JPWO2018016595A1 - 水系電解液、蓄電池、蓄電池システム及び発電システム - Google Patents

水系電解液、蓄電池、蓄電池システム及び発電システム Download PDF

Info

Publication number
JPWO2018016595A1
JPWO2018016595A1 JP2018528870A JP2018528870A JPWO2018016595A1 JP WO2018016595 A1 JPWO2018016595 A1 JP WO2018016595A1 JP 2018528870 A JP2018528870 A JP 2018528870A JP 2018528870 A JP2018528870 A JP 2018528870A JP WO2018016595 A1 JPWO2018016595 A1 JP WO2018016595A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
positive electrode
storage battery
negative electrode
electrolyte
tank
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2018528870A
Other languages
English (en)
Inventor
杉政 昌俊
昌俊 杉政
渉太 伊藤
渉太 伊藤
祐一 利光
祐一 利光
酒井 政則
政則 酒井
北川 雅規
雅規 北川
修一郎 足立
修一郎 足立
明博 織田
明博 織田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Resonac Corporation
Showa Denko Materials Co Ltd
Original Assignee
Resonac Corporation
Hitachi Chemical Co Ltd
Showa Denko Materials Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from PCT/JP2016/071917 external-priority patent/WO2018020586A1/ja
Application filed by Resonac Corporation, Hitachi Chemical Co Ltd, Showa Denko Materials Co Ltd filed Critical Resonac Corporation
Priority claimed from PCT/JP2017/026311 external-priority patent/WO2018016595A1/ja
Publication of JPWO2018016595A1 publication Critical patent/JPWO2018016595A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Landscapes

  • Secondary Cells (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Abstract

本発明は、蓄電池の安定性及び蓄電容量を高めることができる水系電解液、当該水系電解液を用いた蓄電池、当該蓄電池を備える蓄電池システム及び当該蓄電池システムを備える発電システムを提供することを目的とする。本発明の水系電解液は、水と、ハロゲンと、非プロトン性の極性分子とを含む。また、本発明の蓄電池(1)は、正極(11)が保持される正極槽(13)と、負極(12)が保持される負極槽(14)と、正極槽(13)と負極槽(14)とを隔てるセパレータ(15)とを備え、正極槽(13)及び負極槽(14)に収容される電解液のうちの少なくとも一方が、水と、ハロゲンと、非プロトン性の極性分子とを含む。

Description

本発明は、水系電解液、蓄電池、蓄電池システム及び発電システムに関する。
再生可能エネルギは、多量のCOの発生を伴わないため、環境適合的なエネルギ源として盛んに導入されてきた。世界各国で具体的な導入の目標も設定されており、将来的にも市場規模の拡大が見込まれている。再生可能エネルギとしては太陽光、風力等が主流となっており、これらの自然エネルギを電力に変換する太陽光発電、風力発電等の重要性は極めて高くなっている。
太陽光、風力等の自然エネルギを利用した発電においては、発電される電力量が天候によって大きく左右される。そのため、電力需要に応じた電力供給を如何に安定的に行うかが問題となっている。そこで、近年、大容量の電力を貯蔵することを目的とした電力貯蔵用の蓄電池の開発が鋭意進められている。
従来、電力貯蔵用の蓄電池としては、電池構造、運転方式等が異なる種々の形態が開発されている。例えば、鉛蓄電池、ナトリウム・硫黄電池及びレドックスフロー電池が代表的である。
鉛蓄電池は、信頼性が高く、蓄電容量当たりのコストが低い等の特徴を有している。そのため、鉛蓄電池は、家庭、事業所等におけるロードレベリング、自然エネルギ発電における電力平準化の用途などに広く利用されている。また、ナトリウム・硫黄電池は、エネルギ密度が高いといった特徴を有している。ナトリウム・硫黄電池は、主として、ピークシフト、自然エネルギ発電における系統連係等の用途に利用されている。
しかしながら、鉛蓄電池及びナトリウム・硫黄電池は、幾つかの課題も有している。例えば、鉛蓄電池は、重量エネルギ密度が小さいため、大容量の電力を貯蔵する場合、蓄電池の規模を大型化せざるを得ない。また、ナトリウム・硫黄電池は、負極活物質のナトリウムと正極活物質の硫黄のいずれもが可燃性である。しかも、電池の作動温度が300℃付近と高温である。そのため、電池が発火する虞が高く、高度な安全性対策を要する電池となっている。
一方、レドックスフロー電池は、活物質を含む電解液を貯槽から電極槽に循環させて充放電する運転方式であり、電解液量、活物質濃度等を増やすことにより蓄電容量を容易に大容量化できる蓄電池である。そのため、事業所におけるロードレベリング、自然エネルギ発電における電力平準化の用途等に極めて適した電池である。
レドックスフロー電池としては、バナジウムイオン、鉄イオン、クロムイオン等の金属イオンを活物質とした形態について、主に実用化が進められている。こうした従来のレドックスフロー電池においても、規模を小型化して蓄電設備の施工費等を抑え、且つ、更なる蓄電容量の大容量化及び充放電の高効率化を実現することが求められている。
