以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
実施の形態1.
図1には、実施の形態1に係る貯湯式給湯機1000の構成が示されている。貯湯式給湯機1000は、給水口101から得た水を加熱して、給湯口102から湯を供給する給湯機である。給水口101は、給水系統に接続される給水端であって、給水系統から給水として市水の供給を受ける。市水は、例えば水道水又は上水である。給湯口102は、例えば蛇口及びシャワー等の給湯栓に代表される温水利用箇所に接続される給湯端である。なお、図1中の太い実線は、配水管を示し、破線は、信号線を示す。
貯湯式給湯機1000は、図1に示されるように、貯湯タンク120に湯を貯える貯湯ユニット100と、貯湯タンク120の貯留水を加熱する第1加熱ユニット210と、貯湯タンク120を経由することなく給水を加熱して供給するための第2加熱ユニット220と、ユーザが給湯温度を設定するための端末40と、を有している。
(貯湯ユニット100の構成)
貯湯ユニット100は、給水管110を介して供給された水及びこの水から生成された湯を貯える貯湯タンク120と、貯湯タンク120の貯留水を循環させる循環ポンプ130と、貯湯タンク120の湯と市水とを混合する混合弁140と、貯湯タンク120の蓄熱を利用して市水を予熱する熱交換器160と、給湯管190に連通する流路を切り替える給湯切替弁180と、貯湯ユニット100の構成要素を制御する制御部11と、を有している。
給水管110は、給水口101及び貯湯タンク120の下部に接続される。給水管110には、市水の温度を計測する温度センサ111と、貯湯タンク120の圧力を設定するための減圧弁112と、が取り付けられている。温度センサ111は、計測結果を示す信号を制御部11に送信する。また、給水管110は、給水口101と減圧弁112との間で分岐して、熱交換器160の二次側入口に接続されている。また、給水管110は、減圧弁112と貯湯タンク120との間で分岐して、混合弁140の吸入口に接続されている。給水管110は、給水口101から貯湯タンク120、熱交換器160及び混合弁140に市水を導入する。
貯湯タンク120は、容量が150〜600Lの範囲内にあって例えば300L又は500Lのタンクである。貯湯タンク120には、通常、満水まで水が貯留されている。貯湯タンク120の下部には市水が供給されて低温層が形成され、貯湯タンク120の上部には第1加熱ユニット210によって生成された湯が供給されて高温層が形成される。これらの層の温度勾配により貯湯タンク120の内部には温度成層が形成される。貯湯タンク120の表面には、湯水の温度を計測する複数の温度センサ121,122,123,124が高さ方向に取り付けられている。これらの温度センサ121〜124は、計測結果を示す信号を制御部11に送信する。
循環ポンプ130の吸入口は、吸入切替弁131を介して貯湯タンク120の下部と熱交換器160の1次側出口とに接続されている。吸入切替弁131は、制御部11からの制御命令に従って、貯湯タンク120及び熱交換器160のいずれか一方と、循環ポンプ130と、を連通させるように流路を切り替える。また、循環ポンプ130の吐出口は、吐出切替弁132を介して貯湯タンク120の下部と第1加熱ユニット210とに接続される。吐出切替弁132は、制御部11からの制御命令に従って、貯湯タンク120及び第1加熱ユニット210のいずれか一方と、循環ポンプ130と、を連通させるように流路を切り替える。
循環ポンプ130は、制御部11からの制御命令に従った回転数で稼働して水を送出することにより、後述の循環路に流れる水流を生成する。
混合弁140の吸入口は、給水管110及び貯湯タンク120の上部に接続され、混合弁140の吐出口は、給湯切替弁180の吸入口に接続されている。混合弁140は、貯湯タンク120の上部から流出した高温の湯と市水とを混合することにより生成した温水を、給湯切替弁180に吐出する。混合弁140による混合の比率は、可変であって、制御部11からの制御命令に従う。また、混合弁140と貯湯タンク120とを接続する配水管には、貯湯タンク120から取り出した湯の温度を計測する温度センサ141が取り付けられている。温度センサ141は、計測結果を示す信号を制御部11に送信する。
熱交換器160は、1次側に流れる貯湯タンク120の湯と、2次側に流れる市水との間で熱交換を行うことにより、市水を予熱する。熱交換器160の1次側入口は、貯湯タンク120の上部に接続され、1次側出口は、吸入切替弁131の吸入口に接続されている。この1次側出口と吸入切替弁131とを接続する配水管には、1次側出口から流出した水の温度を計測する温度センサ161が取り付けられている。また、熱交換器160の2次側入口は、給水管110に接続され、この2次側入口近傍の給水管110には、2次側入口に流入する水量を計測する流量センサ163が取り付けられている。また、熱交換器160の2次側出口は、第2加熱ユニット220に接続され、この2次側出口近傍の配水管には、2次側出口から流出する水の温度を計測する温度センサ162が取り付けられている。温度センサ161,162及び流量センサ163は、計測結果を示す信号を制御部11に送信する。
給湯切替弁180の吸入口は、混合弁140の吐出口、及び第2加熱ユニット220に接続され、給湯切替弁180の吐出口は、給湯管190に接続されている。給湯切替弁180は、制御部11からの制御命令に従って、給湯管190に導入する湯の供給源を、貯湯タンク120及び第2加熱ユニット220のいずれか一方に切り替える。なお、第2加熱ユニット220からの湯を給湯切替弁180に導く配水管には、給湯圧力を設定するための減圧弁170が取り付けられている。
給湯管190は、給湯切替弁180の吐出口と給湯口102とに接続され、給湯切替弁180から吐出された湯を給湯口102に導く。給湯管190には、給湯の温度を計測する温度センサ191と、給湯の水量を計測する流量センサ192と、が取り付けられている。温度センサ191及び流量センサ192は、計測結果を示す信号を制御部11に送信する。
制御部11は、プログラムを実行するマイクロプロセッサ、RAM(Random Access Memory)及びプログラムを記憶するEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)を含んで構成される。制御部11は、温度センサ111,121〜124,141,161,162,191及び流量センサ163,192の計測結果を取得する。また、制御部11は、端末40から給湯温度を含む情報を取得する。そして、制御部11は、循環ポンプ130の回転数と、吸入切替弁131、吐出切替弁132、及び給湯切替弁180によって連通される流路と、混合弁140による混合比率と、を制御する。制御部11による制御処理の詳細は、後述する。
(第1加熱ユニット210の構成)
