JP2021003683A - 複合半透膜 - Google Patents

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宏明 田中
宏樹 峰原
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宏樹 峰原
貴史 小川
Takashi Ogawa
貴史 小川
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Abstract

【課題】高い透水性と運転中における透水性保持率に優れる複合半透膜を提供する。【解決手段】本発明の複合半透膜は、基材と、前記基材上に位置する多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備え、アゾ化合物が該分離機能層に保持されており前記分離機能層中の25℃、相対湿度75%条件下における飽和含水率が15%以上25%以下であり、前記分離機能層の黄色度が10以上30以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜に関する。本発明によって得られる複合半透膜は、例えば海水またはかん水の淡水化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。
膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合、または工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、微多孔性支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、微多孔性支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものとの2種類がある。
なかでも、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を多孔性支持膜上に被覆して得られる複合半透膜(特許文献1)は、透水性および除去性の高い分離膜として広く用いられている。
日本国特開2001−79372号公報
しかしながら、従来の複合半透膜は、ある一定の透水性を有する膜を作製すると膜の運転中に透水性が著しく低下する問題があった。
本発明は透水性、および運転中における透水性保持率に優れる複合半透膜の提供を目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。
[1]基材と、前記基材上に位置する多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、アゾ化合物が該分離機能層に保持されており
前記分離機能層中の25℃、相対湿度75%条件下における飽和含水率が15%以上25%以下であり、
前記分離機能層の黄色度が10以上30以下である複合半透膜。
[2]前記分離機能層中に含まれるアルコール類のヒドロキシル基総数が0.3×10-7mol/cm2以上5.0×10-6mol/cm2以下である[1]に記載の複合半透膜。
[3]前記分離機能層中に含まれるアルコール類の沸点が150℃以上である[1]または[2]に記載の複合半透膜。
[4]前記分離機能層中に含まれるアルコール類が多価アルコールである[1]から[3]のいずれかに記載の複合半透膜。
本発明のアゾ化合物が分離機能層に保持されており、前記分離機能層中の25℃、相対湿度75%条件下における飽和含水率が15%以上25%以下であり、前記分離機能層の黄色度が10以上30以下である複合半透膜は、アゾ基により分離機能層中の共役系が延長された構造をとることで、高い飽和含水率に由来する膜の透水性が、運転中に損なわれるのを抑制することができる。
(1)複合半透膜
以下に述べる複合半透膜は、基材と、基材上に位置する多孔性支持層と、多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備える。
(1−1)微多孔性支持膜
本発明において微多孔性支持膜は、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有する後述の分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持膜の孔のサイズおよび分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持膜が好ましい。
本発明において、微多孔性支持膜は、基材とその上に形成された多孔性支持体から構成される。
(1−1−1)基材
上記基材としては、例えば、ポリエステルまたは芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種を主成分とする布帛が例示される。
基材に用いられる布帛としては、長繊維不織布または短繊維不織布を好ましく用いることができる。基材には、基材上に高分子重合体の溶液を流延した際にそれが過浸透により裏抜けしたり、基材と多孔性支持体が剥離したり、さらには基材の毛羽立ち等により膜の不均一化またはピンホール等の欠点が生じたりすることがないような優れた製膜性が要求される。そのため、基材には長繊維不織布をより好ましく用いることができる。
長繊維不織布としては、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布などが挙げられる。基材が長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化または膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜を連続製膜する工程においては、基材の製膜方向に張力がかけられることからも、基材としては、寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
