JPWO2018025856A1 - 簡便な遺伝子検査法およびコピー数計測法ならびにその支援技術 - Google Patents

簡便な遺伝子検査法およびコピー数計測法ならびにその支援技術 Download PDF

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Abstract

本発明は、核酸含有生体材料を含む試料から核酸増幅用のサンプルを調製するキットを提供することを課題とする。本発明は、(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む試料から核酸増幅用のサンプルを調製するキットを提供する。本発明はまた、(X)非吸水性材料と、(Y)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(Z)吸水性材料とを含む、生体試料を乾燥するためのデバイスを提供する。

Description

本発明は、遺伝子解析法およびキットに関する。より詳細には、簡便な遺伝子コピー数計測法およびその支援技術に関する。
生物の個体間では、野生型とは異なる塩基配列を有する一塩基遺伝子多型(SNP)、マイクロサテライト多型(STRP)やコピー数多型(CNP)が存在する。この一塩基遺伝子多型、マイクロサテライト多型やコピー数多型は、個体の基礎代謝、性質、疾患などの差異を生じさせることが知られており、生物における遺伝子多型やコピー数多型を検査することは将来生じうる疾患などを予測することに繋がることから、臨床的にも重要視されている。したがって、個体のDNAの特定遺伝子において変異が生じているか否かを検査することについて様々な研究が進められており、生体試料、臨床試料などの被検試料に含まれる遺伝子の増幅法として汎用されているPCR法がSNP分析、マイクロサテライト多型やコピー数多型(CNP)分析にも応用されている。
投薬前に遺伝子のSNP、マイクロサテライト多型やコピー数多型を検査し、その遺伝子の型から判断して適切な薬剤の投薬量を決定するなどして、副作用を回避し、効率的な治療効果を得ようとする医療、すなわち、「テーラーメイド医療」、「オーダメイド医療」、あるいは「個別化医療」と呼ばれている患者個々の体質に応じたより適切な医療の実現が可能となり、無用な副作用への対処や不適切な投薬を減らすことによって医療費削減への効果も期待できる。このように、SNP、マイクロサテライト多型やコピー数多型の相違を利用した診断の実用化と普及が大いに期待されている。
本発明者らは、水解性担体を用いた遺伝子検出法を開発し特許出願を行った(特許文献2)。
特開2005−245272号公報 特許第5875230号公報
本発明は、核酸含有生体材料を含む試料から核酸増幅用のサンプルを調製するキットを提供する。このキットを用いることによって、核酸増幅後にコピー数の識別が可能となり、ある特定の遺伝子の存在コピー数(0個を含む)を検出することができ、コピー数多型を特定することができる(Iafrate AJ, Feuk L, Rivera MN et al. Detection of large-scale variation in the human genome. Nat Genet. 2004. 36: 949-51.、Sebat J, Lakshmi B, Troge J et al. Large-scale copy number polymorphism in the human genome. Science. 2004. 305: 525-528)。
また別の被検試料の採取法として、口腔粘膜の細胞を綿棒などで擦り取り利用する方法も報告されている。しかしこの場合、綿棒に保持された細胞から、DNAを抽出し、別途調製した増幅用反応液に抽出したDNA溶液を添加しなければならず、多数の被検試料を同時に処理した場合にサンプルの取り違えや、コンタミネーションが生じる恐れがあり、最善の方法とはいえない。そこで、本発明は、(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む試料から核酸増幅用のサンプルを調製するキットを提供すること、およびこの応用例を開発することによって、上記課題を解決した。
したがって、本発明は以下を提供する。
(項目1)
(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、
(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材と
を含む、核酸含有生体材料を含む試料から核酸増幅用のサンプルを調製するためのキット(サンプル調製キット)。
(項目2)
前記基材(B)は一定範囲量の核酸含有生体材料を含む試料を提供するように構成される、項目1に記載のキット。
(項目3)
前記基材(B)の表面積は前記一定範囲量を提供するのに十分である、項目2に記載のキット。
(項目4)
前記担体(A)は水に入れた際に核酸増幅を許容する、項目1〜3のいずれか1項に記載のキット。
(項目5)
前記担体(A)は光学的検出を許容する、項目1〜4のいずれか1項に記載のキット。
(項目6)
前記核酸増幅後の前記サンプル中の核酸は光学的検出される、項目1〜5のいずれか1項に記載のキット。
(項目7)
前記担体(A)は水解性担体である、項目1〜6のいずれか1項に記載のキット。
(項目8)
前記一定範囲量は、核酸増幅後にコピー数を識別し得る量である、項目2〜7のいずれか1項に記載のキット。
(項目9)
前記一定範囲量は、基準量に対してX倍〜X分の1以内であって、Xは前記核酸増幅においてコピー数が1違う際に識別可能な倍率の相違である、項目2〜8のいずれか1項に記載のキット。
(項目10)
前記(B)基材は、核酸含有生体材料を結合せずに担持する基材である、項目1〜9のいずれか一項に記載のキット。
(項目11)
前記基材は、ポリウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン、キチン、キトサン、コラーゲン、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン、セルロースおよびその誘導体、紙類、コラーゲン、ゼラチン、ウレタン、シリコンおよび脱脂綿(セルロース脱脂綿、アセテート脱脂綿)、またはそれらの組み合わせ、またはそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、項目1〜10のいずれか1項に記載のキット。
(項目12)
前記一定範囲量は、前記担体を一定面積で取り出すことによって達成される、項目2〜11のいずれか一項に記載のキット。
(項目13)
前記基材(B)の表面積は、前記一定面積と同じまたはそれより広い、項目12に記載のキット。
(項目14)
前記基材(B)は、前記一定面積を覆うのに十分な形状である、項目12または13に記載のキット。
(項目15)
前記一定面積は、該一定面積を切除し得る切除器によって切除することで達成される、項目12〜14のいずれか一項に記載のキット。
(項目16)
前記切除器は生検トレパン、およびパンチから選択される、項目15に記載のキット。
(項目17)
前記一定範囲量は、前記試料を一定量で提供することによって達成される、項目2〜16のいずれか一項に記載のキット。
(項目18)
前記担体は水解性紙である、項目1〜17のいずれか1項に記載のキット。
(項目19)
前記核酸増幅は、非特異的増幅が生じる核酸増幅法である、項目1〜18のいずれか1項に記載のキット。
(項目20)
項目1〜19のいずれか一項に記載のキットと、(C)核酸増幅のための試薬とを含む、精製せずに核酸を増幅するためのキット(核酸増幅キット)。
(項目21)
前記核酸増幅のための試薬は、プライマー、核酸増幅酵素、および必要な緩衝剤を含む、項目20に記載のキット。
(項目22)
前記(A)は非吸水性材料と吸水性材料とをさらに含む、項目1〜21のいずれか一項に記載のキット。
(項目23)
(X)非吸水性材料と、
(Y)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、
(Z)吸水性材料と
を含む、生体試料を乾燥するためのデバイス。
(項目23A)
(X)非吸水性材料と、
(Y)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、
を含む、生体試料を乾燥するためのデバイス。
(項目24)
前記担体(Y)は、水に入れた際に核酸増幅を許容する、項目23または23Aに記載のデバイス。
(項目25)
前記担体(Y)は光学的検出を許容する、項目23、または23Aまたは24に記載のデバイス。
(項目26)
前記担体(Y)は水解性担体である、項目23、23A、または24〜25のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目27)
前記非吸水性材料は前記担体を保持するように配置され、該非吸水性材料は前記吸水性材料と脱着可能に連結される、項目18に記載のキットまたは項目23、23A、または24〜26のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目28)
前記非吸水性材料は前記吸水性材料と脱着可能な粘着部材を介して連結される、項目22、23、23A、または24〜27のいずれか一項に記載のキットまたはデバイス。
(項目29)
前記非吸水性材料は前記担体の周囲を取り囲むように配置される、項目22、23、23A、または24〜28のいずれか一項に記載のキットまたはデバイス。
(項目30)
前記担体は、前記非吸水性材料および前記吸水性材料と接触する、項目22、23、23A、または24〜29のいずれか一項に記載のキットまたはデバイス。
(項目31)
前記担体は、前記吸水性材料と直接接触しないように配置される、項目22、23、23A、または24〜30のいずれか一項に記載のキットまたはデバイス。
(項目32)
核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を検出する方法であって、
(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを用いて
該核酸含有生体材料を含む被検試料を提供する工程、
該担体を、該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーを含む核酸増幅試薬含有水溶液に接触させ、核酸が増幅する条件に供する工程、
該光学的手段を用いて、該水溶液中に該特定遺伝子が含まれるか否かおよび/または該特定遺伝子のコピー数を検出する工程を包含する、方法。
(項目33)
前記基材を前記核酸含有生体材料に接触させ、その後、前記担体に該基材を接触させることによって、前記核酸含有生体材料を含む被検試料が提供される、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記被検試料は、一定範囲量の核酸含有生体材料を含むように提供される、項目32または33に記載の方法。
(項目34A)
項目1〜23、23A、および24〜31に記載の1または複数の特徴をさらに含む、項目32〜34のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を光学的手段を用いて検出するための試料を提供するキットであって、
(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
を備える、キット。
(項目35A)
項目1〜23、23A、および24〜31に記載の1または複数の特徴をさらに含む、項目35のいずれか一項に記載のキット。
(項目36)
核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を光学的手段を用いて検出するための試料を提供するシステムであって、
(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
核酸増幅装置と
を備える、システム。
(項目36A)
項目1〜23、23A、および24〜31に記載の1または複数の特徴をさらに含む、項目36のいずれか一項に記載のシステム。
(項目37)
核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を検出するシステムであって、
(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
核酸増幅装置と
光学的手段と
を備える、システム。
(項目37A)
項目1〜23、23A、および24〜31に記載の1または複数の特徴をさらに含む、項目37のいずれか一項に記載のシステム。
(項目38)
核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出する方法であって、
該核酸含有生体材料を含む被検試料を、非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスに接触させる工程、
該担体を該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーを含む核酸増幅試薬含有水溶液に接触させ、該水溶液を核酸が増幅する条件に供する工程、
該光学的手段を用いて、該水溶液中に該特定遺伝子が含まれるか否かおよび/または該特定遺伝子のコピー数を検出する工程を包含する、方法。
(項目38A)
項目1〜23、23A、および24〜31に記載の1または複数の特徴をさらに含む、項目38のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出するための試料を提供するキットであって、
非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスとを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
を備える、キット。
(項目39A)
項目1〜23、23A、および24〜31に記載の1または複数の特徴をさらに含む、項目39のいずれか一項に記載のキット。
(項目40)
核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出するための試料を提供するシステムであって、
非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスとを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
核酸増幅装置と
を備える、システム。
(項目40A)
項目1〜23、23A、および24〜31に記載の1または複数の特徴をさらに含む、項目40のいずれか一項に記載のシステム。
(項目41)
核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出するシステムであって、
非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスとを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
核酸増幅装置と
光学的手段と
を備える、システム。
(項目41A)
項目1〜23、23A、および24〜31に記載の1または複数の特徴をさらに含む、項目41のいずれか一項に記載のシステム。
本発明において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
本発明により、効率的で自動化しやすい遺伝子増幅が可能となるとともに、効率的で正確で高い感度での特定遺伝子の検出が可能となり、遺伝子多型やコピー数多型の簡易検出が可能となる。
図1は、アルコール体質遺伝子(ADH1B)を例にして解析した結果を示す図である。アルコール体質遺伝子(ADH1B)をアプリケーター(トラストキャッチャーTM)(左下)、角(γ線滅菌済)スワブ(左上)または丸(未滅菌)スワブ(右上)(CleanTip(登録商標)Swabs, Texwipe)を使用して、口腔粘膜細胞を採取し、水溶紙に圧着、細胞を転写し、乾燥し、これを増幅にかけた結果を示す。各図においてX軸は対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸は対立遺伝子Y(アレル1)を示す。ひし形はA(pc)を示し、三角はA/G(pc)を示し、丸はG(pc)を示し、四角は蒸留水(nc)を示す。×はシグナルが弱く、判定できなかったサンプルを示す。蒸留水を、一般的にはシグナルを与えないネガティブコントロール(nc)として使用した。ポジティブコントロール(pc)は、それぞれの遺伝子型の検出遺伝子領域をプラスミドDNAに組み込んだリコンビナント(組み換え)DNAである。増幅条件は熱変性:50℃、2分→95℃、10分、95℃、15秒→60℃、1分を40サイクルである。スポイトで唾液採取した場合には、数サンプル(X)のシグナルが、蒸留水付近に現れ、識別が困難であった。それに対して、それ以外の3つはいずれも、識別力は十分であると考えられる。スポイトを用いる方法ではDNA量が一定しない(いずれのシグナルも蒸留水方向に流れる)。 図2は、アルコール体質遺伝子(ALDH2)を例にして解析した結果を示す図である。アルコール体質遺伝子(ALDH2)をアプリケーター(トラストキャッチャーTM)(下)または角(γ線滅菌済)スワブ(上)を使用して、口腔粘膜細胞を採取し、水溶紙に圧着、細胞を転写し、乾燥し、これを増幅にかけた結果を示す。各図においてX軸は対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸は対立遺伝子Y(アレル1)を示す。ひし形はG(pc)を示し、三角はG/A(pc)を示し、丸はA(pc)を示し、四角は蒸留水(nc)を示す。×はシグナルが弱く、判定できなかったサンプルを示す。増幅条件は熱変性:50℃、2分→95℃、10分、95℃、15秒→60℃、1分を40サイクルである。判定することのできなかったサンプルはなく、いずれも、識別力は十分であると考えられる。蒸留水を、一般的にはシグナルを与えないネガティブコントロール(nc)として使用した。ポジティブコントロール(pc)は、それぞれの遺伝子型の検出遺伝子領域をプラスミドDNAに組み込んだリコンビナント(組み換え)DNAである。このように、ALDH2は、ADH1Bと同じ傾向になることが予想されるため、以下の実験は、代表例としてADH1Bを用いて行った。 図3は、ADH1Bを標的として、種々の定性濾紙および水溶紙を用いて、アプリケーター(トラストキャッチャーTM)で採取した唾液を滴下・乾燥したサンプルを使用して比較した結果を示す。アプリケーター(トラストキャッチャーTM)で採取した唾液(口腔粘膜細胞)を滴下・乾燥したものを4mmΦにカットし、50μLDWで懸濁、95℃5分加熱処理したものを2μL使用した。水溶紙が非常に優れた部材であることが示される。各図においてX軸は対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸は対立遺伝子Y(アレル1)を示す。▲はG/Aを示し、□は蒸留水を示す。蒸留水はシグナルを与えず、GでもAでもない)。下の表は、ろ紙および水溶紙の各種規格を示す。水溶紙の紙質に関係なく、細胞保持量はほぼ一定であった。操作性から、60MDPが最も好ましいものであったが、これに限定されるものではない。ADVANTEC濾紙の欄では、濾紙では、吸水度の低いNo.4Aは細胞保持量が少ない。 図3Aは、ADH1Bを標的として、キムワイプ(日本製紙クレシア)、キムタオル(日本製紙クレシア)、新聞紙(読売新聞、印字のない部分を使用)およびティッシュペーパーを用いて、アプリケーター(トラストキャッチャーTM)で採取した唾液を滴下・乾燥したサンプルを使用して比較した結果をさらに示す図である。アプリケーター(トラストキャッチャーTM)で採取した唾液(口腔粘膜細胞)を滴下・乾燥したものを4mmΦにカットし、50μLDWで懸濁、95℃5分加熱処理したものを2μL使用した。X軸は対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸は対立遺伝子Y(アレル1)を示す。黒三角▲はG/Aを示し、白四角□は蒸留水を示す。蒸留水を、一般的にはシグナルを与えないネガティブコントロール(nc)として使用した。ポジティブコントロール(pc)は、それぞれの遺伝子型の検出遺伝子領域をプラスミドDNAに組み込んだリコンビナント(組み換え)DNAである。 図3Bは、種々の基材を用いて(基材としてスワブを用いているものではこする回数を変化させて)サンプリングした後の、95℃5分の加熱処理の有無による結果の差異を示す図である。X軸は対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸は対立遺伝子Y(アレル1)を示す。 図3Cは、種々の基材を用いて(基材としてスワブを用いているものではこする回数を変化させて)サンプリングした後の、95℃5分の加熱処理の有無による増幅曲線の差異を示す図である。横軸はサイクル数であり、縦軸は増幅されたPCR産物に相当する蛍光シグナル(ΔRn)である。 図3Dは、図3Bから新聞紙とキムワイプを基材として用いたデータを除いたものであり、スワブによる口腔内を擦る回数を変化させて行った実験の結果を示す図である。遺伝子型の識別力について、口腔内を擦る回数には依存しない。 