JPWO2019065662A1 - 共重合体ゴム及びその製造方法、並びに架橋ゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

加工性、強度及び均質性を兼ね備え、樹脂の改質剤等に適する共重合体ゴム、及び機械的強度、耐摩耗性等に優れる架橋ゴム組成物と、これらの原料として優れる多官能ビニル芳香族共重合体を提供する。多官能ビニル芳香族共重合体(A)、共役ジエン化合物(B)と、芳香族ビニル化合物(C)を含む原料を共重合させて得られる重合体ゴムであって、多官能ビニル芳香族共重合体(A)が、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)、及び三級アミノ基を有する構造単位(c)を含有し、構造単位(a)を2モル%以上含み、構造単位(a)の少なくとも一部はビニル基含有構造単位(a1)として存在し、数平均分子量が300〜100000であることを特徴とする。

Description

本発明は、加工性に優れ、かつ、引張強度と耐摩耗性に優れる共重合体ゴム及びそれを架橋した架橋ゴム生成物に関する。
SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)スチレン−イソプレンゴム等の共役ジエンゴムは、耐摩耗性、弾性、耐水性に優れ、成型材料、樹脂の改質剤等の様々な用途に用いられている。
この共役ジエンゴムの主要な用途の一つとして、自動車用のタイヤが挙げられる。タイヤにおいて要求される特性としては、機械的強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性等(以下、併せて、強度等ともいう。)が挙げられる。さらに近年では、省エネ性能、つまり低燃費性に優れるタイヤ(エコタイヤ)の開発が活発に行われてきている。このエコタイヤは、強度が高いことに加え、転がり抵抗が小さいことが要求される。
タイヤの強度等を担保するために、共役ジエンゴムにカーボンブラックやシリカ等のフィラー(補強用充填剤)を添加することが知られているが、タイヤの強度をさらに向上させるとともに、優れた転がり抵抗を付与する材料として、末端変性溶液重合型SBR(末端変性S−SBR)が注目されている。末端変性S−SBRは、SBRの分子末端に官能基を有し、この分子末端の官能基がフィラーと相互作用する。この相互作用により、SBR中のフィラーの分散性が向上するとともに、SBRの分子末端が拘束されて運動性が低下する。その結果、タイヤのヒステリシスロス(内部摩擦)が低減し、転がり抵抗が低下する。この特性を活かし、強度と低転がり抵抗を兼ね備えたエコタイヤの開発が行われている。
例えば、特許文献1では、非極性溶媒中で有機リチウム化合物を開始剤として用い、リビングアニオン重合により、α−メチルスチレンブロックとブタジエンブロックからなるブロック共重合体を合成し、さらに必要により多官能性カップリング剤を反応させることで、高温特性とゴム的性質を兼ね備えたS−SBRを得ている。
また、特許文献2では、共役ジエン及びモノビニル芳香族モノマーのランダムコポリマーブロックと、ポリ共役ジエンブロックと、多官能性リチウム系開始剤由来の官能基とを有する、星形−ブロックインターポリマーが開示され、転がり抵抗の低減やトラクション特性の改善といった優れた特性を有するタイヤトレッドの作製におけるゴムとして、広く使用することができることが開示されている。
特許文献1及び2の技術は、ゴム成分に分岐構造を導入することで、ゴムの加工性を担保する効果があると考えられる。しかし、強度を担保するためのフィラーとの相互作用については、特段の工夫はなく、強度に対する寄与は十分ではない。
また、特許文献3では、複数のジエン系ゴムを含むブレンドゴムに、所定量のカーボンブラックを配合したゴム組成物に、分子鎖末端にカーボンブラックと相互作用のある官能基を有し、かつジエン系ゴムのゴム成分に類似するポリマー構造からなる低分子量の官能基含有ポリマーを配合してなるゴム組成物が開示されている。このゴム組成物は、カーボンブラックと相互作用を有する低分子ポリマーを配合することにより、各ジエン系ゴム成分中へのカーボンブラック分配量を制御できる。そのため、各々のゴム成分の特長を有効に発現させ、例えば転がり特性とウェット特性のような背反関係にあるゴム特性の両立を図ることができる。しかし、この技術は、低分子量ポリマーを配合するため、強度に対する寄与としては十分ではない。
また、特許文献4では、共役ジエン単量体単位、芳香族ビニル単量体単位及び少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体単位を含む架橋ゴム粒子、並びに、特定の結合構造を有する共役ジエン単量体単位を含む共役ジエン/芳香族ビニル共重合ゴムを含有するゴム組成物が開示され、この架橋ゴム粒子はカルボン酸基、ヒドロキシル基及び/又はエポキシ基を有する単量体単位を含んでも良いと開示されている。この技術は、シリカ等の無機充填剤(フィラー)との適度な相互作用を有することから、無機充填剤の分散性や加工性に優れる。しかし、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体単位や、カルボン酸基、ヒドロキシル基及び/又はエポキシ基を有する単量体単位として開示されている物質は、いずれも低分子である。そのため、反応性が過剰に高く、架橋ゴム粒子及びゴム組成物においてゲル化が進行する恐れがあった。また、この技術は共役ジエン/芳香族ビニル共重合ゴムとは別途架橋ゴムを合成した上で、その架橋ゴムを共役ジエン/芳香族ビニル共重合ゴムと配合することが必須であり、工程の簡易性の観点で、改善が必要である。
特許文献5は、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を開示するが、これを共重合体ゴムの製造に使用することは教えない。
特開2003−73434号公報 特表2004−517202号公報 特開2005−213381号公報 WO2002/000779号 特開2004−123873号公報
