JPWO2019193961A1 - 樹脂組成物、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形物 - Google Patents

樹脂組成物、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形物 Download PDF

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Abstract

高い機械的強度、耐久性、および寸法精度が優れる立体造形物や、その製造方法、これに用いる樹脂組成物を提供することを課題とする。上記課題解決のため、樹脂組成物は、液体状の樹脂組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物を製造する方法に使用される。当該樹脂組成物は、光重合性化合物と、熱重合性化合物と、表面に前記熱重合性化合物と結合可能な官能基を有する官能基含有フィラーを含む。

Description

本発明は、樹脂組成物、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形物に関する。
近年、複雑な形状の立体造形物を比較的容易に製造できる様々な方法が開発されている。立体造形物を製造する方法の一つとして、活性エネルギーによって硬化する樹脂組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、所望の形状に樹脂組成物を硬化させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。そして近年、このような方法で作製される立体造形物を、各種最終製品とすることが試みられている。
しかしながら、光重合性化合物を主に含む樹脂組成物を用いて立体造形を行うと、機械的強度が十分でなかったり、硬化収縮によって、所望の寸法精度が得られないことがあった。そこで、得られる立体造形物の機械的強度向上や、寸法精度の向上を目的として、ガラスビーズ等のフィラーを添加することが知られている(例えば、特許文献2および3)。しかしながら、フィラーを添加しただけでは、最終製品に要求される十分な機械的強度を得ることは難しい、との課題があった。
また近年、新たな立体造形物の製造方法として、光重合性化合物を含む液体状の樹脂組成物を連続的または断続的に硬化させる方法が提案されている(特許文献4および5)。当該方法では、まず造形物槽内に、活性エネルギーを照射しても樹脂組成物が硬化しないバッファ領域と、活性エネルギーの照射によって樹脂組成物が硬化する硬化用領域とを設ける。このとき、バッファ領域が造形槽底部側、硬化用領域が造形槽上部側に位置するよう、それぞれの領域を形成する。そして、硬化用領域に立体造形の基点となるキャリアを配置し、バッファ領域(造形槽底部)側から硬化用領域に活性エネルギーを選択的に照射する。これにより、キャリア表面に立体造形物の一部(樹脂組成物の硬化物)が形成される。そしてさらに、当該キャリアを造形槽上部側に引き上げながら、活性エネルギーを照射することで、キャリアの下方に、樹脂組成物の硬化物が連続的に形成され、継ぎ目のない立体造形物が作製される。
特開平8−174680号公報 特開平7−26060号公報 特開2016−138180号公報 特表2016−509962号公報 国際公開第2017/044381号
ここで、立体造形物の機械的強度を高めるため、造形用の樹脂組成物に熱重合性化合物およびフィラーを添加することが検討されている。しかしながら、単に熱重合性化合物にフィラーを混合するだけでは、初期の機械的強度は向上するものの、経時劣化により機械的強度が低下してしまう。これは単に混合するだけではフィラーが局在化しやすく、フィラーが存在しない部分からクラックが生じ、立体造形物の劣化が促進されるためである。また、熱重合性化合物を混合することにより、光重合性化合物のみの場合より寸法精度は向上するが、精密機器用途を想定した場合には不十分である、との課題があった。
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものである。すなわち本発明は、機械的強度および耐久性に優れ、さらには寸法精度に優れる立体造形物や、その製造方法、これに用いる樹脂組成物の提供を目的とする。
本発明の第1は、以下の樹脂組成物にある。
[1]液体状の樹脂組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物を製造する方法に使用される樹脂組成物であって、光重合性化合物と、熱重合性化合物と、前記熱重合性化合物に結合可能な官能基を表面に有する官能基含有フィラーと、を含む、樹脂組成物。
[2]前記熱重合性化合物が、エポキシ樹脂またはその前駆体、もしくはウレタン樹脂またはその前駆体である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記官能基含有フィラーが、前記熱重合性化合物に結合可能な官能基を有する、セルロースナノファイバーである、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
本発明の第2は、以下の立体造形物の製造方法、または立体造形物にある。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記光重合性化合物の硬化物を含む一次硬化物を形成する光造形工程と、前記一次硬化物を、さらに熱硬化させる熱硬化工程を含む、立体造形物の製造方法。
[5]前記光造形工程が、前記樹脂組成物および酸素を含み、酸素により前記光重合性化合物の硬化が阻害されるバッファ領域、ならびに前記樹脂組成物を少なくとも含み、前記バッファ領域より酸素濃度が低く、前記光重合性化合物の硬化が可能な硬化用領域を、造形物槽内に隣接して形成する第1の工程と、前記バッファ領域側から前記樹脂組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記硬化用領域で前記光重合性化合物を硬化させる第2の工程と、を含み、前記第2の工程では、形成された硬化物を前記バッファ領域とは反対側に移動させながら、前記硬化用領域に活性エネルギーを照射し、前記一次硬化物を形成する、[4]に記載の立体造形物の製造方法。
[6]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物である、立体造形物。
本発明の樹脂組成物によれば、高い機械的強度、耐久性、および寸法精度を兼ね備える立体造形物の提供が可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る立体造形物の製造装置の模式図である。 図2は、本発明の他の実施形態に係る立体造形物の製造装置の模式図である。
1.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、液体状であり、当該樹脂組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、立体造形物を製造する方法に使用される。前述のように、このような樹脂組成物に、フィラーを添加したり、熱重合性化合物を添加したりすることが検討されてきた。しかしながら、フィラーの添加のみでは、立体造形物の初期の機械的強度を高めることは可能であったとしても、フィラーが局在化しやすく、フィラーの含まれていない領域の樹脂が経時で劣化しやすかった。そのため、長期間に亘って高い機械的強度得ることは難しかった。また、熱重合性化合物を混合することにより、光重合性化合物のみの場合より寸法精度は向上するが、精密機器用途を想定した場合には不十分である、という課題があった。
これに対し、本発明の樹脂組成物には、光重合性化合物と、熱重合性化合物と、熱重合性化合物に結合可能な官能基を表面に有する官能基含有フィラーと、が含まれる。当該樹脂組成物に活性エネルギーを選択的に照射すると、光重合性化合物が重合し、所望の形状の一次硬化物が作製される。そしてさらに、当該一次硬化物を加熱することで、一次硬化物内の熱重合性化合物が重合する。またこのとき、官能基含有フィラーの官能基が、熱重合性化合物に結合することで、熱重合性化合物の重合物(硬化物)内に、フィラーが化学結合を介して取り込まれる。その結果、フィラーが立体造形物内に均一に分布し、立体造形物の機械的強度が高まったり、経時劣化が抑制されたりする。また、フィラーは熱変化による寸法変化がなく強度に優れる。したがって、フィラーが樹脂骨格中に化学結合を介して取り込まれることで、得られる立体造型物の寸法変化がさらに抑制されたりする。
なお、樹脂組成物には、本発明の目的および効果を損なわない範囲において、光重合開始剤や、熱硬化剤、熱硬化促進剤、各種添加剤等が必要に応じて含まれていてもよい。以下、各成分について説明する。
1−1.光重合性化合物
樹脂組成物に含まれる光重合性化合物は、活性エネルギーの照射によって重合し、硬化可能な化合物であればよい。例えば、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、プレポリマーであってもよく、これらの混合物であってもよい。また、光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であってもよく、カチオン重合性化合物であってもよい。ただし、後述するように、樹脂組成物に酸素等の重合禁止剤を添加しながら、立体造形物を作製する方法(以下、「CLIP法」とも称する)に用いる樹脂組成物では、光重合性化合物がラジカル重合性化合物である必要がある。
樹脂組成物には、光重合性化合物が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。また、光重合性化合物を硬化させる活性エネルギーの例には、紫外線、X線、電子線、γ線、可視光線等が含まれる。
光重合性化合物の一つである、ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合開始剤等の存在下、活性エネルギーの照射によってラジカル重合可能な基を有していればその種類は特に制限されない。光重合性化合物は、例えば、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基、ビニルアミド基、(メタ)アクリロイル基、等を分子内に1つ以上有する化合物とすることができる。これらの中でも、分子内に不飽和カルボン酸エステル構造を1つ以上含む不飽和カルボン酸エステル化合物、または分子内に不飽和カルボン酸アミド構造を1つ以上含む不飽和カルボン酸アミド化合物であることが好ましい。より具体的には、後述の、(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリレート系化合物および/または(メタ)アクリルアミド系化合物であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」との記載は、メタクリルおよび/またはアクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」との記載は、メタクリロイルおよび/またはアクリロイルを表し、「(メタ)アクリレート」との記載は、メタクリレートおよび/またはアクリレートを表す。
