JPWO2018155050A1 - 近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置 - Google Patents

近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置 Download PDF

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Abstract

優れた可視透明性および近赤外線遮蔽性を有しつつ薄膜化が可能で、かつ、ダイシング耐性に優れた近赤外線カットフィルタを提供する。また、近赤外線カットフィルタを備えた固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置を提供する。近赤外線カットフィルタは、銅を含有するガラスと、銅化合物を含む樹脂層と、赤外線吸収色素を含む層とを含む。

Description

本発明は、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置に関する。
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などにはカラー画像の固体撮像素子である、電荷結合素子(CCD)や、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)などが用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、近赤外線カットフィルタを用いることが多い。
近赤外線カットフィルタとしては、銅化合物を含む樹脂層を含むものを用いることが検討されている(特許文献1、2参照)。
国際公開WO2016/158818号公報 特開2015−28621号公報
近赤外線カットフィルタにおいては、可視透明性および近赤外線遮蔽性に優れることが求められている。近赤外線カットフィルタ自体の厚みを大きくすることで、近赤外線カットフィルタの近赤外線遮蔽性を高めることは可能であるが、近年においては近赤外線カットフィルタの薄膜化が望まれている。
また、近年においては、近赤外線カットフィルタは、ダイシングにより個片化して用いることもある。
よって、本発明の目的は、優れた可視透明性および近赤外線遮蔽性を有しつつ薄膜化が可能で、かつ、ダイシング耐性に優れた近赤外線カットフィルタを提供することにある。また、本発明の目的は、近赤外線カットフィルタを備えた固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置を提供することにある。
本発明者が鋭意検討を行った結果、以下の構成とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下を提供する。
<1> 銅を含有するガラスと、銅化合物を含む樹脂層と、赤外線吸収色素を含む層とを含む近赤外線カットフィルタ。
<2> 銅を含有するガラスの膜厚が10〜10,000μmであり、銅化合物を含む樹脂層の膜厚が1〜500μmであり、赤外線吸収色素を含む層の膜厚が0.01〜10μmである、<1>に記載の近赤外線カットフィルタ。
<3> 銅を含有するガラスの膜厚と銅化合物を含む樹脂層の膜厚との比が、銅を含有するガラスの膜厚:銅化合物を含む樹脂層の膜厚=[1:30]〜[5,000:1]である、<2>に記載の近赤外線カットフィルタ。
<4> 銅を含有するガラスの膜厚と赤外線吸収色素を含む層の膜厚との比が、銅を含有するガラスの膜厚:赤外線吸収色素を含む層の膜厚=[2:1]〜[500,000:1]である、<2>または<3>に記載の近赤外線カットフィルタ。
<5> 銅化合物を含む樹脂層の膜厚と赤外線吸収色素を含む層の膜厚との比が、銅化合物を含む樹脂層の膜厚:赤外線吸収色素を含む層の膜厚=[1:5]〜[30,000:1]である、<2>〜<4>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<6> 赤外線吸収色素を含む層は、波長600〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<7> 赤外線吸収色素を含む層の極大吸収波長が、銅化合物を含む樹脂層の極大吸収波長よりも短波長である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<8> 銅化合物を含む樹脂層の一方の面に銅を含有するガラスが接しており、かつ、銅化合物を含む樹脂層の他方の面に赤外線吸収色素を含む層が接している、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<9> 銅化合物は、下記式(1)で表される化合物である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ;
Cu・(L)n1・(X)n2 ・・・(1)
式中、Lは、銅原子に対する配位部位を有する配位子であって、銅原子に対してアニオンで配位する配位部位を含む基および銅原子に対して非共有電子対で配位する配位原子を含む基から選ばれる少なくとも1種を1個以上有する化合物を表し、Xは対イオンを表し、n1は1〜4の整数を表し、n2は0〜4の整数を表す。
<10> さらに、誘電体多層膜および紫外線吸収層から選ばれる少なくとも1種を含む<1>〜<9>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<11> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタを有する固体撮像素子。
<12> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュール。
<13> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタを有する画像表示装置。
本発明によれば、優れた可視透明性および近赤外線遮蔽性を有しつつ薄膜化が可能で、かつ、ダイシング耐性に優れた近赤外線カットフィルタを提供できる。また、近赤外線カットフィルタを備えた固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る、近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュールの構成を示す概略断面図である。 カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタ周辺部分の一例を示す概略断面図である。 カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタ周辺部分の一例を示す概略断面図である。 カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタ周辺部分の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施形態に係る、近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュールの構成を示す概略断面図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アリル」は、アリルおよびメタリルを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基をそれぞれ示す。
本明細書において、近赤外線とは、波長領域が700〜2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン換算値として定義される。
<近赤外線カットフィルタ>
本発明の近赤外線カットフィルタは、銅を含有するガラスと、銅化合物を含む樹脂層と、赤外線吸収色素を含む層とを含むことを特徴とする。
本発明の近赤外線カットフィルタは、銅を含有するガラスと、銅化合物を含む樹脂層と、赤外線吸収色素を含む層とを含むことで、薄膜であっても、可視透明性及び近赤外線遮蔽性に優れ、かつ、ダイシング耐性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。すなわち、銅化合物を含む樹脂層は、優れた可視透明性および近赤外線遮蔽性を有している。また、銅を含有するガラスは、適度な近赤外線遮蔽性を有している。本発明の近赤外線カットフィルタは、銅を含有するガラスと、銅化合物を含む樹脂層とを含むので、優れた可視透明性及び近赤外線遮蔽性が得られる。また、銅を含有するガラスおよび/または銅化合物を含む樹脂層の厚みを薄くしても優れた可視透明性及び近赤外線遮蔽性を維持できるので、優れた可視透明性及び近赤外線遮蔽性を有しつつ薄膜化が可能である。また、赤外線吸収色素を含む層単独では、遮蔽させる光の波長範囲が狭い傾向にあるが、銅を含有するガラスおよび銅化合物を含む樹脂層と組み合わせて用いることにより、銅を含有するガラスや、銅化合物を含む樹脂層のみでは十分に遮蔽できない波長の光に対する遮蔽性や、より遮蔽性を高めたい波長の光に対する遮蔽性を向上させることができる。例えば、銅を含有するガラスや、銅化合物を含む樹脂層は、約700〜800nm近傍の光に対する遮蔽性が不十分なものが多いが、赤外線吸収色素を含む層として、700〜800nm近傍に吸収を有する赤外線吸収色素を含む層を用いることで、幅広い近赤外領域の光に対する遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。
また、銅を含有するガラスは、適度な柔軟性があるため、本発明の近赤外線カットフィルタは、銅を含有するガラスを含むことにより、近赤外線カットフィルタのダイシング時における衝撃等を、銅を含有するガラスが吸収でき、割れ等の発生を抑制でき、近赤外線カットフィルタのダイシング耐性を高めることができる。さらに、樹脂層と硬度の差が小さくなることから、銅を含有するガラスと樹脂層とが直接接するように積層した場合においては、樹脂層と銅を含有するガラスの界面に生じるダメージが低減され、樹脂層の剥れを抑止する効果も期待できる。
また、本発明の近赤外線カットフィルタは、銅を含有するガラスと、銅化合物を含む樹脂層とを用いることにより、銅化合物を含む樹脂層の厚みが薄くても優れた可視透明性及び近赤外線遮蔽性を得ることができるので、そり等の発生を抑制することもできる。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、銅を含有するガラスの膜厚は、10〜10,000μmであることが好ましい。膜厚の下限値は、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることが更に好ましい。膜厚の上限値は、2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、300μm以下であることが特に好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、銅化合物を含む樹脂層の膜厚は、1〜500μmであることが好ましい。膜厚の下限値は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましく、30μm以上であることが特に好ましい。膜厚の上限値は、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、75μm以下であることが更に好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、赤外線吸収色素を含む層の膜厚は、0.01〜10μmであることが好ましい。膜厚の下限値は、0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることが更に好ましく、0.7μm以上であることが特に好ましい。膜厚の上限値は、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、銅を含有するガラスの膜厚と銅化合物を含む樹脂層の膜厚との比は、銅を含有するガラスの膜厚:銅化合物を含む樹脂層の膜厚=[1:50]〜[10,000:1]であることが好ましく、[1:30]〜[5,000:1]であることがより好ましく、[1:1]〜[100:1]であることが更に好ましく、[2:1]〜[50:1]であることが一層好ましく、[3:1]〜[20:1]であることがより一層好ましく、[4:1]〜[10:1]であることが特に好ましい。両者の膜厚比が上述した範囲であれば、近赤外線カットフィルタの近赤外線遮蔽性が良好である。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、銅を含有するガラスの膜厚と赤外線吸収色素を含む層の膜厚との比が、銅を含有するガラスの膜厚:赤外線吸収色素を含む層の膜厚=[1:1]〜[1,000,000:1]であることが好ましく、[2:1]〜[500,000:1]であることがより好ましく、[10:1]〜[1000:1]であることが更に好ましく、[30:1]〜[700:1]であることが一層好ましく、[50:1]〜[700:1]であることがより一層好ましく、[100:1]〜[300:1]であることが特に好ましい。両者の膜厚比が上述した範囲であれば、近赤外線カットフィルタの可視透明性および近赤外線遮蔽性が良好である。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、銅化合物を含む樹脂層の膜厚と赤外線吸収色素を含む層の膜厚との比が、銅化合物を含む樹脂層の膜厚:赤外線吸収色素を含む層の膜厚=[1:10]〜[50,000:1]であることが好ましく、[1:5]〜[30,000:1]であることがより好ましく、[1:1]〜[300:1]であることが更に好ましく、[3:1]〜[200:1]であることが一層好ましく、[5:1]〜[100:1]であることがより一層好ましく、[10:1]〜[50:1]であることが特に好ましい。両者の膜厚比が上述した範囲であれば、近赤外線カットフィルタの可視透明性および近赤外線遮蔽性が良好である。
本発明の近赤外線カットフィルタの好ましい態様としては、銅を含有するガラスの膜厚が100〜500μmであり、銅化合物を含む樹脂層の膜厚が10〜100μmであり、赤外線吸収色素を含む層の膜厚が0.5〜2.0μmであり、かつ、赤外線吸収色素を含む層の極大吸収波長が、銅化合物を含む樹脂層の極大吸収波長よりも短波長であることが好ましい。この態様によれば、可視透明性に優れ、かつ、幅広い近赤外領域の光に対する遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。さらには、ダイシング耐性にも優れる。
本発明の近赤外線カットフィルタは、波長700nm以上800nm未満の範囲において、近赤外線カットフィルタの膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率の平均値が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが特に好ましい。また、本発明の近赤外線カットフィルタは、波長800〜1000nmの全範囲において、近赤外線カットフィルタの膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
また、本発明の近赤外線カットフィルタは、800〜1100nmの範囲において、近赤外線カットフィルタの膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率の平均値が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが特に好ましい。また、本発明の近赤外線カットフィルタは、波長800〜1100nmの全範囲において、近赤外線カットフィルタの膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、波長700〜1100nmの範囲における反射率の平均値が20%以下であることが好ましく、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。また、本発明の近赤外線カットフィルタは、波長700〜1100nmの全範囲において反射率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。この態様によれば、視野角が広く、赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。上記反射率は、U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、近赤外線カットフィルタの表面法線方向を0°として、入射角度を5°に設定して測定した値である。
本発明の近赤外線カットフィルタは、近赤外線カットフィルタの膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率が以下の(1)〜(13)のうちの少なくとも1つの条件を満たすことが好ましく、以下の(1)〜(4)のすべての条件を満たすことがより好ましく、(1)〜(13)のすべての条件を満たすことがさらに好ましい。
(1)波長400nmの光の透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(2)波長450nmの光の透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(3)波長500nmの光の透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(4)波長550nmの光の透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(5)波長700nmの光の透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(6)波長750nmの光の透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(7)波長800nmの光の透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(8)波長850nmの光の透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(9)波長900nmの光の透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(10)波長950nmの光の透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(11)波長1000nmの光の透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(12)波長1050nmの光の透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(13)波長1100nmの光の透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、波長400〜550nmの全ての範囲での透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。可視領域の透過率は高いほど好ましい。
以下、本発明の近赤外線カットフィルタについて詳細に説明する。
<<銅を含有するガラス>>
本発明の近赤外線カットフィルタは、銅を含有するガラスを含む。銅ガラスとしては、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスにおける銅の含有量としては、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.3〜17質量%であることがより好ましく、0.5〜15質量%であることが更に好ましい。
本発明において、銅を含有するガラスは、波長700〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。下限は800nm以上であることが好ましく、900nm以上であることがより好ましい。上限は1050nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましい。
銅を含有するガラスの具体例としては、以下が挙げられる。
(1)質量%で、P25 46〜70%、AlF3 0.2〜20%、ΣRF(R=Li、Na、K)0〜25%、ΣR’F2(R’=Mg、Ca、Sr、Ba、Pb) 1〜50%からなり、F 0.5〜32%、O 26〜54%を含む基礎ガラス100質量部に対し、外掛け表示でCuO 0.5〜7質量部を含むガラス。
(2)質量%で、P25 25〜60%、Al23 1〜13%、MgO 1〜10%、CaO 1〜16%、BaO 1〜26%、SrO 0〜16%、ZnO 0〜16%、Li2O 0〜13%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜11%、CuO 1〜7%、ΣRO(R=Mg、Ca、Sr、Ba) 15〜40%、ΣR’2O(R’=Li、Na、K) 3〜18%(ただし、39%モル量までのO2-イオンがFで置換されている)からなるガラス。
(3)質量%で、P25 5〜45%、AlF3 1〜35%、ΣRF(R=Li、Na、K) 0〜40%、ΣR’F2(R’=Mg、Ca、Sr、Ba、Pb、Zn) 10〜75%、R”Fm(R”=La、Y、Cd、Si、B、Zr、Ta、mはR”の原子価に相当する数) 0〜15%(ただし、弗化物総合計量の70%までを酸化物に置換可能)、およびCuO 0.2〜15%を含むガラス。
(4)カチオン%で、P5+ 11〜43%、Al3+ 1〜29%、ΣRカチオン(R=Mg、Ca、Sr、Ba、Pb、Zn) 14〜50%、ΣR’カチオン(R’=Li、Na、K) 0〜43%、ΣR”カチオン(R”=La、Y、Gd、Si、B、Zr、Ta) 0〜8%、およびCu2+ 0.5〜13%を含み、さらにアニオン%でF- 17〜80%含有するガラス。
(5)カチオン%で、P5+ 23〜41%、Al3+ 4〜16%、Li+ 11〜40%、Na+ 3〜13%、ΣRカチオン(R=Mg、Ca、Sr、Ba、Zn) 12〜53%、およびCu2+ 2.6〜4.7%を含み、さらにアニオン%でF- 25〜48%、およびO2- 52〜75%を含むガラス。
(6)質量%で、P25 70〜85%、Al23 8〜17%、B23 1〜10%、Li2O 0〜3%、Na2O 0〜5%、K2O 0〜5%、ただし、ΣR2O(R=Li、Na、K) 0.1〜5%、SiO2 0〜3%からなる基礎ガラス100質量部に対し、外割でCuOを0.1〜5質量部含むガラス。
銅を含有するガラスは、市販品を用いることもできる。銅を含有するガラスの市販品としては、NF−50(AGCテクノグラス(株)製)等が挙げられる。
<<銅化合物を含む樹脂層>>
本発明の近赤外線カットフィルタは、銅化合物を含む樹脂層(以下、樹脂層ともいう)を含む。
本発明において、樹脂層は、波長700〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。下限は800nm以上であることが好ましく、900nm以上であることがより好ましい。上限は1050nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましい。また、樹脂層の極大吸収波長と上述した銅を含むガラスの極大吸収波長との差は、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることが更に好ましい。下限は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが更に好ましく、50m以上であることが一層好ましい。また、樹脂層の極大吸収波長は、銅を含むガラスの極大吸収波長よりも長波長側に存在することが好ましい。
樹脂層における銅化合物の含有量は、5〜90質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。銅化合物の詳細については後述する。
樹脂層における樹脂の含有量は、10〜90質量%であることが好ましい。下限は30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
樹脂層は、銅化合物と樹脂とを含む樹脂組成物を用いて形成できる。以下、本発明の近赤外線カットフィルタにおける樹脂層の形成に好ましく用いることができる樹脂組成物(樹脂層形成用樹脂組成物)について説明する。
樹脂組成物は、銅化合物を含有する。銅化合物としては銅錯体であることが好ましい。銅錯体としては、銅と、銅に対する配位部位を有する化合物(配位子)との錯体が好ましい。銅に対する配位部位としては、アニオンで配位する配位部位、非共有電子対で配位する配位原子が挙げられる。銅錯体は、配位子を2つ以上有していてもよい。配位子を2つ以上有する場合は、それぞれの配位子は同一であってもよく、異なっていてもよい。銅錯体は、4配位、5配位および6配位が例示され、4配位および5配位がより好ましく、5配位がさらに好ましい。また、銅錯体は、銅と配位子によって、5員環および/または6員環が形成されていることが好ましい。このような銅錯体は、形状が安定であり、安定性に優れる。
本発明において、銅錯体は、フタロシアニン銅錯体以外の銅錯体であることも好ましい。ここで、フタロシアニン銅錯体とは、フタロシアニン骨格を有する化合物を配位子とする銅錯体である。フタロシアニン骨格を有する化合物は、分子全体にπ電子共役系が広がり、平面構造を取る。フタロシアニン銅錯体は、π−π*遷移で光を吸収する。π−π*遷移で赤外領域の光を吸収するには、配位子をなす化合物が長い共役構造をとる必要がある。しかしながら、配位子の共役構造を長くすると、可視透明性が低下する傾向にある。このため、フタロシアニン銅錯体は、可視透明性が不十分な場合がある。
また、銅錯体は、400〜600nmの波長領域に極大吸収波長を有さない化合物を配位子とする銅錯体であることも好ましい。400〜600nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物を配位子とする銅錯体は、可視領域(例えば、400〜600nmの波長領域)に吸収を有するため、可視透明性が不十分な場合がある。400〜600nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物としては、長い共役構造を有し、π−π*遷移の光の吸収の大きい化合物が挙げられる。具体的には、フタロシアニン骨格を有する化合物が挙げられる。
銅錯体は、例えば銅成分(銅または銅を含む化合物)に対して、銅に対する配位部位を有する化合物(配位子)を混合・反応等させて得ることができる。銅に対する配位部位を有する化合物(配位子)は、低分子化合物であってもよく、ポリマーであってもよい。両者を併用することもできる。
銅成分は、2価の銅を含む化合物が好ましい。銅成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。銅成分としては、例えば、酸化銅や銅塩を用いることができる。銅塩は、例えば、カルボン酸銅(例えば、酢酸銅、エチルアセト酢酸銅、ギ酸銅、安息香酸銅、ステアリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅など)、スルホン酸銅(例えば、メタンスルホン酸銅など)、リン酸銅、リン酸エステル銅、ホスホン酸銅、ホスホン酸エステル銅、ホスフィン酸銅、アミド銅、スルホンアミド銅、イミド銅、アシルスルホンイミド銅、ビススルホンイミド銅、メチド銅、アルコキシ銅、フェノキシ銅、水酸化銅、炭酸銅、硫酸銅、硝酸銅、過塩素酸銅、フッ化銅、塩化銅、臭化銅が好ましく、カルボン酸銅、スルホン酸銅、スルホンアミド銅、イミド銅、アシルスルホンイミド銅、ビススルホンイミド銅、アルコキシ銅、フェノキシ銅、水酸化銅、炭酸銅、フッ化銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅がより好ましく、カルボン酸銅、アシルスルホンイミド銅、フェノキシ銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅が更に好ましく、カルボン酸銅、アシルスルホンイミド銅、塩化銅、硫酸銅が特に好ましい。
銅化合物は、波長700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましい。銅化合物の極大吸収波長は、波長720〜1200nmの範囲に有することがより好ましく、波長800〜1100nmの範囲に有することがさらに好ましい。銅化合物の極大吸収波長は、例えば、Cary 5000 UV−Vis−NIR(分光光度計 アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて測定することができる。
銅化合物の上述した波長領域における極大吸収波長でのモル吸光係数は、120(L/mol・cm)以上が好ましく、150(L/mol・cm)以上がより好ましく、200(L/mol・cm)以上がさらに好ましく、300(L/mol・cm)以上がよりさらに好ましく、400(L/mol・cm)以上が特に好ましい。上限は、特に限定はないが、例えば、30000(L/mol・cm)以下とすることができる。銅化合物の上記モル吸光係数が、100(L/mol・cm)以上であれば、薄膜であっても、赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。
銅化合物の波長800nmでのグラム吸光係数は、0.11(L/g・cm)以上が好ましく、0.15(L/g・cm)以上がより好ましく、0.24(L/g・cm)以上がさらに好ましい。
なお、本発明において、銅化合物のモル吸光係数およびグラム吸光係数は、銅化合物を測定溶媒に溶解させて1g/Lの濃度の溶液を調製し、銅化合物を溶解させた溶液の吸収スペクトルを測定して求めることができる。測定装置としては、島津製作所製UV−1800(波長領域200〜1100nm)、Agilent製Cary 5000(波長領域200〜1300nm)などを用いることができる。測定溶媒としては、水、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2,4−トリクロロベンゼン、アセトンが挙げられる。本発明では、上述した測定溶媒のうち、測定対象の銅化合物を溶解できるものを選択して用いる。プロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解する銅化合物の場合は、測定溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いることが好ましい。なお、溶解するとは、25℃の溶媒に対する、銅化合物の溶解度が0.01g/100gSolventを超える状態を意味する。
