図1は本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100の側面図である。ショベル100の下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。
ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例としての掘削アタッチメントを構成している。そして、ブーム4はブームシリンダ7により駆動され、アーム5はアームシリンダ8により駆動され、バケット6はバケットシリンダ9により駆動される。
具体的には、ブーム操作レバーの傾倒に応じてブームシリンダ7が駆動され、アーム操作レバーの傾倒に応じてアームシリンダ8が駆動され、バケット操作レバーの傾倒に応じてバケットシリンダ9が駆動される。同様に、右走行レバーの傾倒に応じて右側走行用油圧モータ1R(図2参照。)が駆動され、左走行レバーの傾倒に応じて左側走行用油圧モータ1L(図2参照。)が駆動され、旋回操作レバーの傾倒に応じて旋回用油圧モータ2A(図2参照。)が駆動される。このように、各レバーの操作に応じて対応するアクチュエータが駆動されることで、操作者の手動操作によるショベル100の制御(以下、「手動制御」とする。)が実行される。
また、ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度(以下、「ブーム角度」とする。)を検出できる。ブーム角度は、例えば、ブーム4を最も下げたときに最小角度となり、ブーム4を上げるにつれて大きくなる。
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度(以下、「アーム角度」とする。)を検出できる。アーム角度は、例えば、アーム5を最も閉じたときに最小角度となり、アーム5を開くにつれて大きくなる。
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度(以下、「バケット角度」とする。)を検出できる。バケット角度は、例えば、バケット6を最も閉じたときに最小角度となり、バケット6を開くにつれて大きくなる。
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3はそれぞれ、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、慣性計測ユニット、ジャイロセンサ、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせ等であってもよい。
上部旋回体3には運転室であるキャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。上部旋回体3には、コントローラ30、表示装置40、入力装置42、音出力装置43、記憶装置47、緊急停止スイッチ48、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、撮像装置S6、通信装置T1及び測位装置P1が取り付けられている。
コントローラ30は、ショベル100の駆動制御を行う制御装置として機能するように構成されている。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM及びROM等を含むコンピュータで構成されている。コントローラ30によって提供される各機能は、例えば、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。各機能は、例えば、操作者によるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、操作者によるショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能を含む。コントローラ30に含まれるマシンガイダンス装置50は、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能を実行できるように構成されている。
表示装置40は様々な情報を表示するように構成されている。表示装置40は、CAN等の通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよく、専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
入力装置42は、操作者が各種情報をコントローラ30に入力できるように構成されている。入力装置42は、例えば、キャビン10内に設置されたタッチパネル、ノブスイッチ及びメンブレンスイッチ等の少なくとも1つを含む。
音出力装置43は、音情報を出力するように構成されている。音出力装置43は、例えば、コントローラ30に接続される車載スピーカであってもよく、ブザー等の警報器であってもよい。本実施形態では、音出力装置43は、コントローラ30からの指令に応じて様々な音情報を出力する。
記憶装置47は、様々な情報を記憶するように構成されている。記憶装置47は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶装置47は、ショベル100の動作中に様々な機器が出力する情報を記憶してもよく、ショベル100の動作が開始される前に様々な機器を介して取得される情報を記憶してもよい。記憶装置47は、例えば、通信装置T1等を介して取得される目標施工面に関するデータを記憶してもよい。目標施工面は、ショベル100の操作者が設定したものであってもよく、施工管理者等が設定したものであってもよい。
緊急停止スイッチ48は、ショベル100の動きを停止させるためのスイッチとして機能するように構成されている。緊急停止スイッチ48は、例えば、キャビン10内で運転席に着座する操作者が操作できる位置に設置されたスイッチである。本実施形態では、緊急停止スイッチ48は、キャビン10内で操作者の足下に設置されている足踏みスイッチである。緊急停止スイッチ48は、操作者によって操作されると、エンジン制御ユニットに対して指令を出力し、エンジン11を停止させる。なお、緊急停止スイッチ48は、運転席の周囲に設置されている手押しスイッチであってもよい。
機体傾斜センサS4は上部旋回体3の傾斜を検出するように構成されている。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、仮想水平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出する加速度センサである。機体傾斜センサS4は、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせであってもよく、慣性計測ユニット等であってもよい。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角(ロール角)及び左右軸回りの傾斜角(ピッチ角)を検出する。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、ショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点で互いに直交する。
撮像装置S6はショベル100の周辺の画像を取得するように構成されている。本実施形態では、撮像装置S6は、ショベル100の前方の空間を撮像する前カメラS6F、ショベル100の左方の空間を撮像する左カメラS6L、ショベル100の右方の空間を撮像する右カメラS6R、及び、ショベル100の後方の空間を撮像する後カメラS6Bを含む。
撮像装置S6は、例えば、CCD又はCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮影した画像を表示装置40に出力する。撮像装置S6は、空間認識装置S7として機能するように構成されていてもよい。空間認識装置S7は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を検知できるように構成される。物体は、例えば、人、動物、ショベル、機械又は建屋等の少なくとも1つである。空間認識装置S7は、空間認識装置S7又はショベル100と空間認識装置S7が検知した物体との間の距離を算出できるように構成されていてもよい。空間認識装置S7は、超音波センサ、ミリ波レーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ、LIDAR、距離画像センサ又は赤外線センサ等であってもよい。
前カメラS6Fは、例えば、キャビン10の天井、すなわちキャビン10の内部に取り付けられている。但し、前カメラS6Fは、キャビン10の屋根、すなわちキャビン10の外部に取り付けられていてもよい。左カメラS6Lは、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、右カメラS6Rは、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、後カメラS6Bは、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
通信装置T1は、ショベル100の外部にある外部機器との通信を制御するように構成されている。本実施形態では、通信装置T1は、衛星通信網、携帯電話通信網、近距離無線通信網及びインターネット網等の少なくとも1つを介した外部機器との通信を制御する。
測位装置P1は、上部旋回体3の位置を測定するように構成されている。測位装置P1は、上部旋回体3の向きを測定できるように構成されていてもよい。測位装置P1は、例えばGNSSコンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、検出値をコントローラ30に対して出力する。そのため、測位装置P1は、上部旋回体3の向きを検出する向き検出装置としても機能し得る。向き検出装置は、上部旋回体3に取り付けられた方位センサであってもよい。また、上部旋回体3の位置及び向きは、旋回角速度センサS5によって測定されるように構成されていてもよい。
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出するように構成されている。旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角度を検出或いは算出できるように構成されていてもよい。本実施形態では、旋回角速度センサS5は、ジャイロセンサである。旋回角速度センサS5は、レゾルバ、ロータリエンコーダ又は慣性計測ユニット等であってもよい。
