JPWO2019208490A1 - 電磁波透過性金属光沢物品及びその製造方法 - Google Patents

電磁波透過性金属光沢物品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、凹凸面を有する基体(10)と、前記基体(10)の前記凹凸面上に形成された金属層(12)とを備え、前記金属層(12)は、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分(12a)を含む電磁波透過性金属光沢物品(1)に関する。

Description

本発明は、電磁波透過性金属光沢物品及びその製造方法に関する。
従来、電磁波透過性及び金属光沢を有する部材が、その金属光沢に由来する外観の高級感と、電磁波透過性とを兼ね備えることから、電磁波を送受信する装置に好適に用いられている。
例えば、フロントグリル、エンブレムといった自動車のフロント部分に搭載されるミリ波レーダーのカバー部材に装飾を施した、光輝性と電磁波透過性の双方を兼ね備えた金属光沢物品が求められている。
ミリ波レーダーは、ミリ波帯の電磁波(周波数約77GHz、波長約4mm)を自動車の前方に送信し、ターゲットからの反射波を受信して、反射波を測定、分析することで、ターゲットとの距離や、ターゲットの方向、サイズを計測することができるものである。
計測結果は、車間計測、速度自動調整、ブレーキ自動調整などに利用することができる。
このようなミリ波レーダーが配置される自動車のフロント部分は、いわば自動車の顔であり、ユーザに大きなインパクトを与える部分であるから、金属光沢調のフロント装飾で高級感を演出することが好ましい。しかしながら、自動車のフロント部分に金属を使用した場合には、ミリ波レーダーによる電磁波の送受信が実質的に不可能、或いは、妨害されてしまう。したがって、ミリ波レーダーの働きを妨げることなく、自動車の意匠性を損なわせないために、光輝性と電磁波透過性の双方を兼ね備えた金属光沢物品が必要とされている。
この種の金属光沢物品は、ミリ波レーダーのみならず、通信を必要とする様々な機器、例えば、スマートキーを設けた自動車のドアハンドル、車載通信機器、携帯電話、パソコン等の電子機器等への応用が期待されている。更に、近年では、IoT技術の発達に伴い、従来は通信等行われることがなかった、冷蔵庫等の家電製品、生活機器等、幅広い分野での応用も期待されている。
金属光沢部材に関して、日本国特開2007−144988号公報(特許文献1)には、クロム(Cr)又はインジウム(In)より成る金属被膜を含む樹脂製品が開示されている。この樹脂製品は、樹脂基材と、当該樹脂基材の上に成膜された無機化合物を含む無機質下地膜と、当該無機質下地膜の上に物理蒸着法により成膜された光輝性及び不連続構造のクロム(Cr)又はインジウム(In)よりなる金属皮膜を含む。無機質下地膜として、特許文献1では、(a)金属化合物の薄膜、例えば、酸化チタン(TiO、TiO、Ti等)等のチタン化合物;酸化ケイ素(SiO、SiO等)、窒化ケイ素(Si等)等のケイ素化合物;酸化アルミニウム(Al)等のアルミニウム化合物;酸化鉄(Fe)等の鉄化合物;酸化セレン(CeO)等のセレン化合物;酸化ジルコン(ZrO)等のジルコン化合物;硫化亜鉛(ZnS)等の亜鉛化合物等、(b)無機塗料の塗膜、例えば、シリコン、アモルファスTiO等(その他、上記例示の金属化合物)を主成分とする無機塗料による塗膜が使用されている。
一方、日本国特開2009−298006号公報(特許文献2)には、クロム(Cr)又はインジウム(In)のみならず、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)をも金属膜として形成することができる電磁波透過性光輝樹脂製品が開示されている。
日本国特開2010−5999号公報(特許文献3)には金属膜層を母材シートに形成し、母材シートに、張力を負荷しつつ、加熱処理を行うことによりクラックを有する電磁波透過性の金属膜加飾シートを製造する方法が記載されている。
日本国特開2007−144988号公報 日本国特開2009−298006号公報 日本国特開2010−5999号公報
従来技術における金属光沢物品は、一般的には平滑面に金属層を形成したものである。しかしながら、金属光沢物品の意匠に対するニーズは多様化しており、例えばマットな質感を有する金属光沢物品や、幾何学的な模様を配した外観を有する金属光沢物品も望まれている。
