JPWO2020158946A1 - 改変フィブロイン溶液、及び改変フィブロイン成形体の製造方法 - Google Patents

改変フィブロイン溶液、及び改変フィブロイン成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明の一側面は、改変フィブロインと、含フッ素溶媒と、水と、を含み、水の含有量が、改変フィブロイン溶液全量に対して0.5質量%以上15質量%以下である、改変フィブロイン溶液に関する。

Description

本発明は、改変フィブロイン溶液、及び改変フィブロイン成形体の製造方法に関する。
各種産業分野において、将来的に利用価値の高い新素材としてフィブロインに関心が寄せられている。フィブロインを用いた成形体として、繊維、フィルム等が知られている。このようなフィブロイン成形体は、例えば、繊維であれば、使用目的に応じて、細径の繊維が求められる場合がある。細径のフィブロイン繊維の製造方法も多数報告されている。
細径のフィブロイン繊維の製造方法としては、例えば、精錬後の蚕絹フィブロインを透析して濃縮した蚕絹フィブロイン水溶液に、2−モルホリノエタンスルホン酸−トリスヒドロキシメチルアミノメタン緩衝液と塩化カルシウム水溶液を添加したドープ液を、シリンジに接続した毛細管から気中に吐出させて、繊維を形成させた後、さらにアルコール水溶液中で繊維を延伸及び含浸処理することで、直径5.7μmの繊維を得る方法(非特許文献1)が報告されている。
また、例えば、上述のドープ液を、マイクロ流体装置を用いて繊維形成させ、さらにアルコール水溶液中で繊維を延伸及び含浸処理することで、直径2μmの繊維を得る方法(非特許文献2)が報告されている。
また、例えば、クモ糸フィブロインのドープ液を、電圧をかけた口金からエレクトロスピニングにより吐出させることで、平均直径が1μm以下の繊維を得る方法(特許文献1)が報告されている。
特開2013−96037号公報
Weiwei et al, JMR, vol .26, Issue 9, 14 May 2011, pp.1100-1106 J. Luoet al, International Journal of Biological Macromolecules, 66, 2014, pp.319-324
しかしながら、上記先行技術文献に開示される製造方法は、十分に細径のフィブロイン繊維を得るために特殊な器具又は装置を必要としたり、多くの工程を必要としたりする。
したがって、本発明は、簡便な方法によって細径のフィブロイン繊維を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
(1) 改変フィブロインと、含フッ素溶媒と、水と、を含み、水の含有量が、改変フィブロイン溶液全量に対して0.5質量%以上15質量%以下である、改変フィブロイン溶液。
(2)水の含有量が、改変フィブロイン溶液全量に対して0.5質量%以上13質量%以下である、(1)に記載の改変フィブロイン溶液。
(3) 含フッ素溶媒が、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロアセトン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、2,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール及び4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)又は(2)に記載の改変フィブロイン溶液。
(4) 含フッ素溶媒が、ヘキサフルオロイソプロパノールである、(1)〜(3)のいずれかに記載の改変フィブロイン溶液。
(5) 改変フィブロインがクモ糸フィブロインである、(1)〜(4)のいずれかに記載の改変フィブロイン溶液。
(6) 改変フィブロインの含有量が、改変フィブロイン溶液全量に対して40質量%以下である、(1)〜(5)のいずれかに記載の改変フィブロイン溶液。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の改変フィブロイン溶液を用いて改変フィブロインを含む成形体を成形する工程を備える、改変フィブロイン成形体の製造方法。
(8) 成形体が繊維である、(7)に記載の製造方法。
(9) 成形体を成形する方法が乾式紡糸法である、(8)に記載の製造方法。
(10) 乾式紡糸法におけるドラフトが10倍超である、(9)に記載の製造方法。
本発明の改変フィブロイン溶液を用いることによって、特殊な器具又は装置、及び多くの工程を必要とせず、細径のフィブロイン繊維を簡便に製造することが可能となる。
改変フィブロインのドメイン配列の一例を示す模式図である。 天然由来のフィブロインのz/w(%)の値の分布を示す図である。 天然由来のフィブロインのx/y(%)の値の分布を示す図である。 改変フィブロインのドメイン配列の一例を示す模式図である。 改変フィブロインのドメイン配列の一例を示す模式図である。 試験例1,2の改変フィブロイン溶液のCDスペクトルである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
〔改変フィブロイン溶液〕
本実施形態の改変フィブロイン溶液(ドープ液とも呼ばれる)は、改変フィブロインと、含フッ素溶媒と、水とを含有する。
含フッ素溶媒は、構成原子としてフッ素原子を有する化合物であって、改変フィブロインを溶解し得る化合物である。含フッ素溶媒は、例えば、25℃において、3質量%以上の改変フィブロインを溶解し得る化合物であってよい。
含フッ素溶媒は、例えば、構成原子として、フッ素原子、炭素原子、水素原子及び酸素原子を有する化合物であってよい。このような含フッ素溶媒は、例えば、アルコール(例えば脂肪族アルコール又は芳香族アルコール)における炭化水素基中の水素原子の少なくとも一つがフッ素原子で置換されたフッ素置換アルコールであってよく、ケトンにおける炭化水素基中の水素原子の少なくとも一つがフッ素原子で置換されたフッ素置換ケトンであってもよい。これらの含フッ素溶媒におけるフッ素原子の数は、改変フィブロインの溶解性がより良好であるとの観点から、好ましくは、3つ以上、4つ以上、5つ以上、又は6つ以上であり、例えば8以下であってもよい。
フッ素置換アルコールとしては、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、2,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノール、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノール、及びペンタフルオロベンジルアルコール等が挙げられる。フッ素置換ケトンとしては、例えば、ヘキサフルオロアセトン(HFA)等が挙げられる。これらの含フッ素溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
含フッ素溶媒は、改変フィブロインの溶解性がより良好であるとの観点からは、好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、ヘキサフルオロアセトン(HFA)、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、2,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、及び4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノールであり、より好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロアセトン、及び2,2,2−トリフルオロエタノールであり、更に好ましくはヘキサフルオロイソプロパノールである。
含フッ素溶媒の含有量は、改変フィブロイン溶液全量に対して、例えば、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上又は65質量%以上であってよく、例えば、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下であってもよい。
水は、例えば、純水、蒸留水、超純水等であってよい。改変フィブロイン溶液が水を含有することにより、改変フィブロイン溶液(改変フィブロイン)中のαヘリックス構造の割合が増加し得る。そして、αヘリックス構造の割合が増加すると、細径の改変フィブロイン繊維が得られやすくなると考えられる。
水の含有量は、改変フィブロイン溶液全量に対して、αヘリックス構造の割合が増加し、細径の改変フィブロイン繊維が得られやすくなるという効果の観点から、0.5質量%以上であり、当該効果が更に好適に得られる観点から、好ましくは、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1質量%以上、1.1質量%以上、1.2質量%以上、1.3質量%以上、1.4質量%以上、1.5質量%以上、1.6質量%以上、1.7質量%以上、1.8質量%以上、1.9質量%以上、2質量%以上、2.1質量%以上、2.2質量%以上、2.3質量%以上、2.4質量%以上、2.5質量%以上、2.6質量%以上、2.7質量%以上、2.8質量%以上、2.9質量%以上、3質量%以上、3.1質量%以上、3.2質量%以上、3.3質量%以上、3.4質量%以上、3.5質量%以上、4質量%以上、4.5質量%以上、5質量%以上、5.5質量%以上、6質量%以上、6.5質量%以上、又は7質量%以上である。
水の含有量は、改変フィブロイン溶液全量に対して、改変フィブロインを含フッ素溶媒に好適に溶解させ、細径の改変フィブロイン繊維が得られやすくなるという効果の観点から、15質量%以下であり、14.5質量%以下、14質量%以下、13.5質量%以下、13質量%以下、12.5質量%以下、12質量%以下、11.5質量%以下、11質量%以下、10.5質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
水の含有量は、改変フィブロイン溶液全量に対して、上述の効果が得られる観点から、0.5質量%以上15質量%以下であり、上述の効果が更に得られやすくなる観点から、0.5質量%以上14.5質量%以下、0.5質量%以上14質量%以下、0.5質量%以上13.5質量%以下、0.5質量%以上13質量%以下、0.5質量%以上12.5質量%以下、0.5質量%以上12質量%以下、0.5質量%以上11.5質量%以下、0.5質量%以上11質量%以下、0.5質量%以上10.5質量%以下、又は0.5質量%以上10質量%以下であってよく、
0.6質量%以上15質量%以下、0.6質量%以上14.5質量%以下、0.6質量%以上14質量%以下、0.6質量%以上13.5質量%以下、0.6質量%以上13質量%以下、0.6質量%以上12.5質量%以下、0.6質量%以上12質量%以下、0.6質量%以上11.5質量%以下、0.6質量%以上11質量%以下、0.6質量%以上10.5質量%以下、又は0.6質量%以上10質量%以下であってよく、
0.7質量%以上15質量%以下、0.7質量%以上14.5質量%以下、0.7質量%以上14質量%以下、0.7質量%以上13.5質量%以下、0.7質量%以上13質量%以下、0.7質量%以上12.5質量%以下、0.7質量%以上12質量%以下、0.7質量%以上11.5質量%以下、0.7質量%以上11質量%以下、0.7質量%以上10.5質量%以下、又は0.7質量%以上10質量%以下であってよく、
0.8質量%以上15質量%以下、0.8質量%以上14.5質量%以下、0.8質量%以上14質量%以下、0.8質量%以上13.5質量%以下、0.8質量%以上13質量%以下、0.8質量%以上12.5質量%以下、0.8質量%以上12質量%以下、0.8質量%以上11.5質量%以下、0.8質量%以上11質量%以下、0.8質量%以上10.5質量%以下、又は0.8質量%以上10質量%以下であってよく、
0.9質量%以上15質量%以下、0.9質量%以上14.5質量%以下、0.9質量%以上14質量%以下、0.9質量%以上13.5質量%以下、0.9質量%以上13質量%以下、0.9質量%以上12.5質量%以下、0.9質量%以上12質量%以下、0.9質量%以上11.5質量%以下、0.9質量%以上11質量%以下、0.9質量%以上10.5質量%以下、又は0.9質量%以上10質量%以下であってよく、
1質量%以上15質量%以下、1質量%以上14.5質量%以下、1質量%以上14質量%以下、1質量%以上13.5質量%以下、1質量%以上13質量%以下、1質量%以上12.5質量%以下、1質量%以上12質量%以下、1質量%以上11.5質量%以下、1質量%以上11質量%以下、1質量%以上10.5質量%以下、又は1質量%以上10質量%以下であってよく、
1.5質量%以上15質量%以下、1.5質量%以上14.5質量%以下、1.5質量%以上14質量%以下、1.5質量%以上13.5質量%以下、1.5質量%以上13質量%以下、1.5質量%以上12.5質量%以下、1.5質量%以上12質量%以下、1.5質量%以上11.5質量%以下、1.5質量%以上11質量%以下、1.5質量%以上10.5質量%以下、又は1.5質量%以上10質量%以下であってよく、
2質量%以上15質量%以下、2質量%以上14.5質量%以下、2質量%以上14質量%以下、2質量%以上13.5質量%以下、2質量%以上13質量%以下、2質量%以上12.5質量%以下、2質量%以上12質量%以下、2質量%以上11.5質量%以下、2質量%以上11質量%以下、2質量%以上10.5質量%以下、又は2質量%以上10質量%以下であってよく、
2.5質量%以上15質量%以下、2.5質量%以上14.5質量%以下、2.5質量%以上14質量%以下、2.5質量%以上13.5質量%以下、2.5質量%以上13質量%以下、2.5質量%以上12.5質量%以下、2.5質量%以上12質量%以下、2.5質量%以上11.5質量%以下、2.5質量%以上11質量%以下、2.5質量%以上10.5質量%以下、又は2.5質量%以上10質量%以下であってよく、
3質量%以上15質量%以下、3質量%以上14.5質量%以下、3質量%以上14質量%以下、3質量%以上13.5質量%以下、3質量%以上13質量%以下、3質量%以上12.5質量%以下、3質量%以上12質量%以下、3質量%以上11.5質量%以下、3質量%以上11質量%以下、3質量%以上10.5質量%以下、又は3質量%以上10質量%以下であってよく、
3.5質量%以上15質量%以下、3.5質量%以上14.5質量%以下、3.5質量%以上14質量%以下、3.5質量%以上13.5質量%以下、3.5質量%以上13質量%以下、3.5質量%以上12.5質量%以下、3.5質量%以上12質量%以下、3.5質量%以上11.5質量%以下、3.5質量%以上11質量%以下、3.5質量%以上10.5質量%以下、又は3.5質量%以上10質量%以下であってよく、
4質量%以上15質量%以下、4質量%以上14.5質量%以下、4質量%以上14質量%以下、4質量%以上13.5質量%以下、4質量%以上13質量%以下、4質量%以上12.5質量%以下、4質量%以上12質量%以下、4質量%以上11.5質量%以下、4質量%以上11質量%以下、4質量%以上10.5質量%以下、又は4質量%以上10質量%以下であってよく、
4.5質量%以上15質量%以下、4.5質量%以上14.5質量%以下、4.5質量%以上14質量%以下、4.5質量%以上13.5質量%以下、4.5質量%以上13質量%以下、4.5質量%以上12.5質量%以下、4.5質量%以上12質量%以下、4.5質量%以上11.5質量%以下、4.5質量%以上11質量%以下、4.5質量%以上10.5質量%以下、又は4.5質量%以上10質量%以下であってよく、
5質量%以上15質量%以下、5質量%以上14.5質量%以下、5質量%以上14質量%以下、5質量%以上13.5質量%以下、5質量%以上13質量%以下、5質量%以上12.5質量%以下、5質量%以上12質量%以下、5質量%以上11.5質量%以下、5質量%以上11質量%以下、5質量%以上10.5質量%以下、又は5質量%以上10質量%以下であってよい。
