JPWO2020066991A1 - アカルボース又はスタキオースを含む哺乳動物細胞保存用液 - Google Patents

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Abstract

本発明は、哺乳動物細胞を液体中で保存したときに生じる細胞生存率低下や細胞凝集を効果的に抑制でき、かつ、哺乳動物の生体内に投与した場合に、哺乳動物の生態に悪影響を及ぼす可能性が低い物質や、かかる物質を含む哺乳動物細胞保存用液等を提供することを課題とする。
アカルボース若しくはその塩、及び/又はスタキオース若しくはその塩を含む液を、哺乳動物細胞を保存するために用いると、哺乳動物細胞を液体中に保存したときに生じる細胞生存率低下や細胞凝集を効果的に抑制することができる。さらに、上記液中で保存した哺乳動物細胞は、新しい移植用液に移すことなく、そのまま哺乳動物の生体内へ投与することができる。

Description

本発明は、アカルボース若しくはその塩(以下、「アカルボース類」ということがある)、及び/又はスタキオース若しくはその塩(以下、「スタキオース類」ということがある)を含む哺乳動物細胞保存用液(以下、「本件哺乳動物細胞保存用液」ということがある)や、本件哺乳動物細胞保存用液を用いて哺乳動物細胞を保存する方法に関する。
近年、幹細胞研究の急速な発展によって再生医療への気運は高まっており、その知識や理解は、研究者のみならず、一般にも広く普及してきている。幹細胞を用いた再生医療は、幹細胞が有する自己複製能と多分化能や、幹細胞が分泌する因子を利用して、様々な疾患で損傷を受けた細胞や組織の機能を回復させることを目的とした医療である。白血病や再生不良性貧血などの血液難病の患者に骨髄移植をすると、造血系幹細胞が患者体内に生着し、ほぼ一生にわたって造血能の維持が可能となる。また、最近では多くの研究者が造血幹細胞以外の幹細胞を用いた臨床応用を目指し、中枢神経、末梢神経、骨髄、小腸などにおける幹細胞を同定し、外傷性疾患や組織変性疾患に対する組織幹細胞の移植治療が実践され始めている(非特許文献1〜3)。他方、がん免疫細胞療法は、がんを攻撃する働きを有する免疫細胞を体外に取り出し、その働きを強化後、再び体内に戻すという最先端の細胞医療であり、樹状細胞ワクチン療法、アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)、ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法)、CTL療法、ナチュラルキラー細胞療法(NK細胞療法)などのT細胞を用いた療法が実践されている。
移植治療に用いる幹細胞やT細胞を長期保存する場合、液体中での保存では細胞生存率を良好に保つことができない。例えば、ヒト骨髄幹細胞を生理食塩水中に冷蔵保存(4℃)すると、細胞生存率が48時間後には40%以下まで低下し、72時間後には20%以下まで低下することが報告されている(非特許文献4)。このため、移植用幹細胞や移植用T細胞を長期保存する場合、凍結保存することが一般的である。しかし、凍結保存液中には、通常DMSO、グリセロール等の凍結保存剤が添加されているため、凍結保存した幹細胞やT細胞を解凍した後、移植治療を行う前に移植凍結保存剤を除去する必要があり、手間がかかることが問題とされていた。また、凍結保存液に凍結保存剤を添加しても凍結時の水の結晶化による細胞骨格のダメージが大きく、凍結融解後の細胞生存率が低下することも問題とされていた。このため、簡便性に優れ、且つ細胞生存率の低下を抑制できる細胞保存液の開発が急務とされていた。
本発明者らは、トレハロースには、哺乳動物細胞を液体中で保存したときに生じる細胞生存率低下や細胞凝集を、抑制する作用があることを報告している(特許文献1及び2)。しかしながら、アカルボースやスタキオースが、かかる作用を有することについてはこれまで知られていなかった。
特開2012−115253号公報 国際公開第2014/208053号パンフレット
Gage, F.H., Science 287: 1433-1438 (2000) Morrison, S.J. et al., Cell 96: 737-749 (1999) Batle, E. et al., Cell 111: 251-263 (2002) Lane, T.A. et al., Transfusion 49: 1471-1481 (2009)
本発明の課題は、哺乳動物細胞を液体中で保存したときに生じる細胞生存率低下や細胞凝集を効果的に抑制でき、かつ、哺乳動物の生体内に投与した場合に、哺乳動物の生態に悪影響を及ぼす可能性の低い物質や、かかる物質を含む哺乳動物細胞保存用液等を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けている。その過程において、93種類の糖類の中から、哺乳動物細胞の生存率低下を抑制し、かつその作用効果がトレハロースより高いものとして、アカルボースとスタキオースを見出した。さらにこれらの四糖は、哺乳動物細胞の細胞凝集を抑制する作用を有することも確認した。本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕アカルボース若しくはその塩、及び/又はスタキオース若しくはその塩を含む、哺乳動物細胞保存用液。
〔2〕アカルボース若しくはその塩、及び/又はスタキオース若しくはその塩を等張液中に含む、上記〔1〕に記載の液。
〔3〕等張液中のアカルボース若しくはその塩の濃度が、少なくとも40mMである、上記〔2〕に記載の液。
〔4〕等張液中のスタキオース若しくはその塩の濃度が、少なくとも40mMである、上記〔2〕又は〔3〕に記載の液。
〔5〕等張液が、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、リンゲル液、又は生理食塩液である、上記〔2〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の液。
〔6〕哺乳動物細胞を0〜40℃で保存するための、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の液。
〔7〕哺乳動物細胞を6時間〜30日間保存するための、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の液。
〔8〕哺乳動物細胞の生存率低下を抑制するために用いられる、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載の液。
〔9〕哺乳動物細胞の凝集を抑制するために用いられる、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の液。
〔10〕哺乳動物細胞の移植に用いられる、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の液。
〔11〕哺乳動物細胞が、哺乳動物幹細胞、哺乳動物リンパ球細胞、又は哺乳動物肝細胞である、上記〔1〕〜〔10〕のいずれか1つに記載の液。
〔12〕哺乳動物幹細胞が、哺乳動物間葉系幹細胞又は哺乳動物リンパ球細胞である、上記〔11〕に記載の液。
〔13〕アカルボース若しくはその塩、及び/又はスタキオース若しくはその塩を含む液中で、哺乳動物細胞を保存する工程を含む、哺乳動物細胞の保存方法。
〔14〕液が、等張液である、上記〔13〕に記載の保存方法。
〔15〕等張液中のアカルボース若しくはその塩の濃度が、少なくとも40mMである、上記〔14〕に記載の保存方法。
〔16〕等張液中のスタキオース又はその塩の濃度が、少なくとも40mMである、上記〔14〕又は〔15〕に記載の保存方法。
〔17〕等張液が、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、リンゲル液、又は生理食塩液である、上記〔14〕〜〔16〕のいずれか1つに記載の保存方法。
〔18〕哺乳動物細胞を0〜40℃で保存することを特徴とする、上記〔13〕〜〔17〕のいずれか1つに記載の保存方法。
〔19〕哺乳動物細胞を6時間〜30日間保存することを特徴とする、上記〔13〕〜〔18〕のいずれか1つに記載の保存方法。
〔20〕哺乳動物細胞が、哺乳動物幹細胞、哺乳動物リンパ球細胞、又は哺乳動物肝細胞である、上記〔13〕〜〔19〕のいずれか1つに記載の保存方法。
〔21〕哺乳動物幹細胞が、哺乳動物間葉系幹細胞又は哺乳動物リンパ球細胞である、上記〔20〕に記載の保存方法。
〔22〕アカルボース若しくはその塩、及び/又はスタキオース若しくはその塩を含む、上記〔1〕〜〔12〕のいずれか1つに記載の液を調製するための粉末製剤。
また本発明の実施の他の形態として、哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液を、哺乳動物細胞の移植を必要とする対象(例えば、外傷性疾患患者、組織変性疾患患者、がん患者)へ投与する工程を含む、哺乳動物細胞の移植方法;や、
アカルボース類及び/又はスタキオース類を含む液(好ましくは、等張液)に、哺乳動物細胞を加えるか、或いは、哺乳動物細胞を含む液(好ましくは、等張液)に、アカルボース類及び/又はスタキオース類を加えることにより、本件哺乳動物細胞保存用液を調製する工程と、調製した本件哺乳動物細胞保存用液中で、哺乳動物細胞を保存する工程と、保存した哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液を、哺乳動物細胞の移植を必要とする対象(例えば、外傷性疾患患者、組織変性疾患患者、がん患者)へ投与する工程とを含む、哺乳動物細胞の移植方法;や、
本件哺乳動物細胞保存用液の製造における、アカルボース類及び/又はスタキオース類の使用;や、