本願発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その課題は、新規な質感及び/又は外観を有する電磁波透過性金属光沢物品を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、凹凸面を有する基体を用いることで、新規な質感及び/又は外観を有する電磁波透過性金属光沢物品を提供することができることを見出した。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品は、凹凸面を有する基体と、前記基体の前記凹凸面上に形成された金属層とを備え、前記金属層は、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含む。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様において、前記基体と前記金属層の間に、酸化インジウム含有層をさらに備えることが好ましい。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様において、前記酸化インジウム含有層は連続状態で設けられていることが好ましい。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様において、前記酸化インジウム含有層は、酸化インジウム(In)、インジウム錫酸化物(ITO)、又はインジウム亜鉛酸化物(IZO)のいずれかを含むことが好ましい。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様において、前記酸化インジウム含有層の厚さは、1nm〜1000nmであることが好ましい。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様において、前記凹凸面の最大高さRzは1〜100μmであることが好ましい。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様において、前記金属層の厚さは、10nm〜100nmであることが好ましい。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様において、前記金属層の厚さと前記酸化インジウム含有層の厚さとの比(前記金属層の厚さ/前記酸化インジウム含有層の厚さ)は、0.02〜100であってもよい。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様は、シート抵抗が、100Ω/□以上であってもよい。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様において、前記複数の部分は島状に形成されていてもよい。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様において、前記金属層は、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、銅(Cu)、銀(Ag)、又はこれらの合金のいずれかであることが好ましい。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の一態様において、前記基体は、基材フィルム、樹脂成型物基材、ガラス基材、又は金属光沢を付与すべき物品のいずれかであることが好ましい。
また、本発明の電磁波透過性金属光沢物品の製造方法は、前記基体の前記凹凸面上にスパッタリングにより金属層を形成することを含む。
本発明の電磁波透過性金属光沢物品の製造方法の一態様においては、前記基体の前記凹凸面上に酸化インジウム含有層を形成した後に、前記酸化インジウム含有層上にスパッタリングにより金属層を形成することが好ましい。
本発明によれば、新規な質感及び/又は外観を有する電磁波透過性金属光沢物品を提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、凹凸面を有する基体の凹凸面状にムラの少ない金属層が形成された電磁波透過性金属光沢物品を容易に提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態による電磁波透過性金属光沢物品の概略断面図である。 図2は、本発明の一実施形態による電磁波透過性金属光沢物品の概略断面図である。 図3は、金属層の不連続構造について説明するための電子顕微鏡写真(SEM画像)である。 図4は、本発明の一実施形態による電磁波透過性金属光沢物品の金属層の膜厚の測定方法を説明するための図である。 図5は、本発明の一実施形態における金属層の断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM画像)を示す図である。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一つの好適な実施形態について説明する。以下においては、説明の便宜のために本発明の好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。
<1.基本構成>
図1に、本発明の一実施形態による電磁波透過性金属光沢物品(以下、「金属光沢物品」という。)1の概略断面図を示し、図3に、本発明の一実施形態による金属光沢物品の表面の電子顕微鏡写真(SEM画像)の例を示す。また、図5に、本発明の一実施形態における島状構造の金属層11の断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM画像)を示す。
