JP2005291966A - 表面プラズモン共鳴を利用した測定装置 - Google Patents

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【課題】
表面プラズモン共鳴により増強された電場が表面から離れても急激に減衰しないようにすることにより測定感度を高める。
【解決手段】
非導電性基板2上に金属膜4が形成され、その上に誘電体膜6が形成されている。試料溶液8は誘電体膜6と接する。誘電体膜6の膜厚は、表面プラズモン共鳴が起こる条件で光10を基板2と金属膜4の界面に入射させたときに、光入射角と誘電体膜の厚みd2の組合せの中で、光入射角θ0が誘電体膜と試料との境界面での全反射条件角に近くなるように設定されている。
【選択図】 図4

Description

本発明は、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)現象を用いて溶液中の物質、例えば微生物、蛋白質、核酸、糖質又はこれらが結合した混合物など、の屈折率や蛍光を測定する装置に関するものである。
表面プラズモン共鳴とは金属表面に光が入射し、表面プラズモンと同じ波数をもったエバネセント波が重なるとき、金属表面近傍の電子が共鳴状態となる現象を指す。金属又は半導体中の電子は集団的に振動しており、これはプラズマ振動又はプラズマ波と呼ばれている。表面プラズモンとは表面上のプラズマ波を量子的に述べたものである。また、エバネッセント波とは、物質の表面に沿って進行する波で、そのエネルギーが界面からの距離により指数関数的に減衰する波であって、全反射領域において入射面に沿って進行し、外部には伝播しない波をいう。
表面プラズモン共鳴は金属表面近傍のみに感度をもつため、その領域の質量変化又は屈折率変化を高感度に捉えることができる。また、表面プラズモンが生成し表面近くに強い光電場が形成されるため、これにより表面近くに存在する物質が励起されて蛍光を発する場合には蛍光を測定することもできる。
表面プラズモン共鳴を利用した測定装置は、これまで抗原抗体反応などの表面反応を利用して測定対象物を回折格子の近傍に固定化し、反射光と透過光の角度又は波長に依存したシグナル変化を測定することで、主に分子相互作用解析装置として使われてきた。
表面プラズモン共鳴を励起するための光学配置のうち、最も一般的で有名なものはKretschmann配置と呼ばれるものであり、ガラスなどの非導電性基板と、その非導電性基板より誘電率の小さい層(試料や空気など)が金属膜を介して接している構造をもったものである。Kretschmann配置に光を入射すると、金属膜がない場合の全反射臨界角より大きい特定の入射角において表面プラズモン共鳴が励起される。表面プラズモン共鳴が励起されると、反射光の強度が急激に減少するので、反射光の強度をモニターすることにより共鳴条件を確認できる。
また、金属膜が酸化されたり試料溶液と反応して劣化したりするのを防いだり、蛍光分子から金属膜への蛍光共鳴エネルギー移動を防ぐことを目的として、金属膜と試料溶液との間に誘電体被覆層が設けられることがある(特許文献1参照。)が、その誘電体被覆層は、あくまで金属膜の保護膜として設けられているものであり、膜厚も保護膜としての機能を発揮するように設定されるものである。
特開2004−61211号公報
表面プラズモン共鳴による電場の増強は金属膜の表面近くに限られ、表面から離れると急激に減衰する。そのため、試料中の被測定物質の濃度が薄い場合は感度が悪いという問題がある。
そこで、本発明は表面プラズモン共鳴により増強された電場が表面から離れても急激に減衰しないようにすることにより測定感度を高めることを目的とするものである。
本発明は、非導電性基板上に金属膜が形成され、その金属膜上に誘電体膜が形成され、その誘電体膜が試料と接する測定装置において、前記基板と金属膜との界面に表面プラズモン共鳴が起こる条件で光を入射させたとき、光入射角と誘電体膜の厚みd2の組合せの中で、光入射角θ0が誘電体膜と試料との境界面での全反射条件角に近くなるように誘電体膜の厚みd2が設定されていることを特徴とするものである。
ここで、「設定されている」とは、この測定装置を使用するときに誘電体膜の厚みd2がそのように設定されていることを意味している。本発明は誘電体膜の膜厚が可変のものも含んでいるので、非使用時においても常に上の条件に設定されていることを意味しているものではない。
