JPWO2018066574A1 - 電磁波シールド構造体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

繊維状炭素ナノ構造体の表面が処理されてなる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を含み、且つ、単位面積あたりの重量が0.5g/m2以上30g/m2以下である電磁波シールド層を備える、電磁波シールド構造体である。

Description

本発明は、電磁波シールド構造体および電磁波シールド構造体の製造方法に関するものである。
従来、電子機器からの電磁波ノイズに起因した機能障害等を防止するために、電磁波障害対策が行われている。ここで、電磁波障害対策としては、一般に、必要な周波数の電磁波を流す一方で、不要な周波数の電磁波が流れるのを制限することが必要である。そして、不要な周波数の電磁波が流れるのを制限するためには、不要な周波数の電磁波を透過させずに(反射および/または吸収して)遮蔽する性能(電磁波シールド性能)を有する材料を開発することが求められている。また、近年では、電磁波の遮蔽時に反射された電磁波によって別の電磁波障害が起こるのを防止する観点から、電磁波シールド性能に優れる材料の中でも、不要な周波数の電磁波を吸収して除去する性能(電磁波吸収性能)に優れる材料の開発が特に求められている。
ここで、従来の電磁波障害対策用の材料としては、例えば、導電性材料を配合した材料が知られている。
例えば、特許文献1には、ポリプロピレンおよびポリカーボネート中に、電磁波吸収性粒子として、導電性材料であるカーボンブラックが所定の分散状態で混練された樹脂組成物を、真空プレスして得られた成形品が開示されている。そして、特許文献1の成形品では、1GHz〜10GHzの周波数帯における電磁波吸収率を高めている。
また、特許文献2には、エチレン系樹脂と、ナノサイズ炭素材料として、導電性材料であるカーボンナノチューブおよび/またはフラーレンとを混練した材料をプレスして得られた電磁波吸収材が開示されている。そして、特許文献2の電磁波吸収材は、1GHz〜20GHzの比較的高い周波数帯の電波を入射させた際に、電磁波吸収性能を発揮している。
特開2015−15373号公報 特開2003−158395号公報
ところで、近年、衛星通信、自動車の衝突防止機構等に搭載されるレーダー、無線アクセス等の様々な技術において、10mm〜1mm程度の短波長(30GHz〜300GHz程度の超高周波数)を有する電磁波である、ミリ波が用いられている。そして、より大きな情報量をよりノイズを抑えて伝送するために、このような超高周波数帯においても、電磁波に起因した電磁波障害対策を図ることが求められている。
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1〜2に記載の成形品および電磁波吸収材では、周波数が30GHz以上であるミリ波レベルの超高周波数帯における電磁波について、優れた電磁波シールド性能と電磁波吸収性能とを両立させることができなかった。
そこで、本発明は、超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能に優れる電磁波シールド構造体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成することを目的として、鋭意検討を行った。そして、まず、本発明者は、例えば、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素ナノ構造体を含み、且つ、面密度が所定の範囲内にある電磁波シールド層を備える電磁波シールド構造体が、高周波数帯において優れた電磁波シールド性能を発揮できることを見出した。しかしながら、このような電磁波シールド層を備える電磁波シールド構造体は、高い電磁波シールド性能を発揮するものの、電磁波吸収性能が不十分であった。
そこで、本発明者が更に検討を重ねたところ、表面処理を施した繊維状炭素ナノ構造体を含み、且つ、面密度が所定の範囲内にある電磁波シールド層を使用すれば、電磁波シールド性能と電磁波吸収性能とに優れる電磁波シールド構造体が得られることを新たに見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の電磁波シールド構造体は、繊維状炭素ナノ構造体の表面が処理されてなる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を含み、且つ、単位面積あたりの重量が0.5g/m2以上30g/m2以下である電磁波シールド層を備えることを特徴とする。表面処理した繊維状炭素ナノ構造体を含み、且つ、面密度が上記所定の範囲内である電磁波シールド層を用いれば、例えば、30GHz以上の超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能に優れた電磁波シールド構造体を得ることができる。
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体」は、繊維径が1μm未満であり、アスペクト比(長径/短径)が5以上である、繊維状の炭素材料を指す。そして、繊維状炭素ナノ構造体の表面が処理されてなる「表面処理繊維状炭素ナノ構造体」についても、通常、上記「繊維状炭素ナノ構造体」と同様の繊維径およびアスペクト比を有する。
そして、本発明において、「繊維径」は、電磁波シールド層の厚み方向における断面をSEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)で観察して測定することができる。特に、繊維径が小さい場合は、同様の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察することが好適である。また、本発明において、「アスペクト比」は、電磁波シールド層の厚み方向における断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)として求めることができる。
また、本発明の電磁波シールド構造体は、前記表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面において、酸素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.03倍以上0.3倍以下、および/または、窒素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.005倍以上0.2倍以下であることが好ましい。表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面における酸素元素および/または窒素元素の存在量を上記範囲内とすれば、電磁波シールド構造体について、例えば、30GHz以上の超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を、より良好に両立することができるからである。
なお、本発明において、「酸素元素の存在量」、「窒素元素の存在量」および「炭素元素の存在量」は、X線光電子分光分析装置を用いて、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明の電磁波シールド構造体は、前記表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面において、前記酸素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.03倍以上0.3倍以下、および、前記窒素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.005倍以上0.2倍以下であることが好ましい。表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面における酸素元素および窒素元素の双方の存在量を上記範囲内とすれば、電磁波シールド構造体について、例えば、30GHz以上の超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を、更に良好に両立することができるからである。
また、本発明の電磁波シールド構造体は、前記繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含むことが好ましい。表面処理されたカーボンナノチューブを含めば、電磁波シールド構造体について、例えば、30GHz以上の超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能をより向上できるからである。
また、本発明の電磁波シールド構造体は、前記電磁波シールド層の75質量%以上が前記表面処理繊維状炭素ナノ構造体であることが好ましい。上記下限以上の表面処理繊維状炭素ナノ構造体を含有する電磁波シールド層を使用すれば、電磁波シールド構造体について、例えば、30GHz以上の超高周波数帯における電磁波シールド性能を更に向上させ、電磁波シールド性能および電磁波吸収性能をより良好に両立することができるからである。
そして、本発明の電磁波シールド構造体は、前記電磁波シールド層に直接的または間接的に接着されている絶縁支持層を更に備えることができる。電磁波シールド層と絶縁支持層とが接着されていれば、電磁波シールド構造体の耐久性を高めることができるからである。
また、本発明は上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の電磁波シールド構造体の製造方法は、上述したいずれかの電磁波シールド構造体を製造する方法であり、繊維状炭素ナノ構造体の表面が処理されてなる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を使用し、単位面積あたりの重量が0.5g/m2以上30g/m2以下である電磁波シールド層を形成する工程(A)を含み、前記工程(A)が、溶媒中に前記表面処理繊維状炭素ナノ構造体を分散させて分散液を得る工程(A−2)と、前記分散液から前記溶媒を除去して電磁波シールド層を形成する工程(A−3)とを含むことを特徴とする。このようにして、上記分散液から溶媒を除去して電磁波シールド層を形成すれば、電磁波シールド層の均一性を高め、電磁波シールド構造体の電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を更に向上することができる。従って、上記製造方法に従って得られた電磁波シールド構造体は、例えば、30GHz以上の超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能に優れている。
また、本発明の電磁波シールド構造体の製造方法は、前記工程(A−3)において、前記分散液をろ過することで前記溶媒を除去することが好ましい。分散液のろ過により溶媒を除去すれば、例えば、不純物をも除去しながら、超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能に優れた電磁波シールド構造体が備える、電磁波シールド層を容易に形成することができるからである。
また、本発明の電磁波シールド構造体の製造方法は、前記工程(A−3)において、前記分散液を乾燥することで前記溶媒を除去することも好ましい。分散液の乾燥により溶媒を除去すれば、超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能に優れた電磁波シールド構造体が備える、電磁波シールド層をより容易に形成することができるからである。
そして、本発明の電磁波シールド構造体の製造方法は、前記工程(A)が、前記繊維状炭素ナノ構造体の表面をプラズマ処理および/またはオゾン処理して表面処理繊維状炭素ナノ構造体を得る工程(A−1)を更に含むことが好ましい。プラズマ処理およびオゾン処理の少なくとも一方を行えば、所望の表面状態を有する表面処理繊維状炭素ナノ構造体を容易に得ることができるからである。
本発明によれば、超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能に優れる電磁波シールド構造体、およびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の電磁波シールド構造体は、特に、30GHz以上の超高周波数帯の電磁波を良好に吸収しつつ遮蔽することができる。従って、本発明の電磁波シールド構造体は、特に限定されることなく、電波天文、衛星通信、自動車レーダブレーキ等の各種レーダー、次世代無線LAN等の無線アクセスなどの、ミリ波を活用した分野に好適に用いることができる。
