JP2018206640A - 電池、電池システム及び発電システム - Google Patents

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明博 織田
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祐一 利光
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修一郎 足立
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雅規 北川
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Abstract

【課題】長期間にわたって参照電極の電位に対する電解液の電位を安定して測定可能な電池、並びにこの電池を備える電池システム及び発電システムを提供する。【解決手段】正極電解液と、負極電解液と、前記正極電解液及び前記負極電解液の少なくとも一方の電位を測定する電位測定部と、を備え、前記正極電解液及び前記負極電解液の少なくとも一方は、臭化物イオン(Br−)又はヨウ化物イオン(I−)である物質Xを含み、前記電位測定部はAg/AgX参照電極を用いて前記物質Xを含む電解液の電位を測定する電池。【選択図】図1

Description

本発明は、電池、電池システム及び発電システムに関する。
電池の一種であるフロー電池は、MWh級の大規模蓄電が可能であり、かつ、コストパフォーマンスに優れていると言われており、再生可能エネルギー分野、スマートシティー分野等での適用が期待されている。
これまで、フロー電池としては、バナジウムイオン系フロー電池(V系フロー電池)の研究が多くなされており(例えば、特許文献1参照)、既に実証プラントでの適用が試みられている。また、フロー電池としては、臭素亜鉛フロー電池も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、ヨウ化物イオン及びヨウ素分子を正極電解液の活物質とし、亜鉛イオン及び亜鉛金属を負極電解液の活物質としたZn/I系フロー電池も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2011−233372号公報 米国特許出願公開第2016/181389号明細書 米国特許第4109065号公報
特許文献1〜3に開示されているこれらフロー電池をリチウムイオン電池等と比較した場合のメリットの一つとして、電解液の電位を調べることで、充電深度(SOC、State of Charge)を容易にモニタリングできることが挙げられる。
ここで、水系電解液の電位を測定するための参照電極として、Ag/AgCl参照電極が有名であり、銀の表面を塩化銀で覆い、塩化物溶液中に浸した状態で使用される。しかしながら、このAg/AgCl参照電極を、電解液に使用すると、電解液中に溶解した活物質である臭化物イオン、臭素、バナジウムイオン、ヨウ化物イオン等が塩化物溶液中に侵入して沈殿物が生成されて問題が生じ得る。また、活物質であるヨウ化物イオンが塩化物溶液中に混入してAg/AgIの電位がAg/AgCl参照電極の電位に影響を与えたり、活物質である臭化物イオンが塩化物溶液中に混入してAg/AgBrの電位がAg/AgCl参照電極の電位に影響を与えたりすることにより、Ag/AgCl参照電極の電位が安定しないという問題が生じ得る。したがって、Ag/AgCl参照電極を長期間にわたって使用すると、参照電極の電位に対する電解液の電位を安定して測定することが困難となる。これは、参照電極としてカロメル電極を用いた場合でも同様である。そこで、電解液中に含まれる陰イオン等が参照電極を保存する容器内に混入しても電位が安定な参照電極が好ましいものの、そのような電極は知られていない。
本発明の一形態は、長期間にわたって参照電極の電位に対する電解液の電位を安定して測定可能な電池、並びにこの電池を備える電池システム及び発電システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 正極電解液と、負極電解液と、前記正極電解液及び前記負極電解液の少なくとも一方の電位を測定する電位測定部と、を備え、前記正極電解液及び前記負極電解液の少なくとも一方は、臭化物イオン(Br)又はヨウ化物イオン(I)である物質Xを含み、前記電位測定部はAg/AgX参照電極を用いて前記物質Xを含む電解液の電位を測定する電池。
<2> 前記正極電解液と接する正極と、前記負極電解液と接する負極と、前記正極電解液を貯留する正極電解液貯留部と、前記負極電解液を貯留する負極電解液貯留部と、前記正極と前記正極電解液貯留部との間で前記正極電解液を循環させ、前記負極と前記負極電解液貯留部との間で前記負極電解液を循環させる送液部と、をさらに備えるフロー電池である<1>に記載の電池。
<3> 前記電位測定部は、前記正極電解液貯留部及び前記負極電解液貯留部の少なくとも一方に配置されている<2>に記載の電池。
<4> 前記電位測定部は、前記正極及び前記負極が配置されたセル内に配置されている<2>又は<3>に記載の電池。
<5> 前記物質Xはヨウ化物イオンであり、前記電位測定部はAg/AgI参照電極を用いてヨウ化物イオンを含む電解液の電位を測定する<1>〜<4>のいずれか1つに記載の電池。
<6> 前記正極電解液がヨウ化亜鉛、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化水素、ヨウ化銀、四ヨウ化炭素、三ヨウ化窒素、テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージド、ピロリジニウムヨージド、スルフォニウムヨージドから選ばれる少なくとも一種のヨウ化化合物を含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載の電池。
<7> 前記物質Xは臭化物イオンであり、前記電位測定部はAg/AgBr参照電極を用いて臭化物イオンを含む電解液の電位を測定する<1>〜<4>のいずれか1つに記載の電池。
<8> 前記負極電解液が負極活物質として亜鉛及び亜鉛イオンの少なくとも一方を含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載の電池。
<9> <1>〜<8>のいずれか1つに記載の電池と、前記電池の充放電を制御する制御部と、を備える電池システム。
<10> 前記正極電解液は、前記物質Xとしてヨウ化物イオン(I)を含み、前記制御部は、参照電極Ag/AgI(1M I濃度)の電位を基準として前記正極の充電電位を1.5V以下に制御する<9>に記載の電池システム。
<11> 前記正極電解液は、前記物質Xとしてヨウ化物イオン(I)を含み、前記制御部は、参照電極Ag/AgI(1M I濃度)の電位を基準として前記正極の充電電位を1.43V以下に設定する<9>又は<10>に記載の電池システム。
<12> 発電装置と、<9>〜<11>のいずれか1つに記載の電池システムと、を備える発電システム。
本発明の一形態によれば、長期間にわたって参照電極の電位に対する電解液の電位を安定して測定可能な電池、並びにこの電池を備える電池システム及び発電システムを提供することができる。
フロー電池システムの一例を示す構成図である。 フロー電池システムの他の一例を示す構成図である。 実施例1で得られたヨウ素亜鉛フロー電池における、Ag/AgI参照電極に対する正極電解液の電位と電池のSOCとの関係を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において電解液中の各成分の含有率は、電解液中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、電解液中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
