JPWO2018016591A1 - 二次電池、二次電池システム、正極電解液及び発電システム - Google Patents

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祐一 利光
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渉太 伊藤
渉太 伊藤
杉政 昌俊
昌俊 杉政
酒井 政則
政則 酒井
北川 雅規
雅規 北川
明博 織田
明博 織田
修一郎 足立
修一郎 足立
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Abstract

正極と、負極と、正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方とニトリル基を有する化合物とを含有する正極電解液と、負極活物質を含有する負極電解液と、を備える二次電池。

Description

本発明は、二次電池、二次電池システム、正極電解液及び発電システムに関するものである。
二次電池の一種であるフロー電池は、MWh級の大規模蓄電が可能であり、かつ、コストパフォーマンスに優れていると言われており、再生可能エネルギー分野、スマートシティー分野等での適用が期待されている。
フロー電池の中でも、バナジウムイオン系のフロー電池(V系フロー電池)は実証プラントレベルで運用されている。しかし、V系フロー電池はレアメタルのバナジウムを使用するため、コストの面で課題が大きいとされている。
一方、コスト、エネルギー密度、温度稼動域等の点で有利と言われる新しいフロー電池が提案されている。具体的には、負極用電解液に負極活物質として亜鉛金属及び亜鉛イオンを含有する電解液を用い、正極用電解液に正極活物質としてヨウ素イオン(I)を含有する電解液を用い、ヨウ素イオンの反応を利用するフロー電池(Zn/I系フロー電池)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
Zn/I系フロー電池の正極活物質及び負極活物質はレアメタルであるバナジウムに比べ安価であるため、上記の正極活物質及び負極活物質を用いたフロー電池は、V系フロー電池に比べ低コスト化を図ることができる。
米国特許出願公開第2015/0147673号明細書
しかしながら、正極用電解液中のヨウ化物イオン(I)の酸化反応に伴い、電極表面へヨウ素皮膜が析出し、このヨウ素皮膜が厚膜化することで高抵抗化し酸化電流が低下して二次電池の出力が低下するおそれがある。
本発明の一形態は、高出力である二次電池及び二次電池システム、これらの二次電池及び二次電池システムに使用可能な正極電解液並びにこの二次電池システムを備える発電システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 正極と、負極と、正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方とニトリル基を有する化合物とを含有する正極電解液と、負極活物質を含有する負極電解液と、を備える二次電池。
<2> 前記負極電解液は、前記負極活物質として亜鉛及び亜鉛イオンの少なくとも一方を含有する、<1>に記載の二次電池。
<3> 前記正極電解液が、前記ニトリル基を有する化合物以外のヨウ素分子に対する良溶媒を更に含有する、<1>又は<2>に記載の二次電池。
<4> 前記正極電解液を貯留する正極電解液貯留部と、前記負極電解液を貯留する負極電解液貯留部と、前記正極と前記正極電解液貯留部との間で前記正極電解液を循環させ、前記負極と前記負極電解液貯留部との間で前記負極電解液を循環させる送液部と、を更に備えるフロー電池である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の二次電池。
<5> 前記正極電解液をサンプリングするサンプリング部を更に備える、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の二次電池。
<6> 前記サンプリング部によりサンプリングされた正極電解液を分析し、分析結果に基づいて前記正極電解液に含有される成分の濃度を調整する濃度調整部を更に備える、<5>に記載の二次電池。
<7> 前記正極電解液のヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度を計測する濃度計測部を更に備える、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の二次電池。
<8> 前記濃度計測部は前記正極電解液のヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度に基づく電位を計測する電位計測部であり、前記電位計測部により計測された電位に基づいて充電状態が推定される、<7>に記載の二次電池。
<9> 前記正極の電位を測定するための正極用参照電極を更に備える、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の二次電池。
<10> 充放電が制御され、前記正極の充電電位がAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定される、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の二次電池。
<11> 充放電が制御され、前記正極の充電電位がAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御される、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の二次電池。
<12> <1>〜<9>のいずれか1つに記載の二次電池と、充放電を制御して前記正極の充電電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定する制御部と、を備える二次電池システム。
<13> <1>〜<9>のいずれか1つに記載の二次電池と、充放電を制御して前記正極の充電電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御する制御部と、を備える二次電池システム。
<14> 前記制御部は、前記正極の充電電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御する、<12>に記載の二次電池システム。
<15> ヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方と、ニトリル基を有する化合物とを含有する正極電解液。
<16> 発電装置と、<12>〜<14>のいずれか1つに記載の二次電池システムと、を備える発電システム。
<17> 前記発電装置は、再生可能エネルギーを用いて発電する、<16>に記載の発電システム。
本発明の一形態によれば、高出力である二次電池及び二次電池システム、これらの二次電池及び二次電池システムに使用可能な正極電解液並びにこの二次電池システムを備える発電システムを提供することができる。
一実施形態の二次電池システムの構成図である。 一実施形態のフロー電池システムの構成図である。 一実施形態の発電システムの一例を示す構成図である。 風力発電の発電電力短時間波形の一例を示す図である。 実施例1において実施した、ノーマルパルスボルタンメトリーの電位波形を示すグラフである。 実施例1におけるノーマルパルスボルタモグラム(電流電位曲線)である(パルス幅50ms)。 実施例1において実施した、リバースパルスボルタンメトリーの電位波形を示すグラフである。 実施例1におけるリバースパルスボルタモグラム(電流電位曲線)である(初期電位0.50V、0.55V及びパルス幅50ms)。 実施例1におけるリバースパルスボルタモグラム(電流電位曲線)であり、電解液中に含有するアセトニトリルの効果を示したグラフである(初期電位0.60V及びパルス幅50ms)。 実施例1におけるリバースパルスボルタモグラムである(初期電位0.90V〜1.10V及びパルス幅50ms)。 実施例1におけるリバースパルスボルタモグラム(電流電位曲線)である(初期電位1.40V、1.50V及びパルス幅50ms)。 実施例2におけるノーマルパルスボルタモグラム(電流電位曲線)である(パルス幅50、500及び5000ms)。 実施例2におけるノーマルパルスボルタモグラム(電流電位曲線)であり、電解液中に含有するアセトニトリルの効果を示したグラフである(パルス幅5000ms)。 一実施形態のフロー電池システムの電極反応を示す模式図である。 実施例3において実施した、フロー電池の正極及び負極の電流電位曲線である。 電解液の吸収スペクトルの一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
また、本明細書において、「含有率」とは、特に記載がなければ、各電解液の全量を100質量%としたときの、各成分の質量%を表す。
また、本明細書において、「vol%」とは、特に記載がなければ、各電解液の全量を100体積%としたときの、各成分の体積%を表す。
また、本明細書に記載された具体的かつ詳細な内容の一部又は全てを利用せずとも本発明を実施可能であることは、当業者には明らかである。また、本発明の側面をあいまいにすることを避けるべく、公知の点については詳細な説明又は図示を省略する場合もある。
本明細書において、「ヨウ素イオン」は、I及びI の少なくとも一方を意味する。
〔二次電池〕
本発明の一実施形態の二次電池は、正極と、負極と、正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方とニトリル基を有する化合物とを含有する正極電解液と、負極活物質を含有する負極電解液と、を備える。
本実施形態の二次電池では、正極電解液がニトリル基を有する化合物を含有する。そのため、Iの酸化反応により電極表面に析出するI皮膜(ヨウ素皮膜)が剥離されやすくなり、I皮膜の薄膜化が可能となる。これにより、I皮膜が抵抗となることに起因する酸化電流の低下が抑制され、ニトリル基を有する化合物を用いない場合と比較して酸化電流を向上させることができる。したがって、二次電池の高出力化を図ることができる。
さらに、二次電池は、充放電が制御され、正極の充電電位がAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定される構成であることが好ましい。これにより、後述の第1実施形態の二次電池システムと同様、IO の生成が抑制でき、可逆的に充放電する際のヨウ素イオン及びヨウ素分子の合計濃度を維持して正極放電容量及び正極充電容量の低下が抑えられ、サイクル耐久性を向上させることができる。したがって、実用性に優れる充電条件を満たす二次電池を提供することができる傾向にある。
また、二次電池は、充放電が制御され、正極の充電電位がAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御される構成であることが好ましい。これにより、後述の第2実施形態の二次電池システムと同様、正極(特に、炭素電極)の劣化を抑制することができ、また、正極電解液がヨウ素分子に対する良溶媒であるエタノールを含有する場合に、エタノールの分解を抑制することができる。
本実施形態の二次電池における各構成の具体例としては、後述する二次電池システムと同様であるため、その説明を省略する。
<第1実施形態>
〔二次電池システム〕
本発明の第1実施形態の二次電池システムは、正極と、負極と、正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方とニトリル基を有する化合物とを含有する正極電解液と、負極活物質を含有する負極電解液と、充放電を制御して正極の充電電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定する制御部と、を備える。すなわち、二次電池システムは、二次電池における正極の充電電位を、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定する制御部を備えるシステムである。
