以下、添付の図面を参照しながら、本開示のモータ用ステータおよびモータの実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
(実施形態)
図1は、モータ100の例示的な構造を示す、中心軸500に沿った断面図である。
本実施形態によるモータ100は、いわゆるインナーロータ型のモータである。モータ100は、例えば自動車に搭載され、電動パワーステアリング装置用モータとして好適に利用される。その場合、モータ100は、電動パワーステアリング装置の駆動力を発生する。
モータ100は、ステータ200と、ロータ300と、ハウジング400と、蓋部420と、下軸受430と、上軸受440とを備える。なお、ステータ200は電機子とも称される。
ハウジング400は、底を有する略円筒状の筐体であり、ステータ200、下軸受430およびロータ300を内部に収納する。下軸受430を保持する凹部410がハウジング400の底の中央にある。蓋部420は、ハウジング400の上部の開口を閉じる板状の部材である。上軸受440を保持する円孔421が蓋部420の中央にある。
ステータ200は環状であり、積層体(「積層環状コア」と称する場合がある。)210および巻線(「コイル」と称される場合がある。)220を有する。ステータ200は、駆動電流に応じて磁束を発生させる。積層体210は、複数の鋼板を中心軸500に沿う方向(図1のy方向)に積層した積層鋼板から構成され、環状の積層コアバック211および複数の積層歯(ティース)212を含む。積層コアバック211は、ハウジング400の内壁に固定される。なお、ステータ200の構造は後で詳細に説明する。なお、中心軸500はロータ300の回転軸である。
巻線220は導線(一般的には銅線)によって構成され、典型的には積層体210の複数の積層歯212にそれぞれ取り付けられている。
下軸受430および上軸受440は、ロータ300のシャフト340を回転可能に支持する機構である。例えば、下軸受430および上軸受440として、球体を介して外輪と内輪とを相対回転させるボールベアリングを用いることができる。図1にはボールベアリングが示されている。
下軸受430の外輪431は、ハウジング400の凹部410に固定されている。上軸受440の外輪441は、蓋部420の円孔421の縁に固定されている。下軸受430および上軸受440のそれぞれの内輪432、442は、シャフト340に固定されている。このため、シャフト340は、ハウジング400および蓋部420に対して回転可能に支持される。
ロータ300は、ロータユニット310、320、シャフト340およびカバー350を有する。シャフト340は、中心軸500に沿って上下方向に延びる略円柱状の部材である。シャフト340は、下軸受430および上軸受440によって回転可能に支持され、中心軸500を中心に回転することができる。シャフト340は、蓋部420側の先端に頭部341を有する。頭部341は、例えば自動車の電動パワーステアリング装置に駆動力を伝達するギア等の動力伝達機構に接続される。
ロータユニット310、320およびカバー350は、ステータ200の径方向における内部空間においてシャフト340と共に回転する。ロータユニット310、320はそれぞれ、ロータコア331、マグネットホルダ332、および複数のマグネット333を有する。ロータユニット310、320は、互いに上下を反転させた状態で中心軸500に沿って配置されている。複数のマグネット333は、ロータ300の周方向に沿って略等間隔で配置されている。
カバー350は、ロータユニット310、320を保持する略円筒状の部材である。カバー350は、ロータユニット310、320の外周面、および上下の端面の一部を覆う。これにより、ロータユニット310、320は互いに近接または接触した状態で保持される。
モータ100において、ステータ200の巻線220に駆動電流を流すと、積層体210の複数の積層歯212に径方向の磁束が発生する。複数の積層歯212とマグネット333との間の磁束の作用によって周方向にトルクが発生して、ステータ200に対してロータ300が中心軸500を中心に回転する。ロータ300が回転すると、例えば電動パワーステアリング装置に駆動力が発生する。
次に、図2〜図6を参照して、本実施形態によるステータ200の構造を詳細に説明する。
本開示の実施形態によるステータ200は、M(Mは2以上の整数)個の歯(換言するとM個のスロット)を有し得る。以下、具体例として、12個の歯(12個のスロット)を有するステータ200の構造を説明する。