そして、本発明の電磁波シールド構造体は、例えば、本発明の電磁波シールド構造体の製造方法に従って製造することができる。
(電磁波シールド構造体)
本発明の電磁波シールド構造体は、1層の所定の組成を有する電磁波シールド層のみからなるものでもよいし、2層以上の上記電磁波シールド層のみからなるものでもよいし、単層または複層の上記電磁波シールド層と、例えば、絶縁支持層等の任意の他の構成部材とを備えた積層体であってもよい。
<電磁波シールド層>
ここで、電磁波シールド層は、繊維状炭素ナノ構造体の表面が処理されてなる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を含み、且つ、電磁波シールド構造体中に、所定の面密度(単位面積あたりの重量(g/m2)を指し、以下、「目付量」と称することがある。)にて備わっている必要がある。また、電磁波シールド層は、表面処理繊維状炭素ナノ構造体以外のその他の成分を更に含んでいてもよい。電磁波シールド層が表面処理繊維状炭素ナノ構造体を含み、且つ、電磁波シールド構造体中に所定の目付量にて備わっていなければ、電磁波シールド構造体に、例えば、30GHz以上の超高周波数帯において、優れた電磁波シールド性能と電磁波吸収性能とを両立させることができない。
<<目付量>>
ここで、本発明の電磁波シールド構造体が備える電磁波シールド層は、単位面積あたりの重量(目付量)が0.5g/m2以上30g/m2以下であることを必要とする。目付量が上記下限未満であると、例えば、30GHz以上の超高周波数帯における、電磁波シールド構造体の電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を十分に高めることができないと共に、強度も不十分となる。また、目付量が上記上限超であると、均一な電磁波シールド層を形成することが困難となる。結果として、超高周波数帯における、電磁波シールド構造体の電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を良好に両立することができない。
また、電磁波シールド層の目付量は、1.5g/m2以上であることが好ましく、2.0g/m2以上であることがより好ましく、29g/m2以下であることが好ましい。目付量が上記範囲内であれば、超高周波数帯における電磁波シールド構造体の電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を良好に両立させることができるからである。
<<表面処理繊維状炭素ナノ構造体>>
表面処理繊維状炭素ナノ構造体は、繊維状炭素ナノ構造体の表面を任意の方法で処理することにより得られる。電磁波シールド層が表面処理を施した繊維状炭素ナノ構造体を含まなければ、特に、超高周波数帯における電磁波吸収性能に劣り、電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を良好に両立することができない。なお、電磁波シールド構造体に優れた電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を両立させる観点からは、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面においては、とりわけ、後述する元素の存在量を満たすことが好ましい。
[繊維状炭素ナノ構造体]
繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、繊維状炭素ナノ構造体としては、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体が好ましい。カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を含む電磁波シールド層が、電磁波シールド構造体に、超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能をより良好に両立させることができるからである。加えて、カーボンナノチューブは一般に比表面積が大きいため、繊維状炭素ナノ構造体の表面を所望の状態に処理し易いと共に、電磁波シールド層を薄膜に形成した場合であっても良好な耐久性を与えることができるからである。
−繊維状炭素ナノ構造体の性状−
ここで、繊維状炭素ナノ構造体の平均繊維径(平均直径(Av))は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、通常、1μm未満であり、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が上記下限以上であれば、超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を更に高めることができるからである。また、繊維状炭素ナノ構造体を用いて得られる表面処理繊維状炭素ナノ構造体の分散性に優れるため、均一な電磁波シールド層をより容易に製造することができるからである。更に、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が上記上限以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の柔軟性が向上し、強靭性に優れた電磁波シールド層を形成することができるからである。
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体の平均繊維径(平均直径(Av))」は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径を測定した、個数平均直径として求めることができる。特に、繊維状炭素ナノ構造体の直径が小さい場合は、TEM(透過型電子顕微鏡)にて観察することが好適である。そして、繊維状炭素ナノ構造体の平均繊維径(平均直径(Av))は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法および製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満であることが好ましく、3σ/Avが0.25超であることがより好ましく、3σ/Avが0.40超であることが更に好ましい。3σ/Avが上記範囲内の繊維状炭素ナノ構造体を用いれば、電磁波シールド構造体に、超高周波数帯におけるより良好な電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を発揮させることができるからである。
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、上述した「平均直径(Av)」と同様の方法に従って求めることができ、上述した「平均直径(Av)」と同様の方法に従って調整することができる。
また、電磁波シールド構造体が電磁波を良好に吸収する観点等からは、繊維状炭素ナノ構造体は、平均繊維長が100μm以上であることが好ましい。一方、繊維状炭素ナノ構造体の長さが長いほど、表面処理時および分散時に繊維状炭素ナノ構造体に破断、切断などの損傷が発生し易い。従って、繊維状炭素ナノ構造体は、平均繊維長が5000μm以下であることが好ましい。
なお、本発明において、「平均繊維長」は、上述した「平均繊維径(平均直径(Av))」と同様の方法に従い、任意の100本の繊維状炭素ナノ構造体について最大径(長径)を測定し、測定した長径の平均値を算出することにより、個数平均長径として求めることができる。
そして、繊維状炭素ナノ構造体の平均アスペクト比(長径/短径)は、通常、5以上であり、10を超えることが好ましい。
なお、本発明において、「平均アスペクト比」は、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の100本の繊維状炭素ナノ構造体について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
さらに、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積は、200m2/g以上であることが好ましく、400m2/g以上であることがより好ましく、600m2/g以上であることが更に好ましく、800m2/g以上であることが一層好ましく、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が上記下限以上であれば、超高周波数領域における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を十分に確保できる。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が上記上限以下であれば、当該繊維状炭素ナノ構造体を用いて得られる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を含む電磁波シールド層の成形性を向上させることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、後述のスーパーグロース法によれば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としての、繊維状炭素ナノ構造体の質量密度は、0.002g/cm3以上であることが好ましく、0.2g/cm3以下であることが好ましい。質量密度が上記上限以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体同士の結びつきが弱くなるので、繊維状炭素ナノ構造体および表面処理繊維状炭素ナノ構造体を均質に分散させ、電磁波シールド性能および電磁波吸収性能に優れた電磁波シールド構造体をより良好に製造することができるからである。また、質量密度が上記下限以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になるからである。
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
そして、繊維状炭素ナノ構造体は、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体の寿命特性を向上させる観点においては、金属不純物の濃度が、5000ppm未満であることが好ましく、1000ppm未満であることがより好ましい。当該金属の不純物は、例えば、繊維状炭素ナノ構造体を調製する際に用いた金属触媒などに起因し得る。
なお、本明細書において、「金属不純物の濃度」は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギー分散型X線分析(EDAX)、気相分解装置およびICP質量分析(VPD、ICP/MS)などにより測定することができる。
−カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体の性状−
また、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)のみからなるものを用いてもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物を用いてもよい。
CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用する場合、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができる。ここで、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、電気および熱に対する高い伝導性に起因して、電磁波シールド構造体の電磁波吸収性能をより向上させることができるからである。また、単層カーボンナノチューブは、一般に、軽量、高強度、高い柔軟性を有するため、例えば、電磁波シールド構造体が備える電磁波シールド層の薄膜化を容易に行うことができるからである。
上記観点からは、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTは、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなるCNTのラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
