JPWO2020166520A1 - 電気測定型表面プラズモン共鳴センサ、電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップ、及び表面プラズモンポラリトン変化検出方法 - Google Patents

電気測定型表面プラズモン共鳴センサ、電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップ、及び表面プラズモンポラリトン変化検出方法 Download PDF

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Abstract

透明電極、n型透明半導体膜、プラズモン共鳴膜電極、及び反射共鳴膜がこの順で配置されているセンサチップと、プリズムとが、前記プリズム、前記透明電極、前記n型透明半導体膜、前記プラズモン共鳴膜電極、及び前記反射共鳴膜の順で配置されたプラズモンポラリトン増強センサチップと、前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電流値又は電圧値を直接測定する電気的測定装置と、を備える電気測定型表面プラズモン共鳴センサ。

Description

本発明は、電気測定型表面プラズモン共鳴センサ、電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップ、及び表面プラズモンポラリトン変化検出方法に関し、より詳しくは、電気測定型表面プラズモン共鳴センサ及びそれに用いる電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップ、並びに、これらを用いた表面プラズモンポラリトン変化検出方法に関する。
表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)とは、金属の表面で自由電子が集団的振動運動(プラズマ振動)を起こしている状態であり、金属表面を伝搬する伝搬型表面プラズモン共鳴(PSPR:Propagating Surface Plasmon Resonance)と、ナノメートルサイズの金属構造に局在する局在型表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)とがある。伝搬型表面プラズモン共鳴は、プラズマ振動を起こした自由電子の周囲に発生した電場と入射した光との相互作用による共鳴が発生した状態であり、前記プラズマ振動と界面に沿って進む電磁波とが結合した電子疎密波(表面プラズモンポラリトン、SPP:Surface Plasmon Polariton)が金属表面に沿って伝搬する。他方、局在型表面プラズモン共鳴は、前記プラズマ振動によって前記金属ナノ粒子等の金属ナノ構造が分極・誘起されて電気双極子が生成した状態のことである。
表面プラズモン共鳴は、標的物質の吸着の有無や前記相互作用の強さを検出するアフィニティセンサ等のセンサに利用されており、例えば、特開2011−141265号公報(特許文献1)には、平面部を有する基材と、前記平面部上に形成され、金属で形成された表面を有し、標的物質が配置される特定の突起を含む回折格子とを備えるセンサチップが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載されているようなセンサチップでは、金属表面に存在する標的物質の濃度変化による表面プラズモン共鳴角の変化を光学系で検出する必要があるために装置が高額になったり大型化したりする傾向にあり、また、集積化や同時に多数のサンプルを処理するハイスループット化が困難であるといった問題を有していた。
さらに、特開2000−356587号公報(特許文献2)には、基板と、前記基板の表面に凝集させずに互いに離隔した状態にある単膜として固定された金属微粒子とを有して構成されるセンサユニットを有する局在プラズモン共鳴センサが記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の局在プラズモン共鳴センサは、前記金属微粒子への標的物質の吸着や堆積による該金属微粒子表面近傍の媒質の屈折率変化を前記金属微粒子間を透過した光の吸光度を測定することによって検出するため、前記金属微粒子のサイズや配列を厳密に制御する必要がある、検出信号が吸光度であるためにその強度を十分に増強させることが困難である、といった問題を有していた。
また、表面プラズモン共鳴は、光電変換素子において、光電変換効率を向上させるためにも利用されており、例えば、特開2012−38541号公報(特許文献3)には、透明基板、透明電極層、金属微粒子層、n型半導体からなる半導体薄膜、色素の吸着層が順に積層されたアノード電極と、これに酸化還元種を含む電解質を介して配置されたカソード電極と、を備えるプラズモン共鳴型光電変換素子が記載されている。
また、本件出願人は、透明電極、n型透明半導体膜、及びプラズモン共鳴膜電極がこの順で配置されているセンサチップと、プリズムとが配置されたプラズモンポラリトン増強センサチップと、前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電流値又は電圧値を直接測定する電気的測定装置と、を備える電気測定型表面プラズモン共鳴センサについて、2018年8月9日付で国際出願した(PCT/JP2018/29979)。かかる電気測定型表面プラズモン共鳴センサによれば、小型化やハイスループット化が容易であり、かつ、十分なセンサ精度を有する電気測定型表面プラズモン共鳴センサ及びそれに用いる電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップを提供することが可能となる。
特開2011−141265号公報 特開2000−356587号公報 特開2012−38541号公報
しかしながら、本発明者らは、特許文献3に記載されているような光電変換素子をセンサに応用した場合には、金属微粒子の制御が必要であり、センサ感度を向上させることが困難であることに加えて、電解質の酸化・還元反応を介するため、測定対象であるサンプル自体を酸化還元してしまい、センサ精度に影響を与えてしまうという問題があることを見い出した。
さらに、本発明者らがさらなる検討をおこなったところ、プラズモンポラリトン増強センサチップと電気的測定装置とを備える電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップにおいては、さらに高水準の感度が要求される場合があることを見い出した。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、小型化やハイスループット化が容易であり、かつ、十分なセンサ感度を有する電気測定型表面プラズモン共鳴センサ及びそれに用いる電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップ、並びに、これらを用いた表面プラズモンポラリトン変化検出方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、チップにおいて、プリズム、透明電極、n型透明半導体膜、及びプラズモン共鳴膜電極を組み合わせ、さらに反射共鳴膜を組み合わせてこの順で配置させて、プリズムの側から特定の範囲内の入射角度で入射させた入射光をプラズモン共鳴膜電極に到達させることにより、到達した光が前記プラズモン共鳴膜電極を伝搬する表面プラズモンポラリトンに変換され、これを前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電気信号として直接検出できることを見い出した。また、検出される電気信号の大きさは、前記プラズモン共鳴膜電極近傍のサンプルの屈折率に応じて高い精度で変化することに加えて、前記反射共鳴膜を組み合わせることにより、さらに優れたセンサ感度が達成されることを見い出した。さらに、前記サンプルの屈折率は該サンプルの濃度や状態に相当するため、前記構成のチップは、表面プラズモンポラリトン変化を検出することによって前記サンプルの濃度変化や状態変化を測定可能なセンサチップとして用いることが可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の電気測定型表面プラズモン共鳴センサは、
透明電極、n型透明半導体膜、プラズモン共鳴膜電極、及び反射共鳴膜がこの順で配置されているセンサチップと、プリズムとが、前記プリズム、前記透明電極、前記n型透明半導体膜、前記プラズモン共鳴膜電極、及び前記反射共鳴膜の順で配置されたプラズモンポラリトン増強センサチップと、
前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電流値又は電圧値を直接測定する電気的測定装置と、
を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の電気測定型表面プラズモン共鳴センサは、
入射光を表面プラズモンポラリトンに変換可能なプラズモン共鳴膜電極、
前記プラズモン共鳴膜電極の前記入射光側に配置されており、前記入射光を透過し、かつ、該透過した入射光が前記プラズモン共鳴膜電極と相互作用することにより前記プラズモン共鳴膜電極から放出されるホットエレクトロンを受け取り可能なn型透明半導体膜、
前記プラズモン共鳴膜電極の前記n型透明半導体膜と反対側に配置されており、前記プラズモン共鳴膜電極により生じた表面プラズモン共鳴による電場変化を内部で共鳴させることが可能な反射共鳴膜、
及び、
前記n型透明半導体膜から移動したホットエレクトロンを電気信号として取り出し可能な透明電極、
を備えるセンサチップと、
前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間において前記入射光が全反射されるように前記入射光の角度を制御することが可能なプリズムと、
を備えるプラズモンポラリトン増強センサチップ、並びに、
前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電流値又は電圧値を直接測定可能な電気的測定装置、
を備えることを特徴とするものである。
上記の電気測定型表面プラズモン共鳴センサの好ましい一形態としては、前記センサチップにおいて、前記反射共鳴膜の厚さが、次式(1):
|Δθ|≦2°・・・(1)
[前記式(1)中、Δθは、前記センサチップの前記プリズムと接する面に対する入射角度(θ)が0〜90°となる範囲内で前記センサチップに光を入射して電流値を測定したときに、前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間で入射光が全反射するときの入射角度(θcp)の±25°の範囲内で、前記入射光のエネルギーに対する前記電流値の割合である出力電流割合(CA)が最大値(CAmax)となる入射角度(θCAmax)から前記出力電流割合が最小値(CAmin)となる入射角度(θCAmin)を減じた角度変化量を示す。]
