次に、本発明に係る内燃機関用点火装置の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すのは、本発明の第1実施形態に係る内燃機関用点火装置1であり、内燃機関の気筒毎に設けられる1つの点火プラグ20に放電火花を発生させる点火コイルユニット10Aと、この点火コイルユニット10Aの動作タイミングを指示する点火信号Si等を適宜なタイミングで出力する点火制御手段としての内燃機関駆動制御装置30A、車両バッテリ等の直流電源40、点火プラグ20に火花放電が生じることで点火コイルの二次側を流れる二次電流に、更に電流を重ねて流す二次電流重ね手段50A等で構成される。この二次電流重ね手段50Aは、点火コイルユニット10Aが備える点火コイル11Aの二次側へ重畳的にエネルギを加算して放電エネルギを増大させることが可能なエネルギ重畳手段として機能する。
なお、本実施形態に示す内燃機関用点火装置1においては、点火制御手段としての機能が、自動車の内燃機関を統括的に制御する内燃機関駆動制御装置30Aに含まれるものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ECUといった通常の内燃機関駆動制御装置30Aが有している点火信号生成機能によって生成された点火信号を受けて、適宜な制御信号を生成し、点火コイルユニット10Aや二次電流重ね手段50Aへ制御信号を出力する点火制御装置を別途設けるようにしても構わない。
上記点火コイルユニット10Aは、例えば、点火コイル11A、点火スイッチ12A、点火スイッチ12Aと並列に設けるバイパス線路13、このバイパス線路13に設ける整流手段14等を所要形状のケース15に収納して一体構造としたユニットである。このケース15の適所には、高圧端子151とコネクタ152を設けてあり、高圧端子151を介して点火プラグ20を接続すると共に、コネクタ152を介して内燃機関駆動制御装置30Aや直流電源40と接続する。
上記点火コイル11Aは、一次コイル111に生ずる磁束を二次コイル112に効率良く作用させるもので、例えば、センターコア113を取り巻くように一次コイル111を配置し、更にその外側に二次コイル112を配置した構造である。一次コイル111の一方端である第1端111−1は、コネクタ152を介して直流電源40と接続され、電源電圧VB+(例えば、12V)が印加される。一次コイル111の他方端である第2端111−2は点火スイッチ12Aのコレクタに接続され、点火スイッチ12Aのエミッタはコネクタ152を介して接地点GNDに接続される。
そして、放電サイクルの適宜なタイミングで内燃機関駆動制御装置30Aより出力される点火信号Siが点火スイッチ12Aのゲートに入力されると(例えば、点火信号Siの信号レベルがLからHに変わると)、点火スイッチ12Aがオンになって一次コイル111の第2端111−2が接地点GNDに接続され、一次コイル111には第1端111−1から第2端111−2に向かう一次電流I1が流れ始め、一次電流I1の流量は指数関数的に増加してゆく。この一次電流I1の流量に応じた磁束量が磁界のエネルギとして蓄積される。なお、点火コイル11Aの二次側には、二次コイル112や接続配線等の微少なコンデンサ成分により電気エネルギが蓄積される。
上記のようにエネルギが蓄積された後、一次コイル111への通電が所定の点火タイミングで遮断されると、高圧の起電力が二次コイル112に生じて点火プラグ20の放電ギャップ間に火花放電が発生し、気筒燃焼室内の混合気に着火する。このとき、一次コイル111には、通常の一次電流I1とは逆向きの電流を流そうとする逆方向の電圧が生ずるので、この逆起電力が点火スイッチ12Aのコレクタ−エミッタ間に印加されることとなり、点火スイッチ12Aが故障したり、点火スイッチ12Aの劣化を早めたりする危険性がある。そこで、点火スイッチ12Aと並列にバイパス線路13を設けると共に、このバイパス線路13の接地点側から点火コイル11A側に向かって順方向となる整流手段14(例えば、点火スイッチ12Aのコレクタ側にカソードを、点火スイッチ12Aのエミッタ側にアノードをそれぞれ接続したダイオード)を設けたのである。
上記点火プラグ20の放電電極間に火花放電が生じて二次側に流れる二次電流I2は、気筒内の燃焼状況を知るための情報として有用であるから、二次電流I2を検出するための二次電流検知手段を設けても良い。この二次電流検出手段は、例えば、二次電流重ね手段50Aと接地点GNDとの間の二次電流経路に介挿した適宜な抵抗値の電流検出用抵抗61と、この電流検出用抵抗61による電圧変化を検知する二次側電圧検出ライン62とで構成できる。そして、二次側電圧検出ライン62より得られる二次電流検出信号は、内燃機関駆動制御装置30Aへ供給され、この二次電流検出信号に基づいて内燃機関駆動制御装置30Aは二次コイル112に流れる電流値を知ることができる。
また、点火プラグ20に高電圧を印加する二次コイル112に発生している電圧(以下、二次コイル電圧という)も、燃焼状況を知るための情報として有用であるから、例えば、高圧端子151と二次コイル112との間に設定した検知点Pspにて二次電圧情報を取得すれば良いのであるが、二次電圧は数kV〜数十kVに及ぶ高電圧であるために、分圧抵抗を設けることに依るリークの発生といった諸問題に配慮が必要であり、検知点Pspで二次コイル電圧の監視を行うことは現実的ではない。
しかしながら、点火プラグ20の放電時には、一次コイル111と二次コイル112との巻数比に応じた電圧が一次コイル111にも発生しており、一次コイル111に発生している電圧(以下、一次コイル電圧という)であれば、比較的低い電圧値であることから、監視のための難易度が低い。ただし、一次コイル電圧と二次コイル電圧は、電圧値のスケールが異なると共に、互いに逆極性となる。この相違点を踏まえておけば、一次コイル電圧を二次コイル電圧の相関情報として扱うことができる。
そこで、本実施形態に係る内燃機関用点火装置1の点火コイルユニット10Aにおいては、一次コイル低圧側の電圧を検出する一次コイル電圧検出手段として、一次コイル111の第2端111−2とバイパス線路13の分岐点との間から一次コイル電圧検出ライン16を引き出し、コネクタ152を介して内燃機関駆動制御装置30Aへ一次コイル電圧信号を入力するものとした。
内燃機関駆動制御装置30Aでは、一次コイル電圧信号に基づいて二次コイル電圧を推定することにより、点火プラグ20への印加電圧の変化を知ることが可能となるので、内燃機関駆動制御装置30Aが二次電流重ね手段50Aによる二次電流の重畳制御を行うことで、安定した高電流期間を確保して着火性を向上させることが可能となる。この二次電流重ね手段50Aを用いたエネルギ重畳制御は、例えば、内燃機関駆動制御装置30Aに設けた重畳制御手段31の機能によって実行する。また、二次電流重ね手段50Aの電流源としては、車両バッテリ等の直流電源40を用いることができる。
重畳制御手段31の一例を図2に示す。重畳制御手段31には、重畳の開始や終了のタイミングを判定する重畳タイミング判定手段301と、この重畳タイミング判定手段301が重畳開始タイミングを判定するための情報として用いる重畳開始基準電圧値(後に詳述)を記憶している重畳開始基準電圧値記憶手段302と、重畳開始に伴って二次電流重ね手段50Aを動作させるための二次電流重ね信号Spを生成して出力する二次電流重ね信号生成手段303と、を設ける。
