JPWO2018221077A1 - 電磁弁、電磁吸入弁機構、及び高圧燃料ポンプ - Google Patents

電磁弁、電磁吸入弁機構、及び高圧燃料ポンプ Download PDF

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Abstract

高圧化、また大流量化が進んだ場合においても、吸入弁の径方向の動きを抑制し、流量制御性を向上させる電磁弁、電磁吸入弁機構、又は高圧燃料ポンプを提供する。そのため、本発明の弁機構は、座巻部と可動部とを有し、前記座巻部と反対側のばね支持部により固定されるばね部材と、前記ばね部材の前記座巻部の側により付勢される弁体と、を備え、前記ばね支持部の側に凸となるとともに、前記ばね部材の径方向内側に位置する凸部が前記弁体に形成され、前記ばね部材の径方向中心を通り、ばね部材軸方向に切った断面図において、前記座巻部に隣接する前記可動部の少なくとも一巻き目の径方向両側の巻線断面に対し、前記凸部の先端部が前記ばね支持部の側に位置するように構成された。

Description

本発明は、電磁弁、電磁吸入弁機構、及び高圧燃料ポンプに関する。
本発明の高圧燃料ポンプの背景技術として、特許文献1、2に記載のものがある。特許文献1には「ポンプハウジング1と、プランジャ2と、電磁吸入弁300とを備え、電磁吸入弁300は、バルブ301cと、バルブ301cが離接することにより燃料通路が開閉されるバルブシート302aと、開弁時にバルブ301cが当接するバルブストッパ313とを有し、ポンプハウジング1に形成した電磁吸入弁挿入孔1kに電磁吸入弁300を取り付け、電磁吸入弁300を制御して吐出燃料の量を制御する高圧燃料ポンプにおいて、電磁吸入弁挿入孔1kに、バルブストッパ313に当接する底部1kaと、底部1kaを貫通し底部1kaの両側を連通する燃料通路孔1aとを設ける。」と開示されている(要約参照)。
また特許文献2には「加圧室121に燃料を導く燃料通路100を有するハウジング本体11と、燃料通路100に設けられる弁ボディ30と、弁ボディ30の弁座34に着座または弁座から離座する円板部41と中空筒状のガイド部42とからなる弁部材40と、筒部51を有するストッパ50と、弁部材40に当接可能なニードル60と、ニードル60を弁部材40の閉弁方向に吸引可能な電磁駆動部70と、を備えている。ストッパ50は、加圧室121側から見たとき、弁部材40の加圧室121側壁面を隠すようにして覆っている。ガイド部42は、内壁に、ストッパ50の筒部51の外壁と摺動可能な筒形状のガイド面43を有している。スプリング21は、軸方向の少なくとも一部がガイド面43の軸方向の少なくとも一部と重なるようにして設けられている。」と開示されている(要約参照)。
特開2016−191367号公報 特開2010−156264号公報
しかしながら、特許文献1に記載の吸入弁構造の場合、吸入弁が径方向に力がかかって傾斜する、あるいは径方向において振れた場合にこの動きを規制することができない。そうすると、吸入弁によるシートがされず、流量低下を招く、あるいは流量制御性の悪化を招くという問題がある。また、吸入弁が傾斜して吸入弁シート部に接触することにより、吸入弁シート部が摩耗することで、シート性能が悪化するという問題があった。
一方で特許文献2に記載の吸入弁の場合、吸入弁の凸部が弁ホルダの内径円筒で摺動ガイドされる構造になっている。しかし、この構造の場合、吸入弁の凸部にばねを保持するための凹み部を加工する必要があり、高精度の加工精度が要求されるうえに、ばねを保持するための部位(凹み部)を加工することによりコストが増大してしまうという問題があった。