特に、基材の多孔性支持体と反対側に配置される繊維の配向が、製膜方向に対して縦配向であることにより、基材の強度を保ち、膜破れ等を防ぐことができるので好ましい。ここで、縦配向とは、繊維の配向方向が製膜方向と平行であることを言う。逆に、繊維の配向方向が製膜方向と直角である場合は、横配向と言う。
不織布基材の繊維配向度としては、多孔性支持体と反対側における繊維の配向度が0°以上25°以下であることが好ましい。ここで繊維配向度とは、微多孔性支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
複合半透膜の製造工程およびエレメントの製造工程には、加熱工程が含まれるが、加熱により微多孔性支持膜または複合半透膜が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において、幅方向には張力が付与されていないので、幅方向に収縮しやすい。微多孔性支持膜または複合半透膜が収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。
不織布基材において多孔性支持体と反対側に配置される繊維と、多孔性支持体側に配置される繊維との配向度差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することができ好ましい。
基材の通気度は2.0cc/cm/sec以上であることが好ましい。通気度がこの範囲だと、複合半透膜の透過水量が高くなる。これは、微多孔性支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで多孔性支持体の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量または拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
また、基材の厚みは、10μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上120μm以下の範囲内である。
(1−1−2)多孔性支持体
本発明における多孔性支持体は、上記基材上に位置する。
多孔性支持体の素材としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。
ここでセルロース系ポリマーとしては、酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。ポリスルホン、酢酸セルロース及びポリ塩化ビニル、またはそれらを混合したものがより好ましく使用され、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンを使用するのが特に好ましい。
また、多孔性支持体の厚みは、10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは20〜100μmの範囲内である。多孔性支持体の厚みが10μm以上であることで、良好な耐圧性が得られると共に、欠点のない均一な支持膜を得ることができるので、このような多孔性支持体を備える複合半透膜は、良好な塩除去性能を示すことができる。多孔性支持体の厚みが200μm以下であることで、製造時の未反応物質の残存量が増加せず、透過水量が低下することによる耐薬品性の低下を防ぐことができる。
上記基材に上記多孔性支持体を形成した微多孔性支持膜の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。本発明の複合半透膜が、十分な機械的強度および充填密度を得るためには、微多孔性支持膜(基材と多孔性支持膜の合計)の厚みは30〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50〜250μmの範囲内である。
微多孔性支持膜の形態は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡及び原子間顕微鏡等により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持体を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
本発明に使用する微多孔性支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)または、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することもできる。
上記基材および多孔性支持体、複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。また、後述する分離機能層の厚みは微多孔性支持膜と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを微多孔性支持膜の厚みとみなすこともできる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持体の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
なお、基材および多孔性支持体、複合半透膜の厚みを上述した顕微鏡で測定してもよい。1つのサンプルについて任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。なお、本発明における厚みおよび孔径は平均値を意味するものである。
(1−2)分離機能層
本発明の複合半透膜において、実質的にイオン等の分離性能を有するのは、分離機能層である。
