JPWO2020022198A1 - 気泡噴出方法、電源装置、および、気泡噴出用装置 - Google Patents

気泡噴出方法、電源装置、および、気泡噴出用装置 Download PDF

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Abstract

新たな原理に基づく気泡噴出方法、当該気泡噴出方法を実施するための電源装置、および、気泡噴出用装置を提供する。導電体への気泡噴出方法であって、該気泡噴出方法は、気泡発生用電極を導電体に接触する工程、対向電極を導電体または加工対象物に接触する工程、前記気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加する工程、を含み、前記気泡発生用電極の少なくとも先端部は導電性材料が露出している、気泡噴出方法、により、気泡を噴出できる。

Description

本開示は、気泡噴出方法、電源装置、および、気泡噴出用装置に関する。特に、新たな気泡噴出原理により、導電体に気泡を連続的に噴出できる気泡噴出方法、当該気泡噴出方法を実施するための電源装置、および、気泡噴出用装置に関する。
近年のバイオテクノロジーの発展に伴い、細胞の膜や壁に孔をあけ、細胞から核を除去又はDNA等の核酸物質の細胞への導入等、細胞等の局所加工の要求が高まっている。局所加工技術(以下、「局所アブレーション法」と記載することがある。)としては、電気メス等のプローブを用いた接触加工技術や、レーザー等を用いた非接触アブレーション技術などを用いた方法が広く知られている。
また、細胞等への核酸物質等を導入するための局所的な物理的インジェクション技術(以下、「局所インジェクション方法」と記載することがある。)としては、電気穿孔法、超音波を用いたソノポレーション技術及びパーティクルガン法等が広く知られている。
更に、上記の電気メス等のプローブを用いた接触加工技術、レーザー等を用いた非接触アブレーション技術、電気穿孔法等の細胞等への核酸物質等を導入するための局所的な物理的インジェクション技術以外にも、気泡噴出部材を用いた局所アブレーション法、気液噴出部材を用いた局所アブレーション法、局所インジェクション方法も知られている(特許文献1参照)。
上記特許文献1に記載された気泡噴出部材は、(1)導電材料で形成された芯材と、(2)絶縁材料で形成され、前記芯材を覆い、かつ前記芯材の先端から延伸した部分を含む外郭部と、(3)前記外郭部の延伸した部分及び前記芯材の先端との間に形成された空隙と、(4)前記延伸部の先端(空隙の芯材とは反対側)に形成された気泡噴出口、を含んでいる。そして、気泡噴出部材を用いて気泡を噴出する際には、(5)先ず、気泡噴出部材の少なくとも気泡噴出口および対向電極を溶液に浸漬させ、(6)次に、気泡噴出部材の芯材と対向電極に高周波電圧を印加すると、(7)空隙に気泡が発生し、次いで、空隙で発生した気泡が気泡噴出口から引きちぎられるように放出し、(8)放出した気泡を加工対象物に連続的に放出することで、加工対象物を切削(局所アブレーション)できること、が記載されている。
また、特許文献1には、(9)気泡噴出部材の外郭部の外側に、外郭部と空間を有するように外側外郭部を設け、(10)前記空間にインジェクション物質を溶解及び/又は分散した溶液を導入することで、インジェクション物質が溶解及び/又は分散した溶液が界面に吸着した気泡を発生することができ、(11)該気泡を加工対象物に連続的に放出することで加工対象物を切削するとともに、気泡を覆う溶液に含まれるインジェクション物質を加工対象物にインジェクションできる、ことが記載されている。
上記特許文献1に類似した技術として、気泡噴出口が基板の上方に開口するように気泡噴出部を形成した気泡噴出チップが知られている(特許文献2参照)。特許文献2に記載された気泡噴出チップは、(1)基板、通電部、気泡噴出部を少なくとも含み、(2)前記通電部は、前記基板上に形成され、(3)前記気泡噴出部は、導電材料で形成された電極、絶縁性の感光性樹脂で形成された外郭部及び外郭部から延伸した延伸部を含み、前記外郭部は前記電極の周囲を覆い且つ前記延伸部は前記電極の先端より延伸し、更に、前記気泡噴出部は前記延伸部及び前記電極の先端との間に形成された空隙を含み、(4)前記気泡噴出部の電極は前記通電部上に形成される、ことが記載されている。
国際公開第2013/129657号 国際公開第2017/069085号
上記のとおり、特許文献1に記載の気泡噴出部材および特許文献2に記載の気泡噴出部は、何れも、導電材料で形成された芯材(電極)の周囲を絶縁材料で形成した外殻部で覆い、更に、外殻部から延伸した延伸部と芯材(電極)とで空隙を設けている。そして、気泡は先ず空隙で生成され、そして、気泡噴出口から噴出するため、気泡噴出部材および気泡噴出部は、外殻部から延伸した延伸部が必須の構成要素である。
しかしながら、特許文献1に記載の延伸部は、ガラス等の絶縁材料を加熱して引き切る必要がある。また、特許文献2に記載の延伸部は、フォトリソグラフィ技術を用い、感光性樹脂で形成する必要がある。そのため、気泡噴出部材、気泡噴出部を含む気泡噴出チップの製造工程が煩雑になるという問題がある。
本開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、鋭意研究を行ったところ、(1)導電性材料で形成された気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加することで、(2)気泡発生用電極の先端部が、導電性材料が露出した状態、換言すると、特許文献1および2に記載の延伸部および空隙を形成することなく、気泡発生用電極の先端部から導電体に気泡を噴出できること、を新たに見出した。