そこで本発明では、高圧化、また大流量化が進んだ場合においても、吸入弁の径方向の動きを抑制し、流量制御性を向上させる電磁弁、電磁吸入弁機構、又は高圧燃料ポンプを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の弁機構は、座巻部と可動部とを有し、前記座巻部と反対側のばね支持部により固定されるばね部材と、前記ばね部材の前記座巻部の側により付勢される弁体と、を備え、前記ばね支持部の側に凸となるとともに、前記ばね部材の径方向内側に位置する凸部が前記弁体に形成され、前記ばね部材の径方向中心を通り、ばね部材軸方向に切った断面図において、前記座巻部に隣接する前記可動部の少なくとも一巻き目の径方向両側の巻線断面に対し、前記凸部の先端部が前記ばね支持部の側に位置するように構成された。
本発明によれば、高圧化、また大流量化が進んだ場合においても、吸入弁の径方向の動きを抑制し、流量制御性を向上させる電磁弁、電磁吸入弁機構、又は高圧燃料ポンプを提供することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
高圧燃料ポンプについて、プランジャの軸方向に切断して示す全体断面図である。 高圧燃料ポンプについて、プランジャの軸方向に垂直な方向に切断して示す全体断面図であり、燃料の吸入口軸中心及び吐出口軸中心における断面図である。 高圧燃料ポンプの図1とは別の角度の全体断面図であり、吸入ジョイント軸中心における断面図である。 高圧燃料ポンプの電磁吸入弁機構の縦断面図を拡大した図である。 高圧燃料ポンプを含む、システムの全体構成を示す図である。 本発明の実施例の高圧燃料ポンプの吸入弁構造を拡大して説明する図である。 本発明の実施例の弁体(吸入弁30)が弁座(吸入弁シート部31a)に着座した状態の吸入弁構造を拡大して説明する図である。 本発明の実施例の弁体(吸入弁30)がストッパ32と接触した状態の吸入弁構造を拡大して説明する図である。
以下、図面を用いて、本発明の実施例による高圧燃料ポンプの構成及び作用効果について説明する。本実施例の高圧燃料ポンプは20MPa以上の高圧燃料を吐出する高圧燃料ポンプである。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。
(全体構成)
最初に、図5に示すエンジンシステムの全体構成図を用いてシステムの構成と動作を説明する。破線で囲まれた部分が高圧燃料ポンプの本体を示し、この破線の中に示されている機構・部品はポンプボディ1に一体に組み込まれていることを示す。
燃料タンク20の燃料は、エンジンコントロールユニット27(以下ECUと称す)からの信号に基づきフィードポンプ21によって汲み上げられる。この燃料は適切なフィード圧力に加圧されて吸入配管28を通して高圧燃料ポンプの低圧燃料吸入口10aに送られる。低圧燃料吸入口10aから吸入ジョイント51(図2参照)を通過した燃料は金属ダンパ9(圧力脈動低減機構)、吸入通路10dを介して容量可変機構を構成する電磁吸入弁機構300の吸入ポート31bに至る。
電磁吸入弁機構300に流入した燃料は、吸入弁30を通過し加圧室11に流入する。
エンジン(内燃機関)のカム93(図1参照)によりプランジャ2に往復運動する動力が与えられる。プランジャ2の往復運動により、プランジャ2の下降行程には吸入弁30から燃料を吸入し、上昇行程には、燃料が加圧される。吐出弁機構8を介し、圧力センサ26が装着されているコモンレール23へ燃料が圧送される。そしてECU27からの信号に基づきインジェクタ24がエンジンへ燃料を噴射する。本実施例はインジェクタ24がエンジンのシリンダ筒内に直接、燃料を噴射する、いわゆる直噴エンジンシステムに適用される高圧燃料ポンプである。高圧燃料ポンプは、ECU27から電磁吸入弁機構300への信号により、所望の供給燃料の燃料流量を吐出する。
(高圧燃料ポンプの構成)