改変フィブロイン溶液は、含フッ素溶媒及び水以外のその他の溶媒を更に含有してもよい。その他の溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロパノール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等のアルコール;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン;並びに、プロピオン酸、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ジクロロメタン及びトルエンなどの有機溶媒であってよい。その他の溶媒は、含フッ素溶媒を好適に回収できる観点から、好ましくは、含フッ素溶媒との沸点の差が±5℃以上の沸点を有する溶媒である。
その他の溶媒の含有量は、水とその他の溶媒との合計量100質量部に対して、好ましくは、45質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下、又は5質量部以下である。言い換えれば、改変フィブロイン溶液がその他の溶媒を含有する場合、水の含有量は、水とその他の溶媒との合計量100質量部に対して、好ましくは、55質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、90質量部以上、又は95質量部以上である。
改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。改変フィブロインは、ドメイン配列のN末端側及びC末端側のいずれか一方又は両方に更にアミノ酸配列(N末端配列及びC末端配列)が付加されていてもよい。N末端配列及びC末端配列は、これに限定されるものではないが、典型的には、フィブロインに特徴的なアミノ酸モチーフの反復を有さない領域であり、100残基程度のアミノ酸からなる。
本明細書において「改変フィブロイン」とは、人為的に製造されたフィブロイン(人造フィブロイン)を意味する。改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列とは異なるフィブロインであってもよく、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列と同一であるフィブロインであってもよい。本明細書でいう「天然由来のフィブロイン」もまた、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。
「改変フィブロイン」は、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列をそのまま利用したものであってもよく、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列に依拠してそのアミノ酸配列を改変したもの(例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列を改変することによりアミノ酸配列を改変したもの)であってもよく、また天然由来のフィブロインに依らず人工的に設計及び合成したもの(例えば、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより所望のアミノ酸配列を有するもの)であってもよい。
本明細書において「ドメイン配列」とは、フィブロイン特有の結晶領域(典型的には、アミノ酸配列の(A)モチーフに相当する。)と非晶領域(典型的には、アミノ酸配列のREPに相当する。)を生じるアミノ酸配列であり、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるアミノ酸配列を意味する。ここで、(A)モチーフは、アラニン残基を主とするアミノ酸配列を示し、アミノ酸残基数は2〜27である。(A)モチーフのアミノ酸残基数は、2〜20、4〜27、4〜20、8〜20、10〜20、4〜16、8〜16、又は10〜16の整数であってよい。また、(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は40%以上であればよく、60%以上、70%以上、80%以上、83%以上、85%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%(アラニン残基のみで構成されることを意味する。)であってもよい。ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフは、少なくとも7つがアラニン残基のみで構成されてもよい。REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。REPは、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列であってもよい。mは2〜300の整数を示し、10〜300の整数であってもよい。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。
改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列に対し、例えば、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行うことで得ることができる。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加は、部分特異的突然変異誘発法等の当業者に周知の方法により行うことができる。具体的には、Nucleic Acid Res.10,6487(1982)、Methods in Enzymology,100,448(1983)等の文献に記載されている方法に準じて行うことができる。
天然由来のフィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質であり、具体的には、例えば、昆虫又はクモ類が産生するフィブロインが挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインとしては、例えば、ボンビックス・モリ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、天蚕(Antheraea yamamai)、柞蚕(Anteraea pernyi)、楓蚕(Eriogyna pyretorum)、蓖蚕(Pilosamia Cynthia ricini)、樗蚕(Samia cynthia)、栗虫(Caligura japonica)、チュッサー蚕(Antheraea mylitta)、ムガ蚕(Antheraea assama)等のカイコが産生する絹タンパク質、及びスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)の幼虫が吐出するホーネットシルクタンパク質が挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインのより具体的な例としては、例えば、カイコ・フィブロインL鎖(GenBankアクセッション番号M76430(塩基配列)、及びAAA27840.1(アミノ酸配列))が挙げられる。
クモ類が産生するフィブロインとしては、例えば、オニグモ、ニワオニグモ、アカオニグモ、アオオニグモ及びマメオニグモ等のオニグモ属(Araneus属)に属するクモ、ヤマシロオニグモ、イエオニグモ、ドヨウオニグモ及びサツマノミダマシ等のヒメオニグモ属(Neoscona属)に属するクモ、コオニグモモドキ等のコオニグモモドキ属(Pronus属)に属するクモ、トリノフンダマシ及びオオトリノフンダマシ等のトリノフンダマシ属(Cyrtarachne属)に属するクモ、トゲグモ及びチブサトゲグモ等のトゲグモ属(Gasteracantha属)に属するクモ、マメイタイセキグモ及びムツトゲイセキグモ等のイセキグモ属(Ordgarius属)に属するクモ、コガネグモ、コガタコガネグモ及びナガコガネグモ等のコガネグモ属(Argiope属)に属するクモ、キジロオヒキグモ等のオヒキグモ属(Arachnura属)に属するクモ、ハツリグモ等のハツリグモ属(Acusilas属)に属するクモ、スズミグモ、キヌアミグモ及びハラビロスズミグモ等のスズミグモ属(Cytophora属)に属するクモ、ゲホウグモ等のゲホウグモ属(Poltys属)に属するクモ、ゴミグモ、ヨツデゴミグモ、マルゴミグモ及びカラスゴミグモ等のゴミグモ属(Cyclosa属)に属するクモ、及びヤマトカナエグモ等のカナエグモ属(Chorizopes属)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質、並びにアシナガグモ、ヤサガタアシナガグモ、ハラビロアシダカグモ及びウロコアシナガグモ等のアシナガグモ属(Tetragnatha属)に属するクモ、オオシロカネグモ、チュウガタシロカネグモ及びコシロカネグモ等のシロカネグモ属(Leucauge属)に属するクモ、ジョロウグモ及びオオジョロウグモ等のジョロウグモ属(Nephila属)に属するクモ、キンヨウグモ等のアズミグモ属(Menosira属)に属するクモ、ヒメアシナガグモ等のヒメアシナガグモ属(Dyschiriognatha属)に属するクモ、クロゴケグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ及びジュウサンボシゴケグモ等のゴケグモ属(Latrodectus属)に属するクモ、及びユープロステノプス属(Euprosthenops属)に属するクモ等のアシナガグモ科(Tetragnathidae科)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質が挙げられる。スパイダーシルクタンパク質としては、例えば、MaSp(MaSp1及びMaSp2)、ADF(ADF3及びADF4)等の牽引糸タンパク質、MiSp(MiSp1及びMiSp2)等が挙げられる。
クモ類が産生するスパイダーシルクタンパク質のより具体的な例としては、例えば、fibroin−3(adf−3)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47010(アミノ酸配列)、U47855(塩基配列))、fibroin−4(adf−4)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47011(アミノ酸配列)、U47856(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 1[Nephila clavipes由来](GenBankアクセッション番号AAC04504(アミノ酸配列)、U37520(塩基配列))、major ampullate spidroin 1[Latrodectus hesperus由来](GenBankアクセッション番号ABR68856(アミノ酸配列)、EF595246(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 2[Nephila clavata由来](GenBankアクセッション番号AAL32472(アミノ酸配列)、AF441245(塩基配列))、major ampullate spidroin 1[Euprosthenops australis由来](GenBankアクセッション番号CAJ00428(アミノ酸配列)、AJ973155(塩基配列))、及びmajor ampullate spidroin 2[Euprosthenops australis](GenBankアクセッション番号CAM32249.1(アミノ酸配列)、AM490169(塩基配列))、minor ampullate silk protein 1[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14589.1(アミノ酸配列))、minor ampullate silk protein 2[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14591.1(アミノ酸配列))、minor ampullate spidroin−like protein[Nephilengys cruentata](GenBankアクセッション番号ABR37278.1(アミノ酸配列)等が挙げられる。
天然由来のフィブロインのより具体的な例としては、更に、NCBI GenBankに配列情報が登録されているフィブロインを挙げることができる。例えば、NCBI GenBankに登録されている配列情報のうちDIVISIONとしてINVを含む配列の中から、DEFINITIONにspidroin、ampullate、fibroin、「silk及びpolypeptide」、又は「silk及びprotein」がキーワードとして記載されている配列、CDSから特定のproductの文字列、SOURCEからTISSUE TYPEに特定の文字列の記載された配列を抽出することにより確認することができる。
改変フィブロインは、改変絹(シルク)フィブロイン(カイコが産生する絹タンパク質のアミノ酸配列を改変したもの)であってもよく、改変クモ糸フィブロイン(クモ類が産生するスパイダーシルクタンパク質のアミノ酸配列を改変したもの)であってもよく、一実施形態において、セリシン除去絹(シルク)フィブロイン(いわゆる再生シルク)以外の改変絹(シルク)フィブロイン、又は改変クモ糸フィブロインであってよい。セリシン除去絹(シルク)フィブロインは、絹フィブロインを覆うセリシン、及びその他の脂肪分などを除去して精製したものである。改変フィブロインとしては、改変クモ糸フィブロインが好ましい。
改変フィブロインの具体的な例として、クモの大瓶状腺で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質に由来する改変フィブロイン(第1の改変フィブロイン)、グリシン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する改変フィブロイン(第2の改変フィブロイン)、(A)モチーフの含有量が低減されたドメイン配列を有する改変フィブロイン(第3の改変フィブロイン)、グリシン残基の含有量、及び(A)モチーフの含有量が低減された改変フィブロイン(第4の改変フィブロイン)、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むドメイン配列を有する改変フィブロイン(第5の改変フィブロイン)、並びにグルタミン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する改変フィブロイン(第6の改変フィブロイン)が挙げられる。
第1の改変フィブロインとしては、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質が挙げられる。第1の改変フィブロインにおいて、(A)モチーフのアミノ酸残基数は、3〜20の整数が好ましく、4〜20の整数がより好ましく、8〜20の整数が更に好ましく、10〜20の整数が更により好ましく、4〜16の整数が更によりまた好ましく、8〜16の整数が特に好ましく、10〜16の整数が最も好ましい。第1の改変フィブロインは、式1中、REPを構成するアミノ酸残基の数は、10〜200残基であることが好ましく、10〜150残基であることがより好ましく、20〜100残基であることが更に好ましく、20〜75残基であることが更により好ましい。第1の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるアミノ酸配列中に含まれるグリシン残基、セリン残基及びアラニン残基の合計残基数がアミノ酸残基数全体に対して、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
第1の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるアミノ酸配列の単位を含み、かつC末端配列が配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列又は配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列であるポリペプチドであってもよい。
