JP7018527B1 - 細胞の保存方法および細胞懸濁液 - Google Patents

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Abstract

【課題】間葉系幹細胞等の細胞を安定に保存することができる細胞の保存方法およびこれに用いられる細胞懸濁液の提供を目的とする。【解決手段】細胞を含む緩衝液を0~10℃ の温度下において保持する工程を含む、細胞の保存方法であって、前記細胞が間葉系幹細胞であり、前記緩衝液中における細胞の濃度が、1×105個/mL以上であり、前記緩衝液が抗酸化剤及びキレート剤の少なくとも一つを含み、かつ2%以上のトレハロースを含まない、細胞の保存方法。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞の保存方法および細胞懸濁液に関する。特に、本発明は、哺乳類由来の間葉系幹細胞等の細胞の効果的な保存方法およびこれに用いられる細胞懸濁液に関する。
間葉系幹細胞(MSC:Mesenchymal Stem Cell)は、哺乳類の生体内に存在する体性幹細胞である。体外で簡便に培養して細胞数を増幅できること、さらに造血管性、免疫抑制、抗炎症作用等の作用を有することから、免疫抑制剤や難治性の自己免疫疾患に対する治療剤として臨床研究や治験が行われており、細胞治療の重要分野として注目されている。
間葉系幹細胞の特徴として、以下が挙げられる(非特許文献1~3):(1)細胞表面抗原のCD44,CD73,CD90,CD105が陽性であり、CD14,CD19,CD34,CD45,MHC ClassIIが陰性である、(2)標準的な培養条件でプラスチックに接着性を有し、線維芽細胞様の形態を示して増殖する、(3)脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨芽細胞への分化能を有する。
間葉系幹細胞の臨床利用の一例として、骨髄由来の間葉系幹細胞製品が造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病(GvHD)に対する治療剤として、カナダ、米国、そして日本国内でも販売承認されている(非特許文献4~7)。また臨床研究においても、クローン病をはじめとする免疫介在性疾患に対する臨床開発が進められている(非特許文献8)。
また、間葉系幹細胞治療は人の医療に限らず、犬や猫等の獣医療においても期待されている。例えば、犬の乾性角結膜炎(KCS)、慢性腸症、変形性関節症、猫の非ウイルス性口内炎に対し奏功が報告されている(非特許文献 9~13)。
間葉系幹細胞を治療に用いる際、細胞の製造施設から臨床現場(病院やクリニック等)まで輸送する必要がある。間葉系幹細胞の品質維持には冷凍保管が好ましく、輸送も液体窒素輸送装置やドライアイス等を用いて冷凍状態を維持することが一般的である。細胞を凍結させる際、凍結プロセスによる細胞へのダメージを防ぐため有機溶媒等を含む凍結保存液を添加するが、患者への投与前に凍結保存液を除去することが好ましい。このため、臨床現場で凍結状態の細胞を受領後、細胞を解凍し、凍結保存液を除去した上で輸液等に細胞を添加するプロセスが生じる。このプロセスはコンタミネーション(細菌汚染)のリスク、あるいは細胞品質の変動リスクを増大させ得る。
細胞を凍結させずに臨床現場まで輸送する方法として、特許文献1には、トレハロースとデキストランとを含む細胞移植用生理的水溶液中で、哺乳動物細胞を12時間以上72時間未満保存することが記載されている。特許文献2にはヒト血漿もしくはヒト血清またはそれらの混合物を含む組成物中に細胞を懸濁する、細胞の保存方法が記載されている。また、特許文献3には、細胞を含む緩衝液を0~10℃の温度下において保持する工程を含む、細胞の保存方法であって、上記緩衝液中における細胞の濃度が、4×10個/mL以上である、細胞の保存方法が記載されている。
特許第5998265号公報 特許第6450478号公報 特許第6594578号公報
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間葉系幹細胞等の細胞を凍結せずに、幹細胞としての活性を安定的に維持することが可能となれば、臨床現場における煩雑な解凍および細胞洗浄プロセスが不要となり、受領した細胞をそのまま患者へ投与することが可能となる。これにより、コンタミネーションリスク及び細胞品質の変動リスクを低減でき、細胞治療の実用化に貢献し得る。
