JPWO2020161875A1 - 燃焼システム - Google Patents

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Abstract

脱硝装置で用いられる脱硝触媒の劣化が進んでも、熱交換器の閉塞を抑制することが可能となる。燃焼システム1は、燃料を燃焼させるボイラ10と、ボイラ10において燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路L1と、排気路L1に配置され、排ガスと燃焼用空気との間で熱交換し、熱交換後の燃焼用空気をボイラ10に供給し、熱交換後の排ガスを排出する空気予熱器30とを備え、空気予熱器30の後段において、排気路L1に脱硝触媒が塗布され、この脱硝触媒は、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m2/g以上であり、200℃以下での脱硝に用いられる脱硝触媒である。

Description

本発明は、燃焼システムに関する。
石炭火力発電所では、石炭燃焼に伴い窒素酸化物が発生するが、大気汚染防止法等の規制により、その排出は一定水準以下に抑えて排出することとなっている。そこで発電所には、窒素酸化物を還元分解するために脱硝装置が設置されている。この脱硝装置には、脱硝触媒が充填されており、アンモニア(ガス)を共存させることで、高温化で還元反応を発現している。
この脱硝触媒は、300℃〜400℃の高温雰囲気下で効率的に作動するため、ボイラで燃焼した直後の、煤塵が非常に多く含まれた排ガスを脱硝する必要がある。そのため、長期間の利用により、石灰灰が経時的に触媒表面へ堆積し、触媒表面全体を覆うことで、脱硝触媒の活性が低下する。
脱硝触媒の劣化が進んだ場合、脱硝反応に必要なアンモニア投入量を増やす必要があり、アンモニア投入量が多くなると、石炭由来の硫黄分と反応し硫酸アンモニウムを生成される。この硫酸アンモニアは、脱硝装置後段の熱交換器を閉塞させ、発電所を停止しなくてはならないこともある。
この点、特許文献1は、硫酸アンモニウムによる熱交換器の閉塞を抑制するため、アンモニアの代わりにアルコールを還元剤として用いると共に、アルコールと脱硝触媒との接触により発生するアルデヒドを分解することができる排ガス処理装置を開示している。
特開2016−093758号公報
しかし、特許文献1に開示される技術は、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを処理するため、還元剤としてアルコールを用いることが可能であるが、石炭火力発電所等の火力発電所において、還元剤としてアルコールを用いることは稀である。
本発明は、とりわけ火力発電所において、脱硝装置で用いられる脱硝触媒の劣化が進んでも、熱交換器の閉塞を抑制することが可能な燃焼システムを提供することを目的とする。
本発明は、燃料を燃焼させるボイラと、前記ボイラにおいて前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、前記排気路に配置され、排ガスと燃焼用空気との間で熱交換し、熱交換後の燃焼用空気を前記ボイラに供給し、熱交換後の排ガスを排出する空気予熱器とを備え、前記空気予熱器の後段において、前記排気路に脱硝触媒が塗布され、前記脱硝触媒は、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上であり、200℃以下での脱硝に用いられる脱硝触媒である、燃焼システムに関する。
また、前記排気路の末端において、大気中に排ガスを放出する煙突を更に備え、前記脱硝触媒は、前記煙突の内部における高さ2m〜25mの箇所の前記排気路に塗布されることが好ましい。
また、前記脱硝触媒は、前記煙突の内壁に設けられたらせん状の溝に塗布されることが好ましい。
また、前記脱硝触媒は、前記煙突の内部に階段状に設けられたフィンの表面に塗布されることが好ましい。
また、本発明は、燃料を燃焼させるボイラと、前記ボイラにおいて前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、前記排気路に配置され、排ガスと燃焼用空気との間で熱交換し、熱交換後の燃焼用空気を前記ボイラに供給し、熱交換後の排ガスを排出する空気予熱器と、前記排気路の末端において、大気中に排ガスを放出する煙突とを備え、前記煙突の内部における高さ2m〜25mの箇所に、複数段の脱硝触媒層が設置され、前記脱硝触媒層には、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上であり、200℃以下での脱硝に用いられる脱硝触媒が設置される、燃焼システムに関する。
