[本開示の感圧素子]
本開示の感圧素子は、容量(キャパシタンス)を有する素子であって、コンデンサ機能またはキャパシタ機能を有している。かかる感圧素子では、押圧力の印加によって容量変化がもたらされ、その容量変化から押圧力が検出される。従って、本開示の感圧素子は“静電容量型感圧センサ素子”、“容量性圧力検出センサ素子”または“感圧スイッチ素子”などとも称される。本開示の感圧素子は”感圧装置”と称されてもよい。
本明細書でいう「平面視」とは、感圧素子の厚み方向に沿って対象物を上側または下側(特に上側)からみたときの状態(上面図または下面図)のことである。又、本明細書でいう「断面視」とは、感圧素子を構成する第1電極の延在方向(すなわち第1方向D1)に対する垂直方向または第2電極の延在方向またはその主方向(すなわち第2方向D2)に対する垂直方向からみたときの断面状態(断面図)のことである。
以下にて、本開示に係る感圧素子について図面を参照しながら説明する。図面に示す各種の要素は、本開示の理解のために模式的に示したにすぎず、寸法比及び外観などは実物と異なり得ることに留意されたい。本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”、“左右方向”および“表裏方向”はそれぞれ、図中における上下方向、左右方向および表裏方向に対応した方向に相当する。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材または同じ意味内容を示すものとする。ある好適な態様では、鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)が「下方向」に相当し、その逆向きが「上方向」に相当すると捉えることができる。なお、本開示の感圧素子において、押圧は、第1電極と第2電極との相対的な関係において、第1電極側または第2電極側のいずれの側で行われてもよい。押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、押圧は、第1電極と第2電極との相対的な関係において、第1電極側で行われることが好ましく、第3電極を用いる場合においては、第1電極と第2電極と第3電極との相対的な関係において、第1電極側または第3電極側のいずれの側で行われてもよい。
(基本的な測定メカニズム(その1))
本開示の感圧素子は通常、基本的な構造として、図1Aに示すように、押圧力を付与される感圧部1Aと押圧力を検出する検出器2Aとを備えている。図1Aは、本開示の感圧素子が採用する基本的な圧力の測定メカニズムを説明するための感圧素子の基本的構造の一例を模式的に示した断面図である。
感圧部1Aは、導電性の弾性体からなる第1電極11、導体線からなる第2電極12および第2電極12の表面を覆う誘電体13を有している。
本開示の感圧素子においては、図1Bに示すように、感圧部1Aに押圧力(図1B中の矢印)が付与されると、第1電極11と誘電体13との接触領域の面積(以下、単に「接触領域の面積」ということがある)が、第1電極11が有する弾性に基づいて拡大する。その結果、第1電極11と第2電極12との間の静電容量C〔pF〕が変化する。静電容量C〔pF〕および感圧部に付与される押圧力F〔N〕はそれぞれ以下の式で表されるので、これらの結果、検出器により押圧力が検出される。本開示においては、上記のように接触領域の面積の変化に基づいて押圧力が検出され、当該面積の変化は、例えば、従来の感圧素子における電極間距離の変化よりも容量変化における寄与が比較的大きい(C∝S,C∝1/d)ため、押圧力の測定範囲が比較的広い。特に、押圧力が小さい場合、電極間距離の変化に基づく静電容量の変化は非常に小さい。図1Bは、図1Aにおいて押圧力が付与された際の感圧素子の基本的構造を模式的に示した断面図である。
(式中、ε〔pF/m〕は誘電体の誘電率、S〔m2〕は第1電極と誘電体との接触面積、d〔m〕は誘電体の厚み、E〔Pa〕は第1電極のヤング率、eは第1電極のひずみである。)
本開示の感圧素子における感圧部1Aには、第1電極11および第2電極12のうち、いずれの電極側から押圧力が付与されてもよい。図1Bは、押圧力が第1電極11側から付与され、その反作用により、後述の基材24側からも力が作用することを示している。
検出部2Aは、第1電極11と第2電極12との間の静電容量の変化に基づいて、押圧力を検出する回路である。検出部2Aは、第1電極11から引き出された配線および第2電極12から引き出された配線とそれぞれ端子T11およびT12を介して電気的に接続されている。検出部2Aは、制御回路および集積回路等であってよい。ノイズの影響の低減による押圧力検出の安定化の観点から、第1電極11は検出器2Aのグランドに接続されていることが好ましい。すなわち第1電極11から引き出された配線が電気的に接続される検出部2Aの端子T11はグランドにさらに接続されていることが好ましい。
第2電極12が複数で使用される場合、検出部2Aは、当該複数の第2電極12のそれぞれから引き出された配線と電気的に接続するための複数の端子を有する。
本開示の感圧素子においては、誘電体13を変形させることなく、接触領域の面積の変化に基づく端子T11と端子T12との間の静電容量の変化を計測することで、押圧力が測定される。接触領域の面積の変化は、例えば、従来の感圧素子における電極間距離の変化よりも比較的大きいため、本開示の感圧素子においては比較的簡易な構造で、比較的広い範囲の押圧力を測定することができる。
(基本的な測定メカニズム(その2))
基本的な測定メカニズム(その2)は、上記した基本的な測定メカニズム(その1)を採用するものである。図2は、測定メカニズム(その2)を説明するための感圧素子の基本的構造の別の一例を模式的に示した断面図である。図2に示す感圧素子の基本的構造は、感圧部1Bが基材24の代わりに、導電性の弾性体からなる第3電極16を含むこと、および検出部2Bが第3電極16から引き出された配線と電気的に接続される端子T16をさらに含むこと以外、図1Aに示す基本的構造と同様である。ノイズの影響の低減による押圧力検出の安定化の観点から、第1電極11および第3電極16は検出器2Bのグランドに接続されていることが好ましい。
本測定メカニズムにおいては、様々な組み合わせの端子間の静電容量の変化を計測することで、押圧力を測定することができる。例えば、端子T11と端子T16との間の静電容量の変化、端子T11と端子T12との間の静電容量の変化、および端子T12と端子T16との間の静電容量の変化からなる群から選択される1つ以上の変化を計測することで、押圧力を測定することができる。感圧感度のさらなる向上の観点からは、上記群から選択される2つ以上の変化、好ましくは端子T11と端子T12との間の静電容量の変化および端子T12と端子T16との間の静電容量の変化を計測することで、押圧力を測定することが好ましい。
本測定メカニズムにおいては、第1電極11および第3電極16として弾性率(ヤング率)が異なるものを使用することにより、押圧力の測定範囲をより一層、広くすることができる。例えば、第1電極11の弾性率が比較的低く、第3電極16の弾性率が比較的高い場合、第1電極11が変形してから、第3電極16が変形するため、押圧力の測定範囲がより一層、広くなる。
本測定メカニズムにおいても、誘電体13を変形させることなく、接触領域の面積の変化に基づく上記端子間の静電容量の変化を計測することで、押圧力が測定されるため、比較的簡易な構造で、比較的広い範囲の押圧力を測定することができる。
本測定メカニズムにおいては、第1電極11、第2電極12および第3電極16の3個が使用されるため、ノイズの影響が少なく、押圧力を安定して検出できる。
本測定メカニズムにおいては、外乱ノイズの大きい方の電極を0V電位にすることで、当該感圧素子はノイズ耐性により一層、強くなる。外乱ノイズの大きい方の電極とは通常、加圧方向上流側の電極のことであるが、特に当該加圧方向上流側の電極の上部に導体が存在する場合には、加圧方向下流側の電極のことである。すなわち、外乱ノイズの大きい方の電極としては、例えば、加圧方向上流側の電極の上部に導体が存在しない場合における当該上流側の電極、および加圧方向上流側の電極の上部に導体が存在する場合における加圧方向下流側の電極が挙げられる。例えば、端子T11と端子T16との間の静電容量の変化のみを計測する場合、端子T11と端子T12との間の静電容量の変化のみを計測する場合、および端子T11と端子T12との間の静電容量の変化および端子T12と端子T16との間の静電容量の変化の両方を計測する場合には、第1電極11を0V電位にする。また例えば端子T12と端子T16との間の静電容量の変化のみを計測する場合には、第3電極16を0V電位にする。これにより、押圧力の測定時においてノイズが防止される。
(感圧素子)
本開示の感圧素子100は、例えば図3に示すように、複数の第1電極11、複数の第2電極12および複数の誘電体13を備えている。第2電極12の各々は誘電体13に覆われている。本開示の感圧素子100において、複数の第1電極11および複数の第2電極12はそれぞれ第1方向D1および第2方向D2に延在し、第1方向D1および第2方向D2は同一面内において相互に交差する方向であるため、マトリクスセンサとも称され得る。本開示の感圧素子100においては、上記した測定メカニズムの説明からも明らかなように、第1電極11と第2電極12との間に加えられた押圧力に応じて、第1電極11と第2電極12とが交差する箇所(すなわち部分またはクロスポイント)の静電容量が変化する。このため、静電容量およびその変化に基づいて、押圧力およびその変化を測定および検出することができる。例えば、押圧力が付与されると、第1電極11と第2電極12とが交差する箇所の各々において、第1電極11と誘電体13との接触領域の面積が、第1電極11の弾性に基づいて拡大し、静電容量が変化する。図3は、本開示の感圧素子の一例の構成を模式的に示した斜視図である。
複数の第1電極11の各々は、第1方向D1に延在し、かつ第1面内に配列されている。しかも複数の第1電極11の各々は導電性の弾性体からなっている。複数の第1電極11の各々が第1方向D1に延在するとは、第1電極11の各々の延在方向が第1方向D1と略平行であるという意味である。複数の第1電極11の各々が第1面内に配列されるとは、図4〜図6に示すように、複数の第1電極11の第2電極12側の面11aがいずれも略同一の面(第1面)M1内に存在するように、複数の第1電極11が配列されているという意味である。第1面M1は、図4〜図6に示すように平面であってもよいし、または曲面であってもよい。図4は、図3に示す本開示の感圧素子における第1電極近傍の拡大断面図であって、第1電極の延在方向(第1方向)に対する垂直な模式的断面図である。図5は、本開示の感圧素子の別の一例における第1電極近傍の拡大断面図であって、第1電極の延在方向(第1方向)に対する垂直な模式的断面図である。図6は、本開示の感圧素子のまた別の一例における第1電極近傍の拡大断面図であって、第1電極の延在方向(第1方向)に対する垂直な模式的断面図である。
複数の第1電極11相互の間には通常、図3〜図6に示すように、絶縁性の弾性体からなる複数の第1絶縁部18が配置されている。このため第1電極11の配線密度が高い場合であっても、押圧力が加わった際に隣接する第1電極が変形して短絡することを防止できる。その結果として、高密度の押圧面分布を測定できる感圧素子を提供できる。
複数の第1電極11相互の間に、複数の第1絶縁部18が配置される場合、複数の第1電極11は、その第2電極側の表面11aが以下のいずれの態様となるように配置されてもよい。
(態様1)複数の第1電極11の第2電極側の表面11aが、図4に示すように、複数の第1絶縁部18における第2電極側の表面18aと面一になる;「面一」とは段差のないことをいう。
(態様2)複数の第1電極11の第2電極側の表面11aが、図5に示すように、複数の第1絶縁部18における第2電極側の表面18aよりも突出する(すなわち高くなる)。
(態様3)複数の第1電極11の第2電極側の表面11aが、図6に示すように、複数の第1絶縁部18における第2電極側の表面18aよりも窪む(すなわち低くなる)。
複数の第1電極11は、第2電極12の第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、隣接する第1電極11間での短絡のさらなる防止、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、その第2電極側の表面11aが上記態様1となるように配置されることが好ましい。詳しくは、態様1においては、第2電極12(およびその表面の誘電体13)の各々は、第1電極11および第1絶縁部18(後述の第1弾性体シート)と後述の基材または第2弾性体シートとの間で圧力を比較的均一に受けることができる。このため、第2電極12の第2方向D2の伸縮は、局所的な高圧により、阻害され難い。しかも、態様1においては、隣接する第1電極11間の短絡がより一層、防止されながらも、より一層、感度のよい感圧測定が可能になる。より詳しくは、第1電極11と第1絶縁部18のこのような面一構造では、良好な感圧感度を確保しながら、図7に示すように、感圧素子の屈曲が起こっても、隣接する第1電極11間で短絡がより一層、起こり難い。また良好な感圧感度を確保しながら、図8に示すように、限界圧縮により、隣接する第1電極11間で短絡がより一層、起こり難い。図7および図8の各々は、複数の第1電極11の第2電極側の表面11aが複数の第1絶縁部18における第2電極側の表面18aと面一になるときの効果の一例を説明するための第1電極近傍の拡大断面図である。図7および図8において、Fは力を示す。
各々の第1電極11は、断面形状として、図3〜図6等において、矩形形状を有しているが、電極間の静電容量を測定できる限り特に限定されず、例えば、図9〜図10に示すように台形形状を有していてもよい。詳しくは、第1電極11の断面形状は、図9に示すように、第2電極側の辺(表面11a)の方が当該辺と対向する辺よりも長い台形形状(以下、「台形形状A」ということがある)であってもよいし、または図10に示すように、第2電極側の辺(表面11a)の方が当該辺と対向する辺よりも短い台形形状(以下、「台形形状B」ということがある)であってもよい。せん断方向のずれ時における第1電極11間の短絡のさらなる防止および製造簡易性の向上の観点から、台形形状AおよびBの方が矩形形状よりも好ましい。第1電極11間の短絡のさらなる防止および各々の第1電極11と各々の誘電体13との接触面積の増大による感圧感度のさらなる向上の観点から、台形形状Aの方が台形形状Bよりも好ましい。なお、各々の第1電極11が断面形状として台形形状Bを有し、かつ押圧を第1電極と第2電極との相対的な関係において、第1電極側で行う場合において、図10に示すように、第1電極11の押圧方向における上流側に、弾性率(または硬度)が第1電極11および第1絶縁部18よりも高い弾性基材19を配置することが、感圧感度のさらなる向上の観点から好ましい。このような弾性基材19により、押圧力(荷重)が第1電極11と誘電体13との接触面に伝達され易くなるためである。図9および図10の各々は、本開示の感圧素子の一例における第1電極近傍の拡大断面図であって、第1電極の延在方向(第1方向)に対する垂直な模式的断面図である。
複数の第1電極11と複数の第1絶縁部18とは一体となって第1弾性体シート20を構成することが好ましい。複数の第1電極11と複数の第1絶縁部18とが一体となるとは、複数の第1電極11と複数の第1絶縁部18とが一体不可分に構成されているという意味である。これにより、第1電極11相互の位置関係を容易に維持でき、高密度の感圧素子を実現できる。また、製造上、複数の第1電極の取り扱いおよび製造が容易である。さらに感圧素子の伸縮性に関する耐久性が向上する。
第1弾性体シート20においては、第1電極11は、第1絶縁部18に包埋されていることが好ましい。ここで、「包埋」とは、第1電極11の第2電極側の表面11aが露出する状態での「包埋」である。詳しくは、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、第1電極11は、図4および図6に示すように、第2電極側の表面11aのみが露出するように、第1絶縁部18に包埋されていてもよいし、または図5に示すように、第2電極側の表面11aおよびその近傍が露出するように、第1絶縁部18に包埋されていてもよい。
第1電極11は弾性特性および導電特性を有する。弾性特性とは、外力(例えば、対人感圧用途において感圧素子に対して加えられる通常の押圧力:例えば約0.1N/cm2〜100N/cm2の押圧力)によって局所的に変形し、除力すると元の形状へと戻る特性をいう。具体的には、第1電極11は、感圧部への押圧力により、第1電極11と誘電体13との接触領域の面積が拡大するような弾性特性を有すればよい。詳しくは、第1電極11は、押圧時に誘電体13よりも変形するように、誘電体13よりも低い弾性率を有していてもよい。伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、第1電極11の弾性率は例えば約104Pa〜108Paであることが好ましく、例えば1つ例示すると約1.5×106Paである。第1電極11の弾性率は上記範囲内で大きいほど、押圧力の測定範囲は広くなる。第1電極11の弾性率は上記範囲内で小さいほど、感圧感度は向上する。感圧感度が向上すると、例えば、従来では検出し難い微小な押圧力でも、検出できるようになる。これに伴い、押圧力の付与開始を精度よく検出できるようになる。弾性率は、例えば架橋密度を変更することによって調整できる。架橋密度は架橋材の添加量により調整できる。導電特性について、第1電極11の導電率は、所望の周波数帯域において容量のインピーダンスよりも十分に小さくてもよい。第1電極11の導電率は通常は200Ω・cm以下、特に0.01Ω・cm〜200Ω・cmであり、例えば1つ例示すると25Ω・cmがより好ましい。かかる導電率は、後述の導電性フィラーと樹脂材料(ゴム材料)との相対的割合を変更することによって調整できる。対人感圧用途とは、後述するように、人体に起因する圧力をモニタリングする用途のことである。なお、「〜」は、「以上、以下を表す。例えば上記「0.01Ω・cm〜200Ω・cm」だと0.1Ω・cm以上かつ200Ω・cm以下を表す。
第1電極11は弾性電極部材に相当し、伸縮性部材とも称されうる。第1電極11は、上記のような弾性特性と導電特性との双方の性質を有していれば、いずれの材質から成るものであってよい。例えば、第1電極11は、樹脂材料(特にゴム材料)およびその樹脂材料内に分散した導電性フィラーからなる導電性樹脂から構成されたものであってよい。第1電極11の第1方向D1および第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から好ましい第1電極11は、ゴム材料およびそのゴム材料内に分散した導電性フィラーからなる導電性ゴムから構成される。第1電極11が導電性ゴムから構成されることにより、第1電極11の第1方向D1および第2方向D2への伸縮がより効果的に達成されるとともに、押圧力をより効果的に検出することができ、また押圧時の押圧感を演出できる。樹脂材料としては、例えば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(例えば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂およびウレタン系樹脂等から成る群から選択される少なくとも1種の樹脂材料であってよい。ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等から成る群から選択される少なくとも1種のゴム材料であってよい。ゴム材料は、ゴムの種類に応じて、弾性体の保持や引裂強度、引張強度の補強のために架橋材、充填材を含んでいてもよい。導電性フィラーは、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、黒鉛等のカーボン材料;Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In2O3(酸化インジウム(III))およびSnO2(酸化スズ(IV))等の金属材料;PEDOT:PSS(すなわち、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)から成る複合物)等の導電性高分子材料;金属コート有機物繊維、金属線(繊維状態)等の導電性繊維;から成る群から選択される少なくとも1種の材料を含んでよい。導電性フィラーの形状は、導電性フィラー同士が接触しやすい形状であることが好ましく、球形、楕円形(断面形状)、カーボンナノチューブ形状、グラフェン形状、テトラポット形状、ナノロッド形状であってもよい。導電性フィラーは表面(表層)に分散剤などの、分散性をよくする添加剤が付着していてもよい。導電性フィラーは、寸法、形状および種類が異なる2種以上の導電性フィラーを用いてもよい。また、導電性フィラーに代えて又はそれに加えて、導電層を用いてもよい。具体的には、上記した樹脂材料(特にゴム材料)からなる樹脂構造体(特にゴム構造材)の表面に導電性インクの塗布などによって導電層が設けられて成る第1電極であってもよい。