従来、レドックスフロー電池のエネルギ効率を高める観点から、電解液の組成についての検討がなされている。例えば、特許文献1には、活物質である硫黄化合物と、アルデヒド類、ケトン類及びアミド類のうち少なくとも1以上である水溶性化合物と、を溶解した水系電解液について記載されている。
特開2014−135218号公報
レドックスフロー電池をはじめとする蓄電池の中には、活物質として臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲンを用いる形態がある。このような蓄電池は、両極の活物質を金属イオンとした蓄電池と比較して、エネルギ密度等の点では優れているものの、電解液の組成の安定性に課題を有している。
例えば、活物質として臭素を用いる蓄電池では、充電時に生じた臭素錯体が電解液から相分離し、活物質濃度の低下を局所的に引き起こすことがある。また、活物質としてヨウ素を用いる蓄電池では、充電時の電極表面にヨウ素の還元体が析出して固定化し、活物質濃度の低下を引き起こすと共に、電極表面における電荷移動の抵抗を増大させることがある。加えて、これらのハロゲンは昇華或いは蒸発し易く、電解液から容易に脱離してしまう。
このようにして電解液の組成が変わると、蓄電池において利用可能な実効容量が低下したり、蓄電池の内部抵抗が増大したりする等の虞がある。また、ハロゲンの電解液に対する溶解度にも限界があるため、活物質濃度の増量によって蓄電容量を向上させることは容易ではない。
そこで、本発明の一形態は、蓄電池の安定性及び蓄電容量を高めることができる水系電解液、当該水系電解液を用いた蓄電池、当該蓄電池を備える蓄電池システム及び当該蓄電池システムを備える発電システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 水と、ハロゲンと、非プロトン性の極性分子とを含む水系電解液。
<2> 前記非プロトン性の極性分子の濃度が、2体積%以上50体積%以下である<1>に記載の水系電解液。
<3> 前記非プロトン性の極性分子が、ニトリル基を有する<1>又は<2>に記載の水系電解液。
<4> 前記非プロトン性の極性分子が、アセトニトリルである<1>〜<3>のいずれか1つに記載の水系電解液。
<5> 前記ハロゲンが、ヨウ素である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の水系電解液。
<6> 前記ヨウ素が、ヨウ化物イオン又はポリヨウ化物イオンとして含まれている<5>に記載の水系電解液。
<7> ナトリウムイオンをさらに含む<1>〜<6>のいずれか1つに記載の水系電解液。
<8> 亜鉛イオンをさらに含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載の水系電解液。
<9> 正極が保持される正極槽と、負極が保持される負極槽と、前記正極槽と前記負極槽とを隔てるセパレータとを備え、前記正極槽に収容される正極電解液及び前記負極槽に収容される負極電解液のうちの少なくとも一方が、水と、ハロゲンと、非プロトン性の極性分子とを含む蓄電池。
<10> 前記正極槽に正極電解液を供給する正極電解液供給手段と、前記正極電解液を貯留する正極電解液貯槽と、前記正極槽と前記正極電解液貯槽に接続され、前記正極槽と前記正極電解液貯槽との間で前記正極電解液を循環させる正極電解液循環管と、前記負極槽に負極電解液を供給する負極電解液供給手段と、前記負極電解液を貯留する負極電解液貯槽と、前記負極槽と前記負極電解液貯槽に接続され、前記負極槽と前記負極電解液貯槽との間で前記負極電解液を循環させる負極電解液循環管とをさらに備える<9>に記載の蓄電池。
<11> 前記非プロトン性の極性分子の濃度が、2体積%以上50体積%以下である<9>又は<10>に記載の蓄電池。
<12> 前記非プロトン性の極性分子が、ニトリル基を有する有機分子である<9>〜<11>のいずれか1つに記載の蓄電池。
<13> 前記非プロトン性の極性分子が、アセトニトリルである<9>〜<12>のいずれか1つに記載の蓄電池。
<14> 前記ハロゲンが、ヨウ素である<9>〜<13>のいずれか1つに記載の蓄電池。
<15> 前記ヨウ素が、ヨウ化物イオン又はポリヨウ化物イオンとして含まれている<14>に記載の蓄電池。
<16> 前記正極電解液又は前記負極電解液が、ナトリウムイオンを含む<9>〜<15>のいずれか1つに記載の蓄電池。
<17> 前記正極電解液又は前記負極電解液が、亜鉛イオンを含む<9>〜<16>のいずれか1つに記載の蓄電池。
<18> <9>〜<17>のいずれか1つに記載の蓄電池と、前記蓄電池の充放電を制御する制御部と、を備える蓄電池システム。
<19> 発電装置と、<18>に記載の蓄電池システムと、を備える発電システム。
本発明の一形態によれば、蓄電池の安定性及び蓄電容量を高めることができる水系電解液、当該水系電解液を用いた蓄電池、当該蓄電池を備える蓄電池システム及び当該蓄電池システムを備える発電システムを提供することができる。
本発明の一実施形態の蓄電池の構造を模式的に示す図である。 水系電解液の吸収スペクトルの一例を示す図である。
[水系電解液]
はじめに、本発明の一実施形態の水系電解液について説明する。
本実施形態の水系電解液は、電池用電解液であって、水と、電池反応に関与する活物質としてのハロゲンと、非プロトン性の極性分子とを含んでなる。この電解液は、ハロゲンを活物質として利用した電池において好適に用いられる。特に、高電位の正極側で使用され、正極を浸漬させる正極電解液として適している。なお、本実施形態では、水は、水系電解液中に溶媒として含まれていてもよい。
本実施形態の水系電解液において、ハロゲンは、単体、ハロゲンイオン及びその塩のうちのいずれの状態で含まれていてもよい。ハロゲンとしては、ヨウ素、臭素、塩素等が挙げられる。これらの元素であれば、活物質として容易に酸化還元反応することができるし、酸化体及び還元体のいずれもが、水を主体とした水溶媒中に比較的安定に存在することができる。
水系電解液に含まれるハロゲンの具体例としては、ヨウ化物イオン(I)、臭化物イオン(Br)、塩化物イオン(Cl)、三ヨウ化物イオン(I )、五ヨウ化物イオン(I )等のポリヨウ化物イオン、ヨウ素(I)、臭素(Br)、ヨウ化物、三ヨウ化物、臭化物、塩化物などが挙げられる。