図3Eは、図3Cから新聞紙とキムワイプを基材として用いたデータを除いたものであり、スワブによる口腔内を擦る回数を変化させて行った実験による増幅曲線の差異を示す図である。横軸はサイクル数であり、縦軸は増幅されたPCR産物に相当する蛍光シグナル(ΔRn)である。遺伝子型の識別力について、口腔内を擦る回数には依存しない。 図3Fは、スワブ様の基材について、異なるものを使用して調製したサンプルを用いてリアルタイムPCRを行って増幅させた結果を示す図である。X軸は対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸は対立遺伝子Y(アレル1)を示す。ひし形はA(ポジティブコントロール=pc)を示し、三角はG/A(ポジティブコントロール=pc、サンプル)を示し、丸はG(ポジティブコントロール=pc)を示し、四角は蒸留水(ネガティブコントロール=nc)を示す。口腔粘膜細胞採集用の基材として、スワブ(ポリウレタン)、スワブショートフォームタイプ(ポリウレタン)、アプリケーター(トラストキャッチャーTM)の先端部(ポリビニルアルコール(PVA))、綿棒(コットン)を使用して口腔粘膜細胞を採集して水溶紙に押し当てトランスファーした。どの基材についても、良好な遺伝子型の識別が可能であることを示す結果だった。 図3Gは、スワブによって調製したサンプルについての遺伝子型の判定における、加熱の有無による差異および懸濁液と上清との差異を示す図である。X軸は対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸は対立遺伝子Y(アレル1)を示す。 図3Hは、スワブおよびアプリケーター(トラストキャッチャーTM)を基材として用いて6名の被験者の遺伝子型を解析した結果を示す図である。X軸は対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸は対立遺伝子Y(アレル1)を示す。ひし形はAと判定されたサンプルを示し、三角はA/Gと判定されたサンプルを示し、丸はA/Gのポジティブコントロール(pc)を示す。理論に束縛されることを望まないが、表面積がほぼ一定に保たれるスワブでは、定量性がより精確に達成されたのに対して、アプリケーターは適用時に形状が変形し、内部に吸収されていた試料が染み出す(体積効果ともいう)ため、定量性はスワブのほうがアプリケーターより好ましいようである。これはアプリケーターのような形状では体積効果が検出限界を超えることがあるためと考えられる。 図4は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の遺伝子欠損をSYBR(登録商標) Greenを使用したリアルタイムPCR反応のエンドポイント解析で融解曲線解析を実施した結果である。上段は、融解曲線分析を個々に示したグラフである。左からI/I、I/DおよびD/Dであり、図中にTm値を示す。下段は、左から3タイプの重ね合せ融解曲線分析、3タイプの重ね合せ増幅曲線、12名全員の増幅曲線を示す。融解曲線から遺伝子多型解析は問題なくできることが示された。増幅曲線Ct値が、23.7サイクル±2.6であることは、感度的にも何も問題なく、DNA抽出をカットしているにもかかわらず、理想的な検出が出来ていると言うことの証明である。 図4Aは、MultiNA(MCE−202,Shimadzu)での、ACE遺伝子型の自動化マイクロチップ電気泳動による検出を示す図である。レーン1:マーカー、レーン2:ACE D/D(190bp)、レーン3:ACE I/I(490bp)、レーン4:ACE I/D(490、190bp)、レーン5:DW、LM:下側マーカー、UM:上側マーカー。 図5は、シトクロム450代謝酵素であるCYP2D6について、そのコピー数多型を、DNAの抽出・精製を行わず、TaqMan(登録商標)プローブ法で定量的に検出することができた画期的な結果を示すデータである。上段は、左から、ΔΔCt=約1の場合1コピーと算出でき、ΔΔCt=約2の場合2コピーと算出できることを示す。下段は、左から1コピーの4検体を重ねた場合の増幅曲線を示す(それぞれのCt値がCTP2D6:26.9±0.9 cycles,RNaseP:28.2±0.5 cycles)。2コピーの10検体を重ねた場合の増幅曲線(それぞれのCt値がCTP2D6:25.7±2.3 cycles,RNaseP:27.6±1.8 cycles)を示す。コピー数多型の存在しないRNaseP遺伝子をレファレンスとして、CYP2D6のコピー数多型をそれぞれのCt値の差(ΔΔCt)から算出した。全14検体の増幅曲線Ct値が、CTP2D6:26.0±2.3 cycles,RNaseP:27.8±1.8 cyclesであることは、感度的にも何も問題なく、DNA抽出をカットしているにもかかわらず、理想的な検出が出来ていると言うことの証明である。増幅曲線Ct値が、2コピーのアレルの場合、CYP2D6:26.0サイクル±2.3、レファレンスのRNaseP:27.8サイクル±1.9であることから、特に感度的には何も問題なく判定することができることが示された。 図6は、TaqMan(登録商標) PCR法を用いてコピー数多型を検出する際の計算の方法を示す模式図である。左下の長方形の図は、各検体のコピー数多型判定結果をバーグラフで示した図である。短いものが1コピー、長い方が2コピーと分離することができ、コピー数多型を判定することができる。右下図は代表的な増幅曲線である。右下のグラフは、コピー数多型を増幅曲線のCt値から算出した例を示す。 図7は、本発明で使用されるスワブ(代表的にポリウレタンスワブが使用される)の形状および使用法を示したものである。(1)スワブのスポンジ部を口中に入れ、必要に応じて(2)スポンジの片面で右ほほ内側の粘膜を、円を描くように念入りに15回以上こすることが推奨されるがこすらなくても同様の結果が出ることが示されている。(3)もう片面で左ほほ内側を念入りに15回以上こするがこすらなくても同様の結果が出ることが示されている。(4)必要に応じて同じスポンジで舌の裏側もこするが、こすらなくても同様の結果が出ることが示されている。次に中段にあるように、スワブの両面を水溶紙に押し当てる。さらに、下段で例示するように、十分に乾燥する(代表的に、30分以上)。 図8は、水溶紙を用いてサンプル調製をする場合の模式図である。一番上には上から見た鳥瞰図を示す。中央に水溶紙を標準的な大きさ、ここでは直径20mmで配置する。これを横から見た図が上から2つ目の図である。このように本発明のデバイスは2つの層から構成され、その間に好ましい実施形態としての両面粘着テープで配置される構図である。上の層は材質がプラスチックであり、下の層は吸水性ポリマーである。プラスチックの上層には穴が施され、水溶紙が配置される。水分は吸水性ポリマー(例えば帝人ペルオアシス等)を用いることで吸収される。両面粘着テープは事後に剥がせるものが好ましい。これにより吸水性ポリマーをはがすことができる。その後、水溶紙を保持した上の層を乾燥させ(上から3段目=中央)、その後これをカッター台に配置する。これを貝印等から入手可能な生検トレパンを用いて所定の大きさの水溶紙をくりぬく。 図9は、口腔粘膜細胞検体を用いたダイレクトTaqMan(登録商標) PCR法のスキームの例示である。水(蒸留水=DW)50μLを加え、95℃5分間加熱する。遠心分離し、冷蔵庫(4℃)で保管する。TaqMan(登録商標) PCR反応液中(10μL系)に本抽出液1μLを添加して反応する。左にあるのは模式図である。 図10は、アプリケーター(トラストキャッチャーTM)を用いた場合の試料調製の模式図である。このデバイスの標準的な使用方法に基づいて、スポンジ部を口中に入れ、唾液を吸い取ることで、試料が調製できる。スポンジは、その後、逆向けにして、3滴ほど添加孔(直径6mm)に入れて試料を採取する。 図11はアプリケーター(トラストキャッチャーTM)を用いた場合の試料調製の詳細である。一番上は、上から見た鳥瞰図である。直径6mmの場合を示している。上から2番目には、最初の状態を横から見た図で示す。図8と同様、本発明のデバイスは2つの層から構成され、その間に好ましい実施形態としての両面粘着テープで配置される構図である。上の層は材質がプラスチックであり、下の層は吸水性ポリマーである。プラスチックの上層には穴が施され、水溶紙が水中に配置(落下または添加)される。水分は吸水性ポリマー(例えば帝人ペルオアシス等)を用いることで吸収される。両面粘着テープは事後に剥がせるものが好ましい。これにより吸水性ポリマーをはがすことができる。その後、水溶紙を保持した上の層を乾燥させ(上から3段目=中央)、その後これをそのまま反応チューブに入れ例えば蒸留水100μLを入れて95℃で5分反応させることができる。この後は図9のように反応を進行させることができる 図12はサンプリングプロセスを示す模式図である。左パネルには専用のポリウレタンスワブの例が示されている。水溶紙は直径6mmで設計されサンプリングプレートを構成する。これを5分間乾燥させ、裏面を表に出し、左パネルにあるように突っつき棒(取り出しスティック)を用いて、TaqMan(登録商標) PCR反応液調製用のチューブに入れることができ、これをすぐにリアルタイムPCRで分析することができる。 図13は、本発明の模式的スキームを示す。 図13Aは、従来法の模式的スキームを示す。 図14は、本発明の別の実施形態である。サンプリングシートおよび両面テープの形状は左パネルに記載し、右側には実際の使用法の模式図を記載する。下段には、本発明の担体を用いた製品の例が示される。 図15は、新聞紙を担体として用いて調製したサンプルの遺伝子の検出を示す図である。X軸はADH1Bの対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸はADH1Bの対立遺伝子Y(アレル1)を示す。黒三角▲は各種のサンプリングによる唾液サンプルに由来するシグナルを示し、黒丸●は段階希釈したポジティブコントロールである。 図16は、定性ろ紙を担体として用いて調製したサンプルの遺伝子の検出を示す図である。X軸はADH1Bの対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸はADH1Bの対立遺伝子Y(アレル1)を示す。黒三角▲は各種のサンプリングによる唾液サンプルに由来するシグナルを示し、黒丸●は段階希釈したポジティブコントロールである。 図17は、水溶紙を担体として用いて調製したサンプルの遺伝子の検出を示す図である。X軸はADH1Bの対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸はADH1Bの対立遺伝子Y(アレル1)を示す。黒三角▲は各種のサンプリングによる唾液サンプルに由来するシグナルを示し、黒丸●は段階希釈したポジティブコントロールである。 図18は、スワブから水溶紙への転写回数を変化させて行った実験の結果を示す図である。X軸はADH1Bの対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸はADH1Bの対立遺伝子Y(アレル1)を示す。黒三角▲は各種のサンプリングによる唾液サンプルに由来するシグナルを示し、黒丸●は段階希釈したポジティブコントロールである。 図19は、10倍の希釈系列で段階的に希釈した唾液を用いて行った水溶紙から水中へ放出される試料の定量性の試験の結果を示す図である。X軸はADH1Bの対立遺伝子X(アレル2)を示し、Y軸はADH1Bの対立遺伝子Y(アレル1)を示す。黒三角▲は各種のサンプリングによる唾液サンプルに由来するシグナルを示し、黒丸●は段階希釈したポジティブコントロールである。一次関数と仮定した場合の回帰率は0.95以上であると算出される。 図19Aは、水溶紙から水中へ放出される試料の定量性の試験における、ポジティブコントロールの増幅曲線に基づいた検量線を示している。縦軸はCt値であり、横軸はコピー数である。ポジティブコントロールのコピー数については、精製されたDNAから分光学的に濃度(μLあたりのコピー数)を算出することができる。アレル1、2共に直線性が示されている。一次関数と仮定した場合の回帰率は0.95以上であると算出される。 図19Bは、10倍の希釈系列で段階的に希釈した唾液を用いて行った水溶紙から水中へ放出される試料の定量性の試験において、コピー数を図19Aに示される検量線に基づいて算出した結果を示す。水溶紙に滴下した場合には、1000倍希釈まで直線性が示されている。 図20は、本発明のサンプリングシートに試料を付着させたのちに乾燥用の箱に入れて運搬する場合の模式図である。図20右図のように、サンプリングシートの一部を折り曲げられるようにし、なおかつその部分を完全には折り畳まれないようにしておけば、その部分がスペーサーとなって、サンプリングシート上の試料が付着した部分が他の部分に触れないようにしながら箱(図20左図参照)に入れて輸送することができる。 図21は、SYBR(登録商標) Greenリアルタイムアッセイ法により、機能性水溶紙(60MDP、日本製紙パピリア)の性能を定性ろ紙(ADVANTEC No.1)およびWhatman(R)903プロテインセーバーカードと比較して性能評価した結果を示す図である。左から、黒線:機能性水溶紙(60MDP、日本製紙パピリア)、青線:Whatman(登録商標)903プロテインセーバーカード、赤線:定性ろ紙(ADVANTEC No.1)、緑線:ネガティブコントロール(蒸留水)の結果を示す。 図22は、ADH1BおよびALDH2の遺伝子型判定の結果を示す図である。 図23は、融解曲線によるACE遺伝子型判定の結果を示す図である。 図24は、乾燥唾液サンプルに対しての水溶紙の性能比較を示す図である。 図25は、乾燥血液サンプルに対しての水溶紙の性能比較を示す図である。
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
本明細書において使用される「核酸含有生体材料」とは、特定の対象となる核酸を含む任意の生体材料をいい、生体組織・細胞(例えば、植物、動物の細胞)、細菌およびウイルス等の微生物など、およびこれらに由来する調製物等を含み、「核酸含有生体材料を含む試料」としては、鼻汁、鼻腔ぬぐい液、眼結膜ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、喀痰、糞便、血液、血清、血漿、髄液、唾液、尿、汗、乳、精液、口腔ぬぐい液、歯間ぬぐい液、湿性耳垢、膣腔ぬぐい液および細胞組織などの生体試料または臨床試料の他、食品などを挙げることができる。被検試料は、細胞、真菌、細菌およびウイルスからなる群より選択されるRNAを包含する試料を含むものであってもよい。増幅の対象となる遺伝子または検出の対象となる特定遺伝子はDNAであってもRNAであってもよい。この場合、本発明においては、水解性担体に担持させた被検試料を反応液に直接添加してRNA増幅反応を行なうことにより、当該被検試料中に存在するRNAを直に増幅させることができる。ここで、「直接添加」とは、RNA増幅に先立って、このRNAを包含する被検試料からRNAを抽出する過程が不要という意味である。
本明細書において「核酸含有生体材料を結合し得る」とは、担体または基材のことをいう場合、核酸含有生体材料(代表的には細胞)を結合することができる任意の担体または基材をいう。本明細書において「核酸含有生体材料を結合し得る」かどうかは、以下の条件で測定することができる。
例えば、以下の試験で判定することができる。
(核酸含有生体材料結合試験)
1)一定面積(例えば、6mmΦ(直径))のパンチ担体(新聞紙、定性濾紙No.1、水溶紙60MDP)を用意し、
2)その担体に一定量の細胞含有溶液(例えば、唾液10μL)をたらして1時間自然乾燥し、
3)その後、担体を水の中に浸し、
4)その後、一定時間内(0〜60分、0分、2分、5分、10分、30分、60分)に水中に遊離して来る細胞数をADH1BのコントロールプラスミドからリアルタイムPCR法にて定量する。その後、95℃5分間熱処理する事により、担体または基材にどのぐらいの細胞が接着し、水中に浸漬した場合に細胞が遊離しうるか「核酸含有生体材料を結合し得る保持力」を判定することができる。
この場合、水中の遺伝子検査を行うのに十分な数の細胞数(約1×10コピー細胞)を遊離すると計算される場合、その担体または基材が「核酸含有生体材料を結合し得る」と判定することができる。なお「Xコピー細胞」とは、「Xコピーの特定遺伝子を遊離し得る細胞数」を意味する。
3)の条件は、加熱工程(例えば、95℃5分間熱処理)または煮沸工程をした場合を想定することもできる。その場合、水の中に浸した後、煮沸する工程を含ませることができる。
この場合、本明細書において担体または基材が「核酸含有生体材料を結合し得る」かどうかは、少なくとも上記3)において加熱工程または煮沸する工程を含めた場合に水中の遺伝子検査を行うのに十分な数の細胞数(約1×10コピー細胞)を遊離すると計算される場合、「核酸含有生体材料を結合し得る」と判定することができる。この場合、特に区別する場合は、「加熱条件下で遊離可能に」または「煮沸条件下で遊離可能に」「核酸含有生体材料を結合し得る」と形容することができる。3)で加熱または煮沸条件を含めないでも「核酸含有生体材料を結合し得る」担体または基材は、通常「加熱条件下で遊離可能に」または「煮沸条件下で遊離可能に」「核酸含有生体材料を結合し得る」担体または基材である。また、3)で加熱条件または煮沸条件を含めないでも「核酸含有生体材料を結合し得る」と判定されない場合でも、いくつかの場合、「加熱条件下で遊離可能に」または「煮沸条件下で遊離可能に」「核酸含有生体材料を結合し得る」担体または基材でありうる。したがって、通常は、本発明は、「加熱条件下で遊離可能に」または「煮沸条件下で遊離可能に」「核酸含有生体材料を結合し得る」担体または基材を用いるが、好ましい実施形態では、「加熱条件下で遊離可能に」「核酸含有生体材料を結合し得る」担体または基材を用いることができ、より好ましくは3)において加熱条件も煮沸条件も用いないで「核酸含有生体材料を結合し得る」担体または基材を用いることができる。
別の好ましい実施形態では、3点以上の濃度で同様の実験を行い、各々の点をプロットしたうえで、線形に回帰することが好ましい。そのような線形回帰する場合に、定量性がより保証されるからである。この場合、回帰率は通常0.6以上、好ましくは0.7以上、好ましくは0.8以上、好ましくは0.9以上、好ましくは0.95以上、好ましくは0.98以上、好ましくは0.99以上でありうる。本発明では、回帰率が0.8以上、さらに好ましくは0.9以上、なおさらに好ましくは0.95以上、0.98以上、または0.99以上の材料を用いることが好ましくありうるが、このような回帰率は求められる定量性の品質に応じて変動しうる。定量性の確認は、図19に示されるように、2つの遺伝子の増幅産物について3点以上の濃度で増幅プロットを行い、それらが線形の関係にあることによっても確認することができる。
なお、実施例で用いた新聞紙及び濾紙は、水に浸漬しただけでは、水中の遺伝子検査するに十分な細胞数(約1x10コピー細胞)を遊離してこない(したがって、この場合SNP判定不能である)が、95℃5分間熱処理の加熱条件下で、10コピーを放出し、細胞が遊離していることが理解される。
実施例で使用した水溶紙の場合、水に浸漬しただけで、水中に10〜10コピーの細胞を放出し、95℃5分間熱処理することで、10コピーのゲノムDNAが遊離することが示されている。水溶紙は、スワブを用いた場合、新聞紙及び濾紙に比べ、約100倍の細胞数の口腔内粘膜細胞を捕獲する。
例示的な例において、図19に示されるように、95℃5分間熱処理した各担体のリアルタイムPCRの増幅曲線のCt値から、新聞紙及び濾紙は10コピー、水溶紙は10コピーの細胞を一定面積6mmΦのパンチを一定量200μLの水に浸漬して、その内の5μLを使用して、リアルタイムPCRでDNA定量することで、実施例において使用される水溶紙は定量性があることも示されている。
本明細書において、「担体より核酸含有生体材料の結合能が低い基材」とは、担体と基材とを比較した場合に、核酸含有生体材料(例えば、細胞)の結合能が基材のほうが担体よりも低いものをいい、基材に核酸含有生体材料が担持されている場合に、その基材を担体に接触させると、一定程度の核酸含有生体材料(例えば、細胞)が、好ましくは実質的にすべての核酸含有生体材料(例えば、細胞)が担体に移るような基材と担体との組み合わせをいう。ある担体が与えられた場合に、任意の基材がその担体より核酸含有生体材料の結合能が低いかどうかは、例えば、以下のような試験で確認することができる。
本明細書では、例えば、以下のような結合能比較法(1)、結合能比較法(2)等の方法で「担体より核酸含有生体材料の結合能が低い基材」を判定することができる。
(結合能比較法(1))
1)担体および基材を用意し、
2)その基材に一定量の細胞含有溶液をたらして何分間(例えば、5分間)か置き、
3)その後、基材と担体とを一定時間(例えば、5秒)接触させ、
4)その後、基材と担体にどのぐらいの細胞または核酸が残っているか測定し(核酸の場合、例えば、上述した定量的PCR等を用いる))、測定結果をもって、半数以上の核酸含有生体材料が担体に移っていれば、好ましくは実質的にすべて核酸含有生体材料が移っていれば、「担体より核酸含有生体材料の結合能が低い基材」と判断する。本発明において通常用いられる担体または基材は、「核酸含有生体材料を結合し得る」ものである。
(結合能比較法(2))