重畳タイミング判定手段301には、点火信号Siと一次コイル電圧信号と重畳開始基準電圧値記憶手段302からの重畳開始基準電圧値が供給されており、点火信号SiがONからOFFとなる点火タイミングIG以降に、重畳開始条件を満たす重畳開始タイミングαの成立を判定する。例えば、図3(a)の波形図に示すように、一次電流遮断による点火タイミングIGで容量放電エネルギ(二次側に蓄積された電気エネルギ)が消費されて一次電圧が急激に高く(図3(a)の一次コイル電圧波形においては負極に大きく)なり、短時間で低下して(図3(a)の一次コイル電圧波形においては正極側へ戻って)行き、重畳開始基準電圧値を下回った後、再び一次コイル電圧が上昇して重畳開始基準電圧値に達したタイミングを重畳開始タイミングαと判定する。なお、エネルギ重畳制御のために一次コイル電圧の変化に着目する場合、基準電位に対する極性を考慮する必要が無いので、波形電圧の絶対値を電圧値として値の増減を判定するものとし、併せて、重畳開始基準電圧値も正の値として設定しておけば良い。
また、重畳開始条件の判定に際しては、点火タイミングIGの直後から重畳開始条件の判定監視を開始するのではなく、予め定めた一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に開始するようにしても良い。例えば、点火タイミングIGで一次コイル電圧の絶対値が急激に高くなってから重畳開始基準電圧値よりも下降したことを一次コイル電圧監視開始条件とし、この一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に一次コイル電圧の絶対値が再び重畳開始基準電圧値に達したことを重畳開始条件と判定すれば、容量放電に伴う二次側の電圧変動で瞬時的に重畳開始基準電圧値を超えたような場合を重畳開始条件の成立と誤判定してしまうことを防げる。或いは、容量放電と看做し得る所定期間(例えば、数十μs)が経過して誘導放電へ移行したと看做し得る状態になったことを一次コイル電圧監視開始条件とし、この一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に一次コイル電圧の絶対値が再び重畳開始基準電圧値に達したことを重畳開始条件と判定するようにしても良い。
上述した一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に、一次コイル電圧の絶対値が再び重畳開始基準電圧値に達したとき、重畳タイミング判定手段301は、これを重畳開始タイミングαと判定し、二次電流重ね信号生成手段303に二次電流重ね開始指示を出す。これにより、二次電流重ね信号生成手段303は二次電流重ね信号Spを生成して二次電流重ね手段50Aへ出力し、二次電流重ね手段50Aによって二次電流が重畳されるのである(図3(a)の二次電流波形中、網掛けで示す領域を参照)。なお、二次電流検出信号を二次電流重ね信号生成手段303へ供給しておけば(図2中、破線で示す)、二次電流重ね手段50Aを用いた二次電流I2の重畳制御が適正に行われているか否かを二次電流重ね信号生成手段303で判定できる。エネルギ重畳制御が適正に行われていないと判定した場合、例えば、その旨を報知して異常を搭乗者に知らせると共に、エネルギ重畳制御を一旦中止すれば、二次電流重ね手段50Aが無意味に電力消費することを抑制できる。
上記重畳開始基準電圧値記憶手段302に記憶させておく重畳開始基準電圧値とは、一次コイル111への通電を遮断する点火タイミングIG以降に、二次コイル112に発生する電圧が反映される一次コイル電圧の変化が、点火プラグ20の放電電極間に発生した火花放電の放電経路を維持し難い状態として予め定めた重畳開始条件の成否を判定する基準値であり、本実施形態においては、点火プラグ20の放電電極間に発生した火花放電が気筒内のランブル流に流されて膨らむことにより伸びた放電経路を維持することが難しくなったと想定されるときの二次コイル電圧値(警戒電圧値)を、一次コイル電圧値に置き換えたものである。すなわち、比較的低い電圧で誘導放電が持続できるのは、一次コイル111の電流遮断直後に生じる容量放電で、点火プラグ20の放電電極間の混合気がイオン化されて抵抗値が下がった状態となるからであり、誘導放電による二次電流が流れ始めた後に二次コイル電圧が高くなるのは、点火プラグ20の放電電極間に発生した火花放電が気筒内に生じたランブル流によって流され、伸びた長距離の放電経路に放電電流を流すために放電電極間の抵抗値が上がっているためと考えられるから、二次コイル電圧値を一次コイル電圧値に基づいて監視することで、点火プラグ20の放電電極間に発生した火花放電の放電経路を維持することが難しくなったと想定されるタイミングを判定できるのである。
したがって、点火プラグ20に発生した火花放電の放電経路を維持することが難しくなったと想定される状況が一次コイル電圧に基づいて検知されることを重畳開始タイミングαに設定しておけば、重畳開始タイミングαの判定に伴って速やかにエネルギ重畳制御を開始することができ、火花放電の伸びた放電経路を維持できる放電電流を流して大きな火炎核を形成できるようにし、高い着火性能を実現できるのである。なお、重畳開始基準電圧値は、点火コイル11Aや点火プラグ20等の特性によって最適値が異なるので、例えば、重畳開始基準電圧値記憶手段302に重畳開始基準電圧値設定信号を入力することで(図2中、破線で示す)、重畳開始基準電圧値記憶手段302に任意の重畳開始基準電圧値を設定できるようにしても良い。
また、上述した重畳制御手段31により行うエネルギ重畳制御においては、あくまでも二次電流I2の重畳が必要になったと考えられる重畳開始条件が成立することを重畳開始タイミングαとし、重畳開始条件が成立するまでエネルギ重畳制御は行わないので、エネルギ重畳制御のための電力消費は必要最低限のレベルに抑えられる。すなわち、本実施形態の内燃機関用点火装置1においては、着火性能を向上させるためにエネルギ重畳制御を行っても、極端に燃費が悪化することを抑制できるのである。
シリンダ内に生じるタンブル流の流速は、安定して20〔m/s〕に保たれているわけではなく、変動が大きい場合もある。例えば、図3(b)に示す波形図のように、点火タイミングIGから比較的長い時間にわたって、放電電流が大きくタンブル流の流速が遅かった場合には、点火プラグ20の放電経路が伸びることで重畳開始条件が成立して重畳開始タイミングαとなるまでの期間も長くなり、火花放電の伸びた放電経路を維持できる放電電流を流すために、二次電流重ね手段50Aによって二次電流I2に重畳する期間は短くなる(図3(b)の二次電流波形中、網掛けで示す領域を参照)。したがって、重畳制御手段31により行うエネルギ重畳制御においては、過剰に二次電流I2の重畳を行うことは無く、エネルギ重畳制御のための電力消費は必要最低限のレベルに抑えられるので、点火のための消費電力を適切化して燃費の悪化も低減できる。また、必要以上に二次電流I2を流さないことにより、点火プラグ20の電極摩耗等を抑制できるので、エネルギ重畳制御による点火プラグ20の短命化を防止する効果もある。
