JPWO2018020678A1 - 投影光学系およびヘッドアップディスプレイ装置 - Google Patents

投影光学系およびヘッドアップディスプレイ装置 Download PDF

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Abstract

小型なヘッドアップディスプレイ装置を提供する。ヘッドアップディスプレイ装置(30)は、画像情報を表示する画像形成ユニット(10)と、画像形成ユニット(10)から出射された光を反射することで虚像を表示させる接眼光学系(5)を含む投影光学系と、を含み、観察者が虚像を観察する瞳位置(アイボックス(8)の位置)が接眼光学系(5)の外側に位置し、接眼光学系(5)は、画像形成ユニット側から自由曲面レンズ(51)と、自由曲面凹面ミラー(52)の順に並べて配置され、接眼光学系は、画像形成ユニット側から自由曲面レンズと、自由曲面凹面ミラーとを含み、画像形成ユニットがバックライトと液晶表示パネルを含み、接眼光学系の画像形成ユニット側の瞳位置を接眼光学系側から見て液晶表示パネルの先に形成し、且つ、画像形成ユニットの接眼光学系側の瞳位置を画像形成ユニット側からみて液晶表示パネルの手前に形成したことを特徴とする。

Description

本発明は、投影光学系およびヘッドアップディスプレイ装置に関する。
ヘッドアップディスプレイ装置に関する技術として、特許文献1には、「透過型の液晶表示パネル、液晶表示パネルに背後から光を照射するバックライト、液晶表示パネル上に表示される画像を拡大投影する投影光学系を備える。投影光学系は、リレーレンズと投影レンズ(接眼光学系)とからなる。リレーレンズは、いくつかの条件を満たすことでテレセントリック性の表示光を効率良く利用するように構成されており、液晶表示パネルに表示された画像を拡大して実像を結像する。投影レンズ(接眼光学系)は、実像をさらに拡大して、自動車のウインドシールドに投影し、運転手に対して虚像を表示する(要約抜粋)」という構成が開示されている。
この特許文献1のヘッドアップディスプレイ装置では、観察者の前方2m先に、スピードメータやタコメータ、水温計、燃料計等の各種計器類の値を虚像として表示する。これによって、各種計器類の値を虚像で見る視線方向と、虚像の観察者が見る前景に対する視線方向との差が小さくなるので、この2つの視線方向の間での視線移動に要する時間を低減できる。
また、各種計器類等を直接見る距離よりも、虚像までの距離(2m前方)の方が、観察者が見ている前景までの距離に近くなる。これによって、前景の中の対象物に観察者の眼のピントを合わせた状態と、虚像として表示される各種計器類の値に観察者の眼のピントを合わせた状態との間における、ピント調整時間を短縮できる。
この2つの利点により、ヘッドアップディスプレイ装置による、自動車の運転における安全性の向上が期待できる。
また、特許文献2には、「表示デバイス側から、回転非対称ミラーと、自由曲面ミラーを有する構成で、各ミラーの配置角度などを規定することで、鉛直方向に薄型な表示装置を提供する(要約抜粋)」という構成が開示されている。
一方、非特許文献1には、(光学系において像の)「歪曲の起こる原因」として、「凸レンズの後ろに絞りがあると、凸レンズは主光線を曲げる力が理想レンズより強くなるから、理想像高より像高のほうが大きくなる。」という記載がある。
同様に、特許文献3には「第1レンズの前方に絞りを配置した構成であるため、光学系を構成するレンズのパワー配分の対称性が悪く、ディストーションや倍率の色収差が発生してしまう。」という記載がある。すなわち、従来から、絞りに対するパワー配分の非対称性は、歪曲が起こる原因であることが知られている。
絞りに対するパワー配分の違いによる歪曲は、凸レンズと絞りとの位置関係において異なる。例えば、凸レンズの手前に絞りを配置と、絞りの中心を通過する主光線に対して、凸レンズによる球面収差が発生する。この結果、近軸光線の像高さより、実光線の像高さの方が低くなり、樽型の歪が生じる。また、凸レンズ103の後に絞りを配置すると、絞りの中心を通過する主光線に対して、同様に凸レンズによる球面収差が発生する。この結果、近軸光線の像高さより、実光線の像高さの方が高くなり、糸巻き型の歪が生じる。
特開2009−229552号公報 特開2015−194707号公報 特開2004−361934号公報
写真工業(1998年12月号、112〜113頁)
特許文献2に開示されたヘッドアップディスプレイ装置は、表示デバイスと回転非対称ミラーを水平方向にずらすことで薄型化を図っている。しかしながら、特許文献2のヘッドアップディスプレイ装置は、虚像サイズが140×70mmの横長状になるので、垂直方向サイズの2倍の光束サイズを有する水平方向に光束を折り曲げる構成になる(特に実施例1を参照)。このような構成は、折り曲げミラーが大きくなり、薄型化を図ることはできても装置全体の容積の小型化には課題がある。
また、特許文献2のような構成は、特許文献1に開示された液晶表示パネルにおけるテレセントリック性についても、互いに影響し合う、したがって、従来から知られている技術や構成によれば、歪性能との関係において、テレセントリック性の条件を整えるには課題がある。
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、投影光学系を最小な光学構成で、且つ、小型なヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
上記した課題を解決するために、画像形成ユニットにおいて形成される画像光束に基づく虚像を接眼光学系により形成するヘッドアップディスプレイ装置であって、前記画像形成ユニットは、バックライトと液晶表示パネルとを含み、前記接眼光学系は、前記画像形成ユニットに近い方から順に、自由曲面レンズと、自由曲面凹面ミラーと、を含み、前記虚像を観察者が観察する瞳位置は、前記接眼光学系の外側に位置し、前記接眼光学系における前記画像形成ユニットの瞳位置は、前記接眼光学系の方から見て前記液晶表示パネルの先に形成され、前記画像形成ユニットにおける前記接眼光学系の瞳位置は、前記画像形成ユニットの方から見て前記液晶表示パネルの手前に形成される、ことを特徴とする。