(1)担体および基材を提供する。
(2)担体に一定量(例えば、10μL)の核酸を含む試料を接触させる。
(3)この担体と試験対象となる基材候補とを一定時間接触させる。
(4)一定時間経過後、担体および基材候補で互いに接触していた面を一定面積(例えば、6mmΦ(直径))切り取る。
(5)切り取った切片に含まれる核酸量をそれぞれ測定し(例えば、上述した定量的PCR等を用いる)、比較する。
(6)試験担体から抽出される核酸量よりも少ない量の核酸量が基材候補から見いだされた場合に、その基材候補を本発明において用いられる基材として採用する。
ここで、適切な基材と担体とは相対的な関係にあるといえる。
本明細書において、「核酸含有生体材料を結合せずに担持する」とは、例えば、上記試験において、実質的にすべて核酸含有生体材料が移る場合をいう。
本明細書において「一定範囲量」の核酸含有生体材料は、本発明において核酸増幅を行った後になされる測定または分析において、別の結果と混同が回避される量をいう。たとえば、基準量に対して64倍(+6サイクル)〜64分の1以内(−6サイクル)であって、Xは前記核酸増幅においてコピー数が1違う際に識別可能な倍率の相違であり、例えば、32倍〜32分の1、16倍〜16分の1、8倍〜8分の1、4倍〜4分の1、10の二乗根倍〜10の二乗根分の1、3倍〜3分の1、1.7〜1.8倍程度〜1.7〜1.8分の1等を挙げることができる。あるいは、基準量に対してX倍〜X分の1以内であって、Xは前記核酸増幅においてコピー数が1違う際に識別可能な倍率の相違である。なお、コピー数0の場合は、標的遺伝子の増幅は得られない。コピー数1の場合は、レファレンスDNA(一般的にはRNasePを使用する)のコピー数は2であるので、そのCt値の差を基準にコピー数を換算する。実施例において例示したCYP2D6の場合、コピー数1の場合はΔCt=1、コピー数2の場合はΔCt=2、コピー数3の場合はΔCt=2.3〜2.6が使用されているが、これらに限定されるものではない。
本明細書において、担体が「水に入れた際に核酸増幅を許容する」とは、水又は水溶液(例えば、増幅試薬等を含む)に入れた際に、核酸増幅反応を阻害しないか、あるいは追加の特定試薬(例えば、KOD FX Neo (東洋紡ライフサイエンス)に添付されているバッファーKOD FX Neo bufferを10%程度加えると核酸増幅反応の阻害を回避することができる。
本明細書において、担体が「光学的検出を許容する」とは、水又は水溶液(例えば、増幅試薬等を含む)に入れた際に光学的検出(肉眼を含み、例えば、CCDやPMT等を含む)が可能であることをいう。
本明細書において「水解性担体」とは、水と接触することによって分解し、水に溶解または分散する性質を有する担体を指す。なお、水解性であるか否かは、たとえば10μlの水(反応液)に、0.05〜0.1mgの担体を接触させた後、その水(反応液)の660nmにおける濁度をBio−RAD社製のSmart Spec(商標)3000を用いて測定した場合に0.4以下である場合に水解性を有するものとする。このような水解性担体として、具体的には、60MDP(日本製紙パピリア社製)、30MDP(日本製紙パピリア社製)、120MDP(日本製紙パピリア社製)、30MDP−S(日本製紙パピリア社製)、60MDP−S(日本製紙パピリア社製)などのMDPシリーズの製品、30CD−2(日本製紙パピリア社製)、60CD−2(日本製紙パピリア社製)、120CD−2(日本製紙パピリア社製)などのCD−2シリーズなどの水解性紙、水解紙(特殊紙商事株式会社製)、アガロースゲルを乾燥し膜状にしたもの、ゼラチン、コラーゲンなどを加熱溶解後乾燥させて膜状にしたものなどが挙げられる。中でも、遺伝子増幅、あるいは、特定の遺伝子検出に用いる反応液中で、反応中に均一に分散し、さらに沈降し、物理的操作や光学的検出に干渉しにくい状態になることから、水解性担体として水解性紙を用いることが好ましい。また、別の好ましい実施形態では、光学的検出を許容するものが好ましい。本明細書では「水解紙」は「水解性紙」又は「水溶紙」とも称することがあり、これらは同じ意味で用いられる。
通常の紙は、植物性の繊維(例えば、セルロース)を主体として、繊維を絡み合わせてできている。この繊維の間には、セルロースのOH基によって水素結合が生じるが、水中ではその結合が解除されるため、紙は一般的に水によって物理的強度を失い、時間をかければ繊維が水中に分散する。水溶紙は、そのような、水に溶ける性質をさらに増強するように製造された紙である。水溶紙は、例えば、セルロースに親水性の官能基を導入した誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の水溶性セルロース誘導体を骨格として紙を形成することによって、紙を構成しているセルロース自体を水に溶解しやすくすることによって製造することができる。例えば、CMCは、サンローズ(登録商標)(日本製紙)等であり得る。CMCは、OH基にカルボキシメチル基を置換させたものであって、カルボキシル基の極性により可溶化される。セルロースの単位となるグルコースには3個のOH基があるが、このうち、グルコース単位1個あたり平均して0.3個以上をカルボキシメチル基で置換すると、水溶性が生じ始める。このような水溶性セルロース誘導体は、セルロース繊維中のOH基を様々な割合で置換したものであってよい。また、紙の繊維中に、任意の割合でこのような水溶性セルロース誘導体を含めることができる。あるいは、紙の繊維の結合について、物理的な絡み合わせではなく、水溶性のバインダーを用いて結合することにより、水中で繊維間の結合が解消されることによって水溶紙を製造することができる。このような紙の水溶性に関する性質は、繊維と工業 Vol.1 1968 No.10 P604−608、江前敏晴, 紙パ技協誌 58(8), パピルス, 105−109(2004)等に記載されており、当業者によく知られている。
水溶紙は、セルロース繊維をカルボキシメチル化した繊維状カルボキシメチルセルロース(繊維状CMC)をパルプに配合し抄紙した後、アルカリ剤でCMCをそのアルカリ金属塩に変換した紙が挙げられる。この紙は、カルボキシメチル基の量、アルカリ金属塩への置換度により水分散溶解性を調節することができる。繊維状CMCアルカリ金属塩は水に浸漬すると膨潤し、その後溶解する性質を備えている。繊維状CMCアルカリ金属塩が紙に配合された水溶紙を水に浸漬した場合、繊維状CMCアルカリ金属塩がまず、膨潤、次に溶解することにより、同じく水と接したパルプ線維同士の結着が容易にはずれて、水溶紙が水分散溶解性を示すと考えられる。
このような水溶紙(水解紙)は、本発明において好ましい担体として利用することができる。例えば、特開2006−180983号、特開2013−185259号、特開2006−2296号、特開2012−41649号、特開平6−138121号、特開平10−36776号、特開平11−279995号などの文献に記載されている水溶紙、または記載されている方法を用いて製造された水溶紙等も本発明において利用することができる。一般的に市販されているティッシュ(水溶性)や、金魚すくいのポイに用いられるような紙も、利用され得る。
セルロースを主とするいわゆる紙以外にも、水溶性の材料を用いて水解性担体を製造することができる。水溶性の材料は、水溶性のポリマーであってよく、例えば、でんぷん(コーンスターチやイモのデンプン等)、マンナン、ペクチン、寒天、アルギン酸、植物ガム(キサンタンガム、グアガム)、デキストラン、プルラン、膠やゼラチン等のタンパク質等の天然の高分子であり得る。あるいは、水溶性の材料は、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等の合成ポリマーであり得る。本明細書に記載される担体としての望ましい核酸含有生体材料との結合特性(例えば、基材より核酸含有生体材料の結合能が高い)を有する限り、上記のような水解性の材料を用いた水解性担体を使用することができる。
これらの材料は、「核酸含有生体材料結合試験」を行って、「加熱条件下で遊離可能に」または「煮沸条件下で遊離可能に」「核酸含有生体材料を結合し得る」ことが確認され、好ましくは3)において加熱条件も煮沸条件も用いないで「核酸含有生体材料を結合し得る」ことが確認された担体または基材を用いることができる。また、3)において加熱条件も煮沸条件も用いないで定量した場合に定量性が十分でない場合でも、「加熱条件下で遊離可能に」または「煮沸条件下で遊離可能に」に定量性が発揮されるものも用いることができる。
このような水解性担体を用いることにより、被験試料を担持させた水解性担体が反応液と接触することで、水解性担体が反応液中で水解する。水解性担体には、一定範囲量の核酸含有生体材料を含む試料が基材から提供されるため、その結果、増幅の状態を観察するだけで、特定遺伝子のコピー数を特定し、および/または有無を検出することができる。従来は、水解性担体上で液状物を乾燥させることで実現させていたが、コピー数多型については考慮されておらず、それゆえ、遺伝子増幅ができるものであれば、どのようなものでも特に区別されずに使用されていた。
また、被検試料が血液または唾液を水解性担体上で乾燥させたものを使用した場合でも、唾液等に含まれる細胞数が必ずしも一定ではないことが明らかになった。すなわち、唾液中の口腔粘膜細胞数にばらつきがあり、特異的な検出ができない等の理由で再実験が必要になるサンプルが10%程度存在することが分かった。この原因としては、通常使用するPCR等の増幅反応に関して、30サイクルを超えると非特異的な増幅が顕著となり特定遺伝子の検出が困難となりあるいは信頼性が著しく低下することが考えられる。したがって、従来の方法では、30サイクルを超える場合には、確実に特定遺伝子の検出ができるというものではなく、また精製せずにコピー数多型を検出することはできず、できたとしても、その結果は信頼性に欠けるものであった(乾燥唾液を用いたアルコール代謝関連遺伝子ADH1BおよびALDH2のSNPタイピング解析法の検証実験と妥当性確認。村田成範他、臨床病理 63巻11号1253頁)。
血液サンプル等を用いて、核酸含有生体材料を含む試料を輸送・保管等する場合には、サンプル中に水分が存在するため、プロテアーゼ、ペプチダーゼ等による細胞の分解や、DNase、RNaseなどの核酸を分解する酵素反応によりサンプルが劣化する。サンプル中の水分をなくすことができるような適切な吸水性を有する担体を使用すれば、酵素反応が抑えられるため、対象の遺伝子にもよるが1年程度の保管(室温、暗所)が可能となる。
本発明の担体を含むサンプリングシート等に試料を付着させたのち、乾燥用の箱に入れて運搬することができる。サンプリングシートの一部を折り曲げられるようにし、なおかつその部分を完全には折り畳まれないようにしておけば、その部分がスペーサーとなって、サンプリングシート上の試料が付着した部分が他の部分に触れないようにしながら箱に入れて輸送することができる。このような例として、図20に記載されるような態様を例示することができる。このようなサンプリングシートと箱との組み合わせはサンプリングキットとして製造および提供することができる。
また、本発明の担体を含むサンプリングシート等は、密封型の袋(例えばプラスチック製)に入れることができる(図14)。より具体的には、密封型の袋は、例えば、(株)生産日本社等から提供されているものを使用可能であり、特に、乾燥剤使用可能なナイロン(NY)/ポリエチレン(PE)製のチャック付ラミネート袋の平袋NYタイプ(LZ)などが望ましい。密封型の袋の例は、http://www.seinichi.co.jp/product_info/search_list.html?pa=2&y_id=14等に見出すことができ、平袋NYタイプ(LZ)(NY/PE チャック付三方袋)、平袋ALタイプ(AL)(PET/AL/PE チャック付三方袋)、平袋バリアNYタイプ(BY)(バリアNY/PEタイプチャック付三方袋)、平袋ホワイトパウチ(R) ALタイプ(PET/AL/PE チャック付三方袋 白色印刷)、スタンドパック ALタイプ(AL)(PET/AL/PE スタンドタイプ)、スタンドパック クラフトタイプ(KR)(クラフト紙/AL/NY/PEスタンドタイプ)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、この際に乾燥剤(シリカゲル、生石灰(酸化カルシウム)、塩化カルシウム、デシクレイ、合成ゼオライト、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム等が挙げられる)と一緒に入れることができる。これにより、唾液等のサンプリング後の乾燥を促進し、水溶性担体の性能をさらに高め、より安定した遺伝子分析を可能にすることができる。1つの実施形態では、乾燥剤は、シート状で提供され得る。別の実施形態では、乾燥剤は、サンプリングシートと並行して配置することができる。乾燥材は、サンプリングシートのサンプルが提供される部分を覆うように提供され得る。
また、例えば担体として水溶紙(120MDP)を用いた場合、十分な厚みおよび/または坪量があるため、製品化・キット化の際に水溶紙を台紙の上に固定する必要がない。したがって、このため、担体を直接くりぬいて分析に供することが可能である。また、十分な厚みおよび/または坪量があるため、予め一定面積に切れ目をいれておくことで、パンチ等を使用せず押し出すだけで一定面積を切り出すことも可能となる(図14)。したがって、例えば、本発明において用いられる水溶紙の好ましい坪量としては、60g/mより多く、例えば、約65g/m以上、約70g/m以上、約75g/m以上、約80g/m以上、約85g/m以上、約90g/m以上、約95g/m以上、約100g/m以上、約105g/m以上、約110g/m以上、約115g/m以上、約120g/m以上等であってもよい。例えば、本発明において用いられる水溶紙の好ましい厚さとしては、110μmより厚く、例えば、約115μm以上、約120μm以上、約125μm以上、約130μm以上、約135μm以上、約140μm以上、約145μm以上、約150μm以上、約155μm以上、約160μm以上、約165μm以上、約170μm以上、約175μm以上、約180μm以上、約185μm以上、約190μm以上、約195μm以上等であってもよい。
本発明は、核酸含有生体材料を結合し得る担体を該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とともに用いることで、一定範囲量の核酸含有生体材料を含む試料を提供することが容易となり、サンプル間で数倍以内に収まる程度の安定性を確保することができ、従来必要であった再実験が実質的に不要となった。また、本発明を用いることによりコピー数多型を検出することが信頼性高く達成された。近年、個体間でコピー数が異なる遺伝子領域が、ゲノム全般にわたって存在することが明らかにされており、それが多様な表現型を担っていることが解明されている。これはコピー数多型と呼ばれており、例えば、CYP2D6等の代謝系を担う遺伝子において非常に複雑なCNPが観察される等、薬物代謝の個人差に大きく関与していることが判明している。従来コピー数多型を検出するためには、Nested Long PCR等複雑で、長時間が必要で、緻密な実験条件を整えて診断することが必要であり、この方法でも多検体処理が困難であった。DNA精製を経ずに遺伝子解析する方法は皆無であった。
ここで、核酸含有生体材料を結合し得る担体と該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを用いることで、例えば、一定面積の平たい基材(例えば、スワブ状)を用いることで結合した核酸含有生体材料を基材から、核酸含有生体材料を結合し得る担体に一定範囲量で移すことができる。あるいは、一定体積を収容できるように設計したデバイス(例えば、アプリケーター(トラストキャッチャー(登録商標)))を用いることで、核酸含有生体材料を結合し得る担体に一定範囲量で移すことができるが、この場合でも表面積が一定であることが好ましい。また、体積効果(内部に吸収されていた試料が染み出す)が検出限界を超えることがありうることから、体積部分が極力少ないほうが好ましい。あるいは、担体より核酸含有生体材料の結合能が低い基材に核酸含有生体材料を担持させた後、一定面積を切り出すことで、その後に、核酸含有生体材料を結合し得る担体に移すことで、一定範囲量で移すことができる。別の実施形態では、担体より核酸含有生体材料の結合能が低い基材に核酸含有生体材料を担持させた後、核酸含有生体材料を結合し得る担体に移した後に、その担体を一定範囲の面積で切り出すことで(例えば、生検パンチ等を使用する)、一定範囲量の核酸含有生体材料を調製することができる。このような「一定範囲量」の構成の手法は、本明細書の他の箇所において実施例等とともに例示されており種々実施可能である。
本発明においては、被検試料を担持した水解性担体を接触後の前記反応液中で、PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)法、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification:ループ介在等温増幅)法、SDA(Strand Displacement Amplification:鎖置換増幅)法、RT−SDA(Reverse Transcription Strand Displacement Amplification:逆転写鎖置換増幅)法、RT−PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction:逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)法、RT−LAMP(Reverse Transcription Loop-Mediated Isothermal Amplification:逆転写ループ介在等温増幅)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification:核酸配列に基づいた増幅)法、TMA(Transcription Mediated Amplification:転写介在増幅)法、RCA(Rolling Cycle Amplification:ローリングサイクル増幅)法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids:等温遺伝子増幅)法、UCAN法、LCR(Ligase Chain Reaction:リガーゼ連鎖反応)法、LDR(Ligase Detection Reaction:リガーゼ検出反応)法、SMAP(Smart Amplification Process)法、SMAP2(Smart Amplification Process Version 2)法、PCR-インベーダー(PCR-Invader)法、Multiplex PCR-Based Real-Time Invader Assay (mPCR-RETINA)から選ばれる方法を施すことが好ましい。これらの遺伝子増幅方法は、それ自体公知の方法である。
本発明に用いられるDNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼに代表される、プライマー付加による核酸を合成する耐熱性に優れたポリメラーゼであれば特に制限なく用いることができる。このようなDNAポリメラーゼとしては、たとえばThermus aquaticus由来のTaq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Pyrococcus由来のKOD DNAポリメラーゼ、PfuあるいはPwo DNAポリメラーゼ、あるいは上述したDNAポリメラーゼの少なくともいずれかの混合物などを挙げることができ、中でもKOD DNAポリメラーゼが好ましい。なお、Tth DNAポリメラーゼおよびCarboxydothermus hydrogenoformans由来のC.therm DNAポリメラーゼはRT活性も有しているため、RT−PCRをOne tube−One stepで行なうときに、1種類の酵素で賄うことができるという特徴を有している。
バッファーは被検試料中に含まれるPCR反応を阻害する物質存在下でもDNA増幅可能なものであれば、特に制限されないが、EzWay(商標)(KOMA Biotechnology)、Ampdirect(登録商標)((株)島津製作所製)、Phusion(登録商標)Blood Direct PCR kitバッファー(New ENGLAND Bio−Labs)、KOD FX Neoバッファー(東洋紡(株)製)、MasterAmp(登録商標)PCRキット(Epicentre社製)などを用いることが好ましく、KOD DNAポリメラーゼ用に開発されたKOD FXバッファー(東洋紡(株)製)を用いることが特に好ましい。たとえば実施例で用いられたPCR酵素キットKOD FX Neo(東洋紡(株)製)には、試料中のPCR阻害成分の反応阻害を除去する効果を有する、1〜2Mのベタインが含まれる。なお、MasterAmp(登録商標)PCRキット(Epicentre社製)には、ベタインが含まれていることが記載されており、KOD FX Neoバッファーと同等の効果が期待できる。
以下、増幅する対象となる遺伝子または検出する対象となる特定遺伝子がRNAである場合に好適な遺伝子増幅方法として用いられるRT−PCR法を行なう場合を例に挙げて、具体的に説明する。
