以下、本発明の一実施の形態に係るデジタルコンテンツ商取引管理装置について図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態に係るデジタルコンテンツ商取引管理装置(以下「商取引管理装置」と称する。)は、デジタルコンテンツの電子商取引市場に参加する複数の会員(参加者)間での会員各々が制作したデジタルコンテンツの有償交換、すなわちデジタルコンテンツ商取引を管理するための装置である。デジタルコンテンツとは、計算機等のデジタル情報処理装置に接続されたデジタル記憶装置に記憶され、ネットワークを介して情報端末に転送可能であり、転送先の情報端末で利用されるものと定義される。また、このデジタルコンテンツは、記憶装置への記憶、デジタルネットワークによる転送や、情報処理装置によって複製または利用されるときに、その内容が(意図的な場合を除き)劣化したり変化したりせず、また、記憶や転送、複製のためにかかるコストがゼロと看做せるという特徴を有する。このようなデジタルコンテンツとしては、例えば科学技術研究開発に関わる、映像情報、音響情報、文字情報、数値情報、ソフトウェア等が挙げられる。映像情報には、動画情報や静止画情報が含まれる。文字情報には、科学技術研究開発に関する文書情報が含まれる。数値情報には、グラフや表を作成するための数値情報等が含まれる。ソフトウェアには、各種数値解析、シミュレーション、コンピュータグラフィックスによる数値データの可視化などのためのアプリケーションソフトウェアや、デジタル情報エディタ、プログラミング言語のコンパイラなどのソフトウェアツールが含まれる。また、技術開発の企画書や商品の設計図を含む業務の企画書、提案書なども電子的データになる範囲(試作品等の化体物は含まれない)においてデジタルコンテンツであり、取引対象に含まれる。
更に、デジタルコンテンツには、アクセスする人やアクセスの仕方によって内容が変わったり、計算処理をサービスとして行ったりするような、いわゆる動的(WEB)コンテンツも含まれる。その場合、デジタルコンテンツとは、サーバの記憶装置内にある固定的なものだけでなく、利用者のアクセス毎に変化するものも含まれる。よって、商取引管理装置は、ネットワークを利用して複数で楽しむネットゲームにおける利用権利取引の管理にも使うことができる。また、このデジタルコンテンツを提供するものが、監視カメラであったり、特定の測定装置であったりすることも考えられる。たとえば、天体観測用の高性能大型望遠鏡に取り付けられたカメラ画像を配信する際にも、この商取引管理装置が利用できる。
また、商取引管理装置は、業務企画書を証券とする証券取引の管理装置として、後述のようにクラウドファンディングに深く関連する。商取引管理装置と、商取引管理装置により管理される電子商取引市場に参加する会員(参加者)が所有する情報端末とは、ネットワークを介して接続されている。そして、会員同士は、各自が所有する情報端末を用いて、商取引管理装置を介してデジタルコンテンツの商取引を行う。
図1に示すように、商取引管理装置1は、それが管理するデジタルコンテンツの電子商取引市場に参加している会員それぞれが所有する情報端末2とネットワークWNTを介して接続されている。商取引管理装置1は、サーバ(ハードウェア)上でデジタルコンテンツ商取引管理装置用のデーモンプログラムが稼働することにより実現されている。情報端末2では、デジタルコンテンツ商取引市場に参加する各会員のクライアントプログラム(インターネットのブラウザ或いはそれに類似したユーザインタフェースとネットワーク通信機能を備えるアプリケーション)が稼働している。商取引管理装置1は、電子商取引市場を管理する市場管理会社に設置されている。ネットワークWNTは、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信プロトコルを介して相互接続されるインタ−ネットとLAN(Local Area Network)とを含むネットワークから構成される。会員は、情報端末2を介して各種デジタルコンテンツを取引し、この取引を通じて有償で購入したデジタルコンテンツを閲覧または使用することができる。
なお、商取引管理装置1は、ネットワークWNTに接続された複数の計算機に分散させることも可能である。複数の計算機それぞれにおいて、デーモンプログラムを稼働させ、それぞれのデーモンプログラムが並列分散的に処理することで、より高速なトランザクション処理を行うこともできる。また、この場合、複数の計算機は、それぞれ、市場に参加する会員のトランザクション処理に特化したもの、流通しているデジタルコンテンツのアクセス管理に特化したもの等、機能に応じた分散処理を行うものであってもよい。この分散処理においては、セキュリティ上、既存のネットワークプロトコルと異なる独自のものを利用することもあり得る。しかしながら、ここでは説明を簡単にするため、商取引管理装置1が、一台の計算機上で稼働している場合について述べる。その場合、ほぼすべてのトランザクション処理は、当該一台の計算機内において集中的に行われるため、当該一台の計算機が外部のネットワークWNTとの間で一定のセキュリティを保って接続されている限りにおいて、セキュリティ上の問題が発生する可能性は低い。
ここで、商取引管理装置1と複数の会員それぞれが所有する情報端末2とから構成されるデジタルコンテンツ商取引システムの動作について、図2を参照しながら説明する。なお、図2では、情報端末2A、2B、2Cを所有する3人の会員間でデジタルコンテンツの商取引を行う場合について説明する。
まず、商取引管理装置1を利用する複数の会員には、それぞれ会員識別番号が付与されており、また、この商取引管理装置1のデーモンプログラムが稼働するサーバ上には、各会員の口座があり、口座は会員識別番号によって会員と関連付けが行われる。情報端末2Aを所有する会員Aが新たにデジタルコンテンツを作成したとする。これをデジタルコンテンツDCとする。そして、会員Aが情報端末2Aに対して作成したデジタルコンテンツDCを商取引管理装置1へ送信するための操作を行うと、デジタルコンテンツDCのコンテンツ情報が、情報端末2Aから商取引管理装置1へ送信される(ステップS1)。デジタルコンテンツDCのコンテンツ情報は、デジタルコンテンツDCそのものと、デジタルコンテンツDCの未購入者向けの広告情報と、デジタルコンテンツDCが参照する参照先デジタルコンテンツのリストである参照先リストRELと、デジタルコンテンツDCを参照する参照元のデジタルコンテンツのリストである参照元リストRRLと、を含む。商取引管理装置1は、デジタルコンテンツDCのコンテンツ情報を受信すると、受信したデジタルコンテンツDCのコンテンツ情報に、デジタルコンテンツDCを識別するコンテンツ識別番号を付与し、デジタルコンテンツDCのコンテンツ情報をデジタルコンテンツDCのコンテンツ識別番号と対応づけて管理する。デジタルコンテンツDCのコンテンツ識別番号は、これを制作し商取引市場に上場した会員Aを識別する会員識別番号と、会員Aがこれまでに制作したデジタルコンテンツ全てに対して制作順に付与された固有の識別番号(通し番号)と、から構成される。よって市場に上場されたすべてのデジタルコンテンツは、どの市場参加会員が制作したものであるかが識別番号により明示されている。なお、各デジタルコンテンツは、制作者本人によって随時更新されることを許容し、更新されてもデジタルコンテンツの識別番号は変化しない。制作者が既存のデジタルコンテンツを更新した際に、意図的に新規デジタルコンテンツとして新たな識別番号を付与することも許容される。ただし、まったく変更がないデジタルコンテンツを別のものとして別の識別番号を付与することは無意味であるため、これを禁止する。
次に、商取引管理装置1は、デジタルコンテンツDCに付随する参照先リストRELを作成する(ステップS2)。続いて、商取引管理装置1は、参照先リストREL内の全ての参照先のデジタルコンテンツそれぞれについて、参照元リストRRLにデジタルコンテンツDCを追加で登録する(ステップS3)。
なお、デジタルコンテンツDCの参照元リストRRLの初期状態は空である。また、デジタルコンテンツDCの制作者が参照先リストRELを更新した場合、参照先リストRELからのデジタルコンテンツDCの削除または参照先リストRELへのデジタルコンテンツDCの追加が行われうる。この場合、参照先リストRELの更新に伴い削除された参照先のデジタルコンテンツについて、削除されたデジタルコンテンツDCを参照元リストRRLから削除する。一方、参照先リストRELの更新に伴い追加された参照先のデジタルコンテンツについて、追加されたデジタルコンテンツDCを参照元リストRRLに追加する。