金属光沢物品1は、凹凸面を有する基体10と、基体10の凹凸面10aの上に形成された、金属層12を含む。
金属層12は基体10の凹凸面の上に形成される。金属層12は複数の部分12aを含む。金属層12におけるこれらの部分12aは、少なくとも一部において互いに不連続の状態、言い換えれば、少なくとも一部において隙間12bによって隔てられる。隙間12bによって隔てられるため、金属光沢物品のシート抵抗は大きくなり、電波との相互作用が低下するため、電波を透過させることができる。これらの各部分12aは金属を蒸着、スパッタ等することによって形成されたスパッタ粒子の集合体であってもよい。
尚、本明細書でいう「不連続の状態」とは、隙間12bによって互いに隔てられており、この結果、互いに電気的に絶縁されている状態を意味する。電気的に絶縁されることにより、金属光沢物品のシート抵抗が大きくなり、所望とする電磁波透過性が得られることになる。すなわち、不連続の状態で形成された金属層12によれば、十分な光輝性が得られやすく、電磁波透過性を確保することもできる。不連続の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、島状構造、クラック構造等が含まれる。ここで「島状構造」とは、図3に示されているように、金属粒子同士が各々独立しており、それらの粒子が、互いに僅かに離間し又は一部接触した状態で敷き詰められてなる構造である。
クラック構造とは、金属薄膜がクラックにより分断された構造である。
クラック構造の金属層12は、例えば基材フィルム上に金属薄膜層を設け、屈曲延伸して金属薄膜層にクラックを生じさせることにより形成することができる。この際、基材フィルムと金属薄膜層の間に伸縮性に乏しい、即ち延伸によりクラックを生成しやすい素材からなる脆性層を設けることにより、容易にクラック構造の金属層12を形成することができる。
上述のとおり金属層12が不連続となる態様は特に限定されないが、生産性の観点からは島状構造とすることが好ましい。
金属光沢物品1の電磁波透過性は、例えば電波透過減衰量により評価することができる。金属光沢物品1において、実施例の欄に記載の方法で測定したマイクロ波帯域(5GHz)における電波透過減衰量は、10[−dB]以下であることが好ましく、5[−dB]以下であるのがより好ましく、2[−dB]以下であることが更に好ましい。10[−dB]より大きいと、90%以上の電波が遮断されるという問題がある。なお、マイクロ波帯域(5GHz)における電波透過減衰量とミリ波レーダーの周波数帯域(76〜80GHz)における電波透過減衰量との間には相関性があり、比較的近い値を示すことから、マイクロ波帯域における電磁波透過性に優れる金属光沢物品は、ミリ波レーダーの周波数帯域における電磁波透過性にも優れる。
金属光沢物品1のシート抵抗も電磁波透過性と相関を有する。金属光沢物品1のシート抵抗は100Ω/□以上であるのが好ましく、この場合マイクロ波帯域(5GHz)における電波透過減衰量は、10〜0.01[−dB]程度となる。金属光沢物品のシート抵抗は200Ω/□以上であることがより好ましく、600Ω/□以上であることが更に好ましい。また、特に好ましくは、1000Ω/□以上である。
金属光沢物品1のシート抵抗は、JIS−Z2316−1:2014に従って渦電流測定法により測定することができる。
金属光沢物品1の電波透過減衰量及びシート抵抗は、金属層12の材質や厚さ等により影響を受ける。また、金属光沢物品1が酸化インジウム含有層11を備える場合には酸化インジウム含有層11の材質や厚さ等によっても影響を受ける。
<2.基体>
基体10としては、電磁波透過性の観点から、樹脂、ガラス、セラミックス等が挙げられる。
基体10は、基材フィルム、樹脂成型物基材、ガラス基材、又は金属光沢を付与すべき物品のいずれかであってもよい。
より具体的には、基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、ポリウレタン、アクリル(PMMA)、ABSなどの単独重合体や共重合体からなる透明フィルムを用いることができる。
これらの部材によれば、光輝性や電磁波透過性に影響を与えることもない。但し、酸化インジウム含有層11や金属層12を後に形成する観点から、蒸着やスパッタ等の高温に耐え得るものであることが好ましく、従って、上記材料の中でも、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ABS、ポリプロピレン、ポリウレタンが好ましい。なかでも、耐熱性とコストとのバランスがよいことからポリエチレンテレフタレートやシクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリルが好ましい。
基材フィルムは、単層フィルムでもよいし積層フィルムでもよい。加工のし易さ等から、厚さは、例えば、6μm〜250μm程度が好ましい。酸化インジウム含有層11や金属層12との付着力を強くするために、プラズマ処理や易接着処理などが施されてもよい。
