JPWO2017141800A1 - 繊維状セルロース含有物及び繊維状セルロース含有物の製造方法 - Google Patents

繊維状セルロース含有物及び繊維状セルロース含有物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2017141800A1
JPWO2017141800A1 JP2018500067A JP2018500067A JPWO2017141800A1 JP WO2017141800 A1 JPWO2017141800 A1 JP WO2017141800A1 JP 2018500067 A JP2018500067 A JP 2018500067A JP 2018500067 A JP2018500067 A JP 2018500067A JP WO2017141800 A1 JPWO2017141800 A1 JP WO2017141800A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fibrous cellulose
containing material
mass
water
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018500067A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7095595B2 (ja
Inventor
拓里 尾崎
拓里 尾崎
郁絵 本間
郁絵 本間
絵美 相澤
絵美 相澤
萌 水上
萌 水上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
New Oji Paper Co Ltd
Oji Holdings Corp
Original Assignee
Oji Holdings Corp
Oji Paper Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Oji Holdings Corp, Oji Paper Co Ltd filed Critical Oji Holdings Corp
Publication of JPWO2017141800A1 publication Critical patent/JPWO2017141800A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7095595B2 publication Critical patent/JP7095595B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K8/00Cosmetics or similar toiletry preparations
    • A61K8/18Cosmetics or similar toiletry preparations characterised by the composition
    • A61K8/72Cosmetics or similar toiletry preparations characterised by the composition containing organic macromolecular compounds
    • A61K8/73Polysaccharides
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08BPOLYSACCHARIDES; DERIVATIVES THEREOF
    • C08B15/00Preparation of other cellulose derivatives or modified cellulose, e.g. complexes
    • C08B15/02Oxycellulose; Hydrocellulose; Cellulosehydrate, e.g. microcrystalline cellulose
    • C08B15/04Carboxycellulose, e.g. prepared by oxidation with nitrogen dioxide
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08BPOLYSACCHARIDES; DERIVATIVES THEREOF
    • C08B16/00Regeneration of cellulose
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08BPOLYSACCHARIDES; DERIVATIVES THEREOF
    • C08B5/00Preparation of cellulose esters of inorganic acids, e.g. phosphates
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08KUse of inorganic or non-macromolecular organic substances as compounding ingredients
    • C08K5/00Use of organic ingredients
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L1/00Compositions of cellulose, modified cellulose or cellulose derivatives

Abstract

本発明は、流動性に優れ、かつ再分散性に優れた微細繊維状セルロース含有物を提供することを課題とする。本発明は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、水分と、水溶性有機化合物と、を含む繊維状セルロース含有物であって、繊維状セルロースの含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して5質量%以上であり、水分含有量は、前記繊維状セルロース含有物の全質量に対して1質量%以上であり、水溶性有機化合物は、20℃において固体であり、かつ数平均分子量が2000以下である繊維状セルロース含有物に関する。

