JPWO2017111103A1 - セルロースザンテートナノファイバー - Google Patents

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Abstract

セルロース材料から、結晶性を保持したナノファイバーを、軽度な負荷で得られるようにする。セルロースを含有する材料を4質量%以上9質量%以下の水酸化アルカリ金属水溶液で処理してアルカリセルロースを生成し、このアルカリセルロースを二硫化炭素と反応させてセルロースザンテートとし、このセルロースザンテートを解繊処理してナノファイバーとする。その後、酸もしくは加熱処理してザンテートからセルロースナノファイバーを再生させる。

Description

この発明は、セルロース材料から製造するナノファイバー、及びその製造方法に関する。
植物由来のセルロース材料を構成する繊維を繊維径1μm未満程度にまで細分化させたナノセルロースと呼ばれる新たな材料が注目されている。このナノセルロースと呼ばれる材料の中で、さらに大きさやアスペクト比によって異なる材料が提案されている。そのうち、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、フィブリレーティドセルロースなどと呼ばれる、主として繊維径4〜100nm程度、長さ5μm以上の材料は、補強用繊維として優れた性質を持つため、製造、研究が進められている。この材料には様々な名称が提案されているが、本出願ではこの材料をセルロースナノファイバーと呼ぶ。また、セルロースの変性物でセルロースナノファイバーに類似するサイズ及びアスペクト比を有するものをまとめてナノファイバーと呼ぶ。
このセルロースナノファイバーを製造するには、セルロースを細かく解繊する必要がある。セルロース自体が強固な材料であるだけでなく、原料が木材の場合はリグニンその他の強固な物質を含むため、解繊しようとしても適切なサイズのセルロースナノファイバーを得ることは難しい。このため、種々の方法が提案されている。
例えば、パルプスラリーを狭い空隙に押し込み、圧力の開放で解繊を進める高圧ホモジナイザー等で解繊する方法が下記非特許文献1で報告されている。しかしこのような機械的な方法では、解繊を進めるために幾度も処理を繰り返す必要があり、解繊処理に必要なエネルギーが膨大なものとなった。また、幅が数ナノレベルの繊維は得ることが困難であり、200MPa以上の高圧処理を繰り返すため、実施できる装置が限られるだけでなく、得られるセルロースナノファイバーが損傷を受けやすいという問題もあった。
これに対して、解繊処理前に原料を酸で前処理することでリグニンを除去して、解繊を進めやすくする方法が下記特許文献1に提案されている。単純な機械的方法によって高圧を加える手法に比べて、加える外力を小さくできるため、得られるセルロースナノファイバーは損傷が少ないものとなる。
また、下記非特許文献2や下記特許文献2ではセルロースにカルボキシル基又はカルボキシメチル基を導入して解繊させやすくする手法が報告されている。パルプを触媒量の2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(TEMPO)と、酸化剤である次亜塩素酸ナトリウムとの共存下で処理すると、セルロースミクロフィブリルの表面にある繊維を構成するセルロースの6位にカルボキシル基を効率良く導入することができる(非特許文献2)。また、パルプをアルカリ存在下でモノクロロ酢酸ナトリウムと反応し、カルボキシメチル基を導入することができる(特許文献2)。そうしてカルボキシル基が導入されたTEMPO酸化セルロースやカルボキシメチル基が導入されたカルボキシメチルセルロースは、変性されていないセルロースに比べて解繊しやすくなる。このため、単純な機械的方法による高圧での処理に比べて、処理回数を削減し、より低い圧力で、ナノファイバーに相当するサイズの生成物を得ることができる。
特許第5500842号公報 特開2013−185122号公報
Enzymatic Hydrolysis Combined with Mechanical Shearing and High-Pressure Homogenization for Nanoscale Cellulose Fibrils and Strong Gels: Biomacromolecules, 2007, 8 (6), 1934-1941 Preparation of cellulose single microfibrils from native cellulose by Tempo-mediated oxidation: Cellulose Commun., 2007, 14 (2), 62-66
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、脱リグニン処理のために酸などで長時間に亘る処理が必要であり、前処理にかかる負担が大きかった。
また、特許文献2又は非特許文献2に記載の方法では、セルロースナノファイバーそのものではなく、TEMPO酸化セルロースもしくはカルボキシメチルセルロースしか得られない。これらはセルロースナノファイバーから変性されたものである。しかもこれらのTEMPO酸化セルロース及びカルボキシメチルセルロースをセルロースに戻すことは困難であり、これらの変性されたナノファイバーから変性の無いセルロースナノファイバーを得ることはできなかった。しかも、カルボキシル基を導入する変性の際にセルロースの結合も切れてしまい、得られるナノファイバー相当物の重合度が4分の1以下程度にまで低下してしまい、得られるナノファイバー相当物に求める強度を維持しにくかった。さらにこの方法は、用いるTEMPOが高価であるため、得られるナノファイバーの製造コストを下げることが難しかった。
