JPWO2019131389A1 - スタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、温度に関わらず、氷上性能及びウェットグリップ性能をバランス良く改善できるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いたスタッドレスタイヤを提供する。本発明は、イソプレン系ゴムとブタジエンゴムとを含有するゴム成分、水溶性微粒子、レジン、及び液体可塑剤を含み、ゴム成分100質量部に対するレジンの含有量が5質量部以上、液体可塑剤の含有量が30質量部を超えているスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物に関する。

Description

本発明は、スタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物及びこれを用いたスタッドレスタイヤに関する。
氷雪路面走行用としてスパイクタイヤの使用やタイヤへのチェーンの装着がされてきたが、粉塵問題等の環境問題が発生するため、これに代わるものとしてスタッドレスタイヤが提案されている。スタッドレスタイヤは、一般路面に比べて路面凹凸が大きい雪氷上路面で使用されるため、材料面及び設計面での工夫がなされており、低温特性に優れたジエン系ゴムを配合したゴム組成物、軟化効果を高めるために軟化剤を多量に配合したゴム組成物、等が開発されている(特許文献1等参照)。
例えば、スタッドレスタイヤの氷上性能を向上させる手段として、ブタジエンゴムの増量が考えられるが、増量し過ぎると、ゴム中のモビリティが高くなり、種々の薬品のブルーミングが発生するため、ブタジエンゴムを増量には限度がある。また、ブタジエンゴムを増量した場合、それに伴って天然ゴム比率が下がるため、ゴムの強度が不足し、耐摩耗性が悪化するという問題もある。
他の手法として、酸化亜鉛ウィスカ等のフィラーを添加する方法(特許文献2参照)や短繊維を添加する方法(特許文献3参照)なども提案されているが、耐摩耗性の低下が懸念され、氷上性能を向上させる方法として十分な方法とはいえず、未だ改善の余地を残している。このように、薬品のブルーミングを抑制しつつ、広い温度域で氷上性能及びウェットグリップ性能を両立することや、これに加えて、良好な非氷上低温グリップ性能、雪付き性能も同時に得ることに関し、更なる改善が望まれている。
特開2009−091482号公報 特開2005−53977号公報 特開2002−249619号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、温度に関わらず、氷上性能及びウェットグリップ性能をバランス良く改善できるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、イソプレン系ゴムとブタジエンゴムとを含有するゴム成分、水溶性微粒子、レジン、及び液体可塑剤を含み、ゴム成分100質量部に対するレジンの含有量が5質量部以上、液体可塑剤の含有量が30質量部を超えているスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物に関する。
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が20質量%以上、ブタジエンゴムの含有量が20質量%以上であり、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカ含有率が50質量%以上であることが好ましい。
レジンは、C5系樹脂、C9系樹脂、リモネン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、DCPD樹脂、スチレン樹脂、α−メチルスチレン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、及びロジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ゴム成分100質量部に対する水溶性微粒子の含有量が25質量部以上であることが好ましい。
ブタジエンゴムは、シス含量が90質量%以上であることが好ましい。
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
前記スタッドレスタイヤは、下記走行条件後、トレッドの路面接地面に平均径0.1〜100μmの空隙が存在することが好ましい。
(走行条件)
車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
前記スタッドレスタイヤは、水溶性微粒子を含まない以外同配合のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに比して、走行前のパターンノイズに対する下記走行条件後のパターンノイズの低減率が2〜10%向上することが好ましい。
(走行条件)
車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
本発明は、イソプレン系ゴムとブタジエンゴムとを含有するゴム成分、水溶性微粒子、レジン、及び液体可塑剤を含み、ゴム成分100質量部に対するレジンの含有量が5質量部以上、液体可塑剤の含有量が30質量部を超えているスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物であるので、温度に関わらず、氷上性能及びウェットグリップ性能をバランス良く改善できる。
本発明のスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物は、イソプレン系ゴムとブタジエンゴム(BR)とを含有するゴム成分、水溶性微粒子、レジン、及び液体可塑剤を含み、かつ所定以上のレジン量、該液体可塑剤量を有している。前記ゴム組成物は、低温(気温−10〜−6℃)、高温(気温0〜−5℃)のいずれにおいても、氷上性能及びウェットグリップ性能がバランス良く改善される。
このような作用効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
スタッドレスタイヤには、気温に依存しない氷上グリップ性能が求められるが、該性能を得るには、トレッド内部は剛性を高め、トレッド表面を柔らかくする必要がある。しかし、単に剛性を高めた部材に柔らかいトレッドを張り付けただけでは、界面で剥離する危険性があるので、その剥離を回避する有効な方法は、トレッド内部及び表面の配合を同一とすることと考えられる。
そこで、トレッド内部及び表面の配合を、共に、液体可塑剤を増量し、かつ、水溶性微粒子、レジンを配合することにより、ゴム内部に一定の剛性を持たせつつ、低温(気温−10〜−6℃)でも柔軟性が保持されて氷上性能が向上し、高温(気温0〜−5℃)の水膜存在下では水溶性微粒子が溶解することにより生じる穴により除水効果を発揮するため、気温の変化によらないロバスト性能向上を図ることが可能となる。これにより、高温・低温ともに氷上グリップ性能向上、ウェットグリップ性能向上を達成でき、低温氷上性能(気温−10〜−6℃での氷上性能)、高温氷上性能(気温0〜−5℃での氷上性能)及びウェットグリップ性能の性能バランスが相乗的に改善されるものと推察される。
加えて、前記ゴム組成物は、非氷上低温グリップ性能(気温10℃以下の条件下でのドライグリップ性能)、雪付き性能も優れており、低温氷上性能、高温氷上性能、ウェットグリップ性能、非氷上低温グリップ性能、及び雪付き性能の性能バランスも相乗的に改善されるという効果も得ることができる。
(ゴム成分)
前記ゴム組成物は、イソプレン系ゴムとブタジエンゴム(BR)とを含有するゴム成分を含む。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRは、SIR20、RSS♯3、TSR20等、IRは、IR2200等、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。改質NRは、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRは、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRは、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、ウェットグリップ性能や、低温氷上性能、高温氷上性能及びウェットグリップ性能の性能バランスの観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)等、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。BRは、市販品としては、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