で示される条件を満たす厚さであることが好ましい。
また、上記の電気測定型表面プラズモン共鳴センサの好ましい一形態としては、前記センサチップにおいて、前記n型透明半導体膜と前記プラズモン共鳴膜電極との組み合わせが、ショットキー障壁を形成する組み合わせであることが好ましい。
さらに、上記の電気測定型表面プラズモン共鳴センサの好ましい一形態としては、前記センサチップにおいて、前記プラズモン共鳴膜電極の厚さが200nm以下(ただし0を含まない)であることが好ましく、また、前記センサチップにおいて、前記反射共鳴膜が、金属酸化物、半導体、及び有機物からなる群から選択される少なくとも1種からなる膜であることも好ましい。
また、上記の電気測定型表面プラズモン共鳴センサの好ましい一形態としては、前記センサチップにおいて、前記n型透明半導体膜が、TiO、ZnO、SnO、SrTiO、Fe、TaON、WO、及びInからなる群から選択される少なくとも1種のn型半導体からなる膜であることが好ましい。
さらに、上記の電気測定型表面プラズモン共鳴センサの好ましい一形態としては、前記センサチップが、前記反射共鳴膜の前記プラズモン共鳴膜と反対側に分子結合膜をさらに備えていることが好ましく、また、前記センサチップが、前記プラズモン共鳴膜電極と前記反射共鳴膜との間に酸化膜をさらに備えていることも好ましい。
本発明の電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップは、上記の電気測定型表面プラズモン共鳴センサに用いるセンサチップであり、かつ、透明電極、n型透明半導体膜、プラズモン共鳴膜電極、及び反射共鳴膜がこの順で配置されていることを特徴とするものである。
本発明の表面プラズモンポラリトン変化検出方法は、透明電極、n型透明半導体膜、プラズモン共鳴膜電極、及び反射共鳴膜がこの順で配置されているセンサチップと、プリズムとが、前記プリズム、前記透明電極、前記n型透明半導体膜、前記プラズモン共鳴膜電極、及び前記反射共鳴膜の順で配置されたプラズモンポラリトン増強センサチップと、
前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電流値又は電圧値を直接測定する電気的測定装置と、
を備える電気測定型表面プラズモン共鳴センサを用いて表面プラズモンポラリトンの変化を検出する方法であり、
前記プリズムの側から光を照射し、前記プリズム、前記透明電極、及び前記n型透明半導体膜を通過した光を、前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間で全反射させることで前記プラズモン共鳴膜電極と相互作用させて表面プラズモンポラリトンを発生せしめ、
前記表面プラズモンポラリトンによって生じ、前記n型透明半導体膜に移動したホットエレクトロンを前記透明電極から電気信号として取り出し、
前記透明電極と前記プラズモン共鳴膜電極との間の電流値又は電圧値の変化を前記電気的測定装置によって測定することで表面プラズモンポラリトンの変化を検出する、
ことを特徴とする方法である。
なお、本発明の構成によって前記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップ(以下、場合により、単に「センサチップ」という)及びこれとプリズムとを組み合わせて用いた電気測定型表面プラズモン共鳴センサ(以下、場合により、単に「センサ」という)においては、プリズムの側からプラズモン共鳴膜電極に光を照射し、プリズムを通過した光が、前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間において全反射すると、全反射した面の裏側にエネルギーの染み出し(エバネッセント波)が生じる。そのため、光の前記界面に対する入射角度が臨界角(以下、「全反射角度」という)以上であると、全反射した場所において生じたエバネッセント波と、この裏側に接する前記プラズモン共鳴膜とが相互作用して上記の表面プラズモンポラリトンが励起される。このとき、プリズムによって、入射する光の入射角度を上記の全反射をする角度となるように制御することができるため、発生する表面プラズモンポラリトンが十分に増強される。
次いで、この表面プラズモンポラリトンによって前記プラズモン共鳴膜電極が十分に分極することでホットエレクトロンが放出され、ホットホールが形成されるが、放出されたホットエレクトロンは前記プラズモン共鳴膜電極とショットキー障壁が形成されるn型透明半導体膜を経て対極である透明電極へとスムーズに移動することができる。そのため、本発明のセンサチップ及びこれとプリズムとを用いたセンサにおいては、前記表面プラズモンポラリトンを前記プラズモン共鳴膜電極及び前記透明電極から電気信号として十分に検出することができるものと本発明者らは推察する。
さらに、本発明のセンサチップ及びこれとプリズムとを用いたセンサにおいては、反射共鳴膜をさらに備えることにより、前記プラズモン共鳴膜電極により発生した表面プラズモン共鳴によって、該反射共鳴膜内部で電場変化が引き起こされ、かつ、この電場変化が伝搬されて、前記反射共鳴膜の前記プラズモン共鳴膜電極とは反対側の界面において反射されることにより、該反射共鳴膜内部で電場変化の共鳴が起こる。これにより、発生した表面プラズモン共鳴が増幅されて、前記透明電極から取り出される電気信号(電流)がさらに鋭敏となるものと本発明者らは推察する。
また、本発明のセンサチップ及びこれとプリズムとを組み合わせて用いたセンサにおいては、前記プラズモン共鳴膜電極近傍における屈折率の変化が、上記の全反射する箇所、すなわち、表面プラズモンポラリトンを生じさせる入射角度(プリズムの側から入射する光の入射角度)の範囲、及び生じる表面プラズモンポラリトンの強さを変化させる。さらに、光の入射により前記プラズモン共鳴膜電極に生じる電場は前記表面プラズモンポラリトンによって増強されるため、その電場変化に応じて変化する電流量は、表面プラズモンポラリトンの強さによって変化する。したがって、前記プラズモン共鳴膜電極近傍のサンプルの屈折率変化を十分な精度で測定することができるものと本発明者らは推察する。そのため、本発明のセンサチップ及びこれとプリズムとを用いたセンサによれば、表面プラズモンポラリトンの変化を検出することによって、前記サンプルの濃度変化や状態変化を高精度でモニタすることができ、また、検出信号が電気信号であるため、その強度を電気的に容易に増強することや電流として容易に測定することが可能となるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、小型化やハイスループット化が容易であり、かつ、十分なセンサ感度を有する電気測定型表面プラズモン共鳴センサ及びそれに用いる電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップを提供することが可能となる。
プラズモンポラリトン増強センサチップの好適な実施形態1を示す概略縦断面図である。 電気測定型表面プラズモン共鳴センサの好適な実施形態1を示す概略縦断面図である。 センサチップに光を入射して電流値を測定したときの入射角度と出力電流割合との関係を示すグラフである。 プリズムの側から入射する光の入射角度(θ°)を示す模式図である。 プラズモンポラリトン増強センサチップの好適な実施形態2を示す概略縦断面図である。 プラズモンポラリトン増強センサチップの好適な実施形態3を示す概略縦断面図である。 プラズモンポラリトン増強センサチップの好適な実施形態4を示す概略縦断面図である。 プラズモンポラリトン増強センサチップの好適な実施形態5を示す概略縦断面図である。 プラズモンポラリトン増強センサチップの好適な実施形態6を示す概略縦断面図である。 試験例1及び試験例2の電流値測定方法を示す模式図である。 比較例1で得られたプリズム付きチップを用いて各サンプル溶液を測定した結果を示すグラフである。 実施例1で得られたプリズム付きチップを用いて各サンプル溶液を測定した結果を示すグラフである。 実施例2で得られたプリズム付きチップを用いて各サンプル溶液を測定した結果を示すグラフである。 実施例3で得られたプリズム付きチップを用いて各サンプル溶液を測定した結果を示すグラフである。 比較例1、実施例1〜2で得られたプリズム付きチップを用いて各サンプル溶液を測定したときの各サンプル溶液の屈折率と正規化電流値との関係を示すグラフである。 比較例1で得られたプリズム付きチップ及びチップ1における、光の入射角度と電流値及び出力電流割合との関係を示すグラフである。 チップ2における、反射共鳴膜の厚さと角度変化量の絶対値及び感度との関係を示すグラフである。 チップ3における、反射共鳴膜の厚さと角度変化量の絶対値及び感度との関係を示すグラフである。 チップ4における、反射共鳴膜の厚さと角度変化量の絶対値及び感度との関係を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明の電気測定型表面プラズモン共鳴センサは、
透明電極、n型透明半導体膜、プラズモン共鳴膜電極、及び反射共鳴膜がこの順で配置されているセンサチップと、プリズムとが、前記プリズム、前記透明電極、前記n型透明半導体膜、前記プラズモン共鳴膜電極、及び前記反射共鳴膜の順で配置されたプラズモンポラリトン増強センサチップと、
前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電流値又は電圧値を直接測定する電気的測定装置と、
を備えるものである。
また、本発明の電気測定型表面プラズモン共鳴センサは、
入射光を表面プラズモンポラリトンに変換可能なプラズモン共鳴膜電極、
前記プラズモン共鳴膜電極の前記入射光側に配置されており、前記入射光を透過し、かつ、該透過した入射光が前記プラズモン共鳴膜電極と相互作用することにより前記プラズモン共鳴膜電極から放出されるホットエレクトロンを受け取り可能なn型透明半導体膜、
前記プラズモン共鳴膜電極の前記n型透明半導体膜と反対側に配置されており、前記プラズモン共鳴膜電極により生じた表面プラズモン共鳴による電場変化を内部で共鳴させることが可能な反射共鳴膜、
及び、
前記n型透明半導体膜から移動したホットエレクトロンを電気信号として取り出し可能な透明電極、
を備えるセンサチップと、
前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間において前記入射光が全反射されるように前記入射光の角度を制御することが可能なプリズムと、
を備えるプラズモンポラリトン増強センサチップ、並びに、
前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電流値又は電圧値を直接測定可能な電気的測定装置、
を備えるものでもある。
さらに、本発明の電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップは、上記本発明の電気測定型表面プラズモン共鳴センサに用いるセンサチップであり、かつ、透明電極、n型透明半導体膜、プラズモン共鳴膜電極、及び反射共鳴膜がこの順で配置されているものである。