基体10が基材フィルムの場合、金属層11は基材フィルム上の少なくとも一部に設ければよく、基材フィルムの片面のみに設けてもよく、両面に設けてもよい。
ここで、基材フィルムは、その表面上に金属層12を形成することができる対象(基体10)の一例にすぎない点に注意すべきである。基体10には、上記のとおり基材フィルムの他、樹脂成型物基材、ガラス基材、金属光沢を付与すべき物品それ自体も含まれる。樹脂成型物基材、及び金属光沢を付与すべき物品としては、例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
金属層12は、これら全ての基体上に形成することができ、基体の表面の一部に形成してもよく、基体の表面の全てに形成してもよい。この場合、金属層12を付与すべき基体10は、上記の基材フィルムと同様の材質、条件を満たしていることが好ましい。
また、基体10は、凹凸面10aを有する。基体10が凹凸面を有することにより、例えばマットな質感や、幾何学的な模様を配した外観等の新規な質感及び/又は外観を有する電磁波透過性金属光沢物品が得られる。基体10は、片面のみが凹凸面であってもよく、両面が凹凸面であってもよい。
基体10の凹凸面の最大高さRzは1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜30μmであることがより好ましく、1μm〜10μmであることがさらに好ましい。なお、最大高さRzはJIS K 7105に準拠して測定することができる。
凹凸面を有する基体10を製造する方法は特に限定されないが、例えば基体10に粒子を混入させる、基体10にエンボス加工、サンドブラスト加工、UVモールディング加工を施す、基体10に粒子を含有する液を塗工する等の方法が挙げられる。
基体10に粒子を混入させる場合や、粒子を含有する液を塗工する場合は、混入させる粒子の粒径や混入量を調整することにより、凹凸面の性状、即ち、最大高さRzや表面粗さRa等を制御することができる。また、混入させる粒子としては、シリカ、アルミナ等の熱変形しにくい無機粒子が好ましい。
<3.酸化インジウム含有層>
また、一実施形態に係る電磁波透過性金属光沢物品1は、図2に示されるように、基体10と金属層12の間に、酸化インジウム含有層11をさらに備えてもよい。酸化インジウム含有層11は、基体10の面に直接設けられていてもよいし、基体10の面に設けられた保護膜等を介して間接的に設けられてもよい。酸化インジウム含有層11は、金属光沢を付与すべき基体10の面に連続状態で、言い換えれば、隙間なく、設けられるのが好ましい。連続状態で設けられることにより、酸化インジウム含有層11、ひいては、金属層12や電磁波透過性金属光沢物品1の平滑性や耐食性を向上させることができ、また、酸化インジウム含有層11を面内ばらつきなく成膜することも容易となる。
このように、基体10と金属層12の間に、酸化インジウム含有層11をさらに備えること、すなわち、基体10の上に酸化インジウム含有層11を形成し、その上に金属層12を形成することによれば、金属層12を不連続の状態で形成しやすくなるため好ましい。そのメカニズムの詳細は必ずしも明らかではないが、金属の蒸着やスパッタによるスパッタ粒子が基体上で薄膜を形成する際には、基体上での粒子の表面拡散性が薄膜の形状に影響を及ぼし、基体の温度が高く、基体に対する金属層の濡れ性が小さく、金属層の材料の融点が低い方が不連続構造を形成しやすいと考えられる。そして、基体上に酸化インジウム含有層を設けることにより、その表面上の金属粒子の表面拡散性が促進されて、金属層を不連続の状態で成長させやすくなると考えられる。
酸化インジウム含有層11として、酸化インジウム(In)そのものを使用することもできるし、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)や、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属含有物を使用することもできる。但し、第二の金属を含有したITOやIZOの方が、スパッタリング工程での放電安定性が高い点で、より好ましい。これらの酸化インジウム含有層11を用いることにより、基体の面に沿って連続状態の膜を形成することもでき、また、この場合には、酸化インジウム含有層の上に積層される金属層を、例えば、島状の不連続構造としやすくなるため、好ましい。更に、後述するように、この場合には、金属層に、クロム(Cr)又はインジウム(In)だけでなく、通常は不連続構造になり難く、本用途には適用が難しかった、アルミニウム等の様々な金属を含めやすくなる。
ITOに含まれる酸化錫(SnО)の質量比率である含有率(含有率=(SnO/(In+SnO))×100)は特に限定されるものではないが、例えば、2.5wt%〜30wt%、より好ましくは、3wt%〜10wt%である。また、IZOに含まれる酸化亜鉛(ZnO)の質量比率である含有率(含有率=(ZnO/(In+ZnO))×100)は、例えば、2wt%〜20wt%である。酸化インジウム含有層11の厚さは、シート抵抗や電波透過減衰量、生産性の観点から、通常1000nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、20nm以下が更に好ましい。一方、積層される金属層12を不連続状態としやすくするためには、1nm以上であることが好ましく、確実に不連続状態にしやすくするためには、2nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることが更に好ましい。