次に、図1〜図4を用いて、高圧燃料ポンプの構成を説明する。図1は高圧燃料ポンプの縦断面図を示し、図2は高圧燃料ポンプを上方から見た水平方向断面図である。また図3は高圧燃料ポンプを図1と別方向から見た縦断面図である。図4は電磁吸入弁機構300の拡大図である。
図1に示すように、高圧燃料ポンプは、金属ダンパ9と、金属ダンパ9を収容するダンパ収容部1pが形成されるポンプボディ1(ポンプ本体)と、ポンプボディ1に取付けられ、ダンパ収容部1pを覆うと共に金属ダンパ9をポンプボディ1との間に保持するダンパカバー14と、ダンパカバー14に固定され、ダンパカバー14と反対側から金属ダンパ9を保持する保持部材9aと、を備えている。保持部材9aは金属ダンパ9とポンプボディ1との間に配置され、ポンプボディ1の側から金属ダンパ9を保持する。高圧燃料ポンプはポンプボディ1に設けられた取付けフランジ1e(図2参照)を用い内燃機関の高圧燃料ポンプ取付け部90に密着し、複数のボルトで固定される。
図1に示すように、高圧燃料ポンプ取付け部90とポンプボディ1との間のシールのためにOリング61がポンプボディ1に嵌め込まれ、エンジンオイルが外部に漏れるのを防止する。ポンプボディ1にはプランジャ2の往復運動をガイドし、ポンプボディ1と共に加圧室11を形成するシリンダ6が取り付けられている。また燃料を加圧室11に供給するための電磁吸入弁機構300と加圧室11から吐出通路に燃料を吐出するための吐出弁機構8(図2参照)が設けられている。
シリンダ6は、図1に示すように、その外周側においてポンプボディ1と圧入され、さらに固定部6aにおいて、ボディを内周側へ変形させてシリンダ6を図中上方向へ押圧し、シリンダ6の上端面で加圧室11にて加圧された燃料が低圧側に漏れないようシールしている。プランジャ2の下端には、内燃機関のカムシャフトに取り付けられたカム93(カム機構)の回転運動を上下運動に変換し、プランジャ2に伝達するタペット92が設けられている。プランジャ2はリテーナ15を介してばね4にてタペット92に圧着されている。これによりカム93の回転運動に伴い、プランジャ2を上下に往復運動させることができる。
また、シールホルダ7の内周下端部に保持されたプランジャシール13がシリンダ6の図中下方部においてプランジャ2の外周に摺動可能に接触する状態で設置されている。これにより、プランジャ2が摺動したとき、副室7aの燃料をシールし内燃機関内部へ流入するのを防ぐ。同時に内燃機関内の摺動部を潤滑する潤滑油(エンジンオイルも含む)がポンプボディ1の内部に流入するのを防止する。
高圧燃料ポンプのポンプボディ1の側面部には吸入ジョイント51が取り付けられている。吸入ジョイント51は、車両の燃料タンク20からの燃料を供給する低圧配管に接続されており、燃料はここから高圧燃料ポンプ内部に供給される。吸入ジョイント51内の吸入フィルタ52(図3参照)は、燃料タンク20から低圧燃料吸入口10aまでの間に存在する異物を燃料の流れによって高圧燃料ポンプ内に吸収することを防ぐ役目がある。
低圧燃料吸入口10aを通過した燃料は、図1に示すように、金属ダンパ9、吸入通路10d(低圧燃料流路)を介して電磁吸入弁機構300の吸入ポート31bに至る。
図4に基づいて電磁吸入弁機構300について詳細に説明する。なお、図1、2、4に電磁吸入入弁機構300が示されているが、これらの図に示す構造は本発明を適用しない場合について示すものである。
コイル部は、第1ヨーク42、電磁コイル43、第2ヨーク44、ボビン45、端子46、コネクタ47から成る。ボビン45に銅線が複数回巻かれたコイル43が、第1ヨーク42と第2ヨーク44により取り囲まれる形で配置され、樹脂部材であるコネクタと一体にモールドされ固定される。二つの端子46のそれぞれの方端はコイルの銅線の両端にそれぞれ通電可能に接続される。端子46も同様にコネクタと一体にモールドされ残りの方端がエンジン制御ユニット側と接続可能な構成としている。
