引き起こされることがある。
本出願に記載された抗-CD117抗体、又は結合フラグメントは、また、抗体及び/又はフラグメントの特性を変化させる改変及び/又は変異(例えば、当業者に知られているように、半減期を増加させるもの、ADCCを増加させるもの、又は減少させるものなど)を含むこともある。
1つの実施形態では、前記抗-CD117抗体、又はその結合フラグメントは、バリアント(又は改変)Fc領域を含み、ここで、前記バリアントFc領域は、野生型Fc領域に対して少なくとも1つのアミノ酸改変を含み、その結果、その分子は、FcγRに対する親和性が変わる。前記Fc領域内の特定のアミノ酸位置は、FcγRと直接接触させた結晶学的研究によって知られている。具体的には、アミノ酸234~239(ヒンジ領域)、アミノ酸265~269(B/Cループ)、アミノ酸297~299(C'/Eループ)、及びアミノ酸327~332(F/G)ループである。(Sondermann et al、2000 Nature、406: 267-273参照)。いくつかの実施形態では、本出願に記載の抗-CD117抗体は、構造的な及び結晶学的な解析に基づいて、Fcγ Rと直接接触する、少なくとも1つの残基を改変したバリアントFc領域を含むことがある。1つの実施形態では、前記抗-CD117抗体(又はそのフラグメント)のFc領域は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, NH1, MD (1991) (参照により本出願に明確に取り込まれている)にあるようなEUインデックスによるアミノ酸265で、アミノ酸置換を含む。「KabatにあるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の番号付けを指す。EUインデックス又はKabatにあるようなEUインデックス又はEU番号体系は、EU抗体の番号付けを指す(Edelmanら、1969、Proc Natl Acad Sci USA 63:78-85、参照により全体が本出願に取り込まれる)。1つの実施形態では、前記Fc領域は、D265A変異を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域はD265C変異を含む。いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体(又はそのフラグメント)のFc領域は、KabatにあるようなEUインデックスによるアミノ酸234でのアミノ酸置換を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、L234A変異を含む。いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体(又はそのフラグメント)のFc領域は、KabatにあるようなEUインデックスによるアミノ酸235でのアミノ酸置換を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、L235A変異を含む。更に別の実施形態では、前記Fc領域は、L234A及びL235A変異を含む。更なる実施形態では、本出願に記載のADCに関する抗体のFc領域は、D265C、L234A、及びL235A変異を含む。
1つの実施形態では、前記Fc領域は、D265、V205、H435、I253、及び/又はH310のアミノ酸位置に変異を含む。例えば、これらの位置での特異的な変異としては、D265C、V205C、H435A、I253A、及び/又はH310Aが挙げられる。
1つの実施形態では、前記Fc領域は、L234A変異を含む。いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体(又はそのフラグメント)のFc領域は、KabatにあるようなEUインデックスによるアミノ酸235でのアミノ酸置換を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、L235A変異を含む。更に別の実施形態では、前記Fc領域は、L234A及びL235A変異を含む。更なる実施形態では、前記Fc領域は、D265C、L234A、及びL235A変異を含む。更に更なる実施形態では、前記Fc領域は、D265C、L234A、L235A、及びH435A変異を含む。更なる実施形態では、前記Fc領域は、D265C及びH435A変異を含む。
更に別の実施形態では、前記Fc領域は、L234A及びL235A変異(本出願では、「L234A.L235A」又は「LALA」とも呼ぶ)を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、L234A及びL235A変異を含む、ここで、前記Fc領域は、P329G変異を含まない。更なる実施形態では、前記Fc領域は、D265C、L234A、及びL235A変異(本出願では、「D265C.L234A.L235A」とも呼ぶ)を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、D265C、L234A、及びL235A変異を含む、ここで、前記Fc領域は、P329G変異を含まない。また更なる実施形態では、前記Fc領域は、D265C、L234A、L235A、及びH435A変異(本出願では、「D265C.L234A.L235A.H435A」とも呼ぶ)を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、D265C、L234A、L235A、及びH435A変異を含む、ここで、前記Fc領域は、P329G変異を含まない。更なる実施形態では、前記Fc領域は、D265C及びH435A変異(本出願では、「D265C.H435A」とも呼ぶ)を含む。更に別の実施形態では、前記Fc領域は、D265A、S239C、L234A、及びL235A変異(本出願では、「D265A.S239C.L234A.L235A」とも呼ぶ)を含む。更に別の実施形態では、前記Fc領域は、D265A、S239C、L234A、及びL235A変異を含む、ここで、前記Fc領域は、P329G変異を含まない。別の実施形態では、前記Fc領域は、D265C、N297G、及びH435A変異(本出願では、「D265C.N297G.H435A」とも呼ぶ)を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、D265C、N297Q、及びH435A変異(本出願では、「D265C.N297Q.H435A」とも呼ぶ)を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、E233P、L234V、L235A及びdelG236(236の欠失)変異(本出願では、「E233P.L234V.L235A.delG236」又は「EPLVLAdelG」とも呼ぶ)を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、E233P、L234V、L235A及びdelG236(236の欠失)変異を含む、ここで、前記Fc領域は、P329G変異を含まない。別の実施形態では、前記Fc領域は、E233P、L234V、L235A、delG236(236の欠失)及びH435A変異(本出願では、「E233P.L234V.L235A.delG236.H435A」又は「EPLVLAdelG.H435A」とも呼ぶ)を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、E233P、L234V、L235A、delG236(236の欠失)及びH435A変異を含む、ここで、前記Fc領域は、P329G変異を含まない。別の実施形態では、前記Fc領域は、L234A、L235A、S239C及びD265A変異を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、L234A、L235A、S239C及びD265A変異を含む、ここで、前記Fc領域は、P329G変異を含まない。別の実施形態では、前記Fc領域は、H435A、L234A、L235A、及びD265C変異を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、H435A、L234A、L235A、及びD265C変異を含む、ここで、前記Fc領域は、P329G変異を含まない。
いくつかの実施形態では、前記抗体は、改変したFc領域を有し、その結果、前記抗-CD117抗体では、in vitroエフェクター機能アッセイにおいて、Fcレセプター(FcR)への結合が、改変していないFc領域を含む同じ抗体の前記FcRへの結合と比較して、減少して、エフェクター機能が減少する。いくつかの実施形態では、前記抗体は、改変したFc領域を有し、その結果、前記抗-CD117抗体では、in vitroエフェクター機能アッセイにおいて、Fcガンマ・レセプター(FcγR)への結合が、改変していないFc領域を含む同じ抗体の前記FcγRへの結合と比較して、減少して、エフェクター機能が減少する。いくつかの実施形態では、前記FcγRは、FcγR1である。いくつかの実施形態では、前記FcγRは、FcγR2Aである。いくつかの実施形態では、前記FcγRは、FcγR2Bである。いくつかの実施形態では、前記FcγRは、FcγR2Cである。いくつかの実施形態では、前記FcγRは、FcγR3Aである。いくつかの実施形態では、前記FcγRは、FcγR3Bである。他の実施形態では、結合の減少は、FcγRへの抗体結合で、改変していないFc領域を含む同じ抗体の前記FcγRへの結合と比較して、少なくとも70%の減少、少なくとも80%の減少、少なくとも90%の減少、少なくとも95%の減少、少なくとも98%の減少、少なくとも99%の減少、又は100%の減少である。他の実施形態では、結合の減少は、FcγRへの抗体結合で、改変していないFc領域を含む同じ抗体の前記FcγRへの結合と比較して、少なくとも70%~100%の減少、少なくとも80%~100%の減少、少なくとも90%~100%の減少、少なくとも95%~100%の減少、又は少なくとも98%~100%の減少である。
いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体は、改変したFc領域を有し、その結果、前記抗体では、in vitroサイトカイン放出アッセイにおいて、改変していないFc領域を含む同じ抗体のサイトカイン放出と比較して、少なくとも50%のサイトカイン放出に減少して、サイトカイン放出が減少する。いくつかの実施形態では、サイトカイン放出の減少は、改変していないFc領域を含む同じ抗体のサイトカイン放出と比較して、サイトカイン放出の少なくとも70%の減少、少なくとも80%の減少、少なくとも90%の減少、少なくとも95%の減少、少なくとも98%の減少、少なくとも99%の減少、又は100%の減少である。いくつかの実施形態では、サイトカイン放出の減少は、改変していないFc領域を含む同じ抗体のサイトカイン放出と比較して、サイトカイン放出の少なくとも70%~100%の減少、少なくとも80%~100%の減少、少なくとも90%~100%の減少、少なくとも95%~100%の減少である。ある特定の実施形態では、サイトカイン放出は免疫細胞による。
いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体は、改変したFc領域を有し、その結果、前記抗体では、in vitroマスト細胞脱顆粒アッセイにおいて、改変していないFc領域を含む同じ抗体のマスト細胞脱顆粒と比較して、少なくとも50%のマスト細胞脱顆粒に減少して、マスト細胞脱顆粒が減少する。いくつかの実施形態では、マスト細胞脱顆粒の減少は、改変していないFc領域を含む同じ抗体のマスト細胞脱顆粒と比較して、マスト細胞脱顆粒の少なくとも70%の減少、少なくとも80%の減少、少なくとも90%の減少、少なくとも95%の減少、少なくとも98%の減少、少なくとも99%の減少、又は100%の減少である。いくつかの実施形態では、マスト細胞脱顆粒の減少は、改変していないFc領域を含む同じ抗体のマスト細胞脱顆粒と比較して、マスト細胞脱顆粒の少なくとも70%~100%の減少、少なくとも80%~100%の減少、少なくとも90%~100%の減少、少なくとも95%~100%の減少である。
いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体は、改変したFc領域を有し、その結果、前記抗体では、in vitro抗体依存性細胞ファゴサイトーシス・アッセイ(antibody dependent cell phagocytosis (ADCP) assay)において、改変していないFc領域を含む同じ抗体のADCPと比較して、少なくとも50%の抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)に減少して、ADCPが減少する、又は回避される。いくつかの実施形態では、ADCPの減少は、改変していないFc領域を含む同じ抗体のサイトカイン放出と比較して、サイトカイン放出の少なくとも70%の減少、少なくとも80%の減少、少なくとも90%の減少、少なくとも95%の減少、少なくとも98%の減少、少なくとも99%の減少、又は100%の減少である。
いくつかの実施形態では、本出願に記載される抗-CD117抗体は、以下の改変又は改変の組み合わせ、のうちの1種を含むFc領域を含む:D265A, D265C, D265C / H435A, D265C / LALA, D265C / LALA / H435A, D265A / S239C / L234A / L235A / H435A, D265A / S239C / L234A / L235A, D265C / N297G, D265C / N297G / H435A, D265C (EPLVLAdelG *), D265C (EPLVLAdelG ) / H435A, D265C / N297Q / H435A, D265C / N297Q, EPLVLAdelG / H435A, EPLVLAdelG / D265C, EPLVLAdelG / D265A, N297A, N297G, 又は N297Q。
いくつかの実施形態では、本出願に記載される抗-CD117抗体は、以下の改変又は改変の組み合わせ、のうちの1種を含むFc領域を含む:D265A, D265C, D265C / H435A, D265C / LALA, D265C / LALA / H435A, D265C / N297G, D265C / N297G / H435A, D265C (IgG2*), D265C (IgG2) / H435A, D265C / N297Q / H435A, D265C / N297Q, EPLVLAdelG / H435A, N297A, N297G, 又は N297Q。
改変したFc領域とFcガンマ・レセプターとの間の結合又は親和性を、当技術分野で公知の様々な技術(例えば、限定されるものではないが、平衡方法[例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);KinExA、Rathanaswami et al. Analytical Biochemistry, Vol. 373:52-60, 2008;ラジオイムノアッセイ(RIA)]、又は表面プラズモン共鳴アッセイ若しくは他のメカニズムの動態に基づくアッセイ[例えば、BIACORE(登録商標)解析若しくはOctetTM解析(forteBIO)]、並びに他の方法[例えば、間接的結合アッセイ、競合的結合アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動及びクロマトグラフィー(例えば、ゲルろ過)など])を使用して、測定することがある。これらの及び他の方法は、1つ以上の評価する構成成分上にある標識を利用することがある、及び/又は、様々な検出方法(例えば、限定されるものではないが、発色性標識、蛍光性標識、発光性標識、又は同位体標識など)を使用することがある。結合親和性及び動態に関しては、Paul, W. E., ed., Fundamental Immunology, 4th Ed., Lippincott-Raven, Philadelphia (1999)(これは、抗体-免疫原相互作用に焦点を当てている)に、詳細に記載されている。競合的結合アッセイの一例は、ラジオイムノアッセイであり、ラジオイムノアッセイは、標識抗原と目的の抗体とを、非-標識の抗原の量を増やしながら、その存在下で、インキュベーションすること、及び前記標識抗原に結合した抗体を検出すること、を含む。そのデータから、スキャッチャード・プロット解析により、特定の抗原に対する目的の抗体の親和性及び結合オフ-レート(off-rate)を決定することがある。第2の抗体との競合を、ラジオイムノアッセイを使用して、測定することもある。この場合、前記抗原を、標識化合物にコンジュゲートした目的の抗体と、非-標識の第2の抗体の量を増やしながら、その存在下で、インキュベーションする。
1つの実施形態では、本出願に記載されるFc改変(例えば、D265C、L234A、L235A、及び/又はH435A)を有する抗体は、Fcガンマ・レセプターへの結合が、改変していないFc領域を含む同じ抗体の前記Fcガンマ・レセプターへの結合と比較して、少なくとも70%の減少、少なくとも80%の減少、少なくとも90%の減少、少なくとも95%の減少、少なくとも98%の減少、少なくとも99%の減少、又は100%の減少である(例えば、バイオレイヤー干渉法(biolayer Interferometry)(BLI)で評価した場合)。
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、Fcガンマ・レセプターとのFc領域結合相互作用は、種々のエフェクター機能及び下流のシグナル伝達イベント(例えば、限定されるものではないが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody dependent cell-mediated cytotoxicity (ADCC))及び補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity (CDC))など)に必須であると考えられる。従って、ある特定の態様では、改変したFc領域を含む抗体(例えば、L234A、L235A、及び/又はD265C変異を含む)では、エフェクター機能が実質的に減少している、又は消失している。エフェクター機能を、当技術分野で公知の種々の方法を使用して(例えば、目的の抗体に対する細胞応答[例えば、マスト細胞脱顆粒又はサイトカイン放出]を測定することによって)アッセイすることがある。例えば、当技術分野での標準的な方法を用いて、Fc改変抗体を、そのin vitroでマスト細胞脱顆粒を誘発する作用能、又はそのサイトカイン放出(例えば、ヒト末梢血単核細胞により放出される)を誘発する作用能、について、アッセイすることがある。
ある特定の態様において、バリアントIgG Fcドメインは、1つ以上のアミノ酸置換を含まない野生型Fcドメインと比較して、FcγR及び/又はC1qに対する結合親和性が減少する又は無くなるという結果になる、1つ以上のアミノ酸置換を含む。Fc結合相互作用は、様々なエフェクター機能及び下流シグナル伝達イベント(例えば、抗体依存性細胞介在性細胞毒性(antibody dependent cell-mediated cytotoxicity (ADCC))及び補体依存性細胞毒性(complement dependent cytotoxicity (CDC))などが挙げられるが、これらに限定されない)に必須である。従って、ある特定の態様において、改変したFc領域を含む抗体(例えば、L234A、L235A、及びD265C変異を含む)では、エフェクター機能が実質的に減少する又は消失する。
Fc領域に対する親和性は、当該技術分野で公知の様々な技術(例えば、限定されるものではないが、平衡方法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunoabsorbent assay (ELISA));KinExA、Rathanaswami et al. Analytical Biochemistry, Vol. 373:52-60, 2008;ラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay (RIA)))、又は表面プラズモン共鳴アッセイ若しくは他のメカニズムの動態に基づくアッセイ(例えば、BIACORETM解析又はOctetTM解析(forteBIO))、並びに他の方法(間接的結合アッセイ、競合的結合アッセイ、蛍光共鳴エネルギ移動(fluorescence resonance energy transfer (FRET))、ゲル電気泳動及びクロマトグラフィ(例えば、ゲルろ過)))を使用して、測定することができる。これら及び他の方法は、検査対象の1つ以上の成分にある標識を利用することがあり、及び/又は種々の検出方法(例えば、限定されるものではないが、発色標識、蛍光標識、ルミネセンス標識、又は同位体標識など)を使用することがある。結合親和性及び動態に関する詳細な記載は、Paul, W. E., ed., Fundamental Immunology, 4th Ed., Lippincott-Raven, Philadelphia (1999)(これは抗体-免疫原相互作用に焦点を当てている)に見出すことができる。競合的結合アッセイの一例は、ラジオイムノアッセイであり、ラジオイムノアッセイは、標識抗原と目的の抗体とを、非-標識の抗原の量を増やしながら、その存在下で、インキュベーションすること、及び前記標識抗原に結合した抗体を検出すること、を含む。そのデータから、スキャッチャード・プロット解析により、特定の抗原に対する目的の抗体の親和性及び結合オフ-レート(off-rate)を決定することがある。第2の抗体との競合を、ラジオイムノアッセイを使用して、測定することもある。この場合、前記抗原を、標識化合物にコンジュゲートした目的の抗体と、非-標識の第2の抗体の量を増やしながら、その存在下で、インキュベーションする。
