以下に、本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置、電動送風機、電気掃除機及びハンドドライヤを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態.
図1は本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置を備えたモータ駆動システムの構成を示す図である。本発明の実施の形態に係るモータ駆動システム1は、電源10、モータ駆動装置2及び単相モータ12を備える。
電源10は、モータ駆動装置2に直流電力を供給する直流電源である。電源10は、コンバータ、バッテリなどである。電源10は、直流電力を出力する電源であればよく、コンバータ、バッテリなどに限定されない。
単相モータ12は、永久磁石型のロータ12aとステータ12bとを備えるブラシレスモータである。なお、単相モータ12は誘起電圧を発生する永久磁石型モータであればよく、ブラシレスモータに限定されない。ロータ12aには、4個の永久磁石が周方向に配列されているものとする。これらの永久磁石は、それぞれの磁極の方向が、周方向に交互に反転するように配置され、ロータ12aの複数個の磁極を形成する。なお、永久磁石の数は4つに限定されず、4つ以上であればよい。ステータ12bには不図示の巻線が巻かれている。当該巻線にはモータ電流が流れる。モータ電流は、単相インバータ11から単相モータ12へ供給される交流電流に等しい。
モータ駆動装置2は、単相モータ12に交流電力を供給して単相モータ12を駆動する装置である。モータ駆動装置2は、電圧センサ20、位置センサ21、単相インバータ11、制御部25、駆動信号生成部32、電力供給スイッチ35、制御電源40、制御電源41及び操作スイッチ36を備える。
電圧センサ20は、電源10から出力される直流電圧Vdcを検出する。なお、電圧センサ20は、モータ駆動装置2の入力端に印加される電圧を検出してもよいし、電源10の出力端に接続される配線へ印加される直流電圧を検出してもよい。
位置センサ21は、ロータ12aの回転位置であるロータ回転位置を検出し、検出した回転位置情報を位置センサ信号21aとして出力する。位置センサ信号21aは、ロータ12aから発生する磁束の方向に応じて、ハイレベル又はローレベルの2値の電位をとる信号である。
単相インバータ11は、電源10から供給される直流電力を交流電力に変換して、モータに印加する直流交流変換機能を有する電力変換器である。
制御部25は、直流電圧Vdcと、位置センサ21から出力される位置センサ信号21aとに基づき、パルス幅変調信号であるPWM信号Q1,Q2,Q3,Q4を生成する。PWM信号Q1,Q2,Q3,Q4は第2信号である。また制御部25は第2信号生成部である。以下ではPWM信号Q1,Q2,Q3,Q4を単にPWM信号と称する場合がある。
駆動信号生成部32は、制御部25から出力されたPWM信号を増幅し、増幅した信号を単相インバータ11内のスイッチング素子を駆動するための駆動信号S1,S2,S3,S4として出力する。駆動信号生成部32は第1信号生成部である。駆動信号S1はPWM信号Q1が増幅された信号であり、駆動信号S2はPWM信号Q2が増幅された信号であり、駆動信号S3はPWM信号Q3が増幅された信号であり、駆動信号S4はPWM信号Q4が増幅された信号である。
制御部25は、プロセッサ31、キャリア生成部33及びメモリ34を有する。プロセッサ31は、PWM制御及び進角制御に関する各種演算を行う処理部である。PWM制御及び進角制御の詳細は後述する。プロセッサ31には、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、又はシステムLSI(Large Scale Integration)を例示できる。
メモリ34には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)といった不揮発性、又は揮発性の半導体メモリを例示できる。またメモリ34は、これらに限定されず、磁気ディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、又はDVD(Digital Versatile Disc)でもよい。メモリ34には、プロセッサ31によって読みとられるプログラムが保存される。メモリ34は、プロセッサ31が演算処理を行う際の作業領域として使用される。なお図1に示すキャリア生成部33の機能は、メモリ34に格納される専用のプログラムを実行するプロセッサで実現してもよいし、専用のハードウェアであってもよい。キャリア生成部33の構成の詳細は後述する。
制御電源40は、電源10から出力される直流電力よりも低い電力を生成して出力する。制御電源40から出力される電力は、電力供給スイッチ35を介して、駆動信号生成部32及び位置センサ21に供給されると共に、制御電源41に供給される。制御電源41は、制御電源40から供給される電力よりも低い電力を生成して出力される。制御電源41から出力される電力は制御部25に供給される。
図2は図1に示す単相インバータの回路構成を示す図である。単相インバータ11は、ブリッジ接続された複数のスイッチング素子51,52,53,54を有する。図2には、単相インバータ11が有する複数のスイッチング素子51,52,53,54の他にも、単相インバータ11に接続される単相モータ12が示される。高電位側に位置する2つのスイッチング素子51,53のそれぞれは、上アームのスイッチング素子と称される。低電位側に位置する2つのスイッチング素子52,54のそれぞれは、下アームのスイッチング素子と称される。
