この発明は、X線発生装置、X線検査装置、および、X線発生装置における絶縁不良検出方法に関する。
例えば、X線を利用することにより立体形状を有する被検査物を破壊することなくその内部構造を検査するX線検査装置に使用されるX線発生装置は、カソードから出射された電子ビームを、高電圧を印加したターゲットに衝突させることにより、X線を発生させる構成を有する。
図5は、このような従来のX線発生装置の概要図である。
このX線発生装置は、傍熱型の電子線発生部を備えたものであり、カソード12と、このカソード12を加熱するためのカソードヒータ11と、グリッド電極13と、ターゲット14とを備える。カソードヒータ11により加熱されたカソード12から発生する電子ビーム101は、カソード12とターゲット14間の管電圧により、カソード12からターゲット14に向かって飛び出し、グリッド電極13を通過してターゲット14に衝突することにより、X線102を発生させる。このときには、ターゲット14に到達した電子により生ずるターゲット電流Aがターゲット14方向に流れ、カソード12から出射された電子により生ずるエミッション電流Bがカソード12から流れる。このエミッション電流Bを測定することにより、カソード12とグリッド電極13間に印加されるグリッド電圧が制御される。
このようなX線発生装置においては、X線を発生させた累積時間に基づいてターゲット14が劣化する。この劣化に伴って所定の管電圧および管電流のもとで発生するX線強さが弱くなることから、このX線の強さを測定することでターゲット14の劣化を認識し得ることが知られている。また、カソード12も通電時間に伴って消耗する。このため、所定の管電圧を印加した状態において、ターゲット電流Aを一定に維持するために必要となるグリッド電圧の値から、カソード12の消耗を認識し得ることが知られている(特許文献1参照)。
例えば、X線発生装置が故障した場合においては、特許文献1に記載されたように、ターゲット14の劣化度合いやカソード12の消耗度合いを認識することにより、故障の原因を探求することは可能である。しかしながら、電極間の絶縁不良に起因する故障が発生した場合には、この原因を特定することができなかった。
例えば、図5に示すような傍熱型の熱電子発生部を備えたX線発生装置においては、カソード12とカソードヒータ11の間の絶縁性が低下した場合においては、図5に示すリーク電流Cが発生する。このようなリーク電流Cが発生した場合には、グリッド電圧の制御に使用するエミッション電流Bが実際の値より小さなものとして認識される。このため、エミッション電流Bとターゲット電流Aとの間に乖離が生じ、ターゲット電流Aが必要以上に大きくなってしまう。
ターゲット電流Aが大きくなると、ターゲット14に衝突する電子ビーム101のエネルギー密度が高くなり、ターゲット14の表面が融点に到達して損傷を生じる場合がある。また、意図したX線の線量より大きい線量のX線が発生することになることから、X線照射領域の遮蔽性能が低い場合等においては、X線照射領域外までX線が漏洩する可能性もある。
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、電極間の絶縁不良が生じた場合においても、これを容易に認識することが可能なX線発生装置、X線検査装置、および、X線発生装置における絶縁不良検出方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、カソードから出射された電子ビームを、高電圧を印加したターゲットに衝突させることによりX線を発生させるX線発生装置において、前記カソードから出射された電子により生ずるエミッション電流を検出するエミッション電流検出部と、前記ターゲットに到達した電子により生ずるターゲット電流を検出するターゲット電流検出部と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記カソードを加熱するカソードヒータを備える。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記エミッション電流検出部により検出したエミッション電流と、前記ターゲット電流検出部により検出したターゲット電流とを比較する比較部を備える。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記比較部により比較したエミッション電流とターゲット電流との差異が閾値を越えた時に、警告表示を行うための警告信号を発生する。
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記比較部により比較したエミッション電流とターゲット電流との差異が閾値を越えた時に、X線の発生動作を停止させる。
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載のX線発生装置を備えたX線検査装置である。