上記ラジカル重合性化合物の一つである「アリルエーテル基を有する化合物」の例には、フェニルアリルエーテル、o−,m−,p−クレゾールモノアリルエーテル、ビフェニル−2−オールモノアリルエーテル、ビフェニル−4−オールモノアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、シクロヘキサンメタノールモノアリルエーテル、フタル酸ジアリルエーテル、イソフタル酸ジアリルエーテル、ジメタノールトリシクロデカンジアリルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、アルキレン(炭素数2〜5)グリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ポリグリセリン(重合度2〜5)ジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びテトラアリルオキシエタン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテルおよびポリグリセリン(重合度3〜13)ポリアリルエーテル等が含まれる。
また、上記「ビニルエーテル基を有する化合物」の例には、ブチルビニルエーテル、ブチルプロペニルエーテル、ブチルブテニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、エチルエトキシビニルエーテル、アセチルエトキシエトキシビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、アダマンチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、ビスフェノールAのEO付加物ジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロペンタジエンビニルエーテル、ノルボルニルジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールビニルエーテル、ブチレンジビニルエーテル、ジブチレングリコールジビニルエーテル、4−シクロヘキサンジビニルエーテル、オキサノルボナンジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、オキセタンジビニルエーテル、グリセリンエチレンオキシド付加物トリビニルエーテル(エチレンオキシドの付加モル数6)、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリビニルエーテルエチレンオキシド付加物トリビニルエーテル(エチレンオキシドの付加モル数3)、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンヘキサビニルエーテルおよびそれらのオキシエチレン付加物等が含まれる。
上記「ビニルフェニル基を有する化合物」の例には、ジビニルレゾルシン、ジビニルハイドロキノン等が含まれる。
上記「マレイミド基を有する化合物」の例には、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、n−ヘキシルマレイミド等が含まれる。
上記「(メタ)アクリルアミド基を有する化合物」の例には、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ビスメチレンアクリルアミド、ジ(エチレンオキシ)ビスプロピルアクリルアミド、およびトリ(エチレンオキシ)ビスプロピルアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が含まれる。
一方、上述の「(メタ)アクリロイル基を有する化合物」の例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、およびt−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等を含む単官能の(メタ)アクリレートモノマー;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等を含む2官能の(メタ)アクリレートモノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等を含む3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー;
およびこれらのオリゴマー等が含まれる。
また、「(メタ)アクリロイル基を有する化合物」は、各種(メタ)アクリレートモノマーやそのオリゴマーをさらに変性したもの(変性物)であってもよい。変性物の例には、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートモノマー;トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート等のプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレートモノマー;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレートモノマー;カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレートモノマー;等が含まれる。
「(メタ)アクリロイル基を有する化合物」はさらに、各種オリゴマーを(メタ)アクリレート化した化合物(以下、「変性(メタ)アクリレート系化合物」とも称する)であってもよい。このような変性(メタ)アクリレート系化合物の例には、ポリブタジエン(メタ)アクリレート系化合物、ポリイソプレン(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、シリコーン(メタ)アクリレート系化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート系化合物、および直鎖(メタ)アクリル系化合物等が含まれる。
これらの中でも特に、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、およびシリコーン(メタ)アクリレート系化合物を好適に用いることができる。樹脂組成物にエポキシ(メタ)アクリレート系化合物や、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、シリコーン(メタ)アクリレート系化合物が含まれると、得られる立体造形物の強度が高まりやすい。また、これらの樹脂を用いると、後述の官能基含有フィラーが、熱重合性化合物だけでなく、光重合性化合物にも結合する。その結果、熱重合性化合物の硬化物と光重合性化合物の硬化物とが、フィラーを介して結合され、より強度の高い立体造形物が得られる。
エポキシ(メタ)アクリレート系化合物は、一分子内にエポキシ基と、(メタ)アクリレート基とをそれぞれ1つ以上含む化合物であればよく、その例には、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェニル型エポキシ(メタ)アクリレート、トリフェノールメタン型エポキシ(メタ)アクリレートや、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等のノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が含まれる。
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、2つのイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート化合物または2つのイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体等とを反応させて得られる、ウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とすることができる。
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の原料となるイソシアネート化合物の例には、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート等が含まれる。
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の原料となるイソシアネート化合物の例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も含まれる。
一方、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートやジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシアクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が含まれる。
上記構造のウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、市販されているものであってもよく、その例には、M−1100、M−1200、M−1210、M−1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260(いずれもダイセル・オルネクス社製)、アートレジンUN−330、アートレジンSH−500B、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−9000H(いずれも根上工業社製)、U−2HA、U−2PHA、U−3HA、U−4HA、U−6H、U−6HA、U−6LPA、U−10H、U−15HA、U−108、U−108A、U−122A、U−122P、U−324A、U−340A、U−340P、U−1084A、U−2061BA、UA−340P、UA−4000、UA−4100、UA−4200、UA−4400、UA−5201P、UA−7100、UA−7200、UA−W2A(いずれも新中村化学工業社製)、AH−600、AI−600、AT−600、UA−101I、UA−101T、UA−306H、UA−306I、UA−306T(いずれも共栄社化学社製)等が含まれる。
一方、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、イソシアネートもしくはポリイソシアネートのイソシアネート基を(メタ)アクリレート基を有するブロック剤によりブロック化して得られるブロックイソシアネートであってもよい。
ブロックイソシアネートを得るために用いられるイソシアネートは、前述の「イソシアネート化合物」であってもよく、ポリイソシアネートは、当該「イソシアネート化合物」の重合体等であってもよく、これらの化合物とポリオールやポリアミンとを反応させた化合物等であってもよい。ポリオールの例には、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、植物油ポリオール、さらには含リンポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等が含まれる。これらのポリオールは、ブロックイソシアネート中に1種のみ含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
イソシアネート等と反応させる上記ポリエーテルポリオールの例には、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物(具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン等のアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類;等)とアルキレンオキサイド(具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)との付加反応により調製される化合物が含まれる。ポリエーテルポリオールの調製方法は、例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985) Hanser Publishers社(ドイツ),p.42−53に記載の方法とすることができる。