本発明が導かれる過程を説明する。非導電性基板上に金属膜が形成され、その上に誘電体膜が形成され、その誘電体膜が試料と接する系を考える。金属膜の複素誘電率が
ε11'+jε1''
で表わされ、
ε1'<0 かつ ε1''<2.5
で、金属膜の膜厚d1
1<100[nm]
であるとき、光(直線偏光p波又はs波)の波長をλ、基板の誘電率をε0、基板内の入射角をθ0、波数をk0、膜厚をd0とし、金属膜の誘電率をε1、金属膜内の光の入射角θ1、波数をk1、膜厚をd1とし、誘電体膜の誘電率をε2、誘電体膜内の光の入射角をθ2、波数をk2、膜厚をd2とし、試料の誘電率をε3、波数をk3とし、フレネル係数の反射係数(金属膜から誘電体膜へ)r12、反射係数(誘電体膜から試料へ)r23の各々の偏角Arg[r12]=φ12、Arg[r23]=φ23、mを整数(m=1,2,・)、xを各材質の境界面方向、zを境界面に垂直な方向とすると、図1に示されるように、誘電体膜内の光導波条件より、光路長PQ=l1,RS=l2
2=d2/cosθ2 (1)
1=d2sinθ2(1/tanθ2- tanθ2) (2)
から、反射における位相差も含めた2回反射の位相差pdiff
diff=(k22+φ12+φ23)+k21 (3)
となる。よって誘電体膜の膜厚が(1),(2),(3)式から
<入射光p軸波のとき>
Figure 2005291966
<入射光がs波のとき>
Figure 2005291966
となるとき、プラズモン共鳴と誘電体膜の導波効果により誘電体膜と試料の境界近傍に強い電場増強が起こる。
さらに上記電場増強条件の中で光入射角と誘電体膜の厚みd2の組合せを試料内の波数k3の深さ方向成分kz3の虚数成分Imaginary(kz3)が
Figure 2005291966
となる条件を満たすように調整すると、増強された光の深さ方向への減衰を抑え、伝播距離を長くすることが可能となる。
上に述べた「全反射条件角に近く」の「近い」の程度は、上の(4)式の条件を満たすことを意味している。
本発明における、光入射角θ0と誘電体膜の厚みd2の組合せの中で、光入射角θ0が誘電体膜と試料との境界面での全反射条件角に近くなるように誘電体膜の厚みd2を設定することの意味は、図2(B)のようになるように誘電体膜の膜厚を設定することである。図2の計算結果を導いた測定装置の構造は、石英ガラス基板上に金属膜として金を50nmの厚さに形成し、その上に誘電体膜としてシリコン酸化膜(SiO2)を形成したものである。誘電体膜と接する試料として水を想定した。同図(A)は比較例で、誘電体膜の膜厚を500nmとし、図(B)は一実施例で、誘電体膜の膜厚を400nmとしたものである。それぞれについて、光入射角θ0に対する光伝播深さと光強度増強比を計算して示している。
光伝播深さは次のように計算した。増強された光の伝播深さに対する光強度増強比は次の(5)式で表わされる。
Figure 2005291966
ここで、niは光強度増強比、relは入射光の電場振幅に対する誘電体膜/試料境界での電場振幅の比、zは誘電体膜表面からの試料中への深さである。光伝播深さは光強度増強比niが1/eに減衰するときの深さzである。
図2(A),(B)の結果によれば、誘電体膜の膜厚が500nmの(A)では光入射角θ0が67.8度、光強度増強比が47倍になるが、増強された光の伝播深さは250nmにすぎない。一方、誘電体膜の膜厚が400nmの(B)では光入射角θ0が65.8度、光強度増強比が57倍で、増強された光の伝播深さは2.8μmと大きくなる。
本発明の一形態では、前記誘電体膜は膜厚の異なる複数の部分を備え、それらの部分は試料への電場増強深さが互いに異なり、少なくとも1つの部分は前記条件を満たしている。
本発明の他の形態では、前記誘電体膜は金属膜側が膜厚方向に変形可能な軟質の材質、試料側がそれより硬質の材質にてなり、前記硬質の誘電体膜には圧電素子が一体として設けられ、その圧電素子により前記軟質の誘電体膜の膜厚が可変になって前記条件を満たすことができる。
本発明のさらに他の形態では、前記誘電体膜は金属膜側が膜厚方向に変形可能な軟質の材質、試料側がそれより硬質の材質にてなり、前記硬質の誘電体膜には加圧機構が設けられ、その加圧機構により前記軟質の誘電体膜の膜厚が可変になって前記条件を満たすことができる。