また、本発明は、前記排気路に配置され且つ前記空気予熱器の後段において、前記脱硝触媒によって前記空気予熱器から排出される排ガスから窒素酸化物を除去する第2の脱硝装置を更に備えることが好ましい。
本発明によれば、とりわけ火力発電所において、脱硝装置で用いられる脱硝触媒の劣化が進んでも、熱交換器の閉塞を抑制することが可能となる。
本発明の第1実施形態に係る燃焼システムの全体構成図である。 本発明の第1実施形態に係る燃焼システムに含まれる脱硝装置としての煙突の内部構成を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る燃焼システムに含まれる脱硝装置としての煙突の内部構成を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る燃焼システムに含まれる脱硝装置としての煙突の内部構成を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る燃焼システムに含まれる脱硝装置で用いられる脱硝触媒の構成を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る燃焼システムに含まれる脱硝装置で用いられる脱硝触媒の性質を示すグラフである。 本発明の第1実施形態に係る燃焼システムに含まれる脱硝装置で用いられる脱硝触媒の性質を示すグラフである。 本発明の第1実施形態に係る燃焼システムに含まれる脱硝装置で用いられる脱硝触媒の性質を示すグラフである。 本発明の第1実施形態に係る燃焼システムに含まれる脱硝装置で用いられる脱硝触媒の性質を示すグラフである。 本発明の第2実施形態に係る燃焼システムの全体構成図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
〔1.第1実施形態〕
〔1.1 全体構成〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃焼システム1の全体構成図である。図1に示すように、燃焼システム1は、燃焼装置としてのボイラ10と、微粉炭機20と、排気路L1と、空気予熱器30と、熱回収器としてのガスヒータ40と、集塵装置50と、誘引通風機60と、脱硫装置70と、加熱器としてのガスヒータ80と、脱硝装置としての煙突90と、を備える。
ボイラ10は、燃料としての微粉炭を空気と共に燃焼させる。ボイラ10において、微粉炭が燃焼することにより排ガスが発生する。なお、微粉炭が燃焼することによって、クリンカアッシュ及びフライアッシュ等の石炭灰が生成する。ボイラ10において生成するクリンカアッシュは、ボイラ10の下方に配置されるクリンカホッパ11に排出されてから、図示しない石炭灰回収サイロに搬送される。
ボイラ10は、全体として略逆U字状に形成される。ボイラ10において生成する排ガスは、ボイラ10の形状に沿って逆U字状に移動する。ボイラ10の排ガスの出口付近における排ガスの温度は、例えば300〜400℃である。
微粉炭機20は、図示しない石炭バンカから供給される石炭を、微細な粒度に粉砕して微粉炭を形成する。微粉炭機20は、微粉炭と空気とを混合することにより、微粉炭を予熱及び乾燥させる。微粉炭機20において形成された微粉炭は、エアーが吹きつけられることにより、ボイラ10に供給される。
排気路L1は、上流側がボイラ10に接続される。排気路L1は、ボイラ10において発生する排ガスが流通する流路である。
空気予熱器30は、排気路L1に配置される。空気予熱器30は、排ガスと図示しない押込式通風機から送り込まれる燃焼用の空気との間で熱交換を行い、排ガスから熱回収する。燃焼用の空気は、空気予熱器30において加熱されてからボイラ10に供給される。
ガスヒータ40は、排気路L1における空気予熱器30の下流側に配置される。ガスヒータ50には、空気予熱器30において熱回収された排ガスが供給される。ガスヒータ40は、排ガスから更に熱回収する。
集塵装置50は、排気路L1におけるガスヒータ40の下流側に配置される。集塵装置50には、ガスヒータ40において熱回収された排ガスが供給される。集塵装置50は、電極に電圧を印加することによって排ガス中の石炭灰(フライアッシュ)等の煤塵を収集する装置である。集塵装置50において捕集されるフライアッシュは、図示しない石炭灰回収サイロに搬送される。集塵装置50における排ガスの温度は、例えば80〜120℃である。
誘引通風機60は、排気路L1における集塵装置50の下流側に配置される。誘引通風機60は、集塵装置50において煤塵を除去した排ガスを、一次側から取り込んで二次側に送り出す。