上記ポリエステルポリオールの例には、アジピン酸、フタル酸等の多価カルボン酸と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の多価アルコールとの縮合反応物や、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が含まれる(例えば、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987)日刊工業新聞社 p.117の記載参照)。
上記ポリマーポリオールの例には、上記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)とをラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールが含まれる。ポリマーポリオールは、分子量が5000〜12000程度であることがより好ましい。
植物油ポリオールの例には、ひまし油、やし油等のヒドロキシル基含有植物油等が含まれる。また、ひまし油又は水添ひまし油を原料として得られるひまし油誘導体ポリオールも好適に用いることができる。ひまし油誘導体ポリオールとしては、ひまし油、多価カルボン酸及び短鎖ジオールの反応で得られるひまし油ポリエステル、ひまし油やひまし油ポリエステルのアルキレンオキシド付加物等が含まれる。
難燃ポリオールの例には、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン含有ポリオール;エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られるハロゲン含有ポリオール;芳香環を有する活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる芳香族系エーテルポリオール;芳香環を有する多価カルボン酸と多価アルコールの縮合反応で得られる芳香族系エステルポリオール;等が含まれる。
イソシアネート等と反応させるポリオールの水酸基価としては、5〜300mgKOH/gであることが好ましく、10〜250mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価は、JIS−K0070に規定された方法で測定できる。
また、イソシアネート等と反応させるポリアミンの例には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンペンタアミン、ビスアミノプロピルピペラジン、トリス(2−アミノエチル)アミン、イソホロンジアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が含まれる。
一方、ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロックするためのブロック剤としては、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、イソシアネート基と反応し、加熱により脱離できるものであればよい。
このようなブロック剤の具体例には、t−ブチルアミノエチルメタクリレート(TBAEMA)、t−ペンチルアミノエチルメタクリレート(TPAEMA)、t−ヘキシルアミノエチルメタクリレート(THAEMA)、t−ブチルアミノプロピルメタクリレート(TPAEMA)、t−ヘキシルアミノエチルメタクリレート(THAEMA)、t−ブチルアミノプロピルメタクリレート(TBAPMA)等が含まれる。
ポリイソシアネートのブロック化反応は、一般に−20〜150℃で行うことができるが、好ましくは0〜100℃である。150℃以下であれば副反応を防止することができ、他方、−20℃以上であれば反応速度を適度な範囲とすることができる。ポリイソシアネート化合物とブロック剤のブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず、行うことができる。溶剤を用いる場合は、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いるのが好ましい。ブロック化反応においては、反応触媒を使用することができる。具体的な反応触媒の例には、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、金属アルコラート、及び3級アミン等が含まれる。
上述のように調製されるブロックイソシアネートをラジカル重合性化合物として用いる場合、まず、活性エネルギー照射によりアクリロイル基部分を重合させる。その後、加熱によってブロック剤を外すことで、生成したイソシアネート化合物を新たにポリオールやポリアミン等と重合させることができ、ポリウレタンやポリウレアまたはこれらの混合物を含む立体造形物を得ることができる。
一方、シリコーン(メタ)アクリレート系化合物は、主鎖にポリシロキサン結合を有するシリコーンの末端および/または側鎖に(メタ)アクリル酸を付加した化合物とすることができる。シリコーン(メタ)アクリレート系化合物の原料となるシリコーンは、公知の1官能、2官能、3官能、または4可能のシラン化合物(例えばアルコキシシラン等)が任意の組み合わせで重合したオルガノポリシロキサンとすることができる。シリコーンアクリレート系化合物の具体例には、市販のTEGORad2500(商品名:テゴケミーサービスGmbH社製)の他、X−22−4015(商品名:信越化学工業社製)の様な−OH基を有する有機変性シリコーンとアクリル酸とを酸触媒下でエステル化させたもの;KBM402、KBM403(商品名:いずれも信越化学工業社製)の様なエポキシシラン等の有機変性シラン化合物とアクリル酸を反応させたもの;等が含まれる。
一方、光重合性化合物の他の例である、カチオン重合性化合物は、酸触媒の存在下、活性エネルギーの照射によってカチオン重合可能な基を有していれば、その種類は特に制限されない。その例には、環状ヘテロ化合物が含まれ、環状エーテル基を有する化合物であることが、その反応性等の観点から好ましい。
カチオン重合性化合物の具体例には、オキシラン、メチルオキシラン、フェニルオキシラン、1,2−ジフェニルオキシラン等のオキシラン化合物類、あるいは、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン等のオキシラン環の水素原子がメチレン結合基やメチン結合基で置換されているエポキシ基含有化合物;2−(シクロヘキシルメチル)オキシラン、2−エトキシ−3−(シクロヘキシルメチル)オキシラン、[(シクロヘキシルオキシ)メチル]オキシラン、1,4−ビス(オキシラニルメトキシメチル)シクロヘキサン、等のシクロアルカン環を有するエポキシ基含有化合物;7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、3−メチル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−イルメタノール、7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−メトキシメチル等の芳香環を有さない脂環族系エポキシ基含有化合物;3−フェニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボキシレート、4−エチルフェニル7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、ベンジル7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボキシレート、4−エチルフェニル7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボキシレート等の芳香環を有する脂環族系エポキシ基含有化合物;
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、3‐エチル−{(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチル}オキセタン等のオキセタニル基含有化合物;
2−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジエトキシテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン−2,2−ジメタノール3−メチル−2,4(3H、5H)−フランジオン、2,4−ジオキソテトラヒドロフラン−3−カルボキシラート、プロパン酸1,5−ジ(テトラヒドロフラン−2−イル)ペンタン−3−イル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、メトキシテトラヒドロピラン等の5員環以上の環状エーテル化合物等が含まれる。
樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量は、樹脂組成物の全質量に対して10〜90質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましい。光重合性化合物の量が当該範囲であると、後述の一次硬化物の硬化性が良好になる。
1−2.熱重合性化合物
樹脂組成物に含まれる熱重合性化合物は、加熱によって重合し、硬化可能な化合物であればよい。通常、熱重合性化合物は、後述の硬化剤と組み合わせて用いられる。
このような熱重合性化合物の例には、シアネートエステル系化合物、ウレタン樹脂またはその前駆体、エポキシ樹脂またはその前駆体、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびフェノール樹脂等が含まれる。
熱重合性化合物であるシアネートエステル系化合物の例には、1,3−または1,4−ジシアナトベンゼン;1,3,5−トリシアナトベンゼン;1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−、または2,7−ジシアナトナフタレン;1,3,6−トリシアナトナフタレン;2,2’−または4,4’−ジシアナトビフェニル;ビス(4−シアナトフェニル)メタン;2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−シアナトフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−ジブロモ−4−ジシアナトフェニル)プロパン;ビス(4−シアナトフェニル)エーテル;ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル;ビス(4−シアナトフェニル)スルホン;トリス(4−シアナトフェニル)フォスファイト;トリス(4−シアナトフェニル)フォスフェート;ビス(3−クロロ−4−シアナトフェニル)メタン:4−シアナトビフェニル;4−クミルシアナトベンゼン;2−t−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン;2,4−ジメチル−1,3−ジシアナトベンゼン;2,5−ジ−t−ブチル−l,4−ジシアナトベンゼン;テトラメチル−1,4−ジシアナトベンゼン;4−クロロ−1,3−ジシアナトベンゼン;3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’ジシアナトジフェニルビス(3−クロロ−4−シアナトフェニル)メタン:1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン;1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン;2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−シアナトフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン;ビス(p−シアノフェノキシフェノキシ)ベンゼン;ジ(4−シアナトフェニル)ケトン;シアン酸化ノボラック;シアン酸化ビスフェノールポリカーボネートオリゴマー等が含まれる。