本発明は、かかる課題を解決し、加工性、強度及び均質性を兼ね備えた材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、共役ジエンゴムの構成単位として、分岐構造及びフィラーとの相互作用機能を併せ持つ、特定の多官能ビニル芳香族共重合体化合物を用いることで、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
本発明は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)及びモノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)、及び三級アミノ基を有する構造単位(c)を含有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、
構造単位(a)を2モル%以上95モル%未満含有し、構造単位(a)の少なくとも一部は下記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)であり、
Figure 2019065662

式中、Rは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。
構造単位(c)の少なくとも一部は多官能ビニル芳香族共重合体の末端に存在する末端基(c1)であり、1分子当たりの平均の末端基(c1)の数は1.0以上であり、構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は0.02〜0.8の範囲であることを特徴とする多官能ビニル芳香族共重合体である。
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、数平均分子量Mnが300〜100,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が100.0以下であることがよい。
また、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、前記構造単位(c)が、下記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。
Figure 2019065662

式中、mは1〜12の繰り返し単位数を示す。Z及びZは、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基を示す。Y〜Yは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。
また、本発明は、前記多官能ビニル芳香族共重合体(A)、及び共役ジエン化合物(B)を含む原料を共重合させて共重合体ゴムを製造することを特徴とする共重合体ゴムの製造方法である。
また、本発明の共重合体ゴムの製造方法は、多官能ビニル芳香族共重合体(A)、共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)を含む原料を共重合させて共重合体ゴムを製造することが好ましい。また、アニオン重合によって共重合することが好ましい。
また、本発明は、前記共重合体ゴムの製造方法で得られた共重合体ゴムに、フィラーを配合し、加硫により架橋させてゴム組成物を得ることを特徴とする架橋ゴム組成物の製造方法である。
また、本発明は、多官能ビニル芳香族共重合体の構造単位(A1)と、共役ジエン化合物の構造単位(B1)又は共役ジエン化合物の構造単位(B1)と芳香族ビニル化合物の構造単位(C1)を含有する共重合体ゴムであって、構造単位(A1)を0.001〜6重量%、構造単位(B1)を29〜99.999重量%及び構造単位(C1)を0〜70重量%含む共重合体ゴムである。
また、本発明は、前記共重合体ゴムと、フィラーを含有し、該共重合体ゴムが架橋構造を有することを特徴とする架橋ゴム組成物である。
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)及びモノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)、及び三級アミノ基を有する構造単位(c)を含有する。
構造単位(a)を2モル%以上95モル%未満含有し、構造単位(a)の少なくとも一部は上記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)である。式(1)中、Rは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。
構造単位(c)の少なくとも一部は多官能ビニル芳香族共重合体の末端に存在する末端基(c1)であり、1分子当たりの平均の末端基(c1)の数は1.0以上であり、構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)モル分率は0.02〜0.8の範囲である。
多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物とモノビニル芳香族化合物を共重合させることにより得られ、比較的広範な有機溶剤に対する溶解性を有するものが好ましい。
多官能ビニル芳香族共重合体は、共重合体ゴムまたは架橋ゴム組成物製造時の加工性の観点から、Mnは300〜100,000であり、好ましくは500〜5000であり、より好ましくは1,000〜3,000である。また、分子量分布は、加工性の観点から、100.0以下、好ましくは1〜50、より好ましくは3〜20、さらに好ましくは5〜10である。
ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)は、耐熱性や耐摩耗性等を発現させるための架橋成分としてのビニル基を含む。また、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)は、硬化反応に関与するビニル基を有しないため、柔軟性や溶解性等を与える。また、三級アミノ基を有する構造単位(c)は、シリカ等の無機充填剤(フィラー)と相互作用し、架橋ゴム組成物とした際に、フィラーの分散性を向上させる。従って、構造単位(a)、(b)及び(c)の構造及び組成は、多官能ビニル芳香族共重合体(A)、それを含有する共重合体ゴム、さらにそれを含有する架橋ゴム組成物の物性に大きな影響を及ぼす。
