JPWO2017138646A1 - 3成分同時分析装置および3成分同時分析方法 - Google Patents

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Abstract

3成分同時分析装置は、分析試料である大気ガス中に含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を検出するための装置であって、第1のガス流路(A)と、第1のガス流路(A)よりも下流側に位置する第2のガス流路(B)および第3のガス流路(C)と、第1のガス流路(A)と第2のガス流路(B)との間、および第1のガス流路(A)と第3のガス流路(C)との間にあって、第1のガス流路(A)と第2のガス流路(B)とが連通する第1状態と、第1のガス流路(A)と第3のガス流路(C)とが連通する第2状態とに切り替えるためのスイッチングバルブ(400)と、を有し、第1のガス流路(A)は、メタンガスを含む第1のガス相と、二酸化炭素および一酸化二窒素を含む第2のガス相を得るために配された第1のカラム(60)を有し、第2のガス流路(B)は、水素炎イオン化型検出器(100)を有し、第3のガス流路(C)は、パックドカラムからなる第2のカラム(70)と、第2のカラム(70)よりも下流側にあって、二酸化炭素を含む第3のガス相と、一酸化二窒素を含む第4のガス相を得るために配された、キャピラリーカラム又はステンレスカラムからなる第3のカラム(80)と、熱伝導度型検出器(200)と、電子捕獲型検出器(300)と、を有する。

Description

本発明は、3成分同時分析装置および3成分同時分析方法に関する。
大気ガスに含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素は、地球温暖化への寄与の大きい温室効果ガスであるとともに、土壌の酸化還元状態の変動により、その発生と消滅機構が大きく左右されるガス成分として重要である。ここで、上記メタンガスは、大気中濃度が1.744ppmであり、その濃度は二酸化炭素(約390ppm)と比べてはるかに低い。しかし、メタンガスの温室効果能(Global Warming Potential(GWP))は、同量の二酸化炭素と比べて25倍の値を示す。また、上記一酸化二窒素は、大気中濃度が319ppbであり、その濃度は二酸化炭素と比べて約1/1000倍量であるが、一酸化二窒素のGWP値についても、メタンガスと同様に、二酸化炭素と比べて高い値を示す。具体的には、一酸化二窒素のGWP値は、二酸化炭素の298倍である。このような温室効果特性を有した上記メタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素については、京都議定書にて削減目標が定められており、その発生量を推定するために精度の高い濃度測定を行う必要がある。
上述した大気ガスに含まれる3成分は、それぞれ化学的性質が異なる。そのため、大気中のガス濃度を測定するためにガスクロマトグラフを用いる場合には、用いるキャリアガスが異なるが故、3台のガスクロマトグラフを準備して、個々に検出する手法を採用するのが通常であった。
殊に、大気中濃度がppbオーダーである一酸化二窒素の検出方法については、これまでに種々の検討がなされている。たとえば、一酸化二窒素の検出方法として、電子捕獲能を活かした選択的検出器である電子捕獲型検出器と、アルゴンガスにメタンガスを5%加えたキャリアガスを使用する手法がこれまでに提案されている(非特許文献1および2)。しかし、一酸化二窒素は、上述したように大気ガス中濃度が極めて低いため、不純物の除去やノイズ低減への各種対策が必要であった。
色摩信義著「アイソトープ便覧」、p.606、丸善、1984年 吉田他「ガス中の超微量不純物の分析法に関する研究(2)」、高圧ガス、Vol.29、No.2(1992) Sudo, S. et al., 1997. Precise measurement of atmospheric concentration of CH3Br by GC/ECD. Chemistry Letters, Vol.26 No.3 239-240
しかしながら、大気ガスに含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素を検出するための従来の方法は、測定結果を取得するまでに労力と時間を要するものであった。そのため、近年においては、大気ガスに含まれる上記3成分を省力的な手法により高精度で検出できる装置の実現が要求されていた。
以上を踏まえ、本発明は、一度の分析で、大気ガスに含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を、試料濃度がppbオーダーである場合においても高いS/N比で同時に検出することが可能な3成分同時分析装置、および3成分同時分析方法を提供するものである。
本発明者は、大気ガスに含まれる上記3成分を高精度で検出できる装置を実現すべく、その設計指針について鋭意検討した。その結果、本発明者は、パックドカラムとともに、キャピラリーカラムまたはステンレスカラムを併用する構成とすることが、分子量がほぼ同一であるが故、ガスクロマトグラフにより完全に分離することが困難であった二酸化炭素および一酸化二窒素の検出感度およびS/N比を高めるための設計指針として有効であることを見出し、本発明に至った。
本発明によれば、分析試料である大気ガス中に含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を検出するための3成分同時分析装置であって、
当該3成分同時分析装置は、
第1のガス流路と、
前記第1のガス流路よりも下流側に位置する第2のガス流路および第3のガス流路と、
前記第1のガス流路と前記第2のガス流路との間、および前記第1のガス流路と前記第3のガス流路との間にあって、前記第1のガス流路と前記第2のガス流路とが連通する第1状態と、前記第1のガス流路と前記第3のガス流路とが連通する第2状態とに切り替えるためのスイッチングバルブと、を有し、