そこでこの発明は、セルロース材料からナノファイバーに相当する解繊された材料を得るにあたり、製造時の処理負担を抑制しながら、長さの減少を抑えて高アスペクト比を有するナノファイバーを得ることを目的とする。また、そのナノファイバーを容易にかつ高い収率でセルロースに戻して、効率良くセルロースナノファイバーを得られるようにすることを目的とする。
この発明は、セルロースを含有する材料を4質量%以上9質量%以下の水酸化アルカリ金属水溶液で処理してアルカリセルロースを生成し、このアルカリセルロースを二硫化炭素と反応させてセルロースザンテートとし、このセルロースザンテートを解繊処理することで、上記の課題を解決したのである。このセルロースザンテートは、セルロースの2、3、6位の水酸基のいずれかに導入されたザンテート基(−OCSS)の存在によって単純なセルロースよりも解繊されやすくなると考えられる。そのため、高圧であったり高温であったりする高い負荷下での解繊を繰り返す従来の手法に比べて、比較的低い負荷で容易にナノファイバーとすることができる。解繊処理の負担が小さく、かつザンテート基の導入時にはセルロース繊維が切断されないため、工程全体を通じてセルロース繊維が短くなりにくく、長くアスペクト比の高いナノファイバーを得やすい。そして、このザンテート基は酸処理や加熱処理することで、速やかにかつ極めて高い効率で水酸基に戻すことができる。ザンテート基が水酸基に戻ることで、セルロースザンテートナノファイバーはセルロースナノファイバーとなる。
この製造方法は、パルプからビスコースを経由してセロファンを製造する製造方法に類似するが、大きく異なる特徴を有する。ビスコースを製造するには、まずセルロースを含有する材料であるパルプを10質量%〜30質量%程度という高濃度の水酸化アルカリ金属水溶液でアルカリ処理し、パルプが含有するセルロースの結晶領域にまで水酸化アルカリ金属水溶液を浸透させ、結晶性を失ったセルロースII型の状態のアルカリセルロース([C6H7O2(OH)2(ONa)]n)とする。このとき、平均重合度は800程度から400程度へと約半分ほどで繊維長を維持する。このように結晶性を喪失したアルカリセルロースと二硫化炭素(CS2)とを反応させて、セルロースザンテート([C6H7O2(OH)2(OCSSNa)]n)を得る。このセルロースザンテートを水酸化アルカリ金属水溶液に溶解させたものがコロイド状のビスコースである。このビスコースを希硫酸などで処理してセルロースに戻す際に、フィルム状となるように処理して、セロファンを製造している。
この発明にかかる方法と従来のビスコースを用いてセロファンを作る手法との最大の相違点は、アルカリ処理を行う水酸化アルカリ金属水溶液の濃度にある。セルロース含有材料を高濃度の水酸化アルカリ金属水溶液で処理すると、水酸化アルカリ金属溶液がセルロースの結晶領域にまで浸透して結晶性を維持できず、結晶性を有するナノファイバーを得ることができない。この発明のようにセルロース含有材料を4質量%〜9質量%の水酸化アルカリ金属水溶液でアルカリ処理することで、ナノファイバーとしての物性を維持できる程度に結晶性を維持しながら、解繊処理が容易になるザンテート化のための前処理とすることができる。
この発明により、容易な解繊処理でセルロースザンテートナノファイバーを得ることができる。また、そのセルロースザンテートナノファイバーから、必要に応じてセルロースザンテートを無変性のセルロースに戻して、セルロースナノファイバーを容易に得ることができる。
実施例における解繊処理後のザンテートナノファイバーの15000倍SEM写真 図1と同様の条件の別写真 実施例における水酸化ナトリウム水溶液の濃度を変えた場合のIR測定結果 図3の一部拡大図 実施例11における加熱再生と実施例12における酸再生のセルロースナノファイバーのIR測定結果 実施例11における加熱再生後のセルロースナノファイバーの15000倍SEM写真 実施例27における天然ゴムマスターバッチのX線CT画像 比較例10における天然ゴムマスターバッチのX線CT画像
以下、この発明について詳細に説明する。この発明は、セルロース材料からナノファイバーを得る製造方法、及び得られるナノファイバーである。
この発明において材料として用いるセルロース材料とは、結晶状態であるセルロースI型のα−セルロースを含む材料をいう。α−セルロースであっても結晶状態を失って完全にセルロースII型になった材料は好適には使用できない。具体的な材料としては、例えば、木材を加工したクラフトパルプやサルファイトパルプ、木粉、稲わらなどのバイオマス由来の材料、古紙、ろ紙、紙粉などの紙由来の材料、粉末セルロースや、マイクロメートルサイズの微結晶セルロースなどの結晶性を保持したセルロース加工物などが挙げられる。ただし、これらの例に限定されるものではない。また、これらのセルロース材料は、純粋なα−セルロースである必要はなく、β−セルロースやヘミセルロース、リグニンなどのその他の有機物や無機物などを、除去可能な範囲で含んでいても良い。なお、以下の説明において単に「セルロース」と呼ぶ場合には「α−セルロース」を指す。これらのセルロース材料の中でも、元のセルロース繊維の長さが維持されやすいため木材パルプを用いるのが好ましい。
この発明にかかる製造方法では、上記セルロース材料を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属水溶液で処理するアルカリ処理を行ってアルカリセルロースを得ることができる。中でも、水酸化ナトリウムが好適に用いられる。この水酸化アルカリ金属水溶液の濃度は4質量%以上であることが必要であり、5質量%以上であると好ましい。4質量%未満であると、セルロースのマーセル化が十分に進行せず、その後のザンテート化の際に生じる副生成物の量が無視できなくなり、収率も下がってしまう。また、後述する解繊処理を容易にする効果が不十分なものとなってしまう。一方で、上記の水酸化アルカリ金属水溶液の濃度は、9質量%以下であると好ましい。9質量%を超えると、マーセル化の進行に留まらず、セルロースの結晶領域にまで水酸化アルカリ金属溶液が浸透してしまってセルロースI型の結晶構造が維持できなくなり、最終的にナノファイバーが得られにくくなってしまう。