図2は、積層体210の斜視図である。図3は、積層体210の積層方向から見た、積層体210に巻線220を取り付けた状態のステータ200の平面図である。図4は、積層体210の積層方向から見た、積層体210を構成する環状コアシート230の平面図である。
ステータ200は、積層体210および巻線220を備える。積層体210は、12個の積層歯212および積層コアバック211を有する。12個の積層歯212は、環状の積層コアバック211の中心に向けて突出している。隣接する2つの積層歯212の間にスロット214がある。
それぞれの積層歯212には巻線220が取り付けられている。ただし、巻線220は、12個の積層歯212の少なくとも1つに取り付けられていてもよい。例えば、12個の積層歯212のうち9個または6個に巻線が取り付けられていてもよい。
積層体210において複数の環状コアシート230が積層されている。本実施形態による積層体210は60枚の環状コアシート230を含む。ただし、積層枚数はこれに限定されず、例えばモータに要求される必要特性に応じて適宜決定される。例えば、積層枚数は、スロット数と同じであってもよいし、スロット数よりも多くてもよい。当然、積層枚数はスロット数よりも少なくても構わない。
環状コアシート230は、環状のコアバック231、およびコアバック231の内周に等間隔で配置され、且つ、コアバック231の中心に向けて突出した12個の歯232を有する。なお、本明細書において等間隔とは、厳密に等間隔であることに限定されず、略等間隔である場合も含む。12個の歯232の先端は環状に配置され、環状コアシート230の内周を形成する。12個の歯232の位置が複数の環状コアシート230の間で揃うように複数の環状コアシート230は積層体210において積層されている。図4に示されるように、環状コアシート230は、一対の隣接する2つの歯232の先端同士を連結し、且つ、繋ぎ目を含む1つの連結部233を有する。ただし、本開示はこれに限られず、それぞれの環状コアシート230は、複数の連結部233を有していてもよい。また、例えば、一方の環状コアシート230は、歯232の数と同じ12個の連結部233を有し、他方は連結部233を有しない2つの連続した環状コアシート230が積層体210において繰り返して積層されていても構わない。本開示において、複数の環状コアシート230の少なくとも1つが、少なくとも1つの連結部233を有していてもよい。換言すると、積層体210は少なくとも1つの連結部233を有していればよい。
図5Aは、一対の隣接する2つの積層歯212を拡大して示している。図5Bは、一対の隣接する2つの積層歯212の間にある複数の連結部233のうちの1つを拡大して示している。図6は、ある一対の積層歯212の間に位置する積層コアバック211をy方向に切断し積層体210をx方向に展開して得られる、積層体210の展開図である。
複数の連結部233は、一対の隣接する2つの積層歯212の先端の間に存在する。本実施形態では、連結部233が60枚の環状コアシート230の間に12枚の環状コアシート230毎に存在している。5個の連結部233が、一対の隣接する2つの積層歯212の先端の間に存在する。なお、これはあくまでも例示であり、連結部233は種々のパターンで配置され得る。例えば、ある一対の隣接する2つの積層歯212の先端の間には5個の連結部233が存在し、別の一対の隣接する2つの積層歯212の先端の間には4個の連結部233が存在していてもよい。また、ある一対の隣接する2つの積層歯212の先端の間には5個以上の連結部233が存在し、別の一対の隣接する2つの積層歯212の先端の間には連結部233が存在していなくてもよい。本開示によれば、積層体210において少なくとも1つの連結部233が存在していればよい。例えば、ある環状コアシート230には歯232と同じ数の連結部233が存在し、ある環状コアシートには連結部233は全く存在していなくてもよい。
図5Bに示されるように、連結部233は繋ぎ目234を有する。繋ぎ目234は見かけ上繋がっているように見える。しかしながら、後で詳細に説明する図9に示されるように繋ぎ目234には機械的に切断された2つの切断面235A、235Bがある。具体的に説明すると、連結部233の、隣接する2つの歯212の一方側の第1切断面235Aと、連結部233の他方側の第2切断面235Bとが、繋ぎ目234で接触している。なお、2つの切断面235A、235Bの間に接着材などが介在していてもよいし、2つの切断面235A、235Bは非磁性材料によってコーティングされていてもよい。