また、二次電池システムは、正極の電位を計測する正極用参照電極を更に備えていてもよい。
以下、二次電池システムにて、正極の充電電位が、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05Vを超える場合の問題点について記載する。
まず、二次電池システムにて、正極電解液は正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方を含有する。このため、以下の式(1)及び(2)に示す充電反応により、正極にてヨウ化物イオン(I)が酸化されてI 及びIが通常生成され、生成されたI 及びIは式(1)及び(2)に示す放電反応により、正極にて還元されてIとなる。
3I⇔I +2e (1)
2I⇔I+2e (2)
二次電池システムでは、正極の充電電位が、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05Vを超える場合、上記式(1)及び(2)で示す充電反応とともに以下式(3)で示すIO の生成反応が生じることが推測される。
+3HO→IO +6H+6e (3)
上記式(3)で示す反応は不可逆な反応であると報告されており、逆反応の反応速度は極めて遅い(文献1:P. Beran, and S. Bruchenstein, Voltammetry of Iodine(I) Cholride, Iodine and Iodate at Rotated Platinum Disk and Ring-Disk Electrodes, Analytical chemistry, 40, 1044 (1968).)。
また、以下の式(4)で表されるDushman反応により、上記式(3)で生成されたIO からIが生成される。
IO +5I+6H→3I+3HO (4)
更に、以下の式(5)は、上記式(3)及び式(4)の全反応(式(3)+式(4))として求められる。
+6HO→2IO +12H+10e (5)
上記文献1によれば、上記式(4)の化学反応速度は上記式(3)の電気化学反応に比べ速く、式(3)及び式(4)を構成反応とする式(5)の律速過程は、式(3)の電気化学反応である。このため、正極の充電電位が、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05Vを超える場合、上記式(3)〜式(5)の反応が生じていると推測される。
このため、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05Vを超える正極充電電位で充電が繰り返される場合、正極の充電反応により式(3)に基づいてIO が生成される。IO は式(3)の逆反応である放電反応の反応速度が遅く、Iに非常に戻りにくい。
更に、式(3)に基づき生成されたIO は、式(4)の反応により、電解液中のIと反応し、正極での電子の授受を伴わずに電解液中のIが消費される。
また、式(3)及び式(4)の全反応である式(5)に示す反応により、Iが反応してIO が生成されるが、式(3)に示す反応と同様に、式(5)に示す反応も不可逆反応である。このため、生成されるIO は式(5)の逆反応である放電反応の反応速度が遅く、Iに非常に戻りにくいことが推測される。
したがって、1.05Vを超える正極充電電位で充電が繰り返される場合、放電反応に寄与しないIO の割合が増加し、かつI及びIの濃度の合計が低下することによって、しだいに二次電池システムは正極放電容量及び正極充電容量が低下するという問題がある。
一方、本実施形態の二次電池システムは、充放電を制御して正極の充電電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定する制御部を備えている。これにより、正極の充電電位を、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定でき、二次電池システムの充電時にIO の生成反応を抑制できる。IO の生成を抑制することで、可逆的に充放電する際のヨウ素イオン及びヨウ素分子の合計濃度を維持して正極放電容量及び正極充電容量の低下が抑えられ、サイクル耐久性を向上させることができる。したがって、本実施形態では、実用性に優れる充電条件を満たす二次電池システムを提供することができる。
さらに、本実施形態の二次電池システムでは、正極電解液がニトリル基を有する化合物を含有する。そのため、Iの酸化反応により電極表面に析出するI皮膜(ヨウ素皮膜)が剥離されやすくなり、I皮膜の薄膜化が可能となる。これにより、I皮膜が抵抗となることに起因する酸化電流の低下が抑制され、ニトリル基を有する化合物を用いない場合と比較して酸化電流を向上させることができる。したがって、二次電池システムの高出力化を図ることができる。
なお、二次電池システムにおける正極の充電電位は、充電電圧とは異なる。充電電位とは、基準となる一定の電位を持つ基準電極(参照電極)に対する電位差を示すものである。一方、充電電圧とは、負極と正極との間の電位差を示すものである。充電電位は、基準となる一定の電位に基づいているため、電位一定の場合には、基準電極(参照電極)の電位に対して一定の値とみなせる。しかし、負極と正極との間の電位差である充電電圧は、負極と正極とが同じように電位変動した場合には、電圧は見かけ上一定となる。したがって、正極の電位は充電電圧によって決まらないため、基準電極(参照電極)の電位に対して計測する必要がある。
(正極電解液の構成)
二次電池システムは、正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方を含有する正極電解液を備える。正極電解液は、ヨウ素イオンを与えるヨウ素化合物(以下、「ヨウ素化合物」ともいう)及びヨウ素分子から選択される少なくとも1種が液状媒体に溶解又は分散されたものであることが好ましい。
二次電池システムが備える正極電解液は、正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方を含有する。すなわち、正極電解液は、I、I 及びIの少なくともいずれか1種を含有すればよい。
ヨウ素イオン及びヨウ素分子は、正極電解液に溶解した状態であっても固体で分散した状態であってもよく、溶解した状態であることが好ましい。IはIと反応してI を形成するため、IとIの比率をあらかじめ調整することが好ましい。
また、正極電解液は、ヨウ素化合物を含有していてもよく、ヨウ素化合物としては、CuI、ZnI、NaI、KI、HI、LiI、NHI、BaI、CaI、MgI、SrI、CI、AgI、NI、テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージド、ピロリジニウムヨージド、スルフォニウムヨージド等が挙げられる。
ヨウ素イオンは、正極電解液中に溶解していることが好ましく、液状媒体として水を用いる場合、ヨウ素化合物としては、NaI、KI及びNHIの少なくともいずれかであることが好ましい。NaI、KI又はNHIは水への溶解度が高いため、NaI、KI及びNHIの少なくともいずれかを用いることで、二次電池のエネルギー密度をより向上させることが可能である。
なお、例えば、CuIは正極電解液中でCuをIの対イオンとして生じさせる。Cu/Cu2+酸化還元系の標準酸化還元電位はI/I及びI/I 系の標準酸化還元電位よりも低い。このため、ヨウ素化合物としてCuIを用いる場合には、Cu/Cu2+系と、I/I及びI/I 系との混成電位となって、I/I及びI/I 系の正極電位の低下が顕在化しない条件とすることが好ましい。
また、正極電解液は、ヨウ素イオン及びヨウ素分子(I、I 及びI)以外の酸化還元物質を含有していてもよい。ヨウ素イオン及びヨウ素分子以外の酸化還元物質としては、I/I及びI/I 系との混成電位を形成してI/I及びI/I 系の正極電位の低下が顕在化しないものが好ましい。
ヨウ素イオン及びヨウ素分子以外の酸化還元物質としては、クロム、バナジウム、亜鉛、キノン化合物、コバルト酸リチウム、マンガン酸ナトリウム、ニッケル酸リチウム、コバルト−ニッケル−マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム等が挙げられる。
(ニトリル基を有する化合物)
二次電池システムは、ニトリル基を有する化合物を含有する正極電解液を備える。これにより、二次電池システムの高出力化を図ることができる。
ニトリル基を有する化合物としては、モノニトリル、ジニトリル、3以上のニトリル基を有するポリニトリル等が挙げられる。ニトリル基を有する化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、シクロブタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、ナフトニトリル、フェニルアセトニトリル等、これらの誘導体などが挙げられる。モノニトリルの誘導体としては、ハロゲン化モノニトリル、アルキル化モノニトリル等が挙げられる。中でも、アセトニトリルが好ましい。
ジニトリルとしては、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、シクロブタンジカルボニトリル、シクロヘキサンジカルボニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、テレフタロニトリル、ナフタレンジカルボニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、3,3’−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、4,4’−オキシジベンゾニトリル等、これらの誘導体などが挙げられる。ジニトリルの誘導体としては、ハロゲン化ジニトリル、アルキル化ジニトリル等が挙げられる。
ポリニトリルとしては、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、1,3,5−シクロヘキサントリカルボニトリル、1,3,5−ベンゼントリカルボニトリル、1,2,3−トリス(2−シアノエトキシ)プロパン、トリス(2−シアノエチル)アミン、1,2,2,3−プロパンテトラカルボニトリル等、これらの誘導体などが挙げられる。ポリニトリルの誘導体としては、ハロゲン化ポリニトリル、アルキル化ポリニトリル等が挙げられる。
(液状媒体)
正極電解液は、ヨウ素イオンを与えるヨウ素化合物及びヨウ素分子から選択される少なくとも1種が液状媒体に溶解又は分散されたものであることが好ましい。液状媒体とは、室温(25℃)において液体の状態の媒体をいう。液状媒体としては、正極活物質を分散又は溶解可能な媒体であれば特に限定されない。
液状媒体としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶剤;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のエステル系溶剤;N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「ジメチルホルムアミド」ともいう)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、「ジメチルアセトアミド」ともいう)、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル系溶剤;α−テルピネン、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、α−ピネン、β−ピネン、ターピネオール、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン系溶剤;水などが挙げられる。液状媒体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
