JP6594578B1 - 細胞の保存方法および細胞懸濁液 - Google Patents

細胞の保存方法および細胞懸濁液 Download PDF

Info

Publication number
JP6594578B1
JP6594578B1 JP2019080934A JP2019080934A JP6594578B1 JP 6594578 B1 JP6594578 B1 JP 6594578B1 JP 2019080934 A JP2019080934 A JP 2019080934A JP 2019080934 A JP2019080934 A JP 2019080934A JP 6594578 B1 JP6594578 B1 JP 6594578B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
cell
mesenchymal stem
derived
concentration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019080934A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019193627A (ja
Inventor
雄昭 久保
Original Assignee
セルトラスト・アニマル・セラピューティクス株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by セルトラスト・アニマル・セラピューティクス株式会社 filed Critical セルトラスト・アニマル・セラピューティクス株式会社
Application granted granted Critical
Publication of JP6594578B1 publication Critical patent/JP6594578B1/ja
Publication of JP2019193627A publication Critical patent/JP2019193627A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】間葉系幹細胞などの細胞を安定に保存することができる細胞の保存方法およびこれに用いられる細胞懸濁液の提供を目的とする。【解決手段】細胞を含む緩衝液を0〜10℃の温度下において保持する工程を含む、細胞の保存方法であって、上記緩衝液中における細胞の濃度が、6×105個/mL以上である、細胞の保存方法。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞の保存方法および細胞懸濁液に関する。特に、本発明は、哺乳類由来の間葉系幹細胞などの細胞の効果的な保存方法およびこれに用いられる細胞懸濁液に関する。
間葉系幹細胞(MSC:Mesenchymal Stem Cell)は、哺乳類の生体内に存在する体性幹細胞であり、体外で簡便に培養して細胞数を増幅できること、さらには、間葉系幹細胞の持つ造血管性、免疫抑制、抗炎症作用などの作用から、生体由来の免疫抑制剤や、難治性の自己免疫疾患に対する治療剤として臨床研究や治験が行われており、細胞治療の重要なソースとして注目されている。
間葉系幹細胞は、具体的には骨髄、皮下脂肪、滑膜などの組織や、周産期組織である臍帯、羊膜、に存在しており、組織に偏在する細胞の供給や血管形成などに寄与することで、組織の代謝、維持、新生や再生に関わる細胞として重要な役割を担っている。
間葉系幹細胞は細胞の集団として表現型不均一性を示し、細胞表面に存在するマーカーで間葉系幹細胞特異的なものは見つかってはいないが、マーカーの表現型としては、陽性マーカーとしてCD90,CD44,CD105,CD73を発現し、陰性マーカーとしてCD14,CD19,CD45,MHC CLASSIIを発現しない。
さらに間葉系幹細胞の特徴として、in vitro培養における細胞接着性を有し、線維芽細胞様の形態を示して増殖する。分化能としては脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨芽細胞への分化が間葉系幹細胞の特徴付けとされており、それ以外にニューロン様細胞、肝臓細胞への分化能も有する(非特許文献1)。
間葉系幹細胞の臨床利用として、ホルモン療法非感受性の移植片対宿主病(GVHD)を適用疾患として、骨髄由来の間葉系幹細胞が、カナダ、米国、そして日本国内でも販売承認されている(非特許文献2〜5)。また臨床研究においても、クローン病をはじめとする免疫介在性疾患において、臨床治験が進められている(非特許文献6)。
上記の通り、間葉系幹細胞について広く研究やその応用が試みられてきているのは主に骨髄由来の間葉系幹細胞であるが、2002年にヒトの皮下脂肪組織にも間葉系幹細胞の存在することが報告されて以来、骨髄と比較して脂肪組織を採材することが比較的容易なこと、また組織の単位量あたりに含まれている間葉系幹細胞の量が骨髄に含まれているものよりも数百倍のオーダーで高いことなどの理由から皮下脂肪の採材後、体外での大規模な増殖を提供することが可能になり、細胞治療を実施する上で重要な量の確保を満たす間葉系幹細胞のリソースとして有用であると期待されている(非特許文献7)。
また、間葉系幹細胞治療は、人の医療に限らず、犬や猫などの小動物を扱う獣医療においても、犬の乾燥性角結膜炎(KCS)、炎症性大腸疾患(IBD)、変形性関節症、猫の非ウイルス性口内炎に対し、間葉系幹細胞を用いた臨床研究においても奏功が報告されており、人医療分野だけでなく、獣医療全般においても難治性疾患に対する新たな治療法として期待されている(非特許文献8〜12)。従来、間葉系幹細胞などの幹細胞は、保存時においては−80℃において凍結保存されており、移植などに使用する際には、凍結保存された細胞を37℃の湯浴において融解してから使用するのが一般的である。間葉系幹細胞などの幹細胞を、0〜10℃の温度下において所定の時間だけ保持するという作業は、本発明者の知る限り、報告がない。
Dominici M1, Le Blanc K, Mueller I, Slaper-Cortenbach I, Marini F, Krause D, Deans R, Keating A, Prockop Dj, Horwitz E.(2006) Minimal criteria for defining multipotent mesenchymal stromal cells. The International Society for Cellular Therapy position statement. Cytotherapy.8(4):315-317. Le Blanc, K., Rasmusson, I., Sundberg, B., Gotherstrom, C., Hassan, M., Uzunel, M., Ringden, O. (2004) Treatment of severe acute graft-versus-host disease with third party haploidentical mesenchymal stem cells. Lancet, 363(9419):1439-1441. Le Blanc, K., Frassoni, F., Ball, L., Locatelli, F., Roelofs, H., Lewis, I., Lanino, E., Sundberg, B., Bernardo, M.E., Remberger, M., et al.(2008) Mesenchymal stem cells for treatment of steroid-resistant, severe, acute graft-versus-host disease: a phase II study. Lancet,371(9624):1579-1586. Kebriaei, P., Isola, L., Bahceci, E., Holland, K., Rowley, S., McGuirk, J., Devetten, M., Jansen, J., Herzig, R., Schuster, M.,et al. (2009) Adult human mesenchymal stem cells added to corticosteroid therapy for the treatment of acute graft-versus-host disease. Biol Blood Marrow Transplant. 15(7):804-811. 毛利 善一(2016)ヒト間葉系幹細胞製剤「テムセルHS注」の開発と承認. 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス 7(11) 780-786. Panes,J., Garcia-Olmo,D., Van Assche,G.A., Colombel,J.F. Reinisch, W., Baumgart, D.C., Nachury, M., Ferrante,M., Kazemi-Shirazi, L., Grimaud, J., et al. (2017) CX601, Allogeneic Expanded Adipose-Derived Mesenchymal Stem Cells (EASC), for Complex Perianal Fistulas in Crohn's Disease: Long-Term Results from a Phase III Randomized Controlled Trial. Gastroenterology. 152(5):Supplement 1, S187. Zuk PA1, Zhu M, Ashjian P, De Ugarte DA, Huang JI, Mizuno H, Alfonso ZC, Fraser JK, Benhaim P, Hedrick MH(2002) Human adipose tissue is a source of multipotent stem cells. Mol Biol Cell. Dec;13(12):4279-4295 Perez-Merino, E.M., Uson-Casaus J.M., Zaragoza-Bayle C., Duque-Carrasco, J., Marinas-Pardo L., Hermida-Prieto M., Barrera-Chacon, R., Gualtieri, M.