コイル部は第1ヨーク42の中心部の穴部が、アウターコア38に圧入され固定される。その時、第2ヨーク44の内径側は、固定コア39と接触もしくは僅かなクリアランス近接する構成となる。
第1ヨーク42、第2ヨーク44共に、磁気回路を構成するために、また耐食性を考慮し磁性ステンレス材料とし、ボビン45、コネクタ47は強度特性、耐熱特性を考慮し、高強度耐熱樹脂を用いる。コイルに43は銅、端子46には真鍮に金属めっきを施した物を使用する。
このように、アウターコア38、第1ヨーク42、第2ヨーク44、固定コア39、アンカー部36で磁気回路を形成し、コイルに電流を与えると、固定コア39、アンカー部36間に磁気吸引力が発生し、互いに引き寄せられる力が発生する。アウターコア38において、固定コア39とアンカー部36とがお互い磁気吸引力を発生させる軸方向部位を極力薄肉にすることで、磁束のほぼ全てが固定コア39とアンカー部36の間を通過するため、効率良く磁気吸引力を得ることができる。
ソレノイド機構部は、可動部であるロッド35、アンカー部36、固定部であるロッドガイド37、アウターコア38、固定コア39、そして、ロッド付勢ばね40、アンカー部付勢ばね41からなる。
可動部であるロッド35とアンカー部36は、別部材に構成している。ロッド35はロッドガイド37の内周側で軸方向に摺動自在に保持され、アンカー部36の内周側は、ロッド35の外周側で摺動自在に保持される。すなわち、ロッド35及びアンカー部36共に幾何学的に規制される範囲で軸方向に摺動可能に構成されている。
アンカー部36は燃料中で軸方向に自在に滑らかに動くために、部品軸方向に貫通する貫通穴36aを1つ以上有し、アンカー部前後の圧力差による動きの制限を極力排除している。
ロッドガイド37は、径方向には、ポンプ本体1の吸入弁が挿入される穴の内周側に挿入され、軸方向には、吸入弁シートの一端部に突き当てられ、ポンプ本体1に溶接固定されるアウターコア38とポンプ本体1との間に挟み込まれる形で配置される構成としている。ロッドガイド37にもアンカー部36と同様に軸方向に貫通する貫通穴37aが設けられ、アンカー部が自在に滑らかに動くことができる様、アンカー部側の燃料室の圧力がアンカー部の動きを妨げない様に構成している。
アウターコア38は、ポンプ本体1と溶接される部位との反対側の形状を薄肉円筒形状としており、その内周側に固定コア39が挿入される形で溶接固定される。固定コア39の内周側にはロッド付勢ばね40が、細径部をガイドに配置され、ロッド35が吸入弁30と接触し、吸入弁が吸入弁シート部31aから引き離す方向、すなわち吸入弁の開弁方向に付勢力を与える。吸入弁30は最大開度にてストッパ32に接触する。ストッパ32は金属板がスタンピング加工により形成され、シート部材31にその外周面が圧入されて固定される。外周面の一部が切欠きとなっており、この切欠きが凹み部と常に連通するように構成され、吸入弁の上流側と加圧室11とを連通する。なお、本実施例において吸入弁シート部31aと、吸入ポート31bとは同一のシート部材31にて形成される。
アンカー部付勢ばね41は、ロッドガイド37の中心側に設けた円筒径の中央軸受部37bに方端を挿入し同軸を保ちながら、アンカー部36にロッドつば部35a方向に付勢力を与える配置としている。アンカー部36の移動量36eは吸入弁30の移動量30eよりも大きく設定される。確実に吸入弁30が閉弁するためである。なお、本実施例において、ロッドガイド37は上記したシート部材31と同一の部材にて形成される。
ロッド35とロッドガイド37にはお互い摺動するため、またロッド35は吸入弁30と衝突を繰返すため、硬度と耐食性を考慮しマルテンサイト系ステンレスに熱処理を施したものを使用する。アンカー部36と固定コア39は磁気回路を形成するため磁性ステンレスを用い、ロッド付勢ばね40、アンカー部付勢ばね41には耐食性を考慮しオーステナイト系ステンレスを用いる。