特許文献1は糖類を含むため、糖尿病患者への投与が困難である。糖尿病患者を含む幅広い患者へ投与可能とするため、保存液には糖類を含まないことが好ましい。特許文献2は血漿または血清を含むため、安全上の懸念がある。細胞治療の安全性を高めるため、血漿または血清を含まないことが好ましい。また、特許文献3については、保管可能な日数をさらに延長することが望ましい。したがって、幅広い患者へ投与可能であり、安全上の懸念が少ない成分からなり、細胞を凍結せずに長期間保存できる細胞保存液の開発が強く求められている。本発明の目的は、間葉系幹細胞等の細胞を安定に保存することができる細胞の保存方法およびこれに用いられる細胞懸濁液を提供することにある。
上記の課題の下、本発明者らは効果的な細胞の保存方法について実験確認を介して鋭意研究を重ねた。その結果、緩衝液に細胞を含有させて特定の温度で保存する場合に、抗酸化剤及びキレート剤の少なくとも一つを含む緩衝液を使用することにより、糖類等を添加すること無く、安定に保存できることが分かった。本発明はこの新たな発見に基づいて完成されたものである。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
<1> 細胞を含む緩衝液を0~10℃ の温度下において保持する工程を含む、細胞の保存方法であって、上記細胞が間葉系幹細胞であり、上記緩衝液中における細胞の濃度が、1×10個/mL以上であり、上記緩衝液が抗酸化剤及びキレート剤の少なくとも一つを含み、かつ2%以上のトレハロースを含まない、細胞の保存方法。
<2> 細胞が哺乳類由来である、<1>に記載の保存方法。
<3> 抗酸化剤がアスコルビン酸である、<1>又は<2>に記載の保存方法。
<4> 緩衝液中におけるアスコルビン酸の濃度が1mmol/L~150mmol/Lである、<3>に記載の保存方法。
<5> キレート剤がエチレンジアミン四酢酸またはクエン酸である、<1>から<4>の何れか一項に記載の保存方法。
<6> 緩衝液中におけるエチレンジアミン四酢酸またはクエン酸の濃度が1mmol/L~100mmol/Lである、<5>に記載の保存方法。
<7> 上記緩衝液が、カリウムイオンを含有する、<1>から<6>の何れか一項に記載の保存方法。
<8> 緩衝液中におけるカリウムイオンの濃度が1mmol/L~1000mmol/Lである、<7>に記載の方法。
<9> 上記緩衝液が、動物細胞用の培地成分および有機溶媒を含まない、<1>から<8>の何れか一項に記載の保存方法。
<10> 上記緩衝液が、デキストランを含まない、<1>から<9>の何れか一項に記載の保存方法。
<11> 上記緩衝液中における細胞の濃度が4×10個/mL以上である、<1>から<10>の何れか一項に記載の細胞の保存方法。
<12> 細胞を緩衝液中に含む0~10℃の細胞懸濁液であって、上記細胞が間葉系幹細胞であり、上記緩衝液中における細胞の濃度が、1×10個/mL以上であり、上記緩衝液が抗酸化剤及びキレート剤の少なくとも一つを含み、かつ2%以上のトレハロースを含まない、細胞懸濁液。
<13> 細胞が哺乳類由来である、<12>に記載の細胞懸濁液。
<14> 抗酸化剤がアスコルビン酸である、<12>又は<13>に記載の細胞懸濁液。
<15> 緩衝液中におけるアスコルビン酸の濃度が1mmol/L~150mmol/Lである、<14>に記載の細胞懸濁液。
<16> キレート剤がエチレンジアミン四酢酸またはクエン酸である、<12>から<15>の何れか一項に記載の細胞懸濁液。
<17> 緩衝液中におけるエチレンジアミン四酢酸またはクエン酸の濃度が1mmol/L~100mmol/Lである、<16>に記載の細胞懸濁液。
<18> 上記緩衝液が、カリウムイオンを含有する、<12>から<17>の何れか一項に記載の細胞懸濁液。
<19> 緩衝液中におけるカリウムイオンの濃度が1mmol/L~1000mmol/Lである、<18>に記載の細胞懸濁液。
<20> 上記緩衝液が、動物細胞用の培地成分および有機溶媒を含まない、<12>から<19>の何れか一項に記載の細胞懸濁液。
<21> 上記緩衝液が、デキストランを含まない、<12>から<20>の何れか一項に記載の細胞懸濁液。
<22> 上記緩衝液中における細胞の濃度が4×10個/mL以上である、<12>から<21>の何れか一項に記載の細胞懸濁液。
本発明により幹細胞等の有用な細胞の保存方法およびその方法に用いる細胞懸濁液を提供することができる。また、本発明により、必要により保存した状態で細胞を輸送し臨床現場等に送ることができ、速やかに医療行為等に必要な細胞を提供することができる。