(2015) Safety and efficacy of allogeneic adipose tissue-derived mesenchymal stem cells for treatment of dogs with inflammatory bowel disease: Clinical and laboratory outcomes. Vet J. 206(3):385-390. Villatoro, A.J., Fernandez, V., Claros, S., Rico-Llanos, G.A., Becerra, J., Andrades, J.A.(2015) Use of adipose-derived mesenchymal stem cells in keratoconjunctivitis sicca in a canine model. Biomed Res Int. 2015;2015:527926. Harman, R., Carlson, K., Gaynor, J., Gustafson, S., Dhupa S., Clement, K., Hoelzler, M., McCarthy, T., Schwartz, P., Adams, C. (2016) A Prospective, randomized, masked, and placebo-controlled efficacy study of intraarticular allogeneic adipose stem cells for the treatment of osteoarthritis in dogs. Front Vet Sci. 16;3:81. Arzi, B., Mills-Ko, E., Verstraete, F.J., Kol, A., Walker, N.J., Badgley, M.R., Fazel, N., Murphy, W.J., Vapniarsky, N., Borjesson, D.L.(2015) Therapeutic efficacy of fresh, autologous mesenchymal stem cells for severe refractory Gingivostomatitis in Cats. Stem Cells Transl Med. 5(1):75-86. Hoffman A.M., Dow, S.W.(2016) Concise Review: Stem Cell Trials Using Companion Animal Disease Models. Stem Cells. 34(7):1709-1729.
一般的に、間葉系幹細胞を細胞治療に用いるためには、細胞の製造施設から治療に使用する病院やクリニックまで輸送する必要があり、細胞の生存率や品質を維持するためには、液体窒素(−196℃)内で細胞を凍結し、液体窒素輸送装置やドライアイス(−78℃)で保存凍結したまま輸送する方法が一般的である。すなわち、病院・クリニックなどの臨床現場においては、凍結した細胞を受領後、専用施設等のクリーンベンチやクリーンな環境下において、専門職員が細胞を解凍し、輸液等に細胞を溶解して製剤化するプロセスが存在している。この細胞の凍結状態から製剤化のプロセスにおいては、溶解する直前の凍結細胞までの品質等は保たれているものの、解凍プロセスを行うことで煩雑性が増えることのコスト、またコンタミネーション(細菌汚染)のリスク、あるいは病院によって解凍・製剤化作業に従事する人によって細胞の品質がバラバラになる不均一性、が存在していることも否めない。また、解凍や製剤化プロセスにおいて一方で、細胞を生存させたまま臨床現場に輸送を行うためには、長時間にわたり細胞の生存や活性を維持する技術が必要であり、現状では細胞に対するそのような報告はほとんど存在しない。
したがって、間葉系幹細胞などの細胞を一定の間、生存した状態で維持し、同時に幹細胞としての活性を安定的に維持することが可能な環境を作出することができれば、製造施設で製造した細胞を臨床現場において煩雑な解凍作業等を行うことなく、医療者がそのまま生存している細胞を患者へ投与することが可能になる。すなわち、細胞治療の実用化において生産者から利用者への細胞の流通過程におけるコストやリスクを低減しうることになる。
本発明は、間葉系幹細胞などの細胞を安定に保存することができる細胞の保存方法およびこれに用いられる細胞懸濁液を提供することを解決すべき課題とする。
上記の課題の下、本発明者らは効果的な細胞の保存方法について実験確認を介して鋭意研究を重ねた。特に、細胞の保存安定性に与える影響を考慮し、細胞の種類、濃度、緩衝液の種類、緩衝剤の成分組成、保存温度等について細かく変えて細胞の死滅数の変化や活性の変化等を確認していった。その結果、緩衝液に細胞を含有させて特定の温度で保存する場合に、細胞を高濃度にすることにより、より安定に保存できることが分かった。本発明はこの新たな発見に基づいて完成されたものである。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
<1>細胞を含む緩衝液を0〜10℃の温度下において保持する工程を含む、細胞の保存方法であって、上記緩衝液中における細胞の濃度が、6×10個/mL以上である、細胞の保存方法。
<2>上記細胞が幹細胞である<1>に記載の保存方法。
<3>上記細胞が間葉系幹細胞である<1>または<2>に記載の保存方法。
<4>上記細胞が動物由来である<1>から<3>の何れか1項に記載の保存方法。
<5>上記細胞が哺乳類由来である<1>から<4>の何れか1項に記載の保存方法。
<6>上記細胞の濃度が1×10個/mL以上である<1>から<5>の何れか1項に記載の保存方法。
<7>上記細胞の濃度が4×10個/mL以上である<1>から<6>の何れか1項に記載の保存方法。
<8>上記細胞の濃度が1×10個/mL以上である<1>から<7>の何れか1項に記載の保存方法。
<9>上記緩衝液として、リンゲル液、L乳酸ナトリウムリンゲル液、5%ぶどう糖加乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、5%ぶどう糖加酢酸リンゲル液、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)、生理食塩水、グッド緩衝液、ハンクス平衡塩類溶液、リン酸緩衝液(PBS)、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン塩酸塩緩衝液(TEA)、またはそれらの組合せを用いる<1>から<8>の何れか1項に記載の保存方法。
<10>上記緩衝液が生理食塩水である<9>に記載の保存方法。
<11>上記緩衝液が、電解質と栄養素を含む<1>から<10>の何れか1項に記載の保存方法。
<12>細胞を含む緩衝液を0〜10℃の温度に保持した細胞懸濁液であって、上記細胞を緩衝液中に6×10個/mL以上の濃度で含有する細胞懸濁液。
<13>緩衝液が栄養素を含む<12>に記載の細胞懸濁液。
<14>上記緩衝液として、リンゲル液、L乳酸ナトリウムリンゲル液、5%ぶどう糖加乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、5%ぶどう糖加酢酸リンゲル液、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)、生理食塩水、グッド緩衝液、ハンクス平衡塩類溶液、リン酸緩衝液(PBS)、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン塩酸塩緩衝液(TEA)、またはそれらの組合せを用いる<12>または<13>に記載の細胞懸濁液。
<15>上記細胞の濃度が1×10個/mL以上である、<14>に記載の細胞懸濁液。
<16>上記細胞の濃度が4×10個/mL以上である、<14>または<15>に記載の細胞懸濁液。
<17>上記細胞の濃度が1×10個/mL以上である、<14>から<16>の何れか1項に記載の細胞懸濁液。
<18>細胞が、ほ乳類由来間葉系幹細胞である、<14>から<17>の何れか1項に記載の細胞懸濁液。
<19>細胞が、犬脂肪由来間葉系幹細胞である、<14>から<18>の何れか1項に記載の細胞懸濁液。
本発明により幹細胞等の有用な細胞の保存方法およびその方法に用いる細胞懸濁液を提供することができる。また、本発明により、必要により保存した状態で細胞を輸送し臨床現場等に送ることができ、速やかに医療行為等に必要な細胞を提供することができる。
図1は、MSCの懸濁溶媒と細胞生存率の変化を示すグラフである。 図2は、生食中に溶解したMSC生存率の細胞濃度依存性を示すグラフである。 図3は、異なる個体由来脂肪から培養したMSCにおける細胞濃度と生存率を示すグラフである。 図4は、高濃度細胞懸濁液中のMSCにおける間葉系幹細胞マーカーの発現解析の結果を示すグラフである。 図5は、高濃度細胞懸濁液中に分泌されるサイトカインの変化を示すグラフである。 図6は、同種他組織由来MSCにおける高濃度細胞懸濁液中の生存率の変化を示すグラフである。 図7は、他種生物由来MSCにおける高濃度細胞懸濁液中の生存率の変化を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の保存方法は、細胞を含む緩衝液を0〜10℃の温度下で保持する工程を含み、上記輸液中での細胞の濃度は6×10個/mL以上である。その好ましい実施形態に関する着想について言うと、次のとおりである。本発明者らは、医療用輸液として用いられる緩衝剤として一般的である生理食塩水(塩化ナトリウム0.9%含有)に溶解した犬由来の間葉系幹細胞において、まず、一定環境下において細胞の生存率が細胞濃度依存的に維持されることを見いだした。さらには、冷蔵環境下において高濃度の細胞懸濁液を形成することで、間葉系幹細胞を死滅させることなく安定的に生存させ、かつ安定的に活性状態を維持する条件を見出すことにより、本発明を完成する端緒をなした。かかる知見に基づき完成したのが本発明の保存方法であり、細胞懸濁液である。以下に、その好ましい実施形態を中心に本発明について説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