前記ジビニル芳香族化合物の例としては、ジビニルベンゼン(各異性体含む)、ジビニルナフタレン(各異性体を含む)、ジビニルビフェニル(各異性体を含む)が好ましく使用されるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。成形加工性の観点から、より好ましくはジビニルベンゼン(m−体、p−体又はこれらの異性体混合物)である。
前記モノビニル芳香族化合物の例としては、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニルなどのビニル芳香族化合物、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルビニルベンゼン、m−エチルビニルベンゼン、p−エチルビニルベンゼンなどの核アルキル置換ビニル芳香族化合物などが挙げられるが、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、エチルビニルベンゼン(各異性体含む)が好ましい。
多官能ビニル芳香族共重合体(A)は、末端の構造単位(d)を有する。末端の構造単位(d)は、構造単位(a)と構造単位(b)の一部からなっていてもよいし、構造単位(c)からなる末端基(c1)であってもよい。モノマーとしてジビニル芳香族化合物とモノビニル芳香族化合物以外の他のモノマー類(G)を使用し、これから生じる構造単位の一部又は全部を末端の構造単位の一部としてもよい。
構造単位(c)は、三級アミノ基を有していれば、その構造は限定しないが、上記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。
上記式(2)において、mは1〜12の繰り返し単位数を示すが、原料入手の容易さ並びに経済性の観点から、より好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは2〜4である。また、Z及びZは、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基を示すが、同様の観点から、好ましくはZ及びZともに、メチル基である。また、Y〜Yは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示すが、同様の観点から、好ましくは水素原子又はメチル基である。
上述のとおり、ジビニル芳香族化合物は構造単位(a)を与え、モノビニル芳香族化合物は構造単位(b)を与える。ジビニル芳香族化合物はビニル基を複数有するため架橋し、分岐構造を与えるが、架橋の程度は溶解性を示す程度に制御される。未反応のビニル基を有する構造単位は上記構造単位(a1)又は末端の構造単位(d1)等となり、ビニル基を複数有する多官能構造を与える。
多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法は、特に制限はないが、次に述べる方法が、共重合組成の制御のしやすさの観点で好ましい。
ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物及びフェノール化合物を共重合させて、構造単位(a)、構造単位(b)及びフェノール性水酸基を有する構造単位(c’)を含有する多官能ビニル芳香族共重合体前駆体(A’)を得る。この前駆体(A’)中のフェノール性水酸基と、下記式(3)に示す三級アミノ基を有するハロゲン化合物とを反応させることで、多官能ビニル芳香族共重合体(A)を得る。
前記フェノール化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物であれば限定しないが、共重合のしやすさ、組成や分子量の制御のしやすさの観点から、アルキルフェノール及びフェノールが好ましく、より好ましくは、クレゾール類及びキシリレノール類である。クレゾール類及びキシレノール類の例としては、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,6−キシレノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾールが挙げられる。
Figure 2019065662

式(3)において、m、Z及びZは、式(2)と同じであることが好ましい。Xはハロゲンを示すが、反応制御のしやすさの観点から、I、Br、Clが好ましく、より好ましくはClである。
多官能ビニル芳香族共重合体は、上記構造単位(a)を2モル%以上で、95モル%未満含有する。好ましくは5〜80モル%、より好ましくは10〜70モル%、特に好ましくは15〜65モル%含む。
そして、構造単位(a)の少なくとも一部は、上記構造単位(a1)として、これを2〜80モル%含み、好ましくは5〜70モル%、より好ましくは10〜60モル%、さらに好ましくは15〜50モル%である。
また、構造単位(c)の少なくとも一部は、末端を構成する構造単位(d)中に、末端基(c1)として含まれ、1分子当たりの平均の数は、1.0個以上、より好ましくは1.5個以上であることがよい。
また、構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)モル分率は0.02〜0.8の範囲であり、好ましくは0.05〜0.75の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜0.7の範囲、特に好ましくは0.15〜0.50である。
なお、モル分率又はモル%の計算において、構造単位(a)は構造単位(a1)と構造単位(d1)を含む。末端の構造単位となり得る他の構造単位についても同様である。
また、末端の構造単位(d)は一分子当たり2.1個以上、好ましくは2.5個以上、より好ましくは3個以上有することがよい。
多官能ビニル芳香族共重合体は、構造単位(b)を5モル%以上で、98モル%未満含有することがよい。好ましくは20〜95モル%、より好ましくは30〜90モル%、特に好ましくは、36〜85モル%含む。構造単位(b)の一部は末端の構造単位(d2)であってもよい。
