JP2021172227A - タイヤ - Google Patents

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JP2021172227A JP2020077495A JP2020077495A JP2021172227A JP 2021172227 A JP2021172227 A JP 2021172227A JP 2020077495 A JP2020077495 A JP 2020077495A JP 2020077495 A JP2020077495 A JP 2020077495A JP 2021172227 A JP2021172227 A JP 2021172227A
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Abstract

【課題】市場走行による氷上グリップ性能の低下を抑制できるタイヤを提供する。【解決手段】コード層と、前記コード層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム層とを備えたタイヤであって、前記トレッドゴム層は、タイヤの表面側に配された表面側トレッドゴム層と、前記表面側トレッドゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接して配された内側トレッドゴム層とを少なくとも有し、前記表面側トレッドゴム層及び前記内側トレッドゴム層は共に水溶性材料を含み、かつ下記式(1)を満たすタイヤ。[数1]【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤに関する。
スタッドレスタイヤは、安全性の観点から、氷又は薄氷で覆われた地面に対するグリップ性能の要求が強い。特に、タイヤによる圧力により氷が融けて氷上に薄い水膜が生じた状態の際に路面の摩擦係数が最も下がり、危険性が増すことが知られている。また、氷上グリップ性能を悪化させる要因として、路面に設置するキャップゴムの硬化が挙げられる。一般にゴムの硬化はゴム中に含まれる可塑剤成分の揮散、移行により生じる。
薄い水膜が生じた際の氷上グリップ性能向上のためには、水溶性のフィラーをゴム中に含ませ、水膜へ溶解させることで表面に凹凸を形成し、水膜を除去する方法が開発されている。しかし、市場走行によるゴムの硬化、氷上グリップ性能の低下を充分に抑制することは難しかった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、市場走行による氷上グリップ性能の低下を抑制できるタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、コード層と、前記コード層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム層とを備えたタイヤであって、前記トレッドゴム層は、タイヤの表面側に配された表面側トレッドゴム層と、前記表面側トレッドゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接して配された内側トレッドゴム層とを少なくとも有し、前記表面側トレッドゴム層及び前記内側トレッドゴム層は共に水溶性材料を含み、かつ下記式(1)を満たすタイヤに関する。
Figure 2021172227
タイヤのいずれかの子午線断面において、最もタイヤ半径方向内側に位置する溝底よりもタイヤ半径方向外側に、少なくとも一部の内側トレッドゴム層が位置することが好ましい。
下記式(2)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
内側トレッドゴム層の厚みがトレッドゴム層の厚み全体の60%以上を占めることが好ましい。
下記式(3)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
下記式(4)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
下記式(5)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
下記式(6)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
下記式(7)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
下記式(8)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
下記式(9)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
下記式(10)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
下記式(11)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
本発明は、コード層と、前記コード層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム層とを備えたタイヤであって、前記トレッドゴム層は、タイヤの表面側に配された表面側トレッドゴム層と、前記表面側トレッドゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接して配された内側トレッドゴム層とを少なくとも有し、前記表面側トレッドゴム層及び前記内側トレッドゴム層は共に水溶性材料を含み、かつ前記式(1)を満たすタイヤであるので、市場走行による氷上グリップ性能の低下を抑制できる。
本発明の一実施形態に係る乗用車用タイヤの一部が示された断面図である。
本発明は、コード層と、前記コード層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム層とを備えたタイヤであって、前記トレッドゴム層は、タイヤの表面側に配された表面側トレッドゴム層と、前記表面側トレッドゴム層のタイヤ半径方向内側に配された内側トレッドゴム層とを少なくとも有し、前記表面側トレッドゴム層及び前記内側トレッドゴム層は共に水溶性材料を含み、かつ式(1)を満たすタイヤである。これにより、市場走行による氷上グリップの低下を抑制できる。
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
タイヤは、市場走行によりゴムが硬化し、氷上グリップ性能が低下するという問題がある。この点に対し、前記タイヤでは、タイヤの表面側に配された表面側トレッドゴム層と、その内側方向に配された内側トレッドゴム層の両層に水溶性材料を配合すると同時に、表面側トレッドゴム層に比べて内側トレッドゴム層に多量に配合されている。そのため、走行初期は、氷上グリップ性能に適したゴム硬度及び水溶性材料により良好な氷上グリップ性能が得られ、また、摩耗末期でゴムが硬化した際は、内側トレッドゴム層が露出し、表面側トレッドゴム層に比べて多量に配合された水溶性材料により路面上の水分で溶解して形成される空隙のエッジ量が増え、エッジ効果、水膜の除去効果が大きくなるため、摩耗末期でも良好な氷上グリップ性能が得られる。従って、前記タイヤにより、市場走行による氷上グリップ性能の低下が抑制されると推察される。
このように、本発明は、前記式(1)を満たすタイヤの構成にすることにより、市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制という課題(目的)を解決するものである。すなわち、前記式(1)は課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制であり、そのための解決手段として前記式(1)を満たすような構成にしたものである。
前記タイヤは、コード層と、前記コード層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム層とを備える。コード層に使用されるコードとしては、タイヤに使用されるものであれば特に限定されず、カーカスコード(ケースコード)、ブレーカーコード、バンドコード等が挙げられる。「コード層のタイヤ半径方向外側」とは、コード層からタイヤ半径方向の外側方向である。