本発明における分離機能層は、ポリアミドを主成分とする薄膜を含有する。分離機能層を構成するポリアミドは、例えば、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合反応により形成することができる。ここで、多官能性アミンまたは多官能性酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、通常0.01〜1μmの範囲内、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内である。
ここで、多官能性アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいい、例えば、2個のアミノ基がオルト位またはメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。
中でも、膜の選択分離性および透過性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンであることが好ましい。このような多官能芳香族アミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン等が好適に用いられる。中でも、入手の容易性または取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能性アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
多官能性酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物としては、例えば、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができる。
2官能酸ハロゲン化物としては、例えば、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。
多官能性アミンとの反応性を考慮すると、多官能性酸ハロゲン化物は多官能性酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能性芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性または取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能性酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
本発明の分離機能層は25℃、相対湿度75%条件下における飽和含水率が15%以上25%以下である。ここで飽和含水率は分離機能層を温度25℃、相対湿度75%条件下で平衡化した際の分離機能層重量aと絶乾後の分離機能層重量bとの差分から以下の式で計算される。
飽和含水率 (%) = (a−b)/b×100
一定温度条件下での相対湿度の調製にはJIS B 7920:
2000に記載されている飽和塩法を用いることができる。
また、絶乾方法はJIS P 8230:2005に記載の方法を用いることができる。
分離機能層の水の保持力が高く飽和含水率が15%以上となることで、複合半透膜は極めて高い透水性を示し、また25%以下であることで溶質の分離性を著しく損なうことがない。すなわち極めて高い透水性と実用的な分離性を兼ね備えた複合半透膜となる。
分離機能層の黄色度は、10以上30以下であることが好ましい。
黄色度とは、日本工業規格JIS K7373:2006に規定されているポリマーの無色または白色から色相が黄方向に離れる度合いのことで、プラスの量として表される。
なお、ポリアミド分離機能層の黄色度は、カラーメーターにより測定できる。複合半透膜をポリアミド分離機能層面が下になるようにガラス板に乗せてから、微多孔性支持膜のみを溶解する溶媒にて微多孔性支持膜を溶解・除去し、ガラス板上に残る分離機能層試料の透過測定によって測定することができる。なお、複合半透膜をガラス板に乗せる際、微多孔性支持膜を強化するための布帛は、あらかじめ剥離しておくことが好ましい。
カラーメーターは、スガ試験器株式会社製SMカラーコンピュータSM−7などが使用できる。
ポリアミド分離機能層の黄色度は、ポリアミド分離機能層が有する芳香環に、電子供与基と電子吸引基を有する構造、および/または共役を延長する構造を持つことで大きくなる。電子供与基とは、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基が挙げられる。電子吸引基とは、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、アルデヒド基、アシル基、アミノカルボニル基、アミノスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基が挙げられる。共役を延長する構造とは、例えば、多環芳香環、多環複素環、エテニレン基、エチニレン基、アゾ基、イミノ基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基およびこれらの構造の組み合わせが挙げられる。これらの構造を持つことにより、ポリアミド分離機能層の黄色度は大きくなっていく。
本発明におけるアゾ化合物とは、アゾ基(-N=N-)を有する有機化合物であり、第一級アミノ基を含む分離機能層を有する半透膜を、第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬に接触させた際に、分離機能層内で生成し、保持される。
ここで第一級アミノ基を含む分離機能層とは、少なくとも1つの第一級アミノ基(-NH2)を持つ化合物またはその塩が分離機能層中に存在することをいう。該化合物の種類は特に限定されないが、例えば、芳香族アミンや脂肪族アミン、ポリビニルアミン、末端アミノ基を持つポリアミド、ペプチドなどである。取り扱いの簡便さから第一級アミノ基は芳香族アミンであることが好ましい。これら第一級アミノ基は分離機能層の構成成分であっても良いし、分離機能層と化学結合せずに分離機能層中に第一級アミノ基を持つ化合物が存在することでも良い。
