JPWO2018042620A1 - シリンダヘッド及びエンジン - Google Patents
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Abstract
Description
こうした中空バルブを用いる利点は二つある。
一つは、軽量化によって高い追従性が得られるために、エンジンのより高回転化に寄与するという点である。
もう一つの利点は、中空であるが故に内部に冷媒等を封入することが可能で、これによる冷却効果を期待できることである。代表的には金属ナトリウムなどの冷媒を封入し、より高い燃焼室の温度にも対応できるようにするということが従来から行われている。
しかし、近年、二酸化炭素排出量の削減による地球温暖化防止等の観点もあり、エンジンのダウンサイジング化が世界規模でのトレンドとなっている。すなわち、同一車種についても従来よりも小排気量のエンジンを採用し、その上でターボチャージャーを搭載して小型エンジンにつきもののトルク不足を補ったり、圧縮比を高めて燃費を向上させたりすることが一つの潮流をなしている。
つまり「エンジンのダウンサイジング化」という概念は、単にエンジンの排気量を小さくするというだけに留まるものではない。ターボチャージャーの搭載や高圧縮比化などの手法を併用することで、排気量を小さくしたことによるデメリットを打ち消したり、あるいはそのようなデメリットをユーザーに感じさせないようにしたりすることを意味している。
このためエンジンのダウンサイジング化が広く普及した近年、燃焼温度はより高温化する傾向にある。
そこで着目され始めたのが中空バルブであり、大衆車ではあっても、冷媒を封入した中空バルブを用いる例が増えつつある。そして、軽自動車用のエンジンにも冷媒を封入した中空バルブが採用されてきている。
ただしこれらの吸排気用のバルブは中空ではあるものの、冷媒などを封入しているという記述はない。
もっとも特許文献2の吸排気用のバルブは特許文献1とは異なり、ナトリウムカリウムなどのナトリウム化合物からなる冷媒を封入している。
その一方で、エンジンのダウンサイジング化に伴うターボチャージャーの適用や高圧縮比化の傾向に鑑みると、燃焼温度はいかんともし難く、冷媒を封入した中空バルブの導入はもはや不可避であるといえる。
したがって吸排気用のバルブの部品コストとエンジンのダウンサイジング化との間に、トレードオフが生じるという問題がある。
バルブに封入する冷媒としてよく用いられるのは金属ナトリウムであるが、冷媒を封入しない中空バルブと比較すると当然のことながらバルブの重量が増加し、フリクション低減効果を低下させてしまうと言う問題がある。
したがって吸排気用のバルブの冷却性能と軽量化という面においても、トレードオフの関係が存在する。
もう一つの問題は、吸入効率低下である。吸気バルブの冷媒はバルブの傘部の温度を軸部に伝達する目的で封入するが、吸気バルブの場合、軸部の温度が上昇すると、ここを通過する吸入空気を加温する事になる。吸入空気が加温されると体積効率が低下して燃焼効率が低下する。
したがって、吸気用のバルブの冷却性能と体積効率という面においても、トレードオフの関係が存在する。
排気バルブに冷媒を封入した中空バルブを用い、吸気バルブに冷媒を封入しない中空バルブを用いることにより、性能とコストのバランスを最適にすることが可能となる。
本実施の形態は、ターボチャージャーを搭載するエンジンへの適用例である。
以下、次の項目にしたがい説明する。
1.エンジンの基本構造
2.エンジンの吸排気系
3.吸気バルブと排気バルブの構造
(1)第1の形態
(2)第2の形態
(3)第3の形態
(4)第4の形態
4.作用
(1)吸排気用のバルブの部品コストとエンジンのダウンサイジング化との関係
(2)吸排気用のバルブの冷却性能と追従性との関係
5.変形例
図1に示すように、エンジン11は、シリンダブロック201にシリンダヘッド101が搭載されて形成されている。
シリンダ211は円筒形状のものであり、内部にピストン231をスライド自在に収納する。したがってピストン231は、滑らかに面処理されたシリンダ211の内壁を摺動して、往復運動をすることができる。
このようなピストン231はコネクティングロッド241を介してクランクシャフト221に連結され、これによってピストン231の往復運動がコネクティングロッド241を介してクランクシャフト221の回転運動に変換される。