前記トレッドゴム層は、タイヤの表面側に配された表面側トレッドゴム層と、前記表面側トレッドゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接して配された内側トレッドゴム層とを少なくとも有する。コード層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム層としては、任意の多層構造トレッドが使用可能であり、2層構造トレッド、3層構造トレッド、4層以上の構造のトレッドが挙げられる。前記多層構造トレッドにおいて、前記表面側トレッドゴム層が該多層構造トレッドの最表面のゴム層を構成し、前記内側トレッドゴム層が該最表面のゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接して配されたゴム層であることが好ましい。
前記タイヤにおいて、表面側トレッドゴム層及び内側トレッドゴム層は共に水溶性材料を含む。水溶性材料は、水への溶解性を有する材料であれば特に限定されることなく使用可能であり、例えば、常温(20℃)の水への溶解度が1g/100g水以上の材料を使用できる。
水溶性材料としては、例えば、水溶性無機塩、水溶性有機物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性無機塩としては、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム等の金属硫酸塩;塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の金属塩化物;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩;等が挙げられる。
水溶性有機物としては、リグニン誘導体、糖類等が挙げられる。
リグニン誘導体としては、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩、等が好適である。リグニン誘導体は、サルファイトパルプ法、クラフトパルプ法のいずれにより得られたものでもよい。
リグニンスルホン酸塩としては、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルコールアミン塩等が挙げられる。なかでも、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、バリウム塩等)が好ましい。
リグニン誘導体は、スルホン化度が1.5〜8.0/OCHであることが好ましい。この場合、リグニン誘導体は、リグニン及び/又はその分解物の少なくとも一部がスルホ基(スルホン基)で置換されているリグニンスルホン酸及び/又はリグニンスルホン酸塩を含むものであり、リグニンスルホン酸のスルホ基は、電離していない状態でもよいし、スルホ基の水素が金属イオン等のイオンに置換されていてもよい。該スルホン化度は、より好ましくは3.0〜6.0/OCHである。上記範囲内にすることで、良好な氷雪上性能が得られ、これとドライ路面の操縦安定性の性能バランスが改善される傾向がある。
なお、リグニン誘導体粒子(該粒子を構成するリグニン誘導体)のスルホン化度は、スルホ基の導入率であり、下記式で求められる。
スルホン化度(/OCH)=
リグニン誘導体中のスルホン基中のS(モル)/リグニン誘導体中のメトキシル基(モル)
糖類は、構成する炭素数に特に制限はなく、単糖、少糖、多糖のいずれでもよい。単糖としては、アルドトリオース、ケトトリオースなどの三炭糖;エリトロース、トレオースなどの四炭糖;キシロース、リボースなどの五炭糖;マンノース、アロース、アルトロース、グルコースなどの六炭糖;セドヘプツロースなどの七炭糖などが挙げられる。少糖としては、スクロース、ラクトースなどの二糖;ラフィノース、メレジトースなどの三糖;アカルボース、スタキオースなどの四糖;キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖などのオリゴ糖、等が挙げられる。多糖としては、グリコーゲン、でんぷん(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、ヘミセルロース、デキストリン、グルカン等が挙げられる。
水溶性材料は、氷上グリップ性能の観点から、中央値粒度(メジアン径、D50)が1μm〜1mmであることが好ましい。より好ましくは2μm〜800μm、更に好ましくは2μm〜500μmである。下限は10μm以上でもよく、上限は100μm以下でもよい。なお、本明細書において、中央値粒度は、レーザー回折法にて測定できる。
前記タイヤは、下記式(1)を満たす。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する水溶性材料の含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する水溶性材料の含有量は、0.95以下が好ましく、0.90以下がより好ましく、0.85以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する水溶性材料の含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する水溶性材料の含有量は、0.45以上が好ましく、0.50以上がより好ましく、0.55以上が更に好ましい。
表面側トレッドゴム層に含まれる水溶性材料の含有量は、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。該含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内にすることで、市場走行による氷上グリップ性能の低下が抑制される傾向がある。
内側トレッドゴム層に含まれる水溶性材料の含有量は、内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上である。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内にすることで、市場走行による氷上グリップ性能の低下が抑制される傾向がある。
表面側トレッドゴム層及び内側トレッドゴム層を構成する表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物に使用可能なゴム成分としては特に限定されず、タイヤ分野で使用されているゴム等を使用できる。例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴム等が挙げられる。なかでも、氷上グリップ性能の観点から、イソプレン系ゴム、BRが好ましい。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRは、SIR20、RSS♯3、TSR20等、IRは、IR2200等、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。改質NRは、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRは、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRは、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
BRのシス含量は、氷上性能の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。なお、本明細書において、シス含量(シス−1,4−結合量)は、赤外吸収スペクトル分析や、NMR分析により測定されるシグナル強度から算出される値である。
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)等、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。BRは、市販品としては、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
BRは、非変性BR、変性BRのいずれも使用可能である。