<緩衝液(輸液)>
緩衝液は緩衝剤と溶媒とを含んでなることが好ましい。緩衝液としては、リンゲル液、L乳酸ナトリウムリンゲル液、5%ぶどう糖加乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、5%ぶどう糖加酢酸リンゲル液、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)、生理食塩水、グッド緩衝液、ハンクス平衡塩類溶液、リン酸緩衝液(PBS)、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン塩酸塩緩衝液(TEA)等が挙げられる。
溶媒としては水または水性溶媒を用いることができる。水性媒体としては、水と低級アルコールとを任意の割合で混和した溶液が挙げられる。
上記のグッド緩衝液としては、例えば、PIPES、MES、Bis−Tris、ADA、Bis−Tris−Propane、ACES、MOPS、MOPSO、BES、TES、HEPES、HEPPS、Tricine、Tris、Bicine、TAPSなどの緩衝剤の水溶液が挙げられる。
緩衝液はなかでも生理食塩水であることが好ましい。
緩衝液に栄養素を含ませることも好ましい。栄養素としてはブドウ糖などが挙げられる。
<濃度>
本発明においては、緩衝液中の細胞の濃度を6×10個/mL以上とするが、さらに1×10個/mL以上とすることが好ましく、4×10個/mL以上とすることがより好ましく、1×10個/mL以上とすることがさらに好ましく、1.6×10細胞/mL以上、2.0×10細胞/mL以上、又は6.4×10細胞/mL以上でもよい。上限は特にないが、1×1010個/mL以下であることが実際的である。
<温度>
本発明においては、保存する細胞を含む緩衝液の温度を0〜10℃とするが、保存温度はさらに0〜8℃であることが好ましく、1〜6℃であることがより好ましく、2〜5℃であることがさらに好ましい。
<保存期間>
保存時間は保存対象となる細胞の種類や状態に応じて適宜定めればよいが、例えば、細胞の健全性を考慮し、7日以下であることが好ましく、5日以下であることがより好ましく、3日以下であることがさらに好ましく、48時間以下であることが一層好ましく、36時間以下であることがより一層好ましく、24時間が一つの目安となる。保存する時間に下限値は特にないが、輸送なども考慮すると、10分以上が好ましく、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、または4時間以上がより好ましく、6時間以上がより一層好ましく、8時間以上がさらに好ましく、12時間以上が特に好ましい。
<細胞>
本発明に適用される細胞は特に限定されず入手可能なものを適宜用いることができる。保存の付加価値が高く発明の効果が発揮できる点で医療用途において有用性の高い細胞であることが好ましい。かかる観点から、幹細胞であることが好ましい。
細胞には、胚を使用する胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞、誘導万能細胞(iPS細胞)がある。これらに対し、体内の様々な組織には、組織の成長、維持を支える幹細胞が存在しており、これらは、成体幹細胞、体性幹細胞、組織幹細胞などと呼ばれ、組織が老化したり、環境に応答したり、損傷をうけたりする際に、新たな組織に必要な細胞を供給する役割をもつ。一般的によく知られている成体幹細胞は、血液中の赤血球や免疫細胞をなどの血球成分を造成する造血幹細胞、中枢神経を構成するニューロン(神経細胞)に分化する神経幹細胞、心臓を構成する心筋細胞に分化する心筋幹細胞、身体の発生過程で脂肪や骨に分化する間葉系幹細胞などが知られ、基礎研究と共に、臨床応用が進められている。間葉系幹細胞は、骨髄間質細胞などが分化誘導されることにより、間葉系に属する細胞(骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞など)になる。最近では、さらにグリア細胞(外胚葉由来)、肝臓(内胚葉由来)など、中胚葉性でない組織にまで分化できる可能性があることが示唆されている。間葉系幹細胞は成体幹細胞の一つで、人の骨髄、脂肪、臍帯、滑膜(関節の周囲にある組織)などに含まれている。上記の分化能力のため、移植によって治療できる病気の数や患者数は多く、その臨床応用が強く期待されている。具体的な臨床例または研究例としては、冒頭に述べたように、ホルモン療法非感受性の移植片対宿主病(GVHD)の治療薬が販売され、慢性大腸炎や免疫介在性疾患において臨床治験が進められている。また、獣医療においても、犬の乾燥性角結膜炎(KCS)、炎症性大腸疾患(IBD)、変形性関節症、猫の非ウイルス性口内炎に対し奏功していることを述べた。脂肪組織から培養、増殖される脂肪由来間葉系幹細胞は、分化により組織再生に参画、あるいは成長因子を分泌して組織再生を促進する。脂肪由来間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞と比較して、細胞増殖が速い、再生促成因子を多く分泌する、免疫抑制能が高い、という有利な特徴を有する。さらに、脂肪由来間葉系幹細胞は、腹部又は臀部の脂肪組織から得られるため、骨髄を採取する必要のある骨髄由来間葉系幹細胞と比較して、安全に十分量確保しやすいという有利な特徴も有する。また、患者の自己脂肪組織由来の間葉系幹細胞を患者の治療に用いることは、倫理的な問題がない、免疫拒絶反応がない、感染症等の問題が少ない、静脈投与で治療効果がある等の点で優れている。本発明の保存方法は上記間葉系幹細胞に好適に適用することができる。
また、幹細胞以外の細胞としては、分化した細胞、株化細胞などが挙げられる。分化した細胞とは、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられるが、特に限定されない。株化細胞としては、哺乳動物由来の株化細胞が挙げられ、例えば、HeLa細胞、Vero細胞、3T3細胞、CHO細胞、MDCK細胞等が挙げられるが、特に限定されない。
本発明の保存方法が適用される細胞は、幹細胞に限らず、どのような生物由来であってもよい。好ましくは動物由来であり、より好ましくは脊椎動物由来であり、さらに好ましくは哺乳動物由来である。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット動物、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることができる。中でもヒト由来であることが特に好ましい。
本発明の保存方法が好適に適用できるiPS細胞としては以下の細胞を使用することができる。
(1)健常者由来iPS細胞、又は筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、先天的免疫不全症、ゴーシェ病、パーキンソン病、ハンチントン病、若年性糖尿病、若しくは自立神経失調症などの疾患を有する患者由来の疾患特異的iPS細胞
(2)皮膚細胞ないし線維芽細胞、骨髄細胞、肝細胞、胃上皮細胞、膵臓細胞、神経幹細胞、リンパ球、毛包細胞(角化細胞)、血液前駆細胞、白血球、口腔内粘膜上皮細胞などから作製されたiPS細胞
(3)4つの初期化因子(例えば、Oct3/4,Sox2,Klf4,及びMycファミリー(c−Myc,L−Myc,又はN−Myc)の遺伝子又は遺伝子産物やOct3/4,Sox2,Nanog,及びLin28の遺伝子又は遺伝子産物)、3つの初期化因子(例えば、Oct3/4,Sox2,及びKlf4の遺伝子又は遺伝子産物)、2つ以下の初期化因子と低分子化合物との組合せ(例えば、Oct3/4とSox2の2遺伝子又は遺伝子産物+バルプロ酸ナトリウム)、又は1種以上のマイクロRNA(miRNA)(例えば、mir−302)を用いて作製されたiPS細胞、さらには前述の初期化因子にGlisファミリーのメンバー及びZscanファミリーのメンバーを加えた群から選択される様々な初期化因子の組合せ(例えば、Oct3/4,Sox2,Klf4,L−Myc,Lin28及びGlis1の遺伝子又は遺伝子産物やOct3/4,Sox2,Klf4,Zscan4,及びGlis1の遺伝子又は遺伝子産物)を用いて作製されたiPS細胞
(4)初期化因子を体細胞へ導入するベクターとして、レトロウィルスベクター、レンチウィルスベクター、アデノウィルスベクター、センダイウィルスベクター、プラスミドベクター、又はエピソーマルベクターを用いて作製されたiPS細胞
本発明においては、幹細胞以外の細胞を用いることを妨げるものではない。例えば、NK(Natural Killer)細胞、T細胞、B細胞を含む浮遊系免疫細胞、肝細胞、臍帯血、有核細胞、膵ランゲルハンス島細胞、血管内皮細胞、腎臓細胞、神経細胞、下垂体細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、骨髄細胞、副腎皮質細胞、及びマクロファージなどの動物遊離細胞や神代細胞などを例示することができる。さらに、これらの細胞を株化したものや、遺伝子組み換えや細胞融合などの操作により人為的に変成させた細胞などが含まれる。
本発明で扱われる細胞は幹細胞であることが好まく、間葉系幹細胞であることが好ましい。また、細胞が動物由来であることが好ましく、哺乳類由来であることがより好ましい。
本発明で扱われる細胞としては、動物由来細胞が好ましく、ほ乳類由来細胞がより好ましく、ほ乳類由来幹細胞がさらに好ましく、ほ乳類由来間葉系幹細胞がさらに好ましく、脂肪由来間葉系幹細胞がさらに好ましく、犬脂肪由来間葉系幹細胞が特に好ましい。
<輸送>