各々の第1電極11の厚みは、外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化し、かつ第1電極11が伸縮に耐え得る限り特に限定されない。第1電極11の厚みは、対人感圧用途において、通常は0.01mm〜20mm、好ましくは0.2mm〜2mmであり、例えば1つ例示すると0.5mmがより好ましい。
各々の第1電極11の幅(第2方向D2の寸法)は、外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化し、かつ第1電極11が伸縮に耐え得る限り特に限定されない。第1電極11の幅は、対人感圧用途において、通常は0.01mm〜1000mm、好ましくは1mm〜50mmであり、例えば1つ例示すると10mmがより好ましい。
第1電極11は通常、長尺形状(例えば、線状)を有している。第1電極11の長尺方向寸法(第1方向D1の寸法)は、特に限定されず、用途に応じて適宜設定されてよい。第1電極11の長尺方向寸法は、対人感圧用途において、通常は10〜1000mm、好ましくは100〜500mmであり、例えば1つ例示すると300mmがより好ましい。
第1電極11は、押圧力の測定時におけるノイズ防止の観点から、検出器のグランド(0V)に接続されることが好ましい。
第1絶縁部18は弾性特性および非導電特性を有する。弾性特性は、第1電極11が有する弾性特性と同様の特性である。具体的には、第1絶縁部18は、感圧素子の第1方向D1および第2方向D2への伸縮が達成されるような弾性特性を有すればよい。好ましくは、第1絶縁部18は、伸縮時に、第1電極11と同程度に変形するか、または第1電極11よりも変形するように、第1電極11の弾性率以下の弾性率を有している。伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、第1絶縁部18の弾性率は例えば約103Pa〜108Paであることが好ましく、例えば1つ例示すると約106Paである。第1絶縁部18の弾性率は上記範囲内で大きいほど、押圧力の測定範囲は広くなる。第1絶縁部18の弾性率は上記範囲内で小さいほど、感圧感度は向上する。感圧感度が向上すると、例えば、従来では検出し難い微小な押圧力でも、検出できるようになる。これに伴い、押圧力の付与開始を精度よく検出できるようになる。弾性率は、例えば架橋密度を変更することによって調整できる。架橋密度は架橋材の添加量により調整できる。非導電特性について、第1絶縁部18の導電率は、所望の周波数帯域において容量のインピーダンスよりも十分に大きくてもよい。第1絶縁部18の導電率は通常は103Ω・cm以上、特に104Ω・cm〜1010Ω・cmであり、例えば1つ例示すると107Ω・cmがより好ましい。かかる導電率は、樹脂材料(ゴム材料)を使用することによって達成できる。
第1絶縁部18は弾性絶縁部材に相当し、伸縮性部材とも称されうる。第1絶縁部18は、上記のような弾性特性と非導電特性との双方の性質を有していれば、いずれの材質から成るものであってよい。例えば、第1絶縁部18は、樹脂材料(特にゴム材料)からなる非導電性樹脂から構成されたものであってよい。第1絶縁部18の第1方向D1および第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から好ましい第1絶縁部18は、ゴム材料からなる非導電性ゴムから構成される。第1絶縁部18が非導電性ゴムから構成されることにより、第1絶縁部18の第1方向D1および第2方向D2への伸縮がより効果的に達成されるとともに、押圧力をより効果的に検出することができ、また押圧時の押圧感を演出できる。樹脂材料としては、例えば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(例えば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂およびウレタン系樹脂等から成る群から選択される少なくとも1種の樹脂材料であってよい。ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等から成る群から選択される少なくとも1種のゴム材料であってよい。ゴム材料は、ゴムの種類に応じて、弾性体の保持や引裂強度、引張強度の補強のために架橋材、充填材を含んでいてもよい。
各々の第1絶縁部18の厚みは、外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化し、かつ第1絶縁部18が伸縮に耐え得る限り特に限定されない。第1絶縁部18の厚みは通常、第1絶縁部18の第2電極側の表面18aが第1電極11の第2電極側の表面11aの近傍(好ましくは表面11aと面一)となるような厚みであってもよい。特に、第1電極11の第2電極側表面11aとは反対側における第1絶縁部18の厚みb(図4参照)は、対人感圧用途において、第1絶縁部18の第1方向D1および第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、通常は0.01mm〜10mm、好ましくは0.01mm〜2mmであり、より好ましくは0.1mm〜2mmであり、さらに好ましくは0.2mm〜1mmであり、例えば1つ例示すると0.5mmが最も好ましい。
隣接する第1電極11間における各々の第1絶縁部18の幅(第2方向D2の寸法)は、外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化し、かつ第1絶縁部18が伸縮に耐え得る限り特に限定されない。第1絶縁部18の幅は、対人感圧用途において、通常は0.01〜50mm、好ましくは0.5〜10mmであり、例えば1つ例示すると2mmがより好ましい。
第1絶縁部18の第1方向D1の寸法は、特に限定されず、通常は第1電極11間の短絡防止の観点から、第1電極11の長尺方向寸法(第1方向D1の寸法)と同じか、またはそれよりも長い。
弾性基材19は弾性特性および非導電特性を有する。弾性特性は、第1電極11が有する弾性特性と同様の特性である。具体的には、弾性基材19は、感圧素子の第1方向D1および第2方向D2への伸縮が達成されるような弾性特性を有すればよい。好ましくは、弾性基材19は、押圧力の良好な伝達による感圧感度のさらなる向上の観点から、押圧時に第1絶縁部18よりも変形しないように、第1絶縁部18よりも高い弾性率を有している。伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、弾性基材19の弾性率は例えば約105Pa〜108Paであることが好ましく、例えば1つ例示すると約106Paである。弾性基材19の弾性率は上記範囲内で大きいほど、押圧力の測定範囲は広くなる。弾性基材19の弾性率は上記範囲内で小さいほど、感圧感度は向上する。感圧感度が向上すると、例えば、従来では検出し難い微小な押圧力でも、検出できるようになる。これに伴い、押圧力の付与開始を精度よく検出できるようになる。弾性率は、例えば架橋密度を変更することによって調整できる。架橋密度は架橋材の添加量により調整できる。非導電特性について、弾性基材19の導電率は、所望の周波数帯域において容量のインピーダンスよりも十分に大きくてもよい。弾性基材19の導電率は通常は103Ω・cm以上、特に104〜1010Ω・cmであり、例えば1つ例示すると107Ω・cmがより好ましい。かかる導電率は、樹脂材料(ゴム材料)を使用することによって達成できる。
弾性基材19は弾性電極部材に相当し、伸縮性部材とも称されうる。弾性基材19は、上記のような弾性特性と非導電特性との双方の性質を有していれば、いずれの材質から成るものであってよい。例えば、弾性基材19は、第1絶縁部18と同様の樹脂材料(特にゴム材料)からなる非導電性樹脂から構成されたものであってよい。弾性基材19の第1方向D1および第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から好ましい弾性基材19は、ゴム材料からなる非導電性ゴムから構成される。弾性基材19が非導電性ゴムから構成されることにより、弾性基材19の第1方向D1および第2方向D2への伸縮がより効果的に達成されるとともに、押圧力をより効果的に検出することができ、また押圧時の押圧感を演出できる。樹脂材料としては、第1絶縁部18と同様の樹脂材料から成る群から選択される少なくとも1種の樹脂材料であってよい。ゴム材料としては、第1絶縁部18と同様のゴム材料から成る群から選択される少なくとも1種のゴム材料であってよい。ゴム材料は、ゴムの種類に応じて、弾性体の保持や引裂強度、引張強度の補強のために架橋材、充填材を含んでいてもよい。
各々の弾性基材19の厚みは、外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化し、かつ弾性基材19が伸縮に耐え得る限り特に限定されない。弾性基材19の厚みは、対人感圧用途において、通常は0.01〜1000mm、好ましくは0.05〜1mmであり、例えば1つ例示すると0.2mmがさらに好ましい。
第1電極11および第1絶縁部18(特に第1電極11および第1絶縁部18を含む第1弾性体シート20)は、金型を用いた公知の成形方法により製造することができる。
例えば、図9に示すような第1電極11および第1絶縁部18を製造する場合、まず、所望の樹脂材料(ゴム材料)の溶液または原料溶液に対して導電性フィラーおよび所望により架橋材を含有させて、第1電極用複合材料および第1絶縁部用複合材料を得る。次いで、図11Aに示すように、第1電極の所望の形状に対応する成形面を有する金型51および52間に、第1電極用複合材料53を充填し、架橋させて、図11Bに示すように第1電極11を金型51上に得る。その後、図11Cに示すように、第1絶縁部(特に第1弾性体シート20)の所望の形状に対応する成形面を有する金型51および55間に、第1絶縁部用複合材料56を充填し、架橋させて、図11Dに示すように第1電極11および第1絶縁部18(特に第1弾性体シート20)を金型51および55内に得る。図11A〜図11Dの各々は、本開示の感圧素子における第1電極および第1絶縁部(図9に示す第1弾性体シート)を製造するための方法の1つの工程を示す模式的断面図である。
また例えば、図10に示すような第1電極11および第1絶縁部18を製造する場合、まず、所望の樹脂材料(ゴム材料)の溶液または原料溶液に対して導電性フィラーおよび所望により架橋材を含有させて、第1電極用複合材料、第1絶縁部用複合材料および弾性基材用複合材料を得る。次いで、弾性基材用複合材料を用いて成形および架橋を行うことにより、弾性基材19を得る。次いで、図12Aに示すように、第1電極の所望の形状に対応する成形面を有する金型61と弾性基材19との間に、第1電極用複合材料63を充填し、架橋させて、図12Bに示すように第1電極11を弾性基材19上に得る。その後、図12Cに示すように、第1絶縁部(特に第1弾性体シート20)の所望の形状に対応する成形面を有する金型65と弾性基材19と間に、第1絶縁部用複合材料66を充填し、架橋させて、図12Dに示すように第1電極11および第1絶縁部18(特に第1弾性体シート20)を金型65と弾性基材19との間に得る。図12A〜図12Dの各々は、本開示の感圧素子における第1電極および第1絶縁部(図10に示す第1弾性体シート)を製造するための方法の1つの工程を示す模式的断面図である。
複数の第2電極12の各々は少なくとも導電特性を有する線状部材(例えば、導体線または金属線)であり、その表面は通常、誘電体13により覆われている。複数の第2電極12の各々は、第1方向D1と交差する第2方向D2に延在し、かつ第1面と対向する第2面内に配列されている。第1方向D1と交差する第2方向D2とは、第1方向D1および第2方向D2を同一面内で表したとき、第1方向D1と交差する第2方向D2という意味であり、これらの方向は相互に平行ではないという意味である。このときの第1方向D1と第2方向D2とがなす角度(小さい方の角度)は特に限定されず、例えば、1°〜90°であってもよい。感圧素子の第1方向D1での伸縮性のさらなる向上の観点から、第1方向D1と第2方向D2とがなす角度(小さい方の角度)は30°〜90°(特に30°以上特に90°未満)であることが好ましく、例えば1つ例示すると45℃がより好ましい。複数の第1電極11の各々が第2方向D2に延在するとは、第2電極12の各々の延在方向が第2方向D2と略平行であるという意味である。第2電極12の各々は、後述するように、周期的に設けられた屈曲部を有しながら第2方向D2に延在するため、第2電極12の各々の延在方向とは、詳しくは、第2電極12の各々が全体として延在する方向(例えば主方向)のことである。第1面と対向する第2面とは、第1面M1と並行な第2面という意味であり、第2面M2は、図13に示すように、第1面M1と同一の面であってもよい。第2面は第1面M1に応じて、平面であってもよいし、または曲面であってもよい。図13は、図3の感圧素子を第1面M1上の直線L(一点鎖線)で切ったときの模式的断面図であって、第1方向D1に対する垂直断面図である。なお、図13は、第2電極12の断面形状が円形であるとき、第1方向D1に対する垂直断面図では第2電極12は楕円形状を有することを示している。第2電極12の断面形状は、第2電極12が直線状を有するものと仮定したときに、長尺方向に対する垂直断面における形状のことである。
複数の第2電極12の各々は、平面視において、図3および図14Aに示すように、周期的(および規則的)に設けられた屈曲部Kを有している。例えば、複数の第2電極12の各々は、平面視において、ミアンダ形状を有している。ミアンダ形状とは、線状体が周期的(および規則的)に屈曲した波の形状である。本明細書中、「屈曲」は直線的に曲がる態様だけでなく、曲線的に曲がる態様(すなわち「湾曲」)も包含する。従って、ミアンダ形状の具体例として、例えば、正弦波形状、矩形波形状、三角波形状、のこぎり波形状およびこれらの複合形状が挙げられる。図3は、本開示の感圧素子の一例の構成を模式的に示した斜視図であるが、図3からも、複数の第2電極12の各々が、平面視において、周期的(および規則的)に設けられた屈曲部Kを有していることが明らかである。図14Aは、本開示の感圧素子の別の一例の平面図であって、伸展前の平面図である。
複数の第2電極12の各々が、上記のように、周期的(および規則的)に設けられた屈曲部Kを有することにより、本開示の感圧素子100はより十分な伸縮性を有するようになる。詳しくは、感圧素子100は、図14Aおよび図14Bに示すように、第2電極12の屈曲部Kの伸展および屈曲(ならびに第1電極11および第1絶縁部18の弾性)に基づいて第2方向において、より十分に伸縮するようになる。また感圧素子100は、第1電極11(および第1絶縁部)の弾性に基づいて第1方向D1において、より十分に伸縮するようになる。
第2方向D2における伸縮(特に伸展)について、より詳しくは、図14Aに示すように、第1方向D1に対する第2電極12の屈曲角度をθと仮定したとき、伸展時における感圧素子100の第2方向D2の寸法が、屈曲時(すなわち伸展前)の感圧素子100の第2方向D2の寸法に対して1/sinθ倍となるような伸展が可能となる。これに対して、第2電極12に屈曲部が設けられないとき、θは90°となるため、伸展は達成されない。図14Bは、図14Aの感圧素子の伸展時の平面図である。
第2電極12の屈曲角度θは、各々の第2電極12における隣接する任意の2つの屈曲部K間における接線と、第1方向D1とのなす角度(小さい方の角度)の平均値である。第2電極12の屈曲角度θは、感圧素子100の伸縮性(特に第2方向D2における伸縮性)のさらなる向上、隣接する第1電極11間での短絡のさらなる防止、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、好ましくは1°〜90°(特に1°以上90°未満)であり、より好ましくは10°〜80°であり、さらに好ましくは30°〜60°であり、最も好ましくは40°〜50°である。
複数の第2電極12は通常、同様の平面視形状を有しており、しかも複数の第2電極12のうち隣接する任意の2つの第2電極12は相互に並行である。ここで「並行」とは、隣接する2つの第2電極12が相互に一定の間隔を空けて、交わらない関係を意味する。
複数の第2電極12の各々がミアンダ形状を有するとき、隣接する任意の2つの第2電極12間の距離P(ピッチ)(第1方向D1の間隔)(図3)は通常、1mm〜30mmであり、対人感圧用途の観点から好ましくは2mm〜10mmであり、例えば1つ例示すると5mmがより好ましい。各々の第2電極12における第1方向D1の最大変位量Q(例えば、振幅×2a)(図3)は通常、2mm〜40mmであり、対人感圧用途の観点から好ましくは4mm〜20mmであり、例えば1つ例示すると10mmがより好ましい。各々の第2電極12における第2方向D2の繰り返し単位寸法R(図3)は通常、1mm〜40mmであり、対人感圧用途の観点から好ましくは2mm〜20mmであり、例えば1つ例示すると10mmがより好ましい。
第2電極12の各々は、その表面を覆う誘電体13を有しながら、第1電極11に近接配置されている。すなわち、第2電極12の各々はその表面の誘電体13を介して間接的に第1電極11と接触するように配置されている。導電特性について、第2電極12は、所望の周波数帯域において容量のインピーダンスよりも十分に小さい抵抗率を有していればよい。第2電極12の抵抗率は通常は10-1Ω・cm以下、特に10-12Ω・cm〜10-1Ω・cmであり、10-12Ω・cm〜10-8Ω・cmがより好ましい。かかる抵抗率は、例えば、金属線を使用することによって達成できる。
第2電極12の各々は通常、可撓性を有していてもよいし、弾性特性を有してもよいし、それら両方を有していてもよい。可撓性とは、外力(感圧素子に対して加えられる通常の押圧力:例えば約0.1N/cm2〜100N/cm2の押圧力)によって全体として撓み変形しても、除力すると元の形状へと戻る特性をいう。第2電極12は可撓性を有する場合、例えば約108Pa超、特に108Pa超1012Pa以下の弾性率、例えば1つ例示すると約1.2×1011Paの弾性率を有している。