上述したとおり、特許文献1のステータの構造によれば、一対の隣接する2つの歯部同士は依然として、機械的に切断されていない連続した橋絡部によって接続されているので、この橋絡部を通じて磁束漏れは発生する。一方、本開示による連結部233は、機械的に切断されて連続していないものの、連結部233の切断面同士は接触している。そのため、モータ回転中にステータ200の径方向に発生する磁力によって隣接する2つのティース232の間の距離を縮めようとする力がステータ200に作用したとき、連結部233によってその作用を抑制することができる。このように、連結部233によってステータの剛性(具体的には積層体210の内周部分の強度)を高めることができる。また、機械的に切断された切断面によって連結部233を通じた磁束漏れを抑制することができる。磁束漏れの抑制は、例えばコギングトルクの改善に繋がる。
積層体210は、複数の環状コアシート230の間でコアバック231(換言すると、複数の歯232の先端で形成される環)の周方向に周期的に配置された複数の連結部233を有していてもよい。図6に示されるように、積層体210において60枚の環状コアシート230うちの連続する12枚の環状コアシート230に着目すると、12個の連結部233は、隣接する環状コアシート230の間で隣り合う2つのスロット214に存在するように配置され得る。換言すると、12個の連結部233は、複数の環状コアシート230の間で周方向に螺旋状に存在してもよい。螺旋構造を採用することで、連結部233が少なくても積層体210の内周部分の強度を確保することができる。
図7〜図14を参照して、モータ100およびステータ200の製造方法の具体例を説明する。
図7は、モータ100およびステータ200の製造方法の例示的なフローを示している。本実施形態によるステータ200の製造方法は、複数の環状コアシート230を準備する工程(S600)と、連結部233を切断する工程(S610)と、積層環状コア(積層体)210を得る工程(S620)と、積層環状コア210を複数の分割コア250に分割する工程(S630)と、分割コア250に巻線220を取り付ける工程(S640)と、複数の分割コア250を再組立てしてステータ200を得る工程(S650)とを包含する。モータ100の製造方法は、これらの工程に加えて、ステータ200およびロータ300をハウジング400に収納する工程(S660)をさらに包含する。
先ず、ステップS600において、図4に示される複数の環状コアシート230を用意する。例えば、歯232と同じ数の12枚以上の環状コアシート230を用意する。なお、上述したとおり、用意する枚数はこれに限定されず、例えばモータ100に要求される必要特性に応じて適宜決定される。図2に示される積層体210を得るために、例えば60枚の環状コアシート230を用意する。各環状コアシート230は、コアバック231、12個の歯232、および一対の隣接する2つの歯232の先端同士を連結する連結部233を含む。なお、ステップ600において、連結部233はまだ繋ぎ目234を有していない。また、複数の環状コアシート230の少なくとも1つが、少なくとも1つの連結部233を備えていればよく、環状コアシート230を必要な枚数だけ用意すればよい。
図8Aは、金型800を用いて電磁鋼板700を環状に打ち抜いて複数の環状コアシート230を成形する様子を模式的に示している。図8Bは、打ち抜きで成形された複数の環状コアシート230を模式的に示している。複数の環状コアシート230の用意の方法として、図示されるように、ダイ810上に電磁鋼板700を置き、金型(パンチ)800を用いて電磁鋼板700を環状に打ち抜くことにより複数の環状コアシート230を成形してもよい。プレス加工以外にも、例えばワイヤ放電加工やレーザ加工も利用可能である。または、例えばサプライヤーから部品として複数の環状コアシート230を供給してもらってもよい。本実施形態では、金型800を用いて電磁鋼板700を環状に打ち抜いて60枚の環状コアシート230を成形する。
次に、ステップS610において、連結部233を切断する。
図9は、切断刃710を用いて連結部233を切断する様子を模式的に示している。例えば、切断刃710を用いて連結部233の略中央を機械的に切断して繋ぎ目234を形成する。これにより、連結部233の、隣接する2つの歯232の一方側に第1切断面235Aが形成され、連結部233の他方側に第2切断面235Bが形成される。環状コアシート230毎に連結部233を機械的に切断し、複数の環状コアシート230に含まれる全ての連結部233に繋ぎ目234を形成する。また、後述するステップS630で積層環状コア210を分割するため、図9に示されるように、隣接する2つの歯232の間にあるコアバック231の略中央に切り込み237を入れておくことが好ましい。