第1加熱ユニット210は、ヒートポンプにより貯湯タンク120の貯留水を加熱して湯を生成する主熱源である。第1加熱ユニット210は、貯湯タンク120の下部から水を導入する入水配管と、生成した湯を貯湯タンク120の上部に供給する出湯配管と、を介して貯湯ユニット100に接続されている。第1加熱ユニット210は、圧縮機211、熱交換器212、膨張弁213及び蒸発器214がこの順に冷媒配管で接続されてなる冷媒循環路と、第1加熱ユニット210の構成要素を制御する制御部21と、を有している。冷媒循環路に循環させる冷媒として、例えば、CO2、HFC、HC、HFOを用いることができるが、これには限定されず、冷媒の種類は任意である。
圧縮機211は、冷媒を圧縮して高温高圧の気体として熱交換器212に吐出する。本実施の形態に係る圧縮機211は、インバータを有し、制御部21からの制御命令に従って回転数を設定する。
熱交換器212は、1次側の高温の冷媒と2次側の水との間で熱交換を行うことにより、2次側の水を加熱して湯を生成する。熱交換器212の2次側入口は、入水配管を介して吐出切替弁132の吐出口に接続されている。また、熱交換器212の2次側出口は、出湯配管を介して貯湯タンク120の上部に接続されている。熱交換器212に流入した冷媒は、冷却されることで低温高圧の液体となり、膨張弁213に吐出される。
膨張弁213は、冷媒を減圧して低温低圧の液体として蒸発器214に吐出する。本実施の形態に係る膨張弁213は、開度を調節可能であり、制御部21の指示に従って、圧縮機211の吸入温度又は吐出温度が一定の温度となるように開度を調節する。
蒸発器214は、送風機(不図示)によって導かれた外気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器である。蒸発器214に流入した冷媒は、外気との熱交換により高温低圧の気体となって圧縮機211の吸入口に吐出される。
制御部21は、プログラムを実行するマイクロプロセッサ、RAM及びプログラムを記憶するEEPROMを含んで構成される。制御部21は、端末40から情報を取得する。この情報には、第1加熱ユニット210による加熱運転の開始及び終了の指令が含まれる。そして、制御部21は、圧縮機211の回転数及び膨張弁213の開度を制御することにより、第1加熱ユニット210の加熱能力を調節する。この加熱能力は、制御部21によって一定に保たれてもよいし、制御部21が端末40及び制御部11と連携することで変更されてもよい。
(第2加熱ユニット220の構成)
第2加熱ユニット220は、ガス及び灯油に代表される燃料をバーナで燃焼させることで市水を加熱して湯を生成する補助熱源である。第2加熱ユニット220は、熱交換器160によって予熱された市水を導入する入水配管と、生成した湯を給湯切替弁180に供給する出湯配管と、を介して貯湯ユニット100に接続されている。また、第2加熱ユニット220は、浴槽50に湯を供給する往き配管と、浴槽50から水を導く戻り配管と、を介して浴槽50に接続されている。
第2加熱ユニット220は、市水を加熱する熱交換器221と、浴槽に湯を供給するための熱交換器222及びポンプ223と、第2加熱ユニット220の構成要素を制御する制御部22と、を有している。
熱交換器221は、バーナによる燃焼で発生した排気と市水との間で熱交換を行うことで、市水を加熱して湯を生成する。熱交換器221及び貯湯ユニット100に接続される入水配管には、貯湯ユニット100から流入した市水の水量を計測する流量センサ224が取り付けられている。流量センサ224は、計測結果を示す信号を制御部22に送信する。また、入水配管には、流量センサ224と熱交換器221との間に、水量を調節する開度可変の調節弁225が取り付けられている。調節弁225は、制御部22からの制御命令に従って水流量を調節する。
また、入水配管は、調節弁225と熱交換器221との間で分岐して、熱交換器221を迂回するバイパス路に接続されている。このバイパス路には、熱交換器221と並列に接続される開度可変のバイパス弁226が設けられている。バイパス弁226は、制御部22からの制御命令に従って開度を設定する。
また、熱交換器221及び貯湯ユニット100に接続される出湯配管は、バイパス弁226が設けられたバイパス路と合流する。この出湯配管は、熱交換器221から吐出された湯とバイパス路を通った市水とが混合した湯水を、貯湯ユニット100に送出する。出湯配管には、混合した湯水の温度を計測する温度センサ228が取り付けられている。温度センサ228は、計測結果を示す信号を制御部22に送信する。また、出湯配管は、バイパス路との合流部より下流側で分岐して、開度可変の湯張り弁227を介して浴槽50の戻り配管の途中に接続されている。湯張り弁227は、制御部22からの制御命令に従って開度を設定する。
熱交換器222は、バーナによる燃焼で発生した排気と水との間で熱交換を行うことで、水を加熱して湯を生成する。熱交換器222及び浴槽50に接続される戻り配管は、その途中で分岐して出湯配管と接続され、出湯配管との接続部と熱交換器222との間には、ポンプ223が取り付けられている。ポンプ223は、制御部22からの制御命令に従った回転数で稼働し、湯張り弁227から吐出された水又は浴槽50から取り出した水を熱交換器222に送出する。熱交換器222によって生成された湯は、戻り配管を介して浴槽50に供給される。
制御部22は、プログラムを実行するマイクロプロセッサ、RAM及びプログラムを記憶するEEPROMを含んで構成される。制御部22は、流量センサ224から計測結果を取得し、端末40から情報を取得する。この情報には、端末40に入力された給湯温度と、湯張り運転の開始指令と、追い焚き運転の開始指令と、が含まれる。そして、制御部22は、バーナに燃焼の開始及び終了を指示し、調節弁225、バイパス弁226及び湯張り弁227の開度と、ポンプ223の回転数と、を制御する。制御部22による制御処理の詳細は、後述する。
続いて、貯湯式給湯機1000によって実行される各種運転について説明する。これらの運転は、制御部11,21,22及び端末40が信号線を介した通信により協働することで実現される。
(貯湯運転)
貯湯運転は、第1加熱ユニット210が貯湯タンク120の貯留水を沸き上げて湯を生成する沸き上げ運転である。貯湯運転は、貯湯タンク120の蓄熱量に応じて開始する。
貯湯タンク120の蓄熱量は、制御部11が、温度センサ121〜124の計測結果に基づいて、貯湯タンク120内の湯が有する蓄熱量のうち、給湯負荷に有効な蓄熱量を算出することで得ることができる。例えば、比較的少量の一般給湯負荷が生じると、貯湯タンク120内の湯が有する熱エネルギーは、この湯と市水とが混合することで利用される。このため、熱エネルギーの基準値を市水の温度として、温度センサ121〜124の計測結果と基準値との差分を貯湯タンク120の容積について積分することで、蓄熱量が算出される。なお、基準値は、予め定められた値でもよい。また、例えばユーザにより設定された給湯温度が40℃であるときに、貯湯タンク120に貯えられている38℃の湯は利用できないため、貯湯タンク120に貯えられている湯水のうち特定の温度以上の湯についてのみ積分することで蓄熱量を算出してもよい。特定の温度は、例えば45℃として予め定められた値であってもよいし、給湯温度に応じて定められる値であってもよい。なお、給湯負荷は、給湯の需要を意味し、一般給湯負荷は、湯張り運転及び追い焚き運転による給湯負荷以外の給湯負荷としてもよい。