上記アルカリ処理の時間は、30分間以上であると好ましく、1時間以上であるとより好ましい。30分間未満ではマーセル化が十分に進行せずに、最終的な収率が低下しすぎるおそれがある。一方で6時間以下であると好ましく、5時間以下であるとより好ましい。6時間を超えてマーセル化を行った場合においては、時間の延長によるアルカリセルロースの生成量が増加することはなく、生産性が低下するおそれがある。
上記アルカリ処理の温度は、常温前後か、常温からの発熱により加熱される程度の温度であるとよい。ただし、処理温度が冷蔵条件下のような極端な低温であると、アルカリ溶液のセルロースへの浸透性が増加しやすくなり、上記範囲のアルカリ濃度であってもセルロースの結晶領域にまで水酸化アルカリ金属溶液が浸透してしまってセルロースI型の結晶構造が維持しにくくなるおそれがある。このため、上記アルカリ処理を行う温度が凍結温度以上10℃未満の場合は、水酸化アルカリ金属溶液濃度が4質量%以上7質量%以下の範囲であると特に好ましくなる。10℃以上では特にこのような傾向は見られず、上記の通り4質量%以上9質量%以下の水酸化アルカリ金属水溶液が好ましい濃度となる。一方、加熱しすぎるとセルロースの重合度が低下するおそれがある。
上記アルカリ処理で得られたアルカリセルロースは、その後に固液分離して水溶液分をできるだけ除去しておくと好ましい。次のザンテート化処理にあたって、水分が少ない方が反応を進行させ易くなるからである。固液分離の方法としては、例えば遠心分離や濾別などの一般的な脱水方法を用いることができる。固液分離後のアルカリセルロースに含まれる水酸化アルカリ金属の濃度が3質量%以上8質量%程度となるとよい。薄すぎても濃すぎても作業効率が悪くなる。
上記アルカリ処理の次に、上記のアルカリセルロースに二硫化炭素(CS)を反応させて、(−ONa)基を(−OCSSNa)基にしてセルロースザンテートを得るザンテート化処理を行う。なお、アルカリ金属を代表してNaで記述するが、Na以外のアルカリ金属を用いる場合も同様の処理を行う。
このザンテート化処理におけるグルコース単位当たりの平均ザンテート置換度は、0.33以上であると好ましい。すなわち、全グルコース単位のうち、平均して1/3以上が、(−OCSSNa)基を有するように置換されていることが好ましい。ザンテート化が十分でなく含有する(−OCSSNa)基が少なすぎると、この後に行う解繊処理における促進効果が十分に得られないからである。一方、平均ザンテート置換度は1、すなわち元のセルロースのグルコース1単位にある3つの(−OH)基のうち、平均すると少なくとも一つが(−OCSSNa)基になっていると、収率及び効率の点から好ましい。ザンテート置換度が1.2を超えると、ザンテート基により個々のセルロースザンテート高分子の親水性が大きくなりすぎて解繊処理の際にセルロースザンテート高分子が溶解する方向へ進むと考えられるので、ザンテート置換度は1.2以下であるとよい。これを元々のセルロースが有する全ての(−OH)基に対する硫化度で示すと、10mol%(ザンテート置換度0.33に対応。)以上であると好ましく、40mol%(平均ザンテート置換度1.2に対応。)以下であると好ましく、33.3mol%(平均ザンテート置換度1.0に対応。)以下であるとより好ましいということになる。
上記の平均ザンテート置換度を上げるには、十分な量の二硫化炭素を供給することが望ましい。具体的には、アルカリセルロース中に含有するセルロースの質量に対して、10質量%以上に対応する二硫化炭素を供給しておくことが望ましい。少なすぎるとザンテート置換度が下がりすぎて、解繊処理において少ないエネルギーで解繊させる本発明の促進効果が十分に得られなくなってしまう。一方、平均ザンテート置換度が1.2以下となる量の二硫化炭素を添加するのが好ましいが、過剰量の二硫化炭素を供給しても、アルカリセルロースと反応できずに無駄となってしまい、二硫化炭素の供給に余分なコストがかかりすぎてしまう。なお、二硫化炭素によって仮に全量置換されるとすると、約24質量%の二硫化炭素で硫化度が約33mol%(上記の平均ザンテート置換度が1)となる。実際には全量置換はされず、反応されない分が残ると考えられる。
また、上記の平均ザンテート置換度を上げるには、二硫化炭素とアルカリセルロースとが接触する時間を30分間以上とすると好ましく、1時間以上だとより好ましい。二硫化炭素の接触によるザンテート化は速やかに進行するが、アルカリセルロースの内部にまで二硫化炭素が浸透するには時間がかかるためである。一方で、6時間もあれば脱水後のアルカリセルロースの塊に対しても十分に浸透が進んで、反応可能なザンテート化がほぼ完了するため、6時間以下であるとよい。
このザンテート化処理にあたっては、脱水したアルカリセルロースに二硫化炭素を供給し、温度46℃以下にて気体の二硫化炭素とアルカリセルロースとを反応させるのが好ましい。46℃を超えるとアルカリセルロースの分解による重合度の低下が起きるおそれがあり、また、均一に反応しにくくなることで、副生成物の量が増加したり、生成したザンテート基の脱離が起きるなどの問題が生じるおそれがある。
このザンテート化処理によって、結晶性を残したセルロース繊維(セルロースザンテート分子)の極性が大きくなり、親水性が増大するとともに、ザンテート基の静電的な反発によって分散性が向上すると考えられる。このため、上記のザンテート化したセルロースザンテートは、従来の方法よりも軽微な負荷での機械的な解繊処理で、元のセルロース材料が含んでいた結晶性であるセルロースI型の結晶構造を保持しながら、上記のナノファイバーに相当するサイズ及びアスペクト比を有するセルロースザンテートナノファイバーを得ることができる。
