JPWO2020066428A1 - 反射防止膜、光学素子、反射防止膜の製造方法および微細凹凸構造の形成方法 - Google Patents

反射防止膜、光学素子、反射防止膜の製造方法および微細凹凸構造の形成方法 Download PDF

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Abstract

容易に作製可能であり、かつ、より良い反射防止性を有する反射防止膜、反射防止膜を備えた光学素子、反射防止膜の製造方法および微細凹凸構造の形成方法を提供する。基材上の成膜面にアルミニウムを含む薄膜を形成する薄膜形成工程と、薄膜に対して温水処理を施すことにより、アルミナの水和物を主成分とする板状結晶からなる微細凹凸構造を形成する温水処理工程とを複数回繰り返す。これにより、表面である凸部先端から基材側に向かう厚さ方向に徐々に変化して最も基材側の界面において最大値となる屈折率プロファイルを有し、表面における屈折率が1.01以下であり、表面から厚さ方向に100nmまでの第1の屈折率勾配は、反射防止対象とする光の波長域における最も長い波長をλmaxとした場合に0.4/λmax以下である微細凹凸層を含む反射防止膜を得る。

Description

本開示は、反射防止膜、反射防止膜を備えた光学素子、反射防止膜の製造方法、および微細凹凸構造の形成方法に関する。
レンズ等の光学素子本体の光学面には、入射光の反射を抑制する反射防止膜が設けられる。例えば、入射光の波長よりも小さいピッチの微細凹凸構造を備えた反射防止膜が知られている。反射防止のためには基材と空気の屈折率段差を低減することが望ましいが、通常の材料では1.3以下の屈折率を得ることは難しい。一方、光の波長以下の構造ピッチを持つ微細な構造は、材料と空気の体積分率に応じた実効屈折率の媒体と見なすことができるため、1.3以下の屈折率を得ることができる。そこで、微細凹凸構造のような、光軸方向に体積分率が連続的に変化するような構造を用いれば、著しい反射防止性能を得ることができる。
特開2010−156844号公報(以下において、特許文献1)国際公開第2016/006651号(以下において、特許文献2)および特開2014−21146号公報(以下において、特許文献3)等においては、より高い反射防止性能を得るため、微細凹凸構造を備えた反射防止膜における厚さ方向の屈折率プロファイルが検討されている。特に、特許文献1、2では、錐体形状あるは錐台形状の凹部あるいは凸部を備えることが提案されている。
微細凹凸構造を形成する方法として、インプリント法が知られている。金属や樹脂製の金型に微細凹凸構造を形成し、反射防止対象の光学素子に転写する方法である。インプリント法は、例えば、平面状ディスプレイ用フィルムの反射防止構造の形成方法として実用化されている。また、インプリント法によれば、凸部および凹部形状を比較的容易に制御することができ、特許文献1、2等において提案されている形状も実現可能である。
しかしながらインプリント法を、例えばガラスレンズのような曲面へ適用しようとすると、レンズの曲率毎の金型が必要であり、また、高精度な位置合わせが必要であるなど、技術的な難しさが生じ、コスト増大の要因になる。
一方、曲面にも安価に形成可能な微細凹凸構造として、アルミナの水和物の板状結晶を主成分とする微細凹凸構造が知られている。特許文献3、特許第4182236号公報(以下において、特許文献4)、および特許第4520418号公報(以下において、特許文献5)には、このようなアルミナの水和物の板状結晶を主成分とする微細凹凸構造を備えた反射防止膜が提案されている。また、特許文献3〜5では、アルミナの水和物の板状結晶を主成分とする微細凹凸構造と基材との間に、屈折率段差を緩和するための薄膜層を備えた構成が提案されている。
しかし、アルミナの水和物の板状結晶を主成分とする微細凹凸構造は、その形状の詳細な制御は難しい。例えば、特許文献4には「微細な凹凸の高さが0.005μm〜5.0μmである」ことが記載されている。しかしながら、特許文献4の実施例には高さ0.3μmまでの例しか記載されていない。同様に、特許文献5には「板状結晶層の厚さが20nm以上1000nm以下」と記載されているが、実施例に記載されている板状結晶層の最大厚さは500nmである。
アルミナの水和物の板状結晶を主成分とする微細凹凸構造については、その制御の困難さから、より好ましい反射防止性を実現する屈折率プロファイルについて十分に検討されていない。
通常、反射防止膜は、光学素子の入射面に対して入射角0°(法線方向)からの入射に対する反射率が最小となるように設計される。したがって、入射角
0°での反射率が低いことは当然求められる性能である。他方、入射角45°あるいは60°などの斜入射に対する反射率が、入射角0°の反射率に対して大幅に増加するのは好ましくない。そのため、反射防止性としては、低反射率と共に、斜入射時の反射率の法線方向入射時から増加が小さいことが求められる。
本開示は、上記事情に鑑み、容易に作製可能であり、低反射率かつ斜入射時の反射率増加が抑制された反射防止膜、光学素子、反射防止膜の製造方法および微細凹凸構造の形成方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基材の一面に備えられた、アルミナの水和物の板状結晶を主成分とする微細凹凸層を含む反射防止膜であって、