変性BRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有する変性BR等を使用できる。例えば、変性BRの少なくとも一方の末端を官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性BR(末端に官能基を有する末端変性BR)、主鎖に官能基を有する主鎖変性BR、主鎖及び末端に官能基を有する主鎖末端変性BR(例えば、主鎖に官能基を有し、少なくとも一方の末端を変性剤で変性された主鎖末端BR)、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性BR等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)が好ましい。
例えば、変性BRとして、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたBR等を好適に使用できる。
Figure 2021172227
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
、R及びRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)。R及びRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3である。また、R及びRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4〜8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
前記式で表される化合物(変性剤)の具体例としては、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
変性BRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性BRも好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4−ジグリシジルベンゼン、1,3,5−トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
ビス−(1−メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4−モルホリンカルボニルクロリド、1−ピロリジンカルボニルクロリド、N,N−ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N−ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3−ビス−(グリシジルオキシプロピル)−テトラメチルジシロキサン、(3−グリシジルオキシプロピル)−ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
(トリメチルシリル)[3−(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN−置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジ−t−ブチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−ビス−(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−メチル−5−メチル−2−ピロリドン等のN−置換ピロリドンN−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−フェニル−2−ピペリドン等のN−置換ピペリドン;N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタム、N−メチル−ω−ラウリロラクタム、N−ビニル−ω−ラウリロラクタム、N−メチル−β−プロピオラクタム、N−フェニル−β−プロピオラクタム等のN−置換ラクタム類;の他、
N,N−ビス−(2,3−エポキシプロポキシ)−アニリン、4,4−メチレン−ビス−(N,N−グリシジルアニリン)、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン類、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルマレイミド、N,N−ジエチル尿素、1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジビニルエチレン尿素、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、4−N,N−ジメチルアミノアセトフェン、4−N,N−ジエチルアミノアセトフェノン、1,3−ビス(ジフェニルアミノ)−2−プロパノン、1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン等を挙げることができる。なかでも、アルコキシシランにより変性された変性BRが好ましい。
なお、上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性BRとしては、例えば、溶液重合のブタジエンゴムの重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたBR等が好適に用いられる。上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物において、該表面側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
内側トレッドゴム層用ゴム組成物において、該内側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、初期の氷上グリップ性能の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物において、該表面側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のBRの含有量は、初期の氷上グリップ性能の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
内側トレッドゴム層用ゴム組成物において、該内側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のBRの含有量は、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物のそれぞれにおいて、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム及びBRの合計含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、100質量%でもよい。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物は、シリカを含むことが好ましい。表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物に使用可能なシリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは70m/g以上、より好ましくは140m/g以上、更に好ましくは160m/g以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性、破壊強度が得られる警告がある。また、シリカのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは500m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれるシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは300質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは75質量部以下である。上記範囲内にすることで、初期の氷上グリップ性能が高い傾向がある。