上記のザンテート化処理したセルロースザンテートは、そのままでもザンテート基による反発作用によって解繊処理がしやすくなっている。ここで、ザンテート化処理を行った後で、一旦洗浄して不純物、アルカリ、二硫化炭素等を除去しておくと、解繊処理に必要な負荷や回数を軽減させることができる。洗浄にあたって用いる液体は水を用いると、アルカリによるpHを低減させつつ、セルロースザンテートの繊維そのものを傷めるおそれがほとんどないので好ましい。洗浄にあたっては、流水による洗浄でも、加水と脱水の繰り返しによる洗浄でもよいが、繊維長への影響が少ないものである必要がある。洗浄の程度としては、水酸化アルカリ金属として水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどを用いる場合、洗浄後に解繊に用いるスラリーのpHが10.5以下であると好ましく、9.5以下であるとより好ましい。また、水酸化ナトリウムを用いる場合、前記スラリーにおけるNaOHの濃度が40ppm以下であると好ましく、8ppm以下であるとより好ましい。
ただし、後述するように、アンモニアや、脂肪族または芳香族アミン等の水溶液を使用して洗浄し、溶液置換したものについては、pHが10.5を超えた場合でも、解繊することができる。アンモニアやアミンにより洗浄すると、ザンテート基に対応するカチオンであるNaやKなどのアルカリ金属イオンをアンモニウムイオンに置換することができる。アルカリ金属イオンを十分に除去すると、ある程度pHが高くても解繊が容易に進行する。
ザンテート化したセルロースザンテートを解繊処理するにあたっては、水中へ分散させた上で行うことが好ましい。なお、水中には他の成分、例えば無機物、界面活性剤、水溶性高分子、高分子ラテックス、樹脂モノマー等を共存させても良い。解繊処理の手法としては、繊維長の著しい低下を起こすものでないかぎり、一般的な手法を用いることができる。例えば、水中に分散させて回転式ホモジナイザーやビーズミル、超音波分散機や高圧ホモジナイザー、ディスクリファイナーなどにより解繊させる方法が挙げられる。ただし、いずれの方法でも必要とするエネルギーは、特許文献1のような従来の手法で必要とするエネルギーに比べて著しく小さくなる。このため、圧力や回転数などの負荷を従来の手法よりも短縮したり、処理に掛ける時間を従来の手法よりも短縮したりすることができる。また、繊維長をできるだけ維持するためにも、低負荷で行うことが望ましい。
また解繊処理の前に、一旦セルロースザンテートのザンテート基が有するNaなどのアルカリ金属イオンを、他の陽イオンに一部または全てイオン交換してもよい。陽イオンとしては、水素イオン、カリウム、リチウムなどの他のアルカリ金属イオン、銀等の1価金属イオン、アンモニウムイオン、脂肪族または芳香族アンモニウムなどが挙げられ、1種または2種以上組み合わせても良い。例えば、カチオン置換体である4級アンモニウムカチオンに置換する塩交換を行い疎水化した上で、エタノールや、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒中で解繊処理を行ってもよい。解繊時にアルカリ金属イオンを有していると有機溶媒中で凝集しやすくなるが、4級アンモニウムカチオンに塩交換することで疎水性が増大し、有機溶媒中での凝集を抑制することで解繊が進行しやすくなる。また、得られたナノファイバーを活用するにあたり、有機溶媒中で処理を行うのが望ましい場合には、解繊処理を有機溶媒で行った後に脱水などの処理を省略することができる。
上記の4級アンモニウムカチオンとしては、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、デシルトリメチルアンモニウムカチオン、ドデシルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、トリエチルフェニルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
さらに別の解繊処理の手法として、一旦セルロースザンテートのザンテート基が有するアルカリ金属イオンを4級アンモニウムカチオンに置換する塩交換を行い、アンモニウム塩としてから、水中で解繊処理を行ってもよい。4級アンモニウムカチオンによってイオン解離がしやすくなっており、解繊が進行しやすくなる効果を発揮させるとともに、解繊後に水系での処理を行いたい場合に有効となる。
さらにまた別の解繊処理の手法として、一旦水などの水系溶媒や有機溶媒中で解繊したセルロースザンテートについて、アルカリ金属イオンを4級アンモニウムカチオンに置換する塩交換を行って、有機溶媒中へ移してもよい。
なお、解繊したセルロースザンテートに含まれるアルカリ金属イオン又はそれを一旦置換した陽イオンを、解繊の後であって再生処理の前にイオン交換した上で、このイオン交換済みのセルロースザンテートナノファイバーに対して後述の再生処理をしてもよい。ここでイオン交換するカチオンMn+としては、水素イオン、Li、Na、Kなどの元のアルカリ金属イオンとは別のアルカリ金属イオン、Agなどのその他の一価金属イオン、アンモニウムイオン、脂肪族又は芳香族アンモニウムイオンなどが挙げられる。また、n=1の一価イオンだけでなく、n=2であるCa2+やMg2+などの二価金属イオンや、n=3である三価金属イオンで置換してもよい。さらに、ザンテート化されたセルロースには、水酸基以外の他の官能基を含んでいても良い。
上記のセルロースザンテートの解繊処理により得られたセルロースザンテートナノファイバー(アルカリ金属イオンを他のカチオンで置換したカチオン置換体を含む)を、再生処理することで、セルロースナノファイバーを得ることができる。この再生処理では、ザンテート基(−OCSSn+)を、(−OH)基へ変化させ、セルロースザンテートをセルロースに再生させる。なお、nは1〜3の整数である。この再生処理としては、酸を用いて処理する手法が挙げられる。酸によって、繊維長の低下を起こすことなくザンテート基又はそのカチオン置換基を水酸基に変化させる反応を進行させることができる。ここで用いる酸としては、鉱酸もしくは有機酸が挙げられ、鉱酸が好ましく、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。処理する酸のpHは3以下であると好ましい。