以下、図面を参照しながら電気測定型表面プラズモン共鳴センサ(以下、「センサ」)、プラズモンポラリトン増強センサチップ(以下、「増強センサチップ」)、及び電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップ(以下、「センサチップ」)の好ましい形態を例に挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1Aには、増強センサチップの第1の好ましい形態(好適な実施形態1;増強センサチップ110)を示す。図1Aに示すように、好適な実施形態1において、増強センサチップ110は、プリズム(以下、「プリズム1」)上に、透明電極(以下、「透明電極2」)、n型透明半導体膜(以下、「n型透明半導体膜3」)、プラズモン共鳴膜電極(以下、「プラズモン共鳴膜電極4」)、及び反射共鳴膜(以下、「反射共鳴膜5」)からなるセンサチップ(光電変換部;好適な実施形態1ではセンサチップ11)が、プリズム1、透明電極2、n型透明半導体膜3、プラズモン共鳴膜電極4、反射共鳴膜5の順になるように積層されたものである。
また、図1Bには、センサの第1の好ましい形態(好適な実施形態1;センサ510)を示す。図1Bに示すように、好適な実施形態1において、センサ510は、プリズム1及びセンサチップ11を備える増強センサチップ110と、センサチップ11の透明電極2及びプラズモン共鳴膜電極4と外部回路(外部回路31及び31’)を通じて電気的に接続された電気的測定装置(電気的測定装置21)と、を備える。
(プリズム)
プリズム1は、n型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4との間において入射光を全反射させる機能を有するものである。すなわち、本開示の実施形態においてプリズム1は、n型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4との間における全反射条件を満たすように、入射光の角度を制御する。そして、プリズム1により角度が制御された入射光は、n型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4との間、すなわち、プラズモン共鳴膜電極4とn型透明半導体膜3との界面において全反射する。なお、下記の接着層をさらに備える場合には、プリズム1により角度が制御された入射光は、プラズモン共鳴膜電極4と接着層との界面、又は接着層とn型透明半導体膜3との界面において全反射する。さらに、下記の接着層が2層以上からなる場合には、プリズム1により角度が制御された入射光は、プラズモン共鳴膜電極4と接着層との界面、又は接着層とn型透明半導体膜3との界面、又は隣接する2つの層間の界面において全反射する。
プリズム1としては、三角柱の形状をした三角プリズム(直角プリズム(45°の角を持つ直角二等辺三角形、60°及び30°の角を持つ直角三角形)、正三角形プリズム等);台形柱の形状をした台形プリズム;円柱の1側面が平面の形状をした円筒プリズム(前記平面(長方形)と円柱の上面及び底面とのなす辺(短辺)の長さは前記上面及び底面の円の直径未満であってよい);球体の1側面が平面の形状をした球プリズム(前記平面(円)の直径は前記球体の直径未満であってもよい);五角柱の形状をしたペンタプリズム等が挙げられる。これらの中でも、プリズム1としては、プリズムに入射した入射光がより効率よくプラズモン共鳴膜電極4に到達する傾向にあるという観点から、図1Aに示すような三角プリズムの他、台形プリズム、前記円筒プリズム又は前記球プリズムであることが好ましく、直角プリズム;前記短辺の長さが前記上面及び底面の円の直径に等しい半円筒プリズム;又は前記平面の円の直径が前記球体の直径に等しい半球プリズムであることがより好ましい。
センサとしては、1つのセンサチップ(光電変換部)に対して、1つのプリズム1が配置されていても2以上の複数のプリズム1がアレイ状に配置されていてもよく、また、2以上の複数の光電変換部に対して、1つのプリズム1が配置されていてもよい。
プリズム1の大きさとしては、特に制限されず、センサチップに接する面が多角形である場合には最も長い辺、又は、それ以外の場合にはセンサチップに接する面の外接円の直径の長さが、10nm〜10cmであることが好ましく、50nm〜5cmであることがより好ましく、100nm〜3cmであることがさらに好ましい。なお、ナノメートルサイズ〜マイクロメートルサイズのプリズムは、レーザーアブレーション、電子ビームリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、光学干渉リソグラフィ等のパターニング技術を利用して成形することが可能であり、マイクロメートル以上のサイズのプリズムは、切削の後に光学研磨をすることで得ることが可能である。プリズム1の大きさが前記下限未満であると、製造困難性が増してプリズムとしての性能が低下することにより、センサとしての性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、センサとしての小型化が困難となる傾向にある。
プリズム1が三角プリズムである場合には、図1Aに示すように、前記三角柱の側面上に、透明電極2、n型透明半導体膜3、プラズモン共鳴膜電極4、及び反射共鳴膜5が配置されることが好ましく、光は前記側面以外の面から入射されることが好ましい。また、プリズム1が台形プリズムである場合には、台形柱の側面のうち、台形の下底辺をなす面(下底面)の面上に、透明電極2、n型透明半導体膜3、プラズモン共鳴膜電極4、及び反射共鳴膜5が配置されることが好ましく、光は台形の斜辺をなす面から入射されることが好ましい。
前記三角プリズム及び前記台形プリズムとしては、各プリズムの入射光が入射する面と、センサチップ(好適な実施形態1ではセンサチップ11)と接する面とがなす角度が、5〜85°であることが好ましく、15〜75°であることがより好ましく、25〜65°であることがさらに好ましい。
さらに、プリズム1が円筒プリズム又は球プリズムである場合には、これらの有する前記平面上に、それぞれ、透明電極2、n型透明半導体膜3、プラズモン共鳴膜電極4、及び反射共鳴膜5が配置されることが好ましく、光は曲面から入射されることが好ましい。
前記円筒プリズムとしては、円筒の直径を1とした場合において、前記平面を底面としたとき、該底面の中心から垂直方向に伸ばした直線と円弧との交点における前記底面の中心から前記円弧の交点までの距離(以下、「プリズム高さ」という)と前記円筒の直径との比率(プリズム高さ/円筒の直径)が、1未満(0を含まない)であることが好ましく、0.2以上0.8未満であることがより好ましく、0.4以上0.6未満であることがさらに好ましい。
前記球プリズムとしては、球の直径を1とした場合において、前記平面を底面としたとき、該底面の中心からの高さ(以下、「プリズム高さ」という)と前記球の直径との比率(プリズム高さ/球の直径)が、1未満(0を含まない)であることが好ましく、0.2以上0.8未満であることがより好ましく、0.4以上0.6未満であることがさらに好ましい。
前記三角プリズム、前記円筒プリズム、前記球プリズムにおいて、前記角度若しくは前記プリズム高さが前記下限未満、又は、前記上限を超えると、表面プラズモンポラリトンを励起し得る入射光角度で光を入射させることが困難となったり、プリズム内部で光が複数回反射することによってセンサの感度や精度が低下したりする傾向にある。
また、プリズム1がペンタプリズムである場合には、五角柱の側面のうち、いずれかの側面上に、透明電極2、n型透明半導体膜3、プラズモン共鳴膜電極4、及び反射共鳴膜5が配置されることが好ましく、光は残りの4面のうちのいずれかの面から入射されることが好ましい。
プリズム1の材質としては、特に制限されず、例えば、ガラス、高分子ポリマ(ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレン、エポキシ、ポリエステル等)、硫黄、ルビー、サファイア、ダイヤモンド、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、ヨウ化セシウム(CsI)、臭化カリウム(KBr)、臭沃化タリウム、炭酸カルシウム(CaCO)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化リチウム(LiF)が挙げられる。また、プリズム1の材質としては、液体であってもよく、水、オイル、グリセロール、ジヨードメタン、α−ブロモナフタレン、トルエン、イソオクタン、シクロヘキサン、2,4−ジクロロトルエン、エチルベンゼン、ジベンジルエーテル、アニリン、スチレン、有機化合物溶液(ショ糖溶液等)、無機化合物溶液(塩化カリウム溶液、硫黄含有溶液)が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、プリズム1の形状、材質に関わらず、プリズム1の内部に入射光の光源が配置されていてもよい。
(透明電極)
透明電極2は、プラズモン共鳴膜電極4で生じた表面プラズモンポラリトンに伴って放出され、n型透明半導体膜3を移動してきたホットエレクトロン(電子)を電気信号として取り出す機能を有するものであり、プラズモン共鳴膜電極4の対極として機能し、プラズモン共鳴膜電極4と、電気的測定装置(好適な実施形態1では電気的測定装置21)及び必要に応じて外部回路(導線、電流計等;好適な実施形態1では外部回路31及び31’)を介して電気的に接続される。また、透明電極2は、光を透過できることが必要である。なお、本発明において、膜、電極、層及び基板などが「光を透過できる」とは、膜、電極、層又は基板などの一方の面に対して波長400〜1500nmのうちの少なくともいずれかの波長の光を垂直に入射させたときの光透過率が40%以上であることをいい、前記光透過率は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
透明電極2の材質としては、半導体分野において透明電極として従来から用いられているものの中から適宜選択して用いることができ、例えば、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、アルミ(Al)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、ITO(Indium tin oxide)、FTO(Fluorine−doped tin oxide)、及び他元素(アルミニウムやガリウム等)をドープしたZnO等の金属酸化物などの透明導電性材料、及びこれらの積層体からなる薄膜や網状の形状が挙げられる。また、透明電極2の材質としては、下記のn型透明半導体膜を構成するn型半導体も挙げられ、センサチップにおいて、透明電極2とn型透明半導体膜3とは、互いに同一の材質からなる層であってもよい。この場合、n型透明半導体膜3は透明電極2を兼ねる。