BRのシス含量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。これにより、良好な低温氷上性能、高温氷上性能が得られる。
なお、本明細書において、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、低温・高温氷上性能や、低温氷上性能、高温氷上性能及びウェットグリップ性能の性能バランスの観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上である。また、該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
BRは、非変性BR、変性BRのいずれも使用可能である。
変性BRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するBR等を使用できる。例えば、BRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性BR(末端に上記官能基を有する末端変性BR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性BRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性BR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性BR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性BR等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)が好ましい。
変性BRとして、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたBR等を好適に使用できる。
Figure 2019131389
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性BRとしては、なかでも、溶液重合のブタジエンゴムの重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたBR等が好適に用いられる。
、R及びRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)。R及びRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3である。また、R及びRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4〜8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
上記変性剤の具体例としては、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
変性BRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性BRも好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4−ジグリシジルベンゼン、1,3,5−トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
ビス−(1−メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4−モルホリンカルボニルクロリド、1−ピロリジンカルボニルクロリド、N,N−ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N−ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3−ビス−(グリシジルオキシプロピル)−テトラメチルジシロキサン、(3−グリシジルオキシプロピル)−ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
(トリメチルシリル)[3−(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN−置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジ−t−ブチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−ビス−(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−メチル−5−メチル−2−ピロリドン等のN−置換ピロリドンN−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−フェニル−2−ピペリドン等のN−置換ピペリドン;N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタム、N−メチル−ω−ラウリロラクタム、N−ビニル−ω−ラウリロラクタム、N−メチル−β−プロピオラクタム、N−フェニル−β−プロピオラクタム等のN−置換ラクタム類;の他、
N,N−ビス−(2,3−エポキシプロポキシ)−アニリン、4,4−メチレン−ビス−(N,N−グリシジルアニリン)、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン類、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルマレイミド、N,N−ジエチル尿素、1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジビニルエチレン尿素、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、4−N,N−ジメチルアミノアセトフェン、4−N,N−ジエチルアミノアセトフェノン、1,3−ビス(ジフェニルアミノ)−2−プロパノン、1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン等を挙げることができる。なかでも、アルコキシシランにより変性された変性BRが好ましい。
なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム及びBRの合計含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%である。上記合計含有量が多いほど低温特性に優れており、必要な低温・高温氷上性能を発揮できる傾向がある。
前記ゴム組成物は、前記効果を阻害しない範囲で他のゴム成分を配合してもよい。他のゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。
(水溶性微粒子)
水溶性微粒子は、水への溶解性を有する微粒子であれば特に限定されることなく、使用可能である。例えば、常温(20℃)の水への溶解度が1g/100g水以上の材料を使用できる。
水溶性微粒子は、低温氷上性能、高温氷上性能及びウェットグリップ性能の性能バランスの観点から、中央値粒度(メジアン径、D50)が1μm〜1mmであることが好ましい。より好ましくは2μm〜800μm、更に好ましくは2μm〜500μmである。
本明細書において、中央値粒度は、レーザー回折法にて測定できる。
水溶性微粒子の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは25質量部以上である。下限以上にすることで、良好な低温・高温氷上性能が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。上限以下にすることで、良好な耐摩耗性等のゴム物性が得られる傾向がある。