脱硫装置70は、排気路L1における誘引通風機60の下流側に配置される。脱硫装置70には、誘引通風機60から送り出された排ガスが供給される。脱硫装置70は、排ガスから硫黄酸化物を除去する。詳しくは、脱硫装置70は、排ガスに石灰石と水との混合液(石灰石スラリー)を吹き付けることによって、排ガスに含まれる硫黄酸化物を混合液に吸収させて、排ガスから硫黄酸化物を除去する。脱硫装置70における排ガスの温度は、例えば50〜120℃である。
ガスヒータ80は、排気路L1における脱硫装置70の下流側に配置される。ガスヒータ80には、脱硫装置70において硫黄酸化物が除去された排ガスが供給される。ガスヒータ80は、排ガスを加熱する。ガスヒータ40及びガスヒータ80は、排気路L1における、空気予熱器30と集塵装置50との間を流通する排ガスと、集塵装置50と脱硫装置70との間を流通する排ガスと、の間で熱交換を行うガスガスヒータとして構成してもよい。
煙突90は、排気路L1の下流側が接続される。煙突90には、ガスヒータ80において加熱された排ガスが導入される。煙突90に導入された排ガスは、ガスヒータ80によって加熱されていることから、煙突効果によって煙突90の上部から効果的に排出される。また、ガスヒータ80において排ガスが加熱されることで、煙突90の上方において水蒸気が凝縮して白煙が生じるのを防ぐことができる。煙突90の出口付近における排ガスの温度は、例えば110℃である。
更に、本実施形態において、煙突90は、選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去する。選択接触還元法によれば、還元剤及び脱硝触媒によって窒素酸化物から窒素及び水を生成することで、排ガスから効率的に窒素酸化物を除去することができる。選択接触還元法において用いられる還元剤は、アンモニアを含む。還元剤としてアンモニアを用いる場合、アンモニアガス、液体アンモニア及びアンモニア水溶液のいずれの状態のアンモニアを用いてもよい。
より具体的には、煙突90は、導入された排ガスに対してアンモニアガスを注入してから、その混合ガスを、煙突90内部に塗布された脱硝触媒や、脱硝触媒を固定したハニカム成形体や脱硝触媒を担持させたアルミナ繊維等の繊維に接触させる構成とすることができる。
〔1.2 煙突の構成〕
図2A〜図2Cは、煙突90の内部構造を示す。
煙突90は、例えば図2Aに示されるように、煙突90の内壁にらせん状の溝91を設け、この溝91に、後述の低温脱硝触媒を塗布してもよい。あるいは、図2Bに示すように、煙突90の内壁に階段状のフィン92を設け、この溝に低温脱硝触媒を塗布してもよい。
より詳細には、上記のらせん状の溝91や階段状のフィン92を構成する耐火煉瓦に低温脱硝触媒を塗布した後、焼成することにより、煙突90の内壁を脱硝装置とすることが可能である。
通常の燃焼システムに備わる煙突では、使用年数が経過するに従って、耐火煉瓦が腐食により劣化する度合いが高くなるが、バナジウムを含む低温脱硝触媒を塗布することにより、この劣化の度合いを低くすることが可能となる。
あるいは、図2Cに示すように、煙突90の内部に、低温脱硝触媒を有するハニカム触媒を有する脱硝触媒層93を設置してもよい。この脱硝触媒層93は、一段だけ設置してもよく複数段設置してもよい。
図3は、煙突90が図2Cの構成を有する場合に、煙突90の内部に設置される脱硝触媒層93の構成図である。
脱硝触媒層93は、図3に示すように、例として、脱硝触媒としての複数のハニカム触媒932を含んで構成される。より詳細には、脱硝触媒層93は、複数のケーシング931と、これら複数のケーシング931に収容される複数のハニカム触媒932と、シール部材933と、を備える。
ケーシング931は、一端及び他端が開放された角筒状の金属部材により構成される。ケーシング931は、開放された一端及び他端が煙突90における排ガスの流路に向かい合うように、つまり、ケーシング931の内部を排ガスが流通するように配置される。また、複数のケーシング931は、煙突90における排ガスの流路を塞ぐように当接した状態で連結されて配置される。
ハニカム触媒932は、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴934が形成された長尺状(直方体状)に形成される。複数のハニカム触媒932は、排ガス流通穴934の延びる方向が排ガスの流路に沿うように配置される。本実施形態では、複数のハニカム触媒932は、ケーシング931に収容された状態で煙突90の内部に配置される。
シール部材933は、短手方向に隣り合って配置されるハニカム触媒932の間に配置され、隣り合って配置されるハニカム触媒932の間の隙間に排ガスが流入することを防ぐ。本実施形態では、シール部材933は、導電性を有するシート状部材により構成され、ハニカム触媒932の長手方向の一端側及び他端側の所定の長さの部分(例えば、端部から150mm)に巻きつけられている。