また、本開示において、「含有率」とは、特に記載がなければ、各電解液の全量を100質量%としたときの、各成分の質量%を表す。
また、本開示に記載された具体的かつ詳細な内容の一部又は全てを利用せずとも本発明を実施可能であることは、当業者には明らかである。また、本発明の側面をあいまいにすることを避けるべく、公知の点については詳細な説明又は図示を省略する場合もある。
[電池]
本開示の電池は、正極電解液と、負極電解液と、前記正極電解液及び前記負極電解液の少なくとも一方の電位を測定する電位測定部と、を備え、前記正極電解液及び前記負極電解液の少なくとも一方は、臭化物イオン(Br)又はヨウ化物イオン(I)である物質Xを含み、前記電位測定部はAg/AgX参照電極を用いて前記物質Xを含む電解液の電位を測定する。これにより、参照電極の長期安定性が確保され、長期間にわたって参照電極の電位に対する電解液の電位を安定して測定可能となる。この理由は、電解液中(例えば、正極電解液中)に溶解した物質Xは、参照電極におけるAgXの陰イオンと同じ種類であるため、物質Xにより、Ag/AgX参照電極の電位が影響を受けず、長期にわたって参照電極の電位が安定するためである。
<正極電解液>
電池は、正極活物質を含む正極電解液を備える。正極活物質としては、ヨウ素イオン、ヨウ素分子、臭素イオン、臭素分子等が挙げられる。また、正極活物質としては、ヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方、又は臭素イオン及び臭素分子の少なくとも一方を含むことが好ましく、ヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方、又は臭素イオン及び臭素分子の少なくとも一方であることがより好ましい。
また、正極電解液は、臭化物イオン又はヨウ化物イオンである物質Xを正極活物質として含んでいてもよい。このとき、後述するように正極電解液の電位は、電位計測部におけるAg/AgX参照電極を用いて測定される。
ヨウ素イオン、ヨウ素分子、臭素イオン、臭素分子は、正極電解液に溶解した状態であっても固体で分散した状態であってもよく、溶解した状態であることが好ましい。
正極活物質としては、ヨウ素イオン及びヨウ素分子(I)の少なくとも一方が好ましい。ここで、ヨウ素イオンとしては、ヨウ化物イオン(I)、三ヨウ化物イオン(I )、五ヨウ化物イオン(I )等のポリヨウ化物イオンなどが挙げられる。また、IはIと反応してI を形成するため、正極活物質がI及びIを含む場合、IとIとの比率をあらかじめ調整することが好ましい。
また、正極活物質としては、臭素イオン及び臭素分子(Br)の少なくとも一方が好ましい。臭素イオンとしては、臭化物イオン(Br)、三臭化物イオン(Br )等が挙げられる。
正極電解液としては、イオンである正極活物質を与える化合物が液状媒体に溶解又は分散されたものであることが好ましい。正極活物質がヨウ素イオン又は臭素イオンである場合、正極活物質を与える化合物としてはヨウ素化合物及び臭素化合物が挙げられる。
ヨウ素化合物としては、CuI、ZnI、NaI、KI、HI、LiI、NHI、BaI、CaI、MgI、SrI、CI、AgI、NI、テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージド、ピロリジニウムヨージド、スルフォニウムヨージド等が挙げられる。臭素化合物としては、CuBr,ZnBr、NaBr、KBr、HBr、LiBr、NHBr、BaBr、CaBr、MgBr、SrBr、CBr、AgBr、NBr、テトラアルキルアンモニウムブロミド、ピリジニウムブロミド、ピロリジニウムブロミド、スルフォニウムブロミド等が挙げられる。
正極電解液は、ヨウ素イオン、ヨウ素分子、臭素イオン及び臭素分子以外の酸化還元物質を正極活物質として含んでいてもよい。酸化還元物質としては、クロムイオン、バナジウムイオン、亜鉛、マンガンイオン、セリウムイオン、銅イオン、スズイオン、ニトロキシルラジカル、色素、キノン化合物、コバルト酸リチウム、マンガン酸ナトリウム、ニッケル酸リチウム、コバルト−ニッケル−マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム等が挙げられる。
正極電解液において、正極活物質の含有率、好ましくはヨウ素イオン及びヨウ素分子の合計の含有率、又は臭素イオン及び臭素分子の合計の含有率は、1質量%〜80質量%であることが好ましく、3質量%〜70質量%であることがより好ましく、5質量%〜50質量%であることが更に好ましい。なお、正極活物質の含有率とは、正極活物質となる元素及び分子、並びに正極活物質を与える化合物(正極活物質となるイオン及びその対イオンの合計)の合計の含有率を表す。ヨウ素イオン及びヨウ素分子の合計の含有率、又は臭素イオン及び臭素分子の合計の含有率を1質量%以上とすることで、高容量で実用に適した電池が得られる傾向にある。また、ヨウ素イオン及びヨウ素分子の合計の含有率、又は臭素イオン及び臭素分子の合計の含有率を80質量%以下とすることで、正極電解液中での溶解性又は分散性が良好なものとなる傾向にある。例えば、ヨウ素イオン及びヨウ素分子の合計の含有率とは、正極電解液中におけるヨウ素分子(I)及びヨウ素化合物由来のイオン(例えば、I、I 、I 、Iの対イオン)の合計の含有率である。また、臭素イオン及び臭素分子の合計の含有率とは、正極電解液中における臭素分子(Br)及び臭素化合物由来のイオン(例えば、Br、Br 及びBrの対イオン)の合計の含有率である。
(液状媒体)
正極電解液は、正極活物質が液状媒体に溶解又は分散されたものであることが好ましい。液状媒体とは、室温(25℃)において液体の状態の媒体をいう。液状媒体としては、正極活物質を分散又は溶解可能な媒体であれば特に限定されない。
液状媒体としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル等のエーテル系溶剤;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリエチレングリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のエステル系溶剤;アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル系溶剤;α−テルピネン、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、α−ピネン、β−ピネン、ターピネオール、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン系溶剤;水などが挙げられる。液状媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
液状媒体としては、水が好ましい。液状媒体として水を用いることで正極電解液を低粘度化でき、電池を高出力化できる傾向にある。
(ヨウ素分子に対する良溶媒)