<4.金属層>
金属層12は基体10の凹凸面上に形成され、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分12aを含む。
金属層12は、十分な光輝性を発揮し得ることは勿論、融点が比較的低いものであることが望ましい。金属層12は、スパッタリングを用いた薄膜成長によって形成するのが好ましいためである。このような理由から、金属層12としては、融点が約1000℃以下の金属が適しており、例えば、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、銅(Cu)、銀(Ag)から選択された少なくとも一種の金属、および該金属を主成分とする合金のいずれかを含むことが好ましい。特に、物質の光輝性や安定性、価格等の理由からAlおよびそれらの合金が好ましい。また、アルミニウム合金を用いる場合には、アルミニウム含有量を50質量%以上とすることが好ましい。
金属層12の厚さは、十分な光輝性を発揮するように、通常10nm以上が好ましく、一方、シート抵抗や電波透過減衰量の観点から、通常100nm以下が好ましい。例えば、15nm〜70nmが好ましく、15nm〜50nmがより好ましい。この厚さは、均一な膜を生産性良く形成するのにも適しており、また、最終製品である樹脂成形品の見栄えも良い。なお、金属層12の厚さは実施例の欄に記載の方法で測定できる。
また、同様の理由から、金属層12の厚さと酸化インジウム含有層11の厚さとの比(金属層12の厚さ/酸化インジウム含有層11の厚さ)は、0.1〜100の範囲が好ましく、0.3〜35の範囲がより好ましい。
金属層12の部分12aの円相当径は特に限定されないが、通常10〜1000nm程度である。また、各部分12a同士の距離は特に限定されないが、通常は10〜1000nm程度である。
また、金属層12は基体10の凹凸面上に形成されているが、通常凹凸面上に金属層を形成すると、凹凸面において影になっている部分に金属粒子が付着しにくく、その結果ムラの有る金属層が形成されやすい。しかしながら、良好な金属調の外観を得るためには、このムラを抑制することが好ましく、そのためには金属層は後述のようにスパッタリングにより設けられたものであることが好ましい。
本実施形態の金属光沢物品は、上述の金属層、及び酸化インジウム含有層の他に、用途に応じてその他の層を備えてもよい。
その他の層としては色味等の外観を調整するための高屈折材料等の光学調整層(色味調整層)、耐湿性や耐擦傷性等の耐久性を向上させるための保護層(耐擦傷性層)、バリア層(腐食防止層)、易接着層、ハードコート層、反射防止層、光取出し層、アンチグレア層等が挙げられる。
<5.金属光沢物品の製造>
金属光沢物品1の製造方法の一例について、説明する。特に説明しないが、基材フィルム10以外の基体を用いた場合についても同様の方法で製造することができる。
基体10の凹凸面上に金属層12を形成するにあたっては、例えば、真空蒸着、スパッタリング等の方法を用いることができる。
上記のとおり、良好な金属調の外観を有する金属光沢物品1を得るためには、凹凸面上に不連続な金属層がムラなく設けられることが好ましいが、この観点からはスパッタリングを用いることが好ましい。すなわち、金属光沢物品1の製造方法は基体10の凹凸面上にスパッタリングにより金属層12を形成することを含むことが好ましい。
真空蒸着を用いた場合、蒸発源から基体へ飛翔する金属粒子は、高真空下において平均自由工程が長く、進行方向の指向性が高く、したがって、凹凸面において影になっている部分には金属粒子が付着しづらく、基体10の凹凸面上に形成される金属層にムラが生じやすい。
一方、スパッタリングを用いた場合は、ターゲットから基体へ飛翔する金属粒子は導入するガス粒子の存在により、平均自由工程は短くなり、様々な方向に進行するため、凹凸面において影になっている部分にも金属粒子が付着しやすく、基体10の凹凸面上に形成される金属層にムラが生じにくい。
また、スパッタリングは大面積でも厚さを厳密に制御できる点においても優れる。
また、基体10の凹凸面上に酸化インジウム含有層11を形成する場合には、金属層12の形成に先立ち、酸化インジウム含有層11を、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等によって形成する。すなわち、基体10の凹凸面上に酸化インジウム含有層11を形成した後に、酸化インジウム含有層上11に金属層12を形成する。酸化インジウム含有層11の形成方法は、上記と同様の理由により、スパッタリングが好ましい。