また、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が1以上20以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体を用いて得られる表面処理繊維状炭素ナノ構造体の分散性が向上し、超高周波数領域の電磁波シールド性能および電磁波吸収性能に優れる電磁波シールド構造体を容易に製造することができるからである。
また、繊維状炭素ナノ構造体中のカーボンナノチューブの含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。更に、繊維状炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブの混合物である場合には、単層カーボンナノチューブの含有割合が、繊維状炭素ナノ構造体100質量%に対して50質量%以上であることが好ましい。
なお、各種カーボンナノチューブの含有割合は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察により求められる個数比率から算出することができる。
また、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体は、t−プロットが上に凸な形状を示すことがより好ましい。
ここで、本明細書において、「t−プロット」とは、窒素ガス吸着法での吸着等温線において、横軸を、相対圧に対応する、窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変更して得られた吸着等温線である(de Boerらによるt−プロット法)。そして、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体についてt-プロットが上に凸な形状を示す場合は、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、繊維状炭素ナノ構造体に含まれるカーボンナノチューブ等に多数の開口が形成されていることを表している。その結果、カーボンナノチューブ等を含む電磁波シールド層を備える電磁波シールド構造体に、超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能をより良好に発揮させることができる。
また、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体は、t−プロットから得られる全比表面積S1が、400m2/g以上であることが好ましく、800m2/g以上であることがより好ましく、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることがより好ましい。また、t−プロットから得られる内部比表面積S2が、30m2/g以上であることが好ましく、540m2/g以下であることが好ましい。S1が上記下限以上であれば、入射した電磁波がカーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体の表面および内部においてより反射し、電磁波シールド構造体に、超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能をより良好に発揮させることができるからである。また、S2が上記下限以上であれば、入射した電磁波がカーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体の内部にてより多重反射し、電磁波シールド構造体に、特に、超高周波数帯における電磁波吸収性能をより良好に発揮させることができるからである。
更に、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体は、上記全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上であることが好ましく、0.30以下であることが好ましい。S2/S1が上記下限以上であれば、入射した電磁波がカーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体の内部にてより多重反射し、電磁波シールド構造体に、特に、超高周波数帯における電磁波吸収性能をより良好に発揮させることができるからである。また、S2/S1が上記上限以下であれば、入射した電磁波がカーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体の表面および内部においてより反射し、電磁波シールド構造体に、超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能をより良好に発揮させることができるからである。
なお、上記t−プロットの解析、全比表面積S1および内部比表面積S2の算出は、例えば、日本ベル株式会社製の比表面積・細孔分布測定装置(製品名「BELSORP(登録商標)−mini」)を用いて行うことができる。
−繊維状炭素ナノ構造体の調製方法−
ここで、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、スーパーグロース法(国際公開第2006/011655号参照)において、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うことで、効率的に製造することができる。具体的には、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物及びキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法である。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
なお、スーパーグロース法により製造した繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTと、導電性を有する非円筒形状の炭素ナノ構造体とから構成されていてもよい。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体には、内壁同士が近接又は接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層又は多層の扁平筒状の炭素ナノ構造体(以下、「グラフェンナノテープ(GNT)」と称することがある。)が含まれていてもよい。
なお、本明細書において「テープ状部分を全長に亘って有する」とは、「長手方向の長さ(全長)の60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%に亘って連続的に又は断続的にテープ状部分を有する」ことを指す。
<<その他の成分>>
電磁波シールド層が更に含み得るその他の成分としては、例えば、分散剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料等の着色剤、発泡剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、軟化剤、粘着付与剤、離型剤、防臭剤、香料等の、用途に応じた既知の添加剤を挙げることができる。
また、電磁波シールド層は、その他の成分として、任意の少量の樹脂を更に含んでいてもよい。ここで、電磁波シールド層が更に含み得る樹脂としては、例えば、後述する絶縁材料の母材となる樹脂として例示されている樹脂が挙げられる。
そして、電磁波シールド層がその他の成分を更に含む場合は、その他の成分の含有割合は、電磁波シールド層の25質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、電磁波シールド層がその他の成分を実質的に含まないことが一層好ましい。
なお、本明細書において、「実質的に含まない」とは、電磁波シールド層中のその他の成分の含有割合が1質量%未満であることを意味する。
なお、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を十分に活用することで、電磁波シールド性能および電磁波吸収性能に優れ、且つ軽量な電磁波シールド構造体を容易に製造する観点からは、本発明の電磁波シールド構造体は、電磁波シールド層の75質量%以上が表面処理繊維状炭素ナノ構造体であることが好ましく、90質量%以上が表面処理繊維状炭素ナノ構造体であることがより好ましく、99質量%以上が表面処理繊維状炭素ナノ構造体であることが更に好ましい。また、特に、電磁波シールド層の電磁波シールド性能を一層高める観点からは、電磁波シールド層が、表面処理繊維状炭素ナノ構造体以外の、製造時に不可避的に混入する不純物以外のその他の成分(樹脂など)を実質的に含まない炭素膜であることが一層好ましい。
[表面処理繊維状炭素ナノ構造体の性状]
−酸素元素および窒素元素の存在量−
本発明の電磁波シールド層に含まれる表面処理繊維状炭素ナノ構造体は、表面において、酸素元素の存在量(酸素元素量)が炭素元素の存在量の0.03倍以上であることが好ましく、0.1倍以上であることがより好ましく、0.18倍以上であることが更に好ましく、0.2倍以上であることが一層好ましく、0.4倍以下であることが好ましく、0.35倍以下であることがより好ましく、0.3倍以下であることが更に好ましい。
或いは、本発明の電磁波シールド層に含まれる表面処理繊維状炭素ナノ構造体は、表面において、窒素元素の存在量(窒素元素量)が炭素元素の存在量の0.005倍以上であることが好ましく、0.015倍以上であることがより好ましく、0.2倍以下であることが好ましく、0.15倍以下であることがより好ましい。
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面における酸素元素量および/または窒素元素量が上記下限以上であれば、意外なことに、電磁波シールド構造体の、超高周波数帯における電磁波吸収性能を更に向上することができるからである。また、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面における酸素元素量および/または窒素元素量が上記上限以下であれば、電磁波シールド構造体の、電磁波シールド性能を良好に維持し得るからである。
なお、表面処理繊維状炭素ナノ構造体は、上述した酸素元素量および窒素元素量の少なくとも一方を満たすことが好ましく、少なくとも上述した酸素元素量を満たすことがより好ましく、上述した酸素元素量および窒素元素量の両方を満たすことが更に好ましい。
つまり、表面処理繊維状炭素ナノ構造体は、表面において、酸素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.03倍以上0.3倍以下であること、または、窒素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.005倍以上0.2倍以下であることの少なくとも一方を満たすことが好ましく;少なくとも酸素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.03倍以上0.3倍以下であることがより好ましく;酸素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.03倍以上0.3倍以下であり、且つ、窒素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.005倍以上0.2倍以下であることが更に好ましい。酸素元素量および窒素元素量が上記範囲内であれば、電磁波シールド構造体の、超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能をより良好なレベルで両立することができるからである。
そして、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の種々の好適な性状は、表面における各元素の存在量以外については、基本的に、上述した繊維状炭素ナノ構造体の種々の好適な性状と同様とすることができる。
なお、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面上における、酸素元素量および/または窒素元素量は、例えば、後述する表面処理方法において、表面処理時間、処理時に印加する圧力および電圧などの処理条件を調節することにより所望の範囲に制御することができる。ここで、一般に、表面処理時間を長くすること、印加圧力を大きくすること、および/または、供給電力を大きくすることに応じて、酸素元素量および窒素元素量が増大する傾向にある。その反面で、これらに起因して、表面処理に要する時間およびコストが増大する傾向にある。