正極電解液は、ヨウ素化合物、ヨウ素分子等を含む場合、水以外にヨウ素分子に対する良溶媒を含んでいてもよい。正極電解液がヨウ素分子に対する良溶媒を含むことにより、充電反応の際に正極に形成されるヨウ素皮膜が薄膜化され、ヨウ素皮膜による充放電反応の阻害が抑えられる傾向にある。ヨウ素分子に対する良溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のアミド、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ニコチン酸メチル等のエステル、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド、エタノール、エチレングリコール等のアルコール、ジエチルエーテル等のエーテル、ニコチンアミド、プロピレンカーボネート等のカーボネート、シアノピリジン等のピリジン誘導体などが挙げられる。ヨウ素分子に対する良溶媒としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ヨウ素皮膜は正極表面に吸着する。例えば、フロー電池においては、数時間オーダーで充電することが好ましいと考えられ、条件によっては日単位の充電時間になることも考えられる。そのため、フロー電池の長時間の充電により、ヨウ素皮膜が厚くなり、厚いヨウ素皮膜はしだいに正極電解液を通過させなくなり、結晶化し、充電反応の継続を阻害したり、その後の放電反応を阻害したりすることが考えられる。したがって、充電反応継続の阻害及び放電反応の阻害への対策として、ヨウ素皮膜を薄膜化する添加剤であるヨウ素分子に対する良溶媒を用いることが好ましい。
正極電解液中におけるヨウ素分子に対する良溶媒の含有率は、0.1体積%〜80体積%であることが好ましく、1体積%〜50体積%であることがより好ましい。ヨウ素分子に対する良溶媒の含有率はガスクロマトグラフィー法、ガスクロマトグラフィー質量分析法等で定量可能である。
(錯体形成化合物)
正極電解液は、ヨウ素化合物、ヨウ素分子等を含む場合、ヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方(以下「ヨウ素イオン等」とも称する)と錯体を形成可能な化合物(以下「錯体形成化合物」とも称する)を含んでいてもよい。錯体形成化合物は、電池反応速度の点から、少なくとも一部が液状媒体に溶解していることが好ましく、全てが液状媒体に溶解していることがより好ましい。
正極電解液がヨウ素イオン等と錯体を形成可能な化合物を含むことで、ヨウ素イオンの酸化還元反応により生じ得るヨウ素分子の析出が抑制される傾向にある。
錯体形成化合物としては、モノマー化合物であってもよく、ポリマー化合物であってもよい。ポリマー化合物を錯体形成化合物として用いた場合、ハロゲン等と錯体を形成することにより、前述の電解液を正極電解液として用い、かつセパレータとしてポリオレフィン多孔質膜等の孔を有する膜を用いたときであっても、セパレータを介したハロゲン等の負極電解液への移動が抑制されるため、電池の充放電反応を繰り返した際の容量維持率の低下が抑制されてサイクル特性に優れる傾向にある。
ポリマー化合物の数平均分子量は200〜100万であることが好ましく、5000〜50万であることがより好ましい。ポリマー化合物の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー、静的光散乱法、質量分析法等により測定できる。数平均分子量が200以上であることにより、セパレータとしてポリオレフィン多孔質膜等の孔を有する膜を用いたときであっても、セパレータを介した錯体の負極電解液への移動が好適に抑制される傾向にある。数平均分子量が100万以下であることにより、正極電解液の増粘を抑制できる傾向にある。正極電解液の増粘を抑制することにより、電池の反応速度の低下を抑制し、大きな電流密度にて電池を使用しやすくなる傾向にある。
ポリマー化合物としては、ナイロン−6、ポリテトラヒドロフラン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン(好ましくは、ポリ−4−ビニルピリジン)、ポリビニルピロリドン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリアクリルアミド、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアセチレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリチオフェン、キトサン、アミロース、デンプン、アミロペクチン、セルロース、グリコーゲン、デキストリン、シクロデキストリン等が挙げられる。これらのポリマー化合物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
正極電解液において、錯体形成化合物の含有率、好ましくはポリマー化合物の含有率は、0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.1質量%〜30質量%であることがより好ましく、1質量%〜20質量%であることが更に好ましい。錯体形成化合物の含有率を0.01質量%以上とすることでヨウ素分子の析出を抑制できる傾向にある。また、錯体形成化合物の含有率を50質量%以下とすることで正極電解液の極度な増粘を避けることができる傾向にある。
(支持電解質)
正極電解液は、更に支持電解質を含んでいてもよい。支持電解質は、正極電解液のイオン伝導率を高めるための助剤である。正極電解液が支持電解質を含むことで、正極電解液のイオン伝導率が高まり、電池の内部抵抗が低減する傾向にある。
支持電解質としては、液状媒体中で解離してイオンを形成する化合物であれば特に限定されない。支持電解質としては、HCl、HNO、HSO、HClO、NaCl、NaSO、NaClO、KCl、KSO、KClO、NaOH、LiOH、KOH、アルキルアンモニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩、アルキルピペリジニウム塩、アルキルピロリジニウム塩等が挙げられる。また、ヨウ素化合物等は、正極活物質と支持電解質とを兼ねていてもよい。これらの支持電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(pH緩衝剤)
正極電解液は、更にpH緩衝剤を含んでいてもよい。pH緩衝剤としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液等が挙げられる。
(導電材)
正極電解液は、更に導電材を含んでいてもよい。導電材としては、炭素材料、金属材料、有機導電性材料等が挙げられる。炭素材料及び金属材料は、例えば、粒子状であっても繊維状であってもよい。
炭素材料としては、活性炭(水蒸気賦活又はアルカリ賦活);アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛;カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、ハードカーボン、ソフトカーボンなどが挙げられる。
金属材料としては、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の粒子又は繊維が挙げられる。
有機導電性材料としては、ポリフェニレン誘導体等が挙げられる。
これらの導電材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導電材としては、炭素材料粒子が好ましく、活性炭粒子がより好ましい。電解液が導電材として活性炭粒子を含むことで、活性炭粒子の表面における電気二重層形成によるエネルギー貯蔵及び放出が可能となり、二次電池のエネルギー密度及び出力密度が向上する傾向にある。