前記第1のガス流路は、
キャリアガスを導入するキャリアガス導入部と、
前記分析試料を導入する試料導入部と、
前記キャリアガス導入部および前記試料導入部よりも下流側にあって、前記分析試料中に含まれる成分の種類に応じて流動遅延を生じさせ、前記メタンガスを含む第1のガス相と、前記二酸化炭素および前記一酸化二窒素を含む第2のガス相を得るために配された第1のカラムと、
を有し、
前記第2のガス流路は、
下流端に前記第1のガス相中に含まれる前記メタンガスを検出するための水素炎イオン化型検出器を有し、
前記第3のガス流路は、
パックドカラムからなる第2のカラムと、
前記第2のカラムよりも下流側にあって、前記第2のガス相中に含まれる成分の種類に応じて流動遅延を生じさせ、前記二酸化炭素を含む第3のガス相と、前記一酸化二窒素を含む第4のガス相を得るために配された、キャピラリーカラム又はステンレスカラムからなる第3のカラムと、
前記第3のカラムよりも下流側にあって前記第3のガス相中に含まれる前記二酸化炭素を検出するための熱伝導度型検出器と、
前記熱伝導度型検出器よりも下流側にあって前記第4のガス相中に含まれる前記一酸化二窒素を検出するための電子捕獲型検出器と、
を有する、3成分同時分析装置が提供される。
さらに、本発明によれば、分析試料である大気ガス中に含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を検出する3成分同時分析方法であって、
キャリアガスをガス流路に導入するキャリアガス導入工程と、
前記キャリアガスが充填された前記ガス流路に対して前記分析試料を導入する試料導入工程と、
前記分析試料中に含まれる成分から、メタンガスを含む第1のガス相と、二酸化炭素および一酸化二窒素を含む第2のガス相とを得る第1のガス分離工程と、
前記第2のガス相中に含まれる成分から、二酸化炭素を含む第3のガス相と、一酸化二窒素を含む第4のガス相とを得る第2のガス分離工程と、
を有し、
前記第1のガス分離工程は、
前記分析試料を成分の種類に応じて流動遅延を生じさせるための第1のカラムに通過させる工程と、
第1のカラムに通過させる前記工程の後工程において、前記第1のガス相を、水素炎イオン化型検出器を有するガス流路に導入するメタンガス導入工程と、前記第2のガス相を、熱伝導度型検出器および電子捕獲型検出器を有するガス流路に導入する工程と、
前記メタンガス導入工程の後工程において、水素炎イオン化型検出器により前記第1のガス相に含まれるメタンガスを検出する工程と、を含み、
前記第2のガス分離工程は、
前記第2のガス相をパックドカラムからなる第2のカラムに通過させる工程と、
前記第2のガス相を、成分の種類に応じて流動遅延を生じさせるためのキャピラリーカラムまたはステンレスカラムからなる第3のカラムに通過させる工程と、
第3のカラムに通過させる工程の後工程において、前記熱伝導度型検出器により前記第3のガス相中に含まれる二酸化炭素を検出し、前記電子捕獲型検出器により前記第4のガス相中に含まれる一酸化二窒素を検出する工程と、を含む3成分同時分析方法が提供される。
本発明によれば、一度の分析で、大気ガスに含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を、試料濃度がppbオーダーである場合においても高いS/N比で同時に検出することが可能な3成分同時分析装置、および3成分同時分析方法を提供できる。
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
本実施形態に係る3成分同時分析装置の構成を示す系統図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
<3成分同時分析装置>
図1は、本実施形態に係る3成分同時分析装置の構成を示す概略図である。
まず、本実施形態に係る3成分同時分析装置(以下、本分析装置とも云う。)は、分析試料である大気ガス中に含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を検出するための装置である。そして、図1に示すように、本分析装置は、第1のガス流路Aと、第1のガス流路Aよりも下流側に位置する第2のガス流路Bおよび第3のガス流路Cと、第1のガス流路Aと第2のガス流路Bとの間、および第1のガス流路Aと第3のガス流路Cとの間にあって、第1のガス流路Aと第2のガス流路Bとが連通する第1状態と、第1のガス流路Aと第3のガス流路Cとが連通する第2状態とに切り替えるためのスイッチングバルブ400と、を有している。以下、本分析装置に係る各構成について説明する。
まず、第1のガス流路Aは、キャリアガスを導入するキャリアガス導入部10と、分析試料を導入する試料導入部30(インジェクションポート)と、キャリアガス導入部10および試料導入部30よりも下流側にあって、分析試料中に含まれる成分の種類に応じて流動遅延を生じさせ、メタンガスを含む第1のガス相と、二酸化炭素および一酸化二窒素を含む第2のガス相を得るために配された第1のカラム60と、を有している。
本分析装置において上述したキャリアガス導入部10は、キャリアガス浄化装置20を含むことが好ましい。こうすることで、本分析装置に導入するキャリアガスの純度を向上させることが可能である。そして、キャリアガス浄化装置20により純度を高めたキャリアガスを用いて上述した3成分の検出を行った場合には、キャリアガス中に含まれる夾雑物による影響で分析結果のS/N比や検出感度が低下することを防ぐことができる。具体的には、キャリアガス浄化装置20により純度を高めた窒素ガスやヘリウムガスなどのキャリアガスを用いることにより、キャリアガス中に含まれる夾雑物の検出ピークが分析対象である上記3成分の検出ピークと重なること、後述するガス分離カラム(第1〜第3のカラム等)に滞留した上記夾雑物が検出器ノイズを増長させることやカラム寿命を短くすること等の不都合が生じることを抑制することができる。