本発明の保存方法ないし細胞懸濁液は輸送に供することが好ましい。この輸送を通じて緊急医療が必要な患者のところへ少しでも早く健全な細胞を提供することが望ましい。輸送手段としては、徒歩(ヒト)、二輪、車両、鉄道、航空機、船舶等を挙げることができるが、特に制限されるものではない。本発明により安定な輸送が可能となれば、0〜10℃という十分に人の手で運搬が可能なサイズ・重量の保冷装置で運ぶことができる。また、その温度であれば、低コストで、高濃度の細胞を容器に密封して安全に運ぶことができる。より多くの患者に対応することができることはもとより、危険な状態にある患者でも、細胞のストックが多数あるということは手術等の治療を円滑に行うことができる大きな要素となりうる。輸送者が手で抱えてヘリコプターで移動することも十分に考慮される保冷装置の大きさとすることができる。本発明の保存方法により、必要な細胞を、きわめて遠隔にまで、きめ細かくかつ迅速に供給することができる。
<細胞の準備>
上記では本発明の細胞の保存方法およびそれに用いる細胞懸濁液の好ましい実施形態について述べたが、保存される細胞は調達される段階ですでに準備(培養、選択、回収、凍結、解凍等の操作)が終わっていることが好ましい。次の項ではその準備手順の詳細について説明する。具体的には、皮下脂肪由来間葉系幹細胞を、哺乳類に含まれる脂肪組織から分離して、取得する工程の一実施態様を示す。以下の説明では、これを4つの工程に沿って述べるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
(1)脂肪組織からの細胞集団の調製
脂肪組織は、臨床オペ時に伴う局所、全身麻酔下において切除などの手段で採取される。ここでの「動物」はヒト、及びヒト以外の哺乳動物(犬や猫などのペット動物、家畜、実験動物を含む。)を含む。採取した脂肪組織は、70%エタノールで短時間暴露を実施し、組織に付着している細菌・ウイルス等の洗浄殺菌を行い、緩衝液や培養液に浸漬後、以下の酵素処理に供される。殺菌処理については、10%ヨード液等などの公知の殺菌剤を使用して組織の殺菌を実施することも含まれる。
酵素処理は、脂肪組織をコラゲナーゼTypeIの酵素溶液(0.1〜5mg/mL・ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)によって37℃、30〜120分間で酵素消化することにより間葉系幹細胞が含まれる細胞集団(溶液)を取得する。なお脂肪組織の分解に使用する酵素については、トリプシン、ディスパーゼ、その他市販の脂肪組織用の消化酵素を用いて公知の条件・方法で実施することも含まれる。
間葉系幹細胞を含む細胞集団を分画するために、遠心処理を行う。50mL容の遠心チューブに上記酵素処理を行った溶液を分注し、750〜1500G(1.0G=9.80665m/s)の速度で遠心処理を行い、チューブ底の沈殿画分に関して間葉系幹細胞を含まれる細胞集団として回収する。遠心の速度については、由来動物、脂肪組織量の違いに依存して異なる遠心速度で実施することも含まれる。沈殿画分をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)の入った新たな遠心チューブに分画し、残存した油脂成分その他夾雑物を除去するためにリンス洗浄する。間葉系幹細胞を含む溶液に対し、ポアサイズ70〜100μmのセルストレイナーを用いて濾過を行い、脂肪組織中のECM、未分解の脂肪組織等を除去し、細胞を含む溶液を調製する。夾雑物の除去については、各種緩衝液、培地等での洗浄、各種口径のポアサイズを有する市販の濾過膜、装置を使用することも含まれる。
(2)接着性線芽様細胞の選択的培養及び細胞(P0)の回収
上記の細胞を含む溶液について、750〜1500Gの速度で遠心処理を行い、チューブ底の沈殿画分に関して間葉系幹細胞を含まれる細胞集団として回収する。ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cmの培養用フラスコに懸濁液を移し、3−4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7−10日間培養を行う。培養インキュベータの培養環境は、37℃、5% 二酸化炭素濃度で行う。培養用の培地には、通常の動物細胞培養用の培地を使用することができる。例えば、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、α−MEM(富士フイルム富士フイルム和光純薬株式会社)、DMED:Ham’s F12混合培地(1:1)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、Ham’s F12 medium(富士フイルム富士フイルム和光純薬株式会社等)などを使用することも含む。培地に添加する血清(FBS)ウシ胎仔血清、ヒト血清、羊血清など由来のものを用いる。血清又は血清代替物の添加量は例えば5%(v/v)〜30%(v/v)の範囲内で培地に加えて培養することも含まれる。
尚、本培養法により選択的に増殖する細胞はCD29、CD44及びCD90陽性であり、CD14、CD19、CD45、MHC ClassII陰性である(Bourin, P., Bunnell, B.A., Casteilla, L., Dominici, M., Katz, A.J., March, K.L., Redl, H., Rubin, J.P., Yoshimura, K., Gimble, J.M.(2013) Stromal cells from the adipose tissue-derived stromal vascular fraction and culture expanded adipose tissue-derived stromal/stem cells: a joint statement of the International Federation for Adipose Therapeutics and Science (IFATS) and the International Society for Cellular Therapy (ISCT). Cytotherapy.15(6):641-648;Vieira, N.M., Brandalise, V., Zucconi, E., Secco, M., Strauss, B.E., Zatz, M.(2010);およびIsolation, characterization, and differentiation potential of canine adipose-derived stem cells. Cell Transplant. 19(3):279-289)。
増殖した細胞を回収するために、回収操作はフラスコ底面に接着した細胞の剥離の常法に準じ、例えば酵素処理(トリプシンやディスパーゼ処理)後の細胞を剥離することによって容易に回収することができる。剥離した細胞は、ウシ胎児血清を含む培地に懸濁してトリプシン活性の阻害を行った後、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)により洗浄し、500〜1500Gの速度で遠心処理を行って、含有している培地成分を洗い流す。その後、細胞集団をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)で再度洗浄した後、Passage 0(P0)の間葉系幹細胞懸濁液とした。
(3)間葉系幹細胞の選択的培養及び細胞(P1)の回収
P0の間葉系幹細胞を 3〜5×10細胞/cmの濃度で細胞を準備し、ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cmの培養用フラスコに懸濁液を移し、3−4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7−10日間培養を行う。培養インキュベータの培養環境は、37℃、5% 二酸化炭素濃度で行う。培養用の培地には、通常の動物細胞培養用の培地を使用することができる。例えば、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、α−MEM(富士フイルム和光純薬株式会社)、DMED:Ham’s F12混合培地(1:1)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、Ham’s F12 medium(富士フイルム和光純薬株式会社等)などを使用することも含む。培地に添加する血清(FBS)ウシ胎仔血清、ヒト血清、羊血清など由来のものを用いる。血清又は血清代替物の添加量は例えば5%(v/v)〜30%(v/v)の範囲内で培地に加えて培養することも含まれる。
尚、本培養法により選択的に増殖する細胞はCD29、CD44及びCD90陽性であり、CD14、CD19、CD45、MHC ClassII陰性である(Bourin, P., Bunnell, B.A., Casteilla, L., Dominici, M., Katz, A.J., March, K.L., Redl, H., Rubin, J.P., Yoshimura, K., Gimble, J.M.(2013) Stromal cells from the adipose tissue-derived stromal vascular fraction and culture expanded adipose tissue-derived stromal/stem cells: a joint statement of the International Federation for Adipose Therapeutics and Science (IFATS) and the International Society for Cellular Therapy (ISCT). Cytotherapy.15(6):641-648;Vieira, N.M., Brandalise, V., Zucconi, E., Secco, M., Strauss, B.E., Zatz, M.(2010);およびIsolation, characterization, and differentiation potential of canine adipose-derived stem cells. Cell Transplant. 19(3):279-289)。