ハロゲンとしては、ヨウ素又は臭素が好ましく、ヨウ素が特に好ましい。ヨウ素は、充電時の電極表面に固体として析出し、皮膜状に成長して電極を覆うことがあるため、他のハロゲンを活物質としている場合と比較して、非プロトン性の極性分子を効果的に働かせることができる。また、ヨウ素は、臭素と比較して毒性が弱いため、保安上の観点でも有利である。ヨウ素は、水系電解液中において平衡の関係をとるので、ヨウ化物イオン又はポリヨウ化物イオンとして含まれていればよい。
非プロトン性の極性分子は、プロトンの供与性が無く、分子当たりに極性を有する有機分子であれば適宜の分子であってよい。反応上の安定性をもたらす非プロトン性と、水への高い溶解性をもたらす有極性とが備わっていることにより、電解液の組成を時間経過、電極反応等に対して安定的にすることができる。また、有極性の極性分子を水系電解液に含ませると、有極性の極性分子とハロゲンとの相互作用により、ハロゲンを液相に安定して存在させることが可能となる。
非プロトン性の極性分子としては、ニトリル基を有する有機分子(ニトリル類)が挙げられる。ニトリル基を有する有機分子としては、モノニトリル、ジニトリル、3以上のニトリル基を有するポリニトリルのいずれであってもよい。非プロトン性の極性分子として、これらのニトリル類のうちの複数種を組み合わせて用いてもよい。
モノニトリルの具体例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、シクロブタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、ナフトニトリル、フェニルアセトニトリル等、これらの誘導体などが挙げられる。モノニトリルの誘導体としては、例えば、ハロゲン化モノニトリル及びアルキル化モノニトリルが挙げられる。
ジニトリルの具体例としては、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、シクロブタンジカルボニトリル、シクロヘキサンジカルボニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、テレフタロニトリル、ナフタレンジカルボニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、3,3’−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、4,4’−オキシジベンゾニトリル等、これらの誘導体などが挙げられる。ジニトリルの誘導体としては、例えば、ハロゲン化ジニトリル及びアルキル化ジニトリルが挙げられる。
ポリニトリルの具体例としては、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、1,3,5−シクロヘキサントリカルボニトリル、1,3,5−ベンゼントリカルボニトリル、1,2,3−トリス(2−シアノエトキシ)プロパン、トリス(2−シアノエチル)アミン、1,2,2,3−プロパンテトラカルボニトリル等、これらの誘導体などが挙げられる。ポリニトリルの誘導体としては、例えば、ハロゲン化ポリニトリル及びアルキル化ポリニトリルが挙げられる。
また、非プロトン性の極性分子としては、その他、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、イソヘキサン、イソオクタン等のアルキル類、クロロホルム、トリクロロエチレン等のハロゲン化アルキル類、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のシクロアルキル類、トルエン、o−キシレン、m−キシレン等のアリール類、メチルエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソランなどが挙げられる。非プロトン性の極性分子としては、これらのうちの複数種を組み合わせて用いてもよいし、これらとニトリル類とを組み合わせて用いてもよい。
非プロトン性の極性分子としては、孤立電子対を持たない分子であることが好ましい。孤立電子対があると、水溶媒中においてプロトン化されて、ハロゲンの酸化体であるハロゲン化物イオンが求核反応し、非プロトン性の極性分子が他分子に変換される虞がある。これに対して、孤立電子対を持たない分子であれば、非プロトン性の極性分子が他分子に変換されてハロゲンの安定化が妨げられたり、自己放電が生じたりするのを避けることができる。
非プロトン性の極性分子としては、ニトリル類、アルキル類、ハロゲン化アルキル類、シクロアルキル類、アリール類、スルホン類等の孤立電子対を持たない分子が好ましく、ニトリル基を有する炭化水素系の有機分子がより好ましい。また、ハロゲンとの相互作用のし易さ、溶解性、粘度等の観点から、炭素数6以下の分子が好ましく、炭素数3以下の分子がより好ましい。特に好ましい非プロトン性の極性分子は、アセトニトリルである。アセトニトリルは、良好な溶解性を有しており、ハロゲンを液相に安定させる効果も高いためである。
水系電解液中における非プロトン性の極性分子は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより、非プロトン性の極性分子に対応する保持時間と、モニターイオンの分子量を測定することで同定可能である。
本実施形態の水系電解液当たりにおいて、非プロトン性の極性分子の濃度は、2体積%以上50体積%以下であることが好ましく、3体積%以上40体積%以下であることがより好ましく、5体積%以上25体積%以下であることがさらに好ましい。非プロトン性の極性分子の濃度が2体積%以上であると、ハロゲンを液相に安定させる効果が有効に得られる。また、5体積%以上であると、効果がさらに高められる。一方、50体積%以下であると、水系電解液の導電性が損なわれ難いし、50体積%を超えても、効果が飽和して有効でなくなる。
水系電解液中における非プロトン性の極性分子の濃度は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより、非プロトン性の極性分子の濃度と、非プロトン性の極性分子に対応する保持時間における検出量を検量線としてデータを作成し、検量線から算出することで定量可能である。
本実施形態の水系電解液は、ハロゲンアニオンに対する各種のカウンタカチオン、導電性を向上させるための各種の支持電解質等をさらに含んでいてもよい。なお、活物質としてのハロゲンは、カウンタカチオン、支持電解質のハロゲン化物塩等として水系電解液に含まれていてもよい。
カウンタカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等が挙げられる。カウンタカチオンとしては、これらの中でも、ナトリウムイオンが特に好ましい。ナトリウムイオンであれば、溶解度が高いため、蓄電池の蓄電容量を大容量化するのに好適である。支持電解質としては、前記のカウンタカチオン類の他、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、塩化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のアニオンを用いることができる。
本実施形態の水系電解液は、適宜のpHに調整して使用することができる。水系電解液の電池反応のpHは、好ましくは3.0以上8.0以下、より好ましくは更なる中性域である。pHが弱アルカリ域以上であると、次亜ハロゲン酸等が生成する方向に平衡が移動し、強酸性域以下であると、二原子分子が生成する方向に平衡が移動するので適さない。
以上の本実施形態の水系電解液によると、電解液中にハロゲンと共に非プロトン性の極性分子が含まれているため、有極性の極性分子とハロゲンとの相互作用により、ハロゲンを液相に安定して存在させることができる。
通常、水系電解液中では、酸化体に相当するヨウ素イオン、臭素イオン等と、還元体に相当する二原子分子とが化学平衡をとっている。このとき、非プロトン性の極性分子によってハロゲンを液相に安定させると、常温常圧下においても、ハロゲンの還元体、すなわちヨウ素(I)、臭素(Br)等が昇華或いは蒸発し難くなる。
また、蓄電池の充電時において、電極表面にヨウ素(I)が析出し、溶解しないまま皮膜状に成長することがある。このとき、非プロトン性の極性分子によってハロゲンを液相に安定させておくと、析出したヨウ素を電解液に容易に再溶解させることができる。
よって、本実施形態の水系電解液によると、ハロゲンが電解液から脱離し難くなり、電解液の組成が安定するので、時間経過に対する安定性、可逆的な電極反応の安定性及び蓄電池の実効容量を、いずれも高めることができる。また、電極表面がハロゲンの還元体によって被覆され難くなり、電極表面の電荷移動の抵抗が経時的に増加し難くなるので、蓄電池の内部抵抗の増大を抑制することができる。
また、活物質となるヨウ素は、水溶媒に対する溶解度が低く、一般には活物質濃度を高めるのに適していない。これに対して、本実施形態の水系電解液によると、ハロゲンを液相に安定させて活物質濃度を数倍に及ぶ高濃度にすることが可能になるので、蓄電池の蓄電容量を向上させることができる。
[蓄電池]
次に、本発明の一実施形態の蓄電池について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の蓄電池の構造を模式的に示す図である。
図1に示すように、本実施形態の蓄電池1は、筺体10と、正極11と、負極12と、正極槽13と、負極槽14と、セパレータ15と、正極電解液貯槽16と、正極電解液ポンプ(正極電解液供給手段)17と、負極電解液貯槽18と、負極電解液ポンプ(負極電解液供給手段)19と、正極電解液循環管110と、負極電解液循環管120とを備えている。
正極11、負極12及びセパレータ15は、筺体10の内部に保持されている。筺体10の内部は、セパレータ15によって正極槽13と負極槽14とに仕切られている。
正極11の材料としては、ハロゲンに対する耐食性があるステンレス鋼、チタン等の金属材料、炭素材料などが好ましい。一方、負極12の材料としては、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、金、白金、これらの合金等の金属材料、亜鉛等によるめっきを施した金属材料、炭素材料などが好ましい。金属材料による電極は、メッシュ、多孔体、パンチングメタル、エキスパンドメタル、平板等の適宜の形状とすることができる。また、炭素材料による電極は、フェルト、不織布、ペーパー、メッシュ、多孔体、平板等の適宜の形状とすることができる。
セパレータ15は、イオン伝導性を有している。セパレータ15は、一部のキャリアイオンの移動を許容する一方、電解液中の他の組成成分の移動を制約し、正極槽13に正極電解液、負極槽14に負極電解液が保持されるように正極槽13と負極槽14とを隔てている。セパレータ15の材料としては、多孔性膜、イオン交換膜等が用いられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、フッ素樹脂、陽イオン交換膜等である。
正極槽13は、高電位側となる正極11を保持している。正極槽13には、正極電解液が収容され、正極11は正極電解液に浸漬されるようになっている。正極槽13は、正極電解液が流れる入口と出口とを有しており、正極槽13の出口は、正極電解液循環管110を介して正極電解液貯槽16の入口に接続され、正極電解液貯槽16の出口は、正極電解液循環管110を介して正極槽13の入口に接続されている。
正極電解液貯槽16は、正極電解液を貯留する槽である。正極電解液循環管110は、正極槽13と正極電解液貯槽16との間で正極電解液を循環させるための循環路を形成している。正極電解液循環管110には、正極槽13に正極電解液を供給して循環させるための正極電解液ポンプ17が備えられている。
正極電解液は、正極電解液ポンプ17の稼働によって、正極電解液貯槽16から正極槽13に供給され、正極槽13に供給された正極電解液は、正極電解液貯槽16に再び戻されるようになっている。
負極槽14は、低電位側となる負極12を保持している。負極槽14には、負極電解液が収容され、負極12は負極電解液に浸漬されるようになっている。負極槽14は、負極電解液が流れる入口と出口とを有しており、負極槽14の出口は、負極電解液循環管120を介して負極電解液貯槽18の入口に接続され、負極電解液貯槽18の出口は、負極電解液循環管120を介して負極槽14の入口に接続されている。
負極電解液貯槽18は、負極電解液を貯留する槽である。負極電解液循環管120は、負極槽14と負極電解液貯槽18との間で負極電解液を循環させるための循環路を形成している。負極電解液循環管120には、負極槽14に負極電解液を供給して循環させるための負極電解液ポンプ19が備えられている。
負極電解液は、負極電解液ポンプ19の稼働によって、負極電解液貯槽18から負極槽14に供給され、負極槽14に供給された負極電解液は、負極電解液貯槽18に再び戻されるようになっている。
蓄電池1は、不図示の電源と電気的に接続されて充電され、充電によって蓄えられた電力を不図示の電力系統等に放電することができる。すなわち、充電時において、正極11は、不図示の電源の正極(+)側に接続され、負極12は、不図示の電源の負極(−)側に接続される。また、放電時には、電気的な接続が切り替えられ、正極11及び負極12のそれぞれが出力先の負荷電力系統等に接続される。