第2電極12は、少なくとも導電特性を有する限り、いずれの材質から成るものであってよい。第2電極12は、可撓性を有する場合、例えば、金属体から構成されたものであってもよいまた、第2電極12が可撓性を有する場合において、ガラス体およびその表面に形成された導電層およびその中に分散された導電性フィラーの少なくとも一方から構成されたものであってもよい。また、第2電極12が可撓性を有する場合において、樹脂体およびその表面に形成された導電層およびその樹脂体内に分散された導電性フィラーの少なくとも一方から構成されたものであってよい。金属体は、金属からなる電極部材であり、すなわち第2電極12は実質的に金属からなるものでよい。金属体は、例えば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni−Cr合金(ニクロム)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In2O3(酸化インジウム(III))およびSnO2(酸化スズ(IV))から成る群から選択される少なくとも1種の金属を含んで構成される。ガラス体は、酸化ケイ素の網目状構造を有するものであれば特に限定されず、例えば、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等から成る群から選択される少なくとも1種のガラス材料を含んで構成されるものであってよい。樹脂体は、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(例えば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂およびウレタン系樹脂等から成る群から選択される少なくとも1種の樹脂材料を含んで構成されるものであってよい。ガラス体および樹脂体の導電層は、金属体を構成し得る金属と同様の金属の群から選択される少なくとも1種の金属を蒸着させてできる層であってもよいし、または導電性インクの塗布などによって形成されてできる層であってもよい。ガラス体および樹脂体の導電性フィラーは、金属体を構成し得る金属と同様の金属の群から選択される少なくとも1種の金属を含んで構成されるものであってよい。第2電極12は、弾性特性を有する場合、第1電極11と同様の導電性ゴムから構成されていてもよい。
第2電極12は通常、長尺形状(例えば、線状)を有する長尺部材である。第2電極12が長尺部材であって、かつ金属体から構成されるとき、この第2電極12は金属線または金属ワイヤ(例えば、銅線)に相当し、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から好ましい。
第2電極12は感圧素子のヒータ要素であってもよい。第2電極12がヒータ要素であるとき、この第2電極12を有する感圧素子はヒータとしても機能する。ヒータ要素として、ニクロム線が挙げられる。例えば、当該感圧素子を車両の座席表面に設置した場合に、運転者および同乗者の少なくとも一方の身体が冷たくないように保温できる。また例えば、当該感圧素子を操舵装置(例えば、ステアリングホイール)表面に設置した場合に、操舵装置を握る手が冷たくないように保温できる。
第2電極12の断面形状は、押圧力の付与により、その表面の誘電体13と第1電極11との接触領域の面積が拡大する限り特に限定されず、例えば、円形状であってもよいし、楕円形状であってもよいし、または図15もしくは図16それぞれに示すような三角形状もしくは台形形状等であってもよい。第2電極12の断面形状が三角形状または台形形状のような傾斜を有する形状であると、押圧力の付与がないときに、誘電体13と第1電極11との接触領域の面積が一定となり易いため、感度のリニアリティーが向上する。特に、第2電極12の断面形状が台形形状であると、除荷時に第1電極と第2電極(特に誘電体13)が負荷なく離れることが出来るため、信頼性が向上する。図15および図16は第2電極12の一例の模式的断面図である。
第2電極12の断面寸法は、電極間の静電容量を測定できる限り特に限定されず、通常は1μm〜10mmであり、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から好ましくは100μm〜1mmであり、例えば1つ例示すると300μmがより好ましい。第2電極12の断面寸法を小さくすると、接触領域の面積の変化が大きくなり、感圧感度が向上する。長尺部材の断面寸法を大きくすると、押圧力の測定範囲がさらに広くなる。第2電極12の断面寸法は断面形状における最大寸法である。詳しくは、第2電極12の断面寸法は、第2電極12が直線状を有するものと仮定したときに、長尺方向に対する垂直断面における最大寸法(例えば、直径)のことである。
第2電極12は通常、複数で使用される。このとき、当該複数の第2電極12の各々と複数の第1電極11の各々との交差箇所(交差部分またはクロスポイント)の容量変化を検出器により検出することにより、パターニングが可能である。パターニングとは、押圧力とともに、押圧位置も検出することである。
複数の第2電極12の各々は、その表面を誘電体13により覆われている。誘電体13は、図13、図15および図16において、第2電極12の表面全体を完全に覆っているが、誘電体13の被覆領域は、誘電体13が第2電極12の表面を少なくとも部分的に覆う限り、特に限定されない。誘電体13が第2電極12の表面を少なくとも部分的に覆うとは、誘電体13が、第2電極12の表面における、少なくとも第1電極11と第2電極12との間の部分を覆っている状態をいう。換言すると、誘電体13は、第1電極11と第2電極12との間に存在する限り、第2電極12の表面における少なくとも一部を覆っていればよい。誘電体13について、「覆う」とは、第2電極12の表面に対して皮膜状に密着しつつ一体化されることである。
誘電体13は、感圧素子構造のさらなる簡易化の観点から、第2電極12の表面全体を完全に覆っていることが好ましい。誘電体13が第2電極12の表面全体を完全に覆っている場合、誘電体13は第2電極12の絶縁皮膜を構成し、誘電体13および第2電極12は通常、一体化されている。一体化された誘電体13および第2電極12は単一の絶縁コート金属線に相当してもよく、例えば、エナメル線、エレメント線であってもよい。絶縁コート金属線を用いると、これを第1電極11と撚り線14との間で配置させるだけで、エッチングなどのフォトリソグラフィプロセスなしに、感圧素子を構成できるので、感圧素子構造の簡易化をより一層、十分に達成でき、しかも製造コストが安価である。
誘電体13は、少なくとも「誘電体」としての性質を有していれば、いずれの材質から成るものであってよい。例えば、誘電体13は、樹脂材料、セラミック材料または金属酸化物材料などを含んで成るものであってよい。あくまでも例示にすぎないが、誘電体13は、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフテレート樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などから成る群から選択される少なくとも1種の樹脂材料から成っていてもよい。また、誘電体13として、Al2O3およびTa2O5などから成る群から選択される少なくとも1種の金属酸化物材料から成るものであってもよい。誘電体13は通常、所望の周波数帯域において、容量のインピーダンスよりも高い抵抗値を有する材料からなっている。
誘電体13は通常、剛性特性を有する。剛性特性とは、外力(感圧素子に対して加えられる通常の押圧力:例えば約0.1N/cm2〜100N/cm2の押圧力)による変形に対して抵抗する特性をいう。誘電体13は通常、上記のような通常の押圧力によっては変形しない。誘電体13は、感圧部への押圧力の付与時に第1電極11よりも変形しないように、第1電極11よりも高い弾性率を有していてもよい。例えば、第1電極11の弾性率が約104Pa〜108Paである場合、それよりも高い弾性率を誘電体13が有していてもよい。
誘電体13の厚みは、外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化する限り特に限定されず、通常は20nm〜2mmであり、対人感圧用途の観点から好ましくは20nm〜1mmであり、例えば1つ例示すると10μmがより好ましい。
誘電体13が樹脂材料からなる場合、樹脂材料溶液を塗布し、乾燥させるコーティング法、および樹脂材料溶液中で電着を行う電着法等により形成することができる。誘電体13が金属酸化物材料からなる場合、陽極酸化法等により形成することができる。
本開示において、第2電極12の各々は撚り線を構成することが好ましい。撚り線は、例えば図17に示すように、複数の絶縁コート導体線(例えば絶縁コート金属線)140を撚ってなる撚り線(例えば、複合線)14のことである。図17の撚り線14の断面形状を図18Aに示す。撚り線14は、外力(例えば押圧力)の付与がないとき、当該撚り線14を構成する複数の絶縁コート導体線140は通常、図18Aに示すように、全体として、略円形に集束している。撚り線14は、外力の付与時には、図18Bに示すように、その断面形状は変形する。すなわち当該撚り線14を構成する複数の絶縁コート導体線140の断面構成は、図18Bに示すように、変化する。このため、第2電極12の各々として撚り線14を用いると、外力の付与の前後で感圧特性に大きな差が生じることが懸念される。しかしながら、本開示は以下の事象を見い出した。
第2電極12の各々として撚り線14を用いても、外力の付与の前後で感圧特性に差がほとんど生じることなく、むしろ、押圧力の測定範囲がさらに拡大するとともに、感圧感度がさらに向上する。図17は、第2電極12および誘電体13として使用可能な撚り線の模式的斜視図である。図18Aは、外力が付与されていない状態の図17の撚り線の模式的断面図である。図18Bは、外力が付与されている状態の図17の撚り線の模式的断面図である。
第2電極12の各々が、例えば図17に示すように、複数の絶縁コート導体線140を撚ってなる撚り線14を構成するとき、当該撚り線14の各々の絶縁コート導体線140における導体線141が第2電極12に相当し、この導体線141の表面を覆う絶縁コート142が誘電体13に相当する。このような態様においては、複数の第2電極12の各々および複数の誘電体13の各々が、複数の絶縁コート導体線140を含む撚り線14を構成している。
撚り線14において、各々の導体線141(第2電極12)は、図17および図18Aに示すように、その表面を絶縁コート142(誘電体13)により覆われているが、絶縁コート142(誘電体13)のない複数の導体線から構成された撚り線の表面が絶縁コート142(誘電体13)で覆われていてもよい。
撚り線14においては、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、各々の導体線141(第2電極12)は、図17および図18Aに示すように、その表面を絶縁コート142(誘電体13)により覆われていることが好ましい。
撚り線14の断面寸法は、第2電極12の断面寸法と同様であってもよい。撚り線14の断面寸法は、好ましくは100μm〜1mmであり、より好ましくは100μm〜500μmである。
撚り線14を構成する導体線141の数は、電極間の静電容量を測定できる限り特に限定されず、例えば2本以上、特に2〜100本であってもよい。
撚り線14を構成する導体線141は、第2電極12を構成する上記した材料と同様の材料からなってよい。撚り線14を構成する導体線141は、第2電極12を構成し得る金属体と同様の金属体(すなわち金属線)であることが好ましい。撚り線14を構成する導体線141の断面寸法は、第2電極12の断面寸法と同様であってもよい。撚り線14を構成する導体線141の断面寸法は、好ましくは1μm〜500μmであり、より好ましくは10μm〜100μmである。
撚り線14を構成する導体線141は、第2電極12の導電率と同様の導電率を有する。
撚り線14を構成する導体線141は、第2電極12を構成する上記した材料と同様の材料からなってよい。撚り線14を構成する導体線141は、第2電極12を構成し得る金属体と同様の金属体(すなわち金属線)であることが好ましい。
撚り線14を構成する絶縁コート142は、誘電体13を構成する上記した材料と同様の材料からなってよい。
絶縁コート142の被覆領域は、絶縁コート142が導体線141の表面を少なくとも部分的に覆う限り、特に限定されない。絶縁コート142は、感圧素子構造のさらなる簡易化の観点から、導体線141の表面全体を完全に覆っていることが好ましい。絶縁コート142が導体線141の表面全体を完全に覆っている場合、絶縁コート142は導体線141の絶縁皮膜を構成し、絶縁コート142および導体線141は通常、一体化されている。一体化された絶縁コート142および導体線141は単一の絶縁コート金属線に相当してもよく、例えば、エナメル線、エレメント線であってもよい。複数の絶縁コート金属線を用いると、これらを撚るだけで、撚り線14を形成することができる。
絶縁コート142は、誘電体13と同様に、剛性特性を有する。絶縁コート142は、誘電体13と同様に、押圧力の付与時に第1電極11よりも変形しないように、第1電極11よりも高い弾性率を有していてもよい。例えば、第1電極11の弾性率が約104Pa〜108Paである場合、それよりも高い弾性率を絶縁コート142が有していてもよい。
撚り線14を構成する絶縁コート142の厚みは、上記した誘電体13の厚みと同様の範囲内であってもよく、例えば、20nm〜2mmであり、対人感圧用途の観点から好ましくは20nm〜1mmであり、例えば1つ例示すると10μmがより好ましい。
感圧素子100は、第2電極12の位置ズレを制限する拘束部材15をさらに有してもよい。拘束部材15は、第2電極12を感圧素子100における所定の位置に必ずしも固定しなければならないというわけではなく、第2電極12が所定の位置に保持される程度の拘束力を有していればよい。感圧素子100が拘束部材を有することにより、第2電極12の位置ズレを防止でき、結果として、所定位置での押圧力を確実に検出することができる。また感圧素子を曲面に装着するとき、歪みなどを緩和し易く、破損を防止できる。
拘束部材15は、図3および図13等において、第2電極12(および誘電体13)を、第1電極11を含む第1弾性体シート20に対して拘束しているが、第2電極12表面の誘電体13と第1電極11との接触が達成される限り、これに限定されるものではない。例えば、拘束部材15は、第1弾性体シート20とともに第2電極12(および誘電体13)を挟持するように配置される後述の第2弾性体シート(図示せず)に対して第2電極12(および誘電体13)を拘束してもよい。また例えば、拘束部材15は、第1弾性体シート20および後述の第2弾性体シート(図示せず)の両方に対して第2電極12(および誘電体13)を拘束してもよい。すなわち、第2電極12(および誘電体13)を第1弾性体シートと第2弾性体シートとの間に配置させた状態で、第1弾性体シート、第2電極12(および誘電体13)および第2弾性体シート(図示せず)を拘束部材15により一体化してもよい。拘束部材15は、伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、第2電極12(および誘電体13)を、第1電極11を含む第1弾性体シート20に対して拘束していることが好ましい。
拘束部材15による拘束は、誘電体13の第2電極12からの剥離の防止、感圧素子の伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、接続糸15aによる縫合および接続であることが好ましい。接続糸15aにより第1弾性体シート20と第2電極12とを縫合接続することにより、感圧素子の屈曲性と伸縮性を維持しつつ、第1電極と第2電極とが交差する位置を一定範囲内に拘束でき、感圧位置の再現性を確保できる。さらに、誘電体13の第2電極12からの剥離を防止することもできる。
接続糸15aは、繊維を撚り合わせた撚糸の形態を有していてもよいし、または撚り合わせていない単繊維(すなわちモノフィラメント)の形態を有していてもよい。接続糸を構成する繊維は、化学繊維、天然繊維またはそれらの混合繊維であってもよい。
化学繊維は、合成繊維、半合成繊維、再生繊維または無機繊維であってよい。合成繊維としては、ポリスチレン系繊維、脂肪族ポリアミド系繊維(例えば、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維)、芳香族ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維(例えば、ビニロン繊維)、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維(例えば、ポリエステル繊維、PET繊維、PBT繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアリレート繊維)、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維、フェノール系繊維およびポリフルオロエチレン系繊維などを挙げることができる。半合成繊維としては、セルロース系繊維および蛋白質系繊維などを挙げることができる。再生繊維としては、レーヨン繊維、キュプラ繊維およびリヨセル繊維などを挙げることができる。そして、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維および金属繊維などを挙げることができる。
天然繊維は、植物繊維、動物繊維またはそれらの混合繊維であってよい。植物繊維としては、綿および麻(例えば、アマ、ラミー)などを挙げることができる。動物繊維としては、毛(例えば、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、モヘヤ)、絹および羽毛(例えば、ダウン、フェザー)などを挙げることができる。
接続糸15aは、ニット用の糸などに用いられている伸縮性を有する糸が好ましく使用される。伸縮性を有する糸は、例えば、エッフェル(カナガワ株式会社)、ソロテックス(帝人フロンティア株式会社)等の市販品として入手可能である。
接続糸15aを用いた第2電極12(および誘電体13)の第1弾性体シート20または後述の第2弾性体シートへの拘束は通常、接続糸15aを第1弾性体シート20または後述の第2弾性体シートに貫通させることを含む。このとき、接続糸15aの貫通は電極(すなわち第1電極および後述の第3電極)を避けて行うことが好ましい。例えば、接続糸15aを第1弾性体シート20に貫通させる場合には、第1電極11で貫通を行うことなく、図3および図14Aに示すように、第1絶縁部18で貫通を達成することが好ましい。接続糸15aの貫通を、電極を避けて行うにより、第1電極(および後述の第3電極)の導電特性のばらつきを抑制でき、感圧測定の精度を確保できる。
接続糸15aは、図3および図14A等においては、第1電極11を跨ぐ(または横切る)ことなく、第1絶縁部8で第2電極12(および誘電体13)を跨ぐ(または横切る)ステッチ(以下、単に「ステッチS1」という)により、第2電極12の第1弾性体シート20への縫合接続を行っているが、これに限定されるものではない。例えば、接続糸15aは、図19Aおよび図19Bに示すように、第1電極11とともに、第2電極12(および誘電体13)を跨ぐ(または横切る)ステッチ(以下、単に「ステッチS2」という)により、第2電極12の第1弾性体シート20への縫合接続を行ってもよい。このような態様においても、接続糸15aの貫通は電極を避けて行われているため、電極の導電特性のばらつきを抑制でき、感圧測定の精度を確保できる。ステッチとは、縫い方または縫い目のことである。図19Aは、本開示の感圧素子の別の一例の構成を模式的に示した斜視図であって、接続糸による別のステッチを説明するための斜視図である。図19Bは、図19Aの感圧素子の模式的断面図であって、第1方向D1に対する垂直断面図である。
接続糸15aが、ステッチS1により、第2電極12の第1弾性体シート20への縫合接続を行う場合、接続糸15aは、図3に示すように、平面視において、第1方向D1に沿って配置されながら、第1弾性体シート20と第2電極12とを縫合接続できる。これにより、接続糸の縫合時に縫合箇所が第1電極11に接触することなく、第1弾性体シート20と第2電極12との縫合接続を容易に達成することができる。
本開示の感圧素子100は、図20に示すように、第1弾性体シート20の第2電極12側と逆側に配置された第1絶縁層30をさらに有することが好ましい。このような第1絶縁層30により、第1電極11の背面側の影響による測定ノイズを低減でき、安定して精度のよい感圧測定を可能にする。図20は、本開示の感圧素子の別の一例の構成を模式的に示した斜視図であって、第1絶縁層30の配置を説明するための斜視図である。