図2は、ショベル100の基本システムの構成例を示すブロック図であり、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御ラインをそれぞれ二重線、実線、破線及び点線で示している。
ショベル100の基本システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、コントローラ30、比例弁31及びシャトル弁32等を含む。
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給するように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御するように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。コントローラ30は、例えば、吐出圧センサ28及び操作圧センサ29等の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26及び比例弁31を含む油圧制御機器に作動油を供給するように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。この場合、パイロットポンプ15が担っていた機能は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、コントロールバルブ17に作動油を供給する機能とは別に、絞り等により作動油の圧力を低下させた後で操作装置26及び比例弁31等に作動油を供給する機能を備えていてもよい。
コントロールバルブ17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、制御弁171〜176を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171〜176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁171〜176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R及び旋回用油圧モータ2Aを含む。旋回用油圧モータ2Aは、電動アクチュエータとしての旋回用電動発電機であってもよい。
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも一方を含む。本実施形態では、操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、原則として、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。操作装置26のうちの少なくとも1つは、パイロットライン及びシャトル弁32を介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できるように構成されている。
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出するように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
操作圧センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出するように構成されている。本実施形態では、操作圧センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値を操作データとしてコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、操作圧センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
比例弁31は、パイロットポンプ15とシャトル弁32とを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する指令に応じて動作する電磁弁である。そして、比例弁31は、マシンコントロール用制御弁として機能する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31及びシャトル弁32を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。
シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有するように構成されている。2つの入口ポートのうちの一方は操作装置26に接続され、他方は比例弁31に接続されている。出口ポートは、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに接続されている。そのため、シャトル弁32は、操作装置26が生成するパイロット圧と比例弁31が生成するパイロット圧のうちの高い方を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。
次に、コントローラ30に含まれているマシンガイダンス装置50について説明する。マシンガイダンス装置50は、例えば、マシンガイダンス機能を実行するように構成されている。本実施形態では、マシンガイダンス装置50は、例えば、目標施工面とアタッチメントの作業部位との間の距離等の作業情報を操作者に伝える。目標施工面に関するデータは、例えば、記憶装置47に予め記憶されている。そして、目標施工面に関するデータは、例えば、基準座標系で表現されている。基準座標系は、例えば、世界測地系である。操作者は、施工現場の任意の点を基準点として定め、目標施工面上の各点と基準点との相対的な位置関係により目標施工面を設定してもよい。アタッチメントの作業部位は、例えば、バケット6の爪先又はバケット6の背面等である。マシンガイダンス装置50は、表示装置40及び音出力装置43等の少なくとも1つを介して作業情報を操作者に伝えることでショベル100の操作をガイドする。
マシンガイダンス装置50は、操作者によるショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能を実行してもよい。例えば、マシンガイダンス装置50は、操作者が手動で掘削操作を行っているときに、目標施工面とバケット6の先端位置との間の距離が所定値で維持されるようにブーム4、アーム5及びバケット6の少なくとも1つを自動的に動作させてもよい。
本実施形態では、マシンガイダンス装置50は、コントローラ30に組み込まれているが、コントローラ30とは別に設けられた制御装置であってもよい。この場合、マシンガイダンス装置50は、例えば、コントローラ30と同様、CPU、RAM及びROM等を含むコンピュータで構成される。そして、マシンガイダンス装置50によって提供される各機能は、ROM等に格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。また、マシンガイダンス装置50とコントローラ30とはCAN等の通信ネットワークを通じて互いに通信可能に接続される。
具体的には、マシンガイダンス装置50は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、撮像装置S6、測位装置P1、通信装置T1及び入力装置42等の少なくとも1つから情報を取得する。そして、マシンガイダンス装置50は、例えば、取得した情報に基づいてバケット6と目標施工面との間の距離を算出し、音及び光(画像表示)の少なくとも一方により、バケット6と目標施工面との間の距離の大きさをショベル100の操作者に伝えるようにする。
また、マシンガイダンス装置50は、手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能を実行可能とするため、位置算出部51、距離算出部52、情報伝達部53及び自動制御部54を有する。
位置算出部51は、対象の位置を算出するように構成されている。本実施形態では、位置算出部51は、アタッチメントの作業部位の基準座標系における座標点を算出する。具体的には、位置算出部51は、ブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれの回動角度からバケット6の爪先の座標点を算出する。位置算出部51は、バケット6の爪先の中央の座標点だけでなく、バケット6の爪先の左端の座標点、及び、バケット6の爪先の右端の座標点を算出してもよい。この場合、機体傾斜センサS4の出力が利用されてもよい。
距離算出部52は、2つの対象間の距離を算出するように構成されている。本実施形態では、距離算出部52は、バケット6の爪先と目標施工面との間の鉛直距離を算出する。距離算出部52は、ショベル100が目標施工面に正対しているか否かをマシンガイダンス装置50が判定できるよう、バケット6の爪先の左端及び右端のそれぞれの座標点と目標施工面との間の距離(例えば鉛直距離)を算出してもよい。
情報伝達部53は、様々な情報をショベル100の操作者に伝えるように構成されている。本実施形態では、情報伝達部53は、距離算出部52が算出した距離の大きさをショベル100の操作者に伝える。具体的には、情報伝達部53は、視覚情報及び聴覚情報を用いて、バケット6の爪先と目標施工面との間の鉛直距離の大きさをショベル100の操作者に伝える。
例えば、情報伝達部53は、音出力装置43による断続音を用いて、バケット6の爪先と目標施工面との間の鉛直距離の大きさを操作者に伝えてもよい。この場合、情報伝達部53は、鉛直距離が小さくなるほど、断続音の間隔を短くしてもよい。情報伝達部53は、連続音を用いてもよく、音の高低又は強弱等を変化させて鉛直距離の大きさの違いを表すようにしてもよい。また、情報伝達部53は、バケット6の爪先が目標施工面よりも低い位置になった場合には警報を発してもよい。警報は、例えば、断続音より顕著に大きい連続音である。
情報伝達部53は、バケット6の爪先と目標施工面との間の鉛直距離の大きさを作業情報として表示装置40に表示させてもよい。表示装置40は、例えば、撮像装置S6から受信した画像データと共に、情報伝達部53から受信した作業情報を画面に表示する。情報伝達部53は、例えば、アナログメータの画像又はバーグラフインジケータの画像等を用いて鉛直距離の大きさを操作者に伝えるようにしてもよい。
