JPWO2019176276A1 - 液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶素子 - Google Patents
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Abstract
Description
<2> 上記<1>の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
<3> 上記<2>の液晶配向膜を具備する液晶素子。
液晶配向剤は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有する。ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、テトラカルボン酸誘導体に由来する構造単位と、ジアミン化合物に由来する構造単位とを有する。なお、本明細書において「テトラカルボン酸誘導体」とは、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステル及びテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物を含む意味である。本開示の液晶配向剤は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体として、上記式(1)で表される化合物に由来する部分構造を有する重合体(以下、「重合体(A)」ともいう。)を少なくとも一部に含有する。
(ポリアミック酸)
重合体(A)がポリアミック酸の場合、当該ポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸(A)」ともいう。)は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得ることができる。
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸(A)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−8−メチル−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などを;芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−カルボニルジフタル酸無水物などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
ポリアミック酸(A)の合成に際し使用するジアミン化合物は、上記式(1)で表される化合物(以下、「特定ジアミンD1」ともいう。)を少なくとも含む。
(特定ジアミンD1)
上記式(1)において、R1及びR2の1価の炭化水素基としては、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。ここで、本明細書において「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
*−R61−R62−R63−* …(10)
(式(10)中、R61は炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数4〜10の2価の脂環式炭化水素基であり、R63は単結合、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数4〜10の2価の脂環式炭化水素基である。R62は単結合又は炭素数1〜20の2価の有機基である。ただし、R63が単結合の場合、R62は単結合である。)
R61及びR63の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば*−R64−R65−、*−R65−R64−(ただし、R64は置換又は無置換のシクロアルキレン基又は多環式飽和炭化水素基であり、R65は単結合又はアルカンジイル基である。「*」はR62との結合手を表す。)等が挙げられる。これらの具体例としては、例えば1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロへキシレン基、ビシクロ[4.4.0]デカンジイル基、下記式(10−1)又は式(10−2)で表される基等が挙げられる。
ポリアミック酸(A)の合成に際して使用するジアミン化合物は、特定ジアミンD1のみであってもよいが、特定ジアミンD1とともに、特定ジアミンD1以外のジアミン(以下、「その他のジアミン」ともいう。)を使用してもよい。
その他のジアミンの好ましい例としては、剛直な構造により液晶分子を垂直配向又は水平配向させることが可能な基(以下、「配向性基」ともいう。)を有するジアミン化合物(以下、「配向性基含有ジアミン」ともいう。)が挙げられる。配向性基含有ジアミンは、下記式(2)で表される部分構造を有していることが好ましい。
*−L1−R11−R12−R13−R14 …(2)
(式(2)中、L1は、単結合、−O−、−CO−、−COO−*1、−OCO−*1、−NR15−、−NR15−CO−*1、−CO−NR15−*1、炭素数1〜6のアルカンジイル基、−O−R16−*1、又は−R16−O−*1(ただし、R15は水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、R16は炭素数1〜3のアルカンジイル基である。「*1」は、R11との結合手であることを示す。)である。R11及びR13は、それぞれ独立に、単結合、フェニレン基又はシクロアルキレン基であり、R12は、単結合、フェニレン基、シクロアルキレン基、−R17−B1−*2、又は−B1−R17−*2(ただし、R17はフェニレン基又はシクロアルキレン基であり、B1は−COO−*3、−OCO−*3、又は炭素数1〜3のアルカンジイル基である。「*2」は、R13との結合手であることを示し、「*3」は、R17との結合手であることを示す。)である。R14は、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフルオロアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜18のフルオロアルコキシ基、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基、又は、ラジカル重合性基、光開始剤基若しくはシアノ基を有する1価の有機基である。ただし、R11、R12及びR13の全部が単結合の場合、R14は、炭素数4〜18のアルキル基、炭素数4〜18のフルオロアルキル基、炭素数4〜18のアルコキシ基、炭素数4〜18のフルオロアルコキシ基、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基である。「*」は結合手であることを示す。)