図1は、間葉系幹細胞(MSC)の表面抗原の測定結果(フローサイトメトリー法)を示す。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の保存方法は、細胞を含む緩衝液を0~10℃ の温度下において保持する工程を含み、上記緩衝液中における細胞の濃度が、1×10個/mL以上であり、上記緩衝液が抗酸化剤及びキレート剤の少なくとも一つを含み、かつ2%以上のトレハロースを含まない。
<緩衝液(輸液)>
緩衝液は緩衝剤と溶媒とを含んでなることが好ましい。緩衝液としては、リンゲル液、L乳酸ナトリウムリンゲル液、5%ぶどう糖加乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、5%ぶどう糖加酢酸リンゲル液、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)、生理食塩水、グッド緩衝液、ハンクス平衡塩類溶液、リン酸緩衝液(PBS)、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン塩酸塩緩衝液(TEA)等が挙げられる。
溶媒としては水または水性溶媒を用いることができる。水性媒体としては、水と低級アルコールとを任意の割合で混和した溶液が挙げられる。
上記のグッド緩衝液としては、例えば、PIPES、MES、Bis-Tris、ADA、Bis-Tris-Propane、ACES、MOPS、MOPSO、BES、TES、HEPES、HEPPS、Tricine、Tris、Bicine、TAPS等の緩衝剤の水溶液が挙げられる。
緩衝液はなかでも生理食塩水またはPBSまたはD-PBSであることが好ましい。
緩衝液が、動物細胞用の培地成分(血清等)および有機溶媒を含まないことが好ましい。また、緩衝液は、糖類及びデキストランを含まないことが好ましい。糖類としては、グルコース、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース又はセロビオースなどが挙げられる。
緩衝液は、抗酸化剤及びキレート剤の少なくとも一つを含む。
抗酸化剤としては、アスコルビン酸(ビタミンC)及びその誘導体、トコフェロール(ビタミンE)及びその誘導体、リコペン、ビタミンA、カロテノイド類、ビタミンB及びその誘導体、フラボノイド類、ポリフェノール類、グルタチオン、システイン、セレン、チオ硫酸ナトリウム、αリポ酸及びその誘導体、ピクノジェノール、フラバンジェノール、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、グルタチオン還元酵素、カタラーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ等が挙げられる。
緩衝液中におけるアスコルビン酸又はトコフェロール等の抗酸化剤の濃度は、一般的には0.5mmol/L~500mmol/Lであり、好ましくは1mmol/L~150mmol/Lであり、より好ましくは5mmol/L~100mmol/Lである。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(NTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸、トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-六酢酸、1,3-プロパンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、1,3-ジアミノ-2-プロパノール-N,N,N’,N’-四酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、イミノ二酢酸、エチドロン酸、クエン酸、ムギネ酸、ビピリジン、ポルフィリン、フェナントロリン、ポルフィリン、クラウンエーテル、サイクレン、18-クラウン-6、デフェロキサミン、ドータオクトレオテート、ニコチアナミン、ジメルカプロール、シデロホア等を挙げることができる。
緩衝液中におけるエチレンジアミン四酢酸又はクエン酸等のキレート剤の濃度は、一般的には0.5mmol/L~500mmol/Lであり、好ましくは1mmol/L~100mmol/Lであり、より好ましくは5mmol/L~100mmol/Lである。
緩衝液は、カリウムイオンを含有していてもよい。緩衝液にカリウムイオンを添加することにより、細胞生存率をさらに高めることができる。