本発明において、銅化合物のモル吸光係数およびグラム吸光係数は、上述した測定溶媒のいずれか1つを用いて測定した値であることが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルでの値であることがより好ましい。
[低分子タイプの銅錯体]
銅錯体としては、例えば、式(Cu−1)で表される銅錯体を用いることができる。この銅錯体は、中心金属の銅に配位子Lが配位した銅錯体であり、銅は、通常2価の銅である。この銅錯体は、例えば銅成分に対して、配位子Lとなる化合物またはその塩を反応等させて得ることができる。
Cu(L)n1・(X)n2 式(Cu−1)
上記式中、Lは、銅に配位する配位子を表し、Xは、対イオンを表す。n1は、1〜4の整数を表す。n2は、0〜4の整数を表す。
Xは、対イオンを表す。銅錯体は、電荷を持たない中性錯体のほか、カチオン錯体、アニオン錯体になることもある。この場合、銅錯体の電荷を中和するよう、必要に応じて対イオンが存在する。
対イオンが負の電荷をもつ対イオン(対アニオン)の場合、例えば、無機陰イオンでもよく、有機陰イオンでもよい。例えば、対イオンとしては、水酸化物イオン、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換または無置換のアルキルカルボン酸イオン(酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等)、置換または無置換のアリールカルボン酸イオン(安息香酸イオン等)、置換もしくは無置換のアルキルスルホン酸イオン(メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等)、置換もしくは無置換のアリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、ホウ素酸イオン(例えば、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(B-(C654)等)、スルホネートイオン(例えば、p−トルエンスルホネートイオンなど)、イミドイオン(例えば、スルホンイミドイオン、N,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン、N,N−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミドイオン等)、ホスフェートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、アミドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドを含む)、メチドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたメチドを含む)が挙げられ、ハロゲン陰イオン、置換もしくは無置換のアルキルカルボン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、アミドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドを含む)、メチドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたメチドを含む)が好ましい。
また、対アニオンは、低求核性アニオンであることが好ましい。低求核性アニオンとは、一般的に超酸(super acid)と呼ばれるpKaの低い酸がプロトンを解離してなるアニオンである。超酸の定義は、文献によっても異なるがメタンスルホン酸よりpKaが低い酸の総称であり、J.Org.Chem.2011,76,391−395
Equilibrium Acidities of Super acidsに記載される構造が知られている。低求核性アニオンのpKaは、例えば、−11以下が好ましく、−11〜−18が好ましい。pKaは、例えば、J.Org.Chem.2011,76,391−395に記載の方法により測定することができる。本明細書におけるpKa値は、特に断りがない場合、1,2−ジクロロエタン中でのpKaである。対アニオンが、低求核性アニオンであると、銅錯体や樹脂の分解反応が生じにくく、耐熱性が良好である。低求核性アニオンは、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン(ハロゲン原子やフルオロアルキル基で置換されたアリールを含む)、ヘキサフルオロホスフェートイオン、イミドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドを含む)、メチドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたメチドを含む)がより好ましく、テトラアリールホウ酸イオン(ハロゲン原子やフルオロアルキル基で置換されたアリールを含む)、イミドイオン(スルホニル基で置換されたアミドを含む)、メチドイオン(スルホニル基で置換されたメチドを含む)が特に好ましい。
また、本発明において、対アニオンは、ハロゲン陰イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、ホウ素酸イオン、スルホネートイオン、イミドイオンであることも好ましい。具体例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ホルメートイオン、ホスフェートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、N,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルイミドイオン、N,N−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミドイオン等が挙げられ、トリフルオロ酢酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルホウ素酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、N,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルイミドイオン、N,N−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミドイオンが好ましく、トリフルオロ酢酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、N,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルイミドイオン、N,N−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミドイオンがより好ましい。
対イオンが正の電荷をもつ対イオン(対カチオン)の場合、例えば、無機もしくは有機のアンモニウムイオン(例えば、テトラブチルアンモニウムイオンなどのテトラアルキルアンモニウムイオン、トリエチルベンジルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)、ホスホニウムイオン(例えば、テトラブチルホスホニウムイオンなどのテトラアルキルホスホニウムイオン、アルキルトリフェニルホスホニウムイオン、トリエチルフェニルホスホニウムイオン等)、アルカリ金属イオンまたはプロトンが挙げられる。
また、対イオンは金属錯体イオン(例えば銅錯体イオンなど)であってもよい。
配位子Lは、銅に対する配位部位を有する化合物であり、銅に対しアニオンで配位する配位部位、および、銅に対し非共有電子対で配位する配位原子から選ばれる1種以上を有する化合物が挙げられる。アニオンで配位する配位部位は、解離していてもよく、非解離でも良い。配位子Lは、銅に対する配位部位を2個以上有する化合物(多座配位子)が好ましい。また、配位子Lは、可視透明性を向上させるために、芳香族などのπ共役系が連続して複数結合していないことが好ましい。配位子Lは、銅に対する配位部位を1個有する化合物(単座配位子)と、銅に対する配位部位を2個以上有する化合物(多座配位子)とを併用することもできる。単座配位子としては、アニオンまたは非共有電子対で配位する単座配位子が挙げられる。アニオンで配位する配位子としては、ハロゲンアニオン、ヒドロキシドアニオン、アルコキシドアニオン、フェノキシドアニオン、アミドアニオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドを含む)、イミドアニオン(アシル基やスルホニル基で置換されたイミドを含む)、アニリドアニオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアニリドを含む)、チオラートアニオン、炭酸水素アニオン、カルボン酸アニオン、チオカルボン酸アニオン、ジチオカルボン酸アニオン、硫酸水素アニオン、スルホン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸ジエステルアニオン、ホスホン酸モノエステルアニオン、ホスホン酸水素アニオン、ホスフィン酸アニオン、含窒素へテロ環アニオン、硝酸アニオン、次亜塩素酸アニオン、シアニドアニオン、シアナートアニオン、イソシアナートアニオン、チオシアナートアニオン、イソチオシアナートアニオン、アジドアニオンなどが挙げられる。非共有電子対で配位する単座配位子としては、水、アルコール、フェノール、エーテル、アミン、アニリン、アミド、イミド、イミン、ニトリル、イソニトリル、チオール、チオエーテル、カルボニル化合物、チオカルボニル化合物、スルホキシド、へテロ環、あるいは、炭酸、カルボン酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、硝酸、または、そのエステルが挙げられる。
上記配位子Lが有するアニオンは、銅原子に配位可能なものであればよく、酸素アニオン、窒素アニオンまたは硫黄アニオンが好ましい。アニオンで配位する配位部位は、以下の1価の官能基群(AN−1)、または、2価の官能基群(AN−2)から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、以下の構造式における波線は、配位子を構成する原子団との結合位置である。
群(AN−1)
群(AN−2)
上記式中、Xは、NまたはCRを表し、Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
Rが表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。アルキル基の例としては、メチル基が挙げられる。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としてはハロゲン原子、カルボキシル基、ヘテロ環基が挙げられる。置換基としてのヘテロ環基は、単環であっても多環であってもよく、また、芳香族であっても非芳香族であってもよい。ヘテロ環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましく、1または2が好ましい。ヘテロ環を構成するヘテロ原子は、窒素原子が好ましい。アルキル基が置換基を有している場合、さらに置換基を有していてもよい。
Rが表すアルケニル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルケニル基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。アルケニル基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
Rが表すアルキニル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキニル基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。アルキニル基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
Rが表すアリール基は、単環であっても多環であってもよいが単環が好ましい。アリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6がさらに好ましい。アリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
Rが表すヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。ヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
アニオンで配位する配位部位の例として、モノアニオン性配位部位も挙げられる。モノアニオン性配位部位は、1つの負電荷を有する官能基を介して銅原子と配位する部位を表す。例えば、酸解離定数(pKa)が12以下の酸基が挙げられる。具体的には、リン原子を含有する酸基(リン酸ジエステル基、ホスホン酸モノエステル基、ホスフィン酸基等)、スルホ基、カルボキシル基、イミド酸基等が挙げられ、スルホ基、カルボキシル基が好ましい。
非共有電子対で配位する配位原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子が好ましく、酸素原子、窒素原子または硫黄原子がより好ましく、酸素原子、窒素原子がさらに好ましく、窒素原子が特に好ましい。非共有電子対で配位する配位原子が窒素原子である場合、窒素原子に隣接する原子が炭素原子、または、窒素原子であることが好ましく、炭素原子がより好ましい。
非共有電子対で配位する配位原子は、環に含まれる、または、以下の1価の官能基群(UE−1)、2価の官能基群(UE−2)、3価の官能基群(UE−3)から選択される少なくとも1種の部分構造に含まれることが好ましい。なお、以下の構造式における波線は、配位子を構成する原子団との結合位置である。
群(UE−1)
群(UE−2)
群(UE−3)
群(UE−1)〜(UE−3)中、R1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基またはアシル基を表す。
非共有電子対で配位する配位原子は、環に含まれていてもよい。非共有電子対で配位する配位原子が環に含まれる場合、非共有電子対で配位する配位原子を含む環は、単環であっても多環であってもよく、また、芳香族であっても非芳香族であってもよい。非共有電子対で配位する配位原子を含む環は、5〜12員環が好ましく、5〜7員環がより好ましい。
非共有電子対で配位する配位原子を含む環は、置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、ケイ素原子、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアシル基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、カルボキシル基等が挙げられる。
非共有電子対で配位する配位原子を含む環が置換基を有している場合、さらに置換基を有していてもよく、非共有電子対で配位する配位原子を含む環からなる基、上述した群(UE−1)〜(UE−3)から選択される少なくとも1種の部分構造を含む基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアシル基、ヒドロキシ基が挙げられる。
非共有電子対で配位する配位原子が群(UE−1)〜(UE−3)で表される部分構造に含まれる場合、R1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基またはアシル基を表す。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびヘテロアリール基は、上記アニオンで配位する配位部位で説明したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
アルコキシ基の炭素数は、1〜12が好ましく、3〜9がより好ましい。
アリールオキシ基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。
ヘテロアリールオキシ基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリールオキシ基を構成するヘテロアリール基は、上記アニオンで配位する配位部位で説明したヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
アルキルチオ基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましい。
アリールチオ基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。
ヘテロアリールチオ基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリールチオ基を構成するヘテロアリール基は、上記アニオンで配位する配位部位で説明したヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
アシル基の炭素数は、2〜12が好ましく、2〜9がより好ましい。
1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基が好ましく、水素原子またはアルキル基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。N原子上の置換基、すなわちR1をアルキル基とすることで、銅錯体の分子軌道への配位子寄与率が向上して、極大吸収波長でのモル吸光係数が向上し、近赤外線遮蔽性および可視透明性がより向上する傾向にある。特に、耐熱性と、近赤外線遮蔽性と可視透明性のバランスからアルキル基が好ましい。
配位子が、1分子内に、アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを有する場合、アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを連結する原子数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。このような構成とすることにより、銅錯体の構造がより歪みやすくなるため、色価をより向上させることができ、可視透明性を高めつつ、モル吸光係数を大きくし易い。アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを連結する原子の種類は、1種または2種以上であってもよい。炭素原子、または、窒素原子が好ましい。
配位子が、1分子内に、非共有電子対で配位する配位原子を2以上有する場合、非共有電子対で配位する配位原子は3つ以上有していてもよく、2〜5つ有していることが好ましく、4つ有していることがより好ましい。非共有電子対で配位する配位原子同士を連結する原子数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、2〜3が更に好ましく、3が特に好ましい。このような構成とすることにより、銅錯体の構造がより歪みやすくなるため、色価をより向上させることができる。非共有電子対で配位する配位原子同士を連結する原子は、1種または2種以上であってもよい。非共有電子対で配位する配位原子同士を連結する原子は、炭素原子が好ましい。
本発明において、配位子は、少なくとも2つの配位部位を有する化合物(多座配位子ともいう)が好ましい。配位子は、配位部位を少なくとも3つ有することがより好ましく、3〜5個有することが更に好ましく、4〜5個有することが特に好ましい。多座配位子は、銅成分に対し、キレート配位子として働く。すなわち、多座配位子が有する少なくとも2つの配位部位が、銅とキレート配位することにより、銅錯体の構造が歪んで、優れた可視透明性が得られ、更には、赤外線の吸光能力を向上でき、色価も向上すると考えられる。これにより、近赤外線カットフィルタを長期間使用しても、その特性が損なわれず、またカメラモジュールを安定的に製造することも可能となる。また、多座配位子は、非共有電子対で配位する配位原子を含む化合物であることが好ましく、非共有電子対で配位する配位原子として窒素原子を含む化合物であることがより好ましく、非共有電子対で配位する配位原子として窒素原子を含み、この窒素原子にアルキル基(好ましくはメチル基)が置換されている化合物であることがより好ましい。
多座配位子は、アニオンで配位する配位部位を1つ以上と非共有電子対で配位する配位原子を1つ以上とを含む化合物、非共有電子対で配位する配位原子を2つ以上有する化合物、アニオンで配位する配位部位を2つ含む化合物等が挙げられる。これらの化合物は、それぞれ独立に、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、配位子となる化合物は、配位部位を1つのみ有する化合物を用いることもできる。
多座配位子は、下記式(IV−1)〜(IV−14)で表される化合物であることが好ましい。例えば、配位子が4つの配位部位を有する化合物である場合は、下記式(IV−3)、(IV−6)、(IV−7)、(IV−12)で表される化合物が好ましく、金属中心により強固に配位し、耐熱性の高い安定な5配位錯体を形成しやすいという理由から、(IV−12)で表される化合物がより好ましい。また、例えば、配位子が5つの配位部位を有する化合物である場合は、下記式(IV−4)、(IV−8)〜(IV−11)、(IV−13)、(IV−14)で表される化合物が好ましく、金属中心により強固に配位し、耐熱性の高い安定な5配位錯体を形成しやすいという理由から、(IV−9)〜(IV−10)、(IV−13)、(IV−14)で表される化合物がより好ましく、(IV−13)で表される化合物が特に好ましい。
式(IV−1)〜(IV−14)中、X1〜X59はそれぞれ独立して、配位部位を表し、L1〜L25はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、L26〜L32はそれぞれ独立して3価の連結基を表し、L33〜L34はそれぞれ独立して4価の連結基を表す。
1〜X42はそれぞれ独立して、非共有電子対で配位する配位原子を含む環からなる基、上述した群(AN−1)、または、群(UE−1)から選択される少なくとも1種を表すことが好ましい。
43〜X56はそれぞれ独立して、非共有電子対で配位する配位原子を含む環からなる基、上述した群(AN−2)、または、群(UE−2)から選択される少なくとも1種を表すことが好ましい。
57〜X59はそれぞれ独立して、上述した群(UE−3)から選択される少なくとも1種を表すことが好ましい。
1〜L25はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−SO−、−O−、−SO2−または、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基、フェニレン基、−SO2−またはこれらの組み合わせからなる基がより好ましい。
26〜L32はそれぞれ独立して3価の連結基を表す。3価の連結基としては、上述した2価の連結基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
33〜L34はそれぞれ独立して4価の連結基を表す。4価の連結基としては、上述した2価の連結基から水素原子を2つ除いた基が挙げられる。
ここで、群(AN−1)〜(AN−2)中のR、および、群(UE−1)〜(UE−3)中のR1は、R同士、R1同士、あるいは、RとR1間で連結して環を形成しても良い。たとえば、式(IV−2)の具体例として、下の化合物(IV−2A)が挙げられる。なお、X3、X4、X43は以下に示した基であり、L2、L3はメチレン基、R1はメチル基であるが、このR1同士が連結して環を形成し、(IV−2B)や(IV−2C)のようになっても良い。
配位子をなす化合物の具体例としては、後述する多座配位子の好ましい具体例として示す化合物、および、これらの化合物の塩が挙げられる。塩を構成する原子としては、金属原子、テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。金属原子としては、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子がより好ましい。アルカリ金属原子としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。また、特開2014−41318号公報の段落0022〜0042、特開2015−43063号公報の段落0021〜0039、特開2016−006476号公報の段落0049に記載された化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
銅錯体は、例えば、以下の(1)〜(5)の態様が好ましい一例として挙げられ、(2)〜(5)がより好ましく、(3)〜(5)が更に好ましく、(4)または(5)が一層好ましい。
(1)2つの配位部位を有する化合物の1つまたは2つを配位子として有する銅錯体。
(2)3つの配位部位を有する化合物を配位子として有する銅錯体。
(3)3つの配位部位を有する化合物と2つの配位部位を有する化合物とを配位子として有する銅錯体。
(4)4つの配位部位を有する化合物を配位子として有する銅錯体。
(5)5つの配位部位を有する化合物を配位子として有する銅錯体。
上記(1)の態様において、2つの配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を2つ有する化合物、または、アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを有する化合物が好ましい。また、2つの配位部位を有する化合物の2つを配位子として有する場合、配位子の化合物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、(1)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1〜3個とすることもできる。単座配位子の種類としては、アニオンで配位する単座配位子、非共有電子対で配位する単座配位子のいずれも好ましい。2つの配位部位を有する化合物が非共有電子対で配位する配位原子を2つ有する化合物の場合は、配位力が強いという理由からアニオンで配位する単座配位子がより好ましい。2つの配位部位を有する化合物がアニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを有する化合物の場合は、銅錯体全体が電荷を持たないという理由から非共有電子対で配位する単座配位子がより好ましい。
上記(2)の態様において、3つの配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を3つ有する化合物が更に好ましい。また、(2)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもできる。また、1個以上とすることもでき、1〜3個以上がより好ましく、1〜2個がさらに好ましく、2個が一層好ましい。単座配位子の種類としては、アニオンで配位する単座配位子、非共有電子対で配位する単座配位子のいずれも好ましく、上述した理由によりアニオンで配位する単座配位子がより好ましい。
上記(3)の態様において、3つの配位部位を有する化合物は、アニオンで配位する配位部位と、非共有電子対で配位する配位原子とを有する化合物が好ましく、アニオンで配位する配位部位を2つ、および、非共有電子対で配位する配位原子を1つ有する化合物が更に好ましい。さらに、この2つのアニオンで配位する配位部位が異なっていることが特に好ましい。また、2つの配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を2つ有する化合物が更に好ましい。なかでも、3つの配位部位を有する化合物が、アニオンで配位する配位部位を2つ、および、非共有電子対で配位する配位原子を1つ有する化合物であり、2つの配位部位を有する化合物が、非共有電子対で配位する配位原子を2つ有する化合物である組み合わせが、特に好ましい。また、(3)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1個以上とすることもできる。0個がより好ましい。
上記(4)の態様において、4つの配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を2以上有する化合物がより好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を4つ有する化合物が更に好ましい。また、(4)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1個以上とすることもでき、2個以上とすることもできる。1個が好ましい。単座配位子の種類としては、アニオンで配位する単座配位子、非共有電子対で配位する単座配位子のいずれも好ましい。
上記(5)の態様において、5つの配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を2以上有する化合物がより好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を5つ有する化合物が更に好ましい。また、(5)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1個以上とすることもできる。単座配位子の数は0個が好ましい。
多座配位子は、上述した配位子の具体例で説明した化合物のうち、配位部位を2以上有する化合物や、以下に示す化合物が挙げられる。

