JPWO2018084120A1 - 安息香酸誘導体及び脱水縮合剤、並びにエステル及びラクトンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
<1> 下記式(I)又は式(II)で表される安息香酸誘導体。
式(I)及び式(II)中、R1は、ハロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を示し、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を示す。式(I)中の2個のR1、2個のR2、2個のR3、及び2個のR4は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(I)及び式(II)中、R1は、ハロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を示し、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を示す。式(I)中の2個のR1、2個のR2、2個のR3、及び2個のR4は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本実施形態の安息香酸誘導体は、下記式(I)又は式(II)で表される。本実施形態の安息香酸誘導体は、脱水縮合剤として好適に用いることができる。
ハロアルキル基としては、アルキル基の水素原子の全てがフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基であることがより好ましく、トリフルオロメチル基であることが更に好ましい。
本実施形態のエステルの製造方法は、上記式(I)又は式(II)で表される安息香酸誘導体及び触媒の存在下でカルボン酸とアルコールとを反応させる工程を含む。上記式(I)又は式(II)で表される安息香酸誘導体は脱水縮合剤として作用するため、カルボン酸とアルコールとを分子間で脱水縮合させることにより、反応生成物としてのエステルを得ることができる。
本実施形態のラクトンの製造方法は、上記式(I)又は式(II)で表される安息香酸誘導体及び触媒の存在下でヒドロキシカルボン酸を反応させる工程を含む。上記式(I)又は式(II)で表される安息香酸誘導体は脱水縮合剤として作用するため、ヒドロキシカルボン酸を分子内で脱水縮合させることにより、反応生成物としてのラクトンを得ることができる。
試験例1では、下記反応式に示すように、オルト位以外に置換基を有する置換安息香酸無水物(脱水縮合剤)の存在下で3−フェニルプロピオン酸と3−フェニルプロパノールとを反応させ、3−フェニルプロピル3−フェニルプロピオネート(A)を合成した。
トリエチルアミン(22.3mg、0.22mmol)を含有するジクロロメタン溶液(0.9mL)に対し、DMAP(1.2mg、0.010mmol)、脱水縮合剤(0.120mmol)、及び3−フェニルプロピオン酸(18.0mg、0.120mmol)を室温にて加えた。10分間撹拌した後、3−フェニルプロパノール(13.5mg、0.10mmol)を含有するジクロロメタン溶液(0.6mL)を加えた。反応混合液を室温にて4時間撹拌した後、0℃にて飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、反応を停止させた。反応後の溶液をジクロロメタンで抽出した後、有機層を水及びブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液を濾過した後に減圧濃縮し、得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)を用いて精製することにより、3−フェニルプロピル3−フェニルプロピオネート(A)を得た。
置換基としてハロゲン原子及びトリフルオロメチル基を有する3,5−二置換安息香酸無水物を用いた場合(エントリー4、5)には、生成物に脱水縮合剤が混合し、目的のエステルを単離することができなかった。
置換基としてニトロ基及びトリフルオロメチル基を有する3,4−又は3,5−二置換安息香酸無水物を用いた場合(エントリー6〜8)には、目的のエステルの収率が約60%と低く、化学選択性も低かった。
試験例2では、下記反応式に示すように、オルト位にフッ素原子を有する置換安息香酸無水物(脱水縮合剤)の存在下で3−フェニルプロピオン酸と3−フェニルプロパノールとを反応させ、3−フェニルプロピル3−フェニルプロピオネート(A)を合成した。合成方法の詳細は、脱水縮合剤の種類を除き、試験例1と同様である。
試験例3では、下記反応式に示すように、オルト位に置換基を有する置換安息香酸無水物(脱水縮合剤)の存在下で3−フェニルプロピオン酸と3−フェニルプロパノールとを反応させ、3−フェニルプロピル3−フェニルプロピオネート(A)を合成した。合成方法の詳細は、脱水縮合剤の種類を除き、試験例1と同様である。