シール部材933としては、アルミナやシリカを主成分とした無機繊維及びバインダーに導電性繊維や導電性を有するフィラーを混合して構成したセラミックペーパを用いることができる。
以上の脱硝触媒層93において、ハニカム触媒932としては、例えば、150mm×150mm×860mmの直方体形状で目開き6mm×6mmの排ガス流通穴が400個(20×20)形成されたものが用いられる。また、ケーシング931としては、このハニカム触媒932を72本(縦6本×横12本)収容可能なものが用いられる。そして、一層の脱硝触媒層93には、このケーシング931が120〜150個用いられる。即ち、一層の脱硝触媒層93には、9000本から10000本のハニカム触媒932が設置される。
なお、発電所の煙突の高さは、一般的に200m前後であるため、なるべく低い位置に脱硝触媒を塗布したり、脱硝触媒を設置したりする方が、メンテナンスをする上でも好ましい。
らせん状の溝91や階段状のフィン92の脱硝触媒を塗布する場合、煙突の最下部から最上部まで塗布することも可能ではあるが、触媒量が多くなるとコストがかさむため、最下部から、排ガス量に伴う必要な触媒量が確保できるまでの高さに塗布するとよい。また、脱硝触媒を塗布したハニカム触媒を積み増す場合には、煙突内における高さ2m〜25mまでの箇所に、脱硝触媒を塗布したハニカム触媒を有する脱硝触媒層を設置すればよい。これは、ハニカム触媒は長くても1m程度であると共に、脱硝触媒層同士の間の隙間は高くても3m程度であり、この脱硝触媒層が5層設置されることを想定している。
また、図示はしないが、煙突90において、低温脱硝触媒を塗布したり、脱硝触媒層93を設置したりする箇所の下方に、還元剤としてのアンモニアを注入するアンモニア注入部を設置する。
〔1.3 低温脱硝触媒〕
煙突90内で用いられる脱硝触媒としては、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上であり、200℃以下での脱硝に用いられる脱硝触媒を用いる。
出願人は、この脱硝触媒の国際出願として、平成28年9月12日にPCT/JP2016/076870を出願し、国内移行後、平成29年2月17日に特許6093101号として特許査定を受けた。以下、この脱硝触媒の概略について説明する。
図4〜図7は、上記の特許6093101号の特許公報で開示されるグラフを引用し、各々のグラフにおいてプロットされた点の呼び名を変更したものである。
なお、図4〜図7のグラフにおいて、実施例1〜3、比較例1〜5の各々のバナジウム触媒は、以下の方法により調整された。
[実施例1〜3、比較例1〜2]
バナジン酸アンモニウムをシュウ酸溶液に溶解させた(バナジウム:シュウ酸のモル比=1:2〜1:4)。全て溶かしきった後、ホットスターラー上で溶液中の水分を蒸発させ、乾燥機中において、120℃で一晩乾燥させた。その後、乾燥後の粉末を空気中において300℃で4時間焼成した。
それらのサンプル名を、各々、“V_SG_1:1”(比較例1),“V_SG_1:2”(実施例1),“V_SG_1:3”(実施例2),“V_SG_1:4”(実施例3),“V_SG_1:5”(比較例2)とした。
[比較例3]
バナジン酸アンモニウム(NHVO)を、空気中において300℃で4時間熱分解することにより得られた五酸化バナジウム(V)を、比較例3の脱硝触媒とした。なお、この比較例3の脱硝触媒のサンプル名を、“V_300”とした。
[比較例4]
バナジン酸アンモニウムを、空気中において400℃で4時間熱分解することにより得られた五酸化バナジウムを、比較例4の脱硝触媒とした。なお、この比較例4の脱硝触媒のサンプル名を、“V_400”とした。
[比較例5]
バナジン酸アンモニウムを、空気中において500℃で4時間熱分解することにより得られた五酸化バナジウムを、比較例5の脱硝触媒とした。なお、この比較例5の脱硝触媒のサンプル名を、“V_500”とした。
図4に、V_SG触媒のNH−SCR活性を示す。図4(a)は、各触媒を用いたNH−SCR反応における、反応温度毎のNO転化率を示す。また、図4(b)は、反応温度120℃におけるバナジウム:シュウ酸の比率とNO転化率の関係を示す。バナジウム:シュウ酸の比率が1:3の触媒である実施例2(V_SG_1:3)において、NO転化率が最も高くなり、それ以上シュウ酸を加えると、NO転化率は減少した。実施例3(V_SG_1:4)は、実施例1(V_SG_1:2)よりも比表面積が大きいにもかかわらず、NO転化率が低かった。
図5に、実施例1〜3、比較例1の各V_SG、及び、上記の比較例3(V_300),比較例4(V_400),比較例5(V_500)における、BET比表面積とNO転化率との関係を示す。なお、四角の点で示されるプロットは、実施例2(V_SG_1:3)の、選択的触媒還元反応後におけるBET比表面積とNO転化率との関係を示す。上記の繰り返しとなるが、バナジウム:シュウ酸の比率が1:3の触媒である実施例2(V_SG_1:3)において、NO転化率が最も高くなることが示された。