末端の構造単位(d)は、末端基(c1)が、1分子当たりの平均の数として、1.0個以上含まれる他は、構造単位(a)と構造単位(b)の一部である構造単位(d1)、(d2)からなっていてもよいし、モノマーとしてジビニル芳香族化合物とモノビニル芳香族化合物以外の他の公知のビニルモノマー類(G)を使用し、これから生じる構造単位の一部又は全部を末端の構造単位(d3)としてもよい。
多官能ビニル芳香族共重合体は、構造単位(c)を含み、一部は末端基(c1)として存在する。構造単位(c)は、多官能ビニル芳香族共重合体中に、5〜90モル%、好ましくは10〜50モル%含むことがよい。
多官能ビニル芳香族共重合体又はその前駆体は、特許文献5等に記載の方法により得ることができる。例えば、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物やフェノール化合物を含むモノマーを、溶媒に溶解させた均一溶液中、20〜120℃の温度で重合させることにより得られる。前駆体から多官能ビニル芳香族共重合体とする方法は前記した方法が採用できる。
多官能ビニル芳香族共重合体又はその前駆体を製造する際には、必要により使用される他のモノマー類(G)を使用することができる。他のモノマー類としては、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物と共重合可能なモノマーや、所望の末端基を与える末端変性剤や連鎖移動剤等が挙げられる。
上記モノマーを共重合させるための触媒としては、酸触媒又はルイス酸触媒が適する。
酸触媒としては、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸等のスルホン酸触媒等が使用できる。その使用量は、全モノマー成分の合計100モルに対し、0.1〜10モルである。
ルイス酸触媒としては、金属イオン(酸)と配位子(塩基)からなる化合物であって、電子対を受け取ることのできるものであれば特に制限なく使用できる。ルイス酸触媒の中でも得られる共重合体の耐熱分解性の観点から、金属フッ化物又はその錯体が好ましく、特にB、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ti、W、Zn、Fe及びV等の2〜6価の金属フッ化物又はその錯体が好ましい。これらの触媒は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。得られる共重合体の分子量及び分子量分布の制御及び重合活性の観点から、三フッ化ホウ素のエーテル錯体が最も好ましく使用される。ここで、エーテル錯体のエーテルとしては、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等がある。
ルイス酸触媒は、全モノマー成分の合計100モルに対し、0.001〜100モルの範囲内で使用することがよく、より好ましくは0.01〜50モルである。最も好ましくは0.1〜10モルである。
また、所望により助触媒として、1種以上のルイス塩基化合物を使用することができる。ルイス塩基化合物の具体例としては、酢酸エチル等のエステル系化合物、メチルメルカプトプロピオン酸等のチオエステル系化合物、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、メチルアミン等のアミン系化合物、ジエチルエーテルのエーテル系化合物、ジエチルスルフィド等のチオエーテル系化合物、及びトリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン系化合物がある。
重合反応は、例えば、上記モノマーと酸触媒又はルイス酸触媒を、誘電率2.0〜15.0の有機溶媒に溶解させた均一溶媒中、20〜120℃、好ましくは、40〜100℃でカチオン共重合させる方法が適する。
有機溶媒としては、重合活性、溶解性のバランスの観点からトルエン、キシレン、n−へキサン、シクロへキサン、メチルシクロへキサン又はエチルシクロへキサンが特に好ましい。
重合反応停止後、多官能ビニル芳香族共重合体を回収する方法は特に限定されず、例えば、加熱濃縮法、スチームストリッピング法、貧溶媒での析出などの通常用いられる方法を用いればよい。
上記のようにして得られる多官能ビニル芳香族共重合体は、重合性のビニル基を1より多く、好ましくは平均として1分子当たり1.5以上、より好ましくは2.0以上有するので、共重体ゴムの原料として優れる。
共重体ゴムの原料としての本発明の多官能ビニル芳香族共重合体を、多官能ビニル芳香族共重合体(A)又は共重合体(A)ともいう。
多官能ビニル芳香族共重合体(A)、共役ジエン化合物(B)と、必要により芳香族ビニル化合物(C)を含む原料を共重合させて共重合体ゴムを製造する。芳香族ビニル化合物(C)は使用しない場合は、ブタジエンゴムやイソプレンゴムのようなジエン系ゴムを得ることができ、芳香族ビニル化合物(C)を使用することによりSBRのような共重合ゴムを得ることができる。
共役ジエン化合物(B)又はこれと芳香族ビニル化合物(C)を含む原料を共重合させて共重合体ゴムを製造する方法は、多官能ビニル芳香族共重合体(A)を原料の1つとして使用する他は、公知の方法、例えば特許文献1〜4に記載の方法を採用することができる。
共役ジエン化合物(B)としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中では、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが好ましい。
また、芳香族ビニル化合物(C)としては、モノビニル化合物であっても、ポリビニル化合物であってもあってもよいが、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、tert−ブトキシジメチルシリルスチレンおよびイソプロポキシジメチルシリルスチレンなどであり、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中では、スチレンが好ましい。