本開示の電池において、正極電解液がZn2+を含む場合、正極電解液の電位をZn/Zn2+参照電極を用いて測定してもよい。この場合、Zn2+イオンの濃度は10mM〜15Mであることが好ましく、50mM〜15Mであることがより好ましい。例えば、亜鉛イオンを含む正極電解液を用いることにより、正極電解液にZn2+が含まれることになり、長期間にわたってZn/Zn2+参照電極の電位が安定するため好ましい。
(正極電解液の調製方法)
正極電解液は、例えば、正極活物質と必要に応じてその他の成分とを液状媒体に加えることにより調製することができる。正極電解液を調製する際には、必要に応じて加熱を行ってもよい。
<負極電解液>
電池は、負極活物質を含む負極電解液を備える。負極活物質としては、反応系の標準酸化還元電位が正極の標準酸化還元電位よりも低い物質であればよい。例えば、正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子のみを用いる場合、負極活物質は、反応系の標準酸化還元電位が正極の標準酸化還元電位である0.536Vよりも低い物質であればよい。負極活物質としては、亜鉛、クロム、チタン、バナジウム、鉄、スズ、鉛、ビオロゲン化合物、キノン化合物、Na等の硫黄化合物、ビタミン化合物、色素などが挙げられる。なお、負極活物質はイオン、化合物等であってもよい。また、負極電解液は、負極活物質が液状媒体に溶解又は分散されているものであることが好ましい。
また、負極電解液が、臭化物イオン(Br)又はヨウ化物イオン(I)である物質Xを含んでいてもよく、このとき、電位測定部はAg/AgX参照電極を用いて負極電解液の電位を測定する構成であってもよい。
負極電解液としては、イオンである負極活物質を与える化合物が液状媒体に溶解又は分散されたものであることが好ましい。負極活物質が亜鉛イオンである場合、負極活物質を与える化合物としては後述の亜鉛を含む化合物が挙げられる。
負極電解液は、負極活物質として亜鉛及び亜鉛イオン(Zn2+)の少なくとも一方を含むことが好ましい。例えば、亜鉛を含む化合物の一種である塩化亜鉛は水に対する溶解度が30mol/Lと非常に高い点、亜鉛の溶解析出反応の標準酸化還元電位が−0.76Vと低い点並びに亜鉛及び亜鉛化合物は安価である点から、亜鉛及び亜鉛イオンは負極活物質として好適である。また、亜鉛を含む化合物としては、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられる。
負極電解液において、負極活物質の含有率は、1質量%〜80質量%であることが好ましく、3質量%〜70質量%であることがより好ましく、5質量%〜50質量%であることが更に好ましい。なお、負極活物質の含有率とは、負極活物質となる元素及び分子、並びに負極活物質を与える化合物(負極活物質となるイオン及びその対イオンの合計)の合計の含有率を表す。
本開示の電池において、負極電解液がZn2+を含む場合、負極電解液の電位をZn/Zn2+参照電極を用いて測定してもよい。この場合、Zn2+イオンの濃度は10mM〜15Mであることが好ましく、50mM〜15Mであることがより好ましい。例えば、負極活物質として亜鉛イオンを含む負極電解液を用いることにより、負極電解液にZn2+が含まれることになり、長期間にわたってZn/Zn2+参照電極の電位が安定するため好ましい。
負極電解液は、前述の正極電解液と同様、液状媒体、支持電解質、pH緩衝剤、導電材等を含んでいてもよい。使用可能な液状媒体、支持電解質、pH緩衝剤及び導電材については、正極電解液と同様であるため、その説明を省略する。
なお、正極電解液及び負極電解液について、含まれる液状媒体、支持電解質、pH緩衝剤及び導電材はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
(負極電解液の調製方法)
負極電解液は、負極活物質と必要に応じてその他の成分とを液状媒体に加えることにより調製することができる。負極電解液を調製する際には、必要に応じて加熱を行ってもよい。
正極電解液が貯蔵できるエネルギー容量(Ec)と負極電解液が貯蔵できるエネルギー容量(Ea)との比率(Ec/Ea)に特に制限はない。二次電池システムのエネルギー密度を高める観点から、EcとEaとの比率(Ec/Ea)は、0.3〜2.5であることが好ましく、0.5〜2.0であることがより好ましく、0.8〜1.3であることが更に好ましい。
<電位測定部>
本開示の電池は、正極電解液及び負極電解液の少なくとも一方の電位を測定する電位測定部を備える。電位測定部はAg/AgX参照電極を用いて物質Xを含む電解液の電位を測定する構成である。ここで、物質Xは、臭化物イオン(Br)又はヨウ化物イオン(I)である。なお、正極電解液及び負極電解液の両方が臭化物イオン(Br)又はヨウ化物イオン(I)を含む場合、電位測定部は、正極電解液及び負極電解液の両方の電位をそれぞれ測定する構成であってもよく、正極電解液及び負極電解液の一方の電位を測定する構成であってもよい。
電位測定部は、正極電解液及び負極電解液の少なくとも一方の電位をAg/AgX参照電極を用いて測定可能な場所に配置される。例えば、正極電解液に接する位置に電位測定部を配置することにより正極電解液の電位を測定することができ、負極電解液に接する位置に電位測定部を配置することにより負極電解液の電位を測定することができる。
Ag/AgX参照電極としては、Ag/AgBr参照電極及びAg/AgI参照電極が挙げられ、特に電位測定部が正極電解液の電位を測定する場合、Ag/AgI参照電極が好ましい。
Ag/AgX参照電極としては、例えば、Ag表面の少なくとも一部にAgXが付着した電極であればよい。
電位測定部の設置場所としては、例えば、正極側に1箇所あればよく、正極側に1箇所及び負極側に1箇所あることが好ましく、正極側及び負極側に複数箇所あることがより好ましい。
電位測定部は、Ag/AgX参照電極を備える構成であってもよく、Ag/AgX参照電極からなる構成であってもよい。また、電位測定部は、正極電解液及び負極電解液の少なくとも一方の電位を測定する際にのみ、Ag/AgX参照電極が配置される構成であってもよい。
<正極及び負極>
正極電解液と接する正極及び負極電解液と接する負極としては、従来公知の電池(二次電池、フロー電池等)に用いられる正極及び負極を用いてもよい。
正極及び負極としては、使用する電位範囲において電気化学的に安定な材質を用いることが好ましい。正極及び負極としては、カーボンフェルト、グラファイトフェルト等のカーボン電極;ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属からなる金属板、金属メッシュ等の金属電極;などが挙げられる。また、ガラス基材上又は高分子基材上に、InSnO、SnO、In、ZnO等の導電材、フッ素ドープ酸化錫(SnO:F)、Sbドープ酸化錫(SnO:Sb)、Snドープ酸化インジウム(In:Sn)、Alドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)、Gaドープ酸化亜鉛(ZnO:Ga)等の不純物がドープされた導電材などを含有する少なくとも1つの層を形成した積層体を、電極として用いることもできる。
正極及び負極の表面積を増やして電池の出力を高める点から、正極及び負極の少なくとも一方の形状を、比表面積の大きい多孔体、フェルト、ペーパー等にしてもよい。また、正極及び負極の少なくとも一方の表面にカーボンフェルト、グラファイトフェルト等を配置してもよく、正極及び負極の少なくとも一方は、電解液が透過可能な孔を有し、この孔を介して電子の授受が行われるものであってもよい。
正極は、正極電解液が正極活物質としてヨウ素分子及びヨウ素イオンの少なくとも一方を含む場合、ヨウ化物イオン(I)に対する耐食性を有する電極が好ましい。ヨウ化物イオンに対する耐食性を有する電極としては、チタン等の金属から構成される電極、炭素電極などが挙げられ、コストの点から炭素電極が好ましい。