上記式(2)で表される部分構造の具体例としては、例えば下記式(2−1)〜式(2−11)のそれぞれで表される部分構造、コレスタニルオキシ基、コレスタニルオキシカルボニル基、コレステリルオキシ基、ラノスタニルオキシ基等が挙げられる。ただし、配向性基はこれらの具体例に限定されるものではない。
で表される化合物等が挙げられる。上記式(E−1)で表される化合物としては、例えば下記式(E−1−1)〜式(E−1−4)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
その他のジアミンの好ましい他の例としては、窒素含有複素環、アミノ基、保護されたアミノ基、アミド基、保護されたアミド基、ウレア基及び保護されたウレア基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の部分構造を有する芳香族ジアミン化合物(以下、「窒素含有ジアミン」ともいう。)が挙げられる。重合体(A)が窒素含有ジアミンに由来する部分構造を有する場合、液晶配向膜の高温高湿耐性の改善効果をより高くでき好適である。
アミノ基、保護されたアミノ基、アミド基、保護されたアミド基、ウレア基及び保護されたウレア基は、好ましくは下記式(N−1)で表される構造を有する。
保護基は、熱により脱離する基であることが好ましく、例えばカルバメート系保護基、アミド系保護基、イミド系保護基、スルホンアミド系保護基等が挙げられる。これらのうち、熱による脱離性が高い点や、脱保護した部分の膜中の残存量を少なくできる点で、tert−ブトキシカルボニル基が好ましい。R20は、好ましくは水素原子、メチル基又はt−ブトキシカルボニル基である。
ポリアミック酸(A)は、上記のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸(A)の合成反応において、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましい。分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸(A)を溶解してなる重合体溶液が得られる。この重合体溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、重合体溶液中に含まれるポリアミック酸(A)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
重合体(A)がポリアミック酸エステルである場合、当該ポリアミック酸エステル(以下、「ポリアミック酸エステル(A)」ともいう。)は、例えば、[I]ポリアミック酸(A)とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミン化合物とを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミン化合物とを反応させる方法、等によって得ることができる。ポリアミック酸エステル(A)は、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。上記[II]及び[III]では、テトラカルボン酸誘導体と、特定ジアミンD1を含むジアミン化合物とを反応させる。なお、ポリアミック酸エステル(A)を溶解してなる反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステル(A)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
重合体(A)がポリイミドである場合、当該ポリイミド(以下、「ポリイミド(A)」ともいう。)は、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸(A)を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリイミド(A)は、その前駆体であるポリアミック酸(A)が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。ポリイミド(A)は、そのイミド化率が20〜99%であることが好ましく、30〜90%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
液晶配向剤は、ラジカル重合性基、光開始剤基、光配向性基及びβ−ヒドロキシエステル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基(R)を有する成分を含有する。当該成分は、重合体(A)であってもよく、重合体(A)とは異なる化合物であってもよい。また、液晶配向剤がこれら両方を含んでいてもよい。得られる液晶配向膜の透過性をより高くすることができる点で、基(R)を有する化合物として重合体(A)とは異なる化合物が液晶配向剤に含有されていることが好ましく、液晶素子の高温高湿耐性をより良好にできる点で、基(R)を有する重合体(A)が液晶配向剤に含有されていることが好ましい。
基(R)のうち、ラジカル重合性基としては、放射線の照射又はラジカルの作用によって重合可能な官能基であればよく、特に限定されない。ラジカル重合性基の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、マレイミド基、ビニルオキシ基、エチニル基等が挙げられる。これらのうち、熱による反応性が高い点で、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、エチニル基又はビニルフェニル基が好ましい。
光開始剤基は、光により重合開始能を生じる部位又は光増感作用を持つ部位であり、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の照射により重合性成分の重合を開始可能な化合物(光開始剤)に由来する構造を有する基である。光開始剤基としては、光照射によってラジカルを発生可能なラジカル重合開始剤に由来する構造を有する基であることが好ましい。具体的には、アセトフェノン構造、オキシムエステル構造、ジベンゾイル構造、ベンゾイン構造、ベンゾフェノン構造、アルキルフェノン構造又はアシルフォスフィンオキサイド構造を有することが好ましい。光開始剤基は、これらの中でも、アルキルフェノン構造又はアセトフェノン構造を有する基であることが好ましい。