逆転写(RT)反応に用いる反応液(RT反応液)は、通常、pH緩衝液、MgCl2、KClなどの塩類、ジチオスレトール(DTT)、プライマー、デオキシリボヌクレオチド類、RNaseインヒビター、逆転写酵素を含むものである。また、前記塩類は適宜他の塩類に変更して使用されている。RT反応液はまた、通常、ゼラチン、アルブミンなどのタンパク、界面活性剤を含む。
本発明において、増幅する対象となる遺伝子または検出する対象となる特定遺伝子がRNAである場合、バッファーとDNAポリメラーゼとを含む反応液が、融解温度調整剤をさらに含むことが、より好ましい。融解温度調整剤は、DNAポリメラーゼ反応時のプライマーと鋳型DNAとの融解温度(Tm)を調整するためのものであり、このような融解温度調整剤としてベタイン(N,N,N−trimethylglycine)、プロリン、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと省略する)、ホルムアミド、テトラアルキルアンモニウム塩などが一般に利用される。融解温度調整剤を利用することで、オリゴヌクレオチドのアニールを限られた温度条件の下で調整することができる。さらに、ベタインやトラアルキルアンモニウム塩を融解温度調整剤として用いた場合には、そのisostabilize作用によって鎖置換効率の向上にも有効である。
融解温度調整剤としてたとえばベタインを用いる場合、反応液中0.2〜3.0M、好ましくは0.5〜1.5Mの範囲内の添加によって、本発明による核酸増幅反応の促進作用を期待できる。これらの融解温度調整剤は、融解温度を下げる方向に作用するので、塩濃度や反応温度などのその他の反応条件を考慮して、適切なストリンジェンシーと反応性を与える条件を適宜設定することができる。
RT反応に使用する逆転写酵素は、RNAをcDNAに逆転写できる酵素を意味する。逆転写酵素としては、Rous associated virus(RAV)やAvian myeloblastosis virus(AMV)などのトリのレトロウイルス由来の逆転写酵素、Moloney murine leukemia virus(MMLV)などのマウスのレトロウイルス(MMLV)由来の逆転写酵素、Thermus thermophilus由来のTth DNAポリメラーゼあるいはCarboxydothermus hydrogenoformans由来のC.therm DNAポリメラーゼなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
RT−PCRはRT反応の産物の一部をPCR反応液に添加して実行すること(Two tube−Two step)、RT反応の産物にPCR反応液を添加して実行すること(One tube−Two step)、あるいは予めRT−PCRに必要な全ての試薬を準備しておき、RT反応とPCRを連続して実行すること(One tube−One step)も可能である。
RT−PCRにおいて、RT反応に引き続き行なわれるPCRの反応液は、通常、pH緩衝液、MgCl、KClなどの塩類、プライマー、デオキシリボヌクレオチド類を含むものである。また、前記塩類は適宜他の塩類に変更して使用されている。また、ゼラチン、アルブミンなどのタンパク、ジメチルスルホキシド、界面活性剤、さらに上述した融解温度調整剤であるジメチルスルホキシド、ベタインなどが添加される場合がある。
RT−PCRにおいて、添加剤として、たとえば、1mL中に2.7M ベタイン、6.7mM DTT、6.7% DMSO、55μg/mL BSAを含有する溶液を調整し、適宜、濃度調整して添加するようにしてもよい。また、上述した市販品であるMasterAmp(登録商標)Enhancer(登録商標)(with betaine)(ME81201、Epicentre社製)を添加しても同等の効果を得ることができる。
本発明における反応液に用いられるプライマーは、増幅する対象となる遺伝子または検出する対象となる特定遺伝子を決定した時点で、適宜公知の方法で設計することができる。本発明における反応液に用いられるプライマーは、増幅する対象となる遺伝子または検出する対象となる特定遺伝子を特異的に増幅することができるものであれば特に制限されない。
本発明における被検試料に含まれる遺伝子の増幅または被検試料に含まれる特定遺伝子の検出は、プレート状またはチューブ状の不溶性担体上で行なうことが好ましい。このような不溶性担体としては、反応液に対して不溶なプラスチック、ガラスなどからなるチューブのほか、96穴ウェルなどを挙げることができる。なお、チューブ状とは、中空状態のものをいい、底があるPCRチューブや、エッペンドルフチューブのような形状であってもよい。
具体的には、まず、プレート状またはチューブ状の不溶性担体に反応液を投入する。チューブ状の不溶性担体である場合には、その内部にバッファー、ポリメラーゼおよびプライマー等の試薬を含有する反応液を投入し、プレート状の不溶性担体である場合には、その表面に前記反応液を置く。そして前記反応液と被検試料および水解性担体が直接接触するように配置し、上述したPCR法、LAMP法、SDA法、RT−SDA法、RT−PCR法、RT−LAMP法、NASBA法、TMA法、RCA法、ICAN法、UCAN法、LCR法、LDR法、SMAP法、SMAP2法、PCR−インベーダー(PCR−Invader)法、Multiplex PCR−Based Real−Time Invader Assay (mPCR−RETINA)から選ばれる方法を施す。なお、不溶性担体上に被検試料を担持した水解性担体を置き、その後に不溶性担体上に前記反応液を置いてもよい。図13には、基材に核酸含有生体材料を含ませたのちの操作を記載する。基材から担体に核酸含有生体材料を転移し、一定面積(ここでは、4mm直径が使用され得るが、適宜の大きさでよく、例えば、2〜6mm直径、3〜5mm直径、或いは約4mmの直径であってもよい。)。この担体をチューブ状の不溶性容器の内部に溶解用の水等を入れ、必要に応じて加熱して担体から核酸を溶離させ、あるいは担体の消失を加速し、その後、バッファー、ポリメラーゼおよびプライマー等の増幅試薬を加え、遺伝子の増幅または特定遺伝子の検出を行なう例を示す(図13および従来例として図13Aを参照。)。
検出は、当該分野で任意の手法、例えば、TaqMan(登録商標)プローブ、SYBR(登録商標) Green,電気泳動、DNA配列決定等の手法で行うことができる。これらを用いて、SNP(単一ヌクレオチド多型)、STR(短タンデム反復多型、マイクロサテライト多型とも言う)、CNP(コピー数多型 Copy Number polymorphism)などの検出を行うことができる。
本発明において、核酸増幅(例えば、PCR)の条件は、その核酸増幅の原理にのっとった特異的な増幅が起こる限り特に制限されず、適宜設定することができる。
1つの例示的な実施形態では、本発明の特定遺伝子の検出方法は、上述した被検試料を担持した水解性担体を、バッファー、DNAポリメラーゼおよびプライマーを含む反応液に接触させることに加え、光学的手段を用いて反応液中に特定遺伝子が含まれるか否かを検出することも含む。特定遺伝子の検出には、たとえばリアルタイムPCR法を利用することができ、その際に用いる光学的手段としては当分野において通常用いられるTaqMan(登録商標)(Applied Biosytems社)などを好適に用いることができる。増幅後、特定遺伝子の検出の他、例えば、コピー数の判定などを行うこともできる。
リアルタイムPCR法を採用する場合、一般に増幅サイクル数1〜10までは蛍光強度の変化はノイズレベルでありゼロに等しいので、それらを増幅産物ゼロのサンプルブランクと見なし、それらの標準偏差SDを算出しその10を乗じた蛍光値を閾値とし、その閾値を最初に上回るPCRサイクル数を閾値サイクル数(Ct値)という。したがって、PCR反応溶液に初期のDNA鋳型量が多い程、Ct値は小さな値となり、鋳型DNA量が少ない程、Ct値は大きな値となる。また、鋳型DNA量が同じでも、その鋳型内のPCRの特定遺伝子に切断が生じている割合が多くなる程、同領域のPCR反応のCt値は大きな値となる。
なお、本発明の遺伝子の増幅方法で被検試料から増幅された遺伝子は、検出または定量に供されても勿論よく、この手段としては、DNAシーケンス法、ゲル電気泳動法、平板状のDNAチップまたはビーズによるハイブリダイゼーション、プローブDNAを利用した伸長反応またはハイブリダイゼーションによる遺伝子検出法などを挙げることができ、また、光学的手段を用いた検出に供しても勿論よい。
また、本発明では、コピー数多型にも応用できる。以下、コピー数多型の応用例を説明する。
当該分野において知られるように、SNP(単一ヌクレオチド多型、一般的には一塩基多型と言う)とも呼ばれ、人口の>1%に存在する。文字通り1ヌクレオチド(一塩基)異なる多型をいう。リピートとは、数塩基の繰り返しであり、数回〜数百回の繰り返しが見出される。コピー数多型(CNV)は、ゲノムコピー数の変化であり、通常>1000塩基対のサイズを指す。一般に、ヒトの遺伝子は父母それぞれのゲノムに由来するものを一組ずつ、あわせて二組受け継ぐ。したがって、通常、ある遺伝子に着目した場合、それぞれ2つ(=2コピー)の遺伝子を有するものと考えられてきた。しかし近年、個人によっては1つの細胞あたり、ある遺伝子が1コピーのみ、あるいは3コピー以上存在するといった遺伝子のコピー数の個人差(コピー数多型)があることが判明した。このコピー数多型は、様々な薬の効きやすさや副作用の違いといった個人の体質差を生み出す原因として注目されている。従来の研究では、一塩基多型(SNP)に代表される個人間の遺伝子の“塩基配列の違い”が良く知られていた。これに対して、このコピー数多型といわれる現象は遺伝子の“数の違い”である。この現象下では、ゲノム上で遺伝子を丸ごと含むような配列が重複もしくは欠損しているため、時には数1000塩基対〜数100万塩基対程度の大きな領域の数が、個人間で異なる(http://www.jst.go.jp/pr/info/info361/zu1.html)。多様な家系をコピー数解析の対象とすることができ、通常の家系、コピー数が少ない家系、コピー数の多い家系が存在し、この場合、特定条件では疾患になりやすい(典型例としてはトリソミー等)と判定することができる。
コピー数多型の検出方法について概説する。一般的に用いるCNVの検出方法には、定量PCR法などの特定の遺伝子座(locus specific)を対象とする方法やアレイなどの全ゲノムを対象とする方法がある。例えば、アレイCGHが知られているが、この方法は、比較ゲノムハイブリダイゼーション法(Comparative Genomic Hybridization: CGH)は全ゲノムを対象にDNAコピー数変化を調べるための効率的な方法である(図6B)。また、SNP arrayでは、検体DNAを断片化した後に蛍光色素で標識し、熱変性条件下でチップと反応させる(図6C)。定量PCR法(Quantitative real time polymerase chain reaction: qPCR)も使用することができる。これは標的とするゲノム領域のCNVをスクリーニングするのに最も一般的に使用される方法の一つである。標的とする遺伝子(領域)に対してプライマーを設計し、蛍光色素をとりこませながらPCRで増幅させ、PCR産物の増幅効率を測定する。テンプレート(鋳型DNA)の量に応じて増幅効率が異なるのを利用して、DNAの定量(コピー数解析)が可能である。
TaqMan(登録商標)法を用いた場合のコピー数多型の検出方法を説明する。試験サンプル(♂)と較正用サンプル(♀)とを比較する。試験アッセイ(例えばYIPF6、ChrX、FAMとする)および参照アッセイ(RNaseP、Chr14、VICとする)を行い、Ct値(一定の蛍光強度に達したサイクル数)を算出する。試験サンプルにおいて試験アッセイと参照アッセイとでCtを算出する。例えば、Ct(FAM)が28.5であり、Ct(VIC)を27.0とするとその差分はΔCt=1.5となる。較正用サンプルにおいて同様に測定しCt(FAM)=27.0、Ct(VIC)=27.5と算出されるとΔCt=0.5と算出される。これらのサンプルの差分ΔCtをとるとこれは1となる。この数値を2−ΔCt×2に当てはめると、コピー数は1と算出される(図6参照)。
コピー数多型の算出方法は、この他、公知の方法を任意に利用することができ、例えば、特開2008−263974号では、SNP部位を含むゲノム領域における被験体のジェノタイプを判定する方法であって、該被験体由来の該ゲノム領域を含むDNA含有試料を鋳型として、該SNP部位のタイピングをインベーダー法にて実施する工程を含み、かつ該工程において蛍光をリアルタイムで測定することを特徴とする方法。蛍光強度が飽和に達するより前の時点における各アレルに対応する蛍光強度の比を用いて、両アレルのコピー数の比を判定する方法が記載されている。Yijing He,et al., Trends Mol Med. 2011
May ; 17(5): 244−251では、薬理遺伝学での応用が記載されている。Whitney E. Kramer et al., Pharmacogenet Genomics. 2009 October ; 19(10): 813−822では、CYP2D6のコピー数多型が論じられており、代謝や薬理学的作用への影響が論じられている。特開2008−49668では、コピー数多型を用いてがん発症体質の判定方法が開示されている。Philip S. Bernard et al., Clinical Chemistry 48:8 1178−1185 (2002)では、がん診断においてリアルタイムPCT技術を用いることおよびその中でコピー数多型も論じられている。最近では、特開2015−73506では、遺伝子多型の判定においてコピー数多型を応用する方法も紹介されている。このように、種々の方法で、コピー数多型が実施可能であり、本発明を用いて調製されたサンプルを利用することができる。
本発明の遺伝子の増幅方法、特定遺伝子の検出方法を用いることによって、ヒトの30億塩基対あるゲノム遺伝子配列上の一塩基多型(SNP)を検出することが可能であり、SNPタイピングによる遺伝子型の判定から遺伝的背景を調べることができる他、原因遺伝子のわかっている遺伝病については、将来的な危険率も診断することができる。たとえば、アルコール脱水素酵素遺伝子(ADH1B)およびアルデヒド脱水素酵素遺伝子(ALDH2)をSNPタイピングすることにより、アルコールに対する強さなどの遺伝的な要因を調べることができる。
ADH1Bの遺伝子多型は47番目のアルギニン(CC)がヒスチジン(CC)に変換されており(コドン中の2番目の核酸のGがAに変換)、SNP部位にグアニン(G)を持つものはADH1B*1アレル、変異してアデニン(A)を持つものはADH1B*2アレルと称される。アジアで高頻度に見られる変異型ADH1B*2アレル保有者では、ADHの活性が上昇することによりアセトアルデヒドの生成速度が増加するため、アルコール感受性が高まる。
ALDH2の遺伝子多型は487番目のグルタミン酸(AG)がリシン(AG)に変換されており(コドン中の1番目の核酸のGがAに変換)、SNP部位にグアニン(G)を持つものはALDH2*1アレル、変異してアデニン(A)を持つものはALDH2*2アレルと称される。ALDH2においてもアジアでは変異型ALDH2*2アレルが高頻度に見られるが、こちらは変異型保有者ではALDH2の活性が低下する。それによりアセトアルデヒドの代謝が遅れるために、アルコール感受性が高まる。
また、遺伝子型を判定する対象となる遺伝子の好適な例として、たとえば薬物代謝酵素CYP2C9の遺伝子、ビタミンKエポキシド還元酵素VKORC1の遺伝子を挙げることもできる。ここで、薬物代謝酵素CYP2C9(Cytochtome P450, Family 2, Subfamily C, Polypeptide 9)は、ワルファリンを、投与された患者の体内において、効能が消失した化学構造に代謝する働きを有する。ここで、日本人の約96%は、このCYP2C9は正常な活性を有するが、約4%はこのCYP2C9の活性が低く、約1%に至っては酵素活性が1/10に満たない。このCYP2C9の遺伝子としては、たとえば、正常な酵素活性を有する遺伝子CYP2C9 *1と、約1/10に低下した酵素活性を有する遺伝子CYP2C9 *3とが知られている。すなわち、CYP2C9が正常な活性を有する約96%の日本人は対立遺伝子CYP2C9 *1/*1を有し、CYP2C9の活性が低い約4%の日本人は対立遺伝子CYP2C9 *1/*3を有し、酵素活性が1/10に満たない約1%の日本人は対立遺伝子CYP2C9 *3/*3を有することとなる。
また、ビタミンKエポキシド還元酵素VKORC1(Vitamin K Epoxide Reductase Complex Subunit 1)は、血液凝固に関連する酵素である。ここで、ビタミンKは還元型ビタミンKとなりこの還元型ビタミンKが血液凝固因子に作用して、血液凝固因子が活性化される。血液凝固因子に作用した後の還元型ビタミンKは、ビタミンKエポキシドとなり、これにVKORC1が作用することで、ビタミンKエポキシドが還元されてビタミンKとなる。ワルファリンは、このようなビタミンKサイクルにおける律速酵素であるVKORC1の作用を阻害することで、ビタミンKエポキシドからのビタミンKの形成を妨げ、抗血液凝固作用を発揮する。このVKORC1も、個人によって代謝が異なる。このVKORC1遺伝子として、たとえば、遺伝子VKORC1 A/Aと、ワルファリンの維持用量が高い傾向にある遺伝子VKORC1 G/Aとが知られている。
また、遺伝子型を判定する対象となる遺伝子の好適なその他の例として、たとえば、β2アドレナリンレセプター(ADRB2:Adrenergic, beta-2, receptor, surface)遺伝子、β3アドレナリンレセプター(ADRB3:Adrenergic, beta-3, receptor, surface)遺伝子、脱共役たんぱく質1(UCP1:Uncoupling Protein 1)遺伝子なども挙げられる。これらの遺伝子にもそれぞれ遺伝子多型が存在し、遺伝子型によって基礎代謝(安静時消費カロリー)が異なることが知られている。ここで、ADRB2は、主に心臓、気管支平滑筋、前立腺などに分布し、脂肪組織にも存在して脂肪分解にも関与する。ADRB3は、主に脂肪組織で見られ、脂肪分解と熱産生の調節に関与する。また、UCP1は、褐色脂肪細胞に特異的に発現し、寒冷時や食事後の熱産生に関与する。
さらに、速筋線維にのみ発現するタンパク質であって、その遺伝子型の違いが瞬発力、持久力を要する運動のいずれに適性を有する可能性があるかを判断する手がかりとなるいわゆる「スポーツ遺伝子」と注目されているATCN3(Alpha-Actinin-3)の遺伝子を遺伝子型の判定対象としてもよいし、遺伝子型の違いが耳垢の種類に現れることが知られているABCC11(ATP-binding cassette transporter sub-family C member 11)の遺伝子、遺伝子型の違いが顔面形態の個人差、集団差に関与することが知られているEDAR(Ectodysplasin A Receptor)の遺伝子を遺伝子型の判定対象としてもよい。
また、本発明の遺伝子の増幅方法、特定遺伝子の検出方法は、上述の人の体質を診断する一塩基多型(SNP)以外に、血液・糞便など液状物の被検試料中の細菌・ウイルスなどの微生物検査などにも応用することができる。
近年、個体間でコピー数が異なる遺伝子領域がゲノム全般にわたって存在することが明らかにされ、それが多様な表現型を担っていることが解ってきた。これはコピー数多型と呼ばれ、本発明者らの研究で使用されるCYP2D6遺伝子においても非常に複雑なCNPが観察され、薬物代謝の個人差に大きく関与している。本発明者らは、遺伝子欠損型であるCYP2D6*5遺伝子多型解析については、乾燥唾液検体を用いたNested Long PCR法を開発したが、反応に長時間を要し、多検体処理が困難であった。コピー数多型を診断することは緻密な実験条件を整える必要があり、DNA精製を経ずに遺伝子解析する方法は全く存在しない。一塩基多型と同様に、乾燥唾液を用いてCYP2D6*5(欠損)のコピー数多型の検出を行うためには、出発材料の安定化が重要な要素であった。本発明は、一定範囲内で細胞等の核酸含有生体試料を提供する技術を開発し、これにより、この「一定範囲」を非特異的な増幅が影響しない範囲に抑えることによって、簡易にコピー数多型の他、SNPを検出し、や配列決定する技術を完成させた。特に、本発明で使用される「担体より核酸含有生体材料の結合能が低い基材」の表面積は前記一定範囲量を提供するのに十分であることを特徴とすること、別の実施形態では、一定面積と同じまたはそれより広いこと、操作性の問題から、この基材は、前記一定面積を覆うのに十分な形状であることを特徴とすることにより、簡易な迅速解析法に資する試料調製が達成された。また、光学的検出を許容する担体を用いる実施形態では、本発明の構成を用いることで、核酸増幅後の前記サンプル中の核酸が光学的検出される場合にも適切な簡易な迅速解析法に資する試料調製が達成された。
(好ましい実施形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
<核酸増幅用のサンプル調製>