上述したキャリアガス浄化装置20は、本分析装置に導入するキャリアガスの純度を高めるために用いるが、当該キャリアガスの純度を飛躍的に向上させる観点から、多段階のキャリアガス浄化機構を備えていることが好ましい。また、キャリアガス浄化装置20に備わる上記キャリアガス浄化機構の具体例としては、チャコールフィルター等のガス浄化フィルターや、モイスチャートラップ、オイルミストトラップ、活性炭が充填された炭化水素除去管、モレキュラーシーブが充填された吸湿剤管、樹脂が充填された微量酸素・水除去管(たとえば、SUPELCO社製、OMI−4等)等が挙げられる。
本分析装置において上述した試料導入部30には、分析試料が装置外部に漏れること、外気が混入すること等の不都合が生じることを防ぐためにセプタム(パッキン)が設けられている。かかるセプタムとしては、試料導入部30においてキャリアガス圧を維持することが可能であること、複数回分析を行ったとしても分析試料が装置外部に漏れることを防ぐことができる程度のシール性を有していること等の条件を満たすものであれば、限定されない。しかし、かかるセプタムは、複数回の試料導入に伴う劣化により上述した不都合が生じることを防ぐために、最大100回の試料導入を目安に新しいものに交換することが好ましい。
また、本分析装置における試料導入部30は、測定結果を取得するまでに費やす労力と時間を低減する観点から、ガス自動注入装置(オートサンプラー)を有していてもよい。
本分析装置における第1のガス流路A中のキャリアガス導入部10および試料導入部30よりも下流側には、分析試料中に含まれる成分の種類に応じて流動遅延を生じさせ、メタンガスを含む第1のガス相と、二酸化炭素および一酸化二窒素を含む第2のガス相を得るために配された第1のカラム60がある。この第1のカラム60は、上述したように、分析試料中に含まれる成分の種類に応じて流動遅延を生じさせるものであるが故、分析試料を当該第1のカラム60に通過させた場合、分析試料中に含まれる成分のリテンションタイムに差異が生じることになる。
ここで、第1のカラム60に内包されているカラム充填剤は、スチレンポリマー微細粉末または有効活性炭微細粉末であることが好ましい。中でも、分析試料中に含まれるメタンガスと、二酸化炭素および一酸化二窒素とのリテンションタイムに明確な差異を生じさせる観点から、有効活性炭微細粉末が好ましい。ここで、有効活性炭微細粉末の具体例としては、モレキュラーシーブを含むゼオライト粉末や活性炭等が挙げられる。また、かかる有効活性炭微細粉末をカラム充填剤として用いる場合には、Unibeads C(GLサイエンス社製)、活性炭(SHINCARBON ST: 信和化工)、Molecular Sieve5A(GLサイエンス社製)およびMolecular Sieve13X(GLサイエンス社製)等の市販充填剤を使用してもよい。次に、スチレンポリマー微細粉末の具体例としては、Waters社製のPorapak Q、Porapak N、Porasil DおよびPorapak QS等のポーラスポリマー系の市販充填剤が挙げられる。中でも、Unibeads C(GLサイエンス社製)という充填剤は、二酸化炭素と一酸化二窒素とのリテンションタイムにも僅かながら差異を生じさせることができるため好ましい。
また、本分析装置において第1のカラム60は、主にモル質量が約16g/molであるメタンガスと、モル質量が約44g/molである二酸化炭素および一酸化二窒素とが、異なるガス相に含まれるように分離させるという観点から配した構成であるため、カラムの単位長さ当たりの理論段数よりも、炭化水素の分離に優れ、かつ処理できるサンプル量が多い等の観点から、パックドカラムであることが好ましい。
第1のカラム60のカラム温度は、たとえば、70℃以上170℃以下が好ましく、80℃以上150℃以下であるとさらに好ましい。こうすることで、メタンガスを含む上記第1のガス相と、二酸化炭素および一酸化二窒素を含む上記第2のガス相とのリテンションタイムに明確な差異を生じさせることが可能である。
本分析装置における第1のガス流路Aは、上記第1のカラム60の他に、カラムを高温条件下に熱した際にカラムブリードが生じることを抑制する観点から、スチレンポリマー微細粉末を充填剤として内包したカラムをさらに含むことが好ましい。かかるスチレンポリマー微細粉末としては、Waters社製のPorapak Q、Porapak N、Porapak DおよびPorapak QS等のポーラスポリマー系の市販充填剤が挙げられる。
また、第1のガス流路Aは、当該第1のガス流路Aにおける上記試料導入部30の下流側であって、上記第1のカラム60よりも上流側には、分析結果のS/N比を向上させる観点から、分析試料中に含まれる水分や酸素等を除去するため、たとえば、水分除去トラップや酸素除去トラップをさらに含むことが好ましい。
次に、第2のガス流路Bは、下流端に上述した第1のガス相中に含まれるメタンガスを検出するための水素炎イオン化型検出器100(以下、FID100とも示す。)を有している。かかるFID100は、一般的に、測定対象となるガスを水素炎中で燃焼させた際に生じるイオン電流を測定することにより全炭化水素の濃度を測定する検出器のことを指す。それ故、FID100という検出器は、メタンガスなどの炭化水素を検出するために適したものである。なお、FID100を用いたメタンガスの検出は、たとえば、キャリアガスを20mL/分以上40mL/分以下の流量で流し、FID100の温度を200℃以上300℃以下に設定し、1mLの分析試料を試料導入部30から導入した場合、2分程度の保持時間で検出することができる。
第2のガス流路BにおけるFID100より上流側には、カラムを高温条件下に熱した際にカラムブリードが生じることを抑制する観点から、スチレンポリマー微細粉末を充填剤として内包したカラムをさらに含むことが好ましい。かかるスチレンポリマー微細粉末としては、Waters社製のPorapak Q、Porapak N、Porasil DおよびPorapak QS等のポーラスポリマー系の市販充填剤が挙げられる。
