JP6594578B1 - 細胞の保存方法および細胞懸濁液 - Google Patents
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Abstract
Description
間葉系幹細胞は、具体的には骨髄、皮下脂肪、滑膜などの組織や、周産期組織である臍帯、羊膜、に存在しており、組織に偏在する細胞の供給や血管形成などに寄与することで、組織の代謝、維持、新生や再生に関わる細胞として重要な役割を担っている。
本発明は、間葉系幹細胞などの細胞を安定に保存することができる細胞の保存方法およびこれに用いられる細胞懸濁液を提供することを解決すべき課題とする。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
<2>上記細胞が幹細胞である<1>に記載の保存方法。
<3>上記細胞が間葉系幹細胞である<1>または<2>に記載の保存方法。
<4>上記細胞が動物由来である<1>から<3>の何れか1項に記載の保存方法。
<5>上記細胞が哺乳類由来である<1>から<4>の何れか1項に記載の保存方法。
<6>上記細胞の濃度が1×106個/mL以上である<1>から<5>の何れか1項に記載の保存方法。
<7>上記細胞の濃度が4×106個/mL以上である<1>から<6>の何れか1項に記載の保存方法。
<8>上記細胞の濃度が1×107個/mL以上である<1>から<7>の何れか1項に記載の保存方法。
<9>上記緩衝液として、リンゲル液、L乳酸ナトリウムリンゲル液、5%ぶどう糖加乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、5%ぶどう糖加酢酸リンゲル液、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)、生理食塩水、グッド緩衝液、ハンクス平衡塩類溶液、リン酸緩衝液(PBS)、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン塩酸塩緩衝液(TEA)、またはそれらの組合せを用いる<1>から<8>の何れか1項に記載の保存方法。
<10>上記緩衝液が生理食塩水である<9>に記載の保存方法。
<11>上記緩衝液が、電解質と栄養素を含む<1>から<10>の何れか1項に記載の保存方法。
<12>細胞を含む緩衝液を0〜10℃の温度に保持した細胞懸濁液であって、上記細胞を緩衝液中に6×105個/mL以上の濃度で含有する細胞懸濁液。
<13>緩衝液が栄養素を含む<12>に記載の細胞懸濁液。
<14>上記緩衝液として、リンゲル液、L乳酸ナトリウムリンゲル液、5%ぶどう糖加乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、5%ぶどう糖加酢酸リンゲル液、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)、生理食塩水、グッド緩衝液、ハンクス平衡塩類溶液、リン酸緩衝液(PBS)、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン塩酸塩緩衝液(TEA)、またはそれらの組合せを用いる<12>または<13>に記載の細胞懸濁液。
<15>上記細胞の濃度が1×106個/mL以上である、<14>に記載の細胞懸濁液。
<16>上記細胞の濃度が4×106個/mL以上である、<14>または<15>に記載の細胞懸濁液。
<17>上記細胞の濃度が1×107個/mL以上である、<14>から<16>の何れか1項に記載の細胞懸濁液。
<18>細胞が、ほ乳類由来間葉系幹細胞である、<14>から<17>の何れか1項に記載の細胞懸濁液。
<19>細胞が、犬脂肪由来間葉系幹細胞である、<14>から<18>の何れか1項に記載の細胞懸濁液。
本発明の保存方法は、細胞を含む緩衝液を0〜10℃の温度下で保持する工程を含み、上記輸液中での細胞の濃度は6×105個/mL以上である。その好ましい実施形態に関する着想について言うと、次のとおりである。本発明者らは、医療用輸液として用いられる緩衝剤として一般的である生理食塩水(塩化ナトリウム0.9%含有)に溶解した犬由来の間葉系幹細胞において、まず、一定環境下において細胞の生存率が細胞濃度依存的に維持されることを見いだした。さらには、冷蔵環境下において高濃度の細胞懸濁液を形成することで、間葉系幹細胞を死滅させることなく安定的に生存させ、かつ安定的に活性状態を維持する条件を見出すことにより、本発明を完成する端緒をなした。かかる知見に基づき完成したのが本発明の保存方法であり、細胞懸濁液である。以下に、その好ましい実施形態を中心に本発明について説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