配列番号1に示されるアミノ酸配列は、ADF3(GI:1263287、NCBI)のアミノ酸配列のC末端の50残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列と同一であり、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端から20残基取り除いたアミノ酸配列と同一であり、配列番号3に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端から29残基取り除いたアミノ酸配列と同一である。
第1の改変フィブロインのより具体的な例として、(1−i)配列番号4(recombinant spider silk protein ADF3KaiLargeNRSH1)で示されるアミノ酸配列、又は(1−ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
配列番号4で示されるアミノ酸配列は、N末端に開始コドン、His10タグ及びHRV3Cプロテアーゼ(Human rhinovirus 3Cプロテアーゼ)認識サイトからなるアミノ酸配列(配列番号5)を付加したADF3のアミノ酸配列において、第1〜13番目の反復領域をおよそ2倍になるように増やすとともに、翻訳が第1154番目アミノ酸残基で終止するように変異させたものである。配列番号4で示されるアミノ酸配列のC末端のアミノ酸配列は、配列番号3で示されるアミノ酸配列と同一である。
(1−i)の改変フィブロインは、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
第2の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。第2の改変フィブロインは、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。
第2の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中のGGX及びGPGXX(但し、Gはグリシン残基、Pはプロリン残基、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)から選ばれる少なくとも一つのモチーフ配列において、少なくとも1又は複数の当該モチーフ配列中の1つのグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第2の改変フィブロインは、上述のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上であってもよい。
第2の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、上記ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列中の全REPに含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列中の総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが30%以上、40%以上、50%以上又は50.9%以上であるアミノ酸配列を有するものであってもよい。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は83%以上であってよいが、86%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、100%であること(アラニン残基のみで構成されることを意味する)が更により好ましい。
第2の改変フィブロインは、GGXモチーフの1つのグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換することにより、XGXからなるアミノ酸配列の含有割合を高めたものであることが好ましい。第2の改変フィブロインは、ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、6%以下であることが更により好ましく、4%以下であることが更によりまた好ましく、2%以下であることが特に好ましい。ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合は、下記XGXからなるアミノ酸配列の含有割合(z/w)の算出方法と同様の方法で算出することができる。
z/wの算出方法を更に詳細に説明する。まず、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むフィブロイン(改変フィブロイン又は天然由来のフィブロイン)において、ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列に含まれる全てのREPから、XGXからなるアミノ酸配列を抽出する。XGXを構成するアミノ酸残基の総数がzである。例えば、XGXからなるアミノ酸配列が50個抽出された場合(重複はなし)、zは50×3=150である。また、例えば、XGXGXからなるアミノ酸配列の場合のように2つのXGXに含まれるX(中央のX)が存在する場合は、重複分を控除して計算する(XGXGXの場合は5アミノ酸残基である)。wは、ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列に含まれる総アミノ酸残基数である。例えば、図1に示したドメイン配列の場合、wは4+50+4+100+4+10+4+20+4+30=230である(最もC末端側に位置する(A)モチーフは除いている。)。次に、zをwで除すことによって、z/w(%)を算出することができる。
ここで、天然由来のフィブロインにおけるz/wについて説明する。まず、上述のように、NCBI GenBankにアミノ酸配列情報が登録されているフィブロインを例示した方法により確認したところ、663種類のフィブロイン(このうち、クモ類由来のフィブロインは415種類)が抽出された。抽出された全てのフィブロインのうち、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、フィブロイン中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合が6%以下である天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、上述の算出方法により、z/wを算出した。その結果を図2に示す。図2の横軸はz/w(%)を示し、縦軸は頻度を示す。図2から明らかなとおり、天然由来のフィブロインにおけるz/wは、いずれも50.9%未満である(最も高いもので、50.86%)。
第2の改変フィブロインにおいて、z/wは、50.9%以上であることが好ましく、56.1%以上であることがより好ましく、58.7%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが更により好ましく、80%以上であることが更によりまた好ましい。z/wの上限に特に制限はないが、例えば、95%以下であってもよい。
第2の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列から、グリシン残基をコードする塩基配列の少なくとも一部を置換して別のアミノ酸残基をコードするように改変することにより得ることができる。このとき、改変するグリシン残基として、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフにおける1つのグリシン残基を選択してもよいし、またz/wが50.9%以上になるように置換してもよい。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から上記態様を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中のグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
上記の別のアミノ酸残基としては、グリシン残基以外のアミノ酸残基であれば特に制限はないが、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基、メチオニン(M)残基、プロリン(P)残基、フェニルアラニン(F)残基及びトリプトファン(W)残基等の疎水性アミノ酸残基、グルタミン(Q)残基、アスパラギン(N)残基、セリン(S)残基、リシン(K)残基及びグルタミン酸(E)残基等の親水性アミノ酸残基が好ましく、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基、フェニルアラニン(F)残基及びグルタミン(Q)残基がより好ましく、グルタミン(Q)残基が更に好ましい。
第2の改変フィブロインのより具体的な例として、(2−i)配列番号6(Met−PRT380)、配列番号7(Met−PRT410)、配列番号8(Met−PRT525)若しくは配列番号9(Met−PRT799)で示されるアミノ酸配列、又は(2−ii)配列番号6、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(2−i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号6で示されるアミノ酸配列は、天然由来のフィブロインに相当する配列番号10(Met−PRT313)で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。配列番号7で示されるアミノ酸配列は、配列番号6で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものである。配列番号8で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列の各(A)モチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、配列番号7の分子量とほぼ同じとなるようにC末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号9で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を4回繰り返した配列のC末端に所定のヒンジ配列とHisタグ配列が付加されたものである。
配列番号10で示されるアミノ酸配列(天然由来のフィブロインに相当)におけるz/wの値は、46.8%である。配列番号6で示されるアミノ酸配列、配列番号7で示されるアミノ酸配列、配列番号8で示されるアミノ酸配列、及び配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるz/wの値は、それぞれ58.7%、70.1%、66.1%及び70.0%である。また、配列番号10、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列のギザ比率(後述する)1:1.8〜11.3におけるx/yの値は、それぞれ15.0%、15.0%、93.4%、92.7%及び89.8%である。
(2−i)の改変フィブロインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(2−ii)の改変フィブロインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(2−ii)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(2−ii)の改変フィブロインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつREP中に含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが50.9%以上であることが好ましい。
第2の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、改変フィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列として、例えば、他の分子との特異的親和性(結合性、アフィニティ)を利用したアフィニティタグを挙げることができる。アフィニティタグの具体例として、ヒスチジンタグ(Hisタグ)を挙げることができる。Hisタグは、ヒスチジン残基が4から10個程度並んだ短いペプチドで、ニッケル等の金属イオンと特異的に結合する性質があるため、金属キレートクロマトグラフィー(chelating metal chromatography)による改変フィブロインの単離に利用することができる。タグ配列の具体例として、例えば、配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含むアミノ酸配列)が挙げられる。
また、グルタチオンに特異的に結合するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースに特異的に結合するマルトース結合タンパク質(MBP)等のタグ配列を利用することもできる。
さらに、抗原抗体反応を利用した「エピトープタグ」を利用することもできる。抗原性を示すペプチド(エピトープ)をタグ配列として付加することにより、当該エピトープに対する抗体を結合させることができる。エピトープタグとして、HA(インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのペプチド配列)タグ、mycタグ、FLAGタグ等を挙げることができる。エピトープタグを利用することにより、高い特異性で容易に改変フィブロインを精製することができる。
さらにタグ配列を特定のプロテアーゼで切り離せるようにしたものも使用することができる。当該タグ配列を介して吸着したタンパク質をプロテアーゼ処理することにより、タグ配列を切り離した改変フィブロインを回収することもできる。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(2−iii)配列番号12(PRT380)、配列番号13(PRT410)、配列番号14(PRT525)若しくは配列番号15(PRT799)で示されるアミノ酸配列、又は(2−iv)配列番号12、配列番号13、配列番号14若しくは配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号16(PRT313)、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号10、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(2−iii)の改変フィブロインは、配列番号12、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(2−iv)の改変フィブロインは、配列番号12、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(2−iv)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(2−iv)の改変フィブロインは、配列番号12、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつREP中に含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが50.9%以上であることが好ましい。
第2の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第3の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。第3の改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。