さらにまた他の再生処理の手法として、上記セルロースザンテートナノファイバーを加熱することで、セルロースザンテートナノファイバーの分子(アルカリ金属イオンを他のカチオンMn+で置換したカチオン置換体を含む)から二硫化炭素を解離させてセルロースに再生させ、セルロースナノファイバーを得ることができる。再生の程度は加熱時間と温度により調整可能であるが、加熱温度は40℃以上であると好ましい。高温または加熱時間が長いほど再生時間は短くなるが、セルロース繊維が切断や重合度の低下が起こらないように、過度の加熱とならないよう適宜条件設定する必要はある。なお、加熱されるセルロースザンテートナノファイバーは乾燥物であっても、スラリー状であっても構わない。
上記の再生処理により平均硫化度を検出下限0.1mol%以下とすることが可能であるが、再生処理を行った後に、用途に応じてさらに脱硫処理を行っても良い。また、脱硫処理と併せて漂白処理も行っても良い。
具体的な脱硫処理の方法は特に限定されるものではなく、他の分野で一般的な脱硫方法が適用できる。ただし、セルロースナノファイバーの繊維長を短くしすぎないものである必要がある。例えば硫化ナトリウム水溶液を使用して処理する方法が挙げられる。
具体的な漂白処理の方法は特に限定されるものではなく、他の分野で一般的な漂白方法が適用できる。ただし、セルロースナノファイバーの繊維長を短くしすぎないものである必要がある。例えば次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素水を使用して処理する方法が挙げられる。
この発明によりセルロースザンテートナノファイバーを再生して得られるセルロースナノファイバーは、平均繊維径が細く繊維表面積が大きく、元のセルロース材料に含まれるセルロースからの重合度の低下が抑制された十分な繊維長を保持しており、補強用繊維として好適に利用できる。これは、以上の作業工程のうちアルカリ処理でのみ重合度が低下し、ザンテート化処理、解繊処理、再生処理のいずれでもほとんど重合度を低下させることなく処理を行うことができるためである。また、上記アルカリ処理において用いる上記の水酸化アルカリ金属水溶液の濃度も抑制されているため、そのときの重合度の低下も抑制されているためである。
この発明により得られるセルロースザンテートのナノファイバー、及びセルロースナノファイバーの大きさは、平均繊維長が2μm以上20μm以下のものを得ることができる。マーセル化以外の処理では重合度が低下しにくいためであり、平均重合度は300以上800以下程度になりやすい。マーセル化の時間を長くする等により平均重合度が300以下となることがあるが、その場合は収率が低下したり、アスペクト比が小さくなる等の影響がある。また、ナノファイバーである個々の繊維の平均繊維径は4nm以上100nm以下で、十分に高いアスペクト比を有することになり、補強繊維として好適に用いることができる。得られるセルロースザンテートのナノファイバーの平均硫化度から算出される平均硫化度は、目的に応じて0.1mol%以上33.3mol%以下で調整可能である。なお、この値の範囲は平均ザンテート置換度に換算すると0.003以上1以下に相当する。また解繊の程度を調節することで上記ザンテートナノフアイバー主成分として、平均繊維長が2μm以上100μm以下、平均繊維径は3nm以上250nm以下とすることができる。繊維表面積が大きくし補強効果を得るためには平均繊維径は小さい方が好ましいが、低線膨張係数、高弾性率を得るにはセルロースの結晶性を維持することが重要であり、セルロース結晶単位の繊維径である2nm以上である方が良い。また、解繊不十分な繊維の混入を防止する点から、平均繊維径は250nm以下とするのが好ましい。
これらのセルロースザンテートナノファイバー、及びセルロースナノファイバーを製造するにあたり、ナノファイバーとしての特性を持つ製品が得られているか否かを判断するには、得られた成果物が、ナノファイバー特有の性質を発揮していることを確認するとよい。ナノファイバーの第一の特性としては、温度変化によってスラリーの粘度がほとんど変化しないということが挙げられる。これはナノファイバーがスラリー中で分散しているだけで、溶解してないために生じる性質である。ナノファイバーの第二の特性としては、スラリーを所定の速度以上で回転撹拌させると流動性がよくなるチクソ性が挙げられる。これは、ある速度以上で回転するとナノファイバーの繊維の方向が一方向に揃うことで起きる特性である。
セルロースザンテートナノファイバーとセルロースナノファイバーとでは、どちらもナノファイバーであるが、性質の違いがあり、用途毎に使い分けることができる。一般的にセルロースナノファイバーは熱安定性が高く、熱安定性が高く、250℃以上でも変質しにくいといわれている。誘導体化セルロースナノファイバーは熱安定性が劣り、150〜200℃程度で変質すると言われている。誘導体化セルロースナノファイバーの例としては、セルロースザンテートナノファイバーやTEMPO酸化セルロースナノファイバー、カルボキシメチルセルロースナノファイバー、リン酸化セルロースナノファイバー等が挙げられる。ただし、セルロースザンテートナノファイバーは加熱によってセルロースナノファイバーに再生されるため、再生を許容するのであればセルロースザンテートナノファイバーは高熱環境でも利用できる。
セルロースザンテートナノファイバーの用途としては、樹脂、ゴム組成物、澱粉等への添加による補強材、ガスバリア材、フィルター部材、エレクトロニクスデバイス部材、化粧品部材、増粘剤、分散剤などが考えられる。