Description

本発明は、繊維状セルロース含有物及び繊維状セルロース含有物の製造方法に関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10μm以上50μm以下の繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
また、繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。微細繊維状セルロースはシートや複合体の構成原料として用いることができる。微細繊維状セルロースを用いた場合、繊維同士の接点が著しく増加することから、引張強度等が大きく向上することが知られている。また、微細繊維状セルロースは、増粘剤などの用途へ使用することも検討されている。
微細繊維状セルロースを、例えば増粘剤として使用する場合には、微細繊維状セルロースを分散させた液体を加工工場等に輸送することが行われている。しかし、微細繊維状セルロースを分散させた液体には大量の分散媒が含まれているため、輸送に係る費用がかさむという問題がある。このため、輸送コストを削減するために、微細繊維状セルロースを分散させた液体を出来る限り濃縮した形態とすることが望まれている。
例えば、特許文献1には、カルボキシル基含有微細繊維状セルロース繊維と再分散促進剤を混合してゲル状体を得る工程が開示されている。ここでは、再分散促進剤として、水溶性の有機液体が用いられており、水溶性の有機液体としては、グリセリンやジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられている。また、特許文献2には、微細繊維状セルロースの水性懸濁液のpHを9〜11に調整した後に、脱水・乾燥させてセルロースナノファイバーの乾燥固形物を製造する方法が開示されている。特許文献3には、微細繊維状セルロースの水性懸濁液を凍結乾燥することにより、微細繊維状セルロース乾燥物を製造する方法が開示されている。ここでは、微細繊維状セルロースとしてバクテリアセルロースの離解物が用いられており、凍結乾燥する際にはトレハロース等の成分を添加することが行われている。
特開2014−118521号公報 特開2015−134873号公報 特開平11−255806号公報
微細繊維状セルロースの濃縮物としては乾燥固形物(粉体)が知られている。微細繊維状セルロースを乾燥固形物(粉体)にする際には、梱包する際の充填容易性や、他の成分との混合容易性の観点から、流動性が高いほうが好ましいとされている。
また、微細繊維状セルロースの濃縮物を再度分散媒に分散した際には、微細繊維状セルロースの濃縮物が均一に分散し、濃縮前の微細繊維状セルロースと同等の品質を発揮し得ることが求められている。例えば、微細繊維状セルロースが増粘剤として用いられる場合には、微細繊維状セルロースの濃縮物の再分散液は高い粘度を発現することが求められている。
しかしながら、従来技術において得られた微細繊維状セルロースの濃縮物(乾燥固形物)は、その流動性が十分ではなく、再分散性においても課題が残るものであったため改善が求められている。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、流動性に優れ、かつ再分散性に優れた微細繊維状セルロースの濃縮物(微細繊維状セルロース含有物)を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む繊維状セルロース含有物に、所定の水溶性有機化合物を含有させ、さらに、水分含有率を一定量以上とすることにより、繊維状セルロース含有物の流動性を高め、かつ再分散性を高め得ることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、水分と、水溶性有機化合物と、を含む繊維状セルロース含有物であって、繊維状セルロースの含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して5質量%以上であり、水分含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して1質量%以上であり、水溶性有機化合物は、20℃において固体であり、かつ数平均分子量が2000以下である繊維状セルロース含有物。
[2] 繊維状セルロースは、イオン性官能基を有する[1]に記載の繊維状セルロース含有物。
[3] イオン性官能基はリン酸基である[2]に記載の繊維状セルロース含有物。
[4] 水分含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して20質量%以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維状セルロース含有物。
[5] 水溶性有機化合物の含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して0.75質量%以上80質量%以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維状セルロース含有物。
[6] 水溶性有機化合物の分子量全体に対する窒素、酸素、硫黄及びリンの原子量の合計が、25%以上である[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維状セルロース含有物。
[7] 安息角が2°以上20°以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の繊維状セルロース含有物。
[8] 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、水溶性有機化合物とを含むスラリーを得る工程と、スラリーを乾燥させる工程と、を含む繊維状セルロース含有物の製造方法であって、水溶性有機化合物は、20℃において固体であり、かつ数平均分子量が2000以下であり、スラリーを乾燥させる工程は、繊維状セルロースの含有量が、繊維状セルロース含有物の全質量に対して5質量%以上となり、かつ水分含有量が、繊維状セルロース含有物の全質量に対して1質量%以上となるように乾燥を行う工程である繊維状セルロース含有物の製造方法。
本発明によれば、流動性に優れ、かつ再分散性に優れた微細繊維状セルロース含有物を提供することができる。このような微細繊維状セルロース含有物は、化粧品、食品等の増粘剤や、樹脂とのコンポジット、地下層処理用流体といった、さまざまな用途への応用が可能である。
図1は、リン酸基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。 図2は、カルボキシル基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(繊維状セルロース含有物)
本発明は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース(以下、微細繊維状セルロースということもある)と、水分と、水溶性有機化合物とを含む繊維状セルロース含有物に関する。繊維状セルロース含有物における繊維状セルロースの含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して5質量%以上である。繊維状セルロース含有物における水分含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して1質量%以上である。また、繊維状セルロース含有物に含まれる水溶性有機化合物は、20℃において固体であり、かつ数平均分子量が2000以下である。
なお、本発明の繊維状セルロース含有物に含まれる繊維状セルロースは微細繊維状セルロースであるから、本発明の繊維状セルロース含有物は微細繊維状セルロース含有物と呼ぶこともできる。
従来、微細繊維状セルロースは高濃度化すると繊維間で強く水素結合するため、再分散して利用することが困難であった。しかし、本発明では、繊維状セルロース含有物に、20℃において固体でありかつ数平均分子量が2000以下の水溶性有機化合物を含有させ、かつ繊維状セルロース含有物における水分含有量を一定量以上とすることにより、再分散性を高めることに成功した。
繊維状セルロース含有物の再分散性が高いことは、繊維状セルロース含有物の均一分散性が高いことを意味する。繊維状セルロース含有物の均一分散性は、繊維状セルロース含有物が、濃縮前の微細繊維状セルロースの性質を復元できるか否かによって判定することができる。例えば、繊維状セルロース含有物の再分散液の粘度やヘーズを測定することによって確認することができる。
本発明においては、繊維状セルロース含有物の再分散液の粘度が高く、再分散液の粘度復元率が高い。粘度復元率とは、高濃度化前の微細繊維状セルロースが発現し得る粘度に対する、高濃度化後の再分散液の粘度の比率であり、粘度復元率が高いことは、高濃度化後の繊維状セルロース含有物が高濃度化前の微細繊維状セルロースと同等の性状を発揮できることを意味する。また、本発明においては、繊維状セルロース含有物の再分散液のヘーズ値が小さく、再分散液の透明性が高い。これは、繊維状セルロース含有物の均一分散性が高く、凝集等が生じていないことを意味する。
また、本発明の繊維状セルロース含有物は、流動性が高い点にも特徴がある。流動性の高い繊維状セルロース含有物は、ハンドリング性が良好であり、梱包する際の充填容易性や、他の成分との混合容易性の観点において優れている。繊維状セルロース含有物の流動性が高いことは、後述するように微細繊維状セルロースの濃縮物が粉粒物である場合に特に有用である。
本発明の繊維状セルロース含有物は、微細繊維状セルロースの濃縮物であればその形態は特に制限されないが、乾燥固形物であることが好ましく、粉粒物であることがより好ましい。ここで、粉粒物は、粉状及び/又は粒状の物質である。なお、粉状物質は、粒状物質よりも小さいものをいう。一般的には、粉状物質は粒子径が1nm以上0.1mm未満の微粒子をいい、粒状物質は、粒子径が0.1〜10mmの粒子をいうが、特に限定されない。なお、本願明細書においては、粉粒物は粉体と呼ぶこともある。
本願明細書における粉粒物の粒子径はレーザー回折法を用いて測定・算出することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(Microtrac3300EXII、日機装株式会社)を用いて測定した値とする。
繊維状セルロース含有物中の水分含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して1質量%以上であればよく、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、繊維状セルロース含有物中の水分含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。通常、微細繊維状セルロースを粉粒物等の濃縮物にする際には、水分含有量は少ない方が良いと考えられるが、本発明では、繊維状セルロース含有物中の水分含有量を敢えて一定量以上となるように制御することにより、優れた流動性と粘度復元率を両立することができる。
繊維状セルロース含有物中の水分含有量は、繊維状セルロース含有物を水分計(エー・アンド・デイ社製、MS−70)に200mg載せ、140℃で加熱することで測定することができる。測定された水分量から繊維状セルロース含有物中の水分含有量を算出することができる。