緩衝液は緩衝剤と溶媒とを含んでなることが好ましい。緩衝液としては、リンゲル液、L乳酸ナトリウムリンゲル液、5%ぶどう糖加乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、5%ぶどう糖加酢酸リンゲル液、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)、生理食塩水、グッド緩衝液、ハンクス平衡塩類溶液、リン酸緩衝液(PBS)、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン塩酸塩緩衝液(TEA)等が挙げられる。
溶媒としては水または水性溶媒を用いることができる。水性媒体としては、水と低級アルコールとを任意の割合で混和した溶液が挙げられる。
上記のグッド緩衝液としては、例えば、PIPES、MES、Bis−Tris、ADA、Bis−Tris−Propane、ACES、MOPS、MOPSO、BES、TES、HEPES、HEPPS、Tricine、Tris、Bicine、TAPSなどの緩衝剤の水溶液が挙げられる。
緩衝液はなかでも生理食塩水であることが好ましい。
緩衝液に栄養素を含ませることも好ましい。栄養素としてはブドウ糖などが挙げられる。
本発明においては、緩衝液中の細胞の濃度を6×105個/mL以上とするが、さらに1×106個/mL以上とすることが好ましく、4×106個/mL以上とすることがより好ましく、1×107個/mL以上とすることがさらに好ましく、1.6×107細胞/mL以上、2.0×107細胞/mL以上、又は6.4×107細胞/mL以上でもよい。上限は特にないが、1×1010個/mL以下であることが実際的である。
本発明においては、保存する細胞を含む緩衝液の温度を0〜10℃とするが、保存温度はさらに0〜8℃であることが好ましく、1〜6℃であることがより好ましく、2〜5℃であることがさらに好ましい。
保存時間は保存対象となる細胞の種類や状態に応じて適宜定めればよいが、例えば、細胞の健全性を考慮し、7日以下であることが好ましく、5日以下であることがより好ましく、3日以下であることがさらに好ましく、48時間以下であることが一層好ましく、36時間以下であることがより一層好ましく、24時間が一つの目安となる。保存する時間に下限値は特にないが、輸送なども考慮すると、10分以上が好ましく、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、または4時間以上がより好ましく、6時間以上がより一層好ましく、8時間以上がさらに好ましく、12時間以上が特に好ましい。
本発明に適用される細胞は特に限定されず入手可能なものを適宜用いることができる。保存の付加価値が高く発明の効果が発揮できる点で医療用途において有用性の高い細胞であることが好ましい。かかる観点から、幹細胞であることが好ましい。
また、幹細胞以外の細胞としては、分化した細胞、株化細胞などが挙げられる。分化した細胞とは、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられるが、特に限定されない。株化細胞としては、哺乳動物由来の株化細胞が挙げられ、例えば、HeLa細胞、Vero細胞、3T3細胞、CHO細胞、MDCK細胞等が挙げられるが、特に限定されない。
(1)健常者由来iPS細胞、又は筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、先天的免疫不全症、ゴーシェ病、パーキンソン病、ハンチントン病、若年性糖尿病、若しくは自立神経失調症などの疾患を有する患者由来の疾患特異的iPS細胞
(2)皮膚細胞ないし線維芽細胞、骨髄細胞、肝細胞、胃上皮細胞、膵臓細胞、神経幹細胞、リンパ球、毛包細胞(角化細胞)、血液前駆細胞、白血球、口腔内粘膜上皮細胞などから作製されたiPS細胞