負極は、負極電解液が負極活物質として亜鉛イオンを含む場合、亜鉛電極、亜鉛メッキした金属から構成される電極、炭素電極等が好ましい。
また、カーボンフェルト、カーボンペーパー等は、熱処理、エッチング処理等により、本開示の電解液、後述の負極電解液等の濡れ性を向上させてもよい。例えば、熱処理は300℃〜1000℃にて酸素を含む雰囲気中にて0.1時間〜100時間行うことが好ましい。
<セパレータ>
電池は、正極と負極との間にセパレータを更に備えていてもよい。セパレータとしては、電池の使用条件に耐え得るもので、自己放電を抑制し得る膜であれば特に制限されず、イオン伝導性高分子膜、イオン伝導性固体電解質膜、ポリオレフィン多孔質膜、セルロース多孔質膜等が挙げられる。
イオン伝導性高分子膜としては、例えば、カチオン交換膜及びアニオン交換膜が挙げられる。市販のカチオン交換膜としては、例えば、商品名Nafion(アルドリッチ社)が挙げられ、市販のアニオン交換膜としては、例えば、商品名セレミオン(旭硝子株式会社)及び商品名ネオセプタ(株式会社アストム)が挙げられる。
ポリオレフィン膜としてはポリエチレン多孔膜、ポリプロピレン多孔膜、これらの多層膜を使用することができる。
本開示の電池は、フロー電池であってもよい。より具体的には、電池は、本開示の電解液である正極電解液を貯留する正極電解液貯留部と、負極電解液を貯留する負極電解液貯留部と、正極と正極電解液貯留部との間で正極電解液を循環させ、負極と負極電解液貯留部との間で負極電解液を循環させる送液部と、を更に備えるフロー電池であってもよい。
以下、フロー電池の各構成について説明する。
<正極電解液貯留部及び負極電解液貯留部>
フロー電池は、正極電解液を貯留する正極電解液貯留部及び負極電解液を貯留する負極電解液貯留部を備える。正極電解液貯留部及び負極電解液貯留部としては、例えば、電解液貯留タンクが挙げられる。
<送液部>
フロー電池は、正極と正極電解液貯留部との間で正極電解液を循環させ、負極と負極電解液貯留部との間で負極電解液を循環させる送液部を備える。正極電解液貯留部に貯留された正極電解液が送液部を通じて正極が配置された正極室(正極電解液反応槽)に供給され、負極電解液貯留部に貯留された負極電解液が送液部を通じて負極が配置された負極室(負極電解液反応槽)に供給される。
フロー電池では、送液部は例えば、正極室と正極電解液貯留部との間で正極電解液を循環させ、かつ負極室と負極電解液貯留部との間で負極電解液を循環させる循環経路及び送液ポンプを備えていてもよい。
液密性の点から循環経路の継ぎ手にガスケットを配置してもよい。ガスケットの素材としては特に制限はなく、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、エチレンプロピレンゴム、Hypalon、塩化ビニル等が挙げられる。また循環経路の素材としても特に制限はなく、例えば、塩化ビニル、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、PTFE、ゴム、ガラス等が挙げられる。
正極室と正極電解液貯留部との間で循環させる正極電解液の量及び負極室と負極電解液貯留部との間で循環させる負極電解液の量は、それぞれ送液ポンプを用いて適宜調整すればよく、例えば、電池スケールに応じて適宜設定することができる。
<サンプリング部>
フロー電池は、正極電解液をサンプリングするサンプリング部を更に備えていてもよい。サンプリング部にて正極電解液をサンプリングすることで、ヨウ素イオン、ヨウ素分子、プロピレンカーボネート等のヨウ素分子に対する良溶媒等の添加剤などの正極電解液に含有される成分の濃度の分析が可能であり、例えば、正極電解液に含有される成分の濃度が規定量、必要量等に比べて不足していないか分析することができる。
サンプリング部は、例えば、正極電解液貯留部に配置されていてもよく、循環経路に配置されていてもよい。また、サンプリング部は、所定の時間毎に正極電解液をサンプリングする構成であってもよい。
<濃度調整部>
また、フロー電池は、サンプリング部によりサンプリングされた正極電解液を分析し、分析結果に基づいて、正極と正極電解液貯留部との間を循環する正極電解液に含有される成分の濃度を調整する濃度調整部を更に備えていてもよい。フロー電池が濃度調整部を備えることで、サンプリング部にてサンプリングした正極電解液について、ヨウ素イオン、ヨウ素分子、プロピレンカーボネート等のヨウ素分子に対する良溶媒等の添加剤などの正極電解液に含有される成分の濃度が規定量、必要量等に比べて不足している場合、不足する成分が正極電解液に添加され、正極電解液に含有される成分の濃度を調整することができる。
濃度調整部は、例えば、正極電解液貯留部に貯留されている正極電解液に各成分を添加する構成であってもよく、循環経路を流通する正極電解液に各成分を添加する構成であってもよい。また、正極電解液への添加剤の追加は、フロー電池の運転中に行ってもよく、停止中に行ってもよい。
フロー電池において、電位測定部は、正極及び負極が配置されたセル内(正極室内及び負極室内の少なくとも一方)に配置され、正極電解液及び負極電解液の少なくとも一方の電位を測定する構成であってもよい。
また、フロー電池において、電位測定部は、正極電解液貯留部及び負極電解液貯留部の少なくとも一方に配置される構成であってもよい。このとき、電位測定部が配置された貯留部に電解液の電位を測定するための作用電極を配置する。これにより、Ag/AgX参照電極の電位に対する電解液の電位を長期間にわたって安定して測定することができ、電気化学電位に関するネルンストの式を用いることにより、計測された参照電極基準の電気化学電位から活物質の濃度、例えば、ヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度を求めることができるため、充電深度(SOC、State of Charge)を容易にモニタリングできる。また、正極電解液の電位とSOCの関係はネルンストの式から概算することもできるが、1サイクル目の充放電間、電位及び充電時間から理論的なSOCの関係を測定することが好ましい。
また、後述する制御部は、電位測定部により計測された電位に基づいてSOCを推定することができる。例えば、活物質である酸化還元物質としてI、I 、及びIのみを考慮した場合、SOCが0%とは、基本的に正極電解液中にI 及びIが含まれず、Iのみとなっている状態を示す。また、SOCが100%とは、基本的に正極電解液中にIが含まれず、I 及びIのみとなっている状態を示す。
作用電極としては、特に制限されず、グラッシーカーボン、黒鉛等のカーボン、水銀、白金、亜鉛、鉛、スズ、銅、ニッケルなどの電極素材から構成されるものが挙げられる。作用電極としては、中でも、グラッシーカーボン、黒鉛等のカーボン電極が好ましい。
[電池システム]
本開示の電池システムは、前述の本開示の電池と、電池の充放電を制御する制御部と、を備える。本開示の電池システムは、電池がフロー電池であるフロー電池システムであってもよく、制御部は、フロー電池の充放電を制御する構成であってもよい。
(制御部)
電池システムは、電池の充放電を制御する制御部を備える。例えば、制御部は、電池システムにおける充電電圧、正極及び負極の充電電位等を制御する構成であってもよい。
正極電解液は、物質Xとしてヨウ化物イオン(I)を含む場合、制御部は、参照電極Ag/AgI(1M I濃度)の電位を基準として基準値を超えないように設定及び制御することが好ましい。基準値及び基準値を超える場合の問題点について記載する。