繊維状セルロース含有物の安息角は、2°以上であることが好ましく、3°以上であることがより好ましく、4°以上であることがさらに好ましい。また、繊維状セルロース含有物の安息角は、30°未満であることが好ましく、25°以下であることがより好ましく、20°以下であることがさらに好ましく、10°以下であることがよりさらに好ましい。安息角は、繊維状セルロース含有物の流動性に関与するパラメーターである。安息角は小さい方が繊維状セルロース含有物の流動性は高まる傾向にある。しかし、上記下限値未満とした場合、粉舞が生じるため流動性は悪化する場合がある。すなわち、繊維状セルロース含有物の安息角は上記範囲内であることが好ましく、これにより、繊維状セルロース含有物の流動性を良好な状態にすることができる。
繊維状セルロース含有物の安息角は、安息角測定器(アズワン)を用いて測定する。具体的には、安息角測定器のシュートに100ml分の繊維状セルロース含有物を仕込み、シュート口を開いて繊維状セルロース含有物を下部に落下させる。そして、落下後の繊維状セルロース含有物の斜面と水平面のなす角度を測定し、繊維状セルロース含有物の安息角とする。
繊維状セルロース含有物を、微細繊維状セルロースの濃度が0.4質量%になるようにイオン交換水に分散させた場合、該分散液の粘度は1000mPa・s以上であることが好ましく、5000mPa・s以上であることがより好ましく、10000mPa・s以上であることがさらに好ましく、12000mPa・s以上であることが特に好ましい。なお、該分散液の粘度の上限値は、特に限定されないが、たとえば40000mPa・sとすることができる。
繊維状セルロース含有物の分散液(微細繊維状セルロース濃度0.4質量%)の粘度は、B型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて測定することができる。測定条件は25℃とし、回転数3rpmで3分間回転させ測定する。
なお、繊維状セルロース含有物の分散液を調製する際には、繊維状セルロース含有物を、微細繊維状セルロースの濃度が0.4質量%になるようにイオン交換水に分散させ、ディスパーザーを用いて1500rpmで5分間撹拌する。
繊維状セルロース含有物の再分散液における粘度復元率は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることがよりさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。粘度復元率とは、高濃度化前の微細繊維状セルロースが発現し得る粘度に対する、高濃度化後の再分散液の粘度の比率であり、具体的には、下記の式で算出される。
粘度復元率(%)=(再分散液粘度÷原料となる微細繊維状セルロース分散液の粘度)×100
なお、再分散液粘度は、繊維状セルロース含有物の分散液(微細繊維状セルロース濃度0.4質量%)の粘度であり、原料となる微細繊維状セルロース分散液の粘度は、繊維状セルロース含有物を得る前の原料となる微細繊維状セルロースを、濃度が0.4質量%になるようにイオン交換水に分散させ、ディスパーザーを用いて1500rpmで5分間撹拌して得た分散液の粘度である。
繊維状セルロース含有物の分散液(微細繊維状セルロース濃度0.2質量%)のヘーズは、5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、2%以下であることが特に好ましい。繊維状セルロース含有物の分散液(微細繊維状セルロース濃度0.2質量%)のヘーズが上記範囲であることは、繊維状セルロース含有物の再分散性が高いことを表しており、繊維状セルロース含有物は高濃度化後であっても、高濃度化前の微細繊維状セルロースが有する特性を発揮することができる。
ここで、繊維状セルロース含有物の分散液(微細繊維状セルロース濃度0.2質量%)のヘーズは、光路長1cmのガラスセル(藤原製作所製、MG−40)に繊維状セルロース含有物の分散液を入れ、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定される値である。
本発明の繊維状セルロース含有物における微細繊維状セルロースの含有量をPとし、水溶性有機化合物の含有量をQとした場合、微細繊維状セルロースと水溶性有機化合物の含有質量比率(P:Q)は、2:8〜9.9:0.1であることが好ましく、4:6〜8:2であることがより好ましい。P:Qの比率を上記範囲内とすることにより、繊維状セルロース含有物の流動性と再分散性をより効果的に高めることができる。
(水溶性有機化合物)
本発明の繊維状セルロース含有物は、水溶性有機化合物を含む。本願明細書における水溶性有機化合物とは、20℃、1Lのイオン交換水への溶解度が2g/L以上である化合物である。20℃、1Lのイオン交換水への溶解度は5g/L以上であることが好ましく、15g/L以上であることがより好ましく、100g/L以上であることがさらに好ましく、200g/L以上であることがさらによりさらに好ましく、500g/L以上であることが特に好ましい。
また、本発明で用いる水溶性有機化合物は、20℃において固体である。水溶性有機化合物が20℃において固体であることにより、繊維状セルロース含有物の流動性がより向上し、ハンドリング性を高めることができる。
さらに、本発明で用いる水溶性有機化合物は、数平均分子量が2000以下である。水溶性有機化合物の数平均分子量は、1500以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、800以下であることがさらに好ましく、500以下であることが特に好ましい。また、水溶性有機化合物の数平均分子量は、50以上であることが好ましい。すなわち、水溶性有機化合物は低分子化合物であることが好ましい。水溶性有機化合物の数平均分子量を上記範囲とすることにより、繊維状セルロース含有物の再分散性をより効果的に高めることができる。また、繊維状セルロース含有物の流動性についてもより高めることができる。
水溶性有機化合物としては、例えば、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、セロビオース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、シクロデキストリン等の糖類; グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、フェニルアラニン、アルギニン、メチオニン、グリシン、アラニン、トリプトファン、アスパラギン、システイン、チロシン、リシン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、トレオニン、バリン、グルタミン、アスパラギン酸等のアミノ酸;アデノシン、グアノシン、5−メチルウリジン、ウリジン、シチジン等のヌクレオシド;尿素及びフェニル尿素、ベンジル尿素、N−エチル−N’−フェニル尿素、チオ尿素、ビウレット、ジメチル尿素、ジエチル尿素、テトラメチル尿素、ヒダントイン等の尿素誘導体;無水ベタイン等を挙げることができる。中でも、水溶性有機化合物は、糖類、アミノ酸、及び尿素から選択される少なくとも1種であることが好ましく、糖類及び尿素から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、糖類であることがさらに好ましい。糖類としては、グルコース、スクロース及びトレハロースから選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、トレハロースを用いることが特に好ましい。なお、水溶性有機化合物として上述した化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性有機化合物の含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して0.75質量%以上であることが好ましく、3.5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましい。また、水溶性有機化合物の含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して80質量%以下であることが好ましく、66質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、水溶性有機化合物の含有量は繊維状セルロース含有物中に含まれる繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースの100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましい。また、水溶性有機化合物の含有量は繊維状セルロース含有物中に含まれる繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースの100質量部に対して、400質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましい。
水溶性有機化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、繊維状セルロース含有物の再分散液の粘度復元率をより高くすることが可能となり、再分散液のヘーズ値もより低く抑えることができる。
水溶性有機化合物の分子量全体に対する窒素、酸素、硫黄及びリンの原子量の合計は、25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが特に好ましい。窒素、酸素、硫黄及びリンの原子量の合計比率を上記範囲とすることにより、流動性に優れ、かつ再分散性に優れた繊維状セルロース含有物を得ることができる。
(微細繊維状セルロース)
本発明の繊維状セルロース含有物は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース(微細繊維状セルロース)を含む。繊維状セルロースの含有量は、繊維状セルロース含有物の全質量に対して5質量%以上であればよく、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。
微細繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅(単に、「繊維幅」ということもある。)はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細繊維状セルロースの繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上800μm以下がさらに好ましく、0.1μm以上600μm以下が特に好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることができる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。
微細繊維状セルロースが含有する結晶部分の比率は、本発明においては特に限定されないが、X線回折法によって求められる結晶化度が60%以上であるセルロースを使用することが好ましい。結晶化度は、好ましくは65%以上であり、より好ましくは70%以上であり、この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