光配向性基は、光照射による光異性化反応や光二量化反応、光分解反応、光フリース転位反応によって膜に異方性を付与する官能基である。光配向性基の具体例としては、例えばアゾベンゼン又はその誘導体を基本骨格として含むアゾベンゼン含有基、桂皮酸又はその誘導体を基本骨格として含む桂皮酸構造含有基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含むカルコン含有基、ベンゾフェノン又はその誘導体を基本骨格として含むベンゾフェノン含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含むクマリン含有基、シクロブタン又はその誘導体を基本骨格として含むシクロブタン含有構造、フェニルベンゾエート又はその誘導体を基本骨格として含むフェニルベンゾエート含有構造等が挙げられる。これらのうち、光に対する感度が高い点で、桂皮酸構造含有基が好ましく、例えば、下記式(5)で表される部分構造を有する基等が挙げられる。
β−ヒドロキシエステル基は、エステル基(−COO−)のカルボニル基に対してβ位に水酸基が結合された基である。β−ヒドロキシエステル基は、下記式(6)で表される構造であることが好ましい。
光開始剤基の含有割合は、液晶配向剤に含まれる重合体成分の全モノマー単位量に対して、0.1〜90モル%とすることが好ましく、1〜80モル%とすることがより好ましい。
光配向性基の含有割合は、液晶配向剤に含まれる重合体成分の全モノマー単位量に対して、5〜90モル%とすることが好ましく、10〜80モル%とすることがより好ましい。
β−ヒドロキシエステル基の含有割合は、液晶配向剤に含まれる重合体成分の全モノマー単位量に対して、5〜90モル%とすることが好ましく、10〜80モル%とすることがより好ましい。
重合体(B)の主骨格は特に限定されないが、液晶配向膜の透過性及び高温高湿耐性をより高くできる点で、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン、及び重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位を有する重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。ここで、重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル化合物、共役ジエン系化合物、芳香族ビニル化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。重合体(B)としては、上記のうち、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、ポリオルガノシロキサンであることが特に好ましい。
重合体(B)がポリオルガノシロキサンである場合、当該ポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン(B)」ともいう。)は、(1)エポキシ基を有する加水分解性のシラン化合物(S1)を単独で、又はシラン化合物(S1)とその他の加水分解性のシラン化合物との混合物を加水分解縮合することにより、エポキシ基を側鎖に有するポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサンE」ともいう。)を合成し、次いで、ポリオルガノシロキサンEと、基(R)を有するカルボン酸とを反応させる方法、(2)基(R)を有する加水分解性シラン化合物を含むモノマーを加水分解縮合する方法、等が挙げられる。これらのうち、簡便であって、しかも基(R)の重合体側鎖への導入効率が高い点で、上記(1)の方法によることが好ましい。
液晶配向剤の溶剤成分としては、重合体(A)に対する溶剤の溶解性や液晶配向剤の濡れ広がり性を良好にできるとともに、膜形成時の加熱温度を低温化することが可能な点で、下記に示す溶剤群([X]溶剤及び[Y]溶剤よりなる群)から選ばれる少なくとも一種の溶剤(以下、「特定溶剤」ともいう。)を含むことが好ましい。
溶剤群:
[X]溶剤:下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン。
[Y]溶剤:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ダイアセトンアルコール、及びプロピレングリコールモノブチルエーテル。
(式(3)で表される化合物)
上記式(3)で表される化合物について、R81の炭素数2〜5の1価の炭化水素基は鎖状炭化水素基であることが好ましく、例えば炭素数2〜5のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。また、当該炭化水素基における炭素−炭素結合間に「−O−」を有する1価の基としては、例えば炭素数2〜5のアルコキシアルキル基が挙げられる。
これらの具体例としては、炭素数2〜5のアルキル基として、例えばエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などを;炭素数2〜5のアルケニル基として、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基などを;炭素数2〜5のアルキニル基として、例えばエチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基などを;炭素数2〜5のアルコキシアルキル基として、例えばメトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などを;炭化水素基における炭素−炭素結合間に「−O−」を有する1価の基として、例えばエトキシメチル基、エトキシエチル基等を、それぞれ挙げることができ、これらは直鎖状であっても分岐状であってもよい。R81としては、上記の中でも炭素数2〜5のアルキル基又はアルコキシアルキル基であることが好ましい。
上記式(4)で表される化合物について、R82及びR83の炭素数1〜6の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜6の鎖状炭化水素基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基、炭素数5又は6の芳香族炭化水素基などが挙げられる。また、当該炭化水素基の炭素−炭素結合間に「−O−」を有する1価の基としては、例えば炭素数2〜6のアルコキシアルキル基等が挙げられる。