上記微細凹凸層は、表面である凸部先端から上記基材側に向かう厚さ方向に徐々に変化して最も上記基材側の界面において最大値となる屈折率プロファイルを有し、上記表面における屈折率が1.01以下であり、その表面から上記厚さ方向に100nmまでの第1の傾斜屈折率領域における最大の屈折率勾配が、反射防止対象とする光の波長域における最も長い波長をλmaxとした場合に0.4/λmax以下である反射防止膜。
<2> 上記微細凹凸層において、上記厚さ方向における上記100nmの位置から上記基材側の上記界面までの第2の傾斜屈折率領域における最大の屈折率勾配が、0.8/λmax以下である<1>に記載の反射防止膜。
<3> 上記反射防止対象とする光の波長域が400nm〜800nmである<1>または<2>に記載の反射防止膜。
<4>上記屈折率プロファイルにおける上記最大値が1.5以上である<1>から<3>のいずれかに記載の反射防止膜。
<5> 上記微細凹凸層の厚さが550nm以上である<1>から<4>のいずれかに記載の反射防止膜。
<6> 上記基材の、λmaxにおける屈折率が1.5超である<1>から<5>のいずれかにの反射防止膜。
<7> 上記微細凹凸層と上記基材との間に傾斜屈折率層を備え、
上記傾斜屈折率層は、上記微細凹凸層との界面から上記基材に向かう厚さ方向において、徐々に屈折率が変化する屈折率プロファイルを有し、上記微細凹凸層との界面における屈折率とその界面における上記微細凹凸層の屈折率との差が0.01以下であり、上記基材との界面における屈折率と上記基材の屈折率との差が0.01以下である<1>から<6>のいずれかに記載の反射防止膜。
<8> 上記傾斜屈折率層において、上記厚さ方向における最大の屈折率勾配が1.6/λmax以下である<7>に記載の反射防止膜。
<9> 上記傾斜屈折率層はシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、およびニオブ酸化物のうちいずれか1種以上を主成分とする<7>または<8>のいずれかに記載の反射防止膜。
<10> 上記微細凹凸層と上記基材との間に、相対的に高い屈折率を有する高屈折率層と相対的に低い屈折率を有する低屈折率層とを交互に備えた屈折率整合層を備えた<1>から<6>のいずれかに記載の反射防止膜。
<11> 基材と、基材の一面に備えられた<1>から<10>のいずれかに記載の反射防止膜とを含む光学素子。
<12> 基材上の成膜面にアルミニウムを含む薄膜を形成する薄膜形成工程と、
上記薄膜に対して温水処理を施すことにより、アルミナの水和物を主成分とする板状結晶からなる微細凹凸構造を形成する温水処理工程と、
上記微細凹凸構造の表面を上記成膜面として、上記薄膜形成工程および上記温水処理工程を繰り返す繰り返し工程と、を含む反射防止膜の製造方法。
<13>基材上の成膜面にアルミニウムを含む薄膜を形成する薄膜形成工程と、
上記薄 膜に対して温水処理を施すことにより、アルミナの水和物を主成分とする板状結晶からなる微細凹凸構造を形成する温水処理工程と、
上記微細凹凸構造の表面を上記成膜面として、上記薄膜形成工程および上記温水処理工程を繰り返す繰り返し工程と、を含む微細凹凸構造の形成方法。
本開示によれば、容易に製造可能であり、低反射率かつ斜入射時の反射率増加が抑制された反射防止膜を提供することができる。
第1の実施形態に係る反射防止膜および光学素子の概略構成、並びに屈折率分布を示す模式図である。 反射防止膜の製造工程を示す図である。 第2の実施形態に係る反射防止膜および光学素子の概略構成、並びに屈折率分布を示す模式図である。 第3の実施形態に係る反射防止膜および光学素子の概略構成、並びに屈折率分布を示す模式図である。 実施例1の微細凹凸層の屈折率プロファイルを示す図である。 実施例1の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例2の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例2の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例4の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例5の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例6の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例7の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例1の微細凹凸層の屈折率プロファイルを示す図である。 比較例1の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 比較例2の反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図である。 実施例1の微細凹凸層の断面の走査型電子顕微鏡画像である。 比較例1の微細凹凸層の断面の走査型電子顕微鏡画像である。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る反射防止膜11を備えた光学素子1の概略構成を示す断面模式図および厚さ方向における屈折率プロファイルを示す図である。
図1に示すように、本実施形態の反射防止膜11は、基材10の一面に備えられた、アルミナの水和物の板状結晶を主成分とする微細凹凸層20を含む。そして、光学素子1は、基材10とその一面に備えられた反射防止膜11とを含む。