熱重合性化合物であるウレタン樹脂またはその前駆体の例には、分子内に1つまたは2つ以上のウレタン結合を有する公知のウレタン樹脂、またはその前駆体が含まれる。具体的には、ウレタン樹脂の例には、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等が含まれる。一方ウレタン樹脂の前駆体の例には、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等が含まれる。
また、熱重合性化合物であるエポキシ樹脂またはその前駆体の例には、分子内に1つまたは2つ以上のエポキシ基を有する公知のエポキシ樹脂またはその前駆体が含まれる。エポキシ樹脂の例には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ等が含まれる。
また、熱重合性化合物であるシリコーン樹脂は、オルガノポリシロキサン構造を有する樹脂であればよく、その例には、以下のような付加硬化型のシリコーン樹脂が含まれる。
典型的な付加硬化型の液状シリコーン樹脂は、ビニルシリル基を含有するシリコーンと、ヒドロシリル基を含有するシリコーンと、付加反応触媒とを必須成分として含有しており、加熱するとビニルシリル基とヒドロシリル基との間で生じる付加反応により架橋構造が形成されて硬化する。
ビニルシリル基を有するシリコーンの例には、各末端ケイ素原子にビニル基が置換されたポリジメチルシロキサン、各末端ケイ素原子にビニル基が置換されたジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマー、各末端ケイ素原子にビニル基が置換されたポリフェニルメチルシロキサン、各末端にトリメチルシリル基を有するビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーなどが用いられる。
ヒドロシリル基を含有するシリコーンの例には、各末端にトリメチルシリル基を有するメチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー等が含まれる。また、各末端に水素原子が結合したポリジメチルシロキサンを併用することもできる。
付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が主に使用される。
さらに、熱重合性化合物である、不飽和ポリエステル樹脂の例には、商品名PC−740、PC−184−C、PC−350−C(いずれもDICマテリアル社製)等が含まれる。
また、熱重合性化合物である、フェノール樹脂の例には、商品名MEH−8000H、MEH−8005(いずれも明和化成社製)等が含まれる。
上記の中でも、熱重合性化合物は、後述の官能基含有フィラーと化学結合しやすく、また取り扱いが容易であるという観点から、エポキシ樹脂またはその前駆体、もしくはウレタン樹脂またはその前駆体であることが好ましい。
上記熱重合性化合物は、樹脂組成物の総量に対して10〜90質量%含まれることが好ましく、30〜70質量%含まれることがより好ましく、40〜60質量%含まれることがさらに好ましい。熱重合性化合物が当該範囲含まれると、得られる立体造形物の耐熱性等が高まりやすくなる。
1−3.官能基含有フィラー
官能基含有フィラーは、上述の熱重合性化合物に結合可能な官能基を表面に有するものであればよく、樹脂組成物には、フィラーが一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
ここで、官能基含有フィラーは、「熱重合性化合物に結合可能な官能基」および「フィラーに結合または吸着可能な官能基」を有する表面改質剤によって、公知の有機フィラーもしくは無機フィラーを表面処理すること等で得られる。表面処理方法の一例としては、下記の表面改質剤およびフィラーを溶媒中に分散させて、当該溶液を攪拌する方法等が挙げられる。
表面改質剤が含む、「熱重合性化合物に結合可能な官能基」は、熱重合性化合物が有する官能基とイオン結合や共有結合等により結合可能、または分子間力により相互作用可能な官能基であればよく、当該官能基は、光重合性化合物が有する官能基の一部と化学結合してもよい。「熱重合性化合物に結合可能な官能基」の例には、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基、イソシアネート基、シアネート基、ビニル基、スチリル基、ヒドロシリル基、メルカプト基、ウレイド基、(メタ)アクリロイル基、ヒドロキシ基、フェニル基等が含まれる。
なお、「熱重合性化合物に結合可能な官能基」は、上記熱重合性化合物が有する官能基の種類に応じて適宜選択されることが好ましい。例えば、熱重合性化合物が、エポキシ基を有する場合には、官能基含有フィラーがアミノ基またはチオール基を表面に有することが好ましい。また、熱重合性化合物が、イソシアネートエステル系化合物である場合には、官能基含有フィラーが、アミノ基またはヒドロキシ基を表面に有することが好ましい。熱重合性化合物が、ウレタン樹脂またはその前駆体である場合には、官能基含有フィラーがイソシアネート基、ヒドロキシ基、アミノ基を表面に有することが好ましい。さらに、熱重合性化合物がシリコーン樹脂である場合には、官能基含有フィラーがフェニル基またはヒドロキシ基を、表面に有することが好ましい。また、熱重合性化合物が不飽和ポリエステル樹脂である場合には、官能基含有フィラーが、(メタ)アクリロイル基、フェニル基を表面に有することが好ましい。さらに、熱重合性化合物がフェノール樹脂である場合には、官能基含有フィラーが、アミノ基、ヒドロキシ基を表面に有することが好ましい。
一方、上記表面改質剤が含む、「フィラーに結合または吸着可能な基」の例には、Si原子や、Ti原子、Zr原子、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、アゾ基、アジ基、チオール基、スルホ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基等が含まれる。これらの中でも、フィラーに対する反応性等の観点から、Si原子、Ti原子、Zr原子が好ましく、特にSi原子が好ましい。
上記表面改質剤の具体例には、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、またはジルコニウム系カップリング剤等が含まれ、これらの中でもシランカップリング剤が特に好ましい。
シランカップリング剤の例には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の反応性官能基を有する化合物が含まれる。
なお、本明細書において、シランカップリング剤の例には、例えばビニル基やエポキシ基等の反応性官能基を有するシラン系化合物だけでなく、アミノ基、イミノ基、グリシジル基、オキセタニル基、イソシアネート基、シアネート基、スチリル基、ヒドロシリル基、メルカプト基、ウレイド基、(メタ)アクリロイル基、フェニル基、ヒドロキシ基等の反応性官能基を有するシラン系化合物や、シラザン等も含むものとする。
また、チタンカップリング剤の具体例には、フェニルトリメトキシチタン、3−アミノプロピルトリメトキシチタン、3−アミノプロピルトリエトキシチタン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシチタン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリエトキシチタン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシチタン、3−アニリノプロピルトリメトキシチタン、3−メルカプトプロピルトリエトキシチタン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシチタン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシチタン、3−ウレイドプロピルトリメトキシチタンなどのトリアルコキシチタン類ジフェニルジメトキシチタン等が含まれる。
さらに、ジルコニウム系カップリング剤の具体例には、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等が含まれる。
一方、上記表面改質剤によって処理されるフィラーの例には、ソーダ石灰ガラス、珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等からなるガラスフィラー;アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化スズ、硫酸マグネシウム等からなるセラミックフィラー;鉄、チタン、金、銀、銅、スズ、鉛、ビスマス、コバルト、アンチモン、カドミウム等の金属単体、あるいはこれらの合金等からなる金属フィラー;グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等からなるカーボンフィラー;ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、多糖類等からなる有機高分子繊維;チタン酸カリウムウィスカー、シリコーンカーバイトウィスカー、シリコンナイトライドウィスカー、α−アルミナウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、水酸化マグネシウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、ケイ酸カルシウムウィスカー等からなるウィスカー状無機化合物(上記セラミックフィラーの針状の単結晶も含む);タルク、マイカ、クレイ、ワラストナイト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ハイデライト、モンモリロナイト、ノントライト、ベントナイト、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母、バーミキュラライト等からなる粘土鉱物等が含まれる。
またさらに、フィラーの例には、ポリエチレンやポリプロピレン等からなるポリオレフィンフィラー;FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)、PFA(四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、ETFE(四フッ化エチレン−エチレン共重合体)等からなるフッ素樹脂フィラー等も含まれる。
上記の中でも、アスペクト比が高く、得られる立体造型物の強度が高まりやすいとの観点、さらには得られる立体造形物の寸法変化が少なくなりやすいとの観点から硫酸マグネシウム、および有機高分子繊維が好ましく、特に多糖類からなるナノファイバーであることが好ましい。多糖類の例には、セルロース、ヘミセルロース、リグノセルロース、キチンおよびキトサン等が含まれる。これらのうち、得られる立体造形物の強度がより高まるとの観点からは、セルロースおよびキチンが好ましく、入手性や、立体造形物の強度が高まりやすいとの観点から、セルロースがより好ましい。