液状媒体としては、水が好ましい。水を用いることで正極電解液を低粘度化でき、二次電池を高出力化できる傾向にある。
(ヨウ素分子に対する良溶媒)
正極電解液は、更にニトリル基を有する化合物以外のヨウ素分子に対する良溶媒を含有していてもよい。充電反応によりI皮膜が正極に形成されるが、I皮膜が厚くなりすぎると充放電反応が阻害されるおそれがある。このため、I皮膜の薄膜化に寄与するニトリル基を有する化合物とともに正極電解液にヨウ素分子に対する良溶媒が含まれていることにより、正極に形成されるI皮膜がより薄膜化され、I皮膜による充放電反応の阻害がより好適に抑えられる傾向にある。
ヨウ素分子に対する良溶媒としては、アミド、ケトン、エステル、スルホキシド、アルコール、エーテル、ピリジン誘導体等が挙げられ、中でも、酸化電流をより向上させる点から、アミド、ケトン、エステル、スルホキシド及びエーテルが好ましい。また、ヨウ素分子に対する良溶媒としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ヨウ素分子に対する良溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のアミド、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ニコチン酸メチル等のエステル、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド、エタノール、エチレングリコール等のアルコール、ジエチルエーテル等のエーテル、ニコチンアミド、シアノピリジン等のピリジン誘導体などが挙げられる。
ヨウ素分子に対する良溶媒としては、酸化電流を更に向上させる点から、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン及び酢酸エチルからなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
また、ヨウ素分子に対する良溶媒としては、イソヘキサン、イソオクタン等のアルキル、クロロホルム、トリクロロエチレン等のハロゲン化アルキル、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のシクロアルキル、トルエン、o−キシレン、m−キシレン等のアリール、メチルエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート、スルホラン等のスルホン、γ−ブチロラクトン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソランなども挙げられる。
正極電解液中におけるヨウ素分子に対する良溶媒は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより、ヨウ素分子に対する良溶媒に対応する保持時間と、モニターイオンの分子量を測定することで同定可能である。
正極電解液中におけるヨウ素分子に対する良溶媒の含有率は、I皮膜の薄膜化による二次電池システムの高出力化をより好適に図る点から、常温常圧で液体であれば0.1vol%〜50vol%であることが好ましく、1vol%〜50vol%であることがより好ましく、1vol%〜30vol%であることが更に好ましく、2vol%〜25vol%であることが更により好ましく、5vol%〜15vol%であることが特に好ましい。また、前述のヨウ素分子に対する良溶媒の含有率は、I皮膜の薄膜化による二次電池システムの高出力化をより好適に図る点から、常温常圧で固体であれば0.01mol/L〜5mol/Lであることが好ましく、0.1mol/L〜2mol/Lであることがより好ましい。
正極電解液中におけるヨウ素分子に対する良溶媒の含有率は、例えば、ガスクロマトグラフィーを使用し、ヨウ素分子に対する良溶媒の濃度と、ヨウ素分子に対する良溶媒に対応する保持時間における検出量を検量線としてデータを作成し、検量線から算出することで定量可能である。
(ポリマー)
正極電解液は、ヨウ素イオンと錯体を形成するポリマーを含有していてもよい。正極電解液がヨウ素イオンと錯体を形成するポリマーを含有することで、ヨウ素イオンの酸化還元反応中に生じる可能性のあるヨウ素分子の析出が抑制される傾向にある。ヨウ素イオンと錯体を形成するポリマーとしては、ナイロン6、ポリテトラヒドロフラン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ−4−ビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリアクリルアミド、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。これらのポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(支持電解質)
正極電解液は、更に支持電解質を含有していてもよい。支持電解質は、電解液のイオン伝導率を高めるための助剤である。正極電解液が支持電解質を含有することで、正極電解液のイオン伝導率が高まり、二次電池の内部抵抗が低減する傾向にある。
支持電解質としては、液状媒体中で解離してイオンを形成する化合物であれば特に制限されない。支持電解質としては、HCl、HNO、HSO、HClO、NaCl、NaSO、NaClO、KCl、KSO、KClO、NaOH、LiOH、KOH、アルキルアンモニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩、アルキルピペリジニウム塩、アルキルピロリジニウム塩等が挙げられる。支持電解質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ヨウ素を含む塩は、正極活物質と支持電解質とを兼ねることができる。
(pH緩衝剤)
正極電解液は、更にpH緩衝剤を含有していてもよい。pH緩衝剤としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液等が挙げられる。
(導電材)
正極電解液は、更に導電材を含有していてもよい。導電材としては、炭素材料、金属材料、有機導電性材料等が挙げられる。炭素材料及び金属材料は、粒子状であっても繊維状であってもよい。
炭素材料としては、活性炭(水蒸気賦活又はアルカリ賦活);アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛;カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、ハードカーボン、ソフトカーボンなどが挙げられる。
金属材料としては、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の粒子又は繊維が挙げられる。
有機導電性材料としては、ポリフェニレン誘導体等が挙げられる。
これらの導電材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導電材としては、炭素材料粒子が好ましく、活性炭粒子がより好ましい。正極電解液が導電材として活性炭粒子を含有することで、活性炭粒子の表面における電気二重層形成によるエネルギー貯蔵及び放出が可能となり、二次電池のエネルギー密度及び出力密度が向上する傾向にある。
(正極電解液の調製方法)
正極電解液は、正極活物質と必要に応じてその他の成分とを液状媒体に加えることにより調製することができる。正極電解液を調製する際には、必要に応じて加熱を行ってもよい。
(正極電解液の組成)
正極電解液において、ヨウ素化合物及びヨウ素分子の含有率は、1質量%〜80質量%であることが好ましく、3質量%〜70質量%であることがより好ましく、5質量%〜50質量%であることが更に好ましい。ヨウ素化合物及びヨウ素分子の含有率を1質量%以上とすることで、高容量で実用に適した二次電池システムが得られる傾向にある。また、ヨウ素化合物及びヨウ素分子の合計の含有率を80質量%以下とすることで、液状媒体中での溶解性又は分散性が良好なものとなる傾向にある。なお、ヨウ素化合物及びヨウ素分子の含有率とは、正極電解液中におけるヨウ素化合物由来のイオン(例えば、I、I 及びIの対イオン)及びヨウ素分子(I)の合計の含有率を表す。
正極電解液中におけるヨウ素イオン及びヨウ素分子(I、I 及びIの合計)の含有率は、1質量%〜80質量%であることが好ましく、3質量%〜70質量%であることがより好ましく、5質量%〜50質量%であることが更に好ましい。
正極電解液において、ニトリル基を有する化合物の含有率は、特に限定されず、I皮膜の薄膜化による二次電池システムの高出力化をより好適に図る点から、0.1vol%〜50vol%であることが好ましく、1vol%〜50vol%であることがより好ましく、1vol%〜30vol%であることが更に好ましく、2vol%〜25vol%であることが更により好ましく、5vol%〜15vol%であることが特に好ましい。
正極電解液中における二トリル基を有する化合物の含有率は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより、二トリル基を有する化合物の濃度と、二トリル基を有する化合物に対応する保持時間における検出量を検量線としてデータを作成し、検量線から算出することで定量可能である。
(負極電解液の構成)
二次電池システムは、負極活物質を含有する負極電解液を備える。負極活物質としては、反応系の標準酸化還元電位が正極の標準酸化還元電位よりも低い物質であればよい。例えば、正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子のみを用いる場合、負極活物質は、反応系の標準酸化還元電位が正極の標準酸化還元電位である0.536Vよりも低い物質であればよい。例えば、亜鉛、クロム、チタン、バナジウム、鉄、スズ、鉛、ビオロゲン化合物、キノン化合物、Na等の硫黄化合物などが挙げられる。なお、負極活物質はイオンであってもよい。また、負極電解液は、負極活物質が液状媒体に溶解又は分散されているものであることが好ましい。
負極電解液は、負極活物質として亜鉛及び亜鉛イオンの少なくとも一方を含有することが好ましい。例えば、亜鉛を含む化合物の一種である塩化亜鉛は水に対する溶解度が30mol/Lと非常に高い点、亜鉛の溶解析出反応の標準酸化還元電位が−0.76Vと低い点並びに亜鉛及び亜鉛化合物は安価である点から、亜鉛及び亜鉛イオンは負極活物質として好適である。また、亜鉛を含む化合物としては、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられる。
負極電解液は、前述の正極電解液と同様、液状媒体、支持電解質、pH緩衝剤、導電材等を含有していてもよい。使用可能な液状媒体、支持電解質、pH緩衝剤及び導電材については、正極電解液と同様であるため、その説明を省略する。
なお、正極電解液及び負極電解液について、含有される液状媒体、支持電解質、pH緩衝剤及び導電材はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
(負極電解液の調製方法)
負極電解液は、負極活物質と必要に応じてその他の成分とを液状媒体に加えることにより調製することができる。負極電解液を調製する際には、必要に応じて加熱を行ってもよい。
(負極電解液の組成)