内側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれるシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは200質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内にすることで、市場走行による氷上グリップ性能の低下が抑制される傾向がある。
市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物は、下記式を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.0以下が更に好ましい。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT−Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましい。下限以上であると、良好な破壊強度等が得られる傾向がある。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。上限以下であると、配合量に見合った効果が得られる傾向がある。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物は、紫外線劣化を抑制する目的で、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、80m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性、氷上性能が得られる傾向がある。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散性が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001によって求められる。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれるカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは4質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。上記範囲内にすることで、紫外線劣化を抑制しつつ、氷上グリップ性能を向上できる傾向がある。
内側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれるカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。上記範囲内にすることで、摩耗末期の紫外線劣化を抑制することができる。
タイヤ製造コストの最適化と操縦安定性を確保する観点から、表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物は、下記式を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
タイヤの操縦安定性能の観点から、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、0.80以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.40以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、0.10以上が好ましく、0.13以上がより好ましく、0.15以上が更に好ましい。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物は、液体可塑剤(25℃で液体状態の可塑剤)、樹脂等を含むことが好ましい。樹脂とは、常温(25℃)で固体状態の樹脂を指す。
液体可塑剤としては特に限定されず、オイル、液状樹脂、液状ジエン系ポリマー等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。
液状樹脂としては、20℃で液体状態のテルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
液状ジエン系ポリマーとしては、20℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。
樹脂としては、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル重合体とは、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂であり、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α−メチルスチレンの単独重合体(α−メチルスチレン樹脂)、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
クマロン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
インデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるものなどが挙げられる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂などが挙げられる。
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。また、これらの水素添加物を使用することもできる。
ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールなどが挙げられる。
ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、重合反応が容易である点、天然松脂が原料のため、安価であるという点から、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα−ピネン及びβ−ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β−ピネンを主成分とするβ−ピネン樹脂と、α−ピネンを主成分とするα−ピネン樹脂とに分類される。
芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂を使用することもできる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
アクリル系樹脂としては、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などを使用できる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42−45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
また、アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
樹脂の軟化点は、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が特に好ましい。また、上記軟化点は、200℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。上記範囲内であると、市場走行による氷上グリップ性能の低下を抑制できる傾向がある。
なお、樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する樹脂の含有量及び液体可塑剤の含有量は、下記式を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
前記式の下限は0.20以上が好適であるが、より好ましくは0.23以上、更に好ましくは0.25以上である。前記式の上限は特に限定されないが、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.70以下、更に好ましくは0.60以下である。
