JPWO2020066521A1 - 複合半透膜およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、基材および前記基材上の多孔質支持体を有する支持膜と、前記多孔質支持体上の分離機能層とを備える複合半透膜であって、前記多孔質支持体が、シアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体を含み、かつ、前記多孔質支持体における半径10.6nm以上93.5nm以下の細孔容積が0.100cm/g以上である複合半透膜に関する。

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜およびその製造方法に関する。本発明によって得られる複合半透膜は、例えばかん水の淡水化や水道水の浄化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがある。近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがある。これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収、水道水の浄化などに用いられている。
現在市販されているろ過膜、特に逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は、複合半透膜である。特許文献1には、基材および多孔質支持体を含む支持膜と、多孔質支持体上に設けられた分離機能層とを備える複合半透膜が開示されている。また、多孔質支持体に含まれる熱可塑性樹脂として、ポリスルホン、ポリアクリルアミド、ポリエーテルスルホン、セルロースエステル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル等が開示されている。特許文献2には、支持体の材料としてポリアクリロニトリルをベースとした共重合体が開示されている。
国際公開第2014/192883号 米国特許出願公開第2012/181228号明細書
本発明者らは、多孔質支持体の材料としてシアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体を検討し、本発明では、その透水性を向上させることを課題とした。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
[1]基材および前記基材上の多孔質支持体を有する支持膜と、前記多孔質支持体上の分離機能層とを備える複合半透膜であって、前記多孔質支持体が、シアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体を含み、かつ、半径10.6nm以上93.5nm以下の細孔容積が0.100cm/g以上である複合半透膜。
[2]前記多孔質支持体において、赤外吸収スペクトルにおける吸収強度により下記式で表されるシアノ基割合が1.50以下である、前記[1]に記載の複合半透膜。
シアノ基割合=2240cm−1の吸収強度/1605cm−1の吸収強度
[3]前記共重合体の重量平均分子量Mwが180,000以上1,000,000以下である、前記[1]又は[2]に記載の複合半透膜。
[4]前記共重合体の重量平均分子量Mwが220,000以上1,000,000以下である、前記[3]に記載の複合半透膜。
[5]前記共重合体が、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体である、前記[1]〜[4]のいずれか1に記載の複合半透膜。
[6]前記シアノ基割合が、1.35以下である、前記[2]〜[5]のいずれか1に記載の複合半透膜。
[7](a)重量平均分子量Mwが220,000以上1,000,000以下のシアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体を良溶媒に溶解させた溶液を、基材上に配置する工程、
(b)前記共重合体の非溶媒を含有する凝固浴に接触させることで、前記共重合体の多孔質支持体を得る工程、及び
(c)前記多孔質支持体上に分離機能層を形成する工程、
を含む複合半透膜の製造方法。
[8]前記良溶媒がジメチルスルホキシドである、前記[7]に記載の製造方法。
[9]前記共重合体がアクリロニトリルとスチレンとの共重合体である、前記[7]又は[8]に記載の製造方法。
シアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体を含み、かつ、半径10.6nm以上93.5nm以下の細孔容積が0.100cm/g以上であることで、複合半透膜は高い透水性能(透過流速:Flux)を有する。
図1は、走査型電子顕微鏡(SEM)により30,000倍で観察した実施例4の多孔質支持体の断面写真である。 図2は、SEMにより30,000倍で観察した比較例1の断面写真である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
また、本明細書において、‘重量%’、‘重量部’及び‘重量ppm’とは、それぞれ‘質量%’、‘質量部’及び‘質量ppm’と同義であり、単にppmと表した場合には、重量ppmであることを意味する。
1.複合半透膜
本発明に係る複合半透膜は、基材及び前記基材上に配置された多孔質支持体を有する支持膜と、前記多孔質支持体上に配置された分離機能層とを備える。前記分離機能層は実質的に分離性能を有するものであり、前記支持膜は実質的にイオン等の分離性能を有さず、前記分離機能層に強度を与えることができる。
(1−1)支持膜
本発明において、支持膜は基材と前記基材上に配置された多孔質支持体を有する。
(1−1−1)基材
基材としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、あるいはこれらの混合物や共重合体等が挙げられる。中でも、機械的、熱的に安定性の高いポリエステル系重合体の布帛が特に好ましい。布帛の形態としては、長繊維不織布や短繊維不織布、織編物を好ましく用いることができる。ここで、長繊維不織布とは、平均繊維長300mm以上、かつ平均繊維径3〜30μmの不織布のことを指す。
基材は、通気量が0.5cc/cm/sec以上5.0cc/cm/secであることが好ましい。基材の通気量が上記範囲内にあることにより、多孔質支持体となる高分子溶液が基材に含浸するため、基材との接着性が向上し、支持膜の物理的安定性を高めることができる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。
例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
基材の厚みは好ましくは20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、また、200μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましい。
基材の厚みは、ダイヤルシックネスゲージやデジタルシックネスゲージによって測定することができる。ダイヤルシックネスゲージやデジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKや株式会社テクロックの製品などが使用できる。ダイヤルシックネスゲージやデジタルシックネスゲージを用いる場合は、任意の20箇所について厚みを測定してその相加平均を算出し、基材の厚みとする。
なお、基材の厚みをダイヤルシックネスゲージやデジタルシックネスゲージによって測定することが困難な場合、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で測定してもよい。