自動制御部54は、アクチュエータを自動的に動作させることで操作者によるショベル100の手動操作を自動的に支援するように構成されている。例えば、自動制御部54は、操作者が手動でアーム閉じ操作を行っている場合に、目標施工面とバケット6の爪先との間の距離が所定値で維持されるようにブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自動的に伸縮させてもよい。この場合、操作者は、例えば、アーム操作レバーを閉じ方向に操作するだけで、目標施工面とバケット6の爪先との間の距離を維持しながら、アーム5を閉じることができる。このような自動制御は、入力装置42の1つである所定のスイッチが押されたときに実行されるように構成されていてもよい。すなわち、自動制御部54は、所定のスイッチが押されたときに、ショベル100の動作モードを手動制御モードから自動制御モードに切り換えてもよい。手動制御モードは、手動制御が実行される動作モードを意味し、自動制御モードは、自動制御が実行される動作モードを意味する。所定のスイッチは、例えば、マシンコントロールスイッチ(以下、「MCスイッチ42A」とする。)であり、押しボタンスイッチとして操作レバーの把持部に配置されていてもよい。この場合、操作者は、MCスイッチ42Aをもう一度押すことで、ショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードに切り換えてもよく、MCスイッチ42Aとは別のスイッチであるマシンコントロール停止スイッチ(以下、「MC停止スイッチ42B」とする。)を押すことでショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードに切り換えてもよい。MC停止スイッチ42Bは、MCスイッチ42Aに隣接して配置されていてもよく、別の操作レバーの把持部に配置されていてもよい。或いは、MC停止スイッチ42Bは省略されてもよい。
或いは、このような自動制御は、MCスイッチ42Aが押されているときに実行されるように構成されていてもよい。この場合、操作者は、例えば、アーム操作レバーの把持部にあるMCスイッチ42Aを押しながらアーム操作レバーをアーム閉じ方向に操作するだけで、目標施工面とバケット6の爪先との間の距離を維持しながらアーム5を閉じることができる。アームシリンダ8によるアーム閉じ動作に対応してブームシリンダ7及びバケットシリンダ9が自動的に追従して動くためである。また、操作者は、MCスイッチ42Aから指を離すだけで自動制御を中止させることができる。以下では、目標施工面とバケット6の爪先との間の距離を維持しながら掘削アタッチメントを自動的に動作させる制御を自動制御(マシンコントロール機能)の一つである「自動掘削制御」と称する。
自動制御部54は、MCスイッチ42A等の所定のスイッチが押されたときに、上部旋回体3を目標施工面に正対させるべく旋回用油圧モータ2Aを自動的に回転させてもよい。この場合、操作者は、所定のスイッチを押すだけで、若しくは、所定のスイッチを押した状態で旋回操作レバーを操作するだけで、上部旋回体3を目標施工面に正対させることができる。或いは、操作者は、所定のスイッチを押すだけで、上部旋回体3を目標施工面に正対させ、且つ、マシンコントロール機能を開始させること、すなわち、ショベル100の状態を、自動制御を実行可能な状態にすることができる。以下では、上部旋回体3を目標施工面に正対させる制御を自動制御(マシンコントロール機能)の一つである「自動正対制御」と称する。自動正対制御では、マシンガイダンス装置50は、例えば、バケット6の爪先の左端の座標点と目標施工面との間の左端鉛直距離と、バケット6の爪先の右端の座標点と目標施工面との間の右端鉛直距離とが等しくなった場合に、ショベル100が目標施工面に正対していると判定する。但し、マシンガイダンス装置50は、左端鉛直距離と右端鉛直距離とが等しくなった場合ではなく、すなわち左端鉛直距離と右端鉛直距離との差がゼロになった場合ではなく、その差が所定値以下になった場合に、ショベル100が目標施工面に正対していると判定してもよい。
自動制御部54は、MCスイッチ42A等の所定のスイッチが押されたときに、ブーム上げ旋回又はブーム下げ旋回を自動的に実行するように構成されていてもよい。この場合、操作者は、所定のスイッチを押すだけで、若しくは、所定のスイッチを押した状態で旋回操作レバーを操作するだけで、ブーム上げ旋回又はブーム下げ旋回を開始させることができる。以下では、ブーム上げ旋回又はブーム下げ旋回を自動的に開始させる制御を自動制御(マシンコントロール機能)の一つである「自動複合旋回制御」と称する。
本実施形態では、自動制御部54は、各アクチュエータに対応する制御弁に作用するパイロット圧を個別に且つ自動的に調節することで各アクチュエータを個別に且つ自動的に動作させることができる。例えば、自動正対制御では、自動制御部54は、左端鉛直距離と右端鉛直距離との差に基づいて旋回用油圧モータ2Aを動作させてもよい。具体的には、自動制御部54は、所定のスイッチが押された状態で旋回操作レバーが操作されると、上部旋回体3を目標施工面に正対させる方向に旋回操作レバーが操作されたか否かを判定する。例えば、バケット6の爪先と目標施工面(上り法面)との間の鉛直距離が大きくなる方向に上部旋回体3を旋回させるように旋回操作レバーが操作された場合、自動制御部54は、自動正対制御を実行しない。一方で、バケット6の爪先と目標施工面(上り法面)との間の鉛直距離が小さくなる方向に上部旋回体3を旋回させるように旋回操作レバーが操作された場合、自動制御部54は、自動正対制御を実行する。その結果、左端鉛直距離と右端鉛直距離との差が小さくなるように旋回用油圧モータ2Aを動作させることができる。その後、自動制御部54は、その差が所定値以下或いはゼロになると、旋回用油圧モータ2Aを停止させる。或いは、自動制御部54は、その差が所定値以下或いはゼロとなる旋回角度を目標角度として設定し、その目標角度と現在の旋回角度(検出値)との角度差がゼロになるように旋回角度制御を行ってもよい。この場合、旋回角度は、例えば、所定の基準方向に関する上部旋回体3の前後軸の角度である。
自動制御部54は、所定条件が満たされた場合に自動制御を停止させるように構成されていてもよい。「所定条件が満たされた場合」は、例えば、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示す場合」を含んでいてもよい。以下では、所定条件が満たされた場合に自動制御を停止させる機能を「非常停止機能」と称する。
「ショベル100の動きに関する情報」は、例えば、「操作装置26に対する操作に関する情報」である。自動制御部54は、例えば、操作装置26が急激に操作された場合に、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示している」と判定するように構成されていてもよい。或いは、「ショベル100の動きに関する情報」は、「上部旋回体3に搭載される旋回操作レバーに対する操作に関する情報」であってもよい。この場合、自動制御部54は、例えば、自動制御としての自動正対制御又は自動複合旋回制御によって実行される旋回とは逆の方向に上部旋回体3を旋回させる操作が行われた場合に、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示している」と判定するように構成されていてもよい。そして、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示している」と判定した場合、自動制御部54は、自動制御を停止させるように構成されていてもよい。
「所定条件が満たされた場合」は、例えば、「上部旋回体3の傾斜が所定の状態となった場合」等、「ショベル100の不安定さが増大した場合」を含んでいてもよい。「上部旋回体3の傾斜が所定の状態となった場合」は、例えば、「上部旋回体3のピッチ角が所定角度となった場合」、「ピッチ角の変化速度(変化率)の絶対値が所定値以上となった場合」、及び、「ピッチ角の変化量が所定値以上となった場合」等を含む。ロール角についても同様である。この場合、自動制御部54は、機体傾斜センサS4の出力に基づいて自動制御を停止させるように構成されていてもよい。具体的には、自動制御部54は、機体傾斜センサS4の出力に基づいて上部旋回体3のピッチ角が所定角度となったことを検出した場合に、自動制御を停止させ、ショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードへ切り換えてもよい。
また、「所定条件が満たされた場合」は、例えば、「操作者の足下に設置された足踏みスイッチである緊急停止スイッチ48が踏み込まれた場合」を含んでいてもよい。
次に図3を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。図3は、図1のショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す。図3は、図2と同様に、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御ラインを、それぞれ二重線、実線、破線及び点線で示している。
油圧システムは、エンジン11によって駆動される左メインポンプ14Lから、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、且つ、エンジン11によって駆動される右メインポンプ14Rから右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させている。左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rは、図2のメインポンプ14に対応する。
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。制御弁175L及び175Rは、図2の制御弁175に対応する。制御弁176L及び176Rは、図2の制御弁176に対応する。
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左側走行用油圧モータ1Lへ供給し、且つ、左側走行用油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右側走行用油圧モータ1Rへ供給し、且つ、右側走行用油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。右レギュレータ13Rは、右メインポンプ14Rの吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、右レギュレータ13Rは、例えば、右メインポンプ14Rの吐出圧に応じて右メインポンプ14Rの斜板傾転角を調節することによって、右メインポンプ14Rの吐出量を制御する。左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rは、図2のレギュレータ13に対応する。左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