緩衝液がカリウムイオンを含有する場合、緩衝中におけるカリウムイオンの濃度は、一般的には1mmol/L~1000mmol/Lであり、好ましくは10mmol/L~800mmol/Lであり、より好ましくは30mmol/L~700mmol/Lであり、さらに好ましくは50mmol/L~600mmol/Lであり、特に好ましくは100mmol/L~500mmol/Lである。
<濃度>
本発明においては、緩衝液中の細胞の濃度を1×10個/mL以上とするが、6×10個/mL以上でもよく、1×10個/mL以上でもよく、4×10個/mL以上、又は1×10個/mL以上でもよい。緩衝液中の細胞の濃度の上限は特にないが、1×1010個/mL以下であることが実際的である。
<温度>
本発明においては、細胞の保存温度を0~10℃とするが、保存温度は0~8℃がより好ましく、1~6℃が特に好ましい。
<保存期間>
保存時間は保存対象となる細胞の種類や状態に応じて適宜定めればよいが、例えば、細胞の健全性を考慮し、10日以下であることが好ましく、8日以下であることがより好ましく、5日以下であることがさらに好ましく、60時間以下であることがさらに好ましく、48時間以下であることが特に好ましい。保存する時間に下限値は特にないが、輸送等も考慮すると、10分以上が好ましく、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、または4時間以上がより好ましく、6時間以上がより一層好ましく、8時間以上がさらに好ましく、12時間以上が特に好ましい。
<細胞>
本発明に適用される細胞は特に限定されず入手可能なものを適宜用いることができるが、保存の付加価値が高く発明の効果が発揮できる点で医療用途において有用性の高い細胞であることが好ましい。かかる観点から、本発明で用いる細胞は間葉系幹細胞である。
間葉系幹細胞は、間葉系に属する細胞(骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞等)に分化可能である。最近では、さらにグリア細胞(外胚葉由来)、肝臓(内胚葉由来)等、中胚葉性でない組織にまで分化できる可能性があることが示唆されている。間葉系幹細胞は成体幹細胞の一つで、骨髄、脂肪、臍帯、滑膜(関節の周囲にある組織)等に含まれている。上記分化能力のため、細胞治療が期待される疾患数や患者数は多く、その臨床応用が強く期待されている。具体的な臨床例または研究例としては、冒頭に述べたように、造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病(GvHD)の治療薬が販売され、クローン病をはじめとする免疫介在性疾患において臨床治験が進められている。また、獣医療においても犬の乾性角結膜炎(KCS)、慢性腸症、変形性関節症、猫の非ウイルス性口内炎等に対し奏功していることを述べた。
間葉系幹細胞の臨床開発は、主に骨髄から採取した間葉系幹細胞で進められてきた。一方、間葉系幹細胞がヒトの皮下脂肪組織にも存在することが2002年に明らかとなった。脂肪組織から培養、増殖される脂肪由来間葉系幹細胞は、分化により組織再生に参画、あるいは成長因子を分泌して組織再生を促進する。皮下脂肪は骨髄と比較して以下の利点を有する:(1)組織採材が比較的容易、(2)組織の単位量あたりに含まれている間葉系幹細胞の量が骨髄に比べ数百倍高い。細胞治療に必要な細胞数を確保しやすいことから、皮下脂肪は間葉系幹細胞のリソースとして期待されている。本発明の保存方法は上記間葉系幹細胞に好適に適用することができる。
本発明の保存方法が適用される細胞は、どのような生物由来であってもよい。好ましくは動物由来であり、より好ましくは脊椎動物由来であり、さらに好ましくは哺乳動物由来である。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、犬、猫等のペット動物、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー等の霊長類等を挙げることができる。中でもヒト、犬、猫由来であることが特に好ましい。
<輸送>
本発明の保存方法ないし細胞懸濁液は輸送に供することが好ましい。輸送手段としては、徒歩、二輪、車両、鉄道、航空機、船舶等を挙げることができるが、特に制限されるものではない。本発明により安定な輸送が可能となれば、人の手で運搬が可能なサイズ・重量の保冷装置で運ぶことができる。また、比較的低コストでの輸送が可能となる。
<細胞の準備>