液体中の哺乳動物細胞の生存率低下を抑制するための、アカルボース類及び/又はスタキオース類の使用;や、
液体中の哺乳動物細胞の細胞凝集を抑制するための、アカルボース類及び/又はスタキオース類の使用;や、
哺乳動物細胞移植治療を必要とする疾患(例えば、外傷性疾患、組織変性疾患、がん)の治療における使用のための、哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液;や、
アカルボース類及び/又はスタキオース類を含む液(好ましくは、等張液)に、哺乳動物細胞を加えるか、或いは、哺乳動物細胞を含む液(好ましくは、等張液)に、アカルボース類及び/又はスタキオース類を加えることにより、本件哺乳動物細胞保存用液を調製する工程を含む、哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液の調製方法;や、
哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液
を挙げることができる。なお、上記移植方法の、哺乳動物細胞を保存する工程は、通常、哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液を、当該保存用液が液体の状態で存在する温度条件下で保存するものであり、当該保存用液が固体の状態で保存する工程(例えば、凍結保存する工程、凍結乾燥保存する工程等の哺乳動物細胞を休眠状態で保存する工程)を含まない。
本発明によると、アカルボース類やスタキオース類を液体中に加えることにより、哺乳動物細胞を液体中に保存したときに生じる細胞生存率低下や細胞凝集を効果的に抑制することができる。さらに、これらアカルボース類及びスタキオース類は、哺乳動物の生体内に投与した場合に、哺乳動物の生態に悪影響を及ぼす可能性の低い四糖類であることから、哺乳動物細胞を本件哺乳動物細胞保存用液中で保存した後、新しい移植用液に置換することなく、そのまま哺乳動物の生体内へ投与することができる。
骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(hMSC;Human Mesenchymal Stem Cell)を、5種類の被験用等張液(ラクテック注[LR]、175mMアカルボースを含むラクテック注[LR+175A]、175mMニストースを含むラクテック注[LR+175N]、175mMマルトテトラオースを含むラクテック注[LR+175Ma]、及び175mMスタキオースを含むラクテック注[LR+175S])中に4℃で2日間保存後の細胞生存率を、トリパンブルー染色法により解析した結果(n=3)を示す図である(表1参照)。図中の「Pre」は、4℃で保存前のhMSCを含むリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline;PBS)中のhMSCの細胞生存率(94.7±2.1)を示す。図中の「**」及び「***」は、Dunnett多重比較検定を行い、それぞれ統計学的に有意差がある(p<0.01及びp<0.001)ことを示す。 hMSCを、9種類の被験用等張液(大塚生食注[S]、ラクテック注[LR]、88mMトレハロースを含むラクテック注[LR+88T]、88mMアカルボースを含むラクテック注[LR+88A]、88mMグルコースを含むラクテック注[LR+88G]、175mMトレハロースを含むラクテック注[LR+175T]、175mMアカルボースを含むラクテック注[LR+175A]、175mMグルコースを含むラクテック注[LR+175G]、及び培地[M])中に4℃で3日間保存後の細胞生存率を、XTT法により解析した結果(培地以外はn=3、培地はn=2)を示す図である(表2参照)。図中の「*」、「**」及び「***」は、Dunnett多重比較検定を行い、それぞれ統計学的に有意差がある(p<0.05、p<0.01及びp<0.001)ことを示す。また、図中の「##」及び「###」は、88mMの3群(LR+88T、LR+88A及びLR+88G)の間、及び175mMの3群(LR+175T、LR+175A、及びLR+175G)の間で、Tukey type多重比較検定を行い、それぞれ統計学的に有意差がある(p<0.01及びp<0.001)ことを示す。 hMSCを、5種類の被験用等張液(ラクテック注[LR]、44mMアカルボースを含むラクテック注[LR+44A]、88mMアカルボースを含むラクテック注[LR+88A]、175mMアカルボースを含むラクテック注[LR+175A]、及び350mMアカルボースを含むラクテック注[LR+350A])中に4℃で3日間保存後の細胞生存率を、トリパンブルー染色法により解析した結果(n=3)を示す図である(表3参照)。図中の「Pre」は、4℃で保存前のhMSCを含むPBS中のhMSCの細胞生存率(95.0%)を示す。図中の「**」及び「***」は、Dunnett多重比較検定を行い、それぞれ統計学的に有意差がある(p<0.01及びp<0.001)ことを示す。 hMSCを、5種類の被験用等張液(ラクテック注[LR]、88mMトレハロースを含むラクテック注[LR+88T]、44mMアカルボースを含むラクテック注[LR+44A]、88mMアカルボースを含むラクテック注[LR+88A]、及び175mMアカルボースを含むラクテック注[LR+175A])中に4℃で28日間保存後の細胞生存率を、トリパンブルー染色法により解析した結果(n=3)を示す図である(表4参照)。図中の「Pre」は、4℃で保存前のhMSCを含むPBS中のhMSCの細胞生存率(94.1%)を示す。図中の「**」及び「***」は、Dunnett多重比較検定を行い、それぞれ統計学的に有意差がある(p<0.01及びp<0.001)ことを示す。 ラット肝細胞を、6種類の被験用等張液(大塚生食注[S]、ラクテック注[LR]、175mMトレハロースを含むラクテック注[LR+175T]、175mMアカルボースを含むラクテック注[LR+175A]、175mMグルコースを含むラクテック注[LR+175G]、及び培地[M])中に4℃で24時間保存後の細胞生存率を、トリパンブルー染色法により解析した結果(n=6)を示す図である(表6参照)。図中の「Pre」は、4℃で保存前のラット肝細胞を含む洗浄用培地中のラット肝細胞の細胞生存率(70.8±3.32)を示す。図中の「***」は、Dunnett多重比較検定を行い、統計学的に有意差がある(p<0.001)ことを示す。また、図中の「###」は、175mMの3群(LR+175T、LR+175A及びLR+175G)の間で、Tukey type多重比較検定を行い、統計学的に有意差がある(p<0.001)ことを示す。 hMSCを、4種類の被験用等張液(ラクテック注[LR]、175mMアカルボースを含むラクテック注[LR+175A]、175mMミグリトール(miglitol)を含むラクテック注[LR+175Mi]、及び175mMボグリボース(voglibose)を含むラクテック注[LR+175V])中に4℃で3日間保存後の細胞生存率を、トリパンブルー染色法により解析した結果(n=3)を示す図である(表7参照)。図中の「Pre」は、4℃で保存前のhMSCを含むPBS中のhMSCの細胞生存率(98.5±0.6)を示す。図中の「***」は、Dunnett多重比較検定を行い、統計学的に有意差がある(p<0.001)ことを示す。 hMSCを、2種類の被験用等張液(ラクテック注[LR]、及び88mMアカルボースを含むラクテック注[LR+88A])中に25℃で48時間保存後の位相差顕微鏡画像を示す図である。それぞれの被験用等張液について、異なる視野の画像を複数撮影し、代表的な3つの画像を示す。画像中の黒丸で囲った箇所は、細胞凝集塊を示す。 拡大培養したCD8陽性T細胞を、3種類の被験用等張液(ラクテック注[LR]、88mMトレハロースを含むラクテック注[LR+88T]、及び88mMアカルボースを含むラクテック注[LR+88A])中に5℃で保存前の細胞生存率(図8A)又は24時間保存後の細胞生存率(図8B)を、トリパンブルー染色法により解析した結果(n=3)を示す図である(表8参照)。図中の「*」及び「**」は、Studentのt検定を行い、それぞれ統計学的に有意差がある(p<0.05及びp<0.01)ことを示し、図中の「n.s」、Studentのt検定を行い、統計学的に有意差がない(p≧0.05)ことを示す。 図9Aは、5℃で保存前のhMSCを含むPBS中のhMSCの細胞生存率(93.7±2.0%)を示す。図9Bは、当該hMSCを、5種類の被験用等張液(ラクテック注[LR]、44mMスタキオースを含むラクテック注[LR+44S]、88mMスタキオースを含むラクテック注[LR+88S]、175mMスタキオースを含むラクテック注[LR+175S]、及び88mMトレハロースを含むラクテック注[LR+88T])中に5℃で4日間保存後の細胞生存率を、トリパンブルー染色法により解析した結果(n=3)を示す図である(表9参照)。図中の「**」及び「***」は、Dunnett多重比較検定を行い、それぞれ統計学的に有意差がある(p<0.01及びp<0.001)ことを示す。 図10Aは、5℃で保存前のhMSCを含むPBS中のhMSCの細胞生存率(93.7±3.2%)を示す。図10B及び10Cは、当該hMSCを、8種類の被験用等張液(ラクテック注[LR]、88mMアカルボースを含むラクテック注[LR+88A]、大塚生食注[S]、88mMアカルボースを含む大塚生食注[S+88A]、リンゲル液「オーツカ」[R]、88mMアカルボースを含むリンゲル液「オーツカ」[R+88A]、ヴィーンF輸液[AR]、及び88mMアカルボースを含むヴィーンF輸液[AR+88A])中に5℃で、それぞれ3日間及び9日間保存後の細胞生存率を、トリパンブルー染色法により解析した結果(n=3)を示す図である(表10参照)。図中の「*」、「**」、及び「***」は、Studentのt検定を行い、それぞれ統計学的に有意差がある(p<0.05、p<0.01、及びp<0.001)ことを示し、図中の「n.s」、Studentのt検定を行い、統計学的に有意差がない(p≧0.05)ことを示す。