スイッチング素子51のスイッチング素子52への接続端11−1と、スイッチング素子53のスイッチング素子54への接続端11−2は、ブリッジ回路における交流端を構成する。接続端11−1及び接続端11−2には単相モータ12が接続される。
スイッチング素子51には、スイッチング素子51のドレインとソースとの間に並列接続されるボディダイオード51aが形成される。スイッチング素子52には、スイッチング素子52のドレインとソースとの間に並列接続されるボディダイオード52aが形成される。スイッチング素子53には、スイッチング素子53のドレインとソースとの間に並列接続されるボディダイオード53aが形成される。スイッチング素子54には、スイッチング素子54のドレインとソースとの間に並列接続されるボディダイオード54aが形成される。ボディダイオード51a,52a,53a,54aのそれぞれは、MOSFETの内部に形成される寄生ダイオードであり、還流ダイオードとして使用される。
複数のスイッチング素子51,52,53,54のそれぞれには、シリコン系材料により構成されるMOSFETが例示できる。但し、複数のスイッチング素子51,52,53,54のそれぞれは、シリコン系材料により構成されるMOSFETに限定されず、複数のスイッチング素子51,52,53,54の内の少なくとも1つは、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドといったワイドバンドギャップ半導体により構成されるMOSFETでもよい。
一般的にワイドバンドギャップ半導体はシリコン半導体に比べて耐電圧及び耐熱性が高い。そのため、複数のスイッチング素子51,52,53,54の内の少なくとも1つにワイドバンドギャップ半導体を用いることにより、スイッチング素子51,52,53,54の耐電圧性及び許容電流密度が高くなり、スイッチング素子51,52,53,54を組み込んだ半導体モジュールを小型化できる。またワイドバンドギャップ半導体は、耐熱性も高いため、半導体モジュールで発生した熱を放熱するための放熱部の小型化が可能であり、また半導体モジュールで発生した熱を放熱する放熱構造の簡素化が可能である。
図3は図1に示すPWM信号を生成するための機能構成を示す図である。図4は図3に示すキャリア比較部及びキャリア生成部を詳細に示す図である。PWM信号Q1,Q2,Q3,Q4を生成する機能は、図3に示すキャリア生成部33及びキャリア比較部38によって実現できる。キャリア比較部38の機能は、図1に示すプロセッサ31により実現される。キャリア比較部38には、進角位相θvと、基準位相θeと、キャリア生成部33で生成されたキャリアと、直流電圧Vdcと、電圧指令Vmの振幅値である電圧振幅指令V*とが入力される。キャリア比較部38は、進角位相θv、基準位相θe、キャリア、直流電圧Vdc及び電圧振幅指令V*に基づいて、PWM信号を生成する。
進角位相θv及び基準位相θeは、図4に示す電圧指令Vm1,Vm2の生成に用いられる。進角位相θvは、後述する進角位相算出部で算出される。「進角位相」とは、電圧指令の進み角である進角θvvを、位相で表したものである。「進み角」とは、単相インバータ11が不図示のステータ巻線に印加するモータ印加電圧と、当該ステータ巻線に誘起されるモータ誘起電圧との間の位相差である。モータ印加電圧は、単相インバータ11の出力電圧であるインバータ出力電圧と同義である。モータ印加電圧がモータ誘起電圧よりも進んでいるとき、「進み角」は正の値をとる。基準位相θeは、後述する回転速度算出部で算出される。基準位相θeは、ロータ12aの基準位置からの角度であるロータ機械角を、電気角に換算した位相である。
図4に示すように、キャリア生成部33は、キャリア周波数設定部33aを有する。キャリア周波数設定部33aには、キャリアの周波数であるキャリア周波数fC[Hz]が設定される。キャリア周波数設定部33aでは、進角位相θvの周期に同期したキャリアが生成される。生成されたキャリアはキャリア比較部38に出力される。図4には、キャリアの一例である三角波の波形が示される。三角波は、その山の値が“1”であり、その谷の値が“0”となる信号波である。なお単相インバータ11のPWM制御には、同期PWM制御と非同期PWM制御とがある。非同期PWM制御の場合、進角位相θvにキャリアを同期させる必要はない。
キャリア比較部38は、絶対値演算部38a、除算部38b、乗算部38c、乗算部38d、加算部38e、加算部38f、比較部38g、比較部38h、出力反転部38i及び出力反転部38jを有する。
絶対値演算部38aは、電圧振幅指令V*の絶対値|V*|を演算する。除算部38bでは、絶対値|V*|が、直流電圧Vdcにより除算される。例えば、電源10がバッテリである場合、バッテリ電圧が低下した場合でも、絶対値|V*|を直流電圧Vdcで除算することにより、バッテリ電圧の低下によってモータ印加電圧が低下しないように、バッテリ電圧が低下してかつ直流電圧Vdcで除算しない場合に比べて、変調率を増加させることができる。バッテリ電圧はバッテリの出力電圧を意味する。
なお電源10が、バッテリではなく、商用電源からの交流電力を直流電力に変換する電力変換装置である場合、商用電源の電圧変動は小さいため、電力変換装置の出力電圧の変動はバッテリの出力電圧の変動に比べて小さくなる。そのため、商用電源を利用して直流電力を出力する電源10が単相インバータ11に接続されている場合、除算部38bには、直流電圧Vdcの代わりに、モータ駆動装置2の内部で生成された電圧、すなわち電圧が一定の値を示す直流電圧を、入力してもよい。