セルロースからなる繊維状のフィラー、すなわちセルロースナノファイバー(以下、単に「ナノセルロース」ともいう。)は、植物由来の繊維質もしくは植物の細胞壁の機械的な解繊、酢酸菌による生合成、2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl radical(TEMPO)等のN−オキシル化合物による酸化または電解紡糸法等によって得られる、繊維状のナノフィブリルを主成分とするセルロースナノファイバーであってもよい。また、ナノセルロースは、植物由来の繊維質もしくは植物の細胞壁を機械的に解繊した後に酸処理等をして得られる、ウィスカー状(針状)に結晶化したナノフィブリルを主成分とするセルロースナノクリスタルであってもよく、その他の形状であってもよい。ナノセルロースは、セルロースを主成分とすればよく、リグニンおよびヘミセルロース等を含んでいてもよい。脱リグニン処理を行わず、疎水性であるリグニンを含有するナノセルロースは、光重合性化合物や熱重合性化合物との親和性が高いため好ましい。
上記フィラーの形状は特に制限されず、例えば繊維状(ウィスカー状を含む)であってもよく、粒子状であってもよいが、立体造形物の強度向上との観点から、繊維状であることが好ましい。
なお、フィラーが粒子状である場合、その平均粒径は0.005〜200μmであることが好ましく、0.01〜100μmであることがより好ましく、0.1〜50μmであることがさらに好ましい。粒子状のフィラーの平均粒径が0.1μm以上であると、立体造形物の強度が高まりやすくなる。一方、平均粒径が50μm以下であると、立体造形物を高精細に形成しやすくなる。なお、平均粒径は、樹脂組成物を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像して得られた画像を解析して、測定することができる。
一方、フィラーが繊維状である場合、その平均繊維径は、0.002μm以上20μm以下であることが好ましい。上記平均繊維径が0.002μm以上であると、立体造形物の強度が高まりやすくなる。平均繊維径が20μm以下であると、フィラーが樹脂組成物の粘度を高めすぎず、立体造形物の精度が良好になりやすい。フィラーの平均繊維径は、0.005μm以上10μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上8μm以下であることがさらに好ましく、0.02μm以上5μm以下であることが特に好ましい。
フィラーの平均繊維長は、0.2μm以上200μm以下であることが好ましい。上記平均繊維長が0.2μm以上であると、立体造形物の強度が高まりやすくなる。上記平均繊維長が100μm以下であると、フィラー同士が絡み合うことによって生じるフィラーの沈降が生じにくい。フィラーの平均繊維長は、0.5μm以上100μm以下であることがより好ましく、1μm以上60μm以下であることがさらに好ましく、1μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
フィラーのアスペクト比は、10以上10000以下であることが好ましい。アスペクト比が10以上であると、立体造形物の強度がより高くなりやすい。アスペクト比が10000以下であると、フィラー同士が絡み合って生じるフィラーの沈降が生じにくい。フィラーのアスペクト比は、12以上8000以下であることがより好ましく、15以上2000以下であることがさらに好ましく、18以上800以下であることが特に好ましい。
フィラーの平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、樹脂組成物を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像して得られた画像を解析して、測定することができる。
ここで、樹脂組成物に含まれる官能基含有フィラーの量は、樹脂組成物の全質量に対して1〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましく、10〜40質量%が最も好ましい。官能基含有フィラーの量が当該範囲であると、強度の高い立体造形物が得られやすくなる。
1−4.熱硬化剤および熱硬化促進剤
樹脂組成物には、通常、上述の熱重合性化合物を硬化させるための熱硬化剤や熱硬化促進剤がさらに含まれる。熱硬化剤や熱硬化促進剤の種類は、上述の熱重合性化合物の種類等に応じて適宜選択される。
熱硬化剤や熱硬化促進剤の例には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、N,N−ジメチル−n−オクチルアミン、ジシアノジアミド等のアミノ類;アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物を含む酸無水物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類;ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)、アセチルアセトナート亜鉛等の有機金属塩が含まれる。樹脂組成物には熱硬化剤や熱硬化促進剤が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。当該熱硬化剤や熱硬化促進剤の量は、熱重合性化合物の種類や量に合わせて適宜選択される。
熱硬化剤や熱硬化促進剤の量は、上述の熱重合性化合物の量に合わせて適宜選択されるが、例えば熱重合性化合物100質量部に対して、30〜100質量部であることが好ましく、40〜90質量部であることがより好ましく、50〜80質量部であることがさらに好ましい。
1−5.光重合開始剤
樹脂組成物には、通常、上記光重合性化合物の重合を開始するための光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤の種類は、光重合性化合物の種類に応じて適宜選択され、例えば光重合性化合物がラジカル重合性化合物である場合には、ラジカル重合開始剤が含まれる。一方、光重合性化合物がカチオン重合性化合物である場合には、光酸発生剤等のカチオン重合開始剤が含まれる。
ラジカル重合開始剤は、活性エネルギーの照射によってラジカルを発生させることが可能な化合物であれば特に制限されず、公知のラジカル重合開始剤とすることができる。
ラジカル重合開始剤の例には、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASF社製、IRGACURE 1173(「IRGACURE」は同社の登録商標)等)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(BASF社製、IRGACURE 127等)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF社製、IRGACURE 2959等)、2,2−ジメトキシー1,2−ジフェニルエタンー1−オン(BASF社製、IRGACURE 651等)、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノンおよび2,4−ジエチルオキサンテン−9−オン等が含まれる。
ラジカル重合開始剤は、光重合性化合物(ラジカル重合性化合物)の総量に対して0.01〜10質量%含まれることが好ましく、0.1〜5質量%含まれることがより好ましく、0.5〜3質量%含まれることがさらに好ましい。ラジカル重合開始剤が当該範囲含まれると、上述の光重合性化合物を十分に効率よく重合させることが可能となる。
一方、カチオン重合開始剤は、活性エネルギーの照射によって、酸を発生させ、光重合性化合物(カチオン重合性化合物)を重合させることが可能な化合物であれば特に制限されず、公知の光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤の例には、スルホニウム塩系、またはヨードニウム塩系等のオニウム塩系光酸発生剤が含まれる。
上記オニウム塩系光酸発生剤におけるアニオン成分としては、例えば、PF 、PF(CFCF 等のリン酸イオン、SbF 等のアンチモン酸イオン、トリフルオロメタンスルホナート等のフルオロアルキルスルホン酸イオン、パーフルオロアルキルスルホンアミド、パーフルオロアルキルスルホンメチド等が含まれる。
一方、上記オニウム塩系光酸発生剤におけるカチオン成分としては、例えば、芳香族スルホニウム等のスルホニウム、芳香族ヨードニウム等のヨードニウム、芳香族ホスホニウム等のホスホニウム、芳香族スルホキソニウム等のスルホキソニウム等が含まれる。
このようなオニウム塩系光酸発生剤の例には、アニオン成分をカウンターアニオンとして有する、芳香族スルホニウム塩等のスルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等のヨードニウム塩、芳香族ホスホニウム塩等のホスホニウム塩、芳香族スルホキソニウム塩等のスルホキソニウム塩等が含まれる。
光酸発生剤は、光重合性化合物(カチオン重合性化合物)の総量に対して0.01〜10質量%含まれることが好ましく、0.1〜5質量%含まれることがより好ましく、0.5〜3質量%含まれることがさらに好ましい。光酸発生剤が当該範囲含まれると、上述の光重合性化合物(カチオン重合性化合物)を十分に効率よく重合させることが可能となる。
1−6.その他の成分
樹脂組成物には、活性エネルギーの照射による立体造形物の形成を可能にし、かつ得られる立体造形物に強度のムラを顕著に生じさせない限りにおいて、光増感剤、重合阻害剤、酸化防止剤、染料および顔料等の色材、消泡剤ならびに界面活性剤等の任意の添加剤がさらに含まれていてもよい。
1−7.樹脂組成物の物性
本発明の樹脂組成物は、JIS K−7117−1に準拠する方法で、回転式粘度計を用いて測定される、25℃の粘度が0.2〜100Pa・sであることが好ましく、1〜10Pa・sであることがより好ましい。樹脂組成物の粘度が当該範囲であると、後述の立体造形物の製造方法において適度な流動性が得られる。その結果、造形速度を向上させることができるとともに、樹脂組成物内で官能基含有フィラー等が沈降し難くなり、ひいては立体造形物の強度が高まりやすくなる。
1−8.樹脂組成物の調製方法
上記樹脂組成物は、上記光重合性化合物、熱重合性化合物、官能基含有フィラー、光重合開始剤、熱硬化剤や熱硬化促進剤と、必要に応じて任意の添加剤等を任意の順で混合することで調製できる。
樹脂組成物の混合に用いられる装置としては公知のものを使用できる。例えば、ウルトラタラックス(IKAジャパン社製)、TKホモミクサー(プライミクス社製)、TKパイプラインホモミクサー(プライミクス社製)、TKフィルミックス(プライミクス社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)、クレアSS5(エム・テクニック社製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工社製)のようなメディアレス撹拌機、ビスコミル(アイメックス製)、アペックスミル(寿工業社製)、スターミル(アシザワ、ファインテック社製)、DCPスーパーフロー(日本アイリッヒ社製)、エムピーミル(井上製作所社製)、スパイクミル(井上製作所社製)、マイティーミル(井上製作所社製)、SCミル(三井鉱山社製)などのメディア攪拌機等やアルティマイザー(スギノマシン社製)、スターバースト(スギノマシン社製)、ナノマイザー(吉田機械社製)、NANO 3000(美粒社製)などの高圧衝撃式分散装置が挙げられる。
また、あわとり練太郎(シンキー社製)やカクハンター(写真化学社製)等の自転公転ミキサーや、ハイビスミックス(プライミクス社製)、ハイビスディスパー(プライミクス社製)等の遊星式混合機、Nanoruptor(ソニック・バイオ社製)等の超音波分散装置も好適に用いることが可能である。
2.立体造形物の製造方法
上述した液体状の樹脂組成物は、活性エネルギーを選択的に照射して、前記光重合性化合物の硬化物を含む一次硬化物を形成する工程を含む、立体造形物の製造方法に使用することができる。
上述の樹脂組成物を用いた立体造形物の製造方法では、まず樹脂組成物に選択的に活性エネルギーを照射し、上述の光重合性化合物を所望の形状に硬化させて、一次硬化物を形成する光造形工程を行う。そして一次硬化物の形成後、当該一次硬化物内に含まれる熱重合性化合物を熱重合させる熱硬化工程を行い、立体造形物を得る。なお、一次硬化物の作製後、さらに活性エネルギーを照射する活性エネルギー照射工程を行ってもよい。