(3)4つの初期化因子(例えば、Oct3/4,Sox2,Klf4,及びMycファミリー(c−Myc,L−Myc,又はN−Myc)の遺伝子又は遺伝子産物やOct3/4,Sox2,Nanog,及びLin28の遺伝子又は遺伝子産物)、3つの初期化因子(例えば、Oct3/4,Sox2,及びKlf4の遺伝子又は遺伝子産物)、2つ以下の初期化因子と低分子化合物との組合せ(例えば、Oct3/4とSox2の2遺伝子又は遺伝子産物+バルプロ酸ナトリウム)、又は1種以上のマイクロRNA(miRNA)(例えば、mir−302)を用いて作製されたiPS細胞、さらには前述の初期化因子にGlisファミリーのメンバー及びZscanファミリーのメンバーを加えた群から選択される様々な初期化因子の組合せ(例えば、Oct3/4,Sox2,Klf4,L−Myc,Lin28及びGlis1の遺伝子又は遺伝子産物やOct3/4,Sox2,Klf4,Zscan4,及びGlis1の遺伝子又は遺伝子産物)を用いて作製されたiPS細胞
(4)初期化因子を体細胞へ導入するベクターとして、レトロウィルスベクター、レンチウィルスベクター、アデノウィルスベクター、センダイウィルスベクター、プラスミドベクター、又はエピソーマルベクターを用いて作製されたiPS細胞
本発明で扱われる細胞としては、動物由来細胞が好ましく、ほ乳類由来細胞がより好ましく、ほ乳類由来幹細胞がさらに好ましく、ほ乳類由来間葉系幹細胞がさらに好ましく、脂肪由来間葉系幹細胞がさらに好ましく、犬脂肪由来間葉系幹細胞が特に好ましい。
本発明の保存方法ないし細胞懸濁液は輸送に供することが好ましい。この輸送を通じて緊急医療が必要な患者のところへ少しでも早く健全な細胞を提供することが望ましい。輸送手段としては、徒歩(ヒト)、二輪、車両、鉄道、航空機、船舶等を挙げることができるが、特に制限されるものではない。本発明により安定な輸送が可能となれば、0〜10℃という十分に人の手で運搬が可能なサイズ・重量の保冷装置で運ぶことができる。また、その温度であれば、低コストで、高濃度の細胞を容器に密封して安全に運ぶことができる。より多くの患者に対応することができることはもとより、危険な状態にある患者でも、細胞のストックが多数あるということは手術等の治療を円滑に行うことができる大きな要素となりうる。輸送者が手で抱えてヘリコプターで移動することも十分に考慮される保冷装置の大きさとすることができる。本発明の保存方法により、必要な細胞を、きわめて遠隔にまで、きめ細かくかつ迅速に供給することができる。
上記では本発明の細胞の保存方法およびそれに用いる細胞懸濁液の好ましい実施形態について述べたが、保存される細胞は調達される段階ですでに準備(培養、選択、回収、凍結、解凍等の操作)が終わっていることが好ましい。次の項ではその準備手順の詳細について説明する。具体的には、皮下脂肪由来間葉系幹細胞を、哺乳類に含まれる脂肪組織から分離して、取得する工程の一実施態様を示す。以下の説明では、これを4つの工程に沿って述べるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
脂肪組織は、臨床オペ時に伴う局所、全身麻酔下において切除などの手段で採取される。ここでの「動物」はヒト、及びヒト以外の哺乳動物(犬や猫などのペット動物、家畜、実験動物を含む。)を含む。採取した脂肪組織は、70%エタノールで短時間暴露を実施し、組織に付着している細菌・ウイルス等の洗浄殺菌を行い、緩衝液や培養液に浸漬後、以下の酵素処理に供される。殺菌処理については、10%ヨード液等などの公知の殺菌剤を使用して組織の殺菌を実施することも含まれる。
上記の細胞を含む溶液について、750〜1500Gの速度で遠心処理を行い、チューブ底の沈殿画分に関して間葉系幹細胞を含まれる細胞集団として回収する。ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cm2の培養用フラスコに懸濁液を移し、3−4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7−10日間培養を行う。培養インキュベータの培養環境は、37℃、5% 二酸化炭素濃度で行う。培養用の培地には、通常の動物細胞培養用の培地を使用することができる。例えば、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、α−MEM(富士フイルム富士フイルム和光純薬株式会社)、DMED:Ham’s F12混合培地(1:1)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、Ham’s F12 medium(富士フイルム富士フイルム和光純薬株式会社等)などを使用することも含む。培地に添加する血清(FBS)ウシ胎仔血清、ヒト血清、羊血清など由来のものを用いる。血清又は血清代替物の添加量は例えば5%(v/v)〜30%(v/v)の範囲内で培地に加えて培養することも含まれる。