すなわち、本開示の目的は、新たな原理に基づく気泡噴出方法、当該気泡噴出方法を実施するための電源装置、および、気泡噴出用装置を提供することである。
本開示は、以下に示す、気泡噴出方法、電源装置、および、気泡噴出用装置に関する。
(1)導電体への気泡噴出方法であって、
該気泡噴出方法は、
気泡発生用電極を導電体に接触する工程、
対向電極を導電体または加工対象物に接触する工程、
前記気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加する工程、
を含み、
前記気泡発生用電極の少なくとも先端部は導電性材料が露出している、
気泡噴出方法。
(2)前記気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加する工程が、
パルス状の電圧を印加し、且つ、
前記気泡発生用電極に、マイナスの電圧から印加を開始する、
上記(1)に記載の気泡噴出方法。
(3)前記気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加する工程に連続して、プラスの電圧を印加する工程を含む、
上記(2)に記載の気泡噴出方法。
(4)前記気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加する工程が、
交番電圧を印加し、
前記交番電圧がマイナス電圧側で振幅する、
上記(1)に記載の気泡噴出方法。
(5)前記気泡発生用電極の導電性材料が露出している先端部以外は、絶縁性材料で被覆されている、
上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の気泡噴出方法。
(6)前記導電体に接触している前記気泡発生用電極の表面積と、前記導電体または加工対象物に接触している前記対向電極の表面積とを比較した場合、前記気泡発生用電極の方が小さい、
上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の気泡噴出方法。
(7)前記気泡発生用電極の先端部が先尖形状である、
上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の気泡噴出方法。
(8)印加する電圧を制御するための制御部を含む電源装置であって、
前記制御部は、
マイナスのパルス状の電圧から印加を開始するように制御する
電源装置。
(9)印加する電圧を制御するための制御部を含む電源装置であって、
前記制御部は、
マイナス電圧側で振幅する交番電圧を印加するように制御する、
電源装置。
(10)気泡発生用電極、および、上記(8)または(9)に記載の電源装置、
を少なくとも含む、気泡噴出用装置。
本明細書で開示する気泡噴出方法は、導電性材料が露出した気泡発生用電極を用いて導電体に気泡を噴出できる。したがって、新しい原理の気泡噴出方法を提供できる。また、電源装置は、新しい原理の気泡噴出方法に好適に用いることができる。更に、当該電源装置と気泡噴出用電極を組み合すことで、新しい原理の気泡噴出用装置を提供できる。
図1は、気泡噴出用装置の実施形態の概略を示す図である。 図2は、気泡発生用電極2の先端部21の例を示す図である。 図3、新規の電源装置3が出力するパルス状の電圧の例を示す図である。 図4は、新規の電源装置3が出力する交番電圧の例を示す図である。 図5Aは、図面代用写真で、実施例1で印加した電圧、電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。図5Bは、図面代用写真で、(1)実施例2で印加した電圧、(2)電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、(3)電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真、である。 図6Aは、図面代用写真で、(1)実施例3で印加した電圧、(2)電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、(3)電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真、である。図6Bは、図面代用写真で、(1)比較例1で印加した電圧、(2)電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、(3)電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。 図7Aは、図面代用写真で、(1)実施例4で印加した電圧、(2)電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、(3)電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真、である。図7Bは、図面代用写真で、(1)実施例5で印加した電圧、(2)電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、(3)電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真、である。 図8は、図面代用写真で、(1)実施例6で印加した電圧、(2)電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、(3)電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真、である。 図9は、図面代用写真で、(1)実施例7で印加した電圧、(2)電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、(3)電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真、である。 