このような立体造形物の製造方法の例には、以下の2つの実施形態が含まれるが、本発明の方法は、これらの方法に限定されない。
2−1.積層造形法(SLA法)
図1は、積層造形法により一次硬化物を作製するための装置(立体造形物の製造装置)の一例を示す模式図である。製造装置500は、液体状の樹脂組成物550を貯留可能な造形槽510と、造形槽510の内部で上下方向(深さ方向)に往復移動可能な造形ステージ520と、造形ステージ520を支持するベース521と、活性エネルギーの照射源530と、活性エネルギーを造形槽510の内部に導くガルバノミラー531等を有する。
造形槽510は、製造しようとする一次硬化物を収容可能な大きさを有していればよい。また、活性エネルギーを照射するための光源530には、公知のものを使用することができる。例えば紫外線を照射する光源530の例には、半導体レーザー、メタルハライドランプ、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプ、および太陽光等が含まれる。
当該方法ではまず、樹脂組成物550を造形槽510内に充填する。またこのとき、樹脂組成物550の液面から、作製する造形物層(第1造形物層)の厚み分だけ下方に造形ステージ520を配置する。この状態で、照射源530から出射された活性エネルギーを、ガルバノミラー531等で導いて走査し、造形ステージ520上の樹脂組成物550に照射する。このとき、第1造形物層を形成する領域にのみ選択的に活性エネルギーを照射することで、所望の形状に第1造形物層が形成される。
その後、造形ステージ520を1層分の厚み(次に作製する第2造形物層の厚み分)だけ降下(深さ方向へ移動)させて、第1造形物層を樹脂組成物550の中に沈下させる。これにより、上記第1造形物層上に樹脂組成物が供給される。続いて上記と同様に、照射源530から出射された活性エネルギーを、ガルバノミラー531等で導き、第1造形物層より上方に位置する樹脂組成物550に照射する。このときも、第2造形物層を形成する領域にのみ選択的に活性エネルギーを照射する。これにより、前述の第1造形物層上に第2造形物層が積層される。
その後、造形ステージ520の降下(樹脂組成物の供給)、および活性エネルギーの照射、を繰り返すことで、所望の形状に一次硬化物が形成される。なお、上記方法で作製する一次硬化物の形状は、最終的に作製する立体造形物の形状と同様とする。
得られた一次硬化物に対し、必要に応じて、さらに活性エネルギーを照射してもよい。活性エネルギーの照射は、所望の範囲のみ行ってもよく、一次硬化物全体に対して行ってもよい。このような活性エネルギーの照射を行うと、一次硬化物の内部まで重合性が高まり、得られる立体造形物の反りが抑制されやすくなる。
その後、一次硬化物を公知の方法で加熱し、当該一次硬化物に含まれる熱重合性化合物を重合させたり、官能基含有フィラーを熱重合性化合物が有する官能基と反応させる。上記一次硬化物の加熱は、一次硬化物が変形しない温度で行うことが好ましく、例えば光重合性化合物の硬化物のガラス転移温度(Tg)より低い温度とすることが好ましい。
2−2.連続造形法(CLIP法)
図2は、連続造形法により一次硬化物を作製するための装置(立体造形物の製造装置)の一例を示す模式図である。図2に示すように、製造装置600は、液体状の樹脂組成物を貯留可能な造形槽610と、上下方向(深さ方向)に往復移動可能なステージ620と、活性エネルギーを照射するための光源660等と、を有する。造形槽610は、その底部に、樹脂組成物を透過させず、活性エネルギーおよび酸素は透過させる窓部615を有する。なお、造形槽610は、製造しようとする立体造形物よりも広い幅を有し、かつ樹脂組成物と相互作用しないものであれば、その材質等は特に制限されない。また、窓部615の材質も、本実施形態の目的および硬化を損なわない範囲であれば特に制限されない。
また、活性エネルギーを照射するための光源660は公知のものを使用することができ、積層造形法に用いる光源と同様とすることができる。また、光源660に液晶パネルやデジタルミラーデバイス(DMD)等の空間光変調器(Spatial Light Modulator:SLM)を有するSLM投影光学系を用いることで、活性エネルギーを所望の領域に面照射してもよい。
当該方法では、まず、造形槽610に上述の樹脂組成物を充填する。そして、造形槽610の底部に設けられた窓部615から、造形槽610の底部側に酸素を導入する。酸素の導入方法は特に制限されず、例えば造形槽610の外部を酸素濃度が高い雰囲気とし、当該雰囲気に圧力をかける方法等とすることができる。
このように窓部615から造形槽610内に酸素を供給することにより、窓部615側の領域では、酸素濃度が上昇し、活性エネルギーを照射されても光重合性化合物が硬化しないバッファ領域642が形成される。一方で、バッファ領域642より上側の領域では、酸素の濃度がバッファ領域642より十分に低くなり、活性エネルギーの照射によって、光重合性化合物が硬化可能な硬化用領域644となる。
続いて、前記バッファ領域側642から活性エネルギーを選択的に照射して、硬化用領域644で光重合性化合物の硬化物を形成する工程を行う。具体的には、一次硬化物作製の基点となるステージ620を、硬化用領域644とバッファ領域642との界面近傍に配置する。そして、バッファ領域642側に配置された光源660からステージ620の底面側に、選択的に活性エネルギーを照射する。これにより、ステージ620の底面近傍(硬化用領域644)の光重合性化合物が硬化して、一次硬化物の最上部が形成される。
その後、ステージ620を上昇(バッファ領域642から離れる方向に移動)させる。これにより、硬化物651より造形槽610底部側の硬化用領域644に、未硬化の樹脂組成物650が新たに供給される。そして、ステージ620および硬化物651を連続的または断続的に上昇させながら、光源660から活性エネルギーを連続的または断続的に、かつ選択的(硬化させる領域)に照射する。これにより、ステージ620底面から造形槽610の底部側にかけて硬化物が連続して形成され、継ぎ目がなく、強度の高い一次造形物が製造される。なお、本実施形態においても、一次硬化物の形状は、最終的に作製する立体造形物の形状と同様とする。
その後、得られた一次硬化物に対し、必要に応じて、さらに活性エネルギーを照射してもよい。活性エネルギーの照射は、所望の範囲のみ行ってもよく、一次硬化物全体に対して行ってもよい。上述のように、このような活性エネルギー照射を行うと、一次硬化物内部の光重合性化合物の重合性が高まり、得られる立体造形物の反りが抑制されやすくなる。
その後、一次硬化物を、公知の方法で加熱し、当該一次硬化物に含まれる熱重合性化合物を重合させたり、官能基含有フィラーを熱重合性化合物が有する官能基と反応させる。上記一次硬化物の加熱は、一次硬化物が変形しない温度で行うことが好ましく、例えば光重合性化合物の硬化物のガラス転移温度(Tg)より低い温度とすることが好ましい。
以下において、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1−1.樹脂組成物の作製
[比較例1]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600;ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート)360g、および光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO;ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)5.0gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[比較例2]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)360g、ガラスビーズ40g、および光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)5.0gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[比較例3]
ガラスビーズ60g、表面改質剤である3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−5103)0.6g、および塩酸(濃度35質量%)1.0gを、エタノール水溶液40gに添加して、室温で30分間撹拌した。撹拌後、当該反応液を濾過し、濾過物を浅いトレー等に広げて120℃で90分間乾燥させた。乾燥後、乾燥物をボールミルで解砕して、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン修飾ガラスビーズを得た。
その後、光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)360g、上述の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン修飾ガラスビーズ40g、および光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)5.0gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[比較例4]
熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806;ビスフェノールF型エポキシ樹脂)240g、および硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113;変性脂環式アミン)120gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[比較例5]
熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)240g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)120g、およびガラスビーズ40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[比較例6]
ガラスビーズ60g、表面改質剤である3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−903)0.6g、および塩酸(濃度35質量%)1.0gをエタノール水溶液40gに添加して、室温で30分間撹拌した。撹拌後、当該反応液を濾過し、浅いトレー等に広げて120℃で90分間乾燥した。乾燥後、ボールミルで解砕して、3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾ガラスビーズを得た。
その後、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)240g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)120g、および上記3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾ガラスビーズ40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[比較例7]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)120g、光重合開始剤(IRGACURE TPO)2.5g、および硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)60gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[比較例8]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)120g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)60g、およびガラスビーズ40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[比較例9]