[リン酸エステル銅錯体]
本発明において、銅化合物として、リン酸エステル銅錯体を用いることもできる。リン酸エステル銅錯体は、銅を中心金属としリン酸エステル化合物を配位子とするものである。リン酸エステル銅錯体の配位子をなすリン酸エステル化合物は、下記式(L−100)で表される化合物またはその塩が好ましい。
(HO)n−P(=O)−(OR13-n 式(L−100)
式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基、または炭素数2〜18のアルケニル基を表すか、−OR1が、炭素数4〜100のポリオキシアルキル基、炭素数4〜100の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、または、炭素数4〜100の(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基を表し、nは1または2を表す。nが1のとき、R2はそれぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。リン酸エステル化合物の具体例としては、上述した配位子が挙げられる。また、特開2014−41318号公報の段落0022〜0042の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
[スルホン酸銅錯体]
本発明において、銅錯体として、スルホン酸銅錯体を用いることもできる。スルホン酸銅錯体は、銅を中心金属としスルホン酸化合物を配位子とするものである。スルホン酸銅錯体の配位子をなすスルホン酸化合物は、下記式(L−200)で表される化合物またはその塩が好ましい。
2−SO2−OH 式(L−200)
式中、R2は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などを挙げることができる。アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。スルホン酸化合物の具体例としては、上述した配位子が挙げられる。また、特開2015−43063号公報の段落番号0021〜0039の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、銅化合物として、ポリマー側鎖に銅錯体部位を有する銅含有ポリマーを用いることができる。
銅錯体部位としては、銅と、銅に対して配位する部位(配位部位)とを有するものが挙げられる。銅に対して配位する部位としては、アニオンまたは非共有電子対で配位する部位が挙げられる。また、銅錯体部位は、銅に対して4座配位または5座配位する部位を有することが好ましい。配位部位の詳細については、上述した低分子タイプの銅化合物で説明したものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
銅含有ポリマーは、配位部位を含むポリマー(ポリマー(B1)ともいう)と、銅成分との反応で得られるポリマーや、ポリマー側鎖に反応性部位を有するポリマー(以下ポリマー(B2)ともいう)と、ポリマー(B2)が有する反応性部位と反応可能な官能基を有する銅錯体とを反応させて得られるポリマーが挙げられる。銅含有ポリマーの重量平均分子量は、2000以上が好ましく、2000〜200万がより好ましく、6000〜200,000がさらに好ましい。
銅含有ポリマーは、銅錯体部位を有する繰り返し単位の他に、他の繰り返し単位を含有していてもよい。他の繰り返し単位としては、架橋性基を有する繰り返し単位などが挙げられる。
銅化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して5〜90質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。銅化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用することもできる。銅化合物を2種以上併用することが好ましい。銅化合物を2種以上併用する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
樹脂組成物は、樹脂を含有する。樹脂の種類としては、光学材料に使用しうるものであれば特に制限されない。樹脂は透明性の高い樹脂が好ましい。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;(メタ)アクリル酸エステル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂等の(メタ)アクリル樹脂;酢酸ビニル樹脂;ハロゲン化ビニル樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリアミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアリレート(PAR)等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;エポキシ樹脂;ポリマレイミド樹脂;ポリウレア樹脂;ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリマレイミド樹脂、ポリウレア樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂がさらに好ましい。また、樹脂は、アルコキシシリル基を有する化合物のゾルゲル硬化物を用いることも好ましい。アルコキシシリル基を有する化合物としては、後述する架橋性化合物として説明する材料が挙げられる。樹脂の重量平均分子量は、1000〜300,000が好ましい。下限は、2000以上がより好ましく、3000以上がさらに好ましく、5000以上が特に好ましい。上限は、100,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。樹脂の数平均分子量は、500〜150,000が好ましい。下限は、1000以上がより好ましく、2,000以上がさらに好ましい。上限は、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。
樹脂は、下記式(A1−1)〜(A1−7)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を有する樹脂であることも好ましい。