乗算部38cは、基準位相θeに進角位相θvを足し合わせ、足し合わせた結果の正弦を演算する。乗算部38cは、演算された正弦に除算部38bの出力を乗算することにより、電圧指令Vmを演算する。
加算部38eは、乗算部38cの出力である電圧指令Vmに1を加算する。加算部38eの出力は、図2に示す2つのスイッチング素子51,52を駆動するための電圧指令Vm1として、比較部38gに入力される。比較部38gには、電圧指令Vm1及びキャリアが入力される。比較部38gは、電圧指令Vm1とキャリアとを比較し、比較結果は、PWM信号Q2となる。
出力反転部38iは、比較部38gの出力を反転する。出力反転部38iの出力は、PWM信号Q1となる。出力反転部38iにより、スイッチング素子51とスイッチング素子52とが同時にオンすることはない。
乗算部38dは、乗算部38cの出力である電圧指令Vmに、−1を乗算する。加算部38fは、乗算部38dの出力に1を加算する。加算部38fの出力は、図2に示す2つのスイッチング素子53,54を駆動するための電圧指令Vm2として、比較部38hに入力される。比較部38hには、電圧指令Vm2及びキャリアが入力される。比較部38hは、電圧指令Vm2とキャリアとを比較し、比較結果は、PWM信号Q4となる。
出力反転部38jは、比較部38hの出力を反転する。出力反転部38jの出力は、PWM信号Q3となる。出力反転部38jにより、スイッチング素子53とスイッチング素子54とが同時にオンすることはない。
図5は図4に示す電圧指令と、PWM信号と、モータ印加電圧との波形を示すタイムチャートである。図5には、位置センサ信号、ロータ機械角θm、基準位相θe、進角位相θv、電圧指令Vm1、電圧指令Vm2、キャリア、PWM信号Q1,Q2,Q3,Q4及びモータ印加電圧の波形が示される。電圧指令Vm1の波形は破線で示され、電圧指令Vm2の波形は一点鎖線で示される。これらの波形は、例えば4個の永久磁石を備えたロータ12aが1回転するときに検出される波形である。図5に矢印で示されるA,B,C,D,Eは、単相モータ12のステータ12bに巻かれるコイルに流れる電流が転流するタイミングを表す。
なお図4に示すキャリア比較部38は、図5に示すような波形の電圧指令Vm1,Vm2を使用して、PWM信号Q1,Q2,Q3,Q4を生成する。また、PWM信号Q1,Q2,Q3,Q4を利用して単相インバータ11内のスイッチング素子51,52,53,54が制御されることにより、PWM制御されたモータ印加電圧が単相モータ12に印加される。モータ印加電圧は、ハイレベル、ローレベル又はゼロレベルの電位をとる信号である。
ところでPWM信号Q1,Q2,Q3,Q4を生成する際に使用される変調方式には、バイポーラ変調方式と、ユニポーラ変調方式とが知られている。バイポーラ変調方式は、正又は負の電位で変化する電圧パルスを出力する変調方式である。ユニポーラ変調方式は、電源半周期ごとに3つの電位で変化する電圧パルス、すなわち正の電位と負の電位と零の電位とに変化する電圧パルスを出力する変調方式である。
図5に示すPWM信号Q1,Q2,Q3,Q4の波形は、ユニポーラ変調によるものである。本実施の形態に係るモータ駆動装置2には、何れの変調方式を用いてもよい。なお、モータ印加電圧の波形と、単相モータ12のコイルに流れる電流の波形とを、より正弦波に近づける必要がある用途では、バイポーラ変調よりも、高調波含有率が少ないユニポーラ変調を採用することが好ましい。
上述の通り、モータ印加電圧は、キャリアと電圧指令とを比較することにより決定される。モータ回転数が高くなればなるほど、電圧指令の周波数が増加するため、電気角一周期中に出力されるモータ印加電圧に含まれる電圧パルスの数が減少する。そのため、電圧パルスの数が電流波形の歪へもたらす影響が大きくなる。一般的に、電圧パルスの数が偶数回の場合、モータ印加電圧には偶数次調波が重畳され、正側の波形と負側の波形との対称性が無くなる。よって、単相モータ12のコイルに流れる電流の波形を、高調波の含有率を抑えた正弦波に近づけるためには、電気角一周期中の電圧パルスの数が、奇数回となるように制御することが好ましい。電気角一周期中の電圧パルスの数が、奇数回となるように制御することにより、単相モータ12のコイルに流れる電流の波形を正弦波に近づけることが可能となる。
次に駆動信号を生成する回路の構成例を説明する。図6は図2に示す駆動信号生成部が備える信号生成回路の構成例を示す図である。図6に示す信号生成回路32Aは、制御電源40から出力される電圧を利用して駆動信号S1及び駆動信号S2を生成する回路である。なお、図6には、駆動信号S3及び駆動信号S4を生成する回路が示されていないが、当該回路は、図6に示される信号生成回路32Aと同様に構成されているため、以下ではその構成の説明は省略する。
信号生成回路32Aには、第1配線71の一端が接続され、第1配線71の他端には電力供給スイッチ35の一端が接続される。電力供給スイッチ35の他端は第2配線72の一端に接続され、第2配線72の他端は制御電源40の出力端子40aに接続される。制御電源40の入力端子40bには、第3配線73の一端が接続され、第3配線73の他端は電源10と電気的に接続される。
信号生成回路32Aは、ブートストラップ回路200、高電圧駆動回路400及び低電圧駆動回路401を備える。