上記構成によれば、吸入弁部とソレノイド機構部には、3つのばねが有機的に配置されて構成されている。吸入弁部に構成される吸入弁付勢ばね33と、ソレノイド機構部に構成されるロッド付勢ばね40、アンカー部付勢ばね41がこれに相当する。本実施例ではいずれのばねもコイルばねを使用しているが付勢力を得られる形態であればいかなるものでも構成可能である。
加圧室11の出口に設けられた吐出弁機構8は、図2に示すように、吐出弁シート8a、吐出弁シート8aと接離する吐出弁8b、吐出弁8bを吐出弁シート8aに向かって付勢する吐出弁ばね8c、吐出弁8bのストローク(移動距離)を決める吐出弁ストッパ8dから構成される。吐出弁ストッパ8dとポンプボディ1は当接部8eで溶接により接合され燃料と外部を遮断している。
加圧室11と吐出弁室12aに燃料差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁ばね8cによる付勢力で吐出弁シート8aに圧着され閉弁状態となっている。加圧室11の燃料圧力が、吐出弁室12aの燃料圧力よりも大きくなった時に初めて、吐出弁8bは吐出弁ばね8cに逆らって開弁する。そして、加圧室11内の高圧の燃料は吐出弁室12a、燃料吐出通路12b、燃料吐出口12を経てコモンレール23へと吐出される。
吐出弁8bは開弁した際、吐出弁ストッパ8dと接触し、ストロークが制限される。したがって、吐出弁8bのストロークは吐出弁ストッパ8dによって適切に決定される。これによりストロークが大きすぎて、吐出弁8bの閉じ遅れにより、吐出弁室12aへ高圧吐出された燃料が、再び加圧室11内に逆流してしまうことを防止でき、高圧燃料ポンプの効率低下が抑制できる。また、吐出弁8bが開弁および閉弁運動を繰り返す時に、吐出弁8bがストローク方向にのみ運動するように、吐出弁ストッパ8dの外周面にてガイドしている。以上のようにすることで、吐出弁機構8は燃料の流通方向を制限する逆止弁となる。なお、加圧室11は、ポンプボディ1(ポンプハウジング)、電磁吸入弁機構300、プランジャ2、シリンダ6、吐出弁機構8にて構成される。
(高圧燃料ポンプの動作)
カム93の回転により、プランジャ2がカム93の方向に移動して吸入行程状態にある時は、加圧室11の容積は増加し加圧室11内の燃料圧力が低下する。この行程で加圧室11内の燃料圧力が吸入ポート31bの圧力よりも低くなると、吸入弁30は開口状態になる。図4に示すように、燃料は吸入弁30の開口部30eを通り、加圧室11に流入する。
プランジャ2が吸入行程を終了した後、プランジャ2が上昇運動に転じ圧縮行程に移る。ここで電磁コイル43は無通電状態を維持したままであり磁気付勢力は作用しない。ロッド付勢ばね40は、無通電状態において吸入弁30を開弁維持するのに必要十分な付勢力を有するよう設定されている。加圧室11の容積は、プランジャ2の圧縮運動に伴い減少するが、この状態では、一度、加圧室11に吸入された燃料が、再び開弁状態の吸入弁30の開口部30eを通して吸入通路10dへと戻されるので、加圧室の圧力が上昇することは無い。この行程を戻し行程と称する。
この状態で、ECU27からの制御信号が電磁吸入弁機構300に印加されると、電磁コイル43には端子46を介して電流が流れる。すると、磁気コア39とアンカーとの間に磁気吸引力が作用し、これにより磁気付勢力がロッド付勢ばね40の付勢力に打ち勝ってロッド35が吸入弁30から離れる方向に移動する。よって、吸入弁付勢ばね33による付勢力と燃料が吸入通路10dに流れ込むことによる流体力により吸入弁30が閉弁する。閉弁後、加圧室11の燃料圧力はプランジャ2の上昇運動と共に上昇し、燃料吐出口12の圧力以上になると、吐出弁機構8を介して高圧燃料の吐出が行われ、コモンレール23へと供給される。この行程を吐出行程と称する。