増殖した細胞(P1)を回収するために、回収操作はフラスコ底面に接着した細胞の剥離の常法に準じ、例えば酵素処理(トリプシンやディスパーゼ処理)後の細胞を剥離することによって容易に回収することができる。剥離した細胞は、ウシ胎児血清を含む培地に懸濁してトリプシン活性の阻害を行った後、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)により洗浄し、500〜1500Gの速度で遠心処理を行って、含有している培地成分を洗い流す。その後、細胞集団をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)で再度洗浄した後、Passage 1(P1)の間葉系幹細胞懸濁液とした。
(4)細胞の凍結保存法、及び細胞の解凍法
P0及びP1の細胞について、細胞凍結法の常法に準じ、1×10〜1×10細胞の濃度で凍結保存液に懸濁してクライオチューブに分注し、緩速凍結器中において−80℃フリーザーにて緩速的に凍結を行う。凍結保存液は、通常の動物細胞凍結用の保存液を使用することができる。市販のジメチルスルホキシド含有/非含有の細胞凍結液、例えばCELL BANKER I(TAKARA)、COS BANKER(コスモバイオ株式会社)、バンバンカー(日本ジェネティクス)等を使用することも含む。凍結液に含有しているジメチルスルホキシド(DMSO)添加量は例えば0%(v/v)〜10%(v/v)の範囲内で保存液に添加された状態で凍結することも含まれる。
凍結したP0及びP1の細胞について、細胞解凍法の常法に準じ、−80℃〜−150℃または液体窒素中(−196℃)で凍結している細胞凍結チューブを37℃のウォーターバスにて急速にチューブ内温度を0℃付近まで上昇させることで細胞凍結液を解凍し、さらに37℃の培地を添加して完全に溶解する。遠心し、500〜1500Gの速度で遠心処理を行って、含有しているDMSO含有の細胞凍結液及び培地成分を洗い流す。その後、細胞集団をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)で再度洗浄した後、再度D−PBSで細胞を懸濁し、細胞懸濁液とする。凍結チューブの解凍法として、例えば自動解凍装置である細胞凍結融解ステーションThawstar(biocision社)を用いた急速解凍の方法も含まれる。
本発明の好ましい実施形態のさらなる応用形態として、犬やヒト由来の間葉系幹細胞(MSC)の細胞保存形態として、生理食塩水を溶媒とした高濃度細胞懸濁液を用いることで、非凍結の状態で細胞を非活性化、または死滅させることなく生存率を維持する方法を示すことができる。
間葉系幹細胞を用いた細胞治療において、投与する細胞の活性及び生存率は、投与する細胞の力値と言い換えてもよく、疾患に対する奏功に大きく関わる要素である。現状においては、細胞の品質、すなわち細胞の活性及び生存率を維持する方法としては、凍結した細胞を医療現場まで輸送し、現地において解凍作業を行い、製剤化して投与、というスキームが一般的であるが、その間に生存率や活性を損なうリスクも大きく、また操作の煩雑性やコストの観点からも、問題が多い状況である。
本発明の好ましい実施形態によれば、間葉系幹細胞の高濃度細胞懸濁液用いることで、冷蔵状態のまま、間葉系幹細胞マーカーの発現やサイトカイン分泌などの細胞活性を維持しながら、24時間まで維持可能になり、かつ、生理食塩水という医療的には一般的な溶媒を用いることで、細胞投与時の緩衝液交換などをすることなしに、そのまま点滴や局所投与などに簡便に応用できることが可能であることを示す。
参考例1:細胞の培養と回収、凍結、解凍
(1)脂肪組織からの細胞集団の調製
脂肪組織は、健康犬から採取を行った。採取した脂肪組織は、70%エタノールで短時間暴露による殺菌を行い、緩衝液や培養液に浸漬後、脂肪組織をコラゲナーゼTypeIの酵素溶液(0.1〜5mg/mL・ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)によって37℃、60分間で酵素消化することにより間葉系幹細胞が含まれる細胞集団(溶液)を取得した。
間葉系幹細胞を含む細胞集団を分画するために、50mL容の遠心チューブに上記酵素処理を行った溶液を分注し、750〜1500G(1.0G=9.80665m/s)の速度で遠心処理を行い、油脂成分を含む層を廃棄すると共に、チューブ底の沈殿画分に関して間葉系幹細胞を含まれる細胞集団として回収した。沈殿画分をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)の入った新たな遠心チューブに分画し、残存した油脂成分その他夾雑物を除去するためにリンス洗浄した。間葉系幹細胞を含む溶液に対し、ポアサイズ70μmのセルストレイナーを用いて濾過を行い、脂肪組織中のECM、未分解の脂肪組織等を除去し、細胞を含む溶液を調製した。
(2)接着性線芽様細胞の選択的培養及び細胞(P0)の回収
上記の細胞を含む溶液について、1500Gの速度で遠心処理を行い、チューブ底の沈殿画分に関して間葉系幹細胞を含まれる細胞集団として回収した。ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cmの培養用フラスコに懸濁液を移し、3−4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7−10日間培養を行った。培養インキュベータの培養環境は、37℃、5% 二酸化炭素濃度で行う。培養用の培地には、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)(富士フイルム和光純薬株式会社等)を用いた。培地に添加する血清は牛胎児血清(FBS)を用い、血清の添加量は10%(v/v)として培地に加えて培養を行った。
増殖した細胞を回収するために、回収操作はフラスコ底面に接着した細胞の剥離の常法に準じ、0.05%(v/v)トリプシンを37℃、5分で反応させることで細胞を回収した。剥離した細胞は、ウシ胎児血清を含む培地に懸濁してトリプシン活性の阻害を行った後、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)により洗浄し、500〜1500Gの速度で遠心処理を行って、含有している培地成分を洗い流した。その後、細胞集団をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)で再度洗浄した後、Passage 0(P0)の間葉系幹細胞懸濁液とした。
(3)間葉系幹細胞の選択的培養及び細胞(P1)の回収
P0の間葉系幹細胞を 3×10細胞/cmの濃度で細胞を準備し、ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cmの培養用フラスコに懸濁液を移し、3−4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7−10日間培養を行った。培養インキュベータの培養環境は、37℃、5% 二酸化炭素濃度で行った。培養用の培地には、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、α−MEM(富士フイルム和光純薬株式会社)を使用した。培地に添加する血清は牛胎児血清(FBS)を用い、血清の添加量は10%(v/v)として培地に加えて培養を行った。
(4)細胞の凍結保存法、及び細胞の解凍法
P0及びP1の細胞について、細胞凍結法の常法に準じ、1〜5×10細胞の濃度で凍結保存液に懸濁してクライオチューブに分注し、緩速凍結器中において−80℃フリーザーにて緩速的に凍結を行った。凍結保存液は、市販のジメチルスルホキシド含有の細胞凍結液を使用した。その後、−80℃〜−150℃または液体窒素中(−196℃)で保存した。
凍結したP0及びP1の細胞について、細胞解凍法の常法に準じ、−80℃〜−150℃または液体窒素中(−196℃)で凍結している細胞凍結チューブを、自動解凍装置である細胞凍結融解ステーションThawstar(biocision社)を用いた急速解凍の方法で解凍し、さらに37℃の培地を添加して完全に溶解した。遠心し、1500Gの速度で遠心処理を行って、含有しているDMSO含有の細胞凍結液及び培地成分を洗い流した。その後、細胞集団をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)で再度洗浄した後、再度D−PBSで細胞を懸濁し、Passage 1(P1)の間葉系幹細胞懸濁液とした。
実施例1:細胞の至適点滴用製剤の検討
解凍したPassage1(P1)の犬皮下脂肪由来間葉系幹細胞(MSC)について、医療分野で頻用されている点滴用製剤について4℃冷蔵保存の状態で生存率を測定した。MSCはPassage 1(P1)を用い、−80℃で凍結した細胞を溶解後、各溶媒に懸濁(2×10cells/mL)し、4℃保存で計時的に測定した。生存率は、細胞懸濁液に0.4%(w/v)Trypan Blue 溶液(WAKO純薬株式会社)を1:1の割合で添加し、顕微鏡下での観察により、生細胞と死細胞の生存率を生存率=生細胞数/(生細胞数+死細胞数)×100(%)の計算式に則り、算出した。
MSCを溶解する点滴用製剤(緩衝剤)としては下記のものを用い、それぞれ間葉系幹細胞を2×10細胞/mLの濃度に懸濁した。
リンゲル液 (×)
L乳酸ナトリウムリンゲル液 (■)
5% ぶどう糖加乳酸リンゲル液 (△)
酢酸リンゲル液 (○)
5% ぶどう糖加酢酸リンゲル液 (□)
ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水 (●)
生理食塩水 (▲)
冷蔵状態(4℃)で、24時間までの生存率を算出したところ、乳酸リンゲル液、D−PBS、生理食塩水においては6時間までは75%以上の生存率を維持することがわかった。一方で他の点滴用製剤においては、保存後1時間から75−80%低下し、乳酸リンゲル液、D−PBS、生理食塩水と比較しても24時間までに低い生存率を示した(図1)。
これらの結果から、人医療また獣医療の病院やクリニックを含む医療・治療施設において一般的に扱われる生理食塩水をもって細胞の安定的な保存用の溶媒とした。
実施例2:細胞濃度と生存率
解凍したP1のMSCのMSCについて、生理食塩水に懸濁して任意の細胞濃度の細胞懸濁液を作製し、24時間までの4℃保存維持における生存率の変化を測定した。細胞懸濁液の細胞濃度は下記のものを作製した。