本発明の哺乳動物細胞保存用液は、「哺乳動物細胞を保存するため」という用途に特定された、アカルボース類及び/又はスタキオース類を含む液(すなわち、本件哺乳動物細胞保存用液)である。
本件哺乳動物細胞保存用液としては、哺乳動物細胞の保存が可能な液(例えば、等張液、低張液、高張液)であればよく、等張液を好適に例示することができる。本明細書において「等張液」とは、体液や細胞液の浸透圧とほぼ同じ浸透圧を有する液を意味し、具体的には、250〜380mOsm/Lの範囲内の浸透圧を有する液を意味する。また、本明細書において「低張液」とは、体液や細胞液の浸透圧よりも低い浸透圧を有する液を意味し、具体的には、250mOsm/L未満の浸透圧を有する液を意味する。かかる低張液としては、細胞が破裂しない程度の低張液(具体的には、100〜250mOsm/L未満の範囲内の浸透圧を有する液)が好ましい。また、本明細書において「高張液」とは、体液や細胞液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する液を意味し、具体的には、浸透圧が380mOsm/L超(好ましくは、380mOsm/L超〜1000mOsm/Lの範囲内)を意味する。
上記等張液としては、体液や細胞液の浸透圧とほぼ同じになるようにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等によって塩濃度や糖濃度等を調整した等張液であれば特に制限されず、具体的には生理食塩水や、緩衝効果のある生理食塩水(例えば、PBS、トリス緩衝生理食塩水[Tris Buffered Saline;TBS]、HEPES緩衝生理食塩水)、リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液、5%グルコース水溶液、動物細胞培養用基礎培地(例えば、DMEM、EMEM、RPMI−1640、α−MEM、F−12、F−10、M−199)、等張剤(例えば、ブドウ糖、D−ソルビトール、D−マンニトール、ラクトース、塩化ナトリウム)等を挙げることができ、これらの中でも乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、リンゲル液、又は生理食塩水(生理食塩液)が好ましい。等張液は、市販のものであっても、自ら調製したものであってもよい。市販のものとしては、大塚生食注(大塚製薬工場社製)(生理食塩液)、リンゲル液「オーツカ」(大塚製薬工場社製)(リンゲル液)、ラクテック(登録商標)注(大塚製薬工場社製)(乳酸リンゲル液)、乳酸リンゲル液「KS」(共立製薬社製)(乳酸リンゲル液)、ヴィーンF輸液(扶桑薬品工業社製)(酢酸リンゲル液)、大塚糖液5%(大塚製薬工場社製)(5%グルコース水溶液)、ビカネイト輸液(大塚製薬工場社製)(重炭酸リンゲル液)を挙げることができる。
上記アカルボース(Acarbose)とは、D−グルコース、D−グルコース、D−グルコース、及び(1S,4R,5S,6S)-4,5,6-トリヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)-2-シクロヘキセンが連なった四糖であり、より具体的には、以下の式で表される物質である。アカルボースは、化学合成、微生物による生産(例えば、アクチノプラネス[Actinoplanes]属のアミノ糖産生菌の培養)、酵素による生産等のいずれの公知の方法によっても製造することができるが、市販品を用いることもできる。例えば、アカルボース(和光純薬工業社製)、アカルボース(商品名:グルコバイ)(バイエル薬品社製)等の市販品を挙げることができる。
Figure 2020066991
上記アカルボースの塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の酸付加塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩;などを挙げることができる。なお、これらの塩は使用時において溶液として用いられ、その作用は、アカルボースと同効なものが好ましい。これらの塩類は、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、またいずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明において、等張液中のアカルボース類の濃度としては、アカルボース類による細胞生存率低下の抑制効果が発揮される濃度であればよく、例えば、少なくとも40mM、好ましくは少なくとも80mM、より好ましくは少なくとも150mM、さらに好ましくは少なくとも160mM、さらにより好ましくは少なくとも170mMである。また、費用対効果の面から、等張液中のアカルボース類の濃度は、例えば、1000mM以下、好ましくは700mM以下、より好ましくは600mM以下、さらに好ましくは500mM以下、さらにより好ましくは400mM以下である。したがって、等張液中のアカルボース類濃度は、例えば、40〜1000mMの範囲内、好ましくは80〜700mM、より好ましくは150〜600mM、さらに好ましくは160m〜500mM、さらにより好ましくは170〜400mMである。
上記スタキオース(Stachyose)とは、D−フルクトース、D−グルコース、D−ガラクトース、及びD−ガラクトースが連なった四糖であり、より具体的には、以下の式で表される物質である。スタキオースは、化学合成、植物による生産(例えば、大豆等の豆類やウリ科植物から熱水抽出)、酵素による生産等のいずれの公知の方法によっても製造することができるが、市販品を用いることもできる。例えば、スタキオースn水和物(和光純薬工業社製)、スタキオース水和物(東京化成工業社製)等の市販品を挙げることができる。
Figure 2020066991
上記スタキオースの塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の酸付加塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩;などを挙げることができる。なお、これらの塩は使用時において溶液として用いられ、その作用は、スタキオースと同効なものが好ましい。これらの塩類は、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、またいずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明において、等張液中のスタキオース類の濃度としては、スタキオース類による細胞生存率低下の抑制効果が発揮される濃度であればよく、例えば、少なくとも40mM、好ましくは少なくとも80mM、より好ましくは少なくとも150mM、さらに好ましくは少なくとも160mM、さらにより好ましくは少なくとも170mMである。また、費用対効果の面から、等張液中のスタキオース類の濃度は、例えば、1000mM以下、好ましくは700mM以下、より好ましくは600mM以下、さらに好ましくは500mM以下、さらにより好ましくは400mM以下である。したがって、等張液中のスタキオース類濃度は、例えば、40〜1000mMの範囲内、好ましくは80〜700mM、より好ましくは150〜600mM、さらに好ましくは160m〜500mM、さらにより好ましくは170〜400mMである。
本件哺乳動物細胞保存用液は、哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液が液体の状態で存在する温度条件下で任意の期間保存するために用いるものである。本件哺乳動物細胞保存用液中に含まれるアカルボース類やスタキオース類は、哺乳動物細胞を液体中で保存したときに生じる細胞生存率低下や細胞凝集を効果的に抑制する作用を有し、かつ、哺乳動物の生体内に投与した場合に、哺乳動物の生態に悪影響を及ぼす可能性の低い物質である。このため、本件哺乳動物細胞保存用液は、「哺乳動物細胞の生存率低下を抑制するため」という用途;「哺乳動物細胞の細胞凝集を抑制するため」という用途;及び「哺乳動物細胞を移植するため」という用途;から選択される1又は2以上の用途に、さらに特定されたものが好ましい。
本件哺乳動物細胞保存用液は、アカルボース類及びスタキオース類以外にも、哺乳動物細胞の生存率低下抑制作用を有する成分を含むものであってもよいが、アカルボース類やスタキオース類だけでも、哺乳動物細胞の生存率低下抑制効果を発揮するため、アカルボース類及びスタキオース類以外に、哺乳動物細胞の生存率低下抑制作用を有する成分(例えば、トレハロース、ヒドロキシエチルスターチ[Hydroxyethyl starch;HES]、グルコース)を含まないものであってもよい。
本件哺乳動物細胞保存用液は、通常、哺乳動物細胞を凍結保存又は凍結乾燥保存したときの哺乳動物細胞の生存率低下を抑制する作用を有する成分、例えば、ジメチルスルホキシド[Dimethyl sulfoxide;DMSO]、グリセリン、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ジメチルアセトアミド、ポリエチレングリコール[PEG]、ポリビニルピロリドン、血清又は血清由来成分(例えば、アルブミン)等の凍結保護剤又は凍結乾燥保護剤を含まないものであってもよい。