(1−1−2)多孔質支持体
本発明において、多孔質支持体はシアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体(すなわちビニル系共重合体)を含む。多孔質支持体は熱可塑性樹脂からなることが好ましい。ここで、熱可塑性樹脂とは、鎖状高分子物質からできており、加熱すると外力によって変形または流動する性質が表れる樹脂のことをいう。
多孔質支持体の細孔容積Vは、0.100cm/g以上であることが好ましい。細孔容積Vがこの範囲にあることで、高い透水性が得られる。なお、細孔容積Vにおける細孔とは、半径10.6nm以上93.5nm以下の孔を意味し、細孔容積Vは以下の式(1)で算出される。
細孔容積V=(半径10.6nm以上93.5nm以下の孔の容積合計V1)/(多孔質支持体重量Wp/複合半透膜重量Wc) (1)
容積合計V1は、ガス吸着法により以下のように求めることができる。
具体的には、所定の面積に切った複合半透膜を温水でよく洗浄し、室温で風乾させる。風乾後、さらに真空乾燥機にて乾燥させる。
真空乾燥後のサンプルを2mm角に裁断し、ガラス管に充填する。ガラス管内のサンプルについて、細孔分布測定装置で、定容量式ガス吸着法により窒素ガスの吸着等温線を測定する。測定で得られた窒素ガスの吸着等温線データをBJH法(Barrett−Joyner−Halenda)で解析することで、半径に対応する細孔の容積が求められる。
解析結果から、半径10.6nm以上93.5nm以下の孔の容積合計V1が得られる。細孔分布測定装置としては、Microtrac BEL社製の高精度比表面積・細孔分布測定装置 BELSORP−mini IIなどが使用できる。
得られる容積V1は、サンプルの単位重量、つまり複合半透膜の単位重量当たりの値である。一方で、半径10.6nm以上93.5nm以下の孔は多孔質支持体に局在している。よって、前記式(1)のとおり、ガス吸着法に供したサンプル重量に対する多孔質支持体の重量の比で容積V1を除することで、多孔質支持体以外の重量(特に基材の重量)の影響を除く補正を行う。
多孔質支持体重量Wpおよび複合半透膜重量Wcは、以下の方法で求めることができる。
所定の面積に切った複合半透膜を温水でよく洗浄し、室温で風乾させる。風乾後、さらに真空乾燥機にて完全に乾燥させる。乾燥後の重量(つまり複合半透膜重量Wc)を測定する。この複合半透膜を、多孔質支持体を溶解する溶媒に接触させる。溶媒としてはアセトン等が挙げられる。これによって、多孔質支持体は溶解し、分離機能層は溶媒に溶けずに溶媒の中に分散する。一方で基材は形状を保つので、基材を溶媒から抜き出す。抜き出した基材を溶媒でよく洗浄した後、風乾および真空乾燥を経て、基材の重量Wsを測定する。
また、金属メッシュ(線径 0.03mm、メッシュ 300)にてろ過することで、多孔質支持体が溶解した溶媒から分離機能層を分離することができる。ろ過物を溶媒でよく洗浄した後、風乾および真空乾燥を経て、分離機能層の重量Wfを測定する。
複合半透膜重量Wcから分離機能層の重量Wfおよび基材の重量Wsを減じることで、多孔質支持体重量Wpを求める(Wp=Wc−Ws−Wf)。
なお、分離機能層の重量Wfは支持膜の重量(Wp+Ws)に比べて非常に小さく、複合半透膜中の0.05〜0.25重量%程度であるので無視してもよい。分離機能層の重量Wfを無視する場合は、分離機能層の重量の測定を省略できる。すなわち、複合半透膜重量Wcから基材の重量Wsを減じて得られる値を多孔質支持体重量Wpとして、式(1)に適用すればよい。
細孔容積Vが上述の範囲にあるということは、多孔質支持体に、半径10.6nm以上93.5nm以下という比較的小さい孔(つまり細孔)が一定量以上含まれていることを意味する。
このような例として、図1に、SEMにより30,000倍で観察した本発明の実施例4の多孔質支持体の断面写真を示し、比較対象として同倍率における比較例1の多孔質支持体の断面写真を図2に示す。図1及び2中、矢印で示すaは多孔質支持体表面を示し、bは細孔組織を示し、cはボイドを示す。なお、長径1μm以上の孔をボイドと呼ぶ。ボイドを囲む部分、つまり小さな孔を有する部分を説明の便宜上「細孔組織」と呼ぶ。
図1の構造では、細孔組織bに含まれる孔が小さく、かつ孔数が多い。これは、細孔容積Vが上述の範囲を満たすことと対応している。このような構造は、細孔同士が繋がることで高い連続性(連通性)を有する。図1に示すように、ボイドcの壁にも多くの細孔が見られ、ボイドと細孔との間でも高い連通性が見られる。
これに対して、図2の構造では、ボイドc以外の孔も図1に比べて比較的大きく、かつ孔数が少ない。また、図2の構造では、ボイドcの壁の孔数も少ない。
多孔質支持体における高い連通性は、分離機能層の構造にも影響を与える。後述するように、分離機能層は、多官能性アミン水溶液と多官能酸性ハロゲン化物溶液との間の界面重縮合により形成される。このとき、支持膜に含浸した多官能性アミンが溶液間の界面に供給されることで重縮合が進行する。多孔質支持体内の空間(細孔、ボイド)は重合場に多官能性アミンを供給する経路となるので、連通性が高いことで多官能性アミンが充分に供給され、分離機能層におけるひだが大きく成長することができると考えられる。
細孔容積Vは0.120cm/g以上であることがより好ましく、0.200cm/g以上であることがさらに好ましい。また、細孔容積Vは0.350cm/g以下であることが好ましい。0.350cm/g以下であることで良好な耐圧性が得られる。
多孔質支持体におけるベンゼン環に対するシアノ基の割合、すなわちシアノ基割合は好ましくは1.50以下であり、より好ましくは1.35以下であり、さらに好ましくは1.10以下である。また、シアノ基割合は、0.20以上が好ましい。
シアノ基割合を1.50以下とすることで、複合半透膜の透水性能を向上させることができる。透水性能が向上する理由は明確ではないが、シアノ基の割合が低いことで、多孔質支持体の疎水性が高くなり、界面重縮合による分離機能層形成時に多官能性アミンが充分に供給されることで、分離機能層におけるひだが大きく成長するからであると考えられる。
シアノ基割合は、以下の方法で求めることができる。まず、所定の面積に切った支持膜または複合半透膜を温水で洗浄し、室温で風乾させる。次に、アセトンに接触させることで多孔質支持体のみを溶解し、得られた溶液を金属メッシュ(線径 0.03mm、300 メッシュ)にてろ過して基材および分離機能層を除去する。続いて、エバポレーターなどを用いて得られたろ液からアセトンを除去し、不溶物を得る。その後、不溶物を再度アセトンに10重量%程度となるように溶解し、得られた溶液をガラス基板上にアプリケータを用いて15mil(381μm)の厚みで塗布し、温度25℃、湿度50%の雰囲気下で12時間以上放置することによりフィルム状のサンプルを得る。
得られたサンプルを60℃の真空乾燥機で5時間乾燥してアセトンを完全に除去し、乾燥後のサンプル(多孔質支持体)をフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で吸光度分析する(透過法)。
得られた多孔質支持体に対し、赤外吸収スペクトルに現れる下記ピークの吸収強度からシアノ基割合を求めることができる。
1605cm−1:芳香族ビニル系単量体由来ベンゼン核の振動に帰属されるピーク
2240cm−1:シアン化ビニル系単量体由来−CN伸縮に帰属されるピーク
シアノ基割合は以下の式(2)で算出される。
シアノ基割合=2240cm−1の吸収強度/1605cm−1の吸収強度 (2)