第3の改変フィブロインは、天然由来のフィブロインから(A)モチーフを10〜40%欠失させたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともN末端側からC末端側に向かって1〜3つの(A)モチーフ毎に1つの(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともN末端側からC末端側に向かって2つ連続した(A)モチーフの欠失、及び1つの(A)モチーフの欠失がこの順に繰り返されたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、少なくともN末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、N末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが20%以上、30%以上、40%以上又は50%以上であるアミノ酸配列を有するものであってもよい。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は83%以上であってよいが、86%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、100%であること(アラニン残基のみで構成されることを意味する)が更により好ましい。
x/yの算出方法を、図1を参照しながら更に詳細に説明する。図1には、改変フィブロインからN末端配列及びC末端配列を除いたドメイン配列を示す。当該ドメイン配列は、N末端側(左側)から(A)モチーフ−第1のREP(50アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第2のREP(100アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第3のREP(10アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第4のREP(20アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第5のREP(30アミノ酸残基)−(A)モチーフという配列を有する。
隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットは、重複がないように、N末端側からC末端側に向かって、順次選択する。このとき、選択されない[(A)モチーフ−REP]ユニットが存在してもよい。図1には、パターン1(第1のREPと第2のREPの比較、及び第3のREPと第4のREPの比較)、パターン2(第1のREPと第2のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン3(第2のREPと第3のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン4(第1のREPと第2のREPの比較)を示した。なお、これ以外にも選択方法は存在する。
次に各パターンについて、選択した隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニット中の各REPのアミノ酸残基数を比較する。比較は、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときの、他方のアミノ酸残基数の比を求めることによって行う。例えば、第1のREP(50アミノ酸残基)と第2のREP(100アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第1のREPを1としたとき、第2のREPのアミノ酸残基数の比は、100/50=2である。同様に、第4のREP(20アミノ酸残基)と第5のREP(30アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第4のREPを1としたとき、第5のREPのアミノ酸残基数の比は、30/20=1.5である。
図1中、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる[(A)モチーフ−REP]ユニットの組を実線で示した。本明細書中、この比をギザ比率と呼ぶ。よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比が1.8未満又は11.3超となる[(A)モチーフ−REP]ユニットの組は破線で示した。
各パターンにおいて、実線で示した隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットの全てのアミノ酸残基数を足し合わせる(REPのみではなく、(A)モチーフのアミノ酸残基数もである。)。そして、足し合わせた合計値を比較して、当該合計値が最大となるパターンの合計値(合計値の最大値)をxとする。図1に示した例では、パターン1の合計値が最大である。
次に、xをドメイン配列の総アミノ酸残基数yで除すことによって、x/y(%)を算出することができる。
第3の改変フィブロインにおいて、x/yは、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが更により好ましく、75%以上であることが更によりまた好ましく、80%以上であることが特に好ましい。x/yの上限に特に制限はなく、例えば、100%以下であってよい。ギザ比率が1:1.9〜11.3の場合には、x/yは89.6%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.8〜3.4の場合には、x/yは77.1%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.9〜8.4の場合には、x/yは75.9%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.9〜4.1の場合には、x/yは64.2%以上であることが好ましい。
第3の改変フィブロインが、ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフの少なくとも7つがアラニン残基のみで構成される改変フィブロインである場合、x/yは、46.4%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが更により好ましく、70%以上であることが更によりまた好ましく、80%以上であることが特に好ましい。x/yの上限に特に制限はなく、100%以下であればよい。
ここで、天然由来のフィブロインにおけるx/yについて説明する。まず、上述のように、NCBI GenBankにアミノ酸配列情報が登録されているフィブロインを例示した方法により確認したところ、663種類のフィブロイン(このうち、クモ類由来のフィブロインは415種類)が抽出された。抽出された全てのフィブロインのうち、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列で構成される天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、上述の算出方法により、x/yを算出した。ギザ比率が1:1.9〜4.1の場合の結果を図3に示す。
図3の横軸はx/y(%)を示し、縦軸は頻度を示す。図3から明らかなとおり、天然由来のフィブロインにおけるx/yは、いずれも64.2%未満である(最も高いもので、64.14%)。
第3の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列から、x/yが64.2%以上になるように(A)モチーフをコードする配列の1又は複数を欠失させることにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、x/yが64.2%以上になるように1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から(A)モチーフが欠失したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
第3の改変フィブロインのより具体的な例として、(3−i)配列番号17(Met−PRT399)、配列番号7(Met−PRT410)、配列番号8(Met−PRT525)若しくは配列番号9(Met−PRT799)で示されるアミノ酸配列、又は(3−ii)配列番号17、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(3−i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号17で示されるアミノ酸配列は、天然由来のフィブロインに相当する配列番号10(Met−PRT313)で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものである。配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列は、第2の改変フィブロインで説明したとおりである。
配列番号10で示されるアミノ酸配列(天然由来のフィブロインに相当)のギザ比率1:1.8〜11.3におけるx/yの値は15.0%である。配列番号17で示されるアミノ酸配列、及び配列番号7で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、いずれも93.4%である。配列番号8で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、92.7%である。配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、89.8%である。配列番号10、配列番号17、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるz/wの値は、それぞれ46.8%、56.2%、70.1%、66.1%及び70.0%である。
(3−i)の改変フィブロインは、配列番号17、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(3−ii)の改変フィブロインは、配列番号17、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(3−ii)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(3−ii)の改変フィブロインは、配列番号17、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつN末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3(ギザ比率が1:1.8〜11.3)となる隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが64.2%以上であることが好ましい。
第3の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方に上述したタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(3−iii)配列番号18(PRT399)、配列番号13(PRT410)、配列番号14(PRT525)若しくは配列番号15(PRT799)で示されるアミノ酸配列、又は(3−iv)配列番号18、配列番号13、配列番号14若しくは配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号18、配列番号13、配列番号14及び配列番号15で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号17、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(3−iii)の改変フィブロインは、配列番号18、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(3−iv)の改変フィブロインは、配列番号18、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(3−iv)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(3−iv)の改変フィブロインは、配列番号18、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつN末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが64.2%以上であることが好ましい。
第3の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第4の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたことに加え、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有するものである。第4の改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに加え、更に少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。すなわち、第4の改変フィブロインは、上述した第2の改変フィブロインと、第3の改変フィブロインの特徴を併せ持つ改変フィブロインである。具体的な態様等は、第2の改変フィブロイン、及び第3の改変フィブロインで説明したとおりである。
第4の改変フィブロインのより具体的な例として、(4−i)配列番号7(Met−PRT410)、配列番号8(Met−PRT525)、配列番号9(Met−PRT799)、配列番号13(PRT410)、配列番号14(PRT525)若しくは配列番号15(PRT799)で示されるアミノ酸配列、又は(4−ii)配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号13、配列番号14若しくは配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号13、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列を含む改変フィブロインの具体的な態様は上述のとおりである。
第5の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列を有するものであってよい。
局所的に疎水性指標の大きい領域は、連続する2〜4アミノ酸残基で構成されていることが好ましい。
上述の疎水性指標の大きいアミノ酸残基は、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基であることがより好ましい。
第5の改変フィブロインは、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、更に、天然由来のフィブロインと比較して、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変があってもよい。
第5の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基を疎水性アミノ酸残基に置換したこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基を疎水性アミノ酸残基に置換したこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
第5の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を上記ドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をpとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を上記ドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をqとしたときに、p/qが6.2%以上であるアミノ酸配列を有してもよい。