蓄電池1において、正極電解液は、前記の実施形態の水系電解液、すなわち、水と、正極活物質としてのハロゲンと、非プロトン性の極性分子とを含む水系電解液とすることができる。好ましい正極活物質は、ヨウ素又は臭素であり、特に好ましい正極活物質は、ヨウ素である。これに対して、負極電解液は、水と、正極活物質としてのハロゲンよりも卑な標準電極電位を示す負極活物質とを含む水系電解液とする。
負極電解液に含まれる負極活物質の具体例としては、亜鉛、クロム、鉄、スズ、バナジウム、鉛等の金属材料、ベンゾキノンをはじめとするキノン系材料などが挙げられる。負極活物質としては、溶解度が高く、酸化還元電位が低い亜鉛が特に好ましい。負極電解液は、負極活物質と共に、カウンタアニオンをさらに含んでいてもよい。カウンタアニオンとしては、特に制限されるものではないが、溶解度が高い塩化物イオンが特に好ましい。
蓄電池1において、正極活物質がヨウ素であり、負極活物質が亜鉛である場合、正極11においては、次の反応式(1)の反応が生じる。また、負極12においては、次の反応式(2)の反応が生じる。さらに、正極電解液中では、次の反応式(3)で表される平衡が成り立つ。
+ 2e ⇔ 3I ・・・(1)
Zn ⇔ Zn2+ + 2e ・・・(2)
+ I ⇔ I ・・・(3)
これらの活物質の組み合わせは、高い溶解性を示すので蓄電容量を大容量化するのに特に適している。また、ヨウ素の標準電極電位は、0.5360V、亜鉛の標準電極電位は、−0.7626Vであるため、理論上、1.2986Vに及ぶ起電力を得ることが可能である。このように正極活物質としてヨウ素、負極活物質として亜鉛を用いる場合には、負極電解液と正極電解液の両方にヨウ化亜鉛(ZnI)等を用いてもよい。
以上の本実施形態の蓄電池によると、ハロゲンと共に非プロトン性の極性分子が含まれている水系電解液が用いられることにより、活物質として働くハロゲンを、電極に循環される液相中に安定させることができる。
そのため、ハロゲンが、電解液から昇華或いは蒸発したり、二流体に相分離する等して、正極槽13、正極電解液貯槽16、正極電解液循環管110等で局所的に滞留したり、蓄電池1の外部に気化して失われたりすることが防止される。また、充電時の正極11の表面等にヨウ素が析出し、溶解しないまま皮膜状に成長するのが防止される。
よって、本実施形態の蓄電池によると、電解液の組成が安定すると共に、電極表面の電荷移動の抵抗も増加し難くなるので、電力量、充放電挙動等についての経時変化に対する安定性、可逆的な電極反応の安定性及び実効容量が、いずれも良好な蓄電池となる。さらに、活物質濃度を高濃度にすることが可能であるので、蓄電容量を高容量にすることができる。
なお、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態に変更することができる。
例えば、前記の実施形態の蓄電池においては、水と、正極活物質としてのハロゲンと、非プロトン性の極性分子とを含む水系電解液が、正極電解液として使用されている。しかしながら、これに代えて、負極電解液として使用してもよい。但し、この場合には、負極活物質としてのハロゲンよりも貴な標準電極電位を示す正極活物質を使用する必要がある。なお、活物質のみを換えて、正極電解液及び負極電解液の両方について使用してもよい。
また、前記の実施形態の蓄電池においては、図1に示すように、正極11と負極12とがセパレータ15を挟んで積層され、筺体10の中央付近に配置されている。しかしながら、正極11及び負極12は、正極槽13及び負極槽14のそれぞれにおいて適宜の配置を採ることができる。また、正極11及び負極12は、それぞれ単一の電極で構成されていてもよいし、それぞれ複数の電極が並列した電極群として構成されていてもよい。
また、前記の実施形態の蓄電池においては、正極電解液貯槽16、正極電解液ポンプ(正極電解液供給手段)17、及び、正極電解液循環管110、並びに、負極電解液貯槽18、負極電解液ポンプ(負極電解液供給手段)19、負極電解液循環管120がそれぞれ備えられている。しかしながら、これに代えて、これらの補器を具備しない一方で、正極11、負極12、正極槽13、負極槽14、及び、セパレータ15を具備する蓄電池としてもよい。このような構成の蓄電池であっても、高濃度化された活物質が拡散又は対流によって電池反応に追随する等により、前記の実施形態の水系電解液の効果を得ることが可能である。
前記の実施形態の蓄電池としては、正極電解液をサンプリングするサンプリング部を更に備えていてもよい。サンプリング部にて正極電解液をサンプリングすることで、ハロゲン、非プロトン性極性溶媒等の添加剤などの正極電解液に含まれる成分の濃度の分析が可能であり、例えば、正極電解液に含まれる成分の濃度が規定量、必要量等に比べて不足していないか分析することができる。
サンプリング部は、例えば、正極電解液貯槽に配置されていてもよく、正極電解液循環管に配置されていてもよい。また、サンプリング部は、所定の時間毎に正極電解液をサンプリングする構成であってもよい。
また、前記の実施形態の蓄電池としては、サンプリング部によりサンプリングされた正極電解液を分析し、分析結果に基づいて、正極電解液に含まれる成分の濃度を調整する濃度調整部を更に備えていてもよい。蓄電池が濃度調整部を備えることで、サンプリング部にてサンプリングした正極電解液について、ハロゲン、非プロトン性極性溶媒等の添加剤などの正極電解液に含まれる成分の濃度が規定量、必要量等に比べて不足している場合、不足する成分が正極電解液に添加され、正極電解液に含まれる成分の濃度を調整することができる。
濃度調整部は、例えば、正極電解液貯槽に貯留されている正極電解液に各成分を添加する構成であってもよく、正極電解液循環管を流通する正極電解液に各成分を添加する構成であってもよい。また、正極電解液への添加剤の追加は、蓄電池の運転中に行ってもよく、停止中に行ってもよい。なお、正極槽に濃度調整部が配置されていてもよい。
蓄電池は、正極電解液中のハロゲンの濃度を計測する濃度計測部を有していてもよい。濃度計測部としては、例えば、正極電解液中のハロゲンの濃度に基づく電位を測定する電位計測部が挙げられる。電位計測部は、例えば、ハロゲンの濃度に基づく電位を計測するための集電電極と、電気化学電位の基準となる参照電極とを有し、参照電極基準の電気化学電位を計測する。電気化学電位に関するネルンストの式を用いることにより、計測された参照電極基準の電気化学電位からハロゲンの濃度の濃度を求めることができる。集電電極としては、白金電極、グラファイト電極等が挙げられ、参照電極としては、Ag/AgCl電極等が挙げられる。