ブートストラップ回路200は、アノードが制御電源40に接続されるブートダイオード201と、一端がブートダイオード201のカソードに接続されるブートコンデンサ202とを備える。ブートコンデンサ202の他端は、スイッチング素子51のスイッチング素子52への接続端11−1に接続される。ブートコンデンサ202は、高電圧駆動回路400が動作するための電圧を、制御電源40から出力される電圧よりも高める働きをする。
このように構成されるブートストラップ回路200では、スイッチング素子52がオンしたとき、制御電源40、ブートダイオード201、ブートコンデンサ202及びスイッチング素子52で構成される経路に、電流が流れて、ブートコンデンサ202が充電される。充電されたブートコンデンサ202の両端に発生するコンデンサ電圧Vcは、Vc=Vcc+VBD−Vfで表すことができる。Vccは制御電源40の電圧、VBDはボディダイオード52aの順方向電圧、Vfはブートダイオード201の順方向電圧である。
高電圧駆動回路400は、ブートストラップ回路200から出力される電圧を、電源電圧として利用してPWM信号Q1を駆動信号S1に変換し、スイッチング素子51のゲートに出力する。
低電圧駆動回路401は、制御電源40から出力される電圧を、電源電圧として利用してPWM信号Q2を駆動信号S2に変換し、スイッチング素子52のゲートに出力する。
次に単相インバータ11の停止時に、駆動信号生成部32、位置センサ21及び制御部25で消費される電力を低減する動作について説明する。
図7は図1に示される駆動信号生成部、位置センサ及び制御部で消費される電力を低減する機能の構成例を示す図である。図8は図7に示される判定部、スイッチ操作部及びモード切替部の動作を説明するフローチャートである。図7に示す判定部80、スイッチ操作部81及びモード切替部82は図1に示すプロセッサ31及びメモリ34により実現される。すなわち、判定部80、スイッチ操作部81及びモード切替部82の処理を実行するためのコンピュータプログラムをメモリ34に格納しておき、プロセッサ31が当該プログラムを読み出して実行することにより、判定部80、スイッチ操作部81及びモード切替部82の機能が実現される。
図1に示す単相インバータ11の運転が開始された後、図7に示される判定部80は、操作スイッチ36から出力される操作信号36aに基づき、モータ駆動装置2の停止操作が行われたか否か判断する(ステップS1)。例えば、操作信号36aがハイレベル又はローレベルの2値の電位をとる信号である場合、ハイレベルの操作信号36aはモータ駆動装置2の起動操作が行われたことを表し、ローレベルの操作信号36aはモータ駆動装置2の停止操作が行われたことを表す。
判定部80は、ハイレベルの操作信号36aが入力されているため停止操作されていないと判断した場合(ステップS1,No)、ステップS1の処理を繰り返す。
判定部80は、ハイレベルの操作信号36aからローレベルの操作信号36aに変化したことにより、停止操作されたと判断した場合(ステップS1,Yes)、停止操作されたことを示す停止信号80aを、スイッチ操作部81及びモード切替部82へ出力する(ステップS2)。
停止信号80aを受信したスイッチ操作部81は、電力供給スイッチ35をオン状態からオフ状態に変化させるように、電力供給スイッチ35を制御する(ステップS3)。
例えば電力供給スイッチ35がMOSFETの場合、スイッチ操作部81は、停止信号80aを受信するまでは、ゲート駆動信号を出力し続ける。ゲート駆動信号を受信しているときのMOSFETはオン状態となる。これにより、制御電源40から駆動信号生成部32への電力供給が継続される。スイッチ操作部81は、停止信号80aを受信した場合、ゲート駆動信号の出力を停止する。これにより、MOSFETはオフ状態となるため、制御電源40から駆動信号生成部32への電力供給が停止される。なお、電力供給スイッチ35がオフ状態となった場合、電力供給スイッチ35から位置センサ21への電力供給も停止される。
例えば電力供給スイッチ35が機械式のノーマリクローズのスイッチである場合、スイッチ操作部81は、停止信号80aを受信するまでは、電力供給スイッチ35の可動接点を駆動するための励磁コイルへ電圧を印加し続ける。励磁コイルに電圧が印加されているとき、電力供給スイッチ35の可動接点が固定接点に接触し続ける。これにより、制御電源40から駆動信号生成部32への電力供給が継続される。スイッチ操作部81は、停止信号80aを受信した場合、励磁コイルへの電圧の印加を停止する。これにより、電力供給スイッチ35の可動接点が固定接点から離れてオフ状態となり、制御電源40から駆動信号生成部32への電力供給が停止される。
制御電源40から駆動信号生成部32への電力供給が停止されることにより、駆動信号生成部32から駆動信号S1,S2,S3,S4が出力されなくなる。そのため、単相インバータ11におけるスイッチング動作が停止し、単相モータ12の回転が停止する。
また、制御電源40から駆動信号生成部32への電力供給が停止されることにより、駆動信号生成部32を構成する信号生成回路32Aに電流が流れなくなるため、制御電源40から駆動信号生成部32への電力供給が継続している場合に比べて、駆動信号生成部32で生じる待機電力を低減することができる。また、制御電源40から位置センサ21への電力供給が停止されることにより、位置センサ21に電流が流れなくなるため、制御電源40から位置センサ21への電力供給が継続している場合に比べて、位置センサ21で生じる待機電力を低減することができる。