本発明によれば、投影光学系を最小な光学構成で、且つ、小型なヘッドアップディスプレイ装置を提供できる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明に係る投影光学系の第1実施形態における接眼光学系の全体光線図であり、(a)YZ平面における全体光線図、(b)XZ平面における全体光線図、である。 第1実施形態に係る接眼光学系の要部拡大図である。 第1実施形態に係る接眼光学系のレンズデータを示す図である。 第1実施形態に係る接眼光学系の自由曲面係数を示す図である。 第1実施形態における射出瞳位置を変えた場合の角度ずれの変化を表す図である。 第1実施形態におけるアイボックスの中央から見た歪性能を表す図である。 第1実施形態におけるアイボックスの右上から見た歪性能を表す図である。 第1実施形態におけるアイボックスの左上から見た歪性能を表す図である。 第1実施形態におけるアイボックスの左下から見た歪性能を表す図である。 第1実施形態におけるアイボックスの右下から見た歪性能を表す図である。 第1実施形態における接眼光学系の赤色のスポット図である。 第1実施形態における接眼光学系の緑色のスポット図である。 第1実施形態における接眼光学系の青色のスポット図である。 第1実施形態における主光線の角度ずれ図である。 本発明に係る投影光学系の第2実施形態における接眼光学系の全体光線図であり、(a)YZ平面における全体光線図、(b)XZ平面における全体光線図、である。 第2実施形態に係る接眼光学系の要部拡大図である。 第2実施形態に係る接眼光学系のレンズデータを示す図である。 第2実施形態に係る接眼光学系の自由曲面係数を示す図である。 第2実施形態におけるアイボックスの中央から見た歪性能を表す図である。 第2実施形態におけるアイボックスの右上から見た歪性能を表す図である。 第2実施形態におけるアイボックスの左上から見た歪性能を表す図である。 第2実施形態におけるアイボックスの左下から見た歪性能を表す図である。 第2実施形態におけるアイボックスの右下から見た歪性能を表す図である。 第2実施形態における接眼光学系の赤色のスポット図である。 第2実施形態における接眼光学系の緑色のスポット図である。 第2実施形態における接眼光学系の青色のスポット図である。 第2実施形態における主光線の角度ずれ図である。 本実施形態における接眼光学系の縮小側の主光線図である。 本実施形態における入射瞳位置の違いによる射出瞳位置の変化を説明する図である。 本実施形態における射出瞳方向からの角度ずれの定義の説明図である。 本発明の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置の例を示す画像形成ユニットの概略構成図である。 本発明の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置の別の例を示す画像形成ユニットの概略構成図である。 本発明の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置のさらに別の例を示す画像形成ユニットの概略構成図である。 本実施形態における絞りに対する非対称性による歪性能の説明図である。 本実施形態に関連する瞳位置の測定方法の説明図である。 本発明に係る自動車の実施形態を示す平面図である。 本発明に係る投影光学系が備える画像形成ユニットの構成を説明する図である。
以下、図面等を用いて、本発明の一実施形態及び各種実施例について説明する。本発明は、以下において説明される内容に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
まず、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置の一実施形態であるヘッドアップディスプレイ装置30について図31を用いて説明する。図31は、本実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置30の基本構成を示す概略構成図である。
図31に示すヘッドアップディスプレイ装置30は、画像形成ユニット10及び接眼光学系5を含む投影光学系20から出射された映像光を、自動車(不図示)のウインドシールド6で反射させて観察者の眼9に入射させる構成を備える。なお、投影光学系20は、本発明に係る投影光学系の一実施形態である。
より詳しくは、投影光学系20は、照明手段であるバックライト1と、画像形成手段である液晶表示パネル2と、を含む光学系である。バックライト1から出射された光は、液晶表示パネル2に照射される。液晶表示パネル2は、バックライト1からの光束を用いて、液晶表示パネル2に表示された画像情報(映像情報)を含んだ画像光束(映像光束)を生成して出射する。このバックライト1と、液晶表示パネル2を総称して画像形成ユニット10という。
次に、液晶表示パネル2で生成されて出射された映像光束は、接眼光学系
5に照射される。接眼光学系5は、この映像光束を拡大してウインドシールド6に投写する。ウインドシールド6に投写された拡大された映像光束は、ウインドシールド6において反射される。このウインドシールド6において反射された映像光束が、観察者の眼9の位置に到達する。観察者の眼9に到達した映像光束によって、観察者はあたかも、虚像面7における画像情報(映像情報)を見ているような関係性が成立する。図31において示す液晶表示パネル2上の3点(点Q1・Q2・Q3)が、それぞれ虚像面7における3点(点V1・V2・V3)に対応する。
観察者の眼9の位置を動かしても、虚像面7の点V1・V2・V3を見ることができる範囲が、アイボックス8である。このように、接眼光学系5は、カメラのファインダーの接眼レンズや、顕微鏡での接眼レンズと同様に、物(空間像)の像(虚像)を観察者の眼の前に表示する光学系である。なお、ウインドシールド6で映像光束を反射する代わりに、専用のコンバイナと呼ばれる半透過性の凹面ミラーを配置する構成でもよい。
図31は、ヘッドアップディスプレイ装置30を一定の方向から平面に投影した状態を例示している。したがって、液晶表示パネル2や虚像面7及びアイボックス8は線分で表している。しかし、これら光学素子はいずれも奥行き方向に寸法を有していて、観察者の眼9において2次元的な広がりを有する画面状の虚像を見えるようにするものである。
観察者の眼9において虚像面7の虚像を観察するときのいわゆる「瞳位置」は、アイボックス8の位置に相当する。すなわち、本実施形態において、虚像面7における虚像を観察する観察者の眼9における瞳位置は、接眼光学系5の外側に位置する。