図10Aは、図面代用写真で、(1)実施例8で印加した電圧、(2)電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、(3)電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真、である。図10Bは、図面代用写真で、(1)比較例2で印加した電圧、(2)電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、(3)電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真、である。 図11は、図面代用写真で、(1)実施例9で印加した電圧、(2)電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、(2)電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真、である。 図12は、図面代用写真で、実施例10および11で噴出した気泡の位置を比較するため、ハイスピードカメラのフレームを解析した写真である。 図13Aは図面代用写真で、実施例12において、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。図13Bは図面代用写真で、比較例3において、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。
以下に、図面を参照しながら、気泡噴出方法、電源装置、および、気泡噴出用装置について、詳しく説明する。
(気泡噴出用装置の実施形態)
図1は、気泡噴出用装置の実施形態の概略を示す図である。気泡噴出用装置1は、気泡発生用電極2、電源装置3を少なくとも含んでいる。対向電極4は、気泡噴出用装置1を構成する部材としてもよいし、気泡噴出用装置1とは別体として、必要に応じて準備してもよい。また、気泡発生用電極2と電源装置3、および、対向電極4と電源装置3は、予め電線5で接続してあってもよいし、必要に応じて、接続してもよい。
気泡発生用電極2は、導電性材料で形成され、先端部21は導電性材料が露出している。導電性材料としては、電気を通し電極として使用できるものであれば特に制限はないが、好ましくは金属で、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、白金、タングステン等、これらにスズ、マグネシウム、クロム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、イリジウムなどを加えた合金、例えば、ステンレス等が挙げられる。また、金属以外では、カーボン等が挙げられる。
気泡発生用電極2の少なくとも先端部は導電性材料が露出している。換言すると、気泡発生用電極2は、全てが導電性材料で形成されていてもよいし、先端部21以外の部分は絶縁性材料で被覆されていてもよい。なお、本明細書において「先端部」とは、気泡発生用電極2の導電体Lに接触する側の端部を意味する。本明細書で開示する気泡噴出方法は、気泡発生用電極2の先端にマイナスの電界を集中させることで気泡が噴出する。したがって、電界を集中し易くするため、先端部21は非常に小さいことが好ましい。先端部21を絶縁性材料で被覆する場合は、例えば、導電性材料で電極本体を作製後、絶縁性材料に浸漬、絶縁性材料を塗付または絶縁性材料を蒸着することで電極本体の周囲を先ず被覆し、次いで、電極本体の先端部21の絶縁性材料を除去することで、先端部21の導電性材料を露出すればよい。また、絶縁性材料で形成したチューブに、先端部21が露出するように電極を嵌め込んでもよい。
絶縁性材料としては、電気を絶縁するものであれば特に限定はなく、例えば、ガラス、マイカ、石英、窒化ケイ素、酸化ケイ素、セラミック、アルミナ、等の無機系絶縁材料、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム等ゴム材料、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、シラン変性オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン系樹脂、弗素系樹脂、シリコン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース系樹脂、UV硬化樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられる。
図2は気泡発生用電極2の先端部21の例を示す図である。気泡発生用電極2は、先端部21が小さいほど電界は集中し易くなることから、可能な限り先端部21が小さくなるように作製すればよい。例えば、図2Aに示すように、上記の導電性材料で可能な限り直径が小さい細線を作製し切断することで作製できる。また、図2Bおよび図2Cに示すように、先ず細線を作製し、次いで、先端を研磨することで気泡発生用電極2の先端部21に向けて先尖状となるように形成してもよい。なお、先尖状とする際には、角錐等のエッジがある形状ではなく、円錐等のエッジが無い形状の方が好ましい。換言すると、気泡発生用電極2の断面が角を有しない曲面で形成され、先端部21に近づくほど断面積が小さくなる形状が好ましい。なお、図2Bおよび図2Cに示す先端部21は一つであるが、図2Dに示すように、先端部21は2以上形成してもよい。