抗体に、更に手を加えて、例えば(Dall'Acqua et al.(2006)J Biol Chem 281: 23514-24)、(Zalevsky et al.(2010)Nat Biotechnol 28: 157-9)、(Hinton et al.(2004)J Biol Chem 279: 6213-6)、(Hinton et al.(2006)J Immunol 176: 346-56)、(Shields et al.(2001)J Biol Chem 276: 6591-604)、(Petkova et al.(2006)Int Immunol 18: 1759-69)、(Datta-Mannan et al.(2007)Drug Metab Dispos 35: 86-94)、(Vaccaro et al.(2005)Nat Biotechnol 23: 1283-8)、(Yeung et al. (2010)Cancer Res 70: 3269-77)及び(Kim et al. (1999)Eur J Immunol 29: 2819-25)に記載のFc変異のようなFc変異を更に導入することによって、抗体の半減期を(例えば、改変していないFc領域を有する抗体と比較して)更に調節することがあり、並びに位置250、252、253、254、256、257、307、376、380、428、434及び435を含むことがある。単独で又は組み合わせて作製され得る例示的な変異は、T250Q、M252Y、1253A、S254T、T256E、P2571、T307A、D376V、E380A、M428L、H433K、N434S、N434A、N434H、N434F、H435A及びH435R変異である。
従って、1つの実施形態では、前記Fc領域は、半減期の低下をもたらす変異を含む。短い半減期を有する抗体は、前記抗体が短命の治療薬として機能することが期待される一定の例、例えば、前記抗体が投与され、続いてHSCが投与される本出願に記載されるコンディショニング工程において、有益であり得る。理想的には、内因性の幹細胞とは異なり、本出願に記載のADCがターゲットとしている抗原(例えば、CD117)を、一般に発現してもいるが、前記ADCのターゲットではないHSCを投与する前に、前記抗体は実質的にクリアランスされるべきである。1つの実施形態では、前記Fc領域は、位置435(KabatにあるようなEUインデックス)に変異を含む。1つの実施形態では、前記変異はH435A変異である。
1つの実施形態では、本出願に記載の抗体は、約24時間以下の半減期、約22時間以下の半減期、約20時間以下の半減期、約18時間以下の半減期、約16時間以下の半減期、約14時間以下、約13時間以下、約12時間以下、又は約11時間以下の半減期を有する。1つの実施形態では、前記抗体の半減期は、約11時間~約24時間;約12時間~約22時間;約10時間~約20時間;約8時間~約18時間;又は約14時間~約24時間である。
いくつかの態様において、前記Fc領域は、半減期の減少を付与し、そして抗体のエフェクター機能を大幅に減少させるか、又は完全に無くす、2つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、前記Fc領域は、半減期の減少をもたらす変異、及び(例えば、構造的な及び結晶学的な解析に基づいて)FcγRと直接接触することができる少なくとも1つの残基の変異を、含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、H435A突然変異、L234A突然変異、及びL235A突然変異を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、H435A突然変異及びD265C突然変異を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、H435A突然変異、L234A突然変異、L235A突然変異、及びD265C突然変異を含む。
いくつかの実施形態では、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合フラグメントは、前記抗体又はその抗原結合フラグメントのFcドメインにおけるシステイン残基を介して、細胞毒素(例えば、アントラサイクリン)にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態では、前記システイン残基は、前記抗体又はその抗原結合フラグメントのFcドメインにおける変異によって導入される。例えば、前記システイン残基は、Cys118、Cys239、及びCys265からなる群より選択されることがある。1つの実施形態では、前記抗-CD117抗体(又はそのフラグメント)のFc領域は、KabatにあるようなEUインデックスによるアミノ酸265でのアミノ酸置換を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域はD265C変異を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、D265C及びH435A変異を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、D265C、L234A、及びL235A変異を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、D265C、L234A、L235A、及びH435A変異を含む。1つの実施形態では、前記抗-CD117抗体、又はその抗原-結合フラグメントのFc領域は、KabatにあるようなEUインデックスによるアミノ酸239でのアミノ酸置換を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、S239C変異を含む。1つの実施形態では、前記Fc領域は、L234A変異、L235A変異、S239C変異及びD265A変異を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、S239C及びH435A変異を含む。別の実施形態では、前記Fc領域は、L234A変異、L235A変異、及びS239C変異を含む。更に別の実施形態では、前記Fc領域は、H435A変異、L234A変異、L235A変異、及びS239C変異を含む。更に別の実施形態では、前記Fc領域は、H435A変異、L234A変異、L235A変異、S239C変異及びD265A変異を含む。
特に、Fcのアミノ酸位置は、特に断らない限り、EU番号付けインデックスを参照している。
これらの態様のいくつかの実施形態において、前記システイン残基は、前記抗-CD117又はその抗原結合フラグメントのFcドメイン中に天然に存在する。例えば、前記Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメイン等のIgG Fcドメインであってもよく、前記システイン残基は、Cys261、Csy321、Cys367、及びCys425からなる群より選択されてもよい。
例えば、1つの実施形態において、抗体67のFc領域は、D265C変異を含むように改変される(例えば、配列番号(SEQ ID NO):111)。別の実施形態において、抗体67のFc領域は、D265C、L234A、及びL235A変異を含むように改変される(例えば、配列番号(SEQ ID NO):112)。更に別の実施形態において、抗体67のFc領域は、D265C及びH435A変異を含むように改変される(例えば、配列番号(SEQ ID NO):113)。更なる実施形態において、抗体67のFc領域は、D265C、L234A、L235A、及びH435A変異を含むように改変される(例えば、配列番号(SEQ ID NO):114)。
抗体55に関して、1つの実施形態では、抗体55のFc領域は、D265C変異を含むように改変される(例えば、配列番号(SEQ ID NO):117)。別の実施形態において、抗体55のFc領域は、D265C、L234A、及びL235A変異を含むように改変される(例えば、配列番号(SEQ ID NO):118)。更に別の実施形態において、抗体55のFc領域は、D265C及びH435A変異を含むように改変される(例えば、配列番号(SEQ ID NO):119)。更なる実施形態において、抗体55のFc領域は、D265C、L234A、L235A、及びH435A変異を含むように改変される(例えば、配列番号(SEQ ID NO):120)。
抗体54、抗体55、抗体56、抗体57、抗体58、抗体61、抗体66、抗体67、抗体68、又は抗体69の何れか1つのFc領域は、D265C変異(例えば、配列番号(SEQ ID NO):123におけるよう);D265C、L234A、及びL235A変異(例えば、配列番号(SEQ ID NO):124におけるよう);D265C及びH435A変異(例えば、配列番号(SEQ ID NO):125におけるよう);又はD265C、L234A、L235A、及びH435A変異(例えば、配列番号(SEQ ID NO):126におけるよう)を含むように改変され得る。
本出願に記載されるバリアントFcドメインは、それらを構成するアミノ酸改変に従って定義される。Fc領域に関して本出願中で議論される全てのアミノ酸置換について、番号付けは、常にEUインデックスに従う。従って、例えば、D265Cは、親Fcドメインに対して、EU位置265でのアスパラギン酸(D)がシステイン(C)で置換されたFcバリアントである。同様に、例えば、D265C/L234A/L235Aは、親Fcドメインに対して、EU位置265(DからCへ)、234(LからAへ)、及び235(LからAへ)での置換を有するFcバリアントを定義する。バリアントはまた、変異EUアミノ酸位置における、その最終的なアミノ酸組成に従って指定されることもある。例えば、L234A/L235A変異は、LALAと呼ぶことがある。置換する順序は任意であることに留意されたい。
1つの実施形態では、前記抗-CD117抗体、又はその抗原結合フラグメントは、本出願で開示される配列番号(SEQ ID Nos)と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%同一であるアミノ酸配列を有する可変領域を含む。或いは、前記抗-CD117抗体、又はその抗原結合フラグメントは、本出願で開示される配列番号(SEQ ID Nos)と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%同一であるアミノ酸配列を有する、本出願に記載される可変領域の骨格領域を有する、本出願で開示される配列番号(SEQ ID Nos)を含むCDRを含む。
1つの実施形態では、前記抗-CD117抗体、又はその抗原結合フラグメントは、本出願で開示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び重鎖定常領域、を有する。別の実施形態では、前記抗-CD117抗体、又はその抗原結合フラグメントは、本出願で開示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域、を有する。更に別の実施形態では、前記抗-CD117抗体、又はその抗原結合フラグメントは、本出願で開示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖定常領域、及び軽鎖定常領域、を有する。
抗体を同定する方法
例えば、幹細胞移植のためのコンディショニング方法において、使用することができるADCが、本出願で提供される。本出願で開示されることを考慮すると、本開示のADC及び方法で使用することができる、他の抗-CD117抗体を同定することができる。