共役ジエン化合物(B)として、1,3−ブタジエンを使用し、芳香族ビニル化合物(C)としてスチレンを使用する場合は、スチレン―ブタジエンゴム(SBR)が得られる。また、芳香族ビニル化合物(C)としてスチレンを使用しない場合で、共役ジエン化合物(B)として、1,3−ブタジエン、又はイソプレンを使用する場合は、ブタジエンゴム(BR)、又はイソプレンゴム(IR)となる。中でもSBR構造を有すると、耐摩耗性、耐熱性、耐老化性に優れるものとなる。
これらを含む原料を共重合させて共重合体ゴムを製造する方法は、制限はないが、炭化水素溶媒中でのアニオン重合が好ましい。
例えば、炭化水素溶媒中において、有機アルカリ金属の化合物を開始剤として用いて、多官能ビニル芳香族共重合体(A)、共役ジエン化合物(B)又はこれらと芳香族ビニル化合物(C)をリビングアニオン重合させる方法や、共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)をリビングアニオン重合させたのち、多官能ビニル芳香族共重合体(A)を加えて反応を行う多段階反応方法がある。また、必要により末端を、官能基を有する重合停止剤で末端変性してもよい。
上記の方法に用いられる炭化水素溶媒の具体例としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、シクロへキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロヘキセンなどが挙げられる。
また、開始剤として用いられる有機アルカリ金属としては、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等を挙げることができる。
重合における多官能ビニル芳香族共重合体(A)の使用方法としては特に制限はなく、例として共役ジエン化合物(B)及び必要により芳香族ビニル化合物(C)と共存ざせて重合を開始する方法、共重合体(A)と重合開始剤とを反応させたのちに共役ジエン化合物(B)及び必要により芳香族ビニル化合物(C)を添加する方法、共役ジエン化合物(B)及び必要により芳香族ビニル化合物(C)の重合途中に共重合体(A)を添加し、ゴム分子に分岐構造を持たせる方法、共役ジエン化合物(B)及び必要により芳香族ビニル化合物(C)の重合終期に共重合体(A)を添加し、ゴム分子をカップリングせしめる方法などが挙げられる。
共重合体ゴムの重量平均分子量Mwは、100,000〜500,000の範囲とすることがよい。反応はアルカノールを添加するなどして終了させ、脱溶媒して共重合体ゴムを得ることができる。
上記多官能ビニル芳香族共重合体(A)、共役ジエン化合物(B)と、芳香族ビニル化合物(C)の全モノマーに対する使用割合は、下記の範囲とすることが好ましい。
多官能ビニル芳香族共重合体(A)は、0.001〜6重量%、好ましくは0.005〜3重量%、更に好ましくは0.01〜2重量%であり、共役ジエン化合物(B)は、94〜99.999重量%であり、芳香族ビニル化合物(C)は、0〜70重量%である。
芳香族ビニル化合物(C)を使用する場合は、多官能ビニル芳香族共重合体(A)は、上記と同様の範囲であり、共役ジエン化合物(B)は50〜97重量%、好ましくは55〜90重量%であり、芳香族ビニル化合物(C)は、2〜50重量%、好ましくは5〜45重量%である。
より好ましくは、多官能ビニル芳香族共重合体(A)は、0.01〜23重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%である。共役ジエン化合物(B)は50〜97重量%、更に好ましくは55〜90重量%である。芳香族ビニル化合物(C)は2〜49重量%、更に好ましくは5〜44重量%の範囲とすることが好ましい。
本発明の共重合体ゴムにおける多官能ビニル芳香族共重合体の構造単位(A1)、共役ジエン化合物の構造単位(B1)、及び芳香族ビニル化合物の構造単位(C1)の含有割合は、構造単位(A1)を0.001〜6重量%、構造単位(B1)を29〜99.999重量%及び構造単位(C1)を0〜70重量%含む。好ましい範囲は、上記原料の使用割合と同様な割合となることがよい。
本発明の架橋ゴム組成物は、上記共重合体ゴムに、フィラーや架橋剤を配合して、ゴム組成物とし、このゴム組成物を加硫により架橋させることにより得ることができる。フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。特にカーボンブラックとの相互作用に優れる。
フィラーとして含有されるカーボンブラックとしては、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどの各グレードのカーボンブラックを、用いることができる。これらの中では、優れた耐摩耗性を有するゴム弾性体が得られることから、HAF、ISAF、SAFが好ましい。
シリカとしては、一般的に充填剤として用いられる粒子状のものであればよいが、一次粒子径が50nm以下のものであることが好ましい。このようなシリカの具体例としては、含水ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。
フィラーの含有割合は、共重合体ゴムを含む全ゴム成分100重量部に対して10〜120重量部であることが好ましく、補強性とそれによる諸物性の改良効果の観点から、55〜100重量部であることが更に好ましい。
上記ゴム組成物に含有される架橋剤としては、硫黄による架橋、過酸化物による架橋等特に限定されないが、通常、硫黄が用いられる。架橋剤の含有割合は、全ゴム成分100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜3重量部である。
上記ゴム組成物においては、上記成分の他に、必要に応じて、シランカップリング剤、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等のゴム配合油、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸(加硫助剤および加工助剤)、酸化亜鉛、加硫促進剤などが含有されていてもよい。