なお、重畳制御手段31により行うエネルギ重畳制御の終了タイミングは任意である。例えば、一次コイル電圧が予め定めた重畳停止基準電圧値にまで下がったタイミングを重畳制御終了タイミングβとし、この重畳制御終了タイミングβになると、重畳タイミング判定手段301が二次電流重ね信号生成手段303への二次電流重ね開始指示を停止(或いは、二次電流重ね終了指示を出力)することで、二次電流重ね信号生成手段303から二次電流重ね手段50Aへ二次電流重ね信号Spを出力させなくして、二次電流重ね手段50Aによる二次電流重畳機能を停止させることができる。また、点火タイミングIGから計時した経過時間が、安定した燃焼維持に必要十分な高電流期間として定めた高電流保持時間に達したときを重畳制御終了タイミングβに設定し、エネルギ重畳制御を終了するようにしても良い。
上述した第1実施形態に係る内燃機関用点火装置1では、点火コイル11Aの二次側へ重畳的にエネルギを加算して放電エネルギを増大させることが可能なエネルギ重畳手段として、二次電流経路に設けた二次電流重ね手段50Aを用いるものとしたが、エネルギ重畳手段はこれに限定されるものではない。例えば、図4に示す第2実施形態に係る内燃機関用点火装置2のように、点火タイミングIG以降に一次側から二次側へ誘導性の放電エネルギを重畳することで、点火プラグ20に発生した火花放電による着火性を向上させる構成とすることもできる。
図4に示す内燃機関用点火装置2は、第1実施形態に係る内燃機関用点火装置1と異なり、点火コイル11Bを設けた点火コイルユニット10Bと、この点火コイルユニット10Bに対応した駆動制御機能を有する内燃機関駆動制御装置30B、点火コイル11Bの点火制御を行うための副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72を有する。また、内燃機関駆動制御装置30Bは、点火コイル11Bを制御することで二次側へ放電エネルギを重畳する重畳制御手段32を備える。なお、前述した第1実施形態に係る内燃機関用点火装置1と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
上記点火コイルユニット10Bの点火コイル11Bは、主一次コイル111a(例えば、90ターン)と副一次コイル111b(例えば、60ターン)に生ずる磁束を二次コイル112(例えば、9000ターン)に効率良く作用させるもので、例えば、センターコア113を取り巻くように主一次コイル111aおよび副一次コイル111bを配置し、更にその外側に二次コイル112を配置した構造である。
まず、主一次コイル111aは、その一方端である第1端111a−1がコネクタ152を介して直流電源40と接続され、電源電圧VB+(例えば、12V)が印加される。また、主一次コイル111aの他方端である第2端111a−2は、主点火スイッチ12Bのコレクタに接続され、さらに、この主点火スイッチ12Bのエミッタはコネクタ152を介して接地点GNDに接続される。すなわち、内燃機関駆動制御装置30Bより出力される主一次コイル点火信号Saが主点火スイッチ12Bのゲートに入力されると(例えば、主一次コイル点火信号Saの信号レベルがLからHに変わると)、主点火スイッチ12Bがオンになって主一次コイル111aの第2端111a−2が接地点GNDに接続され、主一次コイル111aには第1端111a−1から第2端111a−2に向かう主一次電流I1aが流れて、順方向の磁束(通電磁束)が発生する。
そして、内燃機関駆動制御装置30Bより出力される主一次コイル点火信号SaがOFFになると(例えば、主一次コイル点火信号Saの信号レベルがHからLに変わると)、主点火スイッチ12Bがオフになって、主一次コイル111aへの通電が遮断される。これにより、容量成分による放電エネルギが二次コイル112に与えられて、点火プラグ20の放電電極間に放電火花が生じると共に、センターコア113を介して二次コイル112にも作用している通電磁束が急激に消失してゆく。この通電磁束の減衰は、見かけ上、通電磁束と逆向きの磁束(以下、遮断磁束という)が生じて通電磁束を減じてゆくものと捉えられる。すなわち、主点火コイル111aへの通電遮断により生じた遮断磁束で通電磁束の磁束量が減ぜられ、その磁束量の変化が一次側と二次側の巻線比に応じた高圧の起電力を二次コイル112に生じさせるので、点火コイル11Bの二次側に誘導成分による放電エネルギが与えられる。
一方、上記主一次コイル111aと同様に、鉄心113を介して二次コイル112に磁界を作用させることが可能な副一次コイル111bは、その一方端である第1端111b−1がコネクタ152を介して副一次コイル通電スイッチ72と接続され、他方端である第2端111b−2がコネクタ152を介して副一次コイル通電許可スイッチ71と接続される。そして、内燃機関駆動制御装置30Bにより副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72のオン・オフが制御されて、副一次コイル111bの第1端111b−1側が直流電源40に、第2端111b−2側が接地点GNDにそれぞれ接続されると、副一次コイル111bには第1端111b−1から第2端111b−2に向かう重畳電流I1bが流れる。
副一次コイル111bに重畳電流I1bが流れると、直流電源40から主一次コイル111aへ通電したときに発生する通電磁束とは逆方向(主一次コイル111aへの通電遮断時に仮想的に生じる遮断磁束と同方向)の重畳磁束が発生する。すなわち、主一次コイル111aへの通電遮断タイミング以降に、重畳電流I1bを副一次コイル111bに流すと、遮断磁束に重畳磁束が加わることで、通電磁束の減衰が加速されることとなり、二次コイル112に誘起される誘導放電エネルギを重畳的に増加させることができる。従って、点火コイル11Bを用いる第2実施形態の内燃機関用点火装置2においては、副一次コイル111bと、この副一次コイル111bへの通電・遮断制御を行う副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72が、点火コイル11Bの二次側へ重畳的にエネルギを加算して放電エネルギを増大させることが可能なエネルギ重畳手段として機能するのである。
このように、副一次コイル111bによって重畳磁束を発生させれば、点火プラグ20の放電電極間の混合気におけるイオン濃度が低下して放電電極間の抵抗値が上がっても、二次電流I2を流し続けられるように二次電圧を高圧に保持することが可能となり、安定した高電流期間を確保して着火性を向上させることができる。なお、通電磁束と重畳磁束の向きを逆にする(重畳磁束を遮断磁束と同じ向きにする)ためには、主一次コイル111aと副一次コイル111bの巻回方向を逆向きにするか、主一次コイル111aへの給電方向と副一次コイル111bへの給電方向を逆向きにしておけば良い。
上述した点火コイル11Bの通電制御に用いる副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72は、それぞれ別々に設けるようにしても良いし、点火コイルユニット10Bとは別体として設ける副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72を同一のケースに収納したユニット構造としても良い。また、耐電圧および耐ノイズ性の高い半導体デバイスを副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72として用いるなら、点火コイルユニット10Bのケース15内に設けるようにしても良い。