アミノ酸残基の疎水性指標については、公知の指標(Hydropathy index:Kyte J,&Doolittle R(1982)“A simple method for displaying the hydropathic character of a protein”,J.Mol.Biol.,157,pp.105−132)を使用する。具体的には、各アミノ酸の疎水性指標(ハイドロパシー・インデックス、以下「HI」とも記す。)は、下記表1に示すとおりである。
Figure 2020158946
p/qの算出方法を更に詳細に説明する。算出には、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列(以下、「配列A」とする)を用いる。まず、配列Aに含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値を算出する。疎水性指標の平均値は、連続する4アミノ酸残基に含まれる各アミノ酸残基のHIの総和を4(アミノ酸残基数)で除して求める。疎水性指標の平均値は、全ての連続する4アミノ酸残基について求める(各アミノ酸残基は、1〜4回平均値の算出に用いられる。)。次いで、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域を特定する。あるアミノ酸残基が、複数の「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」に該当する場合であっても、領域中には1アミノ酸残基として含まれることになる。そして、当該領域に含まれるアミノ酸残基の総数がpである。また、配列Aに含まれるアミノ酸残基の総数がqである。
例えば、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が20カ所抽出された場合(重複はなし)、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、連続する4アミノ酸残基(重複はなし)が20含まれることになり、pは20×4=80である。また、例えば、2つの「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が1アミノ酸残基だけ重複して存在する場合、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、7アミノ酸残基含まれることになる(p=2×4−1=7。「−1」は重複分の控除である。)。例えば、図4に示したドメイン配列の場合、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が重複せずに7つ存在するため、pは7×4=28となる。また、例えば、図4に示したドメイン配列の場合、qは4+50+4+40+4+10+4+20+4+30=170である(C末端側の最後に存在する(A)モチーフは含めない)。次に、pをqで除すことによって、p/q(%)を算出することができる。図4の場合28/170=16.47%となる。
第5の改変フィブロインにおいて、p/qは、6.2%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、20%以上であることが更により好ましく、30%以上であることが更によりまた好ましい。p/qの上限は、特に制限されないが、例えば、45%以下であってもよい。
第5の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインのアミノ酸配列を、上記のp/qの条件を満たすように、REP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列に改変することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から上記のp/qの条件を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当する改変を行ってもよい。
疎水性指標の大きいアミノ酸残基としては、特に制限はないが、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)が好ましく、バリン(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)がより好ましい。
第5の改変フィブロインのより具体的な例として、(5−i)配列番号19(Met−PRT720)、配列番号20(Met−PRT665)若しくは配列番号21(Met−PRT666)で示されるアミノ酸配列、又は(5−ii)配列番号19、配列番号20若しくは配列番号21で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(5−i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号19で示されるアミノ酸配列は、配列番号7(Met−PRT410)で示されるアミノ酸配列に対し、C末端側の端末のドメイン配列を除いて、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を2カ所挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、かつC末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号20で示されるアミノ酸配列は、配列番号8(Met−PRT525)で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を1カ所挿入したものである。配列番号21で示されるアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を2カ所挿入したものである。
(5−i)の改変フィブロインは、配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(5−ii)の改変フィブロインは、配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(5−ii)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(5−ii)の改変フィブロインは、配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をpとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をqとしたときに、p/qが6.2%以上であることが好ましい。
第5の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(5−iii)配列番号22(PRT720)、配列番号23(PRT665)若しくは配列番号24(PRT666)で示されるアミノ酸配列、又は(5−iv)配列番号22、配列番号23若しくは配列番号24で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号22、配列番号23及び配列番号24で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号19、配列番号20及び配列番号21で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(5−iii)の改変フィブロインは、配列番号22、配列番号23又は配列番号24で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(5−iv)の改変フィブロインは、配列番号22、配列番号23又は配列番号24で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(5−iv)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(5−iv)の改変フィブロインは、配列番号22、配列番号23又は配列番号24で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をpとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をqとしたときに、p/qが6.2%以上であることが好ましい。
第5の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第6の改変フィブロインは、天然由来のフィブロインと比較して、グルタミン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。
第6の改変フィブロインは、REPのアミノ酸配列中に、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフから選ばれる少なくとも一つのモチーフが含まれていることが好ましい。
第6の改変フィブロインが、REP中にGPGXXモチーフを含む場合、GPGXXモチーフ含有率は、通常1%以上であり、5%以上であってもよく、10%以上であるのが好ましい。GPGXXモチーフ含有率の上限に特に制限はなく、50%以下であってよく、30%以下であってもよい。
本明細書において、「GPGXXモチーフ含有率」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むフィブロイン(改変フィブロイン又は天然由来のフィブロイン)において、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、その領域に含まれるGPGXXモチーフの個数の総数を3倍した数(即ち、GPGXXモチーフ中のG及びPの総数に相当)をsとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、GPGXXモチーフ含有率はs/tとして算出される。
GPGXXモチーフ含有率の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としているのは、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列」(REPに相当する配列)には、フィブロインに特徴的な配列と相関性の低い配列が含まれることがあり、mが小さい場合(つまり、ドメイン配列が短い場合)、GPGXXモチーフ含有率の算出結果に影響するので、この影響を排除するためである。なお、REPのC末端に「GPGXXモチーフ」が位置する場合、「XX」が例えば「AA」の場合であっても、「GPGXXモチーフ」として扱う。
図5は、改変フィブロインのドメイン配列を示す模式図である。図5を参照しながらGPGXXモチーフ含有率の算出方法を具体的に説明する。まず、図5に示した改変フィブロインのドメイン配列(「[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフ」タイプである。)では、全てのREPが「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」(図5中、「領域A」で示した配列。)に含まれているため、sを算出するためのGPGXXモチーフの個数は7であり、sは7×3=21となる。同様に、全てのREPが「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」(図5中、「領域A」で示した配列。)に含まれているため、当該配列から更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数tは50+40+10+20+30=150である。次に、sをtで除すことによって、s/t(%)を算出することができ、図5の改変フィブロインの場合21/150=14.0%となる。
第6の改変フィブロインは、グルタミン残基含有率が9%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、4%以下であることが更に好ましく、0%であることが特に好ましい。
本明細書において、「グルタミン残基含有率」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むフィブロイン(改変フィブロイン又は天然由来のフィブロイン)において、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列(図5の「領域A」に相当する配列。)に含まれる全てのREPにおいて、その領域に含まれるグルタミン残基の総数をuとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、グルタミン残基含有率はu/tとして算出される。グルタミン残基含有率の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としている理由は、上述した理由と同様である。
第6の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、又は他のアミノ酸残基に置換したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってよい。
「他のアミノ酸残基」は、グルタミン残基以外のアミノ酸残基であればよいが、グルタミン残基よりも疎水性指標の大きいアミノ酸残基であることが好ましい。アミノ酸残基の疎水性指標は表1に示すとおりである。
表1に示すとおり、グルタミン残基よりも疎水性指標の大きいアミノ酸残基としては、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)アラニン(A)、グリシン(G)、スレオニン(T)、セリン(S)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、プロリン(P)及びヒスチジン(H)から選ばれるアミノ酸残基を挙げることができる。これらの中でも、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基であることがより好ましく、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)及びフェニルアラニン(F)から選ばれるアミノ酸残基であることが更に好ましい。
第6の改変フィブロインは、REPの疎水性度が、−0.8以上であることが好ましく、−0.7以上であることがより好ましく、0以上であることが更に好ましく、0.3以上であることが更により好ましく、0.4以上であることが特に好ましい。REPの疎水性度の上限に特に制限はなく、1.0以下であってよく、0.7以下であってもよい。
本明細書において、「REPの疎水性度」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むフィブロイン(改変フィブロイン又は天然由来のフィブロイン)において、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列(図5の「領域A」に相当する配列。)に含まれる全てのREPにおいて、その領域の各アミノ酸残基の疎水性指標の総和をvとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、REPの疎水性度はv/tとして算出される。REPの疎水性度の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としている理由は、上述した理由と同様である。
第6の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変があってもよい。
第6の改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列からREP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失させること、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。