本件哺乳動物細胞保存用液としては、哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液をそのまま移植に用いる場合、哺乳動物細胞移植に適した液が好ましく、かかる哺乳動物細胞移植に適した液は、哺乳動物細胞移植に適さない物質、例えば、生体由来の成分(例えば、血清又は血清由来成分[例えば、アルブミン])や、前述の凍結保護剤又は凍結乾燥保護剤を含まないことが好ましい。
本件哺乳動物細胞保存用液としては、アカルボース類又はスタキオース類を単独で含む液であってもよいし、アカルボース類及びスタキオース類から選択される2種類以上の四糖を含む液や、アカルボース類やスタキオース類以外に、さらに任意成分を含む液であってもよい。
本明細書において「任意成分」としては、例えば、等張剤(例えば、グルコース、ソルビトール、マンニトール、ラクトース、塩化ナトリウム)、キレート剤(例えば、EDTA、EGTA、クエン酸、サリチレート)、溶解補助剤、保存剤、酸化防止剤、アミノ酸(例えば、プロリン、グルタミン)、ポリマー(例えば、ポリエーテル)、リン脂質(例えば、リゾホスファチジン酸[LPA;Lysophosphatidic acid])を挙げることができる。本明細書において「任意成分」とは、含んでもよいし含まなくてもよい成分のことを意味する。
また、本発明には、アカルボース若しくはその塩、及び/又はスタキオース若しくはその塩を含む、本件哺乳動物細胞保存用液を調製するための粉末製剤が含まれる。当該粉末製剤には上記の任意成分を含んでいてもよい。
本発明の哺乳動物細胞の保存方法は、アカルボース類及び/又はスタキオース類を含む液(すなわち、本件哺乳動物細胞保存用液)中で、哺乳動物細胞を任意の期間保存する工程を含むもの(以下、「本件保存方法」ということがある)である。本件保存方法は、通常、哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液を、当該保存用液が液体の状態で存在する温度条件下で保存するものであり、当該保存用液が固体の状態で存在する温度条件下で保存する工程(例えば、凍結保存する工程、凍結乾燥保存する工程等の哺乳動物細胞を休眠状態で保存する工程)を含まない。また、本件哺乳動物細胞保存用液中の哺乳動物細胞の密度は、例えば、10〜1010個/mLの範囲内である。
本件保存方法としては、本件哺乳動物細胞保存用液中で哺乳動物細胞を保存する前に、アカルボース類及び/又はスタキオース類を含む液(好ましくは、等張液)に、哺乳動物細胞を加えるか、或いは、哺乳動物細胞を含む液(好ましくは、等張液)に、アカルボース類及び/又はスタキオース類を加えることにより、アカルボース類及び/又はスタキオース類を含む液を調製する工程を、さらに含むものであってもよい。
本発明において、哺乳動物細胞を保存する任意の期間としては、哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液を液体の状態で保存したときに、当該保存用液中の哺乳動物細胞の細胞生存率低下を抑制し、生細胞の割合を高めることができる期間が好ましく、例えば、6時間以上、12時間以上、24時間(1日)以上、36時間(1.5日)以上、48時間(2日)以上、3日以上、7日以上、10日以上であり、また、哺乳動物細胞の保存期間が長すぎると細胞の生存に悪影響を及ぼす可能性があるため、細胞の生存率への悪影響を回避する観点から、通常は30日以下、好ましくは20日以下、より好ましくは10日以下、さらに好ましくは6日以下である。したがって、上記任意の保存期間としては、通常、6時間〜30日の範囲内、12時間〜30日の範囲内、24時間〜30日の範囲内、36時間〜30日の範囲内、48時間〜30日の範囲内、3〜30日の範囲内、7〜30日の範囲内、又は10〜30日の範囲内であり、好ましくは、6時間〜20日、12時間〜20日、24時間〜20日、36時間〜20日、48時間〜20日、3〜20日、7〜20日、又は10〜20日であり、より好ましくは、6時間〜10日、12時間〜10日、24時間〜10日、36時間〜10日、48時間〜10日、3〜10日、又は7〜10日であり、さらに好ましくは、6時間〜6日、12時間〜6日、24時間〜6日、36時間〜6日、48時間〜6日、又は3〜6日である。
本発明において、「哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液が液体の状態で存在する温度」としては、哺乳動物細胞を含む本件哺乳動物細胞保存用液が、凍結せずに液体の状態で存在し、かつ当該保存用液中の哺乳動物細胞が生育可能な温度であればよく、通常0〜40℃の範囲内、好ましくは0〜30℃(室温)の範囲内である。
本発明の哺乳動物細胞としては、例えば、哺乳動物細胞移植治療を必要とする疾患(がん;I型糖尿病;肝疾患等の臓器疾患;など)に対する再生医療において、血管経由で投与される哺乳動物細胞、具体的には、幹細胞;膵島細胞;肝細胞;白血球(例えば、樹状細胞、リンパ球細胞、マクロファージ、好中球、好酸球);等を例示することができ、好ましくは、幹細胞、リンパ球細胞、又は肝細胞である。ここで「リンパ球細胞」とは、哺乳動物細胞の免疫系における白血球のサブタイプの1つであり、抗原を認識し、免疫能を有する細胞を意味する。リンパ球細胞には、具体的には、T細胞(例えば、アルファ・ベータ[αβ]T細胞、ガンマ・デルタ[γδ]T細胞、細胞傷害性T細胞[cytotoxic T lymphocyte;CTL]、ヘルパーT細胞)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。
上記哺乳動物細胞は、公知の一般的な方法で単離することができる。例えば、白血球や、白血球に包含されるリンパ球細胞(例えば、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、γδT細胞)は、溶血処理した末梢血又は臍帯血試料から、必要に応じて、IL−2や抗CD3抗体の存在下で拡大培養した後、白血球の細胞表面マーカー(CD45)、T細胞の細胞表面マーカー(CD3)、ヘルパーT細胞の細胞表面マーカー(CD4)、細胞傷害性T細胞(CD8)、γδT細胞の細胞表面マーカー(CD39)に対する抗体を用いた蛍光活性化セルソーター(FACS)や、蛍光物質やビオチン、アビジン等の標識物質で標識した上記細胞表面マーカーに対する抗体と、かかる標識物質に対する抗体とMACSビーズ(磁性ビーズ)とのコンジュゲート抗体とを用いた自動磁気細胞分離装置(autoMACS)により、それぞれのマーカーが陽性の細胞として単離することができる。上記蛍光物質としては、アロフィコシアニン(APC)、フィコエリトリン(PE)、FITC(fluorescein isothiocyanate)、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 700、PE−Texas Red、PE−Cy5、PE−Cy7等を挙げることができる。
また上記「幹細胞」とは、自己複製能及び分化・増殖能を有する未熟な細胞を意味する。幹細胞には、分化能力に応じて、多能性幹細胞(pluripotent stem ce11)、複能性幹細胞(multipotent stem ce11)、単能性幹細胞(unipotent stem ce11)等の亜集団が含まれる。多能性幹細胞とは、それ自体では個体になることができないが、生体を構成する全ての組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。複能性幹細胞とは、全ての種類ではないが、複数種の組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。単能性幹細胞とは、特定の組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。
多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(Embryonic stem cell;ES細胞)、EG細胞(Embryonic germ cell)、誘導多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cell;iPS細胞)等を挙げることができる。ES細胞は、内部細胞塊をフィーダー細胞上又はLIFを含む培地中で培養することにより製造することができる。ES細胞の製造方法は、例えば、WO96/22362、WO02/101057、US5,843,780、US6,200,806、US6,280,718等に記載されている。EG細胞は、始原生殖細胞をmSCF、LIF及びbFGFを含む培地中で培養することにより製造することができる(Ce11,70:841-847,1992)。iPS細胞は、体細胞(例えば線維芽細胞、皮膚細胞等)にOct3/4、Sox2及びKlf4(必要に応じて更にc−Myc又はn−Myc)等のリプログラミング因子を導入することにより製造することができる(Ce11,126:p.663-676,2006;Nature,448:p.313-317,2007;Nat Biotechno1,26;p,101-106,2008;Cel1 131:p.861‐872,2007;Science,318:p.1917-1920,2007;Ce11 Stem Cells 1:p.55-70,2007;Nat Biotechnol,25:p.1177-1181,2007;Nature,448:p.318-324,2007;Cell Stem Cells 2:p.10-12,2008;Nature 451:p.141-146,2008;Science,318:p.1917-1920,2007)。体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立した幹細胞も、多能性幹細胞としてまた好ましい(Nature,385,810(1997);Science,280,1256(1998);Nature Biotechnology,17,456(1999);Nature,394,369(1998);Nature Genetics,22,127(1999);Proc.Natl. Acad.Sci.USA,96,14984(1999))、Rideout IIIら(Nature Genetics,24,109(2000))。