基材10は、平板、凹レンズ、凸レンズなど主として光学装置において用いられる透明な光学部材、可撓性の透明フィルムなどである。基材の材料としては、ガラスやプラスチックなどを用いることができる。ここで、「透明」とは、光学部材において反射防止したい光(反射防止対象光)の波長に対して内部透過率が概ね10%以上であることを意味する。但し、反射防止膜が形成される基材は、透明な基材に限るものではなく、反射防止したい表面を有する基材であれば特に限定されない。
微細凹凸層20は、少なくとも表面が微細凹凸となっているアルミナの水和物の板状結晶を主成分とする層である。アルミナの水和物とは、アルミナ1水和物であるベーマイト(Al・HOあるいはAlOOHと表記される。)、アルミナ3水和物(水酸化アルミニウム)であるバイヤーライト(Al・3HOあるいはAl(OH)と表記される。)などである。「アルミナの水和物の板状結晶を主成分とする」とは、微細凹凸層20中おけるアルミナの水和物の板状結晶が、微細凹凸層20を構成する成分の80質量%以上であることを意味する。
図1においては、微細凹凸層20として、高低差の大きい均一な凸部が整列配置した微細凹凸層を示している。しかし、実際のアルミナの水和物の板状結晶を主成分とする微細凹凸層20は板状結晶が重なりあって形成されたランダムな構造を有し、具体的には後述する図16に示すような断面を有する。
微細凹凸層20は、表面である凸部先端から基材10側に向かう厚さ方向に徐々に変化して最も基材10側の界面において最大値となる屈折率プロファイルを有する。屈折率が徐々に変化するとは、屈折率プロファイル中に0.01を超える屈折率段差がないことを意味する。微細凹凸層20の表面から厚さ方向に100nmまでの領域を第1の傾斜屈折率領域21、厚さ方向100nmの位置から最も基材側の界面までの領域を第2の傾斜屈折率領域22とする。本明細書において、屈折率は特に断らない限り、波長540nmでの屈折率である。
微細凹凸層20の厚さ方向における屈折率プロファイルについて説明する。
最も重要なのは凸部先端側における屈折率プロファイルである。光が入射する表面部分で反射が生じてしまうと、それを打ち消す干渉作用をその後の構造で生じさせる必要が出てくる。干渉を生じさせる構造を設けると、反射防止膜への光の斜め入射時の反射防止性能が低下する。そこで、先端部分で反射が生じないようにすることが最も重要である。
微細凹凸層20の表面における屈折率は1.01以下であり、表面から厚さ方向に100nmまでの第1の傾斜屈折率領域21における最大の屈折率勾配は、反射防止対象とする光の波長域における最も長い波長をλmaxとした場合に0.4/λmax以下である。
反射防止対象とする光は、用途によって異なるが、一般的には可視光領域の光であり、必要に応じて赤外線領域の光の場合もある。本明細書において、可視光領域とは波長400nm〜800nmをいう。従って、可視光領域を反射防止対象とする場合には、反射防止対象とする光の波長域における最も長い波長λmaxは800nmであり、最も短い波長λminは400nmである。
表面から厚さ方向に100nmまでの第1の傾斜屈折率領域21における最大の屈折率勾配が、0.4/λmax以下であれば、先端部分での反射を十分に抑制することが可能となる。表面から100nmの範囲においては、最大の屈折率勾配が0.4/λmax以下となる範囲であれば屈折率勾配は一定である必要はなく、増減していてもよい。
なお、屈折率プロファイルから屈折率勾配を求めるに当たっては、反射防止対象とする光の波長域における最も短い波長λminnmの1/20以下の範囲における屈折率勾配の変動は無視してよい。従って、本明細書において屈折率勾配は、λmin/20の範囲における屈折率勾配を平均化した値とする。すなわち、各位置を中心とするλmin/20の範囲で平均化した屈折率勾配を各位置における屈折率勾配と定義する。
従って、第1の傾斜屈折率領域21においては、微視的には0.4/λmaxを超える勾配あるいは負勾配となる箇所があったとしても、その位置を中心とするλmin/20の範囲の屈折率勾配を平均した値が正であり0.4/λmax以下であればよい。そのため、全体としては図1の下図に示すように、先端から100nmの位置での屈折率nまで、屈折率は徐々に増加する。この範囲で最大の屈折率勾配が0.4/λmaxであるので、反射防止対象とする光が可視光である場合、nは1.05以下である。なお、第1の傾斜屈折率領域21においては、最大の屈折率勾配が0.2/λmax以下であることがより好ましい。
なお、微細凹凸層20の表面は、微細凹凸層20の厚さ方向における屈折率プロファイルを調べることによって明確に規定することができる。空気との界面領域において、屈折率に段差がある場合には、その段差部が微細凹凸層20の表面である。また、空気との界面領域において屈折率に段差がない場合には、基材側から厚さ方向に向かって屈折率が小さくなり屈折率が1.0となった箇所が表面である。
微細凹凸層20の厚さ方向100nmの位置から最も基材10側の界面までの第2の傾斜屈折率領域22における最大の屈折率勾配が、0.8/λmax以下であることが好ましい。この場合も、微視的には0.8/λmaxを超える勾配あるいは負勾配となる箇所があったとしても、その位置を中心とするλmin/20の範囲の屈折率勾配を平均化した値が0.8/λmax以下であればよい。
なお、第1の実施形態のように、微細凹凸層20が直接に基材10の一面に設けられている場合には、微細凹凸層20の屈折率プロファイルにおける最大値、すなわち、第2の傾斜屈折率領域22の最も基材側の界面の屈折率nと基材10の一面の屈折率nとの差が0.01以下であることが好ましく、両者が等しいことが特に好ましい。