負極電解液において、負極活物質(好ましくは亜鉛及び亜鉛を含む化合物の合計)の含有率は、1質量%〜80質量%であることが好ましく、3質量%〜70質量%であることがより好ましく、5質量%〜50質量%であることが更に好ましい。負極活物質の含有率を1質量%以上とすることで、高容量で実用に適した二次電池システムが得られる傾向にある。また、負極活物質の含有率を80質量%以下とすることで、液状媒体中での溶解性又は分散性が良好なものとなる傾向にある。
正極電解液が貯蔵できるエネルギー容量(Ec)と負極電解液が貯蔵できるエネルギー容量(Ea)との比率(Ec/Ea)に特に制限はない。二次電池システムのエネルギー密度を高める観点から、EcとEaとの比率(Ec/Ea)は、0.3〜2.5であることが好ましく、0.5〜2.0であることがより好ましく、0.8〜1.3であることが更に好ましい。
(正極及び負極)
二次電池システムは、正極及び負極を備え、正極及び負極としては、従来公知の二次電池システムに用いられる正極及び負極を用いてもよい。
正極及び負極としては、使用する電位範囲において電気化学的に安定な材質を用いることが好ましい。正極及び負極の形状としては、特に限定されず、メッシュ、多孔体、パンチングメタル、平板等が挙げられる。正極及び負極としては、カーボンフェルト、グラファイトフェルト等のカーボン電極;チタン、亜鉛、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属からなる金属板、金属メッシュ等の金属電極;などが挙げられる。また、ガラス基材上又は高分子基材上に、InSnO、SnO、In、ZnO等の導電材、フッ素ドープ酸化錫(SnO:F)、Sbドープ酸化錫(SnO:Sb)、Snドープ酸化インジウム(In:Sn)、Alドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)、Gaドープ酸化亜鉛(ZnO:Ga)等の不純物がドープされた導電材などを含有する少なくとも1つの層を形成した積層体を、電極として用いることもできる。
正極は、ヨウ化物イオン(I)に対する耐食性を有する電極が好ましい。ヨウ化物イオンに対する耐食性を有する電極としては、チタン等の金属から構成される電極、炭素電極などが挙げられ、コストの点から炭素電極が好ましい。
例えば、負極電解液が亜鉛イオンを含有する場合、負極としては、亜鉛電極、亜鉛メッキした金属から構成される電極、炭素電極などが好ましい。
正極及び負極の表面積を増やして電池の出力を高める点から、正極及び負極の少なくとも一方の形状を、比表面積の大きい多孔体、フェルト、ペーパー等にしてもよい。また、正極及び負極の少なくとも一方の表面にカーボンフェルト、グラファイトフェルト等を配置してもよく、正極及び負極の少なくとも一方は、電解液が透過可能な孔を有し、この孔を介して電子の授受が行われるものであってもよい。
(参照電極)
二次電池システムは、正極の電位を計測するための正極用参照電極を備えていてもよい。なお、二次電池システムでは、正極用参照電極は必須の構成ではなく、必要に応じて正極用参照電極を用いて二次電池システムにおける正極の電位を計測してもよい。
正極用参照電極は標準水素電極電位(standard hydrogen electrode potential)に対する電位に換算可能で、安定した電気化学電位を示せるものであればよい。電気化学電位基準となる参照電極は、電気化学の基本事項として教科書等に示されている(例えば、“Allen J.Bard and Larry R.Faulkner 、「ELECTROCHEMICAL METHODS」p.3、(1980)、John Wiley & Sons, Inc.”)。参照電極としては、Ag/AgCl参照電極、飽和カロメル電極(saturated calomel electrode)等が挙げられ、Ag/AgCl参照電極が好ましい。
参照電極としてAg/AgCl参照電極を用いる場合、例えば、RE−1CP飽和KCl銀塩化銀参照電極(BAS株式会社製)を用いてもよい。
正極用参照電極としては、測定された正極の電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位に換算できるものであれば、Ag/AgCl参照電極に限定されず、他の参照電極を用いてもよい。
また、二次電池システムは負極の電位を測定するための負極用参照電極を更に備えていてもよい。参照電極の設置箇所は、正極に1箇所あればよく、正極及び負極にそれぞれ1箇所あることが好ましく、正極及び負極にそれぞれ複数箇所あることがより好ましい。
(隔壁)
本実施形態の二次電池システムは、正極と負極との間にセパレータ膜として隔壁を更に備える。隔壁としては、二次電池システムの使用条件に耐えうる膜であれば特に制限されず、イオン伝導性高分子膜、イオン伝導性固体電解質膜、ポリオレフィン多孔質膜、セルロース多孔質膜等が挙げられる。
イオン伝導性高分子膜としては、例えば、カチオン交換膜及びアニオン交換膜が挙げられる。市販のカチオン交換膜としては、例えば、商品名Nafion(アルドリッチ社)が挙げられ、市販のアニオン交換膜としては、例えば、商品名セレミオン(旭硝子株式会社)及び商品名ネオセプタ(株式会社アストム)が挙げられる。
(制御部)
二次電池システムは、充放電を制御して正極の充電電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定する制御部を備える。これにより、正極の充電電位を、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定でき、二次電池システムの充電時にIO の生成反応を抑制できる。IO の生成を抑制することで、可逆的に充放電する際のヨウ素イオン及びヨウ素分子(I、I 及びI)の合計濃度を維持して正極放電容量及び正極充電容量の低下が抑えられ、サイクル耐久性を向上させることができる。
なお、「正極の充電電位を、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定する」とは、原則的に、正極の充電電位を1.05V以下として二次電池を充電することを意味し、正極の充電電位が1.05Vを超えることも許容される。例えば、後述するリップルノイズ等の影響により、正極の充電電位が1.05Vを超えることが避けられない場合等には、正極の充電電位が1.05Vを超えることもあり得る。
例えば、制御部は、正極の充電電位が1.05V(vs.Ag/AgCl)を超えない条件で、設定電圧に達するまで定電流充電を行い、設定電圧に達した後は定電圧充電を行うように二次電池を制御する。
また、制御部は、正極の充電電位を、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御することが好ましい。正極の充電電位を1.5V(vs.Ag/AgCl)以下に制御することにより、正極(特に、炭素電極)の劣化が抑えられる傾向にある。また、正極電解液がヨウ素分子に対する良溶媒としてエタノールを含有する場合には、正極の充電電位を1.5V(vs.Ag/AgCl)以下に制御することにより、エタノールの分解がより抑制される傾向にある。
なお、「正極の充電電位を、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御する」とは、正極の充電電位を1.5V以下として二次電池の充電を行うことを意味し、正極の充電電位が1.5Vを超えることは許容されない。
例えば、制御部は、後述するリップルノイズ等の影響により、正極の充電電位が1.5V(vs.Ag/AgCl)を超える場合には、高周波フィルタ等により超過分をカットするように二次電池を制御する。後述するリップルノイズが重畳しても正極の充電電位が1.05V〜1.5V(vs.Ag/AgCl)の範囲に収まる場合、制御部は、特段の制御を行わなくてもよい。これは、前述した式(3)で表されるIO の生成反応は、リップルノイズのような高周波信号に追随し難いと考えられるためである。
また、二次電池システムでは、正極の充電電位を、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V未満に設定することが好ましく、1.0V以下に設定することがより好ましく、0.95V以下に設定することが更に好ましい。
(二次電池システムの構成例)
本実施形態の二次電池システムの構成例について、図1を参照しながら説明する。二次電池システムは図1の構成に限定されるものではない。また、図1における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。なお、正極3、負極4、隔壁5、正極用参照電極6、負極用参照電極7及び制御部は、前述した正極、負極、隔壁、正極用参照電極、負極用参照電極及び制御部であればよいため、その説明を省略する。
二次電池システム50は、図1に示すように、正極電解液反応槽1と、負極電解液反応槽2と、正極3と、負極4と、隔壁5と、正極用参照電極6と、負極用参照電極7と、制御部(図示せず)と、を備える。
正極電解液反応槽1は、正極電解液を貯留する槽であり、負極電解液反応槽2は、負極電解液を貯留する槽である。例えば、図1中の点線の矢印で示される充電反応により、正極電解液反応槽1中のIが酸化されてI 及びIが生成され、負極電解液反応槽2中のX2+(X2+、Xは負極活物質を表す)が還元されてXが生成される。このとき、図1中に示すように、正極3側から負極4側に電子が流れる。
なお、放電反応時には、正極電解液反応槽1中のI 及びIが還元されてIが生成され、負極電解液反応槽2中のXが酸化されてX2+が生成される。このとき、負極4側から正極3側に電子が流れる。
ここで、制御部は、正極の充電電位を、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定するため、二次電池システム50の充電時にIO の生成反応を抑制できる。IO の生成を抑制することで、可逆的に充放電する際のヨウ素イオン及びヨウ素分子の合計濃度を維持して正極放電容量及び正極充電容量の低下が抑えられ、サイクル耐久性を向上させることができる。したがって、実用性に優れる充電条件を満たす二次電池システム50を提供することができる。
さらに、制御部は、リップルノイズ等の影響により、正極の充電電位が1.05Vを超えることが避けられない場合等には、正極の充電電位を、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御することが好ましい。正極の充電電位を1.5V(vs.Ag/AgCl)以下に制御することにより、正極(特に、炭素電極)の劣化が抑えられる傾向にあり、かつ、正極電解液がヨウ素分子に対する良溶媒としてエタノールを含有する場合にはエタノールの分解がより抑制される傾向にある。
〔フロー電池システム〕
本実施形態の二次電池システムは、正極電解液を貯留する正極電解液貯留部と、負極電解液を貯留する負極電解液貯留部と、正極と正極電解液貯留部との間で正極電解液を循環させ、負極と負極電解液貯留部との間で負極電解液を循環させる送液部と、を更に備えるフロー電池システムであってもよい。
(正極電解液貯留部及び負極電解液貯留部)
フロー電池システムは、正極電解液を貯留する正極電解液貯留部及び負極電解液を貯留する負極電解液貯留部を備える。正極電解液貯留部及び負極電解液貯留部としては、例えば、電解液貯留タンクが挙げられる。
(送液部)
フロー電池システムは、正極と正極電解液貯留部との間で正極電解液を循環させ、負極と負極電解液貯留部との間で負極電解液を循環させる送液部を備える。正極電解液貯留部に貯留された正極電解液が送液部を通じて正極が配置された正極室(正極電解液反応槽)に供給され、負極電解液貯留部に貯留された負極電解液が送液部を通じて負極が配置された負極室(負極電解液反応槽)に供給される。
フロー電池システムでは、送液部は例えば、正極室と正極電解液貯留部との間で正極電解液を循環させ、かつ負極室と負極電解液貯留部との間で負極電解液を循環させる循環経路及び送液ポンプを備えていてもよい。
正極室と正極電解液貯留部との間で循環させる正極電解液の量及び負極室と負極電解液貯留部との間で循環させる負極電解液の量は、それぞれ送液ポンプを用いて適宜調整すればよく、例えば、電池スケールに応じて適宜設定することができる。