これらの具体例としては、炭素数1〜6の鎖状炭化水素基として、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などを挙げることができ、これらは直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等を;芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基等を;炭素数2〜6のアルコキシアルキル基としては、例えば上記式(3)のR81の説明で挙げた基等を;それぞれ挙げることができる。なお、式(4)におけるR82及びR83は、互いに同じでも異なっていてもよい。また、R82及びR83は、互いに結合することにより、R82及びR83が結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R82,R83が互いに結合して形成される環としては、例えばピロリジン環、ピペリジン環等を挙げることができ、これらの環にはメチル基等の1価の鎖状炭化水素基が結合されていてもよい。
R82及びR83として好ましくは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子又はメチル基である。
R84の炭素数1〜6のアルキル基としては、上記R82及びR83の炭素数1〜6のアルキル基の説明で例示した基を挙げることができる。好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基である。
液晶配向剤の調製に際し、特定溶剤としては、[X]溶剤及び[Y]溶剤のいずれかのみを使用してもよいが、良好な塗膜均一性と透過性との両立を図ることができる点で、[X]溶剤及び[Y]溶剤のうち[X]溶剤のみを使用するか、又は[X]溶剤の少なくとも一種と、[Y]溶剤の少なくとも一種とが含有されていることが好ましく、[X]溶剤の少なくとも一種と、[Y]溶剤の少なくとも一種とが含有されていることが特に好ましい。
第2溶剤として、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルアセテート、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート等を、それぞれ挙げることができる。なお、[Z]溶剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
液晶配向剤は、重合体成分及び溶剤成分のほか、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。液晶配向剤は、その他の成分として、環状エーテル基、環状カーボネート基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、オキサゾリン基、β−ヒドロキシアルキルアミド基、メルドラム酸基、メチロール基及びアルキルメチロール基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基(以下、「官能基D」ともいう。)を分子内に有する化合物(C)をさらに含有することが好ましい。液晶配向剤中に化合物(C)を含有することにより、得られる液晶配向膜の高温高湿耐性(ひいては、液晶素子の高温高湿耐性)をより向上させることができる点で好ましい。
イソシアネート基又はブロックイソシアネート基を有する化合物として、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等を;オキサゾリン基を有する化合物として、例えば2,2'−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)シクロヘキサン、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、1,3−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン等を;β−ヒドロキシアルキルアミド基を有する化合物として、例えば商品名「Primid XL−552」(エムスケミー社製)等を;メルドラム酸基を有する化合物として、例えばメルドラム酸構造を2〜4個有する化合物等を;メチロール基又はアルキルメチロール基を有する化合物として、例えばトリメチロールプロパン、ビス[2−エチル−2,2−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス[2−エチル−1,3−プロパンジオール]、2,2−ビス(4−ヒドロキシメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシメチルフェニル)プロパン、2,4,6−トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン等を、それぞれ挙げることができる。
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶素子における液晶の動作モードは特に限定されず、例えばTN型、STN型、VA型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS(In-Plane Switching)型、FFS(Fringe Field Switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、PSA型(Polymer Sustained Alignment)など種々のモードに適用することができる。これらのうち、本開示の液晶配向剤は、PSA型の液晶素子及び光配向法を用いた垂直配向型(光垂直型)の液晶素子の製造用として特に好ましく適用することができる。
<工程1:塗膜の形成>
まず、基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2O3−SnO2)からなるITO膜などを用いることができる。
TN型、STN型又はVA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を用いる。一方、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に対し、液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、基板上に形成した塗膜の表面をコットン等で擦るラビング処理、又は塗膜に光照射を行って液晶配向能を付与する光配向処理を用いることが好ましい。一方、垂直配向型の液晶素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用してもよく、液晶配向能を更に高めるために該塗膜に対し配向処理を施してもよい。