第2の傾斜屈折率領域22の厚さh2は200nm以上であることが好ましく、600nm以下であることが好ましい。第2の傾斜屈折率領域22の厚さh2は450nm以上であることが特に好ましい。すなわち、微細凹凸層20全体の厚さhは、300nm以上であることが好ましく、700nm以下であることが好ましく、550nm以上であることが特に好ましい。
上記の屈折率プロファイルを有する微細凹凸層20を備えることにより、表面での反射を十分に抑制することができ、良好な反射防止性を得ることができる。なお、このような屈折率プロファイルを有する微細凹凸層20は、斜め入射の光に対しても低い反射率を実現でき、入射角度による反射率の変化を十分抑制できる(後記実施例参照)。
上記屈折率プロファイルを有する微細凹凸層は、アルミニウムを含む薄膜の成膜および温水処理を2回以上繰り返すことにより得ることができる。図2を参照して、微細凹凸構造の形成方法、すなわち反射防止膜11の製造方法について説明する。
基材10の表面にアルミニウム元素を含む薄膜25を形成する(step1)。アルミニウム元素を含む薄膜は、例えば金属アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウムのうちから選ばれる1種以上の混合物を含む。アルミニウム元素を含む薄膜25は気相成膜や液層成膜により得ることが出来るが、多数の曲面を含む構造への薄膜形成の容易さから、特に気層成膜を用いることが好適である。薄膜の厚さは1nm〜100nmを用いることができ、より好ましくは、20nm〜80nmの厚さである。
step1の薄膜形成工程の後、薄膜25を基材10ごと、温水50中に浸漬させる(step2)。この温水処理工程における温水の温度は60℃以上、沸騰温度以下とし、浸漬時間は1分以上、10分以下とすることが好ましい。温水の温度は95℃以上、浸漬時間は3分以上がより好ましい。なお、温水処理液としては、純水を用いることが好ましく、特に、水温25℃における電気抵抗率が14MΩ・m以上の超純水を用いることが好ましい。
上記温水処理工程により、薄膜25はアルミナの水和物の板状結晶からなる微細凹凸層26となる(step3)。温水50から取り出した基材の微細凹凸層26表面から温水を取り除く乾燥処理を施す。乾燥処理としては工業用洗浄後の乾燥工程に用いられる温風乾燥、赤外線乾燥、ホットプレート乾燥、吸引乾燥、真空乾燥、蒸気乾燥、温純水引き上げ乾燥、マランゴニ乾燥、エアブロー乾燥およびスピン乾燥などを用いることができる。
その後、微細凹凸層26を成膜面として、上記の薄膜形成工程および温水処理工程を繰り返す。具体的には、微細凹凸層26の表面にアルミニウム元素を含む薄膜25を形成し(step4)、基材10ごと温水50中に浸漬させる(step5)。
以上の工程を経て、基材10上に上述の屈折率プロファイルを有する微細凹凸構造を形成することができ、微細凹凸層20を備えた反射防止膜11を作製することができる(Step6)。アルミニウム元素を含む薄膜において、金属アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、フッ化アルミニウムの割合を99%以上とした場合、得られる微細凹凸層20におけるアルミナの水和物は95%以上の純度となる。不純物としては、5%以下のマグネシウムないしナトリウムを含む。
薄膜形成工程および温水処理工程は、2回のみならず、3回以上繰り返してもよい。
本発明者らの検討によれば、1回のみのアルミニウムを含む薄膜の成膜および温水処理では、500nmを超える構造高さ(厚さ)の微細凹凸層を得ることはできない。ここで、微細凹凸層の厚さとは、屈折率が変化している領域の高さ(厚さ)をいう。例えば厚さ80nmのアルミニウム薄膜を成膜し、温水処理を行っても、500nmを超える構造高さの、板状結晶からなる微細凹凸層は得られなかった。また、厚さ100nmのアルミニウム薄膜を成膜し、温水処理したところ、基材側の一部が透明化せず、すなわちアルミナの水和物に変化せず、金属のままの層が残った。一方、本開示の一態様の製造方法によれば、500nmを超える構造高さの微細凹凸層を容易に得ることが可能であり、特に先端の第1の傾斜屈折率領域における屈折率勾配が0.4/λmax以下である屈折率プロファイルの微細凹凸構造を得ることができる。
アルミナの水和物を主成分とする板状結晶からなる微細凹凸層を備えた反射防止膜はこれまで提案されてきているが、これまでは1回の薄膜形成および温水処理によって形成される微細凹凸層を用いることしか検討されていなかった。本開示の一態様の微細凹凸構造の形成方法および反射防止膜の製造方法においては、薄膜形成および温水処理を2回以上繰り返すことを特徴とする。これにより、従来得られなかった構造高さを有する板状結晶からなる微細凹凸層および特に凸部先端における屈折率勾配が非常に小さい屈折率プロファイルの微細凹凸層を得ることができる。
したがって、表面での反射を十分に抑制することができ、良好な反射防止性を得ることができる反射防止膜11を簡単に、かつ安価に製造することができる。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る反射防止膜12を備えた光学素子2の概略構成を示す断面模式図および厚さ方向における屈折率プロファイルを示す図である。
図3に示すように、本実施形態の反射防止膜12は、微細凹凸層20と基材10との間に中間層として傾斜屈折率層30を備えている。微細凹凸層20は、上記第1の実施形態の反射防止膜11のものと同様である。