式中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、L1〜L4はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表し、R10〜R13はそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
1が表すアルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。R1は、水素原子またはメチル基が好ましい。
1〜L4が表す2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NRa−(Raは水素原子あるいはアルキル基を表す)、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
10〜R13が表すアルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよい。アルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。R10〜R13が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6がさらに好ましい。
10は、直鎖もしくは分岐のアルキル基またはアリール基であることが好ましく、直鎖もしくは分岐のアルキル基であることがより好ましい。
11およびR12は、それぞれ独立して直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。
13は、直鎖もしくは分岐のアルキル基またはアリール基であることが好ましい。
14およびR15が表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、−NRa1a2、−CORa3、−COORa4、−OCORa5、−NHCORa6、−CONRa7a8、−NHCONRa9a10、−NHCOORa11、−SO2a12、−SO2ORa13、−NHSO2a14または−SO2NRa15a16が挙げられる。Ra1〜Ra16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、ヘテロアリール基を表す。なかでも、R14およびR15の少なくとも一方は、シアノ基または−COORa4を表すことが好ましい。Ra4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表すことが好ましい。
式(A1−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂の市販品としては、ARTON F4520(JSR(株)製)などが挙げられる。また、式(A1−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂の詳細については、特開2011−100084号公報の段落番号0053〜0075、0127〜0130の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
樹脂としては、式(A1−4)で表される繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましく、式(A1−1)で表される繰り返し単位と、式(A1−4)で表される繰り返し単位とを有する樹脂であることがより好ましい。この態様によれば、樹脂膜の耐熱衝撃性が向上する傾向にある。更には、銅錯体と樹脂との相溶性が向上し、析出物などの少ない樹脂膜が得られやすい。
樹脂は、架橋性基を有することも好ましい。架橋性基は、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシシリル基が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基がより好ましく、環状エーテル基、アルコキシシリル基が更に好ましく、アルコキシシリル基が特に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタニル基、脂環エポキシ基などが挙げられる。アルコキシシリル基としては、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられる。
架橋性基を有する樹脂においては、樹脂の架橋基価は0.5〜4mmol/gであることが好ましい。下限は、0.6mmol/g以上であることが好ましく、0.8mmol/g以上であることがより好ましく、1mmol/g以上であることが更に好ましい。上限は、3.5mmol/g以下であることが好ましく、3mmol/g以下であることがより好ましく、2mmol/g以下であることが更に好ましい。なお、樹脂の架橋基価は、樹脂1g中に含まれる架橋基の等量のことである。樹脂の架橋基価は、滴定等の方法で測定することができる。
樹脂が有する架橋性基がアルコキシシリル基である場合、樹脂のSi価は0.5〜4mmol/gであることが好ましい。下限は、0.6mmol/g以上であることが好ましく、0.8mmol/g以上であることがより好ましく、1mmol/g以上であることが更に好ましい。上限は、3.5mmol/g以下であることが好ましく、3mmol/g以下であることがより好ましく、2mmol/g以下であることが更に好ましい。なお、樹脂のSi価は、樹脂1g中に含まれるアルコキシシリル基の等量のことである。樹脂のSi価は、滴定等の方法で測定することができる。
架橋性基を有する樹脂としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましく、式(A1−1)および/または式(A1−4)で表される繰り返し単位と、架橋性基を有する繰り返し単位とを含む樹脂が好ましい。
架橋性基を有する繰り返し単位としては、下記式(A2−1)〜(A2−4)で表される繰り返し単位等が挙げられ、式(A2−1)〜(A2−3)で表される繰り返し単位が好ましい。
2は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。R2は、水素原子またはメチル基が好ましい。
51は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、上記式(A1−1)〜(A1−7)のL1〜L4で説明した2価の連結基が挙げられる。L51は、アルキレン基または、アルキレン基と−O−とを組み合わせてなる基が好ましい。L51の鎖を構成する原子の数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。上限は、例えば200以下とすることができる。
1は、架橋性基を表す。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシシリル基等が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基が好ましく、環状エーテル基、アルコキシシリル基がより好ましく、アルコキシシリル基が更に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基の詳細については上述した通りである。アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。
樹脂が、架橋性基を有する繰り返し単位を含む樹脂である場合、樹脂は、架橋性基を有する繰り返し単位を、樹脂の全繰り返し単位中5〜100モル%含有することが好ましい。下限は、6モル%以上が好ましく、8モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。上限は、95モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。この態様によれば、機械特性に優れた樹脂層を形成し易い。
樹脂は、上述した繰り返し単位の他に、他の繰り返し単位を含有していてもよい。他の繰り返し単位を構成する成分については、特開2010−106268号公報の段落番号0068〜0075(対応する米国特許出願公開第2011/0124824号明細書の段落番号0112〜0118)の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
樹脂の具体例としては、以下に示す構造の樹脂が挙げられる。
樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、10〜90質量%であることが好ましい。下限は30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。また、樹脂の全量中における架橋性基を有する樹脂の含有量は、5〜100質量%であることが好ましく、8〜100質量%であることがより好ましく、10〜100質量%であることが更に好ましい。樹脂は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
樹脂組成物は、架橋性基を有する化合物(以下、架橋剤ともいう)を含有することが好ましい。架橋性基の種類としては、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシシリル基等が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基が好ましく、環状エーテル基、アルコキシシリル基がより好ましく、アルコキシシリル基が更に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基の詳細については、架橋性基を有する樹脂で説明した基が挙げられる。アルコキシシリル基としては、ジアルコキシシリル基およびトリアルコキシシリル基が好ましい。また、アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。
架橋剤の分子量は、100〜3000であることが好ましい。上限は、2000以下が好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上が好ましく、250以上が更に好ましい。架橋剤はモノマーであることが好ましい。
架橋剤の架橋基価は、3〜20mmol/gであることが好ましい。下限は、3.5mmol/g以上であることが好ましく、4mmol/g以上であることがより好ましく、5mmol/g以上であることが更に好ましい。上限は、19mmol/g以下であることが好ましく、17mmol/g以下であることがより好ましく、15mmol/g以下であることが更に好ましい。なお、架橋剤の架橋基価とは、架橋剤1g中に含まれる架橋基の等量のことである。架橋剤の架橋基価は、滴定等の方法で測定することができる。
架橋剤は、1分子中に架橋性基を2〜5個有する化合物であることが好ましい。架橋性基の上限は、4個以下が好ましく、3個以下がより好ましい。
架橋剤は、1分子中にSi原子を2〜5個以上含む化合物であることが好ましい。Si原子の上限は、4個以下が好ましく、3個以下がより好ましい。架橋剤におけるSi原子の数は2個であることが好ましい。また、架橋剤における2個のSi原子は、2〜10個の原子を隔てて結合していることが好ましく、3〜9個の原子を隔てて結合していることがより好ましく、4〜8個の原子を隔てて結合していることが更に好ましい。ここで、2個のSi原子が2〜10個の原子を隔てて結合している場合とは、Si原子どうしを結合する連結鎖を構成する原子の数が2〜10個であることを意味する。例えば、下記の化合物の場合、2個のSi原子が6個の原子を隔てて結合している。
また、2個のSi原子は、炭素数2〜10のアルキレン基を介して結合していることが好ましく、炭素数3〜9のアルキレン基を介して結合していることがより好ましく、炭素数4〜8のアルキレン基を介して結合していることが更に好ましい。
また、架橋剤は、1分子中にアルコキシシリル基を2〜5個以上含む化合物であることが好ましい。アルコキシシリル基の上限は、4個以下が好ましく、3個以下がより好ましい。アルコキシシリル基の数は2個であることが好ましい。アルコキシシリル基は、ジアルコキシシリル基またはトリアルコキシシリル基であることが好ましく、トリアルコキシシリル基であることがより好ましい。また架橋剤が有する2個のアルコキシシリル基は、2〜10個の原子を隔てて結合していることが好ましく、3〜9個の原子を隔てて結合していることがより好ましく、4〜8個の原子を隔てて結合していることが更に好ましい。また、2個のアルコキシシリル基は、炭素数2〜10のアルキレン基を介して結合していることが好ましく、炭素数3〜9のアルキレン基を介して結合していることがより好ましく、炭素数4〜8のアルキレン基を介して結合していることが更に好ましい。
また、架橋剤がアルコキシシリル基を有する化合物である場合においては、架橋剤のSi価は3〜20mmol/gであることが好ましい。Si価の下限は、3.5mmol/g以上であることが好ましく、4mmol/g以上であることがより好ましく、5mmol/g以上であることが更に好ましい。Si価の上限は、19mmol/g以下であることが好ましく、17mmol/g以下であることがより好ましく、15mmol/g以下であることが更に好ましい。なお、架橋剤のSi価は、架橋剤1g中に含まれる架橋基の等量のことである。架橋剤のSi価は、滴定等の方法で測定することができる。
アルコキシシリル基を有する化合物の具体例としては、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。また、下記化合物を用いることもできる。
市販品としては、信越シリコーン社製のKBM−13、KBM−22、KBM−103、KBE−13、KBE−22、KBE−103、KBM−3033、KBE−3033、KBM−3063、KBM−3066、KBM−3086、KBE−3063、KBE−3083、KBM−3103、KBM−3066、KBM−7103、SZ−31、KPN−3504、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−9659、KBE−585、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007、X−40−1053、X−41−1059A、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1818、X−41−1810、X−40−2651、X−40−2655A、KR−513,KC−89S,KR−500、X−40−9225、X−40−9246、X−40−9250、KR−401N、X−40−9227、X−40−9247、KR−510、KR−9218、KR−213、X−40−2308、X−40−9238などが挙げられる。
本発明において、架橋剤として、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物を用いることができる。エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3〜15官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましく、3〜6官能の(メタ)アクリレート化合物であることが更に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の例としては、特開2013−253224号公報の段落0033〜0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。具体例としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはNKエステルATM−35E;新中村化学工業社製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D−330;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D−320;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D−310;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA ;日本化薬株式会社製、A−DPH−12E;新中村化学工業社製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、特開2013−253224号公報の段落番号0034〜0038、特開2012−208494号公報の段落番号0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0585)の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物の具体例としてはジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としては M−460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製、A−TMMT)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD HDDA)を用いることもできる。また、これらのオリゴマータイプも使用できる。例えば、RP−1040(日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、さらに、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のアロニックスシリーズ(例えば、M−305、M−510、M−520)などが挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する化合物としては、特開2013−253224号公報の段落0042〜0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR−494、日本化薬株式会社製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA−60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA−330などが挙げられる。
本発明において、架橋剤として、環状エーテル基を有する化合物を用いることもできる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられ、エポキシ基が好ましい。環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、EHPE 3150((株)ダイセル製)、EPICLON N−695(DIC(株)製)などが挙げられる。また、環状エーテル基を有する化合物としては、特開2013−011869号公報の段落番号0034〜0036、特開2014−043556号公報の段落番号0147〜0156、特開2014−089408号公報の段落番号0085〜0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
樹脂組成物が架橋剤を含有する場合、樹脂組成物は、樹脂100質量部に対して架橋剤を3〜30質量部含有することが好ましく、5〜20質量部含有することがより好ましく、7〜15質量部含有することが更に好ましい。また、樹脂組成物は、架橋性基を有する樹脂100質量部に対して架橋剤を3〜30質量部含有することが好ましく、5〜20質量部含有することがより好ましく、7〜15質量部含有することが更に好ましい。架橋剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
樹脂組成物は重合開始剤を含有することができる。重合開始剤としては、光、熱のいずれか或いはその双方により、架橋性基を有する樹脂や架橋剤の架橋を開始する能力を有する限り、特に制限はない。光で架橋させる場合、紫外領域から可視領域の光線に対して感光性を有する重合開始剤が好ましい。また、熱で架橋させる場合には、150〜250℃で分解する重合開始剤が好ましい。
重合開始剤としては、芳香族基を有する化合物が好ましい。例えば、アシルホスフィン化合物、アセトフェノン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物、オキシム化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、トリハロメチル化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、ジアゾニウム化合物、ヨードニウム化合物、スルホニウム化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物等のオニウム塩化合物、有機硼素塩化合物、ジスルホン化合物、チオール化合物などが挙げられる。重合開始剤は、特開2013−253224号公報の段落0217〜0228の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
重合開始剤は、オキシム化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、及び、アシルホスフィン化合物が好ましい。オキシム化合物としては、後述するラジカルトラップ剤で挙げたオキシム化合物などを使用することもできる。
重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜30質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。重合開始剤は1種類のみでも、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤は、特に制限はなく、各成分を均一に溶解或いは分散しうるものであれば、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水、有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、およびジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキサイド、スルホラン等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルコール類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類の具体例としては、特開2012−194534号公報の段落0136等に記載の溶剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。エステル類、ケトン類、エーテル類の具体例としては、特開2012−208494号公報の段落0497(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0609)に記載の溶剤が挙げられる。また、溶剤としては、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を用いることもできる。溶剤の具体例としては、酢酸−n−アミル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル、硫酸メチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテートなどが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、溶剤としては、沸点が150℃以下(好ましくは沸点が30〜145℃、より好ましくは50〜140℃)の溶剤(以下、低沸点溶剤ともいう)を単独で使用してもよく、沸点が150℃以上(好ましくは沸点が155〜300℃、より好ましくは160〜250℃)の溶剤(以下、高沸点溶剤ともいう)を単独で使用してもよく、低沸点溶剤と高沸点溶剤とを併用してもよい。高沸点溶剤を用いることで、樹脂組成物中の溶剤の蒸発速度が遅くなり、乾燥の安定化と残渣の析出を抑制しやすい。特に、樹脂組成物の固形分濃度の低い場合(例えば、固形分濃度が35質量%以下の場合など)においては、乾燥の安定化と残渣の析出の観点から、溶剤として高沸点溶剤と低沸点溶剤をと併用することが好ましい。また、高沸点溶剤と低沸点溶剤をと併用する場合、高沸点溶剤の沸点と、低沸点溶剤の沸点の差は20〜250℃であることが好ましく、50〜150℃であることがより好ましい。また、高沸点溶剤と、低沸点溶剤との質量比は特に限定はないが、高沸点溶剤:低沸点溶剤=[99:1]〜[55:45]であることが好ましく、[95:5]〜[70:30]であることがより好ましい。
高沸点溶剤としては、例えば、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテートなどが挙げられる。
低沸点溶剤としては、例えば、シクロペンタノン、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
本発明において、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
溶剤は、異性体(同じ原子数で異なる構造の化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
溶剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分が5〜80質量%となる量が好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、50質量%以上がより一層好ましく、55質量%以上が更に一層好ましく、60質量%以上が特に好ましい。上限は、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。樹脂組成物の固形分濃度(全固形分)を高めることで、一回の塗布で厚みのある樹脂層を形成することができる。例えば、樹脂組成物の全固形分を50質量%以上とすることで、一回の塗布で5〜40μmの厚みの樹脂層を形成することができる。また、樹脂組成物の全固形分が80質量%以下であれば、樹脂組成物中の成分の溶解性が良好である。溶剤は1種類のみでも、2種類以上でもよく、2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
樹脂組成物は、触媒を含んでもよい。例えば、アルコキシシリル基等の架橋性基を有する樹脂を用いた場合や、架橋剤を用いた場合においては、樹脂組成物が触媒を含有することで、架橋性基の架橋を促進して、機械物性、耐溶剤性、耐熱性などに優れた樹脂膜が得られ易い。
触媒としては、有機金属系触媒、酸系触媒、アミン系触媒などが挙げられ、有機金属系触媒が好ましい。有機金属系触媒は、Na、K、Ca、Mg、Ti、Zr、Al、Zn、Sn、及びBiからなる群より選択される少なくとも1つの金属を含む、酸化物、硫化物、ハロゲン化物、炭酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アルコキシド、水酸化物、及び置換基を有していてもよいアセチルアセトナート錯体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、上記金属の、ハロゲン化物、カルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、及び置換基を有していてもよいアセチルアセトナート錯体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アセチルアセトナート錯体が更に好ましい。特に、Alのアセチルアセトナート錯体が好ましい。有機金属系触媒の具体例としては、例えば、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウムなどが挙げられる。
樹脂組成物が、触媒を含有する場合、触媒の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して0.01〜5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下が更に好ましい。下限は、0.05質量%以上が好ましい。
樹脂組成物は、ラジカルトラップ剤を含有することもできる。ラジカルトラップ剤としてはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02、IRGACURE−OXE03、IRGACURE−OXE04(以上、BASF社製)、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)、アデカアークルズNCI−930((株)ADEKA製)、アデカオプトマーN−1919((株)ADEKA製、特開2012−14052号公報に記載の光重合開始剤2)等を用いることができる。
また、オキシム化合物として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報に記載の化合物、特表2014−500852号公報に記載の化合物24、36〜40、特開2013−164471号公報に記載の化合物(C−3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
また、オキシム化合物として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落番号0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落番号0008〜0012、0070〜0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007〜0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)が挙げられる。
また、オキシム化合物として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014−137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
また、オキシム化合物として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されている化合物OE−01〜OE−75が挙げられる。
ラジカルトラップ剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜30質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
樹脂組成物は、界面活性剤を含有することもできる。界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。界面活性剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.0001〜5質量%が好ましい。下限は、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。上限は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。樹脂組成物に界面活性剤を含有させることで、例えば、樹脂組成物を塗り重ねて樹脂層を形成する場合において、樹脂組成物の濡れ性を高めることができる。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用でき、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤がより好ましい。フッ素系界面活性剤におけるフッ素含有率は、3〜40質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上が更に好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下が更に好ましい。フッ素系界面活性剤におけるフッ素含有率が上述した範囲であれば、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的である。
フッ素系界面活性剤としては、特開2014−41318号公報の段落番号0060〜0064(対応する国際公開2014/17669号公報の段落番号0060〜0064)に記載の界面活性剤、特開2011−132503号公報の段落番号0117〜0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、SC−101、SC−103、SC−104、SC−105、SC−1068、SC−381、SC−383、S393、KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日および日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS−21が挙げられ、これらを用いることができる。
フッ素系界面活性剤としては、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば、特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。