上記では本発明の細胞の保存方法およびそれに用いる細胞懸濁液の好ましい実施形態について述べたが、次の項からはその準備手順(培養、選択、回収、凍結、解凍等の操作)の詳細について説明する。具体的には、皮下脂肪由来間葉系幹細胞を、哺乳類に含まれる脂肪組織から分離して、取得する工程の一実施態様を示す。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
(1)脂肪組織からの細胞集団の調製
脂肪組織は、麻酔下において切除等の手段で採取される。ここでの「動物」はヒト、及びヒト以外の哺乳動物(犬や猫等のペット動物、家畜、実験動物を含む。)を含む。採取した脂肪組織は、70%エタノールで短時間暴露を実施し、組織に付着している細菌・ウイルス等の洗浄殺菌を行い、緩衝液や培養液に浸漬後、以下の酵素処理に供される。殺菌処理は、10%ヨード液等の公知の殺菌剤を使用した方法も含まれる。
酵素処理は、脂肪組織をコラゲナーゼTypeIの酵素溶液(0.1~5mg/mL)によって37℃、30~120分間で酵素消化することにより間葉系幹細胞が含まれる細胞集団(溶液)を取得する。なお脂肪組織の分解に使用する酵素は、トリプシン、ディスパーゼ、その他市販の脂肪組織用の消化酵素を用いた公知方法も含まれる。
間葉系幹細胞を含む細胞集団を分画するために、遠心処理を行う。50mL容の遠心チューブに上記酵素処理を行った溶液を分注し、750~1500G(1.0G=9.80665m/s)で遠心処理を行い、チューブ底の沈殿画分から間葉系幹細胞を含む細胞集団を回収する。遠心加速度は、由来動物、脂肪組織量の違いに依存して変更しても良い。沈殿画分をD-PBSの入った新たな遠心チューブに添加し、残存した油脂成分その他夾雑物を除去するために洗浄する。間葉系幹細胞を含む溶液を、ポアサイズ70~100μmのセルストレイナーで濾過することで、脂肪組織中のECM、未分解の脂肪組織等を除去する。本項記載で用いる緩衝液または濾過フィルター、装置は、他に公知の緩衝液や濾過膜、装置を使用することも含まれる。
(2)接着性線芽様細胞の選択的培養及び細胞(P0)の回収
上記の細胞を含む溶液について、750~1500Gで遠心処理を行い、チューブ底の沈殿画分に関して間葉系幹細胞を含まれる細胞集団として回収する。ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cmの培養用フラスコに懸濁液を移し、3~4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7~10日間培養する。培養インキュベータの培養環境は、37℃、二酸化炭素濃度5%で行う。培養用の培地には、通常の動物細胞培養用の培地を使用することができる。例えば、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、α-MEM(富士フイルム富士フイルム和光純薬株式会社等)、DMED:Ham’s F12混合培地(1:1)(富士フイルム和光純薬株式会社等)、Ham’s F12 Medium(富士フイルム富士フイルム和光純薬株式会社等)等を使用することも含む。培地に添加する血清はウシ胎仔血清(FBS)、ヒト血清、羊血清等由来のものを用いる。血清又は血清代替物の添加量は例えば5%(v/v)~30%(v/v)の範囲内で培地に加えて培養することも含まれる。
増殖した細胞を回収するために、回収操作はフラスコ底面に接着した細胞の剥離の常法に準じ、例えば酵素処理(トリプシンやディスパーゼ処理)後の細胞を剥離することによって容易に回収することができる。剥離した細胞は、ウシ胎児血清を含む培地に懸濁してトリプシン活性の阻害を行った後、500~1500Gで遠心処理を行い、培地成分を除去する。その後、細胞集団をD-PBSで再度洗浄した後、Passage 0(P0)の間葉系幹細胞懸濁液とした。
(3)間葉系幹細胞の選択的培養及び細胞(P1)の回収
P0の間葉系幹細胞を 3~5×10細胞/cmの濃度で細胞を準備し、ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cmの培養用フラスコに懸濁液を移し、3~4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7~10日間培養を行う。培養インキュベータの培養環境は、37℃、二酸化炭素濃度5%で行う。培養用の培地には、P0細胞培養時と同様に通常の動物細胞培養用の培地を使用することができる。