透明電極2の厚さ(n型透明半導体膜3が透明電極2を兼ねる場合を除く)としては、通常、1〜1000nmである。
なお、本発明において、膜、電極、層及び基板などの厚さや境界は、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)による観察で測定、確認することができる。
(n型透明半導体膜)
n型透明半導体膜3は、プラズモン共鳴膜電極4で励起された表面プラズモンポラリトンによって該プラズモン共鳴膜電極4が十分に分極されることで放出されるホットエレクトロンを受け取る機能を有するものであり、n型半導体からなる膜である。また、n型透明半導体膜3は、光を透過できることが必要である。
前記n型半導体としては、例えば、無機酸化物半導体が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の複合材料であってもよい。前記無機酸化物半導体としては、二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化スズ(SnO)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(GaO)、酸化チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化鉄(Fe)、酸窒化タンタル(TaON)、酸化タングステン(WO)、酸化インジウム(In)及びこれらの複合酸化物等が挙げられる。中でも、前記n型半導体としては、透明性が高く、導電率が高いという観点からは、TiO、ZnO、SnO、SrTiO、Fe、TaON、WO及びInからなる群から選択される少なくとも1種の半導体であることが好ましく、TiO、ZnO、SnO、SrTiO、Fe及びInからなる群から選択される少なくとも1種の半導体であることがより好ましい。
n型透明半導体膜3の厚さ(n型透明半導体膜3が透明電極2を兼ねる場合を含む)としては、1〜1000nmであることが好ましく、5〜500nmであることがより好ましく、10〜300nmであることがさらに好ましい。前記厚さが前記下限未満であると、前記n型透明半導体が膜として存在できず、半導体としての十分な機能を果たせなくなる傾向にある。他方、前記上限を超えると、光透過率が減少したり、抵抗が増大して電流が流れにくくなる傾向にある。
(プラズモン共鳴膜電極)
プラズモン共鳴膜電極4は、入射してきた光(入射光)を表面プラズモンポラリトンに変換する機能を有するものであり、光との相互作用によって表面プラズモンポラリトンを発生可能なプラズモニック材料からなる膜である。また、前記表面プラズモンポラリトンを電気信号として取り出す機能を有するものであり、透明電極2の対極として機能し、透明電極2と、電気的測定装置(好適な実施形態1では電気的測定装置21)及び必要に応じて外部回路(導線、電流計等;好適な実施形態1では外部回路31及び31’)を介して電気的に接続される。
前記プラズモニック材料としては、例えば、金属、金属窒化物、及び金属酸化物が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の複合材料であってもよい。中でも、前記プラズモニック材料として好ましいものとしては、前記金属としては金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)、及びナトリウム(Na)を挙げることができ、前記金属窒化物としては窒化チタン(TiN)を、前記金属酸化物としてはITO(Indium tin oxide)、FTO(Fluorine−doped tin oxide)、及び他元素(アルミニウムやガリウム等)をドープしたZnOを、それぞれ挙げることができる。中でも、前記プラズモニック材料としては、Au、Ag、Al、Cu、Pt、Pd、及びTiNからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Au、Ag、Al、Cu及びPtからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
プラズモン共鳴膜電極4の厚さとしては、200nm以下(ただし0を含まない)であることが好ましく、1〜150nmであることがより好ましく、5〜100nmであることがさらに好ましく、10〜60nmであることがさらにより好ましい。前記厚さが前記下限未満であると、前記プラズモン共鳴膜電極が膜として存在できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、光が入射してきた面の反対側の面に到達するエバネッセント波が弱くなり、十分な表面プラズモンポラリトンを励起できなくなる傾向にある。また、プラズモン共鳴膜電極4の厚さとしては、測定対象であるサンプルの屈折率としてより広範囲の屈折率(好ましくは、1.33〜1.40)を測定可能となる傾向にあるという観点からは、10〜34nmであることが特に好ましく、屈折率の変化に対して電流値の変化率を大きくするという観点からは、35〜60nmであることが特に好ましい。
(反射共鳴膜)
反射共鳴膜5は、プラズモン共鳴膜電極4により生じた表面プラズモン共鳴による電場変化を内部で共鳴させる機能を有するものであり、より具体的には、プラズモン共鳴膜電極4により生じた表面プラズモン共鳴によって、内部で電場変化が引き起こされ、かつ、この電場変化が伝搬されてプラズモン共鳴膜電極4とは反対側の界面で反射することにより、該反射共鳴膜内部で該電場変化の共鳴を起こし、これにより、生じた表面プラズモン共鳴を増幅させる機能を有するものである。
反射共鳴膜5の材質としては、例えば、金属酸化物(例えば、二酸化チタン(TiO)、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(III)(Fe);二酸化ケイ素(SiO)等のガラス)、前記金属酸化物以外の半導体(例えば、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、及びそのドープ体)、有機物(例えば、ポリエチレン(PE)、ジメチルポリシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA、アクリル樹脂)等の合成樹脂;セルロース、エチレングリコール等の高分子ポリマ)が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の複合材料であってもよい。中でも、反射共鳴膜5の屈折率が高い程その厚さを薄くすることができる傾向にあるという観点から、反射共鳴膜5の材質としては、TiO、SiO等の金属酸化物、及びSi等の半導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、TiO等の金属酸化物、及びSi等の半導体からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
反射共鳴膜5の厚さとしては、特に十分なセンサ感度の向上が達成れる観点から、次式(1):
|Δθ|≦2°・・・(1)
で示される条件を満たす厚さであることが好ましい。
前記式(1)中、Δθは、前記センサチップの前記プリズムと接する面に対する入射角度(θ)が0〜90°となる範囲内で前記センサチップに光を入射して電流値を測定したときに、前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間で入射光が全反射するときの入射角度(θcp)の±25°の範囲内で、前記入射光のエネルギーに対する前記電流値の割合である出力電流割合(CA)が最大値(CAmax)となる入射角度(θCAmax)から前記出力電流割合が最小値(CAmin)となる入射角度(θCAmin)を減じた角度変化量を示す。
例えば、前記センサチップの前記プリズムと接する面に対する入射角度(θ)が0〜90°となる範囲内で前記センサチップに光を入射して電流値を測定した場合には、図2に模式的に示すように、前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間で入射光が全反射するときの入射角度(θcp)の±25°の範囲内で、電流値の変化(図2では出力電流割合(CA))がピークとして観察される。このとき、前記ピークがシャープ、すなわちピークの傾斜が急である程、センサ感度が高いことを示し、反射共鳴膜を備えることにより、該ピークをよりシャープにすることが可能となる。
前記式(1)中のΔθは、図2に示すように、前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間で入射光が全反射するときの入射角度(θcp)の±25°の範囲内で、前記入射光のエネルギーに対する前記電流値の割合である出力電流割合(CA)が最大値(CAmax)となる入射角度(θCAmax)から前記出力電流割合が最小値(CAmin)となる入射角度(θCAmin)を減ずることで、角度変化量として求めることができ、|Δθ|はその絶対値である。かかる|Δθ|としては、前記式(1)のように2°以下であることが好ましく、1.5°以下であることがより好ましく、1°以下であることがさらに好ましい。
本発明において、センサ感度は、前記出力電流割合(CA)が最大値(CAmax)となる入射角度(θCAmax)から前記出力電流割合が最小値(CAmin)となる入射角度(θCAmin)を減じた上記の角度変化量(Δθ)の絶対値(|Δθ|[°])、並びに、前記出力電流割合の最大値(CAmax)から最小値(CAmin)を減じた値(ΔI)の絶対値(|ΔI|[%])をそれぞれ求め、これらの比(|ΔI|/|Δθ|[%])として表すことができる。前記センサ感度(|ΔI|/|Δθ|[%])の値が大きい程、センサ感度に優れることを示す。
なお、プリズム1の側から照射された光は、例えば、図3の(a)に示すようにプリズム1の面に対して垂直に入射した場合には直進する(入射光400)が、図3の(b)に示すように、垂直以外の角度で入射した場合にはプリズム1によって屈折する(入射光400)。そのため、本発明においては、図3の(a)、(b)に示すように、プリズムの側から入射する光の入射角度(θ°)を、プリズム1が無い場合の、光電変換部(図3ではセンサチップ16)のプリズム1と接する面に対する入射角度として定義する。入射光の光源が前記プリズム内にある場合も同様である。
(酸化膜)
図4には、増強センサチップの第2の好ましい形態(好適な実施形態2)を示す。増強センサチップを構成するセンサチップとしては、本発明の効果を阻害しない範囲において、さらに別の層を備えていてもよく、例えば、特に反射共鳴膜5が前記金属酸化物以外の半導体や前記有機物からなる場合には、図4に示すセンサチップ(光電変換部)12のように、プラズモン共鳴膜電極4と反射共鳴膜5との間に、反射共鳴膜5をプラズモン共鳴膜電極4に直接積層することによって生じる電流値低下を防止することを主な目的として、酸化膜6をさらに備えていてもよい(増強センサチップ120)。