制御部11は、温度センサ121〜124の計測結果から算出される貯湯タンク120の蓄熱量を監視して、蓄熱量が予め設定された特定の閾値を下回ると、貯湯運転を開始する。具体的には、制御部11は、端末40及び制御部21と連携して、第1加熱ユニット210に湯を生成させる。貯湯運転を開始するための閾値は、例えば、貯湯タンク120の最大蓄熱量の10%に相当する。
貯湯運転では、端末40が、ユーザにより設定された給湯温度に応じて、生成すべき湯の目標温度を定める。ここで、第1加熱ユニット210で湯が沸き上げられてから実際に給湯口102から給湯されるまでの間に貯湯タンク120表面からは放熱があり、また、混合弁140において市水の混合比率をゼロには設定できないことがある。このため、本実施の形態に係る端末40は、設定された給湯温度に一定の値を加算することにより目標温度を求める。例えば、給湯温度が40℃に設定された場合には、正の値をAとして(40+A)℃が目標温度として算出される。そして、端末40は、目標温度を制御部11に送信する。
貯湯運転が開始すると、制御部11は、貯湯タンク120の下部と循環ポンプ130の吸入口とが連通するように吸入切替弁131を制御し、循環ポンプ130の吐出口と第1加熱ユニット210とが連通するように吐出切替弁132を制御する。これにより、図1中の実線矢印で示されるように、貯湯タンク120の下部から、吸入切替弁131、循環ポンプ130、吐出切替弁132、及び熱交換器212を経由して貯湯タンク120の上部に戻る循環路が形成される。
そして、制御部11は、循環ポンプ130を稼働させることにより、貯湯タンク120の下部に存在する低温の水を熱交換器212に送出する。これにより、第1加熱ユニット210によって生成された湯が、貯湯タンク120の上部に供給されることとなる。制御部11は、循環ポンプ130を稼働させる際に、目標温度の湯が生成されるように、循環ポンプ130の回転数を調節する。
そして、制御部11は、貯湯タンク120の蓄熱量が目標貯湯量に達すると、貯湯運転を停止する。目標貯湯量は、例えば、現在から将来の特定の時刻までに発生することが予測される給湯負荷と、現在の貯湯タンク120の蓄熱量との差から算出される。将来の給湯負荷は、過去の数日間における実際の給湯負荷から学習して推定することが好ましい。実際に生じた給湯負荷は、流量センサ192によって計測された給湯量の積算値、及び、温度センサ191によって計測された給湯温度と温度センサ111によって計測された市水の温度との差の積算値から算出される。
なお、制御部11は、貯湯タンク120の蓄熱量に関わらず、特定の時間帯に貯湯運転を実行してもよい。特定の時間帯は、例えば、深夜の電気料金が低廉になる時間帯、又は、貯湯式給湯機1000とともに設置された発電装置によって生成された発電電力の余剰が発生する時間帯である。
(給湯切替弁180の制御処理)
続いて、制御部11による給湯切替弁180の制御処理について、図2を用いて説明する。図2に示される制御処理は、一定の周期で繰り返し実行される。一定の周期は、例えば1分間である。
まず、制御部11は、貯湯タンク120の蓄熱量が予め設定された閾値を超えるか否かを判定する(ステップS1)。
この閾値は、例えば、一般給湯負荷のうち、過去の数日間に生じた給湯負荷のうち1回の給湯負荷として最大の負荷に相当する。また、制御部11は、温度センサ121〜124のいずれかによる計測結果が、一定の正値をBとして、(給湯温度+B)℃より高いときに、蓄熱量が閾値を超えると判定してもよい。また、一般給湯負荷のうち、1回のシャワー負荷に代表されるように比較的大きいものを閾値として採用してもよい。1回のシャワー負荷は、例えば40℃換算で50Lである。さらに、制御部11は、端末40にユーザが設定した閾値を用いてもよい。給湯切替弁180を制御するための閾値は、通常、貯湯運転を開始するための閾値より大きく、例えば貯湯タンク120の最大蓄熱量の30%に相当することとなる。
蓄熱量が閾値を超えると判定した場合(ステップS1;Yes)、制御部11は、給湯口102と混合弁140の吐出口とが連通するように給湯切替弁180を制御して、運転モードをタンク給湯モードに設定する(ステップS2)。タンク給湯モードは、貯湯タンク120の湯を給湯口102から供給する運転モードである。タンク給湯モードの詳細は、後述する。
一方、蓄熱量が閾値を超えないと判定した場合(ステップS1;No)、制御部11は、給湯口102と減圧弁170の吐出口とが連通するように給湯切替弁180を制御して、運転モードを予熱給湯モードに設定する(ステップS3)。予熱給湯モードは、熱交換器160によって予熱された市水から第2加熱ユニット220によって生成された湯を給湯口102から供給する運転モードである。予熱給湯モードの詳細は、後述する。
その後、制御部11は、給湯切替弁180の制御処理を終了する。
(タンク給湯モードの運転処理)
続いて、制御部11によって実行されるタンク給湯モードの運転処理について、図3を用いて説明する。図3に示される処理は、運転モードがタンク給湯モードに設定されることで開始する。
まず、制御部11は、給湯流量が閾値を超えるか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、給湯口102に接続された給湯栓が開かれると、流量センサ192によって計測される給湯量がゼロより大きくなる。制御部11は、この流量センサ192による計測値が、安定的に検知できる一定の閾値以上か否かを判定する。
給湯流量が閾値を超えないと判定した場合(ステップS11;No)、制御部11は、ステップS11の判定を繰り返す。一方、給湯流量が閾値を超えると判定した場合(ステップS11;Yes)、制御部11は、混合弁140を制御して給湯温度を調節する(ステップS12)。具体的には、制御部11は、温度センサ191によって計測される給湯温度が、端末40に設定された給湯温度に等しくなるように、混合弁140の混合比率を制御する。ここで、混合弁140に貯湯タンク120の上部から高温の湯が流れると、低温の市水が減圧弁112を通って貯湯タンク120の下部に流入する。
次に、制御部11は、給湯流量が閾値より小さいか否かを判定する(ステップS13)。この閾値は、ステップS11で用いられた閾値に等しい。