増殖した細胞(P1)を回収するために、回収操作はフラスコ底面に接着した細胞の剥離の常法に準じ、例えば酵素処理(トリプシンやディスパーゼ処理)後の細胞を剥離することによって容易に回収することができる。剥離した細胞は、FBSを含む培地に懸濁してトリプシン活性の阻害を行った後、D-PBSにより洗浄し、500~1500Gで遠心処理を行って、含有している培地成分を洗い流す。その後、細胞集団をD-PBSで再度洗浄した後、Passage 1(P1)の間葉系幹細胞懸濁液とした。
(4)細胞の凍結保存法
P0及びP1の細胞について、細胞凍結法の常法に準じ、1×10~1×10細胞の濃度で凍結保存液に懸濁してクライオチューブに分注し、緩速凍結器中において-80℃フリーザーにて緩速的に凍結を行う。凍結保存液は、通常の動物細胞凍結用の保存液を使用することができる。市販のジメチルスルホキシド含有/非含有の細胞凍結液、例えばCELL BANKER I(TAKARA)、COS BANKER(コスモバイオ株式会社)、バンバンカー(日本ジェネティクス)等を使用することも含む。凍結液に含まれるジメチルスルホキシド(DMSO)は、例えば0%(v/v)~10%(v/v)である。
(5)細胞の解凍法
凍結したP0及びP1の細胞について、細胞解凍法の常法に準じ解凍する。解凍した細胞懸濁液を500~1500Gで遠心処理し、細胞凍結液を除去後、細胞集団へD-PBS等の緩衝液を添加し洗浄・遠心操作を繰り返す。凍結チューブの解凍法として、例えば自動解凍装置である細胞凍結融解ステーションThawstar(biocision社)を用いた急速解凍の方法も含まれる。抗酸化剤及びキレート剤の少なくとも一つを含み、かつ2%以上のトレハロースを含まない溶液で細胞を懸濁することで、非凍結の状態で細胞の生存率を維持することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されない。
実施例における略号、商品名は以下を意味する。
生理食塩水:生理食塩液 大塚生食注(大塚製薬工場)
PBS:D-PBS(-)(富士フイルム和光純薬株式会社)
アスコルビン酸ナトリウム:L(+)-アスコルビン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社)
アスコルビン酸:L(+)-アスコルビン酸(ナカライテスク株式会社)
EDTA:エチレンジアミン-N,N,N‘,N’-四酢酸二ナトリウム塩二水和物(富士フイルム和光純薬株式会社)
トコフェロール:(±)-α-トコフェロール(富士フイルム和光純薬株式会社)
クエン酸ナトリウム:くえん酸三ナトリウム二水和物(富士フイルム和光純薬株式会社)
クエン酸:くえん酸一水和物(ナカライテスク株式会社)
トレハロース:トレハロース二水和物(富士フイルム和光純薬株式会社)
水酸化カリウム:0.5mol/L 水酸化カリウム溶液(富士フイルム和光純薬株式会社)
塩化カリウム:塩化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社)
0.1mol/L りん酸塩緩衝液:0.1mol/L りん酸塩緩衝液(pH7.4)(富士フイルム和光純薬株式会社)
<実施例1:犬皮下脂肪由来間葉系幹細胞(cMSC)での検討>
(1)脂肪組織からの細胞集団の調製
脂肪組織は、健康な犬から採取した。採取した脂肪組織は70%エタノールで短時間殺菌し、コラゲナーゼTypeIの酵素溶液(0.1~5mg/mL)で37℃、60分間酵素消化することにより間葉系幹細胞が含まれる細胞集団(溶液)を取得した。
間葉系幹細胞を含む細胞集団を分画するために、50mL容の遠心チューブに上記酵素処理を行った溶液を分注し、750~1500Gで遠心処理を行い、チューブ底の沈殿画分を細胞集団として回収した。沈殿画分をPBSの入った新たな遠心チューブに分画し、残存した油脂成分その他夾雑物を除去するためにリンス洗浄した。続けて脂肪組織中の細胞外マトリックスおよび未分解の脂肪組織等を孔径70μmのセルストレイナーで濾過することにより除去し、細胞を含む溶液を調製した。
(2)間葉系幹細胞の培養及び回収(cMSC P0)
上記の細胞を含む溶液について、1500Gで遠心処理を行い、チューブ底の沈殿画分に関して間葉系幹細胞を含まれる細胞集団として回収した。ここに適当な培地を加え懸濁した後、225cmの培養用フラスコに懸濁液を移し、3~4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7~10日間培養を行った。培養は37℃、二酸化炭素濃度5%で行った。培養用の培地は、Mesenchymal Stem Cell Growth Medium Bullet KitTM(MSCGM、ロンザ株式会社)を用いた。