すなわち、プランジャ2の下始点から上始点までの間の上昇行程は、戻し行程と吐出行程からなる。そして、電磁吸入弁機構300の電磁コイル43への通電タイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の量を制御することができる。電磁コイル43へ通電するタイミングを早くすれば、上昇行程中の、戻し行程の割合が小さく、吐出行程の割合が大きい。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料が少なく、高圧吐出される燃料は多くなる。一方、通電するタイミングを遅くすれば上昇行程中の、戻し行程の割合が大きく吐出行程の割合が小さい。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料が多く、高圧吐出される燃料は少なくなる。電磁コイル43への通電タイミングは、ECU27からの指令によって制御される。 以上のように電磁コイル43への通電タイミングを制御することで、高圧吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することが出来る。
(金属ダンパの構成)
図1に示すように、低圧燃料室10には高圧燃料ポンプ内で発生した圧力脈動が吸入配管28(燃料配管)へ波及するのを低減させる金属ダンパ9が設置されている。一度、加圧室11に流入した燃料が、容量制御のため再び開弁状態の吸入弁30(吸入弁体)を通して吸入通路10dへと戻される場合、吸入通路10dへ戻された燃料により低圧燃料室10には圧力脈動が発生する。しかし、低圧燃料室10に設けた金属ダンパ9は、波板状の2枚の円盤型金属板をその外周で張り合わせ、内部にアルゴンのような不活性ガスを注入した金属ダイアフラムダンパで形成されており、圧力脈動はこの金属ダンパが膨張・収縮することで吸収低減される。
プランジャ2は、大径部2aと小径部2bを有し、プランジャ2の往復運動によって副室7aの体積は増減する。副室7aは燃料通路10e(図3参照)により低圧燃料室10と連通している。プランジャ2の下降時は、副室7aから低圧燃料室10へ、上昇時は、低圧燃料室10から副室7aへと燃料の流れが発生する。
このことにより、ポンプの吸入行程もしくは、戻し行程におけるポンプ内外への燃料流量を低減することができ、高圧燃料ポンプ内部で発生する圧力脈動を低減する機能を有している。
ここで、高圧燃料ポンプにおいては近年、吐出燃料の高圧化(20MPa以上)、また大流量化が進んでいる。この場合、図1、2、4に示した吸入弁30に対して、吸入弁軸方向(図1、2、4の左右方向)以外においても大きな力がかかることが本発明者らの鋭意検討により、判明した。しかしながら、図1、2、4に記載の吸入弁構造の場合、吸入弁30が径方向に力がかかって傾斜する、あるいは径方向において振れた場合にこの動きを規制することができない。そうすると、吸入弁30によるシートがされず、流量低下を招く、あるいは流量制御性の悪化を招くという問題がある。また、吸入弁30が傾斜して吸入弁シート部31aに接触することにより、吸入弁シート部31aが摩耗することで、シート性能が悪化するという問題があった。
そこで本発明の実施例について図6を用いて説明する。本実施例の弁機構は、座巻部33aと可動部33bとを有し、座巻部33aと反対側のばね支持部32aにより固定されるばね部材33と、ばね部材33の座巻部33aの側により付勢される弁体(吸入弁30)と、を備えている。また、ばね支持部32aの側に凸となるとともに、ばね部材33の径方向内側に位置する凸部30bが弁体(吸入弁30)に形成される。そして、図6に示すようにばね部材30の径方向中心を通り、ばね部材軸方向に切った断面図において、座巻部33aに隣接する可動部33bの少なくとも一巻き目の径方向両側の巻線断面に対し、凸部30bの先端部30cがばね支持部32aの側に位置するように構成される。