給湯流量が閾値より小さいと判定した場合(ステップS13;Yes)制御部11は、待機状態となり、ステップS11以降の処理を繰り返す。一方、給湯流量が閾値より小さくないと判定した場合(ステップS13;No)、制御部11は、ステップS12以降の処理を繰り返す。
なお、タンク給湯モードの運転処理が実行されているときには、給湯切替弁180は、混合弁140と給湯口102とを連通させて、第2加熱ユニット220と給湯口102とを接続する流路を遮断する。このため、第2加熱ユニット220に市水が流入することはなく、第2加熱ユニット220による市水の加熱も実行されない。
(予熱給湯モードの運転処理)
続いて、制御部11によって実行される予熱給湯モードの運転処理について、図4を用いて説明する。この運転処理は、熱交換器160によって市水を予熱する処理である。図4に示される処理は、運転モードが予熱給湯モードに設定されることで開始する。
まず、制御部11は、吸入切替弁131により連通する流路を熱交換器160側に切り替える(ステップS21)。次に、制御部11は、吐出切替弁132により連通する流路を貯湯タンク120側に切り替える(ステップS22)。これにより、図1中の破線矢印で示されるように、貯湯タンク120の上部から、熱交換器160、吸入切替弁131、循環ポンプ130、及び吐出切替弁132、を経由して貯湯タンク120の下部に戻る循環路が形成される。
次に、制御部11は、流量センサ163によって計測された予熱流量が閾値を超えるか否かを判定する(ステップS23)。この予熱流量は、熱交換器160の2次側を通って第2加熱ユニット220に流入する水量であって、給湯栓が開かれると増加する。予熱流量について判定するための閾値は、流量センサ163が安定的に検知することができる一定の水量に相当する。
予熱流量が閾値を超えないと判定した場合(ステップS23;No)、制御部11は、ステップS23の判定を繰り返す。一方、予熱流量が閾値を超えると判定した場合(ステップS23;Yes)、制御部11は、循環ポンプ130を制御して循環路に水流を生成するとともに、予熱温度を調節する(ステップS24)。循環路に水流が生成されると、貯湯タンク120の上部から流出した温水は、熱交換器160の1次側を通ることで冷却され、貯湯タンク120の下部に戻ることとなる。また、制御部11は、温度センサ111によって計測された市水の温度と、温度センサ161によって計測された1次側出口の温度との差が、予め設定された目標値に等しくなるように、循環ポンプ130の回転数を制御して、予熱温度を調節する。
この予熱温度の調節について、図5を用いて説明する。図5には、熱交換器160を流れる水の温度変化が示されている。図5中、線L1は、1次側の流路を流れる水の温度変化を示し、水が1次側入口から1次側出口に流れると、水温が実線矢印に沿って変化する。Tw1iは、1次側入口に流入する水の温度に対応し、Tw1oは、1次側出口から流出する水の温度に対応する。また、線L2は、2次側の流路を流れる水の温度変化を示し、水が2次側入口から2次側出口に流れると、水温が破線矢印に沿って変化する。Tw2iは、2次側入口に流入する水の温度に対応し、Tw2oは、2次側出口から流出する水の温度に対応する。
ここで、制御部11は、図5に示されるTw1oとTw2iとの差であるΔTwLが目標値に等しくなるように、循環ポンプ130の回転数を制御する。
例えば、2次側の流量が小さく、1次側の流量が過大である場合には、Tw1oが高くなり、貯湯タンク120下部に流入する水の温度が高くなる。貯湯タンク120の下部に流入する水の温度は、ある程度低いことが望ましいため、制御部11は、この場合に循環ポンプ130の回転数を小さくして、ΔTwLを目標値に近付ける。一方、2次側の流量が大きく、1次側の流量が過小である場合には、Tw1oが低くなり、市水を十分に予熱することができない。この場合に、制御部11は、循環ポンプ130の回転数を大きくして、ΔTwLを目標値に近付ける。
すなわち、ΔTwLに応じて循環ポンプ130の回転数を制御すると、2次側の流量に応じて、1次側の流量を、予熱量及び熱交換の効率を考慮した適当な流量にすることができる。ΔTwLを適当に調節すると、貯湯タンク120の下部の水温を低くして、その後に沸き上げ運転が実行される際の第1加熱ユニット210の入水温度を低くすることができる。ひいては、沸き上げ運転のエネルギー消費効率を向上させることができる。特に、第1加熱ユニット210の冷媒回路に流れる冷媒がCO2である場合には、入水温度を低くすることによってエネルギー消費効率を大幅に改善することができる。さらに、熱交換器160が2次側の流量に応じた適当な熱量を市水に与えるため、貯湯タンク120の蓄熱を有効に利用することができる。
なお、循環ポンプ130の回転数の制御は、図5に示された予熱温度の調節に代えて、図6に示されるように、2次側の流量に応じた回転数を循環ポンプ130に指示することで実行されてもよい。循環ポンプ130の回転数と1次側の流量はほぼ比例するため、このような指示によっても、1次側の流量を2次側の流量に応じた適当なものとすることができる。
図4に戻り、ステップS24に続いて、制御部11は、予熱流量が閾値より小さいか否かを判定する(ステップS25)。この閾値は、ステップS23で用いられた閾値に等しい。
予熱流量が閾値より小さくないと判定した場合(ステップS25;No)、制御部11は、ステップS24以降の処理を繰り返す。一方、予熱流量が閾値より小さいと判定した場合(ステップS25;Yes)、制御部11は、待機状態に入り、ステップS23以降の処理を繰り返す。
(加熱運転処理)
続いて、予熱給湯モードにおいて第2加熱ユニット220の制御部22によって実行される加熱運転処理について、図7を用いて説明する。
まず、制御部22は、第2加熱ユニット220の流量が閾値を超えるか否かを判定する(ステップS31)。具体的には、制御部22は、流量センサ224による計測値が、この流量センサ224が安定的に検知することができる一定の流量を超えるか否かを判定する。
流量が閾値を超えないと判定した場合(ステップS31;No)、制御部22は、ステップS31の判定を繰り返す。一方、流量が閾値を超えると判定した場合(ステップS31;Yes)、制御部22は、バーナを点火する(ステップS32)。これにより、熱交換器221による熱交換が開始され、熱交換器221に流入した市水が加熱される。
次に、制御部22は、バーナ、調節弁225及びバイパス弁226を制御して、給湯温度を調節する(ステップS33)。具体的には、制御部22は、熱交換器221から流出する湯の温度を温度センサ228から得て、この温度が目標値に近付くようにバーナの燃焼量を制御する。また、制御部22は、調節弁225の開度を制御することで、第2加熱ユニット220に流入する水量を調節し、バイパス弁226の開度を制御することで、バイパス路に流れる水量を調節して、給湯温度を設定値に等しいものとする。
第2加熱ユニット220で給湯温度が調節された湯は、出湯配管を通って貯湯ユニット100に戻り、減圧弁170によって減圧された後に給湯切替弁180を介して給湯口102から供給される。