1つの局面において、本発明は、(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む試料から核酸増幅用のサンプルを調製するためのキット(本明細書において、「サンプル調製キット」ともいう。)を提供する。本発明は、2種類の材料が必要であり、(Aの担体)>(Bの基材)の順序で核酸含有生体材料(例えば、細胞)結合能があるという特性をもつことで、一定範囲量の核酸含有生体材料を含む試料から核酸増幅用のサンプルを調製することができることを見出し完成されたものである。これらの担体および基材は本明細書に記載される判定方法で特定することができる。基材(B)は一定範囲量の核酸含有生体材料を含む試料を提供するように構成される。このような構成は、例えば、一定面積で担体に接触できるような形式で構成されたり、接触前または後に一定面積で切除するように構成されてもよい。担体(A)は水に入れた際に核酸増幅を許容することが好ましい。サンプルの調製後直ぐに核酸増幅反応を開始することができるからである。好ましい実施形態では、担体(A)は水に入れた際に核酸増幅を許容することが有利である。担体(A)は、核酸含有生体材料(例えば、細胞)が結合しており、これをそのまま利用することで、核酸増幅までの時間を短縮することができるからである。さらに、基材・担体の洗浄等の煩雑な工程を省略することができ、簡便化を可能にし、加えて、洗浄等に伴うクロスコンタミネーションも防止することが可能である。
1つの好ましい実施形態では、本発明のサンプル調製キットは、(A)水解性担体(好ましくは、光学的検出を許容する)と(B)該水解性担体に一定範囲量の核酸含有生体材料を含む試料を提供する基材とを含む。ここで使用される一定範囲量は、核酸増幅後に遺伝子検査を許容する量である。例えば、核酸増幅後にコピー数を識別し得る量である。このような量の例示としては、ある基準量に対してX倍〜X分の1以内であって、Xは前記核酸増幅においてコピー数が1違う際に識別可能な増幅倍率(例えば、6サイクルでこの場合Xは64、5サイクルでこの場合Xは32、4サイクルでこの場合Xは16、3サイクルでこの場合Xは8、2サイクルでこの場合Xは4、1サイクルでこの場合Xは2)の相違である。あるいは、本発明において核酸増幅を行った後になされる測定または分析において、別の結果と混同が回避される量であり、基準量に対して64倍〜64分の1以内であって、Xは前記核酸増幅においてコピー数が1違う際の増幅倍率の相違であり、例えば、10の二乗根倍〜10の二乗根分の1、3倍〜3分の1、1.7〜1.8倍程度〜1.7〜1.8分の1、等を挙げることができる。あるいは、基準量に対してX倍〜X分の1以内であって、Xは前記核酸増幅においてコピー数が1違う際に識別可能な倍率の相違である。
本発明は、遺伝子検査に関する専門知識が教育されたオペレーターを必要としないサンプリングから遺伝子解析までフルオートメーションの超簡易パーソナルゲノム情報解析装置の実現を可能にするものである。一塩基多型(SNP)部位だけでなく、マイクロサテライト多型(STRP)、コピー数多型(CNP)を直接多項目同時に高感度かつ超高速に検出する遺伝子検査技術を提供する。本発明によれば、多検体、多項目の遺伝子検査に対応した反応液調製も可能であり、例えば、高速なPCR技術と組み合わせて、サンプル調製〜PCR技術を含む解析をオンデマンドで15分以内に完了させることも可能にする。
詳細に説明すると、口腔粘膜細胞等の細胞の最も効率よいサンプリング方法が本発明により提供される。本発明は、本発明者らが開発した担体を用いる転写・迅速乾燥方法を最適化し、サンプリングデバイスの構造・形状・操作性において有利な点が提供される。本発明は、様々な自動反応液調整装置に対応することができる。本発明はまた、水解性担体の単位面積あたり口腔内粘膜細胞等の細胞を最大量保持出来る構造であるため、遺伝子のコピー数を定量するコピー数多型(CNV)または遺伝子発現プロファイリングを超簡易に実施することが有利にできる。
本発明において使用される担体は、好ましくは、核酸増幅を停止させないものであれば、どのようなものであってもよく、また好ましくは、光学的検出を許容するものであることが有利である。核酸増幅を停止させたり阻害したりする場合でも、これを増幅反応時に除去ないし低減できるのであれば、本発明において用いることができることが理解される。本明細書において説明される1つの実施形態である水解性担体はこれらの性質を備えるものであり、本明細書において説明されるような種々の実施形態が使用されうる。
1つの好ましい実施形態では、本発明で使用される基材(B)の表面積は核酸含有生体材料の一定範囲量を提供するのに十分であることを特徴とする。理論に束縛されることを望まないが、スポイト等に代表されるように、一定の体積で試料を採取した場合、最終的に得られる検体の定量性のレベルが期待通りでないことがあり、場合によっては10%以上の検体で再度検定を繰り返す必要があったが、表面積を基準として一定範囲量を提供するのに十分なものであることが確保されれば、定量性がさらに向上することが示された。理論に束縛されることを望まないが、表面積を一定することで定量性が担保されるのは、接触面が細胞等の核酸含有生体材料を一定に保つために重要であるからである。従って、本発明の構成により、再試験の必要性を顕著に減少させることができる。別の実施形態では、本発明で使用される基材(B)は、核酸含有生体材料を一定範囲量を提供する一定面積と同じまたはそれより広い表面積を有してもよい。より好ましくは、操作性の問題等を考慮し、本発明で使用される基材(B)は、前記一定面積を覆うのに十分な形状(切除により一定面積を確保する場合、切除される形状でありうる。)でありうる。形状が基材または切除されるべき形状と異なる場合、一定面積を有していても、移転される核酸含有生体材料が一定量とならない可能性があるからである。このように、核酸含有生体材料が移転される面が一定面積を確保するような構成を採用することによって、定量性を向上させつつ簡易な迅速解析法に資する試料調製が達成された。これにより、体積を基準に調製した資料に伴う問題も解決することができた。
また、光学的検出を許容する担体(例えば、好ましくは、水解紙)を用いる実施形態では、本発明の構成を用いることで、核酸増幅後の前記サンプル中の核酸が光学的検出される場合にも適切な簡易な迅速解析法に資する試料調製が達成された。
したがって、1つの具体的な実施形態において、本発明で用いられる担体の例としては、例えば、水解性担体(例えば、水解紙)、キムワイプ、キムタオル、新聞紙、濾紙などを用いることができる。好ましくは、水解性担体(例えば、水解紙)である。他方、新聞紙等を使用する場合は、好ましくは、接触後加熱する等の処理を行うことが有利であり得る。
本発明において使用される、「基材」は、一定範囲量の核酸含有生体材料を含む試料を提供するものが好ましい。この実施形態では、一定範囲量の核酸含有生体材料を含む試料を提供することを目的とする場合、核酸含有生体材料を含む試料(例えば、口腔粘膜細胞を含む唾液等)を保持することができる材料であれば、どのような材料を用いることもできる。有利には、このような基材は、核酸含有生体材料(例えば、細胞、組織、細菌、ウイルス、それらから調製された試料等)を結合せずに担持する基材である。特に、これらの核酸含有生体材料中の少なくとも核酸を結合せずに担持することができるのであれば、本発明の目的において機能し得るため、核酸含有生体材料を結合せずに担持すると判断され得る。そのような基材としては、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン、キチン、キトサン、コラーゲン、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン、セルロースおよびその誘導体、紙類、コラーゲン、ゼラチン、ウレタン、シリコン、脱脂綿(セルロース脱脂綿、アセテート脱脂綿)等の材料、これらの組み合わせ、あるいはそれらの混合物等の材料を含むがこれらに限定されない。好ましくは、ポリウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン、を用いることができる。これらの材料は、核酸含有生体材料を含む試料を保持することができる。このような材料は、例えば、特許文献2の他、国際公開2011/016423号、実用新案3169659号に記載されるものを例示することができるがこれらに限定されない。
本明細書において、本発明の基材が核酸含有生体材料を結合せずに担持する機能を有するかどうかを判定する方法は結合能比較法(1)、結合能比較法(2)などを挙げることができる。核酸含有生体材料を結合せずに担持するかどうかは、接触される他の担体との相対的な関係でありうる。
このような基材としては、例えば、スワブ(例えば、Isohelix DNA Buccal Swabs(Isohelix))、カード(Whatman(登録商標) FTA(登録商標) cards(GE Healthcare))、トラストキャッチャー(登録商標)(登録実用新案:第3169659号参照)のような液体検体採取キット、スポイドなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
代表的には、本発明のサンプル調製キットで採用されうる担体および基材は、(核酸含有生体材料結合試験)で判定した場合に、水中の遺伝子検査を行うのに十分な数の細胞数(約1×10コピー細胞)を遊離すると計算されるものを利用することができる。「加熱条件下で遊離可能に」または「煮沸条件下で遊離可能に」「核酸含有生体材料を結合し得る」基材または材料を用いてもよい。また、本発明の担体より核酸含有生体材料の結合能が低い基材は、(核酸含有生体材料結合試験)の試験で選択した材料のうち、結合能比較法(1)または(結合能比較法(2)等によって、本発明で採用される担体と比べて、核酸含有生体材料の結合能が低いと判定された任意の材料を用いることができる。
このような基材および担体の材料の組み合わせとしては、以下が挙げられ、いずれも本発明の好ましい実施形態に包含される。
(基材:担体)=ポリウレタン(スワブ):水解紙(例えば、30MDP、60MDP、120MDP、30CD、60CD、120CD(日本製紙パピリア社製)が挙げられる)
(基材:担体)=ポリビニルアルコール(PVA;トラストキャッチャー):水解紙(例えば、30MDP、60MDP、120MDP、30CD、60CD、120CD(日本製紙パピリア社製))
(基材:担体)=脱脂綿(綿棒):水解紙(例えば、30MDP、60MDP、120MDP、30CD、60CD、120CD(日本製紙パピリア社製))
(基材:担体)=ポリエステル(綿棒):水解紙(例えば、30MDP、60MDP、120MDP、30CD、60CD、120CD(日本製紙パピリア社製))
(基材:担体)=ウレタンスポンジ(スポンジスワブ):水解紙(例えば、30MDP、60MDP、120MDP、30CD、60CD、120CD(日本製紙パピリア社製))
(基材:担体)=天然スポンジ:水解紙(例えば、30MDP、60MDP、120MDP、30CD、60CD、120CD(日本製紙パピリア社製))
(基材:担体)=ポリウレタン(スワブ):定性濾紙(例えば、AD-1、AD-2、AD-3、AD-4A、AD-6(アドバンテック社製)が挙げられる)
(基材:担体)=ポリビニルアルコール、PVA(トラストキャッチャー):定性濾紙(例えば、AD-1、AD-2、AD-3、AD-4A、AD-6(アドバンテック社製)が挙げられる)
(基材:担体)=脱脂綿(綿棒):定性濾紙(例えば、AD-1、AD-2、AD-3、AD-4A、AD-6(アドバンテック社製)が挙げられる)
(基材:担体)=ポリエステル(綿棒):定性濾紙(例えば、AD-1、AD-2、AD-3、AD-4A、AD-6(アドバンテック社製)が挙げられる)
(基材:担体)=ウレタンスポンジ(スポンジスワブ):定性濾紙(例えば、AD-1、AD-2、AD-3、AD-4A、AD-6(アドバンテック社製)が挙げられる)
(基材:担体)=天然スポンジ:定性濾紙(例えば、AD-1、AD-2、AD-3、AD-4A、AD-6(アドバンテック社製)が挙げられる)。
スワブを用いる場合、本発明で規定される一定範囲量は、前記水解性担体を一定面積で取り出すことによって達成される。一定面積での取り出しは、水解性担体を切断等をすることができる器具等を用いて達成することができ、例えば、一定面積を切除し得る切除器(例えば、生検トレパン(貝印)、ハリスマイクロパンチ(GE Healthcare)、ハリスユニコアパンチ(GE Healthcare)などを利用することができる。利用可能なスワブは、自作で製造してもよく、GE Healthcare(オムニスワブ(滅菌済)(Sterile Omni Swab)、アプリケーターチップ(滅菌済)(Sterile Foam Tipped Applicator)など)、Texwipe(Circular Head Swab TX708Aなど)から入手してもよい。
液体検体採取キット(例えば、トラストキャッチャー(登録商標))を用いる場合でも接触により定量性が確保されているが、この場合は、本発明で規定される一定範囲量は、前記試料を一定量で提供することによっても達成され得る。
本発明において、一定範囲量の核酸含有生体材料(例えば、細胞)を安定して提供する技術が提供される。特許文献2等で、唾液を水溶紙に塗布・乾燥した媒体を直接リアルタイムPCR反応にかけられる方法に基づく方法を開発した。しかしながら、唾液中の口腔粘膜細胞数にばらつきがあり、再実験が必要になるサンプルが10%程存在することが判明した。唾液ではなく頬内側の口腔粘膜細胞を直接吸着でき、且つ、その細胞を水溶紙に転写可能な材料を利用することに本発明は着眼し、そのような材料を採用することによって、判定率が飛躍的に向上するだけでなく、水溶紙を打ち抜いてPCRの反応液に添加する際に、水溶紙上に存在する細胞数(DNA量)がサンプル間で数倍以内に収まる程度の安定性を確保することで、コピー数多型を簡易に同定することができる技術を提供する。本発明は、一定範囲内で細胞等の核酸含有生体試料を提供する技術を開発し、これにより、この「一定範囲」を非特異的な増幅が影響しない範囲に抑えることによって、簡易にコピー数多型を検出する技術を提供する。本発明で提供される核酸試料を用いれば、簡易にコピー数多型を検定することができる。ここでは、必要に応じて、PCR反応安定化のための実験条件検討や、内部標準の選定を適切に行ったり、その評価方法を適宜調製してもよい。
コピー数多型解析には様々な方法があり、コピー数多型の様態が既知の遺伝子をターゲットとした場合、従来、Long template PCRや、染色体レベルでのコピー数多型を網羅的に解析するマイクロアレイの他、FISH法、サザンブロッティング法などが使用されてきた。迅速性や利便性ではCGHマイクロアレイが理想的で、技術の向上により、ほぼ各遺伝子レベルでの解析が可能となり、コピー数多型解析法で多用されている。しかし、高い技術力が要求され、コスト面に問題があり、網羅的に得られる膨大なデータ処理などにも問題があった。本発明を利用することが想定されるリアルタイムPCR法は、簡便性、定量性に優れ、正確なコピー数を測定が可能である。本発明は、従来技術では、生体試料からDNAを抽出・精製した鋳型DNAを正確に定量してから遺伝子検査を実施することが必要であったが、本発明は、これを回避しても精確性を犠牲にすることなく、コピー数多型遺伝子検査が可能となり、遺伝子検査に伴う操作に熟練したオペレーター・技術者を必要としないところに非常に大きな優位性があり、圧倒的に安価・迅速・非侵襲・簡便で信頼度の高い正確な遺伝子多型解析システムが提供される。コピー数多型との関係では、がんにおけるコピー数多型が抗癌剤の感受性と関係することが予想されており、また、薬剤感受性及び疾患関連遺伝子に関する遺伝子診断が臨床現場で即時に可能となり、薬物治療率の向上、副作用低減等種々の応用が期待される。薬疹・薬物アレルギー及び薬物中毒症状など緊急性を要する治療方針決定において、即時診断は医薬品と食品、サプリメントなどの相互作用を解明する手段として強力なツールとなる。
1つの好ましい実施形態では、本発明において使用される核酸含有生体材料を結合し得る担体は、本発明の目的である、水中に存在する場合にも、核酸増幅を許容し、光学的な検査を許容するものである限り、どのような材料であっても本発明において利用され得る。本発明で使用される担体は、好ましくは水解性担体であり、代表的な水解性担体は水解性紙である。このような水解性担体および水解性紙は、特許文献2(特許5875230号)においても詳述されている。
1つの実施形態では、本発明で利用される核酸増幅は、非特異的増幅が生じる核酸増幅法である。非特異的増幅が生じる核酸増幅法では、特異的な増幅かどうかを見極めるために、出発材料として利用される核酸試料の量を一定範囲に抑え、特異的な増幅であることを担保することが重要である。
1つの局面において、本発明は、本発明のサンプル調製キットと、(C)核酸増幅のための試薬とを含む、精製せずに核酸を増幅するためのキット(本明細書において、「核酸増幅キット」ともいう。)を提供する。ここで使用される本発明のサンプル調製キットは、本明細書において説明した任意の実施形態を1つまたは複数組み合わせて利用することができることが理解される。
1つの実施形態において、本発明の核酸増幅キットにおいて使用される核酸増幅のための試薬は、プライマー、核酸増幅酵素、および必要な緩衝剤を含みうる。これらの試薬は、キットに含まれて提供されてもよく、別々に提供されてもよい。
1つの好ましい実施形態では、本発明の核酸含有生体材料を結合し得る担体(キット中では(A))は、非吸水性材料および/または吸水性材料とともに提供されてもよい。このような場合、水解性担体は、(X)非吸水性材料と、(Y)核酸含有生体材料を結合し得る担体とを含む、生体試料を乾燥するためのデバイスの形式をとってもよい。生体試料を乾燥するためのデバイスは、さらに(Z)吸水性材料を含んでもよい。
したがって、本発明は、別の局面において、(X)非吸水性材料と、(Y)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(Z)吸水性材料とを含む、生体試料を乾燥するためのデバイス(本明細書において「生体試料乾燥デバイス」ともいう。)を提供する。ここで使用される核酸含有生体材料を結合し得る担体は、本明細書において説明される任意の実施形態を採用することができる。
1つの実施形態では、本発明の生体試料乾燥デバイスまたは核酸含有生体材料を結合し得る担体は、前記非吸水性材料は前記担体を保持するように配置され、該非吸水性材料は前記吸水性材料と脱着可能に連結される。本発明のキット、デバイス等で使用される非吸水性材料は前記吸水性材料と脱着可能な粘着部材を介して連結されてもよい。1つの実施形態では、本発明のキット、デバイス等で使用される非吸水性材料は前記水解性担体の周囲を取り囲むように配置されてもよい。
1つの実施形態では、本発明のキット、デバイス等で使用される核酸含有生体材料を結合し得る担体は、前記非吸水性材料および前記吸水性材料と接触してもよく、または、前記吸水性材料と直接接触しないように配置されてもよい。吸水性材料と直接接触しないように配置されることにより、核酸含有生体材料を結合し得る担体が予定外に水分と接触することを防止することができる。
1つの好ましい実施形態では、担体(Y)は、水に入れた際に核酸増幅を許容するものであり得る。別の好ましい実施形態では、担体(Y)は光学的検出を許容することが好ましい。代表的な実施形態では、担体(Y)は水解性担体である。
別の局面において、本発明は、核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を検出する方法であって、核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを用いて、該核酸含有生体材料を含む被検試料を水解性担体により提供する工程、該担体を、該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーを含む核酸増幅試薬含有水溶液に接触させ、核酸が増幅する条件に供する工程、該光学的手段を用いて、該水溶液中に該特定遺伝子が含まれるか否かおよび/または該特定遺伝子のコピー数を検出する工程を包含する、方法を提供する。ここでは、この方法を用いることで、核酸増幅後の識別を可能とする量(例えば、核酸増幅後にコピー数を識別し得る量)で核酸含有生体材料が提供されるため、信頼性の高い特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を検出する方法が達成される。
本明細書において「核酸増幅後の識別を可能とする量」とは、核酸増幅反応を行った際に、他の遺伝子の非特異的な増幅と区別できる量をいう。本明細書では、「核酸増幅後にコピー数を識別し得る量」とは、他のコピー数を有する遺伝子の非特異的な増幅と区別できる量をいう。「核酸増幅後の識別を可能とする量」と「核酸増幅後にコピー数を識別し得る量」とは、実質的に同一の量を指すこともあり、また、本明細書において使用される「一定範囲量」と実質的に同一の量となることもあり得る。例えば、基準量に対してX倍〜X分の1以内であって、Xは前記核酸増幅においてコピー数が1違う際の増幅倍率の相違である。
本明細書において、「特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマー」とは、核酸増幅のためのプライマーであって、目的とする特定遺伝子をそれ以外の遺伝子よりも多く増幅し得るものをいう。