市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する樹脂の含有量及び液体可塑剤の含有量は、下記式を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
前記式の下限は0.20以上が好適であるが、より好ましくは0.23以上、更に好ましくは0.25以上である。前記式の上限は特に限定されないが、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.70以下、更に好ましくは0.60以下である。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれる液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内にすることで、市場走行による氷上グリップ性能の低下が抑制される傾向がある。
内側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれる液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内にすることで、市場走行による氷上グリップ性能の低下が抑制される傾向がある。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれる樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内にすることで、市場走行による氷上グリップ性能の低下が抑制される傾向がある。
内側トレッドゴム層用ゴム組成物に含まれる樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内にすることで、市場走行による氷上グリップ性能の低下が抑制される傾向がある。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、下記式(6)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する樹脂の含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する樹脂の含有量は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が更に好ましい。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、下記式(7)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する樹脂及び液体可塑剤の合計含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する樹脂及び液体可塑剤の合計含有量は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が更に好ましい。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、下記式(9)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するシリカ及び樹脂の合計含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するシリカ及び樹脂の合計含有量は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が更に好ましい。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、下記式(11)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する水溶性材料及び樹脂の合計含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する水溶性材料及び樹脂の合計含有量は、0.60以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.20以下が更により好ましい。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α′−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。下限以上にすることで、充分な耐オゾン性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。上限以下にすることで、良好なタイヤの外観が得られる傾向がある。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部以上、より好ましくは0.5〜5質量部である。
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10.0質量部、より好ましくは1.0〜5.0質量部である。
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.5〜3.0質量部である。
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。なお、ワックスの含有量は、耐オゾン性、コストの点から、適宜設定すれば良い。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成する等の点で、硫黄を配合することが好ましい。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上である。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、通常、0.3〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部である。
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50〜200℃、好ましくは80〜190℃であり、混練時間は、通常30秒〜30分、好ましくは1分〜30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温〜80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120〜200℃、好ましくは140〜180℃である。
前記タイヤは、前述の表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、各成分を配合した表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物を、未加硫の段階で、各部材の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、タイヤが得られる。
タイヤとしては、空気入りタイヤ、エアレス(ソリッド)タイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)として好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、表面側トレッドゴム層及び内側トレッドゴム層の厚みが下記式(2)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、内側トレッドゴム層の厚み(mm)−表面側トレッドゴム層の厚み(mm)(厚み差)は、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、1.8mm以上が更に好ましい。該厚み差の上限は特に限定されないが、8.0mm以下が好ましく、7.0mm以下がより好ましく、6.0mm以下が更に好ましい。