次に、制御部22は、第2加熱ユニット220の流量が閾値より小さいか否かを判定する(ステップS34)。この閾値は、ステップS31で用いられた閾値に等しい。流量が閾値より小さくないと判定した場合(ステップS34;No)、制御部22は、ステップS32以降の処理を繰り返す。一方、流量が閾値より小さいと判定した場合(ステップS34;Yes)、制御部22は、バーナを消火して(ステップS35)、待機状態に入り、ステップS31以降の処理を繰り返す。
なお、予熱給湯モードの運転処理が実行されているときには、給湯切替弁180は、減圧弁170と給湯口102とを連通させて、混合弁140と給湯口102とを接続する流路を遮断する。このため、貯湯タンク120の湯が給湯口102に供給されることはない。
また、制御部11による予熱給湯モードの運転処理において、循環ポンプ130の回転数の調節は、温度センサ162によって計測された予熱後の市水の温度を目標値に調節することで実現されてもよい。循環ポンプ130の回転数が高くなると、熱交換器160の熱交換量が増加して予熱温度が高くなる。予熱温度が高くなるほど、同一の給湯温度に対して第2加熱ユニット220によって加熱すべき加熱量が減少するため、燃料の消費量を節約することができる。一方で、予熱温度が過大に高くなると、第2加熱ユニット220の入水温度が高くなり、第2加熱ユニット220で給湯温度を調節することができなくなったり、燃焼が停止したりするおそれがある。そのため、例えば、予熱温度の目標値が、第2加熱ユニット220の入水温度の上限値に等しくなるように、制御部11は循環ポンプ130の回転数を調節してもよい。この上限値は、例えば30℃である。
また、予熱温度が目標値に等しくなるように熱交換器160の1次側の流量を制御すると、図5に示されたΔTwLを目標値に等しくする場合と比較して、1次側出口から貯湯タンク120に戻る水の温度が高くなり、その後の沸き上げ運転のときに第1加熱ユニット210の入水温度が高くなる。ここで、CO2のように高圧側で凝縮せず超臨界状態となる冷媒に比べて、HFC、HC、HFO等の高圧側で凝縮する冷媒を採用すると、入水温度の上昇に対してエネルギー消費効率が低下する度合いが小さい。このため、予熱温度が目標値に等しくなるように1次側の流量を制御する手法は、特に、高圧側で凝縮する冷媒を採用する場合に有効である。
(湯張り運転処理)
続いて、制御部22によって実行される湯張り運転処理について、図8を用いて説明する。湯張り運転は、浴槽50に一定量の湯を供給する運転である。端末40に湯張り運転を開始する指示が入力されると、端末40が、湯張り指令を制御部22に送信し、湯張り運転が開始する。
まず、制御部22は、端末40から湯張り指令があったか否かを判定する(ステップS41)。湯張り指令がないと判定した場合(ステップS41;No)、制御部22は、待機状態に入り、ステップS41の判定を繰り返す。
一方、湯張り指令があったと判定した場合(ステップS41;Yes)、制御部22は、湯張り弁227を開き(ステップS42)、バーナを点火する(ステップS43)。これにより、予熱された市水が第2加熱ユニット220に流入して、調節弁225を通ってから分岐して、一方は熱交換器221で加熱され、他方はバイパス路を通った後に合流する。そして、合流した温水は、湯張り弁227を通り、往き配管及び戻り配管の双方から浴槽50に供給されることとなる。
次に、制御部22は、バーナ、調節弁225及びバイパス弁226を制御して、給湯温度を調節する(ステップS44)。具体的には、制御部22は、温度センサ228によって計測される給湯温度が、予め設定された湯張り温度の目標値に等しくなるように、バーナの燃焼量を制御する。また、制御部22は、調節弁225の開度を制御して、第2加熱ユニット220に流入する水量を調節する。また、制御部22は、バイパス弁226の開度を制御して、バイパス路に流れる水量を調節して、給湯温度を目標値に等しいものとする。
次に、制御部22は、給湯量が湯張り目標値を超えるか否かを判定する(ステップS45)。この給湯量は、流量センサ224による計測値を積算することで得ることができる。なお、制御部22は、浴槽50の水位を検知する水位センサの出力を用いて、給湯量が湯張り目標値を超えるかを判定してもよい。
給湯量が湯張り目標値を超えないと判定した場合(ステップS45;No)、制御部22は、ステップS42以降の処理を繰り返す。一方、給湯量が湯張り目標値を超えると判定した場合(ステップS45;Yes)、制御部22は、バーナを消火し(ステップS46)、湯張り弁227を閉じる(ステップS47)。その後、制御部22は、湯張り運転処理を終了する。
なお、湯張り運転を実行する際には、貯湯タンク120の蓄熱量に関わらず、貯湯ユニット100の制御部11によって、図4に示される予熱給湯モードの運転処理が実行される。これにより、貯湯タンク120の容量は、湯張りのための湯量を必要としない。したがって、容量の小さい貯湯タンク120を用いて貯湯式給湯機1000を構成することができる。
また、湯張り運転の最中に一般給湯負荷が生じた場合には、貯湯タンク120の蓄熱量が予め設定された閾値より大きいときにタンク給湯モードの運転が湯張り運転と同時に実行され、蓄熱量がこの閾値より小さいときに予熱給湯モードの運転が湯張り運転と同時に実行される。
(追い焚き・保温運転)
続いて、制御部22によって実行される追い焚き・保温運転について説明する。端末40に、浴槽50の湯を一定の温度に保つ保温指令が入力されたとき、又は、浴槽50に貯まっている湯を再加熱する追い焚き指令が入力されたときに、制御部22は、追い焚き・保温運転を実行する。
追い焚き・保温運転では、制御部22は、湯張り弁227を閉じて、ポンプ223を稼働させる。これにより、浴槽50から、戻り配管、ポンプ223、熱交換器222及び往き配管を通って浴槽50に戻る循環路に水流が生じる。そして、制御部22は、バーナを点火して、熱交換器222に湯を再度加熱させる。追い焚き・保温運転では、予熱給湯モードの運転処理が実行されない。
(貯湯運転と予熱給湯モードの運転との同時運転)
続いて、貯湯運転と予熱給湯モードの運転との同時運転が実行される場合について説明する。この同時運転は、貯湯運転の最中に予熱給湯モードの運転が開始したり、予熱給湯モードの運転の最中に貯湯運転が開始したりすることで開始する。
図9には、同時運転が実行される場合における貯湯ユニット100のアクチュエータ制御手法が示されている。一般的に、熱交換器160の2次側の流量は、最大で約15〜20L/min程度となり、2次側の流量に応じて1次側の流量も大きくなる。一方、貯湯運転の際に第1加熱ユニット210に流入する水量は、例えば冬期の市水温度が9℃で貯湯温度が65℃で、加熱能力が4.5kWであるときに、約1.15L/minとなる。