請求項7に記載の発明は、カソードヒータにより加熱されたカソードから出射された電子ビームを、高電圧を印加したターゲットに衝突させることによりX線を発生させるX線発生装置において、前記カソードと前記カソードヒータ間の絶縁不良を検出するための絶縁不良検出方法であって、前記カソードから出射された電子により生ずるエミッション電流を検出するエミッション電流検出工程と、前記ターゲットに到達した電子により生ずるターゲット電流を検出するターゲット電流検出工程と、前記エミッション電流検出工程において検出したエミッション電流と、前記ターゲット電流検出工程において検出したターゲット電流を比較する比較工程と、を有し、前記比較工程において比較したエミッション電流とターゲット電流との差異が閾値を越えた時に、前記カソードと前記カソードヒータ間の絶縁不良を検出することを特徴とする。
請求項1および請求項6に記載の発明によれば、電極間の絶縁不良が生じた場合においても、エミッション電流の値とターゲット電流の値に基づいて、これを容易に認識することが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、カソードとカソードヒータとの間の絶縁性が低下した場合に、これを容易に認識することが可能となる。
請求項3および請求項7に記載の発明によれば、エミッション電流検出部により検出したエミッション電流とターゲット電流検出部により検出したターゲット電流とを比較することにより、電極間の絶縁不良を容易に認識することが可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、警告表示により、電極間の絶縁不良の発生を容易に認識することが可能となる。
請求項5に記載の発明によれば、電極間の絶縁不良が生じたときに、X線の発生動作を停止することが可能となる。
この発明に係るX線発生装置を備えたX線検査装置図をその主要な制御系とともに示す概要図である。
この発明の第1実施形態に係るX線発生装置の概要図である。
この発明の第2実施形態に係るX線発生装置の概要図である。
この発明の第3実施形態に係るX線発生装置の概要図である。
従来のX線発生装置の概要図である。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るX線発生装置41を備えたX線検査装置図をその主要な制御系とともに示す概要図である。
このX線検査装置は、被検査物であるワークWにX線を照射するX線発生装置41と、このX線発生装置41から照射された後、ワークWを透過したX線を検出するフラットパネルディテクタやイメージインテンシファイア(I.I.)等のX線検出器42と、これらのX線発生装置41およびX線検出器42の間に配設されたワークWを載置するためのステージ43とを備える。このステージ43は、図示しないモータを備えたステージ移動機構44の作用により、水平および垂直方向に移動可能となっている。これらのX線発生装置41、X線検出器42、ステージ43およびステージ移動機構44は、X線遮蔽部材より構成されるケーシング40の内部に配設されている。
このX線検査装置は、プロセッサーとしての論理演算を実行するCPU、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM等を備え、装置全体を制御する制御部30を備える。この制御部30は、X線検出器42により検出したX線画像等を表示する液晶表示パネル等の表示部45と、各種の操作を実行するためのマウスやキーボード等を備えた操作部46とに接続されている。
また、この制御部30は、機能的構成として、X線検出器42により検出されたX線画像を画像処理して表示部45に表示するための画像処理部31と、ステージ移動機構44を制御するための移動制御部32と、X線発生装置41からのX線照射を制御するためのX線制御部33と、後述する警告表示を行うための警告表示部34とを備える。
図2は、この発明の第1実施形態に係るX線発生装置41の概要図である。
このX線発生装置41は、傍熱型の電子線発生部を備えたものであり、カソード12と、このカソード12を加熱するためのカソードヒータ11と、グリッド電極13と、ターゲット14とを備える。カソードヒータ11により加熱されたカソード12から発生する電子ビーム101は、カソード12とターゲット14間の管電圧により、カソード12からターゲット14に向かって飛び出し、グリッド電極13を通過してターゲット14に衝突することにより、X線102を発生させる。このときには、ターゲット14に到達した電子により生ずるターゲット電流Aがターゲット14方向に流れ、カソード12から出射された電子により生ずるエミッション電流Bがカソード12から流れる。
また、このX線発生装置41は、ターゲット電流Aを測定するためのターゲット電流検出部22と、エミッション電流Bを検出するためのエミッション電流検出部23とを備える。また、このX線発生装置41は、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値を設定値と比較するための第1比較部24と、第1比較部24により比較したエミッション電流Bとエミッション電流Bの設定値との差異に基づいて、カソード12とグリッド電極13間に印加されるグリッド電圧を制御するグリッド電圧制御部25とを備える。