本発明のさらに他の形態では、前記誘電体膜は物理的又は化学的な特性の異なる2層の誘電体膜からなっている。
本発明によれば、金属膜上に誘電体膜が形成された、表面プラズモン共鳴を利用した測定装置で、基板と金属膜との界面に表面プラズモン共鳴が起こる条件で光を入射させたとき、光入射角と誘電体膜の厚みd2の組合せの中で、光入射角θ0が誘電体膜と試料との境界面での全反射条件角に近くなるように誘電体膜の厚みd2を設定することにより、表面プラズモン共鳴により増強された電磁場が試料の深いところまで及ぶようになり、測定の感度を高めることができる。
このことを電磁場シミュレーションにより確かめた結果を図3に示す。そのシミュレーションを行なった測定装置の構造は、ガラス基板(材質はBK7)上に金属膜として銀を50nmの厚さに形成し、その上に誘電体膜としてシリコン酸化膜(SiO2)を形成したものである。誘電体膜と接する試料として水を想定した。
図3(A)は比較例であり、誘電体膜の膜厚を500nmとした。同図(B)は一実施例であり、(1)式の条件を満たすように誘電体膜の膜厚を360nmとした。同図(A)と(B)の結果を比較すると、本発明により表面プラズモン共鳴により増強された電磁場が誘電体表面から離れると減衰する程度が小さくなっている。これにより、表面プラズモン共鳴による電磁場の存在領域が広くなり、その領域に入ってくる被測定物質も多くなるため、蛍光や屈折率を測定する際の感度が向上する。
前記誘電体膜の膜厚の異なる複数の部分を備えて、それらの部分のすべて又は一部が本発明の条件を満たすようにすれば、表面プラズモン共鳴により増強された電磁場の試料側への浸透具合の異なる複数の部分を作ることができ、表面近くに存在する物質とそうでない物質の弁別が可能となる。
前記誘電体膜の膜厚を圧電素子により又は加圧機構により可変にすれば、表面プラズモン共鳴により増強された電磁場の試料側への浸透具合を変化させることができ、表面近くに存在する物質とそうでない物質の弁別が可能とする。
前記誘電体膜を物理的又は化学的な特性の異なる2層の誘電体膜からなるものとすれば、例えば、試料側の誘電体膜を化学的に丈夫な膜とすることにより腐食性試料に対して有効となるなど、適用範囲が広くなる。
図4は第1の実施例を表わし、本発明の基本的な構造を表わしたものである。非導電性基板2上に金属膜4が形成され、その上に誘電体膜6が形成されている。試料溶液8は誘電体膜6と接する。図示は省略しているが、金属膜4と反対側の基板上には光10を表面プラズモン共鳴が起こる条件で入射させるためのプリズムが配置される。他の実施例についても同様である。
この構造自体は既知のものであるが、本発明では誘電体膜6の膜厚を、表面プラズモン共鳴が起こる条件で光10を基板2と金属膜4の界面に入射させたときに(1)式を満たすように設定する。
基板2は非導電性の透明物質、例えばガラス、プラスチック、石英などを用いることができる。
金属膜2の材質は一般に銀、金、銅、アルミニウムなどの高導電率材料が好適であるがこれに限らない。ただし、入射光の波長によっては、金属の電子遷移による吸収が顕著になり表面プラズモン共鳴のエネルギー密度増強効果が小さくなるので、これを避ける必要がある。その点から銀は可視域の広い波長範囲において吸収が小さく、最も好適な材料であるといえる。
誘電体膜6の材質としては、SiO2、TiO2、Al23などの無機誘電体材料のほか、有機透明誘電体材料を用いることもできる
図5は第2の実施例を表わす。この実施例では誘電体膜6が膜厚の異なる複数の部分、この例では3種類の膜厚の部分6−1,6−2,6−3を備えている。このように膜厚を異ならせることで、少なくとも何れかの膜厚部分が本発明の条件を満たすようにすることが容易になる。入射光10の入射位置に対し、膜厚の異なる誘電体膜部分6−1〜6−3を相対的にスライドさせて位置決めすることにより、所望の膜厚部分で測定を行なうことができる。
また、誘電体膜の膜厚が異なると表面プラズモン共鳴により増強された電磁場の試料側への浸透具合も異なるので、この実施例のように誘電体膜の膜厚が異なる複数の部分で測定をすることにより、表面近くに存在する物質とそうでない物質の弁別が可能となる。