微細凹凸層20の第2の傾斜屈折率領域の最も基材側の界面における屈折率nと、基材10の屈折率nとの差が0.01を超える場合には、両者の屈折率差を埋める傾斜屈折率層30を備えることが好ましい。
基材10の屈折率は1.5超え、さらには1.6以上とすることができる。この場合、第2の傾斜屈折率領域の屈折率nは1.5以上であることが好ましい。
傾斜屈折率層30は、微細凹凸層20との界面から基材10に向かう厚さ方向において、徐々に屈折率が変化する屈折率プロファイルを有し、微細凹凸層20との界面における屈折率とその界面における微細凹凸層20の屈折率nとの差が0.01以下であり、基材10との界面における屈折率と基材10の屈折率nとの差が0.01以下である。また、厚さ方向における最大の屈折率勾配が1.6/λmax以下であることが好ましい。
傾斜屈折率層30は少なくとも2種以上の材料からなる薄膜層であり、その材料の比率を薄膜の厚さ方向に連続的に変化させることで連続した屈折率変化を得るものである。例えば、反応性スパッタによるシリコン酸窒化物(SiON)膜における酸素と窒素の比率の変化を用いることができる。また、メタモードスパッタにおけるシリコン酸化物(SiO)とチタン酸化物(TiO)との混合膜、SiOとニオブ酸化物(Nb)との混合膜、および、SiONとNbとの混合膜の元素比率の変化を用いることができる。さらに、他の方法として、屈折率の異なる複数の溶液を基材上に順に塗膜することでも望みの傾斜屈折率薄膜を得ることもできる。塗膜方法としては、例えばスピンコート、ディップコート、スプレーコート、インクジェット法などが挙げられる。なお、ここで、連続した屈折率変化とは、隣り合う層の屈折率変化量が0.01以下であることを意味する。
第2の実施形態の反射防止膜は、基材上に上記手法により傾斜屈折率層30を形成し、その傾斜屈折率層30の表面を成膜面として、既述の微細凹凸構造の形成方法により微細凹凸層20を形成することで作製することができる。
第2の実施形態の反射防止膜によれば、第1の実施形態と同様の微細凹凸層20を備えているので、第1の実施形態同様の効果を得ることができ、また、基材の屈折率が1.5超え、さらには1.6以上と大きい場合であっても、非常に良好な反射防止性を得ることができる。
図4は、本発明の第3の実施形態に係る反射防止膜13を備えた光学素子3の概略構成を示す断面模式図および厚さ方向における屈折率プロファイルを示す図である。
図4に示すように、本実施形態の反射防止膜12は、図1の反射防止膜11において、微細凹凸層20と基材10との間に中間層として屈折率整合層40を備えている。微細凹凸層20は、上記第1の実施形態の反射防止膜11のものと同様である。
基材10の屈折率nと微細凹凸層20の屈折率nとの差が0.01を超える場合には、上記第2の実施形態の傾斜屈折率層30に代えて、本実施形態のように屈折率整合層40を備えてもよい。屈折率整合層40により、基材10と微細凹凸層20との屈折率段差によって生じる反射を打ち消す反射を生じさせることによって、反射防止性能を向上させることができる。
屈折率整合層40は、相対的に高い屈折率を有する高屈折率層41と、相対的に低い屈折率を有する低屈折率層42とが交互に積層された積層構造を有し、相対的に高い屈折率と、相対的に低い屈折率との比が1.1以上である。また、「相対的に高い屈折率を有する」、「相対的に低い屈折率を有する」とは、高屈折率層と低屈折率層との相対的な関係をいい、高屈折率層が低屈折率層よりも高い屈折率を有し、低屈折率層が高屈折率層よりも低い屈折率を有することを意味する。
図4に示す反射防止膜13の屈折率整合層40では、高屈折率層41と低屈折率層42とが、高屈折率層41が最も基材側に配置されて交互に計8層積層された構成を示すが、積層順および積層数はこれに限るものではない。すなわち、最も基材側が低屈折率層42となるように積層されていてもよく、高屈折率層41と低屈折率層42との積層構造の合計層数は少なくとも2層備えていればよく、望ましくは4層以上である。
高屈折率層41は、屈折率nが1.7以上であることが好ましく、1.9以上であることがより好ましい。低屈折率層42は、屈折率nが1.6以下であることが好ましく、1.55以下であることがより好ましい。なお、低屈折率層42の屈折率nは基材10の屈折率nよりも低く、高屈折率層41の屈折率nは基材10の屈折率nよりも高いことが好ましい。
高屈折率層41同士、または低屈折率層42同士は、必ずしも同一の屈折率でなくてもよく、また同一の材料から構成されていなくても構わないが、同一の屈折率として、同一材料であることが、材料コストおよび成膜コスト等を抑制する観点から好ましい。
高屈折率層41の材料としては、例えば、アルミニウム,チタン,タンタル,ジルコニウム,ニオブ,マグネシウムおよびランタンのうちのいずれかの酸化物、アルミニウム窒化物、アルミニウム酸窒化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、およびそれらの混合物が挙げられる。
低屈折率層42の材料としては、例えば、シリコン酸化物、シリコン酸窒化物、マグネシウムフッ化物、およびそれらの混合物、並びに、シリコン酸化物、シリコン酸窒化物、マグネシウムフッ化物の混合物とアルミナとの混合物が挙げられる。
屈折率整合層40の各層は、スパッタリング法、電子線蒸着法および化学気相成長法などの気相成膜法を用いて成膜することができる。
第3の実施形態の反射防止膜は、基材上に上記手法により屈折率整合層40を形成し、その屈折率整合層40の表面を成膜面として、既述の微細凹凸構造の形成方法により微細凹凸層を形成することで作製することができる。