ガラスビーズ60g、表面改質剤であるメチルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製、KBE−13)0.6g、および塩酸(濃度35質量%)1.0gを、エタノール水溶液40gに添加して、室温で30分間撹拌した。撹拌後、当該反応液を濾過し、濾過物を浅いトレー等に広げて120℃で90分間乾燥させた。乾燥後、乾燥物をボールミルで解砕して、メチルトリエトキシシラン修飾ガラスビーズを得た。
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)120g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)60g、および上記メチルトリエトキシシラン修飾ガラスビーズ40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[実施例1]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)120g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)60g、および比較例6と同様に作製した3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾ガラスビーズ40g、を混合し、樹脂組成物を調製した。
[実施例2]
ガラスビーズ60g、表面改質剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−503)0.6g、および塩酸(濃度35質量%)1.0gをエタノール水溶液40gに添加して、室温で30分間撹拌した。撹拌後、当該反応液を濾過し、浅いトレー等に広げて120℃で90分間乾燥した。乾燥後、ボールミルで解砕し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン修飾ガラスビーズを得た。
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(DICマテリアル社製、PC740;不飽和ポリエステル樹脂)180g、硬化促進剤(DICマテリアル社製、RA;汎用アミン系促進助剤)2.0g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、および上記3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン修飾ガラスビーズ40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[実施例3]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(明和化成社製、MEH−8000H;フェノール樹脂)180g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、比較例6と同様の方法で作製した3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾ガラスビーズ40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[実施例4]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(サンユレック社製、UF−110−1A)60g、熱重合性樹脂(サンユレック社製、UF−110−1B)120g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、および比較例6と同様の方法で作製した3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾ガラスビーズ40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
1−2.立体造形物の作製(SLA法)
図1に示すような構成を有する立体造形物の製造装置(XYZprinting社製NOBEL1.0)の造形槽510に樹脂組成物(サンプル1〜63)をそれぞれ投入した。そして、光源530からの半導体レーザー光(出力100mW、波長405nm)の照射および造形ステージ520の降下を繰り返して、JIS K7161−2(ISO 527−2) 1A形の試験片形状の一次硬化物を得た。なお、作製の際には、引張試験片の長手方向が造形方向(ステージの降下方向)となるようにした。
2−1.樹脂組成物の調製
[比較例10〜12]
比較例7〜9と同様に、それぞれ樹脂組成物を調製した。
[実施例5〜8]
実施例1〜4と同様に、それぞれ樹脂組成物を調製した。
[比較例13]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)120g、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)80g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)1.7g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)40g、およびセルロースナノファイバー5質量%アセトン分散液300gを混合し、樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物を50℃の環境下で3時間、スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
[比較例14]
セルロースナノファイバー2質量%分散液(スギノマシン社製、BiNFi−s)1000gをスターラーで撹拌しながら、メチルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製、KBE−13)を0.3g添加した。その後、20分間撹拌を続け、エタノールで溶媒置換を行い、その後さらにアセトンで溶媒置換を行い、メチル基修飾セルロースナノファイバーを作製した。
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)120g、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)80g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)1.7g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)40g、および上記のメチル基修飾セルロースナノファイバー2質量%アセトン分散液750gを混合し、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を50℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
[実施例9]
セルロースナノファイバー2質量%分散液(スギノマシン社製、BiNFi−s)1000gをスターラーで撹拌しながら、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−903)を0.3g添加した。その後、20分間撹拌を続け、エタノールで溶媒置換を行い、その後さらにアセトンで溶媒置換を行い、アミノ基修飾セルロースナノファイバーを作製した。
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)120g、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)80g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)1.7g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)40g、および上記のアミノ基修飾セルロースナノファイバー2質量%アセトン分散液750gを混合し、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を50℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
[実施例10]
セルロースナノファイバー2質量%分散液(スギノマシン社製、BiNFi−s)1000gをスターラーで撹拌しながら、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−503)を0.3g添加した。その後、20分間撹拌を続け、エタノールで溶媒置換を行い、その後さらにアセトンで溶媒置換を行い、メタクリル基修飾セルロースナノファイバーを作製した。
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)120g、熱重合性樹脂(DICマテリアル社製、PC740;不飽和ポリエステル樹脂)120g、硬化促進剤(DICマテリアル社製、RA;汎用アミン系促進助剤)1.5g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)1.7g、上記メタクリル基修飾セルロースナノファイバー2質量%アセトン分散液750gを混合し、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を50℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
[実施例11]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)120g、熱重合性樹脂(明和化成社製、MEH−8000H;フェノール樹脂)120g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)1.7g、実施例9と同様の方法で作製したアミノ基修飾セルロースナノファイバー5質量%アセトン分散液300gを混合し、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を50℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
[実施例12]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)120g、熱重合性樹脂(サンユレック社製、UF−110−1A)40g、熱重合性樹脂(サンユレック社製、UF−110−1B)80g、光重合開始剤(IRGACURE TPO)1.7g、アミノ基修飾セルロースナノファイバー5質量%アセトン分散液300gを混合し、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を50℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