ここで、図28から図30を用いて、ヘッドアップディスプレイ装置30の接眼光学系5に求められる瞳位置の条件について説明する。
図28は、ウインドシールド6と自由曲面凹面ミラー52を含む接眼光学系5の必要最小限な構成における光線図である。図28は、通常は配置される液晶表示パネル2を省略し、虚像面7側を物体とした縮小光学系における射出瞳位置101を説明するための図である。したがって、図28では、液晶表示パネル2を配置せずに、且つ、主光線のみでの光線の状態を示している。なお、図28の光線図は、瞳径を0.001mmと仮定したものである。
図28において、座標系は、アイボックス8の水平方向をX軸、垂直方向をY軸、XY平面に垂直な方向をZ軸として定義する。図28(a)は、ウインドシールド6から光束の集光位置(射出瞳位置101)までの光線をYZ断面に投影した光線図である。また、図28(b)は、自由曲面凹面ミラー52から光束の集光位置(射出瞳位置101)までの光線をXZ断面に投影した光線図である。
ところで、ヘッドアップディスプレイ装置30の小型化を図るには、液晶表示パネル2の配置場所をウインドシールド6から自由曲面凹面ミラー52への光路を避け、なるべく凹面ミラーに近い場所にすることが望ましい。したがって、図28に示すような虚像面7を物体とした縮小光学系では、映像光束が液晶表示パネル2を通り過ぎた先に、接眼光学系5の射出瞳が位置することになる。以上のとおり、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30は、虚像面7を物体と捉える縮小光学系と仮定して、接眼光学系5及び液晶表示パネル2の瞳位置を規定する。
なお、通常の液晶表示パネル2とバックライト1の組合せでは、液晶表示パネル2の入出射側でテレセントリックとしている。
図28に示す構成において、液晶表示パネル2側でテレセントリック性(射出瞳距離が無限大)を満足するためには、液晶表示パネル2の直前にフィールドレンズとして、負の屈折力(=パワー)である凹レンズを配置する必要がある。
このフィールドレンズの作用について、図29を用いて説明する。図29(a)は、絞り102を凸レンズ103の直前に配置した例である。図29(a)において、絞り102の中心を通過する主光線は、凸レンズ103の光軸に近い箇所を通過する。この主光線はそのまま直進する。したがって、絞り102の中心を通過する主光線は、像面104への入射が発散するので、テレセントリック性を実現するためには、フィールドレンズとして正の屈折力を有する凸レンズ103を配置する必要がある。
図29(b)は、絞り102を凸レンズ103の焦点距離と同じ距離だけ凸レンズ103から離して配置した例である。図29(b)において、絞り102の中心を通過する主光線は、凸レンズ103で屈折して平行光線になる。したがって、フィールドレンズなしでテレセントリックを実現できる。
図29(c)は、絞り102を凸レンズ103の焦点距離以上に凸レンズ103から離して配置した例である。絞り102の中心を通過する主光線は、図29(b)に比べて、より大きな屈折力を受け、像面104へは主光線が収束して入射する。したがって、テレセントリックを実現するためには、フィ−ルドレンズとして、負の屈折力を有する凹レンズを配置する必要がある。
図29(c)のように、絞り102が凸レンズ103の手前に大きくずれる配置は、ヘッドアップディスプレイ装置30における配置関係と同様である。すなわち、ヘッドアップディスプレイ装置30のように、接眼光学系5からアイボックス8が大きく飛び出ている配置関係と同じ配置関係である。したがってヘッドアップディスプレイ装置30の接眼光学系5の液晶表示パネル2側でテレセントリックを実現するには、液晶表示パネル2の手前に凹レンズを配置する必要がある。
一方で、像面の手前に配置するフィールドレンズは、テレセントリック化の作用と同時に、歪曲に関する作用が大きい。ここで、図34を用いて歪曲に関する作用について説明する。図34は、絞り102に対するパワー配分の違いによる歪図をまとめたものである。
図34(a)は、凸レンズ103の手前に絞り102を配置した構成を例示している。この場合、絞り102の中心を通過する主光線に対して、凸レンズ103による球面収差が発生する。その結果、近軸光線の像高さy0より、実光線の像高さyの方が低くなり、樽型の歪が生じる。
図34(b)は、凸レンズ103の後ろに絞り102を配置した構成を例示している。この場合、絞り102の中心を通過する主光線に対して、同様に凸レンズ103による球面収差が発生する。その結果、近軸光線の像高さy0より、実光線の像高さyの方が高くなり、糸巻き型の歪が生じる。
ヘッドアップディスプレイ装置30の接眼光学系5の基本構成は、アイボックス8が大きく飛び出た構成であるから、図34(a)の構成に該当する。したがって、正の屈折力を有する光学素子で発生する歪量を補正するために、液晶表示パネル2の手前に、逆の歪量を発生させるための光学素子を配置する必要がある。すなわち、液晶表示パネル2の手前に、負の屈折力を有する凹レンズを配置することが必要となる。
テレセントリック化のために凹レンズを用いる目的は、主光線を光軸に平行にする点にある。しかし、歪曲の補正のために凹レンズを用いる目的は、図34(a)に例示したような樽型の歪を補正するために液晶表示パネル2において像高を少し大きくする点にある。
そこで、本実施形態では、照明光学系としてのバックライト1から液晶表示パネル2に入射する照明系の瞳位置を自由度として用いる。この照明光学系の瞳位置とは、画像形成ユニット10を液晶表示パネル2とバックライト1で構成する場合は、バックライト1の仮想の光源出射位置に相当する。また、照明光学系の瞳位置とは、画像形成ユニット10を微小電気機械システム(MEMS:Micro Electronics Mechanical System)による光走査(後で詳細は説明する)で構成する場合は、MEMSの位置に相当する。
ここで、図30を用いて、液晶表示パネル2側でテレセントリックにした場合と、液晶表示パネル2側の瞳位置を有限距離にした場合における、角度ずれの定義について説明する。図30は、入射角度と、射出瞳方向からの光線ずれを説明する図である。図30(a)は、従来のテレセントリックが狙いの場合での角度ずれを説明する図である。図30(a)に示すように、液晶表示パネル2に入射する主光線と、液晶表示パネル2の法線との成す角度θ1を入射角度とする。図30(b)は、液晶表示パネル2での主光線の交点と有限距離にある瞳位置を繋ぐ仮想光線の角度ずれを説明する図である。図30(b)に示すように、液晶表示パネル2における主光線の交点と有限距離にある瞳位置とを結ぶ仮想光線と、主光線との成す角度θ2を出射瞳ずれ角度とする。射出瞳ずれ角度は、射出瞳位置101を無限遠に設定すれば入射角度に一致する。この場合、射出瞳位置101の位置は、光軸上に存在するとは限らない。