後述する実施例および比較例に示すとおり、本明細書で開示する気泡噴出方法は、気泡発生用電極2にマイナスの電圧を印加することで、気泡発生用電極2の先端から気泡を噴出することができる。したがって、気泡噴出方法に用いる電源装置は、マイナスの電圧を印加できるものであれば特に制限はない。
ところで、後述する実施例および比較例に示すとおり、気泡発生用電極2に印加する電圧は、先ずマイナスのパルス状の電圧を印加、或いは、マイナス電圧側で振幅する電圧を印加することが好ましい。しかしながら、電気はプラスからマイナスに流れるため、一般的に市販されている電源装置は、プラスの電圧から印加するように設計されている。そのため、本明細書で開示する電源装置3は、プログラム設計により、先ずマイナスのパルス状の電圧を印加、或いは、マイナス電圧側で振幅する電圧を印加できるように作製している。図1に示す電源装置3では、新たに設計したプログラムを制御部31に記憶している。つまり、気泡噴出用装置の実施形態で開示する電源装置3は、新規の電源装置である。
図3は、新規の電源装置3が出力する(気泡発生用電極2に印加される)パルス状の電圧の例を示す図である。図3Aはマイナスのパルス状の電圧を一回印加する例を示しており、図3Bはマイナスのパルス状の電圧を2回印加する例を示している。なお、複数回印加する場合、回数に特に制限はない。また、図3Cは、マイナスのパルス状の電圧を印加する工程に連続して、プラスのパルス状の電圧を印加する例を示している。後述する実施例に示すとおり、本明細書で開示する気泡噴出方法は、(1)気泡発生用電極2にマイナスの電圧が印加されている時に気泡Bが生成し、(2)マイナスから相対的にプラス方向の電圧が印加される時に、気泡発生用電極2から対向電極4に向かう導電体の流れが発生し、(3)発生した導電体の流れが生成した気泡Bを押し出す(気泡Bが噴出する)と考えられる。したがって、パルス状の電圧を印加する場合は、最初にマイナスの電圧から印加されれば、連続してプラスの電圧が印加されてもよい。なお、本明細書において「連続」とは、図3Cに示すようにマイナスからプラスにダイレクトに電圧が変化してもよいし、生成した気泡Bの噴出に影響がない範囲内であれば、図3Dに示すように、マイナスからプラスの電圧を印加する際に、電圧が印加されない時間(0Vの時間)があってもよい。また、図3Cおよび図3Dに示す「マイナスの電圧を印加→プラスの電圧を印加」を一セットとした場合、当該セットを複数回繰り返してもよい。
図4A、B、および、Dは、新規の電源装置3が出力する(気泡発生用電極2に印加される)交番電圧の例を示す図である。交番電圧を気泡発生用電極2に印加する場合は、マイナス電圧側で振幅する電圧を印加すればよい。例えば、図4Aに示すように、マイナス電圧側で常に振幅する例が挙げられる。また、図4Bに示すように、最初の電圧印加時に一端プラス電圧を印加した後、マイナス電圧側で振幅しながらマイナス電圧を印加する交番電圧であってもよい。ただし、図4Cに示すように、最初にマイナス電圧を印加しても、その後、プラス電圧側で振幅しながらプラス電圧を印加する交番電圧の場合、気泡は噴出するが、気泡発生用電極2から噴出する気泡が少なくなる。したがって、新規の電源装置3が出力する「マイナス電圧側で振幅する電圧」とは、図4Aに示すように振幅の全てがマイナス電圧側で行われることに加え、図4B及び図4Dに示すように、振幅の大部分がマイナス電圧側で行われていることを意味する。例えば、図4Dに示すように、マイナス電圧側の任意のピークの絶対値(V2)が、隣接するプラス方向のピークのプラス成分の絶対値(V1、V3)より大きい電圧を意味する。
気泡発生用電極2に印加する電圧、換言すると、電源装置3が出力する電圧は、気泡発生用電極2から気泡を噴出できれば特に制限はない。気泡発生用電極2の材料、大きさ、電界が集中する先端部の形状、および、気泡噴出用電極2を接触させる導電体の種類と対向電極4を接触させる導電体または加工対象物の種類に応じて、印加する電圧を適宜設定すればよい。電源装置3が出力する電圧がパルス状の電圧の場合、パルス幅、複数のパルスを印加する場合のパルス間隔、出力する電流等は、気泡発生用電極2から気泡を噴出できる範囲であれば特に制限はなく、適宜設定すればよい。また、電源装置3が出力する電圧が交番電圧の場合、周波数、出力する電流等は、気泡発生用電極2から気泡を噴出できる範囲であれば特に制限はなく、適宜設定すればよい。
対向電極4は電気が通るものであれば特に制限はなく、気泡発生用電極2と同様の材料を用いればよい。気泡発生用電極2と対向電極4は、同じ材料であってもよいし、異なっていてもよい。また、対向電極4は露出した導電性材料を導電体または加工対象物に接触することができれば形状等に特に制限はなく、線状、板状等の任意に形状であればよい。なお、気泡発生用電極2は、電界が集中するように小さくすることが好ましいが、対向電極4は小さくする必要はない。したがって、対向電極4は気泡発生用電極2より大きくてもよい。換言すると、導電体に接触している気泡発生用電極の表面積と、導電体または加工対象物に接触している対向電極の表面積とを比較した場合、気泡発生用電極2の方が小さい。
(気泡噴出用方法の実施形態)
次に、図1を参照して、気泡噴出方法の実施形態について説明をする。気泡噴出方法の実施形態は、(1)気泡発生用電極2を導電体Lに接触する工程、(2)対向電極を導電体Lまたは加工対象物に接触する工程、(3)気泡発生用電極2にマイナスの電圧を印加する工程、を少なくとも含んでいる。気泡発生用電極2から気泡を噴出するためには、気泡発生用電極2の先端部21を導電体Lに接触(浸漬)させる必要がある。一方、対向電極4は、気泡発生用電極2と回路が形成されればよい。したがって、図1に示すように、対向電極4および気泡発生用電極2を、導電体Lに接触(浸漬)してもよいし、あるいは、後述する加工対象物が導電性の場合、加工対象物の少なくとも一部を導電体Lに接触させ、気泡発生用電極2は導電体Lに接触し、対向電極4は加工対象物に直接接触するようにしてもよい。