分離機能層の黄色度が10以上であるということは充分な量のアゾ基が存在するので、分離機能層の網目構造内にアルコールを充分に保持し、かつ使用中の半透膜からのアルコールの脱離を抑制することができる。また、黄色度が30以下であることで、適度な緻密性が得られ、結果として良好な初期透水性が得られる。
また本発明において、分離機能層中に含まれるアルコール類のヒドロキシル基総数が0.3×10-7mol/cm2以上5.0×10-6mol/cm2以下であることが好ましい。
分離機能層中にアルコール類のヒドロキシル基を前記範囲で含有することでヒドロキシル基と水との高い親和性から、分離機能層中の飽和含水率を15%以上へ高めることができる。
分離機能層中に含まれるアルコール類のヒドロキシル基総数は、95℃の熱水中に分離機能層を2時間浸漬させた際の水中のアルコール類をガスクロマトグラフ質量分析計で同定および定量することによりアルコール類のmol数を算出することから求まる。
前記アルコール類は沸点が150℃以上であることが好ましい。沸点が150℃以上のアルコールは、分離機能層に温度や圧力などの外部刺激が加わった際にも分離機能層から脱離しにくいので、分離機能層の飽和含水率を15%以上に維持し、高い透水性を保つことができる。
さらに、前記アルコール類はヒドロキシル基を複数有する多価アルコールであることが好ましい。
分離機能層内のアルコール分子が複数のヒドロキシル基を有していることで、水との親和性が高い部位を多くすることができ、結果、分離機能層の飽和含水率向上に寄与するためである。
本発明におけるアルコール類は、高沸点の多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、などがある。
(2)複合半透膜の製造方法
次に、本発明の複合半透膜の製造方法について説明する。
複合半透膜の製造方法は、
(a)多孔性支持層上に界面重合により架橋ポリアミドを含む層を形成する工程と、
(b)前記架橋ポリアミドを含む層にアルコールを含浸させる工程と、
(c)前記工程(b)の後に、前記架橋ポリアミドを含む層を亜硝酸カップリング処理する工程と、
を有する。
上記工程(a)の前に基材上に多孔性支持層を形成することで微多孔性支持膜を得る工程は、公知の技術が適用できるので説明を省略する。
(2−1)架橋ポリアミドの形成:工程(a)
本工程では、多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する、水と非混和性の有機溶媒溶液とを用い、微多孔性支持膜の表面で界面重縮合を行うことによりポリアミドの骨格を形成する。
ここで、多官能アミン水溶液における多官能アミンの濃度は0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜5.0重量%の範囲内である。多官能アミンの濃度をこの範囲内とすることで適度に反応を進行させることができ、一方、分離機能層が過度に厚くならず十分な透水性を確保できる。多官能アミン水溶液には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。界面活性剤は、微多孔性支持膜表面の濡れ性を向上させ、多官能アミン水溶液と有機溶媒との間の界面張力を減少させる効果がある。有機溶媒は界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重縮合反応を効率よく行える場合がある。
界面重縮合を微多孔性支持膜上で行うために、まず、上述の多官能アミン水溶液を微多孔性支持膜に接触させる。接触は、微多孔性支持膜面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能アミン水溶液を微多孔性支持膜にコーティングする方法や微多孔性支持膜を多官能アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。微多孔性支持膜と多官能アミン水溶液との接触時間は、1秒〜10分間の範囲内であることが好ましく、10秒〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。
多官能アミン水溶液を微多孔性支持膜に接触させたあとは、膜上に液滴が残らないように十分に液切りするのが好ましい。膜形成後に膜欠点の原因となる液滴が残らないので膜性能の低下を招きにくい。液切りの方法としては、たとえば、特開平2-78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の微多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の一部を除去することもできる。
次いで、多官能アミン水溶液接触後の微多孔性支持膜に、多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を接触させる。
有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物の濃度は、0.01〜10重量%の範囲内であると好ましく、0.02〜2.0重量%の範囲内であるとさらに好ましい。この範囲内であると反応の進行が遅くならず、副反応が起こりにくい。さらに、この有機溶媒溶液にN,N−ジメチルホルムアミドのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能酸ハロゲン化物を溶解し、微多孔性支持膜を破壊しないことが好ましい。また、この有機溶媒は多官能アミンおよび多官能酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればいずれであってもよい。好ましい例としては、液状の炭化水素、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられるが、オゾン層を破壊しない物質であることや入手のしやすさ、取り扱いの容易さ、取り扱い上の安全性などを考慮すると、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカンなど、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、1−デセンなどの単体あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