次に、商取引管理装置1は、デジタルコンテンツDCのコンテンツ情報を受信すると、転売告知リストST1を作成する(ステップS4)。新たなデジタルコンテンツDCが上場(投稿)された直後においては、転売告知リストST1には何も入っていない空リストである。以降、デジタルコンテンツDCが販売され、かつ購入者が転売を告知すると、告知をした購入者の識別番号が、デジタルコンテンツDCの転売告知リストST1に追加される。この転売告知リストST1はラストインファーストアウト(Last In First Out)のスタック構造になっているため、転売が成立した段階で最後に加えられた転売告知者、すなわち告知した転売が成立した会員が転売告知リストST1から外される。
次に、商取引管理装置1は、デジタルコンテンツDCの取引履歴リストLS1を作成する。デジタルコンテンツDCの取引履歴リストLS1は、デジタルコンテンツDCが誰から、誰にいくらで売られたかの履歴が書かれており、販売者の会員識別番号、購入者の会員識別番号、そして取引価格が書かれている。この取引履歴リストLS1により、デジタルコンテンツDCの販売実績数(販売者が制作者自身である販売履歴の数から、購入者が制作者自身である販売履歴の数を引いたもの)、転売数(販売者が制作者以外である販売履歴の数)が計算できる。販売者と購入者が同一であるような取引は、無意味であるので、これを禁止する。
続いて、商取引管理装置1は、情報端末2Aから受信した新たに上場されたデジタルコンテンツDCの価格Pを設定する(ステップS5)。新たに上場されたデジタルコンテンツについては、販売実績数は0であり、転売告知数も0であり、よって、看做し販売実績数は0である。また、新たに上場されたデジタルコンテンツは、他の既存のデジタルコンテンツから参照されていないので、参照元リストRRLは空である。よって、参照元のデジタルコンテンツの看做し販売実績数も0である。そこで、上場されたデジタルコンテンツを最初に購入する人に対する取引(販売)価格として、看做し販売実績数を0、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数を0として価格設定関数により計算される価格を初期販売価格とする。上場されて時間が経過したデジタルコンテンツについては、販売実績数、転売告知数、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数のうちのいずれか1つは「0」ではないと考えられる。従って、上場されて時間が経過したデジタルコンテンツについては、その時点における販売実績数、転売告知数、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数を引数として価格設定関数により価格が設定される。
その後、価格が設定されたデジタルコンテンツDCの価格を示す価格情報は、商取引管理装置1から各情報端末2A、2B、2Cによってアクセス可能になる(あるいは公表される)(ステップS6)。このとき、商取引管理装置1は、デジタルコンテンツDCの価格情報とともに、デジタルコンテンツDCの未購入者向けの広告情報も併せて、各情報端末2A、2B、2Cからアクセス可能になる。これによって、会員は、上場されているすべてのデジタルコンテンツについてその広告情報とその価格を知ることができる。ここで、各デジタルコンテンツについて、上場開始以降の価格の推移が必要に応じて公開されることが望ましい。
ここで、情報端末2Bを所有する会員Bが、デジタルコンテンツDCの購入を希望しているとする。この場合、会員Bは、情報端末2Bを用いて、価格と広告情報が公表されているデジタルコンテンツの中から所望のデジタルコンテンツDCを選択してその購入を要求する購入要求を商取引管理装置1へ送信する(ステップS7)。なお、取引が短時間に複数行われているようなデジタルコンテンツの場合、購入しようとする会員Bがアクセスした段階で表示されている価格と、実際の購入価格が異なることもある。商取引管理装置1は、取引成立時の価格を重視し、購入を希望するものが最後に確認した価格に優先する。このため、商取引管理装置1においては、各デジタルコンテンツの取引履歴の記録と転売告知リストST1は、厳しく時系列管理を行い、トランザクションが消えたり、二重化したりすることがないように、待ち行列処理を正しく行う必要がある。
次に、商取引管理装置1は、購入を希望する会員BへデジタルコンテンツDCを転売あるいは販売する販売者を特定する(ステップS8)。これは、前記のとおり、転売告知リストST1にもっとも最後に加えられた転売告知者であり、この転売告知リストST1が空である場合は、デジタルコンテンツDCを制作上場した会員Aが販売者となる。転売告知リストST1からは、最後に加えられた転売告知者を特定後、この最後の転売告知者を消去する(転売告知リストST1はラストインファーストアウト(Last In First Out)のスタック構造であるから最後の転売告知を転売告知リストST1から出すと、その転売告知は転売告知リストST1から削除される)。
続いて、商取引管理装置1は、買掛を発行する(ステップS9)。この買掛は、販売者(会員Aあるいは転売告知者)の会員識別番号と購入者(会員B)の会員識別番号と取引されたデジタルコンテンツDCの識別番号と当該デジタルコンテンツDCの販売(あるいは転売)価格を含み、会員Bのデジタル署名がなされているデジタル情報である。この買掛は、販売者の会員の口座内の受領買掛リストLS13の最後に付加されるとともに、購入者(会員B)の発行買掛リストLS11の最後にも付加され、更に、市場管理者の全買掛リストの最後にも付加される。全く同じ買掛が、販売者、購入者、市場管理者の三者でそれぞれ保存されるため、買掛を不正に変更したり、削除したりすると、三者での買掛の照合を行うことによって不正が容易に発覚し、取引記録の不正な改竄が抑制できる。
その後、商取引管理装置1は、売掛を発行する(ステップS10)。この売掛は、販売者(会員Aあるいは転売告知者)の会員識別番号と購入者(会員B)の会員識別番号と売買されたデジタルコンテンツの識別番号と当該デジタルコンテンツの販売価格を含み、販売者の会員のデジタル署名がなされているデジタル情報である。この売掛は、販売者の会員の口座内の発行売掛リストLS12の最後に付加されるとともに、購入者(会員B)の受領売掛リストLS14の最後に付加され、更に、市場管理者の全売掛リストの最後にも付加される。全く同じ売掛が、販売者、購入者、市場管理者の三者でそれぞれ保存されるため、売掛を不正に変更したり、削除したりすると、三者での売掛の照合を行うことによって不正が容易に発覚し、不正な取引記録の改竄が抑制できる。また、買掛と売掛は内容的に全く同一であるため、買掛と売掛を相互に照合することで、さらに取引記録の不正な改竄が抑制される。これらと平行して、商取引管理装置1は、デジタルコンテンツDCの取引履歴リストLS1に、販売者(あるいは転売告知者)の会員識別番号と、購入者の会員識別番号と、取引価格からなる取引記録を、追加する。
ここで、売掛および買掛に記載される取引(販売、転売、あるいは購入)価格とは、通貨価格ではなく、看做し販売実績数を引数として得られる後述の式(1)から(6)に記載のものから、通貨レートを除いた部分である。今後、本発明の商取引管理装置1を国際的に展開する場合、通貨レートは国および地域ごとの通貨によって異なるため、特定の国あるいは地域の通貨による価格表示では、国際的な取引価格としてふさわしくない。そこで、通貨レートを含まない看做し販売実績数を引数とする数学関数を用いて、取引価格(内部価格とする)を表現し、その後、通貨による清算を行う段階で、交換する通貨の通貨レートを内部価格に掛け合わせ、清算するものとする。その際、外国為替にあるように、通貨レートは清算の方向によってことなるものであってもよい。たとえば、内部価格1単位に対して、これを日本円に交換する清算においては、90円とし、一方、日本円から内部価格1単位に交換する際には、110円とする、という清算方法も許容される。
更に、内部価格と通貨との交換は、商取引管理装置1の管理者、あるいは運営者の許諾のもとで、利用会員間で通貨交換取引市場を形成し、そこで時価で交換がなされてもよい。
次に、商取引管理装置1は、会員BをデジタルコンテンツDCのコンテンツ購入者リストLS2に追加する形でコンテンツ購入者リストLS2を更新する(ステップS11)。この処理によって、会員Bは、購入したデジタルコンテンツDCにアクセスすることが許可される。
続いて、デジタルコンテンツDCを購入した会員Bが、情報端末2Bに対して、デジタルコンテンツDCを商取引管理装置1から情報端末2Bへダウンロードするための操作を行ったとする。この場合、デジタルコンテンツDCの取得を要求するダウンロード要求が、情報端末2Bから商取引管理装置1へ送信される(ステップS12)。ダウンロード要求は、情報端末2Bを所有する会員の会員識別番号とデジタルコンテンツDCのアクセス情報とを含む。そして、商取引管理装置1がダウンロード要求を受信すると、商取引管理装置1が、会員Bの会員識別番号を、デジタルコンテンツDCのコンテンツ購入者リストLS2に照合し、会員Bの会員識別番号がこのデジタルコンテンツDCのコンテンツ購入者リストLS2内に存在すれば、会員BのデジタルコンテンツDCへのアクセスが承認され、デジタルコンテンツDCが、商取引管理装置1から情報端末2Bへ送信される(ステップS13)。このとき、デジタルコンテンツDCは、TLS(SSL)やSSH等のセキュリティを考慮したネットワーク送受信プロトコルによって暗号化された状態で送信される。