導電体Lは、気泡発生用電極2および対向電極4が通電でき、気泡を噴出できるものであれば特に制限はなく、液体、気泡の噴出を妨げない程度の粘度の粘性液体、或いは、液体または粘性液体と固体の混合物等が挙げられる。液体としては、例えば、水、または、水にKCl、NaCl、等の塩を溶解、或いは、生物分野で用いられているPBS等の緩衝液、培地等が挙げられる。粘性液体としては、前記液体に増粘剤を添加したもの、或いは、血液等の生体成分が挙げられる。液体または粘性液体と固体の混合物とは、導電性の体液を多量に含む生体組織が挙げられる。
導電体Lに気泡発生用電極2を接触させ、対向電極4を導電体Lまたは加工対象物に接触した後に、気泡発生用電極2にマイナスの電圧を印加することで、気泡発生用電極2の先端部21から導電体Lに気泡Bを噴出することができる。
また、特許文献1および2に記載のように、本明細書で開示する気泡噴出方法により気泡発生用電極2から噴出した気泡Bを加工対象物に衝突させることで、加工対象物を局所的にアブレーションすることができる。また、導電体Lとして液体を用いた場合、液体に、DNAやRNA等の核酸、タンパク質、アミノ酸、水溶性の薬剤、或いは、窒素・へリウム・二酸化炭素・アルゴン等の気体状のインジェクション物質を溶解しておくことで、加工対象物を局所的にアブレーションしながら、インジェクション物質を加工対象物にインジェクションすることもできる。
加工対象物としては、気泡によりアブレーションできるものであれば特に制限は無く、動物、葉や種等の植物、微生物等の生体、該生体から分離した組織や細胞、或いは、タンパク質等が挙げられる。細胞としては、ヒトまたは非ヒト動物の組織から単離した幹細胞、皮膚細胞、粘膜細胞、肝細胞、膵島細胞、神経細胞、軟骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、骨細胞、筋細胞、卵細胞等の動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、大腸菌、酵母、カビなどの微生物細胞などの細胞を挙げることができる。また、生体以外では、樹脂や金属等が挙げられる。
アブレーションは、例えば、導電体として液体を用い、液体に浸漬した気泡発生用電極2および対向電極4の間に加工対象物を配置し、気泡発生用電極2にマイナスの電圧を印加することで噴出した気泡を加工対象物に衝突させることで実施できる。なお、上記のとおり、加工対象物が導電性の場合は、対向電極4は加工対象物に直接接触させてもよい。また、加工対象物が導電体(導電性の体液を多量に含む生体組織等)の場合は、気泡発生用電極2および対向電極4を加工対象物に接触させ、気泡発生用電極2にマイナスの電圧を印加することで、加工対象物を直接アブレーションできる。
以下に実施例を掲げ、各実施形態を具体的に説明するが、この実施例は単にその具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は、発明の範囲を限定したり、あるいは制限するものではない。
[交番電圧を気泡発生用電極に印加した実施例]
<実施例1>
(気泡噴出用装置の作製)
先ず、ステンレスで細線を作製し、細線の先端部を研磨加工することで先端部が略円錐状の気泡発生用電極を作製した。図5A(2)に作製した気泡発生用電極の先端部の写真を示す。なお、写真右側の広がり部分は浸水を防ぐために塗布した接着剤である。先端部の長さ(図5A(2)中の矢印で示した部分の紙面上下方向の長さ)は約0.3mmであった。次に、アルミ板(5mm×10mm×0.044mm)で対向電極を作製した。次に、電源装置としてHyfrecator2000(ConMed(株))を用い、電源装置と気泡噴出電極および対向電極とを、電線で接続した。なお、気泡発生用電極に印加される電圧は、最初はプラス電圧が印加されるが、その後はマイナス電圧側で振幅が起きるようにプログラムを改良した。
(気泡噴出方法の実施)
作製した気泡噴出用装置の気泡発生用電極の先端部と対向電極を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS:Wako 163−25265 10×PBS(−)を10倍希釈)に浸漬した。なお、対向電極の5mm×5mm×0.044mmの体積を浸漬した。次に、Hyfrecator2000をHiモード(5W)、振幅回数5回を1セットとし、連続して300セットに条件設定し、電圧を印加した。気泡発生用電極の先端部の状況は、ハイスピードカメラ(DITECT社製 HAS−U2)を用い、1500fpsの条件で撮影した。図5A(1)の矢印は気泡発生用電極に印加した1セット当たりの電圧の変化(矢印で示す電圧の変化のグラフの下方のグラフは、電流の変化を表す。以下の図においても同様である。)、図5A(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図5A(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真で、矢印で示した部分が噴出した気泡である。
<実施例2>
(気泡噴出用装置の作製)
電源装置としてHyfrecator2000(ConMed(株))をそのまま用い、気泡発生用電極に印加される電圧が、最初はマイナス電圧が印加されるが、その後はプラス電圧側で振幅が起きるようにした以外は、実施例1と同様の手順で気泡噴出用装置を作製した。
(気泡噴出方法の実施)