ヘッドアップディスプレイ装置30は、例えば、車両に搭載される装置であるから、ヘッドアップディスプレイ装置30が映像光束を投射するウインドシールド6は、車両に対して左右対称である。しかし、車両において、ヘッドアップディスプレイ装置30が搭載される位置は、運転者の正面に位置するので、接眼光学系5にとってウインドシールド6が左右非対称、上下非対称な構成要素である。その結果、ウインドシールド6の形状による左右非対称・上下非対称の歪みが大きく発生する。そこで、接眼光学系5において、液晶表示パネル2の手前に配置する凹レンズは、歪性能や解像度性能を含めた光学性能の補正を行う自由曲面レンズとする。
詳細な定義式は後で説明するが、接眼光学系における液晶表示パネル2の手前に配置される自由曲面レンズ(凹レンズ)は、XY多項式を含むため、左右非対称・上下非対称なレンズ作用を持たせることができる。したがって、ウインドシールド6で発生する左右非対称、且つ、上下非対称な歪性能は、自由曲面レンズを用いることで補正することができる。
次に、ヘッドアップディスプレイ装置30の実施形態について説明する。本実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置30は、液晶表示パネル2側での瞳位置を液晶表示パネル2の奥(バックライト1側)に設けて、自由曲面凹面ミラー52と自由曲面凹面レンズ51を用いた投影光学系20を備える。
ここで、液晶表示パネル2に照明光を照射する照明光学系であるバックライト1の瞳位置の測定方法について、図35を用いて説明する。
図35(a)は、バックライト1から射出された照明光束を液晶表示パネル2に照射している様子を表している。ヘッドアップディスプレイ装置30において、バックライト1から射出された照明光束の進行方向において、液晶表示パネル2の後段には、接眼光学系5を構成する光学要素が配置される。図35(a)においては、その接眼光学系5の光学要素を省略している。図35(a)に示すように、バックライト1から出射された照明光束は、液晶表示パネル2を通過して拡散する。
図35(b)は、図35(a)に例示した構成に対して、液晶表示パネル2の代わりに、遮光板2000を配置した状態を例示している。遮光板2000は、照明光束の進行方向において孔2001が1箇所だけ設けられている。図35(b)のような構成を設けて、遮光板2000から1m先の平面における光量分布の中心位置を測定する。これによって、遮光板2000上の孔2001の位置を繋いだ線上に瞳位置が存在することが分かる。近軸計算では瞳位置は、1点で明確に定まる。しかし、実際の光学系には収差があるので、遮光板2000に設けた孔2001の位置によって、測定で求まる瞳位置にはずれが生じる。なお、液晶表示パネル2全体に対する瞳位置を測定で特定することが可能である。
ここで、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30を移動体に搭載した場合の例について図36を用いて説明する。図36は、移動体である自動車500を前方から見た平面図である。図36に示すような自動車500には、風防としてフロントガラスであるウインドシールド6が、運転席の前方に配置されている。
ヘッドアップディスプレイ装置30は、ウインドシールド6に映像光束を投影することで、自動車500の動作に係る各種情報を運転席にいる観察者が虚像として視認できる状態にする。映像光束が投影される位置は、運転席の前方やその周囲である。例えば図24の破線矩形領域R1に示すような位置に映像光束が投影される。
本実施形態の説明に用いる自動車500は、左ハンドル車である。したがって、自動車500の前方に向かって左側に運転席があり、ウインドシールド6上における映像光束の投影位置は左側になる。仮に自動車500が右ハンドル車であるならば、ウインドシールド6上における映像光束の投影位置は、自動車500の前方に向かって右側になる。
次に、自動車500に画像形成ユニット10を搭載した場合の例について説明する。図37に示すように、画像形成ユニット10は、液晶表示パネル2と、バックライト1と、これらの動作を制御するコントローラー200と、を備えている。画像形成ユニット10は、バックライト1から液晶表示パネル2に光を照射し、液晶表示パネル2に表示された画像情報(映像情報)を接眼光学系5に向けて出射する。
コントローラー200は、制御装置201を備えている。この制御装置201には、種々の情報が外部装置から入力される。例えば、ヘッドアップディスプレイ装置30を搭載した移動体の動作に関する情報を生成して出力するナビゲーション装置であるナビ208や、移動体の動作を制御するECU(Electronic Control Unit)209が接続されている。ECU209には移動体が備える各種のセンサ210が接続されていて、検知した情報をECU209に通知するように構成されている。
コントローラー200は、上記にて説明をした外部装置からの各種データを処理する制御装置201と、バックライト1を駆動するためのバックライト駆動回路207と、を備えている。
制御装置201は、外部装置からの各種データを記憶するためのRAM(Randam Accsess Memory)203と、観察者が視認する虚像の元になる画像データを生成する演算処理を実行するCPU(Central Prosessing Unit)205と、CPU205における演算処理を実行可能なプログラムやパラメータを記憶するROM(Read Only Memory)204と、を備えている。
以上の構成を備えるコントローラー200によって画像形成ユニット10が備える液晶表示パネル2に画像情報が表示される。画像形成ユニット10は、液晶表示パネル2に表示された画像情報をバックライト1が照射した光束によって映像光束として出射する。
<第1実施形態>