P0の間葉系幹細胞を 3〜5×104細胞/cm2の濃度で細胞を準備し、ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cm2の培養用フラスコに懸濁液を移し、3−4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7−10日間培養を行う。培養インキュベータの培養環境は、37℃、5% 二酸化炭素濃度で行う。培養用の培地には、通常の動物細胞培養用の培地を使用することができる。例えば、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、α−MEM(富士フイルム和光純薬株式会社)、DMED:Ham’s F12混合培地(1:1)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、Ham’s F12 medium(富士フイルム和光純薬株式会社等)などを使用することも含む。培地に添加する血清(FBS)ウシ胎仔血清、ヒト血清、羊血清など由来のものを用いる。血清又は血清代替物の添加量は例えば5%(v/v)〜30%(v/v)の範囲内で培地に加えて培養することも含まれる。
P0及びP1の細胞について、細胞凍結法の常法に準じ、1×106〜1×107細胞の濃度で凍結保存液に懸濁してクライオチューブに分注し、緩速凍結器中において−80℃フリーザーにて緩速的に凍結を行う。凍結保存液は、通常の動物細胞凍結用の保存液を使用することができる。市販のジメチルスルホキシド含有/非含有の細胞凍結液、例えばCELL BANKER I(TAKARA)、COS BANKER(コスモバイオ株式会社)、バンバンカー(日本ジェネティクス)等を使用することも含む。凍結液に含有しているジメチルスルホキシド(DMSO)添加量は例えば0%(v/v)〜10%(v/v)の範囲内で保存液に添加された状態で凍結することも含まれる。
間葉系幹細胞を用いた細胞治療において、投与する細胞の活性及び生存率は、投与する細胞の力値と言い換えてもよく、疾患に対する奏功に大きく関わる要素である。現状においては、細胞の品質、すなわち細胞の活性及び生存率を維持する方法としては、凍結した細胞を医療現場まで輸送し、現地において解凍作業を行い、製剤化して投与、というスキームが一般的であるが、その間に生存率や活性を損なうリスクも大きく、また操作の煩雑性やコストの観点からも、問題が多い状況である。
本発明の好ましい実施形態によれば、間葉系幹細胞の高濃度細胞懸濁液用いることで、冷蔵状態のまま、間葉系幹細胞マーカーの発現やサイトカイン分泌などの細胞活性を維持しながら、24時間まで維持可能になり、かつ、生理食塩水という医療的には一般的な溶媒を用いることで、細胞投与時の緩衝液交換などをすることなしに、そのまま点滴や局所投与などに簡便に応用できることが可能であることを示す。
(1)脂肪組織からの細胞集団の調製
脂肪組織は、健康犬から採取を行った。採取した脂肪組織は、70%エタノールで短時間暴露による殺菌を行い、緩衝液や培養液に浸漬後、脂肪組織をコラゲナーゼTypeIの酵素溶液(0.1〜5mg/mL・ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)によって37℃、60分間で酵素消化することにより間葉系幹細胞が含まれる細胞集団(溶液)を取得した。
上記の細胞を含む溶液について、1500Gの速度で遠心処理を行い、チューブ底の沈殿画分に関して間葉系幹細胞を含まれる細胞集団として回収した。ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cm2の培養用フラスコに懸濁液を移し、3−4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7−10日間培養を行った。培養インキュベータの培養環境は、37℃、5% 二酸化炭素濃度で行う。培養用の培地には、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)(富士フイルム和光純薬株式会社等)を用いた。培地に添加する血清は牛胎児血清(FBS)を用い、血清の添加量は10%(v/v)として培地に加えて培養を行った。