なお、FT−IRは、島津製作所製のIR Traxer−100などが使用できる。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタアクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル系単量体として、アクリロニトリルが特に好ましい。共重合体に含まれるシアン化ビニル系単量体は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレン、およびo,p−ジクロロスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル系単量体としては、特にスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。共重合体に含まれる芳香族ビニル系単量体は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
上記シアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体は、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体がより好ましい。
ビニル系共重合体を構成するビニル系単量体中のシアン化ビニル系単量体の割合は、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、18重量%以上がさらに好ましい。また、当該割合は、30重量%以下が好ましく、28重量%以下がより好ましい。上記割合が10重量%以上であることで、多孔質支持体の成形性が向上する。また、上記割合が30重量%以下であることで、シアノ基割合を1.50以下とすることができる。
ビニル系共重合体を構成するビニル系単量体中の芳香族ビニル系単量体の割合は、70重量%以上が好ましく、72重量%以上がより好ましい。また、当該割合は90重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましく、82重量%以下がさらに好ましい。芳香族ビニル系単量体の割合が70重量%以上であることで、多孔質支持体と分離機能層の間が強固に接着するので、欠点の発生が抑制される。
多孔質支持体中のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の重量平均分子量(Mw)は、多孔質支持体に含まれるシアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体の重量平均分子量(Mw)と同様の値となる。かかる重量平均分子量(Mw)の値は、好ましくは180,000以上であり、より好ましくは220,000以上であり、さらに好ましくは320,000以上である。Mwが180,000以上であることで、多孔質支持体の細孔容積を増加させることができ、さらに多孔質支持体の耐圧性も向上させることができる。また、Mwは1,000,000以下が好ましい。Mwを1,000,000以下とすることで、多孔質支持体の成形性が向上する。
多孔質支持体中のTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)は、以下の方法で測定することができる。まず、所定の面積に切った支持膜または複合半透膜を温水でよく洗浄し、室温で風乾させる。次に、THFに接触させることで多孔質支持体のみを溶解し、得られた溶液を金属メッシュ(線径 0.03mm、メッシュ 300、関西金網株式会社製)にてろ過して基材および分離機能層を除去する。続いて、得られたろ液を、8800rpm(10,000G以上)で40分間遠心分離した後、上澄み液を分取する。得られた上澄み液を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でTHFを溶媒に、ポリスチレンを標準物質として測定し、重量平均分子量を求める。
多孔質支持体の厚みは、好ましくは10μm以上100μm以下である。10μm未満だと、基材が露出して欠点となる場合があり、100μmを超えると多孔質支持体の厚みによる抵抗で透水性能が低下する場合がある。
多孔質支持体の厚みは、多孔質支持体形成時に使用する材料を溶解する溶媒の種類、材料を含む溶液の粘度、溶液における材料の濃度、凝固浴温度、基材への溶液の塗布厚みなどで制御することができる。
多孔質支持体の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡などによる断面観察によって測定することができる。SEMで測定する場合は、以下の方法で求めることができる。
複合半透膜あるいは支持膜を凍結割断法で割断して切片サンプルを作製し、切片サンプルをSEMにて100〜500倍で断面観察する。スケールやノギスを用いて任意の10点の厚みを測定する。膜の厚み方向に垂直な方向(膜の面方向)において、10μm間隔で10箇所の厚みを測定すると良い。同様の操作を5つの切片サンプルで行い、50個のデータの相加平均を算出し、多孔質支持体の厚みとする。なお、SEMで観察する前には、サンプルに白金または白金−パラジウムまたは四酸化ルテニウムを薄くコーティングする。また、SEMとしては、日立ハイテクノロジーズ製S−5500型走査型電子顕微鏡などが使用でき、3〜6kVの加速電圧で観察する。
また、支持膜および多孔質支持体の厚みは、基材と同様にダイヤルシックネスゲージやデジタルシックネスゲージによっても測定することもできる。分離機能層の厚みは基材や多孔質支持体と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを基材と多孔質支持体の合計の厚み(支持膜の厚み)とみなすことができる。従って、複合半透膜の厚みをダイヤルシックネスゲージやデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを減じることで、多孔質支持体の厚みを簡易的に算出することができる。ダイヤルシックネスゲージやデジタルシックネスゲージを用いる場合は、任意の20箇所について厚みを測定して、その相加平均を算出する。
支持膜の厚み(基材と多孔質支持体厚みの合計)は、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。十分な機械的強度および充填密度を得るためには、支持膜の厚みの合計は30μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましく、また、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
支持膜の25℃における純水透過係数は、0.8×10−9/m・s・Pa以上であることが好ましい。
支持膜の純水透過係数は以下の方法で求めることができる。まず、支持膜を純水でよく洗浄する。次に、直径4.3cmの円形に切り抜き、切り抜いたサンプルを撹拌型ウルトラホルダー(アドバンテック東洋株式会社製 UHP−43K)にセットする。続いて、セル内に25℃の純水を入れ、キャップを取り付けた後、窒素や圧空で100kPaとなるように昇圧する。最後に、一定時間における純水透過量を測定し、以下の式から純水透過係数(×10−9/m・s・Pa,25℃)を算出する。
純水透過係数=純水透過量/(膜面積×採水時間×供給圧力)
(1−2)分離機能層
分離機能層は、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との重縮合反応で得られたポリアミドを主成分とする薄膜を有する。主成分とは分離機能層の成分のうち、50質量%以上を占める成分を指す。分離機能層においてポリアミドが占める割合は90質量%以上であってもよいし、分離機能層はポリアミドのみで構成されていてもよい。
分離機能層は、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。