水溶性微粒子としては、例えば、水溶性無機塩、水溶性有機物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性無機塩としては、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム等の金属硫酸塩;塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の金属塩化物;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩;等が挙げられる。
水溶性有機物としては、リグニン誘導体、糖類等が挙げられる。
リグニン誘導体としては、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩、等が好適である。リグニン誘導体は、サルファイトパルプ法、クラフトパルプ法のいずれにより得られたものでもよい。
リグニンスルホン酸塩としては、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルコールアミン塩等が挙げられる。なかでも、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、バリウム塩等)が好ましい。
リグニン誘導体は、スルホン化度がスルホン化度1.5〜8.0/OCHであることが好ましい。この場合、リグニン誘導体は、リグニン及び/又はその分解物の少なくとも一部がスルホ基(スルホン基)で置換されているリグニンスルホン酸及び/又はリグニンスルホン酸塩を含むものであり、リグニンスルホン酸のスルホ基は、電離していない状態でもよいし、スルホ基の水素が金属イオン等のイオンに置換されていてもよい。該スルホン化度は、より好ましくは3.0〜6.0/OCHである。上記範囲内にすることで、良好な氷上性能が得られ、これとウェットグリップ性能の性能バランスが改善される傾向がある。
なお、リグニン誘導体粒子(該粒子を構成するリグニン誘導体)のスルホン化度は、スルホ基の導入率であり、下記式で求められる。
スルホン化度(/OCH)=
リグニン誘導体中のスルホン基中のS(モル)/リグニン誘導体中のメトキシル基(モル)
糖類は、構成する炭素数に特に制限はなく、単糖、少糖、多糖のいずれでもよい。単糖としては、アルドトリオース、ケトトリオースなどの三炭糖;エリトロース、トレオースなどの四炭糖;キシロース、リボースなどの五炭糖;マンノース、アロース、アルトロース、グルコースなどの六炭糖;セドヘプツロースなどの七炭糖などが挙げられる。少糖としては、スクロース、ラクトースなどの二糖;ラフィノース、メレジトースなどの三糖;アカルボース、スタキオースなどの四糖;キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖などのオリゴ糖、等が挙げられる。多糖としては、グリコーゲン、でんぷん(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、ヘミセルロース、デキストリン、グルカン等が挙げられる。
(シリカ)
前記ゴム組成物は、前記性能バランスの観点から、充填剤としてシリカを含むことが好ましい。シリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、より更に好ましくは55質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。下限以上にすることで、良好なウェットグリップ性能、操縦安定性が得られる傾向がある。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは170質量部以下、特に好ましくは100質量部以下、最も好ましくは80質量部以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは70m/g以上、より好ましくは140m/g以上、更に好ましくは160m/g以上である。下限以上にすることで、良好なウェットグリップ性能、破壊強度が得られる傾向がある。また、シリカのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは500m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
前記ゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカ含有率は、低温・高温氷上性能及びウェットグリップ性能の性能バランスの観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
(シランカップリング剤)
前記ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT−Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましい。3質量部以上であると、良好な破壊強度等が得られる傾向がある。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。20質量部以下であると、配合量に見合った効果が得られる傾向がある。
(カーボンブラック)
前記ゴム組成物は、前記性能バランスの観点から、充填剤としてカーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性、低温・高温氷上性能(氷上グリップ性能)等が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上限以下にすることで、ゴム組成物の良好な加工性が得られる傾向がある。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、80m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性能、低温・高温氷上グリップ性能が得られる傾向がある。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001によって求められる。
なお、前記ゴム組成物において、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、低温・高温氷上性能及びウェットグリップ性能の性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、50〜120質量部であることが好ましい。55質量部以上がより好ましく、60質量部以上が更に好ましい。また、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下が更に好ましい。
(液体可塑剤)
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対する液体可塑剤の含有量が30質量部を超えている。これにより、優れた低温・高温氷上性能、ウェットグリップ性能が得られる。該含有量は、33質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、耐摩耗性等の点から、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、55質量部以下が更に好ましい。
液体可塑剤としては、25℃で液体状態の可塑剤であれば特に限定されず、オイル、液状樹脂、液状ジエン系ポリマー等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイルが好ましい。
液状樹脂としては、25℃で液状のテルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液状の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。
(レジン)
前記ゴム組成物は、レジン(固体レジン:常温(25℃)で固体状態のレジン)を含む。