ここで、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面における炭素元素、酸素元素および窒素元素の存在量の測定方法は実施例で詳述するが、端的には、X線光電子分光分析装置により、JIS Z 8073に準ずる標準状態のもと、AlKαモノクロメータX線をX線源としたX線回折を実施して取得したX線回折パターンに基づいて上記各元素の存在量を得ることができる。
なお、実施例では、電磁波シールド層の形成時に用いた材料としての表面処理繊維状炭素ナノ構造体につき、上記各元素の存在量を測定したものとして記載した。しかし、電磁波シールド層に含まれる表面処理繊維状炭素ナノ材料を、既知の適切な方法により単離して、得られた表面処理繊維状炭素ナノ材料について実施例に記載の方法に従って測定しても、同様の結果が得られる。
なお、上述したような表面状態を有する表面処理繊維状炭素ナノ構造体としては、市販品を用いてもよい。或いは、例えば、上述した方法に従って繊維状炭素ナノ構造体を調製し、更に、表面処理を施すことにより、上述したような表面状態を有する表面処理繊維状炭素ナノ構造体を調製してもよい。
[表面処理方法]
そして、繊維状炭素ナノ構造体の表面を処理する方法としては、特に限定されないが、プラズマ処理および/またはオゾン処理による方法が好ましい。これらの処理は単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。任意の雰囲気下でプラズマ処理を行うことにより、例えば、得られる表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面における、酸素、窒素等の各種元素量を増大させることができる。また、オゾン処理を行うことにより、得られる表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面における酸素元素量を増大させることができる。
−プラズマ処理−
繊維状炭素ナノ構造体のプラズマ処理は、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素、二酸化窒素、酸素、大気等を含む容器内に表面処理対象である繊維状炭素ナノ構造体を配置し、グロー放電により生ずるプラズマに繊維状炭素ナノ構造体を曝すことにより行なうことができる。なお、プラズマ発生の放電形式としては、(1)直流放電および低周波放電、(2)ラジオ波放電、(3)マイクロ波放電などを用いることができる。
プラズマ処理の条件は、特に限定されるものではないが、処理強度は、プラズマ照射面の単位面積当たりのエネルギー出力が0.05W/cm2〜2.0W/cm2であることが好ましく、ガス圧力は、5Pa〜150Paが好ましい。処理時間は、適時選択すればよいが、通常、1分間〜300分間、好ましくは10分間〜180分間、より好ましくは15分間〜120分間である。
−オゾン処理−
繊維状炭素ナノ構造体のオゾン処理は、繊維状炭素ナノ構造体をオゾンに曝露することによって行われる。曝露方法は、オゾンが存在する雰囲気に繊維状炭素ナノ構造体を所定時間保持する方法、繊維状炭素ナノ構造体にオゾン気流を所定時間接触させる方法など、適宜の方法で行うことができる。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体に接触させるオゾンは、空気、酸素ガス、または酸素添加空気等の酸素含有気体をオゾン発生装置に供給することによって発生させることができる。得られたオゾン含有気体を、繊維状炭素ナノ構造体を保持してある容器、処理槽等に導入して、オゾン処理を行う。具体的には、オゾン処理は、例えば、適切な溶媒中に表面処理対象である繊維状炭素ナノ構造体を分散させてなる分散液を収容する処理槽に対して、オゾンを供給して処理槽内のオゾン濃度が0.3mg/l〜20mg/lとなるようにした反応場を生成して、温度0℃〜80℃で、通常、1分間〜100時間にわたり反応を行うことができる。
なお、オゾン含有気体中のオゾン濃度、曝露時間、曝露温度などの諸条件は、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面における所望の酸素元素量を考慮して適宜定めることができる。
<<電磁波シールド層の厚み>>
そして、電磁波シールド層は、厚みが500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることが更に好ましく、1μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましい。電磁波シールド層の厚みが上記下限以上であれば、特に、入射した電磁波が電磁波シールド層内を通過する距離が増大するとともに、電磁波シールド層内部まで侵入した電磁波が多重反射されるため、超高周波数帯における電磁波吸収性能をより高めることができるからである。また、電磁波シールド層の厚みが上記上限以下であれば、電磁波シールド層の良好な電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を確保しつつ薄膜化することにより、汎用性を高めることができるからである。
なお、電磁波シールド層の厚みは、例えば、後述する工程(A)において使用する、表面処理繊維状炭素ナノ構造体およびその他の成分の量を適宜変更することにより調節することができる。
<他の構成部材>
本発明の電磁波シールド構造体が電磁波シールド層以外に更に備え得る他の構成部材としては、例えば、絶縁支持層が挙げられる。そして、本発明の電磁波シールド構造体においては、例えば、絶縁支持層等の他の構成部材が、上述の電磁波シールド層に直接的または間接的に接着されている構造とすることができる。電磁波シールド構造体が電磁波シールド層に直接的または間接的に接着されている絶縁支持層等の他の構成部材を更に備えることにより、超高周波数帯における高い電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を確保しつつ耐久性を与えることができる。従って、電磁波シールド構造体の薄膜化がより容易になり、ハンドリング性がより良好になる。
なお、本発明の電磁波シールド構造体が他の構成部材として絶縁支持層を更に備える場合は、絶縁支持層は、例えば、電磁波が入射する側の最表面、または、電磁波が入射する側とは反対側の最表面に備えることができる。絶縁支持層を上記の通りに配置すれば、電磁波シールド層が有する高い電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を十分に活用しつつ、電磁波シールド構造体の耐久性をより向上することができる。
<<絶縁支持層>>
[絶縁材料]
絶縁支持層を構成する絶縁材料としては、特に限定されることなく、例えば、電磁波シールド構造体の用途に応じた既知の樹脂および充填剤を用いることができる。具体的には、例えば、絶縁性を有する樹脂のみを用いてもよく、絶縁性を有する樹脂に対して任意の絶縁性を有する充填剤を混合した絶縁材料を用いてもよい。中でも、本発明の電磁波シールド構造体が絶縁支持層を更に備える場合は、当該構造体に良好な柔軟性および耐久性を与える観点から、絶縁支持層が、少なくとも絶縁性を有する樹脂を含むことが好ましい。
なお、本発明において、絶縁支持層、絶縁材料などの「絶縁性」を有する物質は、JIS K 6911に準拠して測定される体積抵抗率が1011Ω・cm以上であることが好ましい。
また、本発明において、ゴムおよびエラストマーは、「樹脂」に含まれるものとする。
−樹脂−
母材となる樹脂としては、例えば、エポキシ化天然ゴムを含む天然ゴム、ジエン系合成ゴム(ブタジエンゴム、エポキシ化ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、(水素化)アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、クロロプレンゴム、ビニルピリジンゴム、ブチルゴム、クロロブチルゴム、ポリイソプレンゴム)、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、ポリスルフィドゴム、フッ素樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、セルロース系樹脂(セルロースアセテート、セルロースニトレート、セルロースアセテートブチレート等)、カゼインプラスチック、大豆タンパクプラスチック、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ系樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、多官能基エポキシ樹脂、脂環状エポキシ樹脂等)、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン系樹脂(ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、AS(アクリロニトリルスチレン)樹脂、ポリスチレン等)、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル等の有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、オレフィン系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を含むポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性および熱硬化性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂、変性ポリフェフェニレンエーテル樹脂を含むポリフェニレンエーテル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ならびにポリエーテルエーテルケトン樹脂、などが挙げられる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
上述した中でも、絶縁支持層に含まれる樹脂としては、電気絶縁性に優れ、強度および耐熱性が高い、ポリイミド樹脂が好ましい。
−絶縁性充填剤−
さらに、絶縁性を有する充填剤(絶縁性充填剤)としては、特に限定されることなく、既知の無機充填剤または有機充填剤であって、絶縁性を有する充填剤を用いることができる。そのような絶縁性充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、クレー、酸化チタン、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維などが挙げられる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
<接着方法>
電磁波シールド構造体における、電磁波シールド層同士、並びに/或いは、電磁波シールド層と絶縁支持層等の他の構成部材とを直接的に接着する方法としては、特に制限されることなく、ホットラミネート加工法および乾燥法等が挙げられる。具体的には、ホットラミネート加工法では、例えば、高温下にて溶解した絶縁支持層成分等による粘着力を利用して、対象物を直接的に積層接着させることができる。また、乾燥法では、例えば、絶縁支持層等の他の構成部材上に、電磁波シールド層を形成するための液状組成物を付与し、任意の方法で乾燥することにより、電磁波シールド層を形成しつつ電磁波シールド層等を直接的に積層接着させることができる。なお、液状組成物の乾燥は、自然乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥等を単独で、または任意に組み合わせて行うことができる。
また、電磁波シールド構造体における、電磁波シールド層同士、並びに/或いは、電磁波シールド層と絶縁支持層等の他の構成部材とを間接的に接着する方法としては、例えば、接着剤を用いたコールドラミネート加工法が挙げられる。具体的には、コールドラミネート加工法では、例えば、予め任意の方法で得た電磁波シールド層または絶縁支持層等の他の構成部材の表面に任意の接着剤を付与し、加圧することにより、対象物を、接着剤を介して間接的に積層接着させることができる。ここで、接着剤としては、例えば、絶縁支持層を構成する成分と同様の成分とすることができる。また、電磁波シールド層は、例えば、電磁波シールド層を形成するための液状組成物をろ過することにより形成することができる。
<<電磁波シールド構造体の厚み>>
そして、電磁波シールド構造体の厚みは、電磁波シールド構造体が電磁波シールド層の単層自体である場合には、電磁波シールド層について上述した好適な厚みと同様であることが好ましい。