ここで、多官能性アミン及び多官能性酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
多官能性アミンとは、一分子中に第一級アミノ基及び第二級アミノ基のうち少なくとも一方のアミノ基を2個以上有するアミンを意味する。
例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2,5−ジ−n−ブチルピペラジン、エチレンジアミンなどの脂肪族多官能アミン;o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、o−ジアミノピリジン、m−ジアミノピリジン、p−ジアミノピリジン等の2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係で芳香環に結合した多官能芳香族アミン;1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの多官能芳香族アミンなどが挙げられる。
中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、ピペラジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、2−メチルピペラジンが好適に用いられる。これらの多官能性アミンは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
多官能性酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。
例えば、3官能酸ハロゲン化物では、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物では、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物などを挙げることができる。
多官能性アミンとの反応性を考慮すると、多官能性酸ハロゲン化物は多官能芳香族酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能芳香族酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
分離機能層の厚みは、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。また、当該厚みは1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
分離機能層の孔径は、2nm以下であり、好ましくは1nm以下である。
2.複合半透膜の製造方法
複合半透膜の製造方法について説明する。当該製造方法は、支持膜の形成工程および分離機能層の形成工程を含む。なお、本発明の複合半透膜は、本書に記載された製造方法および各層の形成方法に限定されない。
複合半透膜の製造方法は、次の(a)〜(c)で表される工程を含む。
(a)シアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体を良溶媒に溶解させた溶液を、基材上に配置する工程、
(b)前記共重合体の非溶媒を含有する凝固浴に前記溶液を接触させることで、前記共重合体の多孔質支持体を得る工程、
(c)前記多孔質支持体上に分離機能層を形成する工程。
これら(a)〜(c)で表される工程を含む製造方法について、支持膜の形成工程、及び分離機能層の形成工程に分けて、詳細を以下に示す。
(2−1)支持膜の形成工程
支持膜の形成工程は、上記工程(a)および(b)を含む。
上記工程(a)における共重合体の化学構造については、上述したとおりである。
上記工程(a)における溶液中の共重合体濃度は、好ましくは10重量%以上であり、14重量%以上がより好ましい。また、当該共重合体濃度は25重量%以下が好ましく、より好ましくは22重量%以下である。共重合体濃度が10重量%以上25重量%以下であることで、実用に耐えうる強度をもった支持膜が得られる。
共重合体を溶解する溶媒は、共重合体の良溶媒であり、ハンセン溶解度パラメータの極性項dPが11.0以上17.0以下、水素結合項dHが7.0以上12.0以下の溶媒が好ましい。なお、共重合体の良溶媒とは、共重合体を溶解するものである。
溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、γ−ブチロラクトン(GBL)などが挙げられ、ジメチルスルホキシドが好ましい。
また、これらの溶媒を混合することでハンセン溶解度パラメータの極性項dPが11.0以上17.0以下、水素結合項dHが7.0以上12.0以下にした溶媒でもよい。特に、DMSOや、DMSOとDMFの混合溶媒、DMSOとGBLの混合溶媒が好ましい。DMSOや、DMSOとDMFの混合溶媒、DMSOとGBLの混合溶媒を用いることで、多孔質支持体の細孔容積を増加させることができる。なお、混合溶媒の場合、DMSOの比率を80重量%以上とすることが好ましい。
工程(a)においては、
・共重合体の重量平均分子量Mwが220,000以上1,000,000以下である、
・良溶媒がジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する、
の少なくとも一方を満たすことが好ましく、両方を満たすことがより好ましい。
上記共重合体溶液は、多孔質支持体の孔径、空孔率、親水性、弾性率などを調節するための添加剤を含有してもよい。孔径および空孔率を調節するための添加剤としては、水、アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の水溶性高分子またはその塩、さらに塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸リチウム等の無機塩、ホルムアミド等が例示されるが、これらに限定されるものではない。親水性や弾性率を調節するための添加剤としては、種々の界面活性剤が挙げられる。
これらの材料を混合することで、共重合体の溶液を調製することができる。
基材に共重合体の溶液を配置する工程は、例えば、スピンコーター、フローコーター、ロールコーター、スプレー、コンマコーター、バーコーター、グラビアコーター、スリットダイコーターなどが利用できる。
共重合体溶液塗布時の溶液の温度は、好ましくは5〜60℃の範囲内であり、より好ましくは10℃以上であり、また、より好ましくは40℃以下の範囲内である。この範囲内であれば、共重合体溶液が析出することなく、共重合体の有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化されやすい。その結果、アンカー効果により多孔質支持体が基材に強固に接合した支持膜を得ることができる。
基材に共重合体溶液を塗布することにより、基材中に共重合体溶液が含浸する。共重合体溶液の基材への含浸を制御することで、欠点の発生を抑制することができる。共重合体溶液の基材への含浸を制御するためには、例えば、基材上に共重合体溶液を塗布してから、凝固浴に浸漬させるまでの時間を制御すること、或いは共重合体溶液の温度または濃度を制御することにより粘度を調節することが挙げられ、これらの条件を組み合わせることも可能である。
基材上に共重合体溶液を塗布してから、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、通常0.1〜10秒間の範囲であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、共重合体溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる共重合体溶液の粘度などによって調節すればよい。