フロー電池システムでは、前述の二次電池システムと同様、正極の充電電位を、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V未満に設定することが好ましく、1.0V以下に設定することがより好ましく、0.95V以下に設定することが更に好ましい。
一時的に正極の充電電位が1.05Vを超える条件でフロー電池システムを運用する場合、運用期間中、サンプリング部は正極電解液を定期的にサンプリングしてもよく、濃度調整部は、フロー電池に対して、正極電解液の追加、又はヨウ素イオン、ヨウ素分子、ニトリル基を有する化合物、ヨウ素分子に対する良溶媒等の添加剤などの追加を行い、正極電解液に含有される成分の濃度を調整してもよい。
(サンプリング部)
フロー電池システムは、正極電解液をサンプリングするサンプリング部を更に備えていてもよい。サンプリング部にて正極電解液をサンプリングすることで、ヨウ素イオン、ヨウ素分子、ニトリル基を有する化合物、ヨウ素分子に対する良溶媒等の添加剤などの正極電解液に含有される成分の濃度の分析が可能であり、例えば、正極電解液に含有される成分の濃度が規定量、必要量等に比べて不足していないか分析することができる。
サンプリング部は、例えば、正極電解液貯留部に配置されていてもよく、循環経路に配置されていてもよい。また、サンプリング部は、所定の時間毎に正極電解液をサンプリングする構成であってもよい。なお、フロー電池システム以外の二次電池システムも、正極電解液をサンプリングするサンプリング部を更に備えていてもよく、例えば、正極電解液反応槽にサンプリング部が配置されていてもよい。
(濃度調整部)
また、フロー電池システムは、サンプリング部によりサンプリングされた正極電解液を分析し、分析結果に基づいて、正極と正極電解液貯留部との間を循環する正極電解液に含有される成分の濃度を調整する濃度調整部を更に備えていてもよい。フロー電池システムが濃度調整部を備えることで、サンプリング部にてサンプリングした正極電解液について、ヨウ素イオン、ヨウ素分子、ニトリル基を有する化合物、ヨウ素分子に対する良溶媒等の添加剤などの正極電解液に含有される成分の濃度が規定量、必要量等に比べて不足している場合、不足する成分が正極電解液に添加され、正極電解液に含有される成分の濃度を調整することができる。
濃度調整部は、例えば、正極電解液貯留部に貯留されている正極電解液に各成分を添加する構成であってもよく、循環経路を流通する正極電解液に各成分を添加する構成であってもよい。また、正極電解液への添加剤の追加は、フロー電池の運転中に行ってもよく、停止中に行ってもよい。なお、フロー電池システム以外の二次電池システムも、サンプリング部によりサンプリングされた正極電解液を分析し、分析結果に基づいて、正極電解液に含有される成分の濃度を調整する濃度調整部を更に備えていてもよい。二次電池システムにおいて、例えば、正極電解液反応槽に濃度調整部が配置されていてもよい。
(濃度計測部)
フロー電池システムは、正極電解液中のヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度を計測する濃度計測部を有していてもよい。濃度計測部としては、例えば、正極電解液中のヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度に基づく電位を測定する電位計測部が挙げられる。電位計測部は、例えば、ヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度に基づく電位を計測するための集電電極と、電気化学電位の基準となる参照電極とを有し、参照電極基準の電気化学電位を計測する。電気化学電位に関するネルンストの式を用いることにより、計測された参照電極基準の電気化学電位からヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度を求めることができる。集電電極としては、白金電極、グラファイト電極等が挙げられ、参照電極としては、Ag/AgCl電極等が挙げられる。
また、制御部は、濃度計測部により計測された濃度、好ましくは、電位計測部により計測された電位に基づいて充電状態(SOC:State Of Charge)を推定してもよい。例えば、酸化還元物質としてI、I 、及びIのみを考慮した場合、SOCが0%とは、基本的に正極電解液中にI 及びIが含まれず、Iのみとなっている状態を示す。また、SOCが100%とは、基本的に正極電解液中にIが含まれず、I 及びIのみとなっている状態を示す。
濃度計測部は、正極電解液貯留部に配置されていてもよく、正極電解液が循環する循環経路に配置されていてもよい。なお、フロー電池システム以外の二次電池システムも、正極電解液中のヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度を計測する濃度計測部を更に備えていてもよく、例えば、正極電解液反応槽に濃度計測部が配置されていてもよい。
(フロー電池システムの構成例)
次に、本実施形態の二次電池システムの一種であるフロー電池システムの構成例について、図2を参照しながら説明する。フロー電池システムは図2の構成に限定されるものではない。また、図2における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。なお、フロー電池システム100における各構成については、前述した構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
フロー電池システム100は、図2に示すように、正極11と、負極12と、正極用参照電極13と、負極用参照電極14と、隔壁15と、正極電解液16と、正極電解液貯留タンク18と、負極電解液17と、負極電解液貯留タンク19と、送液部として循環経路20、21並びに正極電解液送液ポンプ22及び負極電解液送液ポンプ23と、制御部(図示せず)と、を備える。なお、フロー電池システム100では、ヨウ素イオン及びヨウ素分子が正極電解液に含有され、かつニトリル基を有する化合物についても正極電解液に含有される構成であり、亜鉛イオンが負極電解液に含有される構成である。
図2に示すように、フロー電池システム100は、正極11と、負極12と、隔壁15と、を一つずつ備える単セルを複数備えるセルスタック30を備える。図2では、単セル数が5つであるセルスタック30を示している。なお、単セル数は特に限定されない。また、図2に示すフロー電池システム100では、セルスタック構成の正極11と負極12とに正極用参照電極13及び負極用参照電極14が配置されており、参照電極を用いた電位計測が可能となっている。
フロー電池システム100の充放電は、図示を省略する制御部によって制御される。前述の二次電池システム50と同様、制御部は、正極11の充電電位を1.05V(vs.Ag/AgCl)以下に設定する。また、制御部は、正極11の充電電位を1.5V(vs.Ag/AgCl)以下に制御することが好ましい。さらに、フロー電池システム100では、正極11がI皮膜で覆われることにより流路(例えば循環経路20)が狭められ、正極電解液16のフローそのものが阻害される状況は望ましくない。そこで、正極11にてI皮膜を薄膜化させる点から、正極11の充電電位は1.4V(vs.Ag/AgCl)以下に制御することが好ましい。
フロー電池システム100は、送液部として、正極11が配置された正極電解液反応槽と正極電解液貯留タンク18との間で正極電解液16を循環させ、かつ負極12が配置された負極電解液反応槽と負極電解液貯留タンク19との間で負極電解液17を循環させる循環経路20、21並びに正極電解液送液ポンプ22及び負極電解液送液ポンプ23を備える。
さらに、正極電解液貯留タンク18には、正極電解液16をサンプリングするサンプリング部24と、正極電解液16中のヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度に基づく電位を計測する電位計測部25とが配置されている。
<第2実施形態>
[二次電池システム]
本発明の第2実施形態の二次電池システムは、正極と、負極と、正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方とニトリル基を有する化合物とを含有する正極電解液と、負極活物質を含有する負極電解液と、充放電を制御して正極の充電電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御する制御部と、を備える。なお、第1実施形態と共通する構成については、その説明を省略する。
前述のように、正極の充電電位が1.5Vを越えると正極(特に、炭素電極)が劣化する、添加剤であるエタノールが分解する等の問題がある。このため、正極の充電電位を、1.5V以下に制御することにより、正極(特に、炭素電極)の劣化を抑制することができ、また、正極電解液がヨウ素分子に対する良溶媒であるエタノールを含有する場合に、エタノールの分解を抑制することができる。
正極の充電電位が1.05Vを超える条件で充電を行う場合、前述のように放電反応に寄与しないIO の割合が増加し、かつI及びIの濃度の合計が低下することで、しだいに二次電池システムは正極放電容量及び正極充電容量が低下するという傾向がある。そのため、二次電池システムでは、二次電池システムにおける正極放電容量及び正極充電容量が低下を抑制する点から、サンプリング部にて、所定の時間毎に正極電解液をサンプリングし、必要に応じて濃度調整部は、正極電解液にヨウ素イオンを添加することが好ましい。
正極の充電電位が1.05Vを超える条件で二次電池システムを運用する場合、運用期間中、サンプリング部は正極電解液を定期的にサンプリングしてもよく、濃度調整部は、二次電池システムに対して、正極電解液の追加、又はヨウ素イオン、ヨウ素分子、ニトリル基を有する化合物、エタノール等のヨウ素分子に対する良溶媒等の添加剤などの追加を行い、正極電解液に含有される成分の濃度を調整してもよい。
[発電システム]
本実施形態の発電システムは、発電装置と、上述の二次電池システムと、を備える。本実施形態の発電システムは、二次電池システムと発電装置とを組み合わせることで、電力変動を平準化及び安定化したり、電力の需給を安定化したりすることができる。
発電システムは、発電装置を備える。発電装置としては、特に限定されず、再生可能エネルギーを用いて発電する発電装置、水力発電装置、火力発電装置、原子力発電装置等が挙げられ、中でも再生可能エネルギーを用いて発電する発電装置が好ましい。
再生可能エネルギーを用いた発電装置は、気象条件等によって発電量が大きく変動するが、二次電池システムと組み合わせることで変動する発電電力を平準化して電力系統に平準化した電力を供給することができる。
再生可能エネルギーとしては、風力、太陽光、波力、潮力、流水、潮汐、地熱等が挙げられるが、風力又は太陽光が好ましい。
風力、太陽光等の再生可能エネルギーを用いて発電した発電電力は、高電圧の電力系統に供給する場合がある。通常、風力発電及び太陽光発電は、風向、風力、天気等の気象によって影響を受けるため、発電電力は一定とならず、大きく変動する傾向にある。一定ではない発電電力を高電圧の電力系統にそのまま供給すると、電力系統の不安定化を助長するため好ましくない。本実施形態の発電システムは、例えば、二次電池システムの充放電波形を発電電力波形に重畳させることで、目標とする電力変動レベルまで発電電力波形を平準化させることができる。