複能性幹細胞としては、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞等の細胞に分化可能な間葉系幹細胞、白血球、赤血球、血小板等の血球系細胞に分化可能な造血系幹細胞、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト等の細胞に分化可能な神経系幹細胞、骨髄幹細胞、生殖幹細胞等の体性幹細胞等を挙げることができる。複能性幹細胞は、好ましくは間葉系幹細胞である。間葉系幹細胞とは、骨芽細胞、軟骨芽細胞及び脂肪芽細胞の全て又はいくつかへの分化が可能な幹細胞を意味する。複能性幹細胞は、自体公知の方法により、生体から単離することができる。例えば、間葉系幹細胞は、哺乳動物の骨髄、脂肪組織、末梢血、臍帯血等から公知の一般的な方法で採取することができる。例えば、骨髄穿刺後の造血幹細胞等の培養、継代によりヒト間葉系幹細胞を単離することができる(Journal of Autoimmunity,30(2008)163-171)。複能性幹細胞は、上記多能性幹細胞を適切な誘導条件下で培養することによっても得ることができる。
本発明の哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を例示することができ、中でも、マウス、ブタ、ヒトを好適に例示することができる。
本発明の哺乳動物細胞として、付着性(「接着性」ともいう)の細胞を例示することができる。本明細書中、「付着性」細胞とは、足場に接着することで生存、増殖、物質の生産を行なうことができる足場依存性の細胞を意味する。付着性幹細胞としては、例えば、多能性幹細胞、間葉系幹細胞、神経系幹細胞、骨髄幹細胞、生殖幹細胞等を挙げることができ、間葉系幹細胞を好適に例示することができる。
本発明の哺乳動物細胞(集団)は、生体内から分離されたものであっても、インビトロで継代培養されたものであってもよいが、単離又は精製されていることが好ましい。本明細書中、「単離又は精製」とは、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された哺乳動物細胞の純度(全細胞数に対する、哺乳動物幹細胞数等の目的とする細胞の割合)は、通常30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば100%)である。
本件哺乳動物細胞保存用液中に保存する哺乳動物細胞(集団)は、単一細胞(シングルセル)の状態であってもよい。本明細書において、「単一細胞の状態」とは、他の細胞と寄り集まって塊を形成していないこと(即ち、凝集していない状態)を意味する。単一細胞の状態の哺乳動物細胞は、インビトロで培養した哺乳動物細胞をトリプシン/EDTA等で酵素処理することにより調製することができる。哺乳動物細胞中に含まれる単一細胞の状態の哺乳動物細胞の割合は、例えば70%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上(例えば100%)である。単一細胞の状態の細胞の割合は、哺乳動物細胞をPBS中に分散させ、これを顕微鏡下で観察し、無作為に選択された複数個(例えば、1000個)の細胞について凝集の有無を調べることにより決定することができる。
本件哺乳動物細胞保存用液中に保存する哺乳動物細胞(集団)は、浮遊していてもよい。本明細書において、「浮遊」とは、哺乳動物細胞が、保存用液を収容した容器の内壁に接触することなく、液中に保持されていることをいう。
本件哺乳動物細胞保存用液中に保存した哺乳動物細胞が、凝集又は沈殿している場合、移植前にピペッティングやタッピング等の当該技術分野における周知の方法により哺乳動物細胞を懸濁することが好ましい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1:アカルボース及びスタキオースのスクリーニング
本発明者らは、これまでに、哺乳動物細胞を含む液中に、トレハロースを添加すると、溶液の状態で保存したときの細胞生存率低下を抑制できることを報告している(特開2012−115253号公報、国際公開第2014/208053号パンフレット)。そこで、本実施例においては、トレハロース以外の糖類から、細胞生存率低下の抑制効果を示すものを探索した。
1−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
93種類の糖類を選択し、分子量が明確な糖類については、87.5mMの濃度となるように、それぞれ乳酸リンゲル液であるラクテック(登録商標)注(大塚製薬工場社製)に添加・融解して調製し、また、分子量が不明な糖類については、4〜5%の濃度となるように、それぞれラクテック注に添加・融解し、93種類の糖類を含む等張液を調製した。また、トレハロース(株式会社林原社製)をラクテック注に添加・融解して調製し、88mMトレハロースを含む等張液を調製した。
[哺乳動物細胞]
哺乳動物細胞は、骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(Lonza Walkersville社製)(以下、「hMSC」という)を用いた。
[hMSCを含むPBSの調製]
hMSCを含むPBSは、以下の手順〔1〕〜〔8〕に従って調製した。
〔1〕4×10個のhMSCを、75cmフラスコに加え、培地存在下で37℃、5%COインキュベーターにて培養を行った。顕微鏡下で細胞の状態を観察し、約80%程度コンフルエントになるまで培養した。
〔2〕培地を除き、8mLのPBS(−)でhMSCをリンスした。
〔3〕PBS(−)を除き、3.75mLのトリプシン−EDTA(Lonza社製)を加え、室温で5分間静置した。
〔4〕hMSCが90%程度剥離するまで顕微鏡下で観察しながら、ゆっくりと揺らした。
〔5〕3.75mLの培地を加え、トリプシン反応を停止させ、ピペッティングによりhMSCを回収し、50mL遠心チューブに移した。
〔6〕600×g、5分間、22℃で遠心分離を行った。
〔7〕上清(培地)を除き、1.5mLのPBS(−)を加え、沈殿(hMSC)を懸濁した。
〔8〕細胞数を計測し、5×10cells/mLとなるようにPBS(−)で調整し、hMSCを含むPBSを調製した。
[各種被験用等張液中でのhMSCの保存方法]
各種被験用等張液中でのhMSCの保存は、以下の手順〔1〕〜〔2〕に従って行った。
〔1〕調製したhMSCを含むPBSを、各チューブに0.5mLずつ分注し、遠心分離(600×g、5分間)を行った。
〔2〕上清(PBS)を除き、沈殿(hMSC)を、0.5mLの各種被験用等張液で懸濁し、4℃で3日間保存した。
[トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析]
トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析は、以下の手順〔1〕〜〔2〕に従って行った。
〔1〕4℃で3日間保存後のhMSCを含む各種被験用等張液のそれぞれから、20μL(1×10cells相当)を採取し、チューブに移した後、トリパンブルー染色液(Gibco社製)20μLを混合した。なお、比較対照として、各種被験用等張液に懸濁する前(4℃で保存前)のhMSCを含むPBSのそれぞれから、20μL(1×10cells相当)を採取し、チューブに移した後、トリパンブルー染色液20μLを混合した。
〔2〕顕微鏡下にてワンセルカウンター(バイオメディカルサイエンス社製)を用いて全細胞数とトリパンブルー陽性細胞(死細胞)数の測定を行い、全細胞数に対するトリパンブルー陰性細胞の割合、すなわち、細胞生存率を算出した。
1−2.結果
93種類の糖類のうち、トレハロースよりも細胞生存率低下の抑制効果が高いものとして、アカルボースとスタキオースが得られた。
一方、D−ラクトビオン酸、(−)−2,3−O−イソプロピリデン−D−スレイトール、D−ガラクツロン酸、及びD−マンノサミンについては、乳酸リンゲル液中でhMSCを保存した場合よりも細胞生存率が低下した。
実施例2:アカルボース及びスタキオースによる細胞生存率低下抑制効果の確認
アカルボースとスタキオースは四糖類で共通する。そこで、アカルボースとスタキオース以外の四糖類についても、細胞生存率低下抑制効果があるか否かを確認するために、2種類の四糖(ニストース及びマルトテトラオース)を用いて検討した。
2−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
アカルボース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、175mMアカルボースを含む等張液を調製した。
また、スタキオースn水和物(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、175mMスタキオースを含む等張液を調製した。また、ニストース三水和物(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、175mMニストースを含む等張液を調製した。また、マルトテトラオース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、175mMマルトテトラオースを含む等張液を調製した。なお、比較対照として、ラクテック注を用いた。