尚、基体10と金属層12の間に酸化インジウム含有層11を設ける場合、酸化インジウム含有層11と金属層12の間には、他の層を介在させずに直接接触させるのが好ましい。
<6.金属光沢物品の用途>
本実施形態の金属光沢物品1は、電磁波透過性を有することから電磁波を送受信する装置や物品及びその部品等に使用することが好ましい。例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
より具体的には、車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ステアリングホイール、ECUボックス、電装部品、エンジン周辺部品、駆動系・ギア周辺部品、吸気・排気系部品、冷却系部品等が挙げられる。
電子機器および家電機器としてより具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカー等の家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池等電子情報機器等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。実施例1〜8及び比較例1〜3の金属光沢物品を準備し、金属層の厚み、シート抵抗、電波透過減衰量、及び外観を評価した。なお、基体10としては、基材フィルムを用いた。
(1)金属層の厚さ
まず、金属光沢物品から、図4に示すように一辺5cmの正方形領域3を適当に抽出し、該正方形領域3の縦辺及び横辺それぞれの中心線A、Bをそれぞれ4等分することによって得られる計5箇所の点「a」〜「e」を測定箇所として選択した。
次いで、選択した測定箇所それぞれにおける、図5に示すような断面画像(透過型電子顕微鏡写真(TEM画像))を測定し、得られたTEM画像から、5個以上の金属部分12aが含まれる視野角領域を抽出した。
5箇所の測定箇所それぞれにおいて抽出された視野角領域における金属層の総断面積を視野角領域の横幅で割ったものを各視野角領域の金属層の厚さとし、5箇所の測定箇所それぞれにおける、各視野角領域の金属層の厚さの平均値を金属層の厚さとした。
(2)シート抵抗
ナプソン社製非接触式抵抗測定装置NC−80MAPを用い、JIS−Z2316に準拠し、渦電流測定法により酸化インジウム含有層を備えるものについては金属層と酸化インジウム含有層の積層体としてのシート抵抗を、酸化インジウム含有層を備えないものについては金属層のシート抵抗を測定した。
(3)電波透過減衰量
5GHzにおける電波透過減衰量を、方形導波管測定評価治具WR−187でサンプルを挟み、アンリツ社製スペクトルアナライザMS4644Bを用いて測定した。また、測定値に基づいて下記基準で電波透過減衰量を評価した。
(電波透過減衰量の評価基準)
10[−dB]以上:×
10[−dB]未満〜5[−dB]:△
5[−dB]未満〜2[−dB]:○
2[−dB]未満:◎
(4)外観の評価
目視により、金属光沢物品の外観を金属質感と面内均一性の観点から、以下の基準で評価した。
(外観の評価基準)
金属質感、面内均一性がともに良好:◎
金属質感、面内均一性のいずれか、又はいずれもで軽微な不良あり:○
金属質感、面内均一性のいずれかで不良:△
金属質感、面内均一性がともに不良:×
以下の表1に、評価結果を示す。
Figure 2019208490
[実施例1]
凹凸面を有する基材フィルムとして、ポリカーボネート(厚さ:120μm、表面高さRz:30μm)を用いた。
先ず、DCマグネトロンスパッタリングを用いて、基材フィルムの面に沿って、50nmの厚さのITO層(下地層)をその上に直接形成した。ITO層を形成する際の基材フィルムの温度は、130℃に設定した。ITOに含まれる酸化錫(SnО)の含有率(含有率=(SnO/(In+SnO))×100)は10wt%であった。
次いで、交流スパッタリング(AC:40kHz)を用いて、ITO層(下地層)の上に、50nmの厚さのアルミニウム(Al)層を形成し、金属光沢物品を得た。Al層を形成する際の基材フィルムの温度は、130℃に設定した。
[実施例2]〜[実施例4]
ITO層の上に、アルミニウム(Al)層を形成する際のスパッタ時間を変更した以外は実施例1と同様にして、アルミニウム(Al)層の厚みの異なる実施例2〜4の金属光沢物品を得た。
[実施例5]〜[実施例8]
基材フィルムの上にITO層を形成する際のスパッタ時間を変更した以外は実施例1と同様にして、ITO層の厚みの異なる実施例5〜8の金属光沢物品を得た。
[比較例1]
ITO層の上に、アルミニウム(Al)層を形成する際のスパッタ時間を変更した以外は実施例6と同様にして、アルミニウム(Al)層の厚みの異なる比較例1の金属光沢物品を得た。
[比較例2]
ITO層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例2の金属光沢物品を得た。
[比較例3]
真空蒸着法を用いてアルミニウム(Al)層を形成した点以外は比較例2と同様にして、比較例3の金属光沢物品を得た。