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、液晶配向膜が対向するように間隙を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤により貼り合わせ、基板表面とシール剤で囲まれたセルギャップ内に液晶を注入充填し注入孔を封止する方法、ODF方式による方法等が挙げられる。シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましい。
[重合体の重量平均分子量Mw]
重量平均分子量Mwは、以下の条件におけるGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン、又はリチウムブロミド及びリン酸含有のN,N−ジメチルホルムアミド溶液
温度:40℃
圧力:68kgf/cm2
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温で1H−NMRを測定した。得られた1H−NMRスペクトルから、下記数式(1)によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1−(A1/(A2×α)))×100 …(1)
(数式(1)中、A1は化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、A2はその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[エポキシ当量]
エポキシ当量は、JIS C 2105に記載の塩酸−メチルエチルケトン法により測定した。
1.ポリアミック酸の合成
[合成例1]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物100モル部、ジアミンとしてコレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン20モル部、化合物(d−4)30モル部、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル50モル部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を30質量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度20質量%の溶液として測定した溶液粘度は500mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより重合体(PAA−1)を得た。
[合成例2〜18、20、21]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を下記表1に記載のとおり変更した以外は合成例1と同様の操作を行い、ポリアミック酸(重合体(PAA−2)〜(PAA−18)、(PAA−20)、(PAA−21))を得た。
[合成例19]
化合物(t−4)100モル部を塩化チオニルに加え、N,N−ジメチルホルムアミドを触媒量添加し、その後80℃にて1時間攪拌した。なお、化合物(t−4)は、化合物(t−4−1)〜化合物(t−1−4)の混合物である。その後、反応液を濃縮し、残留物をγ-ブチロラクトン(GBL)に溶解した(この溶液を反応液Aとした。)。別途、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン20モル部、化合物(d−4)30モル部、化合物(d−9)30モル部、及び化合物(d−14)20モル部を、ピリジン及びγ−ブチロラクトン(GBL)(ピリジン:GBL=8.7:91.3(質量比))に加えて溶解させ、これを0℃に冷却した。次いで、この溶液へ反応液Aを1時間かけてゆっくりと滴下し、滴下終了後、室温にて4時間撹拌した。得られたポリアミック酸エステルの溶液を800mlの純水に撹拌しながら滴下し、析出した沈殿物をろ過した。続いて、イソプロピルアルコールで5回洗浄し、乾燥することでポリマー粉末(ポリアミック酸エステル)を得た。得られた重合体(PAE−1)の重量平均分子量Mwは50,000であった。
[合成例22]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物100モル部、ジアミンとしてコレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン20モル部、化合物(d−10)50モル部、及び化合物(d−11)30モル部をNMPに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を30質量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度20質量%の溶液として測定した溶液粘度は500mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMPを追加してポリアミック酸濃度7質量%の溶液とし、ピリジン及び無水酢酸を添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約75%のポリイミド(重合体(PI−1))を26質量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度15質量%の溶液として測定した溶液粘度は450mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより重合体(PI−1)を得た。
[合成例23]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を下記表1に記載のとおり変更した以外は合成例22と同様の操作を行い、ポリイミド(重合体(PI−2))を得た。
[合成例24]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により、洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(重合体(ESSQ−1))を粘調な透明液体として得た。重合体(ESSQ−1)について、1H−NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。得られた重合体(ESSQ−1)の重量平均分子量Mwは3,500、エポキシ当量は180g/モルであった。