次に、ステップS620において、複数の環状コアシート230を積層して、12個の積層歯212を有する積層環状コア210を得る。本実施形態では、60枚の環状コアシート230を積層した後で、複数の環状コアシート230の間を、例えばカシメ、接着またはレーザ溶接によって固定する。これにより、12個の積層歯212を有する積層環状コア210を得る。なお、積層環状コア210は上述した積層体210に相当する。
図10は、複数の環状コアシート230を、1枚毎に所定の角度ずつ周方向に回転させて積層する様子を模式的に示している。なお、図10には、60枚の環状コアシート230のうちの2枚が示されている。複数の環状コアシート230を、1枚毎に所定の角度ずつ周方向に回転させて積層することが好ましい。このような積層は一般に、「転積」と呼ばれる。転積することにより、連結部233が螺旋状に配置されるため、積層環状コア210の内周部分の強度を確保することができる。
所定の角度は、(360/M)のN倍(Nは1以上の整数)である。上述したとおり、Mは歯(またはスロット)の個数を示す。M=12である場合、所定の角度は30°の整数倍となる。本実施形態では、図10に示されるように1枚毎に30°時計回りに回転させて60枚の環状コアシートを積層する。これにより、図6に示されるような連結部233の配置パターン(つまり、螺旋構造)が積層環状コア210において得られる。なお、図10に示されるy方向は、積層環状コア210の中心軸に平行な方向である。60枚の環状コアシート230は12個の歯232が揃うようにy方向に沿って積層される。
次に、ステップS630において、積層環状コア210を12個以下の分割コア250に分割する。
図11Aは、積層環状コア210を、12個の分割コア250に分割する様子を模式的に示している。図11Bは、スロット214に治具900を挿入して積層環状コア210を分割する様子を模式的に示している。図11Cは、積層環状コア210の積層方向から見た、12個の分割コア250の平面図である。図11Bには、積層環状コア210の一部を拡大して示している。図11Aに示される例えば矢印の方向にスロット214に治具900を挿入する。具体的には、図11Bに示されるように、治具900をスロット214に挿入して積層環状コア210の周方向に力を加えることにより、積層環状コア210を、各々が1個の積層歯212を有する12個の分割コア250に分割する。ステップS610において、各環状コアシート230のコアバック231に切り込み237を予め形成しておくことにより、積層環状コア210の分割が容易になる。複数のスロット214のうち、1か所ずつ治具900を挿入して分割してもよいし、複数個所に治具900を同時に挿入して分割することも可能である。
集中巻の場合、原則、それぞれの分割コア250が1個の積層歯212を有するように積層環状コア210を分割する。
次に、ステップS640において、12個の分割コア250の少なくとも1つに巻線220を取り付ける。
図12Aは、巻線220を取り付けた分割コア250の平面図である。図12Bは、積層歯212に巻線220を取り付けた分割コア250の斜視図である。本実施形態において、12個の分割コア250のそれぞれの積層歯212に絶縁部材260を装着しその上に巻線220を取り付ける(いわゆる集中巻)。分割コア250に導線を巻回する方法として、例えばスピンドル巻およびノズル巻を用いることができる。なお、全ての分割コア250(積層歯212)に巻線220を取り付ける必要はなく、設計仕様などに応じて必要数の分割コア250に巻線220を取り付ければよい。換言すると、12個の分割コア250の少なくとも1つの積層歯212に巻線220を取り付ければよい。例えば、12個の分割コア250うちの9個の積層歯212に巻線220を取り付ければよい。
次に、ステップS650において、各々に巻線220が取り付けられた複数の分割コア250を再組立てして、環状のステータ200を得る。