左吐出圧センサ28Lは、吐出圧センサ28の一例であり、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。右吐出圧センサ28Rについても同様である。
ここで、図3の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御について説明する。
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。右センターバイパス管路40Rには、最も下流にある制御弁176Rと作動油タンクとの間に右絞り18Rが配置されている。右メインポンプ14Rが吐出した作動油の流れは、右絞り18Rで制限される。そして、右絞り18Rは、右レギュレータ13Rを制御するための制御圧を発生させる。右制御圧センサ19Rは、制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
コントローラ30は、制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
具体的には、図3で示されるように、ショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。右メインポンプ14Rが吐出する作動油についても同様である。
上述のような構成により、図3の油圧システムは、待機状態においては、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rのそれぞれにおける無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油が左センターバイパス管路40Lで発生させるポンピングロス、及び、右メインポンプ14Rが吐出する作動油が右センターバイパス管路40Rで発生させるポンピングロスを含む。また、図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rのそれぞれから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに供給できる。
次に、アクチュエータを自動的に動作させる構成について説明する。ブーム操作レバー26Aは、操作装置26の一例であり、ブーム4を操作するために用いられる。ブーム操作レバー26Aは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、操作内容に応じたパイロット圧を制御弁175L、175Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、ブーム操作レバー26Aは、ブーム上げ方向に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、ブーム操作レバー26Aは、ブーム下げ方向に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
操作圧センサ29Aは、操作圧センサ29の一例であり、ブーム操作レバー26Aに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、操作方向及び操作量(操作角度)等である。
比例弁31AL、31ARは、比例弁31の一例であるブーム比例弁31Aを構成し、シャトル弁32AL、32ARは、シャトル弁32の一例であるブームシャトル弁32Aを構成する。比例弁31ALは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁31ARは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介して制御弁175Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁31AL、31ARは、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
この構成により、コントローラ30は、自動掘削制御の際には、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、ブーム4を自動的に上げることができる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、ブーム4を自動的に下げることができる。
アーム操作レバー26Bは、操作装置26の一例であり、アーム5を操作するために用いられる。アーム操作レバー26Bは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、操作内容に応じたパイロット圧を制御弁176L、176Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、アーム操作レバー26Bは、アーム開き方向に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートとに作用させる。また、アーム操作レバー26Bは、アーム閉じ方向に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートとに作用させる。
操作圧センサ29Bは、操作圧センサ29の一例であり、アーム操作レバー26Bに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
比例弁31BL、31BRは、比例弁31の一例であるアーム比例弁31Bを構成し、シャトル弁32BL、32BRは、シャトル弁32の一例であるアームシャトル弁32Bを構成する。比例弁31BLは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁31BRは、コントローラ30が調節する電流指令に応じて動作する。コントローラ30は、パイロットポンプ15から比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調節する。比例弁31BL、31BRは、制御弁176L、176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調節可能である。
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、アーム5を自動的に閉じることができる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、アーム5を自動的に開くことができる。
これにより、自動掘削制御においては、アーム操作レバー26Bの操作量に応じて、アームシリンダ8及びブームシリンダ7が自動で動作することにより、作業部位の速度制御、若しくは、位置制御が実行される。
ショベル100は、上部旋回体3を自動的に左旋回・右旋回させるための構成、バケット6を自動的に開閉させるための構成、及び、下部走行体1を自動的に前進・後進させるための構成を備えていてもよい。この場合、旋回用油圧モータ2Aに関する油圧システム部分、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分、左側走行用油圧モータ1Lの操作に関する油圧システム部分、及び、右側走行用油圧モータ1Rの操作に関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
次に、図4を参照し、コントローラ30による自動制御の詳細について説明する。図4は、コントローラ30における自動制御の実行に関する機能要素F1〜F6の関係の一例を示すブロック図である。
コントローラ30は、図4に示すように、自動制御の実行に関する機能要素F1〜F6を有する。機能要素は、ソフトウェアで構成されていてもよく、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成されていてもよい。
機能要素F1は、操作者による手動操作の傾向である操作傾向を分析するように構成されている。本実施形態では、機能要素F1は、操作圧センサ29が出力する操作データに基づいて操作傾向を分析し、その分析結果を操作データと共に出力する。操作傾向は、例えば、バケット6の爪先を直線的に機体に近づける操作傾向、バケット6の爪先を直線的に機体から遠ざける操作傾向、バケット6の爪先を直線的に上昇させる操作傾向、及び、バケット6の爪先を直線的に下降させる操作傾向等を含む。そして、機能要素F1は、現在の操作傾向が何れの操作傾向に合致するかを分析結果として出力する。
機能要素F2は、目標軌道を生成するように構成されている。本実施形態では、機能要素F2は、記憶装置47に記憶されている設計データを参照し、法面仕上げ作業の際にバケット6の爪先が辿るべき軌道を生成する。
機能要素F3は、ショベル100の動作モードを切り換えできるように構成されている。本実施形態では、機能要素F3は、MCスイッチ42AからのON指令を受けたときに、ショベル100の動作モードを手動制御モードから自動制御モードに切り換え、MC停止スイッチ42BからのOFF指令を受けたときに、ショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードに切り換える。
また、機能要素F3は、機能要素F1の出力である操作傾向の分析結果に基づき、ショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードに切り換えてもよい。例えば、機能要素F3は、機能要素F1の出力である操作傾向の分析結果に基づき、上述のように「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示している」と判定した場合、ショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードに切り換えてもよい。
自動制御モードに切り換えられると、機能要素F1の出力である操作データと操作傾向の分析結果とは、機能要素F5に供給される。手動制御モードに切り換えられると、機能要素F1の出力のうちの操作データは、機能要素F6に供給される。
