JPWO2019198125A1 - 電磁放射線検出装置 - Google Patents
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Abstract
Description
シンチレータに入射した電磁放射線は、シンチレータ内の電子にエネルギーを与えて電離させ、その2次電子が雪崩的にさらに電離を引き起こし、これらの電離・励起された電子が正孔と再結合することによって最終的に入射エネルギーに比例した数の光子を生成する。
次にシンチレータで生成された光子は、光電子増倍管の光電面において光電効果により光電子に変換される。
光電子倍増管の光電面において変換された光電子は、光電子倍増管内で増幅された後、電磁放射線の入射エネルギーに比例した電流として出力され、電圧パルスに変換される。
変換された電圧パルスは多重波高分析器で一定時間ごとの各波高値のパルス数としてカウントされることにより、パルス波高分布(エネルギースペクトル)として得られることとなっていた。
そして、コンプトン散乱に対応するエネルギー帯(エネルギースペクトル部分)、特に、コンプトン連続部及びコンプトンエッジに相当するエネルギー帯においては、コンプトン散乱に起因する発光スペクトル以外の発光スペクトルが含まれて、隠蔽されている可能性がある。
したがって、例えば、複数の放射線源を弁別して特定するような場合には、対応する発光スペクトルを見いだせない虞があった。
まず、実施形態の説明に先立ち、実施形態の電磁放射線検出装置の原理について説明する。
以下の説明においては、電磁放射線としてγ線を検出する場合を例として電磁放射線検出装置の原理について説明する。
電磁放射線検出装置としてのγ線検出装置では、シンチレータに入射したγ線は、各種電離過程を経て最終的にシンチレータ結晶の結晶格子上の価電子にエネルギーを与え、電子を伝導帯に押し上げる。
これらの結果、伝導帯の電子と価電子帯の正孔は各々自由に動き回り、電子と正孔とが出会うと、電子は伝導帯から価電子帯に落ち、エネルギーを放出することとなり、このエネルギーが光として放出されて発光が起きる。
(1)光電効果
(2)コンプトン散乱
(3)電子対生成
また、コンプトン散乱においては、γ線のエネルギーの一部が電子に運動エネルギーとして与えられて電子がはじき飛ばされ、γ線は残ったエネルギーにより元の進んでいた方向とは別の方向に進み、シンチレータ内でさらに他の電子をはじき出しながら減衰するか、あるいは、シンチレータ外に出て行くこととなる。
図1に示すように、上記三種類の現象の結果として得られるγ線検出時のエネルギースペクトルとしては、全吸収ピークPE、コンプトン連続部CC、コンプトンエッジCE、後方散乱ピークRS、KX線ピークKX等が挙げられる。
したがって、例えば、複数の放射線源を弁別して特定するような場合には、対応する発光スペクトルを見いだせない虞がある。
図2は、第1実施形態の電磁放射線検出装置としてのγ線検出装置の概要構成ブロック図である。
γ線検出装置10は、入射面11iから電磁放射線であるγ線が入射され、電離作用により発光して光子を出射面11oから出力する第1シンチレータ11と、第1シンチレータ11の出射面11oから出力される光子の光電変換を行って光電子を生成し、電子増倍(=電流増幅)を行って第1パルス波高信号SP1として出力する第1光電子増倍管12と、可視光を透過させないように構成されるとともに、入射面13iから第1シンチレータ11においてγ線のコンプトン散乱により生成された散乱γ線が入射され、電離作用により発光して光子を出射面13oから出力する第2シンチレータ13と、第2シンチレータ13の出射面13oから出力される光子の光電変換を行って光電子を生成し、電子増倍(=電流増幅)を行って第2パルス波高信号SP2として出力する第2光電子増倍管14と、第1パルス波高信号SP1を増幅して第1増幅パルス波高信号ASP1を出力する第1アンプ15と、第2パルス波高信号SP2を増幅して第2増幅パルス波高信号ASP2を出力する第2アンプ16と、第2増幅パルス波高信号ASP2が出力されたタイミングで第1光電子増倍管12の出力を遮断するゲーティング回路17と、第1増幅パルス波高信号ASP1に基づいて多重波高分析を行う多重波高分析機(MCA)18と、を備えている。