第3の実施形態の反射防止膜によれば、第1の実施形態と同様の微細凹凸層20を備えているので、第1の実施形態同様の効果を得ることができ、また、基材の屈折率が1.5超え、さらには1.6以上と大きい場合であっても、非常に良好な反射防止性を得ることができる。
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。ここでは、反射防止対象の光を可視光とする。したがって、λmaxは800nmである。
[実施例1]
コーニング社製Eagle XG(登録商標)のガラス基材および単結晶Si基材上に、70nmのアルミナ(Al)薄膜を直流(DC)スパッタリング法により成膜した。次いで、水温25℃における電気抵抗率が14MΩ・cm以上である超純水を100℃に加温し、アルミナ薄膜を成膜した両基材を3分間浸漬した。これによってアルミナの水和物からなる板状結晶を主成分とする微細凹凸構造を得た後、エアブロー乾燥により温水の乾燥を行った。次いで、再び70nmのアルミナ薄膜をDCスパッタリング法により成膜した。さらに、超純水を100℃に加温し、アルミナ薄膜を成膜した両基材を3分間浸漬した。これにより、1回目の温水処理により形成した微細凹凸構造よりも厚いアルミナの水和物を主成分とする微細凹凸層を得た。すなわち、アルミナ薄膜の成膜と温水処理を2回繰り返して微細凹凸構造を形成し、ガラス基材上に微細凹凸層を備えた実施例1の反射防止膜を作製した。ここで、DCスパッタリング法により成膜したアルミナ薄膜の純度をX線光電子分光法で測定したところ、純度99%以上であった。なお、同時に作製した単結晶Si基材上に微細凹凸層を備えたサンプルを用いて、以下の屈折率プロファイルの測定を行った。
<屈折率プロファイルの測定>
得られた構造について、分光エリプソメトリー測定から微細凹凸層の厚さ方向における屈折率分布(屈折率プロファイル)を求めた。得られた屈折率分布を図5に示す。横軸は基材表面位置を0とした基材表面からの厚さであり、縦軸が屈折率である。屈折率は基材表面から連続的に変化して空気の屈折率1まで徐々に小さくなっている。図5に示すように、空気との界面において屈折率段差はなかった。そのため、屈折率が空気の屈折率1と一致した点を微細凹凸層の表面と看做した。微細凹凸層の厚さは590nmであった。
この微細凹凸構造の表面から厚さ方向に100nmの位置における屈折率は1.045である。従って、第1の傾斜屈折率領域における屈折率勾配は0.045/100nmであり、0.4/λmax以下を満たしている。第2の傾斜屈折率領域の厚さは490nmであり、屈折率は1.045から基材表面までに1.52まで変化している。従って、第2の傾斜屈折率領域における屈折率勾配は0.475/490nmである。
<反射率>
上記のようにして得た屈折率プロファイルを用いて基材面に対する入射角0°、45°、60°の場合の可視光(波長400〜800nm)の範囲のS偏光およびP偏光の片面反射率を数値計算により求めた。数値計算には、ソフトウェアEssential Macleodを用いた。図6に、数値計算により求められた入射角0°、45°および60°の屈折率の反射依存性を示す。また、入射角0°、45°および60°における波長400〜800nmの範囲での平均反射率を求めた。平均反射率については、他の実施例および比較例の結果と併せて後記の表3に纏めて示す。
入射角60°で平均反射率1.3%と、斜入射であっても良好な値を得た。
[実施例2]
オハラ社製S−LAH55Vのガラス基材上に、シリコン酸窒化物を反応性スパッタ(シンクロン社製スパッタ装置RAS)により成膜した。シリコン酸窒化物の屈折率は、反応性スパッタ時のガス流量により制御できる。これを用いて、基材側から表面側に向けて屈折率1.84から1.52まで連続的に変化させて傾斜屈折率層を形成した。傾斜屈折率層の厚さは1280nm、第3の屈折率勾配は0.00025/nmとした。この傾斜屈折率層上に、実施例1と同様にして微細凹凸層を形成して、ガラス基材上に傾斜屈折率層と微細凹凸層を備えた実施例2の反射防止膜を作製した。
得られた構造について、実施例1と同様にして形成した微細凹凸層については、実施例1で求めた微細凹凸層の屈折率プロファイルを用い、さらに傾斜屈折率層の屈折率プロファイルを用いて、実施例1と同様に反射率の波長依存性、および平均反射率を求めた。図7に、数値計算により求められた入射角0°、45°および60°の屈折率の反射依存性を示し、表3に平均反射率を示す。
入射角60°で平均反射率1.3%と、斜入射であっても良好な値を得た。
[実施例3]
実施例2と同様に、但し傾斜屈折率層の厚さは640nm、屈折率勾配は0.0005/nmとして実施例3の反射防止膜を作製した。
実施例2と同様にして、反射率の波長依存性、および平均反射率を求めた。図8に、数値計算により求められた入射角0°、45°および60°の屈折率の反射依存性を示し、表3に平均反射率を示す。
入射角60°で平均反射率1.2%と、斜入射であっても良好な値を得た。
[実施例4]
実施例2と同様に、但し傾斜屈折率層の厚さは320nm、屈折率勾配は0.001/nmとして実施例4の反射防止膜を作製した。
実施例2と同様にして、反射率の波長依存性、および平均反射率を求めた。図9に、数値計算により求められた入射角0°、45°および60°の屈折率の反射依存性を示し、表3に平均反射率を示す。
入射角60°で平均反射率1.2%と、斜入射であっても良好な値を得た。
[実施例5]