濃度計測部は、正極電解液貯槽に配置されていてもよく、正極電解液が循環する正極電解液循環管に配置されていてもよい。なお、正極槽に濃度計測部が配置されていてもよい。
[蓄電池システム]
次に、本発明の一実施形態の蓄電池システムについて説明する。
本実施形態の蓄電池システムは、図1に示す蓄電池1と、蓄電池1の充放電を制御する制御部(図示せず)と、を備えている。制御部としては、蓄電池1における正極11及び負極12において、充電反応及び放電反応を制御可能な構成であれば特に限定されない。
また、制御部は、前記濃度計測部により計測された濃度、好ましくは、電位計測部により計測された電位に基づいて充電状態(SOC:State Of Charge)を推定してもよい。例えば、ハロゲンとしてヨウ素(例えば、I、I 、及びI)のみを考慮した場合、SOCが0%とは、基本的に正極電解液中にI 及びIが含まれず、Iのみとなっている状態を示す。また、SOCが100%とは、基本的に正極電解液中にIが含まれず、I 及びIのみとなっている状態を示す。
[発電システム]
次に、本発明の一実施形態の発電システムについて説明する。
本実施形態の発電システムは、発電装置と、前記の蓄電池システムと、を備えている。本実施形態の発電システムは、蓄電池システムと発電装置とを組み合わせることで、電力変動を平準化及び安定化したり、電力の需給を安定化したりすることができる。
発電システムは、発電装置を備える。発電装置としては、特に限定されず、再生可能エネルギを用いて発電する発電装置、水力発電装置、火力発電装置、原子力発電装置等が挙げられ、中でも再生可能エネルギを用いて発電する発電装置が好ましい。
再生可能エネルギを用いた発電装置は、気象条件等によって発電量が大きく変動するが、蓄電池システムと組み合わせることで変動する発電電力を平準化して電力系統に平準化した電力を供給することができる。
再生可能エネルギとしては、風力、太陽光、波力、潮力、流水、潮汐、地熱等が挙げられるが、風力又は太陽光が好ましい。
風力、太陽光等の再生可能エネルギを用いて発電した発電電力は、高電圧の電力系統に供給する場合がある。通常、風力発電及び太陽光発電は、風向、風力、天気等の気象によって影響を受けるため、発電電力は一定とならず、大きく変動する傾向にある。一定ではない発電電力を高電圧の電力系統にそのまま供給すると、電力系統の不安定化を助長するため好ましくない。一方、本実施形態の発電システムは、例えば、蓄電池システムの充放電波形を発電電力波形に重畳させることで、目標とする電力変動レベルまで発電電力波形を平準化させることができる。
また、発電システムは、発電装置で発電された発電電力の需給に応じて、蓄電池システムの充放電を制御するシステムであってもよい。例えば、発電装置にて発電された発電電力の供給量が電力系統における需要量を上回る場合、蓄電池システムが充電を行い、かつ発電装置にて発電された発電電力の供給量が電力系統における需要量を下回る場合、蓄電池システムが放電を行うように発電システムが制御されていてもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、本実施形態の水系電解液を調製し、この電解液を使用したときの活物質の酸化電流の大きさと電極の状態とを解析した。
水系電解液としては、活物質としてのヨウ素と、非プロトン性の極性分子としてのアセトニトリルとを含む電解液(試液1〜5)をそれぞれ調製した。具体的には、アセトニトリル(CHCN;AN)を下記の表1及び表2に示す濃度、ヨウ化ナトリウム(NaI)を1M(mol/L)の濃度、過塩素酸ナトリウム(NaClO)を1M(mol/L)の濃度となるように純水に溶解してそれぞれ電解液とした。
また、対照の水系電解液としては、ヨウ素のみを含み、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)を調製した。具体的には、ヨウ化ナトリウム(NaI)を1M(mol/L)の濃度、過塩素酸ナトリウム(NaClO)を1M(mol/L)の濃度となるように純水に溶解して電解液とした。
各電解液を用いた試験では、グラッシーカーボン製の作用電極に対し、互いに同じ電位値の一定電位を印加することによって、ヨウ素イオンの酸化電流の電流値をそれぞれ計測した。そして、アセトニトリルを25体積%の濃度で含む電解液(試液1)と、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)とについては、紫外可視吸収スペクトルを測定した。また、酸化還元反応後に作用電極の表面に生じたヨウ素の皮膜厚さを、還元法によって解析した。
図2は、水系電解液の吸収スペクトルの一例を示す図である。
図2において、実線は、ヨウ素のみを含みアセトニトリルを含まない電解液(比較区)の吸収スペクトル、破線は、ヨウ素と共にアセトニトリルを25体積%の濃度で含む電解液(試液1)の吸収スペクトルである。但し、縦軸の吸光度は、互いに独立して計測された相対値である。
また、酸化電流の計測と皮膜厚さの解析の結果を以下の表1及び表2に示す。表における、電流値(mA)は、所定電位における酸化電流の計測値、酸化電流比は、比較区を100とした酸化電流の相対値、皮膜厚さ比は、比較区を100とした皮膜厚さの相対値である。
図2に示すように、実線で表されるアセトニトリルを含まない電解液(比較区)、及び、破線で表されるアセトニトリルを含む電解液(試液1)のいずれについても、300nm付近及び350nm付近に三ヨウ化物イオン(I )の吸収、450nm付近にヨウ素(I)の吸収が生じた。アセトニトリルを含む電解液(試液1)では、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)と比較して、ヨウ素(I)の吸収帯の比率が顕著に高められており、アセトニトリルの存在下では二原子分子の状態の還元体が安定的に存在できることが確認できた。
また、表1に示すように、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)では、酸化電流が1.68mAであった。これに対して、アセトニトリルを含む電解液(試液1)では、酸化電流が3.58mAとなり、ヨウ素イオンの酸化に伴う酸化電流が2.13倍に増大した。また、アセトニトリルを含む電解液(試液1)では、電極の表面に生じたヨウ素の皮膜厚さが、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)に対し、40%程度に減少していた。