[哺乳動物細胞]
哺乳動物細胞は、実施例1で使用したhMSCを用いた。
[hMSCを含むPBSの調製]
hMSCを含むPBSは、実施例1に記載の方法に従って調製した。
[各種被験用等張液中でのhMSCの保存方法]
hMSCを、実施例1に記載の方法に従い、各種被験用等張液中に4℃で2日間保存した。
[トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析]
トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析は、実施例1に記載の方法に従って行った。
2−2.結果
hMSCを、アカルボース又はスタキオースを含むラクテック注中に保存すると、ラクテック注中に保存した場合と比べ、細胞生存率は上昇することが確認されたのに対して、hMSCを、ニストース又はマルトテトラオースを含むラクテック注中に保存しても、かかる細胞生存率の上昇は認められなかった(表1及び図1参照)。
この結果は、アカルボース及びスタキオースによる細胞生存率低下抑制効果は、四糖類に共通するものではなく、アカルボース及びスタキオースに特異的なものであることを示している。
Figure 2020066991
実施例3:アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果の確認1
アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果と、トレハロースやグルコースによる細胞生存率低下抑制効果とを比較検討した。
3−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
アカルボース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、88mMアカルボースを含む等張液、及び175mMアカルボースを含む等張液を調製した。また、トレハロース(株式会社林原社製)をラクテック注に添加・融解して調製し、88mMトレハロースを含む等張液、及び175mMトレハロースを含む等張液を調製した。また、グルコース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、88mMグルコースを含む等張液、及び175mMグルコースを含む等張液を調製した。なお、比較対照として、生理食塩液である大塚生食注(大塚製薬工場社製)、ラクテック注、及びヒト間葉系幹細胞専用培地キット(MSCGM BulletKit、以下「培地」という)(Lonza Walkersville社製、PT-3001)を用いた。
[哺乳動物細胞]
哺乳動物細胞は、実施例1で使用したhMSCを用いた。
[hMSCを含むPBSの調製]
hMSCを含むPBSは、実施例1に記載の方法に従って調製した。
[各種被験用等張液中でのhMSCの保存方法]
hMSCを、実施例1に記載の方法に従い、各種被験用等張液中に4℃で3日間保存した。
[XTT法によるhMSCの細胞生存率の解析]
XTT(sodium 3'-[1(-phenylaminocarbonyl)-3,4-tetrazolium]-bis(4-methoxy-6-nitro)benzene sulfonic acid hydrate)法による細胞生存率の解析は、以下の手順〔1〕〜〔3〕に従って行った。
〔1〕4℃で3日間保存後のhMSCを含む各種被験用等張液のそれぞれから、100μL(5×10cells相当)を採取し、チューブに移した後、600×g、5分間、22℃で遠心分離を行った。
〔2〕上清(各種被験用等張液)を除き、100μLの培地を加え、沈殿(hMSC)を懸濁した後、96ウェルプレートに移した。
〔3〕細胞増殖キットII(Cat.No.1465015、Roche社製)のXTT混合試薬(XTT試薬と、電子カップリング液とを50:1の比率で混合したもの)を、各ウェルに50μLずつ加えた。
〔4〕24分後にプレートリーダー(Viento XS [KC junior]、大日本製薬社製)を用いて、生細胞により代謝され、産生されるフォルマザン色素の吸光度である480nmの吸光度(A480)と、対照波長の吸光度である650nmの吸光度(A650)とを測定し、A650で補正したA480の吸光度(A480−A650)を算出した。
3−2.結果
hMSCを、88mM又は175mMのアカルボースを含むラクテック注中に保存すると、ラクテック注中に保存した場合と比べ、生細胞の指標である「A480−A650」値が高かった(表2及び図2参照)。また、hMSCを、88mM又は175mMのトレハロースやグルコースを含むラクテック注中に保存すると、ラクテック注中に保存した場合と比べ、「A480−A650」値は高かったものの、同じ濃度のアカルボースを含むラクテック注中にhMSCを保存した場合の方が、有意に高かった(表2及び図2参照)。
この結果は、アカルボースを等張液中に添加し、哺乳動物細胞を保存すると、アカルボース非添加の等張液や、トレハロース又はグルコースを添加した等張液中に哺乳動物細胞を保存した場合と比べ、当該液中の哺乳動物細胞の細胞死が効果的に抑制され、生細胞の割合を高めることができることを示している。
Figure 2020066991
実施例4:アカルボースの至適濃度の検討
44〜350mMアカルボースを含む等張液を用いて、アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果の至適濃度を検討した。
4−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
アカルボース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、44mMアカルボースを含む等張液、88mMアカルボースを含む等張液、175mMアカルボースを含む等張液、及び350mMアカルボースを含む等張液を調製した。なお、比較対照として、ラクテック注を用いた。
[哺乳動物細胞]
哺乳動物細胞は、実施例1で使用したhMSCを用いた。
[hMSCを含むPBSの調製]
hMSCを含むPBSは、実施例1に記載の方法に従って調製した。
[各種被験用等張液中でのhMSCの保存方法]
hMSCを、実施例1に記載の方法に従い、各種被験用等張液中に4℃で3日間保存した。
[トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析]
トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析は、実施例1に記載の方法に従って行った。
4−2.結果
hMSCを、44〜175mMのアカルボースを含むラクテック注中に保存すると、細胞生存率は、アカルボースの濃度依存的に上昇したのに対して、hMSCを、175〜350mMのアカルボースを含むラクテック注中に保存すると、細胞生存率はほとんど変わらなかった(表3及び図3参照)。
この結果は、少なくとも44mM前後(好ましくは、少なくとも175mM前後)のアカルボースを等張液中に添加し、哺乳動物細胞を保存すると、当該液中の哺乳動物細胞の細胞死を効果的に抑制できることを示している。
Figure 2020066991
実施例5:長期間哺乳動物細胞を保存した場合のアカルボースによる細胞生存率低下抑制効果の確認
アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果が、哺乳動物細胞を長期間保存したときも認められるかどうかを確かめるために、hMSCを、アカルボースを含む等張液中に4℃で28日間保存し、細胞生存率を解析した。
5−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
アカルボース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、44mMアカルボースを含む等張液、88mMアカルボースを含む等張液、及び175mMアカルボースを含む等張液を調製した。また、トレハロース(株式会社林原社製)をラクテック注に添加・融解して調製し、88mMトレハロースを含む等張液を調製した。なお、比較対照として、ラクテック注を用いた。
[哺乳動物細胞]
哺乳動物細胞は、実施例1で使用したhMSCを用いた。
[hMSCを含むPBSの調製]
hMSCを含むPBSは、実施例1に記載の方法に従って調製した。
[各種被験用等張液中でのhMSCの保存方法]
hMSCを、実施例1に記載の方法に従い、各種被験用等張液中に4℃で28日間保存した。
[トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析]
トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析は、実施例1に記載の方法に従って行った。
5−2.結果
hMSCをラクテック注中に28日間保存すると、細胞生存率は0%であったのに対して、hMSCを、88mMのアカルボースを含むラクテック注中に28日間保存すると、細胞生存率は15.9±5.90%に上昇した(表4及び図4参照)。また、トレハロースを含むラクテック注中にhMSCを28日間保存した場合も、細胞生存率は上昇したものの、アカルボースを含むラクテック注中にhMSCを28日間保存した場合の方がその割合は高かった(表4及び図4参照)。さらに、175mMのアカルボースを含むラクテック注中にhMSCを保存すると、88mMのアカルボースを含むラクテック注中にhMSCを保存した場合と比べ、細胞生存率はさらに上昇することが示された(表4及び図4参照)。