以下、本発明に係る投影光学系の第1実施形態について説明する。図31は、第1実施形態に係る投影光学系20を備えるヘッドアップディスプレイ装置30の構成を概略的に示す概略構成図である。本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30は、接眼光学系5の構成において特徴を有する。図31において、ヘッドアップディスプレイ装置30は、接眼光学系5と画像形成ユニット10を備える投影光学系20における瞳位置に特徴を有する。すなわち、接眼光学系5の画像形成ユニット10側の瞳位置を接眼光学系5側から見て液晶表示パネル2の先に形成し、画像形成ユニット10の接眼光学系5側の瞳位置を液晶表示パネル2の手前に形成する。
次に、図1を参照して、本実施形態に係る投影光学系20を構成するウインドシールド6と接眼光学系5について説明する。図1は、第1実施形態に係る接眼光学系5の全体光線図であって、座標系は、アイボックス8の水平方向をX軸、垂直方向をY軸、XY平面に垂直な方向をZ軸として定義する。図1(a)は、YZ平面において虚像面7の映像情報(虚像)を観察者の眼9で見ている様子を表している。また、図1(b)は、XZ平面において虚像面7の映像情報を観察者の眼9で見ている様子を表している。
図1(a)に示すようにYZ平面では、観察者の右眼と左眼が重なっており(符号9参照)、図1(b)に示すようにXZ平面では右眼と左眼が別々に図示されている。ウインドシールド6は、ヘッドアップディスプレイ装置30による有効光束が通過する範囲のみを表示しているが、ウインドシールド6自体は、自動車の左右方向に対して対称な形状である。
図2は、第1実施形態における接眼光学系5の要部拡大図である。図2に示すように、接眼光学系5は偏光板21側から、自由曲面凹面ミラー52側に凸面を向けた負の屈折力の自由曲面凹面レンズ51と、正の屈折力の自由曲面凹面ミラー52と、ウインドシールド6とを並べて配置することにより構成されている。なお、偏光板21は、液晶表示パネル2の構成部品である。また、図2において自由曲面凹面レンズ51は、前後面を1つの面で表している。
接眼光学系5の屈折力は、主に自由曲面凹面ミラー52が負担している。自由曲面凹面ミラー52から離れた位置にある自由曲面凹面レンズ51では、主光線の光線高さが高いので台形歪の補正作用を有する。ウインドシールド6で反射した光束が自由曲面凹面ミラー52に向かう光路の真下に、自由曲面凹面レンズ51が位置することで、ヘッドアップディスプレイ装置30は小型化を図ることができる。
図3は、第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30のレンズデータを示す図である。図3に示すレンズデータにおいて、「曲率半径」は曲率半径の中心位置が映像光束の進行方向にある場合を正の符合で表している。また、「面間距離」は、各面の頂点位置から次の面の頂点位置までの光軸上の距離を表している。
「偏心」は、X軸方向・Y軸方向・Z軸方向のそれぞれにおける値である。「倒れ」は、X軸回りの回転・Y軸回りの回転・Z軸回りの回転である。「偏心・倒れ」は、該当の面における偏心と倒れの順に作用し、「普通偏心」は、偏心・倒れが作用した新しい座標系上での面間距離の位置に次の面が配置される。「デセンタ・アンド・リターン」の偏心及び倒れは、その面でのみ作用し、次の面には影響しない。なお、X軸回りの回転はX軸の正方向から見て時計回りが正、Y軸回りの回転はY軸の正方向から見て時計回りが正、Z軸回りの回転はZ軸の正方向から見て反時計回りが正である。
硝材名50.30は、屈折率1.50でアッベ数が30の材料を表す。また、硝材名52.60は、屈折率1.51でアッベ数が60の材料を表す。
次に、本実施形態に係る自由曲面凹面ミラー52と自由曲面凹面レンズ51に係る自由曲面係数を図4において示す。図4に示した自由曲面係数は、以下の式1により求められる。
自由曲面係数Cは、それぞれの光軸(Z軸)に対して回転非対称な形状であり、円錐項の成分とXYの多項式の項の成分で定義される形状である。例えば、Xが2次(m=2)でYが3次(n=3)の場合は、j={(2+3)+2+3×3}/2+1=19であるC19の係数が対応する。また、自由曲面のそれぞれの光軸の位置は、図3のレンズデータでの偏心・倒れの量によって定まる。
次に、本実施形態に係る接眼光学系5におけるアイボックスサイズ(アイボックス8の寸法)や、視野角などの具体的数値例について表1に示す。なお、表1において、数値の順番は、水平方向、垂直方向の順である。
図3において示したレンズデータは、虚像面7を物体とした縮小光学系として捉えた接眼光学系5を場合のデータである。表1において、「射出瞳位置101」が「−165mm」となっているが、このマイナス符合の意味は、自由曲面凹面ミラー52の後で面間距離が負になっている空間における位置に射出瞳位置101があることを示している。即ち、液晶表示パネル2から距離165mm過ぎた所に射出瞳位置101があることを表している。
図5は、射出瞳位置101を「−165mm」の位置からずらした場合に、図30を用いて説明した仮想光線からの角度ずれがどのように変化をするかを説明する図である。図5に示す表に含まれるF1からF23までの符合は、各画角位置を表している。図5に示すグラフは、横軸が射出瞳位置101の位置、縦軸が各画角位置における角度ずれの平均値と最大値を表している。
図5のグラフが示すように、射出瞳位置101を液晶表示パネル2から−165mmの位置に設定せず、液晶表示パネル2に近づけても、液晶表示パネル2から遠ざけても、角度ずれが大きくなる。すなわち、本実施形態における射出瞳位置101は、液晶表示パネル2から−165mmに相当する位置が、角度ずれを小さくする最適な位置である。
次に、第1実施形態の光学性能について図6から図14を用いて説明する。図6から図10は、第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置30の歪性能を表す図である。図11から図13は、第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置30のスポット図である。図14は、各画角位置における主光線の仮想光線からの角度ずれ図である。