また、表2に示すように、アセトニトリルを1体積%の低濃度で含む電解液(試液5)においても、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)に対し、酸化電流を増大する効果がみられた。そして、アセトニトリルの濃度が、2体積%(試液4)に増加すると、酸化電流は顕著な増大を示した。その後、アセトニトリルの濃度が、5体積%(試液3)、10体積%(試液2)と増加するにつれて、酸化電流は更なる増大を示したものの、10体積%以上の濃度においては有意な増大を示さなくなった。
これらの結果から、ハロゲンを含む電解液に非プロトン性の極性分子を含ませると、ハロゲンが液相中に安定し、また、ハロゲンの酸化体による皮膜が形成され難くなることが分かる。したがって、本実施例の水系電解液は、蓄電池の安定性及び蓄電容量を高めることができる電解液として有用である。また、非プロトン性の極性分子の濃度は、2体積%以上が有効であり、5体積%以上がより好ましい範囲であるといえる。
[実施例2]
実施例2では、本実施形態の蓄電池を作製し、電解液が充電挙動に与える作用について評価した。
蓄電池としては、図1に示される構成を有する蓄電池1を作製した。正極電解液としては、本実施形態の蓄電池(実施例)については、活物質としてのヨウ素と、非プロトン性の極性分子としてのアセトニトリルとを含む電解液(試液1)を使用した。一方、対照の蓄電池(比較例)については、ヨウ素のみを含み、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)を使用した。
いずれの蓄電池においても、負極電解液としては、塩化亜鉛(ZnCl)を0.5M(mol/L)の濃度、過塩素酸ナトリウム(NaClO)を1M(mol/L)の濃度となるように純水に溶解した電解液を使用した。また、正極としては、カーボンフェルト、負極としては、亜鉛めっきを施した鉄製のメッシュ、セパレータとしては、陽イオン交換膜「ナフィオン(登録商標)」(デュポン社製)をそれぞれ使用した。
蓄電池の充電挙動は、充電密度を40mA/cmとして定電流充電し、電池電圧が1.6Vに達するまでの時間(充電時間)を計測して評価した。また、このときの蓄電池の充電率を併せて求めた。
充電挙動の結果を以下の表3に示す。表における、充電時間比は、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)を使用した蓄電池においてを100とした充電時間の相対値、充電率比は、理論上の最大蓄電容量を100とした充電率の相対値である。
表3に示すように、アセトニトリルを含む電解液を使用した蓄電池(実施例)では、アセトニトリルを含まない電解液を使用した蓄電池(比較例)と比較して、充電時間が1.15倍に増大していた。一方、充電率については、アセトニトリルを含まない電解液を使用した蓄電池(比較例)が85%に留まった一方で、アセトニトリルを含む電解液を使用した蓄電池(実施例)は98%に達していた。
これらの結果から、ハロゲンを含む電解液に非プロトン性の極性分子を含ませることにより、充電電流に抗する電導抵抗が低減されることが分かる。この結果は、ハロゲンの還元体による皮膜が形成され難くなることによって、電極表面の電荷移動の抵抗の増大が抑制されていることを意味する。したがって、本実施形態の蓄電池は、電力量、充放電挙動等についての経時変化に対する安定性、可逆的な電極反応の安定性及び実効容量が、いずれも良好な蓄電池となる点で有利である。
2016年7月21日に出願された日本国特許出願2016−143741、2016年7月26日に出願されたPCT/JP2016/071917及び2017年5月12日に出願された米国特許出願62/505367の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
1 蓄電池
10 筺体
11 正極
12 負極
13 正極槽
14 負極槽
15 セパレータ
16 正極電解液貯槽
17 正極電解液ポンプ(正極電解液供給手段)
18 負極電解液貯槽
19 負極電解液ポンプ(負極電解液供給手段)
110 正極電解液循環管
120 負極電解液循環管

Claims (19)

  1. 水と、ハロゲンと、非プロトン性の極性分子とを含む水系電解液。
  2. 前記非プロトン性の極性分子の濃度が、2体積%以上50体積%以下である請求項1に記載の水系電解液。
  3. 前記非プロトン性の極性分子が、ニトリル基を有する請求項1又は請求項2に記載の水系電解液。
  4. 前記非プロトン性の極性分子が、アセトニトリルである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の水系電解液。
  5. 前記ハロゲンが、ヨウ素である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の水系電解液。
  6. 前記ヨウ素が、ヨウ化物イオン又はポリヨウ化物イオンとして含まれている請求項5に記載の水系電解液。
  7. ナトリウムイオンをさらに含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の水系電解液。
  8. 亜鉛イオンをさらに含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の水系電解液。
  9. 正極が保持される正極槽と、
    負極が保持される負極槽と、
    前記正極槽と前記負極槽とを隔てるセパレータとを備え、
    前記正極槽に収容される正極電解液及び前記負極槽に収容される負極電解液のうちの少なくとも一方が、水と、ハロゲンと、非プロトン性の極性分子とを含む蓄電池。
  10. 前記正極槽に正極電解液を供給する正極電解液供給手段と、
    前記正極電解液を貯留する正極電解液貯槽と、
    前記正極槽と前記正極電解液貯槽に接続され、前記正極槽と前記正極電解液貯槽との間で前記正極電解液を循環させる正極電解液循環管と、
    前記負極槽に負極電解液を供給する負極電解液供給手段と、
    前記負極電解液を貯留する負極電解液貯槽と、
    前記負極槽と前記負極電解液貯槽に接続され、前記負極槽と前記負極電解液貯槽との間で前記負極電解液を循環させる負極電解液循環管と
    をさらに備える請求項9に記載の蓄電池。