次に、第3のガス流路Cは、パックドカラムからなる第2のカラム70と、上記第2のカラム70よりも下流側にあって、上記第2のガス相中に含まれる成分の種類に応じて流動遅延を生じさせ、二酸化炭素を含む第3のガス相と、一酸化二窒素を含む第4のガス相を得るために配された、キャピラリーカラム又はステンレスカラムからなる第3のカラム80と、上記第3のカラム80よりも下流側にあって上記第3のガス相中に含まれる二酸化炭素を検出するための熱伝導度型検出器200と、上記熱伝導度型検出器200よりも下流側にあって上記第4のガス相中に含まれる一酸化二窒素を検出するための電子捕獲型検出器300と、を有している。
第3のガス流路Cにおける第2のカラム70は、上述した第2のガス流路Bの出口圧と、当該第3のガス流路Cの出口圧とのバランスを調整するために配されている。このように、本分析装置においてはかかる第2のカラム70を有することにより、スイッチングバルブ400を用いて流路状態を切り替えた際に生じるバルブショックがベースラインや、検出ピーク形状に及ぼす影響を低減することができる。具体的には、上記バルブショックによりベースライン変動や検出ピーク形状の変動等の不都合が生じることを抑制することができる。本分析装置に導入する分析試料に含まれる一酸化二窒素のような微量成分を精度高く検出するためには、上述したバルブショックにより生じる不都合をできる限り低減することが殊に重要である。なお、上記第2のガス流路Bの出口圧は、当該第2のガス流路Bにおける上記水素炎イオン化型検出器100よりも上流側でのガス圧を指し、上記第3のガス流路Cの出口圧は、当該第3のガス流路Cにおける第3のカラム80の出口圧を指す。
ここで、本分析装置は、上記第2のガス流路Bの出口圧をR2とし、上記第3のガス流路Cの出口圧をR3とした時、上記第2のカラム70により、R2/R3の値が、1以上40以下となるように構成されていることが好ましく、2以上30以下となるように構成されているとさらに好ましい。こうすることで、二酸化炭素および一酸化二窒素の2成分を高いS/N比で検出することができる。なお、ガス流路の出口圧は、一般的に、カラムの口径に比例する。
第2のカラム70に内包されているカラム充填剤は、スチレンポリマー微細粉末または有効活性炭微細粉末であることが好ましい。中でも、分析試料中に含まれるメタンガスと、二酸化炭素および一酸化二窒素とのリテンションタイムに明確な差異を生じさせる観点から、有効活性炭微細粉末が好ましい。ここで、有効活性炭微細粉末の具体例としては、モレキュラーシーブを含むゼオライト粉末や活性炭等が挙げられる。また、かかる有効活性炭微細粉末をカラム充填剤として用いる場合には、Unibeads C(GLサイエンス社製)、活性炭、Molecular Sieve5A(GLサイエンス社製)およびMolecular Sieve13X(GLサイエンス社製)等の市販充填剤を使用してもよい。次に、スチレンポリマー微細粉末の具体例としては、Waters社製のPorapak Q、Porapak N、Porasil DおよびPorapak QS等のポーラスポリマー系の市販充填剤が挙げられる。殊に、Unibeads C(GLサイエンス社製)という充填剤は、二酸化炭素と一酸化二窒素とのリテンションタイムにも僅かながら差異を生じさせることができるため好ましい。
第2のカラム70のカラム温度は、たとえば、70℃以上110℃以下が好ましく、75℃以上100℃以下であるとさらに好ましく、80℃以上90℃以下であるとより好ましい。
次に、第3のガス流路Cにおける第3のカラム80は、上述したように、上記第2のカラム70よりも下流側にあるキャピラリーカラムまたはステンレスカラムであって、二酸化炭素と一酸化二窒素とを含む上記第2のガス相中に含まれる成分の種類に応じて流動遅延を生じさせ、二酸化炭素を含む第3のガス相と、一酸化二窒素を含む第4のガス相を得るために配されたものである。一般に、キャピラリーカラムやステンレスカラムは、パックドカラムと比べてカラム内径が小さく、理論段数が高いものである。そのため、第3のカラム80によれば、第2のカラム70を通過したガスの流量を低減させることが可能である。すなわち、第3のカラム80によれば、第3のカラム80の出口圧が第2のカラム70の出口圧と比べて小さくなるように制御することができる。これにより、本分析装置においては、分子量がほぼ同一であるが故、従来の分析装置においては完全に分離することが困難であった二酸化炭素および一酸化二窒素のリテンションタイムに明確な差異を生じさせることが可能となる。言い換えれば、本分析装置においては上記第3のカラム80を有した構成を採用しているため、二酸化炭素および一酸化二窒素のそれぞれを、精度高く検出することが可能となる。
ここで、上記第2のカラム70と上記第3のカラム80のカラム内径は、第2のカラム70が、1mm以上5mm以下であり、かつ第3のカラム80が、0.1mm以上1mm以下であることが好ましく、第2のカラム70が、2mm以上4.5mm以下であり、かつ第3のカラム80が、0.2mm以上0.8mm以下であるとさらに好ましい。こうすることで、本分析装置に導入する分析試料に含まれる二酸化炭素及び一酸化二窒素の両成分を、それぞれ高いS/N比で検出することができる。
本分析装置における第3のカラム80の出口流量(第3のガス流路Cにおける出口流量)は、大気ガス中の含有量が極めて少ない一酸化二窒素の量がppbオーダーであったとしても精度よく検出する観点から、試料導入部30から500μL以上の分析試料を導入した時、上記出口流量が、3mL/min以上25mL/min以下となるように構成されていることが好ましく、3mL/min以上20mL/min以下となるように構成されているとさらに好ましい。