凝固浴としては、共重合体の良溶媒と比較して溶解度が小さい非溶媒を含んでいる。
非溶媒としては、例えば純水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。一般的には純水が用いられる。
凝固浴の温度は、好ましくは−20℃以上、より好ましくは0℃以上であり、また、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。50℃以下とすることで、熱運動により凝固浴面の振動を抑制し、膜形成後の膜表面の平滑性が向上する。また、−20℃以上とすることで、相分離に十分な凝固速度となり、製膜性が向上する。
次に、上記で得られた支持膜を、支持膜中に残存する溶媒を除去するために純水で洗浄する。このときの純水の温度は25〜80℃が好ましい。
次に、多孔質支持体を構成する共重合体の製造方法について説明する。
ビニル系共重合体の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合および溶液重合等のいずれの重合方法においても製造することができる。これらの2種以上組み合わせてもよい。また、各単量体の仕込み方法については特に制限はなく、初期一括仕込み、あるいは共重合体の組成分布を知るために仕込み単量体の一部または全部を連続的または分割して仕込み重合してもよい。懸濁重合法または塊状重合法が好ましく、重合制御の容易さ、後処理の容易さを考慮すると、懸濁重合法が最も好ましい。
懸濁重合に用いられる懸濁安定剤としては、粘土、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム等の無機系懸濁安定剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体等の有機系懸濁安定剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、溶融時の熱着色安定性の面で有機系懸濁安定剤が好ましく、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体がより好ましい。
重合に用いる開始剤は特に制限はなく、過酸化物、アゾ系化合物または過硫酸塩などが使用される。
過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。
アゾ系化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−2−シアノブタン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。
過硫酸塩の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらの開始剤を2種以上用いてもよい。また、開始剤はレドックス系でも用いることができる。
ビニル系共重合体を懸濁重合により製造する場合、重合温度に特に制限はないが、ビニル系共重合体の重量平均分子量を前述の範囲に調整しやすいという観点、懸濁安定性の観点から60〜80℃で重合を開始し、重合率が50〜70%となった時点で昇温を開始し、最終的に100〜120℃にすることが好ましい。
ビニル系共重合体の重量平均分子量は、前述の開始剤や連鎖移動剤を用いること、重合温度を前述の好ましい範囲にすることなどにより、容易に調整可能である。
連鎖移動剤の具体例としては、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタンなどのメルカプタン、テルピノレンなどのテルペンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらのなかでも、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
(2−2)分離機能層の形成工程
分離機能層の形成工程の一例として、前述の多官能性アミンを含有する水溶液と、多官能性酸ハロゲン化物を含有する水と非混和性の有機溶媒溶液とを用い、支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、ポリアミド骨格を形成することができる。
多官能性アミン水溶液における多官能性アミンの濃度は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、また、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。この範囲であると十分な透水性能と溶質除去性能を得ることができる。
多官能性アミン水溶液には、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤、アルカリ性化合物、アシル化触媒、酸化防止剤などの添加剤を加えることができる。
界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、トリエチルアミンなどが挙げられる。
界面重縮合を支持膜上で行うために、まず、上述の多官能性アミン水溶液を支持膜に接触させる。接触は、支持膜表面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。
具体的には、例えば、多官能性アミン水溶液を支持膜にコーティングする方法や支持膜を多官能性アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。
支持膜と多官能性アミン水溶液との接触時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上であり、また、好ましくは10分以下、より好ましくは3分以下である。
多官能性アミン水溶液を支持膜に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、複合半透膜形成後に液滴残存部分が欠点となって複合半透膜の除去性能が低下することを防ぐことができる。
液切りの方法としては、例えば、多官能性アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
次いで、多官能性アミン水溶液接触後の支持膜に、多官能性酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により分離機能層を形成する。
水と非混和性の有機溶媒溶液中の多官能性酸ハロゲン化物濃度は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上であり、また、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。多官能性酸ハロゲン化物濃度が0.01重量%以上であることで十分な反応速度が得られ、また、3重量%以下であることで副反応の発生を十分に抑制することができる。
水と非混和性の有機溶媒は、多官能性酸ハロゲン化物を溶解し、支持膜を破壊しないものが望ましく、多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。例えば、炭化水素系溶媒が挙げられ、単体であっても、混合物であってもよい。
有機溶媒の例として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の飽和炭化水素;IPソルベント1620、IPクリーンLXIPソルベント2028、エクソンモービル社製のISOPAR E、ISOPAR G、ISOPAR H、ISOPAR L等のイソパラフィン系溶媒;エクソンモービル社製のエクソールD30、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80等のナフテン系溶媒が挙げられる。