また、デジタルコンテンツDCのアクセス情報を取得した会員Bが、情報端末2Bに対して、商取引管理装置1が管理するデジタルコンテンツDCに付随する電子掲示板を閲覧するための操作を行ったとする。この場合、デジタルコンテンツDCの電子掲示板の閲覧を要求する電子掲示板閲覧要求が、情報端末2Bから商取引管理装置1へ送信される(ステップS14)。電子掲示板閲覧要求は、情報端末2Bを所有する会員の会員識別番号とデジタルコンテンツDCのアクセス情報とを含む。そして、商取引管理装置1が電子掲示板閲覧要求を受信すると、前述のデジタルコンテンツDCのダウンロードの場合と同様、会員Bの会員識別番号がデジタルコンテンツDCのコンテンツ購入者リストLS2内に存在するかを照合し、照合の結果、会員Bが正当なデジタルコンテンツDCの購入者であると確認された場合、電子掲示板データが、商取引管理装置1から情報端末2Bへ送信される(ステップS15)。
また、会員Bが、デジタルコンテンツDCを購入した後において、購入したデジタルコンテンツDCの転売を希望しているとする。そして、会員Bが情報端末2Bに対してデジタルコンテンツDCの転売を希望している旨を告知する転売告知を商取引管理装置1へ送信するための操作を行うと、図3に示すように、転売告知が、情報端末2Bから商取引管理装置1へ送信される(ステップS16)。なお、デジタルコンテンツDCを購入していない会員が、デジタルコンテンツDCについて転売告知することは、証券取引市場における空売りに相当する行為になるが、これを許容した場合、販売実績数から転売告知数を引いた看做し販売実績数が負になる可能性がある。よってデジタルコンテンツDCの購入者以外の会員が転売告知をすることは原則として禁止することが望ましい。すなわち、デジタルコンテンツDCについての転売告知はデジタルコンテンツDCの購入者のみが可能であり、転売告知に対しては、告知者が購入者であるかどうかを確認し、転売告知を承認することが望ましい。これは、証券取引において、証券の発行数が決まっている場合、これを有償または無償で借りることができるのに対して、デジタルコンテンツの商取引においては、販売実績数(すなわち発行数)が増大するため、借りることができないことに由来する。
商取引管理装置1は、会員Bが所有する情報端末2Bから転売告知を受信すると、デジタルコンテンツDCの転売告知者に会員Bを加える形でデジタルコンテンツDCの転売告知リストST1を更新する(ステップS17)。これは前記の通り、転売告知リストST1の最後に会員Bの会員識別番号を加えることを意味する。よって、デジタルコンテンツDCに対して、次の転売告知が他者によって行われる前にデジタルコンテンツDCの購入者が現れたときは、転売告知リストST1の最後の会員Bが、デジタルコンテンツDCを転売する転売告知者となり、転売成立時に転売告知リストST1から削除される。なお、転売告知は、告知後、いつでも取り消しができる。一つのデジタルコンテンツについて、転売告知を行うと、その転売告知以前に行われた転売告知が取り消されない限り、転売成立時の転売価格は、商取引管理装置1の価格決定法により決定される。また、転売告知以前の他者の転売告知が取り消された場合は、転売価格は上昇する。これを維持しようとすれば、転売告知が頻繁にだされるような、つまり価格が暴落しているデジタルコンテンツについては、転売成立待ちの状態が続く。一方、転売告知の取り消しを行い、即転売告知を再度行うと、転売成立が早まるが、転売価格は下落する。この転売告知取り消しの仕組みによって、需要が減ったデジタルコンテンツの価格が暴落するのを抑制する。なお、ある会員が、一つのデジタルコンテンツについて、複数回数転売告知を行った後、この転売告知のうちのいくつかを取り消す場合は、最後に行った転売告知から順番に取り消しが行われることが望ましい。
続いて、商取引管理装置1は、自らが管理するデジタルコンテンツDCの販売実績数および転売告知数、および参照元リストRRLに登録されている参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数に基づいて、デジタルコンテンツDCの次期取引価格を設定する(ステップS18)。ここにおいて、商取引管理装置1は、予め設定された価格設定関数によりデジタルコンテンツの価格を設定する。ここで、価格設定関数は、デジタルコンテンツの販売実績数から転売告知数を差し引いて得られる数である看做し販売実績数と、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数を引数としてデジタルコンテンツDCの取引価格を返す関数であり、デジタルコンテンツDC自身の看做し販売実績数、および参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数の増加に対して単調増加する関数である。従って、例えばデジタルコンテンツDCの販売実績数が3であり転売告知数が0の場合のデジタルコンテンツDCの取引価格と、販売実績数が5であり転売告知数が2の場合、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数が同じであれば、両社の取引価格とは等しくなる。
その後、価格が設定されたデジタルコンテンツDCの価格を示す価格情報が、商取引管理装置1によってすべての会員に公開され、各情報端末2A、2B、2Cからアクセス可能になる(ステップS19)。このとき、デジタルコンテンツが、そのデジタルコンテンツの制作者から供給されるものか転売により供給されるものかを示す情報は、情報端末2A、2B、2Cに開示されない。そして、情報端末2A、2B、2Cを所有する会員は、購入しようとするデジタルコンテンツがそれを制作した会員から供給されるものか転売告知を行った会員から供給されるものかを直接判断することはできない。ただし、購入にいたるまでのデジタルコンテンツの過去の価格変動は、開示されているため、過去の最高価格より低い価格に設定されているときは、転売告知者から購入することになると推定され、また過去の最高価格よりも高い場合は、制作者本人(会員A)より購入することになることが推定される。もちろん、購入時に、買掛、売掛を交換するため、その買掛、売掛には、販売者の識別番号が明記されているので、購入手続き時には、誰が販売者であるかは明示される。
ここで、情報端末2Cを所有する会員Cが、価格が通知されたデジタルコンテンツの購入を希望しているとする。そして、会員Cが情報端末2Cに対して価格が通知されたデジタルコンテンツの購入を要求する購入要求を商取引管理装置1へ送信するための操作を行うと、購入要求が、情報端末2Cから商取引管理装置1へ送信される(ステップS20)。
次に、商取引管理装置1は、購入を希望する会員Cへデジタルコンテンツを転売する転売告知者を特定する(ステップS21)。ここでは、前記の通り、デジタルコンテンツの転売告知リストST1の最後に書かれている転売告知者が、転売する転売告知者として特定され、転売告知リストST1の最後の転売告知者は転売告知リストST1から削除される。転売告知リストST1が空であるときは、制作者を販売者として特定する。図2に示す例では、商取引管理装置1が、コンテンツ供給元として会員Bを選択している。続いて、商取引管理装置1は、買掛を発行する(ステップS22)。この買掛は、販売者(会員Bあるいは転売告知者)の会員識別番号と購入者(会員C)の会員識別番号と売買されたデジタルコンテンツ識別番号と当該デジタルコンテンツの販売価格を含み、購入者である会員Cのデジタル署名がなされているデジタル情報である。また、この買掛は、販売者の会員の口座内の受領買掛リストLS13の最後に付加されるとともに、購入者(会員C)の発行買掛リストLS11の最後にも付加され、更に、市場管理者の全買掛リストの最後にも付加される。その後、商取引管理装置1は、売掛を発行する(ステップS23)。この売掛は、販売者(会員Bあるいは転売告知者)の会員識別番号と購入者(会員C)の会員識別番号と売買されたデジタルコンテンツの識別番号と当該デジタルコンテンツの販売価格を含み、販売者の会員のデジタル署名がなされているデジタル情報である。また、この売掛は、販売者の会員の口座内の発行売掛リストLS12の最後に付加されるとともに、購入者(会員C)の受領売掛リストLS14の最後にも付加され、更に、市場管理者の全売掛リストの最後にも付加される。