[合成例25〜27]
使用する加水分解性シラン化合物の種類及び量を下記表2に記載のとおり変更した以外は合成例24と同様の操作を行い、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(重合体(ESSQ−2)〜(ESSQ−4))を得た。
[合成例28]
200mLの三口フラスコに、重合体(ESSQ−1)を10.0g、溶媒としてメチルイソブチルケトン30.28g、変性成分(配向性基を有するカルボン酸)として化合物(e−2)を、重合体(ESSQ−1)が有するエポキシ基の全量に対して25モル%に相当する量、及び触媒としてUCAT 18X(商品名、サンアプロ(株)製)0.10gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た溶液を3回水洗し、有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶剤を留去することにより、ポリオルガノシロキサン(B)である重合体(PSQ−1)を得た。得られた重合体の重量平均分子量Mwは8000であった。
[合成例29〜31]
使用するエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン及び変性成分の種類及び量を下記表3に記載のとおり変更した以外は合成例28と同様の操作を行い、ポリオルガノシロキサン(B)である重合体(PSQ−2)〜(PSQ−4)をそれぞれ得た。なお、表3中、変性成分の括弧内の数値は、合成に使用したエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンが有するエポキシ基の全量に対する各変性成分の使用割合(モル%)を示す。
1.液晶配向剤の調製
上記合成例16で得た重合体(PAA−16)に、溶剤としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加えて、固形分濃度4.0質量%、溶剤の混合比がNMP:BC=42:58(質量比)の溶液とした。この溶液を十分に撹拌した後、孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(S−1)を調製した。
2.液晶組成物の調製
ネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)10gに対し、下記式(L1−1) で表される液晶性化合物を5質量%、及び下記式(L2−1)で表される光重合性化合物 を0.3質量%添加して混合することにより液晶組成物LC1を得た。
上記1.で調製した液晶配向剤(S−1)を、一対(2枚)のITO膜からなる透明電極付きガラス基板にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.1mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで、100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。なお、このラビング処理は、液晶の倒れ込みを制御し、配向分割を簡易な方法で行う目的で行った弱いラビング処理である。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙に液晶組成物LC1を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、さらに液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。
次いで、得られた液晶セルに対し、電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて、紫外線を50,000J/m2の照射量にて照射した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。さらに、基板の外側両面に、偏光板を2枚の偏光板の偏光方向が互いに直交するように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
上記で調製した液晶配向剤(S−1)を、スピンコーターを用いて石英基板上に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、230℃のクリーンオーブン内で窒素下にて30分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.08μmの塗膜を形成した。この塗膜を形成した石英基板につき、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製、品名「V−670」)を用いて、塗膜を有さない同種の石英基板をリファレンスとして紫外・可視光領域の吸収スペクトルを測定した。波長400nmにおける透過率が98.0%以上であった場合を膜透過性「極めて良好」、97.0%以上98.0%未満であった場合を「良好」、96.0%以上97.0%未満であった場合を「可」、96.0%未満であった場合を「不良」とした。液晶配向剤(S−1)を用いて形成した膜の透過率は98.0%であり、「極めて良好」であった。
製造した直後の液晶表示素子に、60℃の温度下において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(初期電圧保持率VH1)を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製の品名「VHR−1」を使用した。次いで、初期電圧保持率VH1を測定した後の液晶表示素子を、85℃、湿度85%に設定されたオーブンで300時間保管した後、初期電圧保持率VH1と同様にして電圧保持率を測定した。この値をストレス付与後電圧保持率VH2とした。下記数式(2)により求めた電圧保持率の減少割合をΔVHR(%)とし、ΔVHRにより高温高湿耐性を評価した。
ΔVHR=(VH2/VH1)×100 …(2)
評価は、ΔVHRが80%以上であった場合を「極めて良好」、70%以上80%未満であった場合を「良好」、60%以上70%未満であった場合を「可」、60%未満であった場合を「不良」とした。その結果、この実施例1ではΔVHR=80%であり、「極めて良好」の評価であった。