1つの実施形態では、前記基材を前記核酸含有生体材料に接触させ、その後、前記担体に該基材を接触させることによって、前記核酸含有生体材料を含む被検試料が提供される。
別の実施形態では、前記被検試料は、一定範囲量の核酸含有生体材料を含むように提供される。
1つの実施形態において、本発明のキット、デバイス等は、血液、または、口腔内細胞を含む唾液である被検試料に含まれる特定遺伝子を検出する方法に応用することができる。この方法は、被検試料を担持した水解性担体を、バッファー、DNAポリメラーゼおよびプライマーを含む反応液に接触させ、水解性担体を反応液中で分解させることで、水解性担体に干渉されることなく水解性担体の分解後の反応液にCCD方式による光学的手段を用いて、反応液中に特定遺伝子が含まれるか否かを検出することを特徴とする、方法であってもよい。なお、光学的手段としては、肉眼、CCD方式、PMT方式以外にもUV(分光光度計)、Visible meter(濁度計)、比色計(吸光光度計)、蛍光光度計等も利用できる。
本発明のキット、デバイス等は、その特徴の一つとして、最終的に光学的検出のみで、コピー数の検出が可能である(0か1かの区別を含む)という特徴を含む。したがって、本発明のキットは、核酸含有生体試料(例えば、細胞)を担持する基材が「一定表面積」であることが特徴である光学的手段・増幅装置以外の部分を含むキットに応用することができ、このキットに加え増幅装置も含むシステムあるいは、あるいは/さらに光学的手段を含めたシステムに応用されてもよい。
1つの局面において、本発明は、核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を検出する方法であって、(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを用いて、該核酸含有生体材料を含む被検試料を水解性担体により提供する工程、該担体を、該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーを含む核酸増幅試薬含有水溶液に接触させ、核酸が増幅する条件に供する工程、該光学的手段を用いて、該水溶液中に該特定遺伝子が含まれるか否かおよび/または該特定遺伝子のコピー数を検出する工程を包含する、方法を提供する。ここで、(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを用いることで、増幅後の識別を可能とする量または核酸増幅後にコピー数を識別し得る量が提供される。被検試料として用いられる核酸含有生体材料としては、例えば、鼻汁、鼻腔ぬぐい液、眼結膜ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、喀痰、糞便、血液、血清、血漿、髄液、唾液、尿、汗、乳、精液、口腔ぬぐい液、歯間ぬぐい液、湿性耳垢、膣腔ぬぐい液、食品および細胞組織等であり得るがこれらに限定されない。
1つの実施形態では、本発明の方法においても、被検試料を担持した水解性担体を接触後の前記核酸増幅試薬含有水溶液中で、PCR法、LAMP法、SDA法、RT−SDA法、RT−PCR法、RT−LAMP法、NASBA法、TMA法、RCA法、ICAN法、UCAN法、LCR法、LDR法、SMAP法、SMAP2法から選ばれる反応を行なうことができる。
本発明の核酸増幅試薬含有水溶液に含まれ得るDNAポリメラーゼは、Taq DNA ポリメラーゼに代表される、プライマー付加による核酸を合成する耐熱性に優れたポリメラーゼであれば特に制限なく用いることができる。このようなDNAポリメラーゼとしては、たとえばThermus aquaticus由来のTaq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Pyrococcus由来のKOD DNAポリメラーゼ、PfuあるいはPwo DNAポリメラーゼ、あるいは上述したDNAポリメラーゼの少なくともいずれかの混合物などを挙げることができ、中でもKOD DNAポリメラーゼが好ましい。なお、Tth DNAポリメラーゼおよびCarboxydothermus hydrogenoformans由来のC.therm DNAポリメラーゼはRT活性も有しているため、後述するようにRT−PCRをOne tube−One stepで行なうときに、1種類の酵素で賄うことができるという特徴を有している。
本発明の核酸増幅試薬含有水溶液に含まれ得るバッファーはPCR反応を阻害する物質存在下でもDNA増幅可能なものであれば、特に制限されないが、EzWay(商標)(KOMA Biotechnology)、Ampdirect(登録商標)((株)島津製作所製)、Phusion(登録商標)Blood Direct PCR kitバッファー(New ENGLAND Bio−Labs)、KOD FXバッファー(東洋紡(株)製)、MasterAmp(登録商標)PCRキット(Epicentre社製)などを用いることが好ましく、KOD DNAポリメラーゼ用に開発されたKOD FXバッファー(東洋紡(株)製)を用いることが特に好ましい。たとえば実施例で用いられたPCR酵素キットKOD FX Neo(東洋紡(株)製)には、試料中のPCR阻害成分の反応阻害を除去する効果を有する、1〜2Mのベタインが含まれる。なお、MasterAmp(登録商標)PCRキット(Epicentre社製)には、ベタインが含まれていることが記載されており、KOD FXバッファーと同等の効果が期待できる。
別の局面において、本発明は、核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を光学的手段を用いて検出するための試料を提供するキットであって、(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、を備える、キットを提供する。ここで使用される基材、担体、プライマー、核酸増幅試薬等は、本明細書に記載される任意の実施形態を利用することができる。ここで、(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを用いる際には、細胞等の核酸含有生体材料を結合せずに担持する一定表面積を有する基材と、核酸含有生体材料を結合する担体を用いてもよい。
別の局面において、本発明は、核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を検出するシステムであって、(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、核酸増幅装置と光学的手段とを備える、システムを提供する。(A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とは、細胞等の核酸含有生体材料を結合せずに担持する一定表面積を有する基材と、核酸含有生体材料を結合する水解性担体であってもよい。ここで使用される基材、担体、プライマー、核酸増幅試薬、光学的手段等は、本明細書に記載される任意の実施形態を利用することができる。
あるいは、本発明は、核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出するシステムであって、非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合する水解性担体と吸水性樹脂とを含むデバイスとを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、核酸増幅装置と光学的手段とを備える、システムを提供する。ここで使用される基材、担体、プライマー、核酸増幅試薬、光学的手段等は、本明細書に記載される任意の実施形態を利用することができる。光学的手段としては、例えば、肉眼、CCDイメージセンサ、PMT(光電子増倍管(Photo multiplier Tube))やCMOSイメージセンサなどにより画像を取り込んでの任意の解析手段などをいうがこれらに限定されない。
本発明が提供する改良のもう一つは、生体試料の迅速乾燥という特徴である。この部分に対応する特徴はまた、本発明の他の検出方法・装置の部分と組み合わせて使用することができる。
本発明の生体試料の迅速乾燥を実現するキット、デバイスは、例えば、核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出する方法に応用することができる。また、本発明の生体試料の迅速乾燥を実現するキット、デバイス等は、光学的手段・増幅装置以外の部分を含むキットに組み込んで使用してもよい。あるいは、本発明の生体試料の迅速乾燥を実現するキット、デバイス等は、増幅装置および/または光学的手段を含めたシステムに応用してもよい。
1つの局面では、本発明は、核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出する方法であって、該核酸含有生体材料を含む被検試料を、非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスに接触させる工程、該担体を該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーを含む核酸増幅試薬含有水溶液に接触させ、該水溶液を核酸が増幅する条件に供する工程、該光学的手段を用いて、該水溶液中に該特定遺伝子が含まれるか否かおよび/または該特定遺伝子のコピー数を検出する工程を包含する、方法を提供する。ここで使用される、核酸含有生体材料、非吸水性材料、担体、吸水性樹脂、プライマー、核酸増幅試薬、光学的手段等は、本明細書に記載される任意の実施形態を用いることができることが理解される。
別の局面では、本発明は、核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出するための試料を提供するキットであって、非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスとを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、を備える、キットを提供する。ここで使用される、核酸含有生体材料、非吸水性材料、担体、吸水性樹脂、プライマー、核酸増幅試薬、光学的手段等は、本明細書に記載される任意の実施形態を用いることができることが理解される。
別の局面では、核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出するための試料を提供するシステムであって、非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスとを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、核酸増幅装置とを備える、システムを提供する。ここで使用される、核酸含有生体材料、非吸水性材料、担体、吸水性樹脂、プライマー、核酸増幅試薬、光学的手段、核酸増幅装置等は、本明細書に記載される任意の実施形態を用いることができることが理解される。
別の局面では、本発明は、核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出するシステムであって、非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスとを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、核酸増幅装置と光学的手段とを備える、システムを提供する。ここで使用される、核酸含有生体材料、非吸水性材料、担体、吸水性樹脂、プライマー、核酸増幅試薬、光学的手段、核酸増幅装置等は、本明細書に記載される任意の実施形態を用いることができることが理解される。
リアルタイムPCR法を採用する場合、一般に増幅サイクル数1〜10までは蛍光強度の変化はノイズレベルでありゼロに等しいので、それらを増幅産物ゼロのサンプルブランクと見なし、それらの標準偏差SDを算出しその10を乗じた蛍光値をスレッシュホールド値(threshold、limen、閾値)とし、そのスレッシュホールド値を最初に上回るPCRサイクル数をサイクルスレッシュホールド値(Ct値)という。したがって、PCR反応溶液に初期のDNA鋳型量が多い程、Ct値は小さな値となり、鋳型DNA量が少ない程、Ct値は大きな値となる。また、鋳型DNA量が同じでも、その鋳型内のPCRの特定遺伝子に切断が生じている割合が多くなる程、同領域のPCR反応のCt値は大きな値となる。
なお、本発明の遺伝子の増幅方法で被検試料から増幅された遺伝子は、検出または定量に供されても勿論よく、この手段としては、DNAシーケンス法、ゲル電気泳動法、平板状のDNAチップまたはビーズによるハイブリダイゼーション、プローブDNAを利用した伸張反応またはハイブリダイゼーションによる遺伝子検出法などを挙げることができ、また、光学的手段を用いた検出に供しても勿論よい。
本発明の遺伝子の増幅方法、特定遺伝子の検出方法を用いることによって、ヒトの30億塩基対あるゲノム遺伝子配列上の一塩基多型(SNP)を検出することが可能であり、SNPタイピングによる遺伝子型の判定から遺伝的背景を調べることができる他、原因遺伝子のわかっている遺伝病については、将来的な危険率も診断することができる。たとえば、アルコール脱水素酵素遺伝子(ADH1B)およびアルデヒド脱水素酵素遺伝子(ALDH2)をSNPタイピングすることにより、アルコールに対する強さなどの遺伝的な要因を調べることができる。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J. et al.(1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel, F.M.(1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis, M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F.M. (1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis, M.A. et al.(1995).PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates; Sninsky, J.J. et al.(1999). PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait, M.J.(1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Gait, M.J.(1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein, F.(1991). Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Adams, R.L. et al.(1992). The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G.M. et al.(1996). Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G.T.(I996). Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を記載する。必要な場合、以下の実施例において、全ての実験は、武庫川女子大学倫理委員会で承認されたガイドラインに従って実施した。また、文部科学省・厚生労働省・経済産業省作成のヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に関する倫理指針(平成26年11月25日一部改正)の指針にのっとって行った。また、ヒトゲノム遺伝子解析研究の倫理指針に準拠した。実験は、武庫川女子大学倫理委員会における審査後、承認のもとに実施した。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma−Aldrich、和光純薬、ナカライ、R&D Systems、USCN Life Science INC等)の同等品でも代用可能である。
(実施例1:サンプリング方法の違いでの増幅精度の相違)
(サンプリング手法)
検査対象(被検者30名)からの唾液(ヒト口腔粘膜細胞を含む)の採取は、以下のマニュアルに従って行った。
(1)スワブスティック(ポリウレタン製、Texwipe社製、STX708AまたはSTX712A)を持ち、スポンジの片面で歯茎の外側・内側、頬の内側を、10回ほどこすった。もう片面で同様に10回ほどこすった。スワブ両面を唾液で湿らせた。
(2)スティックの根元を持ち、サンプリングプレート(プラスチック板に水溶紙を貼り付けたプレート)の中央にスポンジの片面を5秒間押し当て、もう片面も同様に5秒間押し当てた。 注意:プレートを擦らない
(3)使用済みのスワブは元の袋に戻して破棄した。
(4)サンプリングシートを二つ折に戻し、30分以上乾かした。他人の飛沫する唾がサンプルプレートに付かないように注意して乾燥した。
(TaqMan(登録商標) PCR法)
TaqMan(登録商標) PCR法は、以下の手順で、検査対象(被検者30名)から上述のようにそれぞれ採取した唾液(ヒト口腔粘膜細胞を含む)について、アルコール脱水素酵素ADH1Bの遺伝子およびアルデヒド脱水素酵素ALDH2の遺伝子の遺伝子多型の検出をリアルタイムPCR装置ABI7300(Applied Biosystems社製)を用いてTaqMan(登録商標)プローブ法により行なった。唾液試料の採取については、上述のように、角型のスワブ、丸型のスワブ、トラストキャッチャーまたはスポイトを用いて行い、本明細書に記載されるように水解性担体に移動させ、検出反応に用いるサンプルを調製した。
TaqMan(登録商標)プローブ法では、通常のPCR増幅用プライマーセットの他に、TaqMan(登録商標)プローブと称されるオリゴヌクレオチドを使用する。TaqMan(登録商標)プローブは、末端の一方が蛍光物質で修飾されており、他方が蛍光を抑制するクエンチャー物質で修飾されている。PCR反応においてDNAポリメラーゼによる複製に伴い、鋳型DNAに特異的にハイブリダイズしたTaqMan(登録商標)プローブは、複製酵素による5’−3’エキソヌクレアーゼ活性により分解される。TaqMan(登録商標)プローブが分解されると、クエンチャー物質から遊離した蛍光分子から蛍光が発せられる。蛍光検出は、ハロゲンタングステンランプの光によって蛍光分子が励起されることで蛍光が発生し、その蛍光の波長のみを通すフィルターを通過してCCDカメラ等の光学的検出手段によって蛍光が検出される。
蛍光の強度は、鋳型DNAにハイブリダイズしたプローブの量を示すため、この蛍光の強度をPCRのサイクル毎に検出すると、サイクル毎の鋳型DNAの量の変化を追跡することができる。PCR増幅産物量が蛍光検出できる量に達すると、増幅曲線が立ち上がり始め、指数関数的にシグナルが上昇したのち、定常状態に達する。初発の鋳型DNA量が多いほど、増幅産物量が早く検出可能な量に達するので、増幅曲線が早いサイクルで立ち上がる。例えば、定常状態のシグナルの半分に達するまでのサイクル数を、初発の鋳型DNA量の指標とすることができる。
また、異なる配列に特異的な複数のTaqMan(登録商標)プローブを用いて反応を行うことができる。さらに、それぞれのTaqMan(登録商標)プローブを修飾する蛍光物質は、異なる波長の蛍光を生じさせることができ、区別して検出することができる。ここで、ある遺伝子座における対立遺伝子(例えば、対立遺伝子XとY)について、それぞれに特異的なTaqMan(登録商標)プローブを用いて反応を行った場合、一度の反応において、サンプル中に存在するXとYの鋳型DNA量を求めることができ、遺伝子型(XX、YY、またはXY)を判定することができる。例えば、X軸に対立遺伝子Xに特異的なプローブに由来する蛍光の強度をとり、Y軸に対立遺伝子Yに特異的なプローブに由来する蛍光の強度をとって、サンプルの増幅における蛍光強度をプロットすることにより、そのサンプルがプロットされる位置にから遺伝子型を判定することが可能である。
水解性担体として60MDP(日本製紙パピリア社製)を用い、これに被検試料である唾液(口腔粘膜細胞)を染み込ませ、自然乾燥させた。チューブ状の不溶性担体に50μLの滅菌水(DW:蒸留水)を投入し、これに被検試料を担持させた乾燥後の水解性担体の直径4mmのパンチ片(貝印製生検トレパンを使用)を直接投入し、95℃5分加熱した(被検試料調製液)。その内2μLを別のチューブ状の不溶性担体に投入し、反応液(各組成については後述)を調製した。通常行なうDNAの抽出・精製工程は省略し、直接増幅反応を行なった。
TaqMan(登録商標)プローブ法による遺伝子判定には、プローブおよびプライマーセットはApplied Biosystems社のTaqMan(登録商標) SNP Genotyping Assaysキット、PCR増幅はTHUNDERBIRD (登録商標) Probe qPCR Mix (東洋紡(株)製)を使用して、それぞれ以下の試薬を含む10μL反応液を調製した。50X ROX reference dye((東洋紡(株) THUNDERBIRD Probe qPCR Mixに含まれる)は、蛍光を調整するためのレファレンスとして用いた。遺伝子型判定は、本反応の結果、添付のプロトコールに従って、検出される2色の蛍光強度により判定した。