続いて、商取引管理装置1は、転売する転売告知者である会員Bをコンテンツ購入者リストLS2から削除する形でコンテンツ購入者リストLS2を更新する(ステップS24)。あるデジタルコンテンツDCを、商取引管理装置1によって運営されるデジタルコンテンツ取引市場に上場したもの、すなわちデジタルコンテンツDCの制作者自身である会員Aが、当該デジタルコンテンツDCを購入することは、許されるものとする。しかし、この購入は、転売告知数が0である場合は、まったく無意味であるため(会員Aから会員Aへの取引)、これを禁止する。転売告知数が0でないときは、もっとも後で転売告知を行ったものから転売を受けることになるが、この場合、販売実績数は、1減ずる。これは、デジタルコンテンツDCの取引履歴から販売実績数を計算するにあたり、購入者が制作者である取引履歴分を販売者が制作者である販売実績数から減じることによって実現される。
このように、本実施の形態に係るデジタルコンテンツ商取引システムを用いることにより、デジタルコンテンツ電子商取引市場の会員は、互いに自己が制作したデジタルコンテンツを他の会員に有償で配布できる。また、デジタルコンテンツを購入した会員は、他の会員に購入したデジタルコンテンツを転売することもできる。
次に、本実施の形態に係る商取引管理装置1のハードウェア構成について説明する。商取引管理装置1は、例えば汎用のパーソナルコンピュータから構成され、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、通信部104と、各部を接続するバス105と、を備える。主記憶部102は、例えばRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリから構成され、CPU101の作業領域として用いられる。補助記憶部103は、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリから構成され、後述の商取引管理処理を実行するためのプログラムや各種パラメータ等を記憶する。CPU101は、補助記憶部103に記憶されたプログラムを主記憶部102に読み出して実行することにより、後述の商取引管理処理を実行する。通信部104は、ネットワークWNTに接続され、ネットワークWNTから受信した情報を変換してバス105へ送出する。
次に、本実施の形態に係る商取引管理装置1の機能構成について説明する。CPU101が、補助記憶部103が記憶するプログラムを主記憶部102に読み込んで実行することにより、コンテンツ管理部(転売告知管理部)111、価格決定部112、販売実績数計算部113、転売告知数計算部114、売買管理部115、転売告知者特定部116、電子掲示板提供部117および参照元販売実績数転売告知数計算部118として機能する。また、補助記憶部103は、コンテンツデータベース(DB)(コンテンツ記憶部)131と、買掛・売掛DB(買掛記憶部、売掛記憶部)136と、電子掲示板DB137と、を有する。
コンテンツDB131は、例えば図5に示すように、会員が作成したデジタルコンテンツと、取引履歴リストLS1(取引履歴記憶部)と、転売告知リストST1(転売告知記憶部)と、参照先リストREL(参照先記憶部)と、参照元リストRRL(参照元記憶部)と、をデジタルコンテンツを識別するコンテンツ識別番号に対応づけて記憶している。コンテンツ識別番号は、会員を識別する会員識別番号と、その会員が制作したデジタルコンテンツの制作順に付与された固有の識別番号と、から構成される。デジタルコンテンツは、次に述べるストリーミング等の仮想的なものを除き、圧縮し且つ暗号化した状態でコンテンツDB131に記憶される。デジタルコンテンツとしては、例えばライブ中継等のストリーミング用の映像音響データを示す仮想的なファイル等がある。参照先リストRELは、デジタルコンテンツDCが参照(あるいは引用)している他のデジタルコンテンツのリストであり、参照元リストRRLは、デジタルコンテンツを参照(あるいは引用)している他のデジタルコンテンツのリストである。また、コンテンツDB131は、デジタルコンテンツの題目、概要、および更新履歴やデジタルコンテンツを推薦する人のコメント、評価、またはデジタルコンテンツDCを特定の基準数以上の数だけ購入した購入者のリスト(スポンサーリスト)等を示す付随情報を記憶する。これらの付随情報は、デジタルコンテンツを制作した会員により作成される部分とデジタルコンテンツDCの販売開始以降に付加される部分がある。これらの付随情報は、デジタルコンテンツを購入していない会員の購入を促進するための広告情報である。
取引履歴リストLS1は、各デジタルコンテンツについて一つ存在するものであり、当該デジタルコンテンツの各取引について、売り方の会員の会員識別番号と、買い方の会員識別番号と、デジタルコンテンツの価格と、を対応づける取引履歴レコードが時系列に蓄積されたものである。
転売告知リストST1は、ラストインファーストアウト(Last In First Out)方式で、転売告知を行っている会員の会員識別番号が蓄積されたものである。同一の会員が同一のデジタルコンテンツについて複数回数の転売告知を行う場合、その会員の識別番号が、当該デジタルコンテンツのリストに複数回数登録される。
コンテンツ購入者リストLS2は、デジタルコンテンツを購入した会員の会員識別番号のリストである。
買掛・売掛DB136は、例えば図6に示すように、会員識別番号毎に、発行買掛リストLS11、発行売掛リストLS12、受領買掛リストLS13、受領売掛リストLS14がある。発行買掛リストLS11は受領売掛リストLS14と完全に対応し、発行売掛リストLS12は受領買掛リストLS13と完全に対応する。また、発行売掛リストLS12中の全レコードの取引価格の総和から発行買掛リストLS11中の全レコードの取引価格の総和を引いた額が当該会員の取引残高である。発行買掛リストLS11は、各取引においてその会員の発行した買掛を示す発行買掛レコードを時系列で蓄積したリストである。発行買掛レコードは、販売者の会員識別番号と、購入者の会員識別番号と、コンテンツ識別番号と、デジタルコンテンツの価格と販売者(転売告知者も含む)の会員識別番号、から構成される。発行買掛レコードは、購入者の秘密鍵を用いてRSA暗号や楕円曲線暗号等を利用したデジタル署名を付与した形で発行買掛リストLS11に蓄積される。発行売掛リストLS12は、各取引においてその販売者(転売告知者も含む)である会員の売掛を示す売掛レコードを時系列で蓄積したリストである。発行売掛レコードも、販売者の会員識別番号と、購入者の会員識別番号と、コンテンツ識別番号と、デジタルコンテンツの価格と、から構成される。発行売掛レコードは、販売者(転売告知者も含む)の秘密鍵を用いたRSA暗号や楕円曲線暗号等を利用したデジタル署名を付与した形で発行売掛リストLS12に蓄積される。受領買掛リストLS13は、各取引においてその会員が受領した買掛を示す受領買掛レコードを時系列で蓄積したリストである。受領買掛レコードは、販売者(転売告知者も含む)の会員識別番号と、買掛の発行元、すなわち購入者の会員識別番号と、コンテンツ識別番号と、デジタルコンテンツの価格と、から構成される。受領売掛リストLS14は、各取引においてその会員が受領した売掛を示す受領売掛レコードを時系列で蓄積したリストである。受領売掛レコードも、売掛の発行元である販売者(転売告知者も含む)の会員識別番号と、購入者の会員識別番号と、コンテンツ識別番号と、デジタルコンテンツの価格と、から構成される。各会員の取引残高は、前記のとおり、当該会員の全売掛の取引額の総和から全買掛の取引額の総和を引いた額である。会員は、自分自身の買掛、売掛のリストをいつでもダウンロードすることができ、これをもとに取引履歴を明確にし、税制上必要な取引明細書として利用できる。
電子掲示板DB137は、コンテンツDB131が記憶するコンテンツへのアクセス情報を有する会員に提供する電子掲示板を構成するために必要な電子掲示板データを記憶している。この電子掲示板データは、デジタルコンテンツの制作者とその購入者のみが読み書き可能な電子掲示板および電子掲示板に付随するデータ(掲示板の過去ログなど)を提供するものである。
図4に戻って、コンテンツ管理部111は、会員の所有する情報端末2からコンテンツ情報を取得すると、コンテンツ情報に含まれるデジタルコンテンツをコンテンツDB131に記憶させる。また、コンテンツ管理部111は、情報端末2から取得したデジタルコンテンツに対応する転売告知リストST1を作成してコンテンツDB131に記憶させる。コンテンツ管理部111が作成した転売告知リストST1には、コンテンツ情報を取得した情報端末2を所有する会員の会員識別番号が登録されている。また、コンテンツ管理部111は、ダウンロード要求の送信元へデジタルコンテンツを送信する。このとき、コンテンツ管理部111は、デジタルコンテンツを暗号化してから送信する。また、コンテンツ管理部111は、原則としてコンテンツDB131が記憶するデジタルコンテンツの最新版を送信するが、デジタルコンテンツが頻繁に改変、更新される場合、必要に応じて過去版を送信する。