機能要素F4は、現在の爪先位置を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F4は、ブーム角度センサS1が検出したブーム角度αと、アーム角度センサS2が検出したアーム角度βと、バケット角度センサS3が検出したバケット角度γとに基づき、バケット6の爪先の座標点を現在の爪先位置として算出する。機能要素F4は、現在の爪先位置を算出する際に、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。
機能要素F5は、自動制御モードが選択されているときに、次の爪先位置を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F5は、自動制御モードが選択されているときに、機能要素F1が出力する操作データ及び操作傾向の分析結果と、機能要素F2が生成した目標軌道と、機能要素F4が算出した現在の爪先位置とに基づき、所定時間後の爪先位置を目標爪先位置として算出する。
機能要素F6は、アクチュエータを動作させるための指令値を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F6は、自動制御モードが選択されているときには、現在の爪先位置を目標爪先位置に移動させるために、機能要素F5が算出した目標爪先位置に基づき、ブーム指令値α*、アーム指令値β*、及びバケット指令値γ*のうちの少なくとも1つを算出する。
また、機能要素F6は、手動制御モードが選択されているときには、操作データに応じたアクチュエータの動きを実現させるために、操作データに基づき、ブーム指令値α*、アーム指令値β*、及びバケット指令値γ*のうちの少なくとも1つを算出する。
機能要素F6は、自動制御モードが選択されている場合には、ブーム操作レバー26Aが操作されていないときであっても、必要に応じてブーム指令値α*を算出する。ブーム4を自動的に動作させるためである。アーム5及びバケット6についても同様である。
一方、機能要素F6は、手動制御モードが選択されている場合には、ブーム操作レバー26Aが操作されていないときにブーム指令値α*を算出することはない。手動制御モードでは、ブーム操作レバー26Aが操作されない限り、ブーム4を動作させることはないためである。アーム5及びバケット6についても同様である。
次に、図5を参照し、機能要素F6の詳細について説明する。図5は、各種指令値を算出する機能要素F6の構成例を示すブロック図である。
コントローラ30は、図5に示すように、指令値の生成に関する機能要素F11〜F13、F21〜F23及びF31〜F33を更に有する。機能要素は、ソフトウェアで構成されていてもよく、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成されていてもよい。
機能要素F11〜F13は、ブーム指令値α*に関する機能要素であり、機能要素F21〜F23は、アーム指令値β*に関する機能要素であり、機能要素F31〜F33は、バケット指令値γ*に関する機能要素である。
機能要素F11、F21及びF31は、比例弁31に対して出力される電流指令を生成するように構成されている。本実施形態では、機能要素F11は、ブーム比例弁31A(図3参照。)に対してブーム電流指令を出力し、機能要素F21は、アーム比例弁31B(図3参照。)に対してアーム電流指令を出力し、機能要素F31は、バケット比例弁31Cに対してバケット電流指令を出力する。
機能要素F12、F22及びF32は、スプール弁を構成するスプールの変位量を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F12は、ブームスプール変位センサS11の出力に基づき、ブームシリンダ7に関する制御弁175を構成するブームスプールの変位量を算出する。機能要素F22は、アームスプール変位センサS12の出力に基づき、アームシリンダ8に関する制御弁176を構成するアームスプールの変位量を算出する。機能要素F23は、バケットスプール変位センサS13の出力に基づき、バケットシリンダ9に関する制御弁174を構成するバケットスプールの変位量を算出する。
機能要素F13、F23及びF33は、作業体の回動角度を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F13は、ブーム角度センサS1の出力に基づき、ブーム角度αを算出する。機能要素F23は、アーム角度センサS2の出力に基づき、アーム角度βを算出する。機能要素F33は、バケット角度センサS3の出力に基づき、バケット角度γを算出する。
具体的には、機能要素F11は、基本的に、機能要素F6が生成したブーム指令値α*と機能要素F13が算出したブーム角度αとの差がゼロになるように、ブーム比例弁31Aに対するブーム電流指令を生成する。その際に、機能要素F11は、ブーム電流指令から導き出される目標ブームスプール変位量と機能要素F12が算出したブームスプール変位量との差がゼロになるように、ブーム電流指令を調節する。そして、機能要素F11は、その調節後のブーム電流指令をブーム比例弁31Aに対して出力する。
ブーム比例弁31Aは、ブーム電流指令に応じて開口面積を変化させ、ブーム指令電流の大きさに対応するパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。制御弁175は、パイロット圧に応じてブームスプールを移動させ、ブームシリンダ7に作動油を流入させる。ブームスプール変位センサS11は、ブームスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F12にフィードバックする。ブームシリンダ7は、作動油の流入に応じて伸縮し、ブーム4を上下動させる。ブーム角度センサS1は、上下動するブーム4の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F13にフィードバックする。機能要素F13は、算出したブーム角度αを機能要素F4にフィードバックする。
機能要素F21は、基本的に、機能要素F6が生成したアーム指令値β*と機能要素F23が算出したアーム角度βとの差がゼロになるように、アーム比例弁31Bに対するアーム電流指令を生成する。その際に、機能要素F21は、アーム電流指令から導き出される目標アームスプール変位量と機能要素F22が算出したアームスプール変位量との差がゼロになるように、アーム電流指令を調節する。そして、機能要素F21は、その調節後のアーム電流指令をアーム比例弁31Bに対して出力する。
アーム比例弁31Bは、アーム電流指令に応じて開口面積を変化させ、アーム指令電流の大きさに対応するパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。制御弁176は、パイロット圧に応じてアームスプールを移動させ、アームシリンダ8に作動油を流入させる。アームスプール変位センサS12は、アームスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F22にフィードバックする。アームシリンダ8は、作動油の流入に応じて伸縮し、アーム5を開閉させる。アーム角度センサS2は、開閉するアーム5の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F23にフィードバックする。機能要素F23は、算出したアーム角度βを機能要素F4にフィードバックする。
同様に、機能要素F31は、基本的に、機能要素F6が生成したバケット指令値γ*と機能要素F33が算出したバケット角度γとの差がゼロになるように、バケット比例弁31Cに対するバケット電流指令を生成する。その際に、機能要素F31は、バケット電流指令から導き出される目標バケットスプール変位量と機能要素F32が算出したバケットスプール変位量との差がゼロになるように、バケット電流指令を調節する。そして、機能要素F31は、その調節後のバケット電流指令をバケット比例弁31Cに対して出力する。
バケット比例弁31Cは、バケット電流指令に応じて開口面積を変化させ、バケット指令電流の大きさに対応するパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。制御弁174は、パイロット圧に応じてバケットスプールを移動させ、バケットシリンダ9に作動油を流入させる。バケットスプール変位センサS13は、バケットスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F32にフィードバックする。バケットシリンダ9は、作動油の流入に応じて伸縮し、バケット6を開閉させる。バケット角度センサS3は、開閉するバケット6の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F33にフィードバックする。機能要素F33は、算出したバケット角度γを機能要素F4にフィードバックする。
上述のように、コントローラ30は、作業体毎に、3段のフィードバックループを構成している。すなわち、コントローラ30は、スプール変位量に関するフィードバックループ、作業体の回動角度に関するフィードバックループ、及び、爪先位置に関するフィードバックループを構成している。そのため、コントローラ30は、自動制御の際に、バケット6の爪先の動きを高精度に制御できる。
次に、図6〜図9を参照し、非常停止機能による効果について説明する。図6〜図9は、法面仕上げ作業中のショベル100を支えている地面の一部LP(図7参照。)が崩壊したときのショベル100の動きに関する。具体的には、下部走行体1の前端の下にある地面の一部LPが崩壊してショベル100が前傾したときに、ショベル100の転倒を防止するために、操作者が反射的にアーム開き操作を行ったときのショベル100の動きに関する。操作者は、アーム5を開くことでバケット6を法面に接触させてショベル100の前傾を止めることを意図している。
より具体的には、図6は、非常停止機能が動作しない設定となっているショベル100において、自動掘削制御中にアーム開き操作が行われたときの油圧システムの状態を示す図であり、図3に対応する。図7は、非常停止機能が動作しない設定となっているショベル100において、自動掘削制御中にアーム開き操作が行われたときの掘削アタッチメントの動きを示す図であり、図1に対応する。
非常停止機能が動作しない場合、油圧システムは、図6に示すように、MCスイッチ42Aが押された状態でアーム操作レバー26Bがアーム開き方向に操作されると、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートのそれぞれに作用するパイロット圧を増大させる。アームシリンダ8を収縮させてアーム5を開くためである。そのため、アーム5は、図7の矢印AR1で示すように、操作者の意図に沿って開く。