第3のカラム80に内包させるカラム充填剤としては、メチルポリシロキサン等が挙げられる。そして、かかる第3のカラム80としては、HP−1(アジレント・テクノロジー社製)やDB−1(アジレント・テクノロジー社製)等の市販のキャピラリーカラムや、80〜100mesh程度の大きさのPorapak Q(GLサイエンス社製)、Porapak N(GLサイエンス社製)およびPorasil D(GLサイエンス社製)等のポーラスポリマー系充填剤を内包させた2〜5m程度のステンレスカラムを用いることができる。中でも、二酸化炭素と一酸化二窒素の分離効率を向上させる観点から、PoraBOND Qを用いることが好ましい。
第3のカラム80のカラム温度は、たとえば、70℃以上170℃以下が好ましく、80℃以上160℃以下であるとさらに好ましい。こうすることで、二酸化炭素および一酸化二窒素のそれぞれを、高いS/N比で検出することが可能となる。
第3のガス流路Cは、第3のカラム80よりも下流側に上述した第3のガス相中に含まれる二酸化炭素を検出するための熱伝導度型検出器200(以下、TCD200とも示す。)を有している。かかるTCD200は、一般的に、測定対象成分とキャリアガスとの熱伝導度の差を測定することにより上記測定対象成分の濃度を測定する検出器のことを指す。それ故、TCD200という検出器は、キャリアガスに含まれる成分以外の成分を検出するために適したものである。なお、TCD200を用いた二酸化炭素の検出は、たとえば、キャリアガスを35mL/分以上45mL/分以下の流量で流した場合、キャリアガスの流出開始から4分から5分程度の保持時間で検出することができる。
第3のガス流路Cは、TCD200よりも下流側に上述した第4のガス相中に含まれる一酸化二窒素を検出するための電子捕獲型検出器300(以下、ECD300とも示す。)を有している。かかるECD300は、一般的に、63Niによるβ線を用いてキャリアガスをイオン化して放出された電子と親電子物質とが結合することにより、当該ECD300中の電極間に流れるイオン電流が減少する量を測定して上記親電子物質の濃度を測定する検出器のことを指す。それ故、ECD300という検出器は、ニトロ化合物等の成分を検出するために適したものである。なお、ECD300を用いた一酸化二窒素の検出は、たとえば、キャリアガスを35mL/分以上45mL/分以下の流量で流した場合、キャリアガスの流出開始から4分から5分程度の保持時間で検出することができる。
また、第3のガス流路Cは、上記TCD200よりも下流側にあって、上記ECD300よりも上流側に、添加ガスを導入する添加ガス導入部50をさらに有することが好ましい。上述したように、ECD300という検出器は、キャリアガスをイオン化することで電極間に流れるイオン電流(さらに具体的には、負イオン電流)を利用するものである。そのため、キャリアガス中には、イオン化しやすい成分が十分に含まれている必要がある。それ故、上記添加ガス導入部50から第3のガス流路C中に、窒素ガスやメタンガスなどのイオン化しやすいガス成分を供給することにより、大気ガス中の含有量が極めて少ない一酸化二窒素の量をppbオーダーで精度よく検出することが可能となる。
次に、上述した本分析装置を用いて分析試料である大気ガス中に含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を検出する3成分同時分析方法(以下、本分析方法とも云う。)について説明する。
本分析方法は、キャリアガスをガス流路に導入するキャリアガス導入工程と、上記キャリアガスが充填されたガス流路に対して分析試料を導入する試料導入工程と、分析試料中に含まれる成分から、メタンガスを含む第1のガス相と、二酸化炭素および一酸化二窒素を含む第2のガス相とを得る第1のガス分離工程と、第2のガス相中に含まれる成分から、二酸化炭素を含む第3のガス相と、一酸化二窒素を含む第4のガス相とを得る第2のガス分離工程と、を有する手法である。
(キャリアガス導入工程)
本分析方法においては、まず、図1に示す本分析装置におけるキャリアガス導入部10から第1のガス流路Aにキャリアガスを導入する。こうすることにより、本分析装置におけるガス流路内に存在する全ガス成分を上記キャリアガスに置換することができる。なお、キャリアガスの流量は、使用するカラムの仕様と分析対象となる成分の保持時間(リテンションタイム)との関係を考慮して、本分析装置に搭載されている流量調圧器により、適宜設定すればよいが、メタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分のリテンションタイムに差を生じさせる観点から、20mL/min以上40mL/min以下とすることが好ましい。
本分析方法においてキャリアガスは第1のガス流路Aに導入する前に、キャリアガス浄化装置20を用いてその純度を高めておくことが好ましい。すなわち、キャリアガス導入工程が、キャリアガスの純度を向上させる工程をさらに含むことが好ましい。こうすることで、キャリアガス中に含まれる夾雑物による影響で分析結果のS/N比や検出感度が低下することを防ぐことができる。具体的には、キャリアガス浄化装置20によりキャリアガスの純度を事前に高めておくことにより、キャリアガス中に含まれる夾雑物の検出ピークが分析対象である上記3成分の検出ピークと重なること、後述するガス分離カラム(第1〜第3のカラム等)に滞留した上記夾雑物が検出器ノイズを増長させることやカラム寿命を短くすること等の不都合が生じることを抑制することができる。殊に、キャリアガスの純度は、大気ガス中の含有量が極めて少ない一酸化二窒素の量をppbオーダーで精度よく検出する観点から、99.999%以上にしておくことが好ましく、99.9999%以上にしておくとさらに好ましく、99.99999%以上にしておくとより一層好ましく、99.999999%以上にしておくと最も好ましい。なお、キャリアガスの純度の上限値は、99.9999999%程度であれば上述した夾雑物による影響で生じる不都合が生じること自体を防ぐことができる。また、キャリアガスは、純度99.999%以上のヘリウムガス又は窒素ガスであることが好ましい。上述したキャリアガス浄化装置20は、キャリアガスの純度をできる限り向上させる観点から、多段階のキャリアガス浄化機構を備えていることが好ましい。