なお、前述した本実施形態の二次電池システムをこのような再生可能エネルギー分野に適用する場合、高圧系に電力を供給するため、二次電池システムの単セルあたり、1.05V(vs.Ag/AgCl)を超える充電電位が要求される場合が生じ得る。単セルの正極の充電電位が1.05V(vs.Ag/AgCl)である場合、単セルの全体の充電電圧、すなわち正極と負極との間の電位差は3Vを超える値になる。単セルの全体の充電電圧を3Vとすると、二次電池システムの各セルスタックが20セル直列された構成である場合、各セルスタックの充電電圧は60Vになる。更に、10個のセルスタックが直列されていると、充電電圧は600Vになる。二次電池システムの充電は、風力発電等による交流発電電力をインバータで直流電力に変換して実施される。このため、二次電池システムのセルスタックとインバータの出力との関係において、充電制御電圧の電圧範囲が決まる。
インバータの充電電圧が一定の場合、セルスタックの単セル直列数が少ないと、個々の単セルに印加される充電電圧は大きくなる。逆に、セルスタックの単セル直列数が多いと、個々の単セルに印加される充電電圧は小さくなる。したがって、再生可能エネルギーを用いた発電システムに二次電池システムを設置する場合、二次電池システムの単セルあたりに印加される充電電圧は、インバータ出力及びセルスタックの単セル直列数を基本的パラメータとして決まる。
本実施形態の発電システムの一例を図3に示す。図3は、風力発電分野に二次電池システムを適用した構成図である。図3中、SB(Secondary Battery)は二次電池を示し、PCS(Power Conditioning System)は交流直流変換のインバータ制御系を示す。図3のSB及びPCSが前述した本実施形態の二次電池システムに対応する。大規模蓄電に有利である点から、本実施形態の発電システムにおける二次電池システムはフロー電池システムであることが好ましい。
図3に示す発電電力波形は、風力発電装置によって発電された電力波形の一例である。風力発電の場合は、風の強弱、風向等によって発電電力は大きく変動する。このように変動する電力が送電線等の電力系統に重畳されると、電力系統の安定化に影響する。したがって、風力発電による電力を電力系統に供給する場合、電力系統の電力が変動することを抑制する必要がある。
この変動を抑制するため、発電電力波形の変動を緩和する充放電波形を二次電池システムから出力し、発電電力波形に重畳させることになる。二次電池システムは、風力発電により得られた発電電力を平準化し、安定化された電力として供給する役割を担う。
ここで、図3における風力発電の電力波形をより短い時間スケールで見た場合の電力波形を図4に示す。図4の(a)領域及び(b)領域で示される、比較的長い時間領域における電力波形が見られる一方、(a)領域よりも短時間側、(a)領域と(b)領域との間、(b)領域よりも長時間側の3つの時間領域に、マイクロ秒オーダーからミリ秒オーダーであるパルス状の発電波形が見られる。このとき、二次電池システムは、風力発電電力のある時間幅の目標出力を中心値として、それより下の発電電力の場合は放電により電力を補い、目標出力を上回る場合は発電電力を用いて充電し、目標出力に近づけるように充放電を制御してもよい。
インバータは、直流情報である二次電池の充放電信号と発電電力との間で電力のやり取りを実施するための変換器である。二次電池への充電は、風力発電装置からの交流電力を直流電力に変換して行われる。インバータは、リップルノイズといわれるパルス状の高周波信号が発生しやすい。一般的にそれぞれの周波数帯域に対応できるコンデンサをPCSに設置することで、これらの高周波信号を除去することができる。しかし、これらの対策がなされていないPCSでは、高周波リップル信号が二次電池に印加されることになる。
二次電池の応答速度が、風力発電のPCSの出力変動に全て追随できれば理想であるが、実際は困難である。二次電池の電極界面の電気二重層容量と二次電池の抵抗とによって定義される時定数(CR)の存在により、マイクロ秒オーダーから数十ミリ秒オーダー領域の電力変動の信号には、電池反応が追随できない。図4では、マイクロ秒オーダーからミリ秒オーダー領域の信号が集まり、リップルノイズも重畳した高周波信号が集まる時間領域の電力変動を、二次電池の充放電で完全に平準化することは難しい。特に、大型の二次電池の場合、電極の表面積が大きくなることで電気二重層容量が大きくなり、時定数が大きくなることで、この挙動が顕在化してくる。
二次電池システムを風力発電、太陽光発電等に適用した場合、発電中、発電電力を平準化するためにインバータを経由して頻繁な充放電が繰り返される。インバータから発生するリップルノイズを含め、二次電池に供給される電力信号の中には、二次電池の追随能力を超えた高周波電力信号が含まれることになる。二次電池が追随し得ない高周波電力信号が二次電池に印加されると、その電力は基本的に熱に変換される。この熱は二次電池の電極端子に集中しやすく、二次電池の構成材料に悪影響を及ぼしやすい。
前述したとおり、二次電池システムの単セルあたりに印加される充電電圧は、インバータ出力及びセルスタックの単セル直列数を基本的パラメータとして決まるが、要求される蓄電容量とセルスタックの直列数との関係もある。そこで、単セル直列数、セルスタック直列数、及び充電電圧を考慮し、正極の充電電位が1.05V(vs.Ag/AgCl)以下となるように二次電池システムを設計することが好ましい。設計上、1.05Vを超えることを受け入れざるを得ない場合においても、二次電池システムの寿命を確保するため、正極の充電電位を1.5V(vs.Ag/AgCl)以下に制御することが好ましい。
二次電池システムの設計上、正極の充電電位が1.05V(vs.Ag/AgCl)を超える条件で二次電池システムを運用する場合、運用期間中、二次電池に対して、正極電解液及び負極電解液の追加、並びにヨウ素化合物、ニトリル基を有する化合物、エタノール等のヨウ素分子に対する良溶媒などの追加を実施することが好ましい。但し、揮発性である、ヨウ素分子に対する良溶媒、例えば、エタノール等は、正極の充電電位が1.05Vを超えない運用環境においても、定期的に分析し、必要な場合は追加することが好ましい。
正極の充電電位が1.05V(vs.Ag/AgCl)を超えない条件で二次電池システムを運用する場合においても、インバータのリップルノイズに関しては、正極の充電電位が1.05Vを超えるようなシグナルが含まれていると考えるのが妥当と思われる。インバータのリップルノイズは、二次電池システムの劣化を促進するため、PCSにリップルノイズを吸収できる帯域幅のコンデンサを設置することが好ましい。
また、発電システムは、発電装置で発電された発電電力の需給に応じて、二次電池システムの充放電を制御するシステムであってもよい。例えば、発電装置にて発電された発電電力の供給量が電力系統における需要量を上回る場合、二次電池システムが充電を行い、かつ発電装置にて発電された発電電力の供給量が電力系統における需要量を下回る場合、二次電池システムが放電を行うように発電システムが制御されていてもよい。
発電システムは、再生可能エネルギーを用いた発電装置と二次電池システムとを組み合わせることで、二次電池システムが低コストで高エネルギー密度の蓄電システムとして機能し、さらに、炭酸ガスの排出量の低減を図り、地球温暖化を抑制するという地球規模の課題の解決に役立つものである。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
まず、ノーマルパルスボルタンメトリーによって酸化反応を調査し、正極の電極反応を検証した。
図5は、実施例1において実施した、ノーマルパルスボルタンメトリーの電位波形を示すグラフである。図5中、Eiは初期電位、ΔEsはパルス増分、tpはパルス幅、及びτはパルス周期を表す。図5に示される電位波形を電気化学計測装置であるポテンショスタットを使い電気化学セルに入力し、各パルス電位及びパルス時間に対応する電流値を計測した。
ポテンショスタットは電気化学計測においては一般的な装置であり、電位の基準となる参照電極電位に対して、図5に示されるパルス電位を制御し、作用電極で進行する電気化学反応に基づき観測される電流を検出する装置である。また、対極を設け、対極に電流が流れるように設計されている。参照電極の入力抵抗は非常に大きく直流抵抗で通常1014オームレベルであり、作用電極で進行する電気化学反応の電流は全て対極に流れる回路構成になっている。
ポテンショスタットは、これら電位基準となる参照電極、電位制御の対象となる作用電極、及び対極の3電極を備える。最近はマイクロコンピュータの発達に伴い、図5に示されるノーマルパルスボルタンメトリーの波形はポテンショスタット機能と一体化してプログラミングできるようになっているものが一般的である。
図6は、実施例1におけるノーマルパルスボルタモグラムである(パルス幅50ms)。ボルタモグラムとは電気化学反応に基づき観測される電流を電位に対してプロットした電流電位曲線のことである。電解液には支持電解質として1Mの過塩素酸ナトリウム(NaClO)を含有する20mMのヨウ化ナトリウム水溶液(95vol%)とニトリル基を有する化合物であるアセトニトリル(5vol%)とを含有する溶液を使用し、電極にはグラッシーカーボン(直径1.6mm)を使用し、ΔEs=0.05V及びτ=20sとした。図6中、横軸は電位(V vs. Ag/AgCl)、及び縦軸は電流密度(mA/cm)を表す。電流密度は、酸化電位にステップ後50ms後の電流値を電極面積で除した値である(以下、同様である)。測定は液温25℃の環境で行った。
次に、リバースパルスボルタンメトリーによって、ノーマルパルスボルタンメトリーとは逆反応の還元反応を調査し、正極の電極反応を検証した。
図7は、実施例1において実施した、リバースパルスボルタンメトリーの電位波形を示すグラフである。リバースパルスボルタンメトリーはノーマルパルスボルタンメトリーと同様にプログラミング化されたポテンショスタットを用いて実施することができる。Eiは初期電位、Ecは着目する反応が進行しない電位(コンディショニング電位)、ΔEsはリバースパルス電位増分、tcはEcに保持する時間、tdはEiに保持する時間及びtpはリバースパルス幅を表す。Ec=浸漬電位、ΔEs=0.05V、tc=10s、td=2sとした。
リバースパルスボルタンメトリーはノーマルパルスボルタンメトリーで得られたIの酸化反応の挙動をより精査できる機能を有する。すなわち初期電位において生成した生成物がどのような電気化学挙動を示すのかを検証できる。初期電位で生成するものが酸化反応生成物である場合、リバースパルス電位がある電位領域に到達すると、酸化反応生成物の還元反応の挙動を捕捉することができる。
リバースパルスのパルス電位はリバースパルス電位増分が繰り返されて、初期電位Eiを出発電位として、卑な方向にステップされる。一回の電位ステップが終了すると、酸化反応還元反応が最も進行しにくいコンディショニング電位Ecに保持される。コンディショニング電位Ecに作用電極の境界条件が反応前と同等レベルに回復する時間(tc)保持される。tc時間後、初期電位Eiに電位がステップされ、tdの間、作用電極上で酸化反応(一般的には酸化又は還元反応)を進行させる。初期電位にtd時間制御後、リバースパルスを印加する。この繰り返しでリバースパルスボルタンメトリーは実施され、得られたリバースパルスの電流と電位との関係を基に反応そのもの、反応機構等が精査可能となる。
ノーマルパルスボルタンメトリー及びリバースパルスボルタンメトリーともに、それぞれのパルス間において作用電極の境界条件が共通になるため、反応生成物と電位との関係において、初期電位で反応する反応物質の濃度を一定とみなすことができ、電流と電位との関係を検討する上において、単純化できる点が大きいメリットである。一回のパルス終了後コンディショニング電位に戻るため、任意のパルス電位の情報は、当該パルスの前のパルス電位で生成した反応物等の履歴を伴わない。ノーマルパルスボルタンメトリー、及びリバースパルスボルタンメトリーの強みは上記のように、観測したい電気化学情報をシンプルに抽出できる点にあるといえる。