本発明において微細繊維状セルロースは、イオン性官能基を有する繊維であることが好ましく、この場合イオン性官能基は、アニオン性官能基(以下、アニオン基ともいう)であることが好ましい。アニオン基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、及び、スルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基で及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。
微細繊維状セルロースは、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するものであることが好ましい。リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であっても、非イオン性置換基であってもよい。
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
Figure 2017141800
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1〜nの整数)及びα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」という)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」という)の存在下で行ってもよい。
化合物Aを化合物Bの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、繊維原料のスラリーに化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態の繊維原料に化合物A及び化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態の繊維原料に化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。繊維原料の形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
本実施態様で使用する化合物Aは、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。化合物Aの水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は特に限定されないが、化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。繊維原料に対するリン原子の添加量が100質量%を超えると、収率向上の効果は頭打ちとなり、使用する化合物Aのコストが上昇する。一方、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、1−エチル尿素などが挙げられる。
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
加熱処理の際、化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間において、繊維原料を静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aが繊維原料表面に移動する。そのため、繊維原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥による繊維原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状の繊維原料を用いるか、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は撹拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもでき、軸比の高い微細繊維を得ることができる。
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.1mmol/g以上3.65mmol/g以下であることが好ましく、0.14mmol/g以上3.5mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g以上3.2mmol/g以下がさらに好ましく、0.4mmol/g以上3.0mmol/g以下が特に好ましく、最も好ましくは0.6mmol/g以上2.5mmol/g以下である。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細化が容易でありながらも、微細繊維状セルロース同士の水素結合も残すことが可能で、良好な強度発現が期待できる。
リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。具体的には、解繊処理工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定することができる。
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図1に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。すなわち、3つの領域が現れる。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。
<カルボキシル基の導入>
本発明においては、微細繊維状セルロースがカルボキシル基を有するものである場合、たとえばTEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物、その誘導体、またはその酸無水物もしくはその誘導体によって処理することで、カルボキシル基を導入することができる。
カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等トリカルボン酸化合物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
<カルボキシル基の導入量>
カルボキシル基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.1mmol/g以上であることが好ましく、0.2mmol/g以上であることがより好ましく、0.3mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.5mmol/g以上であることが特に好ましい。また、カルボキシル基の導入量は3.5mmol/g以下であることが好ましく、3.0mmol/g以下であることがより好ましく、2.5mmol/g以下であることがさらに好ましく、2.0mmol/g以下であることが特に好ましい。カルボキシル基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にすることができ、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。
<カチオン性置換基導入>
本実施形態においては、イオン性官能基としてカチオン性置換基が微細繊維状セルロースに導入されていてもよい。例えば繊維原料にカチオン化剤及びアルカリ化合物を添加して反応させることにより、繊維原料にカチオン性置換基を導入することができる。
カチオン化剤としては、4級アンモニウム基を有し、かつセルロースのヒドロキシル基と反応する基を有するものを用いることができる。セルロースのヒドロキシル基と反応する基としては、エポキシ基、ハロヒドリンの構造を有する官能基、ビニル基、ハロゲン基等が挙げられる。カチオン化剤の具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどのグリシジルトリアルキルアンモニウムハライド或いはそのハロヒドリン型の化合物が挙げられる。
アルカリ化合物は、カチオン化反応の促進に寄与するものである。アルカリ化合物は、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩またはアルカリ土類金属のリン酸塩などの無機アルカリ化合物であってもよいし、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物及びその水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等の有機アルカリ化合物であってもよい。カチオン性置換基の導入量の測定は、たとえば元素分析等を用いて行うことができる。
<アルカリ処理>
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性官能基導入工程と、後述する解繊処理工程の間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、リン酸基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶剤のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶剤)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、リン酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、リン酸基導入繊維を水や有機溶剤により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済みリン酸基導入繊維を水や有機溶剤により洗浄することが好ましい。
<解繊処理>
リン酸基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶剤を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、またはt−ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
本発明の微細繊維状セルロース含有スラリーは、解繊処理により得られた微細繊維状セルロース含有スラリーを、一度濃縮及び/又は乾燥させた後に、再度解繊処理を行って得てもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、及びWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、微細繊維状セルロース含有スラリーをシート化することで濃縮、乾燥し、該シートに解繊処理を行い、再度微細繊維状セルロース含有スラリーを得ることもできる。
微細繊維状セルローススラリーを濃縮及び/又は乾燥させた後に、再度解繊(粉砕)処理をする際に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。
上述した方法で得られたリン酸基を有する繊維状セルロース含有物は、微細繊維状セルロース含有スラリーであり、所望の濃度となるように、水で希釈して用いてもよい。
(その他の成分)