P0の間葉系幹細胞を 3×104細胞/cm2の濃度で細胞を準備し、ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cm2の培養用フラスコに懸濁液を移し、3−4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7−10日間培養を行った。培養インキュベータの培養環境は、37℃、5% 二酸化炭素濃度で行った。培養用の培地には、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、α−MEM(富士フイルム和光純薬株式会社)を使用した。培地に添加する血清は牛胎児血清(FBS)を用い、血清の添加量は10%(v/v)として培地に加えて培養を行った。
P0及びP1の細胞について、細胞凍結法の常法に準じ、1〜5×106細胞の濃度で凍結保存液に懸濁してクライオチューブに分注し、緩速凍結器中において−80℃フリーザーにて緩速的に凍結を行った。凍結保存液は、市販のジメチルスルホキシド含有の細胞凍結液を使用した。その後、−80℃〜−150℃または液体窒素中(−196℃)で保存した。
解凍したPassage1(P1)の犬皮下脂肪由来間葉系幹細胞(MSC)について、医療分野で頻用されている点滴用製剤について4℃冷蔵保存の状態で生存率を測定した。MSCはPassage 1(P1)を用い、−80℃で凍結した細胞を溶解後、各溶媒に懸濁(2×105cells/mL)し、4℃保存で計時的に測定した。生存率は、細胞懸濁液に0.4%(w/v)Trypan Blue 溶液(WAKO純薬株式会社)を1:1の割合で添加し、顕微鏡下での観察により、生細胞と死細胞の生存率を生存率=生細胞数/(生細胞数+死細胞数)×100(%)の計算式に則り、算出した。
リンゲル液 (×)
L乳酸ナトリウムリンゲル液 (■)
5% ぶどう糖加乳酸リンゲル液 (△)
酢酸リンゲル液 (○)
5% ぶどう糖加酢酸リンゲル液 (□)
ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水 (●)
生理食塩水 (▲)
これらの結果から、人医療また獣医療の病院やクリニックを含む医療・治療施設において一般的に扱われる生理食塩水をもって細胞の安定的な保存用の溶媒とした。
解凍したP1のMSCのMSCについて、生理食塩水に懸濁して任意の細胞濃度の細胞懸濁液を作製し、24時間までの4℃保存維持における生存率の変化を測定した。細胞懸濁液の細胞濃度は下記のものを作製した。
6.4×107細胞/mL(○)
1.6×107細胞/mL(△)
4×106細胞/mL (□)
1×106細胞/mL (×)
2.5×105細胞/mL(◇)
測定は、MSCを生理食塩水に懸濁後0、1、2、4、6、8、24時間に行った。細胞生存率は、細胞懸濁液に0.4%(w/v)Trypan Blue 溶液(WAKO純薬株式会社)を加え、測定した。各保存時間における実際の細胞生存率の実測値(実測値)、及び0時間を基準にした各測定時間の相対値(相対値)を算出した。
このことから、生理食塩水への懸濁、冷蔵の条件において、間葉系幹細胞の生存率は細胞濃度依存的に変化し、高濃度細胞溶液では、細胞の生存率が安定的に維持されることがわかった。
生理食塩水に溶解した高濃度細胞懸濁液で観察できたMSC生存率の維持が、異なる犬個体由来の皮下脂肪から培養したMSCにおいても同様に観察できるかを検討した。
異なる犬個体由来の皮下脂肪から培養した3種類(ロットA, B, C)のMSC(P1)について、生理食塩水に懸濁して任意の細胞濃度の細胞懸濁液を作製し、72時間までの4℃保存維持における生存率の変化を測定した。それぞれのロット由来のMSCにおける細胞懸濁液の細胞濃度は:
2.5×105細胞/mL(ロットA(●)、ロットB(■)、ロットC(▲))及び
2.0×107細胞/mL(ロットA(○)、ロットB(□)、ロットC(△))とした。
測定は、MSCを生理食塩水に懸濁後、0、4、8、12、6、24、48、72時間に行った。細胞生存率は、細胞懸濁液に0.4%(w/v)Trypan Blue 溶液(WAKO純薬株式会社)を加え、測定した。各保存時間における実際の細胞生存率の実測値(実測値)、及び0時間を基準にした各測定時間の相対値(相対値(%))を算出した。