実施例1〜8の金属光沢物品は、いずれも電波透過性に優れた。外観の評価結果も良好であった。また、凹凸面を有する基体を用いたことにより幾何学的な模様を配した新規な外観を有した。
比較例1〜3の金属光沢物品では、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含まない、すなわち、連続な金属層が形成された。その結果、比較例1〜3の金属光沢物品は電磁波透過性が劣るものであった。
なお、以上の実施例で特に使用したアルミニウム(Al)以外の金属についても、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、銅(Cu)、銀(Ag)などの比較的融点の低い金属については、同様の手法で不連続構造を形成しうると考えられる。
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2018年4月23日付けで出願された日本特許出願(特願2018−082660)及び2018年4月23日付けで出願された日本特許出願(特願2018−082661)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
本発明に係る金属光沢物品は、電磁波を送受信する装置や物品及びその部品等に使用することができる。例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等、意匠性と電磁波透過性の双方が要求される様々な用途にも利用できる。
1 金属光沢物品
10 基体
11 酸化インジウム含有層
12 金属層
12a 部分
12b 隙間

Claims (14)

  1. 凹凸面を有する基体と、前記基体の前記凹凸面上に形成された金属層とを備え、
    前記金属層は、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含む電磁波透過性金属光沢物品。
  2. 前記基体と前記金属層の間に、酸化インジウム含有層をさらに備える請求項1に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  3. 前記酸化インジウム含有層は連続状態で設けられている請求項2に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  4. 前記酸化インジウム含有層は、酸化インジウム(In)、インジウム錫酸化物(ITO)、又はインジウム亜鉛酸化物(IZO)のいずれかを含む請求項2又は3に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  5. 前記酸化インジウム含有層の厚さは、1nm〜1000nmである請求項2〜4のいずれか1項に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  6. 前記凹凸面の最大高さRzは1〜100μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  7. 前記金属層の厚さは、10nm〜100nmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  8. 前記金属層の厚さと前記酸化インジウム含有層の厚さとの比(前記金属層の厚さ/前記酸化インジウム含有層の厚さ)は、0.02〜100である請求項2〜5のいずれか1項に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  9. シート抵抗が、100Ω/□以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  10. 前記複数の部分は島状に形成されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  11. 前記金属層は、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、銅(Cu)、銀(Ag)、又はこれらの合金のいずれかである請求項1〜10のいずれか1項に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  12. 前記基体は、基材フィルム、樹脂成型物基材、ガラス基材、又は金属光沢を付与すべき物品のいずれかである請求項1〜11のいずれか1項に記載の電磁波透過性金属光沢物品。
  13. 前記基体の前記凹凸面上にスパッタリングにより前記金属層を形成することを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電磁波透過性金属光沢物品の製造方法。
  14. 前記基体の前記凹凸面上に酸化インジウム含有層を形成した後に、前記酸化インジウム含有層上にスパッタリングにより前記金属層を形成する請求項13に記載の電磁波透過性金属光沢物品の製造方法。
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