繊維状セルロース含有物は、さらに他の成分を含有していてもよい。繊維状セルロース含有物が他の成分を含有する場合、他の成分は濃縮後に得られた繊維状セルロース含有物に添加・混合してもよく、濃縮前のスラリーに含有させてもよい。
他の成分としては、例えば吸湿剤を挙げることができる。吸湿剤としては、例えば、シリカゲル、ゼオライト、アルミナ、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール水溶性酢酸セルロース、ポリエチレングリコール、セピオライト、酸化カルシウム、ケイソウ土、活性炭、活性白土、ホワイトカーボン、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び吸水性ポリマー等が挙げられる。
また、他の成分としては、水溶性高分子や界面活性剤を挙げることができる。水溶性高分子としては、合成水溶性高分子(例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、メタクリル酸アルキル・アクリル酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリアクリルアミドなど)、増粘多糖類(例えば、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、クインスシード、アルギン酸、プルラン、カラギーナン、ペクチンなど)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒロドキシエチルセルロースなど)、カチオン化デンプン、生デンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、アミロース等のデンプン類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類等、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の金属塩等を挙げることができる。また、界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤を使用することができる。
なお、本発明の繊維状セルロース含有物には有機溶剤が含まれていないことが好ましい。ここでは、繊維状セルロース含有物における有機溶剤の含有量が1質量%以下であれば、繊維状セルロース含有物には有機溶剤が含まれていないということができる。繊維状セルロース含有物が有機溶剤を含有しないことにより、繊維状セルロース含有物の取扱い容易性を高めることができ、ハンドリング性を高めることができる。また、再分散性や流動性も高めることができる。
(再分散)
本発明の繊維状セルロース含有物は、水等の溶媒に再分散させることで用いられることが好ましい。このような再分散スラリーを得るために使用する溶媒の種類は、特に限定されないが、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合物を挙げることができる。有機溶剤としては、例えば、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル等が挙げられる。
繊維状セルロース含有物を再分散させる際には、上述した<解繊処理>において記載した解繊処理装置と同様のものを使用してもよい。
(繊維状セルロース含有物の製造方法)
本発明は、繊維状セルロース含有物の製造方法に関するものでもある。本発明の繊維状セルロース含有物の製造工程は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、水溶性有機化合物とを含むスラリーを得る工程と、スラリーから繊維状セルロース含有物を得る工程を含むことが好ましい。スラリーから繊維状セルロース含有物を得る工程は、スラリーを濃縮する工程であることが好ましく、濃縮工程は、スラリーを乾燥させる工程であることが好ましい。スラリーを乾燥させる工程は、繊維状セルロースの含有量が、繊維状セルロース含有物の全質量に対して5質量%以上となり、かつ水分含有量が、繊維状セルロース含有物の全質量に対して1質量%以上となるように乾燥を行う工程であることが好ましい。
なお、本発明の繊維状セルロース含有物の製造工程で用いる水溶性有機化合物は、20℃において固体であり、かつ数平均分子量が2000以下である。
スラリーを得る工程では、水に繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース(微細繊維状セルロース)と、水溶性有機化合物とを添加する。スラリーを得る工程では、微細繊維状セルロースの濃度が0.1質量%以上10質量%以下となるように調製することが好ましい。また、スラリーを得る工程では、水溶性有機化合物の濃度が0.01質量%以上1質量%以下となるように調製することが好ましい。微細繊維状セルロースと、水溶性有機化合物を添加後は、ディスパーザーを用いて撹拌を行うことが好ましい。
本発明では、スラリーを得る工程では、スラリー中に有機溶剤を添加しないことが好ましい。ここではスラリー中の有機溶剤の濃度が1質量%以下である場合、有機溶剤が添加されていないということができる。本発明の繊維状セルロース含有物の製造工程においては、スラリー中に有機溶剤が添加されていないため、製造工程の安全性をより高めることができる。
スラリーから繊維状セルロース含有物を得る工程は、スラリーを濃縮する工程であることが好ましい。濃縮工程としては、例えば、濃縮剤添加、濾過、圧搾、乾燥、膜処理等を挙げることができる。中でも、濃縮工程は、乾燥工程であることが好ましく、スラリーを得る工程で得られたスラリーを乾燥することにより、繊維状セルロース含有物を得ることが好ましい。乾燥工程においては、スラリーを30℃以上100℃以下の環境下で5時間以上100時間以下乾燥させることが好ましく、乾燥は送風環境下で行ってもよい。また、上記乾燥工程は減圧環境下行うことも好ましい。
乾燥工程で得られた繊維状セルロース含有物は粉砕されることが好ましい。粉砕を行う場合は、粉砕装置として、例えばミキサー、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、振動ミル等を用いることができる。
また、スラリーから繊維状セルロース含有物を得る工程は、噴霧乾燥工程であってもよい。噴霧乾燥工程を採用する場合は、微細繊維状セルロースと水溶性有機化合物を含むスラリーを、スプレードライヤー等を用いて噴霧乾燥させる。スプレードライヤーは、スラリー等の溶液を、ディスク型アトマイザーやノズル等の噴霧機により微粒子化して表面積を増やし、熱風と接触させることによって短時間で乾燥させる装置である。スプレードライヤーとしては、一般に市販されている機器を用いることができる。例えば、大川原化工機株式会社製のODA−25型などを用いることができる。
本発明においては、スラリーから繊維状セルロース含有物を得る工程において、上述した濃縮工程を採用することにより、繊維状セルロース含有物における水分含有量を制御することが容易となる。すなわち、繊維状セルロース含有物における水分含有量を1質量%以上とすることが容易となる。これにより、繊維状セルロース含有物の再分散性をより効果的に高めることができる。
(用途)
本発明の繊維状セルロース含有物の用途は特に限定されない。繊維状セルロース含有物は、例えば増粘剤として使用されることが好ましい。この場合、繊維状セルロース含有物の再分散スラリーは、増粘剤として各種用途(例えば、食品、化粧品、セメント、塗料、インクなどへの添加物など)に使用することができる。また、樹脂やエマルションと混合し補強材としての用途に使用することもできる。さらに、微細繊維状セルロース再分散スラリーを用いて製膜し、各種フィルムとして使用することもできる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<製造例1>
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93% 坪量208g/m2シート状 離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で、10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
得られたリン酸化パルプをパルプ質量で100g分取し、10Lのイオン交換水を注ぎ、撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。次いで、得られた脱水シートを10Lのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12以上13以下のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を添加した。撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。
得られた脱水シートに対し、先と同様にして、リン酸基を導入する工程、濾過脱水する工程を繰り返し、リン酸化セルロースの脱水シートを得た。得られた脱水シートをFT−IRで赤外線吸収スペクトルを測定した。その結果、1230cm-1以上1290cm-1以下にリン酸基に基づく吸収が観察され、リン酸基の付加が確認された。従って、得られた脱水シート(リン酸化セルロース)は、セルロースのヒドロキシル基の一部が下記構造式(1)の官能基で置換されたものであった。
Figure 2017141800
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1〜nの整数)及びα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
得られた二回リン酸化セルロースにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、さらに湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)を用いて処理し、微細繊維状セルロース1を得た。湿式微粒化装置を用いた処理においては、245MPaの圧力にて処理チャンバーを3回通過させた。X線回折により、この微細繊維状セルロース1はセルロースI型結晶を維持していることを確認した。
<製造例2>
乾燥質量100質量部相当の未乾燥の針葉樹晒クラフトパルプと、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル)1.25質量部と、臭化ナトリウム12.5質量部を、水10000質量部に分散させた。次いで、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が8.0mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10以上11以下に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なした。
その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5000質量部のイオン交換水を注ぎ、撹拌して均一に分散させた。その後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。得られた脱水シートをFT−IRで赤外線吸収スペクトルを測定した。その結果、1730cm-1にカルボキシル基に基づく吸収が観察され、カルボキシル基の付加が確認された。この脱水シート(TEMPO酸化セルロース)を用いて、微細繊維状セルロースを調製した。