有機溶媒溶液には、他の多官能性アミン反応性モノマーや有機溶媒、アシル化触媒、界面活性剤、可溶化剤、錯化剤などが含まれていてもよい。例えば、他の多官能性アミン反応性モノマーとしては、ハロゲン化スルホニルおよび酸無水物から選択される少なくとも1つ、好ましくは2〜4のアミン反応性官能基を含む化合物、少なくとも1つのカルボキシ基と少なくとも1つのハロゲン化アシルを含む化合物が挙げられる。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、アセトン、酢酸エチルなどが挙げられる。アシル化触媒としては、DMFなどが挙げられる。
多官能性酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を支持膜へ接触させる方法は、多官能性アミン水溶液を支持膜へ被覆する方法と同様に行えばよい。
界面重縮合工程においては、支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆い、かつ、多官能性酸ハロゲン化物溶液を支持膜上に残存させておくことが好ましい。このため、界面重縮合を実施する時間は、好ましくは0.1秒以上3分以下であり、より好ましくは0.1秒以上1分以下である。界面重縮合を実施する時間が0.1秒以上3分以下であることで、支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆うことができ、かつ多官能性酸ハロゲン化物溶液を支持膜上に保持することができる。
界面重縮合によって支持膜上に分離機能層を形成した後は、余剰の溶媒を液切りする。液切りの方法は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法、送風機で風を吹き付けることで有機溶媒を乾燥除去する方法、水とエアーの混合流体(2流体)で過剰の有機溶媒を除去する方法等を用いることができる。
さらに、25℃以上80℃以下の純水で1分間以上洗浄処理する工程を付加することが好ましい。
3.複合半透膜の利用
本発明の複合半透膜は、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水から飲料水などを目的とした透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去性は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、本発明の複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.2MPa以上、4.1MPa以下が好ましい。
供給水温度は、高くなると塩除去性が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、35℃以下が好ましい。
また、供給水のpHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
複合半透膜によって処理される原水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L〜100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物等が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量/体積」で表されるか、1Lを1kgと見なして「重量比」で表される。定義によれば、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分から換算する。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
<1.多孔質支持体重量、複合半透膜重量の測定>
上述したとおり、分離機能層の重量は支持膜に比べて非常に小さいので、以下の実施例では分離機能層の重量を無視し、複合半透膜の重量から基材重量を減じた値を多孔質支持体の重量とみなした。
70℃の純水で5分間洗浄した複合半透膜(面積 0.1m)を25℃で10時間以上風乾させた。風乾したサンプルを、40℃の真空乾燥機で6時間乾燥させた。真空乾燥後の重量を電子天秤にて測定し、単位面積で除することで、単位面積当たりの複合半透膜の重量(g/m)を得た。
続いて、複合半透膜を25℃のアセトンに浸漬させることで、多孔質支持体を溶解した。溶け残った基材を、さらにアセトンでよく洗浄した後、25℃で10時間以上風乾および40℃の真空乾燥機で6時間乾燥させた。真空乾燥後の重量を測定し、単位面積で除することで基材重量(g/m)を算出した。最後に、複合半透膜重量から基材重量を減じることで、多孔質支持体の重量(g/m)を求めた。
<2.多孔質支持体の細孔容積の測定>
70℃の純水で1時間以上洗浄した複合半透膜(面積 0.1m)を25℃で10時間以上風乾し、さらに真空乾燥機にて40℃で6時間以上乾燥させ、2mm角サイズに裁断した。サンプルをガラス管に充填し、あらかじめ測定した空のガラス管重量と、サンプル充填後のガラス管重量(サンプル重量とガラス管重量との合計)との差からサンプル重量を測定した。サンプルを充填したガラス管を細孔分布測定装置にセットし、窒素ガスの吸着等温線を測定した。測定で得られた吸着等温線データをBJH法で解析し、細孔半径に応じた容積を求め、式(1)を用いて細孔容積を求めた。
装置: Microtrac BEL社製 高精度比表面積・細孔分布測定装置 BELSORP−mini II
測定方式:定容量式ガス吸着法
吸着ガス:窒素
測定温度:77K
解析ソフト:Microtrac BEL社製 BELMaster
細孔容積V=(半径10.6nm以上93.5nm以下の孔の容積合計V1)/(多孔質支持体重量Wp/複合半透膜重量Wc) (1)
<3.シアノ基割合の測定>
70℃の純水で1時間以上洗浄した複合半透膜(面積 0.1m)を25℃で風乾し、25℃のアセトン200mlに20時間浸漬させることで、多孔質支持体を溶解し、溶液を得た。次に、得られた溶液を、金属メッシュ(線径 0.03mm、300メッシュ、関西金網株式会社製)にてろ過して基材および分離機能層を除去した。続いて、エバポレーターを用いて得られたろ液からアセトンを除去し、不溶物を得た。不溶物を25℃の真空乾燥機で5時間乾燥した後、不溶物を再度アセトンに10重量%となるように溶解した。
得られた溶液をガラス基板上にアプリケータを用いて15mil(381μm)の厚みで塗布し、温度25℃、湿度50%の雰囲気下で12時間以上放置することでフィルム状のサンプルを得た。得られたサンプルを60℃の真空乾燥機で5時間乾燥してアセトンを完全に除去し、乾燥後のサンプルをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で吸光度分析した(透過法)。
得られた赤外吸収スペクトルに現れる下記ピークの吸収強度を用いて、式(2)からシアノ基割合を求めた。
1605cm−1:芳香族ビニル系単量体由来ベンゼン核の振動に帰属されるピーク
2240cm−1:シアン化ビニル系単量体由来−CN伸縮に帰属されるピーク
シアノ基割合=2240cm−1の吸収強度/1605cm−1の吸収強度 (2)
FT−IR:島津製作所製 IR Traxer−100
測定条件:アポダイズ関数 Happ−Genzel、分解能 4cm−1、スキャン回数 32回、測定範囲 600〜4000cm−1
解析条件:2200、2600、3800cm−1の3点を吸収強度ゼロとしてベースライン補正した後、ピークの吸収強度を読み取った。
<4.複合半透膜厚みの測定>