図3は、実施形態の原理説明図である。
第1シンチレータ11の入射面11iから入射した入射γ線γiは、第1シンチレータ11内において電子に衝突して、電子にエネルギーの一部を与えるコンプトン散乱を起こすと、最終的に第1シンチレータ11のシンチレータ物質を構成している電子を励起して伝導帯に遷移させるとともに、残りのエネルギーを有する散乱γ線γsとなる。
そして、伝導帯に遷移した電子は、移動中に正孔と出会うと再び価電子帯に遷移し、光子(図3中、☆印で示す)を生成する。
そして、伝導帯に遷移した電子は、移動中に正孔と出会うと再び価電子帯に遷移し、光子を生成し、第2光電子増倍管14の光電面14PEに到ると、光電変換がなされて光電子(e−)となって、第2光電子増倍管14において電子増倍がなされて最終的には、第2パルス波高信号SP2として出力されることとなる。
γ線検出装置10の第1シンチレータ11には、入射面11iから電磁放射線であるγ線が入射される。
この場合において、第2シンチレータ13を可視光は透過できないため、散乱γ線のみが入射することとなる。
あるいは、第2シンチレータ13と第1シンチレータ11との間に、電磁放射線(ここでは、γ線)を透過し可視光を反射する反射材、あるいは、電磁放射線を透過し可視光を透過しない不透過材を設けるようにすればよい。
この結果、ゲーティング回路17は、第2増幅パルス波高信号ASP2が出力されたタイミングで第1光電子増倍管12の出力を遮断する。
図4に示すように、コンプトン散乱による第1光電子増倍管の出力を通常通り行った場合には、例えば、二つの光電ピークHEP1、HEP2がコンプトン連続部CCあるいはコンプトンエッジCEに埋もれて隠蔽された状態となっていたものとする。
この結果、図5に示すように、埋もれていた二つの光電ピークHEP1、HEP2が顕在化することとなる。
従って、所望の光電ピークを識別できるので、複数の放射線源を弁別して特定することが可能となる。
以上の第1実施形態においては、第2シンチレータが可視光を透過しない構成としていたが、可視光を遮断し、電磁放射線であるγ線を透過するフィルタを第2シンチレータの入射面に積層するように構成することも可能である。
このように構成することにより、第2シンチレータの組成、構造などの影響を受けることなく、所望の性能を発揮できる。
次に第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態の電磁放射線検出装置としてのγ線検出装置の概要構成ブロック図である。図6において、図1と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
図6において、図1の第1実施形態と異なる点は、ゲーティング回路17に相当する機能をタイミング判定部19Aに持たせ、タイミング判定部19Aが第2アンプ16の出力に基づいて、第1アンプ15の出力である第1増幅パルス波高信号ASP1の採用可否を判別し、この判別結果に基づいて多重波高分析機18Aが波高分析対象の第1増幅パルス波高信号ASP1に基づいて多重波高分析を行う点である。
γ線検出装置10Aの第1シンチレータ11には、入射面11iから電磁放射線であるγ線が入射されると、第1シンチレータ11内において、光電効果あるいはコンプトン散乱を起こしたがコンプトン散乱後のγ線のエネルギーも他の電子に与える等して全てのエネルギーをシンチレータ11内で消費した場合に起因して生成された光子は、第1シンチレータ11の出射面11oから出力され、第1光電子増倍管12に入射して、光電変換されて光電子を生成し、全吸収ピークに相当する第1パルス波高信号が第1アンプ15に出力される。
散乱γ線によりエネルギーを受け取った電子は、第2シンチレータ13内を移動し、正孔と結合した時点で光子を生成する。生成された光子は、第2シンチレータ13の出射面13oから出力され、第2光電子増倍管14に入射して、光電変換されて光電子を生成し、第2パルス波高信号SP2が第2アンプ16に出力される。
第2アンプ16は、第2パルス波高信号SP2を増幅して第2増幅パルス波高信号ASP2をタイミング判定部19Aに出力する。
タイミング判定部19Aは、まず第1増幅パルス波高信号ASP1及び第2増幅パルス波高信号ASP2の検出処理を行う(ステップS11)。