多官能酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を、多官能アミン水溶液接触後の微多孔性支持膜と接触させる方法は、前記した多官能アミン水溶液の微多孔性支持膜への被覆方法と同様に行えば良い。
こうして接触した有機溶媒溶液と水溶液との界面において、多官能酸ハロゲン化物と、多官能アミンとの界面重縮合が進行することで、架橋ポリアミドが形成される。
架橋ポリアミドの層が形成された後は、余剰の溶媒を液切りするとよい。液切りの方法は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1〜5分の間にあることが好ましく、1〜3分間であるとより好ましい。1分以上であることでポリアミドの形成が充分に進み、5分以下であることで過乾燥による欠点発生が抑制される。
(2−2)アルコール処理工程(b) こうして形成された架橋ポリアミドを含む層にアルコールを含浸させる。なお、本形態では、分離機能層にアルコールを含有させる工程として、工程(a)で形成した架橋ポリアミドの層にアルコールを含浸させるが、この処理に代えて、あるいはこの処理と併せて、工程(a)の界面重縮合時の溶媒にアルコールを含ませてもよい。この場合は、アルコールは多官能アミン水溶液に含ませることが好ましい。多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液に含ませると界面重合前に多官能酸ハロゲン化物と反応を起こし、多官能酸ハロゲン化物濃度を著しく低下させるためである。
本形態において、アルコールはそのままでもよいし、水溶液として用いられてもよい。含浸は、アルコールまたはその水溶液を架橋ポリアミドの層に接触させることで実行される。
本工程において、アルコールまたはその水溶液は、50℃以上または60℃以上であることが好ましい。これによって、分離機能層の分子運動性を向上させ、アルコールが分離機能層深部まで浸透しやすくなるためである。
アルコールの種類については上述したとおりである。
本工程により、アルコールが架橋ポリアミドの網目構造内に入り込み、孔が広がり、その空間体積の増大およびアルコールのヒドロキシル基の存在により水を保持しやすくなることで飽和含水率が向上する。
(2−3)亜硝酸カップリング処理:工程(c)
本工程により、架橋ポリアミドの芳香環に、電子吸引基を有する構造または共役を延長する構造の少なくとも一方を付与する。
ポリアミド分離機能層に上記構造を付与するためには、上記構造を持つ化合物をポリアミド分離機能層に担持させる方法、および/またはポリアミド分離機能層を化学的に処理し、上記構造を付与させる方法が挙げられる。上記構造を安定的に保持させるためには、ポリアミド分離機能層を化学的に処理し、上記構造を付与させる方法が好ましい。
分離機能層を化学的に処理する方法としては、該分離機能層が第一級アミノ基を有する半透膜を、第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬に接触させる方法が挙げられる。生成したジアゾニウム塩またはその誘導体は、芳香族化合物と反応してアゾ基を形成する。このアゾ基により共役構造が延長されて長波長側に吸収がシフトするため、分離機能層は黄色〜橙色を呈色する。
第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬としては、亜硝酸および/またはその塩、ニトロシル化合物などの水溶液が挙げられる。亜硝酸やニトロシル化合物の水溶液は気体を発生して分解しやすいので、例えば亜硝酸塩と酸性溶液との反応によって亜硝酸を逐次生成することが好ましい。
一般に亜硝酸塩は、水素イオンと反応して亜硝酸(HNO)を生成し、20℃近辺の温度で水溶液のpHが7以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下で効率よく亜硝酸を生成する。中でも、取り扱いの簡便性から水溶液中で塩酸または硫酸と反応させた亜硝酸ナトリウムの水溶液が特に好ましい。
膜と接触させる試薬中の亜硝酸や亜硝酸塩の濃度は、0.01〜1重量%の範囲とするのが好ましい。亜硝酸や亜硝酸塩濃度が0.01%〜1重量%の範囲であれば溶液の取り扱いが容易で、十分な効果を得ることができる。また、溶液温度は15℃以上が好ましい。この濃度、温度の範囲内であると、十分な改質効果が得られる。
亜硝酸および/またはその塩を含む試薬の接触は、半透膜面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、たとえば、亜硝酸含有水溶液を半透膜にコーティングする方法や半透膜を亜硝酸および/またはその塩を含む試薬に浸漬する方法を挙げることができる。半透膜と亜硝酸および/またはその塩を含む試薬との接触時間は、ジアゾニウム塩および/またはその誘導体が生成する時間であればよく、高濃度では短時間で処理が可能であるが、低濃度であると長時間必要である。そのため、上記濃度の溶液では1〜10分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であることがさらに好ましい。