上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%は質量%である。
また、フッ素系界面活性剤としては、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010−164965号公報の段落番号0050〜0090および段落番号0289〜0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718K、RS−72−K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、特開2015−117327号公報の段落番号0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。
ノニオン系界面活性剤としては、特開2012−208494号公報の段落番号0553(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0679)に記載のノニオン系界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。カチオン系界面活性剤としては、特開2012−208494号公報の段落番号0554(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0680)に記載のカチオン系界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。アニオン系界面活性剤としては、W004、W005、W017(裕商(株)製)等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、KF6001(信越シリコーン製)や、特開2012−208494号公報の段落番号0556(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0682)に記載のシリコーン系界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物などを用いることができる。なかでも、銅化合物との相溶性が良好であり、更には銅化合物と吸収波長が適し、優れた可視透明性を維持しつつ、紫外線の遮蔽性を高めることができるという理由から、ベンゾトリアゾール化合物およびヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましい。これらの詳細については、特開2012−208374号公報の段落番号0052〜0072、特開2013−68814号公報の段落番号0317〜0334の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ベンゾトリアゾール化合物の市販品としては、TINUVIN PS、TINUVIN 99−2、TINUVIN 384−2、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 1130(以上、BASF社製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
樹脂組成物は、さらに、分散剤、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含んでいてもよい。これらの成分は、特開2008−250074号公報の段落番号0101〜0104、0107〜0109等の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。分子量500以上のフェノール化合物、分子量500以上の亜リン酸エステル化合物又は分子量500以上のチオエーテル化合物がより好ましい。これらは2種以上を混合して使用してもよい。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。特に、フェノール性水酸基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1〜22の置換又は無置換のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルへキシル基がより好ましい。また、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物(酸化防止剤)も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2−[(4,6,9,11−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−2−イル)オキシ]エチル]アミン、および亜リン酸エチルビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらは、市販品として容易に入手可能であり、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−50F、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−60G、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−330((株)ADEKA)などが挙げられる。酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.3〜15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
樹脂組成物の粘度は、塗布により樹脂膜を形成する場合は、1〜3000mPa・sであることが好ましい。下限は、10mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上が更に好ましい。上限は、2000mPa・s以下が好ましく、1500mPa・s以下が更に好ましい。
上記の樹脂組成物は、各成分を混合して調製できる。樹脂組成物の調製に際しては、樹脂組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解および/または分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。
樹脂組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収納容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015−123351号公報に記載の容器が挙げられる。
銅化合物を含む樹脂層は、上記樹脂組成物を、銅を含有するガラスや、赤外線吸収色素層等の支持体上に適用して樹脂組成物層を形成し、樹脂組成物層を乾燥して形成できる。膜厚は、目的に応じて上述した範囲内で適宜選択することができる。
樹脂組成物の適用方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009−145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法;ブレードコート法;バーコート法;アプリケーター塗布法などが挙げられる。インクジェットによる適用方法としては、組成物を吐出可能な方法であれば特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット−特許に見る無限の可能性−、2005年2月発行、住べテクノリサーチ」に示された特許公報に記載の方法(特に115ページ〜133ページ)や、特開2003−262716号公報、特開2003−185831号公報、特開2003−261827号公報、特開2012−126830号公報、特開2006−169325号公報などに記載の方法を用いることができる。
樹脂組成物層の乾燥条件としては、樹脂組成物に含まれる各成分の種類や含有量等によって適宜調整できる。例えば、乾燥温度としては、40〜160℃が好ましい。下限は60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。上限は140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。加熱時間としては、1〜600分が好ましい。下限は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。上限は300分以下が好ましく、180分以下がより好ましい。また、室温(例えば25℃)から一定の昇温速度で所定の乾燥温度まで昇温し、その温度に保持して乾燥する方法も挙げられる。昇温速度としては、0.5〜10℃/分が好ましく、1.0〜5℃/分がより好ましい。
樹脂層の形成方法において、その他の工程を含んでいても良い。その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、硬化処理工程などが挙げられる。
硬化処理工程において、樹脂組成物層の硬化処理方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、露光処理、加熱処理などが挙げられ、機械物性に優れた樹脂層が得られやすいという理由から加熱処理が好ましい。ここで、本発明において「露光」とは、各種波長の光のみならず、電子線、X線などの放射線照射をも包含する意味で用いられる。
露光処理としては、樹脂組成物層に対して放射線を照射して行うことが好ましい。放射線としては、電子線、KrF、ArF、g線、h線、i線等の紫外線が好ましい。露光方式としては、ステッパー露光や、高圧水銀灯を用いた露光などが挙げられる。露光量は5〜3000mJ/cm2が好ましい。上限は、2000mJ/cm2以下が好ましく、1000mJ/cm2以下がより好ましい。下限は、10mJ/cm2以上が好ましく、50mJ/cm2以上がより好ましい。露光装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、超高圧水銀灯などの紫外線露光機が挙げられる。
加熱処理における加熱温度としては、100〜180℃が好ましい。下限は120℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。上限は170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。加熱時間としては、0.5〜48時間が好ましい。下限は1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。上限は24時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましい。加熱装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱風乾燥器、ドライオーブン、ホットプレート、赤外線ヒーター、波長制御乾燥機などが挙げられる。
また、硬化処理後の樹脂組成物層(樹脂層)に対してエージングを行ってもよい。エージングにおいては、樹脂組成物層(樹脂層)を高温高湿処理することが好ましい。エージング温度としては、60〜150℃が好ましい。下限は70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。上限は140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。湿度としては、30〜100%が好ましい。下限は40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。上限は95%以下が好ましく、90%以下がより好ましい。エージング時間としては、0.5〜100時間が好ましい。下限は1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。上限は50時間以下が好ましく、25時間以下がより好ましい。エージング装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高温高湿炉などが挙げられる。
また、樹脂組成物を支持体に適用して形成した樹脂組成物層に対し、上述した硬化処理工程を経ずに上述したエージングを行ってもよい。すなわち、樹脂組成物層に対し、硬化プロセスを経ずにエージングを行って樹脂層を形成してもよい。この態様においては、エージングが硬化処理工程を兼ねている。また、エージング条件(温度、湿度、時間)としては、上述した条件が挙げられる。
<<赤外線吸収色素を含む層>>
本発明の近赤外線カットフィルタは、赤外線吸収色素を含む層(以下、赤外線吸収色素層又はIR色素組成物層ともいう)を含む。
赤外線吸収色素層は、波長600〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。下限は620nm以上であることが好ましく、650nm以上であることがより好ましく、680nm以上であることが更に好ましい。上限は900nm以下であることが好ましく、850nm以下であることがより好ましく、800nm以下であることが更に好ましい。また、赤外線吸収色素層の極大吸収波長λ1は、銅化合物を含む樹脂層の極大吸収波長λ2よりも短波長であることが好ましい。この態様によれば、幅広い近赤外領域の光に対する遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。銅化合物を含む樹脂層の極大吸収波長λ2と赤外線吸収色素層の極大吸収波長λ1との差(λ2−λ1)は、20〜350nmであることが好ましく、50〜300nmであることがより好ましく、100〜250nmであることが更に好ましい。
赤外線吸収色素層における赤外線吸収色素の含有量は、10〜90質量%であることが好ましい。下限は20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、45質量%以上であることが特に好ましい。上限は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることが更に好ましい。
赤外線吸収色素層は、樹脂を含むことが好ましい。赤外線吸収色素層における樹脂の含有量は、5〜90質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
赤外線吸収色素層は、赤外線吸収色素を含む組成物を用いて形成できる。以下、本発明の近赤外線カットフィルタにおける赤外線吸収色素層の形成に好ましく用いることができる組成物(赤外線吸収色素層形成用組成物)について説明する。
赤外線吸収色素層形成用組成物は、赤外線吸収色素を含む。赤外線吸収色素は、波長600〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましい。下限は620nm以上であることが好ましく、650nm以上であることがより好ましく、680nm以上であることが更に好ましい。上限は900nm以下であることが好ましく、850nm以下であることがより好ましく、800nm以下であることが更に好ましい。
赤外線吸収色素としては、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物及びジベンゾフラノン化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物およびクアテリレン化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール化合物が特に好ましい。ジイモニウム化合物としては、例えば、特表2008−528706号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。フタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006−343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013−195480号公報の段落番号0013〜0029に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ナフタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジイモニウム化合物およびスクアリリウム化合物は、特開2010−111750号公報の段落番号0010〜0081に記載の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物は、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、赤外線吸収色素としては、特開2016−146619号公報に記載された化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
ピロロピロール化合物としては、式(PP)で表される化合物であることが好ましい。