  11. 前記非プロトン性の極性分子の濃度が、2体積%以上50体積%以下である請求項9又は請求項10に記載の蓄電池。
  12. 前記非プロトン性の極性分子が、ニトリル基を有する有機分子である請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載の蓄電池。
  13. 前記非プロトン性の極性分子が、アセトニトリルである請求項9〜請求項12のいずれか1項に記載の蓄電池。
  14. 前記ハロゲンが、ヨウ素である請求項9〜請求項13のいずれか1項に記載の蓄電池。
  15. 前記ヨウ素が、ヨウ化物イオン又はポリヨウ化物イオンとして含まれている請求項14に記載の蓄電池。
  16. 前記正極電解液又は前記負極電解液が、ナトリウムイオンを含む請求項9〜請求項15のいずれか1項に記載の蓄電池。
  17. 前記正極電解液又は前記負極電解液が、亜鉛イオンを含む請求項9〜請求項16のいずれか1項に記載の蓄電池。
  18. 請求項9〜請求項17のいずれか1項に記載の蓄電池と、前記蓄電池の充放電を制御する制御部と、を備える蓄電池システム。
  19. 発電装置と、請求項18に記載の蓄電池システムと、を備える発電システム。
JP2018528870A 2016-07-21 2017-07-20 水系電解液、蓄電池、蓄電池システム及び発電システム Pending JPWO2018016595A1 (ja)

Applications Claiming Priority (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016143741 2016-07-21
JP2016143741 2016-07-21
JPPCT/JP2016/071917 2016-07-26
PCT/JP2016/071917 WO2018020586A1 (ja) 2016-07-26 2016-07-26 フロー電池システム及び発電システム
US201762505367P 2017-05-12 2017-05-12
US62/505,367 2017-05-12
PCT/JP2017/026311 WO2018016595A1 (ja) 2016-07-21 2017-07-20 水系電解液、蓄電池、蓄電池システム及び発電システム

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2018016595A1 true JPWO2018016595A1 (ja) 2019-05-09

Family

ID=66440758

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018528870A Pending JPWO2018016595A1 (ja) 2016-07-21 2017-07-20 水系電解液、蓄電池、蓄電池システム及び発電システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPWO2018016595A1 (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5050847B2 (ja) 二次電池とこれを用いた電源システム、電源システムの使用方法
KR20110126623A (ko) 이온성 액체에 전기 에너지를 저장하는 방법
JP6935816B2 (ja) 水溶液系二次電池、水溶液系二次電池の充放電方法、水溶液系二次電池用電解液、フロー電池システム及び発電システム
JP2010086935A (ja) レドックスフロー電池
JP2011222473A (ja) リチウムイオン電池用電解液
JP5375580B2 (ja) ナトリウムイオン電池用電解液
JP2009158240A (ja) リチウムイオン電池用電解液
US10804558B2 (en) Non-aqueous redox flow batteries
Mun et al. Highly soluble tris (2, 2’-bipyridine) metal bis (trifluoromethanesulfonyl) imide complexes for high energy organic redox flow batteries
EP3413386A1 (en) Redox flow battery electrolyte and redox flow battery
Rodriguez et al. Fluorenone based anolyte for an aqueous organic redox-flow battery
WO2018016595A1 (ja) 水系電解液、蓄電池、蓄電池システム及び発電システム
JP2019071193A (ja) 水系二次電池及び発電システム
Al-Farsi et al. Paving the way for advancement of renewable energy technologies using deep eutectic solvents: A review
JP2020198289A (ja) 三層系電解液を含む電気化学デバイス
WO2020241686A1 (ja) 三層系電解液を含む電気化学デバイス
JPWO2018016595A1 (ja) 水系電解液、蓄電池、蓄電池システム及び発電システム
JPWO2018016594A1 (ja) 二次電池システム、発電システム及び二次電池
JP2005251510A (ja) 電解液及び電気化学デバイス
KR102210657B1 (ko) 니켈을 전극활물질로 포함하는 수계 레독스 흐름 전지
Harinipriya et al. pH switch over a cause for high efficiency all‐aqueous CuSO4/[Fe (CN) 6] 3− redox flow battery
US11881605B2 (en) Low-temperature aqueous redox flow battery
JP7288776B2 (ja) 蓄電デバイス用水系電解液及びこの水系電解液を含む蓄電デバイス
JP2018206640A (ja) 電池、電池システム及び発電システム
US20240186515A1 (en) Electrolyte solution for redox flow battery including organic active material and redox flow battery using the same