図1中、符号222で示す軸は、クランクシャフト221の回転軸である。また符合223で示す軸は、クランクシャフト221が備えるコネクティングロッド241との連結軸である。
図1中、符号121で示す方が吸気ポートであり、符号131で示す方が排気ポートである。これらの吸気ポート121及び排気ポート131は、ピストン231の軸心に対して対称となる位置に配置されており、吸気ポート121は吸気通路122に、排気ポート131は排気通路132にそれぞれ連絡している。
プラグ孔141は点火プラグ301をねじ込むことができるねじ孔の形態のもので、ピストン231の軸心上に位置付けられている。
図1中、符号151で示す方が吸気バルブであり、符号161で示す方が排気バルブである。これらの吸気バルブ151と排気バルブ161とは、シリンダヘッド101に取り付けられたバルブガイドVGにスライド自在に保持されている。
吸排気用のバルブ151,161は、柱状の軸部152,162の一端に略円錐形の傘部153,163を連結し、全体として茸形状である。以降、本明細書では、吸排気用のバルブ151,161の軸部152,162側を上側とし、傘部153,163側を下側として説明する。傘部153,163によって吸排気用のポート121,131を開閉する。このような吸排気用のバルブ151,161は、軸部152,162の後端部分にアッパーシートUSを取り付けている。シリンダヘッド101は、これらのアッパーシートUSに対面する位置にロワシートLSを形成し、これらのアッパーシートUSとロワシートLSとの間にバルブスプリングCSを圧縮状態で配置している。
したがって吸排気用のバルブ151,161は、後端部分に押圧力が加えられるとスライド移動して吸排気用のポート121,131を開放する。この際、アッパーシートUSがロワシートLSに近接することから、バルブスプリングCSは圧縮される。そこで後端部分に加えた圧縮力を解除すると、圧縮されたバルブスプリングCSの復元力によって吸排気用のバルブ151,161が付勢され、バルブ151,161は速やかに元の位置に復帰する。
バルブ駆動機構171はシリンダヘッド101に組み込まれ、吸排気用のバルブ151,161をそれぞれ別個に駆動する二本のカムシャフト172を主体に構成されている。これらのカムシャフト172は、それぞれ吸気バルブ151と排気バルブ161との後端部分に押圧力を加えるカム173を備え、カムシャフト172の回転によってカム173が予め決められたタイミングで吸気バルブ151と排気バルブ161とを駆動する。
これによって吸気ポート121のみが開いた「吸入」、吸排気用のポート121,131がいずれも閉じられた「圧縮」「燃焼」、排気ポート131のみが開いた「排気」という4サイクルの動作が実行される。
このような4サイクルの各過程において、バルブ駆動機構171は、ピストン231が下死点に向けて下がるタイミングで「吸入」、下死点まで下がったピストン231が上死点まで上がるタイミングで「圧縮」、ピストン231が上死点まで上がったタイミングで「燃焼」、下死点まで下がったピストン231が上死点に向けて上がるタイミングで「排気」を実行するように、クランクシャフト221の回転と同期が取られる。
図2に示すように、本実施の形態のエンジン11は4気筒エンジンであり、ターボチャージャー401を備えている。
つまりエンジン11のシリンダヘッド101には、個々の気筒の吸気通路122を形成する四本に分岐された吸気マニホールド411と、個々の気筒の排気通路132を形成する四本に分岐された排気マニホールド421とが取り付けられている。これらの吸気マニホールド411及び排気マニホールド421の四本の分岐パイプ411a,421aは合流し、一本の集合パイプ411b,421bにまとめられている。
合流して一本にまとめられた排気マニホールド421の集合パイプ421bによって形成される排気通路132中には、ターボチャージャー401のタービン402が配置されている。
そしてタービン402と同軸上に連結されたターボチャージャー401のコンプレッサ403は、合流して一本にまとめられた吸気マニホールド411の集合パイプ411bによって形成される吸気通路122に配置されている。
このようなターボチャージャー401による過給工程においては、コンプレッサ403での圧縮によって吸気通路122を流れる空気の温度が上昇する。すると「吸入」工程でシリンダ211に取り込まれた混合気に、ノッキングが生じやすくなる。そこで本実施の形態では、コンプレッサ403と分岐パイプ411aとの間にインタークーラ431を介在させ、吸気通路122を流れる空気の温度を低下させている。