気泡発生用電極に印加される電圧が、プラス電圧側で振幅が起きた以外は、実施例1と同様の手順で気泡噴出方法を実施した。図5B(1)の矢印は気泡発生用電極に印加した電圧の変化、図5B(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図5B(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。
図5A(1)に示すように、気泡発生用電極にマイナス電圧側で振幅した電圧を印加した場合、図5A(3)の矢印に示すように、気泡発生用電極の先端部から気泡の噴出を確認した。一方、図5B(1)に示すように、気泡発生用電極に最初にマイナス電圧を印加し、次いで、プラス電圧側で振幅した電圧を印加した場合、図5B(3)に示すように、気泡発生用電極の先端部に気泡の噴出は確認をしたが、実施例1より気泡の噴出の程度は低かった。以上の結果より、(1)交番電圧を気泡発生用電極に印加する場合、マイナス電圧を気泡発生用電極に印加することで、気泡発生用電極の先端から気泡を噴出できること、(2)電圧以外の条件が同じ場合、マイナス電圧側で振幅が起きるように電圧を印加する方が好ましいこと、が明らかとなった。
[パルス状の電圧を気泡発生用電極に印加した実施例および比較例]
<実施例3>
(気泡噴出用装置の作製)
ステンレスに代え、銅を用いた以外は実施例1と同様の手順で先端部がやや斜めにカットされた略円錐状の気泡発生用電極を作製した。図6A(2)に作製した気泡発生用電極の先端部の写真を示す。また、電源装置としてHyfrecator2000(ConMed(株))に代え、CFB16(株式会社ベックス社製)を用い、0Vからマイナス方向への電圧の立上りが約dV/dt=10V/1μs、パルス印加後に0V方向への電圧の立下りが約dV/dt=10V/1μs、気泡発生用電極にマイナスのパルス状の電圧を印加できるようにプログラムを改良した以外は、実施例1と同様の手順で気泡噴出用装置を作製した。
(気泡噴出方法の実施)
PBSに代え2mMKClを用い、マイナス1000V、パルス幅が3μs、パルス間隔が150μsのパルス状の電圧を50回連続して印加した以外は、実施例1と同様の手順で気泡噴出方法を実施した。図6A(1)の矢印は気泡発生用電極に印加したパルス一回当たりの電圧の変化、図6A(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図6A(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真で、矢印で示した部分が噴出した気泡である。
<比較例1>
(気泡噴出用装置の作製)
実施例3の電源装置を、マイナスに代えプラス電圧を印加できるように改良した以外は、実施例3と同様の手順で気泡噴出用装置を作製した。
(気泡噴出方法の実施)
気泡発生用電極に印加される電圧が、プラスのパルス状の電圧であった以外は、実施例3と同様の手順で気泡噴出方法を実施した。図6B(1)の矢印は気泡発生用電極に印加した電圧の変化、図6B(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図6B(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。
図6A(1)に示すように、気泡発生用電極にマイナスのパルス状の電圧を印加した場合、図6A(3)の矢印に示すように、気泡発生用電極の先端部から気泡の噴出を確認した。一方、図6B(1)に示すように、気泡発生用電極にプラスのパルス状の電圧を印加した場合、図6B(3)に示すように、気泡発生用電極の先端部に気泡は発生しなかった。以上の結果より、パルス状の電圧を気泡発生用電極に印加する場合は、マイナスのパルス状の電圧を印加すると、気泡発生用電極の先端部から気泡を噴出できることが明らかとなった。
<実施例4>
次に、マイナスのパルス状の電圧に連続して、プラスの電圧を印加するように電源装置を改良し、2mMKClに代え0.5×PBSを用い、プラスおよびマイナスの電圧を600V、パルス幅をプラスおよびマイナス電圧とも6μsとし、パルス間隔(プラスのパルスを印加終了後、次のマイナスのパルスを印加するまでの時間)を100μsとし、マイナス→プラス電圧のパルスの印加を1セットとした場合、連続して50セット印加した以外は、実施例3と同様の手順で気泡噴出用装置の作製および気泡噴出方法を実施した。図7A(1)の矢印は気泡発生用電極に印加した1セットのパルスの電圧の変化、図7A(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図7A(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真で、矢印で示した部分が噴出した気泡である。
<実施例5>
プラスの電圧に連続して、マイナスの電圧を印加するように電源装置を改良した以外は、実施例4と同様の手順で気泡噴出用装置の作製および気泡噴出方法を実施した。図7B(1)の矢印は気泡発生用電極に印加した電圧の変化、図7B(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図7B(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。
図7A(1)に示すように、気泡発生用電極にマイナス→プラスのパルス状の電圧を連続して印加した実施例4では、図7A(3)の矢印に示すように、気泡発生用電極の先端部から多くの気泡の噴出を確認した。一方、図7B(1)に示すように、気泡発生用電極にプラス→マイナスのパルス状の電圧を連続して印加した場合、図7B(3)に示すように、気泡発生用電極の先端部から気泡の噴出を確認したが、マイナス→プラスのパルス状の電圧を印加した実施例4より気泡の噴出の程度は低かった。以上の結果より、マイナスおよびプラスのパルス状の電圧を交互に気泡発生用電極に印加する場合、電圧以外の条件が同じなら気泡発生用電極にマイナスのパルス状の電圧から印加することが好ましいことが明らかとなった。