さらに、このX線発生装置41は、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値とを比較する第2比較部21を備える。この第2比較部21は、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値との差異が、予め設定した閾値を越えたときに、図1に示す制御部30に対して、警告表示を行うための警告信号を発生する。
このような構成を有するX線発生装置41においては、装置が正常に動作しているときには、エミッション電流Bの値とターゲット電流Aの値との差異は、所定の閾値の範囲内となるとともに、このような構成を有するX線発生装置41において、電極間の絶縁不良が生じた場合には、エミッション電流Bの値とターゲット電流Aの値との差異が閾値より大きくなることが、この発明の発明者により見出された。
ここで、上述した閾値は、例えば、グリッド電極13とターゲット14との間にフォーカス電極(収束電極)が配設される場合に、フォーカス電極に電子ビーム101が衝突することによりターゲット電流Aが小さくなる現象や、電子ビーム101において放電が生じた場合に、ターゲット電流Aが大きくなる現象等の、各種の現象を考慮して決定されるものである。
このため、この発明の第1実施形態に係るX線発生装置41においては、第2比較部21により、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値とを比較する。そして、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値との差異が、予め設定した閾値を越えたときに、第2比較部21は、制御部30に対して、警告表示を行うための警告信号を発生する。
この警告信号を受け取った制御部30は、図1に示す警告表示部34の作用により、表示部45に対して警告表示を表示させる。また、必要に応じ、音声等による警告表示も実行する。オペレータは、この警告表示を認識し、必要に応じ、操作部46を操作してX線発生装置41におけるX線102の照射動作を停止させる。これにより、ターゲット14の表面に損傷を生じることや、X線照射領域外までX線102が漏洩することを未然に防止することが可能となる。
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図3は、この発明の第2実施形態に係るX線発生装置41の概要図である。なお、上述した第1実施形態と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
この第2実施形態に係るX線発生装置41は、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値との差異が、予め設定した閾値を越えたときに、X線102の発生動作を自動的に停止させる構成を有する。
この第2実施形態に係るX線発生装置41は、ターゲット14への高電圧の印加をオン/オフするためのスイッチ29を備える。そして、第2比較部21は、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値との差異が、予め設定した閾値を越えたときに、スイッチ29をオフとする為の信号をスイッチ29に送信する。
このような構成を採用した場合においても、ターゲット14の表面に損傷を生じることや、X線照射領域外までX線102が漏洩することを未然に防止することが可能となる。
次に、この発明のさらに他の実施形態について説明する。図4は、この発明の第3実施形態に係るX線発生装置41の概要図である。なお、上述した第1、第2実施形態と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
この第3実施形態に係るX線発生装置41は、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値とを表示するための電流値表示部26を備える。この電流値表示部26は、ターゲット電流Aの電流値とエミッション電流Bの電流値を表示するための専用の表示部であってもよく、図1に示す表示部45にターゲット電流Aの電流値とエミッション電流Bの電流値を表示するものであってもよい。
この第3実施形態に係るX線発生装置41においては、オペレータが電流値表示部26に表示されたターゲット電流Aの電流値とエミッション電流Bの電流値を確認し、その差に基づいてX線102の発生動作を停止すべきか否かを判断する。そして、X線102の発生動作を停止すべきと判断したときには、図1に示す操作部46等を操作することにより、X線発生装置41からのX線102の発生動作を停止させる。
このような構成を採用した場合においても、ターゲット14の表面に損傷を生じることや、X線照射領域外までX線102が漏洩することを未然に防止することが可能となる。
11 カソードヒータ
12 カソード
13 グリッド電極
14 ターゲット
21 第2比較部
22 ターゲット電流検出部
23 エミッション電流検出部
24 第1比較部
25 グリッド電圧制御部
26 電流値表示部
29 スイッチ
30 制御部
31 画像処理部
32 移動制御部
33 X線制御部
34 警告表示部
40 ケーシング
41 X線発生装置
42 X線検出器
43 ステージ
44 ステージ移動機構
45 表示部
46 操作部
101 電子ビーム
102 X線
A ターゲット電流