副一次コイル通電許可スイッチ71は、高速スイッチング特性を備えるパワーMOS−FETで構成でき、副一次コイル通電許可スイッチ71のソースが副一次コイル111bの第2端111b−2側に、副一次コイル通電許可スイッチ71のドレインが接地点GND側に接続され、副一次コイル通電許可スイッチ71のゲートには、内燃機関駆動制御装置30Bの重畳制御手段32より副一次コイル通電許可信号Sb1が入力される。したがって、副一次コイル通電許可信号Sb1がオン(例えば、信号レベルがLからH)になると、副一次コイル通電許可スイッチ71がオンになり、副一次コイル111bの第2端111b−2が接地点GNDに接続されることとなる。
なお、上記副一次コイル通電許可スイッチ71のドレインと接地点GNDの間の副一次電流経路には、適宜な抵抗値の電流検出用抵抗81を介挿してあり、この電流検出用抵抗81による電圧変化を検知する副一次電圧検出ライン82と電流検出用抵抗81とによって、副一次電流検出手段を構成する。副一次電圧検出ライン82より得られる副一次電流検出信号は、内燃機関駆動制御装置30Bへ供給され、この副一次電流検出信号に基づいて重畳制御手段32は副一次コイル111bに流れる副一次電流を知ることができる。そして、重畳制御手段32は、この副一次電流の検出値を用いて、適切な副一次コイル通電許可信号Sb1および副一次コイル通電信号Sb2を生成し、副一次コイル111bに発生させる重畳磁束を適切に制御することが可能となる。
また、副一次コイル通電スイッチ72もパワーMOS−FETで構成でき、副一次コイル通電スイッチ72のドレインが直流電源40側に、副一次コイル通電スイッチ72のソースが副一次コイル111bの第1端111b−1側に接続され、副一次コイル通電スイッチ72のゲートには、重畳制御手段32より副一次コイル通電信号Sb2が入力される。したがって、副一次コイル通電信号Sb2がオン(例えば、信号レベルがLからH)になると、副一次コイル通電スイッチ72がオンになり、副一次コイル111bの第1端111b−1に直流電源40から電源電圧VB+が印加されることとなる。なお、昇圧電源回路73(図4中、二点鎖線で示す)を設け、直流電源40からの電源電圧VB+を昇圧して副一次コイル111bへ供給できるようにしても良い。斯くすれば、副一次コイル111bに印加する電圧を高くして、副一次コイル111bに流す重畳電流I1bを大きくできるので、副一次コイル111bから二次コイル112へ、より大きなエネルギを重畳することが可能となる。
重畳制御手段32によって副一次コイル111bへの通電制御を行うに際し、二次コイル電圧の相関情報として、主一次コイル111aに生ずる電圧(以下、主一次コイル電圧という)を用いる。そのため、本実施形態に係る内燃機関用点火装置2の点火コイルユニット10Bにおいては、主一次コイル低圧側の電圧を検出する主一次コイル電圧検出手段として、主一次コイル111aの第2端111a−2とバイパス線路13の分岐点との間から主一次コイル電圧検出ライン17を引き出し、コネクタ152を介して内燃機関駆動制御装置30Bの重畳制御手段32へ主一次コイル電圧信号を入力するものとした。
重畳制御手段32の一例を図5に示す。重畳制御手段32には、重畳の開始や終了のタイミングを判定する重畳タイミング判定手段301と、この重畳タイミング判定手段301が重畳開始タイミングを判定するための情報として用いる重畳開始基準電圧値を記憶している重畳開始基準電圧値記憶手段302と、重畳開始に伴って副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72をそれぞれ動作させるための副一次コイル通電許可信号Sb1および副一次コイル通電信号Sb2を生成して出力する副一次コイル制御手段304と、を設ける。
重畳タイミング判定手段301には、点火信号Siと主一次コイル電圧信号と重畳開始基準電圧値記憶手段302からの重畳開始基準電圧値が供給されており、点火信号SiがONからOFFとなる点火タイミングIG以降に、重畳開始条件を満たす重畳開始タイミングの成立を判定する。例えば、図6(a)の波形図に示すように、主一次電流遮断による点火タイミングIGで容量放電エネルギ(二次側に蓄積された電気エネルギ)が消費されて一次電圧が急激に高く(図6(a)の主一次コイル電圧波形においては負極に大きく)なり、短時間で低下して(図6(a)の主一次コイル電圧波形においては正極側へ戻って)行き、重畳開始基準電圧値を下回った後、再び主一次コイル電圧が上昇して重畳開始基準電圧値に達したタイミングを重畳開始タイミングαと判定する。
また、重畳開始条件の判定に際しては、点火タイミングIGの直後から重畳開始条件の判定監視を開始するのではなく、予め定めた主一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に開始するようにしても良い。例えば、点火タイミングIGで主一次コイル電圧の絶対値が急激に高くなってから重畳開始基準電圧値よりも下降したことを主一次コイル電圧監視開始条件とし、この主一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に主一次コイル電圧の絶対値が再び重畳開始基準電圧値に達したことを重畳開始条件と判定すれば、容量放電に伴う二次側の電圧変動で瞬時的に重畳開始基準電圧値を超えたような場合を重畳開始条件の成立と誤判定してしまうことを防げる。或いは、容量放電と看做し得る所定期間(例えば、数十μs)が経過して誘導放電へ移行したと看做し得る状態になったことを主一次コイル電圧監視開始条件とし、この主一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に一次コイル電圧の絶対値が再び重畳開始基準電圧値に達したことを重畳開始条件と判定するようにしても良い。
上述した主一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に、主一次コイル電圧の絶対値が再び重畳開始基準電圧値に達したとき、重畳タイミング判定手段301は、これを重畳開始タイミングαと判定し、副一次コイル制御手段304に副一次コイル通電開始指示を出す。これにより、副一次コイル制御手段304は副一次コイル通電許可信号Sb1および副一次コイル通電信号Sb2を生成して、それぞれ副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72へ出力するので、副一次コイル111bへの通電が開始されて、二次側の誘導起電力が高まり、二次電流が重畳されるのである(図6(a)の二次電流波形中、網掛けで示す領域を参照)。