6.4×10細胞/mL(○)
1.6×10細胞/mL(△)
4×10細胞/mL (□)
1×10細胞/mL (×)
2.5×10細胞/mL(◇)
測定は、MSCを生理食塩水に懸濁後0、1、2、4、6、8、24時間に行った。細胞生存率は、細胞懸濁液に0.4%(w/v)Trypan Blue 溶液(WAKO純薬株式会社)を加え、測定した。各保存時間における実際の細胞生存率の実測値(実測値)、及び0時間を基準にした各測定時間の相対値(相対値)を算出した。
上記の通り、生理食塩水を溶媒として、解凍したP1の犬皮下脂肪由来間葉系幹細胞の各細胞濃度(2.5×10、1×10、4×10、1.6×10、6.4×10細胞/mL)の細胞懸濁液を作製し、保存後24時間までの生存率の変化を検討した。4×10、1.6×10、6.4×10細胞/mLの細胞濃度の懸濁液においては、相対的細胞生存率が24時間まで生存率85〜90%程度まで維持していることに対し、1×10、2.5×10細胞/mLと細胞濃度が低くなるにつれて経時的に生存率が下がることが示された(図2)。
このことから、生理食塩水への懸濁、冷蔵の条件において、間葉系幹細胞の生存率は細胞濃度依存的に変化し、高濃度細胞溶液では、細胞の生存率が安定的に維持されることがわかった。
実施例3:異なる個体由来のMSCにおける細胞濃度と生存率の検討
生理食塩水に溶解した高濃度細胞懸濁液で観察できたMSC生存率の維持が、異なる犬個体由来の皮下脂肪から培養したMSCにおいても同様に観察できるかを検討した。
異なる犬個体由来の皮下脂肪から培養した3種類(ロットA, B, C)のMSC(P1)について、生理食塩水に懸濁して任意の細胞濃度の細胞懸濁液を作製し、72時間までの4℃保存維持における生存率の変化を測定した。それぞれのロット由来のMSCにおける細胞懸濁液の細胞濃度は:
2.5×10細胞/mL(ロットA(●)、ロットB(■)、ロットC(▲))及び
2.0×10細胞/mL(ロットA(○)、ロットB(□)、ロットC(△))とした。
測定は、MSCを生理食塩水に懸濁後、0、4、8、12、6、24、48、72時間に行った。細胞生存率は、細胞懸濁液に0.4%(w/v)Trypan Blue 溶液(WAKO純薬株式会社)を加え、測定した。各保存時間における実際の細胞生存率の実測値(実測値)、及び0時間を基準にした各測定時間の相対値(相対値(%))を算出した。
上記の通り、3種類の脂肪由来(ロットA, B, C)のMSC(P1)について、生理食塩水に懸濁して任意の細胞濃度の細胞懸濁液を作製し、72時間までの4℃保存維持における生存率の変化を測定したところ、3ロット全てのMSCにおいて、細胞濃度2.5×10細胞/mLでの細胞懸濁液は、冷蔵後4時間から生存率が低下し始める一方で、細胞濃度2.0×10細胞/mLの細胞懸濁液では、保存後48時間まで相対的生存率90%を維持することがわかった(図3)。
実施例4:高濃度時の細胞活性特性
生理食塩水に高濃度で溶解しているMSCの細胞活性特性を確認するために、間葉系幹細胞に特異的な表面抗原(CD90及びCD44)の発現をフローサイトメトリー(FCM)法により測定した。溶解後、生理食塩水に4×10細胞/mLの細胞濃度でMSCを溶解し、冷蔵保存で0時間のCD90及びCD44を発現している細胞数(イベント数)を基準とし、72時間までの各測定時間における:
CD44陽性細胞数(黒塗)、
CD44(網掛)陽性細胞数
から相対値(相対値(%))を算出した。
上記の通り、生理食塩水を溶媒とした高濃度細胞懸濁液中のMSCについて、その細胞活性特性を確認するために、間葉系幹細胞に特異的な表面抗原(CD90及びCD44)の発現をフローサイトメトリー(FCM)法により測定した。間葉系幹細胞マーカーとしてCD90とCD44を発現している陽性細胞についてのカウント数を測定した結果、冷蔵保存後12時間以降からCD90及びCD44の陽性細胞が減少していることがわかった(図4)。
このことから、高濃度細胞懸濁液において細胞の生存率は48時間まで維持されているものの、間葉系幹細胞マーカーの発現は、12時間以降で低下するため、医療用としては生理食塩水に懸濁して12時間以内で使用することが望ましい。
実施例5:高濃度細胞懸濁液中に分泌されるサイトカイン
高濃度細胞懸濁液中で保存されるMSCの細胞活性特性の測定として、細胞から分泌されるサイトカインの定性・定量化を行った。溶解後、生理食塩水に4×10細胞/mLの細胞濃度でMSCを溶解し、冷蔵保存で0時間から72時間まで保存した上清をそれぞれ採取した。上清中に分泌されるサイトカインであるHGF(Hepatocyte growth factor)、TGF−β1(Transforming growth factor−β1)、VEGF(Vascular endothelial growth factor)、の分泌量をELISA法により測定した。通常のシャーレにおいて接着培養したMSC(1.0×10細胞)の培養上清に分泌される各サイトカイン量も測定した(cMSC SP)。
上記の通り、高濃度細胞懸濁液中で保存されるMSCの細胞活性特性の測定として、細胞から分泌されるサイトカインの定性・定量化を行ったところ、上清中に分泌されるサイトカインであるHGF、TGF−β1の分泌が、保存後4〜8時間で増え始め、その後分泌量が維持されることがわかった。一方でMSCの特徴的な分泌サイトカインであるVEGF(Vascular endothelial growth factor)については、高濃度での保存においては分泌されていないことがわかった(図5)。
実施例6:同種多組織由来の細胞濃度と生存率
生理食塩水に溶解した高濃度細胞懸濁液で観察できたMSC生存率の維持が、同種他組織由来のMSCにおいても同様に観察できるかを検討した。
同種他組織由来のMSCにおいて、生理食塩水を溶媒とし、冷蔵状態の条件で間葉系幹細胞の高濃度溶液中での生存率変化を解析した。犬の骨髄由来のMSCについては、健常犬から単離した骨髄液より、皮下脂肪由来のMSCと同様の培養法を用いて、犬の骨髄由来のMSCを取得した。犬の骨髄由来のMSCのP1細胞を用いて:
細胞濃度2.5×10細胞/mL(■破線)、及び
2.0×10細胞/mL(■実線)の細胞懸濁液を作製した。
対照実験として、犬の皮下脂肪由来のMSCのP1細胞を用いて、
細胞濃度2.5×10細胞/mL(●破線)、及び
2.0×10細胞/mL(●実線)の細胞懸濁液を作製した。
生存率測定は、MSCを生理食塩水に懸濁後、0、4、8、12、6、24、48、72時間に行った。細胞生存率は、細胞懸濁液に0.4%(w/v)Trypan Blue 溶液(WAKO純薬株式会社)を加え、測定した。保存時間における実際の細胞生存率の実測値(実測値)、及び0時間を基準にした各測定時間の相対値(相対値(%))を算出した。
上記の通り、犬の骨髄由来のMSC及び皮下脂肪由来のMSC(P1)を用いて、それぞれ細胞濃度2.5×10細胞/mL、2.0×10細胞/mLの細胞懸濁液を作製し、冷蔵における計時的な生存率の変化を測定したところ、骨髄由来MSCの2.0×10細胞/mLの細胞懸濁液では、皮下脂肪由来と同様に、冷蔵保存48時間まで相対的生存率80〜90%を維持することがわかった。一方で2.5×10細胞/mLでの細胞懸濁液では骨髄由来のMSCの生存率は冷蔵保存4時間から低下しはじめ、48時間後には50%まで低下した(図6)。
このことから、生理食塩水での冷蔵下において高濃度における生存率の維持は、皮下脂肪由来のMSCと同様に、同種他組織由来である骨髄由来のMSCでも起こることがわかった。
実施例7:他種生物由来の細胞濃度と生存率
次に、他種生物由来MMSCにおける高濃度細胞懸濁液でのMSC生存率の維持を測定した。
他種生物由来MMSCにおいて、生理食塩水を溶媒とし、冷蔵状態の条件で間葉系幹細胞の高濃度溶液中での生存率変化を解析した。
ヒト皮下脂肪由来のMSCのP1細胞を用いて:
細胞濃度2.5×10細胞/mL(□破線)、及び
2.0×10細胞/mL(□実線)の細胞懸濁液を作製した。
また、ヒト骨髄由来のMSCのP1細胞を用いて:
細胞濃度2.5×10細胞/mL(○破線)、及び
2.0×10細胞/mL(○実線)の細胞懸濁液を作製した。
生存率測定は、MSCを生理食塩水に懸濁後、0、4、8、12、6、24、48、72時間に行った。細胞生存率は、細胞懸濁液に0.4%(w/v)Trypan Blue 溶液(WAKO純薬株式会社)を加え、測定した。保存時間における実際の細胞生存率の実測値(実測値)、及び0時間を基準にした各測定時間の相対値(相対値(%))を算出した。
上記の通り、ヒト皮下脂肪由来およびヒト骨髄由来のMSCのP1細胞(RONZA)について、それぞれ細胞濃度2.5×10細胞/mL、及び2.0×10細胞/mLの細胞懸濁液を作製し、冷蔵における計時的な生存率の変化を測定した。ヒト由来の皮下脂肪由来及び骨髄由来MSCの両者において、2.0×10細胞/mLの細胞懸濁液では、冷蔵保存24時間まで相対的生存率80〜90%を維持し、48時間で生存率60%に低下した。一方2.5×10細胞/mLでの細胞懸濁液では皮下脂肪由来及び骨髄由来のMSCの生存率は冷蔵保存4時間から低下しはじめ、24時間後に時間後には50〜60、48時間後には30%まで低下した(図7)。
このことから、生理食塩水での冷蔵下において高濃度における生存率の維持は、犬由来のMSCだけでなく、他種生物であるヒト皮下脂肪または骨髄由来のMSCにおいても起こることがわかった。
上記の各実施例の結果から、犬の皮下脂肪または骨髄由来あるいはヒト皮下脂肪または骨髄由来の間葉系幹細胞等の細胞を、輸液として用いられる緩衝液に懸濁し、その際の細胞濃度を6×10細胞/mL以上に維持することにより、細胞の高い生存率を維持することができることが分かる。
実施例8:ネコ由来間葉系幹細胞における細胞濃度と生存率
ネコ由来の間葉系幹細胞を、参考例1と同様の手順により調整する。
得られたネコ由来の間葉系幹細胞を用いて、実施例2及び実施例3と同様の方法により、24時間までの4℃保存維持における生存率の変化、並びに72時間までの4℃保存維持における生存率の変化を測定する。
緩衝液中における細胞の濃度が、6×10個/mL以上である場合には、細胞の生存率が安定的に維持される。