このとき、コントローラ30は、操作圧センサ29Bの出力に基づき、アーム操作レバー26Bがアーム開き方向に操作されたことを検出する。ショベル100が前傾するにしたがい、バケット6の爪先は目標施工面へ接近する。このため、コントローラ30は、バケット6の爪先が目標施工面よりも下方へ移動することを抑制するため、ブーム上げ動作を行う。具体的には、コントローラ30は、比例弁31ALに対して制御指令を出力し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートのそれぞれに所定のパイロット圧を作用させる。アーム5の開きに応じてブームシリンダ7を伸長させてブーム4を上昇させるためである。そのため、ブーム4は、図7の矢印AR2で示すように、操作者の意図に反して上昇してしまう。そして、バケット6の爪先と目標施工面TSとの鉛直距離は、図7に示すように、操作者の意図に反して値D1で維持されてしまう。すなわち、操作者は、バケット6を法面に接触させてショベル100を支えることができない。その結果、ショベル100は、図7の矢印AR3で示すように、更に前傾してしまう。
一方、非常停止機能が動作する場合、コントローラ30は、上述のように操作者の意図に反して掘削アタッチメントが自動的に動いてしまうのを防止できる。図8は、非常停止機能が動作する設定となっているショベル100において、自動掘削制御中にアーム開き操作が行われたときの油圧システムの状態を示す図であり、図3に対応する。図9は、非常停止機能が動作する設定となっているショベル100において、自動掘削制御中にアーム開き操作が行われたときの掘削アタッチメントの動きを示す図であり、図1に対応する。
非常停止機能が動作する場合、油圧システムは、図8に示すように、アーム操作レバー26Bがアーム開き方向に操作されると、非常停止機能が動作しない場合と同様に、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートのそれぞれに作用するパイロット圧を増大させる。アームシリンダ8を収縮させてアーム5を開くためである。そのため、アーム5は、図9の矢印AR4で示すように、操作者の意図に沿って開く。
このとき、コントローラ30は、操作圧センサ29Bの出力に基づき、アーム操作レバー26Bがアーム開き方向に操作されたことを検出する。そして、コントローラ30は、自動制御を停止させるための所定条件が満たされたか否かを判定する。例えば、コントローラ30は、アーム操作レバー26Bのアーム開き方向への操作速度が所定速度を上回った場合に所定条件が満たされたと判定する。そして、所定条件が満たされたと判定した場合、コントローラ30は、自動制御を停止させる。このように、コントローラ30は、自動制御中であっても、ショベル100の動作モードを自動制御モードから手動制御モードへ切り換えることができる。
自動制御を停止させた場合、コントローラ30は、非常停止機能が動作しない場合と異なり、比例弁31ALに対して制御指令を出力しない。そのため、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートのそれぞれに所定のパイロット圧を作用させることもない。すなわち、アーム5の開きに応じてブームシリンダ7を伸長させることはなく、ブーム4を上昇させることもない。すなわち、ブーム4は、図9に示すように、操作者の意図に反して上昇することはない。その結果、バケット6の爪先と目標施工面TSとの鉛直距離は、操作者の意図に沿う形で、アーム5が開くにつれて短縮され、アーム角度がある角度に達したときにゼロになる。すなわち、操作者は、図9に示すように、バケット6の爪先を法面に接触させ、ショベル100の更なる前傾を止めることができる。
次に、図10及び図11を参照し、非常停止機能による同様の効果について説明する。図10及び図11は、アーム閉じ操作による法面仕上げ作業中のショベル100を支えている地面の一部LPが崩壊したときのショベル100の動きに関する。具体的には、下部走行体1の前端の下にある地面の一部LPが崩壊してショベル100が前傾したときに、ショベル100の転倒を防止するために、操作者が反射的にブーム下げ操作を行ったときのショベル100の動きに関する。操作者は、ブーム4を下げることでバケット6を法面に接触させてショベル100の前傾を止めることを意図している。
非常停止機能が動作する場合、操作者が反射的にアーム開き操作を行ったときと同様に、操作者が反射的にブーム下げ操作を行ったときにも、コントローラ30は、操作者の意図に反して掘削アタッチメントが自動的に動いてしまうのを防止できる。図10は、非常停止機能が動作する設定となっているショベル100において、自動掘削制御中にブーム下げ操作が行われたときの油圧システムの状態を示す。図11は、非常停止機能が動作する設定となっているショベル100において、自動掘削制御中にブーム下げ操作が行われたときの掘削アタッチメントの動きを示す。
コントローラ30は、操作圧センサ29Aの出力に基づき、ブーム操作レバー26Aがブーム下げ方向に操作されたことを検出すると、自動制御を停止させるための所定条件が満たされたか否かを判定する。例えば、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aのブーム下げ方向への操作速度が所定速度を上回った場合に所定条件が満たされたと判定する。そして、所定条件が満たされたと判定した場合、コントローラ30は、自動制御を停止させる。
自動制御を停止させた場合、油圧システムは、図10に示すように、ブーム操作レバー26Aがブーム下げ方向に操作されると、制御弁175Rの右側パイロットポートに作用するパイロット圧を増大させる。ブームシリンダ7を収縮させてブーム4を下げるためである。そのため、ブーム4は、図11の矢印AR5で示すように、操作者の意図に沿って下がる。ブーム4の下降に応じてアーム5が自動的に動くことはない。
その結果、バケット6の爪先と目標施工面TSとの間の距離は、操作者の意図に沿う形で、ブーム4が下がるにつれて短縮され、ブーム角度がある角度に達したときにゼロになる。すなわち、操作者は、図11に示すように、バケット6の爪先を法面に接触させ、ショベル100の更なる前傾を止めることができる。
上述の構成では、コントローラ30は、ブーム操作レバー26A又はアーム操作レバー26Bが急激に操作された場合に自動制御を停止させている。しかしながら、コントローラ30は、機体傾斜センサS4の出力に基づき、上部旋回体3のピッチ角が所定角度以上となったことを検出した場合に自動制御を停止させてもよい。或いは、コントローラ30は、キャビン10内で操作者の足下に設置されている足踏みスイッチである緊急停止スイッチ48が踏み込まれた場合に自動制御を停止させてもよい。或いは、コントローラ30は、MC停止スイッチ42Bが押された場合に自動制御を停止させてもよい。これらの場合においても、操作者は、例えば、アーム5を開くことで、或いは、ブーム4を下げることで、バケット6を法面に接触させてショベル100の前傾を止めることができる。
このように、本発明の実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられるアタッチメントとしての掘削アタッチメントと、上部旋回体3に搭載される、自動制御を実行可能な制御装置としてのコントローラ30と、を備えている。そして、コントローラ30は、ショベル100の動きに関する情報、又は、周辺機械の状態に関する情報が通常とは異なる傾向を示す場合に、自動制御を停止させるように構成されている。ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示す場合は、例えば、操作者の意図した通りにバケット6を上り斜面に押し付けることができないおそれがある場合に対応する。自動制御は、例えば、自動掘削制御であってもよい。自動制御は、例えば、目標軌道に沿って作業部位を移動させる制御であってもよい。この構成により、ショベル100は、自動制御中であっても操作者の意に沿うように動くことができる。
「ショベル100の動きに関する情報」は、例えば、上部旋回体3に搭載される操作装置26に対する操作に関する情報であってもよい。コントローラ30は、例えば、操作装置26が急激に操作された場合に、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示す」と判定するように構成されていてもよい。「操作装置26が急激に操作された場合」は、例えば、操作装置26としてのアーム操作レバーの単位時間当たりの操作量が所定値を上回った場合を含む。なお、アーム操作レバーの単位時間当たりの操作量は、例えば、アーム操作レバーの単位時間当たりの傾倒角度であってもよい。
自動制御は、例えば、自動正対制御であってもよく、自動複合旋回制御であってもよい。そして、「ショベル100の動きに関する情報」は、上部旋回体3に搭載される旋回操作レバーに対する操作に関する情報であってもよい。この場合、コントローラ30は、自動制御によって実行される旋回とは逆の方向に上部旋回体3を旋回させる操作が行われた場合に、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示す」と判定するように構成されていてもよい。
次に、図12及び図13を参照し、コントローラ30による自動制御の詳細について説明する。図12は、コントローラ30における自動制御の実行に関する機能要素F1〜F6の関係の別の一例を示すブロック図であり、図4に対応している。図13は、各種指令値を算出する機能要素F6の別の構成例を示すブロック図であり、図5に対応している。
図12の構成は、機能要素F2が空間認識装置S7の出力に基づいて目標軌道を生成する点、機能要素F4が旋回角度δを取得する点、及び、機能要素F6が旋回指令値δ*を算出する点で図4の構成と異なるが、その他の点では図4の構成と同じである。また、図13の構成は、旋回用油圧モータ2Aの自動制御に関する機能要素を備える点で図5の構成と異なるが、その他の点では図5の構成と同じである。そのため、以下では、共通部分の説明が省略され、相違部分が詳説される。
図12及び図13の例では、機能要素F2は、空間認識装置S7が検知する物体データに基づいてバケット6の爪先が辿るべき軌道を目標軌道として生成する。物体データは、例えば、ダンプトラックの位置及び形状等、ショベル100の周囲に存在する物体に関する情報である。