上記ゴム組成物は、各成分を、例えばプラストミル、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することによって調製することができる。具体的には、上記の各成分のうち、架橋剤および加硫促進剤以外の成分を混練し、その後、得られた混練物に架橋剤および加硫促進剤を添加して更に混練することが好ましい。
本発明のゴム組成物は、機械的強度および耐摩耗性に優れるので、低燃費タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤなどのタイヤのトレッドや、サイドウォール部材を得るためのゴム組成物として好適である。また、ゴムベルト、ゴムホース、履物用材料等にも好適に使用できる。
本発明の架橋ゴム組成物は、上記のゴム組成物を架橋処理することによって得られる。例えば、タイヤは、上記のゴム組成物をタイヤの形状(具体的には、トレッドの形状)に応じて押し出し加工し、成形し、これを加硫機中で加熱加圧することによって、トレッドを製造し、このトレッドと他の部品を組み立てることにより、目的とするタイヤを製造することができる。
以下、本発明について実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各例中の部は特に記載がない場合いずれも重量部であり、各物性の評価は以下に示す方法によって行った。
1)分子量及び分子量分布
分子量及び分子量分布測定は、GPC(東ソー社製、HLC−8220GPC)を使用し、溶媒にテトラヒドロフラン(THF)、流量1.0ml/min、カラム温度38℃、単分散ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
2)多官能ビニル芳香族共重合体の構造
日本電子社製JNM−LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C−NMR及びH−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム−dを使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
3)末端基の解析
末端基の算出は、上記のGPC測定より得られる数平均分子量と13C−NMR及びH−NMR測定とガスクロマトグラフ(GC)分析の結果より得られるモノマー総量に対する末端基を導入するために使用した誘導体量とから、多官能ビニル芳香族共重合体1分子中に含まれる末端基数を算出した。なお、合成例1においては、末端基はジビニル芳香族化合物又はモノビニル芳香族化合物から生じる。末端基の算出は、13C−NMR及び1H−NMR測定結果に加えて、GC分析より得られる共重合体中に導入された各構造単位の総量に関するデータより、末端に導入された特定の構造単位の導入量を算出し、この末端に導入された特定の構造単位の導入量と上記のGPC測定より得られる数平均分子量とから、多官能ビニル芳香族共重合体1分子中に含まれる特定の構造単位の末端基数を算出した。
4)ムーニー粘度(ML(1+4)100℃ )
JIS K6300−1に従って、L形ローター、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃ で求めた。
5)ゲル状物の確認
共重合体ゴムを5倍重量のシクロヘキサンに溶解して溶液をろ化し、フィルター上の残留物の有無を目視確認した。残留物があればゲル状物ありと判定した。
6)引張強度
JIS K6251の引張試験法により300%モジュラスを測定し、比較例1で得られた架橋ゴムの測定値を100として、指数化した。指数値が大きいほど引張り強度に優れることを示す。
7)耐摩耗性
JIS K6264に準拠したランボーン型摩耗試験機を使用した方法を用い、スリップ率が30%の摩耗量を測定し、比較例1で得られた架橋ゴムの測定値を100として、指数化した。指数値が大きいほど耐摩耗性は良好である。
合成例1 DVB−810(新日鉄住金化学社製、ジビニルベンゼン成分の含有率81.0wt%)175.8g(ジビニルベンゼン成分1.09モル、エチルビニルベンゼン成分0.25モル)、2,6−キシレノールのトルエン溶液72.6g(2,6−キシレノール0.48モル)、トルエン417.3gを1.0Lの反応器内に投入し、4mmolのメタンスルホン酸をトルエン2mLに溶解させた溶液を添加し、45℃で2.5時間反応させた。重合溶液を水酸化カルシウムで停止させた後、活性アルミナをろ過助剤として、ろ過を行った。それから、60℃で減圧脱揮し、キシレノール骨格を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体前駆体(前駆体X1)199.7gを得た。
次に、前駆体X1を20.0g、炭酸カリウム12.3g、アセトン197.5g、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド54.0gを1.0Lの反応器に投入し、還流させながら72時間反応後、酸性条件にてアルカリ、クロリドを除去し、その後中性に戻してキシレノール骨格の水酸基をアミノエーテル変性させた、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体(共重合体X)を得た。
得られた共重合体XのMnは1360、Mwは12900、Mw/Mnは9.5であった。GC分析、GPC測定、FT−IR、13C‐NMR及び1H‐NMR分析により、共重合体Xは、ジビニル芳香族化合物(a)由来の下記ビニル基含有構造単位構成単位(xa1)並びに三級アミノ基を有する末端基(xc1)を有することを確認した。
Figure 2019065662
(*は、共重合体Xの主鎖との結合部分である。)
また、共重合体Xはジビニルベンゼン由来の構造単位(a)を62モル%有し、一分子あたりの平均の(xc1)の数は2.7個であった。また、全構造に対する(xa1)のモル分率は0.25であった。
また、共重合体Xは、トルエン、キシレン、アセトン、THF、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