これは第一級アミノ基と亜硝酸および/またはその塩を含む試薬の反応により生じたジアゾニウム塩により、分離機能層内にアゾ化合物が生じることで、分離機能層は黄色〜褐色に着色される。
前記黄色度を10以上30以下にする製造方法は、特に限定されないが、例えば、微多孔性支持膜上に分離機能層を形成した後、亜硝酸および/またはその塩を含む試薬に該分離機能層を接触させる前に、多官能アミンが残存した状態とする方法、および/または、前記反応により生じたジアゾニウム塩との反応性試薬に該分離機能層を接触させる方法が好ましく採用できる。
分離機能層を亜硝酸および/またはその塩を含む試薬に接触させる前に、多官能アミンが残存した状態とする方法としては、たとえば微多孔性支持膜上に分離機能層を形成した後、半透膜の洗浄を行わずに亜硝酸および/またはその塩を含む試薬に該分離機能層を接触させる方法や、微多孔性支持膜上に分離機能層を形成した後、再度多官能アミン水溶液に接触させる方法が挙げられる。なお、それらの際に半透膜内に残存する多官能アミン濃度は30×10−6〜160×10−6mol/gの範囲内であることが好ましい。
分離機能層を亜硝酸および/またはその塩を含む試薬に接触させる前に、多官能アミンが残存した状態とすることで、第一級アミノ基が分離機能層内に十分に存在するため、亜硝酸および/またはその塩を含む試薬に該分離機能層を接触させた際に、分離機能層内でアゾ化合物が生成する。このアゾ化合物は、多官能アミンの状態に比べて分子量が増加し、分離機能層の孔径よりも大きな構造となり、分離機能層内部に保持されることが好ましい。分離機能層内部にアゾ化合物が保持されることで、分離機能層中の空間を充填する効果がある。
亜硝酸および/またはその塩を含む試薬を半透膜に接触させた後は、さらに水と接触させることで、ジアゾニウム塩またはその誘導体の一部を、フェノールに変換することが好ましい。水の他にも、ジアゾニウム塩との反応性試薬と反応させることで膜の特性を様々に変えることが可能である。ここで用いる反応性試薬とは、塩化物イオン、臭化物イオン、シアン化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化ホウ素酸、次亜リン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸イオン、芳香族アミン、硫化水素、チオシアン酸等が挙げられる。塩化物イオン、臭化物イオン、シアン化物イオンはそのままでは反応性が十分に高くないので塩化銅を共存させることが好ましい。たとえば、次亜リン酸のような還元剤を用いるとアミノ基を水素に置換することが可能となる。好ましくは亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンである。亜硫酸水素ナトリウムと反応させると瞬時に置換反応が起こり、アミノ基がスルホ基に置換される。生成したジアゾニウム塩を、水との反応と、反応性試薬との反応を制御することで目的に応じた半透膜を作ることができる。
なお、分離機能層の黄色度やアゾ化合物量は、亜硝酸および/またはその塩を含む試薬での処理条件(濃度、pH、処理時間、温度)によっても変化するため、亜硝酸および/またはその塩を含む試薬での処理条件は、本発明の範囲内になるように適宜変更する必要がある。
(2−4)その他の工程
複合半透膜の製造方法は、上述した各工程以外に、架橋ポリアミドの形成後に、40〜100℃の範囲内、好ましくは60〜100℃の範囲内で1〜10分間、より好ましくは2〜8分間、膜を熱水処理する工程を有することが好ましい。この工程を行うことで、複合半透膜の溶質阻止性能および透水性をより一層向上させることができる。この工程は、上記工程(b)と(c)の間で行われることが好ましい。
(3)複合半透膜の利用
このように製造される本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜およびそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプまたは、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.1MPa以上、10MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると塩除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
本発明に係る複合半透膜によって処理される原水としては、例えば、海水、かん水、排水等の50mg/L〜100g/Lの塩(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、塩は総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例および比較例における測定は次のとおり行った。
<飽和含水率>
複合半透膜1mから基材を物理的に剥離させ、多孔性支持層と分離機能層を回収した。25℃で24時間静置することで乾燥させた後、ジクロロメタンの入ったビーカー内に少量ずつ加えて撹拌し、多孔性支持層を構成するポリマーを溶解させた。ビーカー内の不溶物を濾紙で回収した。この不溶物をジクロロメタンの入ったビーカー内に入れ攪拌し、ビーカー内の不溶物を回収した。この作業をジクロロメタン溶液中に多孔性支持層を形成するポリマーの溶出が検出できなくなるまで繰り返した。回収した分離機能層は真空乾燥機で乾燥させ、残存するジクロロメタンを除去した。
得られた分離機能層を25℃のデシケーター内に塩化ナトリウムの飽和水溶液(40g/100mL)、とともに相対湿度75%条件下で48時間静置させ、湿潤状態の重量aを測定後、真空乾燥機で8時間乾燥させ、乾燥状態の重量bを測定し、飽和含水率 (%) = (a−b)/b×100を求めた。
(黄色度)