図6は、アイボックス8の中央(E1)を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。図7は、アイボックス8の最右上(E2)を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。図8は、アイボックス8の最左上(E3)を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。図9は、アイボックス8の最左下(E4)を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。図10は、アイボックス8の最右下(E5)を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。
図6から図10の歪性能は、矩形状の虚像の範囲に対して、アイボックス8の中央と4隅を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。仮に、液晶表示パネル2側に矩形状の画像を表示した状態で、アイボックス8内のそれぞれの位置に眼を位置した場合には、図6から図10と逆の歪(例:樽型⇔糸巻型)が観察される。
図6から図10に示すとおり、本実施形態における歪性能は、歪図の形状がほぼ同じ形状になっている。したがって、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30において、例えば図6の歪図に合わせた映像を液晶表示パネル2に表示すれば、観察者は歪の無い矩形状の虚像を観察できる。
図11は、虚像面7に物点を配置した場合の液晶表示パネル2上におけるスポット図であって、アイボックス8全体を通過する光束の波長が650nm(赤色)のもののスポットを示した図である。図12は、虚像面7に物点を配置した場合の液晶表示パネル2上におけるスポット図であって、アイボックス8全体を通過する光束の波長を550nm(緑色)のもののスポットを示した図である。図13は、虚像面7に物点を配置した場合の液晶表示パネル22上におけるスポット図であって、アイボックス8全体を通過する光束の波長を450nm(青色)のもののスポットを示した図である。
図11から図13に示したスポット図は、アイボックス8の大きさが水平130mm×垂直40mmである場合の全光束によるスポット図である。実際の観察者の眼9の虹彩の大きさは最大でφ7mmといわれているので、観察者の眼9において見える虚像のスポット図としては、大幅に良くなっている。なお、図11から図13において示したスポット図は、虚像面7を物体とした縮小光学系における液晶表示パネル2の各位置でのスポット図を5倍に拡大強調した図である。図11から図14に示すF1乃至F23は、視野範囲のなかの各画角位置を表している。
視野範囲は、アイボックス8の位置に眼を配置し、観察する虚像の範囲、即ち、視野の範囲である。図11から図13で示したスポット図は、視野範囲の中の虚像上のある点(画角)から出射し、アイボックス8の範囲全てを通過した光束における液晶表示パネル2側でのスポット図である。視野範囲は、アイボックス8の範囲に虚像面7の任意の点に対応する光線に対応する点の集合ともいえる。本実施形態の説明において、視野範囲に含まれる点のうち、23カ所の点を例示している。以下、この23カ所の点を適宜用いて説明する。
図14は、各画角位置における主光線の仮想光線からの角度ずれを示す図である。図14に示すように、角度ずれの最大値は3.0度であって、角度ずれの平均値は1.7度である。以上のとおり、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30は、各画角位置における主光線の仮想光線からの角度ずれは小さい。
以上説明のように、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30は、自由曲面凹面ミラー52と自由曲面凹面レンズ51を用いた投影光学系により、小型化なヘッドアップディスプレイ装置30を提供できる。
<第2実施形態>
次に、本発明に係る投影光学系の別の実施形態について説明する。第2実施形態は、接眼光学系5の射出瞳位置が第1実施形態とは異なる点に特徴がある。第1実施形態では液晶表示パネル2側での射出瞳位置101を−165mmとした。第2実施形態では液晶表示パネル2側での射出瞳位置101を液晶表示パネル2に対し水平方向及び垂直方向において動かすことができる。
まず、図15を参照して、本実施形態に係る投影光学系20を構成するウインドシールド6と接眼光学系5について説明する。図15は、第2実施形態に係る接眼光学系5の全体光線図であって、座標系は、アイボックス8の水平方向をX軸、垂直方向をY軸、XY平面に垂直な方向をZ軸として定義する。図15(a)は、YZ平面において虚像面7の映像情報を観察者の眼9で見ている様子を表している。また、図15(b)は、XZ平面において虚像面7の映像情報を観察者の眼9で見ている様子を表している。
図15(a)に示すようにYZ平面では、観察者の右眼と左眼が重なっており(符号9参照)、図15(b)に示すようにXZ平面では右眼と左眼が別々に図示されている。ウインドシールド6は、ヘッドアップディスプレイ装置30による有効光束が通過する範囲のみを表示しているが、ウインドシールド6自体は、自動車の左右方向に対して対称な形状である。
図16は、第1実施形態における接眼光学系5の要部拡大図である。図16に示すように、接眼光学系5は偏光板21側から、自由曲面凹面ミラー52側に凸面を向けた負の屈折力の自由曲面凹面レンズ51と、正の屈折力の自由曲面凹面ミラー52と、ウインドシールド6とを並べて配置することにより構成されている。なお、偏光板21は、液晶表示パネル2の構成部品である。また、図16において自由曲面凹面レンズ51は、前後面を1つの面で表している。
接眼光学系5の屈折力は、主に自由曲面凹面ミラー52が負担している。自由曲面凹面ミラー52から離れた位置にある自由曲面凹面レンズ51では、主光線の光線高さが高いので台形歪の補正作用を有する。ウインドシールド6で反射した光束が自由曲面凹面ミラー52に向かう光路の真下に、自由曲面凹面レンズ51が位置することで、ヘッドアップディスプレイ装置30は小型化を図ることができる。
図17は、第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30のレンズデータを示す図である。図17に示すレンズデータにおいて、各カラムの意味合いは、第1実施形態における図3のものと同様であるので詳細な説明を省略する。
次に、本実施形態に係る自由曲面凹面ミラー52と、自由曲面凹面レンズ51に係る自由曲面係数を図18において示す。図18に示した自由曲面係数は、第1実施形態において説明した式1により求められる。