なお、本実施形態の内燃機関用点火装置2における重畳制御手段32では、副一次コイル制御手段304が重畳開始タイミングαで副一次コイル通電許可信号Sb1と副一次コイル通電信号Sb2を同時に出力し、副一次コイル通電許可スイッチ71と副一次コイル通電スイッチ72を同時に作動させて、副一次コイル111bに重畳磁束を生じさせるものとしたが、副一次コイル通電許可スイッチ71と副一次コイル通電スイッチ72の動作タイミングは同時である必要は無く、副一次コイル通電信号Sb2を出力するよりも前の適宜なタイミング(例えば、点火タイミングIG)で、副一次コイル制御手段304から副一次コイル通電許可スイッチ71へ副一次コイル通電許可信号Sb1を出力しておき、副一次コイル通電信号Sb1を停止した後の適宜なタイミングで副一次コイル通電許可信号Sb1を停止するようにしても構わない。
また、二次電流検出信号を副一次コイル制御手段304へ供給しておけば(図5中、破線で示す)、副一次コイル111bから二次側へのエネルギ重畳制御が適正に行われているか否かを副一次コイル制御手段304で判定できる。エネルギ重畳制御が適正に行われていないと判定した場合、例えば、その旨を報知して異常を搭乗者に知らせると共に、エネルギ重畳制御を一旦中止すれば、副一次コイル111bへの通電で無意味に電力消費することを抑制できる。
更に、重畳制御手段32は、副一次コイル通電信号Sb2のパルス幅を任意に調整できるので、副一次コイル通電スイッチ72をPWM制御することで、副一次コイル111bに生じさせる重畳磁束の磁束強度を調整できる。例えば、制御対象である内燃機関等の特性に応じて最適化した重畳エネルギが二次側へ与えられるよう、副一次コイル通電信号Sb2のパルス幅を設定しておけば、二次コイル112に与える誘導放電エネルギを必要十分なレベルにとどめることが可能であり、一層の燃費向上に有用である。
また、上述した第2実施形態に係る内燃機関用点火装置2において、重畳制御手段32により行うエネルギ重畳制御においても、第1実施形態の内燃機関用点火装置1における重畳制御手段31と同様、あくまでも点火プラグ20に発生した火花放電の放電経路を維持し難い状態である重畳開始条件が成立することを重畳開始タイミングαとし、重畳開始条件が成立するまでエネルギ重畳制御は行わないので、エネルギ重畳制御のための電力消費は必要最低限のレベルに抑えられる。すなわち、第2実施形態の内燃機関用点火装置2においても、着火性能を向上させるためにエネルギ重畳制御を行っても、極端に燃費が悪化することを抑制できるのである。
例えば、図6(b)に示す波形図のように、点火タイミングIGから比較的長い時間にわたって、一次コイル電圧が重畳開始基準電圧値に達しなかった場合には、重畳開始条件が成立して重畳開始タイミングαとなるまでの期間も長くなり、二次電流I2の安定した高電流期間を確保するために副一次コイル111bの重畳磁束を二次側に作用させて二次電流I2を重畳する期間は短くなる(図6(b)の二次電流波形中、網掛けで示す領域を参照)。したがって、第2実施形態に係る内燃機関用点火装置2の重畳制御手段32により行うエネルギ重畳制御においても、第1実施形態の内燃機関用点火装置1と同様、過剰に二次電流I2の重畳を行うことは無く、エネルギ重畳制御のための電力消費は必要最低限のレベルに抑えられるので、点火のための消費電力を適切化して燃費の悪化も低減できる。また、必要以上に二次電流I2を流さないことにより、点火プラグ20の電極摩耗等を抑制できるので、エネルギ重畳制御による点火プラグ20の短命化を防止する効果もある。
また、第2実施形態に係る内燃機関用点火装置2の重畳制御手段32により行うエネルギ重畳制御の終了タイミングも任意であり、例えば、点火タイミングIGから計時した経過時間が、安定した燃焼維持に必要十分な高電流期間として定めた高電流保持時間に達したときを重畳制御終了タイミングβに設定し、エネルギ重畳制御を終了するようにしても良い。なお、副一次コイル制御手段304から出力する副一次コイル通電許可信号Sb1と副一次コイル通電信号Sb2は、同時に停止する必要は無く、例えば、副一次コイル111bへの通電によるエネルギ重畳制御に必要十分な上限時間で副一次コイル通電信号Sb2を停止した後、若干の猶予時間が経過してから副一次コイル通電許可信号Sb1を停止するようにしても良い。
上述した第1,第2実施形態に係る内燃機関用点火装置1,2では、重畳開始条件が成立すると、点火コイル11A,11Bの二次側へ一定のエネルギを加算するものであり、二次側に与えた放電エネルギが点火プラグ20の伸びた放電経路を維持するのに過剰であったり、逆に不十分で火花の吹き飛び(リストライク)が生じる可能性にまで配慮していない。このため、重畳制御手段31.32の制御によって点火コイル11A,11Bの二次側へ重畳したエネルギが過剰であれば、燃費を悪くしたり、点火プラグ20の寿命を縮めてしまったりする可能性があり、逆に、点火コイル11A,11Bの二次側へ重畳したエネルギが十分でなかった場合には、点火プラグ20にリストライクが起きて、着火性を損なうこととなる。
そこで、図7に示す第3実施形態に係る内燃機関用点火装置3では、点火タイミングIG以降に重畳開始条件が成立して重畳する二次電流を比較的低い第1レベルに抑えておき、その後、この第1レベルの二次電流重畳では点火プラグ20に発生した火花の吹き飛びが懸念される状態にあると判断した場合に限って、重畳する二次電流を比較的高い第2レベルに増やす制御を行うものとした。これにより、第3実施形態の内燃機関用点火装置3では、エネルギ重畳制御によって燃費が悪化する可能性を更に低減しつつ、安定した内燃機関の燃焼を実現することができる。
図7に示す内燃機関用点火装置3は、第1実施形態に係る内燃機関用点火装置1と同様、点火コイル11Aを設けた点火コイルユニット10Aと、この点火コイルユニット10Aに対応した駆動制御機能を有する内燃機関駆動制御装置30C、比較的低い第1レベルに対応させた二次電流を重畳する第1重畳動作と比較的高い第2レベルに対応させた二次電流を重畳する第2重畳動作を切り替えて実行可能な二次電流重ね手段50Cを備える。なお、前述した第1実施形態に係る内燃機関用点火装置1と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
内燃機関駆動制御装置30Cでは、一次コイル電圧信号に基づいて二次コイル電圧を推定することにより、点火プラグ20への印加電圧の変化を知ることが可能となるので、内燃機関駆動制御装置30Cが二次電流重ね手段50Cによる二次電流の重畳制御を行う。この二次電流重ね手段50Cを用いたエネルギ重畳制御は、例えば、内燃機関駆動制御装置30Cに設けた重畳制御手段33の機能によって実行する。また、二次電流重ね手段50Cの電流源としては、車両バッテリ等の直流電源40を用いることができる。
重畳制御手段33の一例を図8に示す。重畳制御手段33には、重畳の開始・更新や終了の制御タイミングを判定する重畳制御タイミング判定手段305と、この重畳制御タイミング判定手段305が重畳開始の制御タイミングを判定するための情報として用いる重畳開始基準電圧値を記憶している重畳開始基準電圧値記憶手段302と、重畳制御タイミング判定手段305が重畳更新の制御タイミングを判定するための情報として用いる重畳補正用電圧値(後に詳述)を記憶している重畳補正用電圧値記憶手段306と、重畳開始および重畳更新に伴って二次電流重ね手段50Cを動作させるための二次電流重ね制御信号Spを生成して出力する二次電流重ね制御信号生成手段307と、を設ける。