次に第3実施形態について説明する。
図8は、第3実施形態の電磁放射線検出装置としてのγ線検出装置の概要構成ブロック図である。図8において、図1と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
あるいは、第2シンチレータ13−1〜13−4のそれぞれと第1シンチレータ11との間に、電磁放射線(ここでは、γ線)を透過し可視光を反射する反射材、あるいは、電磁放射線を透過し可視光を透過しない不透過材を設けるようにすればよい。
γ線検出装置10Bの第1シンチレータ11には、入射面11iから電磁放射線であるγ線が入射されると、第1シンチレータ11内において、光電効果あるいはコンプトン散乱を起こしたがコンプトン散乱後のγ線のエネルギーも他の電子に与える等して全てのエネルギーをシンチレータ11内で消費した場合に起因して生成された光子は、第1シンチレータ11の出射面11oから出力され、第1光電子増倍管12に入射して、光電変換されて光電子を生成し、全吸収ピークに相当する第1パルス波高信号が第1アンプ15に出力される。
散乱γ線によりエネルギーを受け取った電子は、第2シンチレータ13−1〜13−4内を移動し、正孔と結合した時点で光子を生成する。生成された光子は、第2シンチレータ13−1〜13−4のそれぞれの出射面13oから出力され、対応する第2光電子増倍管14−1〜14−4に入射して、光電変換されて光電子を生成し、第2パルス波高信号SP21〜SP24がそれぞれ対応する第2アンプ16−1〜16−4に出力される。
同様に第2アンプ16−2は、第2パルス波高信号SP22を増幅して第2増幅パルス波高信号ASP22をタイミング判定部19Bに出力し、第2アンプ16−3は、第2パルス波高信号SP23を増幅して第2増幅パルス波高信号ASP23をタイミング判定部19Bに出力し、第2アンプ16−4は、第2パルス波高信号SP24を増幅して第2増幅パルス波高信号ASP24をタイミング判定部19Bに出力する。
以上の説明においては、第1シンチレータ11は、四角柱状である場合について説明したが、多角柱状(三角柱以上)、あるいは、円柱状、球状などであっても、散乱電磁放射線を検出可能な位置に一組以上の第2シンチレータ及び第2光電子増倍管を配置可能な形状であれば同様に適用が可能である。
11 第1シンチレータ(第1シンチレーション検出器)
11i 入射面
11o 出射面
12 第1光電子増倍管(第1シンチレーション検出器)
12PE 光電面
13、13−1〜13−4 第2シンチレータ(第2シンチレーション検出器)
13i 入射面
13o 出射面
14、14−1〜14−4 第2光電子増倍管(第2シンチレーション検出器)
14PE 光電面
15 第1アンプ
16、16−1〜16−4 第2アンプ
17 ゲーティング回路
18、18A、18B 多重波高分析機
19 タイミング判定部
19A タイミング判定部
19B タイミング判定部
ASP1 第1増幅パルス波高信号
ASP2、ASP21〜ASP24 第2増幅パルス波高信号
CC コンプトン連続部
CE コンプトンエッジ
KX KX線ピーク
PE 全吸収ピーク
RS 後方散乱ピーク
SP1 第1パルス波高信号
SP2、SP21〜SP24 第2パルス波高信号
γi 入射γ線
γs 散乱γ線
Claims (10)
- 電磁放射線の入射を検出する第1シンチレーション検出器と、
前記第1シンチレーション検出器内部で前記電磁放射線のコンプトン散乱により生じた散乱電磁放射線であって、前記第1シンチレーション検出器外に出た前記散乱電磁放射線を検出する第2シンチレーション検出器と、
前記第1シンチレーション検出器の検出タイミングと前記第2シンチレーション検出器の検出タイミングとが同一と見做せる場合以外の前記第1シンチレーション検出器の検出結果に基づいて多重波高分析を行う多重波高分析機と、
を備えた電磁放射線検出装置。 - 前記第1シンチレーション検出器は、電磁放射線の入射により光子を出力する第1シンチレータと、前記第1シンチレータにより出力された光子の光電変換を行い、第1パルス波高信号を出力する第1光電子増倍管と、前記第1パルス波高信号を増幅し、第1増幅パルス波高信号を前記検出結果として出力する第1増幅器と、を備え、