第6の改変フィブロインのより具体的な例として、(6−i)配列番号25(Met−PRT888)、配列番号26(Met−PRT965)、配列番号27(Met−PRT889)、配列番号28(Met−PRT916)、配列番号29(Met−PRT918)、配列番号30(Met−PRT699)、配列番号31(Met−PRT698)若しくは配列番号32(Met−PRT966)で示されるアミノ酸配列を含む改変フィブロイン、又は(6−ii)配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31若しくは配列番号32で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む改変フィブロインを挙げることができる。
(6−i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号25で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)中のQQを全てVLに置換したものである。配列番号26で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てTSに置換し、かつ残りのQをAに置換したものである。配列番号27で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVLに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。配列番号28で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVIに置換し、かつ残りのQをLに置換したものである。配列番号29で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVFに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号30で示されるアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列(Met−PRT525)中のQQを全てVLに置換したものである。配列番号31で示されるアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列中のQQを全てVLに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号32で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)中に存在する20個のドメイン配列の領域を2回繰り返した配列中のQQを全てVFに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32で示されるアミノ酸配列は、いずれもグルタミン残基含有率は9%以下である(表2)。
Figure 2020158946
(6−i)の改変フィブロインは、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31又は配列番号32で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(6−ii)の改変フィブロインは、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31又は配列番号32で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(6−ii)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(6−ii)の改変フィブロインは、グルタミン残基含有率が9%以下であることが好ましい。また、(6−ii)の改変フィブロインは、GPGXXモチーフ含有率が10%以上であることが好ましい。
第6の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、改変フィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(6−iii)配列番号33(PRT888)、配列番号34(PRT965)、配列番号35(PRT889)、配列番号36(PRT916)、配列番号37(PRT918)、配列番号38(PRT699)、配列番号39(PRT698)若しくは配列番号40(PRT966)で示されるアミノ酸配列を含む改変フィブロイン、又は(6−iv)配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39若しくは配列番号40で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39及び配列番号40で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。N末端にタグ配列を付加しただけであるため、グルタミン残基含有率に変化はなく、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39及び配列番号40で示されるアミノ酸配列は、いずれもグルタミン残基含有率が9%以下である(表3)。
Figure 2020158946
(6−iii)の改変フィブロインは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39又は配列番号40で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(6−iv)の改変フィブロインは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39又は配列番号40で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(6−iv)の改変フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(6−iv)の改変フィブロインは、グルタミン残基含有率が9%以下であることが好ましい。また、(6−iv)の改変フィブロインは、GPGXXモチーフ含有率が10%以上であることが好ましい。
第6の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
改変フィブロインは、第1の改変フィブロイン、第2の改変フィブロイン、第3の改変フィブロイン、第4の改変フィブロイン、第5の改変フィブロイン、及び第6の改変フィブロインが有する特徴のうち、少なくとも2つ以上の特徴を併せ持つ改変フィブロインであってもよい。
<改変フィブロインの製造方法>
上記いずれの実施形態に係る改変フィブロインも、例えば、当該改変フィブロインをコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主により、当該核酸を発現させることにより生産することができる。
改変フィブロインをコードする核酸の製造方法は、特に制限されない。例えば、天然のフィブロインをコードする遺伝子を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などで増幅しクローニングし、遺伝子工学的手法により改変する方法、又は、化学的に合成する方法によって、当該核酸を製造することができる。核酸の化学的な合成方法も特に制限されず、例えば、NCBIのウェブデータベースなどより入手したフィブロインのアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)などで自動合成したオリゴヌクレオチドをPCRなどで連結する方法によって遺伝子を化学的に合成することができる。この際に、改変フィブロインの精製及び/又は確認を容易にするため、上記のアミノ酸配列のN末端に開始コドン及びHis10タグからなるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列からなる改変フィブロインをコードする核酸を合成してもよい。
調節配列は、宿主における改変フィブロインの発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとして、宿主細胞中で機能し、改変フィブロインを発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いてもよい。誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
発現ベクターの種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主の染色体中への組込みが可能で、改変フィブロインをコードする核酸を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。
宿主として、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。
原核生物の宿主の好ましい例として、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する細菌を挙げることができる。エシェリヒア属に属する微生物として、例えば、エシェリヒア・コリ等を挙げることができる。ブレビバチルス属に属する微生物として、例えば、ブレビバチルス・アグリ等を挙げることができる。セラチア属に属する微生物として、例えば、セラチア・リクエファシエンス等を挙げることができる。バチルス属に属する微生物として、例えば、バチルス・サチラス等を挙げることができる。ミクロバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム等を挙げることができる。ブレビバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ブレビバクテリウム・ディバリカタム等を挙げることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物として、例えば、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス等を挙げることができる。シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物として、例えば、シュードモナス・プチダ等を挙げることができる。
原核生物を宿主とする場合、改変フィブロインをコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、pBTrp2(ベーリンガーマンハイム社製)、pGEX(Pharmacia社製)、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold、pUB110、pNCO2(特開2002−238569号公報)等を挙げることができる。
真核生物の宿主としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属等に属する酵母を挙げることができる。糸状真菌としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ(Trichoderma)属等に属する糸状真菌を挙げることができる。
真核生物を宿主とする場合、改変フィブロインをコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)等を挙げることができる。上記宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110(1972)〕、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、コンピテント法等を挙げることができる。
発現ベクターで形質転換された宿主による核酸の発現方法としては、直接発現のほか、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
改変フィブロインは、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主を培養培地中で培養し、培養培地中に当該改変フィブロインを生成及び蓄積させ、該培養培地から採取することにより製造することができる。宿主を培養培地中で培養する方法は、宿主の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
宿主が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、培養培地として、宿主が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、宿主の培養を効率的に行える培地であれば天然培地及び合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、上記形質転換微生物が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15〜40℃である。培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
また、培養中、必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
発現させた改変フィブロインの単離及び精製は通常用いられている方法で行うことができる。例えば、当該改変フィブロインが、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、宿主細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により宿主細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、タンパク質の単離精製に通常用いられている方法、すなわち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の方法を単独又は組み合わせて使用し、精製標品を得ることができる。
また、改変フィブロインが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に宿主細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として改変フィブロインの不溶体を回収する。回収した改変フィブロインの不溶体はタンパク質変性剤で可溶化することができる。該操作の後、上記と同様の単離精製法により改変フィブロインの精製標品を得ることができる。当該改変フィブロインが細胞外に分泌された場合には、培養上清から当該改変フィブロインを回収することができる。すなわち、培養物を遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、その培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
改変フィブロインの含有量は、改変フィブロイン溶液の成形性をより向上させることができる観点から、改変フィブロイン溶液全量に対して、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、又は8質量%以上であってよい。改変フィブロインの含有量は、改変フィブロイン溶液の粘度の著しい増加による成形性の低下を避けることができる観点から、改変フィブロイン溶液全量に対して、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
改変フィブロイン溶液を紡糸液として用いる場合、改変フィブロインの含有量は、改変フィブロイン溶液の曳糸性が向上し、紡糸口金から改変フィブロイン溶液をより安定的に吐出させることができる観点から、改変フィブロイン溶液全量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。改変フィブロイン溶液を紡糸液として用いる場合、改変フィブロインの含有量は、紡糸口金から改変フィブロイン溶液を吐出する際に紡糸口金の孔が閉塞するのを避けることができ、生産性が向上する観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