また、電磁波シールド構造体が電磁波シールド層を複数備え、絶縁支持層を備えない場合であっても、電磁波シールド構造体の厚み(つまり、電磁波シールド層が積層された合計厚み)としては、電磁波シールド層について上述した好適な厚みと同様であることが好ましい。
更に、電磁波シールド構造体が電磁波シールド層および絶縁支持層等の他の構成部材を備える場合は、電磁波シールド構造体の厚みとしては、500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが一層好ましく、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることが更に好ましい。電磁波シールド構造体の厚みが上記下限以上であれば、電磁波シールド層について上述した理由により、超高周波数帯における電磁波吸収性能をより高めることができると共に、耐久性および構造体としての自立性もより向上させることができるからである。また、電磁波シールド構造体の厚みが上記上限以下であれば、主に電磁波シールド層が有する良好な電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を確保しつつ薄膜化することにより、構造体としての汎用性を高めることができるからである。
(電磁波シールド構造体の製造方法)
本発明の電磁波シールド構造体の製造方法は、上述したいずれかの電磁波シールド構造体を製造する方法であって、繊維状炭素ナノ構造体の表面が処理されてなる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を使用し、単位面積あたりの重量(目付量)が所定範囲である電磁波シールド層を形成する工程(A)を含み、上記工程(A)が、溶媒中に前記表面処理繊維状炭素ナノ構造体を分散させて分散液を得る工程(A−2)と、上記分散液から上記溶媒を除去して電磁波シールド層を形成する工程(A−3)とを含むことを特徴とする。また、本発明の電磁波シールド構造体の製造方法が含む上記工程(A)は、上記工程(A−2)および(A−3)に加え、例えば、繊維状炭素ナノ構造体の表面をプラズマ処理および/またはオゾン処理して表面処理繊維状炭素ナノ構造体を得る工程(A−1)等のその他の工程を更に含んでいてもよい。そして、本発明の電磁波シールド構造体の製造方法に従って得られた電磁波シールド構造体は、上記所定の電磁波シールド層を、上記所定の分散液から溶媒を除去することにより形成しているため、例えば、30GHz以上のミリ波に対して優れた電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を発揮し、電磁波のノイズ成分を良好に遮蔽させることができる。
<工程(A)>
工程(A)では、繊維状炭素ナノ構造体の表面が処理されてなる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を使用して、単位面積あたりの重量が0.5g/m2以上30g/m2以下である電磁波シールド層を形成する。また、工程(A)で電磁波シールド層を形成するに際しては、分散液を得る工程(A−2)と、当該分散液から溶媒を除去して電磁波シールド層を形成する工程(A−3)とを経る。更に、工程(A)では、例えば、上記工程(A−2)および(A−3)に先立ち、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を得る工程(A−1)を経てもよい。このように、分散液から溶媒を除去して、所定の成分を有する電磁波シールド層を所定の目付量で形成すれば、電磁波シールド層の均一性を高め、電磁波シールド構造体の超高周波数帯における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を更に高め得る。
<<工程(A−1)>>
任意の工程(A−1)では、繊維状炭素ナノ構造体の表面をプラズマ処理および/またはオゾン処理して表面処理繊維状炭素ナノ構造体を得る。つまり、工程(A−1)では、プラズマ処理により表面処理繊維状炭素ナノ構造体を得てもよく、オゾン処理により表面処理繊維状炭素ナノ構造体を得てもよく、プラズマ処理およびオゾン処理を併用して表面処理繊維状炭素ナノ構造体を得てもよい。
ここで、プラズマ処理およびオゾン処理としては、電磁波シールド層の段落において上述したプラズマ処理およびオゾン処理についてと同様の好適条件とすることができる。
<<工程(A−2)>>
工程(A−2)では、溶媒中に表面処理繊維状炭素ナノ構造体を分散させて分散液を得る。また、工程(A−2)で分散液を得るに際しては、例えば、樹脂および添加剤などの、表面処理繊維状炭素ナノ構造体以外の任意のその他の成分を溶媒中に更に分散させてもよい。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体としては、市販品を用いてもよいし、電磁波シールド層の段落において上述した繊維状炭素ナノ構造体の調製方法と同様の方法で調製した繊維状炭素ナノ構造体を用いてもよい。また、繊維状炭素ナノ構造体および表面処理繊維状炭素ナノ構造体の好適な種類、性状、調製方法に関しても、電磁波シールド層の段落において上述した繊維状炭素ナノ構造体および表面処理繊維状炭素ナノ構造体についてと同様の好適条件とすることができる。
更に、繊維状炭素ナノ構造体の表面を処理する方法に関しても、例えば、上記工程(A−1)に従った表面処理方法を施すことができる。
また、任意で使用し得るその他の成分としては、特に限定されることなく、電磁波シールド層の段落において上述したその他の成分と同様の、既知の添加剤を挙げることができる。具体的な一例としては、例えば、分散液の調製に一般に使用される分散剤の例として、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。また、その他の成分としては、特に限定されることなく、例えば、上述した絶縁材料の母材となる樹脂として例示されている物と同様の既知の樹脂を挙げることもできる。
なお、樹脂および添加剤は、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の分散性を損なわない範囲にて、任意の量を、任意のタイミングで溶媒中に投入すればよい。例えば、その他の成分の量は、電磁波シールド層の段落において上述したその他の成分の含有割合に従って決定することができる。
[溶媒]
溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系極性有機溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;などを用いることができる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。上述した中でも、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させる観点からは、溶媒としては、メチルエチルケトンが好ましい。
[分散方法]
そして、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に分散させる方法としては、特に限定されることなく、従来公知の分散装置を用いた一般的な分散方法を採用することができる。ここで、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高める観点からは、以下に詳細に説明するキャビテーション効果が得られる分散処理または解砕効果が得られる分散処理に供して分散液を調製することが好ましい。また、分散処理に先立って、スターラー等を用いて、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に予備分散させてもよい。
−キャビテーション効果が得られる分散処理−
キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。この分散方法を用いることにより、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができる。なお、キャビテーション効果が得られる分散処理は、50℃以下の温度で行なうことがより好ましい。溶媒の揮発による濃度変化が抑制されるからである。
ここで、キャビテーション効果が得られる分散処理としては、具体的には、超音波による分散処理、ジェットミルによる分散処理、高せん断撹拌による分散処理等が挙げられる。これらの分散処理は一つのみを行なってもよく、複数の分散処理を組み合わせて行なってもよい。そして、キャビテーション効果が得られる分散処理には、例えば、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、高せん断撹拌装置が好適に用いられる。これらの装置は従来公知のものを使用すればよい。
超音波ホモジナイザーを用いる場合には、予備分散液または分散する前の混合液に対し、超音波ホモジナイザーにより超音波を照射すればよい。照射する時間は、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の濃度および分散程度等により適宜設定すればよい。
また、ジェットミルを用いる場合も、各種条件は、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の濃度および分散程度等により適宜設定すればよいが、例えば、処理回数としては1回〜100回が好ましい。また、圧力は20MPa〜250MPaが好ましく、温度は15℃〜50℃が好ましい。ジェットミル分散装置としては高圧湿式ジェットミルが好適であり、具体的には、「ナノメーカー(登録商標)」(アドバンスト・ナノ・テクノロジィ社製)、「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、「ナノヴェイタ」(吉田機械興業社製)、「ナノジェットパル(登録商標)」(常光社製)等が挙げられる。
さらに、高せん断撹拌を用いる場合には、予備分散液または分散する前の混合液に対し、高せん断撹拌装置により撹拌およびせん断を加えればよい。旋回速度は速ければ速いほどよい。例えば、運転時間(機械が回転動作をしている時間)は3分間〜4時間が好ましく、周速は20m/s〜50m/sが好ましく、温度は15℃〜50℃が好ましい。高せん断撹拌装置としては、例えば、「エバラマイルダー」(荏原製作所社製)、「キャビトロン」(ユーロテック製)、「DRS2000」(IKA製)等に代表される攪拌装置;「クレアミックス(登録商標)CLM−0.8S」(エム・テクニック社製)に代表される攪拌装置;「TKホモミキサー」(特殊機化工業社製)に代表されるタービン型撹拌機;「TKフィルミックス」(特殊機化工業社製)に代表される攪拌装置等が挙げられる。
−解砕効果が得られる分散処理−
解砕効果が得られる分散処理では、予備分散液または分散する前の混合液にせん断力を与えて表面処理繊維状炭素ナノ構造体を解砕・分散させ、更に、背圧を負荷し、また必要に応じ、冷却することで、気泡の発生を抑制しつつ、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に均一に分散させることができる。ここで、解砕効果が得られる分散処理は、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を均一に分散できることは勿論、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理に比べ、気泡が消滅する際の衝撃波による表面処理繊維状炭素ナノ構造体の損傷を抑制することができる点で有利である。加えて、表面処理繊維状炭素ナノ構造体への気泡の付着や、気泡の発生によるエネルギーロスを抑制して、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を均一かつ効率的に分散させることができる点でも有利である。
ここで、背圧の負荷は、予備分散液または分散する前の混合液の流れに負荷をかけることで実施でき、例えば、多段降圧器を分散器の下流側に配設することにより、予備分散液または分散する前の混合液に所望の背圧を負荷することができる。なお、予備分散液または分散する前の混合液に背圧を負荷する場合、負荷した背圧は、大気圧まで一気に降圧させてもよいが、多段階で降圧することが好ましい。多段降圧器により多段階で降圧することで、最終的に表面処理繊維状炭素ナノ構造体を大気圧に開放した際に、分散液中に気泡が発生するのを抑制できるからである。