細胞表面抗原(例えば、CD117又はCD45)に結合することができる分子を求めて、抗体、又は抗体フラグメントのライブラリーをハイ・スループット・スクリーニングするための方法を使用して、本出願に記載されるように、がん、自己免疫疾患を治療するために、及び造血幹細胞療法を必要とする患者(例えば、ヒト患者)をコンディショニングするために、有用な抗体を、同定することがある、及び親和性成熟(affinity mature)させることがある。このような方法としては、当技術分野で公知のin vitroディスプレイ技術、例えば、とりわけ、ファージ・ディスプレイ、バクテリア・ディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳動物細胞ディスプレイ、リボソーム・ディスプレイ、mRNAディスプレイ、及びcDNAディスプレイなど、が挙げられる。生物学的に関連する分子に結合するリガンド類を単離するためにファージ・ディスプレイを使用することは、例えば、Felici et al., Biotechnol. Annual Rev. 1:149-183, 1995; Katz, Annual Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26:27-45, 1997; 及び Hoogenboom et al., Immunotechnology 4:1-20, 1998、で既にレビューされている、これらの各々の開示は、in vitroディスプレイ技術に関連するものとして、本出願に参照により取り込まれる。Kay, Perspect. Drug Discovery Des. 2:251-268, 1995 及び Kay et al., Mol. Divers. 1:139-140, 1996に記載されるように、ランダム化したコンビナトリアル・ペプチド・ライブラリーを構築して、細胞表面抗原に結合するポリペプチドを選択することも行われてきている、これらの各々の開示は、抗原-結合分子の発見に関連するものとして、本出願に参照により取り込まれる。タンパク質類(例えば、多量体タンパク質類)を、機能的分子として、ファージ・ディスプレイすることが、うまくできてきている(例えば、EP 0349578; EP 4527839;及びEP 0589877、並びにChiswell and McCafferty, Trends Biotechnol. 10:80-84 1992を参照、これらの各々の開示は、抗原-結合分子を発見するためにin vitroディスプレイ技術を使用することに関するものとして、本出願に参照により取り込まれる)。更に、機能的抗体フラグメント(例えば、Fab及びscFvフラグメント)を、in vitroディスプレイ・フォーマットで、発現させることも行われてきている(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554, 1990; Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7978-7982, 1991; 及び Clackson et al., Nature 352:624-628, 1991を参照、これらの各々の開示は、抗原-結合分子を発見するためのin vitroディスプレイ・プラットフォームに関連するものとして、本出願に参照により取り込まれる)。とりわけ、これらの技術を使用して、CD117(例えば、GNNK+CD117)に結合する、次いで、造血幹細胞移植療法を必要とする患者(例えば、ヒト患者)において内因性の造血幹細胞を減少させるために使用することができる、抗体類を同定する、及び抗体類の親和性を改善する、ことがある。
in vitroディスプレイ技術に加えて、計算によるモデル化技術を使用して、細胞表面抗原(例えば、CD117)に結合する抗体及び抗体フラグメントを、in silicoでデザインする及び同定することがある。例えば、計算によるモデル化技術を使用して、当業者のある者は、特異的エピトープ(例えば、この抗原の細胞外エピトープ)に結合し得る分子を探すために、in silicoで、抗体、及び抗体フラグメントのライブラリーをスクリーニングすることがある。これらの計算技術によって同定された抗体、及びその抗原結合フラグメントを、本出願に記載される治療方法(例えば、本出願に記載されるがん及び自己免疫疾患を治療する方法、並びに本出願に記載される患者をコンディショニングする処置等)と組み合わせて使用することがある。
更なる技術を使用して、細胞(例えば、がん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞)の表面上にある細胞表面抗原(例えば、CD117)に結合し、例えば、レセプター媒介エンドサイトーシスによって、細胞によって内部に取り込まれる、抗体、及びその抗原結合フラグメントを同定することがある。例えば、上記のin vitroディスプレイ技術を、がん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞の表面上にある細胞表面抗原(例えば、CD117)に結合し、続いて細胞内部に取り込まれる、抗体、及びその抗原-結合フラグメントを求めてスクリーニングするのに適合化させることがある。ファージ・ディスプレイは、このスクリーニング・パラダイムと組み合わせて使用され得る1つの技術の代表である。細胞表面抗原(例えば、CD117)に結合し、その後、がん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞によって内部に取り込まれる抗体、及びそのフラグメントを同定するために、当業者のある者は、例えば、Williams et al., Leukemia 19:1432-1438, 2005(その開示は、その全体が参照により本出願に取り込まれる)に記載されるファージ・ディスプレイ技術を適合させることがある。例えば、当該技術分野で公知の変異誘発方法を使用して、(例えば、CDR若しくはその等価領域、又は抗体若しくは抗体フラグメント、の1つ以上、又はすべての中に)ランダム化したアミノ酸カセットを含有する、とりわけ、scFvフラグメント、Fabフラグメント、ダイアボディ、トリアボディ等の抗体、抗体フラグメント、及び10Fn3ドメイン、又はリガンド、をコードする組換えファージ・ライブラリーを作製することがある。前記抗体又は抗体フラグメントの骨格領域、ヒンジ、Fcドメイン、及び他の領域を、例えば、ヒト生殖系列抗体の配列を有する又はヒト生殖系列抗体に対してマイナーな変異のみを示す配列を有する、ようにすることによって、ヒトにおいて非-免疫原性であるように設計することがある。
本出願に記載されるか、又は当該技術分野で公知のファージ・ディスプレイ技術を使用して、ファージ粒子に共有結合した、ランダム化された抗体又は抗体フラグメントを含むファージ・ライブラリーを、細胞表面ターゲット抗原(例えば、CD117)抗原とともにインキュベートすることがある。これは、例えば、最初に、非-特異的タンパク質結合を示す抗体又はそのフラグメントをコードするファージ、及びFcドメインに結合する抗体又はそのフラグメントをコードするファージを除去するために、前記ファージ・ライブラリーをブロッキング剤(例えば、乳タンパク質、ウシ血清アルブミン、及び/又はIgG)とインキュベートし、次いで、前記ファージ・ライブラリーを造血幹細胞の集団とインキュベートすることによって、行う。前記ファージ・ライブラリーを、ターゲット細胞(例えば、がん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞)とインキュベートすることがあるが、このインキュベートを、細胞表面抗原特異的な抗体、又はその抗原結合フラグメント(例えば、CD117特異的な抗体、又はその抗原結合フラグメント)が細胞表面抗原(例えば、細胞表面CD117)抗原に結合し、その後、前記がん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞によって内部に取り込まれるのに十分な時間をかけて、行うことがある(例えば、4℃で30分~6時間、4℃で1時間等)。1つ以上のこれらの抗原に結合する(その結果、がん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞に結合するようになる)のに十分な親和性を示さず、及びがん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞によって細胞内部に取り込まれることを示さない、抗体又はそのフラグメントを含むファージを、その後、前記細胞を(例えば、冷[4℃]0.1Mグリシンバッファー、pH 2.8で)洗浄することにより、除去することができる。がん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞によって内部に取り込まれた抗体又はそのフラグメントに結合したファージは、例えば、前記細胞を溶解し、細胞培養培地から内部に取り込まれたファージを回収することによって、同定することができる。次いで、このファージを、例えば、当該技術分野で公知の方法を使用して、回収されたファージと共にバクテリア細胞を2×YT培地中でインキュベートすることによって、バクテリア細胞中で増幅することができる。次いで、この培地から回収されたファージを、例えば、そのファージのゲノム内に挿入された、抗体又はそのフラグメントをコードする遺伝子(単数又は複数)の核酸配列を決定することによって、同定することがある。コードされた抗体又はそのフラグメントは、続いて、(例えば、scFvフラグメントなどの抗体フラグメントの)化学合成又は(例えば、全長抗体の)組換え発現によって、新たに調製することができる。
本出願に記載される組成物及び方法と共に使用するための細胞表面抗原抗体(例えば、抗-CD117抗体)を、in vitroで進化させる例示的な方法は、ファージ・ディスプレイである。ファージ・ディスプレイ・ライブラリーは、抗体のCDR又は抗体様スキャッフォルドの類似領域(例えば、10Fn3ドメインのBC、CD、及びDEループ)のコーディング配列内に、一連の変異(mutation)又は多様性(variation)を設計することによって作製され得る。これらの変異を導入するテンプレート抗体をコードする配列は、例えば、ナイーブ・ヒト生殖系列の配列であることがある。これらの変異を、当該技術分野で知られている標準的な変異誘発技術を使用して、引き起こすことができる。従って、各々の変異配列は、1つ以上のアミノ酸変異以外は、前記テンプレートに対応する抗体をコードする。レトロウイルス及びファージ・ディスプレイ・ベクターを、当該技術分野で公知の標準的なベクター構築技術を使用して、操作することがある。P3ファージ・ディスプレイ・ベクターを互換性のあるタンパク質発現ベクターと共に使用することで、抗体を多様化させるためのファージ・ディスプレイ・ベクターを生成することができる。
変異DNAによって配列は多様化し、各形質転換ファージは、DNAがコードする最初のテンプレート・アミノ酸配列のうちの1つのバリアントをディスプレイし、膨大な数の、異なるけれども構造的に関連したアミノ酸配列をディスプレイするファージ集団(ライブラリー)がもたらされる。抗体超可変領域は明確に規定された構造であるために、ファージ・ディスプレイ・スクリーニングに導入されるアミノ酸の多様性は、その全体的な分子構造を有意に変化させることなく、結合ペプチド又はドメインの結合特性を変化させるものと予想される。