レジン(固体レジン)としては、軟化点が60℃以上のレジンが好ましい。このようなレジンを用いることにより、本発明の効果がより好適に得られる。該軟化点としては、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。他方、該軟化点は、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下が更に好ましい。
なお、本明細書において、レジンの軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
レジン(固体レジン)としては、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られる点から、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂が好ましく、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、ロジン樹脂がより好ましい。
上記芳香族ビニル重合体とは、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂であり、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α−メチルスチレンの単独重合体(α−メチルスチレン樹脂)、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
上記クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
上記クマロン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
上記インデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるものなどが挙げられる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
上記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂などが挙げられる。
上記テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。また、これらの水素添加物を使用することもできる。
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールなどが挙げられる。
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、重合反応が容易である点、天然松脂が原料のため、安価であるという点から、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα−ピネン及びβ−ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β−ピネンを主成分とするβ−ピネン樹脂と、α−ピネンを主成分とするα−ピネン樹脂とに分類される。
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂を使用することもできる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
上記アクリル系樹脂としては、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などを使用できる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
上記無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42−45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
上記アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
上記アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
上記レジンとしては、低温氷上性能、高温氷上性能及びウェットグリップ性能の性能バランスの観点から、なかでも、C5系樹脂、C9系樹脂、リモネン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、DCPD樹脂、スチレン樹脂、α−メチルスチレン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、及びロジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。更に雪付き性能の観点からは、リモネン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、DCPD樹脂が特に好ましい。
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、レジンの含有量が5質量部以上である。これにより、優れたウェットグリップ性能、低温氷上性能、高温氷上性能、更には良好な非氷上低温グリップ性能、雪付き性能が得られる。該含有量は、7質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましく、17質量部以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、耐摩耗性等の点から、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましく、25質量部以下が特に好ましい。
前記ゴム組成物において、レジン(固体レジン)及び液体可塑剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、低温氷上性能、高温氷上性能及びウェットグリップ性能の性能バランスの観点から、43質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましく、50質量部以上が更に好ましく、55質量部以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、耐摩耗性等の点から、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、65質量部以下が更に好ましい。
(他の材料)
前記ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。下限以上にすることで、充分な耐オゾン性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。上限以下にすることで、良好なタイヤの外観が得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸の含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。酸化亜鉛の含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。なお、ワックスの含有量は、耐オゾン性、コストの点から、適宜設定すれば良い。
前記ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な前記性能バランスを付与するという点で、硫黄を配合することが好ましい。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上である。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な前記性能バランスが得られる傾向がある。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、通常、0.3〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部である。
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、前記性能バランスの観点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