正極電解液が物質Xとしてヨウ化物イオンを含む場合、物質Xは正極活物質を兼ねていることが通常である。このため、以下の式(1)及び(2)に示す充電反応により、正極にてヨウ化物イオン(I)が酸化されてI 及びIが通常生成され、生成されたI 及びIは式(1)及び(2)に示す放電反応により、正極にて還元されてIとなる。
3I⇔I +2e (1)
2I⇔I+2e (2)
しかしながら、正極の充電電位が、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.43Vを超える場合、上記式(1)及び(2)で示す充電反応とともに以下式(3)で示すIO の生成反応が生じる(文献1:P. Beran, and S. Bruchenstein, Voltammetry of Iodine(I) Cholride, Iodine and Iodate at Rotated Platinum Disk and Ring-Disk Electrodes, Analytical chemistry, 40, 1044 (1968).)。
+3HO→IO +6H+6e (3)
上記式(3)で示す反応は不可逆な反応であると報告されており、逆反応の反応速度は極めて小さい。
また、以下の式(4)で表されるDushman反応により、上記式(3)で生成されたIO からIが生成される。
IO +5I+6H→3I+3HO (4)
更に、以下の式(5)は、上記式(3)及び式(4)の全反応(式(3)+式(4))として求められる。
+6HO→2IO +12H+10e (5)
上記文献1によれば、上記式(4)の化学反応速度は上記式(3)の電気化学反応に比べ早く、式(3)及び式(4)を構成反応とする式(5)の律速過程は、式(3)の電気化学反応である。このため、正極の充電電位が、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.43Vを超える場合、上記式(3)〜式(5)の反応が生じていると推測される。正極の充電電位が、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.43Vを超える場合に上記式(3)〜式(5)の反応が顕著になる。
このため、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.43Vを超える正極充電電位で充電が繰り返される場合、正極の充電反応により式(3)に基づいてIO が生成される。IO は式(3)の逆反応である放電反応の反応速度が遅く、Iに非常に戻りにくい。
更に、式(3)に基づき生成されたIO は、式(4)の反応により、電解液中のIと反応し、正極での電子の授受を伴わずに電解液中のIが消費される。
また、式(3)及び式(4)の全反応である式(5)に示す反応により、Iが反応してIO が生成されるが、式(3)に示す反応と同様に、式(5)に示す反応も不可逆反応である。このため、生成されるIO は式(5)の逆反応である放電反応の反応速度が遅く、Iに非常に戻りにくい。
したがって、1.43Vを超える正極充電電位で充電が繰り返される場合、放電反応に寄与しないIO の割合が増加し、かつI及びIの濃度の合計が低下することによって、しだいに電池システムは正極放電容量及び正極充電容量が低下するという問題がある。
一方、本開示の電池システムは、充放電を制御し、正極の充電電位を、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.43V以下に設定する制御部を備えている。これにより、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.43V以下に設定でき、電池システムの充電時にIO の生成反応を抑制できる。IO の生成を抑制することで、可逆的に充放電する際のヨウ素イオン及びヨウ素分子の合計濃度(I、I 、I等の合計濃度)を維持して正極放電容量及び正極充電容量を維持することができ、サイクル耐久性が向上できる。したがって、本実施形態では、実用可能な充電条件を満たす電池システムを提供することができる。
制御部は、サイクル耐久性をより向上させる点から、正極の充電電位を、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.4V以下に設定することが好ましく、1.35V以下に設定することがより好ましく、1.3V以下に設定することが更に好ましい。
なお、本開示において、Ag/AgI参照電極の電位とは、Iの濃度が1Mのときの電位を意味する。AgI表面のIの濃度が1Mから変化した場合、ネルンストの式から容易に補正できる。例えば、Iの濃度が2Mになった場合、Ag/AgIの参照電極の電位は+40.7mVになるため、制御電位は40.7mV低い値に設定する必要があり、具体的には1.39V以下に設定すればよい。
また、「正極の充電電位を、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.43V以下に設定する」とは、原則的に、正極の充電電位を1.43V以下として電池を充電することを意味し、正極の充電電位が1.43Vを超えることも許容される。例えば、後述するリップルノイズ等の影響により、正極の充電電位が1.43Vを超えることが避けられない場合等には、正極の充電電位が1.43Vを超えることもあり得る。
正極の充電電位を制御する場合、参照電極は正極の近くに配置することが好ましい。これは、参照電極と正極の距離が遠い場合、距離の長さに応じて電解液抵抗(IRドロップ)が起きるため、セル内の正極電解液の正確な電位を測定することが難しくなる。
なお、電池システムにおける正極の充電電位は、充電電圧ではない。充電電位とはある基準となる電位を持つ電極に対して示す電圧である。充電電圧は負極と正極の電位の差である。充電電位は基準になる一定の電位をベースにしているため、電位一定と言えば基準電極に対して一定の値とみなせる。しかし、負極と正極間の充電電圧の場合は負極と正極が同じように電位変動した場合は、電圧は見かけ上一定となる。したがって、正極の充電電位は充電電圧によって決まるものではなく、基準となる正極用参照電極の電位に対して計測する必要がある。
例えば、制御部は、正極の充電電位が1.43V(vs.Ag/AgI)を超えない条件で、設定電圧に達するまで定電流充電を行い、設定電圧に達した後は定電圧充電を行うように電池システムを制御する。
また、制御部は、正極の充電電位を、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.5V以下に制御することが好ましい。正極の充電電位を1.5V(vs.Ag/AgI)以下に制御することにより、正極(特に、炭素電極)の劣化が抑えられる傾向にある。また、正極電解液がヨウ素分子に対する良溶媒としてエタノールを含有する場合には、正極の充電電位を1.5V(vs.Ag/AgI)以下に制御することにより、エタノールの分解がより抑制される傾向にある。
なお、「正極の充電電位を、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.5V以下に制御する」とは、正極の充電電位を1.5V以下として電池の充電を行うことを意味する。
例えば、制御部は、後述するリップルノイズ等の影響により、正極の充電電位が1.5V(vs.Ag/AgI)を超える場合には、高周波フィルタ等により超過分をカットするように電池システムを制御する。後述するリップルノイズが重畳しても正極の充電電位が1.43V〜1.5V(vs.Ag/AgI)の範囲に収まる場合、制御部は、特段の制御を行わなくてもよい。これは、前述した式(3)で表されるIO の生成反応は、リップルノイズのような高周波信号に追随し難いと考えられるためである。