実施例2と同様に、但し傾斜屈折率層の厚さは160nm、屈折率勾配は0.002/nmとして実施例5の反射防止膜を作製した。
実施例2と同様にして、反射率の波長依存性、および平均反射率を求めた。図10に、数値計算により求められた入射角0°、45°および60°の屈折率の反射依存性を示し、表3に平均反射率を示す。
入射角60°で平均反射率1.1%と、斜入射であっても良好な値を得た。
[実施例6]
オハラ社製S−LAH55Vガラス基材上に、実施例2の傾斜屈折率層に代えて、中間層として屈折率整合層としてシリコン酸窒化物(SiON)とシリコン窒化物(SiN)の2種からなる積層膜を成膜した。表1に、実施例6の反射防止膜の層構成を示す。屈折率整合層の各層の膜厚は表1に示す通りとした。そして、積層膜上に、実施例1と同様の方法で微細凹凸層を形成して屈折率整合層上に微細凹凸層を備えた実施例6の反射防止膜を作製した。
Figure 2020066428
得られた構造について、実施例1と同様にして形成した微細凹凸層については、実施例1で求めた微細凹凸層の屈折率プロファイルを用い、さらに屈折率整合層の屈折率プロファイルを用いて、実施例1と同様に反射率の波長依存性、および平均反射率を求めた。図11に、数値計算により求められた入射角0°、45°および60°の屈折率の反射依存性を示し、表3に平均反射率を示す。
入射角60°で平均反射率1.1%と、斜入射であっても良好な値を得た。
[実施例7]
実施例2と同様に、但し傾斜屈折率層の厚さ80nm、屈折率勾配は0.004/nmとして実施例7の反射防止膜を作製した。
実施例2と同様にして、反射率の波長依存性、および平均反射率を求めた。図12に、数値計算により求められた入射角0°、45°および60°の屈折率の反射依存性を示し、表3に平均反射率を示す。入射角0°、45°での平均反射率は他の実施例と比較して大きかったが、入射角60°での平均反射率の入射角0°からの増加率は他の実施例と比較して抑えられていた。
[比較例1]
コーニング社製Eagle XG(登録商標)のガラス基材および単結晶Si基材上に、40nmのAl薄膜をDCスパッタリング法により成膜した。次いで、実施例1と同様の超純水を100℃に加温し、Al膜を成膜した両基材を3分間浸漬し、アルミナの水和物からなる板状結晶を主成分とする微細凹凸層を得た。このAl薄膜の成膜と温水処理を1回のみ行って形成した微細凹凸層をガラス基材上に備えた比較例1の反射防止膜とした。ここで、DCスパッタリング法により成膜したAl膜の純度をX線光電子分光法で測定したところ、純度99%以上であった。なお、同時に作製した単結晶Si基材上に微細凹凸層を備えたサンプルを用いて、以下の屈折率プロファイルの測定を行った。
得られた構造について、分光エリプソメトリー測定から微細凹凸層の厚さ方向における屈折率分布(屈折率プロファイル)を求めた。得られた屈折率分布を図13に示す。横軸は基材表面位置を0とした基材表面からの厚さであり、縦軸が屈折率である。図13に示すように、空気との界面において屈折率段差はなかった。そのため、屈折率が空気の屈折率1と一致した点を微細凹凸層の表面と看做した。微細凹凸層の厚さは325nmであった。
この微細凹凸層の表面から厚さ方向に100nmの位置における屈折率は1.09である。従って、第1の傾斜屈折率領域における屈折率勾配は0.09/100nmであり、0.4/λmaxを超えている。第2の傾斜屈折率領域の厚さは225nmであり、屈折率は1.1から基材表面までの間にピークを有し、その後1.3近傍まで低下している。
上記のようにして得た屈折率プロファイルを用いた以外は実施例1と同様にして基材面に対する入射角0°、45°、60°の場合の可視光(波長400〜800nm)の範囲のS偏光およびP偏光の片面反射率を数値計算により求めた。図14に、数値計算により求められた入射角0°、45°および60°の屈折率の反射依存性を示す。また、表3に平均反射率を示す。
入射角60°で平均反射率2.2%と、比較的大きな値となった。
[比較例2]
オハラ社製S−LAH55Vガラス基材上に、屈折率整合層としてシリコン酸窒化物とシリコン窒化物の2種からなる積層膜を成膜した。表2に、比較例2の反射防止膜の層構成を示す。屈折率整合層の各層の膜厚は表2に示す通りとした。そして、積層膜上に、比較例1と同様の方法で微細凹凸層を形成して屈折率整合層上に微細凹凸層を備えた比較例2の反射防止膜を作製した。
Figure 2020066428
得られた構造について、比較例1と同様にして形成した微細凹凸層については、比較例1で求めた微細凹凸層の屈折率プロファイルを用い、さらに屈折率整合層の屈折率プロファイルを用いて、比較例1と同様に反射率の波長依存性、および平均反射率を求めた。図15に、数値計算により求められた入射角0°、45°および60°の屈折率の反射依存性を示し、表3に平均反射率を示す。
入射角0°で非常に低い平均反射率が得られたが、入射角60°で平均反射率1.6%と、斜入射での値は、実施例と比較して大きかった。
Figure 2020066428
中間層を備えない構成の実施例1と比較例1との結果から、2回温水処理の微細凹凸層は、1回温水処理の微細凹凸層と比較していずれの入射角においても低い平均反射率が得られ、良好な反射防止性が得られることが明らかになった。