図6は第3の実施例を表わす。この実施例では、誘電体膜は金属膜4側が軟質の誘電体膜6a、試料溶液8側が硬質の誘電体膜6bからなる2層構造である。軟質の誘電体膜6aは膜厚方向に変形が可能である。硬質の誘電体膜6bと金属膜4の間には圧電素子としてピエゾ素子12が設けられており、ピエゾ素子12は電極(図示略)への電圧印加により膜厚方向の厚さを変えることができる。ピエゾ素子12の厚さの変更に伴って硬質の誘電体膜6bが変位し、軟質の誘電体膜6aの膜厚を変えることができる。
軟質の誘電体膜6aとしては、例えばポリスチレン、ポリイミドなどの光透過性樹脂を用いることができる。硬質の誘電体膜6bとしてはガラス膜などの光透過性物質を用いることができる。
図7は第4の実施例を表わす。この実施例でも図3の実施例と同様に、誘電体膜は金属膜4側が軟質の誘電体膜6a、試料溶液8側が硬質の誘電体膜6bからなる2層構造をもっている。軟質の誘電体膜6aは膜厚が可変であり、その膜厚を変えるために、基板2と硬質の誘電体膜6bを挟んで外部から加圧する加圧機構(図示略)を備えている。その加圧機構により圧力を調整することによって軟質の誘電体膜6aの膜厚を変更する。
図6及び図7の実施例では2層の誘電体膜6a,6bの両誘電体膜6a,6bの合計膜厚が本発明の条件を満たすようにすることができる。また、誘電体膜6aの膜厚を変えて測定をすることにより表面近くに存在する物質とそうでない物質の弁別が可能となる。
図8は第5の実施例を表わす。この実施例では誘電体膜は物理的又は化学的な特性の異なる2層の誘電体膜6c,6dからなっている。例えば、誘電体膜6cは石英ガラス、誘電体膜6dはBK7というような組合せである。また同じ材質であってもスパッタリングなどの製膜条件を制御することにより特性を異ならせることができる。特に、試料溶液8と接する誘電体膜6dは腐食性試料に対して化学的により安定な膜とすることが好ましい。
本発明の測定装置は、試料の屈折率や蛍光を測定する装置として、又は液体クロマトグラフやキャピラリ電気泳動などの分析装置の検出器として用いて屈折率や蛍光を介して試料成分の濃度を測定する装置として利用することができる。
誘電体膜内の光導波を示す図である。 光入射角θ0に対する光伝播深さと光強度増強比の計算結果を示す図であり、(A)は比較例、(B)は一実施例である。 表面プラズモン共鳴により増強された電磁場の及ぶ範囲を示す電磁場シミュレーション結果の図である。(A)は比較例、(B)は実施例である。 第1の実施例を示す概略断面図である。 第2の実施例を示す概略断面図である。 第3の実施例を示す概略断面図である。 第4の実施例を示す概略断面図である。 第5の実施例を示す概略断面図である。
符号の説明
2 基板
4 金属膜
6,6a,6b,6c,6d 誘電体膜
8 試料溶液
10 光
12 ピエゾ素子

Claims (5)

  1. 非導電性基板上に金属膜が形成され、その金属膜上に誘電体膜が形成され、その誘電体膜が試料と接する測定装置において、
    前記基板と金属膜との界面に表面プラズモン共鳴が起こる条件で光を入射させたとき、光入射角と誘電体膜の厚みd2の組合せの中で、光入射角θ0が誘電体膜と試料との境界面での全反射条件角に近くなるように誘電体膜の厚みd2が設定されていることを特徴とする測定装置。
  2. 前記誘電体膜は膜厚の異なる複数の部分を備え、それらの部分は試料への電場増強深さが互いに異なり、少なくとも1つの部分は前記条件を満たしている請求項1に記載の測定装置。
  3. 前記誘電体膜は金属膜側が膜厚方向に変形可能な軟質の材質、試料側がそれより硬質の材質にてなり、前記硬質の誘電体膜には圧電素子が一体として設けられ、その圧電素子により前記軟質の誘電体膜の膜厚が可変になって前記条件を満たすことができる請求項1に記載の測定装置。
  4. 前記誘電体膜は金属膜側が膜厚方向に変形可能な軟質の材質、試料側がそれより硬質の材質にてなり、前記硬質の誘電体膜には加圧機構が設けられ、その加圧機構により前記軟質の誘電体膜の膜厚が可変になって前記条件を満たすことができる請求項1に記載の測定装置。
  5. 前記誘電体膜は物理的又は化学的な特性の異なる2層の誘電体膜にてなる請求項1に記載の測定装置。
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