上記の各種分散処理は、単独で行ってもよく、任意に組み合わせて行ってもよい。
中でも、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を含む分散液を調製する際の分散処理としては、細管流路を備える分散処理装置を使用し、予備分散液を細管流路に圧送して、予備分散液にせん断力を与えることで繊維状炭素ナノ構造体を分散させる分散処理が好ましい。予備分散液を細管流路に圧送して、予備分散液にせん断力を与えることで繊維状炭素ナノ構造体を分散させれば、繊維状炭素ナノ構造体の損傷の発生を抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができる。
以上のような構成を有する分散システムとしては、例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)などがある。そして、解砕効果が得られる分散処理は、このような分散システムを用い、分散条件を適切に制御することで、実施することができる。
<<工程(A−3)>>
工程(A−3)では、上記の通り得られた分散液から溶媒を除去して電磁波シールド層を形成する。ここで、分散液から溶媒を除去する方法としては、特に制限されることなく、公知の方法を用いることができるが、均一な電磁波シールド層を容易に形成する観点からは、分散液をろ過および/または乾燥する方法が好ましい。そして、このようにして形成された電磁波シールド層が、通常、そのまま電磁波シールド構造体となる。
[ろ過]
工程(A−3)では、分散液をろ過することで溶媒を除去し、電磁波シールド層を形成することが好ましい。特に、電磁波シールド層を後述する他の構成部材と積層させることなく単独で形成し、電磁波シールド層を単独膜として得たい場合には、製造の容易性の観点から、分散液中の溶媒をろ過により除去することが好ましい。
ここで、ろ過の種類としては、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過等が挙げられるが、電磁波シールド層中の表面処理繊維状炭素ナノ構造体を損傷させることなく、且つ迅速に層を形成する観点からは、減圧ろ過が好ましい。また、ろ材としては、表面処理繊維状炭素ナノ構造体を良好に分離し得る所望の目開きを有するガラス繊維フィルター、メンブレンフィルター、ろ過板、等の多孔質材を用いることができる。なお、時間、圧力、回転数等の種々のろ過条件は、形成される電磁波シールド層が所定の目付量を有していれば特に限定されず、電磁波シールド層の所望の性状に応じて適宜選択すればよい。
そして、分散液をろ過することにより得られた電磁波シールド層は、層中で表面処理繊維状炭素ナノ構造体が損傷されることなく略均一に分散して存在し、所定の目付量で形成されているため、超高周波数帯において、より優れた電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を発揮することができると考えられる。
[乾燥]
また、工程(A−3)では、上記ろ過に替えて、または、ろ過と併用して、好ましくは、ろ過の後に、分散液を乾燥することで溶媒を除去し、電磁波シールド層を形成することも好ましい。特に、電磁波シールド層を、絶縁支持層等の任意の他の構成部材と積層させて形成し、電磁波シールド層と他の構成部材との積層膜として得たい場合には、製造の容易性の観点から、分散液を他の構成部材上に既知の手法で付与し、溶媒を乾燥除去させることが好ましい。
ここで、乾燥方法の種類としては、上述の通り、自然乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥等が挙げられ、これらを単独で、または組み合わせて行うことができる。中でも、電磁波シールド層中の表面処理繊維状炭素ナノ構造体を損傷させることなく迅速に層を形成する観点からは、減圧乾燥が好ましい。なお、時間、温度、圧力等の種々の乾燥条件は、形成される電磁波シールド層が所定の目付量を有していれば特に限定されず、電磁波シールド層の所望の性状に応じて適宜選択すればよい。
そして、分散液を乾燥することにより得られた電磁波シールド層では、層中で表面処理繊維状炭素ナノ構造体が損傷されることなく略均一に分散して存在し、所定の目付量で形成されているため、超高周波数帯において、より優れた電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を発揮することができると考えられる。
なお、上記ろ過および乾燥は、いずれか一方のみを行ってもよく、例えば、ろ過により粗膜を形成した後に、乾燥により層を形成するなど、ろ過と乾燥とを両方行ってもよく、ろ過と乾燥とを両方行うことが好ましい。
<その他の工程>
本発明の電磁波シールド構造体の製造方法が任意で更に含み得るその他の工程としては、特に限定されることなく、例えば、電磁波シールド構造体の段落において上述した絶縁支持層等の他の構成部材を準備する工程;上記他の構成部材と電磁波シールド層とを接着する工程;形成された電磁波シールド層の形状を整える工程;等が挙げられる。
<<他の構成部材を準備する工程>>
他の構成部材を準備する工程では、例えば、電磁波シールド構造体の段落において上述した絶縁支持層等の他の構成部材と同様の任意の他の構成部材を準備することができる。他の構成部材の準備に際しては、市販品を購入してもよいし、他の構成部材が絶縁支持層である場合には、例えば、電磁波シールド構造体の段落において上述した絶縁材料を用いて既知の方法で形成してもよい。
<<接着する工程>>
また、他の構成部材と電磁波シールド層とを接着する工程では、例えば、電磁波シールド構造体の段落において上述した接着方法と同様の、直接的に接着する方法、間接的に接着する方法等を用いることができる。
なお、他の構成部材上に直接的に電磁波シールド層を形成しない場合、電磁波シールド層と他の構成部材との積層には、例えば、他の構成部材を構成する成分と同様の成分からなる接着剤を用いてもよい。また、電磁波シールド層と他の構成部材としての絶縁支持層とを積層する際には、絶縁支持層は、電磁波が入射する側とは反対側の最表面に備えることが好ましい。絶縁支持層を上記の通りに配置すれば、電磁波シールド層が有する高い電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を十分に活用しつつ、電磁波シールド構造体の耐久性をより向上することができるからである。
<<形状を整える工程>>
そして、電磁波シールド層の形状を整える工程では、例えば、工程(A)に続いて、打ち抜き成形機、押出機、射出成形機、圧縮機、ロール機等を用いることにより、形成された電磁波シールド層を所望の形状に調節することができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積および平均繊維径;表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面における酸素元素および窒素元素の存在量;電磁波シールド層の目付量および厚み;並びに、電磁波シールド構造体の電磁波吸収性能および電磁波シールド性能は、それぞれ以下の方法を使用して測定、評価した。
<BET比表面積>
繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積は、以下の通り測定した。
全自動比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、製品名「Macsorb(登録商標)HM model−1210」)専用のセルを、温度110℃、5時間以上の熱処理で十分乾燥させた後、繊維状炭素ナノ構造体20mgを秤量し、セル内に入れた。その後、セルを上記測定装置の所定の位置に備え付け、自動操作によりBET比表面積を測定した。
なお、上記測定装置の測定原理は、液体窒素の77Kでの吸脱着等温線を測定し、測定した吸脱着等温曲線から、BET(Brunauer−Emmett−Teller)法にて比表面積を測定する方法に従うものである。
<平均繊維径>
繊維状炭素ナノ構造体の平均繊維径は、以下の通り測定した。
繊維状炭素ナノ構造体0.1mgと、エタノール3mlとを、10mlスクリュー管瓶中に秤量した。次に、超音波洗浄器(BRANSON社製、製品名「5510J−DTH」)にて、振動出力:180W、温度:10℃〜40℃、時間:30分間の条件で、スクリュー管瓶ごと超音波処理を行い、繊維状炭素ナノ構造体をエタノール中に均一分散させた繊維径測定用分散液を得た。続いて、得られた繊維径測定用分散液50μlを、透過型電子顕微鏡用のマイクログリッド(応研商事株式会社製、製品名「マイクログリッド タイプA STEM 150 Cuグリッド」)に滴下した後、1時間以上静置し、更に、温度25℃で5時間以上真空乾燥し、マイクログリッド上に繊維状炭素ナノ構造体を保持させた。そして、繊維状炭素ナノ構造体を保持させたマイクログリッドを透過型電子顕微鏡(株式会社トプコンテクノハウス製、製品名「EM−002B」)に設置し、150万倍の倍率で、繊維状炭素ナノ構造体の観察を行った。
なお、繊維状炭素ナノ構造体の観察は、マイクログリッド上のランダムな位置で、10か所行った。そして、1か所あたり10本の繊維状炭素ナノ構造体をランダムに選択し、各々の最短方向の直径を計測して、合計100本についての個数平均直径の値を、繊維状炭素ナノ構造体の平均繊維径(nm)として算出した。
なお、上記の通り測定した平均繊維径は、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の平均繊維径としても維持されていた。
<酸素元素および窒素元素の存在量>
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面における酸素元素の存在量(酸素元素量)および窒素元素の存在量(窒素元素量)は、以下の通り測定した。
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面において、炭素元素の存在量(炭素元素量)に対して、酸素元素量および窒素元素量がそれぞれ何倍であるかを求めた。具体的には、表面処理繊維状炭素ナノ構造体をカーボン両面テープに固定し、試験片とした。次に、得られた試験片に対して、X線光電子分光分析装置(XPS、KRATOS社製、製品名「AXIS ULTRA DLD」)を用いて、150W(加速電圧:15kV、電流値:10mA)のAlKαモノクロメータX線を照射し、試験片表面と検出器方向の角度θ=90°にて、定性分析のためワイドスペクトルを測定後、定量分析のための各元素のナロースペクトルを測定した。そして、解析アプリケーション(KRATOS社製、製品名「Vision Processing」)を用いて、得られたスペクトルからピーク面積を積分し、元素別の感度係数で補正することにより、炭素元素量に対する酸素元素量(倍)および窒素元素量(倍)をそれぞれ算出した。
なお、表面処理を施さなかった比較例については、繊維状炭素ナノ構造体の表面における酸素元素量および窒素元素量を、上記同様の方法に従って測定した。
<目付量>
電磁波シールド構造体における電磁波シールド層の目付量(g/m2)は、以下の式(1):
目付量=乾燥後の電磁波シールド層の重量(g)
/乾燥後の電磁波シールド層の面積(m2) ・・・(1)
に従って測定した。
<厚み>
電磁波シールド層の厚みは、以下の通り測定した。
マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製、製品名「293シリーズ、MDH−25」)を用いて、電磁波シールド層について10点の厚さを測定し、その個数平均値を電磁波シールド層の厚み(μm)とした。
また、電磁波シールド層が絶縁支持層上に形成されている電磁波シールド構造体を製造した場合は、まず、上記同様の方法に従って電磁波シールド構造体の総厚みを測定し、当該総厚みから絶縁支持層の厚みを差し引くことにより、電磁波シールド層の厚み(μm)を求めた。
<電磁波吸収性能>
電磁波シールド構造体の電磁波吸収性能は、入射した電磁波の反射減衰量(dB)を測定することにより評価した。ここで、本明細書において、「反射減衰量」とは、入射した電磁波が全反射したときの反射量に対する実際の反射量の減少量であり、電磁波が電磁波シールド構造体の内部で吸収される電磁波吸収量に相当する。