表3に示す通り、実施例1〜6では、入射角0°で0.2%以下と良好な平均反射率が得られた。入射角を45°、60°と大きくした場合においても、1.5%以下の平均反射率が得られており、対入射角0°に対して、斜め入射時の反射率増加が10倍以下に抑えられ、良好な反射防止性が得られた。実施例7では入射角0°での平均反射率は、他の実施例と比較してやや高いが、入射角0°に対して入射角45°、60°での平均反射率の増加は4倍以下に抑えられており、斜め入射に対する反射率の変化が小さく、良好な反射防止性が得られた。1回温水処理によって得られた微細凹凸層と、高低屈折率層の積層膜からなる屈折率整合層とを備えた構成の比較例2において、入射角0°で非常に低い平均反射率が得られている。一方で、比較例2では、対入射角0°に対して入射角45°では5倍以上、入射角60°では20倍に平均反射率が増加しており、斜め入射により反射防止性能が著しく低下していた。
図16および図17は、それぞれ実施例1および比較例1においてSi基材上に形成した微細凹凸層の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。いずれも倍率5万倍である。図16に示す実施例1の微細凹凸層は590nmの厚さを有し、基材表面から微細凹凸層表面まで板状結晶で構成された、少なくとも表面に微細凹凸を有する層である。一方、図17に示す比較例1の微細凹凸層は325nmの厚さを有する。図16に示す通り、厚さの大きい実施例1の微細凹凸層であっても、微細凹凸層の表面からSi基板表面まで板状結晶により構成されていることが分かる。すなわち、アルミニウムを含む薄膜層の成膜と温水処理を2回以上繰り返すことにより、基材側に水和化していない薄膜層を残すことなく、500nmを超える膜厚の微細凹凸層を形成することに成功した。500nmを超える厚さのアルミナの水和物の板状結晶からなる微細凹凸層は、これまで実際に作製された例はなかった。
2018年9月27日に出願された日本出願特願2018−182735号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (13)

  1. 基材の一面に備えられた、アルミナの水和物の板状結晶を主成分とする微細凹凸層を含む反射防止膜であって、
    前記微細凹凸層は、表面である凸部先端から前記基材側に向かう厚さ方向に徐々に変化して最も前記基材側の界面において最大値となる屈折率プロファイルを有し、前記表面における屈折率が1.01以下であり、該表面から前記厚さ方向に100nmまでの第1の傾斜屈折率領域における最大の屈折率勾配が、反射防止対象とする光の波長域における最も長い波長をλmaxとした場合に0.4/λmax以下である反射防止膜。
  2. 前記微細凹凸層において、前記厚さ方向における前記100nmの位置から前記基材側の前記界面までの第2の傾斜屈折率領域における最大の屈折率勾配が、0.8/λmax以下である請求項1に記載の反射防止膜。
  3. 前記反射防止対象とする光の波長域が400nm〜800nmである請求項1または2に記載の反射防止膜。
  4. 前記屈折率プロファイルにおける前記最大値が1.5以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の反射防止膜。
  5. 前記微細凹凸層の厚さが550nm以上である請求項1から4のいずれか1項に記載の反射防止膜。
  6. 前記基材の、λmaxにおける屈折率が1.5超である請求項1から5のいずれか1項に記載の反射防止膜。
  7. 前記微細凹凸層と前記基材との間に傾斜屈折率層を備え、
    前記傾斜屈折率層は、前記微細凹凸層との界面から前記基材に向かう厚さ方向において、徐々に屈折率が変化する屈折率プロファイルを有し、前記微細凹凸層との界面における屈折率と該界面における前記微細凹凸層の屈折率との差が0.01以下であり、前記基材との界面における屈折率と前記基材の屈折率との差が0.01以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の反射防止膜。
  8. 前記傾斜屈折率層において、前記厚さ方向における最大の屈折率勾配が1.6/λmax以下である請求項7に記載の反射防止膜。
  9. 前記傾斜屈折率層はシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、およびニオブ酸化物のうちいずれか1種以上を主成分とする請求項7または8に記載の反射防止膜。
  10. 前記微細凹凸層と前記基材との間に、相対的に高い屈折率を有する高屈折率層と相対的に低い屈折率を有する低屈折率層とを交互に備えた屈折率整合層を備えた請求項1から6のいずれか1項に記載の反射防止膜。
  11. 基材と、該基材の一面に備えられた請求項1から10のいずれか1項に記載の反射防止膜とを含む光学素子。
  12. 基材上の成膜面にアルミニウムを含む薄膜を形成する薄膜形成工程と、
    該薄膜に対して温水処理を施すことにより、アルミナの水和物を主成分とする板状結晶からなる微細凹凸構造を形成する温水処理工程と、
    前記微細凹凸構造の表面を前記成膜面として、前記薄膜形成工程および前記温水処理工程を繰り返す繰り返し工程と、を含む反射防止膜の製造方法。
  13. 基材上の成膜面にアルミニウムを含む薄膜を形成する薄膜形成工程と、
    前記薄膜に対して温水処理を施すことにより、アルミナの水和物を主成分とする板状結晶からなる微細凹凸構造を形成する温水処理工程と、
    前記微細凹凸構造の表面を前記成膜面として、前記薄膜形成工程および前記温水処理工程を繰り返す繰り返し工程と、を含む微細凹凸構造の形成方法。
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