前記第2シンチレーション検出器は、前記第1シンチレータに隣接して配置され、前記第1シンチレータにおいてコンプトン散乱により生じた散乱電磁放射線であって、前記第1シンチレータから出た前記散乱電磁放射線の入射により光子を出力する第2シンチレータと、第2シンチレータにより出力された光子の光電変換を行い第2パルス波高信号を出力する第2光電子増倍管と前記第2パルス波高信号を増幅し、第2増幅パルス波高信号を出力する第2増幅器と、を備え、
前記多重波高分析機は、前記第1パルス波高信号の出力タイミングと前記第2パルス波高信号の出力タイミングとが同一と見做せる前記第1パルス波高信号以外の前記第1パルス波高信号に対応する前記第1増幅パルス信号を前記検出結果として前記多重波高分析を行う、
請求項1記載の電磁放射線検出装置。 - 前記第2シンチレータは、前記第1シンチレータにおいて生成された可視光を前記第2光電子増倍管側に透過させないように構成されている、
請求項2記載の電磁放射線検出装置。 - 前記第2シンチレータは、可視光の非透過性を有するように、シンチレータパウダーをペースト化して圧縮乾燥固化、厚膜化して構成されている、
請求項3記載の電磁放射線検出装置。 - 前記第2シンチレータと前記第1シンチレータとの間に、前記電磁放射線を透過し可視光を反射する反射材、あるいは、前記電磁放射線を透過し可視光を透過しない不透過材を設けた、
請求項3記載の電磁放射線検出装置。 - 前記第2パルス波高信号が出力された場合に、前記第1光電子増倍管の出力を遮断するゲーティング回路を備えた、
請求項2記載の電磁放射線検出装置。 - 前記多重波高分析機の前段に設けられ、入力された前記第1増幅パルス波高信号及び前記第2増幅パルス波高信号に基づいて、前記第2パルス波高信号の出力タイミングと前記第1パルス波高信号の出力タイミングとが同一と見做せるか否かを判定し、前記第1パルス波高信号の出力タイミングと前記第2パルス波高信号の出力タイミングとが同一と見做せる前記第1パルス波高信号に対応する前記第1増幅パルス信号を除外して、前記第1増幅パルス信号を出力するタイミング判定部を備え、
前記多重波高分析機は、前記タイミング判定部から出力された前記第1増幅パルス信号に基づいて前記多重波高分析を行う、
請求項2記載の電磁放射線検出装置。 - 前記第2シンチレータ及び当該第2シンチレータに対応する第2光電子増倍管及び第2増幅器を複数組み備え、
前記多重波高分析機の前段に設けられ、入力された前記第1増幅パルス波高信号及び複数の前記第2増幅パルス波高信号に基づいて、複数の前記第2パルス波高信号のそれぞれの出力タイミングと前記第1パルス波高信号の出力タイミングとが同一と見做せるか否かを判定し、前記第1パルス波高信号の出力タイミングといずれかの前記第2パルス波高信号の出力タイミングとが同一と見做せる前記第1パルス波高信号に対応する前記第1増幅パルス信号を除外して、前記第1増幅パルス信号を出力するタイミング判定部を備え、
前記多重波高分析機は、前記タイミング判定部から出力された前記第1増幅パルス信号に基づいて前記多重波高分析を行う、
請求項2記載の電磁放射線検出装置。 - 前記電磁放射線は、X線あるいはγ線である、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電磁放射線検出装置。 - 電磁放射線の入射を検出する第1シンチレーション検出器と、前記第1シンチレーション検出器内部で前記電磁放射線のコンプトン散乱により生じた散乱電磁放射線であって、前記第1シンチレーション検出器外に出た前記散乱電磁放射線を検出する第2シンチレーション検出器と、多重波高分析を行う多重波高分析機と、を備えた電磁放射線検出装置で実行される方法であって、
前記第1シンチレーション検出器の検出タイミングと前記第2シンチレーション検出器の検出タイミングとが同一と見做せるか否かを判定する過程と、
前記第1シンチレーション検出器の検出タイミングと前記第2シンチレーション検出器の検出タイミングとが同一と見做せる場合の前記第1シンチレーション検出器の検出結果を除外した前記第1シンチレーション検出器の検出結果に基づいて多重波高分析を行う過程と、
を備えた方法。
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