また、電池システムでは、正極の充電電位を、Ag/AgI参照電極の電位を基準として1.48V以下に制御することが好ましく、1.46V以下に制御することがより好ましく、1.44V以下に制御することが更に好ましく、1.43V以下に制御することが特に好ましい。
正極の充電電位が1.43Vを超える条件で電池システムを運用する場合、運用期間中、サンプリング部は正極電解液を定期的にサンプリングしてもよく、濃度調整部は、正極への電解液の追加、又はプロピレンカーボネート等のヨウ素分子に対する良溶媒などの追加を行い、正極電解液に含有される成分の濃度を調整してもよい。
また、正極の充電電位を、Ag/AgBr参照電極の電位を基準とする場合には、Ag/AgIとAg/AgBrの電位差が0.223Vであることを勘案し、補正することで同様なことを適用できる。具体的には、正極の劣化を抑制する点から、Ag/AgBr参照電極の電位を基準として正極の充電電位を1.5V未満に設定することが好ましく、1.4V以下に設定することがより好ましく、1.23V以下に設定することが更に好ましい。
[フロー電池システムの一例]
図1は、フロー電池システムの一例を示す構成図である。フロー電池システムは、正極1aと、負極1bと、正極1a及び負極1bを隔てるセパレータ2と、各電極と電子の授受を行う双極板5と、双極板5と接触した集電板9と、を備えるフロー電池用セルを備える。さらに、図1におけるフロー電池システムは、フロー電池用セルとともに、正極電解液10aを貯留する正極電解液貯留部11aと、負極電解液10bを貯留する負極電解液貯留部11bと、送液ポンプ12と、循環経路13と、電源14と、外部負荷15と、作用電極17と、Ag/AgX参照電極16と、を備える。フロー電池システムでは、正極電解液10aは、循環経路13を通り、正極電解液貯留部11aに貯留される。また、負極電解液10bは、循環経路13を通り、負極電解液貯留部11bに貯留される。このようにして、充放電反応中には、正極電解液10a及び負極電解液10bが、送液ポンプ12を作動させることで、それぞれ正極1a及び負極1b内に流通し、正極電解液貯留部11a及び負極電解液貯留部11bに再び戻ってくるサイクルを繰り返す。充放電を行う際の制御部(図示せず)による電気的な制御は、電源14及び外部負荷15を用いて行われる。さらに、図1に示すように、作用電極17及びAg/AgX参照電極16を正極電解液貯留部11a内に配置して正極電解液10aに接触させ、Ag/AgX参照電極16に対する作用電極17の電位を測定し、参照電極に対する電解液の電位をモニタリングすることにより、フロー電池の充電深度(SOC)を容易に管理することができる。
Ag/AgX参照電極は、正極電解液貯留部11a内に配置される構成であってもよく、負極電解液貯留部11b内に配置される構成であってもよく、正極電解液貯留部11a内及び負極電解液貯留部11b内の両方に配置される構成であってもよい。電池が大きく劣化している場合、自己放電の大きな活物質を用いている場合等を除き、基本的に正極と負極のSOCはほぼ同じであるため、一方のSOCを把握すればすむことが多い。また、Ag/AgX参照電極と接触しない電解液には過剰の活物質が含まれていてもよい。但し、一方の電極における活物質の酸化還元反応が金属固体状態(Zn、Fe、Ti、Ag等)を経由し、その電極の一部でも活物質が金属固体状態で存在する場合、参照電極に対する電解液の電位は、ほぼ一定の電位を示すことから、SOCをモニタリングすることが困難となる。そのため、対極側における参照電極に対する電解液の電位のSOCをモニタリングすることが好ましい。この場合の対極における活物質の酸化還元反応は、金属固体状態を経由しないことを想定している。例えば、正極活物質としてヨウ素分子及びヨウ素イオンの少なくとも一方を含む正極電解液、並びに、負極活物質として亜鉛及び亜鉛イオンの少なくとも一方を含む負極電解液を用いる場合、Ag/AgX参照電極は、正極電解液貯留部11a内に配置される構成が好ましい。
[フロー電池システムの他の一例]
図2は、フロー電池システムの他の一例を示す構成図である。図2におけるフロー電池システムは、Ag/AgX参照電極16を正極電解液貯留部11aではなく、正極室内に配置したものである。これにより、正極の電位をモニタリングできるため、正極活物質が正極の電位に対して敏感な場合、例えば、正極活物質が分解等してしまう場合、正極単独の電位で充電終了条件を制御できる構成となる。これは負極側も同様に適用できる。
Ag/AgX参照電極は、正極電解液が循環する循環経路に配置されていてもよく、負極電解液が循環する循環経路に配置されていてもよい。
[発電システム]
本開示の発電システムは、発電装置と、前述の本開示の電池システムと、を備える。本開示の発電システムは、電池システムと発電装置とを組み合わせることで、電力変動を平準化及び安定化したり、電力の需給を安定化したりすることができる。
発電システムは、発電装置を備える。発電装置としては、特に限定されず、再生可能エネルギーを用いて発電する発電装置、水力発電装置、火力発電装置、原子力発電装置等が挙げられ、中でも再生可能エネルギーを用いて発電する発電装置が好ましい。
再生可能エネルギーを用いた発電装置は、気象条件等によって発電量が大きく変動するが、電池システムと組み合わせることで変動する発電電力を平準化して電力系統に平準化した電力を供給することができる。
再生可能エネルギーとしては、風力、太陽光、波力、潮力、流水、潮汐、地熱等が挙げられるが、風力又は太陽光が好ましい。
風力、太陽光等の再生可能エネルギーを用いて発電した発電電力は、高電圧の電力系統に供給する場合がある。通常、風力発電及び太陽光発電は、風向、風力、天気等の気象によって影響を受けるため、発電電力は一定とならず、大きく変動する傾向にある。一定ではない発電電力を高電圧の電力系統にそのまま供給すると、電力系統の不安定化を助長するため好ましくない。本実施形態の発電システムは、例えば、電池システムの充放電波形を発電電力波形に重畳させることで、目標とする電力変動レベルまで発電電力波形を平準化させることができる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されない。
[実施例1]
(AgI電極の作製)
ヨウ化ナトリウム(和光純薬工業株式会社)を精製水に溶解し、1Mヨウ化ナトリウム水溶液を調製した。この水溶液をビーカーセルに入れ、作用極にAgワイヤ電極、対極に白金コイル電極、参照電極にAg/AgCl(飽和KCl溶液中)参照電極(ビーエーエス株式会社)を用いて、−0.5V〜0V(vs.Ag/AgCl)の電位範囲にて25mVs−1の掃引速度でサイクリックボルタモグラムを10サイクル測定した。その後、Agワイヤ電極を繰り返し精製水で洗浄後、風乾した。Ag表面は黄色に変色していた。これにより、Agワイヤ表面にAgIが形成されたAg/AgI参照電極を作製した。なお、Agワイヤ電極の電位はAg/AgCl参照電極に対して−0.378Vである。
(電解液の調製)
ヨウ化亜鉛(和光純薬工業株式会社)を水に溶解し、正極電解液として1Mヨウ化亜鉛水溶液20mLを調製し、かつ、負極電解液として1Mヨウ化亜鉛水溶液20mLを調製した。
(フロー電池の評価)