具体的には、製造した電磁波シールド構造体を試験体として、電磁波シールド構造体の一方の側に導電金属板を取り付けた。ここで、導電金属板を取り付ける面は、実施例1〜5および比較例2〜3では電磁波シールド層の任意の一方の側とし、実施例6〜7および比較例1、4〜5では絶縁支持層側とした。そして、電磁波シールド構造体の上記導電金属板が取り付けられていない側に電磁波が入射するように、電磁波シールド構造体を測定システム(KEYCOM社製、製品名「Model No.DPS10」)に設置した。次に、上記測定システム、ベクトルネットワークアナライザ(アンリツ社製、「ME7838A」)、並びに、アンテナ(部品番号「RH15S10」および「RH10S10」)を用いて、フリースペース(自由空間)法、周波数60GHz〜90GHzにて、ワンポートでのS(Scattering)パラメータ(S11)を測定した。
表1には、周波数60GHz、75GHz、および90GHzの電磁波を照射した際のS11パラメータを用いて、下記式(2)に従って算出した反射減衰量(dB)を示す。反射減衰量が大きいほど、電磁波吸収性能に優れることを示す。
反射減衰量(dB)=20log|S11| ・・・(2)
<電磁波シールド性能>
電磁波シールド構造体の電磁波シールド性能は、入射した電磁波の透過減衰量(dB)を測定することにより評価した。ここで、本明細書において、「透過減衰量」とは、入射した電磁波の全てが電磁波シールド構造体を透過したときの透過量に対する実際の透過量の減少量であり、電磁波が電磁波シールド構造体の内部で吸収される電磁波吸収量と、電磁波が電磁波シールド構造体の表面で反射する電磁波反射量との合計に相当する。
具体的には、製造した電磁波シールド構造体について、上記電磁波吸収性能の測定と同様の条件を採用し、S21パラメータを測定した。
表1には、周波数60GHz、75GHz、および90GHzの電磁波を照射した際のS21パラメータを用いて、下記式(3)に従って算出した透過減衰量(dB)を示す。透過減衰量が大きいほど、電磁波シールド性能に優れることを示す。
透過減衰量(dB)=20log|S21| ・・・(3)
(実施例1)
<電磁波シールド層の形成>
電磁波シールド層の形成に際しては、まず、電磁波シールド層の形成に用いられる液体組成物(分散液)を調製した。そして、当該分散液から溶媒を除去することにより、電磁波シールド層を形成した。また、当該分散液の調製に際しては、まず、繊維状炭素ナノ構造体を調製し、調製した繊維状炭素ナノ構造体の表面を処理して得られる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を用いた。
[繊維状炭素ナノ構造体の準備]
繊維状炭素ナノ構造体としては、日本国特許公報(特許4,621,896号公報)に記載のスーパーグロース法に従って、カーボンナノチューブ(SGCNT)を準備した。具体的には、以下の条件にてSGCNTを調製した。
炭素化合物:エチレン;供給速度50sccm
雰囲気(ガス)(Pa):ヘリウム/水素混合ガス;供給速度1000sccm
圧力:1大気圧
水蒸気添加量:300ppm
反応温度:750℃
反応時間:10分間
金属触媒:1nm厚の鉄薄膜
基板:シリコンウェハー
なお、得られた繊維状炭素ナノ構造体としてのSGCNTでは、ラマン分光光度計での測定において、単層カーボンナノチューブに特徴的な100cm-1〜300cm-1の低波数領域にラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察された。また、得られたSGCNTでは、透過型電子顕微鏡の観察にて、99%以上が単層カーボンナノチューブ(以下、「SWCNT」と称することがある。)であることを確認した(これ以降、調製したSGCNTを「SWCNT」と呼ぶこととする)。そして、得られたSWCNTについて、上述した方法に従って性状評価を行ったところ、BET比表面積が880m2/g、平均繊維径が3.3nm、平均繊維長が100μm以上であることを確認した。表1にも一部結果を示す。
[表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製]
−プラズマ処理−
上述で得られたSWCNTについて、ガス導入可能な減圧プラズマ装置(株式会社魁半導体製、製品名「YHS−DΦS」)を用い、圧力:40Pa、パワー:200W(単位面積当たりのエネルギー出力:1.28W/cm2)、回転速度:30rpm、大気導入条件下で、0.5時間処理を施すことにより、表面処理繊維状炭素ナノ構造体(表面処理SWCNT)を得た。
そして、上述した方法に従い、表面処理SWCNTの表面における、炭素元素量を基準とした酸素元素量(倍)および窒素元素量(倍)を、それぞれ求めた。結果を表1に示す。
[分散液の調製]
有機溶媒としてのメチルエチルケトンに対して、上述で得られた表面処理SWCNTを濃度が0.2%となるように添加し、マグネチックスターラーで24時間撹拌することにより、表面処理SWCNTの予備分散液を得た。
次いで、直径200μmの細管流路部を有する高圧分散処理部(ジェットミル)に多段圧力制御装置(多段降圧器)を連結した、多段降圧器を有する多段降圧型高圧ホモジナイザー(株式会社美粒製、製品名「BERYU SYSTEM PRO」)に、上記予備分散液を充填した。そして、充填した予備分散液に120MPaの圧力を断続的かつ瞬間的に加えて、上記細管流路部に送り込みながら分散処理を1回行うことにより、表面処理繊維状炭素ナノ構造体および溶媒を含むCNT分散液を得た。
[電磁波シールド層の形成]
多孔質のメンブレンフィルター(目開き:0.1μm、直径:120mm)を備えた減圧ろ過装置を用いて、0.09MPaの条件下にて、上述で得られたCNT分散液90mlをろ過することにより、炭素粗膜を形成した。ろ過終了後、それぞれ100mlのメタノールおよび水を上記減圧ろ過装置に通過させることで、メンブレンフィルター上に形成された炭素粗膜を洗浄し、洗浄後15分間空気を通過させた。次いで、洗浄した炭素粗膜/メンブレンフィルターの積層膜をエタノール中へ浸漬した後に、湿潤状態の炭素粗膜をメンブレンフィルターから剥離して取り出した。そして、取り出した湿潤状態の炭素粗膜を、温度100℃にて、24時間、真空乾燥機中で真空乾燥して液分を除去することにより、単層の電磁波シールド層を得た。得られた電磁波シールド層中における表面処理繊維状炭素ナノ構造体の含有割合は、99.9%超であった。
そして、得られた電磁波シールド層は、上述した測定方法に従えば、表面処理繊維状炭素の目付量が6.3g/m2、厚みが22μmの自立した膜であった。なお、目付量の算出に用いる乾燥後の電磁波シールド層の面積は、上記多孔質のメンブレンフィルターの直径から求めることができる。結果を表1に示す。
[電磁波シールド構造体の製造]
更に、得られた電磁波シールド層を、そのまま電磁波シールド構造体とした。
そして、上述した方法に従って、電磁波シールド構造体について、電磁波吸収性能および電磁波シールド性能を測定、評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製において、大気導入条件下でのプラズマ処理の処理時間を2時間に変更した。また、電磁波シールド層の形成において、ろ過に用いるCNT分散液の量を40mlに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体、表面処理繊維状炭素ナノ構造体、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。得られた電磁波シールド層中における表面処理繊維状炭素ナノ構造体の含有割合は、99.9%超であった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製において、大気導入条件下でのプラズマ処理に替えて、窒素導入条件下でのプラズマ処理に変更した。また、電磁波シールド層の形成において、ろ過に用いるCNT分散液の量を240mlに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体、表面処理繊維状炭素ナノ構造体、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。得られた電磁波シールド層中における表面処理繊維状炭素ナノ構造体の含有割合は、99.9%超であった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例4)
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製において、大気導入条件下でのプラズマ処理に替えて、窒素導入条件下でのプラズマ処理に変更すると共に、処理時間を2時間に変更した。また、電磁波シールド層の形成において、ろ過に用いるCNT分散液の量を400mlに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体、表面処理繊維状炭素ナノ構造体、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。得られた電磁波シールド層中における表面処理繊維状炭素ナノ構造体の含有割合は、99.9%超であった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例5)
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製において、大気導入条件下でのプラズマ処理に替えて、以下に詳述するオゾン処理に変更すると共に、処理時間を24時間に変更した。また、電磁波シールド層の形成において、ろ過に用いるCNT分散液の量を220mlに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体、表面処理繊維状炭素ナノ構造体、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。得られた電磁波シールド層中における表面処理繊維状炭素ナノ構造体の含有割合は、99.9%超であった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
−オゾン処理−
実施例1と同様にして得られたSWCNTについて、メチルエチルケトンを溶媒とするSWCNT分散液を調製して、オゾン発生装置(朝日テクニグラス社製、製品名「ラボ・オゾン−250」)の処理槽内に載置した。そして、処理槽内の温度を25℃、オゾン濃度を0.65mg/lとして、上記SWCNT分散液を撹拌しながら24時間処理を施すことにより、表面処理SWCNTを得た。
(実施例6)
繊維状炭素ナノ構造体の準備において、上述の通り調製したSWCNTに替えて、多層カーボンナノチューブ(以下、「MWCNT」と称することがある。)(Nanocyl社製、商品名「NC7000」、BET比表面積:265m2/g、平均繊維径:10nm、平均繊維長:1.5μm)を用いた。また、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製において、大気導入条件下でのプラズマ処理に替えて、以下に詳述するオゾン処理に変更すると共に、処理時間を48時間に変更した。更に、電磁波シールド層の形成において、上述したろ過に替えて、以下に詳述する乾燥方法を採用した以外は実施例1と同様にして、表面処理繊維状炭素ナノ構造体、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。得られた電磁波シールド層中における表面処理繊維状炭素ナノ構造体の含有割合は、99.9%超であった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
−オゾン処理−
上記MWCNTについて、メチルエチルケトンを溶媒とするMWCNT分散液を調製して、オゾン発生装置(朝日テクニグラス社製、製品名「ラボ・オゾン−250」)の処理槽内に載置した。そして、処理槽内の温度を25℃、オゾン濃度を0.65mg/lとして、上記MWCNT分散液を撹拌しながら48時間処理を施すことにより、表面処理MWCNTを得た。
[電磁波シールド層の形成]
ステンレス製の型枠(直径:120mm、高さ:100mm)の底部に、絶縁支持層としての、直径120mmに切り取ったポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、商品名「カプトン(登録商標)100Hタイプ」、厚み:25μm)を設置した。次に、ポリイミドフィルムを設置した型枠内に、CNT分散液50mlを、ポリイミドフィルムの上から投入した。投入後、48時間以上、CNT分散液を自然乾燥させた。その後、更に、型枠ごと、温度100℃、24時間、真空乾燥機中で真空乾燥して溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルム上に形成された電磁波シールド層、および、ポリイミドフィルム上に電磁波シールド層が形成された電磁波シールド構造体を同時に製造した。なお、目付量の算出に用いる乾燥後の電磁波シールド層の面積は、上記ポリイミドフィルムの直径から求めることができる。