これらの結果は、アカルボースを等張液に添加し、哺乳動物細胞を長期間(4℃で28日間)保存した場合でも、トレハロースを当該等張液に添加し、哺乳動物細胞を長期間保存した場合と比べ、哺乳動物細胞の生存率低下を効果的に抑制できることを示している。
Figure 2020066991
実施例6:アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果の確認2
アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果を、hMSC以外の哺乳動物細胞(ラット肝細胞)を用いて確認した。
6−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
アカルボース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、175mMアカルボースを含む等張液を調製した。また、トレハロース(株式会社林原社製)をラクテック注に添加・融解して調製し、175mMトレハロースを含む等張液を調製した。また、グルコース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、175mMグルコースを含む等張液を調製した。なお、比較対照として、大塚生食注、ラクテック注、及び培地を用いた。
[哺乳動物細胞]
哺乳動物細胞は、以下の表5に示すラット肝細胞を用いた。
Figure 2020066991
[ラット肝細胞を含む洗浄用培地の調製]
ラット肝細胞を含む洗浄用培地は、以下の手順〔1〕〜〔6〕に従って調製した。
〔1〕ラット肝細胞のストックチューブを、液体窒素タンクから取出し、37℃恒温槽で融解した。
〔2〕融解後、すぐに氷上に静置し、50mL遠心チューブに移した。
〔3〕25mLの氷冷した肝細胞洗浄用培地(Hepatocyte Wash Medium、以下「洗浄用培地」という)(GIBCO社製)を滴下した。
〔4〕50×g、3分間、4℃で遠心分離を行った。
〔5〕上清(洗浄用培地)を除き、6mLの洗浄用培地を加え、沈殿(ラット肝細胞)を2〜3回ピペッティングにより懸濁した。
〔6〕細胞数を計測し、5×10cells/mLとなるように洗浄用培地で調整し、ラット肝細胞を含む洗浄用培地を調製した。
[各種被験用等張液中でのラット肝細胞の保存方法]
各種被験用等張液中でのラット肝細胞の保存は、以下の手順〔1〕〜〔2〕に従って行った。
〔1〕調製したラット肝細胞を含む洗浄用培地を、各チューブに0.5mLずつ分注し、遠心分離(50×g、3分間、4℃)を行った。
〔2〕上清(洗浄用培地)を除き、沈殿(ラット肝細胞)を、0.5mLの各種被験用等張液で懸濁し、4℃で24時間保存した。
[トリパンブルー染色法によるラット肝細胞の細胞生存率の解析]
トリパンブルー染色法によるラット肝細胞の細胞生存率の解析は、実施例1に記載の方法において、hMSCをラット肝細胞に代えて行った。
6−2.結果
ラット肝細胞を、アカルボースを含むラクテック注中に保存すると、ラクテック注中に保存した場合や、トレハロースやグルコースを含むラクテック注中に保存した場合と比べ、細胞生存率は有意に上昇した(表6及び図5参照)。かかる結果により、アカルボースによる細胞死抑制効果は、間葉系幹細胞(hMSC)に限らず、肝細胞でも認められることから、哺乳動物細胞全般に認められるものであると考えられる。
Figure 2020066991
実施例7:アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果の確認3
アカルボースは、αグルコシダーゼの活性部位に結合し、糖の加水分解を阻害する作用を有する。そこで、アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果が、哺乳動物細胞中のαグルコシダーゼ活性が阻害された結果、生じたものであるか否かを確認するために、アカルボース以外のα−グルコシダーゼ阻害薬である2種類の物質(ミグリトール及びボグリボース)を用いて検討した。
7−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
アカルボース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、175mMアカルボースを含む等張液を調製した。また、ミグリトール(東京化成工業社製)をラクテック注に添加・融解し、175mMミグリトールを含む等張液を調製した。また、ボグリボース(東京化成工業社製)をラクテック注に添加・融解し、175mMボグリボースを含む等張液を調製した。なお、比較対照として、ラクテック注を用いた。
[哺乳動物細胞]
哺乳動物細胞は、実施例1で使用したhMSCを用いた。
[hMSCを含むPBSの調製]
hMSCを含むPBSは、実施例1に記載の方法に従って調製した。
[各種被験用等張液中でのhMSCの保存方法]
hMSCを、実施例1に記載の方法に従い、各種被験用等張液中に4℃で3日間保存した。
[トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析]
トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析は、実施例1に記載の方法に従って行った。
7−2.結果
hMSCを、アカルボースを含むラクテック注中に保存した場合、ラクテック注中に保存した場合と比べ、細胞生存率が上昇することが確認されたのに対して、hMSCを、ミグリトール又はボグリボースを含むラクテック注中に保存した場合、ラクテック注中に保存した場合と比べ、細胞生存率はほとんど変わらなかった(表7及び図6参照)。
この結果は、アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果は、哺乳動物細胞中のαグルコシダーゼ活性が阻害された効果、生じたものではないことを示している。
Figure 2020066991
実施例8:アカルボースによる細胞凝集抑制効果
アカルボースが細胞凝集抑制効果を有するか否かを確認するために、アカルボースを含む等張液中にhMSCを保存し、細胞凝集レベルを解析した。
8−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
アカルボース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、88mMアカルボースを含む等張液を調製した。なお、比較対照として、ラクテック注を用いた。
[hMSCを含むPBSの調製]
hMSCを含むPBSは、実施例1に記載の方法に従って調製した。
[各種被験用等張液中でのhMSCの保存方法]
hMSCを、実施例1に記載の方法に従い、各種被験用等張液中に25℃で48時間保存した。
[細胞凝集レベルの解析法]
保存後のhMSCを含む各種被験用等張液を一部採取し、位相差顕微鏡下で3個以上の細胞が集まった細胞凝集塊の有無を観察した。
8−2.結果
hMSCをラクテック注中に保存すると、細胞凝集塊の形成が多数認められた(図7の上段、黒丸で囲った箇所参照)。一方、hMSCを、アカルボースを含むラクテック注中に保存すると、細胞凝集塊の形成がほとんど認められなかった(図7の下段参照)。
この結果は、アカルボースを等張液に添加し、哺乳動物細胞を保存すると、当該液中の哺乳動物細胞の細胞凝集を効果的に抑制できることを示している。
実施例9:hMSC以外の哺乳動物細胞の検討
アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果が、hMSC以外の哺乳動物細胞を保存したときも認められることを確認するために、リンパ球細胞の1つであるCD8陽性T細胞を用いて検討した。
9−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
アカルボース(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、88mMアカルボースを含む等張液を調製した。また、比較対照として、トレハロース(株式会社林原社製)をラクテック注に添加・融解して調製し、88mMトレハロースを含む等張液を調製した。なお、比較対照として、ラクテック注を用いた。
[哺乳動物細胞]
哺乳動物細胞は、CD8陽性T細胞(VERITAS社製)を用いた。
[CD8陽性T細胞の拡大培養法]
CD8陽性T細胞の拡大培養は、以下の手順〔1〕〜〔3〕に従って行った。
〔1〕凍結保存したCD8陽性T細胞を融解後、リンパ球培養培地(LGM3、Lonza社製)で洗浄し、当該培地中で約1時間インキュベート(37℃、5%CO)した。
〔2〕CD8陽性T細胞を含む培地を分取し、遠心分離(300×g、10分間、室温)を行った。
〔3〕上清を除き、TLY CULTUREキット25(GCリンフォテック社製)に浮遊させ、CD8陽性T細胞を37℃、5%CO条件下で7日間拡大培養した。
[拡大培養したCD8陽性T細胞の保存及び細胞生存率の測定]
拡大培養したCD8陽性T細胞の保存及び細胞生存率の測定は、以下の手順〔1〕〜〔3〕に従って行った。
〔1〕7日間拡大培養したCD8陽性T細胞(細胞濃度が約1.1×10細胞/5mL)を、88mMトレハロースを含むラクテック注で洗浄し、ステムフルチューブ(住友ベークライト社製)に分注後、遠心分離(300×g、10分間、室温)を行った。
〔2〕上清を除き、沈殿(CD8陽性T細胞)を、3種類の被験用等張液(88mMアカルボースを含むラクテック注、88mMトレハロースを含むラクテック注、及びラクテック注)で懸濁した後、5℃で24時間保存した。なお、保存前の細胞生存率を測定するために、懸濁直後に、各ステムフルチューブからCD8陽性T細胞懸濁液を一部(20μL)回収し、トリパンブルー染色液20μLを混合した後、顕微鏡下にてワンセルカウンター(バイオメディカルサイエンス社製)を用いて、1ヵ所の細胞計数部の四隅の細胞計数室のエリアの合計細胞数とトリパンブルー陽性細胞(死細胞)数を計測し、全細胞数に対するトリパンブルー陰性細胞の割合(細胞生存率)を算出した。