典型的なスクリーニングでは、ファージ・ライブラリーを、前記の抗原又はそのエピトープの1つと接触させ、結合させることができる。バインダー及び非-バインダーの分離を容易にするために、固体支持体上に前記ターゲットを固定化すると便利である。細胞表面-結合部分構造を有するファージは、固体支持体上のターゲットと複合体を形成することができるが、一方、非-結合ファージは溶液中に残り、過剰なバッファーで洗い流すことができる。次いで、結合したファージを、バッファーを極値pH(pH 2又はpH 10)に変化させること、バッファーのイオン強度を変化させること、変性剤を添加すること、又は他の既知手段によって、ターゲットから遊離させることができる。
次いで、回収されたファージを、バクテリア細胞に感染させて増幅し、そして前記スクリーニング・プロセスを、この時点で非-結合抗体が減少し、そしてターゲット抗原 (例えば、CD117)に結合する抗体が濃縮された新たなプールを用いて、繰り返すことがある。少数の結合ファージしか回収されない場合でも、前記ファージを増幅し、スクリーニングを続けて繰り返すのに十分である。数ラウンドの選択の後、前記結合プール中の選択されたファージ・クローンに由来する抗体、又はその抗原結合フラグメントをコードする遺伝子配列を、従来の方法によって決定し、これにより、ファージの前記ターゲットに対する結合親和性を付与するペプチド配列が明らかにする。パニング・プロセスの間、前記集団の配列多様性は、各選択ラウンドを経るにつれて減少し、そして最後に所望のペプチド結合抗体が残る。前記配列は、少数の関連抗体、又はその抗原結合フラグメントに収束し得る。各選択ラウンドで回収されたファージの数が増大することは、スクリーニングにおいてライブラリーが収束したことを示している。
抗体を同定するための別の方法は、例えば、以下の手法に従って、細胞表面ターゲット抗原(例えば、CD117)に結合する非-ヒト抗体をヒト化することを利用することを、含む。コンセンサス・ヒト抗体重鎖及び軽鎖配列は当該技術分野で公知である(例えば、「VBASE」ヒト生殖系列配列データベース;Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91 -3242, 1991; Tomlinson et al., J. Mol. Biol. 227:776-798, 1992; 及び Cox et al.. Eur. J. Immunol. 24:827- 836, 1994を参照のこと、これらの各々の開示は、コンセンサス・ヒト抗体重鎖及び軽鎖配列に関するので、本出願中に参照により取り込まれる)。確立された手順を使用して、当業者のある者は、コンセンサス抗体配列の可変ドメインの骨格残基及びCDRを(例えば、配列アラインメントによって)同定し得る。ヒト化抗体を産生するために、本出願に記載されるように、コンセンサス・ヒト抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインの1つ以上のCDRを、細胞表面抗原(例えば、CD117)に結合する非-ヒト抗体の1つ以上の対応するCDRで置換することがある。このCDRの交換は、本出願に記載されるか、又は当該技術分野で公知の遺伝子編集技術を使用して、実施することがある。
ヒト化抗体を産生するために、1つ以上の可変領域CDRを、細胞表面ターゲット抗原(例えば、CD117)に結合する非-ヒト抗体の1つ以上の可変領域CDR配列で置換した、上記のコンセンサス配列をコードするポリヌクレオチドを、組換え的に発現させることがある。造血幹細胞抗原に対する抗体の親和性は主にCDR配列によって決定されるので、得られるヒト化抗体は、造血幹細胞抗原に対して、前記ヒト化抗体が由来する非-ヒト抗体の親和性とほぼ同じ親和性を示すと予想される。ターゲット抗原に対する抗体の親和性を測定する方法としては、例えば、本出願に記載され、当該技術分野で公知のELISAベースの技術、並びにとりわけ、表面プラズモン共鳴、蛍光異方性、及び等温滴定カロリメトリー、が挙げられる。
前記抗体又はそのフラグメントが細胞内部に取り込まれる作用能を、例えば、当該技術分野で公知の放射性核種内部取り込みアッセイを使用して評価することがある。例えば、本出願に記載されるか、又は当該技術分野で公知のin vitroディスプレイ技術を使用して同定される抗体又はそのフラグメントに、放射性同位体(例えば、18F, 75Br,77Br, 122I, 123I, 124I, 125I, 129I, 131I, 211At, 67Ga, 111In, 99Tc, 169Yb, 186Re, 64Cu, 67Cu, 177Lu, 77As, 72As, 86Y, 90Y, 89Zr, 212Bi, 213Bi, 又は 225Ac、など)を組み込ませることによって、機能化させることがある。例えば、18F, 75Br, 77Br, 122I, 123I, 124I, 125I, 129I, 131I, 211At,などのような放射性ハロゲンを、親電子性ハロゲン試薬を含むポリスチレン・ビーズ等のビーズ(例えば、Iodination Beads, Thermo Fisher Scientific, Inc., Cambridge, MA)を使用して、抗体又はその断片の中に組み込ませることがある。放射標識した抗体又はそのフラグメントを、細胞内部に取り込まれるのに充分な時間(例えば、4℃で30分~6時間[例えば、4℃で1時間など])、がん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞とともにインキュベートすることがある。次いで、細胞を洗浄して(例えば、冷[4℃]0.1Mグリシンバッファー(pH 2.8)を使用して)、細胞内部に取り込まれなかった抗体又はそのフラグメントを除去することがある。細胞内部に取り込まれた抗体、又はそのフラグメントを、得られたがん細胞、自己免疫細胞、又は造血幹細胞から出る放射線(例えば、γ線)を、回収した洗浄バッファーから出る放射線(例えば、γ線)と比較しながら、検出することによって、同定することがある。
抗体を、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるように、組換え方法及び組成物を使用して産生することがある。1つの実施形態では、本出願に記載の抗体をコードする単離された核酸が提供される。このような核酸は、本抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又は本抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、本抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードすることがある。更なる実施形態において、このような核酸を含む1種以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。更なる実施形態において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。1つのこのような実施形態において、宿主細胞は以下を含む(例えば、以下で形質転換されている):(1)本抗体のVLを含むアミノ酸配列及び本抗体のVHを含むアミノ酸配列、をコードする核酸、を含むベクター、又は(2)本抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び本抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。1つの実施形態では、前記宿主細胞は、真核生物、例えばチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えばY0、NS0、Sp20細胞)である。1つの実施形態では、抗-CLL-1抗体を作製する方法が提供され、ここで、前記方法は、上記に提供されるような抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、前記抗体の発現に適した条件下で、培養することを、及び任意選択的に、前記宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から前記抗体を回収することを、含む。
抗体を組換え的に産生するために、抗体をコードする核酸(例えば、上記のような核酸)を、単離し、そして宿主細胞中で更にクローニングする及び/又は発現させるために、1種以上のベクターに挿入する。このような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、本抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチド・プローブを使用することによって)容易に単離することができる、及び配列決定をすることができる。
抗体をコードするベクターをクローニングする又は発現させるのに適した宿主細胞には、本出願に記載の原核生物又は真核生物細胞が含まれる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、バクテリア中で産生しても良い。バクテリア中で抗体フラグメント及びポリペプチドを発現させることについては、例えば、米国特許第5,648,237、5,789,199、5,840,523号を参照のこと(Charlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J., 2003), pp. 245-254も参照のこと、これには、大腸菌中で抗体フラグメントを発現させることが記載されている)。発現させた後、前記抗体を、可溶性画分中のバクテリア細胞ペーストから単離し、更に精製しても良い。
宿主として、脊椎動物細胞を使用することもできる。例えば、懸濁液中で増殖するように適合した哺乳動物細胞株が有益であることがある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換したサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚性腎臓細胞株(例えば、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載されるような293又は293細胞);ベビー・ハムスター腎臓細胞(BHK);マウス・セルトリ細胞(例えば、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980)に記載されるようなTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカ・ミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸がん細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファロー・ラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳がん(MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)に記載される);MRC 5細胞;及びFS4細胞、である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞(DHFR-CHO細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980))等を含む);及び骨髄腫細胞株(例えば、Y0、NS0及びSp2/0など)が含まれる。抗体産生に適したある特定の哺乳動物宿主細胞株に関するレビューについては、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B. K. C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J.), pp. 255-268 (2003)を参照のこと。