(実施例7)
電磁波シールド層の形成において、上述したろ過に替えて、以下に詳述する乾燥方法を採用した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体、表面処理繊維状炭素ナノ構造体、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。得られた電磁波シールド層中における表面処理繊維状炭素ナノ構造体の含有割合は、99.9%超であった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[電磁波シールド層の形成]
ステンレス製の型枠(直径:120mm、高さ:100mm)の底部に、絶縁支持層としての、直径120mmに切り取ったポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、商品名「カプトン(登録商標)100Hタイプ」、厚み:25μm)を設置した。次に、ポリイミドフィルムを設置した型枠内に、CNT分散液30mlを、ポリイミドフィルムの上から投入した。投入後、48時間以上、CNT分散液を自然乾燥させた。その後、更に、型枠ごと、温度100℃、24時間、真空乾燥機中で真空乾燥して溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルム上に形成された電磁波シールド層、および、ポリイミドフィルム上に電磁波シールド層が形成された電磁波シールド構造体を同時に製造した。なお、目付量の算出に用いる乾燥後の電磁波シールド層の面積は、上記ポリイミドフィルムの直径から求めることができる。
(比較例1)
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製を行わなかった、つまり、得られたSWCNTをそのまま用いた。また、分散液の調製において、以下の通り、SWCNTおよび樹脂を含む予備分散液を得た。そして、電磁波シールド層の形成において、上述したろ過に替えて、以下に詳述する乾燥方法を採用した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[分散液の調製]
有機溶媒としてのメチルエチルケトンに対して、上述で得られた未処理のSWCNTと、その他の成分としてのフッ素樹脂とを、フッ素樹脂100部に対してSWCNTが5部となる割合にて、合計濃度が0.2%となるように添加し、マグネチックスターラーで24時間撹拌することにより、SWCNTおよびフッ素樹脂を含む予備分散液を得た。
次いで、直径200μmの細管流路部を有する高圧分散処理部(ジェットミル)に多段圧力制御装置(多段降圧器)を連結した、多段降圧器を有する多段降圧型高圧ホモジナイザー(株式会社美粒製、製品名「BERYU SYSTEM PRO」)に、上記予備分散液を充填した。そして、充填した予備分散液に120MPaの圧力を断続的かつ瞬間的に加えて、上記細管流路部に送り込みながら分散処理を1回行うことにより、繊維状炭素ナノ構造体、フッ素樹脂および溶媒を含むCNT分散液を得た。
[電磁波シールド層の形成]
ステンレス製の型枠(直径:120mm、高さ:100mm)の底部に、絶縁支持層としての、直径120mmに切り取ったポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、商品名「カプトン(登録商標)100Hタイプ」、厚み:25μm)を設置した。次に、ポリイミドフィルムを設置した型枠内に、上記CNT分散液550mlを、ポリイミドフィルムの上から投入した。投入後、48時間以上、CNT分散液を自然乾燥させた。その後、更に、型枠ごと、温度100℃、24時間、真空乾燥機中で真空乾燥して溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルム上に形成された電磁波シールド層、および、ポリイミドフィルム上に電磁波シールド層が形成された電磁波シールド構造体を同時に製造した。なお、目付量の算出に用いる乾燥後の電磁波シールド層の面積は、上記ポリイミドフィルムの直径から求めることができる。
(比較例2)
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製を行わなかった、つまり、得られたSWCNTをそのまま用いた。また、電磁波シールド層の形成において、ろ過に用いるCNT分散液の量を40mlに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製を行わなかった、つまり、得られたSWCNTをそのまま用いた。また、電磁波シールド層の形成において、ろ過に用いるCNT分散液の量を400mlに変更した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製を行わなかった、つまり、得られたSWCNTをそのまま用いた。また、電磁波シールド層の形成において、上述したろ過に替えて、以下に詳述する乾燥方法を採用した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[電磁波シールド層の形成]
ステンレス製の型枠(直径:120mm、高さ:100mm)の底部に、絶縁支持層としての、直径120mmに切り取ったポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、商品名「カプトン(登録商標)100Hタイプ」、厚み:25μm)を設置した。次に、ポリイミドフィルムを設置した型枠内に、CNT分散液30mlを、ポリイミドフィルムの上から投入した。投入後、48時間以上、CNT分散液を自然乾燥させた。その後、更に、型枠ごと、温度100℃、24時間、真空乾燥機中で真空乾燥して溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルム上に形成された電磁波シールド層、および、ポリイミドフィルム上に電磁波シールド層が形成された電磁波シールド構造体を同時に製造した。なお、目付量の算出に用いる乾燥後の電磁波シールド層の面積は、上記ポリイミドフィルムの直径から求めることができる。
(比較例5)
繊維状炭素ナノ構造体の準備において、上述の通り調製したSWCNTに替えて、MWCNT(Nanocyl社製、商品名「NC7000」、BET比表面積:265m2/g、平均繊維径:10nm、平均繊維長:1.5μm)を用いた。また、表面処理繊維状炭素ナノ構造体の調製を行わなかった、つまり、上記MWCNTをそのまま用いた。更に、電磁波シールド層の形成において、上述したろ過に替えて、以下に詳述する乾燥方法を採用した以外は実施例1と同様にして、CNT分散液、電磁波シールド層および電磁波シールド構造体を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[電磁波シールド層の形成]
ステンレス製の型枠(直径:120mm、高さ:100mm)の底部に、絶縁支持層としての、直径120mmに切り取ったポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、商品名「カプトン(登録商標)100Hタイプ」、厚み:25μm)を設置した。次に、ポリイミドフィルムを設置した型枠内に、CNT分散液50mlを、ポリイミドフィルムの上から投入した。投入後、48時間以上、CNT分散液を自然乾燥させた。その後、更に、型枠ごと、温度100℃、24時間、真空乾燥機中で真空乾燥して溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルム上に形成された電磁波シールド層、および、ポリイミドフィルム上に電磁波シールド層が形成された電磁波シールド構造体を同時に製造した。なお、目付量の算出に用いる乾燥後の電磁波シールド層の面積は、上記ポリイミドフィルムの直径から求めることができる。
Figure 2018066574
表1より、表面処理を行わない未処理の繊維状炭素ナノ構造体を使用し、且つ、目付量が所定範囲外である、比較例1の電磁波シールド層を備える場合は、特に、電磁波吸収性能に顕著に劣り、優れた電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を両立し難いことが分かる。
また、表面処理を行わない未処理の繊維状炭素ナノ構造体を使用し、且つ、目付量を所定範囲内とした、比較例2〜5の電磁波シールド層を備える場合は、比較例1に対して電磁波シールド性能は良好に維持するものの、電磁波吸収性能を十分に向上できないことが分かる。
これに対し、表面が処理されてなる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を使用し、且つ、目付量を0.5g/m2以上30g/m2以下とした、実施例1〜7の電磁波シールド層を備える場合は、超高周波数帯において、電磁波シールド構造体が、優れた電磁波シールド性能および電磁波吸収性能を両立していることがわかる。
本発明によれば、超高周波数帯(特に30GHz以上のミリ波)における電磁波シールド性能および電磁波吸収性能に優れる電磁波シールド構造体、およびその製造方法を提供することができる。

Claims (10)

  1. 繊維状炭素ナノ構造体の表面が処理されてなる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を含み、且つ、単位面積あたりの重量が0.5g/m2以上30g/m2以下である電磁波シールド層を備える、電磁波シールド構造体。
  2. 前記表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面において、
    酸素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.03倍以上0.3倍以下、および/または、
    窒素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.005倍以上0.2倍以下である、請求項1に記載の電磁波シールド構造体。
  3. 前記表面処理繊維状炭素ナノ構造体の表面において、
    前記酸素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.03倍以上0.3倍以下、および、
    前記窒素元素の存在量が炭素元素の存在量の0.005倍以上0.2倍以下である、請求項2に記載の電磁波シールド構造体。
  4. 前記繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁波シールド構造体。
  5. 前記電磁波シールド層の75質量%以上が前記表面処理繊維状炭素ナノ構造体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁波シールド構造体。
  6. 前記電磁波シールド層に直接的または間接的に接着されている絶縁支持層を更に備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁波シールド構造体。
  7. 繊維状炭素ナノ構造体の表面が処理されてなる表面処理繊維状炭素ナノ構造体を使用し、単位面積あたりの重量が0.5g/m2以上30g/m2以下である電磁波シールド層を形成する工程(A)を含み、
    前記工程(A)が、溶媒中に前記表面処理繊維状炭素ナノ構造体を分散させて分散液を得る工程(A−2)と、前記分散液から前記溶媒を除去して電磁波シールド層を形成する工程(A−3)とを含む、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の電磁波シールド構造体の製造方法。
  8. 前記工程(A−3)において、前記分散液をろ過することで前記溶媒を除去することを特徴とする、請求項7に記載の電磁波シールド構造体の製造方法。
  9. 前記工程(A−3)において、前記分散液を乾燥することで前記溶媒を除去することを特徴とする、請求項7または8に記載の電磁波シールド構造体の製造方法。
  10. 前記工程(A)が、前記繊維状炭素ナノ構造体の表面をプラズマ処理および/またはオゾン処理して表面処理繊維状炭素ナノ構造体を得る工程(A−1)を更に含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の電磁波シールド構造体の製造方法。
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