重畳制御タイミング判定手段305には、点火信号Siと、一次コイル電圧信号と、重畳開始基準電圧値記憶手段302からの重畳開始基準電圧値と、重畳補正用電圧値記憶手段306からの重畳補正用電圧値が供給されており、点火信号SiがONからOFFとなる点火タイミングIG以降に、重畳開始条件を満たす重畳開始タイミングの成立を判定する。例えば、図9(a)の波形図に示すように、一次電流遮断による点火タイミングIGで容量放電エネルギ(二次側に蓄積された電気エネルギ)が消費されて一次電圧が急激に高くなり、短時間で低下して行き、重畳開始基準電圧値を下回った後、再び一次コイル電圧が上昇して重畳開始基準電圧値に達したタイミングを重畳開始タイミングα1と判定する。無論、容量放電と看做し得る所定期間(例えば、数十μs)が経過して誘導放電へ移行したと看做し得る状態になったことを一次コイル電圧監視開始条件とし、この一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に一次コイル電圧の絶対値が再び重畳開始基準電圧値に達したことを重畳開始条件と判定するようにしても良い。
一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に、一次コイル電圧の絶対値が再び重畳開始基準電圧値に達したとき、重畳制御タイミング判定手段305は、これを重畳制御開始タイミングα1と判定し、二次電流重ね制御信号生成手段307に二次電流重ね制御開始指示を出す。この二次電流重ね制御開始指示を受けた二次電流重ね制御信号生成手段307は、比較的低い第1レベルに対応させた二次電流を重畳する第1重畳動作を指示する二次電流重ね制御信号Sp(例えば、信号電位がLev1)を生成して二次電流重ね手段50Cへ出力する。これを受けた二次電流重ね手段50Cが第1重畳動作を行うことで、第1レベルに対応させた二次電流が重畳されて行く。
上記重畳制御タイミング判定手段305が重畳制御開始タイミングα1の成立を判定することに伴って、二次電流重ね手段50Cから第1レベルでの二次電流が重畳されるようになった後、重畳制御タイミング判定手段305は、点火プラグ20に発生した火花の吹き飛びが懸念される状態として予め定めた重畳補正条件の成否を、重畳補正用電圧値記憶手段306に記憶された重畳補正用電圧値に基づいて判定する。具体的には、一次コイル電圧検出手段により検出された一次コイル電圧値が、重畳開始基準電圧値を超える値として予め設定した重畳補正用電圧値に達することで、重畳補正条件が成立した重畳補正タイミングα2と判定する。
上記重畳補正電圧値記憶手段306に記憶させておく重畳補正電圧値とは、エネルギ重畳手段としての二次電流重ね手段50Cより二次電流が重畳された後にも、二次電流の上昇傾斜が十分ではないと判定できる二次コイル電圧値を一次コイル電圧値に置き換えたものである。すなわち、検出された一次コイル電圧が、重畳開始基準電圧値から更に重畳補正用電圧値まで上昇しているのは、点火プラグ20における放電電極間の抵抗値が更に上がっているためで、伸びた放電経路を維持するのに十分な放電電流を流せていない状態(点火プラグ20に発生した火花の吹き飛びが懸念される状態)と考えられるから、二次電流重ね手段50Cを第1重畳動作から第2重畳動作へ切り替える契機となる。
上記重畳制御タイミング判定手段305が重畳補正タイミングα2の成立を判定すると、二次電流重ね制御信号生成手段307に二次電流補正指示を出す。この二次電流補正指示を受けた二次電流重ね制御信号生成手段307は、比較的高い第2レベルに対応させた二次電流を重畳する第2重畳動作を指示する二次電流重ね制御信号Sp(例えば、信号電位がLev2)を生成して二次電流重ね手段50Cへ出力する。これを受けた二次電流重ね手段50Cが第2重畳動作を行うことで、第1レベルより高い第2レベルに対応させた二次電流が重畳され、二次電流の上昇傾斜を早めることができ(図9(a)の二次電流波形中、網掛けで示す領域を参照)、いち早く、伸びた放電経路に十分な放電電流を流してリストライクが発生する可能性を低減させる。すなわち、第3実施形態に係る内燃機関用点火装置3によれば、より確実に、気筒内に大きな火炎核を形成することができるので、着火性を一層向上させて、安定した燃焼を実現できる。
本実施形態の内燃機関用点火装置3では、重畳制御手段33から1本の二次電流重ね制御信号線を介して、二次電流重ね手段50Cへ電位レベルの異なる二次電流重ね制御信号Spを供給することで、二次電流重ね手段50Cに第1重畳動作と第2重畳動作を指示するものとしたが、これに限定されない。例えば、第1動作指示用の信号線と第2動作指示用の信号線を別途設けて、二次電流重ね手段50Cへの指示信号の入力経路を分けておけば、ノイズ混入による信号電位の誤判定による二次電流重ね手段50Cの誤動作を防げるので、エネルギ重畳制御の安定性を高めることができる。
さらに、二次電流検出信号を二次電流重ね制御信号生成手段307へ供給しておけば(図8中、破線で示す)、二次電流重ね手段50Cを用いた二次電流I2の重畳制御が適正に行われているか否かを二次電流重ね制御信号生成手段307で判定できる。エネルギ重畳制御が適正に行われていないと判定した場合、例えば、その旨を報知して異常を搭乗者に知らせると共に、エネルギ重畳制御を一旦中止すれば、二次電流重ね手段50Cが無意味に電力消費することを抑制できる。
加えて、重畳制御開始タイミングα1の成立を判定するための重畳開始基準電圧値や重畳補正タイミングα2の成立を判定するための重畳補正用電圧値は、点火コイル11Aや点火プラグ20等の特性によって最適値が異なるので、例えば、重畳開始基準電圧値記憶手段302に重畳開始基準電圧値設定信号を入力することで(図8中、破線で示す)、重畳開始基準電圧値記憶手段302に任意の重畳開始基準電圧値を設定できるようにしても良いし、重畳補正用電圧値記憶手段306に重畳補正用電圧値設定信号を入力することで(図8中、破線で示す)、重畳補正用電圧値記憶手段306に任意の重畳補正用電圧値を設定できるようにしても良い。
また、上述した重畳制御手段33により行うエネルギ重畳制御においては、あくまでも点火プラグ20に発生した火花放電の放電経路を維持し難い状態になったと考えられる重畳開始条件が成立することを重畳制御開始タイミングα1とし、重畳開始条件が成立するまでエネルギ重畳制御は行わないので、エネルギ重畳制御のための電力消費は必要最低限のレベルに抑えられる。すなわち、本実施形態の内燃機関用点火装置1においては、着火性能を向上させるためにエネルギ重畳制御を行っても、極端に燃費が悪化することを抑制できるのである。
例えば、図9(b)に示す波形図のように、点火タイミングIGから比較的長い時間にわたって、一次コイル電圧が重畳開始基準電圧値に達しなかった場合には、重畳開始条件が成立して重畳制御開始タイミングα1となるまでの期間、更には重畳補正条件が成立して重畳補正タイミングα2となるまでの期間も長くなり、点火プラグ20に発生した火花放電の放電経路を維持するために二次電流重ね手段50Cによって二次電流I2に重畳する期間は短くなる(図9(b)の二次電流波形中、網掛けで示す領域を参照)。したがって、重畳制御手段33により行うエネルギ重畳制御においては、過剰に二次電流I2の重畳を行う事は無く、エネルギ重畳制御のための電力消費は必要最低限のレベルに抑えられるので、点火のための消費電力を適切化して燃費の悪化も低減できる。また、必要以上に二次電流I2を流さないことにより、点火プラグ20の電極摩耗等を抑制できるので、エネルギ重畳制御による点火プラグ20の短命化を防止する効果もある。