販売実績数計算部113は、コンテンツDB131が記憶する、デジタルコンテンツの電子商取引に参加する参加者が制作したデジタルコンテンツの取引履歴リストLS1に基づいて、販売実績数を算出する。ここで販売実績数とは、前述のように、販売者が当該デジタルコンテンツの制作者(あるいは上場者)である取引(実績)数から、購入者が当該デジタルコンテンツの制作者(あるいは上場者)である取引(実績)数を差し引いたものである。
転売告知数計算部114は、コンテンツDB131が記憶する、会員がデジタルコンテンツの転売告知を行った記録である転売告知リストST1に基づいて、転売告知数を算出する。
価格決定部112は、まず、販売実績数計算部113が算出した各デジタルコンテンツの販売実績数と、転売告知数計算部114が算出した転売告知数を取得する。そして、価格決定部112は、予め設定された価格設定関数を用いて、取得した販売実績数と転売告知数とから各デジタルコンテンツの取引価格を設定する。この際、公開すべき価格とは、次期取引価格であるから、これまでの過去の販売実績数(前述の形で計算する)から転売告知数を差し引いた看做し販売実績数と、参照元リストRRLに登録されている参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数と、を引数として、価格設定関数により計算する。ここで、価格設定関数は、デジタルコンテンツの販売実績数から転売告知数を差し引いて得られる数である看做し販売実績数と、参照元リストRRLに登録されている参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数と、を引数として各デジタルコンテンツの販売価格を返す関数であり、看做し販売実績数の増加に対して単調増加する関数である。この価格決定部112により決定されるデジタルコンテンツの取引価格は、デジタルコンテンツの内容やサイズ、有用性と全く無関係に、ただ看做し販売実績数と参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数とにのみ依存する。従って、デジタルコンテンツの看做し販売実績数が増加すればするほどデジタルコンテンツの取引価格が上昇する。また、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数が増加すれば、その分デジタルコンテンツの取引価格も上昇する。即ち、デジタルコンテンツの価値が上昇することになる。価格決定部112は、例えば図7に示すような相関関係を示す価格設定関数を用いてデジタルコンテンツの価格を決定する。次に、価格設定関数の決め方について説明する。
デジタルコンテンツの取引価格は、デジタルコンテンツの販売実績数およびデジタルコンテンツの転売告知数のみを考慮した場合、下記式(1)の関係式で表される。
ここで、Pはデジタルコンテンツの価格、Nはデジタルコンテンツの販売実績数、Mはデジタルコンテンツの転売告知数を表し、Kは、取引に利用する通貨単位へ変換するための為替レートである。式(1)のように、対数の中で2が加えられているのは、看做し販売実績数が0である場合、すなわち販売開始直後の初期販売価格がKになるようにするためである。
前述の式(1)は、以下に示す理論に基づいて導出される。デジタルコンテンツの電子商取引市場において、デジタルコンテンツDCが当該デジタルコンテンツを制作した会員Aのみに所有されている状態の状態数とデジタルコンテンツDCがN人の他の会員にも所有されている状態の状態数、すなわちN+1(制作者の所有分も加える)を考え、化学反応における平衡状態をそのまま適用すると平衡定数として、KEq()=(1+N)/1が考えられる。この平衡定数KEq()の自然対数ln(1+N)は、化学反応における(ボルツマン定数を1とする場合の)自由エントロピー差であり、デジタルコンテンツの商品力、即ち、デジタルコンテンツの価値を表している量と捉えることができる。つまり、デジタルコンテンツの価値が前述の無次元の自由エントロピー差、ΔΞ、として表される。従って、デジタルコンテンツの価値は、このデジタルコンテンツの価値を表す無次元の自由エントロピー差ΔΞ=ln(N+1)に比例すると考えられる。本実施の形態では、1/ln(2)を単位として価値を表している。この場合、デジタルコンテンツの価値は、下記式(2)で表される。
ここで、Vはデジタルコンテンツの価値、Nはデジタルコンテンツの販売数(販売実績数に次期取引数として1を加えたもの)を表す。この価値に対して、通常の通貨単位に換算するための為替レートKをかけたものが、価格P=KVであり、そして、デジタルコンテンツを制作した会員にとって、販売したデジタルコンテンツの転売告知が行われるとその転売告知数分だけ見かけの販売数、すなわち看做し販売数(看做し販売実績数に次期取引数として1を加えたもの)が減少するという考え方に基づいて、前述の式(1)が導出される。即ち、価格設定関数は、看做し販売数に1を加えた整数を引数とする、底が2の対数関数に支払い清算のための通貨価値を表す為替レートをかけた値で表される。これにより、デジタルコンテンツの販売価格は、デジタルコンテンツの電子取引市場において働く市場原理が考慮された適正な価格に設定される。
なお、前記に述べた通り、取引において、取引額を受領する側(販売者及び転売者)が受領する金額と、取引額を支払う側(購入者)が支払う金額は同じである必要はない。受領金額が支払い金額よりも小さい場合は、その差額は商取引管理装置を管理する管理者の手数料になりえる。一方受領金額が支払い金額よりも大きい場合は、取引毎に、市場における価値創造が行われると考えられる。たとえば、受領金額は、前記式(1)によって決まるとして、支払い金額P’は、下記の式(3)で決まるとする。
この場合、取引ごとに、その差額分だけ価値が創造される。これは、支払者に対してはディスカウントによる値下げを行ったことになると同時に、市場における取引は平均して差額分だけ価値が創造されたことになる。このようにすると、一つのデジタルコンテンツの購入と転売によって平均的には利益が出ることを意味し、これは取引をより活発にさせることにつながる。
ここにおいて、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数のデジタルコンテンツDCの取引価格への影響を考慮すると、式(1)は、下記式(4)に変形される。即ち、価格設定関数の引数に、参照元リストRRLに登録された参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数の項が追加された形となる。
ここで、N0は、デジタルコンテンツDCの販売実績数、M0はデジタルコンテンツDCの転売告知数、Iは、参照元リストRRLに登録されている参照元のデジタルコンテンツの数を示す。また、Ni、Miは、参照元リストRRLに登録されているi番目の参照元のデジタルコンテンツの販売実績数、転売告知数であり、N1、M1は、参照元リストRRLに最初に登録されている参照元デジタルコンテンツの販売実績数、転売告知数である。
なお、価格設定関数は、式(4)の形に限定されるものではなく、例えば下記式(5)または式(6)の形を有するものであってもよい。
価格設定関数が式(4)の形で表される場合、デジタルコンテンツDCの価格は、参照元のデジタルコンテンツの数が増加しても大きく上昇しない。一方、価格設定関数が式(6)の形で表される場合、デジタルコンテンツDCの価格は、参照元のデジタルコンテンツの数の増加に対して比例するように上昇する。また、価格設定関数が式(5)の形で表される場合、デジタルコンテンツDCの価格の上昇率は、価格設定関数が式(4)の形で表される場合の上昇率と式(6)の形で表される場合の上昇率との中間になる。このように、価格設定関数が式(4)から(6)のいずれの形で表されるかにより、参照元のデジタルコンテンツの数の増加に対する、参照先のデジタルコンテンツDCの価格上昇への寄与度が異なる。ただし、ひとたび価格設定関数が式(4)から(6)のいずれかのうち一つに決定されたのちは、常に同じ式を用いる必要がある。これは取引の公平性を担保するためである。