停止信号80aを受信したモード切替部82は、第1モードである通常モードから、低消費電力モードである第2モードに切替える信号である切替信号82aを、キャリア比較部38に出力する(ステップS4)。第1モードは、図4に示すキャリア比較部38にキャリア信号の生成を行わせる動作パターンである。第2モードは、キャリア比較部38にキャリア信号の生成を停止させる動作パターンである。例えばキャリア比較部38は、モード切替部82からの切替信号82aが入力されるまではキャリア信号の生成を継続し、モード切替部82からの切替信号82aが入力された後はキャリア信号の生成を停止する。キャリア信号の生成を停止することにより、単相インバータ11の停止時にキャリア比較部38で消費される電力が低減される。
単相インバータ11の運転が停止された後、操作スイッチ36から出力される操作信号36aに基づき、起動操作が行われたか否かを判断する(ステップS5)。
判定部80は、ローレベルの操作信号36aが入力されているため起動操作されていないと判断した場合(ステップS5,No)、ステップS5の処理を繰り返す。
判定部80は、ローレベルの操作信号36aからハイレベルの操作信号36aに変化したことにより、起動操作されたと判断した場合(ステップS5,Yes)、停止信号80aの出力を停止する(ステップS6)。
停止信号80aの出力が停止されることにより、スイッチ操作部81は、電力供給スイッチ35をオフ状態からオン状態に変化させるように、電力供給スイッチ35を制御する(ステップS7)。
例えば電力供給スイッチ35がMOSFETの場合、スイッチ操作部81は、停止信号80aの出力が停止したとき、ゲート駆動信号を出力する。これにより、MOSFETは、オン状態となり、制御電源40から駆動信号生成部32への電力供給が再開される。例えば電力供給スイッチ35が機械式のノーマリクローズのスイッチである場合、スイッチ操作部81は、停止信号80aの出力が停止したとき、電力供給スイッチ35の可動接点を駆動するための励磁コイルへ電圧を印加する。これにより、電力供給スイッチ35の可動接点が固定接点に接してオン状態となり、制御電源40から駆動信号生成部32への電力供給が再開される。
制御電源40から駆動信号生成部32への電力供給が再開されることにより、駆動信号生成部32では駆動信号S1,S2,S3,S4が生成され、単相インバータ11では電力変換が行われる。これにより単相モータ12が回転を開始する。なお、電力供給スイッチ35がオン状態となった場合、電力供給スイッチ35から位置センサ21への電力供給も再開されるため、位置センサ21は、位置センサ信号21aを生成することができる。
図9は図1に示す駆動信号生成部及び位置センサで消費される電力の変化を示す図である。図9の縦軸は、例えば図1に示す駆動信号生成部32及び位置センサ21で消費される電力の合計値を表す。横軸は時間を表す。図9の実線は、図1に示す電力供給スイッチ35が利用される場合における駆動信号生成部32及び位置センサ21で生じる消費電力を表す。図9の破線は、電力供給スイッチ35が利用されない場合における駆動信号生成部32及び位置センサ21で生じる消費電力を表す。
電力供給スイッチ35が利用されている場合、電力供給スイッチ35がオフ状態になることにより、駆動信号生成部32及び位置センサ21で消費される電力は、電力供給スイッチ35が利用されていない場合に比べて、低い値を示す。このように、本実施の形態に係るモータ駆動装置2では、単相インバータ11が停止しているとき、インバータ制御部である駆動信号生成部32及び位置センサ21での待機電力を低減できる。
なお、本実施の形態に係るモータ駆動装置2は、駆動信号生成部32及び位置センサ21への電力供給を停止するように構成されているが、駆動信号生成部32又は位置センサ21へ供給される電力が停止されるように構成してもよい。例えば、駆動信号生成部32の待機電力が位置センサ21の待機電力よりも大きい場合、駆動信号生成部32へ供給される電力が停止されるように構成することが望ましい。
また、本実施の形態に係るモータ駆動装置2では、単相インバータ11が停止しているとき、通常モードから低消費電力モードに切替えられる。そのため、キャリア比較部38で生じる消費電力が低減され、モータ駆動装置2全体での消費電力がより一層低減される。また、消費電力が低減されることにより、例えば電源10がバッテリである場合、待機電力の低下に伴い、単相インバータ11の停止時におけるバッテリの放電が低減されるため、単相モータ12の運転時間を長くすることができる。また、待機電力の低下に伴い、駆動信号生成部32を構成する電解コンデンサ、抵抗器などの回路部品の発熱が抑制されるため、回路部品の寿命を延ばすことができる。
なお、抵抗器の温度が変化すると、複数のスイッチング素子のそれぞれを駆動する駆動信号S1,S2,S3,S4の生成タイミングがずれることがある。本実施の形態に係るモータ駆動装置2では、単相インバータ11が停止時に、駆動信号生成部32への電力供給が無くなるため、抵抗器などの回路部品の発熱が抑制される。従って、単相インバータ11の起動時における、駆動信号S1,S2,S3,S4の生成タイミングのずれが抑制され、インバータ制御の精度を向上させることができる。
なお、従来のモータ駆動装置には、直流電源とインバータとの間にスイッチを設けて、当該スイッチをオフにすることによって、直流電源からインバータ及びインバータ制御手段へ供給される電力を遮断して、待機電力を低減させるものが存在する。但し、インバータには電解コンデンサが搭載されるため、スイッチがオフ状態からオン状態に変化したとき、直流電源からインバータに突入電流が流れる。この突入電流によって電解コンデンサに高い電圧が印加され、電解コンデンサの寿命が短くなるため、突入回路を抑制する回路が必要になり、インバータの構造が複雑になると共にインバータの製造コストが増加する。これに対して本実施の形態に係るモータ駆動装置2では、当該スイッチを用いることなく単相インバータ11が電源10に接続されている。そのため、突入電流が発生せず、電解コンデンサの寿命を延ばすことができる。