酸化膜6の材質としては、例えば、二酸化チタン(TiO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化クロム(Cr)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の複合材料であってもよい。中でも、酸化膜としての安定性の観点から、酸化膜6の材質としては、TiO、SiO、及びCrからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、TiO及びSiOからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。また、酸化膜6としては、これらのうちの少なくとも1種を含む単層であってもかかる単層が2種以上積層された複層であってもよい。
酸化膜6をさらに備える場合、その厚さとしては、厚くなるにしたがってプラズモン共鳴膜電極4により生じる表面プラズモン共鳴の強度が減少する傾向にあるという観点からは、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることがさらにより好ましい。
(透明基板)
図5には、増強センサチップの第3の好ましい形態(好適な実施形態3)を示す。増強センサチップを構成するセンサチップとしては、例えば、図5に示すセンサチップ(光電変換部)13のように、プリズム1と透明電極2との間に、センサチップ13を支持することを主な目的として、透明基板7をさらに備えていてもよい(増強センサチップ130)。
透明基板7の材質としては、光を透過できるものであれば特に制限されず、例えば、ガラス;プラスチックやフィルム等の高分子有機化合物が挙げられ、透明基板7としては、これらのうちの少なくとも1種を含む単層であってもかかる単層が2種以上積層された複層であってもよい。透明基板7をさらに備える場合、その厚さとしては、通常、0.01〜2mmである。
また、透明基板7をさらに備える場合、プリズム1と透明基板7との間には、透明基板7を密着させることを主な目的として、中間層(図示せず)をさらに備えていてもよい。前記中間層の材質としては、光を透過できるものであれば特に制限されず、例えば、グリセロール、水、高分子ポリマ(ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレン、エポキシ、ポリエステル等)、オイル、ジヨードメタン、α−ブロモナフタレン、トルエン、イソオクタン、シクロヘキサン、2,4−ジクロロトルエン、有機化合物溶液(ショ糖溶液等)、無機化合物溶液(塩化カリウム溶液、硫黄含有溶液)、エチルベンゼン、ジベンジルエーテル、アニリン、スチレンが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(接着層)
図6には、増強センサチップの第4の好ましい形態(好適な実施形態4)を示す。増強センサチップを構成するセンサチップとしては、特にプラズモン共鳴膜電極4が前記金属からなる場合には、図6に示すセンサチップ(光電変換部)14のように、n型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4との間に、プラズモン共鳴膜電極4をより強固に固定することを主な目的として、接着層8をさらに備えていてもよい(増強センサチップ140)。
接着層8の材質としては、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、窒化チタン(TiN)が挙げられ、前記接着層としては、これらのうちの少なくとも1種を含む単層であってもかかる単層が2種以上積層された複層であってもよい。また、接着層8は、n型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4との境界面を全て覆っていなくともよい。ただし、光が入射してきた面の反対側の面に到達するエバネッセント波が弱くなり、十分な強さの表面プラズモンポラリトンを励起できなくなる傾向にあることから、センサチップにおいては、n型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4とが互いに近傍に配置されていることが好ましく、n型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4との間の距離が25nm以下であることが好ましく、1〜10nmであることがより好ましい。したがって、接着層8をさらに備える場合、その厚さとしては、25nm以下であることが好ましく、1〜10nmであることがより好ましい。
(分子結合膜)
図7には、増強センサチップの第5の好ましい形態(好適な実施形態5)を示す。増強センサチップにおいては、図7に示すセンサチップ(光電変換部)15のように、バイオ分子等を結合しやすくすることを主な目的として、反射共鳴膜5のプラズモン共鳴膜4と反対側の面上に、反射共鳴膜5の材質とは異なる材質からなる分子結合膜9をさらに備えていてもよい(増強センサチップ150)。
分子結合膜9の材質としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の複合材料であってもよい。中でも、反射共鳴膜5においてプラズモン共鳴膜電極4により生じた電場変化をより効率的に反射させるという観点から、分子結合膜9の材質としては、Au、Ag、Cu、及びPtからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、大気や溶液に接した際の安定性がより高いという観点からは、Au及びPtからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。また、分子結合膜9としては、これらのうちの少なくとも1種を含む単層であってもかかる単層が2種以上積層された複層であってもよい。
分子結合膜9をさらに備える場合、その厚さとしては、厚くなるにしたがってプラズモン共鳴膜電極4により生じる表面プラズモン共鳴の強度が減少する傾向にあるという観点からは、1〜100nmであることが好ましく、1〜50nmであることがより好ましく、1〜25nmであることがさらに好ましい。
(サンプル層)
図8には、増強センサチップの第6の好ましい形態(好適な実施形態6)を示す。増強センサチップにおいては、図8に示すように、測定対象であるサンプルを保持することを主な目的として、反射共鳴膜5のプラズモン共鳴膜4と反対側の面上、又は上記の分子結合膜9(図8では示さず)上に、サンプル層10をさらに備えていてもよい(増強センサチップ160)。なお、サンプル層10としては、前記サンプルが任意の流速で供給されるように配置されたものであっても、前記サンプルが一定容積で含まれるようにセル状に区分して配置されたものであってもよい。
増強センサチップを構成するセンサチップにおいては、n型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4(接着層8をさらに備える場合には該接着層8)との組み合わせが、ショットキー障壁を形成する組み合わせであることが好ましい。センサチップがショットキー障壁を形成することは、センサチップの透明電極2を半導体アナライザ等の電圧印加手段の作用極に、プラズモン共鳴膜電極4を前記電圧印加手段の対極及び参照電極に、それぞれ接続して、作用極に−1.5〜+1.5Vの範囲で電圧を印加したときの電流値を測定することにより確認することができる。その電流値としては、0V以上+1.5V以下における電流値の絶対値のうちの最大値が−1.5V以上0V未満における電流値の絶対値のうちの最大値に対して5分の1以下であることが好ましく、10分の1以下であることがより好ましく、20分の1以下であることがさらに好ましい。この比率が前記上限値を超えると、整流特性が減弱するため、測定時のノイズが大きくなり、センサの感度や精度が減少する傾向にある。
このようなショットキー障壁を形成する組み合わせは、n型透明半導体膜3の仕事関数をφS、プラズモン共鳴膜電極4(又は接着層8)の仕事関数をφMとしたときに、次式:φS<φMで示される条件を満たす組み合わせである。
各材質における仕事関数の値は公知であり、n型透明半導体膜3の仕事関数(φS)としては、例えば、(I)Akihito Imanishiら、J.Phys.Chem.C、2007年、111(5)、p.2128−2132;(II)Min Weiら、Energy Procedia、2012年、Volume 16、Part A、p.76−80;(III)David Ginleyら、「Handbook of Transparent Conductors」、2011年;(IV)L.F.Zagonelら、J.Phys.:Condens.Matter、2009年、21、31;(V)E.R.Batistaら、J.Phys.Chem.B、2002年、106(33)、p.8136−8141;(VI)Gy.Vidaら、2003年、Microsc.Microanal.、9(4)、p.337−342;(VII)W.J.Chuら、J.Phys.Chem.B、2003年、107(8)、p.1798−1803において、それぞれ、二酸化チタン(TiO):4.0〜4.2(I)、酸化亜鉛(ZnO):4.71〜5.08(II)、二酸化スズ(SnO):5.1(III)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO):4.2(IV)、三酸化二鉄(Fe):5.6(V)、酸化タングステン(WO):5.7(VI)、酸窒化タンタル(TaON):4.4(VII)、酸化インジウム(In):4.3〜5.4(III)であることが記載されている。
また、プラズモン共鳴膜電極4(又は接着層8)の仕事関数(φM)としては、例えば、(VIII)日本化学会編、「化学便覧 基礎編 改訂4版」、II−489において、それぞれ、金(Au):5.1〜5.47、銀(Ag):4.26〜4.74、アルミニウム(Al):4.06〜4.41、銅(Cu):4.48〜4.94、白金(Pt):5.64〜5.93、パラジウム(Pd):5.55であることが記載されており、また、(IX)Takashi Matsukawaら、Jpn.J.Appl.Phys.、2014年、53、04EC11において、窒化チタン(TiN):4.4〜4.6であることが記載されている。