液晶配向剤の組成を下記表4及び表5のとおりに変更した以外は、上記実施例1の1.と同様にして液晶配向剤を調製した。また、得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様にしてPSA型液晶表示素子を製造するとともに、透過率及び高温高湿耐性の評価を行った。その結果を下記表4及び表5に示した。なお、実施例2〜32及び比較例1〜4では、複数種類の重合体をブレンドして液晶配向剤を調製した。実施例19〜22では、液晶配向剤に架橋剤を配合した。
<溶剤>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
NEP:N−エチル−2−ピロリドン
DMI:1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
BC:ブチルセロソルブ
DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル
一方、特定ジアミンD1に由来する構造単位及び基(R)を有する成分を含まない液晶配向剤を用いた比較例1は、配向膜の透過率及び高温高湿耐性が実施例よりも低かった。また、特定ジアミンD1に由来する構造単位及び基(R)を有する成分のうち少なくともいずれかを含まない比較例2〜4は、配向膜の透過率及び高温高湿耐性のいずれかが実施例よりも劣っていた。
Claims (10)
- ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、かつ下記式(1)で表される化合物に由来する部分構造を有する重合体(A)を含有し、
前記重合体(A)の分子内及び前記重合体(A)とは異なる分子内のうち少なくともいずれかに、ラジカル重合性基、光開始剤基、光配向性基及びβ−ヒドロキシエステル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基(R)を有する、液晶配向剤。
- 前記X1は、芳香環を有さない2価の基である、請求項1に記載の液晶配向剤。
- 前記重合体(A)は、窒素含有複素環(ただし、ポリイミドが有するイミド環を除く。)、アミノ基、保護されたアミノ基、アミド基、保護されたアミド基、ウレア基及び保護されたウレア基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の部分構造を有する、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
- 前記基(R)を有し、かつ上記式(1)で表される化合物に由来する部分構造を有さない重合体(B)をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- 前記重合体(A)は、シクロブタン環、シクロペンタン環又はシクロヘキサン環を有するテトラカルボン酸誘導体に由来する部分構造を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- 前記重合体(A)は、下記式(2)で表される部分構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
*−L1−R11−R12−R13−R14 …(2)
(式(2)中、L1は、単結合、−O−、−CO−、−COO−*1、−OCO−*1、−NR15−、−NR15−CO−*1、−CO−NR15−*1、炭素数1〜6のアルカンジイル基、−O−R16−*1、又は−R16−O−*1(ただし、R15は水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、R16は炭素数1〜3のアルカンジイル基である。「*1」は、R11との結合手であることを示す。)である。R11及びR13は、それぞれ独立に、単結合、フェニレン基又はシクロアルキレン基であり、R12は、単結合、フェニレン基、シクロアルキレン基、−R17−B1−*2、又は−B1−R17−*2(ただし、R17はフェニレン基又はシクロアルキレン基であり、B1は−COO−*3、−OCO−*3、又は炭素数1〜3のアルカンジイル基である。「*2」は、R13との結合手であることを示し、「*3」は、R17との結合手であることを示す。)である。R14は、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフルオロアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜18のフルオロアルコキシ基、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基、又は、ラジカル重合性基、光開始剤基若しくはシアノ基を有する1価の有機基である。ただし、R11、R12及びR13の全部が単結合の場合、R14は、炭素数4〜18のアルキル基、炭素数4〜18のフルオロアルキル基、炭素数4〜18のアルコキシ基、炭素数4〜18のフルオロアルコキシ基、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基である。「*」は結合手であることを示す。) - 環状エーテル基、環状カーボネート基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、オキサゾリン基、β−ヒドロキシアルキルアミド基、メルドラム酸基、メチロール基及びアルキルメチロール基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を分子内に有する化合物(C)をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- 下記に示す[X]溶剤及び[Y]溶剤よりなる溶剤群から選ばれる少なくとも一種の溶剤を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
溶剤群:
[X]溶剤:下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン。
[Y]溶剤:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ダイアセトンアルコール、及びプロピレングリコールモノブチルエーテル。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
- 請求項9に記載の液晶配向膜を具備する液晶素子。
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