このため、循環ポンプ130を稼働させて、第1加熱ユニット210の入水量と、熱交換器160の1次側の流入量と、を独立に制御する必要がある。また、予熱に利用する1次側の水の一部を第1加熱ユニット210に送り出して、残りを貯湯タンク120に戻す必要がある。
そこで、図9に示されるように、制御部11は、温度差ΔTwLが目標値に等しくなるように循環ポンプ130の回転数を制御する。また、制御部11は、熱交換器160に接続される流路が全開となるように、吸入切替弁131を制御する。また、制御部11は、第1加熱ユニット210の沸き上げ流量を調節することで出湯温度が目標値に等しくなるように、吐出切替弁132の開度を制御する。
図10には、吐出切替弁132の開度と流量との関係が示されている。図10中、線L11は、吐出切替弁132から貯湯タンク120側への流量を示し、線L12は、吐出切替弁132から第1加熱ユニット210側への流量を示している。図10に示されるように、吐出切替弁132の開度ステップがゼロから最大の100まで変化すると、貯湯タンク120側の流量と第1加熱ユニット210側の流量の合計が100%となる条件下で、流量比が変化する。
このため、図9に示されたようにアクチュエータを制御すると、循環ポンプ130は、熱交換器160の1次側に必要な流量を調整し、吐出切替弁132は、第1加熱ユニット210による沸き上げに必要な流量と、貯湯タンク120に戻る残りの流量との比を調整することとなる。
(高温沸き上げ運転処理)
続いて、貯湯タンク120の高温沸き上げ運転処理について、図11を用いて説明する。
貯湯タンク120の貯留水が長時間にわたって貯湯タンク120内に滞留すると、貯留水に雑菌が繁殖する可能性があり、好ましくない。市水が塩素消毒されていれば雑菌の繁殖は抑制されるが、一度加熱された後に、例えば20〜45℃程度の水温になると、レジオネラ菌が繁殖する可能性がある。貯湯タンク120が密閉式であって、清潔な市水が常に供給される状態では、雑菌が繁殖する可能性はほぼないといえる。しかしながら、何らかの外的要因による不測の状況まで考慮すると、長期間にわたり雑菌の繁殖が可能な温度のまま滞留したときに、雑菌を殺菌することができる高い温度まで貯湯タンク120内の湯を再度加熱する必要がある。この温度は、例えば60℃以上である。
そこで、本実施の形態に係る貯湯式給湯機1000は、図11に示される高温沸き上げ運転を実行する。高温沸き上げ運転は、貯湯式給湯機1000が稼働可能になると開始される。この高温沸き上げ運転は、給湯負荷が多く発生する前の時間帯に実行することが望ましい。この時間帯は、例えば15〜18時の時間帯である。
まず、制御部11は、予め設定された時間内に貯湯タンク120から給湯口102に供給された湯量が貯湯タンク120の容量を超えるか否かを判定する(ステップS51)。すなわち、制御部11は、貯湯タンク120内の湯が滞留しているか否かを判定する。この滞留は、貯湯タンク120内で水が再加熱されることなく予め設定された比較的長い時間にわたり貯留されていることを意味する。予め設定された時間は、例えば72時間である。
なお、貯湯タンク120から給湯口102への出湯量は、流量センサ192によって計測された給湯流量を積算した上で、温度センサ141によって計測された貯湯タンク120からの出湯温度、温度センサ111によって計測された市水の温度、及び温度センサ191によって計測された給湯温度の関係から、混合弁140による混合比率を推定することで、求めることができる。なお、貯湯タンク120の上部と混合弁140の吸入口とを接続する配水管に流量センサを設けて、この流量センサの計測値を積算することで出湯量を求めてもよい。
ステップS51の判定が否定された場合(ステップS51;No)、制御部11は、貯湯タンク120内の水が滞留していないと判断して、湯を沸き上げることなく高温沸き上げ運転を終了する。
一方、ステップS51の判定が肯定された場合(ステップS51;Yes)、制御部11は、貯湯タンク120内に水が長時間にわたり滞留していると判断して、給湯切替弁180を制御することにより、給湯口102と第2加熱ユニット220とを連通させる。そして、制御部11は、運転モードを予熱給湯モードに設定する(ステップS52)。
次に、制御部11は、現在時刻が深夜の特定時刻より前であるか否かを判定する(ステップS53)。特定時刻は、例えば、電気料金が低廉になる23時として予め設定される。
現在時刻が特定時刻より前であると判定した場合(ステップS53;Yes)、制御部11は、貯湯タンク120の蓄熱量が閾値より小さいか否かを判定する(ステップS54)。この閾値は、貯湯運転を開始するための閾値に等しい。
蓄熱量が閾値より低くはないと判定した場合(ステップS54;No)、制御部11は、ステップS53以降の処理を繰り返す。一方、蓄熱量が閾値より低いと判定した場合(ステップS54;Yes)、制御部11は、貯湯タンク120の貯湯温度が特定の温度より低いか否かを判定する(ステップS55)。ここで、貯湯タンク120の貯湯温度は、貯湯タンク120内の水の平均温度であって、温度センサ121〜124の計測値から求めることができる。
ステップS55の判定に用いる特定の温度について、図12を用いて説明する。図12には、第1加熱ユニット210の入水温度とエネルギー消費効率としてのCOP(Coefficient Of Performance)との関係が示されている。ただし、沸き上げ温度は、予め設定された一定の温度であって、例えば65℃であるものとする。第1加熱ユニット210の入水温度が高いほど、凝縮器出口の冷媒温度が高くなり、COPは低下する。このため、貯湯タンク120に比較的高い温度の湯が残っている状態で高温沸き上げ運転を実行すると、COPが低くなる。
ところで、本実施の形態に係る貯湯式給湯機1000は、主として電力を消費して湯を沸き上げて、不足する湯を燃焼式の第2加熱ユニット220で生成している。電力は、例えば火力発電所で化石燃料を燃焼させて生成される。ここで、燃料を直接投入する第2加熱ユニット220と同一の評価指標で第1加熱ユニット210を評価するために、1次エネルギー効率を用いることができる。
発電所で投入される化石燃料に対して、最終的に家庭で消費する電力の1次エネルギー効率は、約36.9%とされている。ヒートポンプ式の第1加熱ユニット210は、大気から熱を吸収して、投入される電気エネルギー以上の給湯熱を得ることができる。このため、第1加熱ユニット210の1次エネルギー効率は、電気エネルギーの1次エネルギー効率に、COPを乗じることで得ることができる。
これに対して、燃焼式の第2加熱ユニット220の給湯燃焼効率は、高効率なものでも95%程度である。第2加熱ユニット220は、化石燃料を直接投入するため、その燃焼効率を給湯の1次エネルギー効率とみなすことができる。
したがって、第1加熱ユニット210の1次エネルギー効率が第2加熱ユニット220の1次エネルギー効率より高くなるためには、COPが2.57(=95/36.9)より大きければよい。