加えて、比較的低い第1レベルに対応させた二次電流を重畳する第1重畳動作を二次電流重ね手段50Cに行われることで、点火プラグ20に発生した火花放電の放電経路を維持することができていれば、その後に、一次コイル電圧が重畳補正用電圧値に達しないので、二次電流重ね手段50Cを第2重畳動作へ移行させることはない。この点においても、本実施形態の内燃機関用点火装置3は、燃費の悪化低減および点火プラグ20の短命化防止効果が、一層高いものとなる。
また、重畳制御手段33により行うエネルギ重畳制御の終了タイミングは任意である。例えば、一次コイル電圧が予め定めた重畳停止基準電圧値にまで下がったタイミングを重畳制御終了タイミングβとし、この重畳制御終了タイミングβになると、重畳制御タイミング判定手段305が二次電流重ね制御信号生成手段307への二次電流重ね開始指示を停止(或いは、二次電流重ね終了指示を出力)することで、二次電流重ね制御信号生成手段307から二次電流重ね手段50Cへ二次電流重ね制御信号Spを出力させなくして、二次電流重ね手段50Cによる二次電流重畳機能を停止させることができる。また、点火タイミングIGから計時した経過時間が、安定した燃焼維持に必要十分な高電流期間として定めた高電流保持時間に達したときを重畳制御終了タイミングβに設定し、エネルギ重畳制御を終了するようにしても良い。
上述した第3実施形態に係る内燃機関用点火装置3は、点火コイルユニット10Aに対して二次電流重ね手段50Cによる二次電流の重畳を調整することで、いち早く、伸びた放電経路に十分な放電電流を流してリストライクが発生する可能性を低減させるものであった。これと同様に、点火コイルユニット10Bに対して副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72による重畳磁束を調整することで、火花放電の伸びた放電経路に十分な放電電流を流して。リストライクが発生する危険性を低減することも可能である。第4実施形態に係る内燃機関用点火装置4では、点火タイミングIG以降に重畳開始条件が成立して副一次コイル111bに生じさせる重畳磁束を比較的低い第1レベルに抑えておき、その後、この第1レベルの重畳磁束では点火プラグ20に発生した火花の吹き飛びが懸念される状態にあると判断した場合に限って、副一次コイル111bに生じさせる重畳磁束を比較的高い第2レベルに増やす制御を行うものとした。
図10に示す内燃機関用点火装置4は、第2実施形態に係る内燃機関用点火装置2と同様、点火コイル11Bを設けた点火コイルユニット10Bと、副一次コイル通電許可スイッチ71と、副一次コイル通電スイッチ72と、点火コイルユニット10Bおよび副一次コイル通電許可スイッチ71と副一次コイル通電スイッチ72に対応した駆動制御機能を有する内燃機関駆動制御装置30Dを備える。なお、前述した第2実施形態に係る内燃機関用点火装置2と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
内燃機関駆動制御装置30Dでは、一次コイル電圧信号に基づいて二次コイル電圧を推定することにより、点火プラグ20への印加電圧の変化を知ることが可能となるので、内燃機関駆動制御装置30Dが副一次コイル通電許可スイッチ71と副一次コイル通電スイッチ72の動作制御を行う事で、副一次コイル111bによる重畳磁束の発生タイミングや磁束量の制御を行う。これら副一次コイル通電許可スイッチ71と副一次コイル通電スイッチ72の動作制御は、例えば、内燃機関駆動制御装置30Dに設けた重畳制御手段34の機能によって実行する。
重畳制御手段34の一例を図11に示す。重畳制御手段34には、重畳の開始・更新や終了の制御タイミングを判定する重畳制御タイミング判定手段305と、この重畳制御タイミング判定手段305が重畳開始の制御タイミングを判定するための情報として用いる重畳開始基準電圧値を記憶している重畳開始基準電圧値記憶手段302と、重畳制御タイミング判定手段305が重畳更新の制御タイミングを判定するための情報として用いる重畳補正用電圧値を記憶している重畳補正用電圧値記憶手段306と、重畳開始および重畳更新に伴って副一次コイル通電許可スイッチ71と副一次コイル通電スイッチ72を動作させるための副一次コイル通電許可信号Sb1と副一次コイル通電信号Sb2を生成して出力する副一次コイル制御手段308と、を設ける。
重畳制御タイミング判定手段305には、点火信号Siと、主一次コイル電圧信号と、重畳開始基準電圧値記憶手段302からの重畳開始基準電圧値と、重畳補正用電圧値記憶手段306からの重畳補正用電圧値が供給されており、点火信号SiがONからOFFとなる点火タイミングIG以降に、重畳開始条件を満たす重畳開始タイミングの成立を判定する。例えば、図12(a)の波形図に示すように、一次電流遮断による点火タイミングIGで容量放電エネルギ(二次側に蓄積された電気エネルギ)が消費されて一次電圧が急激に高くなり、短時間で低下して行き、重畳開始基準電圧値を下回った後、再び主一次コイル電圧が上昇して重畳開始基準電圧値に達したタイミングを重畳開始タイミングα1と判定する。無論、容量放電と看做し得る所定期間(例えば、数十μs)が経過して誘導放電へ移行したと看做し得る状態になったことを主一次コイル電圧監視開始条件とし、この主一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に主一次コイル電圧の絶対値が再び重畳開始基準電圧値に達したことを重畳開始条件と判定するようにしても良い。
主一次コイル電圧監視開始条件が成立した後に、主一次コイル電圧の絶対値が再び重畳開始基準電圧値に達したとき、重畳制御タイミング判定手段305は、これを重畳制御開始タイミングα1と判定し、副一次コイル制御手段308に副一次コイル通電開始指示を出す。これにより、副一次コイル制御手段304は副一次コイル通電許可信号Sb1および副一次コイル通電信号Sb2を生成して、それぞれ副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72へ出力するので、副一次コイル111bへの通電が開始されて、二次側の誘導起電力が高まり、二次電流が重畳される。このとき、副一次コイル通電信号Sb2は、クロック周期Tに対してオン時間τ1の比較的低いデューティ比に設定してあるので、副一次コイル111bに生じさせる重畳磁束は比較的低い第1レベルに抑えされた第1重畳動作となる。
上記重畳制御タイミング判定手段305が重畳制御開始タイミングα1の成立を判定することに伴って、副一次コイル制御手段308からの副一次コイル通電許可信号Sb1と副一次コイル通電信号Sb2によって副一次コイル通電許可スイッチ71と副一次コイル通電スイッチ72のオン・オフが制御され、副一次コイル111bに第1レベルの重畳磁束が生じて、第1レベルでの二次電流が重畳されるようになった後、重畳制御タイミング判定手段305は、点火プラグ20に発生した火花の吹き飛びが懸念される状態として予め定めた重畳補正条件の成否を、重畳補正用電圧値記憶手段306に記憶された重畳補正用電圧値に基づいて判定する。具体的には、主一次コイル電圧検出手段により検出された主一次コイル電圧値が、重畳開始基準電圧値を超える値として予め設定した重畳補正用電圧値に達することで、重畳補正条件が成立した重畳補正タイミングα2と判定する。