なお、表面側トレッドゴム層の厚みは、表面側トレッドゴム層の表面上の各点における表面側トレッドゴム層の厚みのうち、最大寸法である。内側トレッドゴム層の厚みは、内側トレッドゴム層の表面上の各点における内側トレッドゴム層の厚みのうち、最大寸法である。そして、各点における表面側トレッドゴム層、内側トレッドゴム層の厚みは、それぞれ、各点における表面側トレッドゴム層表面の法線、各点における内側トレッドゴム層表面の法線に沿って計測される。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、内側トレッドゴム層の厚みがトレッドゴム層の厚み全体の50%以上を占めることが好ましい。より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下である。
なお、トレッドゴム層の厚み(コード層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム層の厚み)は、コード層表面から表面側トレッドゴム層までの厚みで、表面側トレッドゴム層の表面上の各点からコード層表面までのトレッドゴム層の厚みのうち、最大寸法である。そして、各点におけるトレッドゴム層の厚み(表面側トレッドゴム層の表面上の各点からコード層表面までのトレッドゴム層の厚み)は、各点における表面側トレッドゴム層表面の法線に沿って計測される。
市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、前記タイヤは、タイヤのいずれかの子午線断面において、最もタイヤ半径方向内側に位置する溝底よりもタイヤ半径方向外側に、少なくとも一部の内側トレッドゴム層が位置するものであること好ましい。これにより、摩耗末期でも、多量に配合された水溶性材料の溶解で形成される空隙のエッジ効果、水膜の除去効果により良好な氷上グリップ性能が得られる。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、下記式(3)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、(表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する水溶性材料の含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する水溶性材料の含有量)/(表面側トレッドゴム層の厚み/内側トレッドゴム層の厚み)は、0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましく、0.80以下が更に好ましい。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、下記式(4)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、(表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量)/(表面側トレッドゴム層の厚み/内側トレッドゴム層の厚み)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が更に好ましい。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、下記式(5)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、(表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する樹脂の含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する樹脂の含有量)/(表面側トレッドゴム層の厚み/内側トレッドゴム層の厚み)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が更に好ましい。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、下記式(8)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、(表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する樹脂及び液体可塑剤の合計含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対する樹脂及び液体可塑剤の合計含有量)/(表面側トレッドゴム層の厚み/内側トレッドゴム層の厚み)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が更に好ましい。
前記タイヤは、市場走行による氷上グリップ性能の低下抑制の観点から、下記式(10)を満たすことが好ましい。
Figure 2021172227
市場走行による氷上グリップ性能の低下の抑制の観点から、(表面側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するシリカ及び樹脂の合計含有量/内側トレッドゴム層に含まれるゴム成分100質量部に対するシリカ及び樹脂の合計含有量)/(表面側トレッドゴム層の厚み/内側トレッドゴム層の厚み)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が更に好ましい。
以下、図面を参照しつつ、本発明のタイヤの好ましい実施形態の一例を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る乗用車用タイヤの一部が示された断面図である。なお、図1は乗用車用タイヤについて例示したが、本発明の空気入りタイヤは、重荷重用タイヤ等、他の用途にも適用できる。
図1において、上下方向がタイヤ半径方向であり、左右方向がタイヤ軸方向であり、紙面に対して垂直方向がタイヤ周方向である。乗用車用タイヤ1は、トレッド部7と、その両端からタイヤ半径方向内方に延びる一対のサイドウォール部8と、各サイドウォール部8の内方端に位置するビード部3と、リム上部に位置するチェーファー2とを備える。また両側のビード部3の間にはカーカス10が架け渡されるとともに、このカーカス10のタイヤ半径方向外側にブレーカー部9が配置されている。
カーカス10は、カーカスコードを配列する1枚以上のカーカスプライから形成される。該カーカスプライは、トレッド部7からサイドウォール部8を経て、ビードコア4と、該ビードコア4の上端からサイドウォール方向に延びるビードエイペックス5との周りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返されて係止される。ブレーカー部9は、ブレーカーコードを配列した2枚以上のブレーカープライからなり、各ブレーカーコードがブレーカープライ間で交差するよう向きを違えて配置している。ブレーカー部9の上側には、ブレーカー部9を保護するバンド6が配置されている。
トレッド部7は、表面側トレッドゴム層と内側トレッドゴム層のうち、路面に接地する側に配置される表面側トレッドゴム層7cと、該表面側トレッドゴム層7cのタイヤ半径方向内側に配置される内側トレッドゴム層7bとで構成される。表面側トレッドゴム層7c及び内側トレッドゴム層7bは、共に前記水溶性材料を含み、かつ前記式(1)を満たす。また、表面側トレッドゴム層7c及び内側トレッドゴム層7bに含まれる樹脂、液体可塑剤の含有量が前記式(2)、(3)を満たすことが好適である。
表面側トレッドゴム層7c及び内側トレッドゴム層7bの厚みは、前記式(4)を満たすことが好ましい。この場合、図1において、符号P1は表面側トレッドゴム層7cの表面上の点、符号P2は内側トレッドゴム層7bの表面上の点である。両矢印T1は点P1における表面側トレッドゴム層7cの厚み、両矢印T2は点P2における内側トレッドゴム層7bの厚みである。この厚みT1、T2は、それぞれ、点P1における表面側トレッドゴム層表面の法線、点P2における内側トレッドゴム層表面の法線に沿って計測される。そして、表面側トレッドゴム層7cの厚みは、表面側トレッドゴム層7cの表面上の各点における表面側トレッドゴム層の厚みのうち、最大寸法であり、内側トレッドゴム層7bの厚みは、内側トレッドゴム層7bの表面上の各点における内側トレッドゴム層の厚みのうち、最大寸法である。