得られたTEMPO酸化セルロースにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、さらに湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)を用いて処理し、微細繊維状セルロース2を得た。湿式微粒化装置を用いた処理においては、245MPaの圧力にて処理チャンバーを3回通過させた。X線回折により、この微細繊維状セルロース2はセルロースI型結晶を維持していることを確認した。
(置換基量の測定)
置換基導入量は、繊維原料へのリン酸基もしくはカルボン酸基の導入量であり、この値が大きいほど、多くのリン酸基もしくはカルボン酸基が導入されている。置換基導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図1(リン酸基)・図2(カルボキシル基)に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。算出した結果は以下の表1に示した。
(粘度の測定)
得られた微細繊維状セルロースを0.4質量%に希釈し、希釈した分散液の粘度をB型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて測定した。測定は、25℃、回転数3rpmで3分間回転させて行った。
Figure 2017141800
(繊維幅の測定)
微細繊維状セルロースの繊維幅は下記の方法で測定した。
解繊パルプスラリーの上澄み液を濃度0.01質量%以上0.1質量%以下に水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。乾燥後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEOL−2000EX)により観察した。微細繊維状セルロース1及び2は、繊維幅4nm程度の微細繊維状セルロースになっていることを確認した。
<実施例1>
微細繊維状セルロース1の濃度が1質量%、グルコースの最終濃度が0.25質量%になるようにイオン交換水に添加した。ディスパーザーを用いて6000rpmで5分間撹拌し、分散液100gを作製した。この分散液を直径10cmのテフロン(登録商標)製シャーレに流し込み、50℃の送風乾燥機で24時間乾燥させた。残渣をミキサーで粉砕し、粉体状にした。この粉体を実施例1の繊維状セルロース含有物(粉体)とした。
<実施例2>
実施例1において、グルコースの代わりにスクロースを用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例3>
実施例1において、グルコースの代わりにトレハロースを用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例4>
実施例1において、グルコースの代わりに尿素を用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例5>
実施例1において、グルコースの代わりに無水ベタインを用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例6>
実施例1において、グルコースの代わりにセリンを用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例7>
実施例1において、グルコースの代わりにフェニルアラニンを用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例8>
実施例1において、グルコースの代わりにグルタミン酸を用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例9>
実施例1において、グルコースの代わりにヒスチジンを用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例10>
実施例1において、グルコースの代わりにアデノシンを用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例11>
実施例3において、トレハロースを3質量%になるように添加して分散液を作製した。それ以外は全て実施例3と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例12>
実施例3において、トレハロースを1質量%になるように添加して分散液を作製した。それ以外は全て実施例3と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例13>
実施例3において、トレハロースを0.11質量%になるように添加して分散液を作製した。それ以外は全て実施例3と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例14>
実施例3において、トレハロースを0.052質量%になるように添加して分散液を作製した。それ以外は全て実施例3と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例15>
実施例3において、トレハロースを0.01質量%になるように添加して分散液を作製した。それ以外は全て実施例3と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例16>
実施例3において、微細繊維状セルロース1の代わりに微細繊維状セルロース2を用いた。それ以外は全て実施例3と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<実施例17>
実施例13において、微細繊維状セルロース1の代わりに微細繊維状セルロース2を用いた。それ以外は全て実施例13と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<比較例1>
実施例1において、グルコースを添加しない試験を実施した。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<比較例2>
実施例3において、乾燥工程の温度を105℃とした試験を実施した。それ以外は全て実施例3と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<比較例3>
実施例1において、グルコースの代わりに流動パラフィンを用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<比較例4>
実施例1において、グルコースの代わりにグリセリンを用いた。それ以外は全て実施例1と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<比較例5>
実施例16において、グルコースを添加しない試験を実施した。それ以外は全て実施例16と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<比較例6>
実施例16において、乾燥工程の温度を105℃とした試験を実施した。それ以外は全て実施例16と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
<比較例7>
実施例16において、グルコースの代わりに流動パラフィンを用いた。それ以外は全て実施例16と同様の方法で繊維状セルロース含有物を得た。
(評価)
(水分量の測定)
実施例及び比較例で得られた繊維状セルロース含有物を水分計(エー・アンド・デイ社製、MS−70)に200mg載せ、140℃で加熱し、水分量を測定した。
(粘度の測定)
実施例及び比較例で得られた繊維状セルロース含有物を微細繊維状セルロースの濃度が0.4質量%になるようにイオン交換水に添加した。ディスパーザーを用いて1500rpmで5分間撹拌し、分散液100gを作製した。
得られた微細繊維状セルロース0.4質量%の分散液の粘度をB型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて、25℃にて回転数3rpmで3分間回転させ、測定した。
(粘度復元率の計算)
実施例及び比較例で用いた、繊維状セルロース含有物を得る前の原料となる微細繊維状セルロース(微細繊維状セルロース1もしくは微細繊維状セルロース2)を、濃度が0.4質量%になるようにイオン交換水に添加した。ディスパーザーを用いて1500rpmで5分間撹拌し、分散液100gを作製した。この分散液の粘度を上述した方法と同様の方法で測定し、「原料となる微細繊維状セルロース分散液の粘度」とした。
また、実施例及び比較例で得られた繊維状セルロース含有物を微細繊維状セルロースの濃度が0.4質量%になるようにイオン交換水に添加することで得られた分散液の粘度を「再分散液粘度」として、下記の計算式を用いて粘度復元率を計算した。
粘度復元率(%)=(再分散液粘度÷原料となる微細繊維状セルロース分散液の粘度)×100
(ヘーズの測定)
粘度の測定において得られた繊維状セルロース含有物の分散液(微細繊維状セルロースの濃度0.4質量%)をイオン交換水で2倍希釈した後、微細繊維状セルロースの濃度が0.2質量%の分散液を光路長1cmのガラスセル(藤原製作所製、MG−40)に入れ、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いてヘーズを測定した。なお、同ガラスセルにイオン交換水を加えたものをゼロ点とした。
(安息角の測定)
安息角測定器(アズワン)を用いて繊維状セルロース含有物の安息角を測定した。安息角測定器のシュートに100ml分の繊維状セルロース含有物を仕込み、シュート口を開いて繊維状セルロース含有物を下部に落下させた。落下後の繊維状セルロース含有物の斜面と水平面のなす角度を測定し、安息角とした。
Figure 2017141800
実施例で得られた繊維状セルロース含有物は、再分散後においても高い粘度を発現しており、粘度復元率も高い値であった。また、繊維状セルロース含有物の再分散液のヘーズ値は小さく、繊維状セルロース含有物の再分散性が良好であることがわかった。さらに、実施例で得られた繊維状セルロース含有物の安息角は小さく、粉体としてのハンドリング性に優れるものであった。
実施例1〜10及び16では、糖類や尿素、アミノ酸といった水溶性有機化合物が有効であることを示すことができた。また、実施例11〜15及び17は、微細繊維状セルロースと水溶性有機化合物の比率を変えたものを作製したが、広い範囲で本発明が利用できることを示すことができた。
一方、比較例1及び5は、水溶性有機化合物を含有しないものであり、再分散性は不十分なものであった。比較例2及び6は、強い条件で乾燥させたものであり、繊維状セルロース含有物の水分含有量が低く、この条件では添加剤を加えていても再分散性は不十分であった。比較例3及び7では、水溶性有機化合物でないものを添加剤として用いたものであるが、再分散性に良好な影響を与えなかった。比較例4では、水溶性の液体であるグリセリンを添加剤として用いたものであるが、繊維状セルロース含有物(粉体)がべたつき、安息角が大きくなった。