可動部33bのことを有効巻部と呼んでも良く、この可動部33bが実際にばねとして動作する部分になる。可動部33bには隙間が形成されるので、弁体(吸入弁30)の径方向に大きな力がかかった場合、この可動部の隙間を介して、弁体自身も傾斜する、あるいは振れる動きをすることになる。そこで、本実施例においては、上記したように可動部33b(有効巻部)の少なくとも一巻き目の径方向両側の巻線断面に対し、凸部30bの先端部30cがばね支持部32aの側に位置するように構成される。なお、図6にこの一巻き目の径方向両側の巻線断面の終端を点線で示す。これにより、逆に弁体(吸入弁30)の径方向に大きな力がかかったとしても、弁体自身が傾斜する、あるいは振れる動きを抑制することが可能となる。したがって、上記したような流量低下、あるいは流量制御性の悪化を招くという問題を解決することが可能である。また、弁体(吸入弁30)が傾斜して吸入弁シート部31aに接触することを抑制できるので、上記したシート性能が悪化するという問題を解決することができる。
また図7に示すように、本実施例の弁機構は、弁体(吸入弁30)が着座することでシールを行う弁座(吸入弁シート部31a)を備え、弁体(吸入弁30)が弁座(吸入弁シート部31a)に着座した状態において、ばね部材軸方向に切った断面図において、可動部33bの少なくとも一巻き目の径方向両側の巻線断面に対し、凸部30bの先端部30cがばね支持部32aの側に位置するように構成されることが望ましい。なお、可動部33bの少なくとも二巻き目の径方向両側の巻線断面に対し、凸部30bの先端部30cがばね支持部32aの側に位置するとさらに径方向への暴れを抑制することが可能である。
また図8に示すように、本実施例の弁機構は、弁体(吸入弁30)の弁座(吸入弁シート部31a)と反対方向への移動を規制するストッパ32を備え、弁体(吸入弁30)がストッパ32と接触した状態において、ばね部材軸方向に切った断面図において、ばね部材33の全長の半分の位置に対し、凸部30bの先端部30cがばね支持部32aの側に位置するように構成されることが望ましい。
なお、図8は、弁体(吸入弁30)が接触するストッパ32の凸部が見える断面でカットした図であり、一方で図6は弁体(吸入弁30)が接触するストッパ32の凸部が見えない断面でカットした図である。よって、図6と図8は同じ状態を示している。またストッパ32は径方向内側でばね部材33を保持する円筒形状の保持部32cを有するように構成されたことが望ましい。またストッパ32は、保持部32cの内周面によりばね部材33を保持するとともに、内周面よりも径方向外側においてストッパ32を固定する固定部32dを有するように構成されることが望ましい。そして本実施例においてストッパ32はスタンピング加工により形成されるので、安価に構成することが可能である。
また、弁体(吸入弁30)の凸部30bは円筒形状に形成されるのが望ましい。また図6に示すように弁体(吸入弁30)は、高さの低い円筒部30dと、この円筒部30dよりも高さの高い円筒形状の凸部30bとで形成される。そして本実施例の電磁吸入弁機構300は以上に説明した弁機構と弁体(吸入弁30)と独立して別体に構成され、弁体(吸入弁30)を開弁方向に付勢するロッド35と、ロッド35を閉弁方向に駆動するアンカー36と、アンカー36を閉弁方向に駆動する電磁吸引力を生成するコイル43と、を備える。