式中、R1aおよびR1bは、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R2およびR3は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R2およびR3は、互いに結合して環を形成してもよく、R4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR4A4B、または金属原子を表し、R4は、R1a、R1bおよびR3から選ばれる少なくとも一つと共有結合もしくは配位結合していてもよく、R4AおよびR4Bは、各々独立に置換基を表す。式(PP)の詳細については、特開2009−263614号公報の段落番号0017〜0047、特開2011−68731号公報の段落番号0011〜0036、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010〜0024の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
1aおよびR1bは、各々独立に、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。また、R1aおよびR1bが表すアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−OCOR11、−SOR12、−SO213などが挙げられる。R11〜R13は、それぞれ独立に、炭化水素基または複素環基を表す。また、置換基としては、特開2009−263614号公報の段落番号0020〜0022に記載された置換基が挙げられる。なかでも、置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、−OCOR11、−SOR12、−SO213が好ましい。R1a、R1bで表される基としては、分岐アルキル基を有するアルコキシ基を置換基として有するアリール基、ヒドロキシ基を置換基として有するアリール基、または、−OCOR11で表される基を置換基として有するアリール基であることが好ましい。分岐アルキル基の炭素数は、3〜30が好ましく、3〜20がより好ましい。
2およびR3の少なくとも一方は電子求引性基が好ましく、R2は電子求引性基(好ましくはシアノ基)を表し、R3はヘテロアリール基を表すことがより好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示される。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。式(PP)における2個のR2同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、式(PP)における2個のR3同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基または−BR4A4Bで表される基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基または−BR4A4Bで表される基であることがより好ましく、−BR4A4Bで表される基であることが更に好ましい。R4AおよびR4Bが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または、ヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基、または、ヘテロアリール基がより好ましく、アリール基が特に好ましい。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。式(PP)における2個のR4同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(PP)で表される化合物の具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。また、ピロロピロール化合物としては、特開2009−263614号公報の段落番号0016〜0058に記載の化合物、特開2011−68731号公報の段落番号0037〜0052に記載の化合物、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010〜0033に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
スクアリリウム化合物としては、下記式(SQ)で表される化合物が好ましい。

式(SQ)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、アリール基、ヘテロアリール基または式(A−1)で表される基を表す;

式(A−1)中、Z1は、含窒素複素環を形成する非金属原子団を表し、R2は、アルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、dは、0または1を表し、波線は連結手を表す。式(SQ)の詳細については、特開2011−208101号公報の段落番号0020〜0049の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
なお、式(SQ)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
スクアリリウム化合物の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。以下構造式中、EHは、エチルヘキシル基を表す。また、スクアリリウム化合物としては、特開2011−208101号公報の段落番号0044〜0049に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
シアニン化合物は、式(C)で表される化合物が好ましい。
式(C)

式中、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、縮環してもよい5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子団であり、R101およびR102は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基またはアリール基を表し、L1は、奇数個のメチン基を有するメチン鎖を表し、aおよびbは、それぞれ独立に、0または1であり、aが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが二重結合で結合し、bが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが単結合で結合し、式中のCyで表される部位がカチオン部である場合、X1はアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位がアニオン部である場合、X1はカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、cは0である。
シアニン化合物としては、特開2009−108267号公報の段落番号0044〜0045に記載の化合物、特開2002−194040号公報の段落番号0026〜0030に記載の化合物、特開2015−172004号公報に記載の化合物、特開2015−172102号公報に記載の化合物、特開2008−88426号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、赤外線吸収色素としては、市販品を用いることもできる。例えば、SDO−C33(有本化学工業(株)製)、イーエクスカラーIR−14、イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーTX−EX−801B、イーエクスカラーTX−EX−805K((株)日本触媒製)、ShigenoxNIA−8041、ShigenoxNIA−8042、ShigenoxNIA−814、ShigenoxNIA−820ShigenoxNIA−839(ハッコーケミカル社製)、EpoliteV−63、Epolight3801、Epolight3036(EPOLIN社製)、PRO−JET825LDI(富士フイルム(株)製)、NK−3027、NK−5060((株)林原製)、YKR−3070(三井化学(株)製)などが挙げられる。
赤外線吸収色素層形成用組成物において、赤外線吸収色素の含有量は、赤外線吸収色素層形成用組成物の全固形分に対して、10〜90質量%であることが好ましい。下限は20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、45質量%以上であることが特に好ましい。上限は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることが更に好ましい。
赤外線吸収色素層形成用組成物は、樹脂を含有することができる。樹脂としては、上述した樹脂組成物で説明した樹脂が挙げられる。また、赤外線吸収色素層形成用組成物に用いられる樹脂としては、酸基を有する樹脂を用いることもできる。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として好ましく用いることができる。赤外線吸収色素層形成用組成物がアルカリ可溶性樹脂を含有することにより、アルカリ現像によって所望のパターンを形成できる。
酸基を有する樹脂としては、特開2012−208494号公報の段落番号0558〜0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685〜0700)の記載、特開2012−198408号公報の段落番号0076〜0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
酸基を有する樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
赤外線吸収色素層形成用組成物は、樹脂として分散剤を含有することができる。特に、赤外線吸収色素として顔料を用いた場合においては、分散剤としての樹脂を含むことが好ましい。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。分散剤は、酸性分散剤を少なくとも含むことが好ましく、酸性分散剤のみであることがより好ましい。分散剤が、酸性分散剤を少なくとも含むことにより、顔料の分散性が向上し、優れた現像性が得られる。このため、フォトリソグラフィ法にて好適にパターン形成することができる。なお、分散剤が酸性分散剤のみであるとは、例えば、分散剤の全質量中における、酸性分散剤の含有量が99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上とすることもできる。
ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40〜105mgKOH/gが好ましく、50〜105mgKOH/gがより好ましく、60〜105mgKOH/gがさらに好ましい。
また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基が好ましい。
分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料の分散性、及び、経時後の分散安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012−255128号公報の段落番号0025〜0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、本発明において、樹脂(分散剤)は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤を用いることも好ましい。オリゴイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40〜10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。オリゴイミン系分散剤については、特開2012−255128号公報の段落番号0102〜0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。オリゴイミン系分散剤の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、オリゴイミン系分散剤としては、特開2012−255128号公報の段落番号0168〜0174に記載の樹脂を用いることもできる。
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、Disperbyk−111(BYKChemie社製)などが挙げられる。また、特開2014−130338号公報の段落番号0041〜0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
樹脂の含有量は、赤外線吸収色素層形成用組成物の全固形分に対して、5〜90質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
赤外線吸収色素層形成用組成物は、架橋剤を含有することができる。架橋性基を有する化合物(架橋剤)を含有することができる。架橋剤としては、上述した樹脂組成物で説明した樹脂が挙げられる。
架橋剤の含有量は、赤外線吸収色素層形成用組成物の全固形分に対して、5〜90質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
<<顔料誘導体>>
赤外線吸収色素層形成用組成物は、更に顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、顔料の一部を、酸基、塩基性基、塩構造を有する基又はフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体としては、式(B1)で表される化合物が好ましい。