(ADH1B遺伝子用TaqMan(登録商標)プローブ・プライマーセット)
・TaqMan(登録商標) Drug Metabolism Genotyping Assays(Applied Biosystems社製)、
・遺伝子名: alcohol dehydrogenase 1B(class I), beta polypeptide
・TaqMan(登録商標) SNP Genotyping Assay Mix ID: C_2688467_20。
(ADH1B遺伝子用TaqMan(登録商標)反応液)
THUNDERBIRD Probe qPCR Mix:1 5μL
Taqman(登録商標) Assay Mix C_2688467_20:0.5μL
50X ROX reference dye: 0.2μL
DW(蒸留水): 2.3μL
被検試料調製液: 2μL
全量: 10μL
(ALDH2遺伝子用TaqMan(登録商標)プローブ・プライマーセット)
・TaqMan(登録商標)Drug Metabolism Genotyping Assays(Applied Biosystems社製)
・遺伝子名:aldehyde dehydrogenase 2 family(mitochondrial)
・TaqMan(登録商標) SNP Genotyping Assay Mix ID:C_11703892_10。
(ALDH2遺伝子用TaqMan(登録商標)反応液)
THUNDERBIRD Probe qPCR Mix: 5μL
Taqman(登録商標) Assay Mix C_11703892_10: 0.5μL
50X ROX reference dye: 0.2μL
DW(蒸留水): 2.3μL
被検試料調製液: 2μL
全量: 10μL
(増幅条件)
熱変性:50℃、2分→95℃、10分、 95℃、15秒→60℃、1分を40サイクル。
(結果解析)
結果は、ABI Prism 7300 SDSソフトウェアを用いて解析した。
(結果)
結果を図1〜2に示す。図1にはADH1Bの結果を示し、図2にはALDH2での結果を示す。スポイトで唾液採取した場合には、識別できなかったのに対して、それ以外の3つはいずれも、識別力は十分であると考えられる。実用的にはスワブ角が使い勝手がよく有利である。
さらに、インフォームド・コンセントを受け、同意を得た23名の被験者を対象として、血液および唾液サンプルを水溶紙(60MDP)に付着・乾燥させ、血液は直径1.2mmのハリスマイクロパンチ(GE ヘルスケア)、唾液サンプルは直径4mmの生検トレパン(貝印)でそれぞれパンチしてリアルタイムPCRに供して同様に遺伝子型判定を行った。なお23名の被験者については、スワブスティックにより唾液を採取した。これらの被験者のサンプルにおいても、明瞭な遺伝子型判定を行うことができた(図22)。
(実施例2:水溶紙と定性濾紙との違い)
本実施例では、水溶紙と定性濾紙とを対比して実験を行った。
実験手順は実施例1に基づき、定性濾紙を用いる場合に水溶紙を定性濾紙に置き換えて実験を実施した。トラストキャッチャーで採取した口腔粘膜細胞を含む唾液(約20μL)を滴下し、滴下位置を4mm直径(Φ)のパンチでカットし、加熱処理を行った。その他実験手順は、実施例1と同様に行った。
水溶紙としては、30MDP、60MDP、120MDP、30CD−2、60CD−2、120CD−2(日本製紙パピリア)を調べた。濾紙としては、ADVANTEC社の濾紙をNo.1、No.2、No.3、No.4AおよびNo.5の5種類の規格のもので調べた。
結果を図3に示す。水溶紙の紙質に関係なく、細胞保持量はほぼ一定であることが分かった。操作性から、60MDPを選択して実験を行った。他方、濾紙では、吸水度の低いNo.4Aは細胞保持量が少ないことが分かった。
さらに、SYBR(登録商標) Greenリアルタイムアッセイ法により、機能性水溶紙(60MDP、日本製紙パピリア)の性能を定性ろ紙(ADVANTEC No.1)およびWhatman(登録商標)903プロテインセーバーカードと比較して性能評価した結果を図21に示す。水溶紙のCt値(25サイクル)は、定性ろ紙およびプロテインセーバーカードと比べ5サイクル早く増幅していることが観察される。ネガティブコントロールとして蒸留水(DW)を添加して増幅を行った。プライマーダイマーや非特異的な遺伝子増幅が35サイクル以降に観察されている。
(実施例2A:種々の担体)
本実施例では、水溶紙および定性濾紙に加えて、さらに他の担体を用いて実験を行った。実験手順は実施例1に基づき、水溶紙をキムワイプ(日本製紙クレシア)、キムタオル(日本製紙クレシア)、新聞紙(讀賣新聞)およびティッシュペーパー(クリネックス、日本製紙クレシア)に置き換えて実験を実施した。
結果を図3Aに示す。この結果から、水溶紙または定性濾紙に限られず、一般的な紙類であっても、吸水性を示す限り本発明において担体として使用され得ることが実証された。
(実施例2B:基材・サンプリング方法の差異)
本実施例においては、様々な基材・サンプリング方法を用いた場合の差異と、担体を滅菌水に投入した後の加熱の有無による差異とを検証した。
基材としてキムワイプを用いる場合には、キムワイプを口にくわえて、口腔内で転がし、丸め、十分に唾液で湿ったものをスタンプして、乾燥した。
基材としてスワブを用いる場合には、(i):口腔内にスワブをくわえ唾液を吸収させたものをスワブ(0)とし、(ii):スワブで口腔内の粘膜を1周擦り唾液を採取したものをスワブ(1)とし、(iii):(ii)の要領で2周、4周と条件を変え唾液を採取したものをそれぞれ、スワブ(2)、スワブ(4)、スワブ(∞)とした。
これらの基材の片面を水溶紙に5秒押し当てることによって、細胞を担体にトランスファーさせた。その他の実験手順は実施例1に基づき、チューブ状の不溶性担体に50μLの滅菌水(DW:distilled water)を投入し、これに被検試料を担持させた乾燥後の担体の直径4mmのパンチ片(貝印生検トレパンを使用)を直接投入し、95℃5分加熱したものと、加熱を行わなかったものとの結果を比較した。
結果を図3B〜図3Gに示す。基材として、スワブを用いた場合、加熱を行うことによって、遺伝子型の識別能力がわずかに向上している(図3G)。さらに、基材として新聞紙を用いたものでは、加熱を行った場合には、加熱を行わなかった場合と比較して、遺伝子型の識別能力が大きく向上していることが認められる(図3B)
スワブについては、口腔内を擦った回数には依存せず、高い遺伝子型の識別力が示された(図3D、図3E)。したがって、この結果から、試料採取には採取する体積が重要なのではなく採取面の表面積が重要であることが示唆される。
さらに、スワブ様の基材について詳細な違いを検討した。スワブ(Texwipe、STX712A)、スワブショートフォームタイプ(アズワン HJ−3329)、綿棒、PVA(トラストキャッチャーの唾液採集部をスワブと同様に用いて、担体にトランスファーした)を基材として用いて、口腔粘膜細胞を採集して水溶紙に押し当てトランスファーした。その他、上記と同様の手順で遺伝子型の判定を行った。
結果を図3Fに示す。いずれの基材を用いた場合でも、十分なシグナルが検出されており、これらの基材を、いずれも本発明において用いることができる。
(実施例2C:懸濁および上清)
本実施例においては、スワブを基材として用い、担体を滅菌水に投入した後に、懸濁したままでPCR反応に供する場合と、遠心分離した上清のみをPCR反応に供した場合との差異を検証した。実験手順は実施例1に基づくが、担体を滅菌水に投入した後に、懸濁液を遠心分離(15,000×rpm)にかけ、上清のみをPCR反応に供した。
結果を図3Gに示す。上清と懸濁液の間で、遺伝子型の識別能力に差異は見られなかった。したがって、この結果から、本発明のキットにより、被検試料を担持させた担体が懸濁している状態で、十分に遺伝子型を識別することができるサンプルを調製することができることが示される。
(実施例2D:スワブ(ポリウレタン)とアプリケーター(トラストキャッチャー)の比較)
基材としてスワブ(ポリウレタン製、Texwipe社製、STX708AまたはSTX712A)およびアプリケーター(ポリビニルアルコール製トラストキャッチャー(登録商標))を用いて、6名の被験者のADH1Bの遺伝子多型を解析した。
スワブおよびアプリケーターにより、口腔内をこすり、その後水溶紙に押し当てる方法でサンプリングした。その後、上記実施例と同様に、TaqMan(登録商標) PCR法を用いて、ADH1Bの遺伝子多型を解析した。アプリケーターは、その構造上唾液を吸い取る部材であり、その先端部に吸収部分が取り付けられている。その先端部でスワブ同様に内頬を擦って、水溶紙に垂直に押し当てPVA中の口腔粘膜細胞を含む唾液を付着させる方法で実施した。
(スワブのサンプルの反応溶液の組成)
20×Probe (ADH1B) 0.5μL
50×ROX reference dye 0.2μL
THUNDERBIRD Probe qPCR Mix: 5μL
Φ4mm in DW(蒸留水) 4.3μL
計 10.0μL
(※)100μLの蒸留水にΦ4mmでパンチしたサンプルを入れて、95℃、5分間THERMO BLOCK ND-G962(日伸理化製)で温めた。保存は−20℃で行った。
(アプリケーターのサンプルの反応溶液の組成)
20×Probe (ADH1B) 0.5μL
50×ROX reference dye 0.2μL
THUNDERBIRD Probe qPCR Mix: 5μL
KODFXNEO 1μL
Φ6mm in DW(蒸留水) 4.3μL
計 10.0μL
(※)200μLの蒸留水にΦ6mmでパンチしたサンプルを入れて、加熱するサンプルについては95℃、5分間THERMO BLOCK ND-G962(日伸理化製)で温めた。
(増幅条件)
リアルタイムPCRのサイクルは以下のとおりであった。
Program:7300,linda, ADH1B_TaqMan(登録商標)_kit
50℃、2分→95℃、10分→(95℃、15秒→60℃、1分)×40サイクル
(結果)
結果を図3Hに示す。ひし形はAと判定されたサンプルを示し、三角はA/Gと判定されたサンプルを示し、丸はA/Gのポジティブコントロール(pc)を示す。スワブおよびアプリケーターで、6名の被験者が、黒ひし形◆(A)(2名)、黒三角▲(A/G)(4名)と判定され、明確に分離されていることが理解される。黒ひし形◆はスワブとアプリケーターとで同等の良好な感度を示している。したがって、ポリウレタンおよびPVAはいずれも基材の材質として使用して、遺伝子型の判定に用いることができる。そして、本来このように使用されることを意図していないアプリケーターであっても、同様に用いることができると解釈することができる。好ましい実施形態では、アプリケーターのように体積部分があり接触ないし適用時に表面積が変動する形状ではなく、スワブのように表面積が変動しない形状が好ましいことも示唆された。
ポリウレタンスワブと水溶紙の組合せは、黒三角▲の被験者全てのサンプルにおいて非常に高い感度を示しており、非常に優れているということができる。アプリケーターの場合、黒三角▲の一部ではわずかに感度が低く観察されているが、これは、いかなる理論にも拘束されるものではないが、一定体積の基材中に唾液を染み込ませているものの、水溶紙へのトランスファーの際に押し付ける強さ等によって、接触面積に変化が生じることによってわずかなばらつきが存在することによるものであり得る。厚みのある形状の基材を用いて、一定体積中で定量性のあるサンプリングをしようとする場合、このように定量性にばらつきが生じ得る。スワブは厚みがあまりない平面的な形状であり、水溶紙との接触において、押し付ける強さ等によらず接触面積が一定となっていることが、さらに良好な定量性に繋がった可能性がある。
(実施例3:リアルタイムPCR 融解曲線分析法)
本実施例では、リアルタイムPCR 融解曲線分析法でも本発明が応用し得るか確認した。以下にその手順等を示す。本実施例では、融解曲線(melting curve、dissociation curve)を利用した実験を行った。手短には以下のとおりである。
(サンプル)
検査対象(被検者30名)からの唾液(ヒト口腔粘膜細胞を含む)の採取は、実施例1と同様に以下のマニュアルに従って行った。
(1)スワブスティック(実施例1と同様)を持ち、スポンジの片面で歯茎の外側・内側、頬の内側を、10回ほどこする。もう片面で同様に10回ほどこすった。スワブ両面を唾液で湿らせた。
(2)スティックの根元を持ち、サンプリングプレート(プラスチック板に水溶紙を貼り付けたプレート)の中央にスポンジの片面を5秒間押し当て、もう片面も同様に5秒間押し当てた(注意:プレートを擦らない)。
(3)使用済みのスワブは元の袋に戻して破棄した
(4)サンプリングシートを二つ折に戻し、30分以上乾かした。他人の飛沫する唾がサンプルプレートに付かないように注意して乾燥した
(方法)
インターカレーター法によるリアルタイムPCRにおいて、PCR増幅産物のTm値を確認する方法を利用した。融解曲線分析では、PCR反応後、反応液の温度を60℃から95℃まで徐々に上昇させ蛍光値をモニタリングする。PCR産物が二本鎖を形成している状態では強い蛍光が検出されるが、ある一定の温度(Tm値)に達すると一本鎖に解離し、蛍光値が急激に低下する。Tm値はPCR産物の長さやGC含量により異なるので、目的の増幅産物とプライマーダイマーのような短い増幅産物を区別することができる。
アンギオテンシン変換酵素(Angiotensin converting enzyme: ACE)
アンギオテンシンIIはアンギオテンシン変換酵素(Angiotensin converting enzyme: ACE)によりアンギオテンシンIから変換される。ACEをコードするACE遺伝子は、ヒトでは17番染色体長腕(17q23)に位置し、26のエクソンと25のイントロンを含む。ACE遺伝子の16番目のイントロンに287bpのDNAフラグメントを含むinsertion allele (I)とこれを欠くdeletion allele (D)が存在し、これによってII、ID、DDの3つの遺伝子型に分類される。1990年にRigatらは、それぞれの遺伝子型により血清ACE濃度が異なり、D alleleの方がI alleleより濃度が高いと報告する。(J Clin Invest 1990;86:1343-1346)
(参考文献)Nakahara K, Matsushita S., Matsuoka H., Inamatsu T., Nishinaga M., Yonawa M., Aono T., Arai T., Ezaki Y. and Orimo H. Insertion/depletion polymorphism in the angiotensin converting enzyme gene affects heart weight.Circulation 2000; 101(2): 148-151
PCR増幅はKOD (登録商標) SYBR (登録商標) qPCR Mix (東洋紡(株)製)を使用して、それぞれ以下の試薬を含む20μL反応液を調製した。遺伝子型判定は、本反応の結果、融解曲線解析により判定した。
(試薬)
KOD SYBR(登録商標) qPCR Mix: 10μL
Forward Primer 1.0μL(10 pmol)
Reverse Primer 1.0μL(10 pmol)
50X ROX reference dye: 0.4μL
DW(distilled water): 2.6μL
被検試料調製液: 5μL
全量: 20μL
(プライマー)
Forward Primer:5'-CTGGAGACCACTCCCATCCTTTCT-3'(配列番号1)
Reverse Primer:5'-ATGTGGCCATCACATTCGTCGTCAGAT-3'(配列番号2)
(増幅条件)
熱変性: 98℃ 2分→98℃ 10秒→60℃ 10秒→68℃ 1分を40サイクル。
(融解曲線)
95℃ 15秒→60℃ 1分→99℃ 15秒→60℃ 15秒
(結果)
結果を図4に示す。図でも示されているように、Insert(490bp):I/I 87.2℃、Delete(190bp):D/D 80.7℃、I/D 80.7℃および87.2℃という結果が示された。この結果から、遺伝子型の相違を簡易に検出することができることが示された。本実施例から、本発明により、簡便さや感度は改善したといえる。すなわち、DNAを抽出しなくとも、20〜30サイクルで増幅してくるので高感度遺伝子判定できており、本発明により簡便に定量的な分析が可能であることが理解される。
さらに、検査対象(被験者16名)について、異なる機器(QuantStudioTM 12K Flex Real−Time PCR System(Thermo Fisher Scientific Inc.))を用いて、水溶紙(120MDP)を用いた乾燥唾液サンプルによるACE遺伝子型判定を行った場合にも、融解曲線によって明瞭な遺伝子型の判定が可能であった(図23)。このことから、本発明のサンプリング基材は、様々な機器によるリアルタイムPCRに対応可能であることが理解される。
(実施例3A:PCR産物の電気泳動による検出)
さらに本発明に従って調製したサンプルを用いて、PCR増幅産物を電気泳動に供し、ACE遺伝子型の判定を成功裡に行うことができることを確認した。実施例3のリアルタイムPCR産物を、マイクロチップ電気泳動装置MultiNA(Shimadzu)を用いて分析した結果は図4Aに示され、ここで、ACE電気泳動の図面(図4A)は、先の融解曲線分析の結果と一致する。
上記配列番号1および2のプライマーにより、I対立遺伝子は490bpのフラグメントとして、D対立遺伝子は190bpのフラグメントとして増幅されるため、490bp(II)、190bp(DD)、190bpと490bp(ID)が検出できる。PCR増幅産物を電気泳動に供してサイズ分離することによって(例えば、マイクロチップ電気泳動装置MultiNA(Shimadzu)を用いて)、ACE遺伝子型を判定することができる(図4A)。このようなプライマーを用いる方法は、例えば、以下の参考文献においても記載されている。
High frequency of the D allele of the angiotensin-converting enzyme gene in Arabic populations BMC Research Notes 2009, 2:99
Angiotensin-converting enzyme insertion/deletion gene polymorphisms is associated with risk of glioma in a Chinese population Journal of the Renin-Angiotensin-Aldosterone System 0(2016)
Endothelial nitric oxide synthase, angiotensin- converting enzyme and angiotensinogen gene polymorphisms in hypertensive disorders of pregnancy Hypertension Research (2010) 33, 473−477
Insertion-Deletion Polymorphism of the ACE Gene Modulates Reversibility of Endothelial Dysfunction With ACE Inhibition Circulation July 4, 2000
ACE I/D and ACTN3 R/X polymorphisms as potential factors in modulating exercise-related phenotypes in older women in response to a muscle power training stimuli Age(Dordr) 35(5) (2013) 1949-1959
Angiotensin-converting enzyme and angiotensin II receptor 1 polymorphisms: association with early coronary disease Cardiovascular Research 40 (1998) 375−379
Association Between the Polymorphism of the Angiotensin - Converting Enzyme Gene and Breast Cancer Risk Among the Bengalee Caste Hindu Females of West Bengal, India Int J Forensic Sci Pathol. 3(2), 85-88.
The Angiotensin I−Converting Enzyme Gene Insertion/Deletion Polymorphism Is Linked to Early Gastric Cancer Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2005;14(12).