[比較例15]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)120g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)60g、および硫酸マグネシウム(宇部マテリアルズ社製)40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[比較例16]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)120g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)60g、およびメチル基修飾硫酸マグネシウム(宇部マテリアルズ社製)40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[実施例13]
硫酸マグネシウム60g、表面改質剤である3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−903)0.6g、および塩酸(濃度35質量%)1.0gをエタノール水溶液40gに添加して、室温で30分間撹拌した。撹拌後、当該反応液を濾過し、浅いトレー等に広げて120℃で90分間乾燥した。乾燥後、ボールミルで解砕して、3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾硫酸マグネシウムを作製した。
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(三菱ケミカル社製、jER806)120g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)60g、および上記3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾硫酸マグネシウム40g、を混合し、樹脂組成物を調製した。
[実施例14]
硫酸マグネシウム60g、表面改質剤である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−503)0.6g、および塩酸(濃度35質量%)1.0gをエタノール水溶液40gに添加して、室温で30分間撹拌した。撹拌後、当該反応液を濾過し、浅いトレー等に広げて120℃で90分間乾燥した。乾燥後、ボールミルで解砕して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン修飾硫酸マグネシウムを作製した。
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(DICマテリアル社製、PC740;不飽和ポリエステル樹脂)120g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)60g、および上記3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン修飾硫酸マグネシウム40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[実施例15]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(明和化成社製、MEH−8000H;フェノール樹脂)180g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、および実施例13と同様に作製した3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾硫酸マグネシウム40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
[実施例16]
光重合性樹脂(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)180g、熱重合性樹脂(サンユレック社製、UF−110−1A)60g、熱重合性樹脂(サンユレック社製、UF−110−1B)120g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)2.5g、および実施例13と同様に作製した3−アミノプロピルトリメトキシシラン修飾硫酸マグネシウム40gを混合し、樹脂組成物を調製した。
2−2.立体造形物の作製(CLIP法)
立体造形物の作製には、図2に示す製造装置600の造形槽610に樹脂組成物(サンプル40〜42)をそれぞれ投入した。当該造形槽610の底部には、重合阻害剤である酸素の透過が可能なBiogeneral社製の0.0025インチ厚のTeflon(登録商標)AF2400フィルム(窓部615)が配置されている。そして、造形槽610の外側の雰囲気を酸素雰囲気としたうえで、適度に加圧を行った。これにより、造形槽610の底部側に、樹脂組成物650および酸素を含むバッファ領域642が形成され、バッファ領域642より上部は、バッファ領域より酸素濃度が低い硬化用領域644が形成された。
そして、紫外線源:LEDプロジェクタ(Texas Instruments社製のDLP(VISITECH LE4910H UV−388))から光を面状に照射しながらステージ620を上昇させた。このとき、紫外線の照射強度は5mW/cmとした。また、ステージの引き上げ速度は、50mm/hrとした。そして、JIS K7161−2(ISO 527−2) 1A形の試験片形状の一次硬化物を作製した。なお、作製の際には、引張試験片の長手方向が造形方向(ステージ620の引き上げ方向)となるようにした。
3.評価
上述の方法で作製した立体造形物について、硬化性、引張強度、耐久性、および寸法精度を以下の方法で評価した。
3−1.硬化性
得られた立体造形物について、上述のSLA法またはCLIP法で硬化している場合は○、硬化していない場合は×とした。
3−2.引張強度
JIS K7161に準拠して引張試験を実施した。具体的には、A&D社製引張試験機 テンシロンRTC−1250型によって、引張強度を特定し、以下のように評価した。
◎◎:引張強度が70MPa以上の場合
◎ :引張強度が50MPa以上70MPa未満の場合
〇 :引張強度が30MPa以上50MPa未満の場合
△ :引張強度が10MPa以上30MPa未満の場合
× :引張強度が10MPa未満の場合
3−3.耐久性(引張強度の経時変化)
スーパーキセノンウェザーメーターSX120において、放射照度150W/m(300−400nm)、ブラックパネル温度63℃、槽内湿度50%RHの条件で、1週間耐光性試験を実施し、実施後のサンプルにて引張強度を測定し、以下のように評価した。
◎◎:耐光性試験後の引張強度が70MPa以上の場合
◎ :耐光性試験後の引張強度が50MPa以上70MPa未満の場合
〇 :耐光性試験後の引張強度が30MPa以上50MPa未満の場合
△ :耐光性試験後の引張強度が10MPa以上30MPa未満の場合
× :耐光性試験後の引張強度が10MPa未満の場合
3−4.寸法精度
立体造形物の寸法精度の評価は、各立体造形物の寸法を測定して行った。具体的には、JIS K7161−2(ISO 527−2)1A形の試験片のつかみ部の幅(b2)の左右寸法差の絶対値をBとし、つかみ部の厚さ(h)の左右寸法差の絶対値をHとし、以下のように評価した。
◎:BおよびHが、それぞれ0.1mm未満である場合
〇:BおよびHのうち、いずれか一方が0.1mm未満であり、他方が0.1mm以上0.2mm未満である場合
△:BおよびHの両方が、0.1mm以上0.2mm未満である場合
×:BおよびHのうちいずれかが0.2mm以上となる場合、もしくは造形物が得られなかった場合
Figure 2019193961
Figure 2019193961
上記表1および表2に示されるように、樹脂組成物に熱重合性化合物を含まない場合には、引張強度が低くなりやすく、耐久性(耐光性試験後の引張強度)も評価が悪かった(比較例1〜3)。一方、光重合性化合物を含まない場合には、上述の方法では造形することができなかった(比較例4〜6)。
一方で、樹脂組成物に光重合性化合物および熱重合性化合物を含んでいたとしても、フィラーを含まない場合には、引張強度が十分に高まらず、さらには寸法精度も低かった(比較例7および比較例10)。またさらに、フィラーを含んでいたとしても、熱重合性樹脂と反応可能な官能基を有さない場合(例えばメチル基等)には、引張強度や寸法精度が十分に高まり難く、耐久性も低かった(比較例8、9、および11〜16)。
これに対し、樹脂組成物に光重合性化合物、熱重合性化合物、および熱重合性化合物と反応可能な官能基を有するフィラーを含む場合には、硬化性、引張強度、耐久性、および寸法精度が、いずれも良好になった(実施例1〜16)。また、SLA法で立体造形物を作製した場合(実施例1〜4)と比較して、CLIP法で造形物を作製した場合(実施例5〜16)に、引張強度が高まった。CLIP法によれば、継ぎ目のない立体造形物が作製されるため、引張強度が高まったと推察される。
また特に、フィラーがセルロースナノファイバーもしくは硫酸マグネシウムである場合には、アスペクト比が高いため引張方向に平行にフィラーが存在する場合、造形物を補強する効果が生じ、引張強度が高まりやすかった(実施例9〜16)。
本出願は、2018年4月2日出願の特願2018−070959号に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
本発明の樹脂組成物によれば、寸法精度や耐久性が高く、かつ機械的強度の高い立体造形物を提供できる。したがって、本発明は、樹脂組成物を用いた立体造形物の適用の幅を広げ、同分野の技術の進展および普及に貢献することが期待される。
500、600 製造装置
510、610 造形槽
615 窓部
520、620 (造形)ステージ
521 ベース
530、660 光源
531 ガルバノミラー
550 樹脂組成物
642 バッファ領域
644 硬化用領域
651 硬化物

Claims (6)

  1. 液体状の樹脂組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記樹脂組成物の硬化物からなる立体造形物を製造する方法に使用される樹脂組成物であって、
    光重合性化合物と、
    熱重合性化合物と、
    前記熱重合性化合物に結合可能な官能基を表面に有する官能基含有フィラーと、を含む、
    樹脂組成物。
  2. 前記熱重合性化合物が、エポキシ樹脂またはその前駆体、もしくはウレタン樹脂または前駆体である、
    請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記官能基含有フィラーが、前記熱重合性化合物に結合可能な官能基を有する、セルロースナノファイバーである、
    請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記光重合性化合物の硬化物を含む一次硬化物を形成する光造形工程と、
    前記一次硬化物を、さらに熱硬化させる熱硬化工程を含む、
    立体造形物の製造方法。
  5. 前記光造形工程が、
    前記樹脂組成物および酸素を含み、酸素により前記光重合性化合物の硬化が阻害されるバッファ領域、ならびに前記樹脂組成物を少なくとも含み、前記バッファ領域より酸素濃度が低く、前記光重合性化合物の硬化が可能な硬化用領域を、造形物槽内に隣接して形成する第1の工程と、
    前記バッファ領域側から前記樹脂組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記硬化用領域で前記光重合性化合物を硬化させる第2の工程と、
    を含み、
    前記第2の工程では、形成された硬化物を前記バッファ領域とは反対側に移動させながら、前記硬化用領域に活性エネルギーを照射し、前記一次硬化物を形成する、
    請求項4に記載の立体造形物の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物である、立体造形物。
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