次に、本実施の形態における進角制御について説明する。図10は図3及び図4に示したキャリア生成部及びキャリア比較部へ入力される進角位相を算出するための機能構成を示す図である。図10に示される回転速度算出部42及び進角位相算出部44のそれぞれの機能は、図1に示すプロセッサ31及びメモリ34で実現される。すなわち、回転速度算出部42及び進角位相算出部44の処理を実行するためのコンピュータプログラムをメモリ34に格納しておき、プロセッサ31がプログラムを読み出して実行することにより、回転速度算出部42及び進角位相算出部44の機能が実現される。
回転速度算出部42は、位置センサ信号21aに基づき、単相モータ12の回転速度ωと、基準位相θeとを算出する。基準位相θeは、基準位置からのロータ12aの回転角度であるロータ機械角θmを、電気角に換算した位相である。進角位相算出部44は、回転速度算出部42で算出された回転速度ω及び基準位相θeに基づき進角位相θvを算出する。
図11は図10に示す進角位相の算出方法の一例を示す図である。図11の横軸はモータ回転数Nであり、図11の縦軸は進角位相θvである。モータ回転数Nは単位時間当たりの回転数であり回転速度に対応する。進角位相θvは、図11に示すように、モータ回転数Nの増加に対して進角位相θvが増加する関数を用いて決定することができる。図11の例では、1次の線形関数により進角位相θvが決定されているが、これに限らず、モータ回転数Nの増加に応じて、進角位相θvが同じになる関係、又は進角位相θvが大きくなる関係であれば、1次の線形関数以外の関数を用いてもよい。
一般的な電動送風機で実施されている、回転数一定制御を行うと、モータに過電流が流れる場合がある。過電流が流れる理由は、負荷変動の際に、モータ回転数を一定に保とうとするために、電流が急激に変動するからである。より詳細に説明すると、「負荷が軽い状態」すなわち「負荷トルクが小さい状態」から、「負荷が重い状態」すなわち「負荷トルクが大きい状態」に遷移した際に、回転数一定制御を行うと、同一回転数を維持しようしてモータ出力トルクを大きくしなければならず、モータ電流の変化量が大きくなるからである。
一方、本実施の形態の制御では、定常運転時において、電圧振幅指令V*を一定とする制御を行っている。ここで、電圧振幅指令V*を一定とする場合、負荷が重くなった際には、電圧振幅指令V*は変化させないので、負荷トルクが大きくなった分、モータ回転数は低下する。この制御により、モータ電流の急峻な変化と過電流とを防止できるので、安定して回転する電動送風機及び電機掃除機を実現することができる。
なお、電動送風機の場合、負荷トルクは、モータの負荷である羽根の回転数の増加によって増加すると共に、風路の径が広くなることでも増加する。風路の径とは、電機掃除機を例とした場合、吸込口の広さを表している。
例えば、吸込口に何も接触していないため、風路の径が広いときには、風を吸い込む力が必要となる。従って、同一回転数で羽根が回転している場合、負荷トルクが大きくなる。一方、吸込口に何かが接触して、吸込口が塞がれている状態では、風路の径が狭くなり、風を吸い込む力が必要なくなる。そのため、同一回転数で羽根が回転している場合、負荷トルクは小さくなる。
次に、進角制御による効果について説明する。まず、回転数の増加に応じて進角位相θvを増加させることにより、回転数範囲を広げることができる。進角位相θvを「0」とした場合には、モータ印加電圧とモータ誘起電圧とが釣り合う所で回転数が飽和する。回転数を更に増加させるためには、進角位相θvを進め、電機子反作用によるステータに発生させる磁束を弱めることにより、モータ誘起電圧の増加が抑制され、回転数が増加する。よって、進角位相θvを回転数に応じて選択することで、広い回転数領域を得ることができる。
本実施の形態による進角制御を電気掃除機に適用する場合には、吸込口の塞ぎ状態の変化によらず、すなわち負荷トルクに関係なく、電圧指令を一定とし、回転速度の増加に応じて電圧指令の進み角である進角位相θvを増加させるようにすればよい。このように制御すれば、広い回転速度範囲において安定した駆動が可能となる。
次に、図12から図15を参照して本実施の形態における損失低減手法について説明する。図12はインバータ出力電圧の極性によるモータ電流の経路を示す第1の図である。図13はインバータ出力電圧の極性によるモータ電流の経路を示す第2の図である。図14はインバータ出力電圧の極性によるモータ電流の経路を示す第3の図である。図15は図2に示すスイッチング素子として利用可能なMOSFETの概略構造を示す模式的断面図である。以下では、まず図15を参照してMOSFETの概略の構造を説明し、その後に図12から図14を参照してモータ電流の経路を説明する。
図15には、n型MOSFETが例示される。n型MOSFETの場合、図15に示すように、p型の半導体基板600が用いられる。半導体基板600には、ソース電極S、ドレイン電極D及びゲート電極Gが形成される。ソース電極S及びドレイン電極Dと接する部位には、高濃度の不純物がイオン注入されてn型の領域601が形成される。また、半導体基板600において、n型の領域601が形成されない部位とゲート電極Gとの間には、酸化絶縁膜602が形成される。すなわち、ゲート電極Gと、半導体基板600におけるp型の領域603との間には、酸化絶縁膜602が介在している。