図13は、複数の分割コア250に分割された積層環状コア210を、治具(不図示)を使用して環状に戻す様子を模式的に示している。図14は、再組立てのときに連結部233の切断面同士を接触させる様子を模式的に示している。「再組立て」とは、複数の分割コア250を互いに固定して分割前の形状(つまり環状)に戻すことを意味する。具体的に説明すると、巻線220を取り付けた後で、12個の分割コア250を再組立てすることにより環状のステータ200を生成する。分割コア250のそれぞれの切断面は凹凸形状を有している。隣り合う2つの分割コア250の切断面同士を接触させたとき、それら2つの切断面の形状同士は合致し、分割コア250同士を切断前の位置関係に戻すことができる。その再組立てのときにステップS610において切断された連結部233の切断面同士を接触させる。分割コア250同士を切断前の位置関係に戻すことにより、連結部233の切断面同士も合致させることができる。本実施形態では、12個の分割コア250を治具を用いて再組立てする。その際、図14に示されるように、機械的に切断された60個の連結部233の各々の切断面(第1および第2切断面235A、235B)同士を接触させる。
複数の分割コア250は、例えば接着またはレーザ溶接によって固定する。この固定は、複数の積層歯212の間における、(1)周方向のばらつきおよび(2)積層環状コア210の軸方向の高さのばらつきを考慮してなされる。なお、連結部233を切断した後切断面同士を接触させる前に、それぞれの切断面を非磁性材料でコーティングしても構わない。また、接着剤を介して切断面同士を接触させてもよい。
特許文献1のように歯部鉄心(環状コアシート230からコアバック231を除いたものに相当)と継鉄部鉄心(コアバック231に相当)とを独立した部材として用意するとする。その場合、例えば複数の歯232の間で金型による打ち抜きばらつき(誤差)が発生し得るため、組立ての際に(特に、継鉄部鉄心に歯部鉄心を圧入した後)歯232の先端の位置ずれが発生し、隣接する2つの歯の先端同士を接触させることは困難となる。一方、本実施形態によれば、コアバック231および連結部233を含む環状コアシート230を環状に打ち抜いた後で、連結部233を切断する。コアバック231および複数の歯232は一体となっているので、連結部233を切断した後においても切断面同士は接触した状態を維持し得る。また、この状態で複数の積層環状コアシート230を積層するので、積層環状コア210を分割するまで(分割直前まで)切断面同士は接触した状態を維持し得る。また、圧入作業は発生しないので、圧入のときに発生する、歯232の先端の位置ずれは起こらない。従って、分割コア250同士を再組立てするときに、切断された連結部233の切断面同士を接触させることができる。
モータ100の製造方法ではさらにステップS660において、ステータ200およびロータ300をハウジング400に収納する。
ロータ300の製造方法の一例を簡単に説明する。インサート成形によってロータコア331とマグネットホルダ332とを一体化する。具体的に説明すると、金型内に挿入したロータコア331の周りに樹脂を注入してロータコア331と樹脂を一体化する。樹脂が冷却されて固化するとマグネットホルダ332になる。次に、一体化されたロータコア331およびマグネットホルダ332にマグネット333を挿入する。これにより、マグネット333はマグネットホルダ332に支持された状態でロータコア331の側面に固定される。
ハウジング400の凹部410に下軸受430(例えばボールベアリング)を配置する。次に、ステータ200をハウジング400に収納した後、シャフト340を下軸受430に挿入してステータ200の内部空間にシャフト340と一体となったロータ300を配置する。最後に、蓋部420の円孔421に上軸受440(例えばボールベアリング)を配置してハウジング400の上部の開口を蓋部420で閉じる。
なお、上述した製造工程の一部は、公知の製造手法(例えば、特許文献1に開示された手法)によって置き換えられ得る。
本実施形態によるモータ100およびステータ200の製造方法によれば、連結部233に繋ぎ目234を形成して積層環状コア210を分割することにより、連結部233の影響を受けずに複数の積層歯212に巻線220を容易に取り付けることができ、且つ、例えば特許文献1のような積層コアバック211への圧入の作業は不要となる。その結果、ステータ200の組立が容易になるだけでなく、圧入時のコンタミネーションの弊害を防止することができる。さらに、組立工程において連結部233だけが連結された状態がないので、連結部233の変形を防止することができる。