売買管理部115は、会員毎に、各取引においてその会員の発行した買掛または売掛を示す発行買掛レコードまたは発行売掛レコードを買掛・売掛DB136に記憶させる。また、売買管理部115は、会員毎に、各取引においてその会員の受領した買掛または売掛を示す受領買掛レコードまたは受領売掛レコードを買掛・売掛DB136に記憶させる。ここで、前述のように、売掛・買掛に記載される取引価格は、前記式(1)から(6)における通貨交換レートKを含まないものであることを再度述べておく。更に、この場合、清算時の方向によって通貨交換レートKの相違が許容されることも述べておく。また、売買管理部115は、デジタルコンテンツの取引が成立する毎に、まず、各会員について、発行買掛レコードおよび発行売掛レコードと、受領買掛レコードおよび受領売掛レコードと、を相互に照合して整合性を判定する。そして、売買管理部115は、各会員について、発行買掛レコードおよび発行売掛レコードと、受領買掛レコードおよび受領売掛レコードと、の整合性がとれていると判定すると、発行買掛レコードの価格の総和と発行売掛レコードの価格の総和との差分を算出して残高データを生成する。また、買掛・売掛DB136が記憶する、発行買掛レコード、発行売掛レコード、受領買掛レコードまたは受領売掛レコードの数が膨大になったとする。この場合、売買管理部115は、残高データの算出に要する時間の長期化を避けるために、発行買掛レコード、発行売掛レコード、受領買掛レコードまたは受領売掛レコードを一定期間(たとえば1ヵ月)毎にブロック化してブロックチェーンにする処理を実行する。なお、ここで「ブロックチェーン」と呼ぶものは、ビットコインなどで使われるマイニングによる特別な数により承認してブロック化するものではなく単純に一定量ごとに分割して(原則として情報圧縮して)保存するだけのものである。
また、売買管理部115は、デジタルコンテンツの購入要求を発行した会員から買掛を取得した後、購入要求を発行した会員の会員識別番号を、コンテンツDB131が記憶するコンテンツ購入者リストLS2に新たに登録する。更に、売買管理部115は、デジタルコンテンツの転売告知を行っている会員と他の会員との間で商取引が成立すると、転売告知を行っていた会員の会員識別番号を、コンテンツ購入者リストLS2から削除する。ここで、売買管理部115は、最後に転売告知を行った会員から順次転売を成立させる。また、売買管理部115は、会員が転売告知を取り消した場合、その会員の会員識別番号を転売告知リストST1から消去する。
転売告知者特定部116は、コンテンツDB131が記憶する、対象となるデジタルコンテンツのコンテンツ識別番号に対応する転売告知リストST1から、デジタルコンテンツの転売を意図する転売告知者の会員識別番号として特定する。ここにおいて、転売告知リストST1はラストインファーストアウト方式で会員識別番号を蓄積しているため、転売告知者特定部116は、会員の所有する情報端末2から購入要求を取得すると、転売告知リストST1に蓄積された複数の会員識別番号のうち最後に転売告知を行った転売告知者の会員識別番号を特定する。転売告知者特定部116が特定した会員識別番号は、転売告知リストST1から消去される。
電子掲示板提供部117は、電子掲示板DB137から取得した電子掲示板データを、デジタルコンテンツのコンテンツ購入者リストLS2に登録されている会員が所有する情報端末2へ送信することにより、それらの会員に対して電子掲示板を提供する。即ち、電子掲示板提供部117は、各デジタルコンテンツについて、それを制作した会員およびそれを購入した会員のみが読み書きできる電子掲示板を提供する。なお、電子掲示板提供部117は、電子掲示板の書き込み数やアクセス数の推移等を示す情報を、デジタルコンテンツを購入していない会員を含むすべての会員に提供する。
参照元販売実績数転売告知数計算部118は、コンテンツDB131が記憶する参照元リストRRLに基づいて、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの販売実績数と転売告知数を計算する。
次に、本実施の形態に係る商取引管理装置1が実行するデジタルコンテンツ購入処理について図8を参照しながら説明する。このデジタルコンテンツ購入処理は、商取引管理装置1が会員の所有する情報端末2から特定のデジタルコンテンツ(ここでDCとする)の購入要求を受信したことを契機として開始される。
まず、価格決定部112は、デジタルコンテンツDCのコンテンツDB131からデジタルコンテンツの販売実績数および転売告知数を取得し、取得した販売実績数および転売告知数に基づいてデジタルコンテンツDCの看做し販売実績数と、参照元リストRRL内にある参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数と、に基づいて価格を設定する(ステップS101)。ここで、価格決定部112は、購入要求を取得する以前の販売実績数から転売告知数を差し引いて得られる看做し販売実績数と、参照元リストRRL内の参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数と、を引数として価格設定関数により、デジタルコンテンツの価格を設定する。
次に、転売告知者特定部116は、デジタルコンテンツDCのコンテンツDB131の転売告知リストST1から、デジタルコンテンツDCの販売者となる会員の会員識別番号を特定する(ステップS102)。ここで、転売告知リストST1は、ラストインファーストアウト方式で会員識別番号を蓄積している。そのため、転売告知者特定部116がDCの転売告知リストST1から転売告知者の会員識別番号を取得することにより、転売告知リストST1に最後に蓄積された会員識別番号、即ち、最後に転売告知を行った会員の会員識別番号が消去される形で、転売告知リストST1が更新される(ステップS103)。なお、転売告知者特定部116は、転売告知を行った会員が存在しない、即ち、転売告知数がゼロの場合、転売告知リストST1は空リストであるため、告知者の会員識別番号は存在せず、よって消去も行わない。
続いて、売買管理部115は、買掛と売掛とに基づいて、会員毎に、発行買掛レコード、発行売掛レコード、受領買掛レコードおよび受領売掛レコードを生成して買掛・売掛DB136に記憶させる(ステップS104)。なお、売買管理部115は、定期的に各会員について、発行買掛リストLS11および発行売掛リストLS12と、受領買掛リストLS13および受領売掛リストLS14と、の整合性を判定し、発行買掛リストLS11に登録されている発行買掛レコードの価格の総和と、発行売掛リストLS12に登録されている発行売掛レコードの価格の総和との差分を算出して残高データを生成する。
その後、売買管理部115は、コンテンツDB131が記憶するコンテンツ購入者リストLS2に購入要求を送った購入者の会員識別番号を追加する形でコンテンツ購入者リストLS2を更新する(ステップS105)。
ところで、会員が、同一のデジタルコンテンツを複数購入することも許容する。これは、たとえば、同一のデジタルコンテンツをL個購入することは、L回の購入要求を行うことと同値である。本商取引システムでは、看做し販売実績数に従って販売価格が決定されているため、同一デジタルコンテンツL個は、同一価格で購入することができない。仮にL回購入する間に、当該デジタルコンテンツについて他の取引が行われなかったとすると、最初の1回目の購入時にくらべ、最後のL回目の購入時においては、看做し販売実績数がLだけ増えているため、この分価格は上昇している。このことは、転売告知も同様であり、同一デジタルコンテンツをL回購入したものは、当該デジタルコンテンツについて最大L回の転売告知を行うことができるが、それらが転売成立した場合の転売価格は異なる。このように、同一コンテンツを複数売買することは許容されているが、同一コンテンツの取引価格が取引毎異なることにより、あるデジタルコンテンツが低価格のときに、大量購入して、値上がり後、大量転売(告知)することで莫大な利益を得ることを難しくする。低価格時に大量購入する段階で、購入毎に価格が上昇し、また転売告知を繰り返すことで価格は下落する。また、大量に転売しようとして転売告知をおこなっても、価格が暴落する中で即座に転売が成立する可能性は低い。L回連続して購入する場合、前述のステップS101乃至S105の処理がL回繰り返し実行される。この場合、デジタルコンテンツのコンテンツ購入者リストLS2内には、その会員がL回登録されている。従って、仮にその会員がその後デジタルコンテンツをL−1回転売した場合、コンテンツ購入者リストLS2中のその会員はL−1回だけ抹消される。すると、その会員は、コンテンツ購入者リストLS2の中に残ることになる。そして、デジタルコンテンツを購入した会員が実際にデジタルコンテンツをダウンロードしたかどうかは、取引の成否に関係しない。従って、会員には、実際にデジタルコンテンツをダウンロードせずにそのまま転売告知を行うことも許容される。この場合、商取引管理装置1が管理する商取引市場が、単なる送金手段として使用されることも想定される。但し、この商取引市場で取引されるデジタルコンテンツは、会員全員に告知され、会員の誰もが購入可能であるため、仮に、デジタルコンテンツがいわゆる無意味なダミーコンテンツであり、単なる送金目的のものである場合、会員が判定可能であり、市場の不正利用として告発する機会を得ることができる。
また、複数の会員が、1つのデジタルコンテンツを同時に購入しようとする場合、トランザクションが衝突しうる。そこで、本実施の形態に係る商取引管理装置1では、1の会員のデジタルコンテンツの購入手続きが先に始まった段階で、その他の会員のデジタルコンテンツの購入手続きを待たせるようにしている。また、複数の会員が同時にデジタルコンテンツの転売告知を行おうとする場合、トランザクションが衝突しうる。そこで、本実施の形態に係る商取引管理装置1では、1の会員の転売告知のための処理が先に始まっている段階で、他の会員の転売告知のための処理を待たせるようにしている。一方、商取引管理装置1は、衝突が起こり得ない互いに無関係な複数のトランザクションを並列で実行する。