70℃の純水で5分間洗浄した複合半透膜を25℃で風乾させた。乾燥したサンプルを、デジタルシックネスゲージ(株式会社テクロック製 SMD−565J−L)にて、任意の20箇所について厚みを測定して、その相加平均を、複合半透膜厚みとして算出した。
<5.多孔質支持体厚みの測定>
70℃の純水で5分間洗浄した支持膜を凍結割断法で切断して、5つの切片を得た。それぞれの切片から、小片サンプル10枚を採取し、サンプルに白金を薄くコーティング後、高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製S−5500型走査型電子顕微鏡)を用いて、5kVの加速電圧で、100〜500倍で断面写真を撮影した。撮影で得た各画像において、スケールで多孔質支持体の厚さを測定した。1枚の支持膜について得られた50個の値から、相加平均を算出し、これを多孔質支持体厚みとした。
<6.支持膜の純水透過係数の測定>
まず、作製した支持膜を70℃の純水で5分間洗浄した。次に、直径4.3cmの円形に切り抜き、切り抜いたサンプルを撹拌型ウルトラホルダー(アドバンテック東洋株式会社製 UHP−43K)にセットした(有効ろ過面積:10.9cm)。続いて、セル内に25℃の純水を入れ、キャップを取り付けた後、窒素で100kPaとなるように昇圧した。最後に、一定時間における純水透過量を測定し、以下の式から純水透過係数(×10−9/m・s・Pa,25℃)を算出した。
純水透過係数=純水透過量/(膜面積×採水時間×供給圧力)
<7.多孔質支持体中のTHF可溶分の重量平均分子量Mwの測定>
70℃の純水で1時間以上洗浄した支持膜または複合半透膜(面積 0.1m)を風乾し、25℃のTHF(200ml)に4時間浸漬させることで、多孔質支持体部分を溶解し、共重合体溶液を得た(浸漬時は250ml容器を使用)。次に、得られた溶液を、金属メッシュ(線径 0.03mm、メッシュ 300、関西金網株式会社製)にてろ過して基材および分離機能層を除去した。
続いて、得られたろ液を、遠心分離機(KUBOTA 6900)で8800rpm(12,300G)、5℃で40分間遠心分離した後、上澄み液を分取した。得られた上澄み液について、GPCを用いて以下の条件で測定し、重量平均分子量(Mw)を算出した。なお、検量線はポリスチレンを用いた。
溶媒:テトラヒドロフラン
装置:Waters製 2695セパレーションモジュール
カラム:東ソー製 TSKgel II ZM−M、Super II ZM−N、SuperHZ−L(計3本)
カラム温度:40℃
溶媒流量:0.35ml/分
検出器:Waters製 2414示差屈折率検出器
<8.膜性能評価>
以下に示す方法で、複合半透膜の性能を評価した。
(塩除去性)
複合半透膜に、温度25℃、pH7に調整した供給水(NaCl濃度 500ppm)を操作圧力0.5MPaで供給して膜ろ過処理を3時間行ない、その後の供給水および透過水の電気伝導度を東亜ディーケーケー株式会社製マルチ水質計(MM60R)で測定した。次に、事前に作成した検量線を用いて、この電導度を換算しNaCl濃度を算出した。このNaCl濃度から、次の式により塩除去性すなわちNaCl除去率を求めた。
NaCl除去率(%)=100×{1−(透過水中のNaCl濃度/供給水中のNaCl濃度)}
(膜透過流束(Flux))
前項の試験において、一定時間における膜透過水量を測定し、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)に換算し、膜透過流束(m/m/日)として表した。
<9.耐圧性評価>
複合半透膜に、温度25℃、pH7に調整した供給水(NaCl濃度 2000ppm)を操作圧力1.03MPaで供給して膜ろ過処理を3時間行ない、その後の供給水および透過水の電気伝導度を東亜ディーケーケー株式会社製マルチ水質計(MM60R)で測定した。次に、操作圧力を3.0MPaとして膜ろ過処理を1時間行い、その後の供給水および透過水の電気伝導度を東亜ディーケーケー株式会社製マルチ水質計(MM60R)で測定した。事前に作成した検量線を用いて、この電導度を換算しNaCl濃度を算出し、このNaCl濃度から、NaCl除去率を求めた。3.0MPaのときのNaCl除去率から1.03MPaのときのNaCl除去率を引いた値(変化量)を耐圧性の指標とし、変化量が−0.5%超をA、変化量が−0.5%以下−1.5%超をB、変化量が−1.5%以下をCと判定した。
各実施例、比較例に使用した材料を以下に示す。
(製造例1)懸濁重合用媒体(メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体)
メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、イオン交換水1800重量部を反応器中に仕込み、反応器中の気相を窒素ガスで置換した。よく撹拌しながら70℃に保ち、重合率が99%に到達した時点で重合を終了し、メタクリル酸メチルとアクリルアミドの共重合体の水溶液を得た。この水溶液に、水酸化ナトリウム35重量部とイオン交換水15000重量部を加え、0.6重量%のメタクリル酸メチルとアクリルアミドとの共重合体の水溶液を得た。70℃で2時間撹拌してケン化させた後、室温まで冷却し、懸濁重合用の媒体の水溶液を得た。
(製造例2)ビニル系共重合体(A)
20Lのステンレス製オートクレーブに、製造例1で製造したメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体水溶液6重量部、純水150重量部を入れて400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、スチレン72重量部、アクリロニトリル28重量部の合計100重量部とt−ドデシルメルカプタン0.40重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部の混合溶液を撹拌下の系内に添加し、60℃に昇温して重合を開始した。重合開始後、30分かけて反応温度を65℃まで昇温した後、3時間かけて100℃の温度まで昇温した。その後、系内を室温まで冷却し、重合物の分離、洗浄および乾燥をすることでビニル系共重合体Aを得た。このビニル系共重合体Aの重量平均分子量Mwは、100,000であった。
(製造例3)ビニル系共重合体(B)
t−ドデシルメルカプタンを0.30重量部に変更したこと以外は、製造例2と同様にしてビニル系共重合体Bを得た。このビニル系共重合体Bの重量平均分子量Mwは、140,000であった。
(製造例4)ビニル系共重合体(C)
t−ドデシルメルカプタンを0.20重量部に変更したこと以外は、製造例2と同様にしてビニル系共重合体Cを得た。このビニル系共重合体Cの重量平均分子量Mwは、180,000であった。
(製造例5)ビニル系共重合体(D)
t−ドデシルメルカプタンを0.15重量部に変更したこと以外は、製造例2と同様にしてビニル系共重合体Dを得た。このビニル系共重合体Dの重量平均分子量Mwは、220,000であった。
(製造例6)ビニル系共重合体(E)
t−ドデシルメルカプタンを0.10重量部に変更したこと以外は、製造例2と同様にしてビニル系共重合体Eを得た。このビニル系共重合体Eの重量平均分子量Mwは、320,000であった。
(製造例7)ビニル系共重合体(F)
スチレン63重量部、アクリロニトリル37重量部に変更したこと以外は、製造例2と同様にしてビニル系共重合体Fを得た。このビニル系共重合体Fの重量平均分子量Mwは、110,000であった。
(製造例8)ビニル系共重合体(G)
スチレン69重量部、アクリロニトリル31重量部に変更したこと以外は、製造例2と同様にしてビニル系共重合体Gを得た。このビニル系共重合体Gの重量平均分子量Mwは、110,000であった。
(製造例9)ビニル系共重合体(H)