また、セルロースザンテートナノファイバーを熱可塑性樹脂と混練するような高熱環境下に導入して再生させる場合、ザンテート基由来成分と熱可塑性樹脂の相互作用や、再生に伴って、安定したセルロースになるため耐熱性が上がり、強度向上効果も発揮される。
以下、この発明を具体的に実施した実施例を示す。まず、セルロース材料として以下のものを用いた。
・クラフトパルプ(日本製紙(株)製:NBKP、α−セルロース含有率:90質量%、α−セルロースの平均重合度1000)以下、「NBKP」と表記する。
・クラフトパルプ(日本製紙(株)製:LBKP、α−セルロース含有率:90質量%、α−セルロースの平均重合度950)以下、「LBKP」と表記する。
・サルファイトパルプ(日本製紙(株)製:NDPT、α−セルロース含有率:90質量%、α−セルロースの平均重合度830)以下、「NDPT」と表記する。
・粉末セルロース(ナカライテスク(株)製:粉末セルロース、α−セルロース含有率:90質量%、α−セルロースの平均重合度600)以下、「粉末セルロース」と表記する。
・微結晶セルロース(MERCK社製:アビセル、α−セルロース含有率:90質量%、α−セルロースの平均重合度300)以下、「微結晶セルロース」と表記する。
・針葉樹未晒しクラフトパルプ(兵庫パルプ工業製:NUKP、α−セルロース含有率:75質量%、α−セルロースの平均重合度1000)以下、「NUKP」と表記することがある。
・広葉樹未晒しクラフトパルプ(兵庫パルプ工業製:LUKP、α−セルロース含有率:75質量%、α−セルロースの平均重合度950)以下、「LUKP」と表記することがある。
(実施例1)
<アルカリ処理>
NBKPをパルプ固形分(α−セルロースに加えて不純物であるリグニンなどを含む固形分、及びそれらの変性物を指す。以下同じ。)100gとなるように秤量した。これを3Lのビーカーに導入し、8.5質量%NaOH水溶液 2500gを入れ、室温にて3時間撹拌してアルカリ処理を行った。このアルカリ処理後のパルプを遠心分離(ろ布400メッシュ、3000rpmで5分間)により固液分離してアルカリセルロースの脱水物を得た。このアルカリセルロースの脱水物におけるNaOH含有率は約7.5質量%、パルプ固形分は27.4質量%であった。
なお、アルカリセルロースの脱水物のNaOH含有率の測定は次のように行った。200mLのコニカルビーカーにアルカリセルロースの脱水物を約5g精秤し、これに0.5mol/L硫酸溶液をホールピペットで20mL、フェノールフタレイン溶液を数滴添加した。その後、煮沸しておいた蒸留水を約150mL添加し、スターラーチップを入れて赤紫色が完全に消えるまで撹拌を行った。この溶液を0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液で中和滴定し、滴定量を求めた。求めた滴定量と下記式(1)によりNaOH含有率(濃度)を算出した。
NaOH含有率(質量%)=(0.5×2×20−0.1×滴定量(ml))×40÷1000 ÷アルカリセルロースサンプリング量×100……(1)
また、パルプ固形分の測定方法は次のように行った。上記でNaOH含有率を測定したコニカルビーカー中のアルカリセルロースをそのまま使用し、あらかじめ重量を測定したGFPろ紙(ADVANTEC社製GS−25)を使用して減圧ろ過を行い、蒸留水で十分にセルロース分を洗浄した。洗浄後、セルロースとろ紙をそのまま105℃の乾燥機で3時間乾燥し、重量を測定した。測定した重量と下記式(2)よりパルプ固形分を算出した。
パルプ固形分(質量%)=(絶乾後重量−ろ紙重量)÷アルカリセルロースサンプリング量×100……(2)
<ザンテート化処理>
上記で作製したアルカリセルロースの脱水物をパルプ固形分10gとなるように秤量し、ナス型フラスコに導入した。このナス型フラスコ内へ二硫化炭素を3.5g(対パルプ固形分35質量%分)導入し、室温で約4.5時間硫化反応を進行させてザンテート化処理を行った。
<セルロースザンテート中のセルロース含有率測定>
上記ザンテート化処理で作製したウェットなセルロースザンテートを2g精秤し、蒸留水50mLを添加してよく分散させ、2M塩酸 4mLを添加して、ザンテート基を水酸基に戻す再生処理を行った。再生処理後のウェットなセルロースをあらかじめ重量を測定したGFPろ紙(ADVANTEC社製GS−25)を使用してろ過し、蒸留水で十分に洗浄して、不純物、アルカリ、二硫化炭素等を除去した。その上で絶乾して水分を除去して、セルロースのみの質量を測定し、ウェットなセルロースザンテートに対するセルロース含有率を算出した。
<硫化度測定>
また、セルロースザンテートについて、平均硫化度はBredee法により測定したところ、29.5mol%であった。なお、この硫化度はセルロースが有する2位、3位及び6位の全(−OH)基に対する値である。Bredee法の手順は次のように行った。100mLビーカーにセルロースザンテートを約1.5g精秤し、飽和塩化アンモニウム溶液(5℃)を40mL添加した。ガラス棒でサンプルを潰しながらよく混合し、約15分間放置後、GFPろ紙(ADVANTEC社製GS−25)でろ過して、飽和塩化アンモニウム溶液で十分に洗浄した。サンプルをGFPろ紙ごと500mLのトールビーカーに入れ、0.5M水酸化ナトリウム溶液(5℃)を50mL添加して撹拌した。15分間放置後、1.5M酢酸で中和した。(フェノールフタレイン指示薬)中和後蒸留水を250mL添加してよく撹拌し、1.5M酢酸 10mL、0.05mol/Lヨウ素溶液10mLをホールピペットを使用して添加した。この溶液を0.05mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。(1%澱粉溶液指示薬)チオ硫酸ナトリウムの滴定量、サンプルのセルロース含有量より次式(3)から硫化度を算出した。この硫化度は、セルロース繊維における水酸基のうち、ザンテート基に置換されている基の比率である。なお、置換度は硫化度に対して次式(4)で表される。