オルト位にニトロ基又はメチル基を有し、パラ位にトリフルオロメチル基を有する置換安息香酸無水物を用いた場合(エントリー2、3)には、オルト位にフッ素原子を有する置換安息香酸無水物を用いた場合(表2のエントリー2)よりも目的のエステルの収率が低下した。また、MNBA(エントリー4)と比較して、化学選択性は顕著に低かった。
試験例4では、下記反応式に示すように、オルト位にトリフルオロメチル基を有する置換安息香酸無水物(脱水縮合剤)の存在下で3−フェニルプロピオン酸と3−フェニルプロパノールとを反応させ、3−フェニルプロピル3−フェニルプロピオネート(A)を合成した。合成方法の詳細は、脱水縮合剤の種類及び後述するエントリー6〜8の反応条件を除き、試験例1と同様である。
オルト位にトリフルオロメチル基を有し、メタ位又はパラ位にハロゲン原子、ニトロ基、又はメチル基を有する置換安息香酸無水物を用いた場合(エントリー2〜5、7)には、高い収率で目的のエステルが得られたものの、メタ位又はパラ位に置換基を有しない置換安息香酸無水物を用いた場合(エントリー1)よりも化学選択性が低下した。
オルト位にトリフルオロメチル基及びフッ素原子、又は2個のトリフルオロメチル基を有する置換安息香酸無水物を用いた場合(エントリー6、8)には、80%を超える高い収率で目的のエステルが得られた。また、MNBAに匹敵する高い化学選択性を示した。
試験例5では、下記反応式に示すように、置換安息香酸塩化物(脱水縮合剤)の存在下で3−フェニルプロピオン酸と3−フェニルプロパノールとを反応させ、3−フェニルプロピル3−フェニルプロピオネート(A)を合成した。合成方法の詳細は、脱水縮合剤の種類、反応時間、及び後述するエントリー2の反応条件を除き、試験例1と同様である。
試験例6では、下記反応式に示すように、各種脱水縮合剤の存在下でヒドロキシカルボン酸(25)を反応させ、ラクトン(26)を合成した。ラクトン(26)に含まれる24員環ラクトン骨格は、抗菌活性を有する天然物であるユーシェアリライド(Eushearilide)の中心骨格である。
脱水縮合剤(1.3当量)及びDMAP(6.0当量)を含有するジクロロメタン溶液に対し、所定量のヒドロキシカルボン酸(25)を含有するジクロロメタン溶液を室温にて12時間かけてゆっくり加え、室温にて1時間撹拌した。0℃に冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。反応停止後、有機層を分離した。水層については、ジクロロメタンで抽出した後、有機層を水及びブラインで洗浄した。有機層を集め、水及びブラインで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液を濾過した後に減圧濃縮し、得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3/1)を用いて精製することにより、ラクトン(26)を得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ5.51-5.34 (m, 4H, 16-H, 17-H, 20-H, 21-H), 5.00 (dt, J = 1.5, 6.0 Hz, 1H, 3-H), 3.94 (m, 1H, 23-H), 2.54-2.39 (m, 2H, 2-H), 2.31-2.17 (m, 2H, 22-H), 2.05 (br s, 4H, 18-H, 19-H), 2.00 (d, J = 5.5 Hz, 2H, 15-H), 1.58-1.27 (m, 22 H, 4-H to 14-H), 1.24 (d, J =6.0 Hz, 3H, 24-H).
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ172.2 (C1), 133.7 (C20), 130.8 (C16), 129.8 (C17), 125.0 (C21), 70.8 (C23), 68.2 (C3), 41.4 (C2), 39.0 (C22), 36.1 (C4), 32.9 (C19), 32.5 (C18), 31.9 (C15), 28.7, 28.6, 28.4, 28.2, 28.2, 28.2, 28.1, 28.0, 27.5 (C6 to C14), 24.7 (C5), 19.6 (C24).
HR-MS (ESI-TOF): m/z calcd for C24H42O3Na [M+Na]+401.3026, found 401.3008.
IR (neat): 3410, 2924, 2854, 1728 cm-1.
[α]D 22-13.5 (c 0.87, CHCl3).