スチレン76重量部、アクリロニトリル24重量部に変更したこと以外は、製造例2と同様にしてビニル系共重合体Hを得た。このビニル系共重合体Hの重量平均分子量Mwは、100,000であった。
(製造例10)ビニル系共重合体(I)
スチレン76重量部、アクリロニトリル24重量部、t−ドデシルメルカプタンを0重量部に変更したこと以外は、製造例2と同様にしてビニル系共重合体Iを得た。このビニル系共重合体Iの重量平均分子量Mwは、340,000であった。
(製造例11)ビニル系共重合体(J)
スチレン80重量部、アクリロニトリル20重量部、t−ドデシルメルカプタンを0重量部に変更したこと以外は、製造例2と同様にしてビニル系共重合体Jを得た。このビニル系共重合体Jの重量平均分子量Mwは、260,000であった。
<比較例1>
製造例2で得られたビニル系共重合体Aを16重量%となるようにDMFに加え、メカニカルスターラーで攪拌しながら70℃で3時間加熱保持することで樹脂溶液を調製した。
調製した樹脂溶液は25℃まで冷却し、金属メッシュ(線径 0.03mm、メッシュ 400、関西金網株式会社製)を用いてろ過した。その後、抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布(厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec)上に樹脂溶液を100μmの厚みで塗布した。塗布してから3秒後に20℃の純水中に10秒間浸漬して相分離させ、続いて70℃の純水で5分間洗浄することによって支持膜を得た。
得られた支持膜を、純水で調整したm−フェニレンジアミン(m−PDA)の2.0重量%水溶液中に10秒間浸漬した後、膜面が鉛直になるようにゆっくりと引き上げた。エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、膜面が水平となるように支持膜を置き、トリメシン酸クロリド0.07重量%を含む25℃のn−デカン溶液を膜表面が完全に濡れるように塗布した。
30秒間静置した後、膜から余分な溶液を除去するために膜面を1分間鉛直に保持して液切りし、送風機を使い25℃の空気を吹き付けて乾燥させた。その後、70℃の純水で5分間洗浄することで、複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表1に示す。
Figure 2020066521
Figure 2020066521
<比較例2、実施例1〜3>
比較例1において、ビニル系共重合体Aの代わりに比較例2ではBを、実施例1ではCを、実施例2ではDを、実施例3ではEを用いた以外は、比較例1と同様にして、比較例2、実施例1〜3の複合半透膜をそれぞれ得た。得られた複合半透膜の膜性能を表1に示す。
<実施例4>
比較例1において、DMFの代わりにDMSOを用いた以外は、比較例1と同様にして、実施例4の複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表1に示す。
<実施例5>
比較例2において、DMFの代わりにDMSOを用いた以外は、比較例2と同様にして、実施例5の複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表1に示す。
<実施例6>
実施例1において、DMFの代わりにDMSOを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表1に示す。
<実施例7>
実施例2において、DMFの代わりにDMSOを用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例7の複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表2に示す。
<実施例8>
実施例3において、DMFの代わりにDMSOを用いた以外は、実施例3と同様にして、実施例8の複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表2に示す。
<実施例9>
実施例8において、ビニル系共重合体Eの濃度を20重量%とした以外は、実施例8と同様にして、実施例9の複合半透膜を得た。得られた複合半透膜の膜性能を表1に示す。
<実施例10〜14>
実施例4において、ビニル系共重合体Aの代わりに実施例10ではFを、実施例11ではGを、実施例12ではHを、実施例13ではIを、実施例14ではJを用いた以外は、実施例4と同様にして、実施例10〜14の複合半透膜をそれぞれ得た。得られた複合半透膜の膜性能を表2に示す。
実施例1〜9より、多孔質支持体の細孔容積を0.100cm/g以上とすることで、透過流束が高い複合半透膜が得られている。また、実施例10〜14より、多孔質支持体のシアノ基割合を1.50以下とすることで、透過流束が高い複合半透膜が得られている。以上から、本発明により、高い透水性能を有する複合半透膜を得られたことが確認された。
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2018年9月28日出願の日本特許出願(特願2018−183739)、及び2019年6月27日出願の日本特許出願(特願2019−119648)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の複合半透膜は、特に、かん水の淡水化や水道水の浄化に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 基材および前記基材上の多孔質支持体を有する支持膜と、前記多孔質支持体上の分離機能層とを備える複合半透膜であって、
    前記多孔質支持体が、シアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体を含み、かつ、
    前記多孔質支持体における半径10.6nm以上93.5nm以下の細孔容積が0.100cm/g以上である複合半透膜。
  2. 前記多孔質支持体において、赤外吸収スペクトルにおける吸収強度により下記式で表されるシアノ基割合が1.50以下である、請求項1に記載の複合半透膜。
    シアノ基割合=2240cm−1の吸収強度/1605cm−1の吸収強度
  3. 前記共重合体の重量平均分子量Mwが180,000以上1,000,000以下である、請求項1又は2に記載の複合半透膜。
  4. 前記共重合体の重量平均分子量Mwが220,000以上1,000,000以下である、請求項3に記載の複合半透膜。
  5. 前記共重合体が、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  6. 前記シアノ基割合が、1.35以下である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  7. (a)重量平均分子量Mwが220,000以上1,000,000以下のシアン化ビニル系単量体と芳香族ビニル系単量体との共重合体を良溶媒に溶解させた溶液を、基材上に配置する工程、
    (b)前記共重合体の非溶媒を含有する凝固浴に前記溶液を接触させることで、前記共重合体の多孔質支持体を得る工程、及び
    (c)前記多孔質支持体上に分離機能層を形成する工程、
    を含む複合半透膜の製造方法。
  8. 前記良溶媒がジメチルスルホキシドである、請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記共重合体がアクリロニトリルとスチレンとの共重合体である、請求項7又は8に記載の製造方法。
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