以上説明したように、本実施の形態に係る商取引管理装置1によれば、価格決定部112が、販売数から転売告知数を差し引いて得られる数である看做し販売実績数と参照元リストRRLに登録されている参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数とを引数としてデジタルコンテンツの取引価格を返す価格設定関数を用いてデジタルコンテンツの取引価格を決定する。すなわち、デジタルコンテンツの価格は、その内容、データ量、制作者と全く無関係に、ただ、販売実績数から転売告知数を差し引いた看做し販売実績数と、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数と、のみに依存する(もちろん、内容が良いもの、有名な制作者が制作したデジタルコンテンツは、需要が多く、よって販売数が増え、価格も上昇する可能性が高い)。これにより、デジタルコンテンツを販売する参加者自身が事前にデジタルコンテンツの販売数や転売数を推定することなく、デジタルコンテンツの取引(販売あるいは転売)価格が自動的かつ動的に設定されるので、デジタルコンテンツの電子商取引の円滑化を図ることができる。また、価格決定部112は、参加者によるデジタルコンテンツの需要の大きさを反映する看做し販売実績数の増加に対して単調増加し、かつ各参照元デジタルコンテンツの看做し販売実績数の増加に対して単調増加する価格設定関数を用いて、デジタルコンテンツの販売価格を決定する。このため、需要が増大するか、あるいは参照元デジタルコンテンツの需要が増大するデジタルコンテンツについては、購入者は、購入価格よりも、高い価格で転売できる可能性があり、転売利益が得られる可能性がある。このことにより、購入者が購入したデジタルコンテンツを不正に複製し、これを不正に有償配布するなどの不正行為を行わずとも、正当に投機利益が得られる可能性があり、デジタルコンテンツの不正複製、不正配布を抑止する効果が期待できる。さらに、前記価格設定法により、デジタルコンテンツを購入した購入者は、このデジタルコンテンツを吟味し、価値が高ければ価格の上昇を待ち、価値が低ければ、販売価格の下落が始まる前に即座に転売告知を行う等の戦略を取ることができ、複数の購入者のそれぞれの価値判断の総意により価格が変動することになる。これは販売価格が購入者の総意によって決定されるデジタルコンテンツの価値そのものを表すことを意味し、昨今のインターネット上で見受けられる「いいね」の数などによる評価に比べてより信憑性が高い価値を示している(「いいね」などの場合は、「いいね」を投票する権利を購入するわけではなく、無責任に、場合によっては買収された投票者による「いいね」の水増しすら行われうる)。以上により、デジタルコンテンツの価格が参加者によるデジタルコンテンツの需要を反映した適正な価格に設定されるので、商取引管理装置1により管理されるデジタルコンテンツの電子商取引市場におけるデジタルコンテンツの流通が促進され、ひいてはデジタルコンテンツの開発の加速が期待できる。
また、本実施の形態に係る価格決定部112が用いる看做し販売実績数と、各参照元デジタルコンテンツの看做し販売事績数と、を引数とする価格設定関数は、看做し販売実績数の増加に対して単調増加する。これにより、デジタルコンテンツの需要の増加に対して、看做し販売実績数が増加し、これに伴い必ず販売価格は上昇することが保証される。また、価格設定関数は、転売告知数の増加に対して単調減少する。この転売告知数の増加は、デジタルコンテンツの需要の減少を示すものであり、この場合、看做し販売実績数は減少する。そして、価格設定関数で決定される販売価格は、必ず下落することが保証されている。ただし、価格の下落が起こっても、デジタルコンテンツの制作者は、既に販売された分の売り上げが減少することはない(自ら制作したデジタルコンテンツを自ら購入した場合を除く)。
また、本実施の形態に係る価格決定部112が用いる、看做し販売実績数と各参照元デジタルコンテンツの看做し販売事績数とを引数とする価格設定関数は、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売実績数の増加に対して単調増加する。これにより、デジタルコンテンツがより多くの派生的デジタルコンテンツ(二次デジタルコンテンツ)を生み出すことにより、その分、価格の上昇が期待される。即ち、応用力、適用力の高い、発展性のあるデジタルコンテンツの価値が高くなることを意味する。これにより、より多くの他のデジタルコンテンツから参照されるデジタルコンテンツほど、その投機的価値が上昇してその需要が高まる。この結果、多数の他のデジタルコンテンツから参照されるデジタルコンテンツの制作者には大きな売り上げをもたらす。これにより、一次的なデジタルコンテンツの制作者は、その参照元となる派生的なデジタルコンテンツを制作した制作者から著作権料や特許使用料に類するライセンス料の支払いを受けることなく、正当な報酬を得ることができる。よって、参照することが奨励され、参照を行わない不正な盗用による二次コンテンツが抑制させる。
また、本実施の形態に係る商取引管理装置1によれば、各デジタルコンテンツの販売価格がその看做し販売実績数に応じて変動する。従って、会員は、デジタルコンテンツを購入価格より高い価格で転売できれば転売益を得ることができる。このことが、会員が商取引管理装置1により管理されているデジタルコンテンツの電子商取引市場に参加する会員と取引することのインセンティブとなるため、デジタルコンテンツが非会員に対して不正に配布されることが抑制される。また、各会員は自身の転売益を確保するために、非会員に対して商取引管理装置1が管理する電子商取引市場への参加の勧誘することが頻繁に行われることが想定されるので、商取引管理装置1が管理するデジタルコンテンツの電子商取引市場を拡大できるという利点がある。
更に、本実施の形態に係るデジタルコンテンツ商取引システムでは、売掛と買掛との交換により商取引が行われるため、商取引の頻度の増大に伴い交換されるべき通貨が不足することがなく、また不足を補うために通貨が過剰に発行されることにより引き起こされるインフレーションのような現象も起こらないという利点がある。そして、取引される各デジタルコンテンツはその看做し販売実績数から絶対的な価値が設定されるため、この価値と決済通貨との為替レートも安定する。このようにデジタルコンテンツの電子商取引市場における商取引の安全性が向上すると、この電子商取引市場の会員が増大する。これにより、この電子商取引市場での商取引量が増加し、ひいては商取引における平均的な販売価格の上昇がもたらされるという利点もある。これは市場の拡大による経済成長そのものを表しており、GDPの上昇にも貢献する。特に、これまでデジタルコンテンツは、限界費用がゼロに近いため、無償配布か、それに近い低価格で販売される傾向があったが、本デジタルコンテンツ商取引の仕組みの導入により、デジタルコンテンツの配布が経済活動になり、この分の経済発展も期待できる。
また、本実施の形態に係る電子掲示板提供部117は、デジタルコンテンツを制作した会員およびそのアクセス情報を取得した会員に対して電子掲示板を提供する。これにより、デジタルコンテンツを制作した会員とこれを購入した会員とが電子掲示板を介して対話できるので、例えばデジタルコンテンツを制作した会員がそれを購入した会員の意見を参考にしてデジタルコンテンツを改良することが可能となる。また、デジタルコンテンツの制作者が、既に販売しているデジタルコンテンツを基に新たにデジタルコンテンツを開発したとする。この場合、新たなデジタルコンテンツを制作した会員は、その基となったデジタルコンテンツを購入した会員に対して電子掲示板を介して新たなデジタルコンテンツの販売告知を行うことも可能となる。そのほか、デジタルコンテンツがソフトウェアであった場合、ソフトウェア利用におけるサポートや、ユーザー間の相互連携が、この掲示板によって促進され、ソフトウェアの利用環境を改善する。さらに、デジタルコンテンツとして、なんらかの研究開発プロジェクトの企画書のようなものが考えられ、多数の参加者による共同開発も促進される。これらのプロジェクトは容易に新規プロジェクトを生み出し、それらが新規のデジタルコンテンツとして普及することで、イノベーションの加速も期待できる。
また、本実施の形態に係る商取引管理装置1では、買い掛け・売り掛けDB136が記憶する残高データの示す残高が負の場合、現金支払によって残高を0にすることができる。一方、残高データが示す残高が正の場合、現金を受領し、残高を0にすることができる。しかし、残高が負のときに支払によって残高を正にすることはできないし、また残高が正のときに、現金の受領により残高を負にすることはできない。よって、前払い式決済に関する法律(いわゆるプリペイドカードや商品券の発行に関する法律)や金融取引に関わる法律の適応外になる。つまり、金融機関の助けを借りずに、本発明の事業が行えるという利点がある。