フロー電池用セルを用い、フロー電池として評価した。エチレンプロピレンゴム製ガスケット、カーボンフェルト(東洋紡株式会社、XF30A、面積:5cm、厚さ:4.3mm)を用いた。正極の集電体にはカーボンプラスチック、負極の集電体にはZnホイル(アルドリッチ社、厚さ:0.25mm)を用いた。セパレータにはナフィオン212(アルドリッチ社)を用いた。正極電解液及び負極電解液は約7mL・m−1にて循環した。充放電試験装置はBiologic−BCS−815(Biologic社)を用いた。電流値は0.05A(10 mA・cm−2)にて0V〜1.6Vにて充放電試験を行った。正極電解液用のタンクに、前述のようにして作製した5mm×10cmのAg/AgI参照電極を浸し、正極電解液のAg/AgI電極に対する電位を充放電試験中にモニタリングした。結果を図3に示す。このように1サイクル目の電位を測定することで、その後の電池試験中、電解液の電位を測定するのみで電池のSOCを算出できる。1ヶ月、Ag/AgI参照電極を電解液に入れたまま電池を放置後、再度測定したが、同様なSOC−電位曲線が得られたことから、長期間にわたってAg/AgI参照電極が安定であることが分かった。このため、実施例1のフロー電池では、長期間にわたって参照電極の電位に対する電解液の電位を安定して測定可能である。
[実施例2]
(AgBr電極の作製)
臭化ナトリウム(和光純薬工業株式会社)を精製水に溶解し、1M臭化ナトリウム水溶液を調製した。この水溶液をビーカーセルに入れ、作用極にAgワイヤ電極、対極に白金コイル電極、参照電極にAg/AgCl(飽和KCl溶液中)参照電極(ビーエーエス株式会社)を用いて、−0.7V〜0.2V(vs.Ag/AgCl)の電位範囲にて25mVs−1の掃引速度でサイクリックボルタモグラムを10サイクル測定した。その後、Agワイヤ電極を繰り返し精製水で洗浄後、風乾した。Ag表面は白色に変色していた。これにより、Agワイヤ表面にAgIが形成されたAg/AgI参照電極を作製した。なお、Agワイヤ電極の電位はAg/AgCl電極に対して−0.293Vである。
(電解液の調製)
臭化亜鉛(和光純薬工業株式会社)を水に溶解し、正極電解液として1M臭化亜鉛水溶液20mLを調製し、かつ、負極電解液として1M臭化亜鉛水溶液20mLを調製した。
(フロー電池の評価)
フロー電池用セルを用い、フロー電池として評価した。エチレンプロピレンゴム製ガスケット、カーボンフェルト(東洋紡株式会社、XF30A、面積:5cm、厚さ:4.3mm)を用いた。正極の集電体にはカーボンプラスチック、負極の集電体にはZnホイル(アルドリッチ社、厚さ:0.25mm)を用いた。セパレータにはナフィオン212(アルドリッチ社)を用いた。正極電解液及び負極電解液は約7mL・m−1にて循環した。充放電試験装置はBiologic−BCS−815(Biologic社)を用いた。電流値は0.05A(10 mA・cm−2)にて0V〜1.6Vにて充放電試験を行った。正極電解液用のタンクに、前述のようにして作製した5mm×10cmのAg/AgBr参照電極を浸し、正極電解液のAg/AgBr電極に対する電位を充放電試験中にモニタリングした。1ヶ月、参照電極を電解液に入れたまま電池を放置後、再度測定したが、同様なSOC−電位曲線が得られたことから、長期間にわたってAg/AgBr参照電極が安定であることが分かった。このため、実施例2のフロー電池では、長期間にわたって参照電極の電位に対する電解液の電位を安定して測定可能である。
[比較例1]
参照電極にAg/AgCl参照電極(飽和KCl水溶液、BAS社)を用いた。SOC100%における正極電解液の電位は0.651V vs.Ag/AgClであった。次に、参照電極を正極電解液に接触させたまま電池を1ヶ月放置後、再度測定したところ、SOC100%における正極電解液の電位は1.03V vs.Ag/AgClであり、また、Ag/AgCl参照電極内に沈殿物が見られた。この沈殿物が見られた参照電極について、新品のAg/AgCl(飽和KCl水溶液)参照電極に対する電位を測定したところ、−0.38Vであった。Iイオンが参照電極ガラス内に侵入したために電位が変化したと考えられ、Ag/AgCl参照電極は長期安定性にかけることが分かった。
1a 正極
1b 負極
2 セパレータ
5 双極板
9 集電板
10a 正極電解液
10b 負極電解液
11a 正極電解液貯留部
11b 負極電解液貯留部
12 送液ポンプ
13 循環経路
14 電源
15 外部負荷
16 Ag/AgX参照電極
17 作用電極

Claims (12)

  1. 正極電解液と、負極電解液と、前記正極電解液及び前記負極電解液の少なくとも一方の電位を測定する電位測定部と、を備え、
    前記正極電解液及び前記負極電解液の少なくとも一方は、臭化物イオン(Br)又はヨウ化物イオン(I)である物質Xを含み、前記電位測定部はAg/AgX参照電極を用いて前記物質Xを含む電解液の電位を測定する電池。
  2. 前記正極電解液と接する正極と、前記負極電解液と接する負極と、前記正極電解液を貯留する正極電解液貯留部と、前記負極電解液を貯留する負極電解液貯留部と、前記正極と前記正極電解液貯留部との間で前記正極電解液を循環させ、前記負極と前記負極電解液貯留部との間で前記負極電解液を循環させる送液部と、をさらに備えるフロー電池である請求項1に記載の電池。
  3. 前記電位測定部は、前記正極電解液貯留部及び前記負極電解液貯留部の少なくとも一方に配置されている請求項2に記載の電池。
  4. 前記電位測定部は、前記正極及び前記負極が配置されたセル内に配置されている請求項2又は請求項3に記載の電池。
  5. 前記物質Xはヨウ化物イオンであり、前記電位測定部はAg/AgI参照電極を用いてヨウ化物イオンを含む電解液の電位を測定する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電池。
  6. 前記正極電解液がヨウ化亜鉛、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化水素、ヨウ化銀、四ヨウ化炭素、三ヨウ化窒素、テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージド、ピロリジニウムヨージド、スルフォニウムヨージドから選ばれる少なくとも一種のヨウ化化合物を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電池。
  7. 前記物質Xは臭化物イオンであり、前記電位測定部はAg/AgBr参照電極を用いて臭化物イオンを含む電解液の電位を測定する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電池。
  8. 前記負極電解液が負極活物質として亜鉛及び亜鉛イオンの少なくとも一方を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電池。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の電池と、
    前記電池の充放電を制御する制御部と、
    を備える電池システム。
  10. 前記正極電解液は、前記物質Xとしてヨウ化物イオン(I)を含み、
    前記制御部は、参照電極Ag/AgI(1M I濃度)の電位を基準として前記正極の充電電位を1.5V以下に制御する請求項9に記載の電池システム。
  11. 前記正極電解液は、前記物質Xとしてヨウ化物イオン(I)を含み、
    前記制御部は、参照電極Ag/AgI(1M I濃度)の電位を基準として前記正極の充電電位を1.43V以下に設定する請求項9又は請求項10に記載の電池システム。
  12. 発電装置と、
    請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載の電池システムと、を備える発電システム。
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