具体的には、図12に示されるように、第1加熱ユニット210の入水温度とCOPとの関係から、第1加熱ユニット210の1次エネルギー効率が第2加熱ユニット220に等しくなる入水温度Twiを求めることができる。そして、図11中のステップS55の判定で用いる特定の温度を、この入水温度Twiとすればよい。
貯湯温度が特定の温度より低くはないと判定した場合(ステップS55;No)、制御部11は、ステップS53以降の処理を繰り返す。これにより、予熱給湯モードの運転処理が実行される。その結果、貯湯タンク120内の水温が低下する。ひいては、その後の沸き増し運転(ステップS56)及び沸き上げ運転(ステップS57)が実行される際のエネルギー効率を向上させることができる。
一方、貯湯温度が特定の温度より低いと判定した場合(ステップS55;Yes)、制御部11は、貯湯タンク120の高温沸き増し運転を実行する(ステップS56)。この高温沸き増し運転は、沸き上げ温度を例えば貯湯運転の沸き上げ温度より高い65℃として、当日に必要な熱量を予測して沸き上げる運転である。その後、制御部11は、ステップS53以降の処理を繰り返す。
ステップS53にて、現在時刻が深夜の特定時刻より前ではないと判定した場合(ステップS53;No)、制御部11は、高温沸き上げ運転を実行する(ステップS57)。この高温沸き上げ運転では、翌日に予想される給湯負荷にかかわらず、貯湯タンク120の全量が殺菌可能な温度となるように沸き上げる。高温沸き上げ運転は、深夜に実行される貯湯運転に代えて実行される。
ここで、沸き上げ温度を65℃に設定して貯湯運転を実行し、貯湯タンク120内の蓄熱量が増加すると、第1加熱ユニット210の入水温度が徐々に上昇する。ヒートポンプ式である第1加熱ユニット210では、入水温度が上昇すると、高圧側の圧力が高くなり、許容圧力を超えてしまうことが考えられる。
このため、例えば第1加熱ユニット210の入水温度が例えば50℃の上限値を超えると、圧縮機211の稼働を停止して、循環ポンプ130のみを稼働させ、貯湯タンク120底部の温度が60℃になるまで、貯湯タンク120下部の湯を上部に循環させてもよい。この場合、圧縮機211は停止しているため第1加熱ユニット210による加熱は実行されないが、貯湯タンク120上部の高温の湯と下部の低温の水とが混合し、貯湯タンク120全体の温度を60℃以上とすることができる。
貯湯タンク120全体が殺菌可能な温度以上になると、制御部11は、高温沸き上げ運転処理を終了する。
(運転動作例)
続いて、1日間に給湯負荷、貯湯タンク120の蓄熱量、第1加熱ユニット210及び第2加熱ユニット220の加熱能力が推移する例について、図13を用いて説明する。
貯湯タンク120の蓄熱量は、電気料金が低廉になる深夜時間帯に貯湯運転が実行されることで増加する。深夜時間帯の終了時刻における蓄熱量は、貯湯タンク120に蓄熱可能な最大値としてもよいし、予想される給湯負荷に応じたものとしてもよい。図13に示される例では、深夜時間帯の終了時刻は、7:00である。
7:00から18:00頃までに、洗面所や台所の蛇口における一般給湯負荷が発生する。この一般給湯負荷は、入浴により発生する給湯負荷に比べて小さいため、タンク給湯モードの運転処理を実行する。一般給湯負荷が発生していない時間には、貯湯タンク120からの放熱により、蓄熱量が徐々に減少する。
19:00頃に湯張り運転が実行される。この際に予熱給湯モードの運転処理が実行されるため、貯湯タンク120の蓄熱量の減少と、第2加熱ユニット220による加熱と、が同時に発生する。湯張り運転が実行されると、貯湯タンク120の蓄熱量が大幅に減少して、給湯切替弁180を制御するための閾値TH1より低くなる。すなわち、運転モードが、タンク給湯モードから予熱給湯モードに移行する。その後、シャワーに代表される一般給湯負荷が発生するが、貯湯タンク120の蓄熱量が、貯湯運転を実行するための閾値TH2を下回るまでは、予熱給湯モードの運転処理が続行する。
一般給湯負荷が連続して発生し、貯湯タンク120の蓄熱量が閾値TH2を下回ると、第1加熱ユニット210は、貯湯運転を開始する。そして、蓄熱量が閾値TH2より大きくなるまでに一般給湯負荷が発生した場合には、予熱給湯モードの運転処理が実行される。貯湯タンク120の蓄熱量の目標値は、当日において現在時刻以降に発生することが予想される給湯負荷に設定する。この目標値は、通常、深夜時間帯の貯湯運転の目標値より小さくなる。
貯湯運転の終了後に一般給湯負荷が発生した場合において、貯湯タンク120の蓄熱量が閾値TH1より大きいときにはタンク給湯モードの運転が実行され、蓄熱量が閾値TH1より小さいときには予熱給湯モードの運転が実行される。1日の終了時刻である24:00に最低となるように蓄熱量を制御することが望ましいが、24:00以降に一般給湯負荷の発生が予測される場合には、24:00の時点で蓄熱量をある程度残してもよい。
以上、説明したように、本実施の形態に係る貯湯式給湯機1000では、貯湯タンク120に水が長時間にわたり滞留し、高温沸き上げ運転を実行する必要が生じても、予熱給湯モードの運転を実行することにより貯湯タンク120の蓄熱を利用することができる。
また、貯湯式給湯機1000は、予熱給湯モードの運転処理を実行して、貯湯タンク120の水温が低下してから高温沸き上げ運転を実行する。このため、高温沸き上げ運転を実行する際にヒートポンプ式の第1加熱ユニット210の入水温度を低くすることができる。したがって、総合的な1次エネルギー効率を高くすることができる。
また、貯湯式給湯機1000は、殺菌が必要な条件下において、貯湯タンク120の蓄熱量を増加させる高温沸き増し運転を実行する。このため、中温水の増加量が少なく、当日の深夜に実行する高温沸き上げ運転のエネルギー消費効率を高くすることができる。なお、深夜の高温沸き上げ運転では、貯湯タンク120が貯える全量のうち、高温沸き増し運転で沸き上げられなかった残りの湯を沸き上げればよい。
また、貯湯タンク120の蓄熱量が一般給湯負荷を賄うのに十分な場合に、貯湯タンク120から給湯口102に直接給湯し、貯湯タンク120の下部には、低温の市水が流入する。このため、第1加熱ユニット210の貯湯運転時のエネルギー消費効率を高くすることができる。特に、冷媒にCO2を用いる場合には、高圧側が超臨界サイクルとなり、第1加熱ユニット210の入水温度が低いほどエネルギー消費効率が高くなるため、有効である。
また、貯湯ユニット100は市水の流量を計測する流量センサ163を有し、第2加熱ユニット220は、流入する市水の流量を計測する流量センサ224を有している。このため、第2加熱ユニット220に流入する市水を貯湯ユニット100で予熱する際に、貯湯ユニット100の制御部11と第2加熱ユニット220の制御部22とで通信する必要がなく、それぞれ独立して貯湯ユニット100及び第2加熱ユニット220のアクチュエータを制御することができる。
実施の形態2.