第1絶縁層30は弾性特性および非導電特性を有する。弾性特性は、第1電極11が有する弾性特性と同様の特性である。具体的には、第1絶縁層30は、感圧素子の第1方向D1および第2方向D2への伸縮が達成されるような弾性特性を有すればよい。好ましくは、第1絶縁層30は、伸縮時に第1電極11よりも変形するように、第1電極11よりも低い弾性率を有している。伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、第1絶縁層30の弾性率は例えば約104Pa〜108Paであることが好ましく、例えば1つ例示すると約105Paである。第1絶縁層30の弾性率は上記範囲内で大きいほど、押圧力の測定範囲は広くなる。第1絶縁層30の弾性率は上記範囲内で小さいほど、感圧感度は向上する。感圧感度が向上すると、例えば、従来では検出し難い微小な押圧力でも、検出できるようになる。これに伴い、押圧力の付与開始を精度よく検出できるようになる。弾性率は、例えば架橋密度を変更することによって調整できる。架橋密度は架橋材の添加量により調整できる。非導電特性について、第1絶縁層30の抵抗率は、所望の周波数帯域において容量のインピーダンスよりも十分に大きくてもよい。第1絶縁層30の抵抗率は通常は103Ω・cm以上、特に104〜1010Ω・cmであり、例えば1つ例示すると107Ω・cmがより好ましい。かかる導電率は、例えば樹脂材料(ゴム材料)を使用することによって達成できる。
第1絶縁層30は弾性絶縁部材に相当し、伸縮性部材とも称されうる。第1絶縁層30は、上記のような弾性特性と非導電特性との双方の性質を有していれば、いずれの材質から成るものであってよい。例えば、第1絶縁層30は、樹脂材料(特にゴム材料)からなる非導電性樹脂から構成されたものであってよい。第1絶縁層30の第1方向D1および第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から好ましい第1絶縁層30は、ゴム材料からなる非導電性ゴムから構成される。第1絶縁層30が非導電性ゴムから構成されることにより、第1絶縁層30の第1方向D1および第2方向D2への伸縮がより効果的に達成されるとともに、押圧力をより効果的に検出することができ、また押圧時の押圧感を演出できる。樹脂材料は、第1絶縁部18の説明で上記した樹脂材料と同様の樹脂材料であってよい。ゴム材料は、第1絶縁部18の説明で上記したゴム材料と同様のゴム材料であってよい。ゴム材料は、ゴムの種類に応じて、弾性体の保持や引裂強度、引張強度の補強のために架橋材、充填材を含んでいてもよい。
各々の第1絶縁層30の厚みは、外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化し、かつ第1絶縁層30が伸縮に耐え得る限り特に限定されない。第1絶縁層30の厚みは、対人感圧用途において、第1絶縁層30の第1方向D1および第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、通常は0.01mm〜10mm、好ましくは0.01mm〜2mmであり、より好ましくは0.1mm〜2mmであり、例えば1つ例示すると0.5mmがさらに好ましい。
感圧素子100は、複数の第2電極12を挟んで第1弾性体シート20と対向する第2弾性体シート40をさらに有することが好ましい。第2弾性体シート40は、上記した第1絶縁層30と同様の層(またはシート)であってもよいし、または第3電極を含む弾性体シートであってもよい。第2弾性体シート40が上記した第1絶縁層30と同様の層(またはシート)である場合、感圧素子100は上記した測定メカニズム(その1)を採用する。第2弾性体シート40が第3電極を含む弾性体シートである場合、感圧素子100は上記した測定メカニズム(その2)を採用する。感圧素子100は、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、第3電極を含む第2弾性体シート40を含むことが好ましい。以下、第2弾性体シート40が第3電極を含む弾性体シートである場合について説明する。
第2弾性体シート40が第3電極を含む弾性体シートである場合、この第2弾性体シート40は、感圧素子(特に第1電極)の長寿命化、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、以下の構造を有することが好ましい:
第2弾性体シート40は、図21に示すように、
複数の第1電極11と対向し、かつ導電性の弾性体からなる複数の第3電極16と、
複数の第3電極16相互の間に配置され、かつ絶縁性の弾性体からなる複数の第2絶縁部48と、を有する。図21は、本開示の感圧素子の別の一例の構成を模式的に示した斜視図であって、第2弾性体シート40の配置を説明するための斜視図である。
詳しくは、第1弾性体シート20と第2弾性体シート40とは、第1弾性体シートの複数の第1電極11の各々が、第2弾性体シートの複数の第3電極16の各々と対向するように、配置されている。より詳しくは、第2弾性体シート40の複数の第3電極16の延在方向は、第1弾性体シート20の複数の第1電極11の延在方向(すなわち第1方向D1)と平行の関係を有する。
第2弾性体シート40がこのような第3電極16および第2絶縁部48を有することにより、押圧力による変形を第1電極と第3電極の両方に分散することができ、押圧力の測定レンジを広げることができる。また、第1電極の変形の程度を軽減でき、第1電極を長寿命化できる。
第3電極16および第2絶縁部48はそれぞれ第1電極11および第1絶縁部18に相当する。第3電極16および第2絶縁部48はそれぞれ第1電極11および第1絶縁部18と同様の範囲内から選択されてよい。例えば、第3電極16および第2絶縁部48の弾性率、導電率、形状、寸法および構成材料はそれぞれ第1電極11および第1絶縁部18の形状、寸法および構成材料と同様の範囲内から選択されてよい。
特に各々の第2絶縁部48の厚みは、外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化し、かつ第2絶縁部48が伸縮に耐え得る限り特に限定されない。第2絶縁部48の厚みは通常、第2絶縁部48の第2電極側の表面48aが第3電極16の第2電極側の表面の近傍(好ましくは第3電極16の第2電極側の表面と面一)となるような厚みであってもよい。特に、第3電極16の第2電極側表面とは反対側における第2絶縁部48の厚みa(図21参照)は、対人感圧用途において、第2絶縁部48の第1方向D1および第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、通常は0.01mm〜10mm、好ましくは0.01mm〜2mmであり、より好ましくは0.1mm〜2mmであり、さらに好ましくは0.2mm〜1mmであり、例えば1つ例示すると0.2mmが最も好ましい。
第3電極16および第2絶縁部48(特に第3電極16および第2絶縁部48を含む第2弾性体シート40)は特に、第1電極11および第1絶縁部18(特に第1電極11および第1絶縁部18を含む第1弾性体シート20)の製造方法と同様の方法(すなわち、上記した金型を用いた公知の成形方法)により製造することができる。
本開示の感圧素子100は、第2弾性体シート40の第2電極12側と逆側に配置された第2絶縁層(図示せず)をさらに有することが好ましい。これにより、第3電極の背面側の影響による測定ノイズを低減でき、安定して精度のよい感圧測定を可能にする。
第2絶縁層は第1絶縁層30と同様の範囲内から選択されてよい。例えば、第2絶縁層の弾性率、導電率、形状、寸法および構成材料はそれぞれ第1絶縁層30と同様の範囲内から選択されてよい。
本開示の感圧素子100は、第1弾性体シート20と第2弾性体シート40との間に、第2電極12(および誘電体13)を内部に封止する封止部50を有する。封止部50は通常、図22に示すように、第1弾性体シート20と第2弾性体シート40との間における周縁部に設けられ、第2電極12(および誘電体13)を内部に封止する。封止部50により、感圧素子の第1電極11および第3電極16の劣化(ならびに第2電極12および誘電体13)を低減でき、長期信頼性を向上できる。図22は、第2弾性体シートの模式的下面図であって、第2弾性体シート40における封止部50の配置を説明するための図である。
封止部50は、第1弾性体シート20と第2弾性体シート40との間の封止が達成できる限り特に限定されず、例えば、シリコーンゴム系接着剤等により形成することができる。
本開示の感圧素子100は通常、図3等に示すように、複数の第1電極11と電気的に接続されているコネクタ60Aおよび複数の第2電極12と電気的に接続されているコネクタ60Bを有する。このようなコネクタ60Aおよび60Bを介して、各々の第1電極11と各々の第2電極12とが平面視で交差する箇所(すなわち交差部分またはクロスポイント)の静電容量およびその変化が測定される。コネクタ60Aおよび60Bはそれぞれ、第1電極11および第2電極12との電気的な接続により、上記測定が可能な限り特に限定されず、公知のコネクタが使用可能である。
[本開示の感圧素子の製造方法]
本開示の感圧素子100は、例えば以下の工程を含む方法により、製造することができる。複数の第1電極11および第1絶縁部18を含む第1弾性体シート20を製造する工程; 第1弾性体シート20に、表面に誘電体13を有する第2電極12を設置する工程; 第2電極12が設置された第1弾性体シート20にコネクタ60Aおよび60Bを接続する工程; およびコネクタ60Aおよび60Bが接続された第1弾性体シート20に第2弾性体シート40を張り合わせる工程。
第1弾性体シート20の製造工程においては、金型を用いた公知の成形方法を用いて、例えば、図23に示すような第1弾性体シート20を得る。詳しくは、第1電極11の断面形状に応じて、上記した図11A〜図11Dに示す方法、および上記した図12A〜図12Dに示す方法を採用すればよい。図23は、感圧素子の製造方法における1つの工程を示す模式的斜視図である。
第2電極12の設置工程においては、まず、第2電極12に所望の配置で屈曲部Kを形成し、この第2電極12を第1弾性体シート20上に配置する。次いで、第2電極12を、所望の位置で、第1弾性体シート20に拘束部材15により拘束する。例えば、図24に示すように、接続糸15aを所望の位置およびステッチで用いて、第2電極12を第1弾性体シート20に縫合および接続する。図24は、感圧素子の製造方法における1つの工程を示す模式的斜視図である。
コネクタの接続工程においては、例えば図20に示すように、第2電極12が設置された第1弾性体シート20にコネクタ60Aおよび60Bを接続するとともに、所望により、第1絶縁層30を第1弾性体シート20の第2電極12側とは逆側に配置させ、接着する。接着方法は、第1弾性体シート20と第1絶縁層30との接着が達成される限り特に限定されず、例えば、シリコーンゴム系接着剤等の接着剤を用いる方法が挙げられる。接着剤の塗布領域は、第1絶縁層30における全面または一部(例えば周縁部)であってもよいが、拘束部材15による第1弾性体シート20の貫通孔を封止する観点から、全面であることが好ましい。
第2弾性体シート40の張り合わせ工程においては、図21に示すように、第1弾性体シート20と第2弾性体シート40との間で第2電極12(および誘電体13)を挟持するように、第2弾性体シート40を第1弾性体シート20に張り合わせる。張り合わせ方法は、第1弾性体シート20と第2弾性体シート40との接着が達成される限り特に限定されず、例えば、シリコーンゴム系接着剤等の接着剤を用いる方法が挙げられる。接着剤の塗布領域は、感圧素子100の伸縮時における第2電極12(および誘電体13)の伸展および屈曲と、第1弾性体シート20と第2弾性体シート40との間の封止の観点から、図22に示すように、第2弾性体シート40における周縁部(すなわち封止部50の領域)であることが好ましい。
(本開示の感圧素子の用途)
本開示の感圧素子は各種管理システムおよび各種電子機器におけるセンサ素子として好適に利用できる。
管理システムとしては、例えば、欠品管理システム(レジかご、物流管理、冷蔵庫関連品、在庫管理)、車管理システム(またはドライバーモニタリングシステム)(座席シート、操舵装置、コンソール周りのスイッチ(アナログ入力可能))、コーチング管理システム(シューズ、衣類)、セキュリティー管理システム(接触部全部)、介護・育児管理システム(機能性寝具および機能性便座関連品)等が挙げられる。
車管理システム(またはドライバーモニタリングシステム)では、ドライバーの操舵装置に対する圧力分布(すなわち把持力または把持位置)およびその変化ならびにドライバー(着座状態)の車載シートに対する圧力分布(例えば、重心位置)およびその変化をモニタリングする。これにより、運転状態を把握し、ドライバーの状態(眠気・心理状態など)を読み取り、フィードバックすることが可能である。コーチング管理システムは、人体(例えば足裏)の重心または荷重分布ならびにそれらの変化などをモニタリングし、適正な状態または心地よい状態へ矯正または誘導することができるシステムである。セキュリティー管理システムにおいては、例えば、人が通過する際に、体重、歩幅、通過速度および靴底パターンなどを同時に読み取ることが可能であり、データと照合することで、人物を特定することが可能である。介護・育児管理システムは、人体の寝具および便座等に対する圧力分布またはその重心ならびにそれらの変化などをモニタリングし、行動を推定することにより、転倒および転落を防止するシステムである。
電子機器としては、例えば、車載機器(カーナビゲーション・システム、音響機器など)、家電機器(電気ポット、IHクッキングヒーターなど)、スマートフォン、電子ペーパー、電子ブックリーダー等が挙げられる。本開示の感圧素子を、上記のような各種管理システムおよび各種電子機器に適用することにより、これまで以上にユーザーの利便性が図られたタッチセンサ素子(感圧シート、操作パネルおよび操作スイッチ等)として利用できる。
例えば、本開示の感圧素子を移動体の操舵装置に適用する場合について詳しく説明する。移動体としては、例えば、自動車、船舶、飛行機等が挙げられる。操舵装置としては、例えば、図25Aに示すステアリングホイールが挙げられる。図25Aにおいて、ステアリングホイールの把持部を200で示す。この場合、感圧素子は、ヒトが手で把持部200を把持したとき、ヒトの指が配置されるところに、設けられることが好ましい。このとき、感圧素子は、第1電極から第2電極の方向に押圧力が付与されるように、感圧素子の表裏方向を考慮して設けられることが好ましい。感圧素子の感圧部は通常、第1電極11および第2電極12の位置関係において、第1電極11が外側に、第2電極12が内側に配向するように配置される。
詳しくは、本開示の感圧素子100を自動車のステアリングホイールに適用する実施態様を図25Bに示す。感圧素子100は、図25Bに示すように、ステアリングホイールの把持部200の外周曲面に装着されている。このとき、感圧素子100は、第1電極11、第2電極12および第3電極16の相対的位置関係において、第1電極11が外側に、第3電極16が内側に配向するように配置される。より詳しくは、感圧素子100は、第3電極16の外面が把持部200の外周曲面と接触するように装着される。
装着方法は、感圧部の把持部への固定が達成される限り特に限定されず、例えば、接着剤が有用である。図25Bにおいては、第3電極16の外面と把持部200の外周曲面との間に間隙が生じているように見えるが、当該間隙には通常、接着剤が充填されている。
感圧素子100の検出部(図示せず)においては第1電極11が電気的に接続される端子T11は移動体の本体のグランドに接続されていることが好ましい。
本開示の感圧素子の用途は、対人感圧用途と非対人感圧用途とに分類することができる。対人感圧用途とは、人体に起因する圧力をモニタリングする用途であり、上記した用途のうち、例えば、車管理システム(またはドライバーモニタリングシステム)、コーチング管理システム、セキュリティー管理システム、介護・育児管理システムを包含する。非対人感圧用途とは、人体以外の物体に起因する圧力をモニタリングする用途であり、上記した用途のうち、例えば、欠品管理システムを包含する。
(実験例1)(ゴム基材についての検討)
図26に示すような感圧素子100xを製造した。感圧素子100xにおいては、表面を誘電体13xで覆われた第2電極12xが、第1弾性体シート20xの第1電極11xと第2弾性体シート40xの第3電極16xとの間に挟持されている。第1弾性体シート20xは、図26に示す寸法を有する第1電極11xおよび第1絶縁部18xを備えている。第2弾性体シート40xは、図26に示す寸法を有する第3電極16xおよび第2絶縁部48xを備えている。図26は、実施例1(実験例1)で使用した感圧素子の模式的断面図を示す。
第1電極11xは、シリコーンゴムおよび導電性フィラー(導電性カーボン)を含む導電性ゴムから構成されている。弾性率は106Pa、導電率は10Ω・cmであった。第1絶縁部18xは、シリコーンゴムを含む絶縁性ゴムから構成されている。弾性率は105Pa、導電率は107Ω・cmであった。
第2電極12xおよび誘電体13xは単一の絶縁コート金属線を構成し、単一の絶縁コート金属線として1本のエナメル線(直径1mm、誘電体厚み約16μm〜30μm)を用いた。
第3電極16xは、シリコーンゴムおよび導電性フィラー(導電性カーボン)を含む導電性ゴムから構成されている。弾性率は106Pa、導電率は25Ω・cmであった。第2絶縁部48xは、シリコーンゴムを含む絶縁性ゴムから構成されている。弾性率は105Pa、導電率は107Ω・cmであった。
a=0.2mm、0.5mmまたは1.0mmと、b=0.2mm、0.5mmまたは1.0mmとの各組み合わせについて感圧素子を製造した。
各感圧素子について、3回ずつ、押圧力Fを0〜50Nの範囲で変化させ、静電容量を測定した。各回において、押圧力5Nのときの感度(pF/N)を求め、平均値を算出し、表1および図27に示す。感度は、その値が大きいほど、好ましい。図27は、実施例(実験例1)の評価結果を示すグラフである。
(実験例2)(撚り線についての検討)
図28に示すような感圧センサ評価機構を用いて、感圧素子100yにおける撚り線14yの使用について検討した。
感圧素子100yにおいては、撚り線14yが、第1電極11yと第3電極16yとの間に挟持されている。第1電極11yは、シリコーンゴムおよび導電性フィラー(導電性カーボン)を含む導電性ゴムから構成されている。弾性率は106Pa、導電率は10Ω・cmであった。
撚り線14yは、直径0.05mmの絶縁コート金属線(エナメル線;誘電体厚み約3〜5μm)を10本撚ってなる撚り線を用いた。第3電極16yは、シリコーンゴムおよび導電性フィラー(カーボンナノチューブ)を含む導電性ゴムから構成されている。弾性率は106Pa、導電率は25Ω・cmであった。
圧力計測部500yにおいては、計測器(Keysight社製 4263B LCRメータ)を以下の条件で用いた:計測周波数10kHz、電圧1V、積算時間65msec(MID)、OPEN補正あり。
(1)撚り線の形状変形に起因する特性変動
感圧素子に対して、以下の各状態で、押圧力Fを0N/cm2〜50N/cm2の範囲で変化させ、静電容量を測定した。それらの結果を図29〜図31に示す。
これらの結果において、各条件での計測押圧によらず、ほぼ同じ感圧特性が確認されたため、撚り線の形状変形に起因する特性変動はないことが明らかとなった。
(2)撚り線の劣化に起因する特性変動
撚り線に対して、1万回までの打点(6N/cm2)を行った。このような撚り線を用いた感圧素子に対して、以下の各状態で、押圧力Fを0N/cm2〜6N/cm2の範囲で変化させ、静電容量を測定した。それらの結果を図32に示す。測定した状態は、「1000回打点 加圧」「1000回打点 除荷」「2000回打点 加圧」「2000回打点 除荷」「3000回打点 加圧」「3000回打点 除荷」「4000回打点 加圧」「4000回打点 除荷」「5000回打点 加圧」「5000回打点 除荷」「6000回打点 加圧」「6000回打点 除荷」「7000回打点 加圧」「7000回打点 除荷」「8000回打点 加圧」「8000回打点 除荷」「9000回打点 加圧」「9000回打点 除荷」「10000回打点 加圧」「10000回打点 除荷」である。
図32において、「1000〜10000回打点 加圧」の測定結果は重なり、また「1000〜10000回打点 除荷」の測定結果は重なった。10000回打点前の撚り線の光学顕微鏡写真を図33に示す。撚り線の線径は約276μmであった。10000回打点後の撚り線の光学顕微鏡写真を図34に示す。撚り線の線径は約270μmであった。これらの結果より、押圧により撚り線の形状変形など撚り線の劣化に起因する特性変動も外観変化(または形状変化)もないことが明らかとなった。