<実施例6>
気泡発生用電極の材料としてタングステンを用い、0.5×PBSに代え2mMKClを用い、プラスおよびマイナスの電圧を1000V、パルス幅をプラスおよびマイナス電圧とも2μsとした以外は、実施例5と同様の手順で気泡噴出用装置の作製および気泡噴出方法を実施した。図8(1)の矢印は気泡発生用電極に印加した電圧の変化、図8(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図8(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。
図8に示すように、気泡発生用電極にプラス→マイナスのパルス状の電圧を連続して印加した場合でも、図8(3)の矢印に示すように、気泡発生用電極の先端部から多くの気泡の噴出を確認した。実施例3〜6および比較例1の結果より、(1)マイナスおよびプラスのパルス状の電圧を交互に気泡発生用電極に印加する場合、電圧以外の条件が同じなら気泡発生用電極にマイナスのパルス電圧から印加することが好ましいこと、(2)気泡発生用電極の材料や形状、パルス幅や電圧の絶対値等を調整することで、気泡発生用電極にプラス→マイナスのパルス状の電圧を連続して印加した場合でも気泡発生用電極から気泡を噴出できること、(3)つまり、気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加すれば気泡を噴出できること、を確認した。
<実施例7>
次に、気泡発生用電極の先端を平面状に研磨し、印加する電圧を1200Vとした以外は、実施例3と同様の手順で気泡噴出用装置の作製および気泡噴出方法を実施した。図9(1)の矢印は気泡発生用電極に印加した電圧の変化、図9(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図9(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真で、矢印で示した部分が噴出した気泡である。
図9(1)に示すように、気泡発生用電極にマイナスのパルス状の電圧を印加した場合、図9(3)の矢印に示すように、放射状の気泡の噴出を確認した。これは、気泡発生用電極の先端部が平面状であることから、先端部に円周状に電界が集中したためと考えられる。以上の結果より、気泡発生用電極にマイナスのパルス状の電圧を印加した場合は、気泡発生用電極の電界が集中し易い箇所から気泡が噴出することが明らかとなった。
<実施例8>
次に、気泡発生用電極の先端を断面形状が直角三角錐形状となるように研磨し、印加する電圧を1150Vとした以外は、実施例3と同様の手順で気泡噴出用装置の作製および気泡噴出方法を実施した。図10A(1)の矢印は気泡発生用電極に印加した電圧の変化、図10A(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図10A(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真で、矢印で示した部分が噴出した気泡である。
<比較例2>
プラスの電圧を印加するように電源装置を改良した以外は、実施例8と同様の手順で気泡噴出用装置の作製および気泡噴出方法を実施した。図10B(1)の矢印は気泡発生用電極に印加した電圧の変化、図10B(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図10B(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。
図10A(1)に示すように、気泡発生用電極にマイナスのパルス状の電圧を印加した場合は実施例3と同様、図10A(3)の矢印に示すように、先端部の尖った部分から気泡の噴出を確認した。一方、図10B(1)に示すように、気泡発生用電極にプラスのパルス状の電圧を印加した場合、図10B(3)に示すように、気泡発生用電極の先端部に気泡は発生しなかった。以上の結果より、気泡の噴出には気泡発生用電極にマイナスの電圧の印加が必要で、気泡発生用電極にマイナスのパルス状の電圧を印加すると、気泡発生用電極の電界が集中し易い箇所から気泡が噴出することが明らかとなった。
<実施例9>
次に、気泡発生用電極の材料としてステンレスを用い、実施例3、7、8より先端が鋭角となるように研磨した気泡発生用電極を作製した。そして、印加電圧を1200Vとした以外は、実施例3と同様の手順で気泡噴出用装置の作製および気泡噴出方法を実施した。図11(1)の矢印は気泡発生用電極に印加した電圧の変化、図11(2)は電圧を印加する前の気泡発生用電極の先端部の写真、図11(3)は、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真で、矢印で示した部分が噴出した気泡である。
実施例9に示す気泡発生用電極を用いた場合、図11(3)(実施例9)、図6A(3)(実施例3)、図9(3)(実施例7)および図10A(3)(実施例8)の比較から明らかなように、気泡発生用電極の先端部から指向性のある連続した気泡が噴出されることを確認した。これは、先端部が他の実施例より尖っているため、電界が集中し易かったためと考えられる。以上の結果より、電界は尖った部分に集中することから、気泡の噴出目的に応じて、先端部の尖った箇所の数、尖り具合を調整すればよいことが明らかとなった。
[マイナスのパルス状の電圧を連続して印加した場合とマイナス−プラスのパルス状電圧のセットを連続して印加した場合の比較]
<実施例10>