続いて、実施の形態2について、上述の実施の形態1との相違点を中心に説明する。なお、上記実施の形態1と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。本実施の形態に係る貯湯式給湯機1000は、プログラムを実行する一のコントローラによってその構成要素が制御される点で、実施の形態1に係るものと異なっている。
図14には、本実施の形態に係る貯湯式給湯機1000の構成が示されている。図14に示されるように、貯湯式給湯機1000は、貯湯ユニット100、第1加熱ユニット210、第2加熱ユニット220を制御するコントローラ60を有している。
コントローラ60は、プロセッサ61、主記憶部62、補助記憶部63、入力部64、出力部65、及び通信部66を有するコンピュータとして構成される。主記憶部62、補助記憶部63、入力部64、出力部65、及び通信部66はいずれも、内部バス67を介してプロセッサ61に接続されている。
プロセッサ61は、MPU(Micro Processing Unit)を含んで構成される。プロセッサ61は、補助記憶部63に記憶されるプログラム68を実行することにより、実施の形態1に係る制御部11,21,22と同等の機能を発揮する。
主記憶部62は、RAM(Random Access Memory)を含んで構成される。主記憶部62は、補助記憶部63からプログラム68をロードする。そして、主記憶部62は、プロセッサ61の作業領域として用いられる。
補助記憶部63は、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含んで構成される。補助記憶部63は、プログラム68の他に、プロセッサ61の処理に用いられる種々のデータを記憶している。
入力部64は、例えば入力キー及び静電容量方式のポインティングデバイスを含んで構成される。入力部64は、ユーザによって入力された情報を取得して、プロセッサ61に通知する。出力部65は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)に代表される表示デバイスを含んで構成される。出力部65は、例えば、入力部64を構成するポインティングデバイスと一体的に形成されることで、タッチスクリーンを構成する。なお、端末40が貯湯式給湯機1000のユーザインタフェースに相当するため、入力部64及び出力部65を省いてコントローラ60を構成してもよい。
通信部66は、外部の機器と通信するための通信インタフェース回路を含んで構成される。通信部66は、外部から受信した信号に含まれる情報をプロセッサ61に通知して、プロセッサ61から出力された情報を伝送するための信号を外部の機器に送信する。通信部66が外部から取得する情報には、貯湯ユニット100、第1加熱ユニット210及び第2加熱ユニット220が有する各センサの計測結果が含まれる。また、通信部66が外部に送信する情報には、貯湯ユニット100、第1加熱ユニット210及び第2加熱ユニット220が有するポンプ及び弁に対する指示が含まれる。
なお、本実施の形態において、貯湯ユニット100は、制御部11(図1参照)を省いて構成され、第1加熱ユニット210は、制御部21(図1参照)を省いて構成され、第2加熱ユニット220は、制御部22(図1参照)を省いて構成される。
以上、説明したように、本実施の形態に係る貯湯式給湯機1000は、その構成要素を制御するコントローラ60を有していた。これにより、コントローラ60が実行するプログラムの保守及び管理が容易になる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態によって限定されるものではない。
例えば、熱交換器160の2次側の流量を計測する流量センサ163は、2次側入口近傍ではなく、2次側出口近傍に設けてもよい。
また、ユーザが端末40から高温沸き上げ運転を開始する指令を入力できるようにしてもよい。例えば、太陽光発電装置を備える家庭において、日中に晴天となり余剰電力が発生する場合がある。この場合に、例えば現在時刻以降の24時間以内に貯湯タンク120の殺菌が必要になると予想されれば、端末40からユーザに対して高温沸き上げ運転の実行を要する旨を報知して、余剰電力による高温沸き上げ運転を促してもよい。これにより、高温沸き上げ運転の実行により投入電力が大きくなる場合にもランニングコストの上昇を抑えることができる。
また、貯湯式給湯機1000を含むHEMS(Home Energy Management System)のコントローラが余剰電力の発生を予想して、貯湯式給湯機1000に殺菌のための高温沸き上げ運転を指示してもよい。
また、制御部11,21,22のEEPROMに記憶されているプログラム、及び、補助記憶部63に記憶されているプログラム68を、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical disk)に代表されるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、それらプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する装置を構成することができる。
また、プログラムをインターネットに代表される通信ネットワーク上のサーバ装置が有するディスク装置に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロードするようにしてもよい。
また、インターネットに代表されるネットワークを介してプログラムを転送しながら起動実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
さらに、プログラムの全部又は一部をサーバ装置上で実行させ、その処理に関する情報をコンピュータが通信ネットワークを介して送受信しながらプログラムを実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
なお、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロードしてもよい。
また、貯湯式給湯機1000の機能を実現する手段は、ソフトウェアに限られず、その一部又は全部を専用のハードウェアによって実現してもよい。例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)に代表される回路を用いて構成すれば、貯湯式給湯機1000の省電力化を図ることができる。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。