合成例2
DVB−810(合成例1に同じ)175.8g(ジビニルベンゼン成分1.09モル、エチルビニルベンゼン成分0.25モル)、フェノールのトルエン溶液59.2g(フェノール0.48モル)、トルエン417.3gを1.0Lの反応器内に投入し、2.5mmolのメタンスルホン酸をトルエン2mLに溶解させた溶液を添加し、45℃で6時間反応させた。重合溶液を水酸化カルシウムで停止させた後、活性アルミナをろ過助剤として、ろ過を行った。それから、60℃で減圧脱揮し、フェノール骨格を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体前駆体(前駆体Y1)190.4gを得た。
次に、前駆体Y1を20.0g、炭酸カリウム12.3g、アセトン197.5g、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド54.0gを1.0Lの反応器に投入し、還流させながら72時間反応後、酸性条件にてアルカリ、クロリドを除去し、その後中性に戻してフェノール骨格の水酸基をアミノエーテル変性させた、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体(共重合体Y)を得た。
得られた共重合体YのMnは650、Mwは2580、Mw/Mnは4.0であった。GC分析、GPC測定、FT−IR、13C‐NMR及び1H‐NMR分析により、共重合体Xは、ジビニル芳香族化合物(a)由来のビニル基含有構造単位構成単位(xa1)並びに三級アミノ基を有する末端基(yc1)を有することを確認した。
Figure 2019065662
また、共重合体Yはジビニルベンゼン由来の構造単位(a)を62モル%有し、一分子あたりの平均の(yc1)の数は2.0個であった。また、全構造に対する(xa1)のモル分率は0.20であった。
また、共重合体Yは、トルエン、キシレン、アセトン、THF、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
合成例3
合成例1で得られた前駆体X1を使用し、前駆体X1を20.0g、炭酸カリウム12.3g、アセトン197.5g、2−(ジメチルアミノ)エチルクロリド54.0gを1.0Lの反応器に投入し、還流させながら72時間反応後、酸性条件にてアルカリ、クロリドを除去し、その後中性に戻してキシレノール骨格の水酸基をアミノエーテル変性させた、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体(共重合体Z)を得た。
得られた共重合体ZのMnは1340、Mwは12900、Mw/Mnは9.6であった。GC分析、GPC測定、FT−IR、13C‐NMR及び1H‐NMR分析により、共重合体Zは、ジビニル芳香族化合物(a)由来の下記ビニル基含有構造単位構成単位(xa1)並びに三級アミノ基を有する末端基(zc1)を有することを確認した。
Figure 2019065662
また、共重合体Zはジビニルベンゼン由来の構造単位(a)を62モル%有し、一分子あたりの平均の(zc1)の数は2.7個であった。また、全構造に対する(xa1)のモル分率は0.25であった。
また、共重合体Zは、トルエン、キシレン、THF、アセトン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。
合成例4
DVB−810(合成例1に同じ)253.2g、トルエン874.6g、アニソール93.3gを1.0Lの反応器内に投入し、50℃で10ミリモルのメタンスルホン酸をトルエン2mlに溶解させた溶液を添加し、4時間反応させた。重合溶液を水酸化カルシウムで停止させた後、活性アルミナをろ過助剤として、ろ過を行った。それから、60℃で減圧脱揮し、アニソール骨格を有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体(共重合体R)241.2gを得た。
得られた共重合体RのMnは1000、Mwは18800、Mw/Mnは18.8であった。また、共重合体Rはジビニルベンゼン由来の構造単位(a)を64モル%有し、アニソール由来の末端構造基(rc1)を一分子あたり平均2.0個含有していた。また、全構造に対する(rc1)のモル分率は0.12であった。
共重合体Rはトルエン、キシレン、THF、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は見られなかった。
Figure 2019065662
実施例1
窒素置換された内容積0.5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン245g、THF2.5g、スチレン10g、1,3−ブタジエン40g、合成例1で得られた共重合体X0.015gを加えた。25℃において、sec−ブチルリチウム50mgを含むシクロヘキサン溶液5gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg添加して重合停止し、反応溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)を添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共重合体ゴムAを得た。得られた共重合体ゴムAの物性を表1に示す。
共重合体ゴムA、プロセスオイル、カーボンブラック、酸化亜鉛、ステアリン酸及び老化防止剤を、ラボプラストミルを用い、155℃、60rpmで4分間混練した。
上記混練で得られた混練物に、硫黄と加硫促進剤を加え、ラボプラストミルを用い、70℃、60rpmで1分間混練し、加硫して架橋ゴムAを得た。各添加物の配合割合を表2に示す。また、架橋ゴムAの物性を表3に示す。
比較例1
実施例1において、共重合体Xの代わりにDVB−810を、ジビニルベンゼン換算にて0.005g使用した以外は、実施例1と同様の手法で共重合体ゴムBを得た。得られた共重合体ゴムBの物性を表1に示す。