そして本実施例の高圧燃料ポンプは、以上に説明した弁機構と、前記弁体と独立して別体に構成され、前記弁体を開弁方向に付勢するロッド35と、ロッド35を閉弁方向に駆動するアンカー36と、アンカー36を閉弁方向に駆動する電磁吸引力を生成するコイル43と、弁体(吸入弁30)の下流側に位置し、燃料を加圧するための加圧室11と、加圧室11の容積を増減させるプランジャ2と、を備える。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…ポンプボディ、2…プランジャ、11…加圧室、30…吸入弁、30b…凸部、30c…先端部、30d…円筒部、31a…吸入弁シート部、32…ストッパ、32a…ばね支持部、32c…保持部、33…ばね部材、33a…座巻部、33b…可動部、35…ロッド、36…アンカー36、43…コイル

Claims (10)

  1. 座巻部と可動部とを有し、前記座巻部と反対側のばね支持部により固定されるばね部材と、前記ばね部材の前記座巻部の側により付勢される弁体と、を備え、前記ばね支持部の側に凸となるとともに、前記ばね部材の径方向内側に位置する凸部が前記弁体に形成され、
    前記ばね部材の径方向中心を通り、ばね部材軸方向に切った断面図において、前記座巻部に隣接する前記可動部の少なくとも一巻き目の径方向両側の巻線断面に対し、前記凸部の先端部が前記ばね支持部の側に位置するように構成された弁機構。
  2. 請求項1に記載の弁機構において、
    前記弁体が着座することでシールを行う弁座を備え、
    前記弁体が前記弁座に着座した状態において、ばね部材軸方向に切った断面図において、前記可動部の少なくとも一巻き目の径方向両側の巻線断面に対し、前記凸部の先端部が前記ばね支持部の側に位置するように構成された弁機構。
  3. 請求項1に記載の弁機構において、
    前記弁体が着座することでシールを行う弁座と、
    前記弁体の前記弁座と反対方向への移動を規制するストッパと、を備え、
    前記弁体が前記ストッパと接触した状態において、ばね部材軸方向に切った断面図において、前記ばね部材の全長の半分の位置に対し、前記凸部の先端部が前記ばね支持部の側に位置するように構成された弁機構。
  4. 請求項1に記載の弁機構において、
    前記弁体が着座することでシールを行う弁座と、
    前記弁体の前記弁座と反対方向への移動を規制するストッパと、を備え、
    前記ストッパは径方向内側で前記ばね部材を保持する円筒形状の保持部を有するように構成された弁機構。
  5. 請求項4に記載の弁機構において、
    前記ストッパは、前記保持部の内周面により前記ばね部材を保持するとともに、前記内周面よりも径方向外側において前記ストッパを固定する固定部を有するように構成された弁機構。
  6. 請求項4又は5に記載の弁機構において、
    前記ストッパはスタンピング加工により形成された弁機構。
  7. 請求項1に記載の弁機構において、
    前記凸部は円筒形状に形成された弁機構。
  8. 請求項1に記載の弁機構において、
    前記弁体は、高さの低い円筒部と、前記円筒部よりも高さの高い円筒形状の前記凸部とで形成された弁機構。
  9. 請求項1〜7の何れかに記載の弁機構と、
    前記弁体と独立して別体に構成され、前記弁体を開弁方向に付勢するロッドと、
    前記ロッドを閉弁方向に駆動するアンカーと、
    前記アンカーを前記閉弁方向に駆動する電磁吸引力を生成するコイルと、を備えた電磁吸入弁機構。
  10. 請求項1〜8の何れかに記載の弁機構と、
    前記弁体と独立して別体に構成され、前記弁体を開弁方向に付勢するロッドと、
    前記ロッドを閉弁方向に駆動するアンカーと、
    前記アンカーを前記閉弁方向に駆動する電磁吸引力を生成するコイルと、
    前記弁体の下流側に位置し、燃料を加圧するための加圧室と、
    前記加圧室の容積を増減させるプランジャと、を備えた高圧燃料ポンプ。
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