(3)撚り線とワイヤ単線との比較
撚り線を用いた感圧素子に対して、以下の各状態で、押圧力Fを0〜50N/cm2の範囲で変化させ、静電容量を測定した。それらの結果を図35に示す。
一方で、撚り線14yの代わりに、ワイヤ単線として、エナメル線(直径約0.3mm、誘電体厚み約10μm)を用いたこと以外、上記と同様の方法により、静電容量を測定した。それらの結果を図35に示す。
これらの結果より、以下の事象が明らかとなった。
ワイヤ単線を用いた場合においても、十分に良好な押圧力の測定範囲および感圧感度が得られた。撚り線を用いた場合、ワイヤ単線を用いた場合よりも、さらに良好な押圧力の測定範囲および感圧感度が得られた。
[本開示の電子機器]
本開示の電子機器を、以下、図面を用いて詳しく説明する。本明細書でいう「平面視」とは、厚み方向に沿って対象物を上側または下側(特に上側)からみたときの状態(上面図または下面図)のことである。又、本明細書でいう「断面視」とは、厚み方向に対する垂直方向からみたときの断面状態(断面図)のことである。図面に示す各種の要素は、本開示の理解のために模式的に示したにすぎず、寸法比及び外観などは実物と異なり得ることに留意されたい。本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”、“左右方向”および“表裏方向”はそれぞれ、図中における上下方向、左右方向および表裏方向に対応した方向に相当する。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材または同じ意味内容を示すものとする。ある好適な態様では、鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)が「下方向」に相当し、その逆向きが「上方向」に相当すると捉えることができる。
(第1実施態様)
本開示の第1実施態様に係る電子機器は、例えば、図36Aに示すように、素子(特に導電弾性体1)、引き出し配線および接続糸3を含むコネクタ構造に特徴を有する。
本開示の第1実施態様に係る電子機器に含まれる素子は、導電特性および弾性特性を併せ持つ導電弾性体1を含み、かつ当該導電弾性体1からの電気的な引き出しを要する素子であれば特に限定されない。導電弾性体からの電気的な引き出しとは、導電弾性体を他の部材に電気的に接続させることをいう。導電弾性体からの電気的な引き出しの目的は、特に限定されず、例えば、素子(例えば導電弾性体1)における静電容量、電圧、電流、電気抵抗またはその他の電気的特性(またはその変化)を測定することであってもよい。そのような素子として、例えば、後述する感圧素子、タッチセンサ、加速度検出素子、フォトセンサ、音響センサ、ディスプレイ等が挙げられる。本開示の第1実施態様に係る電子機器は、素子として感圧素子を含む場合、当該電子機器は「感圧装置」とも称され得る。
導電弾性体1が有する弾性特性は、外力(例えば、対人感圧用途において感圧装置に対して加えられる通常の押圧力:例えば約0.1〜100N/cm2の押圧力)によって局所的に変形し、除力すると元の形状へと戻る特性である。導電弾性体1の弾性率は、導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中の緩和および接触抵抗の低減の観点から特に限定されず、例えば約105Pa〜1012Paである。導電弾性体1の弾性率は、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から、約105Pa〜108Paであることが好ましく、例えば1つ例示すると約106Paが特に好ましい。弾性率は、例えば架橋密度を変更することによって調整できる。架橋密度は架橋材の添加量により調整できる。対人感圧用途とは、後述するように、人体に起因する圧力をモニタリングする用途のことである。
導電弾性体1が有する導電特性は、電子機器の種類、用途および機能に応じた導電特性であってよい。導電弾性体1の抵抗率は、導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中の緩和および接触抵抗の低減の観点から特に限定されず、例えば、所望の周波数帯域において容量のインピーダンスよりも十分に小さくてもよい。導電弾性体1の抵抗率は、例えば、300Ω・cm以下、特に0.00001〜300Ω・cmであり、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から、1〜100Ω・cmであることが好ましく、例えば1つ例示すると25Ω・cmがより好ましい。かかる抵抗率は、後述の導電性フィラーと樹脂材料(ゴム材料)との相対的割合を変更することによって調整できる。
導電弾性体1は伸縮性部材とも称されうる。導電弾性体1は、上記のような弾性特性と導電特性との双方の性質を有していれば、いずれの材質から成るものであってよい。例えば、導電弾性体1は、樹脂材料(特にゴム材料)およびその樹脂材料内に分散した導電性フィラーからなる導電性樹脂から構成されたものであってよい。対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から好ましい導電弾性体1は、ゴム材料およびそのゴム材料内に分散した導電性フィラーからなる導電性ゴムから構成される。導電弾性体1の樹脂材料としては、例えば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(例えば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂およびウレタン系樹脂等から成る群から選択される少なくとも1種の樹脂材料であってよい。導電弾性体1のゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等から成る群から選択される少なくとも1種のゴム材料であってよい。導電弾性体1の好ましい材料を1つ例示するとシリコーンゴムである。ゴム材料は、ゴムの種類に応じて、各種架橋材を含んでもよい。導電性フィラーは、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、黒鉛、C(カーボン)等のカーボン材料);Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、ZnO(酸化亜鉛)、In2O3(酸化インジウム(III))およびSnO2(酸化スズ(IV))等の金属材料;PEDOT:PSS(すなわち、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)から成る複合物等の導電性高分子材料;金属コート有機物繊維、金属線(繊維状態)等の導電性繊維;から成る群から選択される少なくとも1種の材料を含んでよい。導電性フィラーの形状は、導電性フィラー同士が接触しやすい形状であることが好ましく、球形、楕円形(断面形状)、カーボンナノチューブ形状、グラフェン形状、テトラポット形状、ナノロッド形状であってもよい。導電性フィラーは表面(表層)に分散剤などの、分散性をよくする添加剤が付着していてもよい。導電性フィラーは、寸法、形状および種類が異なる2種以上の導電性フィラーを用いてもよい。また、導電性フィラーに代えて又はそれに加えて、導電層を用いてもよい。具体的には、上記した樹脂材料(特にゴム材料)からなる樹脂構造体(特にゴム構造体)の表面に導電性インクの塗布などによって導電層が設けられて成る導電弾性体であってもよい。
導電弾性体1の厚み(特に導電弾性体1における後述の引き出し配線との重なり部分の厚み)Tbは特に限定されず、例えば、0.05〜100mmであってもよい。導電弾性体1の厚みTbは、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から、好ましくは0.05〜10mmであり、より好ましくは0.05〜5mmであり、さらに好ましくは0.05〜1mmであり、例えば1つ例示すると約0.1mmが特に好ましい。
引き出し配線は導電部2aを有する導電布2であって、素子から導出されている。引き出し配線が素子から導出されているとは、引き出し配線を構成する導電布2の導電部2aが、素子の導電弾性体1と電気的に接続されているという意味である。本実施態様においては、引き出し配線として導電布2が使用され、且つ当該導電布2の導電部2aと導電弾性体1との直接的な接触および電気的な接続が後述の接続糸3により達成されている。このため、導電弾性体と引き出し配線との間において、応力集中がより十分に緩和され、かつ接触抵抗がより十分に低減される。しかも、素子が特に、衣類および人体が接触する箇所に設けられる素子(例えば感圧素子)である場合において、素子(特に導電弾性体1)と引き出し配線(特に導電部2a)との接続部に人体が接触した際に、本開示の第1実施態様に係る電子機器は異物感が比較的少なく、外力に対して接続信頼性が比較的高い。例えば、接着剤を用いて導電弾性体1と引き出し配線とを接続すると、接着剤層と導電弾性体との界面に応力が集中するため、外力により剥離または破断が起こることがある。このとき、接着剤が導電性を有していても、導電弾性体と引き出し配線との間で電気的抵抗が増加するため、電子機器の測定精度が低下する。接触抵抗は、導電弾性体1と引き出し配線との接触抵抗のことであり、「接続抵抗」とも称され得る。本実施態様においては、引き出し配線としての導電布を特に「コネクタ」とも称し得る。
導電布2の導電部2aと素子の導電弾性体1とは、相互に面接触している。詳しくは、導電布2の導電部2aが有する表面の少なくとも一部(通常は一部)と素子の導電弾性体1が有する表面の少なくとも一部(通常は一部)とが相互に面接触している。より詳しくは、導電布2を素子の表面に沿わせて接触させることにより、導電布2の導電部2a表面の少なくとも一部と素子の導電弾性体1表面の少なくとも一部とを相互に直接的に面接触している。導電部2aと導電弾性体1との接触面積は、これらの電気的接続が十分に達成される限り特に限定されず、例えば、1mm2以上、特に1mm2〜500mm2であり、接触抵抗のさらなる低減および導電部2aと導電弾性体1との縫合の観点から、10mm2〜100mm2であることが好ましく、例えば1つ例示すると100mm2がより好ましい。
図36Aおよび図36Bにおいては、1つの導電弾性体1からの1つの導電部2aによる引き出し(すなわち1つの導電弾性体1と1つの導電部2aとの電気的接続)に関する構造が示されているが、これに限定されるものではない。例えば、素子が2つ以上の導電弾性体1を有する場合、導電部2aは、導電布2において、素子における当該2つ以上の導電弾性体1に対応するパターン形状を有することが好ましい。導電部2aが導電弾性体1に対応するパターン形状を有するとは、導電布2は、図37Aに示すように、導電弾性体1の数に応じた数の導電部2aを有し、各々の導電部2aは、導電弾性体1の各々から導出されるようなパターン形状で形成されているという意味である。その結果、図37Bおよび図37Cに示すように、後述の接続糸3による縫合により、導電弾性体1の各々と導電部2aの各々とが相互に電気的に接続される。パターン形状は通常、平面視において、2つ以上の導電部2aが相互に平行な関係を有する形状であってもよい。図37Aは、2つ以上の導電弾性体1からの導電布2による引き出し方法を説明するための模式的斜視図である。図37Bは、図37Aに示す引き出し方法により得られた本開示の第1実施態様に係る電子機器の基本的構造の一例を模式的に示した斜視図である。図37Cは、図37Bにおける本開示の第1実施態様に係る電子機器の37C−37C断面を矢印方向で見たときの模式的断面図である。図37A〜図37Cにおいて、導電弾性体1の延在方向を第1方向D1とし、当該第1方向D1に対しても、導電弾性体1の厚み方向(D3)に対しても、垂直な方向を第2方向D2とする。なお、図37A〜図37Cに示す導電弾性体1を含む第1弾性体シート20は、感圧装置に好適な第1電極としての導電弾性体1を含む弾性体シートである。
導電布2は、少なくとも一部に導電部2aを有する限り、織物、編物もしくは不織布等の形態またはこれらの複合形態を有していてもよい。導電布2が、一部に導電部2aを有する場合、図37A〜図37Cに示すように、残部に非導電部2bを有する。導電布2は通常、1つ以上の導電部2aおよび1つ以上の非導電部2b(図37A〜図37C参照)を有する。
導電部2aの表面抵抗率は、素子(特に導電弾性体1)における電気的特性を測定可能な限り特に限定されず、例えば、10Ω/□(ohms per square)以下、特に0.0001Ω/□〜10Ω/□であり、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における押圧力の測定範囲の拡大および感圧感度の向上の観点から、0.0001Ω/□〜5Ω/□であることが好ましく、例えば1つ例示すると0.03Ω/□がより好ましい。導電部2aを構成する糸(または繊維)がこの導電部2aの表面抵抗率を有していればよい。
非導電部2bの表面抵抗率は、2つ以上の導電部2a間の短絡が防止される限り特に限定されず、例えば、200Ω/□以上、特に200Ω/□〜5×1012Ω/□であり、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における押圧力の測定範囲の拡大および感圧感度の向上の観点から、103Ω/□〜1010Ω/□であることが好ましく、例えば1つ例示すると107Ω/□がより好ましい。非導電部2bを構成する糸(または繊維、または樹脂)がこの非導電部2bの表面抵抗率を有していればよい。なお、「Ω/□」は表面抵抗率の単位である。
導電布2は、例えば、以下の形態を有していてもよい:(形態A)非導電性の糸と導電性の糸とから形成されてなる布の形態;(形態B)非導電性の布の少なくとも一部に、導電部2aとしての、導電粒子を含有する樹脂層が付与された布の形態;または、(形態C)非導電性の布の少なくとも一部に、導電部2aとしての金属層が付与された布の形態。
形態Aの導電布2は、非導電性の糸と導電性の糸とから形成されながらも、織物、編物、不織布またはこれらの複合形態を有する布である。形態Aの導電布2は一部に導電部2aを有し、残部に非導電部2bを有する。導電部2aは導電性の糸から構成される。形態Aの導電布2が非導電部2bを有する場合において、この非導電部2bは非導電性の糸から構成される。本明細書中、糸は、繊維を撚り合わせた撚糸の形態を有していてもよいし、または撚り合わせていない単繊維(すなわちモノフィラメント)の形態を有していてもよい。
形態Aにおいて、導電性の糸は、当該糸を構成する繊維内に導電粒子を含有させることにより導電性が付与されていてもよいし、または当該糸を構成する繊維の表面(詳しくは当該表面の少なくとも一部)に、金属層または導電粒子を含有する樹脂層を形成することにより導電性が付与されていてもよい。すなわち、形態Aにおいて、導電性の糸は、繊維内に導電粒子を含有する繊維から構成される糸、繊維表面の少なくとも一部に金属層または導電粒子を含有する樹脂層を有する繊維から構成される糸、またはこれらの混合糸であってもよい。導電性の糸を構成する繊維は通常、化学繊維である。化学繊維は、合成繊維、半合成繊維、再生繊維および/または無機繊維であってよい。合成繊維としては、ポリスチレン系繊維、脂肪族ポリアミド系繊維(例えば、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維)、芳香族ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維(例えば、ビニロン繊維)、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維(例えば、ポリエステル繊維、PET繊維、PBT繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアリレート繊維)、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維、フェノール系繊維およびポリフルオロエチレン系繊維などを挙げることができる。半合成繊維としては、セルロース系繊維および蛋白質系繊維などを挙げることができる。再生繊維としては、レーヨン繊維、キュプラ繊維およびリヨセル繊維などを挙げることができる。化学繊維は原料の液体を紡糸することにより製造することができる。このとき、当該原料の液体に導電粒子を予め含有させておくことにより、繊維内に導電粒子を含有させることができる。導電粒子としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、黒鉛等のカーボン材料;Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In2O3(酸化インジウム(III))およびSnO2(酸化スズ(IV))等の金属材料等が挙げられる。導電粒子の平均粒径は通常、2〜600μmである。繊維表面の金属層は、例えば、無電解めっき処理法、電解めっき処理法、電着めっき処理法、塗工法、真空蒸着法、スパッタ蒸着法、MOCVD法などにより形成することができる。繊維表面の導電粒子含有樹脂層は、上記と同様の導電粒子を含む樹脂溶液に繊維を浸漬し、乾燥することにより形成することができる。導電粒子含有樹脂層を構成する樹脂材料としては、例えば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(例えば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂およびウレタン系樹脂等のポリマー材料;およびシリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等のゴム材料が挙げられる。当該樹脂材料としては、化学繊維を構成するポリマーの種類と同じ種類のポリマー材料を用いることが好ましい。金属層を構成する金属材料は、導電性を有する限り特に限定されず、例えば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Ti(チタン)、Al(アルミ)、Zn(亜鉛)、Sn(スズ)、Ni(ニッケル)、Ni−Cr(ニッケル−クロム)、Ni−Sn(ニッケル‐スズ)、Ni−Cu(ニッケル−銅)、Ni−P(ニッケル−リン)等が挙げられる。金属層および導電粒子含有樹脂層の厚みは、上記した抵抗率が達成される限り、特に限定されず、通常は0.01μm〜600μmであり、好ましくは2μmである。
形態Aにおいて、導電性の糸の太さは特に限定されず、例えば、0.01mm〜5mmであってもよく、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から、0.1mm〜1mmであることが好ましく、例えば1つ例示すると0.5mmがより好ましい。
形態Aにおいて、非導電性の糸は、当該糸を構成する繊維内に導電粒子を含有しないこと、および当該糸を構成する繊維の表面に、金属層も導電粒子を含有する樹脂層も有さないこと以外、導電性の糸と同様である。非導電性の糸を構成する繊維は、化学繊維であってもよいし、天然繊維であってもよいし、またはそれらの混合繊維であってもよい。非導電性の糸を構成し得る化学繊維は、導電性の糸を構成し得る化学繊維と同様の化学繊維であってもよい。天然繊維は、植物繊維、動物繊維またはそれらの混合繊維であってよい。植物繊維としては、綿および麻(例えば、アマ、ラミー)などを挙げることができる。動物繊維としては、毛(例えば、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、モヘヤ)、絹および羽毛(例えば、ダウン、フェザー)などを挙げることができる。
形態Aにおいて、非導電性の糸の太さは特に限定されず、例えば、0.01mm〜5mmであってもよく、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から、0.1mm〜1mmであることが好ましく、例えば1つ例示すると0.5mmがより好ましい。