硫化度(mol%)=(0.05×10×2−0.05×チオ硫酸ナトリウム滴定量(mL))÷1000÷(サンプル中セルロース量(g)/162.1)×100……(3)
置換度=硫化度(mol%)/{(1/3)×100(mol%)}=硫化度/33.3……(4)
<セルロースザンテートの結晶性保持の確認>
上記のセルロースザンテート中のセルロース含有率測定時に得られたセルロースについてIR測定を行った結果、セルロースI型に対応するピーク形状が観測された。
<解繊処理>
上記のザンテート化処理で作製したセルロースザンテートをセルロース固形分で0.25g秤量し、蒸留水50mLを添加して攪拌し、セルロース固形分0.5質量%のスラリーとした。このスラリーを、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製:AM−7)を用いて17000rpmにて30分間かけて解繊処理してセルロースザンテートのナノファイバーを得た。
<SEM写真>
この解繊処理が終わった段階でセルロースザンテートを凍結乾燥させ、SEM観察を行ったところ、繊維径4nmから100nmの繊維が観察された。その際の写真を図1及び2に示す。倍率は15000倍である。一方、長さでは数十μm前後の繊維が多く観測された。このため、高アスペクト比と思われるザンテートナノファイバーであると視認された。
<ナノファイバーの解繊の度合い>
上記で解繊処理を行ったセルロースザンテートナノファイバーのスラリー(セルロース固形分0.5質量%)に蒸留水を添加してスラリー濃度を0.1質量%に調整した。このスラリーを遠心分離(10000rpm、20分間)して未解繊物を沈降させた。上清はナノファイバースラリーとして分離して三角フラスコに移し、沈降した未解繊物に蒸留水を添加して再度遠心分離を行い、未解繊物を洗浄した。未解繊物をるつぼに移して絶乾し、未解繊物の重量を測定した。未解繊物の重量と解繊処理したセルロースザンテート中のセルロース含有量より次式(5)から生成したセルロースザンテートナノファイバーの生成率を求めた。
セルロースザンテートナノファイバーの生成率(質量%)=(セルロースザンテート中のセルロース含有量−未解繊物の重量)÷(セルロースザンテート中のセルロース含有量)×100……(5)
上記で三角フラスコに移したセルロースザンテートナノファイバーの上清を一部サンプリングして500mLのトールビーカーに入れた。そこに0.5M水酸化ナトリウム溶液(5℃)を50mL添加して撹拌し、Bredee法により平均硫化度を測定したところ、28.5mol%であった。この値は解繊処理前と同じであり、Bredee法ではヨウ素はザンテート基としか反応しないことから、解繊処理後もザンテート基がはずれていないことが確認された。
<繊維長測定方法>
水で約0.1質量%に希釈したナノファイバースラリーを、遠沈管に入れ、9000rpmにて10分間かけて遠心分離を行った。遠心上清をスラリー濃度約0.05質量%に希釈した上で、エタノールと体積比1:1で混合した。混合液をスライドガラス上に20μL滴下して自然乾燥させた。乾燥後、染色液であるサフラニンを滴下して約一分間静置し、流水で洗浄後に再度自然乾燥させ、顕微鏡観察を行った。顕微鏡観察を行った1000倍の画像を100分割し、1分割分(35μm×26μm)の中に含まれるナノファイバー一本選択して合計100本分の繊維長を測定した。
<繊維径測定方法>
水で約0.1質量%に希釈したナノファイバースラリーを、遠沈管に入れ、9000rpmにて10分間かけて遠心分離を行った。遠心上清をスラリー濃度約0.03質量%に希釈した上で、tert−ブチルアルコールと体積比8:2(tert−ブチルアルコール20%含有)で混合した。混合液を凍結乾燥させ、SEM写真を撮影した。SEM観察を行った15000倍の画像からナノファイバー繊維100本選択し、繊維径を測定した。
繊維径、繊維長の値は測定した100点の平均とした。測定した繊維径、繊維長より算出したアスペクト比(繊維長/繊維径)は15〜5000となった。
以上の結果を表1及び表2に示す。実施例1ではアルカリ化、ザンテート化ともに十分に進行し、上記の解繊処理によって十分に解繊が達成されたナノファイバーが得られた。
Figure 2017111103
<セルロースザンテートの結晶構造の変遷の確認>
(実施例2〜4、比較例1〜3、参考例1)
実施例1において8.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で行ったアルカリ化処理を、7質量%(実施例2)、8質量%(実施例3)、9質量%(実施例4)、10質量%(比較例1)、11質量%(比較例2)、12質量%(比較例3)に替えた以外は同様の手順によって、それぞれで得られた解繊処理前のセルロースザンテートを再生させたセルロースのIRを測定した。その結果を図3に、1100cm−1前後の領域の拡大図を図4に示す。また、合わせて比較のために元のNBKPのIR測定結果を参考例1として記載する。
セルロースI型ではC−OHに起因する1110cm−1付近のピーク(上記IRスペクトルの縦線付近)、C−O−Cに起因する1060cm−1付近のピークが見られ、OH伸縮振動に起因する3300cm−1付近のピークがややシャープとなる。参考例であるNBKPはこれらの特徴を備えている。一方で、セルロースII型ではC−OHに起因する1110cm−1付近のピークが消失し、C−O−Cに起因する1060cm−1付近のピークが小さくなり、OH伸縮振動に起因するピークが3600〜3100cm−1付近でブロードとなる。これらの特徴を図3及び4で確認すると、水酸化ナトリウム水溶液9質量%以下(実施例2〜4)では、1060cm−1のピークと1110cm−1のピークが観測されるものの、10質量%以上ではほとんど観測されなくなってしまった。また、同じく10質量%以上では3300cm−1付近でピークの鋭さがほぼなくなり、ブロードな曲線となった。従って、これらのIRスペクトルより9質量%以下ではセルロースザンテートの解繊処理によって十分にセルロースナノファイバーが得られるが、10質量%以上ではセルロースII型となってセルロースナノファイバーとしては問題のある性状が出現することが確認された。