(試料導入工程)
次いで、本分析方法においては、キャリアガスで充填されたガス流路に対して分析試料を試料導入部30から導入する。具体的には、バイアル瓶などの容器に採取した大気ガス1〜2mLを、ガスタイトシリンジを用いて試料導入部30に導入する。
本分析方法においては、測定結果を取得するまでに費やす労力と時間を低減する観点から、たとえば、ガス自動注入装置(オートサンプラー)を用いて大気ガスを試料導入部30からガス流路に対して導入してもよい。
(第1のガス分離工程)
次いで、本分析方法においては、分析試料を成分の種類に応じて流動遅延を生じさせるための第1のカラム60に通過させる。こうすることで、分析試料中に含まれる各成分を、メタンガスを含む第1のガス相と、二酸化炭素および一酸化二窒素を含む第2のガス相とに分離することができる。なお、分析試料は、上記第1のカラム60に通過させる前および/または後、カラムを高温条件下に熱した際にカラムブリードが生じることを抑制する観点から、Waters社製のPorapak Q、Porapak N、Porasil DおよびPorapak QS等のポーラスポリマー系の市販充填剤が内包されたカラムに通過させてもよい。本分析方法においては、上記第1のガス相に含まれる各成分の方が、上記第2のガス相に含まれる各成分と比べて、第1のカラム60に保持される時間が短い。
次いで、メタンガスを含む上記第1のガス相を、水素炎イオン化型検出器100を有する第2のガス流路Bに導入し、かかるメタンガス導入工程の後、スイッチングバルブ400により流路状態を切り替え、二酸化炭素および一酸化二窒素を含む上記第2のガス相を、熱伝導度型検出器200および電子捕獲型検出器300を有する第3のガス流路Cに導入する。なお、スイッチングバルブ400による流路状態の切り替えは、キャリアガスの流量や、第1のカラム60による各成分の保持時間などを考慮して適切なタイミングで行う。
次いで、第2のガス流路Bに導入された上記第1のガス相に含まれるメタンガスをFID100により検出する。なお、第2のガス流路Bに導入された上記第1のガス相については、カラムを高温条件下に熱した際にカラムブリードが生じることを抑制する観点から、FID100に導入する前にWaters社製のPorapak Q、Porapak N、Porasil DおよびPorapak QS等のポーラスポリマー系の市販充填剤が内包されたカラムを通過させることが好ましい。
(第2のガス分離工程)
次いで、第3のガス流路Cに導入された二酸化炭素および一酸化二窒素を含む上記第2のガス相を、パックドカラムからなる第2のカラム70に通過させる。その後、上記第2のガス相を、成分の種類に応じて流動遅延を生じさせるためのキャピラリーカラムまたはステンレスカラムからなる第3のカラム80に通過させる。こうすることで、第2のガス相に含まれる各成分を、二酸化炭素を含む第3のガス相と、一酸化二窒素を含む第4のガス相とに分離することができる。本分析方法においては、上記第3のガス相に含まれる各成分の方が、上記第4のガス相に含まれる各成分と比べて、第3のカラム80に保持される時間が短い。
その後、第3のガス相を通過して得られた上記第3のガス相に含まれる二酸化炭素をTCD200により検出した後、TCD200を通過した上記第4のガス相に含まれる一酸化二窒素をECD300により検出する。ここで、本分析方法においては、二酸化炭素をTCD200により検出してから上記第4のガス相をECD300に導入するまでの間、すなわち、二酸化炭素を検出してから一酸化二窒素を検出するまでの間に、大気ガス中の含有量が極めて少ない一酸化二窒素の量をppbオーダーで精度よく検出する観点から、ガス流路にメタンガスまたは窒素ガスを添加ガスとして導入することが好ましい。また、本発明者がこれまでに得ている知見によれば、窒素ガスをキャリアガスとして使用する場合においても、メタンガスを添加することにより、ECD300による一酸化二窒素の検出感度(およびS/N比)を最大で10倍向上させることが可能である(非特許文献3)。
本実施形態においては、一度の分析で、大気ガスに含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を、試料濃度がppbオーダーである場合においても高いS/N比で同時に検出することができる。また、本実施形態によれば、たとえば、一度の分析で、大気ガスに含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を定量することも可能となる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
図1は、本実施例に係る3成分同時分析装置の構成を示す系統図である。かかる装置を組み立てるにあたって、カラム恒温槽等の機能を利用すべく、市販のガスクロマトグラフを計2台(GC-14B型ガスクロマトグラフ(島津製作所社製)及びGC−17A型ガスクロマトグラフ(ECD付き)(島津製作所社製))を準備した。そして、図1に示すように、ガスの供給系統、スイッチングバルブ(A)400(島津製作所社製、空気圧駆動型10方スイッチングバルブ)、スイッチングバルブ(B)500(島津製作所社製、空気圧駆動型10方スイッチングバルブ)、各種分離カラム、FID100(島津製作所社製、GC−14B用FID)、TCD200(島津製作所社製、GC−14B用TCD)およびECD300(島津製作所社製、GC−17A用ECD)をそれぞれ配置した。なお、各機器を接続するためのガス配管は、全て外径2mmのSUS316チューブを使用した。