B エミッション電流
W ワーク
この発明は、X線発生装置、X線検査装置、および、X線発生装置における絶縁不良検出方法に関する。
例えば、X線を利用することにより立体形状を有する被検査物を破壊することなくその内部構造を検査するX線検査装置に使用されるX線発生装置は、カソードから出射された電子ビームを、高電圧を印加したターゲットに衝突させることにより、X線を発生させる構成を有する。
図5は、このような従来のX線発生装置の概要図である。
このX線発生装置は、傍熱型の電子線発生部を備えたものであり、カソード12と、このカソード12を加熱するためのカソードヒータ11と、グリッド電極13と、ターゲット14とを備える。カソードヒータ11により加熱されたカソード12から発生する電子ビーム101は、カソード12とターゲット14間の管電圧により、カソード12からターゲット14に向かって飛び出し、グリッド電極13を通過してターゲット14に衝突することにより、X線102を発生させる。このときには、ターゲット14に到達した電子により生ずるターゲット電流Aがターゲット14方向に流れ、カソード12から出射された電子により生ずるエミッション電流Bがカソード12から流れる。このエミッション電流Bを測定することにより、カソード12とグリッド電極13間に印加されるグリッド電圧が制御される。
このようなX線発生装置においては、X線を発生させた累積時間に基づいてターゲット14が劣化する。この劣化に伴って所定の管電圧および管電流のもとで発生するX線強さが弱くなることから、このX線の強さを測定することでターゲット14の劣化を認識し得ることが知られている。また、カソード12も通電時間に伴って消耗する。このため、所定の管電圧を印加した状態において、ターゲット電流Aを一定に維持するために必要となるグリッド電圧の値から、カソード12の消耗を認識し得ることが知られている(特許文献1参照)。
例えば、X線発生装置が故障した場合においては、特許文献1に記載されたように、ターゲット14の劣化度合いやカソード12の消耗度合いを認識することにより、故障の原因を探求することは可能である。しかしながら、電極間の絶縁不良に起因する故障が発生した場合には、この原因を特定することができなかった。
例えば、図5に示すような傍熱型の熱電子発生部を備えたX線発生装置においては、カソード12とカソードヒータ11の間の絶縁性が低下した場合においては、図5に示すリーク電流Cが発生する。このようなリーク電流Cが発生した場合には、グリッド電圧の制御に使用するエミッション電流Bが実際の値より小さなものとして認識される。このため、エミッション電流Bとターゲット電流Aとの間に乖離が生じ、ターゲット電流Aが必要以上に大きくなってしまう。
ターゲット電流Aが大きくなると、ターゲット14に衝突する電子ビーム101のエネルギー密度が高くなり、ターゲット14の表面が融点に到達して損傷を生じる場合がある。また、意図したX線の線量より大きい線量のX線が発生することになることから、X線照射領域の遮蔽性能が低い場合等においては、X線照射領域外までX線が漏洩する可能性もある。
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、電極間の絶縁不良が生じた場合においても、これを容易に認識することが可能なX線発生装置、X線検査装置、および、X線発生装置における絶縁不良検出方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、カソードから出射された電子ビームを、高電圧を印加したターゲットに衝突させることによりX線を発生させるX線発生装置において、前記カソードから出射された電子により生ずるエミッション電流を検出するエミッション電流検出部と、前記ターゲットに到達した電子により生ずるターゲット電流を検出するターゲット電流検出部と、前記エミッション電流検出部により検出したエミッション電流と、前記ターゲット電流検出部により検出したターゲット電流とを比較する比較部と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記カソードを加熱するカソードヒータを備える。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記比較部により比較したエミッション電流とターゲット電流との差異が閾値を越えた時に、警告表示を行うための警告信号を発生する。
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記比較部により比較したエミッション電流とターゲット電流との差異が閾値を越えた時に、X線の発生動作を停止させる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のX線発生装置を備えたX線検査装置である。