Claims (8)

  1. 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、水分と、水溶性有機化合物と、を含む繊維状セルロース含有物であって、
    前記繊維状セルロースの含有量は、前記繊維状セルロース含有物の全質量に対して5質量%以上であり、
    前記水分含有量は、前記繊維状セルロース含有物の全質量に対して1質量%以上であり、
    前記水溶性有機化合物は、20℃において固体であり、かつ数平均分子量が2000以下である繊維状セルロース含有物。
  2. 前記繊維状セルロースは、イオン性官能基を有する請求項1に記載の繊維状セルロース含有物。
  3. 前記イオン性官能基はリン酸基である請求項2に記載の繊維状セルロース含有物。
  4. 前記水分含有量は、前記繊維状セルロース含有物の全質量に対して20質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維状セルロース含有物。
  5. 前記水溶性有機化合物の含有量は、前記繊維状セルロース含有物の全質量に対して0.75質量%以上80質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維状セルロース含有物。
  6. 前記水溶性有機化合物の分子量全体に対する窒素、酸素、硫黄及びリンの原子量の合計が、25%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維状セルロース含有物。
  7. 安息角が2°以上20°以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維状セルロース含有物。
  8. 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、水溶性有機化合物とを含むスラリーを得る工程と、
    前記スラリーを乾燥させる工程と、を含む繊維状セルロース含有物の製造方法であって、
    前記水溶性有機化合物は、20℃において固体であり、かつ数平均分子量が2000以下であり、
    前記スラリーを乾燥させる工程は、前記繊維状セルロースの含有量が、前記繊維状セルロース含有物の全質量に対して5質量%以上となり、かつ前記水分含有量が、前記繊維状セルロース含有物の全質量に対して1質量%以上となるように乾燥を行う工程である繊維状セルロース含有物の製造方法。
JP2018500067A 2016-02-19 2017-02-09 繊維状セルロース含有物及び繊維状セルロース含有物の製造方法 Active JP7095595B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016029649 2016-02-19
JP2016029649 2016-02-19
PCT/JP2017/004664 WO2017141800A1 (ja) 2016-02-19 2017-02-09 繊維状セルロース含有物及び繊維状セルロース含有物の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2017141800A1 true JPWO2017141800A1 (ja) 2018-12-06
JP7095595B2 JP7095595B2 (ja) 2022-07-05