機能要素F4は、ブーム角度α、アーム角度β、及びバケット角度γと、旋回角速度センサS5の出力から算出される旋回角度δとに基づき、バケット6の爪先の座標点を現在の爪先位置として算出する。機能要素F4は、現在の爪先位置を算出する際に、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。
機能要素F6は、自動制御モードが選択されているときには、現在の爪先位置を目標爪先位置に移動させるために、機能要素F5が算出した目標爪先位置に基づき、ブーム指令値α*、アーム指令値β*、バケット指令値γ*、及び旋回指令値δ*のうちの少なくとも1つを算出する。
機能要素F41〜F43は、旋回指令値δ*に関する機能要素である。具体的には、機能要素F41は、旋回比例弁31Dに対して旋回電流指令を出力する。機能要素F42は、旋回スプール変位センサS14の出力に基づき、旋回用油圧モータ2Aに関する制御弁173を構成する旋回スプールの変位量を算出する。機能要素F43は、旋回角速度センサS5の出力に基づき、旋回角度δを算出する。
そして、機能要素F41は、基本的に、機能要素F6が生成した旋回指令値δ*と機能要素F43が算出した旋回角度δとの差がゼロになるように、旋回比例弁31Dに対する旋回電流指令を生成する。その際に、機能要素F41は、旋回電流指令から導き出される目標旋回スプール変位量と機能要素F42が算出した旋回スプール変位量との差がゼロになるように、旋回電流指令を調節する。そして、機能要素F41は、その調節後の旋回電流指令を旋回比例弁31Dに対して出力する。
旋回比例弁31Dは、旋回電流指令に応じて開口面積を変化させ、旋回指令電流の大きさに対応するパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。制御弁173は、パイロット圧に応じて旋回スプールを移動させ、旋回用油圧モータ2Aに作動油を流入させる。旋回スプール変位センサS14は、旋回スプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F42にフィードバックする。旋回用油圧モータ2Aは、作動油の流入に応じて回転し、上部旋回体3を旋回させる。旋回角速度センサS5は、旋回する上部旋回体3の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F43にフィードバックする。機能要素F43は、算出した旋回角度δを機能要素F4にフィードバックする。
上述のように、図12及び図13におけるコントローラ30は、ブーム角度α、アーム角度β、及びバケット角度γばかりでなく、旋回角度δに関しても、3段のフィードバックループを構成している。すなわち、コントローラ30は、旋回スプール変位量に関するフィードバックループ、上部旋回体3の回動角度に関するフィードバックループ、及び、爪先位置に関するフィードバックループを構成している。そのため、コントローラ30は、自動制御の際に、バケット6の爪先の動きを高精度に制御できる。
次に、図14及び図15を参照し、自動複合旋回制御について説明する。図14及び図15は、ダンプトラックDTの荷台に土砂を積み込む作業での掘削アタッチメントの動きを示す。図14は、作業現場の上面図である。図15は、作業現場を+Y側から見たときの作業現場の側面図である。図15は、明瞭化のため、ショベル100(バケット6を除く。)の図示を省略している。
図14及び図15における、実線で示す掘削アタッチメントは、掘削操作が完了したときの掘削アタッチメントの状態を示し、点線で示す掘削アタッチメントは、旋回操作が行われているときの掘削アタッチメントの状態を示し、一点鎖線で示す掘削アタッチメントは、排土操作が行われる直前の掘削アタッチメントの状態を示す。
点P11は、掘削操作が完了したときのバケット6の背面の中心点を示し、点P12は、旋回操作が行われているときのバケット6の背面の中心点を示し、点P13は、排土操作が行われる直前のバケット6の背面の中心点を示す。点P11、点P12、及び点P13を結ぶ太い破線は、バケット6の背面の中心点が通る軌道を示す。排土操作は、バケット6内の土砂をダンプトラックDTの荷台に落とすための操作である。
自動複合旋回制御では、自動制御部54は、例えば、操作者が手動で旋回操作を行っている場合に、バケット6の背面の中心点が所定の軌道に沿って移動するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自動的に伸縮させる。所定の軌道は、例えば、ダンプトラックDTの位置及び形状等を含むダンプトラックDTに関する情報に基づいて算出される目標軌道である。周辺機械としてのダンプトラックDTに関する情報は、例えば、空間認識装置S7及び通信装置T1等の少なくとも1つの出力に基づいて取得される。この場合、操作者は、旋回操作レバーを操作するだけで、バケット6の背面の中心点を所定の軌道に沿って移動させることができる。すなわち、操作者は、旋回操作レバーを操作するだけで、掘削アタッチメントとダンプトラックDTとの接触を防止しながら、地面の近くにあったバケット6を、高さHdのダンプトラックDTの荷台の上に移動させることができる。或いは、操作者は、旋回操作レバーを操作するだけで、掘削アタッチメントとダンプトラックDTとの接触を防止しながら、高さHdのダンプトラックDTの荷台の上にあったバケット6を地面の近くに移動させることができる。なお、右旋回中(ブーム上げ旋回中)に利用される軌道は、左旋回中(ブーム下げ旋回中)に利用される軌道と同じであってもよく、異なっていてもよい。
次に、自動複合旋回制御に関する非常停止機能について説明する。この非常停止機能は、例えば、ダンプトラックDTの荷台に土砂を積み込むためにショベル100の操作者が右旋回操作を行っている際にダンプトラックDTが動き出したときに、操作者が反射的に左旋回操作を行ったときに動作する。具体的には、この非常停止機能は、例えば、停車していたダンプトラックDTが突然後進し始めたときに、ショベル100とダンプトラックDTとの接触を防止するために、操作者が反射的に左旋回操作を行ったときに動作する。この場合、操作者は、右旋回中の上部旋回体3を逆方向である左方に旋回させることでバケット6の高さを維持したままバケット6をダンプトラックDTから遠ざけることを意図している。
自動制御部54は、例えば、旋回操作レバーが逆方向に急激に操作された場合に、「ショベル100の動きに関する情報が通常とは異なる傾向を示している」と判定し、自動複合旋回制御を停止させる。
非常停止機能が動作しない場合、すなわち、自動複合旋回制御が停止されない場合、自動制御部54は、旋回操作レバーが左方に急激に操作された場合であっても、バケット6の背面の中心点を所定の軌道に沿って移動させてしまうため、操作者の意図に反してバケット6の高さを低減させてしまう。図15のクロスハッチングで示す図形は、高さが低減されたバケット6の位置を示している。すなわち、図15は、点線で示す図形の高さにあったバケット6が、クロスハッチングで示す図形の高さまで下降することを示している。
一方、非常停止機能が動作する場合、すなわち、自動複合旋回制御が停止された場合、自動制御部54は、旋回操作レバーが左方に急激に操作された場合には、バケット6の背面の中心点を所定の軌道から逸脱させてバケット6を移動させることができる。そのため、自動制御部54は、操作者の意図に反してバケット6の高さを低減させてしまうことなく、操作者の意図に沿って、バケット6の高さを維持したままバケット6を左方に移動させることができる。図15の斜線ハッチングで示す図形は、高さを維持したまま左方に移動させられたバケット6の位置を示している。すなわち、図15は、点線で示す図形の高さにあったバケット6が、同じ高さのまま、斜線ハッチングで示す図形の位置まで移動することを示している。
このように、非常停止機能が動作する場合、操作者が反射的に左旋回操作を行ったときには、コントローラ30は、操作者の意図に反して掘削アタッチメントが自動的に動いてしまうのを防止できる。
コントローラ30は、空間認識装置S7の出力に基づいてダンプトラックDTが動き出したこと(例えば後進し始めたこと)を検出するように構成されていてもよい。この場合、コントローラ30は、各種センサの出力に基づき、現在実行されている作業が何れの作業であるかを特定した上で、作業毎に予め登録されている、その作業に関連する周辺機械の通常の状態に関する情報を取得する。そして、コントローラ30は、例えば、現在実行されている作業が、ダンプトラックDTの荷台に土砂を積み込む積み込み作業であると特定できた場合、積み込み作業に関連する周辺機械であるダンプトラックDTの通常の状態が停止状態であるという情報を取得する。そして、積み込み作業の途中でダンプトラックDTが動き出した場合、コントローラ30は、ダンプトラックDTが通常の状態とは異なる状態にあると判定できる。この判定結果に基づき、コントローラ30は、自動制御を停止させることができる。
また、ショベル100の動作モードは、手動制御モード及び自動制御モードとは別に、停止モードを有していてもよい。この構成では、作業部位としてのバケット6の爪先がダンプトラックDTの荷台の上方にある領域以外の領域に存在する場合には、コントローラ30は、ダンプトラックDTが動き出したことを検出したときに自動制御を停止させた上で、ショベル100の動作モードを自動制御モードから停止モードに切り換えてもよい。停止モードでは、コントローラ30は、操作装置26に対する操作の有無に関係なく、掘削操作が完了したときのバケット6の背面の中心点を示す点P11とダンプトラックDTとの間の空間で作業部位の動きを停止させてもよい。ダンプトラックDTが停止するまで作業部位を待機させることで、すなわち、ダンプトラックDTが停止するまで作業部位の動きを強制的に停止させることで、作業部位とダンプトラックDTとの接触を防止するためである。
このように、コントローラ30は、積み込み作業の最中にダンプトラックDTが動き出したことを検出したときには、ショベル100の動作モードを自動制御モードから停止モードに切り換えてもよい。
或いは、ショベル100の動作モードは、手動制御モード及び自動制御モードとは別に、回避モードを有していてもよい。そして、コントローラ30は、例えば、積み込み作業の最中にダンプトラックDTが動き出したことを検出した場合で、且つ、作業部位としてのバケット6の爪先がダンプトラックDTの荷台の上方にある領域内に存在する場合には、ショベル100の動作モードを自動制御モードから回避モードに切り換えてもよい。回避モードでは、コントローラ30は、操作装置26に対する操作の有無に関係なく、各種油圧アクチュエータを自動的に動作させることで、掘削操作が完了したときのバケット6の背面の中心点を示す点P11とダンプトラックDTとの間の空間にバケット6の爪先を回避させてもよい。ダンプトラックDTが停止するまでは、ダンプトラックDTの荷台の上方にある領域内からその領域外に作業部位を強制的に移動させることで、作業部位とダンプトラックDTとの接触を防止するためである。