式(B1)中、Pは色素構造を表し、Lは単結合または連結基を表し、Xは酸基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミドメチル基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なっていてもよい。
式(B1)中、Pは、色素構造を表し、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造、アントラキノン色素構造、ジアントラキノン色素構造、ベンゾイソインドール色素構造、チアジンインジゴ色素構造、アゾ色素構造、キノフタロン色素構造、フタロシアニン色素構造、ナフタロシアニン色素構造、ジオキサジン色素構造、ペリレン色素構造、ペリノン色素構造、ベンゾイミダゾロン色素構造、ベンゾチアゾール色素構造、ベンゾイミダゾール色素構造およびベンゾオキサゾール色素構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造およびベンゾイミダゾロン色素構造から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール色素構造が特に好ましい。
式(B1)中、Lは単結合または連結基を表す。連結基としては、1〜100個の炭素原子、0〜10個の窒素原子、0〜50個の酸素原子、1〜200個の水素原子、および0〜20個の硫黄原子から成り立つ基が好ましく、無置換でもよく、置換基を更に有していてもよい。
式(B1)中、Xは、酸基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミドメチル基を表し、酸基または塩基性基が好ましい。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基等が挙げられる。塩基性基としてはアミノ基が挙げられる。
顔料誘導体としては、例えば、特開昭56−118462号公報、特開昭63−264674号公報、特開平1−217077号公報、特開平3−9961号公報、特開平3−26767号公報、特開平3−153780号公報、特開平3−45662号公報、特開平4−285669号公報、特開平6−145546号公報、特開平6−212088号公報、特開平6−240158号公報、特開平10−30063号公報、特開平10−195326号公報、国際公開WO2011/024896号公報の段落番号0086〜0098、国際公開WO2012/102399号公報の段落番号0063〜0094等に記載の化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
赤外線吸収色素層形成用組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、赤外線吸収色素100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、赤外線吸収色素の分散性を高めて、赤外線吸収色素の凝集を効率よく抑制できる。顔料誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
赤外線吸収色素層形成用組成物は、重合開始剤、溶剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などをさらに含有することができる。これらの詳細については、上述した樹脂組成物で説明したものが挙げられる。また、重合開始剤としては、V−601(和光純薬工業製)などを用いることもできる。赤外線吸収色素層形成用組成物は、更に、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p−メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤の含有量は、赤外線吸収色素層形成用組成物の全固形分に対して、0.001〜5質量%が好ましい。
赤外線吸収色素層形成用組成物は、各成分を混合して調製できる。赤外線吸収色素層形成用組成物の調製に際しては、赤外線吸収色素層形成用組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解および/または分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。赤外線吸収色素層形成用組成物の収容容器としては、特に限定は無く、上述した樹脂組成物で説明したものとを用いることができる。
赤外線吸収色素層は、上記赤外線吸収色素層形成用組成物を、銅を含有するガラスや銅化合物を含む樹脂層等に適用して組成物層を形成し、組成物層を乾燥して形成できる。
赤外線吸収色素層形成用組成物の適用方法としては、上述した樹脂組成物の適用方法として説明した方法が挙げられる。組成物層の乾燥条件は、赤外線吸収色素層形成用組成物に含まれる各成分の種類や含有量等によって適宜調整できる。例えば、乾燥温度としては、40〜160℃が好ましい。下限は60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。上限は140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。乾燥時間としては、1〜600分が好ましい。下限は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。上限は300分以下が好ましく、180分以下がより好ましい。
赤外線吸収色素層形成用組成物の形成方法は、その他の工程を含んでいても良い。その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、硬化処理工程などが挙げられる。
組成物層の硬化処理方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、露光処理、加熱処理などが挙げられる。露光処理は、組成物層に対して放射線を照射して行うことが好ましい。放射線としては、電子線、KrF、ArF、g線、h線、i線等の紫外線が好ましい。露光方式としては、ステッパー露光や、高圧水銀灯を用いた露光などが挙げられる。露光量は5〜3000mJ/cm2が好ましい。上限は、2000mJ/cm2以下が好ましく、1000mJ/cm2以下がより好ましい。下限は、10mJ/cm2以上が好ましく、50mJ/cm2以上がより好ましい。露光装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、超高圧水銀灯などの紫外線露光機が挙げられる。
加熱処理における加熱温度としては、120〜250℃が好ましい。加熱時間としては、3分〜180分が好ましく、5分〜120分がより好ましい。加熱装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱風乾燥器、ドライオーブン、ホットプレート、赤外線ヒーター、波長制御乾燥機などが挙げられる。
<<誘電体多層膜、紫外線吸収層>>
本発明の近赤外線カットフィルタは、誘電体多層膜および紫外線吸収層から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。近赤外線カットフィルタが更に誘電体多層膜を含むことで、視野角が広く、近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタが得られ易い。また、近赤外線カットフィルタが更に紫外線吸収層を含むことで、近赤外線カットフィルタの紫外線遮蔽性を高めることができ、このような近赤外線カットフィルタを固体撮像素子などに組み込んだ際においては、パープルフリンジが抑制された画像などを得ることができる。
なお、本発明において、誘電体多層膜は、光の干渉の効果を利用して赤外線などを遮蔽する膜である。具体的には、屈折率の異なる誘電体層(高屈折率材料層と低屈折率材料層)を、交互に2層以上積層してなる膜である。
誘電体多層膜の材料としては、例えばセラミックを用いることができる。光の干渉の効果を利用した赤外線カットフィルタを形成するためには、屈折率の異なるセラミックを2種以上用いることが好ましい。誘電体多層膜としては具体的には、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した構成を好適に用いることができる。
高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.7〜2.5の材料が選択される。この材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウムなどを少量含有させたものが挙げられる。
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.2〜1.6の材料が選択される。この材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
誘電体多層膜を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、CVD(chemical vapor deposition)法、スパッタ法、真空蒸着法などにより、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成し、銅を含有する透明層および/または赤外線吸収層と接着剤で貼り合わせる方法、銅を含有する透明層および/または赤外線吸収層の表面に、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法などにより、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層して誘電体多層膜を形成する方法を挙げることができる。
高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚みは、遮断しようとする赤外線波長λ(nm)に対して0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。厚みを上記範囲とすることにより、特定波長の光の遮蔽および透過を制御し易い。また、誘電体多層膜における積層数は、2〜100層が好ましく、2〜60層がより好ましく、2〜40層が更に好ましい。
紫外線吸収層は、紫外線吸収剤を含む層であることが好ましい。紫外線吸収剤としては、上述した樹脂組成物で説明した紫外線吸収剤などが挙げられる。また、紫外線吸収層については、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0040〜0070、0119〜0145の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、誘電体多層膜および紫外線吸収層は、銅を含有するガラスの一方の面側に配置してよいし、両面上に配置してもよい。また、誘電体多層膜は、近赤外線カットフィルタの最外層に配置されていることが好ましい。誘電体多層膜が近赤外線カットフィルタの最外層に配置されていることで、製造プロセスが簡略化される。また、紫外線吸収層は、近赤外線カットフィルタの最外層に配置されていてもよく、銅を含有するガラスと銅化合物を含む樹脂層との間、銅を含有するガラスと赤外線吸収色素層との間、銅化合物を含む樹脂層と赤外線吸収色素層との間のいずれかに配置されていてもよい。
<近赤外線カットフィルタの層構成>
本発明の近赤外線カットフィルタは、銅を含有するガラスと、銅化合物を含む樹脂層と、赤外線吸収色素層とを任意の配置で有する構造であればよい。なかでも、銅化合物を含む樹脂層の一方の面に銅を含有するガラスが接しており、かつ、銅化合物を含む樹脂層の他方の面に赤外線吸収色素を含む層が接していることが好ましい。すなわち、銅を含有するガラスと赤外線吸収色素層との間に銅化合物を含む樹脂層が配置され、銅化合物を含む樹脂層が銅を含有するガラスおよび赤外線吸収色素層と接して積層していることが好ましい。この態様によれば、各層の密着性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。
本発明の赤外線カットフィルタの層構成の一例を以下に示す。
(1)銅を含有するガラス/銅化合物を含む樹脂層/赤外線吸収色素層
(2)銅を含有するガラス/赤外線吸収色素層/
(3)銅化合物を含む樹脂層/銅を含有するガラス/赤外線吸収色素層
(1)の態様において、誘電体多層膜を更に有する場合は、銅を含有するガラスおよび/または赤外線吸収色素層の表面に誘電体多層膜が配置されていることが好ましい。(2)の態様において、誘電体多層膜を更に有する場合は、銅を含有するガラスおよび/または銅化合物を含む樹脂層の表面に誘電体多層膜が配置されていることが好ましい。(3)の態様において、誘電体多層膜を更に有する場合は、銅化合物を含む樹脂層および/または赤外線吸収色素層の表面に誘電体多層膜が配置されていることが好ましい。
(1)の態様において、紫外線吸収層を更に有する場合は、銅を含有するガラスおよび/または赤外線吸収色素層の表面に紫外線吸収層が配置されていてもよく、各層の間に紫外線吸収層が配置されていてもよい。
(2)の態様において、紫外線吸収層を更に有する場合は、銅を含有するガラスおよび/または銅化合物を含む樹脂層の表面に紫外線吸収層が配置されていてもよく、各層の間に紫外線吸収層が配置されていてもよい。
(3)の態様において、紫外線吸収層を更に有する場合は、銅化合物を含む樹脂層および/または赤外線吸収色素層の表面に紫外線吸収層が配置されていてもよく、各層の間に紫外線吸収層が配置されていてもよい。
また、(1)〜(3)の態様において、誘電体多層膜と紫外線吸収層とを更に有する場合は、誘電体多層膜が最外層となるように配置されていることが好ましい。この場合、誘電体多層膜は銅を含有するガラスに対して一方の面側のみに配置されていてもよく、他方の面側にも配置されていてもよい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
<固体撮像素子、カメラモジュール>
本発明の固体撮像素子は、本発明の近赤外線カットフィルタを含む。また、本発明のカメラモジュールは、本発明の近赤外線カットフィルタを含む。
図1は、本発明の実施形態に係る近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュールの構成を示す概略断面図である。図1に示すカメラモジュール10は、固体撮像素子11と、固体撮像素子の主面側(受光側)に設けられた平坦化層12と、近赤外線カットフィルタ13と、近赤外線カットフィルタの上方に配置され内部空間に撮像レンズ14を有するレンズホルダー15と、を備える。カメラモジュール10は、外部からの入射光が、撮像レンズ14、近赤外線カットフィルタ13、平坦化層12を順次透過した後、固体撮像素子11の撮像素子部に到達するようになっている。近赤外線カットフィルタ13としては、上述した物性の樹脂膜のみを用いてもよく、樹脂膜と支持体との積層体を用いてもよい。支持体の材質としては、一般的なガラスの他、サファイアガラス、ゴリラガラスなどの強化ガラス、透明なセラミック、プラスチックなどが挙げられる。撮像レンズ14の材質としては、一般的なガラスの他、サファイアガラス、ゴリラガラスなどの強化ガラス、透明なセラミック、プラスチックなどが挙げられる。
固体撮像素子11は、例えば、基板16の主面に、フォトダイオード、層間絶縁膜(図示せず)、ベース層(図示せず)、カラーフィルタ17、オーバーコート(図示せず)、マイクロレンズ18をこの順に備えている。カラーフィルタ17(赤色のカラーフィルタ、緑色のカラーフィルタ、青色のカラーフィルタ)やマイクロレンズ18は、固体撮像素子11に対応するように、それぞれ配置されている。なお、平坦化層12の表面に近赤外線カットフィルタ13が設けられる代わりに、マイクロレンズ18の表面、ベース層とカラーフィルタ17との間、または、カラーフィルタ17とオーバーコートとの間に、近赤外線カットフィルタ13が設けられる形態であってもよい。例えば、近赤外線カットフィルタ13は、マイクロレンズ表面から2mm以内(より好ましくは1mm以内)の位置に設けられていてもよい。この位置に近赤外線カットフィルタ13を設けると、近赤外線カットフィルタを形成する工程が簡略化できる。更には、マイクロレンズへの不要な近赤外線の入射を十分にカットすることができ、赤外線遮蔽性をより高めることができる。また、図1において、撮像レンズ14は1枚であるが、撮像レンズ14は2枚以上であってもよい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、耐熱性に優れるため、半田リフロー工程に供することができる。半田リフロー工程によりカメラモジュールを製造することによって、半田付けを行うことが必要な電子部品実装基板等の自動実装化が可能となり、半田リフロー工程を用いない場合と比較して、生産性を格段に向上することができる。更に、自動で行うことができるため、低コスト化を図ることもできる。半田リフロー工程に供される場合、250〜270℃程度の温度にさらされることとなるため、近赤外線カットフィルタは、半田リフロー工程に耐え得る耐熱性(以下、「耐半田リフロー性」ともいう。)を有することが好ましい。本明細書中で、「耐半田リフロー性を有する」とは、180℃で1分間の加熱を行った後にも近赤外線カットフィルタとしての特性を保持することをいう。より好ましくは、230℃で10分間の加熱を行った後にも特性を保持することである。更に好ましくは、250℃で3分間の加熱を行った後にも特性を保持することである。耐半田リフロー性を有しない場合には、上記条件で加熱した場合に、近赤外線カットフィルタの赤外線遮蔽性が低下したり、膜としての機能が不十分となる場合がある。
本発明のカメラモジュールは、更に、紫外線吸収層を有することもできる。この態様によれば、紫外線遮蔽性を高めることができる。紫外線吸収層は、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0040〜0070、0119〜0145の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることする。
図2〜4は、カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタの周辺部分の一例を示す概略断面図である。
図2に示すように、カメラモジュールは、固体撮像素子11と、平坦化層12と、紫外・赤外光反射膜19と、透明基材20と、近赤外線カットフィルタ21と、反射防止層22とをこの順に有していてもよい。紫外・赤外光反射膜19は、例えば、特開2013−68688号公報の段落番号0033〜0039、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0110〜0114を参酌することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。透明基材20は、可視領域の波長の光を透過するものであり、例えば、特開2013−68688号公報の段落番号0026〜0032を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。反射防止層22は、近赤外線カットフィルタ21に入射する光の反射を防止することにより透過率を向上させ、効率よく入射光を利用する機能を有するものであり、例えば、特開2013−68688号公報の段落番号0040の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
図3に示すように、カメラモジュールは、固体撮像素子11と、近赤外線カットフィルタ21と、反射防止層22と、平坦化層12と、反射防止層22と、透明基材20と、紫外・赤外光反射膜19とをこの順に有していてもよい。
図4に示すように、カメラモジュールは、固体撮像素子11と、近赤外線カットフィルタ21と、紫外・赤外光反射膜19と、平坦化層12と、反射防止層22と、透明基材20と、反射防止層22とをこの順に有していてもよい。
図5に本発明のカメラモジュールの他の実施形態を示す。このカメラモジュールは、図1に示したカメラモジュールにおいて、近赤外線カットフィルタ13がレンズホルダー15の外側に配置されている点が、図1に示したカメラモジュールと相違している。すなわち、図5に示したカメラモジュールにおいては、近赤外線カットフィルタ13が撮像レンズ14よりも外部からの入射光側に配置されている。このカメラモジュールにおいては、外部からの入射光が、近赤外線カットフィルタ13、撮像レンズ14、平坦化層12を順次透過した後、固体撮像素子11の撮像素子部に到達するようになっている。近赤外線カットフィルタ13を撮像レンズ14よりも外部からの入射光側に配置した場合においては、近赤外線カットフィルタ13と受光部との距離が離れることにより、近赤外線カットフィルタに欠陥があっても、これらの欠陥がぼやけて、これらの欠陥による画像への影響を小さくできる。
また、図5では、近赤外線カットフィルタ13がレンズホルダー15の外側に配置されているが、レンズホルダー15内に配置されていてもよい。また、図5では、撮像レンズ14の表面から所定の間隔をおいて近赤外線カットフィルタ13が配置されているが、撮像レンズ14の表面に近赤外線カットフィルタ13が直接形成されていてもよい。
また、図5では、撮像レンズ14は1枚であるが、撮像レンズ14は2枚以上であってもよい。また、撮像レンズ14を2枚以上有する場合においては、最も外側(入射光側)に配置された撮像レンズ14よりも外側(入射光側)に近赤外線カットフィルタ13が配置されていてもよく、撮像レンズ間に近赤外線カットフィルタ13が配置されていてもよい。例えば撮像レンズ14を2枚有する場合においては、入射光側から順に、近赤外線カットフィルタ、撮像レンズ、撮像レンズの順にそれぞれが配置されていてもよく、撮像レンズ、近赤外線カットフィルタ、撮像レンズの順にそれぞれが配置されていてもよい。
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の近赤外線カットフィルタを有する。本発明の近赤外線カットフィルタは、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などの画像表示装置に用いることもできる。表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003−45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線−高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集−」、技術情報協会、326−328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm−485nm)、緑色領域(530nm−580nm)及び黄色領域(580nm−620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm−700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
<重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量(Mw)は、以下の方法で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて測定した。
装置:HLC−8220 GPC(東ソー株式会社製)
検出器:RI(Refractive Index)検出器カラム:ガードカラム HZ−Lと、TSK gel Super HZM−Mと、TSK gel Super HZ4000と、TSK gel Super HZ3000と、TSK gel Super HZ2000(東ソー株式会社製)とを連結したカラム溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤含有)
カラム温度:40℃
注入量:10μL
分析時間:26min.
流量:流速 0.35mL/min.(サンプルポンプ) 0.20mL/min.(リファレンスポンプ)
検量線ベース樹脂:ポリスチレン
<樹脂組成物の調製>
(樹脂組成物1〜7)
下記の表に示す材料を下記の表に示す配合量(質量部)で混合して、下記表に記載の固形分濃度の樹脂組成物を調製した。なお、樹脂組成物の固形分濃度の調整は溶剤の配合量を調整して行った。
(樹脂組成物8)
テトラエトキシシラン28.9質量部、フェニルトリエトキシシラン28.9質量部、10%塩酸30.6質量部を室温にて4時間混合しゾルを得た。シクロペンタノン85.5質量部に、銅錯体A−5の26.0質量部を室温にて20分溶解させた溶液を、前述のゾルに添加し、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して樹脂組成物8を調製した。
(樹脂組成物9)
樹脂組成物8において、銅錯体A−5の代わりに銅錯体A−6を用いた以外は樹脂組成物8と同様にして樹脂組成物9を調製した。
樹脂組成物1〜9で使用した材料は以下である。以下に示す樹脂において、主鎖に付記した数値はモル比である。
(銅錯体)
A−1〜A−4:下記構造の銅錯体