増殖した細胞を回収するために、回収操作はフラスコ底面に接着した細胞の剥離の常法に準じ、0.05%(v/v)トリプシンを37℃、5分で反応させることで細胞を回収した。剥離した細胞は、ウシ胎児血清(FBS、富士フイルム和光純薬株式会社)を含む培地に懸濁した後、500~1500Gで遠心処理を行い、トリプシンを除去した。その後、培地で懸濁し、cMSC P0の間葉系幹細胞懸濁液を得た。
(3)間葉系幹細胞の培養および回収(cMSC P1)
P0の間葉系幹細胞を225cmの培養用フラスコに懸濁液を移し、3~4日毎の洗浄、培地交換を繰り返しながら7~10日間培養を行った。培養は37℃、二酸化炭素濃度5%で行った。培養用の培地には、D-MEM(富士フイルム和光純薬株式会社)等にFBSを添加したものを使用した。上記cMSC P0の回収と同様にトリプシンで反応後、遠心処理を行い、cMSC P1の間葉系幹細胞懸濁液を得た。
(4)細胞の凍結保存法
cMSC P1細胞について、細胞凍結法の常法に準じ、1×10~5×10細胞/mLの濃度で凍結保存液に懸濁してクライオチューブに分注し、緩速凍結器中において-80℃フリーザーにて緩速的に凍結を行った。凍結保存液は、市販のジメチルスルホキシド(DMSO)含有の細胞凍結液を使用した。その後、超低温冷凍庫(-80℃~-150℃)または液体窒素中(-196℃)で保存した。
(5)細胞の解凍法
凍結したcMSC P1細胞について、細胞解凍法の常法に準じ、自動解凍装置である細胞凍結融解ステーションThawstar(Biocision社)で解凍した。2000Gで遠心処理を行い、細胞凍結液を除去した。細胞集団を生理食塩水で懸濁して遠心処理を行った後、アスコルビン酸ナトリウムを25mM含有するPBSで細胞を懸濁した。
<実施例2~11および比較例1~3>
cMSC P1細胞を解凍する際に最終的に懸濁する液を表1及び表2に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして細胞懸濁液を調整した。表1及び表2における純水は超純水装置Milli-Q(Merck Millipore社)により精製された超純水を意味する。
(6)4℃保存での細胞生存率測定
解凍したcMSC P1のcMSCについて、4℃保存で経時的に測定した。生存率は、細胞懸濁液に0.4%(w/v)TrypanBlue溶液(富士フイルム和光純薬株式会社)を1:1の割合で添加し、顕微鏡下での観察により、生細胞と死細胞の生存率を生存率=生細胞数/(生細胞数+死細胞数)×100(%)の計算式に則り、算出した。冷蔵状態(4℃)で3日保管した後の生存率を表1、7日保管した後の生存率を表2に示すが、抗酸化剤やキレート剤を含有しない液(生理食塩水やPBS)は生存率が70%以下となった一方、アスコルビン酸やトコフェロール、EDTA、クエン酸を添加した溶液は70%以上の生存率を維持することがわかった。また、糖類添加による生存率改善効果は認められなかった。
(7)4℃保存でのMSC特性評価
MSCの細胞活性特性を確認するために、実施例1、実施例5、実施例6について間葉系幹細胞に特異的な表面抗原(CD90及びCD44)の発現をフローサイトメトリー(FCM)法により測定した。CD90及びCD44の陽性率は、冷蔵状態で3日保管した後も解凍直後と同等の値であった(図1)。
<実施例12~26および比較例4~6:猫皮下脂肪由来間葉系幹細胞(fMSC)での検討>
脂肪は健康な猫から採取し、fMSCの培養および回収は実施例1と同様にして行った。細胞懸濁液の調整は、細胞を解凍する際に最終的に懸濁する液を表3、表4に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
冷蔵状態(4℃)で2日保管した後の生存率を表3、7日保管した後の生存率を表4に示すが、抗酸化剤やキレート剤を含有しない液(生理食塩水やPBS)は生存率が70%以下となった一方、アスコルビン酸やEDTAを添加した溶液は70%以上の生存率を維持することがわかった。
<実施例27~30および比較例7~8:ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(hMSC)での検討>
hMSCはHuman Mesenchymal Stem Cells from Adipose Tissue (hMSC-AT)(タカラバイオ株式会社)を使用し、hMSCの培養および回収は実施例1と同様にして行った。細胞懸濁液の調整は、細胞を解凍する際に最終的に懸濁する液を表5に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。冷蔵状態(4℃)で2日保管した後の生存率を表5に示すが、抗酸化剤を含有しない液(生理食塩水やPBS)は生存率が70%以下となった一方、抗酸化剤としてアスコルビン酸、EDTAを添加した溶液は70%以上の生存率を維持することがわかった。