医薬組成物
本出願に記載するADCを、種々の投薬形態で患者(例えば、自己免疫疾患又はがんに罹患しているヒト患者)に投与することがある。例えば、本出願に記載するADCを、免疫疾患又はがんに罹患している患者に、水溶液(例えば、1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む水溶液など)の形態で投与することがある。本出願に記載する組成物及び方法と共に使用するために好適な薬学的に許容される賦形剤としては、粘度調整剤が挙げられる。前記水溶液を、当該技術分野で公知の技術を使用して滅菌することがある。
本出願に記載するようなADCを含む医薬製剤は、このようなADCを、1種以上の任意選択的な薬学的に許容可能な担体と混合することによって(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、調製する。薬学的に許容可能な担体は、一般に、使用する用量及び濃度で、レシピエントに対して無毒性であり、これには、限定されるものではないが、以下が挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジル・アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジル・アルコール;メチル若しくはプロピル・パラベン等のアルキル・パラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンなどの、単糖類、二糖類、及び他の糖類;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又はポリエチレン・グリコール(PEG)などの非-イオン性界面活性剤。
使用の方法
本出願に記載のADCを、経口、経皮、皮下、鼻腔内、静脈内、筋肉内、眼内、又は非経口等の様々な経路によって投与することがある。任意の所与のケースにおいて、投与に最も適した経路は、投与する特定の抗体、又は抗原-結合フラグメント、患者、医薬製剤化方法、投与方法(例えば、投与時刻及び投与経路)、患者の年齢、体重、性別、治療する疾患の重症度、患者の食事、及び患者の排泄速度に依存する。
本出願に記載されるADC、抗体、又はその抗原-結合フラグメントの有効用量は、例えば、単回(例えば、ボーラス)投与、複数回投与、又は持続投与あたりで、体重に関して約0.001~約100 mg/kgの範囲にして、前記抗体、その抗原-結合フラグメントの最適血中濃度(例えば、0.0001~5000 μg/mLの血中濃度)になることがある。前記用量を、がん、自己免疫疾患に罹患している対象、又は造血幹細胞移植を受けることに備えてコンディショニング療法を受けている対象(例えば、ヒト)に、1日、1週間、又は1ヶ月あたり1回以上(例えば、2~10回)、投与することがある。造血幹細胞移植前におけるコンディショニング処置の場合では、前記ADC、抗体、又はその抗原結合フラグメントを、外因性の造血幹細胞の生着が最適に促進される時に、例えば、外因性の造血幹細胞移植片を投与する1時間~1週間(例えば、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、又は約7日)又はそれ以上前に、前記患者に投与することがある。
本出願に記載される場合、本出願に記載の造血幹細胞移植療法は、1種以上の血液細胞型を生着させる又は再生着させるために、治療を必要とする対象に投与され得る。造血幹細胞は、一般に多能性を示し、従って、限定されるものではないが、顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球,好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(例えば、巨核芽球、血小板(platelet)産生巨核球、血小板(platelets))、単球(例えば、単球、マクロファージ)、樹状細胞、ミクログリア、破骨細胞、及びリンパ球(例えば、NK細胞、B細胞及びT細胞)等を含む、複数の様々な血液系列に分化することができる。造血幹細胞は、更に自己複製能を有し、従って、母細胞と同等の潜在能力を有する娘細胞を生じさせることができ、また、移植レシピエントに再導入され、造血幹細胞ニッチにホーミングし、生産的で持続的な造血を再確立する作用能、も特徴とする。
従って、in vivoで欠陥のある又は欠損した細胞集団を再構成するために、造血系列の1種以上の細胞型に欠陥のある又は欠損した患者に、造血幹細胞を投与することがあり、それによって、内因性の血液細胞集団における欠陥又は減少に関連する病態を治療することができる。従って、本出願に記載の組成物及び方法を、非-悪性異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球貧血、サラセミア、ファンコニー貧血、再生不良性貧血、及びウィスコット‐アルドリッチ症候群からなる群より選択される異常ヘモグロビン症)を治療するために、使用することがある。更に、又は代わりに、本出願に記載の組成物及び方法を、先天性免疫不全症などの免疫不全を治療するために使用することがある。更に、又は代わりに、本出願に記載の組成物及び方法を、後天性免疫不全症(例えば、HIV及びAIDSからなる群より選択される後天性免疫不全症)を治療するために使用することがある。本出願に記載される組成物及び方法を、代謝性障害(例えば、グリコーゲン蓄積症、ムコ多糖症、ゴーシェ病、ハーラー病、スフィンゴ脂質症、及び異染性白質ジストロフィー、から選択される代謝性障害)を治療するために使用することがある。
更に、又は代わりに、本出願に記載される組成物及び方法を使用して、悪性腫瘍又は増殖性障害、例えば血液がん、骨髄増殖性疾患など、を治療することができる。がん治療の場合、本出願に記載される組成物及び方法は、造血幹細胞移植療法の前に内因性の造血幹細胞の集団を減少させるように患者に投与されてもよく、その場合、移植した細胞は、内因性の細胞を減少させる工程によって作り出されたニッチにホーミングし、生産的な造血を確立することができる。これによって、全身性の化学療法の間のようながん細胞を根絶させる間に減少した細胞の集団を、今度は再構成することができる。本出願に記載される組成物及び方法を用いて治療することができる例示的な血液がんとしては、限定されるものではないが、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、及び非-ホジキン・リンパ腫(non-Hodgkin’s lymphoma)、並びに神経芽細胞腫を含む他のがん症状、が挙げられる。
本出願に記載される組成物及び方法で治療することができる更なる疾患としてはアデノシン・デアミナーゼ欠損症及び重度複合免疫不全症、高免疫グロブリンM症候群、チェディアック‐東病、遺伝性リンパ組織球症、大理石骨病、骨形成不全症、貯蔵疾患、サラセミア・メジャー、全身性硬化症、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)、多発性硬化症、並びに若年性関節リウマチが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本出願に記載される抗体、その抗原-結合フラグメント、及びコンジュゲートを使用して、固形臓器移植トレランスを誘導することがある。例えば、本出願に記載される組成物及び方法を使用して、ターゲット組織から細胞の集団を減少させるか又は欠損させることがある(例えば、骨髄幹細胞ニッチから造血幹細胞を減少させる)。前記ターゲット組織から細胞をこのように減少させた後、臓器ドナーからの幹細胞又は前駆細胞の集団(例えば、臓器ドナーからの造血幹細胞)を移植レシピエントに投与することがある。そしてこのような幹細胞又は前駆細胞が生着した後では、一時的な又は安定な混合キメラとなり、これにより、更なる免疫抑制剤を必要とすることなく、長期の移植臓器トレランスが可能になる。例えば、本出願に記載の組成物及び方法を使用して、固形臓器移植レシピエントにおいて移植トレランスを誘導することがある(例えば、とりわけ、腎臓移植、肺移植、肝臓移植、及び心臓移植)。本出願に記載される組成物及び方法は、例えば、一時的な又は安定なドナーの生着が低割合でも移植された臓器の長期トレランスを充分に誘導するため、固形臓器移植トレランスを誘導することに関連して使用するのに充分に適している。
更に、本出願に記載の組成物及び方法を使用して、CD117+である細胞を特徴とするがん等のがんを直接的に治療することがある。例えば、本出願に記載される組成物及び方法を使用して、特に、CD117+白血病細胞を示す患者において、白血病を治療することがある。CD117+がん性細胞(例えば、白血病性細胞)を減少させることによって、本出願に記載される組成物及び方法を使用して、種々のがんを直接的に治療することがある。この様式で治療することがある例示的ながんとしては、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、及び非-ホジキン・リンパ腫(non-Hodgkin’s lymphoma)のような血液がんが挙げられる。
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)は、異常な白血球が急速に増殖して骨髄中に蓄積し、正常な血液細胞の産生が妨げられることを特徴とする、骨髄系の血液細胞のがんである。AMLは成人が罹患する最も一般的な急性白血病であり、その発生率は年齢とともに増加する。AMLの症状は、正常な骨髄が白血病細胞に置き換わることによって引き起こされ、白血病細胞は赤血球、血小板(platelets)、正常な白血球の減少を引き起こす。急性白血病として、AMLは急速に進行し、放置すると数週間から数カ月以内に致死的となることがある。1つの実施形態では、本出願に記載する抗-CD117 ADCを、治療を必要とするヒト患者におけるAMLを治療するために使用する。ある特定の実施形態において、前記抗-CD117 ADC治療により、その治療を受けた対象中のAML細胞が減少する。いくつかの実施形態において、AML細胞の50%以上が減少する。他の実施形態では、AML細胞の60%以上が減少する、若しくはAML細胞の70%以上が減少する、又はAML細胞の80%以上若しくは90%以上、若しくは95%以上が減少する。ある特定の実施形態において、前記抗-CD117 ADC治療は、単回投与の治療である。ある特定の実施形態において、単回投与の抗-CD117 ADC治療により、AML細胞の60%、70%、80%、90%又は95%以上が減少する。