形態Bの導電布2は、非導電性の布の少なくとも一部に、導電部2aとしての、導電粒子を含有する樹脂層が付与された布である。形態Bの導電布2が、非導電性の布の一部に、導電部2aとしての、導電粒子を含有する樹脂層が付与される場合、その残部は、非導電部2bとしての、当該導電粒子含有樹脂層が付与されない部分である。非導電性の布は、織物、編物、不織布またはこれらの複合形態を有する布である。非導電性の布は、形態Aの導電布2においてと同様の非導電性の糸から形成されていてもよい。導電部2aは、非導電性の布において、当該布を構成する糸の個々の繊維の表面に、導電粒子を含有する樹脂層を形成することにより導電性が付与された部分である。
形態Bにおいて、繊維表面の導電粒子含有樹脂層は、導電粒子を含む樹脂溶液に繊維を浸漬し、乾燥することにより形成することができる。形態Bにおいて、導電部2aは、非導電性の布における非導電部2bを予めコートするなどして保護することにより、選択的に形成することができる。形態Bにおいて導電粒子含有樹脂層を構成する導電粒子および樹脂材料はそれぞれ、形態Aにおいて導電粒子含有樹脂層を構成する導電粒子および樹脂材料と同様であってもよい。形態Bにおける導電粒子含有樹脂層の厚みは、形態Aにおける導電粒子含有樹脂層の厚みと同様であってもよい。
形態Cの導電布2は、非導電性の布の少なくとも一部に、導電部2aとしての金属層が付与された布である。形態Cの導電布2が、非導電性の布の一部に、導電部2aとしての金属層が付与さる場合、その残部は、非導電部2bとしての、当該金属層が付与されない部分である。非導電性の布は、織物、編物、不織布またはこれらの複合形態を有する布である。非導電性の布は、形態Aの導電布2においてと同様の非導電性の糸から形成されていてもよい。導電部2aは、非導電性の布において、当該布を構成する糸の個々の繊維の表面に、金属層を形成することにより導電性が付与された部分である。
形態Cにおいて、繊維表面の金属層は、無電解めっき処理法、電解めっき処理法、電着めっき処理法、塗工法、真空蒸着法、スパッタ蒸着法、MOCVD法などより形成することができる。形態Cにおいて、導電部2aは、非導電性の布における導電部2aの形成予定領域に触媒を予めコートすることにより、選択的に形成することができる。形態Cにおいて金属層を構成する金属材料は、形態Aにおいて金属層を構成する金属材料と同様であってもよい。形態Cにおける金属層の厚みは、形態Aにおける金属層の厚みと同様であってもよい。
形態Cの導電布2の一例を図38Aおよび図38Bに示す。図38Aは、非導電性の布に、2つ以上の導電部2a(Ag−Ni層)を相互に平行に無電解めっき処理法により20mm幅で選択的に形成した導電布を模式的に示す平面図であって、導電部2a間には2mm幅の非導電部2bが選択的に未処理のまま残されていることを示す平面図である。図38Bは、非導電性の布に、2つ以上の導電部2a(Ag−Ni層)を相互に平行に無電解めっき処理法により10mm幅で選択的に形成した導電布を模式的に示す平面図であって、導電部2a間には2mm幅の非導電部2bが選択的に未処理のまま残されていることを示す平面図である。
いずれの形態を有する導電布2においても、導電部2aの目付は通常、10〜500g/m2であり、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から、50〜250g/m2であることが好ましく、例えば1つ例示すると100g/m2がより好ましい。非導電部2bの目付は、導電部2aの目付と同様の範囲内であってよく、通常は導電部2aの目付と略同様の値である。
素子が2つ以上の導電弾性体1を有する場合、当該2つ以上の導電弾性体1は、図37Aに示すように、少なくとも隣接する導電弾性体1間に第1絶縁部18を含む弾性体シート20(第1弾性体シート)の形態で提供されてもよい。このとき、2つ以上の導電弾性体1と2つ以上の第1絶縁部18とは一体となって第1弾性体シート20を構成することが好ましい。2つ以上の導電弾性体1と2つ以上の第1絶縁部18とが一体となるとは、2つ以上の導電弾性体1と2つ以上の第1絶縁部18とが一体不可分に構成されているという意味である。これにより、導電弾性体1相互の位置関係を容易に維持でき、高密度の電子機器(例えば感圧装置)を実現できる。また、製造上、2つ以上の導電弾性体1の取り扱いおよび製造が容易である。さらに電子機器(例えば感圧装置)の伸縮性に関する耐久性が向上する。
第1弾性体シート20においては、導電弾性体1は、第1絶縁部18に包埋されていることが好ましい。ここで、「包埋」とは、導電弾性体1の導電布2側の表面1aが露出する状態での「包埋」である。詳しくは、導電弾性体1は、図37Aに示すように、導電布2側の表面1aのみ(またはその近傍)が露出するように、第1絶縁部18に包埋されていてもよい。
各々の導電弾性体1の厚みTbは特に限定されず、例えば、上記厚みTbと同様の範囲内であってもよい。
各々の導電弾性体1の幅(第2方向D2の寸法)は、例えば、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)において外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化する限り特に限定されない。導電弾性体1の幅は、対人感圧用途において、通常は0.01〜1000mm、好ましくは1〜50mmであり、例えば1つ例示すると10mmがより好ましい。
導電弾性体1は通常、長尺形状(例えば、線状)を有している。導電弾性体1の長尺方向寸法(第1方向D1の寸法)は、特に限定されず、用途に応じて適宜設定されてよい。導電弾性体1の長尺方向寸法は、対人感圧用途において、通常は10〜1000mm、好ましくは100〜500mmであり、例えば1つ例示すると300mmがより好ましい。
導電弾性体1は、押圧力の測定時におけるノイズ防止の観点から、検出器のグランド(0V)に接続されることが好ましい。
第1絶縁部18は弾性特性および非導電特性を有することが好ましい。第1絶縁部18が有する弾性特性は、例えば、導電弾性体1が有する弾性特性と同様の特性であってもよい。好ましくは、第1絶縁部18は、伸縮時に、導電弾性体1と同程度に変形するか、または導電弾性体1よりも変形するように、導電弾性体1の弾性率以下の弾性率を有していてもよい。対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から、第1絶縁部18の弾性率は例えば約103Pa〜108Paであることが好ましく、例えば1つ例示すると約106Paである。電子機器が感圧装置である場合、第1絶縁部18の弾性率は上記範囲内で大きいほど、押圧力の測定範囲は広くなる。第1絶縁部18の弾性率は上記範囲内で小さいほど、感圧感度は向上する。感圧感度が向上すると、例えば、従来では検出し難い微小な押圧力でも、検出できるようになる。これに伴い、押圧力の付与開始を精度よく検出できるようになる。弾性率は、例えば架橋密度を変更することによって調整できる。架橋密度は架橋材の添加量により調整できる。非導電特性について、第1絶縁部18の抵抗率は、所望の周波数帯域において容量のインピーダンスよりも十分に大きくてもよい。第1絶縁部18の抵抗率は通常は103Ω・cm以上、特に104〜1010Ω・cmであり、例えば1つ例示すると107Ω・cmがより好ましい。かかる抵抗率は、樹脂材料(ゴム材料)を使用することによって達成できる。
第1絶縁部18は弾性絶縁部材に相当し、伸縮性部材とも称されうる。第1絶縁部18は、上記のような弾性特性と非導電特性との双方の性質を有していれば、いずれの材質から成るものであってよい。例えば、第1絶縁部18は、樹脂材料(特にゴム材料)からなる非導電性樹脂から構成されたものであってよい。対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から、好ましい第1絶縁部18は、ゴム材料からなる非導電性ゴムから構成される。樹脂材料としては、例えば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(例えば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂およびウレタン系樹脂等から成る群から選択される少なくとも1種の樹脂材料であってよい。ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等から成る群から選択される少なくとも1種のゴム材料であってよい。ゴム材料は、ゴムの種類に応じて、弾性体の保持や引裂強度、引張強度の補強のために架橋材、充填材を含んでいてもよい。
各々の第1絶縁部18の厚みは特に限定されない。第1絶縁部18の厚みは、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)の観点から、通常は第1絶縁部18の導電布2側の表面18aが導電弾性体1の導電布2側の表面1aの近傍(好ましくは表面1aと面一)となるような厚みであってもよい。
隣接する導電弾性体1間における各々の第1絶縁部18の幅(第2方向D2の寸法)は、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)において外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化する限り特に限定されない。第1絶縁部18の幅は、対人感圧用途において、通常は0.01〜50mm、好ましくは0.5〜10mmであり、例えば1つ例示すると2mmがより好ましい。
接続糸3は、導電弾性体1と導電布2とを縫合(および締結)することにより、導電弾性体1と導電布2との接触(特に面接触または直接的接触)を維持する。これにより、導電弾性体1と導電布2における導電部2aとの電気的接続を達成する。
接続糸3は非導電性の糸であってもよいし、または導電性の糸であってもよい。導電弾性体1と導電布2との間の接触抵抗のさらなる低減の観点から、接続糸3は導電性の糸であることが好ましい。
接続糸3を構成する導電性の糸は導電弾性体1と導電布2との縫合および締結が達成される限り特に限定されない。接続糸3を構成する導電性の糸は、例えば、導電布2(特に形態A)における導電性の糸と同様の糸(すなわち、繊維内に導電粒子を含有する繊維から構成される糸、繊維表面の少なくとも一部に金属層または導電粒子を含有する樹脂層を有する繊維から構成される糸、またはこれらの混合糸)、単独の金属ワイヤからなる糸、または複数の金属ワイヤが撚り合わされてなる糸であってもよい。対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から、接続糸3を構成する導電性の糸は、以下に示す糸がより好ましい。すなわち、より好ましい糸は、繊維内に導電粒子を含有する繊維から構成される糸、繊維表面の少なくとも一部に金属層または積層金属層または導電粒子を含有する繊維から構成される糸、繊維表面の少なくとも一部に金属層または導電粒子を含有する樹脂層を有する繊維から構成される糸、またはこれらの混合糸である。
接続糸3を構成する導電性の糸の太さは、導電弾性体1と導電布2との縫合および締結が達成される限り特に限定されず、例えば、導電布2(特に形態A)における導電性の糸と同様の範囲内の太さであってもよい。
接続糸3を構成する非導電性の糸は、導電弾性体1と導電布2との縫合および締結が達成される限り特に限定されず、例えば、導電布2(特に形態A)における非導電性の糸と同様の糸であってもよい。詳しくは、当該非導電性の糸を構成する繊維は、化学繊維であってもよいし、天然繊維であってもよいし、またはそれらの混合繊維であってもよい。接続糸3における非導電性の糸を構成し得る化学繊維および天然繊維はそれぞれ、導電布2における非導電性の糸を構成し得る化学繊維および天然繊維と同様であってもよい。
接続糸3を構成する非導電性の糸の太さは、導電弾性体1と導電布2との縫合および締結が達成される限り特に限定されず、例えば、導電布2(特に形態A)における非導電性の糸と同様の範囲内の太さであってもよい。
接続糸3は、図36Aおよび図36Bに示すように、導電弾性体1および導電部2aを貫通してもよい。接続糸3は、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における測定精度のさらなる向上の観点から、図37Bおよび図37Cに示すように、導電弾性体1および導電部2aではなく、第1絶縁部18および非導電部2bを貫通することが好ましい。
接続糸3のステッチは、図37Bおよび図37Cにおいて、並縫い形態を有しているが、例えば、ミシン縫いにより上糸と下糸とが係合している係合ステッチを有していてもよい。ステッチとは、縫い方または縫い目のことである。
(第2実施態様)
本開示の第2実施態様に係る電子機器は、例えば、図39Aおよび図39Bに示すように、素子(特に導電弾性体1)および引き出し配線を含むコネクタ構造に特徴を有する。図39Aは、本開示の第2実施態様に係る電子機器の基本的構造の一例を模式的に示した斜視図である。図39Bは、図39Aにおける本開示の電子機器の39B−39B断面を矢印方向で見たときの一部拡大模式的断面図である。
本開示の第2実施態様に係る電子機器に含まれる素子は、第1実施態様に係る電子機器に含まれる素子と同様であり、すなわち導電特性および弾性特性を併せ持つ導電弾性体1を含み、かつ当該導電弾性体1からの電気的な引き出しを要する素子であれば特に限定されない。第2実施態様に係る電子機器に含まれる素子として、第1実施態様に係る電子機器に含まれる素子と同様の素子が挙げられる。本開示の第2実施態様に係る電子機器は、素子として感圧素子を含む場合、当該電子機器は「感圧装置」とも称され得る。
第2実施態様における導電弾性体1は第1実施態様における導電弾性体1と同様である。例えば、第2実施態様における導電弾性体1が有する弾性特性(例えば弾性率)、導電特性(例えば抵抗率)、構成材料、および厚みTbはそれぞれ、第1実施態様における導電弾性体1が有する弾性特性(例えば弾性率)、導電特性(例えば抵抗率)、構成材料、および厚みTbと同様であってもよい。
第2実施態様において引き出し配線は導体線2cであって、素子から導出されている。引き出し配線が素子から導出されているとは、引き出し配線を構成する導体線2cが、素子の導電弾性体1と電気的に接続されているという意味である。本実施態様においては、引き出し配線として導体線2cが使用され、且つ導体線2cは導電弾性体1と直接的に接触しながら、当該導電弾性体1の少なくとも一部の内部を通っている。このため、導電弾性体と引き出し配線との間において、応力集中がより十分に緩和され、かつ接触抵抗がより十分に低減される。しかも、素子が特に、衣類および人体が接触する箇所に設けられる素子(例えば感圧素子)である場合において、素子(特に導電弾性体1)と引き出し配線(特に導体線2c)との接続部に人体が接触した際に、本開示の第2実施態様に係る電子機器は異物感が比較的少なく、外力に対して接続信頼性が比較的高い。本実施態様においては、引き出し配線としての導体線2cを特に「コネクタ」とも称し得る。
導体線2cは導電弾性体1中、その外表面全体で当該導電弾性体1が有する弾性特性により、圧縮力を受ける。このため、導電弾性体1中の導体線2cの外表面と導電弾性体1とは相互に面接触している。詳しくは、導体線2cを導電弾性体1中に挿入することにより、導体線2cの外表面と導電弾性体1とは圧縮力により相互に直接的に面接触している。導電弾性体1中を通っている導体線2c(すなわち導電弾性体1中に挿入されている導体線2c)の長さは、これらの電気的接続が十分に達成される限り特に限定されず、例えば、1mm以上、特に1〜500mmであり、接触抵抗のさらなる低減の観点から、10〜100mmであることが好ましく、例えば1つ例示すると30mmがより好ましい。
導体線2cは、導電特性を有する線状部材である限り特に限定されない。導体線2cの抵抗率は、素子(特に導電弾性体1)における電気的特性を測定可能な限り特に限定されず、例えば、10-1Ω・cm以下、特に10-12〜10-1Ω・cmであり、対人感圧用途(特に後述の感圧素子用途)における押圧力の測定範囲の拡大および感圧感度の向上の観点から、10-12〜10-8Ω・cmであることが好ましく、例えば1つ例示すると10-12Ω・cmがより好ましい。
導体線2cの構成材料として、例えば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Ti(チタン)、Al(アルミ)、Zn(亜鉛)、Sn(スズ)、Ni(ニッケル)、Ni−Cr(ニッケル−クロム)、Ni−Sn(ニッケル‐スズ)、Ni−Cu(ニッケル−銅)、Ni−P(ニッケル−リン)等が挙げられる。なお、導体線2cの外表面は、絶縁層で何らコートされておらず、当該構成材料が露出していることが好ましい。
導体線2cは、図39Aおよび図39Bにおいて、並縫い形態のステッチで、導電弾性体1中を通っているが、例えば、ミシン縫いにより上糸と下糸とが係合している係合ステッチで導電弾性体1中を通っていてもよいし、または単なる挿入のみによって導電弾性体1中を通っていてもよい。導体線2cは、図39Aおよび図39Bにおいて、1本のみで使用されているが、係合ステッチで導電弾性体1中を通るときのように、2本で使用されてもよいし、または3本以上で使用されてもよい。
導体線2cの太さは特に限定されず、例えば、直径で0.01mm以上、特に0.1mm〜2mmであってもよく、対人感圧用途(特に後述の感圧装置用途)における導電弾性体と引き出し配線との間の応力集中のさらなる緩和および接触抵抗のさらなる低減の観点から、0.1mm〜1mmであることが好ましく、例えば1つ例示すると0.5mmがより好ましい。
(第3実施態様)
本開示の第3実施態様に係る電子機器は感圧装置である。本開示の感圧装置に含まれる素子は感圧素子である。感圧装置の一例について、以下、詳しく説明する。本実施態様においては、第1電極11からの電気的引き出しを達成するコネクタ60Aとして第1実施態様に係る電子機器のコネクタ構造を有するものを用いた感圧装置について説明するが、第2実施態様に係る電子機器のコネクタ構造を有するものを用いてもよい。本実施態様において、第1電極11は第1実施態様における導電弾性体1に対応する。
本開示の感圧装置は、容量(キャパシタンス)を有する素子であって、コンデンサ機能またはキャパシタ機能を有している。かかる感圧装置では、押圧力の印加によって容量変化がもたらされ、その容量変化から押圧力が検出される。従って、本開示の感圧装置は“静電容量型感圧センサ素子”、“容量性圧力検出センサ素子”または“感圧スイッチ素子”などとも称される。
以下にて、本開示に係る感圧装置について図面を参照しながら説明する。本開示の感圧装置において、押圧は、第1電極と第2電極との相対的な関係において、第1電極側または第2電極側のいずれの側で行われてもよい。押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、押圧は、第1電極と第2電極との相対的な関係において、第1電極側で行われることが好ましく、第3電極を用いる場合においては、第1電極と第2電極と第3電極との相対的な関係において、第1電極側または第3電極側のいずれの側で行われてもよい。
(基本的な測定メカニズム)
本開示の感圧装置は通常、基本的な構造として、図40Aに示すように、押圧力を付与される感圧部1Aと押圧力を検出する検出器2Aとを備えている。図40Aは、本開示の感圧装置が採用する基本的な圧力の測定メカニズムを説明するための感圧装置の基本的構造の一例を模式的に示した断面図である。
感圧部1Aは、導電性の弾性体からなる第1電極11、導体線からなる第2電極12および第2電極12の表面を覆う誘電体13を有している。
本開示の感圧装置においては、図40Bに示すように、感圧部1Aに押圧力が付与されると、第1電極11と誘電体13との接触領域の面積(以下、単に「接触領域の面積」ということがある)が、第1電極11が有する弾性に基づいて拡大する。その結果、第1電極11と第2電極12との間の静電容量C〔pF〕が変化する。静電容量C〔pF〕および感圧部に付与される押圧力F〔N〕はそれぞれ以下の式で表されるので、これらの結果、検出器により押圧力が検出される。本開示においては、上記のように接触領域の面積の変化に基づいて押圧力が検出され、当該面積の変化は、例えば、従来の感圧装置における電極間距離の変化よりも容量変化における寄与が比較的大きい(C∝S,C∝1/d)ため、押圧力の測定範囲が比較的広い。特に、押圧力が小さい場合、電極間距離の変化に基づく静電容量の変化は非常に小さい。図40Bは、図40Aにおいて押圧力が付与された際の感圧装置の基本的構造を模式的に示した断面図である。