このように、コントローラ30は、積み込み作業の最中にダンプトラックDTが動き出したことを検出したときには、ショベル100の動作モードを自動制御モードから回避モードに切り換えてもよい。
ショベル100は、MCスイッチ42Aのような自動制御に関するスイッチを有していてもよい。この場合、コントローラ30は、そのスイッチが操作されているときに自動制御を実行するように構成されていてもよい。
また、図3に示した例では、油圧式パイロット回路を備えた油圧式操作システムが開示されている。例えば、ブーム操作レバー26Aに関する油圧式パイロット回路では、パイロットポンプ15からリモコン弁27Aへ供給される作動油が、ブーム操作レバー26Aの傾倒によって開かれるリモコン弁27Aの開度に応じた流量で、制御弁175のパイロットポートに供給される。或いは、アーム操作レバー26Bに関する油圧式パイロット回路では、パイロットポンプ15からリモコン弁27Bへ供給される作動油が、アーム操作レバー26Bの傾倒によって開かれるリモコン弁27Bの開度に応じた流量で、制御弁176のパイロットポートに供給される。
但し、このような油圧式パイロット回路を備えた油圧式操作システムではなく、電気式操作レバーを備えた電気式操作システムが採用されてもよい。この場合、電気式操作レバーのレバー操作量は、電気信号としてコントローラ30へ入力される。また、パイロットポンプ15と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置される。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、電気式操作レバーを用いた手動操作が行われると、コントローラ30は、レバー操作量に対応する電気信号によって電磁弁を制御してパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。
電気式操作レバーを備えた電気式操作システムが採用された場合、コントローラ30は、手動制御モードと自動制御モードとを容易に切り換えることができる。そして、コントローラ30が手動制御モードを自動制御モードに切り換えた場合、複数の制御弁は、1つの電気式操作レバーのレバー操作量に対応する電気信号に応じて別々に制御されてもよい。
図16は、電気式操作システムの構成例を示す。具体的には、図16の電気式操作システムは、ブーム操作システムの一例であり、主に、パイロット圧作動型のコントロールバルブ17と、電気式操作レバーとしてのブーム操作レバー26Aと、コントローラ30と、ブーム上げ操作用の電磁弁60と、ブーム下げ操作用の電磁弁62とで構成されている。図16の電気式操作システムは、アーム操作システム及びバケット操作システム等にも同様に適用され得る。
パイロット圧作動型のコントロールバルブ17は、ブームシリンダ7に関する制御弁175(図2参照。)、アームシリンダ8に関する制御弁176(図2参照。)、及び、バケットシリンダ9に関する制御弁174(図2参照。)等を含む。電磁弁60は、パイロットポンプ15と制御弁175の上げ側パイロットポートとを繋ぐ管路の流路面積を調節できるように構成されている。電磁弁62は、パイロットポンプ15と制御弁175の下げ側パイロットポートとを繋ぐ管路の流路面積を調節できるように構成されている。
手動操作が行われる場合、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作信号生成部が出力する操作信号(電気信号)に応じてブーム上げ操作信号(電気信号)又はブーム下げ操作信号(電気信号)を生成する。ブーム操作レバー26Aの操作信号生成部が出力する操作信号は、ブーム操作レバー26Aの操作量及び操作方向に応じて変化する電気信号である。
具体的には、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aがブーム上げ方向に操作された場合、レバー操作量に応じたブーム上げ操作信号(電気信号)を電磁弁60に対して出力する。電磁弁60は、ブーム上げ操作信号(電気信号)に応じて流路面積を調節し、制御弁175の上げ側パイロットポートに作用するパイロット圧を制御する。同様に、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aがブーム下げ方向に操作された場合、レバー操作量に応じたブーム下げ操作信号(電気信号)を電磁弁62に対して出力する。電磁弁62は、ブーム下げ操作信号(電気信号)に応じて流路面積を調節し、制御弁175の下げ側パイロットポートに作用するパイロット圧を制御する。
自動制御を実行する場合、コントローラ30は、例えば、ブーム操作レバー26Aの操作信号生成部が出力する操作信号の代わりに、補正操作信号(電気信号)に応じてブーム上げ操作信号(電気信号)又はブーム下げ操作信号(電気信号)を生成する。補正操作信号は、コントローラ30が生成する電気信号であってもよく、コントローラ30以外の外部の制御装置等が生成する電気信号であってもよい。
また、ショベル100が取得する情報は、図17に示すようなショベルの管理システムSYSを通じ、管理者及び他のショベルの操作者等と共有されてもよい。図17は、ショベルの管理システムSYSの構成例を示す概略図である。管理システムSYSは、ショベル100を管理するシステムである。本実施形態では、管理システムSYSは、主に、ショベル100、支援装置200及び管理装置300で構成される。管理システムSYSを構成するショベル100、支援装置200及び管理装置300は、それぞれ1台であってもよく、複数台であってもよい。図17の例では、管理システムSYSは、1台のショベル100と、1台の支援装置200と、1台の管理装置300とを含む。
支援装置200は、典型的には携帯端末装置であり、例えば、施工現場にいる作業者等が携帯するノートPC、タブレットPC又はスマートフォン等のコンピュータである。支援装置200は、ショベル100の操作者が携帯するコンピュータであってもよい。但し、支援装置200は、固定端末装置であってもよい。
管理装置300は、典型的には固定端末装置であり、例えば、施工現場外の管理センタ等に設置されるサーバコンピュータである。管理装置300は、可搬性のコンピュータ(例えば、ノートPC、タブレットPC又はスマートフォン等の携帯端末装置)であってもよい。
支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方(以下、「支援装置200等」とする。)は、モニタと遠隔操作用の操作装置とを備えていてもよい。この場合、操作者は、遠隔操作用の操作装置を用いつつ、ショベル100を操作する。遠隔操作用の操作装置は、例えば、無線通信ネットワーク等の通信ネットワークを通じ、コントローラ30に接続される。
上述のようなショベルの管理システムSYSでは、ショベル100のコントローラ30は、自動制御を停止させた時刻及び場所等の少なくとも1つに関する情報を支援装置200等に送信してもよい。その際、コントローラ30は、撮像装置S6が撮像した画像である周辺画像を支援装置200等に送信してもよい。周辺画像は、自動制御が停止した時点を含む所定期間に撮像された複数の周辺画像であってもよい。更に、コントローラ30は、自動制御を停止させた時点を含む所定期間におけるショベル100の作業内容に関するデータ、ショベル100の姿勢に関するデータ、及び掘削アタッチメントの姿勢に関するデータ等の少なくとも1つに関する情報を支援装置200等に送信してもよい。支援装置200等を利用する管理者が、図9、図11、図14、及び図15等で示すような作業現場に関する情報を入手できるようにするためである。すなわち、自動制御を停止させるような操作が行われた原因等を管理者が分析できるようにするためであり、更には、そのような分析結果に基づいて管理者がショベル100の作業環境を改善できるようにするためである。
このように、本発明の実施形態に係るショベル100の管理システムSYSは、ショベル100による自動制御が停止した時刻、場所、姿勢及び周辺画像の少なくとも1つを記憶装置47等に記憶し、記憶した時刻、場所、姿勢及び周辺画像の少なくとも1つを任意のタイミングで外部に送信するショベル100と、ショベル100が送信する時刻、場所、姿勢及び周辺画像の少なくとも1つを受信し、受信した姿勢及び周辺画像の少なくとも1つを出力する管理装置300と、を有している。姿勢は、例えば、自動制御が停止したときのショベル100の姿勢、及び、自動制御が停止したときの掘削アタッチメントの姿勢の少なくとも1つである。管理装置300は、例えば、ショベル100のイラスト画像をモニタに表示させることで、管理者がショベル100の姿勢を認識できるようにする。管理装置300は、例えば、音声情報を出力させることで、管理者がショベル100の姿勢を認識できるようにしてもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説された。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形及び置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
例えば、上述の実施形態では、コントローラ30は、旋回用油圧モータ2Aを自動的に動作させることで上部旋回体3を目標施工面に正対させるようにしている。但し、コントローラ30は、旋回用電動発電機を自動的に動作させることで上部旋回体3を目標施工面に正対させるようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、操作データは、操作装置又は遠隔操作用の操作装置に応じて生成されるが、所定の動作プログラムにより自動的に生成されてもよい。
また、コントローラ30は、他のアクチュエータを動作させることで上部旋回体3を目標施工面に正対させるようにしてもよい。例えば、コントローラ30は、左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rを自動的に動作させることで上部旋回体3を目標施工面に正対させるようにしてもよい。
本願は、2018年1月30日に出願した日本国特許出願2018−013970号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。