請求項6に記載の発明は、カソードヒータにより加熱されたカソードから出射された電子ビームを、高電圧を印加したターゲットに衝突させることによりX線を発生させるX線発生装置において、前記カソードと前記カソードヒータ間の絶縁不良を検出するための絶縁不良検出方法であって、前記カソードから出射された電子により生ずるエミッション電流を検出するエミッション電流検出工程と、前記ターゲットに到達した電子により生ずるターゲット電流を検出するターゲット電流検出工程と、前記エミッション電流検出工程において検出したエミッション電流と、前記ターゲット電流検出工程において検出したターゲット電流を比較する比較工程と、を有し、前記比較工程において比較したエミッション電流とターゲット電流との差異が閾値を越えた時に、前記カソードと前記カソードヒータ間の絶縁不良を検出することを特徴とする。
請求項1、請求項5および請求項6に記載の発明によれば、電極間の絶縁不良が生じた場合においても、エミッション電流の値とターゲット電流の値に基づいて、これを容易に認識することが可能となる。また、エミッション電流検出部により検出したエミッション電流とターゲット電流検出部により検出したターゲット電流とを比較することにより、電極間の絶縁不良を容易に認識することが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、カソードとカソードヒータとの間の絶縁性が低下した場合に、これを容易に認識することが可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、警告表示により、電極間の絶縁不良の発生を容易に認識することが可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、電極間の絶縁不良が生じたときに、X線の発生動作を停止することが可能となる。
この発明に係るX線発生装置を備えたX線検査装置図をその主要な制御系とともに示す概要図である。
この発明の第1実施形態に係るX線発生装置の概要図である。
この発明の第2実施形態に係るX線発生装置の概要図である。
この発明の第3実施形態に係るX線発生装置の概要図である。
従来のX線発生装置の概要図である。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るX線発生装置41を備えたX線検査装置図をその主要な制御系とともに示す概要図である。
このX線検査装置は、被検査物であるワークWにX線を照射するX線発生装置41と、このX線発生装置41から照射された後、ワークWを透過したX線を検出するフラットパネルディテクタやイメージインテンシファイア(I.I.)等のX線検出器42と、これらのX線発生装置41およびX線検出器42の間に配設されたワークWを載置するためのステージ43とを備える。このステージ43は、図示しないモータを備えたステージ移動機構44の作用により、水平および垂直方向に移動可能となっている。これらのX線発生装置41、X線検出器42、ステージ43およびステージ移動機構44は、X線遮蔽部材より構成されるケーシング40の内部に配設されている。
このX線検査装置は、プロセッサーとしての論理演算を実行するCPU、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM等を備え、装置全体を制御する制御部30を備える。この制御部30は、X線検出器42により検出したX線画像等を表示する液晶表示パネル等の表示部45と、各種の操作を実行するためのマウスやキーボード等を備えた操作部46とに接続されている。
また、この制御部30は、機能的構成として、X線検出器42により検出されたX線画像を画像処理して表示部45に表示するための画像処理部31と、ステージ移動機構44を制御するための移動制御部32と、X線発生装置41からのX線照射を制御するためのX線制御部33と、後述する警告表示を行うための警告表示部34とを備える。
図2は、この発明の第1実施形態に係るX線発生装置41の概要図である。
このX線発生装置41は、傍熱型の電子線発生部を備えたものであり、カソード12と、このカソード12を加熱するためのカソードヒータ11と、グリッド電極13と、ターゲット14とを備える。カソードヒータ11により加熱されたカソード12から発生する電子ビーム101は、カソード12とターゲット14間の管電圧により、カソード12からターゲット14に向かって飛び出し、グリッド電極13を通過してターゲット14に衝突することにより、X線102を発生させる。このときには、ターゲット14に到達した電子により生ずるターゲット電流Aがターゲット14方向に流れ、カソード12から出射された電子により生ずるエミッション電流Bがカソード12から流れる。
また、このX線発生装置41は、ターゲット電流Aを測定するためのターゲット電流検出部22と、エミッション電流Bを検出するためのエミッション電流検出部23とを備える。また、このX線発生装置41は、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値を設定値と比較するための第1比較部24と、第1比較部24により比較したエミッション電流Bとエミッション電流Bの設定値との差異に基づいて、カソード12とグリッド電極13間に印加されるグリッド電圧を制御するグリッド電圧制御部25とを備える。
さらに、このX線発生装置41は、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値とを比較する第2比較部21を備える。この第2比較部21は、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値との差異が、予め設定した閾値を越えたときに、図1に示す制御部30に対して、警告表示を行うための警告信号を発生する。