FTFBCを用いた場合(エントリー2)のラクトン(26)の収率は、MNBCを用いた場合(エントリー4)の収率よりも低かったものの、山口ラクトン化反応に用いられる脱水縮合剤として広く知られているTCBCを用いた場合(エントリー6)の収率よりも高かった。
試験例7では、下記反応式に示すように、脱水縮合剤(FTFBA)の存在下でヒドロキシカルボン酸(29)を反応させ、ラクトン(30)を合成した。
2−フルオロ−6−トリフルオロメチル安息香酸無水物(FTFBA)(12.0mg、30μmol[1.3当量])及びDMAP(7.3mg,60μmol[2.6当量])を含有するジクロロメタン溶液(9.3mL)に対し、所定量のヒドロキシカルボン酸(29)(20.0mg、23μmol)を含有するジクロロメタン溶液(2.3mL)を0℃にて1時間かけてゆっくり加え、0℃にて1時間撹拌した。0℃にて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。反応停止後、有機層を分離した。水層については、ジクロロメタンで抽出した後、有機層を水及びブラインで洗浄した。有機層を集め、水及びブラインで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液を濾過した後に減圧濃縮し、得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)を用いて精製することにより、ラクトン(30)(8.9mg、45%)を得た。
また、2−フルオロ−6−トリフルオロメチル安息香酸無水物(FTFBA)(12.0mg、30μmol[1.3当量])を、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(MNBA)(10.3mg、30μmol[1.3当量])に変更し、上述の方法と同様にヒドロキシカルボン酸(29)を反応させ、ラクトン(30)を合成した。この合成によれば、ラクトン(30)の収率は2/3まで低下し、30%となった。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ7.34-7.25 (m, 30H, Trt), 6.62 (d, J = 7.4 Hz, 1H, 5-H), 5.54 (d, J = 8.0 Hz, 1H, 2-H), 4.36-4.32 (m, 1H, 9-H), 4.28 (td, J = 5.3, 7.3 Hz, 1H, 3-H), 3.90-3.85 (m, 2H, 6-H, 9-H), 2.87 (dd, J = 7.2, 12.9 Hz, 1H, 17-H), 2.77 (dd, J = 5.2, 12.6 Hz, 1H, 18-H), 2.68 (dd, J = 5.7, 12.6 Hz, 1H, 18-H), 2.48 (dd, J = 5.2, 13.2 Hz, 1H, 17-H), 2.22 (dq, J = 3.4, 14.7 Hz, 1H, 16-H), 1.95-1.90 (m, 1H, 16-H), 1.74-1.21 (m, 12H, 10-H to 15-H).
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ173.4 (C1), 169.5 (C4), 169.3 (C7), 144.6 (Trt), 144.5 (Trt), 129.3 (Trt), 128.2 (Trt), 128.0 (Trt), 127.3 (Trt), 127.0 (Trt), 126.8 (Trt), 67.4 (Trt), 66.6 (Trt), 65.7 (C9), 52.7 (C6), 52.1 (C3), 36.0 (C16), 33.6 (C18), 33.4 (C17), 27.2 (C10), 26.5, 26.2, 26.1 (C4 to C6), 24.5 (C15), 23.4 (C11).
HR-MS (ESI-TOF): m/z calcd for C53H54N2O4S2Na [M+Na]+ 869.3423, found 869.3415.
IR (neat): 3379, 3286, 3062, 3024, 2931, 2854, 1736, 1651 cm−1.
[α]D 24 -11.9 (c 0.92, CHCl3).
Claims (6)
- 下記式(I)又は式(II)で表される安息香酸誘導体。
式(I)及び式(II)中、R1は、ハロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を示し、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を示す。式(I)中の2個のR1、2個のR2、2個のR3、及び2個のR4は、互いに同一であっても異なっていてもよい。 - 前記式(I)及び式(II)中、R1がフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、R2、R3、及びR4が水素原子である請求項1に記載の安息香酸誘導体。
- 下記式(I)又は式(II)で表される脱水縮合剤。
式(I)及び式(II)中、R1は、ハロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を示し、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を示す。式(I)中の2個のR1、2個のR2、2個のR3、及び2個のR4は、互いに同一であっても異なっていてもよい。 - 前記式(I)及び式(II)中、R1がフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、R2、R3、及びR4が水素原子である請求項3に記載の脱水縮合剤。
- 請求項1又は請求項2に記載の安息香酸誘導体及び触媒の存在下でカルボン酸とアルコールとを反応させる工程を含むエステルの製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の安息香酸誘導体及び触媒の存在下でヒドロキシカルボン酸を反応させる工程を含むラクトンの製造方法。
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