したがって、ショットキー障壁を形成するn型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4(又は接着層8)との組み合わせとしては、これらの仕事関数(φS、φM)の中から、上記条件を満たす組み合わせを選択して適宜採用することができる。これらの中でも、n型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4(又は接着層8)との組み合わせとしては、TiOとAu、Ag、Al、Cu、Pt、Pd、TiNのうちのいずれか一つとの組み合わせ、ZnOとAu、Pt、Pdのうちのいずれか一つとの組み合わせ、SnOとAu、Pt、Pdのうちのいずれか一つとの組み合わせ、SrTiOとAu、Ag、Al、Cu、Pt、Pd、TiNのうちのいずれか一つとの組み合わせ、FeとPtとの組み合わせ、WOとPdとの組み合わせ、TaONとAu、Ag、Cu、Pt、Pd、TiNのうちのいずれか一つとの組み合わせ、InとPt、Pdのうちのいずれか一つとの組み合わせが好ましく、TiOとAu、Ag、Cu、Pt、Pdのうちのいずれか一つとの組み合わせ、ZnOとPtとの組み合わせ、SnOとPtとの組み合わせ、SrTiOとAu、Ag、Cu、Pt、Pdのうちのいずれか一つとの組み合わせ、TaONとAu、Cu、Pt、Pdのうちのいずれか一つとの組み合わせ、InとPtとの組み合わせがより好ましい。
本発明の増強センサチップ及びセンサチップとしては、上記増強センサチップの実施形態1〜6(増強センサチップ110〜160、センサチップ11〜15)に制限されるものではなく、例えば、透明基板7及びサンプル層10をいずれも備えるなど、これらの任意の組み合わせであってもよい(図示せず)。さらに、本発明の増強センサチップとしては、1つを単独で用いても、複数個を列又は平面に並べて配置して用いてもよい。
(電気的測定装置(電気的測定手段))
本開示のセンサは、プリズム1及び前記センサチップ(例えば、好適な実施形態1ではセンサチップ11)を備える前記増強センサチップ(例えば、好適な実施形態1では増強センサチップ110)と、前記センサチップの透明電極2及びプラズモン共鳴膜電極4から電流値又は電圧値を直接測定する電気的測定装置(例えば、好適な実施形態1では電気的測定装置21)と、を備える。透明電極2及びプラズモン共鳴膜電極4と前記電気的測定装置とは、外部回路(例えば、好適な実施形態1では外部回路31及び31’)を通じて接続される。
前記外部回路の材質としては、特に限定されず、導線の材質として公知のものを適宜利用することができ、例えば、白金、金、パラジウム、鉄、銅、アルミニウム等の金属が挙げられる。また、前記電気的測定装置としても、電圧値又は電流値を測定できるものであれば特に制限されず、例えば、半導体デバイス・アナライザ、電流測定器、電圧測定器が挙げられる。
(表面プラズモンポラリトン変化検出方法)
本発明の表面プラズモンポラリトン変化検出方法は、上記の電気測定型表面プラズモン共鳴センサ(センサ)を用いて表面プラズモンポラリトンの変化を検出する方法であり、
前記プリズムの側から光を照射し、前記プリズム、前記透明電極、及び前記n型透明半導体膜を通過した光を、前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間で全反射させることで前記プラズモン共鳴膜電極と相互作用させて表面プラズモンポラリトンを発生せしめ、
前記表面プラズモンポラリトンによって生じ、前記n型透明半導体膜に移動したホットエレクトロンを前記透明電極から電気信号として取り出し、
前記透明電極と前記プラズモン共鳴膜電極との間の電流値又は電圧値の変化を前記電気的測定装置によって測定することで表面プラズモンポラリトンの変化を検出する、
方法である。
本開示のセンサにおいては、プリズム1の側から光が照射され、プリズム1、並びに、透明電極2及びn型透明半導体膜3を通過した光(入射光)が、前記プラズモン共鳴膜電極4とn型透明半導体膜3との間において全反射することにより、プラズモン共鳴膜電極4と相互作用して表面プラズモンポラリトンを発生する。より具体的には、n型透明半導体膜3を通過した光が、n型透明半導体膜3とプラズモン共鳴膜電極4との界面、又は接着層8を備える場合にはプラズモン共鳴膜電極4と接着層8との界面、若しくは接着層8とn型透明半導体膜3との界面、又は接着層8が2層以上からなる場合には、プラズモン共鳴膜電極4と接着層8との界面、若しくは接着層8とn型透明半導体膜3との界面、若しくは接着層8における隣接する2つの層間の界面で全反射し、当該全反射により生じたエバネッセント波がプラズモン共鳴膜電極4と相互作用して表面プラズモンポラリトンが発生する。
発生した表面プラズモンポラリトンによってプラズモン共鳴膜電極4が十分に分極されることでホットエレクトロンが生じ、該ホットエレクトロンはn型透明半導体膜3に移動し、透明電極2から電気信号として取り出される。このとき、透明電極2は前記外部回路を通じてプラズモン共鳴膜電極4と電気的に接続され、透明電極2とプラズモン共鳴膜電極4との間の電流変化を前記電気的測定装置によって測定することで表面プラズモンポラリトンの変化を検出することができる。このように電気信号として観測されるホットエレクトロンは、プラズモン共鳴膜電極4内部の前記界面近傍で生じたホットエレクトロンであると考えられ、このようにして電気信号として観測可能なホットエレクトロンは、プラズモン共鳴膜電極4内部におけるn型透明半導体膜3から距離にしてプラズモン共鳴膜電極4の厚さ20%程度の領域で生じたホットエレクトロンであると推察される。
プリズム1の側から入射する光の波長が長くなると、表面プラズモンポラリトンを生じさせる入射光の入射角度の範囲がより狭くなり、他方、生じる表面プラズモンポラリトンの強さが増強される。そのため、プリズム1に入射させる光(照射する光)としては、目的に応じて特に限定されないが、可視光の波長領域の光又は近赤外光の波長領域の光が挙げられ、400〜1500nmの波長であることが好ましく、500〜1000nmの波長であることがより好ましく、600〜900nmの波長であることがさらに好ましい。
また、プリズム1の側から入射する光の強さが強くなると、表面プラズモンポラリトンにより生じる電流量が増大する。そのため、プリズム1に入射させる前記光の強さとしては、目的に応じて特に限定されないが、0.01〜500mWであることが好ましく、0.1〜50mWであることがより好ましく、0.1〜5mWであることがさらに好ましい。前記光の強さが前記下限未満であると、表面プラズモンポラリトンにより生じる電流量が少なくなりすぎて十分なセンサ精度が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、プラズモン共鳴膜電極4において熱が発生して測定感度を低下させる恐れが生じる傾向にある。
本開示のセンサにおいては、プラズモン共鳴膜電極の近傍(好ましくはプラズモン共鳴膜電極の表面から300nm以内、例えば、サンプル層10内)に測定対象となるサンプルを配置することにより、前記サンプルの屈折率変化(濃度変化、状態変化)による表面プラズモンポラリトンの変化を電気信号として検出することができるため、前記電気信号を測定することで、サンプルの状態変化をモニタすることができる。また、予め既知の濃度又は状態にあるサンプルにおいて測定される前記電気信号と比較することで、サンプルの濃度又は状態を判定することができる。
また、測定するサンプルに応じて前記プリズムの側から入射する光の入射角度を変えることで、センサ精度をさらに十分に向上させることができる。
例えば、反射共鳴膜5のプラズモン共鳴膜4と反対側の面上、又は分子結合膜9上、好ましくは、サンプル層10内に保持された、標的物質及び媒体を含むサンプルについて、前記標的物質の濃度変化や状態変化による表面プラズモンポラリトンの変化を電気信号として検出することができる。この場合、前記標的物質としては、特に制限されず、抗体、核酸(DNA、RNA等)、タンパク質、細菌、薬剤などの小分子化合物;イオン;気体状態にある小分子化合物や揮発性物質等が挙げられる。また、前記媒体としては、溶液及びガスが挙げられ、前記溶液としては水;緩衝液、強電解質溶液等の電解質溶液が、前記ガスとしては窒素ガスやヘリウムガス等の不活性ガスが、それぞれ挙げられる。
(電気測定型表面プラズモン共鳴センサ及びプラズモンポラリトン増強センサチップの製造方法)
本開示のセンサ、並びに、プリズム1及びセンサチップを備える前記増強センサチップの製造方法は特に制限されないが、好ましくは、プリズム1上に、透明電極2、n型透明半導体膜3、プラズモン共鳴膜電極4、及び反射共鳴膜5を、この順で順次形成して積層する方法が好ましい。前記形成方法としては、特に制限されないが、透明電極2、n型透明半導体膜3、プラズモン共鳴膜電極4、及び反射共鳴膜5を形成する方法としては、例えば、それぞれ独立に、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学蒸着法、スピンコーティング法、原子層堆積法(ALD)、及びメッキ法が挙げられる。スパッタリング法を用いる場合において、金属酸化物からなるn型透明半導体膜3を形成する場合には、金属をターゲットとして、酸化させながら成膜してもよい(リアクティブスパッタ)。また、酸化膜6を備える場合には、酸化膜を上記方法で形成してもよく、酸化膜6を構成する金属からなる膜を成膜してから大気や酸素に暴露することによって酸化膜6を形成してもよい。
また、センサの製造方法において、センサチップの透明電極2及びプラズモン共鳴膜電極4と前記電気的測定装置とを外部回路を通じて電気的に接続する方法としても特に制限されず、従来公知の方法を適宜採用して接続することができる。
以下、実施例をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(比較例1)
先ず、ガラス基板の一方の面上にITO膜(酸化インジウム・スズ)からなる透明電極が形成されたITO基板(ガラス基板:S−TIH11、ガラス基板厚さ:1.1mm、面積:19×19mm、ITO膜:高耐久透明導電膜 5Ω、ジオマテック株式会社製)を準備した。次いで、スパッタリング装置1(QAM−4−ST、アルバック九州株式会社製)を用い、ターゲットとしてTiO(Titanium Dioxide、99.9%、フルウチ化学株式会社製)を用いて、前記ITO膜上にTiOからなる厚さ200nmの膜(n型透明半導体膜(TiO膜))を形成した。次いで、前記スパッタリング装置1を用い、ターゲットとしてAu(99.99%、株式会社高純度化学研究所製)を用いて、前記TiO膜上に、Auからなる厚さ30nmの膜(プラズモン共鳴膜電極(Au膜))を形成し、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)がこの順に積層されたチップ(光電変換部(センサチップ))を得た。
次いで、得られたチップの前記ガラス基板のITO膜と反対の面上にジヨードメタン(一級、富士フィルム和光純薬株式会社製)を塗布し、直角プリズム(S−TIH11、株式会社ときわ光学社製、屈折率:1.77)の斜面を密着させ、プリズム、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)がこの順に積層されたチップ(プリズム付きチップ)を得た。
(実施例1)