このような構成を有するX線発生装置41においては、装置が正常に動作しているときには、エミッション電流Bの値とターゲット電流Aの値との差異は、所定の閾値の範囲内となるとともに、このような構成を有するX線発生装置41において、電極間の絶縁不良が生じた場合には、エミッション電流Bの値とターゲット電流Aの値との差異が閾値より大きくなることが、この発明の発明者により見出された。
ここで、上述した閾値は、例えば、グリッド電極13とターゲット14との間にフォーカス電極(収束電極)が配設される場合に、フォーカス電極に電子ビーム101が衝突することによりターゲット電流Aが小さくなる現象や、電子ビーム101において放電が生じた場合に、ターゲット電流Aが大きくなる現象等の、各種の現象を考慮して決定されるものである。
このため、この発明の第1実施形態に係るX線発生装置41においては、第2比較部21により、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値とを比較する。そして、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値との差異が、予め設定した閾値を越えたときに、第2比較部21は、制御部30に対して、警告表示を行うための警告信号を発生する。
この警告信号を受け取った制御部30は、図1に示す警告表示部34の作用により、表示部45に対して警告表示を表示させる。また、必要に応じ、音声等による警告表示も実行する。オペレータは、この警告表示を認識し、必要に応じ、操作部46を操作してX線発生装置41におけるX線102の照射動作を停止させる。これにより、ターゲット14の表面に損傷を生じることや、X線照射領域外までX線102が漏洩することを未然に防止することが可能となる。
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図3は、この発明の第2実施形態に係るX線発生装置41の概要図である。なお、上述した第1実施形態と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
この第2実施形態に係るX線発生装置41は、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値との差異が、予め設定した閾値を越えたときに、X線102の発生動作を自動的に停止させる構成を有する。
この第2実施形態に係るX線発生装置41は、ターゲット14への高電圧の印加をオン/オフするためのスイッチ29を備える。そして、第2比較部21は、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値との差異が、予め設定した閾値を越えたときに、スイッチ29をオフとする為の信号をスイッチ29に送信する。
このような構成を採用した場合においても、ターゲット14の表面に損傷を生じることや、X線照射領域外までX線102が漏洩することを未然に防止することが可能となる。
次に、この発明のさらに他の実施形態について説明する。図4は、この発明の第3実施形態に係るX線発生装置41の概要図である。なお、上述した第1、第2実施形態と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
この第3実施形態に係るX線発生装置41は、ターゲット電流検出部22により検出したターゲット電流Aの電流値と、エミッション電流検出部23により検出したエミッション電流Bの電流値とを表示するための電流値表示部26を備える。この電流値表示部26は、ターゲット電流Aの電流値とエミッション電流Bの電流値を表示するための専用の表示部であってもよく、図1に示す表示部45にターゲット電流Aの電流値とエミッション電流Bの電流値を表示するものであってもよい。
この第3実施形態に係るX線発生装置41においては、オペレータが電流値表示部26に表示されたターゲット電流Aの電流値とエミッション電流Bの電流値を確認し、その差に基づいてX線102の発生動作を停止すべきか否かを判断する。そして、X線102の発生動作を停止すべきと判断したときには、図1に示す操作部46等を操作することにより、X線発生装置41からのX線102の発生動作を停止させる。
このような構成を採用した場合においても、ターゲット14の表面に損傷を生じることや、X線照射領域外までX線102が漏洩することを未然に防止することが可能となる。
11 カソードヒータ
12 カソード
13 グリッド電極
14 ターゲット
21 第2比較部
22 ターゲット電流検出部
23 エミッション電流検出部
24 第1比較部
25 グリッド電圧制御部
26 電流値表示部
29 スイッチ
30 制御部
31 画像処理部
32 移動制御部
33 X線制御部
34 警告表示部
40 ケーシング
41 X線発生装置
42 X線検出器
43 ステージ
44 ステージ移動機構
45 表示部
46 操作部
101 電子ビーム
102 X線
A ターゲット電流
B エミッション電流
W ワーク