改変フィブロイン溶液の粘度は、使用用途等に応じて適宜設定してよい。改変フィブロイン溶液を紡糸液として用いる場合には、乾式紡糸が可能な粘度であればよく、特に限定されないが、生産性の観点から、改変フィブロイン溶液の粘度は、25℃において、例えば、10,000mPa・sec以上であってよく、200,000mPa・sec以下、150,000mPa・sec以下、100,000mPa・sec以下、80,000mPa・sec以下、50,000mPa・sec以下、30,000mPa・sec以下、20,000mPa・sec以下、又は15,000mPa・sec以下であってよい。改変フィブロイン溶液の粘度は、例えば、電気磁気紡糸粘度計(京都電子工業社製の商品名「EMS粘度計」)を使用して測定することができる。
改変フィブロイン溶液は、無機塩を更に含有してよい。無機塩は、以下に示すルイス酸とルイス塩基とからなる無機塩であってよい。ルイス塩基としては、例えば、ハロゲン化物イオン等が挙げられる。ルイス酸としては、例えば、アルカリ金属イオン、ハロゲン化物アルカリ土類金属イオン等の金属イオン等が挙げられる。無機塩としては、例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物等が挙げられる。アルカリ金属ハロゲン化物の具体例としては、塩化リチウム、臭化リチウム等が挙げられる。アルカリ土類ハロゲン化物の具体例としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。溶解促進剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの無機塩は、含フッ素溶媒に対する改変フィブロインの溶解促進剤として機能し得るものであり、特に好ましくは塩化リチウム及び塩化カルシウムである。改変フィブロイン溶液が無機塩を含有することにより、分散液の調製がより容易になり得る。
無機塩の含有量は、改変フィブロイン溶液全量に対して、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、20質量%以下、16質量%以下、12質量%以下、又は9質量%以下であってよい。
改変フィブロイン溶液は、必要に応じて、各種の添加剤を更に含有していてよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、レベリング剤、架橋剤、結晶核剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、フィラー、合成樹脂が挙げられる。添加剤の含有量は、改変フィブロイン溶液全量に対して、50質量%以下であってよい。
以上説明した改変フィブロイン溶液は、改変フィブロインを含む成形体(改変フィブロイン成形体)の製造に用いられる溶液(ドープ液)として好適であり、改変フィブロインを含む繊維(改変フィブロイン繊維)の紡糸に用いられる溶液(ドープ液又は紡糸液)として特に好適である。
〔改変フィブロイン成形体の製造方法〕
本実施形態に係る改変フィブロイン成形体の製造方法は、上述した改変フィブロイン溶液を用いて改変フィブロインを含む成形体を成形する工程(成形工程)を備えている。改変フィブロイン成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、繊維状、フィルム状等を挙げることができる。
成形工程で用いられる改変フィブロイン溶液は、改変フィブロインと、含フッ素溶媒と、水と、必要により添加されるその他の成分とを混合することにより得られる。この製造方法は、成形工程の前に、改変フィブロイン溶液を得る(用意する)工程(用意工程)を更に備えていてよい。
用意工程では、改変フィブロインの溶解を促進するために、改変フィブロインを含フッ素溶媒及び水と混合した状態で撹拌又は振とうしてもよい。その際、必要により、使用する改変フィブロイン及び溶媒(含フッ素溶媒、水及び必要により添加されるその他の溶媒)の種類及び含有割合に応じて、改変フィブロインが溶解可能な温度に改変フィブロイン溶液を加熱してもよい。加熱温度は、例えば、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、又は90℃以上であってよく、例えば、含フッ素溶媒、水及びその他の溶媒の各沸点(大気圧下における沸点)のうち最も低い沸点(以下「溶媒の沸点」ともいう)以下である。その他の溶媒を用いる場合、その他の溶媒の1種単独又は2種以上の混合物を水に予め添加してから、その他の溶媒と水との混合物を改変フィブロイン及び含フッ素溶媒と更に混合することができる。
<第1実施形態(改変フィブロイン繊維の成形)>
第1実施形態に係る製造方法の成形工程では、繊維状の改変フィブロイン成形体(改変フィブロイン繊維)を成形する。この成形工程では、例えば、上述した改変フィブロイン溶液(ドープ液又は紡糸液)を用いて、乾式紡糸法により改変フィブロイン繊維を紡糸する。具体的には、本実施形態に係る成形工程は、紡糸液を紡糸口金から空気中に吐出した後、加熱して溶媒を気化させて改変フィブロイン繊維(凝固糸)を成形する工程(紡糸工程)である。
紡糸工程は、例えば、紡糸液として上述した改変フィブロイン溶液を使用する他は、公知の乾式紡糸法により実施することができる。紡糸工程は、エレクトロスピニング法(静電紡糸法)により実施することもできるが、製造工程の簡易化及び製造コスト低減という観点から、エレクトロスピニング法以外の方法で実施することが好ましい。
紡糸口金から改変フィブロイン溶液(紡糸液)を吐出する方法に特に制限はないが、例えば、改変フィブロイン溶液(紡糸液)の送液手段として定量ポンプを用いる方法を使用することができる。吐出量は生産速度に応じて適宜調整することができる。
紡糸口金を通過する際の改変フィブロイン溶液(紡糸液)の温度、及び紡糸口金の温度は、特に限定されるものではなく、用いる改変フィブロイン溶液の濃度及び粘度、溶媒の種類等により適宜調整すればよい。当該温度は、改変フィブロインの劣化等を防止するという観点から、好ましくは30℃〜100℃である。当該温度は、溶媒の揮発による圧力上昇、改変フィブロイン溶液の固形化による配管内の閉塞が発生する可能性を低減するという観点から、改変フィブロイン溶液中の溶媒の沸点未満の温度を上限とし、溶媒の融点以上の温度を下限とすることが好ましい。これにより工程安定性が向上する。
紡糸口金の口金形状、ホール形状、ホール数などは特に限定されるものではなく、所望の繊維径及び単糸本数等に応じて適宜選択できる。例えば、紡糸口金のホール形状が円形である場合は、0.01mm以上0.6mm以下の孔径を例示できる。孔径が0.01mm以上であると、圧力損失を低減することができ設備費用を抑えることができる。孔径が0.6mm以下であると、繊維径を細くするための延伸操作の必要性を低減することができ、吐出から引き取りまでの間で延伸切れを起こす可能性を低減することができる。
本実施形態では、上述した改変フィブロイン溶液を用いることで、乾式紡糸におけるドラフトの値を10倍超に向上させることができ、細径繊維を得ることができる。「ドラフト」とは、凝固糸を引き取りローラー(ゴデットローラー)で引き取る速度(m/分)を、紡糸口金から改変フィブロイン溶液を吐出する線速度(m/分)で割った値を意味する。なお、凝固糸は直接ワインダーで巻き取ってもよい。
ドラフトの値は、繊維の使用用途や用いる紡糸ノズルの孔径に応じて適宜調整すればよい。特に細径繊維を得る場合には、ドラフトの値は、10倍超であることが好ましく、15倍以上であることがより好ましく、16倍以上、17倍以上、18倍以上、19倍以上、20倍以上、21倍以上、22倍以上、23倍以上、24倍以上又は25倍以上であることがさらに好ましく、30倍以上であることが特に好ましく、31倍以上であってよく、32倍以上であってよく、33倍以上であってよく、34倍以上であってよく、35倍以上であってよく、36倍以上であってよく、37倍以上であってよく、38倍以上であってよく、39倍以上であってよく、40倍以上であってよく、41倍以上であってよく、42倍以上であってよく、43倍以上であってよく、44倍以上であってよく、45倍以上であってよく、46倍以上であってよく、47倍以上であってよく、48倍以上であってよく、49倍以上であってよく、50倍以上であってよく、55倍以上であってよく、60倍以上であってよく、70倍以上であってよく、80倍以上であってよく、90倍以上であってよく、100倍以上であってよく、120倍以上であってよく、140倍以上であってよく、150倍以上であってよく、160倍以上であってよく、180倍以上であってよく、200倍以上であってよく、220倍以上であってよく、240倍以上であってよく、250倍以上であってよく、260倍以上であってよく、280倍以上であってよく、300倍以上であってよく、320倍以上であってよく、340倍以上であってよく、350倍以上であってよく、360倍以上であってよく、380倍以上であってよく、400倍以上であってよい。
ドラフトの値は、600倍以下、590倍以下、450倍以下、400倍以下、350倍以下、300倍以下、280倍以下、250倍以下、200倍以下、150倍以下、100倍以下、90倍以下又は80倍以下であってよく、10倍超え600倍以下、15〜600倍であってよく、20〜600倍であってよく、25〜600倍であってよく、30〜600倍であってよく、35〜600倍であってよく、25〜590倍であってよく、30〜590倍であってよく、35〜590倍であってよく、40〜590倍であってよく、45〜590倍であってよく、50〜590倍であってよく、
20〜450倍、20〜400倍、20〜350倍、20〜300倍、20〜250倍、20〜200倍、20〜150倍、20〜100倍又は20〜80倍であってよく、
25〜450倍、25〜400倍、25〜350倍、25〜300倍、25〜250倍、25〜200倍、25〜150倍、25〜100倍又は25〜80倍であってよく、30〜450倍であってよく、30〜400倍であってよく、30〜350倍であってよく、30〜300倍であってよく、30〜250倍であってよく、30〜200倍であってよく、30〜150倍であってよく、30〜100倍であってよく、30〜80倍であってよく、
35〜450倍、35〜400倍、35〜350倍、35〜300倍、35〜250倍、35〜200倍、35〜150倍、35〜100倍又は35〜80倍であってよく、100〜300倍であってよく、120〜280倍であってよく、140〜280倍であってよく、150〜300倍であってよく、300〜600倍であってよく、320〜600倍であってよく、340〜600倍であってよい。
本実施形態に係る製造方法は、改変フィブロイン溶液の吐出前に紡糸液を濾過する工程(濾過工程)、及び/又は吐出前に紡糸液を脱泡する工程(脱泡工程)を更に備えていてもよい。
成形工程(紡糸工程)により得られた改変フィブロイン繊維は、そのまま任意の用途に用いられてよい。あるいは、改変フィブロイン繊維を延伸する工程(延伸工程)を更に行い、任意の延伸倍率に延伸した改変フィブロイン繊維を得て、得られた改変フィブロイン繊維を任意の用途に用いてもよい。
すなわち、改変フィブロイン繊維の製造方法における成形工程は、紡糸工程の後に、紡糸された改変フィブロイン繊維を延伸する工程(延伸工程)を更に含んでよい。延伸方法としては、湿熱延伸、乾熱延伸等を挙げることができる。
湿熱延伸は、温水中、温水に有機溶剤等を加えた溶液中、又はスチーム加熱中で行うことができる。湿熱延伸の温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは75℃以上であり、また、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。該温度が50℃以上であると、繊維中の細孔径を安定的に小さくすることができる。該温度が90℃以下であると、温度設定が容易であり紡糸安定性が向上する。
湿熱延伸における延伸倍率は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、例えば、1〜30倍であってよく、1〜25倍であってよく、1〜20倍であってよく、1〜15倍であってよく、1〜10倍であってよく、2〜10倍であってよく、2〜8倍であってよく、2〜6倍であってよく、2〜4倍であってよく、2〜3倍であってよい。
乾熱延伸は、接触型の熱板、及び非接触型の炉などの装置を用いて行うことができるが、特に限定されるものではなく、繊維を所定の温度まで昇温させ、かつ所定の倍率で延伸が可能な装置であればよい。温度としては、例えば、100℃〜270℃であってよく、140℃〜230℃であってよく、140℃〜200℃であってよく、160℃〜200℃であってよく、160℃〜180℃であってよい。
乾熱延伸工程における延伸倍率は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、例えば、1〜30倍であってよく、1〜25倍であってよく、1〜20倍であってよく、1〜15倍であってよく、1〜10倍であってよく、2〜10倍であってよく、2〜8倍であってよく、2〜6倍であってよく、2〜4倍であってよく、2〜3倍であってよい。
延伸工程は、湿熱延伸及び乾熱延伸を、それぞれ単独で行うものであってもよく、またこれらを多段で、又は組み合わせて行うものであってもよい。すなわち、延伸工程として、一段目延伸を湿熱延伸で行い、二段目延伸を乾熱延伸で行う、又は一段目延伸を湿熱延伸で行い、二段目延伸を湿熱延伸で行い、更に三段目延伸を乾熱延伸で行う等、湿熱延伸及び乾熱延伸を適宜組み合わせて行うことができる。
延伸工程を経た改変フィブロイン繊維の最終的な延伸倍率の下限値は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、又は9倍のうちの何れかであってよい。延伸工程を経た改変クモ糸フィブロイン繊維の最終的な延伸倍率の上限値は、例えば、40倍、30倍、20倍、15倍、14倍、13倍、12倍、11倍、又は10倍のうちの何れかであってよい。また、例えば、最終的な延伸倍率は3〜40倍であってよく、3〜30倍であってよく、5〜30倍であってよく、5〜20倍であってよく、5〜15倍であってよく、5〜13倍であってよい。ただし、延伸倍率は、所望する繊維の太さ、機械物性などの特性が得られる範囲であれば限定されるものではない。
延伸工程の前又は後に、必要に応じて、繊維に対して、帯電抑制性、収束性及び潤滑性等を付与する目的で油剤を付与してもよい。付与する油剤の種類及び付与する量等は、特に限定されるものではなく、繊維を使用する用途、繊維の取扱い性等を考慮し適宜調整することができる。
<第2実施形態(改変フィブロインフィルムの成形)>
第1実施形態に係る製造方法の成形工程では、フィルム状の改変フィブロイン成形体(改変フィブロインフィルム)を成形する。この場合は、必要により、成形工程の前に、改変フィブロイン溶液の濃度及び粘度をフィルム化が可能な濃度及び粘度に適宜調整してよい。改変フィブロインをフィルム化する方法としては、特に限定されないが、改変フィブロイン溶液を含フッ素溶媒に耐性のある平板に所定の厚さに塗布して、塗膜を形成させ、塗膜から溶媒を除去することで、所定の厚さのフィルムを得る方法等が挙げられる。上述した改変フィブロイン溶液を用いることで、フィルムの成形性が向上し、より薄膜のフィルムが得られ得る。
所定の厚さのフィルムを形成する方法としては、例えばキャスト法が挙げられる。キャスト法によりフィルムを形成する場合には、平板に、改変フィブロイン溶液をドクターコート、ナイフコーター等の冶具を用いて数ミクロン以上の厚さにキャストしてキャスト膜を形成し、その後減圧乾燥又は脱溶媒槽への浸漬により溶媒を脱離することにより、改変フィブロインフィルムを得ることができる。改変フィブロインフィルムの形成は、特許第5678283号公報に記載されている方法に準じて行うことができる。
〔製品〕