ここで、キャリアガスの供給系統としては、キャリアガス浄化装置20としてクリーンフィルター(アジレント社製ガスクリーニングユニット:モレキュラーシーブと、アジレント社製ガスクリーニングユニット:オキシゲントラップを併用)と、ガス流量調整器(島津製作所社製、CFC−114PM型)とを有したキャリアガス導入部10を採用した。かかるキャリアガス導入部10から導入した窒素(工業用グレード)を、クリーンフィルターを介することにより、その純度を純度99.999%以上に高めた上で、30mL/minのガス流量で3成分同時分析装置内にキャリアガスを導入した。
添加ガスの供給系統としては、ガス流量調整器(島津製作所社製、CFC−114PM型)と、クリーンフィルター(Supelco社製、OMI−2型)とを有した添加ガス導入部50を採用した。かかる添加ガス導入部50から、高純度のメタン(JFP社製、G1(純度99.999%以上))を1〜5mL/minのガス流量で添加ガスを導入した。
本分析装置が有する分離カラムは、以下のものを使用した。
カラムCo1:Unibeads C 80/100mesh(GLサイエンス社製、内径2mm、長さ0.5m)
カラムCo2:Porapak QS 80/100mesh(Waters社製、内径3mm、長さ1.5m)
カラムCo3:Porapak QS 80/100mesh(Waters社製、内径3mm、長さ1m)
カラムCo4:Porapak QS 80/100mesh(Waters社製、内径3mm、長さ2m)
カラムCo5:Porapak N 80/100mesh(Waters社製、内径3mm、長さ1m)
カラムCo6:CP PoraBOND Q 80/100mesh(アジレント・テクノロジー社製、内径0.53mm、長さ1m)
カラムCo7:Porapak N 80/100mesh(Waters社製、内径3mm、長さ1m)
カラムCo8:Porapak QS 80/100mesh(Waters社製、内径3mm、長さ1m)
カラムCo9:Porapak QS 80/100 mesh (Waters社製、内径3mm、長さ2m)
本分析装置において上述した9本の分離カラムは、それぞれ、以下の温度に制御した恒温槽内に配置した。カラムCo1は、160℃に制御した恒温槽に、カラムCo2〜Co9は、90℃に制御した恒温槽に配置した。なお、カラムCo9は、ガス流路にかかる抵抗を一定条件に保持するために配置したものである。
次いで、分析試料である大気ガス中に含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を検出するための、本分析装置の使用方法を説明する。
まず、バイアル瓶に採取した分析試料である大気ガス1mLを、ガスタイトシリンジを用いて試料導入部30からキャリアガスが充填されたガス流路に導入した。このようにして、分析試料とキャリアガスとの混合ガスを作製した。
混合ガスは、カラムCo8、Co2およびカラムCo1を通過し、流出開始から1.8分経過するまでは、スイッチバルブ400を操作することにより、カラムCo7を有するガス流路に混合ガスを流入させる。その後、流出開始から2.5分経過した段階でスイッチングバルブ400を操作し、混合ガスをカラムCo5およびCo6を有するガス流路に流入させた。
まず、試料導入部30から分析試料を導入してから2.8分後に、FID100を用いてメタンガスを検出した。なお。メタンガスのピークは、FID100による検出開始から0.3分であった。
次いで、試料導入部30から分析試料を導入してから3.9分後に、TCD200を用いて二酸化炭素を検出した。なお、二酸化炭素のピークは、TCD200による検出開始から0.3分であった。
その後、TCD200から排出された混合ガスに、添加ガス導入部50からメタンガスを添加した。なお、添加ガスは、ガスクリーンフィルタを通過させた後に、添加ガス導入部50から純度99.999%以上のメタンガスを0.15mL/minの流量で、キャリアガス全量に対して0.5%の割合となるように、導入した。その後、試料導入部30から分析試料を導入してから5.0分後に、ECD300を用いて一酸化二窒素を検出した。なお。一酸化二窒素のピークは、ECD300による検出開始から0.3分であった。
また、スイッチングバルブ400を操作し、混合ガスをカラムCo2、Co1およびCo7を有するガス流路に流入させる前後(以下、流入前または流入後と示す。)におけるFID100と、カラムCo5およびCo6を有するガス流路に流入させる前後におけるTCD200の出口流量は以下の通りであった。
<流入前>
FID100の出口流量:27.4mL/min
TCD200の出口流量1(分析試料+キャリアガス):33.9mL/min
TCD200の出口流量2(キャリアガス):34.2mL/min
<流入後>
FID100の出口流量:28.0mL/min
TCD200の出口流量1(分析試料+キャリアガス):34.3mL/min
TCD200の出口流量2(キャリアガス):34.2mL/min
以下の表1に、本分析装置を用いて大気ガス中に含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を検出した結果を示す。
ここで、測定試料として用いた大気中に含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素の濃度は、それぞれ、メタンガス:1.74ppm、二酸化炭素:390ppm、一酸化二窒素:319ppbである。
Figure 2017138646
表1の結果からも分かるとおり、本分析装置によれば、一度の分析で、大気ガスに含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を、試料濃度がppbオーダーである場合においても高いS/N比で同時に検出することが可能であった。
そして、上記実施例におけるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素の測定濃度は、それぞれ、メタンガス:1.74ppm、二酸化炭素:390ppm、一酸化二窒素:319ppbであった。