また吸気通路122中、インタークーラ431の下流側にはスロットルバルブ441が設けられ、吸気通路122を流れる空気の流量を調整することができるようにしている。
本実施の形態では、吸気バルブ151と排気バルブ161とに中空バルブを採用している。中空バルブは、内部に中空部Hを設けたバルブである。
もっとも、中空バルブを採用している点については共通するものの、吸気バルブ151と排気バルブ161とではその構造が異なっている。
図3(a)(b)〜図6(a)(b)に、本実施の形態で採用可能な吸気バルブ151と排気バルブ161との四種類の組み合せ例(第1〜第4の形態)を挙げる。
図3(a)に示すように、吸気バルブ151の中空部Hは、軸部152の中間付近から傘部153に渡って連続した一つの空間として形成されている。このように、軸部のみならず傘部まで中空となっているバルブを、以降「傘中空バルブ」という。傘部まで中空とすることによって、吸気バルブ151をより軽量化させ、エンジンフリクションを低減することができる。傘中空バルブである吸気バルブ151には、冷媒を封入していない。このように、吸気バルブの冷媒封入工程を有しないことで、低コスト・高性能化を実現することができる。また、吸気バルブ151に冷媒を封入すると、傘部153の熱が冷媒を介して軸部152に伝達され、軸部152の温度が上昇する可能性がある。冷媒を封入しないことで、軸部152の温度上昇による吸入空気の加温を防止し、燃焼効率の低下を防止することができる。
第2の形態においては、第1の形態と同様、図4(a)に示すように、吸気バルブ151は、冷媒を封入していない中空部Hを有する傘中空バルブであり、図4(b)に示すように、排気バルブ161は、傘部163にまで中空部Hを設けた傘中空バルブであって、排気バルブ161の中空部Hには冷媒164を封入している。
図5(b)に示すように、第3の形態においては、排気バルブ161は、第1及び第2の形態と同様であり、軸部162のみならず、傘部163にまで中空部Hを設けた傘中空バルブであり、内部に冷媒164を封入している。
かつ、第3の形態においては、図5(a)に示すように、吸気バルブ151は、傘部153は中実で軸部152のみに中空部Hを有する。このように軸部152にのみ中空部Hを設けたバルブを「軸中空バルブ」という。
図6(a)に示すように、吸気バルブ151は、第3の形態と同様に、軸部152にのみ中空部Hを設けた軸中空バルブである。
図6(b)に示すように、第4の形態の排気バルブ161は、第1〜第3の形態の排気バルブ161と同一のものである。つまり軸部162のみならず、傘部163にまで中空部Hを設けた傘中空バルブであり、内部に冷媒164を封入している。
エンジン11及びターボチャージャー401の作用については簡単に前述したので、詳しい説明は省略する。
ここでは吸排気用のバルブ151,161の作用について言及する。
前述したとおり、エンジンのダウンサイジング化を実現する上では、冷媒を封入した中空バルブの採用が望ましく、場合によってはそれが不可避である場合もある。
その反面、冷媒を封入した中空バルブは中実バルブに比べて極端に部品コストが高く、車種やグレードと無関係に制限なく採用できるものではない。
そこで本実施の形態では、吸排気用のバルブ151,161の最適な組合せを提案している。
まず吸気バルブ151と排気バルブ161とが晒される環境の相違に着目すると、排気バルブ161の方がより厳格な熱対策を求められることがわかる。燃焼後の高温になった燃焼ガスを排気ポート131から取り込んで排気通路132に導くという役割上、吸気ポート121から外気をシリンダ211に取り込むに過ぎない吸気バルブ151よりも、排気バルブ161はより高温環境下に晒されるからである。
そこで本実施の形態では、上記第1〜第3の形態に示すように、排気バルブ161には冷媒を封入した中空バルブを用い、吸気バルブ151には冷媒を封入しない中空バルブを用いることにした。
これによって吸排気用のバルブ151,161の部品コストとエンジン11のダウンサイジング化という相矛盾する関係に最善の調和をもたらすことができる。
燃焼室Cでの燃焼効率の向上やエンジンの高回転化には、吸排気用のバルブ151,161の追従性が大きく影響する。