更に、本出願に記載する組成物及び方法を使用して、自己免疫障害を治療することがある。例えば、抗体、又はその抗原結合フラグメントを、CD117+免疫細胞を死滅させるために、自己免疫障害に罹患しているヒト患者のような対象に投与することがある。例えば、前記CD117+免疫細胞は、自己抗原に特異的に結合するT-細胞レセプターを発現する、及び自己抗原に対して免疫反応を開始する、T-細胞のような自己反応性リンパ球であることがある。自己反応性CD117+細胞を減少させることによって、本出願に記載する組成物及び方法を使用して、以下に記載されるような自己免疫性の病態を治療することがある。更に、又は代わりに、本出願に記載する組成物及び方法を使用して、造血幹細胞移植療法の前に、内因性の造血幹細胞の集団を減少させることによって、自己免疫疾患を治療することがあり、その場合、移植した細胞は、内因性の細胞を減少させるステップによって作り出されたニッチにホーミングし、生産的な造血を確立することがある。これにより、自己免疫細胞を根絶させる間に減少した細胞の集団を、今度は再構成させることができる。
本出願に記載する組成物及び方法を用いて治療することができる自己免疫疾患としては、限定されるものではないが、乾癬、乾癬性関節炎、1型糖尿病(1型糖尿病)、関節リウマチ(RA)、ヒト全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、リンパ球性大腸炎、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、汎発性脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性卵巣炎、バロー病、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、シャーガス病、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、クローン病、瘢痕性類天疱瘡、セリアック・スプルー疱疹状皮膚炎、寒冷凝集素症、CREST症候群、デゴス病、円板状エリテマトーデス、自律神経障害、子宮内膜症、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン‐バレー症候群(GBS)、橋本甲状腺炎、化膿性汗腺炎、特発性及び/又は急性血小板減少性紫斑病、特発性肺線維症、IgAニューロパチー、間質性膀胱炎、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、ライム病、メニエール病、混合性結合組織病(MCTD)、重症筋無力症、ニューロミオトニア、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、オルド甲状腺炎(Ord's thyroiditis)、尋常性天疱瘡、悪性貧血、多発軟骨炎、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性胆汁性肝硬変、結節性多発動脈炎、多内分泌腺症候群、リウマチ性多発筋痛症、原発性無ガンマグロブリン血症(primary agammaglobulinemia)、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフ・パーソン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎としても知られる)、潰瘍性大腸炎、膠原線維性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、外陰部痛(外陰部前庭炎)、及びヴェーゲナー肉芽腫症、が挙げられる。
実施例
以下の実施例は、本出願に記載の組成物及び方法がどのように使用されるか、作られるか、及び評価されるか、についての説明を当業者に例示するために、説明される、並びに本開示の純粋に例示的なものであることを意図する、及び発明者が自分たちの発明とみなす範囲を限定することを意図しない。
実施例1.抗-CD117-PNU ADCを用いたin vitro細胞傷害アッセイ
ヒトCD34+骨髄細胞を用いたin vitro細胞傷害アッセイについて、ヒトCD34+骨髄細胞を、ADCを形成させるためにPNUにコンジュゲートした抗-CD117抗体(CK6)(抗-CD117-PNU)の存在下で5日間培養した。コントロールとして、代替的に、ヒトIgG1アイソタイプ-PNU ADC(即ち、アイソタイプ-PNU)と、細胞をインキュベートした。フロー・サイトメトリーにより、全ての細胞又はCD34+ CD90+でゲーティングされた細胞について、生細胞数を測定した。
図1A-1Cの結果は、前記抗-CD117-PNU ADCは、in vitroで初代ヒトCD34+ CD90+骨髄細胞を傷害するのに非常に有効であったことを示す。図1Cに示すように、アイソタイプ:ADCには、1000倍の傷害ウィンドウが存在する。
Figure 2020219774000028
実施例2.in vitro細胞傷害アッセイ
抗-CD117抗体CK6(Fc改変S239Cを有する)を、PNU、PBD、D4(カリケアマイシン)、又はDM1(デュオカルマイシン)にコンジュゲートさせた。各ADCを、Kasumi-1細胞又は初代ヒト幹細胞における細胞傷害アッセイで評価した。
Kasumi-1細胞を用いたin vitro細胞傷害アッセイでは、ATCCガイドラインに従ってKasumi-1細胞を増殖させた。より具体的には、Kasumi-1細胞を、示したCD117-ADC又はコントロール(アイソタイプADC)の存在下で培養した。CellTiter-Gloにより、全ての細胞又はCD117(-)細胞の細胞生存性を測定した。ヒトHSC(即ち、単離した初代ヒトのCD34+で選択した骨髄細胞(BMC))を用いるin vitro傷害アッセイのために、ヒトCD34+ BMCを、示したCD117-ADC又はコントロール(アイソタイプ-ADC)とともに培養した。フロー・サイトメトリーにより、CD34+ CD90+でゲーティングした細胞について、生細胞数を測定した。
Kasumi細胞傷害アッセイの結果を、下表(即ち、表4)と図2A及び2Bに示す。図2Aに示すように、前記抗-CD117 ADCは、Kasumi細胞に対する傷害能の度合いが様々であった(最大から最小に向かっての傷害能の順: PNU>PBD>>>D4、DMの順)。これらの結果は、PNUが強い傷害性を示し、一方で他の毒素は示さない、ことを表す。図2Bに示すように、CD117(-)細胞では、活性は観察されなかった。
Figure 2020219774000029
ヒトCD34+細胞傷害アッセイの結果を、下表(即ち、表5)と図2Cに示す。抗-CD117 ADCは、hCD34細胞に対する傷害能の度合いが様々であった(最大から最小に向かっての傷害能の順: PBD > PNU = デュオカルマイシン > カリケアマイシン)。
Figure 2020219774000030
実施例3.抗-CD117 ADCを使ったhNSGマウスにおけるin vivo HSC減少
造血幹細胞に対して強力な活性を持つ毒素を同定するために、種々の毒素(PNU、PBD、D4及びDM1)にコンジュゲートした抗-CD117によるin vivo HSC減少を、hNSGマウスで評価した。抗-CD117-3100を、PNU (DNAトポイソメリアーゼ(Topoisomeriase) I/II阻害剤)、PBD (DNAクロスリンカー)、D4(カリケアマイシン)、又はDM1(デュオカルマイシン)にコンジュゲートした(DAR 2 ss)。標準ヒト化NSGメス・マウス(Jackson Laboratories)に、下表にまとめた量のうちの1つで、抗-CD117 ADCを、静脈投与した(n=3マウス/群)。投与後7日目、14日目又は21日目に、血液及び骨髄を採取し、フロー・サイトメトリー(血液 FC: mCD45、hCD45、CD33、CD19、CD3; 骨髄 FC: mCD45、hCD45、CD33、CD19、CD3、CD38、CD34、CD117、CD90、CD45RA)により評価した。
Figure 2020219774000031
図3Aは、示したADCで処置したマウスにおける、投与1週間後、2週間後、又は3週間後での、ベースラインに対して標準化したhCD33細胞のパーセンテージを示す。これらの結果から、抗-CD117-PNU、抗-CD117-PBD及び抗-CD117-D4は、0.3 mg/kgで、骨髄細胞を減少させたこと、が示される。
示したADCで、及び用量で処置したマウスにおける、投与1週間後、2週間後、又は3週間後での、hCD34+細胞のパーセンテージ及び大腿骨あたりのhCD34+の数、を図3B及び3Cに示す。これらの結果から、抗-CD117-PNU、抗-CD117-PBD、及び抗-CD117-D4は、0.3 mg/kgで、CD34+細胞を減少させたこと、が示される。
配列表
Figure 2020219774000032
Figure 2020219774000033
Figure 2020219774000034
Figure 2020219774000035
Figure 2020219774000036
Figure 2020219774000037
Figure 2020219774000038
Figure 2020219774000039
Figure 2020219774000040
Figure 2020219774000041
Figure 2020219774000042
Figure 2020219774000043
Figure 2020219774000044
Figure 2020219774000045
Figure 2020219774000046
Figure 2020219774000047
Figure 2020219774000048
Figure 2020219774000049
Figure 2020219774000050
Figure 2020219774000051
Figure 2020219774000052
Figure 2020219774000053
Figure 2020219774000054
Figure 2020219774000055
Figure 2020219774000056
Figure 2020219774000057
Figure 2020219774000058
Figure 2020219774000059
Figure 2020219774000060
Figure 2020219774000061
Figure 2020219774000062
Figure 2020219774000063
Figure 2020219774000064
Figure 2020219774000065
Figure 2020219774000066
Figure 2020219774000067
その他の実施形態
本出願において言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも各独立した刊行物又は特許出願が具体的かつ個別に示され、参照により取り込まれたかのように、同じ程度まで、本出願に参照により取り込まれる。