図8は、実施例1におけるリバースパルスボルタモグラムである(初期電位0.50V又は0.55V及びパルス幅50ms)。図8では、初期電位(0.50V又は0.55Vで2秒間保持した後の、ステップ電位と電流値との関係をグラフで示している。電解液には支持電解質として1Mの過塩素酸ナトリウムを含有する20mMのヨウ化ナトリウム水溶液(95vol%)とアセトニトリル(5vol%)とを含有する溶液を使用し、電極にはグラッシーカーボン(直径1.6mm)を使用し、リバースパルスのパルス幅は50msとした。
図8に示すように、初期電位を0.50V又は0.55Vとした場合は、還元反応に関する明確な限界電流が観測された。したがって、初期電位0.50V又は0.55Vにおける生成物はイオンであり、本条件においてはI である。すなわち、Iの酸化反応生成物であるI が還元される挙動が確認できた。
図9は、実施例1におけるリバースパルスボルタモグラムであり、電解液中に含有するアセトニトリルの効果を示したものである(初期電位0.60V及びパルス幅50ms)。電解液には、支持電解質として1Mの過塩素酸ナトリウムを含有する20mMのヨウ化ナトリウム水溶液(95vol%)とアセトニトリル(5vol%)とを含有する溶液、及び支持電解質として1Mの過塩素酸ナトリウムを含有する20mMのヨウ化ナトリウム水溶液を使用した。
アセトニトリルが電解液に含有されていない場合、還元電流値は電位を卑にステップするにしたがって増加することが観測された。この挙動は、固相電気化学反応(例えば金属めっき面からの溶解反応)において観測される挙動である。溶液中からの拡散にともなう拡散過電圧が不要であるため、リバースパルスのパルス電位が増大するにしたがって、限界電流を示すことなく還元反応の電流が増大することを確認した。アセトニトリルを含有する場合、0.30V〜0.60Vの領域で還元電流は無添加の場合と比較して大きく観測され、0.25V以下の領域で還元電流が減少した。この挙動は、溶液中にアセトニトリルが含まれることによってI皮膜の還元とI皮膜の溶解が促進されているためと考えられる。
図10は、実施例1におけるリバースパルスボルタモグラムであり(初期電位0.90V〜1.10V及びパルス幅50ms)、図9における初期電位よりもさらに高電位で初期電位を設定(同様に2秒間保持)している。電解液、電極及びリバースパルスのパルス幅は、初期電位が0.50V〜0.60Vの場合と同様である。
図10にて観測された還元電流値は大きく二つのグループに分けられる。一つのグループは、初期電位を0.9V、1.00Vとした場合であり、リバースパルス電位を卑にステップするにしたがって、還元電流値が大きく増加することが観測された。一方、もう一つのグループは、初期電位を1.05V、1.10Vとした場合であり、0.9V、1.00Vとした場合と比較して、リバースパルスの還元電流値は低い値であった。
リバースパルスボルタンメトリーでは、初期電位において生成した化学種の還元反応速度の違いを観察しているため、これらのグループ間のリバースパルスボルタモグラムの違いは、初期電位の違いによる、生成物の違いであると考えるのがもっともシンプルである。
は以下の式(6)及び式(7)に示す反応により、I 及びIを生成することが知られている。
2I→I+2e (6)
3I→I +2e (7)
式(6)及び式(7)の標準酸化還元電位は、それぞれ0.536V(標準水素電極電位)でほぼ等しい。したがって、リバースパルスボルタンメトリーの初期電位において生成するIの酸化反応生成物はI及びI である。式(7)の標準電極電位の温度に対する変化は1℃あたり−0.148mV(玉虫玲太、「電気化学(第2版)」p.300、(1991)、東京化学同人)である。すなわち25℃から50℃が低下した−25℃の環境において式(7)の標準電極電位(standard electrode potential)は0.536(標準水素電極電位)からわずか7.4mV変化するにとどまる。電気化学電位は基本的に温度に依存しているが、上記に示すように実用生活環境温度において、電池反応と電位との関係は100mVレベルの大きい変動は無いと考えられる。
ここで、初期電位が1.05Vを超える場合には以下式(3)で示す反応によりIO が生成されることが推測される。
+3HO→IO +6H+6e (3)
前述のように、式(3)は不可逆な反応であると上記文献1にて報告されている。式(3)は不可逆反応であるため、リバースパルス電位が還元反応領域に達しても、生成したIO の反応速度が非常に遅く、生成したIO が還元反応によりIになかなか戻らないことが推測される。
また、以下の式(4)で表されるDushman反応により、上記式(3)で生成されたIO からIが生成される。
IO +5I+6H→3I+3HO (4)
更に、以下の式(5)は、上記式(3)及び式(4)の全反応(式(3)+式(4))として求められる。
+6HO→2IO +12H+10e (5)
上記文献1によれば、上記式(4)の化学反応速度は上記式(3)の電気化学反応に比べ速く、式(3)及び式(4)を構成反応とする式(5)の律速過程は、式(3)の電気化学反応である。このため、正極の充電電位が、Ag/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05Vを超える場合、上記式(3)〜式(5)の反応が生じていると推測される。
式(3)及び式(4)の全反応である式(5)に示す反応により、Iが反応してIO が生成されるが、式(3)に示す反応と同様に、式(5)に示す反応も不可逆反応である。このため、生成されるIO は放電反応速度が遅く、Iに戻りにくいことが推測される。
このため、初期電位が1.05Vを超える場合にIO が生成され、還元反応速度が小さいリバースパルスボルタモグラムになったと考えられる。
したがって、正極電解液中にアセトニトリルを含有する場合、正極の充電電位を1.05Vを超える充電電位条件では、不可逆反応によりIO が生成されると考えられるため、正極の充電電位が1.05Vを超える状態で運転することは好ましくない。
図11は、実施例1におけるリバースパルスボルタモグラムであり(初期電位1.40V、1.50V及びパルス幅50ms)、図10における初期電位よりもさらに高電位で初期電位を設定(同様に2秒間保持)している。電解液、電極及びリバースパルスのパルス幅は、初期電位が0.90V〜1.10Vの場合と同様である。
図11に示すように、リバースパルスで観測される還元電流値は、初期電位を1.50V以上とした場合、初期電位を1.40Vとした場合と比較して低下することが分かった。更に、初期電位を高くするにしたがって還元電流値が低下する傾向にあることが分かった。このことから、初期電位を1.50V以上の貴な電位に保持することによって電極が不活性化していると推定した。
[実施例2]
図12は、実施例2におけるノーマルパルスボルタモグラムである(パルス幅50、500及び5000ms)。電解液には3Mのヨウ化ナトリウム水溶液(95vol%)とアセトニトリル(5vol%)とを含有する溶液を使用した。3Mオーダーの水溶液濃度は実二次電池における反応活物質濃度レベルに対応する。図12中、横軸は電位(Vvs.Ag/AgCl)、及び縦軸は電流密度(A/cm)を表す。図12では、パルス幅を50ms、500ms及び5000msとしたときの電流密度を示している。その他の条件は実施例1と同様である。
tp=50msでは電位の増加に対して単調に電流密度が増加した。パルス幅が50msのタイムスケールではI皮膜生成量は小さく、Iの電極反応は皮膜によって大きく阻害されていないことが分かった。
tp=500msでは1.5V付近から電流密度が低下した。パルス幅が500msのタイムスケールでは、1.5V付近からI皮膜が厚膜化し、Iの電極反応を阻害することが分かった。
tp=5000msでは、1.0V付近〜1.8V付近にかけて電流値がほぼ同等であった。パルス幅が5000msのタイムスケールでは、1.0V付近〜1.8V付近の電位領域内でI皮膜の厚みは均衡に達していることが確認できた。
図13は、tp=5000msとしたときの電解液中に含有するアセトニトリルの効果を示したものである。電解液には、3Mのヨウ化ナトリウム水溶液(95vol%)とアセトニトリル(5vol%)とを含有する溶液と、3Mのヨウ化ナトリウム水溶液とを使用した。
電解液がアセトニトリルを含有する場合、1.0V付近〜1.8V付近の電流は、電解液がアセトニトリルを含有しない場合と比較して大きく観測された。電解液へのアセトニトリルの添加によってI皮膜が薄膜化し、電極上で反応するI量が増加したためと考えられる。
着目する反応種(実施例1ではI)の濃度に対して支持電解質濃度(実施例1では過塩素酸ナトリウム)を50倍等量レベル設ける電気化学計測は、物質移動に関する電気泳動の影響を除き、電気化学反応場である電気二重層構造を一定に保ち電気化学反応を観察できる。このため、絶対反応速度論にベースをおく電気化学反応機構検討において、既存の電気化学理論をシンプルに使えるメリットがある。そこで、実施例1では、電気化学反応に関する検討を、mMオーダーの反応種、及び支持電解質を含有する系で実施した。本実施例では、支持電解質を含まない、実二次電池濃度域のヨウ化ナトリウム電解液条件で電気化学反応に関する検討を行ったが、基本的に実施例1における検討結果に対応していることが分かる。すなわち、1.05Vを超える電位領域における充電電位制御は、上記式(3)(I+3HO→IO +6H+6e)及び式(5)(I+6HO→2IO +12H+10e)に示すように、IO3−が生成されるため望ましくない。
したがって、正極電解液にアセトニトリルを含有する二次電池において、正極の充電電位は充電によりIO が生成しうる1.05V(Vvs.Ag/AgCl)を超えないことが好ましい。
実フロー電池の場合、正極が厚いI皮膜で覆われることでフロー電池の流路が狭められ、電解液のフローそのものが阻害される状況は望ましくない。この点において、充電電位は1.4Vを超えないことが望ましい。充電放電反応に関与する反応活物質、特にヨウ素イオン及びヨウ素分子を安定に管理する上においては、実施例1及び実施例2で示された充電電位1.05V(Vvs.Ag/AgCl)以下の電位での充電制御が好ましい。
図11から、1.5Vよりも貴な電位とすることで電極が不活性化することが推測されるため、エタノールの分解を抑制する点に加えて正極の劣化を抑制する点から、実二次電池において1.5V以下の電位で充電制御することが好ましい。
[実施例3]
次に、図2に示すフロー電池システムについて、充放電反応を実施した場合の正極及び負極の電流電位について検討した。本実施例では、正極電解液として1Mヨウ化ナトリウム(NaI)水溶液(95vol%)とアセトニトリル(5vol%)とを含有する溶液を用い、負極電解液として0.5M塩化亜鉛(ZnCl)を含有する1M塩化アンモニウム(NHCl)水溶液を用い、正極として炭素電極を用い、かつ負極として亜鉛電極(亜鉛コートメッシュ電極)を用いた。
本実施例では、正極負極の電気化学反応及びそれぞれの標準電極電位は以下の通りであり、フロー電池の開回路電圧は標準状態で約1.3Vである。また、図14に実施例3におけるフロー電池システムの電極反応の模式図を示している。
負極 Zn⇔Zn2++2e −0.76V
正極 3I⇔I +2e 0.53V
2I⇔I+2e 0.53V
図15は、実施例3において実施した、フロー電池の正極及び負極の電流電位曲線である。電流電位曲線は、図2に示すフロー電池システムの構成で、フロー流量を100cm/分とし、一定電流で充電放電させた条件で得られたものである。
種々の定電流制御した条件における対応する電位は、正極及び負極それぞれの定常電位を測定して得られた値である。正極及び負極それぞれの電位はAg/AgCl参照電極に対する電位である。本実施例のフロー電池環境下において、正極の電位が1.05V(Vvs.Ag/AgCl)になる電流密度は約400mA/cmである。
したがって、本実施例のフロー電池において、フロー電池の充電制御条件は充電電流密度が400mA/cmを超えないようにすることが好ましい。これにより正極の電位が1.05Vより貴な電位領域に到達することが抑制され、IO の生成を抑制してフロー電池を運用することができる。