例えば吸気バルブ151の追従性が劣っていると、「吸入」工程でシリンダ211内に導入できる混合気の量に変動を来たす。吸気バルブ151の追従性が劣っていると、シリンダ211に最大限の量の混合気を引き込めなかったり、あるいはせっかく導入した混合気が吸気ポート121から戻されてしまったりすることがあるからである。
同様に排気バルブ161についても、その追従性が劣っていると、燃焼室C内に燃焼後のガスを残存させてしまうという問題を引き起こす。
そこで本実施の形態では、吸排気用のバルブ151,161に中空バルブを採用し、その追従性を向上させるようにした。
とりわけ吸気バルブ151については、冷媒164を封入しない中空バルブとしたことから、より一層の追従性の向上を期待することができる。
以上のように本発明の実施形態を説明したが、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、上述の実施形態やそれらの変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
その他、あらゆる変形や変更が許容される。
121・・・吸気ポート
131・・・排気ポート
151・・・吸気バルブ
161・・・排気バルブ
171・・・バルブ駆動機構
201・・・シリンダブロック
211・・・シリンダ
221・・・クランクシャフト
231・・・ピストン
241・・・コネクティングロッド
C・・・燃焼室
H・・・中空部
また、本発明は、それぞれに軸部および傘部を備えた吸気バルブおよび排気バルブを有する内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記吸気バルブが、冷媒を封入しない中空部を内部に備える中空バルブであり、前記排気バルブが、冷媒を封入する中空部を内部に備える中空バルブであり、前記吸気バルブの中空部の径は前記排気バルブの中空部の径よりも大きい、ことを特徴とする。
また、前記吸気バルブの傘部の径は前記排気バルブの傘部の径よりも大きくなっていても良い。
Claims (8)
- それぞれに軸部および傘部を備えた吸気バルブおよび排気バルブを有する内燃機関のシリンダヘッドにおいて、
吸気バルブが、冷媒を封入しない中空部を内部に備える中空バルブであり、
排気バルブが、冷媒を封入する中空部を内部に備える中空バルブである、
ことを特徴とする内燃機関のシリンダヘッド。 - 前記吸気バルブは、前記軸部及び前記傘部に中空部が設けられた傘中空バルブである、
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッド。 - 前記吸気バルブは、前記軸部に中空部が設けられた軸中空バルブである、
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッド。 - 前記排気バルブは、前記軸部及び前記傘部に中空部が設けられた傘中空バルブである、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のシリンダヘッド。 - 前記排気バルブは、前記軸部に中空部が設けられた軸中空バルブである、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のシリンダヘッド。 - 前記吸気バルブの傘部の径は前記排気バルブの傘部の径よりも大きく、前記吸気バルブの中空部の長さは前記排気バルブの中空部の長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリンダヘッド。 - 前記吸気バルブの傘部の径は前記排気バルブの傘部の径よりも大きく、前記吸気バルブの中空部の径は前記排気バルブの中空部の径よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のシリンダヘッド。 - シリンダ内にピストンを往復動自在に保持し、コネクティングロッドを介して前記ピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフトを回転自在に保持するシリンダブロックと、
前記シリンダを前記燃焼室に連絡させて前記シリンダブロックに固定される請求項1〜7のいずれか一に記載のシリンダヘッドと、
を備えることを特徴とするエンジン。
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