本開示を、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、更なる改変をすることが可能であることを、並びに、本出願は、一般に、本開示の原理に従う本開示の任意の改変、使用、又は適応を、並びに、本開示が関係する技術内の既知の又は慣習的な実務内に入る本開示からの逸脱を、及び本出願に記載され、特許請求の範囲に従う本質的な特徴に適用され得る本開示からの逸脱を、含む本開示の任意の改変、使用、又は適応を、包含することが意図されていることを、理解されるであろう。
他の実施形態は、本願の特許請求の範囲の範囲内である。

Claims (19)

  1. リンカー(L)を介して細胞毒素(Cy)にコンジュゲートした、抗-CD117抗体又はその抗原結合部分(Ab)を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、ここで、前記細胞毒素はアントラサイクリンを含む、及びここで、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合部分は、以下を含む、
    配列番号(SEQ ID NO):11、12、及び13に記載のアミノ酸配列を、それぞれ含む重鎖(HC)-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3、を含む重鎖、並びに配列番号(SEQ ID NO): 14、15、及び16に記載のアミノ酸配列を、それぞれ含む軽鎖(LC)-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3、を含む軽鎖;又は、
    配列番号(SEQ ID NO): 245、246、及び247に記載のアミノ酸配列を、それぞれ含む重鎖(HC)-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3、を含む重鎖、並びに配列番号(SEQ ID NO): 248、249、及び250に記載のアミノ酸配列を、それぞれ含む軽鎖(LC)-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3、を含む軽鎖。
  2. 請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、ここで、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合部分は、以下を含む、
    配列番号(SEQ ID NO):9 に記載のアミノ酸配列を含む可変領域、を含む重鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):10 に記載のアミノ酸配列を含む可変領域、を含む軽鎖;又は、
    配列番号(SEQ ID NO):243 に記載のアミノ酸配列を含む可変領域、を含む重鎖、及び配列番号(SEQ ID NO):244 に記載のアミノ酸配列を含む可変領域、を含む軽鎖。
  3. リンカー(L)を介して細胞毒素(Cy)にコンジュゲートした、抗-CD117抗体又はその抗原結合部分(Ab)を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、ここで、前記細胞毒素はアントラサイクリンを含む、及びここで、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合部分は、以下を含む、
    配列番号(SEQ ID NO): 109に記載のアミノ酸を含む重鎖、及び配列番号(SEQ ID NO): 110、111、112、113又は114に記載のアミノ酸を含む軽鎖;又は、
    配列番号(SEQ ID NO): 284に記載のアミノ酸を含む重鎖、及び配列番号(SEQ ID NO): 275、276、277又は278に記載のアミノ酸を含む軽鎖。
  4. リンカー(L)を介して細胞毒素(Cy)にコンジュゲートした、抗-CD117抗体又はその抗原結合部分(Ab)を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、ここで、前記細胞毒素はアントラサイクリンを含む、及びここで、前記抗-CD117抗体又はその抗原結合部分は、以下を含む、
    HC-CDR1, HC-CDR2, 及びHC-CDR3 若しくは、Ab55, Ab54, Ab56, Ab57, Ab58, Ab61, Ab66, Ab67, Ab68, Ab69, Ab85, Ab86, Ab87, Ab88, Ab89, Ab77, Ab79, Ab81, Ab85, 若しくは Ab249、の重鎖可変領域アミノ酸配列に由来する可変領域、を含む重鎖、並びに、HC-CDR1, HC-CDR2, 及びHC-CDR3 若しくは、Ab55, Ab54, Ab56, Ab57, Ab58, Ab61, Ab66, Ab67, Ab68, Ab69, Ab85, Ab86, Ab87, Ab88, Ab89, Ab77, Ab79, Ab81, Ab85, 若しくは Ab249、の軽鎖可変領域アミノ酸配列に由来する可変領域、を含む軽鎖、又は、
    HC-CDR1, HC-CDR2, 及びHC-CDR3 若しくは、配列番号(SEQ ID NO): 147, 164, 166, 168, 170, 172, 174, 176, 178, 180, 183, 185, 187, 189, 191, 193, 195, 197, 199, 201, 202, 204, 206, 208, 210, 212, 214, 216, 218, 220, 222, 224, 226, 238, 若しくは 243、の重鎖可変領域アミノ酸配列に由来する可変領域、を含む重鎖、並びに、LC-CDR1, LC-CDR2, 及びLC-CDR3 若しくは、配列番号(SEQ ID NO): 148, 149, 150, 151, 152, 153, 154, 155, 156, 157, 158, 159, 160, 161, 162, 163, 165, 167, 169, 171, 173, 175, 177, 179, 181, 182, 184, 186, 188, 190, 192, 194, 196, 198, 200, 203, 205, 207, 209, 211, 213, 215, 217, 219, 221, 223, 225, 227, 228, 229, 230, 231, 232, 233, 234, 235, 236, 237, 239, 240, 241, 242, 若しくは 244、の軽鎖可変領域アミノ酸配列に由来する可変領域、を含む軽鎖。
  5. 請求項1~4の何れか一項に記載のADC、ここで、前記アントラサイクリンはPNU-159682である。
  6. 請求項1~4の何れか一項に記載のADC、ここで、前記ADCは、式(VI)又は式(VII)で表される:
    Figure 2020219774000001

    Figure 2020219774000002

    ここで、Zは、前記抗体又はその抗原結合フラグメントにある反応性置換基と前記リンカーにある反応性置換基との間のカップリング反応によって形成される、化学的な部分構造である。
  7. 請求項1~6の何れか一項に記載のADC、ここで、
    前記リンカーは、1種以上のペプチド、オリゴ糖、-(CH2)p-, -(CH2CH2O)q-, -(C=O)(CH2)r-, -(C=O)(CH2CH2O)t-, -(NHCH2CH2)u-, -PAB, -(NHCH2CH2)u-, -NHCH2CH2NH-, -N(CH3)CH2CH2NH-, 若しくは -N(CH3)CH2CH2N(CH3)-、を含む、ここで、p、q、r、t、及びuの各々は、1~12の整数であり、各場合毎に、独立して選択される;又は、
    前記リンカーは、1種以上の-(CH2)p-, -(CH2CH2O)q-, -(C=O)(CH2)r-, -(C=O)(CH2CH2O)t-, -(NHCH2CH2)u-, Val-Cit-PAB, Val-Ala-PAB, gly-gly-gly, gly-gly-gly-gly-gly, -NHCH2CH2NH-, -N(CH3)CH2CH2NH-, 若しくは -N(CH3)CH2CH2N(CH3) 、を含む、ここで、p、q、r、t、及びuの各々は、1~12の整数であり、各場合毎に、独立して選択される。
  8. 請求項1~7の何れか一項に記載のADC、ここで、前記抗体又はその抗原結合部分は、Fcドメインを含む、及びここで、前記抗体又はその抗原結合部分は、前記Fcドメインの中のシステイン残基によって、アントラサイクリンにコンジュゲートする。
  9. 請求項に記載のADC、ここで、前記システイン残基は、前記Fcドメインの中のアミノ酸置換によって、導入される。
  10. 請求項に記載のADC、ここで、前記アミノ酸置換は、D265C (EU番号付けによる)である。
  11. 請求項1~10の何れか一項に記載のADC、ここで、
    前記ADCは、1、2、3、4、5、6、7、若しくは8の薬物対抗体比(DAR)を有する
    前記抗体は、インタクトな抗体である;及び/又は、
    前記抗体は、IgG1若しくはIgG4である
  12. 請求項1~11の何れか一項に記載のADC、ここで、
    前記抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、D265C、H435A、L234A、若しくはL235A(EU番号付けによる)からなる群より選択される少なくとも1つの変異、を含むFc領域を含む;又は、
    前記抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、D265C、H435A、L234A、若しくはL235A(EU番号付けによる)変異、を含むFc領域を含む。
  13. 請求項1~12の何れか一項に記載のADC、及び薬学的に許容可能な担体、を含む医薬組成物。
  14. 請求項13に記載の医薬組成物、ここで、
    前記医薬組成物は、ヒト対象において、CD117+細胞の集団を減少させる際に使用をするためのものである、ここで、前記使用は、前記対象に、前記医薬組成物を投与することを含む。
  15. 請求項13に記載の医薬組成物、ここで、
    前記医薬組成物は、細胞移植のためにヒト対象をコンディショニングする際に使用をするためのものである、ここで、前記使用は、前記ヒト対象において、内因性の幹細胞又は内因性のCD117+幹細胞が減少するように、前記ヒト対象に、前記医薬組成物を投与することを含む。
  16. 請求項15に記載の医薬組成物、ここで、前記CD117+細胞は、造血幹細胞(HSC)である。
  17. 請求項16に記載の医薬組成物、ここで、前記使用は、前記ヒト対象に、同種異系幹細胞(allogenic stem cells)又は同種異系幹細胞(allogeneic stem cells)を投与することを更に含む。
  18. 請求項1417の何れか一項に記載の医薬組成物、ここで、前記対象は、がん又は自己免疫疾患を有する。
  19. 請求項18に記載の医薬組成物、ここで、
    前記がんは、血液がんである
    前記血液がんは、骨髄性白血病又は骨髄異形成症候群である。
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