Family

ID=59625043

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018500067A Active JP7095595B2 (ja) 2016-02-19 2017-02-09 繊維状セルロース含有物及び繊維状セルロース含有物の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP7095595B2 (ja)
WO (1) WO2017141800A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11578142B2 (en) 2016-12-21 2023-02-14 Nippon Paper Industries Co., Ltd. Acid type carboxylated cellulose nanofiber

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108137710B (zh) * 2015-09-17 2021-08-27 王子控股株式会社 微细纤维状纤维素含有物
EP3438132B1 (en) 2016-03-31 2021-12-15 Oji Holdings Corporation Method for producing fibrous cellulose, and fibrous cellulose
US20200332143A1 (en) * 2017-08-29 2020-10-22 Oji Holdings Corporation Cellulose fiber-containing composition and paint
JP6988269B2 (ja) * 2017-08-29 2022-01-05 王子ホールディングス株式会社 繊維状セルロース含有組成物及び塗料
JP7197490B2 (ja) * 2017-09-20 2022-12-27 日本製紙株式会社 アニオン変性セルロースナノファイバーの製造方法
JP6942344B2 (ja) * 2017-11-10 2021-09-29 国立研究開発法人産業技術総合研究所 セルロースナノファイバー乾燥紛体の製造方法
JP7098934B2 (ja) * 2018-01-10 2022-07-12 王子ホールディングス株式会社 シート
JP6796111B2 (ja) * 2018-07-13 2020-12-02 大王製紙株式会社 繊維状セルロース含有物及びその製造方法、繊維状セルロース乾燥体及びその製造方法、並びに繊維状セルロース複合樹脂及びその製造方法
WO2020080393A1 (ja) * 2018-10-16 2020-04-23 王子ホールディングス株式会社 繊維状セルロース、繊維状セルロース分散液及び繊維状セルロースの製造方法
JP6769468B2 (ja) * 2018-10-16 2020-10-14 王子ホールディングス株式会社 繊維状セルロース、繊維状セルロース分散液及び繊維状セルロースの製造方法
WO2020129855A1 (ja) * 2018-12-18 2020-06-25 丸住製紙株式会社 微細セルロース繊維含有乾燥固形物の製造方法、微細セルロース繊維含有乾燥固形物、微細セルロース繊維再分散液
JP6696600B1 (ja) * 2019-02-08 2020-05-20 王子ホールディングス株式会社 繊維状セルロース含有組成物及び塗料
JP7040576B2 (ja) * 2020-09-23 2022-03-23 王子ホールディングス株式会社 繊維状セルロース、繊維状セルロース分散液及び繊維状セルロースの製造方法

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09165402A (ja) * 1995-04-18 1997-06-24 Bio Polymer Res:Kk バクテリアセルロースの乾燥方法および乾燥物
JPH09291101A (ja) * 1996-04-26 1997-11-11 Nisshinbo Ind Inc セルロース水溶液の製造方法
JPH11255806A (ja) * 1998-03-13 1999-09-21 Bio Polymer Reserch:Kk 微細繊維状セルロース濃縮物の凍結乾燥方法
JP2004041119A (ja) * 2002-07-12 2004-02-12 Asahi Kasei Chemicals Corp 水分散性セルロースおよびその製造方法
WO2009069641A1 (ja) * 2007-11-26 2009-06-04 The University Of Tokyo セルロースナノファイバーとその製造方法、セルロースナノファイバー分散液
JP2011173993A (ja) * 2010-02-24 2011-09-08 Sumitomo Bakelite Co Ltd 複合体組成物および複合体
WO2014024876A1 (ja) * 2012-08-10 2014-02-13 王子ホールディングス株式会社 微細繊維状セルロース凝集物、微細繊維状セルロース凝集物の製造方法及び微細繊維状セルロース分散液の再製造方法
JP2016017096A (ja) * 2014-07-04 2016-02-01 王子ホールディングス株式会社 繊維含有樹脂組成物の製造方法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09165402A (ja) * 1995-04-18 1997-06-24 Bio Polymer Res:Kk バクテリアセルロースの乾燥方法および乾燥物
JPH09291101A (ja) * 1996-04-26 1997-11-11 Nisshinbo Ind Inc セルロース水溶液の製造方法
JPH11255806A (ja) * 1998-03-13 1999-09-21 Bio Polymer Reserch:Kk 微細繊維状セルロース濃縮物の凍結乾燥方法
JP2004041119A (ja) * 2002-07-12 2004-02-12 Asahi Kasei Chemicals Corp 水分散性セルロースおよびその製造方法
WO2009069641A1 (ja) * 2007-11-26 2009-06-04 The University Of Tokyo セルロースナノファイバーとその製造方法、セルロースナノファイバー分散液
JP2011173993A (ja) * 2010-02-24 2011-09-08 Sumitomo Bakelite Co Ltd 複合体組成物および複合体
WO2014024876A1 (ja) * 2012-08-10 2014-02-13 王子ホールディングス株式会社 微細繊維状セルロース凝集物、微細繊維状セルロース凝集物の製造方法及び微細繊維状セルロース分散液の再製造方法
JP2016017096A (ja) * 2014-07-04 2016-02-01 王子ホールディングス株式会社 繊維含有樹脂組成物の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11578142B2 (en) 2016-12-21 2023-02-14 Nippon Paper Industries Co., Ltd. Acid type carboxylated cellulose nanofiber

Also Published As

Publication number Publication date
WO2017141800A1 (ja) 2017-08-24
JP7095595B2 (ja) 2022-07-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7095595B2 (ja) 繊維状セルロース含有物及び繊維状セルロース含有物の製造方法
JP6613771B2 (ja) 微細繊維状セルロース含有物
US11084886B2 (en) Material comprising ultrafine cellulose fibers
JP5950012B1 (ja) 微細繊維状セルロース含有物の製造方法
JP6361836B1 (ja) 繊維状セルロース含有物及び繊維状セルロース含有物の製造方法
CN108137864B (zh) 组合物、微细纤维状纤维素含有物及微细纤维状纤维素含有物的制备方法
JP6907489B2 (ja) 微細繊維状セルロース含有物
JP7172033B2 (ja) 繊維状セルロース、繊維状セルロース含有組成物、繊維状セルロース分散液及び繊維状セルロースの製造方法
JP6601088B2 (ja) 微細繊維状セルロース含有物
JP5910786B1 (ja) 微細繊維状セルロース含有物
JP6418212B2 (ja) 微細繊維状セルロース含有物
JP6507962B2 (ja) 微細繊維状セルロース含有組成物
JPWO2020085479A1 (ja) 微細繊維状セルロース含有組成物およびその製造方法
JP2018090659A (ja) シート及びシートの製造方法
JP7010206B2 (ja) 繊維状セルロース
JP6418213B2 (ja) 微細繊維状セルロース含有物
JP6859629B2 (ja) 繊維状セルロース含有物
JP7127005B2 (ja) 微細繊維状セルロース含有物
JP6780730B2 (ja) 微細繊維状セルロース含有組成物およびその製造方法
JP6504094B2 (ja) 微細繊維状セルロース含有物
WO2018110525A1 (ja) 繊維状セルロース含有組成物
JP2021155738A (ja) 粉塵飛散防止剤及び粉塵飛散防止方法
JP2022020607A (ja) 繊維状セルロース含有物及びその応用
JP2022063104A (ja) 分散液

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191121

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201201

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20210201

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210325

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210817

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211014

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220125

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20220308

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220421

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220524

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220606

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7095595

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150