上述したように、本実施形態によれば、連結部233によってステータ200の剛性を高め、モータ100の振動を低減させることができる。また、連結部233が機械的に切断された切断面を有することにより、連結部233を通じた磁束漏れを低減させることができる。
次に、連結部233を備えたモータ100において、モータ100の振動をより効果的に低減させる構造を説明する。ここでは、ステータ200が12個の積層歯212を備え、ロータが8個のマグネット333を備えるモータ100において、振動をより効果的に低減させる連結部233の配置の仕方を説明する。
図15は、モータ100が備えるステータ200およびロータ300の一例を示す平面図である。図16は、ステータ200の一例を示す平面図である。分かりやすく説明するために、図15および図16では巻線220の図示は省略している。この例では、ステータ200は12個の積層歯212を備えている。ロータ300は8個のマグネット333を備えている。このような数の積層歯212およびマグネット333を備える構造は、12S8P(12スロット10ポール)と称されることがある。
この例では、モータ100は、三相(U相、V相、W相)の巻線を有する三相モータである。図16に示すように、12個の積層歯212には、U、V、W、U、V、W、U、V、W、U、V、Wの順に、U相、V相、W相が割り当てられている。ステータ200が備える複数の環状コアシート230のそれぞれは、12個の歯232を備える。これら環状コアシート230の12個の歯232にも、図16に示す順にU相、V相、W相が割り当てられている。
図17は、ステータ200内の連結部233を配置する位置を示す図である。図17の横方向に沿って、U相、V相、W相が割り当てられた12個の積層歯212が並んでいる。横方向に並ぶ0、30、60、・・・、330の数値は、ステータ200の周方向に沿った角度を示している。積層歯212の数は12個であるため、積層歯212は30度ずつ間隔をあけてステータ200に配置されている。この例では、ステータ200は、12枚の環状コアシート230を備える。図17の縦方向に並ぶ1、2、3、・・・、12の数字は、積層された12枚の環状コアシート230を示している。また、ステータ200の積層体210は、12枚の環状コアシート230を、1枚毎に30度ずつ周方向に回転させて積層した構造を有している。すなわち、転積の角度は30度である。なお、この例では環状コアシート230の枚数は12枚であるが、この枚数は例示であり、枚数はモータに要求される必要特性に応じて適宜決定される。例えば、上述したように60枚の環状コアシート230が積層される場合がある。
図17に示すステータ200の構造では、12枚の環状コアシート230のそれぞれは、2個の連結部233を備えている。図17中の黒く塗りつぶした四角形の部分が連結部233を表している。12枚の環状コアシート230のそれぞれが備える2個の連結部233は、U相、V相、W相の3つの相のうちの2つの相が割り当てられた歯と歯を連結する。
12枚の環状コアシート230のうちの、一番上に位置する環状コアシート230が備える2個の連結部233は、W相が割り当てられた歯232とU相が割り当てられた歯232とを連結している。2個の連結部233同士は180度離れている。同様に、上から4番目、7番目、10番目のそれぞれの環状コアシート230が備える2個の連結部233は、W相が割り当てられた歯232とU相が割り当てられた歯232とを連結している。
12枚の環状コアシート230のうちの、上から2番目に位置する環状コアシート230が備える2個の連結部233は、U相が割り当てられた歯232とV相が割り当てられた歯232とを連結している。2個の連結部233同士は180度離れている。同様に、上から5番目、8番目、11番目のそれぞれの環状コアシート230が備える2個の連結部233は、U相が割り当てられた歯232とV相が割り当てられた歯232とを連結している。
12枚の環状コアシート230のうちの、上から3番目に位置する環状コアシート230が備える2個の連結部233は、V相が割り当てられた歯232とW相が割り当てられた歯232とを連結している。2個の連結部233同士は180度離れている。同様に、上から6番目、9番目、12番目のそれぞれの環状コアシート230が備える2個の連結部233は、V相が割り当てられた歯232とW相が割り当てられた歯232とを連結している。
本願発明者は、図17に示すステータ構造を有するモータ100の動作についてシミュレーションを行い、その結果を検討した。モータ100の動作の詳細については図21を用いて後述する。