ゲート電極Gに正電圧が印加されると、半導体基板600におけるp型の領域603と酸化絶縁膜602との間の境界面に電子が引き寄せられ、当該境界面が負に帯電する。電子が集まった所は、電子の密度がホール密度よりも高くなりn型化する。このn型化した部分は電流の通り道となりチャネル604と呼ばれる。チャネル604は、図15の例では、n型チャネルである。MOSFETがオンに制御されることにより、通流する電流は、p型の領域603に形成されるボディダイオードよりも、チャネル604に多く流れる。
インバータ出力電圧の極性が正の場合、図12の太実線(a)で示すように、電流は、第1相の上アームであるスイッチング素子51のチャネルを通って単相モータ12に流れ込み、第2相の下アームであるスイッチング素子54のチャネルを通って単相モータ12から流れ出す。また、インバータ出力電圧の極性が負の場合、図12の太破線(b)で示すように、電流は、第2相の上アームであるスイッチング素子53のチャネルを通って単相モータ12に流れ込み、第1相の下アームであるスイッチング素子52のチャネルを通って単相モータ12から流れ出す。
次に、インバータ出力電圧が零、すなわち単相インバータ11から零電圧が出力された場合の電流経路について説明する。正のインバータ出力電圧が生成された後にインバータ出力電圧が零になると、図13の太実線(c)で示すように、電源側からは電流が流れず、単相インバータ11と単相モータ12との間で電流が行き来する還流モードとなる。このとき、単相モータ12に直前に流れている電流の向きは変わらないため、単相モータ12から流れ出した電流は、第2相の下アームであるスイッチング素子54のチャネルと、第1相の下アームであるスイッチング素子52のボディダイオード52aとを通って単相モータ12に戻る。なお、負のインバータ出力電圧が生成された後にインバータ出力電圧が零になる場合は、直前に流れていた電流の向きが逆であるため、図13の太破線(d)で示すように、還流電流の向きは逆となる。具体的に説明すると、単相モータ12から流れ出した電流は、第1相の上アームであるスイッチング素子51のボディダイオード51aと、第2相の上アームであるスイッチング素子53のチャネルとを通って単相モータ12に戻る。
上記の説明の通り、単相モータ12と単相インバータ11との間で電流が還流する還流モードでは、第1相及び第2相の内の何れか一方の相ではボディダイオードに電流が流れる。一般的に、ダイオードの順方向に電流を流すことに比べ、MOSFETのチャネルに電流を流した方が、導通損失が小さくなることが知られている。そこで、本実施の形態では、還流電流が流れる還流モードにおいて、ボディダイオードに流れる通流電流を小さくすべく、当該ボディダイオードを有する側のMOSFETがオンに制御される。
還流モードにおいて、図13の太実線(c)で示す還流電流が流れるタイミングでは、スイッチング素子52がオンに制御される。このように制御すれば、図14の太実線(e)で示すように、還流電流の多くは抵抗値の小さいスイッチング素子52のチャネル側を流れる。これにより、スイッチング素子52での導通損失が低減される。また、図13の太破線(d)で示す還流電流が流れるタイミングでは、スイッチング素子51がオンに制御される。このように制御すれば、図14の太破線(f)で示すように、還流電流の多くは抵抗値の小さいスイッチング素子51のチャネル側を流れる。これにより、スイッチング素子51での導通損失が低減される。
前述のように、ボディダイオードに還流電流が流れるタイミングにおいて、当該ボディダイオードを有する側のMOSFETがオンに制御されることにより、スイッチング素子の損失を低減することができる。このため、MOSFETの形状を表面実装タイプにして基板にて放熱可能な構造とし、また、スイッチング素子の一部又は全部をワイドバンドギャップ半導体で形成することにより、基板のみでMOSFETの発熱を抑制する構造を実現する。なお、基板のみで放熱が可能であれば、ヒートシンクが不要となるため、インバータの小型化に寄与し、製品の小型化にも繋げることができる。
前述の放熱方法に加え、基板を風路に設置することで、更なる放熱効果をも得ることができる。ここで、風路とは、電動送風機のように空気の流れを発生させるファンを周囲の空間、又は電動送風機が発生する風が流れる通路である。基板を風路に設置することにより、電動送風機が発生する風によって基板上の半導体素子を放熱できるので、半導体素子の発熱を大幅に抑制することができる。
次に、実施の形態に係るモータ駆動装置の適用例について説明する。図16は本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置を備えた電気掃除機の構成図である。電気掃除機61は、直流電源であるバッテリ67と、図1に示されるモータ駆動装置2と、図1に示される単相モータ12により駆動される電動送風機64と、集塵室65と、センサ68と、吸込口体63と、延長管62と、操作部66とを備える。バッテリ67は図1に示す電源10に相当する。
電気掃除機61を使用するユーザは、操作部66を持ち、電気掃除機61を操作する。電気掃除機61のモータ駆動装置2は、バッテリ67を電源として電動送風機64を駆動する。電動送風機64が駆動することにより、吸込口体63からごみの吸込みが行われ、吸込まれたごみは、延長管62を介して集塵室65へ集められる。