NH−TPD(TPD:昇温脱離プログラム)により、触媒表面の酸点の量を見積もることが出来る。そこで、マイクロトラックベル社製のベルキャットを用い、装置中で、比較例3(V_300)、比較例4(V_400)、比較例5(V_500)、実施例1(V_SG_1:2)、実施例2(V_SG_1:3)の各触媒0.1gを、He(50ml/min)流通下300℃にて1時間前処理した。その後、100℃に下げ、5%アンモニア/He(50ml/min)を30分流通させ、アンモニアを吸着した。流通ガスをHe(50ml/min)に切り替え、30分の安定化の後、10℃/minで昇温し、質量数16のアンモニアを質量分析計にてモニターした。
Figure 2020161875
比較例3(V_300)、比較例4(V_400)、比較例5(V_500)、実施例1(V_SG_1:2)、実施例2(V_SG_1:3)各々を用いた場合の、NH脱離量の測定結果を表1に示す。
これらのNH脱離量の値と、各々の触媒のBET比表面積とをプロットすると、図6のグラフが得られる。この図6のグラフからも分かるように、VのBET比表面積にほぼ比例して、NH脱離量が大きくなることが示された。また、各触媒のNH脱離量とNO転化率との対応関係をプロットすると、図7のグラフが得られた。即ち、NH脱離量=触媒表面の酸点の量が大きい触媒ほど、NO転化率が高くなることが示された。
以上のように、酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上である脱硝触媒を用いた、アンモニアを還元剤とする選択的触媒還元反応においては、200℃以下の低温での脱硝効率が高い。一方で、SOの酸化は認められない。
煙突90では、酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上である脱硝触媒を用いることにより、排ガスの温度が、例えば100〜200℃であっても、高い脱硝効果を発揮することが出来る。
なお、例として、煙突90の内部に上記の低温脱硝触媒を塗布する態様について記載したが、これには限定されない。上記の低温脱硝触媒は、煙突90の内部に限らず、例えば、空気予熱器30の後段における排気路L1の内壁に塗布されてもよい。この場合、排気路L1中の低温脱硝触媒の塗布箇所の前段に、アンモニア注入器を設ける必要がある。
〔1.4 第1の実施形態による効果〕
以上、説明したように構成された第1の実施形態に係る燃焼システム1は、ボイラ10において燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路L1中、空気予熱器30の後段において、脱硝触媒が塗布され、この脱硝触媒は、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上であり、200℃以下での脱硝に用いられる脱硝触媒である。
これにより、排気路L1に塗布される脱硝触媒の劣化が進んでも、硫酸アンモニアによる空気予熱器30の閉塞が抑制される。
また、排気路L1に塗布される脱硝触媒は、煙突90の内部における高さ2m〜25mの箇所の排気路L1に塗布されてもよい。
これにより、煙突90内においてより効率的に、排ガスから窒素酸化物を除去することができると共に、なるべく低い箇所に脱硝触媒を塗布することにより、塗布する際、及びメンテナンスをする際の作業性が良くなる。
また、上記の脱硝触媒は、煙突90の内壁に設けられたらせん状の溝91に塗布される。
煙突の内壁を構成する耐火煉瓦にバナジウムを含む脱硝触媒を塗布することにより、耐火煉瓦の腐食を抑制することが可能となる。
更に、煙突90の内部にらせん状の溝91を設けることにより、単に排ガスから窒素酸化物を除去するだけではなく、圧力損失を小さくすることが可能となる。
また、脱硝触媒は、煙突90の内部に階段状に設けられたフィン92の表面に塗布されてもよい。
また、煙突90の内部に複数段の脱硝触媒層93が設置されてもよい。
火力発電所が例えば離島に建設されたために、排ガスを放出する高さの規制がなく、排ガスの放出箇所が低くてもよい場合に、煙突90の内部に設置されるフィン92の表面に脱硝触媒層を塗布したり、複数段の脱硝触媒層93を設置したりすることにより、短い時間に排ガスとの接触面積を増やすことで、効率よく脱硝することが可能となる。
〔2.第2実施形態〕
〔2.1 全体構成〕
図8は、本発明の第2の実施形態に係る燃焼システム1Aの全体構成図である。なお、以下では説明を分かりやすくするため、主として、第2の実施形態に係る燃焼システム1Aが、第1の実施形態に係る燃焼システム1と異なる点について説明する。