前記ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
前記ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50〜200℃、好ましくは80〜190℃であり、混練時間は、通常30秒〜30分、好ましくは1分〜30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温〜80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120〜200℃、好ましくは140〜180℃である。
上記ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。上記ゴム組成物は、スタッドレスタイヤのトレッド(単層トレッド、多層トレッドのキャップトレッド)として用いられる。
(スタッドレスタイヤ)
本発明のスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド(キャップトレッドなど)の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、スタッドレスタイヤが得られる。本発明のスタッドレスタイヤは、乗用車用スタッドレスタイヤとして好適に使用できる。
上記スタッドレスタイヤは、下記走行条件後、トレッドの路面接地面に平均径0.1〜100μmの空隙が存在することが好ましい。本発明のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤをこのようなものとすることで、操縦安定性を維持しながら、氷上性能を向上でき、ノイズを低減することができる。
(走行条件)
車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
上記空隙は、平均径が0.1〜100μmであることが好ましいが、操縦安定性、氷上性能、ノイズ低減性の観点から、1μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましい。また、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、空隙の平均径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察にて測定できる。具体的には、走査型電子顕微鏡で写真撮影し、空隙の形状が球形の場合は球の直径、針状又は棒状の場合は短径、不定形の場合は中心部からの平均径を径とし、100個の空隙の径の平均値を平均径とする。
上記スタッドレスタイヤは、水溶性微粒子を含まない以外同配合のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに比して、走行前のパターンノイズに対する下記走行条件後のパターンノイズの低減率が2〜10%向上することが好ましい。すなわち、下記走行条件後のパターンノイズが走行前のパターンノイズに比べてどれだけ低減したかを表すパターンノイズの低減率が、水溶性微粒子を含まない以外同配合のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤにおけるパターンノイズの低減率と比較して2〜10%向上することが好ましい。
(走行条件)
車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
なお、本明細書において、パターンノイズは、スタッドレスタイヤを車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して(リム:7.5J×17、内圧:220kPa)、ロードノイズ計測路(氷上路面)を時速60km/hで走行したときの運転席窓側耳位置における車内音を測定し、500Hz付近の空洞共鳴音の狭帯域ピーク値の音圧レベルを測定することで測定できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
天然ゴム(NR):RSS#3
ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製のBR150B(シス95質量%以上)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のシーストN220
シリカ:エボニックデグッサ社製のウラトシルVN3(NSA172m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266
水溶性微粒子1:馬居化成工業(株)製のMN−00(硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径)75μm)
水溶性微粒子2:馬居化成工業(株)製のUSN−00(超微細硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径)3μm)
水溶性微粒子3:東京化成工業(株)製のリグニンスルホン酸ナトリウム(中央値粒度(メジアン径)100μm)
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエースワックス
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
オイル:出光興産(株)製のPS−32(ミネラルオイル)
レジン(1):スチレン共重合体樹脂(ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンSX100、軟化点:100±5℃)
レジン(2):ポリテルペン樹脂(ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1250、軟化点:125±5℃)
ステアリン酸:日油(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
〔水溶性微粒子の中央値粒度(メジアン径)の測定〕
(株)島津製作所製SALD一2000J型を用い、レーザー回折法(測定操作は下記のとおり)により測定した。
<測定操作>
水溶性微粒子を、分散溶媒(トルエン)と分散剤(10質量%スルホこはく酸ジー2−エチルヘキシルナトリウム/トルエン溶液)との混合溶液に室温で分散させ、得られた分散液に超音波を照射しながら、該分散液を5分間撹拌して試験液を得た。該試験液を回分セルに移し、1分後に測定した。(屈折率:1.70−0.20i)
<実施例及び比較例>
表1及び表2に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、天然ゴムとシリカ、ブタジエンゴムとシリカを添加し、それぞれ150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物(マスターバッチ)を得た。次に、得られたマスターバッチに、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を添加し、150℃の条件下で2分間混練りし、混練り物を得た。更に、硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた各未加硫ゴム組成物をそれぞれキャップトレッドの形状に成型し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて170℃で15分間加硫することにより、試験用スタッドレスタイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
得られた加硫ゴム組成物、試験用スタッドレスタイヤについて、室温暗所で三ヶ月保管した後、下記の評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
<低温氷上グリップ性能>
各試験用スタッドレスタイヤを用いて、下記の条件で氷上での実車性能を評価した。試験場所は、住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースで行い、気温は−10〜−6℃であった。試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例1をリファレンスとして、下記式から指数表示した。指数が大きいほど、低温氷上性能に優れることを示す。