複合半透膜5 cm×5 cmから基材を物理的に剥離させ、ガラス板に載せた後、ジクロロメタンを少量ずつ滴下し多孔性支持層を構成するポリマーを溶解させた。その後ガラス板上の分離機能層をカラーメーターで透過測定し、黄色度を求めた。
(ヒドロキシ基総数)
温度25℃、pH6.5に調整した純水を操作圧力0.5 MPaで2時間複合半透膜に供給し、分離機能層外部に存在するアルコール類を洗浄した。その後計400cm2の複合半透膜を1L、95℃の熱水中に2時間浸漬させた。浸漬後の水溶液を常温に戻したのち、ガスクロマトグラフ質量分析計(装置:(株)島津製作所社製 GC-MS QP2010 カラム:アジレント・テクノロジー(株)社製 DB-WAX)を用い水溶液中に含まれるアルコール類をマススペクトルから同定した。同定したアルコール類については、所定濃度における検量線を作成し、水溶液中のアルコール類濃度を算出することで分離機能層内に含まれるアルコール類の種類と濃度(mol/cm2)を求めた。その後同定したアルコール類の化学構造からヒドロキシル基の総数(mol/cm2)を求めた。
(膜透過流束)
供給水(塩化ナトリウム溶液)の膜透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m/m/d)を表した。
(塩除去率)
温度25℃、pH6.5に調整した500mg/L 塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を操作圧力0.5 MPaで複合半透膜に供給し、透過水中の塩濃度を測定した。膜による塩の除去率は次の式から求めた。
塩除去率(%)=100×{1−(透過水中の塩濃度/供給水中の塩濃度)}
(透水性保持率)
運転初期の膜透過流束をA、運転24時間後の膜透過流束をBとし、100×B/Aにより24時間後の造水性保持率(%)を算出した。
(参考例1)
ポリエステル不織布(通気度0.5〜1cc/cm/sec)上にポリスルホンの15.7重量%DMF溶液を200μmの厚みで、室温(25℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって微多孔性支持膜(厚さ210〜215μm)を作製した。
(比較例1)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。
(比較例2)
比較例1の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(比較例3)
比較例1の膜を25℃のm−PDAの0.02重量%水溶液中に30秒間浸漬させ、その後35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(比較例4)
比較例1の膜を80℃のトリエチレングリコールに1分間浸漬させ、その後35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(実施例1)
比較例1の膜を80℃のトリエチレングリコールに1分間浸漬させ、その後25℃のm−PDAの0.02重量%水溶液中に30秒間浸漬させ、35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(実施例2)
トリエチレングリコールをテトラエチレングリコールに変えたこと以外は実施例1の方法と同様にして複合半透膜を得た。
(実施例3)
トリエチレングリコールをジエチレングリコールに変えたこと以外は実施例1の方法と同様にして複合半透膜を得た。
(実施例4)
m−PDA水溶液の濃度を0.01重量%に変えたこと以外は実施例1の方法と同様にして複合半透膜を得た。
(実施例5)
m−PDA水溶液の濃度を0.05重量%に変えたこと以外は実施例1の方法と同様にして複合半透膜を得た。
(比較例5)
m−PDA水溶液の濃度を0.001重量%に変えたこと以外は実施例1の方法と同様にして複合半透膜を得た。
(比較例6)
m−PDA水溶液の濃度を0.5重量%に変えたこと以外は実施例1の方法と同様にして複合半透膜を得た。
比較例1〜7、実施例1〜5によって得られた複合半透膜の飽和含水率、黄色度、運転初期の膜透過流束、塩除去率、および運転24時間後の透水性保持率を表1に示す。
飽和含水率の高い複合半透膜は膜透過流束が極めて高い値を示すが、運転中の透水性保持率が低く(比較例4、5)、高い膜透過流束を維持することができない。このような飽和含水率の高い複合半透膜に対して黄色度を増加させると、実施例1〜5のように、透水性保持率が劇的に改善され、高い膜透過流束を長期間維持できる膜が得られた。一方で、比較例6のように黄色度を増加させすぎると膜透過流束自体が向上しない。
このように、飽和含水率が15〜25%と高く、かつ黄色度が10〜30となる膜は、高い膜透過流束と透水性保持率を両立しうるものとなった。
Figure 2021003683

Claims (4)

  1. 基材と、前記基材上に位置する多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、アゾ化合物が該分離機能層に保持されて
    おり
    前記分離機能層中の25℃、相対湿度75%条件下における飽和含水率が15%以上25%以下であり、
    前記分離機能層の黄色度が10以上30以下である複合半透膜。
  2. 前記分離機能層中に含まれるアルコール類のヒドロキシル基総数が0.3×10-7mol/cm2以上5.0×10-6mol/cm2以下である請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記分離機能層中に含まれるアルコール類の沸点が150℃以上である請求項1または2に記載の複合半透膜。
  4. 前記分離機能層中に含まれるアルコール類が多価アルコールである請求項1から3のいずれかに記載の複合半透膜。
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