(式中、ε〔pF/m〕は誘電体の誘電率、S〔m2〕は第1電極と誘電体との接触面積、d〔m〕は誘電体の厚み、E〔Pa〕は第1電極のヤング率、eは第1電極のひずみである。)
本開示の感圧装置における感圧部1Aには、第1電極11および第2電極12のうち、いずれの電極側から押圧力が付与されてもよい。図40Bは、押圧力が第1電極11側から付与され、その反作用により、後述の基材24側からも力が作用することを示している。
検出部2Aは、第1電極11と第2電極12との間の静電容量の変化に基づいて、押圧力を検出する回路である。検出部2Aは、第1電極11から引き出された配線および第2電極12から引き出された配線とそれぞれ端子T11およびT12を介して電気的に接続されている。検出部2Aは、制御回路および集積回路等であってよい。ノイズの影響の低減による押圧力検出の安定化の観点から、第1電極11は検出器2Aのグランドに接続されていることが好ましい。すなわち第1電極11から引き出された配線が電気的に接続される検出部2Aの端子T11はグランドにさらに接続されていることが好ましい。
第2電極12が複数で使用される場合、検出部2Aは、当該複数の第2電極12のそれぞれから引き出された配線と電気的に接続するための複数の端子を有する。
本開示の感圧装置においては、誘電体13を変形させることなく、接触領域の面積の変化に基づく端子T11と端子T12との間の静電容量の変化を計測することで、押圧力が測定される。接触領域の面積の変化は、例えば、従来の感圧装置における電極間距離の変化よりも比較的大きいため、本開示の感圧装置においては比較的簡易な構造で、比較的広い範囲の押圧力を測定することができる。
(感圧装置)
本開示の感圧装置は、導電弾性体としての第1電極を含む感圧素子と、当該素子から導出され、かつ導電布からなる引き出し配線と、第1電極と導電布とを縫合する接続糸と、を備えている。以下、本開示の感圧装置について詳しく説明するが、感圧素子は、以下の感圧装置における引き出し配線としての導電布2(またはコネクタ60A)以外の部分に相当する。
本開示の感圧装置100aは、例えば図41Aに示すように、複数の第1電極11、複数の第2電極12および複数の誘電体13を備えている。第2電極12の各々は誘電体13に覆われている。本開示の感圧装置100aにおいて、複数の第1電極11および複数の第2電極12はそれぞれ第1方向D1および第2方向D2に延在し、第1方向D1および第2方向D2は同一面内において相互に交差する方向であるため、マトリクスセンサとも称され得る。本開示の感圧装置100aにおいては、上記した測定メカニズムの説明からも明らかなように、第1電極11と第2電極12との間に加えられた押圧力に応じて、第1電極11と第2電極12とが交差する箇所(すなわち部分またはクロスポイント)の静電容量が変化する。このため、静電容量およびその変化に基づいて、押圧力およびその変化を測定および検出することができる。例えば、押圧力が付与されると、第1電極11と第2電極12とが交差する箇所の各々において、第1電極11と誘電体13との接触領域の面積が、第1電極11の弾性に基づいて拡大し、静電容量が変化する。図41Aは、本開示の第3実施態様に係る感圧装置の一例の構成を模式的に示した断面図である。
複数の第1電極11の各々は、第1方向D1に延在し、かつ第1面内に配列されている。しかも複数の第1電極11の各々は導電性の弾性体からなっている。複数の第1電極11の各々が第1方向D1に延在するとは、第1電極11の各々の延在方向が第1方向D1と略平行であるという意味である。複数の第1電極11の各々が第1面内に配列されるとは、図41Bに示すように、複数の第1電極11の第2電極12側の面11aがいずれも略同一の面(第1面)M1内に存在するように、複数の第1電極11が配列されているという意味である。第1面M1は、図41Bに示すように平面であってもよいし、または曲面であってもよい。図41Bは、図41Aに示す本開示の感圧装置における第1電極近傍の拡大断面図であって、第1電極の延在方向(第1方向)に対する垂直な模式的断面図である。
複数の第1電極11相互の間には通常、図41A〜図41Bに示すように、絶縁性の弾性体からなる複数の第1絶縁部18が配置されている。このため第1電極11の配線密度が高い場合であっても、押圧力が加わった際に隣接する第1電極が変形して短絡することを防止できる。その結果として、高密度の押圧面分布を測定できる感圧装置を提供できる。
複数の第1電極11相互の間に、複数の第1絶縁部18が配置される場合、複数の第1電極11は、その第2電極側の表面11aが以下のいずれの態様となるように配置されてもよい。
(態様1)複数の第1電極11の第2電極側の表面11aが、図41Bに示すように、複数の第1絶縁部18における第2電極側の表面18aと面一になる;「面一」とは段差のないことをいう。
(態様2)複数の第1電極11の第2電極側の表面11aが、複数の第1絶縁部18における第2電極側の表面18aよりも突出する(すなわち高くなる)。
(態様3)複数の第1電極11の第2電極側の表面11aが、複数の第1絶縁部18における第2電極側の表面18aよりも窪む(すなわち低くなる)。
複数の第1電極11は、第2電極12の第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、隣接する第1電極11間での短絡のさらなる防止、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、その第2電極側の表面11aが上記態様1となるように配置されることが好ましい。詳しくは、態様1においては、第2電極12(およびその表面の誘電体13)の各々は、第1電極11および第1絶縁部18(後述の第1弾性体シート)と後述の基材シートとの間で圧力を比較的均一に受けることができる。このため、第2電極12の第2方向D2の伸縮は、局所的な高圧により、阻害され難い。しかも、態様1においては、隣接する第1電極11間の短絡がより一層、防止されながらも、より一層、感度のよい感圧測定が可能になる。より詳しくは、第1電極11と第1絶縁部18のこのような面一構造では、良好な感圧感度を確保しながら、感圧装置の屈曲が起こっても、隣接する第1電極11間で短絡がより一層、起こり難い。また良好な感圧感度を確保しながら、限界圧縮により、隣接する第1電極11間で短絡がより一層、起こり難い。
複数の第1電極11と複数の第1絶縁部18とは一体となって第1弾性体シート20を構成することが好ましい。複数の第1電極11と複数の第1絶縁部18とが一体となるとは、複数の第1電極11と複数の第1絶縁部18とが一体不可分に構成されているという意味である。これにより、第1電極11相互の位置関係を容易に維持でき、高密度の感圧装置を実現できる。また、製造上、複数の第1電極の取り扱いおよび製造が容易である。さらに感圧装置の伸縮性に関する耐久性が向上する。
本実施態様における第1電極11、第1絶縁部18および第1弾性体シート20はそれぞれ、第1実施態様における導電弾性体1、絶縁部18(第1絶縁部)および弾性体シート20(第1弾性体シート)と同様である。
第1電極11は、押圧力の測定時におけるノイズ防止の観点から、検出器のグランド(0V)に接続されることが好ましい。
第1絶縁部18の第1方向D1の寸法は、特に限定されず、通常は第1電極11間の短絡防止の観点から、第1電極11の長尺方向寸法(第1方向D1の寸法)と同じか、またはそれよりも長い。
第1電極11および第1絶縁部18(特に第1電極11および第1絶縁部18を含む第1弾性体シート20)は、金型を用いた公知の成形方法により製造することができる。
例えば、まず、所望の樹脂材料(ゴム材料)の溶液または原料溶液に対して所望により導電性フィラーおよび架橋材の少なくとも一方を含有させて、第1電極用複合材料および第1絶縁部用複合材料を得る。次いで、図42Aに示すように、第1電極の所望の形状に対応する成形面を有する金型51および52間に、第1電極用複合材料53を充填し、架橋させて、図42Bに示すように第1電極11を金型51上に得る。その後、図42Cに示すように、第1絶縁部(特に第1弾性体シート20)の所望の形状に対応する成形面を有する金型51および55間に、第1絶縁部用複合材料56を充填し、架橋させて、図42Dに示すように第1電極11および第1絶縁部18(特に第1弾性体シート20)を金型51および55内に得る。図42A〜図42Dの各々は、本開示の感圧装置における第1電極および第1絶縁部を含む第1弾性体シートを製造するための方法の1つの工程を示す模式的断面図である。
複数の第2電極12の各々は少なくとも導電特性を有する線状部材(例えば、導体線または金属線)であり、その表面は通常、誘電体13により覆われている。複数の第2電極12の各々は、第1方向D1と交差する第2方向D2に延在し、かつ第1面と対向する第2面内に配列されている。第1方向D1と交差する第2方向D2とは、第1方向D1および第2方向D2を同一面内で表したとき、第1方向D1と交差する第2方向D2という意味であり、これらの方向は相互に平行ではないという意味である。本実施態様において第1方向D1と第2方向D2とがなす角度(小さい方の角度)は特に限定されず、例えば、1〜90°であってもよい。感圧装置の第1方向D1での伸縮性のさらなる向上の観点から、第1方向D1と第2方向D2とがなす角度(小さい方の角度)は30〜90°(特に30°以上特に90°未満)であることが好ましく、例えば1つ例示すると45°がより好ましい。複数の第1電極11の各々が第2方向D2に延在するとは、第2電極12の各々の延在方向が第2方向D2と略平行であるという意味である。第2電極12の各々は、後述するように、周期的に設けられた屈曲部を有しながら第2方向D2に延在するため、第2電極12の各々の延在方向とは、詳しくは、第2電極12の各々が全体として延在する方向(例えば主方向)のことである。第1面と対向する第2面とは、第1面M1と並行な第2面という意味であり、第2面M2は、図41Aに示すように、第1面M1と同一の面であってもよい。第2面は第1面M1に応じて、平面であってもよいし、または曲面であってもよい。
複数の第2電極12の各々は、平面視において、図41Aおよび図41Cに示すように、周期的(および規則的)に設けられた屈曲部Kを有している。例えば、複数の第2電極12の各々は、平面視において、ミアンダ形状を有している。ミアンダ形状とは、線状体が周期的(および規則的)に屈曲した波の形状である。本明細書中、「屈曲」は直線的に曲がる態様だけでなく、曲線的に曲がる態様(すなわち「湾曲」)も包含する。従って、ミアンダ形状の具体例として、例えば、正弦波形状、矩形波形状、三角波形状、のこぎり波形状およびこれらの複合形状が挙げられる。図41Aは、本開示の感圧装置の一例の構成を模式的に示した斜視図であるが、図41Aからも、複数の第2電極12の各々が、平面視において、周期的(および規則的)に設けられた屈曲部Kを有していることが明らかである。図41Cは、本開示の第3実施態様に係る感圧装置の別の一例の平面図であって、伸展前の平面図である。
複数の第2電極12の各々が、上記のように、周期的(および規則的)に設けられた屈曲部Kを有することにより、本開示の感圧装置100aはより十分な伸縮性を有するようになる。詳しくは、感圧装置100aは、図41Cおよび図41Dに示すように、第2電極12の屈曲部Kの伸展および屈曲(ならびに第1電極11および第1絶縁部18の弾性)に基づいて第2方向において、より十分に伸縮するようになる。また感圧装置100aは、第1電極11(および第1絶縁部)の弾性に基づいて第1方向D1において、より十分に伸縮するようになる。図41Dは、図41Cの感圧装置の伸展時の平面図である。
第2方向D2における伸縮(特に伸展)について、より詳しくは、図41Cに示すように、第1方向D1に対する第2電極12の屈曲角度をθと仮定したとき、伸展時における感圧装置100aの第2方向D2の寸法が、屈曲時(すなわち伸展前)の感圧装置100aの第2方向D2の寸法に対して1/sinθ倍となるような伸展が可能となる。これに対して、第2電極12に屈曲部が設けられないとき、θは90°となるため、伸展は達成されない。
第2電極12の屈曲角度θは、各々の第2電極12における隣接する任意の2つの屈曲部K間における接線と、第1方向D1とのなす角度(小さい方の角度)の平均値である。第2電極12の屈曲角度θは、感圧装置100aの伸縮性(特に第2方向D2における伸縮性)のさらなる向上、隣接する第1電極11間での短絡のさらなる防止、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、好ましくは1〜90°(特に1°以上90°未満)であり、より好ましくは10〜80°であり、さらに好ましくは30〜60°であり、最も好ましくは40〜50°である。
複数の第2電極12は通常、同様の平面視形状を有しており、しかも複数の第2電極12のうち隣接する任意の2つの第2電極12は相互に並行である。ここで「並行」とは、隣接する2つの第2電極12が相互に一定の間隔を空けて、交わらない関係を意味する。
複数の第2電極12の各々がミアンダ形状を有するとき、隣接する任意の2つの第2電極12間の距離P(ピッチ)(第1方向D1の間隔)(図41A)は通常、1〜30mmであり、対人感圧用途の観点から好ましくは2mm〜10mmであり、例えば1つ例示すると5mmがより好ましい。各々の第2電極12における第1方向D1の最大変位量Q(例えば、振幅×2a)(図41A)は通常、2〜40mmであり、対人感圧用途の観点から好ましくは4mm〜20mmであり、例えば1つ例示すると10mmがより好ましい。各々の第2電極12における第2方向D2の繰り返し単位寸法R(図41A)は通常、1〜40mmであり、対人感圧用途の観点から好ましくは2mm〜20mmであり、例えば1つ例示すると10mmがより好ましい。
第2電極12の各々は、その表面を覆う誘電体13を有しながら、第1電極11に近接配置されている。すなわち、第2電極12の各々はその表面の誘電体13を介して間接的に第1電極11と接触するように配置されている。導電特性について、第2電極12は、所望の周波数帯域において容量のインピーダンスよりも十分に小さい抵抗率を有していればよい。第2電極12の抵抗率は通常は10-1Ω・cm以下、特に10-12〜10-1Ω・cmであり、10-12〜10-8Ω・cmがより好ましい。かかる抵抗率は、例えば、金属線を使用することによって達成できる。
第2電極12の各々は通常、可撓性を有していてもよいし、または弾性特性を有してもよい。可撓性とは、外力(感圧装置に対して加えられる通常の押圧力:例えば約0.1〜100N/cm2の押圧力)によって全体として撓み変形しても、除力すると元の形状へと戻る特性をいう。第2電極12は可撓性を有する場合、例えば約108Pa超、特に108Pa超1012Pa以下の弾性率、例えば1つ例示すると約1.2×1011Paの弾性率を有している。
第2電極12は、少なくとも導電特性を有する限り、いずれの材質から成るものであってよい。第2電極12は、可撓性を有する場合、例えば、金属体から構成されたものであってもよいし、ガラス体およびその表面に形成された導電層またはその中に分散された導電性フィラーから構成されたものであってもよいし、または樹脂体およびその表面に形成された導電層またはその樹脂体内に分散された導電性フィラーから構成されたものであってよい。金属体は、金属からなる電極部材であり、すなわち第2電極12は実質的に金属からなるものでよい。金属体は、例えば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni−Cr合金(ニクロム)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In2O3(酸化インジウム(III))およびSnO2(酸化スズ(IV))から成る群から選択される少なくとも1種の金属を含んで成る。ガラス体は、酸化ケイ素の網目状構造を有するものであれば特に限定されず、例えば、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等から成る群から選択される少なくとも1種のガラス材料を含んで成るものであってよい。樹脂体は、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(例えば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS))、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂およびウレタン系樹脂等から成る群から選択される少なくとも1種の樹脂材料を含んで成るものであってよい。ガラス体および樹脂体の導電層は、金属体を構成し得る金属と同様の金属の群から選択される少なくとも1種の金属を蒸着させてなる層であってもよいし、または導電性インクの塗布などによって形成されてなる層であってもよい。ガラス体および樹脂体の導電性フィラーは、金属体を構成し得る金属と同様の金属の群から選択される少なくとも1種の金属を含んで成るものであってよい。第2電極12は、弾性特性を有する場合、第1電極11と同様の導電性ゴムから構成されていてもよい。
第2電極12は通常、長尺形状(例えば、線状)を有する長尺部材である。第2電極12が長尺部材であって、かつ金属体から構成されるとき、この第2電極12は金属線または金属ワイヤ(例えば、銅線)に相当し、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から好ましい。
第2電極12は感圧装置のヒータ要素であってもよい。第2電極12がヒータ要素であるとき、この第2電極12を有する感圧装置はヒータとしても機能する。ヒータ要素として、ニクロム線が挙げられる。例えば、当該感圧装置を車両の座席表面に設置した場合に、運転者または同乗者の身体が冷たくないように保温できる。また例えば、当該感圧装置を操舵装置(例えば、ステアリングホイール)表面に設置した場合に、操舵装置を握る手が冷たくないように保温できる。
第2電極12の断面形状は、押圧力の付与により、その表面の誘電体13と第1電極11との接触領域の面積が拡大する限り特に限定されず、例えば、円形状であってもよいし、楕円形状であってもよいし、または三角形状もしくは台形形状等であってもよい。第2電極12の断面形状が三角形状または台形形状のような傾斜を有する形状であると、押圧力の付与がないときに、誘電体13と第1電極11との接触領域の面積が一定となり易いため、感度のリニアリティーが向上する。特に、第2電極12の断面形状が台形形状であると、除荷時に第1電極と第2電極(特に誘電体13)が負荷なく離れることが出来るため、信頼性が向上する。
第2電極12の断面寸法は、電極間の静電容量を測定できる限り特に限定されず、通常は1μm〜10mmであり、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から好ましくは100μm〜1mmであり、例えば1つ例示すると300μmがより好ましい。第2電極12の断面寸法を小さくすると、接触領域の面積の変化が大きくなり、感圧感度が向上する。長尺部材の断面寸法を大きくすると、押圧力の測定範囲がさらに広くなる。第2電極12の断面寸法は断面形状における最大寸法である。詳しくは、第2電極12の断面寸法は、第2電極12が直線状を有するものと仮定したときに、長尺方向に対する垂直断面における最大寸法(例えば、直径)のことである。
第2電極12は通常、複数で使用される。このとき、当該複数の第2電極12の各々と複数の第1電極11の各々との交差箇所(交差部分またはクロスポイント)の容量変化を検出器により検出することにより、パターニングが可能である。パターニングとは、押圧力とともに、押圧位置も検出することである。