内側トレッドゴム層7bの厚みがトレッドゴム層の厚み全体の50%以上を占めることが好ましい。図1において、符号P3は表面側トレッドゴム層7cの表面上の点である。両矢印T3は、点P3におけるバンド6(コード層)のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム層の厚みである。この厚みT3は、点P3における表面側トレッドゴム層表面の法線に沿って計測される。そして、トレッドゴム層(表面側トレッドゴム層7c及び内側トレッドゴム層7bからなるトレッドゴム層)の厚みは、表面側トレッドゴム層7cの表面上の各点におけるトレッドゴム層の厚みのうち、最大寸法である。
図1のタイヤ子午線断面において、タイヤ1の内側トレッドゴム層7bの少なくとも一部は、最もタイヤ半径方向内側に位置する溝底26a(溝26の溝底のうち、最もタイヤ半径方向内側に位置するもの)よりも、タイヤ半径方向外側に位置する箇所に存在している。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:RSS#3
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(Co系触媒を用いて合成したハイシスBR、シス95質量%以上)
カーボンブラック:キャボットジャパン社製のショウブラックN220(NSA112m/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウラトシルVN3(NSA175m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi69
水溶性粒子1:馬居化成工業(株)製のMN−00(硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径)75μm)
水溶性粒子2:馬居化成工業(株)製のUSN−00(超微細硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径)3μm)
水溶性粒子3:日本製紙(株)製のリグニンスルホン酸ナトリウム(中央値粒度(メジアン径)10μm)
オイル:出光興産(株)製のNH−60
樹脂1:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4150(β−ピネン樹脂、軟化点70〜80℃)
樹脂2:アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4401(α−メチルスチレン及びスチレンの共重合体、軟化点85℃)
樹脂3:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(芳香族変性テルペン樹脂、軟化点125℃)
ワックス:日本精鑞社製のOzoace0355
老化防止剤:住友化学社製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油社製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製の銀嶺R
硫黄:細井化学工業社製のHK−200−5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業社製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業社製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
<実施例及び比較例>
(タイヤの製造)
表1に記載の表面側トレッドゴム層用ゴム組成物、内側トレッドゴム層用ゴム組成物をバンバリーミキサーにて混練し、それぞれの混練物を得た。得られたそれぞれの未加硫ゴム組成物を表面側トレッドゴム層、内側トレッドゴム層形状に成形し、タイヤ成形機上にて他のタイヤ部材と共に張り合わせ、150℃30分間プレス加硫し、試験用タイヤを得た(タイヤサイ195/65R15)。
得られた試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
<摩耗後の氷上グリップ性能>
試験用タイヤをバフかけした後、12,000km走行したタイヤを装着し、制動性能(氷上制動停止距離)について、時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例1の新品時を100として、下記式により指数表示した。指数が大きいほど、摩耗後の氷上グリップ性能が良好であることを示す。
(氷上グリップ性能指数)=(比較例1の新品時の停止距離)/(各配合の摩耗後の停止距離)×100
Figure 2021172227
表1から、共に水溶性材料を含む表面側トレッドゴム層及び内側トレッドゴム層を有し、かつ前記式(1)を満たすタイヤは、摩耗後でも氷上グリップ性能に優れ、市場走行による氷上グリップ性能の低下を抑制できることが明らかとなった。
1 乗用車用タイヤ
2 チェーファー
3 ビード部
4 ビードコア
5 ビードエイペックス
6 バンド
7 トレッド部
7c 表面側トレッドゴム層
7b 内側トレッドゴム層
8 サイドウォール部
9 ブレーカー部
10 カーカス
26 溝
26a 溝底

Claims (13)

  1. コード層と、前記コード層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム層とを備えたタイヤであって、
    前記トレッドゴム層は、タイヤの表面側に配された表面側トレッドゴム層と、前記表面側トレッドゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接して配された内側トレッドゴム層とを少なくとも有し、
    前記表面側トレッドゴム層及び前記内側トレッドゴム層は共に水溶性材料を含み、かつ下記式(1)を満たすタイヤ。
    Figure 2021172227
  2. タイヤのいずれかの子午線断面において、最もタイヤ半径方向内側に位置する溝底よりもタイヤ半径方向外側に、少なくとも一部の内側トレッドゴム層が位置する請求項1記載のタイヤ。
  3. 下記式(2)を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
    Figure 2021172227
  4. 内側トレッドゴム層の厚みがトレッドゴム層の厚み全体の60%以上を占める請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ。
  5. 下記式(3)を満たす請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ。
    Figure 2021172227
  6. 下記式(4)を満たす請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ。
    Figure 2021172227
  7. 下記式(5)を満たす請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ。
    Figure 2021172227
  8. 下記式(6)を満たす請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ。
    Figure 2021172227
  9. 下記式(7)を満たす請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ。
    Figure 2021172227
  10. 下記式(8)を満たす請求項1〜9のいずれかに記載のタイヤ。
    Figure 2021172227
  11. 下記式(9)を満たす請求項1〜10のいずれかに記載のタイヤ。
    Figure 2021172227
  12. 下記式(10)を満たす請求項1〜11のいずれかに記載のタイヤ。
    Figure 2021172227
  13. 下記式(11)を満たす請求項1〜12のいずれかに記載のタイヤ。
    Figure 2021172227
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