Claims (8)

  1. 細胞を含む緩衝液を0〜10℃の温度下において保持する工程を含む、細胞の保存方法であって、前記細胞が間葉系幹細胞であり、前記緩衝液中における細胞の濃度が、4×10 個/mL以上であり、前記緩衝液が生理食塩水からなり、動物細胞用の培地成分を含まない、細胞の保存方法。
  2. 前記細胞が脊椎動物由来である請求項1に記載の保存方法。
  3. 前記細胞が哺乳類由来である請求項1又は2に記載の保存方法。
  4. 前記細胞の濃度が1×10個/mL以上である請求項1からの何れか1項に記載の保存方法。
  5. 細胞を緩衝液中にむ0〜10℃の細胞懸濁液であって、前記細胞が間葉系幹細胞であり、前記緩衝液中における細胞の濃度が、4×10 個/mL以上であり、前記緩衝液が生理食塩水からなり、動物細胞用の培地成分を含まない、細胞懸濁液。
  6. 前記細胞の濃度が1×10個/mL以上である、請求項に記載の細胞懸濁液。
  7. 細胞が、ほ乳類由来間葉系幹細胞である、請求項5又は6に記載の細胞懸濁液。
  8. 細胞が、犬脂肪由来間葉系幹細胞である、請求項5から7の何れか1項に記載の細胞懸濁液。
JP2019080934A 2018-04-25 2019-04-22 細胞の保存方法および細胞懸濁液 Active JP6594578B1 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018084057 2018-04-25
JP2018084057 2018-04-25