生理食塩水に高濃度で溶解しているMSCの細胞活性特性を確認するために、間葉系幹細胞に特異的な表面抗原(CD90及びCD44)の発現をフローサイトメトリー(FCM)法により測定した。溶解後、生理食塩水に4×106細胞/mLの細胞濃度でMSCを溶解し、冷蔵保存で0時間のCD90及びCD44を発現している細胞数(イベント数)を基準とし、72時間までの各測定時間における:
CD44陽性細胞数(黒塗)、
CD44(網掛)陽性細胞数
から相対値(相対値(%))を算出した。
高濃度細胞懸濁液中で保存されるMSCの細胞活性特性の測定として、細胞から分泌されるサイトカインの定性・定量化を行った。溶解後、生理食塩水に4×106細胞/mLの細胞濃度でMSCを溶解し、冷蔵保存で0時間から72時間まで保存した上清をそれぞれ採取した。上清中に分泌されるサイトカインであるHGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor−β1)、VEGF(Vascular endothelial growth factor)、の分泌量をELISA法により測定した。通常のシャーレにおいて接着培養したMSC(1.0×106細胞)の培養上清に分泌される各サイトカイン量も測定した(cMSC SP)。
生理食塩水に溶解した高濃度細胞懸濁液で観察できたMSC生存率の維持が、同種他組織由来のMSCにおいても同様に観察できるかを検討した。
同種他組織由来のMSCにおいて、生理食塩水を溶媒とし、冷蔵状態の条件で間葉系幹細胞の高濃度溶液中での生存率変化を解析した。犬の骨髄由来のMSCについては、健常犬から単離した骨髄液より、皮下脂肪由来のMSCと同様の培養法を用いて、犬の骨髄由来のMSCを取得した。犬の骨髄由来のMSCのP1細胞を用いて:
細胞濃度2.5×105細胞/mL(■破線)、及び
2.0×107細胞/mL(■実線)の細胞懸濁液を作製した。
対照実験として、犬の皮下脂肪由来のMSCのP1細胞を用いて、
細胞濃度2.5×105細胞/mL(●破線)、及び
2.0×107細胞/mL(●実線)の細胞懸濁液を作製した。
次に、他種生物由来MMSCにおける高濃度細胞懸濁液でのMSC生存率の維持を測定した。
他種生物由来MMSCにおいて、生理食塩水を溶媒とし、冷蔵状態の条件で間葉系幹細胞の高濃度溶液中での生存率変化を解析した。
ヒト皮下脂肪由来のMSCのP1細胞を用いて:
細胞濃度2.5×105細胞/mL(□破線)、及び
2.0×107細胞/mL(□実線)の細胞懸濁液を作製した。
また、ヒト骨髄由来のMSCのP1細胞を用いて:
細胞濃度2.5×105細胞/mL(○破線)、及び
2.0×107細胞/mL(○実線)の細胞懸濁液を作製した。
ネコ由来の間葉系幹細胞を、参考例1と同様の手順により調整する。
得られたネコ由来の間葉系幹細胞を用いて、実施例2及び実施例3と同様の方法により、24時間までの4℃保存維持における生存率の変化、並びに72時間までの4℃保存維持における生存率の変化を測定する。
緩衝液中における細胞の濃度が、6×105個/mL以上である場合には、細胞の生存率が安定的に維持される。
Claims (8)
- 細胞を含む緩衝液を0〜10℃の温度下において保持する工程を含む、細胞の保存方法であって、前記細胞が間葉系幹細胞であり、前記緩衝液中における細胞の濃度が、4×10 6 個/mL以上であり、前記緩衝液が生理食塩水からなり、動物細胞用の培地成分を含まない、細胞の保存方法。
- 前記細胞が脊椎動物由来である請求項1に記載の保存方法。
- 前記細胞が哺乳類由来である請求項1又は2に記載の保存方法。
- 前記細胞の濃度が1×107個/mL以上である請求項1から3の何れか1項に記載の保存方法。
- 細胞を緩衝液中に含む0〜10℃の細胞懸濁液であって、前記細胞が間葉系幹細胞であり、前記緩衝液中における細胞の濃度が、4×10 6 個/mL以上であり、前記緩衝液が生理食塩水からなり、動物細胞用の培地成分を含まない、細胞懸濁液。
- 前記細胞の濃度が1×107個/mL以上である、請求項5に記載の細胞懸濁液。
- 細胞が、ほ乳類由来間葉系幹細胞である、請求項5又は6に記載の細胞懸濁液。
- 細胞が、犬脂肪由来間葉系幹細胞である、請求項5から7の何れか1項に記載の細胞懸濁液。
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