電気掃除機61は、使用者が掃除を行うときに利用されるため、運転時間よりも待機時間が長い。このように待機時間が長い製品では、待機時間が長くなればなるほど、運転時に消費される電力に対して、待機電力の割合が増える。特にインバータの駆動信号を生成する駆動信号生成回路には、PWM信号を生成する回路に比べて、大きな電流が流れるため、待機電力も大きくなる傾向がある。このように待機電力が大きくなる傾向の製品に、本実施の形態に係るモータ駆動装置2を用いることにより、電気掃除機61の運転停止時は、駆動信号生成回路への電力供給が停止されるため、待機電力の消費が抑制される。従って、電気掃除機61の電源であるバッテリの放電が抑制され、電気掃除機61の運転時間を長くすることができる。
図17は本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置を備えたハンドドライヤの構成図である。ハンドドライヤ90は、モータ駆動装置2、ケーシング91、手検知センサ92、水受け部93、ドレン容器94、カバー96、センサ97、吸気口98及び電動送風機95を備える。ここで、センサ97は、ジャイロセンサ及び人感センサの何れかである。ハンドドライヤ90では、水受け部93の上部にある手挿入部99に手が挿入されることにより、電動送風機95による送風で水が吹き飛ばされ、吹き飛ばされた水は、水受け部93で集められた後、ドレン容器94に溜められる。
ハンドドライヤ90は、図16に示す電気掃除機61と同様に、運転時間よりも待機時間が長い製品である。このため、ハンドドライヤ90においても、前述した実施の形態に係る制御手法が好適であり、電気掃除機61と同様な効果を得ることができる。
図18は本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置における変調制御を説明するための図である。同図の左側には、回転数と変調率の関係が示される。また同図の右側には、変調率が1.0以下のときのインバータ出力電圧の波形と、変調率が1.0を超えるときのインバータ出力電圧の波形とが示される。一般的に、回転数の増加に伴い回転体の負荷トルクは大きくなる。このため、回転数の増加に伴いモータ出力トルクを増加させる必要がある。また、一般的にモータ出力トルクはモータ電流に比例して増加し、モータ電流の増加にはインバータ出力電圧の増加が必要である。よって、変調率を上げてインバータ出力電圧を増加させることで、回転数を増加させることができる。
次に、本実施の形態における回転数制御について説明する。なお、以下の説明では、負荷として電動送風機を想定し、電動送風機の運転域を以下の通り区分する。
(A)低速回転域(低回転数領域):0[rpm]から10万[rpm]
(B)高速回転域(高回転数領域):10万[rpm]以上
なお、上記(A)と上記(B)に挟まれた領域はグレーゾーンであり、用途に応じて、低速回転域に含まれる場合もあれば、高速回転域に含まれる場合もある。
まず、低速回転域での制御について説明する。低速回転域では変調率を1.0以下としてPWM制御される。なお、変調率を1.0以下とすることで、モータ電流を正弦波に制御し、モータの高効率化を図ることができる。なお、低速回転域と高速回転域とで同じキャリア周波数で動作させた場合、キャリア周波数は高速回転域に合わせたキャリア周波数となるため、低速回転域ではPWMパルスが必要以上に多くなる傾向にある。このため、低速回転域ではキャリア周波数を低下させ、スイッチング損失を低下させる手法を用いてもよい。また、回転数に同期させてキャリア周波数を変化させることで、回転数に応じてパルス数が変化しないように制御してもよい。
次に、高速回転域での制御について説明する。高速回転域では、変調率が1.0より大きな値に設定される。変調率を1.0より大きくすることで、インバータ出力電圧を増加させつつ、インバータ内のスイッチング素子が行うスイッチング回数を低減させることで、スイッチング損失の増加を抑えることができる。ここで、変調率が1.0を超えることによって、モータ出力電圧は増加するが、スイッチング回数が低下するため、電流の歪が懸念される。しかしながら、高速回転中においては、モータのリアクタンス成分が大きくなり、モータ電流の変化成分であるdi/dtが小さくなるため、低速回転域に比べて電流歪は小さくなり、波形の歪に対する影響は小さくなる。よって、高速回転域では、変調率を1.0より大きな値に設定し、スイッチングパルス数を低減させる制御を行う。この制御により、スイッチング損失の増加が抑制され、高効率化を図ることができる。
なお、上記の通り、低速回転域と高速回転域の境界は曖昧である。このため、制御部25には、低速回転域と高速回転域との境界を決める第1回転速度が設定され、制御部25は、モータ又は負荷の回転速度が第1回転速度以下の場合には変調率を1.0以下に設定し、モータ又は負荷の回転速度が第1回転速度を超えた場合には1を超える変調率に設定するように制御すればよい。
以上の説明の通り、本実施の形態では、電気掃除機61及びハンドドライヤ90にモータ駆動装置2を適用した構成例を説明したが、モータ駆動装置2は、モータが搭載された電気機器に適用することができる。モータが搭載された電気機器は、焼却炉、粉砕機、乾燥機、集塵機、印刷機械、クリーニング機械、製菓機械、製茶機械、木工機械、プラスチック押出機、ダンボール機械、包装機械、熱風発生機、OA機器、電動送風機などである。電動送風機は、物体輸送用、吸塵用、又は一般送排風用の送風手段である。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。