図18は、ステータ200内の連結部233を配置する位置の別の例を示す図である。図18の横方向に沿って、U相、V相、W相が割り当てられた12個の積層歯212が並んでいる。図18の横方向に並ぶ0、30、60、・・・、330の数値、および縦方向に並ぶ1、2、3、・・・、12の数字の意味は、図17における意味と同じである。ステータ200の積層体210は、12枚の環状コアシート230を、1枚毎に30度ずつ周方向に回転させて積層した構造を有している。
図18に示すステータ200の構造では、12枚の環状コアシート230のそれぞれは、4個の連結部233を備えている。図18中の黒く塗りつぶした四角形の部分が連結部233を表している。12枚の環状コアシート230のそれぞれが備える4個の連結部233は、U相、V相、W相の3つの相のうちの2つの相が割り当てられた歯と歯を連結する。
12枚の環状コアシート230のうちの、一番上に位置する環状コアシート230が備える4個の連結部233は、W相が割り当てられた歯232とU相が割り当てられた歯232とを連結している。4個の連結部233は90度の間隔をあけて配置されている。同様に、上から4番目、7番目、10番目のそれぞれの環状コアシート230が備える4個の連結部233は、W相が割り当てられた歯232とU相が割り当てられた歯232とを連結している。
12枚の環状コアシート230のうちの、上から2番目に位置する環状コアシート230が備える4個の連結部233は、U相が割り当てられた歯232とV相が割り当てられた歯232とを連結している。4個の連結部233は90度の間隔をあけて配置されている。同様に、上から5番目、8番目、11番目のそれぞれの環状コアシート230が備える4個の連結部233は、U相が割り当てられた歯232とV相が割り当てられた歯232とを連結している。
12枚の環状コアシート230のうちの、上から3番目に位置する環状コアシート230が備える4個の連結部233は、V相が割り当てられた歯232とW相が割り当てられた歯232とを連結している。4個の連結部233は90度の間隔をあけて配置されている。同様に、上から6番目、9番目、12番目のそれぞれの環状コアシート230が備える4個の連結部233は、V相が割り当てられた歯232とW相が割り当てられた歯232とを連結している。
本願発明者は、図18に示すステータ構造を有するモータ100の動作についてシミュレーションを行い、その結果を検討した。モータ100の動作の詳細については図21を用いて後述する。
図19は、ステータ200内の連結部233を配置する位置のさらに別の例を示す図である。図19の横方向に沿って、U相、V相、W相が割り当てられた12個の積層歯212が並んでいる。図19の横方向に並ぶ0、30、60、・・・、330の数値、および縦方向に並ぶ1、2、3、・・・、12の数字の意味は、図17における意味と同じである。ステータ200の積層体210は、12枚の環状コアシート230を、1枚毎に30度ずつ周方向に回転させて積層した構造を有している。
図19に示すステータ200の構造では、12枚の環状コアシート230のそれぞれは、1個の連結部233を備えている。図19中の黒く塗りつぶした四角形の部分が連結部233を表している。12枚の環状コアシート230のそれぞれが備える1個の連結部233は、U相、V相、W相の3つの相のうちの2つの相が割り当てられた歯と歯を連結する。
12枚の環状コアシート230のうちの、一番上に位置する環状コアシート230が備える1個の連結部233は、W相が割り当てられた歯232とU相が割り当てられた歯232とを連結している。同様に、上から4番目、7番目、10番目のそれぞれの環状コアシート230が備える1個の連結部233は、W相が割り当てられた歯232とU相が割り当てられた歯232とを連結している。
12枚の環状コアシート230のうちの、上から2番目に位置する環状コアシート230が備える1個の連結部233は、U相が割り当てられた歯232とV相が割り当てられた歯232とを連結している。同様に、上から5番目、8番目、11番目のそれぞれの環状コアシート230が備える1個の連結部233は、U相が割り当てられた歯232とV相が割り当てられた歯232とを連結している。
12枚の環状コアシート230のうちの、上から3番目に位置する環状コアシート230が備える1個の連結部233は、V相が割り当てられた歯232とW相が割り当てられた歯232とを連結している。同様に、上から6番目、9番目、12番目のそれぞれの環状コアシート230が備える1個の連結部233は、V相が割り当てられた歯232とW相が割り当てられた歯232とを連結している。