比較例1と同様にして、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)がこの順に積層されたチップを得た。次いで、スパッタリング装置1を用い、ターゲットとしてTiO(Titanium Dioxide、99.9%、フルウチ化学株式会社製)を用いて、前記プラズモン共鳴膜電極上に、保護膜としてTiOからなる厚さ5nmの膜(酸化膜)を形成した。次いで、スパッタリング装置2(SH−250、株式会社アルバック製)を用い、ターゲットとしてSi(99.999%、株式会社高純度化学研究所製)を用いて、前記保護膜上に、Siからなる厚さ70nmの膜(反射共鳴膜(Si膜))を形成し、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)、酸化膜、反射共鳴膜(Si膜)がこの順に積層されたチップ(光電変換部(センサチップ))を得た。チップとしてこれを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、プリズム、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)、酸化膜、反射共鳴膜(Si膜)がこの順に積層されたチップ(プリズム付きチップ)を得た。
(実施例2)
実施例1と同様にして、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)、酸化膜、反射共鳴膜(Si膜)がこの順に積層されたチップを得た。次いで、前記スパッタリング装置1を用い、ターゲットとしてAu(99.99%、株式会社高純度化学研究所製)を用いて、前記反射共鳴膜上に、Auからなる厚さ10nmの膜(分子結合膜(Au膜))を形成し、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)、酸化膜、反射共鳴膜(Si膜)、分子結合膜(Au膜)がこの順に積層されたチップ(光電変換部(センサチップ))を得た。チップとしてこれを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、プリズム、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)、酸化膜、反射共鳴膜(Si膜)、分子結合膜(Au膜)がこの順に積層されたチップ(プリズム付きチップ)を得た。
(実施例3)
比較例1と同様にして、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)がこの順に積層されたチップを得た。次いで、スパッタリング装置1を用い、ターゲットとしてTiO(Titanium Dioxide、99.9%、フルウチ化学株式会社製)を用いて、前記プラズモン共鳴膜電極上に、TiOからなる厚さ122nmの膜(反射共鳴膜(TiO膜))を形成し、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)、反射共鳴膜(TiO膜)がこの順に積層されたチップを得た。さらに、実施例2と同様にして、前記反射共鳴膜(TiO膜)上に、Auからなる厚さ10nmの膜(分子結合膜(Au膜))を形成し、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)、反射共鳴膜(TiO膜)、分子結合膜(Au膜)がこの順に積層されたチップ(光電変換部(センサチップ))を得た。チップとしてこれを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、プリズム、ガラス基板、ITO膜、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)、反射共鳴膜(TiO膜)、分子結合膜(Au膜)がこの順に積層されたチップ(プリズム付きチップ)を得た。
<試験例1>
比較例1で得られたプリズム付きチップのプラズモン共鳴膜電極の表面(n型透明半導体膜と反対の面)、実施例1で得られたプリズム付きチップの反射共鳴膜の表面(酸化膜と反対の面)、実施例2〜3で得られたプリズム付きチップの分子結合膜の表面(反射共鳴膜と反対の面)に、それぞれ接するようにサンプル層を配置し、前記サンプル層の中にサンプル溶液として超純水を満たした。なお、サンプル溶液と各チップの表面とは直接接するように前記サンプル層を配置した。
また、比較例1及び実施例1〜3で得られたプリズム付きチップのITO膜と電流測定器(Electrochemical Analyzer Model 802D、ALS/CH Instruments Inc.製)の作用極とを、プラズモン共鳴膜電極と前記電流測定器の対極及び参照極とを、それぞれ、導線を介して電気的に接続した。
次いで、670nmのレーザー光(光源:CPS670F、Thorlabs社製)を、偏光子(CMM1−PBS251/M、Thorlabs社製)を通してp偏光のレーザー光とし、この強度をパワーメータ(Model843−R、Newport社製)で測定して4.0mWとなるように調整した。次いで、図9に示すように、p偏光のレーザー光(4.0mW)を得られたチップの光電変換部(センサチップ17)のプリズムの側からそれぞれ照射した。p偏光のレーザー光(入射光)のガラス基板表面に対する入射角度(θ[°])を40°〜80°の間で変化させ、各入射角度におけるITO膜−プラズモン共鳴膜電極間の電流値[μA]を測定した。また、前記サンプル溶液として、前記超純水(グリセロール 0%)に代えて、10%、20%、30%、40%、50%;2%、4%、6%、8%、10%;又は1%、2%、3%、4%、5%、6%のグリセロール(Glycerol)溶液をそれぞれ用いたこと以外は上記と同様にして、各サンプル溶液について、各入射角度におけるITO膜−プラズモン共鳴膜電極間の電流値[μA]を測定した。
比較例1及び実施例1〜3で得られたプリズム付きチップを用いて各サンプル溶液を測定した結果(入射角度(θ[°])とITO膜−プラズモン共鳴膜電極間の電流値[μA]との関係を示すグラフ)を図10(比較例1)、図11(実施例1)、図12(実施例2)、及び図13(実施例3)に、それぞれ示す。
また、比較例1、実施例1〜2で得られた結果について、各サンプル溶液の22.1℃における屈折率と、ITO膜―プラズモン共鳴膜電極間の正規化電流値[a.u.]との関係を図14に示す。正規化電流は、先ず、上記で得られた比較例1及び実施例1〜2における入射角度とITO膜―プラズモン共鳴膜電極間の電流値との関係を示すグラフより、入射角度45°における電流値を1としたときの、各入射角度における電流値(a)を求め、次いで、同グラフより、0%グリセロール溶液を測定した際に最も電流値が高くなる入射角度(比較例1:68.6°、実施例1:53.7°、実施例2:53.0°)における電流値を1としたときの、各濃度のグリセロール溶液を測定した際の該入射角度における電流値(b)を求め、これらの電流値の比率(a/b)を算出し、正規化電流値とした。なお、各濃度のグリセロール溶液の22.1℃における屈折率は下記の表1のとおりである。
Figure 2020166520
図10〜図14に示した結果から明らかなように、プリズムを備えるチップ(例えば、比較例1、実施例1〜3)においては、プリズムに入射するレーザー光の入射角度が特定の範囲内にあると(例えば、図11では45〜65°)、電流値が変化することが確認された。これは、レーザー光をプリズムに通過させたことにより、特定の入射角度以上において入射光がn型透明半導体膜のプラズモン共鳴膜電極との間の界面において全反射してエバネッセント波を発生させ、これによって励起された表面プラズモンポラリトンによってn型透明半導体膜の近傍に配置されるプラズモン共鳴膜電極で電場変化により発生する電流が変化したためであり、この変化をもたらす表面プラズモンポラリトンの強さが前記入射角度によって変化したためと推察される。
また、図10〜図14に示した結果から明らかなように、前記電流値は、前記溶液の屈折率に応じて変化した。これは、n型透明半導体膜の近傍に配置されるプラズモン共鳴膜電極で電場変化によって発生する電流量の変化をもたらす表面プラズモンポラリトンの強さが前記溶液の屈折率によって変化するためであると本発明者らは推察する。したがって、前記プリズムを備えるチップを用いることにより、プラズモン共鳴膜電極近傍のサンプルの屈折率変化を十分な精度で測定することができることが確認された。
さらに、図11〜14に示した結果から明らかなように、反射共鳴膜を備えることによって(例えば、実施例1〜3)、電流値変化が急峻になり、センサの感度が著しく向上することが確認された。また、バイオ分子等を固定化することが可能な分子結合膜をさらに 積層しても(例えば、実施例2〜3)、反射共鳴膜としてTiO膜を用いても(例えば、実施例3)、電流値変化が急峻となり、優れたセンサ感度が維持されることが確認された。
<試験例2>
反射共鳴膜の好適な膜厚を確認するために、不連続ガレルキン時間領域法(DGTD:Discontinuous Galerkin Time Domain)により、ソフトウェア(「DEVICE」、Lumerical Inc.https://www.lumerical.com/jp/)を用い、その中の「stackfieldコマンド」により、下記の条件で電磁界シミュレーションを実施した。
〔チップの構成〕
電磁界シミュレーションは、ガラス基板、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)がこの順に積層されたチップ1;ガラス基板、n型透明半導体膜(TiO膜)、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)、反射共鳴膜(Si膜)、分子結合膜(Au膜)がこの順に積層されたチップ2;チップ2の反射共鳴膜をSi膜に代えてTiO膜としたチップ3;チップ2の反射共鳴膜をSi膜に代えてSiO膜としたチップ4についてそれぞれ行った。なお、当該電磁界シミュレーションにおいて、光源は、ガラス基板内にあるものとして行った。
〔パラメータ〕
stackfieldコマンドにより要求される各パラメータそれぞれは以下のとおりとした。
n:各層の屈折率
各層の屈折率としては、各層を構成する材質の屈折率より、それぞれ、下記の表2に示す複素屈折率(n:屈折率、k:消衰係数)を用いた。
d:各層の厚さ
各層の厚さは、それぞれ、下記の表2に示す厚さとし、反射共鳴膜がSi膜又はTiO膜である場合の厚さを0〜500nm、反射共鳴膜がSiO膜である場合の厚さを0〜1200nmの間で変化させた。
f:入射光の周波数
波長l=670nmとし、周波数f=c/l(c:光の速度(2.99×10m/s)により算出した。
theta:光の入射角度(θ)
0〜90°の範囲とした。
res:分解能
stackfieldコマンドでは分解能はシミュレーション範囲の分割数に等しいため、各層の厚さを変化させた場合、各計算セルのサイズが変化する可能性がある。そのため、分解能res=(1+各層の厚さの総計)/計算セルサイズ(四捨五入、計算セルサイズ=0.01nm)とした。