上記重畳補正電圧値記憶手段306に記憶させておく重畳補正電圧値とは、副一次コイル111bから第1レベルの重畳磁束が二次コイル112に作用して二次電流が重畳された後にも、二次電流の上昇傾斜が十分ではないと判定できる二次コイル電圧値を主一次コイル電圧値に置き換えたものである。すなわち、検出された主一次コイル電圧が、重畳開始基準電圧値から更に重畳補正用電圧値まで上昇しているのは、点火プラグ20における放電電極間の抵抗値が更に上がっているためで、伸びた放電経路を維持するのに十分な放電電流を流せていない状態(点火プラグ20に発生した火花の吹き飛びが懸念される状態)と考えられるから、副一次コイル111bに比較的高い第2レベルの重畳磁束を発生させるように副一次コイル通電スイッチ72への副一次コイル通電信号Sb2を変更する契機となる。
上記重畳制御タイミング判定手段305が重畳補正タイミングα2の成立を判定すると、副一次コイル制御手段308に重畳磁束補正指示を出す。この重畳磁束補正指示を受けた副一次コイル制御手段308は、比較的高いデューティ比の副一次コイル通電信号Sb2を副一次コイル通電スイッチ72へ出力するように変更する。具体的には、クロック周期Tに対してオン時間τ2(但し、τ1<τ2)の比較的高いデューティ比に副一次コイル通電信号Sb2を変更することで、副一次コイル111bへの通電量を比較的高い第2レベルに増やし、副一次コイル111bに生じさせる重畳磁束を比較的高い第2レベルに引き上げる第2重畳動作となる。すなわち、比較的高い第2レベルの重畳磁束を加えた磁束変化を二次コイル112に作用させる第2重畳動作を行うことで、第1レベルより高い第2レベルに対応させた二次電流が重畳され、二次電流の上昇傾斜を早めることができ(図12(a)の二次電流波形中、網掛けで示す領域を参照)、いち早く、伸びた放電経路に十分な放電電流を流してリストライクが発生する可能性を低減させる。すなわち、第4実施形態に係る内燃機関用点火装置4によれば、より確実に、気筒内に大きな火炎核を形成することができるので、着火性を一層向上させて、安定した燃焼を実現できる。
本実施形態の内燃機関用点火装置3では、重畳制御手段34から副一次コイル通電スイッチ72へ供給する副一次コイル通電信号Sb2のデューティ比を高めることで第1重畳動作から第2重畳動作へ変更させるものとしたが、副一次コイル111bにより発生させる重畳磁束を増大させることが可能なら、これに限定されるものではない。例えば、重畳制御手段34の副一次コイル制御手段308が生成する副一次コイル通電信号Sb2のデューティ比を一定とし、第1重畳動作から第2重畳動作へ変更するときには、副一次コイル制御手段308が昇圧電源回路73へ昇圧動作信号を出力することで(図11中、破線で示す)、昇圧電源回路73を稼動させて副一次コイル111bへ印加する電圧を高め、重畳磁束を第2レベルに高めるような第2重畳動作としても良い。
さらに、二次電流検出信号を副一次コイル制御手段308へ供給しておけば(図11中、破線で示す)、副一次コイル通電許可スイッチ71と副一次コイル通電スイッチ72の動作制御による第1重畳動作あるいは第2重畳動作が適正に行われているか否かを副一次コイル制御手段308で判定できる。エネルギ重畳制御が適正に行われていないと判定した場合、例えば、その旨を報知して異常を搭乗者に知らせると共に、エネルギ重畳制御を一旦中止すれば、副一次コイル通電許可スイッチ71、副一次コイル通電スイッチ72、あるいは副一次コイル111bが無意味に電力消費することを抑制できる。
加えて、重畳制御開始タイミングα1の成立を判定するための重畳開始基準電圧値や重畳補正タイミングα2の成立を判定するための重畳補正用電圧値は、点火コイル11Aや点火プラグ20等の特性によって最適値が異なるので、例えば、重畳開始基準電圧値記憶手段302に重畳開始基準電圧値設定信号を入力することで(図11中、破線で示す)、重畳開始基準電圧値記憶手段302に任意の重畳開始基準電圧値を設定できるようにしても良いし、重畳補正用電圧値記憶手段306に重畳補正用電圧値設定信号を入力することで(図11中、破線で示す)、重畳補正用電圧値記憶手段306に任意の重畳補正用電圧値を設定できるようにしても良い。
また、上述した重畳制御手段34により行うエネルギ重畳制御においては、あくまでも二次電流I2の重畳が必要になったと考えられる重畳開始条件が成立することを重畳制御開始タイミングα1とし、重畳開始条件が成立するまでエネルギ重畳制御は行わないので、エネルギ重畳制御のための電力消費は必要最低限のレベルに抑えられる。すなわち、本実施形態の内燃機関用点火装置4においては、着火性能を向上させるためにエネルギ重畳制御を行っても、極端に燃費が悪化することを抑制できるのである。
例えば、図12(b)に示す波形図のように、点火タイミングIGから比較的長い時間にわたって、主一次コイル電圧が重畳開始基準電圧値に達しなかった場合には、重畳開始条件が成立して重畳制御開始タイミングα1となるまでの期間、更には重畳補正条件が成立して重畳補正タイミングα2となるまでの期間も長くなり、点火プラグ20に発生した火花放電の放電経路を維持するために副一次コイル通電許可スイッチ71および副一次コイル通電スイッチ72を駆動させて副一次コイル111bに重畳磁束を発生させ、二次電流I2に重畳する期間は短くなる(図12(b)の二次電流波形中、網掛けで示す領域を参照)。したがって、重畳制御手段34により行うエネルギ重畳制御においては、過剰に副一次コイル111bへの給電を行う事は無く、エネルギ重畳制御のための電力消費は必要最低限のレベルに抑えられるので、点火のための消費電力を適切化して燃費の悪化も低減できる。また、必要以上に副一次コイル111bへの給電を行わず、過剰な二次電流I2を流さないことにより、点火プラグ20の電極摩耗等を抑制できるので、エネルギ重畳制御による点火プラグ20の短命化を防止する効果もある。
加えて、比較的低い第1レベルの重畳磁束を加えた磁束変化を二次コイル112に作用させる第1重畳動作を行うことで、点火プラグ20に発生した火花放電の放電経路を維持することができていれば、その後に、一次コイル電圧が重畳補正用電圧値に達することはないので、比較的高い第2レベルの重畳磁束を加えた磁束変化を二次コイル112に作用させる第2重畳動作へ移行させることはない。この点においても、本実施形態の内燃機関用点火装置4は、燃費の悪化低減および点火プラグ20の短命化防止効果が、一層高いものとなる。
また、重畳制御手段34により行うエネルギ重畳制御の終了タイミングは任意であり、例えば、点火タイミングIGから計時した経過時間が、安定した燃焼維持に必要十分な高電流期間として定めた高電流保持時間に達したときを重畳制御終了タイミングβに設定し、エネルギ重畳制御を終了するようにしても良い。
以上、本発明に係る内燃機関用点火装置の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。