[実施例4]
実施例4では、アセトニトリルを含む電解液(正極電解液)を調製し、この電解液を使用したときの活物質の酸化電流の大きさと電極の状態とを解析した。
電解液としては、活物質としてのヨウ素化合物と、アセトニトリルとを含む電解液(試液1〜5)をそれぞれ調製した。具体的には、アセトニトリル(CHCN;AN)を下記の表1及び表2に示す濃度、ヨウ化ナトリウム(NaI)を1M(mol/L)の濃度、過塩素酸ナトリウム(NaClO)を1M(mol/L)の濃度となるように純水に溶解してそれぞれ電解液とした。
また、対照の電解液としては、ヨウ素化合物を含み、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)を調製した。具体的には、ヨウ化ナトリウム(NaI)を1M(mol/L)の濃度、過塩素酸ナトリウム(NaClO)を1M(mol/L)の濃度となるように純水に溶解して電解液とした。
各電解液を用いた試験では、グラッシーカーボン製の作用電極に対し、互いに同じ電位値の一定電位を印加することによって、ヨウ素イオンの酸化電流の電流値をそれぞれ計測した。そして、アセトニトリルを25Vol%の濃度で含む電解液(試液1)と、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)とについては、紫外可視吸収スペクトルを測定した。また、酸化還元反応後に作用電極の表面に生じたヨウ素の皮膜厚さを、還元法によって解析した。
図16は、電解液の吸収スペクトルの一例を示す図である。
図16において、実線は、ヨウ素化合物を含みアセトニトリルを含まない電解液(比較区)の吸収スペクトル、破線は、ヨウ素化合物とともにアセトニトリルを25Vol%の濃度で含む電解液(試液1)の吸収スペクトルである。但し、縦軸の吸光度は、互いに独立して計測された相対値である。
また、酸化電流の計測と皮膜厚さの解析の結果を以下の表1及び表2に示す。表における、電流値(mA)は、所定電位における酸化電流の計測値、酸化電流比は、比較区を100とした酸化電流の相対値、皮膜厚さ比は、比較区を100とした皮膜厚さの相対値である。
図16に示すように、実線で表されるアセトニトリルを含まない電解液(比較区)、及び、破線で表されるアセトニトリルを含む電解液(試液1)のいずれについても、300nm付近及び350nm付近に三ヨウ化物イオン(I )の吸収、450nm付近にヨウ素(I)の吸収が生じた。アセトニトリルを含む電解液(試液1)では、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)と比較して、ヨウ素(I)の吸収帯の比率が顕著に高められており、アセトニトリルの存在下では二原子分子の状態の還元体が安定的に存在できることが確認できた。
また、表1に示すように、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)では、酸化電流が1.68mAであった。これに対して、アセトニトリルを含む電解液(試液1)では、酸化電流が3.58mAとなり、ヨウ素イオンの酸化に伴う酸化電流が2.13倍に増大した。また、アセトニトリルを含む電解液(試液1)では、電極の表面に生じたヨウ素の皮膜厚さが、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)に対し、40%程度に減少していた。
また、表2に示すように、アセトニトリルを1Vol%の低濃度で含む電解液(試液5)においても、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)に対し、酸化電流を増大する効果がみられた。そして、アセトニトリルの濃度が、2Vol%(試液4)に増加すると、酸化電流は顕著な増大を示した。その後、アセトニトリルの濃度が、5Vol%(試液3)、10Vol%(試液2)と増加するにつれて、酸化電流は更なる増大を示したものの、10Vol%以上の濃度においては有意な増大を示さなくなった。
これらの結果から、ヨウ素イオンを含む電解液にアセトニトリルを含ませると、ヨウ素イオンが液相中に安定し、また、ヨウ素皮膜が形成され難くなることが分かる。したがって、本実施例の電解液は、二次電池の安定性及び蓄電容量を高めることができる電解液として有用である。また、アセトニトリルの濃度は、2Vol%以上が有効であり、5Vol%以上がより好ましい範囲であるといえる。
[実施例5]
実施例5では、二次電池を作製し、電解液が充電挙動に与える作用について評価した。正極電解液としては、実施例5については、活物質としてのヨウ素化合物と、アセトニトリルとを含む電解液(試液1)を使用し、比較例については、ヨウ素化合物を含み、アセトニトリルを含まない電解液(比較例)を使用した。
いずれの二次電池においても、負極電解液としては、塩化亜鉛(ZnCl)を0.5M(mol/L)の濃度、過塩素酸ナトリウム(NaClO)を1M(mol/L)の濃度となるように純水に溶解した電解液を使用した。また、正極としては、カーボンフェルト、負極としては、亜鉛めっきを施した鉄製のメッシュ、セパレータとしては、陽イオン交換膜「ナフィオン(登録商標)」(デュポン社製)をそれぞれ使用した。
二次電池の充電挙動は、充電密度を40mA/cmとして定電流充電し、電池電圧が1.6Vに達するまでの時間(充電時間)を計測して評価した。また、このときの二次電池の充電率を併せて求めた。
充電挙動の結果を以下の表3に示す。表における、充電時間比は、アセトニトリルを含まない電解液(比較区)を使用した二次電池においてを100とした充電時間の相対値、充電率比は、理論上の最大蓄電容量を100とした充電率の相対値である。
表3に示すように、アセトニトリルを含む電解液を使用した二次電池(実施例5)では、アセトニトリルを含まない電解液を使用した二次電池(比較例)と比較して、充電時間が1.15倍に増大していた。一方、充電率については、アセトニトリルを含まない電解液を使用した二次電池(比較例)が85%に留まった一方で、アセトニトリルを含む電解液を使用した二次電池(実施例5)は98%に達していた。
これらの結果から、ヨウ素イオンを含む電解液にアセトニトリルを含ませることにより、充電電流に抗する電導抵抗が低減されることが分かる。この結果は、ヨウ素皮膜が形成され難くなることによって、電極表面の電荷移動の抵抗の増大が抑制されていることを意味する。したがって、本実施例の二次電池は、電力量、充放電挙動等についての経時変化に対する安定性、可逆的な電極反応の安定性及び実効容量が、いずれも良好な二次電池となる点で有利である。
2016年7月21日に出願された日本国特許出願2016−143741、2016年7月26日に出願されたPCT/JP2016/071917及び2017年5月12日に出願された米国特許出願62/505480の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
1 正極電解液反応槽
2 負極電解液反応槽
3、11 正極
4、12 負極
5、15 隔壁
6、13 正極用参照電極
7、14 負極用参照電極
16 正極電解液
17 負極電解液
18 正極電解液貯留タンク(正極電解液貯留部)
19 負極電解液貯留タンク(負極電解液貯留部)
20、21 循環経路(送液部)
22、23 送液ポンプ(送液部)
24 サンプリング部
25 電位計測部(濃度計測部)
30 セルスタック
50 二次電池システム
100 フロー電池システム

Claims (17)

  1. 正極と、
    負極と、
    正極活物質としてヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方とニトリル基を有する化合物とを含有する正極電解液と、
    負極活物質を含有する負極電解液と、
    を備える二次電池。
  2. 前記負極電解液は、前記負極活物質として亜鉛及び亜鉛イオンの少なくとも一方を含有する、請求項1に記載の二次電池。
  3. 前記正極電解液が、前記ニトリル基を有する化合物以外のヨウ素分子に対する良溶媒を更に含有する、請求項1又は請求項2に記載の二次電池。
  4. 前記正極電解液を貯留する正極電解液貯留部と、
    前記負極電解液を貯留する負極電解液貯留部と、
    前記正極と前記正極電解液貯留部との間で前記正極電解液を循環させ、前記負極と前記負極電解液貯留部との間で前記負極電解液を循環させる送液部と、
    を更に備えるフロー電池である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の二次電池。
  5. 前記正極電解液をサンプリングするサンプリング部を更に備える、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の二次電池。
  6. 前記サンプリング部によりサンプリングされた正極電解液を分析し、分析結果に基づいて前記正極電解液に含有される成分の濃度を調整する濃度調整部を更に備える、請求項5に記載の二次電池。
  7. 前記正極電解液のヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度を計測する濃度計測部を更に備える、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の二次電池。
  8. 前記濃度計測部は前記正極電解液のヨウ素イオン及びヨウ素分子の濃度に基づく電位を計測する電位計測部であり、
    前記電位計測部により計測された電位に基づいて充電状態が推定される、請求項7に記載の二次電池。
  9. 前記正極の電位を測定するための正極用参照電極を更に備える、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の二次電池。
  10. 充放電が制御され、前記正極の充電電位がAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定される、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の二次電池。
  11. 充放電が制御され、前記正極の充電電位がAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御される、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の二次電池。
  12. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の二次電池と、
    充放電を制御して前記正極の充電電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.05V以下に設定する制御部と、
    を備える二次電池システム。
  13. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の二次電池と、
    充放電を制御して前記正極の充電電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御する制御部と、
    を備える二次電池システム。
  14. 前記制御部は、前記正極の充電電位をAg/AgCl参照電極(Cl濃度飽和)の電位を基準として1.5V以下に制御する、請求項12に記載の二次電池システム。
  15. ヨウ素イオン及びヨウ素分子の少なくとも一方と、ニトリル基を有する化合物とを含有する正極電解液。
  16. 発電装置と、請求項12〜請求項14のいずれか1項に記載の二次電池システムと、を備える発電システム。
  17. 前記発電装置は、再生可能エネルギーを用いて発電する、請求項16に記載の発電システム。
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