次に、ステンレスを用い先端を研磨することで作製した気泡発生用電極を用い、実施例10では、実施例3と同様の手順でパルス状の電圧を印加した。なお、ハイスピードカメラは、800fpsで撮影を行った。
<実施例11>
気泡発生用電極に、マイナス1000Vのパルス状の電圧に連続して、プラス1000Vの電圧を印加した以外は、実施例10と同様の手順で撮影を行った。
次に、実施例10および実施例11のハイスピードカメラのフレームを解析することで、マイナスのパルス状の電圧を印加後、1.25ms、2.5ms経過後に最も遠くまで噴出した気泡の位置を解析した。図12の上段は実施例10、下段は実施例11の解析写真で、写真中の点線は噴出した気泡の到達位置を表す。図12の写真から明らかなように、実施例11のマイナス1000Vのパルス状の電圧に連続して、プラスの電圧を印加した方が、マイナス1000Vのパルス状の電圧を印加した実施例10の気泡より、遠くまで到達した。マイナス電圧のパルス幅は3μs、続いて印加するプラス電圧のパルス幅は3μsである。したがって、1.25ms、2.5msは、最初のパルス状の電圧を印加後、十分に時間が経過していることから、気泡の到達位置の違いは、印加するパルス状の電圧の違いが、気泡噴出力に影響を与えたといえる。以上の結果より、気泡発生用電極にマイナスのパルス状の電圧に連続して、プラスの電圧を印加した方が、気泡の噴出力が強くなることが明らかとなった。
[気泡が噴出する原理の検討]
<実施例12>
先ず、プラチナとイリジウムの合金(PTIR、プラチナ:イリジウム=9:1)を材料に直径約0.1mmの細線を作製し、先端部を研磨することで気泡発生用電極を作製した。次に、パルス幅が2μs、マイナス600Vのパルス状の電圧を印加した以外は、実施例3と同様の手順で気泡噴出方法を実施した。
<比較例3>
プラス600Vのパルス状の電圧を印加した以外は、実施例12と同様の手順で気泡噴出方法を実施した。
図13Aは、実施例12において、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。図13Bは、比較例3において、電圧を印加後の気泡発生用電極の先端部の写真である。図13Aおよび図13Bの白丸部分に示すように、実施例12および比較例3の両方で水流の発生が確認された。更に、図13Aの点線で囲った部分は、気泡の発生も認められた。以上の結果より、(a)気泡はマイナスの電圧が印加された時のみに生成し、(b)図13Aおよび図13Bの黒色矢印が示すように、相対的にプラス方向に電圧が変化した時に水流が発生し、(c)発生した水流により気泡が気泡発生用電極の先端部から噴出すると考えられる。このことは、実施例11(図12の下段)のマイナスのパルス状の電圧に連続して、プラスの電圧を印加、換言すると、相対的にプラス方向の電圧の変化量が大きい方が、実施例10(図12の上段、マイナスの電圧のパルスを印加)より遠くまで気泡が噴出したことからも裏付けられる。
本明細書で開示する気泡噴出方法に用いる気泡発生用電極2は、導電性材料が露出しているので簡単に作製することができる。したがって、畜産・農林水産分野等、気泡により加工対象物を加工する分野において有用である。
1…気泡噴出用装置、2…気泡発生用電極、3…電源装置、4…対向電極、5…電線、21…先端部、31…制御部、B…気泡、L…導電体

Claims (10)

  1. 導電体への気泡噴出方法であって、
    該気泡噴出方法は、
    気泡発生用電極を導電体に接触する工程、
    対向電極を導電体または加工対象物に接触する工程、
    前記気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加する工程、
    を含み、
    前記気泡発生用電極の少なくとも先端部は導電性材料が露出している、
    気泡噴出方法。
  2. 前記気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加する工程が、
    パルス状の電圧を印加し、且つ、
    前記気泡発生用電極に、マイナスの電圧から印加を開始する、
    請求項1に記載の気泡噴出方法。
  3. 前記気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加する工程に連続して、プラスの電圧を印加する工程を含む、
    請求項2に記載の気泡噴出方法。
  4. 前記気泡発生用電極にマイナスの電圧を印加する工程が、
    交番電圧を印加し、
    前記交番電圧がマイナス電圧側で振幅する、
    請求項1に記載の気泡噴出方法。
  5. 前記気泡発生用電極の導電性材料が露出している先端部以外は、絶縁性材料で被覆されている、
    請求項1〜4の何れか一項に記載の気泡噴出方法。
  6. 前記導電体に接触している前記気泡発生用電極の表面積と、前記導電体または加工対象物に接触している前記対向電極の表面積とを比較した場合、前記気泡発生用電極の方が小さい、
    請求項1〜5の何れか一項に記載の気泡噴出方法。
  7. 前記気泡発生用電極の先端部が先尖形状である、
    請求項1〜6の何れか一項に記載の気泡噴出方法。
  8. 印加する電圧を制御するための制御部を含む電源装置であって、
    前記制御部は、
    マイナスのパルス状の電圧から印加を開始するように制御する
    電源装置。
  9. 印加する電圧を制御するための制御部を含む電源装置であって、
    前記制御部は、
    マイナス電圧側で振幅する交番電圧を印加するように制御する、
    電源装置。
  10. 気泡発生用電極、および、請求項8または9に記載の電源装置、
    を少なくとも含む、気泡噴出用装置。
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