A−5:下記化合物を配位子として有する銅錯体

A−6:下記化合物を配位子として有する銅錯体

(樹脂)
B−1:下記構造の樹脂(Mw=15,000)
B−2:下記構造の樹脂(Mw=13,000)
B−3:下記構造の樹脂(Mw=20,000)
(架橋剤)
M−1:KBM−3066(信越シリコーン(株)製)
(ラジカルトラップ剤)
D−1:下記構造の化合物
(触媒)
E−1:トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)(東京化成工業(株)製)
(界面活性剤)
W−1:下記化合物(重量平均分子量=14,000。繰り返し単位の割合を示す%は質量%である。)
(溶剤)
CP:シクロペンタノン
<赤外線吸収色素層形成用組成物(IR色素組成物)の調製>
(IR色素組成物1、2)
下記の原料を混合して、IR色素組成物1、2を調製した。
分散液Aまたは分散液B ・・・42質量部
下記表に記載の樹脂 ・・・7.1質量部
下記表に記載の架橋剤 ・・・4.5質量部
下記表に記載の界面活性剤 ・・・0.04質量部
下記表に記載の溶剤 ・・・46.36質量部
(IR色素組成物3〜9)
下記の原料を混合して、IR色素組成物3〜9を調製した。
下記表に記載の赤外線吸収色素 ・・・1.7質量部
下記表に記載の樹脂 ・・・15.9質量部
下記表に記載の重合開始剤 ・・・1.5質量部
下記表に記載の架橋剤 ・・・2.7質量部
下記表に記載の界面活性剤 ・・・9.6質量部
重合禁止剤(p−メトキシフェノール) ・・・0.001質量部
下記表に記載の溶剤 ・・・68.4質量部
(IR色素組成物10〜12)
下記の原料を混合して、固形分濃度20質量%のIR色素組成物10〜12を調製した。IR色素組成物の固形分濃度は溶剤の配合量を調整して行った。
樹脂B−12 ・・・100質量部
下記表に記載の赤外線吸収色素 ・・・0.03質量部
下記表に記載の溶剤 ・・・残部
IR色素組成物1〜12で使用した材料は以下である。
(分散液A)
赤外線吸収色素(A−101)の10質量部と、下記構造の顔料誘導体(F−1)の1質量部と、分散剤(B−101)の7質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の150質量部と、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部とを混合し、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液Aを製造した。
(分散液B)
赤外線吸収色素(A−102)の10質量部と、下記構造の顔料誘導体(F−1)の1質量部と、分散剤(B−101)の7質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の150質量部と、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部とを混合し、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液Bを製造した。
(赤外線吸収色素)
赤外線吸収色素A−101〜A−109:下記構造の化合物A−101〜A−109を使用した。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。

赤外線吸収色素A−110:特開2016−146619号公報の段落番号0173に記載の化合物(a−1)
赤外線吸収色素A−111:特開2016−146619号公報の段落番号0173に記載の化合物(a−2)
赤外線吸収色素A−112:特開2016−146619号公報の段落番号0173に記載の化合物(a−3)
(顔料誘導体)
F−1:下記構造の化合物
(分散剤)
B−101:下記構造の樹脂(酸価=32.3mgKOH/g、アミン価=45.0mgKOH/g、重量平均分子量=22900、主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル数を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。)

(樹脂)
B−11:下記構造の樹脂(Mw=40000、主鎖に付記した数値はモル数である)

B−12:特開2016−146619号公報の段落番号0169〜0171に記載の方法で合成した樹脂A
(重合開始剤)
C−11:V−601(和光純薬工業製)
(架橋剤)
M−11:EPICLON N−695(DIC(株)製)
M−12:KAYARAD DPHA (日本化薬(株)製)
(界面活性剤)
W−1:下記化合物(重量平均分子量=14,000。繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。)

W−2:メガファックRS−72−K(DIC(株)製)
(溶剤)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CP:シクロペンタノン
DCM:塩化メチレン
<紫外線吸収層形成用組成物(UV吸収組成物)>
(UV吸収組成物1)
樹脂B−11を11.01質量部と、紫外線吸収剤(TINUVIN 928、BASF社製)を2.38質量部と、架橋剤(KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)を1.72質量部と、重合開始剤(IRGACURE OXE−01、BASF社製)を1.89質量部と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を83.0質量部とを混合し、撹拌した後、孔径0.5μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、UV吸収組成物1を調製した。
<近赤外線カットフィルタの製造方法>
(製造例1)
下記表に記載のガラス上に、下記表に記載の樹脂組成物をスピンコートして、樹脂組成物層を形成した。次いで、ホットプレートを用いて樹脂組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、ホットプレートを用いて樹脂組成物層を150℃で10分間加熱して下記表に記載の厚さの樹脂層を形成した。
次に、樹脂層上に、下記表に記載のIR色素組成物をスピンコートして、IR色素組成物層を形成した。ホットプレートを用いてIR色素組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、i線ステッパーを用い、1000mJ/cm2で全面露光を行った。次いで、150℃で60分間加熱して硬化処理を行い、下記表に記載の厚さの赤外線吸収色素層(IR層)を形成した。
(製造例2)
下記表に記載のガラス上に、下記表に記載のIR色素組成物をスピンコートして、IR色素組成物層を形成した。ホットプレートを用いてIR色素組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、i線ステッパーを用い、1000mJ/cm2で全面露光を行った。次いで、150℃で60分間加熱して硬化処理を行い、下記表に記載の厚さのIR層を形成した。
次に、IR層上に、下記表に記載の樹脂組成物をスピンコートして、樹脂組成物層を形成した。次いで、ホットプレートを用いて樹脂組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、ホットプレートを用いて樹脂組成物層を150℃で10分間加熱して下記表に記載の厚さの樹脂層を形成した。
(製造例3)
下記表に記載のガラス上に、下記表に記載の樹脂組成物をスピンコートして、樹脂組成物層を形成した。次いで、ホットプレートを用いて樹脂組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、ホットプレートを用いて樹脂組成物層を150℃で10分間加熱して下記表に記載の厚さの樹脂層を形成した。
次に、樹脂層上に、下記表に記載のIR色素組成物をスピンコートして、IR色素組成物層を形成した。ホットプレートを用いてIR色素組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、i線ステッパーを用い、1000mJ/cm2で全面露光を行った。次いで、150℃で60分間加熱して硬化処理を行い、下記表に記載の厚さのIR層を形成した。
次に、IR層上に、UV吸収組成物1をスピンコートしてUV吸収組成物層を形成し、100℃で120秒間乾燥したのち、i線ステッパーを用い、1000mJ/cm2で全面露光を行った。次いで、220℃、300秒間の後加熱(ポストベーク)を行い、膜厚1.0μmの紫外線吸収層を形成した。
(製造例4)
下記表に記載のガラス上に、下記表に記載のIR色素組成物をスピンコートして、IR色素組成物層を形成した。ホットプレートを用いてIR色素組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、i線ステッパーを用い、1000mJ/cm2で全面露光を行った。次いで、150℃で60分間加熱しての方法で硬化処理を行い、下記表に記載の厚さのIR層を形成した。
(製造例5)
下記表に記載のガラス上に、下記表に記載の樹脂組成物をスピンコートして、樹脂組成物層を形成した。次いで、ホットプレートを用いて樹脂組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、ホットプレートを用いて樹脂組成物層を150℃で10分間加熱して下記表に記載の厚さの樹脂層を形成した。
(製造例6)
カプトンフィルム(厚さ100μm、東レ・デュポン社製)を貼付したガラス基材上に、下記表に記載の樹脂組成物をスピンコートして、樹脂組成物層を形成した。次いで、ホットプレートを用いて樹脂組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、150℃で10分間加熱して下記表に記載の厚さの樹脂層を形成した。次に、樹脂層上に、下記表に記載のIR色素組成物をスピンコートして、IR色素組成物層を形成した。ホットプレートを用いてIR色素組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、i線ステッパーを用い、1000mJ/cm2で全面露光を行った。次いで、150℃で60分間加熱して硬化処理を行い、下記表に記載の厚さのIR層を形成した。最後に樹脂組成物層/IR層の積層体をガラス基材から手動で剥離して、近赤外線カットフィルタを作製した。
<分光特性の評価>
近赤外線カットフィルタの透過率を、U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。測定波長範囲は400〜1300nmであり、5nm毎の透過率を測定した。透過率の平均値は、5nm毎の透過率の和を波長範囲で割る事で算出した。可視透明性、近赤外線遮蔽性1、近赤外線遮蔽性2に関して以下の基準で評価した。
(可視透明性)
A:波長450〜550nmの平均透過率が90%以上である。
B:波長450〜550nmの平均透過率が85%以上、90%未満である。
C:波長450〜550nmの平均透過率が80%以上、85%未満である。
D:波長450〜550nmの平均透過率が80%未満である。
(近赤外線遮蔽性1)
A:波長700nm以上800nm未満の平均透過率が5%以下である。
B:波長700nm以上800nm未満の平均透過率が5%を超え10%以下である。
C:波長700nm以上800nm未満の平均透過率が10%を超え20%以下である。
D:波長700nm以上800nm未満の平均透過率が20%を超える。
(近赤外線遮蔽性2)
A:波長800nm以上1100nm未満の平均透過率が5%以下である。
B:波長800nm以上1100nm未満の平均透過率が5%を超え10%以下である。
C:波長800nm以上1100nm未満の平均透過率が10%を超え20%以下である。
D:波長800nm以上1100nm未満の平均透過率が20%を超える。
(ダイシング耐性)
ダイシング装置としてDAD3350(株式会社DISCO製)、ブレードとしてB1A862SD1200L50MT38(53×0.1×40)を用い、送り速度2mm/秒、回転数20,000rpmで、近赤外線カットフィルタを22×28mmの大きさに個片化した。以下の基準でダイシング耐性を評価した。
A:ガラスおよび樹脂層のチッピングが0.1mm以下である。
B:ガラスおよび樹脂層のチッピングが0.1mmを超え0.5mm以下である。
C:ガラスおよび樹脂層のチッピングが0.5mmを超え1.0mm以下である。
D:ガラスおよび樹脂層のチッピングが1.0mmを超える。
(反り)
干渉計を用いて近赤外線カットフィルタの反りの大きさを評価した。
A:下に凸になるように近赤外線カットフィルタを水平に静置した時の、端部の浮き幅の最大値が100μm以下である。
B:下に凸になるように近赤外線カットフィルタを水平に静置した時の、端部の浮き幅の最大値が100μmを超え500μm以下である。
C:下に凸になるように近赤外線カットフィルタを水平に静置した時の、端部の浮き幅の最大値が500μmを超え1000μm以下である。
D:下に凸になるように近赤外線カットフィルタを水平に静置した時の、端部の浮き幅の最大値が1000μmを超える。
(密着性)
近赤外線カットフィルタを沸騰水に入れて1時間処理した後に、テープ剥離試験を実施して密着性を評価した。具体的には、カッターを用いて各近赤外線カットフィルタのガラス上の膜に切れ目を入れて10mm×10mmの升目を100個作り、この升目に対してニチバン製のテープを張り付けたのち、テープを剥離する操作を5回繰り返した。升目の剥離数をカウントして実施例及び比較例1〜3の密着性を評価した。
A:升目の剥離数が0である。
B:升目の剥離数が1〜50個である。
C:升目の剥離数が51個以上である。






上記の表中、ガラス1は、銅を含有するガラス(製品名NF−50、AGCテクノグラス(株)製)であり、ガラス2は銅を含有しないガラス(製品名B270i、schott製)である。
上記表に示されるように、実施例においては、可視透明性、近赤外線遮蔽性1および近赤外線遮蔽性2に優れ、かつ、ダイシング耐性にも優れていた。
10 カメラモジュール、11 固体撮像素子、12 平坦化層、13 近赤外線カットフィルタ、14 撮像レンズ、15 レンズホルダー、16 シリコン基板、17 カラーフィルタ、18 マイクロレンズ、19 紫外・赤外光反射膜、20 透明基材、21
近赤外線カットフィルタ、22 反射防止層

Claims (13)

  1. 銅を含有するガラスと、銅化合物を含む樹脂層と、赤外線吸収色素を含む層とを含む近赤外線カットフィルタ。
  2. 前記銅を含有するガラスの膜厚が10〜10,000μmであり、前記銅化合物を含む樹脂層の膜厚が1〜500μmであり、前記赤外線吸収色素を含む層の膜厚が0.01〜10μmである、請求項1に記載の近赤外線カットフィルタ。
  3. 前記銅を含有するガラスの膜厚と前記銅化合物を含む樹脂層の膜厚との比が、銅を含有するガラスの膜厚:銅化合物を含む樹脂層の膜厚=[1:30]〜[5,000:1]である、請求項2に記載の近赤外線カットフィルタ。
  4. 前記銅を含有するガラスの膜厚と前記赤外線吸収色素を含む層の膜厚との比が、銅を含有するガラスの膜厚:赤外線吸収色素を含む層の膜厚=[2:1]〜[500,000:1]である、請求項2または3に記載の近赤外線カットフィルタ。
  5. 前記銅化合物を含む樹脂層の膜厚と前記赤外線吸収色素を含む層の膜厚との比が、銅化合物を含む樹脂層の膜厚:赤外線吸収色素を含む層の膜厚=[1:5]〜[30,000:1]である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  6. 前記赤外線吸収色素を含む層は、波長600〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  7. 前記赤外線吸収色素を含む層の極大吸収波長が、前記銅化合物を含む樹脂層の極大吸収波長よりも短波長である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  8. 前記銅化合物を含む樹脂層の一方の面に前記銅を含有するガラスが接しており、かつ、前記銅化合物を含む樹脂層の他方の面に前記赤外線吸収色素を含む層が接している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  9. 前記銅化合物は、下記式(1)で表される化合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ;
    Cu・(L)n1・(X)n2 ・・・(1)
    式中、Lは、銅原子に対する配位部位を有する配位子であって、銅原子に対してアニオンで配位する配位部位を含む基および銅原子に対して非共有電子対で配位する配位原子を含む基から選ばれる少なくとも1種を1個以上有する化合物を表し、Xは対イオンを表し、n1は1〜4の整数を表し、n2は0〜4の整数を表す。
  10. さらに、誘電体多層膜および紫外線吸収層から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタを有する固体撮像素子。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュール。
  13. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタを有する画像表示装置。
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