ROLE OF ANGIOTENSIN-CONVERTING ENZYME INSERTION/DELETION POLYMORPHISM IN TYPE I DIABETES NEPHROPATHY Romanian Journal of Diabetes Nutrition & Metabolic Diseases / Vol. 19 / no. 2 / 2012
Angiotensin-converting enzyme gene insertion/deletion polymorphism in migraine patients BMC Neurology 2008, 8:4。
(実施例4:リアルタイムPCRによるコピー数多型の検査)
本実施例では、リアルタイムPCRによるコピー数多型(CNV)の検査を行った。
(サンプル)
検査対象(被検者30名)からの唾液(ヒト口腔粘膜細胞を含む)の採取は、実施例1と同様に以下のマニュアルに従って行った。
(1)スワブスティックを持ち、スポンジの片面で歯茎の外側・内側、頬の内側を、10回ほどこすった。もう片面で同様に10回ほどこすった。スワブ両面を唾液で湿らせた。(2)スティックの根元を持ち、サンプリングプレート(プラスチック板に水溶紙を貼り付けたプレート)の中央にスポンジの片面を5秒間押し当て、もう片面も同様に5秒間押し当てた(注意:プレートを擦らない)。
(3)使用済みのスワブは元の袋に戻して破棄した。
(4)サンプリングシートを二つ折に戻し、30分以上乾かした。他人の飛沫する唾がサンプルプレートに付かないように注意して乾燥した。
(方法)
ゲノム構造変化に起因して起こるコピー数多型(Copy Number Variations, CNVs)は、近年疾患との関連性や薬剤応答性との関連が指摘されつつある。これを受けてゲノムワイドにCNVsを探索する手法(DNAチップ、シークエンサーなど)が開発され、世界中の研究者の努力の成果としてデータベースが構築され、日々情報が更新されている。しかし一方で、誰もが定量的に多くの検体のターゲットCNVsをバリデーションできる技術は、これまでそれほど多く存在していない。TaqMan(登録商標) Copy Number Assaysは、CNVsバリデーションに適した方法で、ヒト用にデザインされた160万種以上のTaqMan(登録商標)プローブとプライマーがセットになっており、ターゲットCNVs用のTaqMan(登録商標) Copy Number Assaysと、内部コントロールとなるTaqMan(登録商標) Copy Number Reference Assaysを用いて、リアルタイムPCR装置にてコピー数を3〜4時間で決定することができる。
また近年、ゲノム上の1,000塩基以上のまとまった塩基配列が広範囲で欠失や重複・挿入する大規模な範囲で起こっていることから、SNPと同様に種々の表現型に影響を及ぼし、多くの疾病における個人差をゲノム薬理学的なアプローチから解明するためには、SNPのみならずCNV情報についての多方面の収集も必要である。しかしながら、これらSNPやCNVの発現頻度は人種や民族の間で異なり、このことは人種や民族独自のSNPやCNV情報収集の重要性を示唆させる。したがって、日本人における種々薬物感受性遺伝子のSNPやCNVの発現頻度の集積と精査・評価により、本邦におけるゲノム情報に基づいた個別化医療の基盤構築をしなくてはならない。
一般に、ヒトの遺伝子は父母それぞれのゲノムに由来するものを一組ずつ、あわせて二組受け継ぐ。通常、ある遺伝子に着目した場合、それぞれ2つの遺伝子を有するものと考えられてきた。しかし近年、個人によっては1つの細胞あたり、ある遺伝子が1コピーのみ、あるいは3コピー以上存在するといった遺伝子のコピー数の個人差(コピー数多型)があることが判明した。このコピー数多型は、様々な薬の効きやすさや副作用の違いといった個人の体質差を生み出す原因として注目されている。
CNVsの判定は、TaqMan(登録商標) Copy Number Assay 法にて以下の通り行った。なお、使用したTaqMan(登録商標) Copy Number Assay(Life Technologies, Inc.)のアッセイ IDは、CYP2D6はHs00010001_cn、TaqMan(登録商標)Copy Number Reference AssayにはRNase Pを用いた。ABI PRISM(登録商標) 7300 Fast Real-Time PCR Systemを用いてテンプレートDNAは、TaqMan(登録商標)SNPタイピングと同様、乾燥唾液を増幅し、増幅曲線のΔΔCtからコピー数の判定を行った。
PCR反応液の組成は、被検試料調製液:2μL、THUNDERBIRD(登録商標) Probe qPCR Mix:5μL、20×TaqMan(登録商標)Copy Number Assay 0.5μL、20×TaqMan(登録商標)Copy Number Reference Assay 0.5 μL、50X ROX reference dye:0.2μLで、滅菌精製水を加え全量10μLとした(下記参照)。
THUNDERBIRD Probe qPCR Mix: 5μL
20x CNV Probe (CYP2D6*5, Hs00010001_cn) : 0.5μL
20x Copy Number Reference Assay RNaseP : 0.5μL
50X ROX reference dye: 0.2μL
DW(蒸留水): 1.8μL
被検試料調製液: 2μL
全量: 10μL
(増幅条件)
熱変性:50℃、2分→95℃、10分、 95℃、15秒→60℃、1分を40サイクル。
(結果)
TaqMan(登録商標)PCRによるCYP2D6のコピー数多型解析の結果を図5に示す。示されるように、1コピーの場合と2コピーの場合とで明確にその増幅曲線が識別できるため、曲線状態からいくつコピーが存在するのかを判定することができる。ここで、CYP2D6のコピー数多型を検出する方法として利用することができることが示された。欠損をCYP2D6*5と表現した。
(実施例5:サンプリングキットによる遠隔地からの試料収集例)
本実施例では、サンプリングキットを用いて、遠隔地での試料収集方法を構築した。
(サンプリングの準備(図14参照))
図14左欄に示すようにサンプリングシートとスワブ(滅菌袋に封入される)を用意し、被験者に送付する。シートは何度でも剥がせる両面テープを施し水溶紙上には両面テープで固定する。
被験者はスワブをビニール袋から取り出し、サンプリングシートを開く。
ここで、被験者には、以下の注意事項が示される。
(注意事項)
口の中に異物(飲食物など)→ うがいしてください。
(2)コーヒーを飲んですぐの場合→ うがいしてください。
(3)口紅やグロスなどを水溶紙に付着させないでください。
サンプリング方法(図14参照)
(1)スワブスティックを持ち、スポンジの片面で歯茎の外側・内側、頬の内側を、10回ほどこする。もう片面で同様に10回ほどこする。スポンジの両面が十分に湿るようにする。
(2)スティックの根元を持ち、水溶紙の○印に、スポンジの片面をあてて5秒間押す。もう片面も同様に5秒間。 (注意)水溶紙をこすらない。
(3)スワブは元の袋に戻し、ゴミとして破棄する。
(4)水溶紙を30分間以上乾かす。ほこりや他人の唾が水溶紙に付かないように注意して、乾燥させる。乾燥後、二つ折りにする。
(同意書作成)
次に被験者には今般の試験についてインフォームドコンセントに同意する同意書を作成するよう依頼する。同意書は「アルコール体質チェック」(ADH1BおよびALDH2の場合)などのタイトルを付した説明書の中綴じの同意書として作成してもよい。
(サンプル郵送)
(1)被験者はサンプルIDのシール1枚を剥がしテキスト裏面に貼り付ける。
(2)被験者はサンプリングシートと同意書を封筒に収め、郵送する。(例えば、図14のものを封入できるもの)。
(実施例6:口腔粘膜細胞捕集担体の性能確認)
新聞紙、定性ろ紙No.1、および水溶紙 60MDPを直径(Φ)6mmでパンチし、5μLの唾液を滴下したのち1時間乾燥させたサンプルを200μLの蒸留水に入れ、1、2、5、10、30、60分ごとに撹拌し各時点で取り出した上清5μL、および60分の後に95℃5分間インキュベートして取り出した上清5μLをTaqMan(登録商標) PCR反応液に加え、リアルタイムPCRに供した。50×ROX reference dyeは蛍光を調整するためのレファレンスとして用いた。Thunderbird(東洋紡)(1000回用のQPS-201X5(QPS-201の5セット組))を購入し使用した。
反応物の組成は、以下のとおりであった。
20×Probe (ADH1BおよびALDH2) 0.5μL
50×ROX reference dye 0.2μL
THUNDERBIRD Probe qPCR Mix: 5μL
Φ4mm in DW(蒸留水) 4.3μL
計 10.0μL
(※)200μLの蒸留水にΦ6mmでパンチしたサンプルを入れて、加熱するサンプルについては95℃、5分間THERMO BLOCK ND-G962(日伸理化製)で温めた。
リアルタイムPCRのサイクルは以下のとおりであった。
50℃、2分→95℃、10分→(95℃、15秒→60℃、1分)×40サイクル
ポジティブコントロールとしては、目的遺伝子を組み込んだプラスミドDNAについて、260nmでの吸光度とDNAの長さから理論的にコピー数を計算して基準とした。ADH1Bの場合、約500万コピー/μLの精製されたプラスミドDNAを希釈した物(10倍の段階希釈)をコントロールとして使用した。一般的には、定量的PCR反応では、10コピーから100万コピーの範囲で定量する。そして、Ct値で20サイクルから30サイクルの間が最も定量性が良好であるが、これは、コピー数としては1000コピーから100000コピーの範囲である。目的遺伝子を組み込んだプラスミドを10倍の希釈系列で調製したものをPCR反応に供し、ポジティブコントロールとした。
図15は新聞紙の結果を示す。図16は定性ろ紙の結果を示す。図17は水溶紙の結果を示す。加熱処理をすることにより、新聞紙、定性ろ紙、水溶紙いずれも捕集しているサンプルを放出し、遺伝子型を十分に検出できるシグナルが得られている。また、シグナル強度は、担体を蒸留水に浸漬している時間や、攪拌の程度には依存していない。
水溶紙は、加熱処理を経なくとも、十分なシグナルが得られており、特に望ましい。特に、結合したサンプルを全てまたはほとんど放出するため、良好な定量性を有することが示されている。
(実施例7:スワブから水溶紙への転写回数の定量性に対する無影響の確認)
口腔内粘膜細胞を採取した同じスワブの片面だけを、4枚の水溶紙に順次5秒間押し当てて乾燥したサンプルを使用して、実施例6と同様の手法によりリアルタイムPCR解析を行った。水溶紙は、4mmΦに切り抜き、蒸留水100μLに入れたのち、95℃5分の加熱処理を行った。リアルタイムPCRの反応組成は、上記実施例6のとおりであった。
結果を、図18に示す。水溶紙には、1回の接触でスワブに捕集されているほとんどのサンプルが移動していることがわかる。すなわち、スワブから水溶紙への転写について、その効率は回数には依存せず、定量的な測定が可能である。
(実施例8:唾液濃度勾配実験)
6mmΦに切り抜いた水溶紙60MDPに、10倍の希釈系列で段階的に希釈した唾液を10μL滴下し、1時間乾燥させたのち、蒸留水に加え、95℃で5分加熱処理を行い、上清5μLを、実施例6に記載されるものと同様のリアルタイムPCR反応に供した。また、唾液の希釈液10μLを蒸留水に加えて同様に加熱処理を行ったサンプルも同様にリアルタイムPCR反応に供した。
結果を、図19に示す。水溶紙を用いると、希釈系列のシグナルが直線的になっており、定量的である。水溶紙に滴下・乾燥したものと唾液を直接加熱処理したものを比較すると、水溶紙の方が約10倍感度が良い結果となっている。したがって、表面積が一定であれば、定量性が担保されることがこの実験でも確認された。さらに、定量性については、図19Aおよび図19Bを用いてさらに詳述する。
図19Aは、水溶紙から水中へ放出される試料の定量性の試験における、ポジティブコントロールの増幅曲線に基づいた検量線を示している。縦軸はCt値であり、横軸はコピー数である。ポジティブコントロールのコピー数については、精製されたDNAから分光学的に濃度(μLあたりのコピー数)を算出することができる。アレル1、2共に直線性が示されている。図19Aに示される直線では、約0.95以上の回帰率が得られた。
図19Bは、10倍の希釈系列で段階的に希釈した唾液を用いて行った水溶紙から水中へ放出される試料の定量性の試験において、図19Aに示される検量線を用いて算出したコピー数を示す表である。水溶紙に滴下した場合には、1000倍希釈まで直線性が示された。
したがって、表面積が一定であれば、少なくとも1000倍希釈というかなりの希釈率の場合にまでも定量性が担保されることがこの実験でも確認された。
(実施例9:水溶紙(60MDPおよび120MDP)の比較)
担体として水溶紙(60MDPおよび120MDP)を用いて、実施例6に記載されるのと同様のプロトコルによりADH1Bについて、遺伝子の増幅を確認した。乾燥唾液サンプルは実施例5に記載されるようにスワブを用いて調製した。本実施例では血液10μLを水溶紙に滴下し、乾燥させた後に5mmを打ち抜いたものも使用して同様の増幅の確認を行った。
図24に示されるとおり、唾液を用いた場合にはどちらの水溶紙でも遺伝子の増幅が確認されており、水溶紙の種類によらず、担体として用い得ることが理解される。血液サンプルの場合は、120MDPを用いた場合により遺伝子の増幅が大きく確認されている(図25)。これは、より厚い水溶紙の方が増幅阻害物質を多く含み得る血液等のサンプルの際には有利であり得ることを示している。また、120MDPの水溶紙は、サンプリングカードを作成する際に台紙上に固定せずとも十分な強度を有し、また、予め切れ目を入れておくことが可能であったため、パンチ等を用いずに押し出すことによって一定面積を切り出すことが可能であった(図14)。
(注記)
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本出願は、日本国特許庁に2016年8月2日に出願された特願2016−152125に対して優先権主張をするものであり、この出願の内容は、その全体が本明細書において参考として援用される。
本発明は、医薬品およびその開発、例えば、簡易診断剤として利用可能であり、将来的には簡易なコンパニオン診断薬として活用可能である。
配列番号1:実施例3で使用したForward Primer
配列番号2:実施例3で使用したReverse Primer

Claims (41)

  1. (A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、
    (B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材と
    を含む、核酸含有生体材料を含む試料から核酸増幅用のサンプルを調製するためのキット。
  2. 前記基材(B)は一定範囲量の核酸含有生体材料を含む試料を提供するように構成される、請求項1に記載のキット。
  3. 前記基材(B)の表面積は前記一定範囲量を提供するのに十分である、請求項2に記載のキット。
  4. 前記担体(A)は水に入れた際に核酸増幅を許容する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキット。
  5. 前記担体(A)は光学的検出を許容する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキット。
  6. 前記核酸増幅後の前記サンプル中の核酸は光学的検出される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキット。
  7. 前記担体(A)は水解性担体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のキット。
  8. 前記一定範囲量は、核酸増幅後にコピー数を識別し得る量である、請求項2〜7のいずれか1項に記載のキット。
  9. 前記一定範囲量は、基準量に対してX倍〜X分の1以内であって、Xは前記核酸増幅においてコピー数が1違う際に識別可能な倍率の相違である、請求項2〜8のいずれか1項に記載のキット。
  10. 前記(B)基材は、核酸含有生体材料を結合せずに担持する基材である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のキット。
  11. 前記基材は、ポリウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン、キチン、キトサン、コラーゲン、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン、セルロースおよびその誘導体、紙類、コラーゲン、ゼラチン、ウレタン、シリコンおよび脱脂綿、またはそれらの組み合わせ、またはそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のキット。
  12. 前記一定範囲量は、前記担体を一定面積で取り出すことによって達成される、請求項2〜11のいずれか一項に記載のキット。
  13. 前記基材(B)の表面積は、前記一定面積と同じまたはそれより広い、請求項12に記載のキット。
  14. 前記基材(B)は、前記一定面積を覆うのに十分な形状である、請求項12または13に記載のキット。
  15. 前記一定面積は、該一定面積を切除し得る切除器によって切除することで達成される、請求項12〜14のいずれか一項に記載のキット。
  16. 前記切除器は生検トレパン、およびパンチから選択される、請求項15に記載のキット。
  17. 前記一定範囲量は、前記試料を一定量で提供することによって達成される、請求項2〜16のいずれか一項に記載のキット。
  18. 前記担体は水解性紙である、請求項1〜17のいずれか1項に記載のキット。
  19. 前記核酸増幅は、非特異的増幅が生じる核酸増幅法である、請求項1〜18のいずれか1項に記載のキット。
  20. 請求項1〜19のいずれか一項に記載のキットと、(C)核酸増幅のための試薬とを含む、精製せずに核酸を増幅するためのキット。
  21. 前記核酸増幅のための試薬は、プライマー、核酸増幅酵素、および必要な緩衝剤を含む、請求項20に記載のキット。
  22. 前記(A)は非吸水性材料と吸水性材料とをさらに含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載のキット。
  23. (X)非吸水性材料と、
    (Y)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、
    (Z)吸水性材料と
    を含む、生体試料を乾燥するためのデバイス。
  24. 前記担体(Y)は、水に入れた際に核酸増幅を許容する、請求項23に記載のデバイス。
  25. 前記担体(Y)は光学的検出を許容する、請求項23または24に記載のデバイス。
  26. 前記担体(Y)は水解性担体である、請求項23〜25のいずれか1項に記載のデバイス。
  27. 前記非吸水性材料は前記担体を保持するように配置され、該非吸水性材料は前記吸水性材料と脱着可能に連結される、請求項18に記載のキットまたは請求項23〜26のいずれか一項に記載のデバイス。
  28. 前記非吸水性材料は前記吸水性材料と脱着可能な粘着部材を介して連結される、請求項22〜27のいずれか一項に記載のキットまたはデバイス。
  29. 前記非吸水性材料は前記担体の周囲を取り囲むように配置される、請求項22〜28のいずれか一項に記載のキットまたはデバイス。
  30. 前記担体は、前記非吸水性材料および前記吸水性材料と接触する、請求項22〜29のいずれか一項に記載のキットまたはデバイス。
  31. 前記担体は、前記吸水性材料と直接接触しないように配置される、請求項22〜30のいずれか一項に記載のキットまたはデバイス。
  32. 核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を検出する方法であって、
    (A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを用いて
    該核酸含有生体材料を含む被検試料を提供する工程、
    該担体を、該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーを含む核酸増幅試薬含有水溶液に接触させ、核酸が増幅する条件に供する工程、
    該光学的手段を用いて、該水溶液中に該特定遺伝子が含まれるか否かおよび/または該特定遺伝子のコピー数を検出する工程を包含する、方法。
  33. 前記基材を前記核酸含有生体材料に接触させ、その後、前記担体に該基材を接触させることによって、前記核酸含有生体材料を含む被検試料が提供される、請求項32に記載の方法。
  34. 前記被検試料は、一定範囲量の核酸含有生体材料を含むように提供される、請求項32または33に記載の方法。
  35. 核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を光学的手段を用いて検出するための試料を提供するキットであって、
    (A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
    該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
    核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
    を備える、キット。
  36. 核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を光学的手段を用いて検出するための試料を提供するシステムであって、
    (A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
    該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
    核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
    核酸増幅装置と
    を備える、システム。
  37. 核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子および/または該特定遺伝子のコピー数を検出するシステムであって、
    (A)核酸含有生体材料を結合し得る担体と、(B)該担体より該核酸含有生体材料の結合能が低い基材とを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
    該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
    核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
    核酸増幅装置と
    光学的手段と
    を備える、システム。
  38. 核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出する方法であって、
    該核酸含有生体材料を含む被検試料を、非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスに接触させる工程、
    該担体を該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーを含む核酸増幅試薬含有水溶液に接触させ、該水溶液を核酸が増幅する条件に供する工程、
    該光学的手段を用いて、該水溶液中に該特定遺伝子が含まれるか否かおよび/または該特定遺伝子のコピー数を検出する工程を包含する、方法。
  39. 核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出するための試料を提供するキットであって、
    非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスとを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
    該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
    核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
    を備える、キット。
  40. 核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出するための試料を提供するシステムであって、
    非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスとを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
    該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
    核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
    核酸増幅装置と
    を備える、システム。
  41. 核酸含有生体材料に含まれる特定遺伝子を検出するシステムであって、
    非吸水性材料と核酸含有生体材料を結合し得る担体と吸水性樹脂とを含むデバイスとを含む、核酸含有生体材料を含む被検試料を提供するためのキットと
    該特定遺伝子の特異的増幅を可能とするプライマーと、
    核酸増幅試薬または核酸増幅試薬含有水溶液と、
    核酸増幅装置と
    光学的手段と
    を備える、システム。
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