〔3〕24時間保存後、上記〔2〕に記載の方法に従って、細胞生存率を計測した。
9−2.結果
CD8陽性T細胞を、アカルボースを含むラクテック注中に保存すると、ラクテック注中に保存した場合と比べ、細胞生存率は有意に上昇した(表8及び図8参照)。また、トレハロースを含むラクテック注中にCD8陽性T細胞を保存した場合も、細胞生存率は上昇したものの、アカルボースを含むラクテック注中にCD8陽性T細胞を保存した場合の方がその割合は有意に高かった(表8及び図8参照)。
この結果は、アカルボースによる生存率低下の抑制効果は、CD8陽性T細胞等のリンパ球細胞を保存した場合にも発揮されることを示すとともに、当該効果は、トレハロースよりも高いことを示している。
Figure 2020066991
実施例10:スタキオースの至適濃度の検討
44〜150mMスタキオースを含む等張液を用いて、スタキオースによる細胞生存率低下抑制効果の至適濃度を検討した。
10−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
スタキオースn水和物(和光純薬工業社製)をラクテック注に添加・融解し、44mMスタキオースを含む等張液、88mMスタキオースを含む等張液、及び175mMスタキオースを含む等張液を調製した。また、比較対照として、トレハロース(株式会社林原社製)をラクテック注に添加・融解して調製し、88mMトレハロースを含む等張液を調製した。なお、比較対照として、ラクテック注を用いた。
[哺乳動物細胞]
哺乳動物細胞は、実施例1で使用したhMSCを用いた。
[hMSCを含むPBSの調製]
hMSCを含むPBSは、実施例1に記載の方法に従って調製した。
[各種被験用等張液中でのhMSCの保存方法]
hMSCを、実施例1に記載の方法に従い、各種被験用等張液中に5℃で4日間保存した。
[トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析]
トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析は、実施例1に記載の方法に従って行った。
10−2.結果
hMSCを、スタキオースを含むラクテック注中に保存すると、ラクテック注中に保存した場合と比べ、いずれの濃度のスタキオースにおいても細胞生存率は有意に上昇することや、細胞生存率は、スタキオースの濃度依存的に上昇することが示された(表9及び図9参照)。また、hMSCを、トレハロースを含むラクテック注中に保存した場合も、細胞生存率は上昇したものの、スタキオースを含むラクテック注中にhMSCを保存した場合の方がその割合は高かった(表9及び図9参照)。
この結果は、スタキオースによる細胞生存率低下の抑制効果は、等張液中のスタキオース濃度が、少なくとも44mM前後で発揮されることを示すとともに、当該効果は、トレハロースよりも高いことを示している。
Figure 2020066991
実施例11:等張液の検討
等張液としてラクテック注以外の等張液についても検討を行った。
11−1.材料及び方法
[被験用等張液の調製]
アカルボース(和光純薬工業社製)を、それぞれ4種類の等張液(ラクテック注、生理食塩液である大塚生食注[大塚製薬工場社製]、リンゲル液「オーツカ」[大塚製薬工場社製]、酢酸リンゲル液であるヴィーンF輸液[扶桑薬品工業社製])に添加・融解し、88mMアカルボースを含む上記4種類の等張液を調製した。また、比較対照として、上記4種類の等張液を用いた。
[哺乳動物細胞]
哺乳動物細胞は、実施例1で使用したhMSCを用いた。
[hMSCを含むPBSの調製]
hMSCを含むPBSは、実施例1に記載の方法に従って調製した。
[各種被験用等張液中でのhMSCの保存方法]
hMSCを、実施例1に記載の方法に従い、各種被験用等張液中に5℃で3日間(図10B参照)又は9日間(図10C参照)保存した。
[トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析]
トリパンブルー染色法によるhMSCの細胞生存率の解析は、実施例1に記載の方法に従って行った。
11−2.結果
hMSCを、アカルボースを含む4種類の等張液(ラクテック注、大塚生食注、リンゲル液「オーツカ」、ヴィーンF輸液)中に3日間保存すると、かかる4種類の等張液中に3日間保存した場合と比べ、細胞生存率が上昇し、特に、ラクテック注及びヴィーンF輸液を用いた場合、細胞生存率が有意に上昇することが示された(表10及び図10B参照)。また、hMSCを、アカルボースを含む上記4種類の等張液中に9日間保存すると、かかる4種類の等張液中に9日間保存した場合と比べ、細胞生存率が有意に上昇することが示された(表10及び図10C参照)。
この結果は、アカルボースによる細胞生存率低下抑制効果は、ラクテック注(すなわち、乳酸リンゲル液)に限らず、大塚生食注(すなわち、生理食塩液)、リンゲル液「オーツカ」(すなわち、リンゲル液)、ヴィーンF輸液(すなわち、酢酸リンゲル液)等の等張液全般で発揮されることを示している。
Figure 2020066991
本発明によると、アカルボース類やスタキオース類を液体中に加えることにより、哺乳動物細胞を液体中に保存したときに生じる細胞生存率低下や細胞凝集を効果的に抑制することができる。さらに、これらアカルボース類及びスタキオース類は、哺乳動物の生体内に投与した場合に、哺乳動物の生態に悪影響を及ぼす可能性の低い四糖類であることから、哺乳動物細胞を本件哺乳動物細胞保存用液中で保存した後、新しい移植用液に置換することなく、そのまま哺乳動物の生体内へ投与することができる。

Claims (22)

  1. アカルボース若しくはその塩、及び/又はスタキオース若しくはその塩を含む、哺乳動物細胞保存用液。
  2. アカルボース若しくはその塩、及び/又はスタキオース若しくはその塩を等張液中に含む、請求項1に記載の液。
  3. 等張液中のアカルボース若しくはその塩の濃度が、少なくとも40mMである、請求項2に記載の液。
  4. 等張液中のスタキオース若しくはその塩の濃度が、少なくとも40mMである、請求項2又は3に記載の液。
  5. 等張液が、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、リンゲル液、又は生理食塩液である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の液。
  6. 哺乳動物細胞を0〜40℃で保存するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液。
  7. 哺乳動物細胞を6時間〜30日間保存するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液。
  8. 哺乳動物細胞の生存率低下を抑制するために用いられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の液。
  9. 哺乳動物細胞の凝集を抑制するために用いられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の液。
  10. 哺乳動物細胞の移植に用いられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の液。
  11. 哺乳動物細胞が、哺乳動物幹細胞、哺乳動物リンパ球細胞、又は哺乳動物肝細胞である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の液。
  12. 哺乳動物幹細胞が、哺乳動物間葉系幹細胞又は哺乳動物リンパ球細胞である、請求項11に記載の液。
  13. アカルボース若しくはその塩、及び/又はスタキオース若しくはその塩を含む液中で、哺乳動物細胞を保存する工程を含む、哺乳動物細胞の保存方法。
  14. 液が、等張液である、請求項13に記載の保存方法。
  15. 等張液中のアカルボース若しくはその塩の濃度が、少なくとも40mMである、請求項14に記載の保存方法。
  16. 等張液中のスタキオース若しくはその塩の濃度が、少なくとも40mMである、請求項14又は15に記載の保存方法。
  17. 等張液が、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、リンゲル液、又は生理食塩液である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の保存方法。
  18. 哺乳動物細胞を0〜40℃で保存することを特徴とする、請求項13〜17のいずれか1項に記載の保存方法。
  19. 哺乳動物細胞を6時間〜30日間保存することを特徴とする、請求項13〜18のいずれか1項に記載の保存方法。
  20. 哺乳動物細胞が、哺乳動物幹細胞、哺乳動物リンパ球細胞、又は哺乳動物肝細胞である、請求項13〜19のいずれか1項に記載の保存方法。
  21. 哺乳動物幹細胞が、哺乳動物間葉系幹細胞又は哺乳動物リンパ球細胞である、請求項20に記載の保存方法。
  22. アカルボース若しくはその塩、及び/又はスタキオース若しくはその塩を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の液を調製するための粉末製剤。
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