本実施形態に係る製品は、上述した改変フィブロイン成形体を含む各種の製品であってよい。改変フィブロイン成形体が改変フィブロイン繊維である場合、製品としては、例えば、繊維、糸、布帛、編み物、組み物、不織布、紙、及び綿を挙げることができる。繊維としては、例えば、長繊維、短繊維、モノフィラメント、又はマルチフィラメント等を挙げることができ、糸としては、紡績糸、撚糸、仮撚糸、加工糸、混繊糸、又は混紡糸等を挙げることができる。さらに、これらの繊維や糸から、織物等の布帛、編物、組み物、若しくは不織布等、紙及び綿等を製造することができる。これらの製品は、公知の方法により製造することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔改変フィブロインの製造〕
(1)発現ベクターの作製
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号40を有する改変クモ糸フィブロイン(以下、「PRT966」ともいう。)を設計した。なお、配列番号40で示されるアミノ酸配列は、ネフィラ・クラビペス由来のアミノ酸配列に対して、なお、配列番号40で示されるアミノ酸配列は、疎水度の向上を目的として、配列番号7で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域を2回繰り返した配列中のQQを全てVFに置換し、かつ残りのQをIに置換した配列を有し、さらにN末端に配列番号11で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列) が付加されている。
次に、設計した配列番号40でアミノ酸配列を有する改変クモ糸フィブロインPRT966をコードする核酸を合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト及び終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。当該核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、それぞれタンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。
(2)改変フィブロインの発現
(1)で得られた発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。当該形質転換大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液を、アンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表4)にOD600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコ培養を行い(約15時間)、シード培養液を得た。
Figure 2020158946
当該シード培養液を500mLの生産培地(表5)を添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにした。
Figure 2020158946
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにし、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、改変フィブロインを発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的とする改変フィブロインサイズのバンドの出現により、目的とする人造構造タンパク質の発現を確認した。
(3)改変フィブロインの精製
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris−HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社製)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8M グアニジン塩酸塩、10mM リン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質を遠心分離により回収し、凍結乾燥機で水分を除き、凍結乾燥粉末を回収することにより、改変フィブロイン(PRT966)を得た。
〔溶解性の評価〕
改変フィブロイン溶液中の水の含有量による溶解性の違いを評価した。含フッ素溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、富士フィルム和光純薬株式会社製)を、水として純水を用いた(以下、同様)。HFIPと水を混合した後、上記で得られた改変フィブロイン(PRT966)を表6に示した割合で添加し、室温で1時間混合攪拌して改変フィブロイン溶液を調製した。調製した改変フィブロイン溶液において改変フィブロインが溶解しているか否かを目視で確認した。溶解している場合をA、未溶解部分がある場合をBとして、結果を表6に示した。
〔粘度の評価〕
溶解性を評価した改変フィブロイン溶液の一部について、電気磁気紡糸粘度計(京都電子工業社製の商品名「EMS粘度計」)を用いて、25℃における粘度(単位:mPa・sec(cP))を測定した。結果を表6に示した。
Figure 2020158946
表6に示したとおり、改変フィブロイン溶液全量に対する水の含有量を20質量%とした場合、改変フィブロインに未溶解部分が生じた。このような改変フィブロイン溶液を用いた場合、細径のフィブロイン繊維を得ることはできない。
〔繊維の製造及び評価〕
(実施例1〜11)
(1)改変フィブロイン溶液(紡糸液)の調製
HFIPと水を混合した後、改変フィブロイン(PRT966)を添加し、室温で1時間以上混合攪拌して改変フィブロイン溶液を調製した。改変フィブロイン、HFIP及び水の含有量は、改変フィブロイン溶液全量に対して、それぞれ25質量%、65質量%、及び10質量%とした。得られた改変フィブロイン溶液は、高い曳糸性を呈し、表6に示したとおり、25℃において18,500[mPa・sec](cP)の粘度を有していた。実施例10,11では、改変フィブロイン、HFIP及び水の含有量を表7に示したとおりに変更した。
(2)乾式紡糸
上記で調製した改変フィブロイン溶液をドープタンクに充填し、遠心分離により脱泡した。ギアポンプポンプを用いて、0.1〜0.3mmの孔径を有する紡糸口金から90℃の空気雰囲気中に改変フィブロイン溶液を吐出して糸条を形成させ、繊維をワインダーで引き取った。使用した紡糸口金の孔径、繊維の引き取り速度、及びドラフトの値を表7にそれぞれ示した。
(3)繊維径の評価
上記(2)で得られた繊維の繊維径を、光学顕微鏡を用いて観察した。実施例1〜11で得られた繊維の平均繊維径の値を表7に示した。実施例1〜9の平均繊維径は、サンプル数n=11の繊維の繊維径の平均値として算出した。繊維径の算出は、断面形状が円であると仮定して、下記式により算出した。
式:繊維径[μm]=
{平均繊度[m/g]/(改変フィブロインの密度[g/cm]×π)}1/2
なお、繊維の平均繊度は、以下の手順で測定した。温度20℃、相対湿度65%の環境下でTextechno社製の「FAVIMAT」を使用し、ランダムにサンプリングした14本の繊維の繊度を測定し(サンプル数=14)、平均値を算出した。改変フィブロイン(PRT966)の密度は1.34[g/cm]であった。
実施例11〜12の平均繊維径は、光学顕微鏡を用いて観察した繊維断面の画像から、断面積を計算して直径を算出した。
(比較例1〜2)
(1)水を含まないドープ溶液(紡糸液)の調製
比較例1として、HFIPと改変フィブロイン(PRT966)を混合し、室温で12時間混合攪拌してドープ溶液を調製した。HFIP及び改変フィブロインの含有量は、ドープ溶液全量に対して、それぞれ75質量%及び25質量%とした。得られたドープ溶液は、高い曳糸性を呈し、表6に示したとおり、25℃において200,000[mPa・sec](cP)の粘度を有していた。
比較例2として、ドープ溶液全量に対するHFIP及び改変フィブロインの含有量をそれぞれ80質量%及び20質量%とした以外は、比較例1と同様にしてドープ溶液を調製した。得られたドープ溶液は、高い曳糸性を呈し、表6に示したとおり、25℃において56,700[mPa・sec](cP)の粘度を有していた。
(2)乾式紡糸
上記で調製したドープ溶液をシリンジに充填し、実施例1〜9と同様の手順で繊維を成形した。使用した紡糸口金の孔径、繊維の引き取り速度、及びドラフトの値を表7に示した。
(3)繊維径の評価
上記(2)で得られた繊維について、実施例1〜9と同様の手順で平均繊維径を算出した。結果を表7に示した。
Figure 2020158946
表7に示されるとおり、比較例1(水を含まないドープ液)では、ドラフトは最大で10倍までしか向上させることができず、得られた繊維の平均繊維径は34μmであった。これに対し、実施例1〜9(水を含む改変フィブロイン溶液)では、ドラフトは最大で589倍まで向上させることができ、平均繊維径6.6〜8.5μmの細径繊維が得られ、予想されない秀逸な結果を得ることができた。実施例では、最小で4.7μmの繊維径を有する繊維が得られた。また、比較例2(水を含まないドープ液)では、ドラフトは最大30倍であり、平均繊維径は17.4μmであったが、実施例10(水を0.5質量%含む改変フィブロイン溶液)と実施例11(水を15質量%含む改変フィブロイン溶液)においては、ドラフトを最大50倍まで向上させることができると共に、平均繊維径も15〜16μmと細くすることができた。
なお、引き取り速度の500[m/分]は、引き取りローラーの最大速度(上限値)であり、装置上の制約のため上記速度以上での検討は行えなかったが、引き取りローラーの速度をさらに大きくし、ドラフトを向上させることで、さらに細径の繊維を得ることが可能であると考えられる。
また、水を含む改変フィブロイン溶液(実施例1〜11)と水を含まない改変フィブロイン溶液(比較例1〜2)とを比較すると、後者では改変フィブロイン溶液中の溶媒(HFIP)の揮発速度が大きく、改変フィブロイン溶液の安定性に劣ったのに対し、前者では、改変フィブロイン溶液中の溶媒(HFIPと水)の揮発速度が小さくなり、より安定性が高かった。
〔改変フィブロインの二次構造の解析〕
上記のような改変フィブロイン溶液中の水の有無によって、得られるフィブロイン繊維の繊維径に違いが生じる原因を考察するため、改変フィブロイン溶液について、二色性(CD)分光法で評価した。
まず、測定を容易にするため、改変フィブロイン(PRT966)の含有量を改変フィブロイン溶液全量に対して0.01質量%とし、HFIP及び水の含有量を、改変フィブロイン溶液全量に対して、89.99質量%及び10.0質量%とした試料(試験例1)、並びに、99.99質量%及び0質量%とした試料(試験例2)の2種類の試料を用意した。その他の手順は上記と同様にして改変フィブロイン溶液を調製した。次いで、調製した改変フィブロイン溶液のCDスペクトルを測定し、改変フィブロイン溶液中の改変フィブロインの二次構造を解析した。CDスペクトルの測定は、円二色性分光計J−1500(日本分光株式会社製)を用い、光路長1mm及び容量400μlの石英セル、波長範囲185−250nm、バンド幅1.00nm、スキャン速度100nm/分の測定条件で行なった。測定結果を図6に示した。
図6に示したとおり、水を含む改変フィブロイン溶液(試験例1)のCDスペクトルと、水を含まない改変フィブロイン溶液(試験例2)のCDスペクトルを比較すると、前者では、改変フィブロインのαヘリックス構造に帰属される、波長191〜193nmの正の極大のピーク、並びに、波長208〜209nm及び222nmの負の極大のピークが大きくなることが観察され、後者ではこのようなピークは観察されなかった。このことから、水を含む改変フィブロイン溶液では、改変フィブロインのαヘリックス構造が形成されており、水を含まない改変フィブロイン溶液中での構造とは異なることが示された。改変フィブロイン溶液が含フッ素溶媒に加えて水を含むことにより、改変フィブロイン溶液中のαヘリックス構造の割合が増加し、乾式紡糸におけるドラフト値の向上及び繊維の細径化に寄与しているものと考察される。
〔改変フィブロイン溶液の評価〕
HFIPと水との混合割合を表8,9に示すとおりに変更した以外は、上記と同様の手順でCDスペクトル測定用の改変フィブロイン溶液を調製し、CDスペクトルを測定した。波長191〜193nmの正の極大のピーク値、並びに、波長208〜209nm及び222nmの負の極大のピーク値をそれぞれ表8,9に示した。なお、表8,9には、図4に示した試験例1,2の結果も併せて示した。
Figure 2020158946
Figure 2020158946
表8,9に示したとおり、水の含有量が0〜0.5質量%未満の改変フィブロイン溶液のCDスペクトルと、水の含有量が0.5質量%以上の改変フィブロイン溶液のCDスペクトルを比較すると、後者では、水の含有量に比例してαヘリックスに帰属される、波長191〜193nmの正の極大のピーク、並びに、波長208〜209nm及び/又は222nmの負の極大のピークが大きくなることが観察された。水の含有量が5〜10質量%の改変フィブロイン溶液では、上述のαヘリックスに帰属される各ピークは、同等の強度を示した。
このことから、0.5質量%以上の水を含む改変フィブロイン溶液では、改変フィブロイン溶液中の改変フィブロインのαヘリックス構造が増加し、改変フィブロイン溶液中での構造に相違が生じることが示された。改変フィブロイン溶液が含フッ素溶媒に加えて水を0.5質量%以上含むことで、改変フィブロイン溶液中のαヘリックス構造の割合が増加し、乾式紡糸におけるドラフト値の向上及び繊維の細径化に寄与しているものと考察される。水の含有量の下限値は、0.5質量%以上が適当であることが示唆された。

Claims (10)

  1. 改変フィブロインと、含フッ素溶媒と、水と、を含み、
    前記水の含有量が、改変フィブロイン溶液全量に対して0.5質量%以上15質量%以下である、改変フィブロイン溶液。
  2. 前記水の含有量が、改変フィブロイン溶液全量に対して0.5質量%以上13質量%以下である、請求項1に記載の改変フィブロイン溶液。
  3. 前記含フッ素溶媒が、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロアセトン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、2,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール及び4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の改変フィブロイン溶液。
  4. 前記含フッ素溶媒が、ヘキサフルオロイソプロパノールである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の改変フィブロイン溶液。
  5. 前記改変フィブロインが改変クモ糸フィブロインである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の改変フィブロイン溶液。
  6. 前記改変フィブロインの含有量が、前記改変フィブロイン溶液全量に対して40質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の改変フィブロイン溶液。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の改変フィブロイン溶液を用いて改変フィブロインを含む成形体を成形する工程を備える、改変フィブロイン成形体の製造方法。
  8. 前記成形体が繊維である、請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記成形体を成形する方法が乾式紡糸法である、請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記乾式紡糸法におけるドラフトが10倍超である、請求項9に記載の製造方法。
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