本願発明者は、図19に示すステータ構造を有するモータ100の動作についてシミュレーションを行い、その結果を検討した。モータ100の動作の詳細については図21を用いて後述する。
図20は、ステータ200内の連結部233を配置する位置のさらに別の例を示す図である。図20の横方向に沿って、U相、V相、W相が割り当てられた12個の積層歯212が並んでいる。図20の横方向に並ぶ0、30、60、・・・、330の数値、および縦方向に並ぶ1、2、3、・・・、12の数字の意味は、図17における意味と同じである。ステータ200の積層体210は、12枚の環状コアシート230を、1枚毎に30度ずつ周方向に回転させて積層した構造を有している。
図20に示すステータ200の構造では、12枚の環状コアシート230のそれぞれは、3個の連結部233を備えている。図20中の黒く塗りつぶした四角形の部分が連結部233を表している。
12枚の環状コアシート230のうちの、一番上に位置する環状コアシート230が備える3個の連結部233のうちの1つは、W相が割り当てられた歯232とU相が割り当てられた歯232とを連結している。3個の連結部233のうちの別の1つは、U相が割り当てられた歯232とV相が割り当てられた歯232とを連結している。3個の連結部233のうちのさらに別の1つは、V相が割り当てられた歯232とW相が割り当てられた歯232とを連結している。3個の連結部233は120度の間隔をあけて配置されている。一番上に位置する環状コアシート230と同様に、上から数えて2番目から12番目のそれぞれの環状コアシート230が備える3個の連結部233も、120度の間隔をあけて配置されており、歯と歯とを連結している。12枚の環状コアシート230は、1枚毎に30度ずつ周方向に回転させて積層されている。このため、互いに隣り合う環状コアシート230同士では、連結部233の位置は30度ずつずれている。
図21は、図17から図20に示すステータ構造を有するモータ100の動作のシミュレーション結果を示す図である。図21の縦軸は加速度を表しており、横軸は角度を表している。
実線301は、図19に示すステータ構造を有するモータ100のロータ300の加速度を示している。図19に示すステータ構造では、12枚の環状コアシート230のそれぞれは、1個の連結部233を備えている。
実線302は、図17に示すステータ構造を有するモータ100のロータ300の加速度を示している。図17に示すステータ構造では、12枚の環状コアシート230のそれぞれは、2個の連結部233を備えている。
実線303は、図20に示すステータ構造を有するモータ100のロータ300の加速度を示している。図20に示すステータ構造では、12枚の環状コアシート230のそれぞれは、3個の連結部233を備えている。
実線304は、図18に示すステータ構造を有するモータ100のロータ300の加速度を示している。図18に示すステータ構造では、12枚の環状コアシート230のそれぞれは、4個の連結部233を備えている。実線30Nは、連結部233を備えないモータ100のロータ300の加速度を示している。
実線301が示すように、環状コアシート230のそれぞれが1個の連結部233を備えるモータ100では、ロータ300が1回転する間の加速度の変動幅が大きいことが分かる。また、実線303が示すように、環状コアシート230のそれぞれが3個の連結部233を備えるモータ100においても、ロータ300が1回転する間の加速度の変動幅が大きくなっている。ロータ300が1回転する間の加速度の変動幅が大きい場合は、モータ100の振動は大きくなる。また、図示はしていないが、これらの構造においては、トルクの変動幅であるトルクリップルは大きくなる。
一方、実線302が示すように、環状コアシート230のそれぞれが2個の連結部233を備えるモータ100では、ロータ300が1回転する間の加速度の変動幅は小さい。また、実線304が示すように、環状コアシート230のそれぞれが4個の連結部233を備えるモータ100においても、ロータ300が1回転する間の加速度の変動幅は小さい。このため、図17および図18に示す構造では、モータ100の振動を小さくできることが分かる。また、図示はしていないが、図17および図18に示す構造により、トルクリップルを小さくすることができる。
このように、モータ100が図17および図18に示すステータ構造を備えることにより、モータ100の振動をより効果的に低減させることができる。