図8に示されるように、燃焼システム1Aは、燃焼システム1が備える装置や設備に加え、排気路L1において集塵装置50の下流に、第2の脱硝装置100を備える。第2の脱硝装置100における排ガスの温度は、例えば130〜200℃である。
第2の脱硝装置100は、煙突90と同様に、選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去する。また、第2の脱硝装置100では、煙突90で用いられるのと同一の低温脱硝触媒が用いられると共に、第2の脱硝装置において用いられる還元剤は、アンモニアを含む。還元剤としてアンモニアを用いる場合、アンモニアガス、液体アンモニア及びアンモニア水溶液のいずれの状態のアンモニアを用いてもよい。
また、第2の脱硝装置100は、図示を省略するがその内部構成として、煙突90の図2Cに示す例と同様に、脱硝触媒として複数のハニカム触媒を含む複数段の脱硝触媒層を有する。
燃焼システム1Aにおいては、第2の脱硝装置100で除去しきれない窒素酸化物を、煙突90で除去する。この場合、煙突90内に塗布される脱硝触媒の量や、設置される脱硝触媒層の設置量は、第2の脱硝装置100で除去しきれない窒素酸化物の量に応じた塗布量や設置量でよい。
なお、第2の脱硝装置100の設置場所は、集塵装置50の直後に限定されず、空気予熱器30よりも下流であれば、場所を問わない。
〔2.2 第2の実施形態による効果〕
以上、説明したように構成された第2の実施形態に係る燃焼システム1Aにおいては、第1の実施形態に係る燃焼システム1が有する装置や設備に加えて、空気予熱器30の下流に、排ガスから窒素酸化物を除去する第2の脱硝装置100を更に備える。
これにより、燃焼システム1Aにおいては、燃焼システム1と同様に、脱硝触媒の劣化が進んでも、硫酸アンモニアによる空気予熱器30の閉塞が抑制される。更に、第2の脱硝装置100が備わることにより、煙突90内に塗布される脱硝触媒の量や、設置される脱硝触媒層の設置量を節約することが可能となる。
1 1A 燃焼システム
10 ボイラ
20 微粉炭機
30 空気予熱器
40 ガスヒータ
50 集塵装置
60 誘引通風機
70 脱硫装置
80 ガスヒータ
90 煙突
100 脱硝装置

Claims (6)

  1. 燃料を燃焼させるボイラと、
    前記ボイラにおいて前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、
    前記排気路に配置され、排ガスと燃焼用空気との間で熱交換し、熱交換後の燃焼用空気を前記ボイラに供給し、熱交換後の排ガスを排出する空気予熱器とを備え、
    前記空気予熱器の後段において、前記排気路に脱硝触媒が塗布され、
    前記脱硝触媒は、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上であり、200℃以下での脱硝に用いられる脱硝触媒である、燃焼システム。
  2. 前記排気路の末端において、大気中に排ガスを放出する煙突を更に備え、
    前記脱硝触媒は、前記煙突の内部における高さ2m〜25mの箇所の前記排気路に塗布される、請求項1に記載の燃焼システム。
  3. 前記脱硝触媒は、前記煙突の内壁に設けられたらせん状の溝に塗布される、請求項2に記載の燃焼システム。
  4. 前記脱硝触媒は、前記煙突の内部に階段状に設けられたフィンの表面に塗布される、請求項2に記載の燃焼システム。
  5. 燃料を燃焼させるボイラと、
    前記ボイラにおいて前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、
    前記排気路に配置され、排ガスと燃焼用空気との間で熱交換し、熱交換後の燃焼用空気を前記ボイラに供給し、熱交換後の排ガスを排出する空気予熱器と、
    前記排気路の末端において、大気中に排ガスを放出する煙突とを備え、
    前記煙突の内部における高さ2m〜25mの箇所に、複数段の脱硝触媒層が設置され、
    前記脱硝触媒層には、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上であり、200℃以下での脱硝に用いられる脱硝触媒が設置される、燃焼システム。
  6. 前記排気路に配置され且つ前記空気予熱器の後段において、前記脱硝触媒によって前記空気予熱器から排出される排ガスから窒素酸化物を除去する第2の脱硝装置を更に備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃焼システム。
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