Figure 2020166520
シミュレーションを行った後、プラズモン共鳴膜電極(Au膜)における、n型透明半導体膜(TiO膜)側の表面から厚さ20%(10nm)の領域のp偏光の吸収量を算出した。また、反射光に関しても、p偏光の成分のみを取得した。
〔シミュレーションの確認〕
比較例1で得られたプリズム付きチップのITO膜と電流測定器(Electrochemical Analyzer Model 802D、ALS/CH Instruments Inc.製)の作用極とを、プラズモン共鳴膜電極と前記電流測定器の対極及び参照極とを、それぞれ、導線を介して電気的に接続した。次いで、670nmのレーザー光(光源:CPS670F、Thorlabs社製)を、偏光子(CMM1−PBS251/M、Thorlabs社製)を通してp偏光のレーザー光とし、この強度をパワーメータ(Model843−R、Newport社製)で測定して4.0mWとなるように調整した。次いで、図9に示すように、p偏光のレーザー光(4.0mW)を得られたチップの光電変換部(センサチップ17)のプリズムの側から照射した。p偏光のレーザー光(入射光)のガラス基板表面に対する入射角度(θ[°])を23°〜37°の間で変化させ、各入射角度におけるITO膜−プラズモン共鳴膜電極間の電流値[μA]を測定した。得られた光の入射角度(θ[°])と電流値[μA](左軸)との関係を図15に示す(実線、実測値)。他方、チップ1について、シミュレーションにより得られた光の入射角度(θ[°])と、入射光のエネルギーに対する前記電流値(出力電流エネルギー)の割合である出力電流割合[%](右軸)との関係も図15に併せて示す(点線、シミュレーション)。
図15に示したように、実測値(実線)とシミュレーション値(点線)との間で、光の入射角度(θ)と電流値(A)及び出力電流割合(CA)との関係は類似しており、高い精度でシミュレーションを実施できることが確認された。
〔反射共鳴膜の厚さ〕
チップ2〜4について、シミュレーションにより得られた光の入射角度(θ[°])と出力電流割合[%]との関係をプロットし、出力電流割合(CA)が最大値(CAmax)となる入射角度(θCAmax)から前記出力電流割合が最小値(CAmin)となる入射角度(θCAmin)を減じた角度変化量(Δθ[°])及び出力電流割合の最大値(CAmax)から最小値(CAmin)を減じた値(ΔI[%])をそれぞれ求め、それらの絶対値の比として感度(|ΔI|/|Δθ|[%])を算出した。次いで、反射共鳴膜の厚さ(thickness、[nm])と角度変化量の絶対値(Angle difference、|Δθ|[°]、左軸)及び感度(Sensitivity、|ΔI|/|Δθ|[%]、右軸)との関係をプロットした。得られた結果を、図16(チップ2)、図17(チップ3)、図18(チップ4)に、それぞれ示す。
図16〜18に示したように、反射共鳴膜の厚さと感度とは、感度が最高値となるときの反射共鳴膜の厚さにおいて、角度変化量(Δθ)の絶対値(|Δθ|)が最小となる関係にあることが確認された。また、反射共鳴膜の厚さが、|Δθ|が2°以下になる厚さであることにより、優れた感度が達成されることが確認された。
以上説明したように、本開示の電気測定型表面プラズモン共鳴センサ及びそれに用いるセンサチップによれば、優れたセンサ感度を有する電気測定型表面プラズモン共鳴センサ及びそれに用いるセンサチップを提供することが可能となる。また、本開示のセンサ及びセンサチップは表面プラズモンポラリトンを電気信号として検出することができるため、小型化やハイスループット化が容易である。
さらに、本開示のセンサ及びセンサチップにおいては、バイオ分子等を結合可能な分子結合膜をさらに積層することも可能であり、また、サンプルに影響を与えないため、より正確な測定が可能となる。したがって、本開示のセンサ及びセンサチップは今後の医療や食品、環境技術の発展において非常に有用である。
1…プリズム、2…透明電極、3…n型透明半導体膜、4…プラズモン共鳴膜電極、5…反射共鳴膜、6…酸化膜、7…透明基板、8…接着層、9…分子結合膜、10…サンプル層、11〜17…センサチップ(光電変換部)、21…電気的測定装置、31、31’…外部回路、110〜160…増強センサチップ、200…光源、300…偏光子、400…入射光、510…センサ。

Claims (12)

  1. 透明電極、n型透明半導体膜、プラズモン共鳴膜電極、及び反射共鳴膜がこの順で配置されているセンサチップと、プリズムとが、前記プリズム、前記透明電極、前記n型透明半導体膜、前記プラズモン共鳴膜電極、及び前記反射共鳴膜の順で配置されたプラズモンポラリトン増強センサチップと、
    前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電流値又は電圧値を直接測定する電気的測定装置と、
    を備える電気測定型表面プラズモン共鳴センサ。
  2. 前記センサチップにおいて、前記反射共鳴膜の厚さが、次式(1):
    |Δθ|≦2°・・・(1)
    [前記式(1)中、Δθは、前記センサチップの前記プリズムと接する面に対する入射角度(θ)が0〜90°となる範囲内で前記センサチップに光を入射して電流値を測定したときに、前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間で入射光が全反射するときの入射角度(θcp)の±25°の範囲内で、前記入射光のエネルギーに対する前記電流値の割合である出力電流割合(CA)が最大値(CAmax)となる入射角度(θCAmax)から前記出力電流割合が最小値(CAmin)となる入射角度(θCAmin)を減じた角度変化量を示す。]
    で示される条件を満たす厚さである、請求項1に記載の電気測定型表面プラズモン共鳴センサ。
  3. 前記センサチップにおいて、前記n型透明半導体膜と前記プラズモン共鳴膜電極との組み合わせが、ショットキー障壁を形成する組み合わせである、請求項1又は2に記載の電気測定型表面プラズモン共鳴センサ。
  4. 前記センサチップにおいて、前記プラズモン共鳴膜電極の厚さが200nm以下(ただし0を含まない)である、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の電気測定型表面プラズモン共鳴センサ。
  5. 前記センサチップにおいて、前記反射共鳴膜が、金属酸化物、半導体、及び有機物からなる群から選択される少なくとも1種からなる膜である、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の電気測定型表面プラズモン共鳴センサ。
  6. 前記センサチップにおいて、前記n型透明半導体膜が、TiO、ZnO、SnO、SrTiO、Fe、TaON、WO、及びInからなる群から選択される少なくとも1種のn型半導体からなる膜である、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の電気測定型表面プラズモン共鳴センサ。
  7. 前記センサチップが、前記反射共鳴膜の前記プラズモン共鳴膜と反対側に分子結合膜をさらに備えている、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の電気測定型表面プラズモン共鳴センサ。
  8. 前記センサチップが、前記プラズモン共鳴膜電極と前記反射共鳴膜との間に酸化膜をさらに備えている、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の電気測定型表面プラズモン共鳴センサ。
  9. 請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の電気測定型表面プラズモン共鳴センサに用いるセンサチップであり、かつ、透明電極、n型透明半導体膜、プラズモン共鳴膜電極、及び反射共鳴膜がこの順で配置されている、電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップ。
  10. 入射光を表面プラズモンポラリトンに変換可能なプラズモン共鳴膜電極、
    前記プラズモン共鳴膜電極の前記入射光側に配置されており、前記入射光を透過し、かつ、該透過した入射光が前記プラズモン共鳴膜電極と相互作用することにより前記プラズモン共鳴膜電極から放出されるホットエレクトロンを受け取り可能なn型透明半導体膜、
    前記プラズモン共鳴膜電極の前記n型透明半導体膜と反対側に配置されており、前記プラズモン共鳴膜電極により生じた表面プラズモン共鳴による電場変化を内部で共鳴させることが可能な反射共鳴膜、
    及び、
    前記n型透明半導体膜から移動したホットエレクトロンを電気信号として取り出し可能な透明電極、
    を備えるセンサチップと、
    前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間において前記入射光が全反射されるように前記入射光の角度を制御することが可能なプリズムと、
    を備えるプラズモンポラリトン増強センサチップ、並びに、
    前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電流値又は電圧値を直接測定可能な電気的測定装置、
    を備える、電気測定型表面プラズモン共鳴センサ。
  11. 請求項10に記載の電気測定型表面プラズモン共鳴センサに用いるセンサチップであり、かつ、透明電極、n型透明半導体膜、プラズモン共鳴膜電極、及び反射共鳴膜がこの順で配置されている、電気測定型表面プラズモン共鳴センサチップ。
  12. 透明電極、n型透明半導体膜、プラズモン共鳴膜電極、及び反射共鳴膜がこの順で配置されているセンサチップと、プリズムとが、前記プリズム、前記透明電極、前記n型透明半導体膜、前記プラズモン共鳴膜電極、及び前記反射共鳴膜の順で配置されたプラズモンポラリトン増強センサチップと、
    前記透明電極及び前記プラズモン共鳴膜電極から電流値又は電圧値を直接測定する電気的測定装置と、
    を備える電気測定型表面プラズモン共鳴センサを用いて表面プラズモンポラリトンの変化を検出する方法であり、
    前記プリズムの側から光を照射し、前記プリズム、前記透明電極、及び前記n型透明半導体膜を通過した光を、前記プラズモン共鳴膜電極と前記n型透明半導体膜との間で全反射させることで前記プラズモン共鳴膜電極と相互作用させて表面プラズモンポラリトンを発生せしめ、
    前記表面プラズモンポラリトンによって生じ、前記n型透明半導体膜に移動したホットエレクトロンを前記透明電極から電気信号として取り出し、
    前記透明電極と前記プラズモン共鳴膜電極との間の電流値又は電圧値の変化を前記電気的測定装置によって測定することで表面プラズモンポラリトンの変化を検出する、
    表面プラズモンポラリトン変化検出方法。
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