また、商取引管理装置1では、デジタルコンテンツDCの販売、および転売における取引価格が販売実績数および転売告知数によって自動的に決定されるが、これは公正取引における価格統制にはつながらない。その理由は、販売価格については、商取引管理装置1の管理者が、デジタルコンテンツDCの制作者から、商取引管理装置1を用いて販売することを契約上委託されている。このため、販売価格の設定は、商取引管理装置1の管理者の裁量によって決定することができる。従って、管理者がデジタルコンテンツDCの取引において、商取引管理装置1により決定される価格を採用することは、価格統制を行うことに繋がらない。また、デジタルコンテンツDCの転売価格については、転売を希望するものがデジタルコンテンツDCを転売する時期を選ぶことにより、一定の範囲で自由に転売価格を決めることができる。従って、商取引管理装置1により決定される転売価格を採用することも価格統制を行うことに繋がらない。
また、本実施の形態に係る商取引管理装置1を用いれば、デジタルコンテンツの取引毎の手数料或いは商取引管理装置1が管理するデジタルコンテンツの商取引市場へ参加するための会費を事業収入とすることができる。また、商取引管理装置1を実現するためのデーモンプログラムや情報端末2で稼働するクライアントプログラムを商取引市場へ提供することもできる。そして、この商取引管理装置1を用いれば、デジタルコンテンツの取引毎の手数料の徴収や会員からの会費の徴収等をその市場の管理者が売掛を発行することにより行うことができる。
(変形例)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、商取引管理装置が、前述のデジタルコンテンツとは異なり限界費用をゼロと見做すことができず、複製が難しく、使用時の劣化がある通常の商品の市場を管理するものであってもよい。この場合、価格決定部は、商品の販売価格を前述の販売価格に商品の限界費用相当分を加算して得られる価格に設定し、商品の転売の場合、更に商品の劣化相当分の価格を差し引いた価格に設定する構成とすればよい。あるいは、新商品の企画あるいは仕様をデジタルコンテンツとして本商取引市場において販売し、売り上げを商品製造のための投資に回すことができる。この企画や仕様の販売数から実際の商品の需要を把握することができ、これにより、企画や仕様を購入した人には、限界費用で商品を引き渡すことができる。これは、新商品の先物取引市場を形成し、これにより、イノベーションを加速することにつながる。
また、商取引管理装置1が管理する市場で流通しているデジタルコンテンツから派生する二次コンテンツが、デジタルコンテンツではなく、物品であってもよい。この場合、二次コンテンツに相当する物品が、商取引管理装置1が管理する市場外で販売される際、その販売実績数を定期的に商取引管理装置1へ入力されるようにすればよい。これにより、二次コンテンツに相当する物品の販売実績数を、一次的なデジタルコンテンツの価格上昇に寄与させることができる。
ここにおいて、二次コンテンツに相当する物品の製造販売者は、一次的なデジタルコンテンツの制作者に対してライセンス料等の支払いを何ら行う必要がなく、単に二次コンテンツに相当する物品の販売実績数を定期的に商取引管理装置1へ入力するだけでよい。そして、一次的なデジタルコンテンツの制作者は、二次コンテンツに相当する物品の販売実績数に応じた一次的なデジタルコンテンツの投機的価値の上昇に伴う需要増により、正当な報酬を得ることができる。このように、商取引管理装置1が管理する市場外において、二次コンテンツに相当する物品の販売実績数を、商取引管理装置1が管理する市場に反映させることができるので、デジタルコンテンツのイノベーションの加速が期待される。
また、本実施の形態に係る商取引管理装置1は、近年注目されているクラウドファンディングにも利用できる。すなわち事業計画書やビジネスモデル提案書、あるいは商品企画書などの企画書をデジタルコンテンツとして、本実施の形態に係る商取引市場に上場すると、その企画に賛同する会員が企画書であるデジタルコンテンツを購入することで投資が行われる。その場合、賛同者以外の投資家や投機家が、単に転売利益をもくろんだ投機目的で購入することも誘発され、通常のクラウドファンディングに比べて、一層の出資者を募ることができる可能性がある。その際、本実施の形態に係る電子掲示板提供部117は、出資者と事業者との間の議論・討論の場、すなわち株主総会に相当する会議を電子的に行う仕組みとして利用できる。よって、本実施の形態に係る商取引管理装置1は、業務企画書等をクラウドファンディングの出資証券(株式)として取引する市場の管理装置として、また出資者と事業者の議論・討論の場の管理装置としても利用できる。
なお、電子掲示板において、通常問題となる炎上や荒らし等は、本実施の形態に係る商取引管理装置1の掲示板においては抑制される。デジタルコンテンツを購入した会員のみが書き込み可能であるため、不用意な発言はデジタルコンテンツの投機価値を低めることにつながるためであり、掲示板での発言は建設的であることが暗黙のうちに要請されるからである。
実施の形態に係る商取引管理装置1において、デジタルコンテンツの商取引を行う2人の会員の少なくとも一方に対して、取引手数料に相当する売掛を発行する手数料管理部を更に備える構成であってもよい。本構成によれば、デジタルコンテンツの電子商取引市場で商取引を行う会員からの取引手数量の徴収を容易に実施することが可能となる。
また、本実施の形態において、買掛・売掛DB136が記憶する発行買掛レコードの価格の総和と発行売掛レコードの価格の総和との差分が差分閾値よりも大きい参加者に対してアラームを通知する構成であってもよい。これにより、会員が、支払能力を超えて過度に買掛を発行してしまうことを防止できる。
更に、実施の形態において、情報端末2の代わりに、固定されたモニターカメラや実験装置、インターネット上のビッグデータを収集しているロボットプログラム等がコンテンツ情報を商取引管理装置1へ送信する構成であってもよい。
また、商取引管理装置1と情報端末2とが、同一のサーバ(ハードウェア)上で実現される構成であってもよい。
実施の形態において、前述の広告情報には、デジタルコンテンツDCを特定の基準数以上の数だけ購入した購入者のリストを加えることができるようになっていてもよい。これにより、デジタルコンテンツDCの広告情報に大量購入者の氏名あるいは組織名(会社名など)がスポンサーとして紹介され、デジタルコンテンツDCを広告媒体として利用できる。このリストの各項目には、氏名や組織名だけでなく、インターネット上のURLを登録し、無償で閲覧可能な広告コンテンツへ誘導するようにしてもよい。
実施の形態では、価格決定部112が用いる価格設定関数が、看做し販売実績数と、参照元のデジタルコンテンツそれぞれの看做し販売事績数と、を引数とする例について説明したが、これに限らない。例えば、価格設定関数が、前述の式(1)のように、看做し販売実績数に2を足した数を引数とする関数であってもよい。
また、本発明に係る商取引管理装置の各種機能は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、ネットワークに接続されているコンピュータに、上記動作を実行するためのプログラムを、コンピュータシステムが読み取り可能な非一時的な記録媒体(CD−ROM等)に格納して配布し、当該プログラムをコンピュータシステムにインストールすることにより、上述の処理を実行する商取引管理装置を構成してもよい。
また、コンピュータにプログラムを提供する方法は任意である。例えば、プログラムは、通信回線の掲示版(BBS)にアップロードされ、通信回線を介してコンピュータに配信されてもよい。そして、コンピュータは、このプログラムを起動して、OSの制御の下、他のアプリケーションと同様に実行する。これにより、コンピュータは、上述の処理を実行する商取引管理装置として機能する。
以上、本発明の実施の形態および変形例(なお書きに記載したものを含む。以下、同様。)について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
本出願は、2016年11月17日に出願された日本国特許出願特願2016−224123号、2017年4月5日に出願された日本国特許出願特願2017−075547号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2016−224123号、日本国特許出願特願2017−075547号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。