複数の第2電極12の各々は、その表面を誘電体13により覆われている。誘電体13は、図41A等において、第2電極12の表面全体を完全に覆っているが、誘電体13の被覆領域は、誘電体13が第2電極12の表面を少なくとも部分的に覆う限り、特に限定されない。誘電体13が第2電極12の表面を少なくとも部分的に覆うとは、誘電体13が、第2電極12の表面における、少なくとも第1電極11と第2電極12との間の部分を覆っている状態をいう。換言すると、誘電体13は、第1電極11と第2電極12との間に存在する限り、第2電極12の表面における少なくとも一部を覆っていればよい。誘電体13について、「覆う」とは、第2電極12の表面に対して皮膜状に密着しつつ一体化されることである。
誘電体13は、感圧装置構造のさらなる簡易化の観点から、第2電極12の表面全体を完全に覆っていることが好ましい。誘電体13が第2電極12の表面全体を完全に覆っている場合、誘電体13は第2電極12の絶縁皮膜を構成し、誘電体13および第2電極12は通常、一体化されている。一体化された誘電体13および第2電極12は単一の絶縁コート金属線に相当してもよく、例えば、エナメル線、エレメント線であってもよい。絶縁コート金属線を用いると、これを第1電極11と基材24との間で配置させるだけで、エッチングなどのフォトリソグラフィプロセスなしに、感圧装置を構成できるので、感圧装置構造の簡易化をより一層、十分に達成でき、しかも製造コストが安価である。
誘電体13は、少なくとも「誘電体」としての性質を有していれば、いずれの材質から成るものであってよい。例えば、誘電体13は、樹脂材料、セラミック材料または金属酸化物材料などを含んで成るものであってよい。あくまでも例示にすぎないが、誘電体13は、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフテレート樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などから成る群から選択される少なくとも1種の樹脂材料から成っていてもよい。また、誘電体13として、Al2O3およびTa2O5などから成る群から選択される少なくとも1種の金属酸化物材料から成るものであってもよい。誘電体13は通常、所望の周波数帯域において、容量のインピーダンスよりも高い抵抗値を有する材料からなっている。
誘電体13は通常、剛性特性を有する。剛性特性とは、外力(感圧装置に対して加えられる通常の押圧力:例えば約0.1〜100N/cm2の押圧力)による変形に対して抵抗する特性をいう。誘電体13は通常、上記のような通常の押圧力によっては変形しない。誘電体13は、感圧部への押圧力の付与時に第1電極11よりも変形しないように、第1電極11よりも高い弾性率を有していてもよい。例えば、第1電極11の弾性率が約104Pa〜108Paである場合、それよりも高い弾性率を誘電体13が有していてもよい。
誘電体13の厚みは、外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化する限り特に限定されず、通常は20nm〜2mmであり、対人感圧用途の観点から好ましくは20nm〜1mmであり、例えば1つ例示すると10μmがより好ましい。
誘電体13が樹脂材料からなる場合、樹脂材料溶液を塗布し、乾燥させるコーティング法、および樹脂材料溶液中で電着を行う電着法等により形成することができる。誘電体13が金属酸化物材料からなる場合、陽極酸化法等により形成することができる。
感圧装置100aは、第2電極12の位置ズレを制限する拘束部材15をさらに有してもよい。拘束部材15は、第2電極12を感圧装置100aにおける所定の位置に必ずしも固定しなければならないというわけではなく、第2電極12が所定の位置に保持される程度の拘束力を有していればよい。感圧装置100aが拘束部材を有することにより、第2電極12の位置ズレを防止でき、結果として、所定位置での押圧力を確実に検出することができる。また感圧装置を曲面に装着するとき、歪みなどを緩和し易く、破損を防止できる。
拘束部材15は、図41A等において、第2電極12(および誘電体13)を、第1電極11を含む第1弾性体シート20に対して拘束しているが、第2電極12表面の誘電体13と第1電極11との接触が達成される限り、これに限定されるものではない。例えば、拘束部材15は、第1弾性体シート20とともに第2電極12(および誘電体13)を挟持するように配置される後述の基材シート(図示せず)に対して第2電極12(および誘電体13)を拘束してもよい。また例えば、拘束部材15は、第1弾性体シート20および後述の基材シート(図示せず)の両方に対して第2電極12(および誘電体13)を拘束してもよい。すなわち、第2電極12(および誘電体13)を第1弾性体シートと基材シートとの間に配置させた状態で、第1弾性体シート、第2電極12(および誘電体13)および基材シート(図示せず)を拘束部材15により一体化してもよい。拘束部材15は、伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、第2電極12(および誘電体13)を、第1電極11を含む第1弾性体シート20に対して拘束していることが好ましい。
拘束部材15による拘束は、誘電体13の第2電極12からの剥離の防止、感圧装置の伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、接続糸15aによる縫合および接続であることが好ましい。接続糸15aにより第1弾性体シート20と第2電極12とを縫合接続することにより、感圧装置の屈曲性と伸縮性を維持しつつ、第1電極と第2電極とが交差する位置を一定範囲内に拘束でき、感圧位置の再現性を確保できる。さらに、誘電体13の第2電極12からの剥離を防止することもできる。
接続糸15aは、繊維を撚り合わせた撚糸の形態を有していてもよいし、または撚り合わせていない単繊維(すなわちモノフィラメント)の形態を有していてもよい。接続糸15aを構成する繊維は、化学繊維、天然繊維またはそれらの混合繊維であってもよい。接続糸15aを構成する化学繊維および天然繊維はそれぞれ、導電布2における非導電性の糸を構成し得る化学繊維および天然繊維と同様であってもよい。
接続糸15aは、ニット用の糸などに用いられている伸縮性を有する糸が好ましく使用される。伸縮性を有する糸は、例えば、エッフェル(カナガワ株式会社)、ソロテックス(帝人フロンティア株式会社)等の市販品として入手可能である。
接続糸15aを用いた第2電極12(および誘電体13)の第1弾性体シート20および後述の基材シートの少なくとも一方への拘束は通常、接続糸15aを第1弾性体シート20および後述の基材シートの少なくとも一方に貫通させることを含む。このとき、接続糸15aの貫通は電極(すなわち第1電極)を避けて行うことが好ましい。例えば、接続糸15aを第1弾性体シート20に貫通させる場合には、第1電極11で貫通を行うことなく、第1絶縁部18で貫通を達成することが好ましい。接続糸15aの貫通を、電極を避けて行うことにより、第1電極の導電特性のばらつきを抑制でき、感圧測定の精度を確保できる。
接続糸15aは、図41A等においては、第1電極11を跨ぐ(または横切る)ことなく、第1絶縁部18で第2電極12(および誘電体13)を跨ぐ(または横切る)ステッチ(以下、単に「ステッチS1」という)により、第2電極12の第1弾性体シート20への縫合接続を行っているが、これに限定されるものではない。
接続糸15aが、ステッチS1により、第2電極12の第1弾性体シート20への縫合接続を行う場合、接続糸15aは、図41Aに示すように、平面視において、第1方向D1に沿って配置されながら、第1弾性体シート20と第2電極12とを縫合接続できる。これにより、接続糸の縫合時に縫合箇所が第1電極11に接触することなく、第1弾性体シート20と第2電極12との縫合接続を容易に達成することができる。
感圧装置100aは通常、複数の第2電極12を挟んで第1弾性体シート20と対向する基材シート(図示せず)をさらに有することが好ましい。
基材シートは弾性特性および非導電特性を有する。弾性特性は、第1電極11が有する弾性特性と同様の特性である。具体的には、基材シートは、感圧装置の第1方向D1および第2方向D2への伸縮が達成されるような弾性特性を有すればよい。好ましくは、基材シートは、伸縮時に第1電極11よりも変形するように、第1電極11よりも低い弾性率を有している。伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、基材シートの弾性率は例えば約104Pa〜108Paであることが好ましく、例えば1つ例示すると約105Paである。基材シートの弾性率は上記範囲内で大きいほど、押圧力の測定範囲は広くなる。基材シートの弾性率は上記範囲内で小さいほど、感圧感度は向上する。感圧感度が向上すると、例えば、従来では検出し難い微小な押圧力でも、検出できるようになる。これに伴い、押圧力の付与開始を精度よく検出できるようになる。弾性率は、例えば架橋密度を変更することによって調整できる。架橋密度は架橋材の添加量により調整できる。非導電特性について、基材シートの抵抗率は、所望の周波数帯域において容量のインピーダンスよりも十分に大きくてもよい。基材シートの抵抗率は通常は103Ω・cm以上、特に104〜1010Ω・cmであり、例えば1つ例示すると107Ω・cmがより好ましい。かかる抵抗率は、樹脂材料(ゴム材料)を使用することによって達成できる。
基材シートは弾性絶縁部材に相当し、伸縮性部材とも称されうる。基材シートは、上記のような弾性特性と非導電特性との双方の性質を有していれば、いずれの材質から成るものであってよい。例えば、基材シートは、樹脂材料(特にゴム材料)からなる非導電性樹脂から構成されたものであってよい。基材シートの第1方向D1および第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から好ましい基材シートは、ゴム材料からなる非導電性ゴムから構成される。基材シートが非導電性ゴムから構成されることにより、基材シートの第1方向D1および第2方向D2への伸縮がより効果的に達成されるとともに、押圧力をより効果的に検出することができ、また押圧時の押圧感を演出できる。樹脂材料は、第1絶縁部18の説明で上記した樹脂材料と同様の樹脂材料であってよい。ゴム材料は、第1絶縁部18の説明で上記したゴム材料と同様のゴム材料であってよい。ゴム材料は、ゴムの種類に応じて、弾性体の保持や引裂強度、引張強度の補強のために架橋材、充填材を含んでいてもよい。
基材シートの厚みは、外部からの押圧力により電極間の静電容量が変化し、かつ基材シートが伸縮に耐え得る限り特に限定されない。基材シートの厚みは、対人感圧用途において、基材シートの第1方向D1および第2方向D2における伸縮性のさらなる向上、押圧力の測定範囲のさらなる拡大および感圧感度のさらなる向上の観点から、通常は0.01mm〜10mm、好ましくは0.01mm〜2mmであり、より好ましくは0.1mm〜2mmであり、例えば1つ例示すると0.5mmがさらに好ましい。
本開示の感圧装置100aは通常、図41A等に示すように、複数の第1電極11と電気的に接続されているコネクタ60Aおよび複数の第2電極12と電気的に接続されているコネクタ60Bを有する。このようなコネクタ60Aおよび60Bを介して、各々の第1電極11と各々の第2電極12とが平面視で交差する箇所(すなわち交差部分またはクロスポイント)の静電容量およびその変化が測定される。
本実施態様においては、コネクタ60Aとして、第1実施態様における引き出し配線としての導電布2を用いる。導電布2は、第1実施態様において説明したように、2つ以上の導電部2aおよび2つ以上の非導電部2bを含み、導電部2aは、導電布2において、複数の第1電極11に対応するパターン形状を有することが好ましい。導電部2aが複数の第1電極11に対応するパターン形状を有するとは、導電布2は、図43Aに示すように、複数の第1電極11の数に応じた数の導電部2aを有し、各々の導電部2aは、複数の第1電極11の各々から導出されるようなパターン形状で形成されているという意味である。その結果、図43Aおよび図43Bに示すように、接続糸3による縫合により、複数の第1電極11の各々と導電部2aの各々とが相互に電気的に接続される。パターン形状は通常、平面視において、2つ以上の導電部2aが相互に平行な関係を有する形状であってもよい。図43Aは、第3実施態様に係る感圧装置おいて、2つ以上の第1電極(すなわち導電弾性体)からの導電布による引き出し方法(特にコネクタ構造)を説明するための模式的斜視図(または模式的分解図)である。図43Bは、図43Aに示す引き出し方法により得られた本開示の第3実施態様に係る感圧装置の基本的構造(特にコネクタ構造)の一例を模式的に示した斜視図である。
本実施態様においては、引き出し配線を構成する導電布2の導電部2aが、第1電極11と電気的に接続されている。詳しくは、引き出し配線として導電布2が使用され、且つこの導電布2の導電部2aと導電弾性体1との直接的な接触および電気的な接続が接続糸3により達成されている。このため、第1電極と引き出し配線との間において、応力集中がより十分に緩和され、かつ接触抵抗がより十分に低減される。しかも、感圧装置において、第1電極11と導電布2との接続部に人体が接触した際に、本開示の第3実施態様に係る感圧装置は異物感が比較的少なく、外力に対して接続信頼性が比較的高い。
コネクタ60Bは、第2電極12との電気的な接続により、上記測定が可能な限り特に限定されず、公知のコネクタが使用可能である。
(本開示の第3実施態様に係る感圧装置の製造方法)
本開示の第3実施態様に係る感圧装置100aは、例えば以下の工程を含む方法により、製造することができる。
複数の第1電極11および第1絶縁部18を含む第1弾性体シート20を製造する工程; 第1弾性体シート20に、表面に誘電体13を有する第2電極12を設置する工程;および 第2電極12が設置された第1弾性体シート20にコネクタ60Aおよび60Bを接続する工程。
第1弾性体シート20の製造工程においては、金型を用いた公知の成形方法を用いて、例えば、図37Aに示すような第1弾性体シート20を得る。詳しくは、例えば、上記した図42A〜図42Dに示す方法を採用すればよい。
第2電極12の設置工程においては、まず、第2電極12に所望の配置で屈曲部Kを形成し、この第2電極12を第1弾性体シート20上に配置する。次いで、第2電極12を、所望の位置で、第1弾性体シート20に拘束部材15により拘束する。例えば、図43Aに示すように、接続糸15aを所望の位置およびステッチで用いて、第2電極12を第1弾性体シート20に縫合および接続する。
コネクタの接続工程においては、例えば図43Aおよび図43Bに示すように、第2電極12が設置された第1弾性体シート20における複数の第1電極11の各々の端部を、導電布2(コネクタ60A)の複数の導電部2aの各々の端部と重なるように配置する。そして、図43Bに示すように、第1弾性体シート20と導電布2との重なり部分を接続糸3により縫合する。
(本開示の電子機器の用途)
本開示の電子機器(特に感圧装置)は各種管理システムおよび各種電子機器におけるセンサ素子として好適に利用できる。
管理システムとしては、例えば、欠品管理システム(レジかご、物流管理、冷蔵庫関連品、在庫管理)、車管理システム(またはドライバーモニタリングシステム)(座席シート、操舵装置、コンソール周りのスイッチ(アナログ入力可能))、コーチング管理システム(シューズ、衣類)、セキュリティー管理システム(接触部全部)、介護・育児管理システム(機能性寝具および機能性便座関連品)等が挙げられる。
車管理システム(またはドライバーモニタリングシステム)では、ドライバーの操舵装置に対する圧力分布(すなわち把持力または把持位置)およびその変化ならびにドライバー(着座状態)の車載シートに対する圧力分布(例えば、重心位置)およびその変化をモニタリングする。これにより、運転状態を把握し、ドライバーの状態(眠気・心理状態など)を読み取り、フィードバックすることが可能である。
コーチング管理システムは、人体(例えば足裏)の重心および荷重分布の少なくとも一方ならびにそれらの変化などをモニタリングし、適正な状態または心地よい状態へ矯正または誘導することができるシステムである。
セキュリティー管理システムにおいては、例えば、人が通過する際に、体重、歩幅、通過速度および靴底パターンなどを同時に読み取ることが可能であり、データと照合することで、人物を特定することが可能である。
介護・育児管理システムは、人体の寝具および便座等に対する圧力分布またはその重心ならびにそれらの変化などをモニタリングし、行動を推定することにより、転倒および転落を防止するシステムである。
電子機器としては、例えば、車載機器(カーナビゲーション・システム、音響機器など)、家電機器(電気ポット、IHクッキングヒーターなど)、スマートフォン、電子ペーパー、電子ブックリーダー等が挙げられる。本開示の感圧装置を、上記のような各種管理システムおよび各種電子機器に適用することにより、これまで以上にユーザーの利便性が図られたタッチセンサ素子(感圧シート、操作パネルおよび操作スイッチ等)として利用できる。
感圧装置100aの検出部(図示せず)においては第1電極11が電気的に接続される端子T11は移動体の本体のグランドに接続されていることが好ましい。
本開示の感圧装置の用途は、対人感圧用途と非対人感圧用途とに分類することができる。
対人感圧用途とは、人体に起因する圧力をモニタリングする用途であり、上記した用途のうち、例えば、車管理システム(またはドライバーモニタリングシステム)、コーチング管理システム、セキュリティー管理システム、介護・育児管理システムを包含する。非対人感圧用途とは、人体以外の物体に起因する圧力をモニタリングする用途であり、上記した用途のうち、例えば、欠品管理システムを包含する。
(実験例1)(第1実施態様)
図44に示す寸法の導電弾性体1を製造した。導電弾性体1は、シリコーンゴムおよび導電性フィラー(導電性カーボン)を含む導電性ゴムから構成されている。弾性率は106Paであった。
図44に示す寸法の導電布2を製造した。導電布2は導電部2aのみから構成されている。詳しくは、非導電性の布(織物)に対して、無電解めっき処理を行い、バッファー層となるニッケルをめっきした後、表層に銀の層を積層させることで形成した。
導電弾性体1と導電布2とを、図44に示すように重ね合わせた状態で、接続糸3(綿糸)により縫合した。
・評価
導電弾性体1のみの抵抗値をテスターにより測定した。詳しくは、測定は導電弾性体1の長手方向の両端で行った。
次いで、導電弾性体1と導電布2との一体化物の抵抗値をテスターにより測定した。詳しくは、測定は当該一体化物の長手方向の両端で行った。
このような測定をさらに2回行った。
測定結果を表2に示す。
「導電弾性体のみの抵抗値」と「導電弾性体+導電布の抵抗値」とはほとんど同値であった。このため、本開示の電子機器においては、導電弾性体と導電布との間の接触抵抗(すなわち接触により生じる電気的抵抗)は極めて低いことが明らかとなった。
これらの結果より、本開示の第1実施態様に係る電子機器は、優れた柔軟性および伸縮性を有しながらも、十分に低い接触抵抗を実現できることが確認された。
(実験例2)(第2実施態様)
図45に示す寸法の導電弾性体1を製造した。導電弾性体1は、シリコーンゴムおよび導電性フィラー(導電性カーボン)を含む導電性ゴムから構成されている。弾性率は106Paであった。
図45に示す導体線2cとして銀線を用いた。
導体線2cを、図45および図39Bに示すように、並縫い形態のステッチで、導電弾性体1中を徐々に通した。
・評価
図45におけるA−B間の抵抗値をテスターにより測定し、LAgと抵抗値との関係を示すグラフを図46に示した。LAgは図10中のLAgであり、導電弾性体1中における導体線2cの通過距離のことである。なお、導電弾性体1のみの抵抗値(すなわち導電弾性体1の長手方向の両端で測定した抵抗値)は14kΩであった。導体線2cのみの抵抗値は0.05kΩであった。
図46に示すグラフより、以下の事項が明らかとなった。
・LAgが0cmのときのA−B間の抵抗値は導電弾性体1のみの抵抗値に極めて近似すること;
・LAgが30cmのときのA−B間の抵抗値は導体線2cのみの抵抗値に極めて近似すること;および
・LAgが0〜30cmのとき、LAgとA−B間の抵抗値との関係は一次関数の関係を示すこと。
これらの結果より、本開示の第2実施態様に係る電子機器は、優れた柔軟性および伸縮性を有しながらも、十分に低い接触抵抗を実現できることが確認された。