次に、第2実施形態に係る接眼光学系5におけるアイボックスサイズや、視野角などの具体的数値例を表2に示す。なお、表2において、数値の順番は、水平方向、垂直方向の順である。
図18において示したレンズデータは、虚像面7を物体とした縮小光学系として接眼光学系5を捉えた場合のデータである。表2において、「射出瞳位置101」が「−168mm」となっているが、このマイナス符合の意味は、自由曲面凹面ミラー52の後で面間距離が負になっている空間における位置に射出瞳位置101があることを示している。即ち、液晶表示パネル2から距離165mm過ぎた所に射出瞳位置101があることを表している。
また、表2において、「射出瞳位置101」のXが「−14mm」、Yが「9mm」となっている。これは、アイボックス8において定義した座標系において、液晶表示パネル2側の射出瞳位置101が、液晶パネルに対して水平方向(X)と垂直方向(Y)において、それぞれ移動した位置に形成されることを表している。
次に、第2実施形態の光学性能について図19から図27を用いて説明する。図19から図23は、第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置30の歪性能を表す図である。図24から図26は、第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置30のスポット図である。これら歪性能を示す図とスポット図における表記の仕方は、第1実施形態における図と同様である。すなわち、図19から図23の歪性能は、矩形状の虚像の範囲に対して、アイボックス8の中央と4隅を通過する光線による液晶表示パネル2側での歪図である。仮に、液晶表示パネル2側に矩形状の画像を表示した状態で、アイボックス8内のそれぞれの位置に眼を位置した場合には、図19から図23と逆の歪(例:樽型⇔糸巻型)が観察される。
図19から図23に示すとおり、本実施形態における歪性能は、歪図の形状がほぼ同じ形状になっている。したがって、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30において、例えば図19の歪図に合わせた映像を液晶表示パネル2に表示すれば、観察者は歪の無い矩形状の虚像を観察できる。
図24から図26に示したスポット図は、アイボックス8の大きさが水平130mm×垂直40mmである場合の全光束によるスポット図である。実際の観察者が見る虚像の場合は、人の眼の虹彩の大きさ(最大でφ7mmといわれている)におけるスポット図は、大幅に良くなっている。なお、図24から図26において示したスポット図は、虚像を物面とした縮小光学系における液晶表示パネル2の各位置でのスポット図を5倍に拡大強調した図である。図24から図27に示すF1乃至F23は、視野範囲のなかの各画角位置を表している。
視野範囲は、アイボックス8の位置に眼を配置し、観察する虚像の範囲、即ち、視野の範囲である。図11から図13で示したスポット図は、視野範囲の中の虚像上のある点(画角)から出射し、アイボックス8の範囲全てを通過した光束における液晶表示パネル2側でのスポット図である。視野範囲は、アイボックス8の範囲に虚像面7の任意の点に対応する光線に対応する点の集合ともいえる。本実施形態の説明において、視野範囲に含まれる点のうち、23カ所の点を例示している。以下、この23カ所の点を適宜用いて説明する。
図27は、各画角位置における主光線の仮想光線からの角度ずれを示す図である。図27に示すように、角度ずれの最大値は1.9度であって、角度ずれの平均値は0.8度である。以上のとおり、第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30は、第1実施形態のものよりもさらに小型化を図ることができる。
以上説明のように、第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置30は、自由曲面凹面ミラー52と自由曲面凹面レンズ51を用いた投影光学系により、より小型化なヘッドアップディスプレイ装置30を提供できる。
<第3実施形態>
次に、本発明に係る投影光学系のさらに別の実施形態について図31を用いて説明する。第3実施形態は、画像形成ユニット10の構成が第1実施形態や第2実施形態とは異なる点に特徴がある。
第1実施形態及び第2実施形態に係る投影光学系20は、液晶表示パネル22において形成された映像情報を、直接的に接眼光学系5において拡大して投影し、虚像として表示する構成を備えていた。これに対して、第2実施形態に係る投影光学系30aは、画像形成ユニット10aにおいて、より小型の液晶表示パネル2aを用いる。そして、液晶表示パネル2aにおいて形成される映像情報をリレー光学系3において拡散板であるスクリーン板4へ拡大写像する。スクリーン板4において拡大写像した映像情報を接眼光学系5で拡大投影し、虚像として表示している。
より詳しくは、ライトバルブであるバックライト1aから液晶表示パネル2aに照射された光束は、液晶表示パネル2aに表示された映像情報を含んだ映像光束として、リレー光学系3に入射する。液晶表示パネル2aからの映像情報は、リレー光学系3における結像作用により、拡大されてスクリーン板4に拡大投写される。
図32に示すように、液晶表示パネル2aにおける映像光束の出射面において、点P1・点P2・点P3という仮想点を考える。これら仮想点から出射された映像光束が対応する、スクリーン板4上の仮想点は、点Q1・点Q2・Q3である。
本実施形態に係るリレー光学系3を画像形成ユニット10aに用いることで、表示サイズの小さい液晶表示パネル2aを使用することができる。また、スクリーン板4は、マイクロレンズを2次元状に配置したマイクロレンズアレイにより構成される。これにより拡散作用が生じ、スクリーン板4を出射する光束の広がり角を大きくしており、アイボックス8の大きさを、所定の大きさにしている。なお、スクリーン板4の拡散作用は、拡散粒子を内蔵することでも実現できる。
以上のとおり、本実施形態に係る画像形成ユニット10aを備える投影光学系20aは、小型の液晶表示パネル2aを用いても拡大した映像情報を投影することができる。
<第4実施形態>
次に,本発明に係る投影光学系の更に別の実施形態について図33を用いて説明する。本実施形態(第4実施形態)は、すでに説明をした第2実施形態や第3実施形態における投影光学系20と異なる点に特徴がある。