さらに、共重合体ゴムBを用いて、実施例1と同様の手法で架橋ゴムBを得た。架橋ゴムBの物性を表3に示す。
実施例2
合成例1にて使用した共重合体Xのかわりに、合成例2にて重合した共重合体Yを使用した以外は、実施例1と同様の手法で共重合体ゴムCを得た。得られた共重合体ゴムCの物性を表1に示す。
さらに共重合体ゴムCを、実施例1と同様の手法で混練・加硫し、架橋ゴムCを得た。架橋ゴムCの物性を表3に示す。
実施例3
合成例1にて使用した共重合体Xのかわりに、合成例3にて重合した共重合体Zを使用した以外は、実施例1と同様の手法で共重合体ゴムDを得た。得られた共重合体ゴムDの物性を表1に示す。
さらに共重合体ゴムDを、実施例1と同様の手法で混練・加硫し、架橋ゴムDを得た。架橋ゴムDの物性を表3に示す。
比較例2
合成例1にて使用した共重合体Xのかわりに、合成例4にて重合した共重合体Rを使用した以外は、実施例1と同様の手法で共重合体ゴムEを得た。得られた共重合体ゴムEの物性を表1に示す。
さらに共重合体ゴムEを、実施例1と同様の手法で混練・加硫し、架橋ゴムEを得た。架橋ゴムEの物性を表3に示す。
Figure 2019065662
Figure 2019065662
なお、表2において、使用した添加剤は、以下のとおり。
ゴム配合油:出光興産社製 ダイナプロセスオイル AC−12
硫黄:鶴見化学工業社製 粉末硫黄
酸化亜鉛:三井金属鉱業社製 亜鉛華1号
ステアリン酸:日油社製
カーボンブラック:新日化カーボン社製 ニテロン#300
加硫促進剤:N−tert−ブチルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド
老化防止剤:大内新興化学工業社製 ノクセラーNS
Figure 2019065662
表1、表3より、本発明の架橋ゴム組成物は、公知の分岐剤であるジビニルベンゼンを用いて得られた架橋ゴム組成物よりも、引張強度、耐摩耗性に優れることが分かる。また、加工性も優れていた。
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、共重合体ゴムの原料として優れる。本発明の共重合体ゴムは、分岐構造及びフィラーとの相互作用機能を併せ持つ多官能ビニル芳香族共重合体の構造単位を有することから、加工性及び強度を兼ね備える。更に、ゲル状物質ができにくく、均質となり、成型材料、樹脂の改質剤等に適用できる。
更に、この共重合体ゴムにフィラーを配合し、架橋させた架橋ゴム組成物は、フィラーの分散性に優れることから、機械的強度、耐摩耗性に優れる。そのため、タイヤ(特にタイヤトレッド)、免震用ゴム、ゴムホース、ゴムローラー、履物材料等に適用できる。

Claims (9)

  1. ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)、及び三級アミノ基を有する構造単位(c)を含有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、
    構造単位(a)を2モル%以上95モル%未満含有し、構造単位(a)の少なくとも一部は下記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)であり、
    Figure 2019065662

    式中、Rは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。
    構造単位(c)の少なくとも一部は多官能ビニル芳香族共重合体の末端に存在する末端基(c1)であり、1分子当たりの平均の末端基(c1)の数は1.0以上であり、構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対する構造単位(a1)のモル分率は0.02〜0.8の範囲であることを特徴とする多官能ビニル芳香族共重合体。
  2. 数平均分子量Mnが300〜100,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が100.0以下である請求項1に記載の多官能ビニル芳香族共重合体。
  3. 前記構造単位(c)が、下記式(2)で表される構造単位である請求項1又は2に記載の多官能ビニル芳香族共重合体。
    Figure 2019065662

    式中、mは1〜12の繰り返し単位数を示す。Z及びZは、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基を示す。Y〜Yは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の多官能ビニル芳香族共重合体(A)、及び共役ジエン化合物(B)を含む原料を共重合させることを特徴とする共重合体ゴムの製造方法。
  5. 多官能ビニル芳香族共重合体(A)、共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)を含む原料を共重合させる請求項4に記載の共重合体ゴムの製造方法。
  6. アニオン重合によって共重合する請求項4又は5に記載の共重合体ゴムの製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれかに記載の共重合体ゴムの製造方法で得られた共重合体ゴムに、フィラーを配合し、加硫により架橋させることを特徴とする架橋ゴム組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜3のいずれかに記載の多官能ビニル芳香族共重合体の構造単位(A1)と、共役ジエン化合物の構造単位(B1)又は共役ジエン化合物の構造単位(B1)と芳香族ビニル化合物の構造単位(C1)を含有する共重合体ゴムであって、構造単位(A1)を0.001〜6重量%、構造単位(B1)を29〜99.999重量%及び構造単位(C1)を0〜70重量%含むことを特徴とする共重合体ゴム。
  9. 請求項8に記載の共重合体ゴムと、フィラーを含有し、該共重合体ゴムが架橋構造を有することを特徴とする架橋ゴム組成物。
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