この出願は、2016年2月10日に出願された日本出願特願2016−023363号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。

Claims (10)

  1. 分析試料である大気ガス中に含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を検出するための3成分同時分析装置であって、
    当該3成分同時分析装置は、
    第1のガス流路と、
    前記第1のガス流路よりも下流側に位置する第2のガス流路および第3のガス流路と、
    前記第1のガス流路と前記第2のガス流路との間、および前記第1のガス流路と前記第3のガス流路との間にあって、前記第1のガス流路と前記第2のガス流路とが連通する第1状態と、前記第1のガス流路と前記第3のガス流路とが連通する第2状態とに切り替えるためのスイッチングバルブと、を有し、
    前記第1のガス流路は、
    キャリアガスを導入するキャリアガス導入部と、
    前記分析試料を導入する試料導入部と、
    前記キャリアガス導入部および前記試料導入部よりも下流側にあって、前記分析試料中に含まれる成分の種類に応じて流動遅延を生じさせ、前記メタンガスを含む第1のガス相と、前記二酸化炭素および前記一酸化二窒素を含む第2のガス相を得るために配された第1のカラムと、
    を有し、
    前記第2のガス流路は、
    下流端に前記第1のガス相中に含まれる前記メタンガスを検出するための水素炎イオン化型検出器を有し、
    前記第3のガス流路は、
    パックドカラムからなる第2のカラムと、
    前記第2のカラムよりも下流側にあって、前記第2のガス相中に含まれる成分の種類に応じて流動遅延を生じさせ、前記二酸化炭素を含む第3のガス相と、前記一酸化二窒素を含む第4のガス相を得るために配された、キャピラリーカラム又はステンレスカラムからなる第3のカラムと、
    前記第3のカラムよりも下流側にあって前記第3のガス相中に含まれる前記二酸化炭素を検出するための熱伝導度型検出器と、
    前記熱伝導度型検出器よりも下流側にあって前記第4のガス相中に含まれる前記一酸化二窒素を検出するための電子捕獲型検出器と、
    を有する、3成分同時分析装置。
  2. 前記キャリアガス導入部がキャリアガス浄化装置を含む、請求項1に記載の3成分同時分析装置。
  3. 前記第1のカラムに内包されているカラム充填剤が、スチレンポリマー微細粉末または有効活性炭微細粉末である、請求項1または2に記載の3成分同時分析装置。
  4. 前記第3のガス流路は、前記第3のガス流路における前記熱伝導度型検出器よりも下流側にあって、前記電子捕獲型検出器よりも上流側に、添加ガスを導入する添加ガス導入部をさらに有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の3成分同時分析装置。
  5. 前記第3のカラムの出口圧が前記第2のカラムの出口圧と比べて小さくなるように構成された、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の3成分同時分析装置。
  6. 前記第2のカラムの内径が、1mm以上5mm以下であり、かつ
    前記第3のカラムの内径が、0.1mm以上1mm以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の3成分同時分析装置。
  7. 分析試料である大気ガス中に含まれるメタンガス、二酸化炭素および一酸化二窒素からなる3成分を検出する3成分同時分析方法であって、
    キャリアガスをガス流路に導入するキャリアガス導入工程と、
    前記キャリアガスが充填された前記ガス流路に対して前記分析試料を導入する試料導入工程と、
    前記分析試料中に含まれる成分から、メタンガスを含む第1のガス相と、二酸化炭素および一酸化二窒素を含む第2のガス相とを得る第1のガス分離工程と、
    前記第2のガス相中に含まれる成分から、二酸化炭素を含む第3のガス相と、一酸化二窒素を含む第4のガス相とを得る第2のガス分離工程と、
    を有し、
    前記第1のガス分離工程は、
    前記分析試料を成分の種類に応じて流動遅延を生じさせるための第1のカラムに通過させる工程と、
    第1のカラムに通過させる前記工程の後工程において、前記第1のガス相を、水素炎イオン化型検出器を有するガス流路に導入するメタンガス導入工程と、前記第2のガス相を、熱伝導度型検出器および電子捕獲型検出器を有するガス流路に導入する工程と、
    前記メタンガス導入工程の後工程において、水素炎イオン化型検出器により前記第1のガス相に含まれるメタンガスを検出する工程と、を含み、
    前記第2のガス分離工程は、
    前記第2のガス相をパックドカラムからなる第2のカラムに通過させる工程と、
    前記第2のガス相を、成分の種類に応じて流動遅延を生じさせるためのキャピラリーカラムまたはステンレスカラムからなる第3のカラムに通過させる工程と、
    第3のカラムに通過させる工程の後工程において、前記熱伝導度型検出器により前記第3のガス相中に含まれる二酸化炭素を検出し、前記電子捕獲型検出器により前記第4のガス相中に含まれる一酸化二窒素を検出する工程と、を含む3成分同時分析方法。
  8. 前記一酸化二窒素を検出する工程が、
    前記二酸化炭素を検出してから前記一酸化二窒素を検出するまでの間に前記ガス流路にメタンガスまたは窒素ガスを添加ガスとして導入する工程をさらに含む、請求項7に記載の3成分同時分析方法。
  9. 前記キャリアガス導入工程が、前記キャリアガスの純度を向上させる工程をさらに含む、請求項7または8に記載の3成分同時分析方法。
  10. 前記キャリアガスが、純度99.999%以上のヘリウムガス又は窒素ガスである請求項7乃至9のいずれか一項に記載の3成分同時分析方法。
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