第3実施形態に係る投影光学系20aは、液晶表示パネル2aにおいて形成された映像情報を、拡散機能を有するスクリーン板4に写像している。これに対して、第4実施形態に係る投影光学系20bは、レーザー光源106からのレーザー光を、MEMS105の反射面(微小ミラー105a)を用いて光走査する構成を備えている。
レーザー光源106は、映像光束の元になる光を供給する光源である。MEMS105は、微小ミラー105aと駆動部105bにより構成されている。微小ミラー105aは、レーザー光源106から出射されたレーザー光を反射して、スクリーン板4をレーザー光によって走査する。即ち、微小ミラー105aは光走査部に相当する。駆動部105bは、微小ミラー105aにおける反射角度を制御する。
MEMS105により走査されたスクリーン板4は拡散機能を有していて、レーザー光の走査により形成される映像情報を接眼光学系5に向けて出射する。
MEMS105の回転中心の位置が、接眼光学系5における画像形成ユニット10a側の瞳位置になるように、MEMS105を配置する。
以上のとおり、本実施形態に係る画像形成ユニット10bを備える投影光学系20bは、レーザー光源106からのレーザー光を用いても拡大した映像情報を投影することができる。
1…バックライト、2…液晶表示パネル、3…リレー光学系、4…スクリーン板(拡散板)、5…接眼光学系、6…ウインドシールド、7…虚像面、8…アイボックス、9…観察者の眼、10…画像形成ユニット、20…投影光学系、30…ヘッドアップディスプレイ装置、51…自由曲面レンズ、52…自由曲面凹面ミラー、101…射出瞳位置、102…絞り、103…凸レンズ、104…像面。

Claims (6)

  1. 画像形成ユニットにおいて形成される画像光束に基づく虚像を接眼光学系により形成するヘッドアップディスプレイ装置であって、
    前記画像形成ユニットは、バックライトと液晶表示パネルとを含み、
    前記接眼光学系は、前記画像形成ユニットに近い方から順に、自由曲面レンズと、自由曲面凹面ミラーと、を含み、
    前記虚像を観察者が観察する瞳位置は、前記接眼光学系の外側に位置し、
    前記接眼光学系における前記画像形成ユニットの瞳位置は、前記接眼光学系の方から見て前記液晶表示パネルの先に形成され、
    前記画像形成ユニットにおける前記接眼光学系の瞳位置は、前記画像形成ユニットの方から見て前記液晶表示パネルの手前に形成される、
    ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
  2. 画像形成ユニットにおいて形成される画像光束に基づく虚像を接眼光学系により形成するヘッドアップディスプレイ装置であって、
    前記画像形成ユニットは、ライトバルブの像を形成するリレー光学系と、拡散機能を有するスクリーン板と、を含み、
    前記接眼光学系は、前記画像形成ユニットに近い方から順に、自由曲面レンズと、自由曲面凹面ミラーと、を含み、
    前記虚像を観察者が観察する瞳位置は、前記接眼光学系の外側に位置し、
    前記接眼光学系における前記画像形成ユニットの瞳位置は、前記接眼光学系の方から見て前記スクリーン板の先に形成され、
    前記画像形成ユニットにおける前記接眼光学系の瞳位置は、前記画像形成ユニットの方から見て前記スクリーン板の手前に形成される、
    ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
  3. 画像形成ユニットにおいて形成される画像光束に基づく虚像を接眼光学系により形成するヘッドアップディスプレイ装置であって、
    前記画像形成ユニットは、レーザー光源と、当該レーザー光源を反射面の回転で光走査する光走査部と、拡散機能を有するスクリーン板と、を含み、
    前記接眼光学系は、前記画像形成ユニットに近い方から順に、自由曲面レンズと、自由曲面凹面ミラーと、を含み、
    前記虚像を観察者が観察する瞳位置は、前記接眼光学系の外側に位置し、
    前記接眼光学系における前記画像形成ユニットの瞳位置は、前記反射面の回転中心に形成される、
    ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
  4. 画像情報を含む照明光に基づいて画像光束を形成して射出する画像形成ユニットと、前記画像光束に基づく虚像を表示させる接眼光学系と、を含む投影光学系であって、
    前記画像形成ユニットは、バックライトと、液晶表示パネルと、を含み、
    前記接眼光学系は、前記画像形成ユニットに近い方から順に、自由曲面レンズと、自由曲面凹面ミラーと、を含み、
    前記接眼光学系の前記画像形成ユニットの瞳位置は、前記接眼光学系の方から見て前記液晶表示パネルの先に形成され、
    前記画像形成ユニットの前記接眼光学系の瞳位置は、前記画像形成ユニットの方から見て前記液晶表示パネルの手前に形成される、
    ことを特徴とする投影光学系。
  5. 画像情報を含む照明光に基づいて画像光束を形成して射出する画像形成ユニットと、前記画像光束に基づく虚像を表示させる接眼光学系と、を含む投影光学系であって、
    前記接眼光学系は、前記画像形成ユニットに近い方から順に、自由曲面レンズと、自由曲面凹面ミラーと、を含み、
    前記画像形成ユニットは、ライトバルブの像を形成するリレー光学系と、拡散機能を有するスクリーン板と、を含み、
    前記接眼光学系の前記画像形成ユニットの瞳位置は、前記接眼光学系の方から見て前記スクリーン板の先に形成され、
    前記画像形成ユニットの前記接眼光学系の瞳位置は、前記画像形成ユニットの方から見て前記スクリーン板の手前に形成される、
    ことを特徴とする投影光学系。
  6. 画像情報を含む照明光に基づいて画像光束を形成して射出する画像形成ユニットと、前記画像光束に基づく虚像を表示させる接眼光学系と、を含む投影光学系であって、
    前記画像形成ユニットは、レーザー光源と、当該レーザー光源を反射面の回転で光走査する光走査部、及び拡散機能を有するスクリーン板と、を含み、
    前記接眼光学系は、前記画像形成ユニットに近い方から順に、自由曲面レンズと、自由曲面凹面ミラーと、を含み、
    前記接眼光学系の前記画像形成ユニットの瞳位置は、前記反射面の回転中心が配置される、
    ことを特徴とする投影光学系。
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