(低温氷上グリップ性能)=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の停止距離)×100
<高温氷上グリップ性能>
各試験用スタッドレスタイヤを用いて、下記の条件で氷上での実車性能を評価した。試験場所は、住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースで行い、気温は0〜−5℃であった。試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例1をリファレンスとして、下記式から指数表示した。指数が大きいほど、高温氷上性能に優れることを示す。
(高温氷上グリップ性能)=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の停止距離)×100
<ウェットグリップ性能>
試験用スタッドレスタイヤを国産2000ccのFR車に装着し、湿潤路面において初速度100km/hからの制動距離を測定した。下記式により比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(比較例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
<非氷上低温グリップ性能>
試験用スタッドレスタイヤを国産2000ccのFR車に装着し、気温10℃以下の環境下、ドライ路面において初速度100km/hからの制動距離を測定した。下記式により比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、非氷上低温グリップ性能(氷上でないドライ路面での低温グリップ性能)に優れることを示す。
(非氷上低温グリップ性能指数)=(比較例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
<雪付き性能>
試験用スタッドレスタイヤを国産2000ccのFR車に装着し、雪上路面を5km走行した後、タイヤへの雪の付き具合を目視で観察し、評点付けを行い、比較例1を100として相対評価を行った。評点が大きいほど雪付きが少なく、雪付き性能に優れていることを示す。
<氷上性能>
各試験用スタッドレスタイヤを用いて、下記の条件で氷上での実車性能を評価した。試験場所は、住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースで行い、気温は0〜−5℃であった。試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例11をリファレンスとして、下記式から指数表示した。指数が大きいほど、氷上性能に優れることを示す。
(氷上性能)=(比較例11の制動停止距離)/(各配合の停止距離)×100
<パターンノイズ低減性>
下記走行条件後のパターンノイズが走行前のパターンノイズに比べてどれだけ低減したかを算出した。そして、算出値(パターンノイズの低減率)を比較例11をリファレンスとして、下記式から指数表示した。指数が大きいほどパターンノイズ低減性に優れることを示す。
(パターンノイズ低減性)=(各配合におけるパターンノイズの低減率)/(比較例11におけるパターンノイズの低減率)×100
(走行条件)
各試験用スタッドレスタイヤを車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して(リム:7.5J×17、内圧:220kPa)、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。試験場所は、岡山テストコース(ドライ路面)。
なお、パターンノイズは、時速60km/hで走行したときの運転席窓側耳位置における車内音を測定し、500Hz付近の空洞共鳴音の狭帯域ピーク値の音圧レベルを測定することで測定した。
<操縦安定性>
路面温度が25℃のドライアスファルト路面のテストコースにて、各試験用スタッドレスタイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着して実車走行した。その際、テストドライバーが比較例11の結果を100として、微小操舵角変更時のハンドル応答性、急なレーンチェンジの応答性を総合的に評価した。なお、数値が大きいほど操縦安定性に優れていることを示す。
Figure 2019131389
表1より、イソプレン系ゴム、BR、レジン(固体レジン)、水溶性微粒子、多量の液体可塑剤量を含む実施例では、低温氷上性能、高温氷上性能及びウェットグリップ性能の性能バランス、更に非氷上低温グリップ性能、雪付き性能も加えた性能バランスが優れていた。
特に、比較例7(レジン無、水溶性微粒子無、オイル少量)、比較例3(水溶性微粒子有)、比較例4(レジン有)、比較例6(オイル多量)、及び実施例1(レジン有、水溶性微粒子有、オイル多量)から、レジン添加(5質量部以上)、液体可塑剤量30質量部超、水溶性微粒子添加を組み合わせることで、低温氷上性能、高温氷上性能及びウェットグリップ性能の性能バランスや、更に非氷上低温グリップ性能、雪付き性能も加えた性能バランスが相乗的に改善されるという効果を奏することが明らかとなった。
Figure 2019131389

Claims (8)

  1. イソプレン系ゴムとブタジエンゴムとを含有するゴム成分、水溶性微粒子、レジン、及び液体可塑剤を含み、
    ゴム成分100質量部に対するレジンの含有量が5質量部以上、液体可塑剤の含有量が30質量部を超えているスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物。
  2. ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が20質量%以上、ブタジエンゴムの含有量が20質量%以上であり、
    シリカ及びカーボンブラックの合計含有量100質量%中のシリカ含有率が50質量%以上である請求項1記載のスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物。
  3. レジンは、C5系樹脂、C9系樹脂、リモネン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、DCPD樹脂、スチレン樹脂、α−メチルスチレン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、及びロジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載のスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物。
  4. ゴム成分100質量部に対する水溶性微粒子の含有量が25質量部以上である請求項1〜3のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物。
  5. ブタジエンゴムは、シス含量が90質量%以上である請求項1〜4のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用トレッドゴム組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤ。
  7. 前記スタッドレスタイヤは、下記走行条件後、トレッドの路面接地面に平均径0.1〜100μmの空隙が存在する請求項6に記載のスタッドレスタイヤ。
    (走行条件)
    車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
  8. 前記スタッドレスタイヤは、水溶性微粒子を含まない以外同配合のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに比して、走行前のパターンノイズに対する下記走行条件後のパターンノイズの低減率が2〜10%向上する請求項6又は7記載のスタッドレスタイヤ。
    (走行条件)
    車両(国産FR2000cc)の全輪に装着して、常温のドライ路面を100km走行し、その後、−1〜−10℃の雪氷上路面を4km走行する。
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