<実施例31~33>
実施例6に対し、カリウムイオンを以下のいずれかにより添加した:(1) アスコルビン酸ナトリウムをアスコルビン酸に置き換えた上で水酸化カリウムでpH7に中和、(2) クエン酸ナトリウムをクエン酸に置き換えた上で水酸化カリウムでpH7に中和、(3) PBSを0.1mol/L りん酸塩緩衝液に置き換えた上で塩化カリウムを添加。カリウムイオンおよびナトリウムイオンを表6に示す通りに変更したこと以外は、実施例6と同様にして行った。
冷蔵状態(4℃)で12日保管した後の生存率を表6に示すが、カリウムイオンの添加により生存率を維持できることがわかった。
Figure 0007018527000001
Figure 0007018527000002
Figure 0007018527000003
Figure 0007018527000004
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Figure 0007018527000006

Claims (18)

  1. 細胞を懸濁液の形態で含む緩衝液を0~10℃ の温度下において保持する工程を含む、細胞の保存方法であって、前記細胞が間葉系幹細胞であり、前記緩衝液中における細胞の濃度が、1×10個/mL以上であり、前記緩衝液が抗酸化剤及びキレート剤の少なくとも一つを含み、抗酸化剤がアスコルビン酸であり、キレート剤がエチレンジアミン四酢酸またはクエン酸であり、前記緩衝液がトレハロース以外の糖類を含まず、かつ2%以上のトレハロースを含まない、細胞の保存方法。
  2. 細胞が哺乳類由来である、請求項1に記載の保存方法。
  3. 緩衝液中におけるアスコルビン酸の濃度が1mmol/L~150mmol/Lである、請求項1又は2に記載の保存方法。
  4. 緩衝液中におけるエチレンジアミン四酢酸またはクエン酸の濃度が1mmol/L~100mmol/Lである、請求項1から3の何れか一項に記載の保存方法。
  5. 前記緩衝液が、カリウムイオンを含有する、請求項1から4の何れか一項に記載の保存方法。
  6. 緩衝液中におけるカリウムイオンの濃度が1mmol/L~1000mmol/Lである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記緩衝液が、動物細胞用の培地成分および有機溶媒を含まない、請求項1から6の何れか一項に記載の保存方法。
  8. 前記緩衝液が、デキストランを含まない、請求項1から7の何れか一項に記載の保存方法。
  9. 前記緩衝液中における細胞の濃度が4×10個/mL以上である、請求項1から8の何れか一項に記載の細胞の保存方法。
  10. 細胞を緩衝液中に含む0~10℃の細胞懸濁液であって、前記細胞が間葉系幹細胞であり、前記緩衝液中における細胞の濃度が、1×10個/mL以上であり、前記緩衝液が抗酸化剤及びキレート剤の少なくとも一つを含み、抗酸化剤がアスコルビン酸であり、キレート剤がエチレンジアミン四酢酸またはクエン酸であり、前記緩衝液がトレハロース以外の糖類を含まず、かつ2%以上のトレハロースを含まない、細胞懸濁液。
  11. 細胞が哺乳類由来である、請求項10に記載の細胞懸濁液。
  12. 緩衝液中におけるアスコルビン酸の濃度が1mmol/L~150mmol/Lである、請求項10又は11に記載の細胞懸濁液。
  13. 緩衝液中におけるエチレンジアミン四酢酸またはクエン酸の濃度が1mmol/L~100mmol/Lである、請求項10から12の何れか一項に記載の細胞懸濁液。
  14. 前記緩衝液が、カリウムイオンを含有する、請求項10から13の何れか一項に記載の細胞懸濁液。
  15. 緩衝液中におけるカリウムイオンの濃度が1mmol/L~1000mmol/Lである、請求項14に記載の細胞懸濁液。
  16. 前記緩衝液が、動物細胞用の培地成分および有機溶媒を含まない、請求項10から15の何れか一項に記載の細胞懸濁液。
  17. 前記緩衝液が、デキストランを含まない、請求項10から16の何れか一項に記載の細胞懸濁液。
  18. 前記緩衝液中における細胞の濃度が4×10個/mL以上である、請求項10から17の何れか一項に記載の細胞懸濁液。
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