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6594578B1 true JP6594578B1 (ja) 2019-10-23
JP2019193627A JP2019193627A (ja) 2019-11-07

Family

ID=68314126

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019080934A Active JP6594578B1 (ja) 2018-04-25 2019-04-22 細胞の保存方法および細胞懸濁液

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6594578B1 (ja)

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4947948B2 (ja) * 2004-10-12 2012-06-06 ニプロ株式会社 細胞保存液
JPWO2013115322A1 (ja) * 2012-02-02 2015-05-11 タカラバイオ株式会社 細胞の保存方法
JP2013252126A (ja) * 2012-05-08 2013-12-19 Otsuka Pharmaceut Factory Inc デキストラン含有肺塞栓形成予防用哺乳動物細胞懸濁液
EP3028722B1 (en) * 2013-08-01 2018-11-28 TWO CELLS Co., Ltd. Cartilage-damage treatment agent and method for producing same
CN107072189B (zh) * 2014-07-08 2021-07-20 罗廷灿 用于改善干细胞稳定性的组合物
CN105875588A (zh) * 2014-10-29 2016-08-24 达国际生物科技(北京)有限公司 一种细胞保存液及其用途和保存细胞的方法
JP6714699B2 (ja) * 2016-06-20 2020-06-24 富士フイルム株式会社 トロフィックファクタ放出剤および炎症疾患処置剤

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019193627A (ja) 2019-11-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Hill et al. Applications of mesenchymal stem cell technology in bovine species
Yin et al. Manufacturing of primed mesenchymal stromal cells for therapy
Humphreys et al. Mesenchymal stem cells in acute kidney injury
Rodriguez et al. The human adipose tissue is a source of multipotent stem cells
Chen et al. Adipose-derived stem cell-based treatment for acute liver failure
Roy et al. A simple and serum-free protocol for cryopreservation of human umbilical cord as source of Wharton’s jelly mesenchymal stem cells
Kumamoto et al. Minimally cultured bone marrow mesenchymal stem cells ameliorate fibrotic lung injury
Fathi et al. Isolation, culturing, characterization and aging of adipose tissue-derived mesenchymal stem cells: a brief overview
Comite et al. Isolation and ex vivo expansion of bone marrow–derived porcine mesenchymal stromal cells: potential for application in an experimental model of solid organ transplantation in large animals
Rink et al. The fate of autologous endometrial mesenchymal stromal cells after application in the healthy equine uterus
Vadasz et al. Second and third trimester amniotic fluid mesenchymal stem cells can repopulate a de-cellularized lung scaffold and express lung markers
Imai et al. Can bone marrow differentiate into renal cells?
Ogawa et al. Hematopoietic stem cell origin of connective tissues
TWI732298B (zh) 包含阿卡波糖或水蘇糖之哺乳動物細胞保存用液
Behbahan et al. Concise review: bone marrow autotransplants for liver disease?
Briquet et al. RETRACTED: human bone marrow, umbilical cord or liver mesenchymal stromal cells fail to improve liver function in a model of CCl4-induced liver damage in NOD/SCID/IL-2Rγ (null) mice
US20170224736A1 (en) Method and apparatus for recovery of umbilical cord tissue derived regenerative cells and uses thereof
JP6594578B1 (ja) 細胞の保存方法および細胞懸濁液
JP5753874B2 (ja) 細胞生存率低下抑制剤
Rostamzadeh et al. The role of Wharton’s jelly mesenchymal stem cells in skin reconstruction
Brooke et al. Points to consider in designing mesenchymal stem cell-based clinical trials
Yokote et al. Stem cells in kidney regeneration
JP7018527B1 (ja) 細胞の保存方法および細胞懸濁液
Wang et al. A novel type of mesenchymal stem cells derived from bovine metanephric mesenchyme
Baracho Trindade Hill Development of a tissue engineering platform using bovine species as a model: placental scaffolds seeded with bovine adipose-derived cells

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190422

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20190422

AA64 Notification of invalidation of claim of internal priority (with term)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A241764

Effective date: 20190521

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190529

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20190625

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190709

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190806

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190917

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190924

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6594578

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250