(実施例5)
実施例1において、ザンテート化処理において導入する二硫化炭素の量を1.2g(対パルプ固形分12質量%分)に減少させた以外は同様の手順により処理を行った。平均硫化度は10.8mol%に減少したが、解繊してナノファイバーを得ることができた。
(実施例6)
実施例1において、解繊する際にホモジナイザーの代わりに遊星式ボールミル(FRITSCH社製:P−6)を用い、公転回転数500rpm、30分間の条件で解繊を行った。解繊方法を変えても、問題なくナノファイバーを得ることができることが確かめられた。
(実施例7)
実施例1において、用いるパルプ原料をLBKPに変え、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を8質量%に変え、二硫化炭素の添加量を2.4g(対パルプ固形分24質量%分)として、それ以外は同様の手順により処理を行った。セルロースザンテートの平均硫化度は25.2mol%に減少したが、解繊は問題なく行われており、ナノファイバーを得ることができた。
(実施例8)
実施例1において、用いるパルプ原料をサルファイトパルプであるNDPTに変更し、二硫化炭素の添加率を1.2g(対パルプ固形分12質量%分)に減少させた以外は同様の手順により処理を行った。平均硫化度は11.4mol%に減少したが、解繊は問題なく行われており、ナノファイバーを得ることができた。
(実施例9)
実施例1において、用いるパルプ原料を粉末セルロースに変更し、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を8質量%に変えた以外は同様の手順により処理を行った。セルロースザンテートの平均硫化度は26.1mol%に減少したが、解繊は問題なく行われており、ナノファイバーを得ることができた。
(実施例10)
実施例9において、用いるパルプ原料を微結晶セルロースに変更した以外は同様の手順により処理を行った。セルロースザンテートの平均硫化度は24.7mol%に減少したが、解繊は問題なく行われており、ナノファイバーを得ることができた。
(実施例11)
実施例1において、作製したセルロースザンテートをビーカーに秤量し、蒸留水を添加して分散させた。GFPろ紙(ADVANTEC社製GS−25)を使用してろ過し、蒸留水で十分に洗浄して、不純物、アルカリ、二硫化炭素等を除去した。洗浄後のセルロースザンテートをすべて回収し、蒸留水を添加してセルロース固形分0.5質量%の洗浄後スラリーとした。この洗浄後スラリーのNaOH濃度は検出下限[0.1mg/L]未満であり、pH7.8であった。この洗浄後スラリーを、ホモジナイザー(日本精機製作所製:AM−7)を用いて17000rpmにて30分間かけて解繊処理してセルロースザンテートのナノファイバーを得た。以下の測定で実施例11のセルロースザンテートナノファイバーを用いる場合はこの成果物を基本とする。
ナノファイバーが得られた後、40℃の環境下で1時間加熱による再生処理(加熱処理)を行った。加熱処理後にスラリーを凍結乾燥してナノファイバー乾燥物を得て、IRを測定した。IRを測定した結果、セルロースI型に対応するIRスペクトルが得られた。また、加熱処理したスラリーをサンプリングして500mLのトールビーカーに入れた。そこに0.5M水酸化ナトリウム溶液(5℃)を50mL添加して撹拌し、Bredee法により平均硫化度を測定したところ、測定下限である0.1mol%未満であったことから、加熱によりザンテート基が水酸基に置換されていることが確認された。このIR結果を図5に示す。また、加熱処理後の平均重合度は400であり、加熱処理前と変わらない数値となった。
また、この再生処理後のセルロースナノファイバーのSEM写真を図6に示す。再生処理前のザンテートナノファイバーと比べて、繊維径、繊維長はほぼ同じであり(平均繊維径25.8nm、平均繊維長7.28μm)、ナノファイバーとしての形態を維持していることが確認された。
(実施例12)
実施例11におけるセルロースザンテートを洗浄した後のスラリーを、希塩酸中に浸して30分間かけて酸による再生処理(酸処理)を行った。酸処理後の平均硫化度を測定したところ、測定下限である0.1mol%未満であったので、酸処理によりザンテート基が水酸基に置換されていることが確認された。また、同様にIRを測定した結果を、加熱処理についての測定結果を示した図5に並べて示す。加熱による再生と酸による再生とのどちらであっても、セルロースI型に対応するIRスペクトルが得られており、再生後のセルロースナノファイバーにおいてもセルロースI型の結晶構造を維持していることが確認された。平均繊維径25.0nm、平均繊維長6.98μmであった。
(実施例13〜15)
アルカリ濃度を4質量%(実施例13)、5質量%(実施例14)、9質量%(実施例15)に変更した以外は実施例1と同様の手順によりナノファイバーを作製した。その結果を表1に示す。
<カチオン種変更>
(実施例16)
実施例1において、用いるアルカリ金属塩を水酸化ナトリウムから水酸化カリウムに変え、濃度を9質量%に変え、それ以外は同様の手順により処理を行った。平均硫化度は28.7mol%のセルロースザンテートを解繊してナノファイバーを得た。(ナノファイバー生成率:72.7%、ナノファイバー硫化度23.5mol%)
(実施例17)
実施例1において、作製したセルロースザンテートをビーカーに秤量し、飽和塩化アンモニウム溶液を添加して分散させた。GFPろ紙(ADVANTEC社製GS−25)を使用してろ過し、蒸留水で十分に洗浄して、不純物、アルカリ、二硫化炭素、塩化アンモニウム等を除去した。洗浄後のセルロースザンテートをすべて回収し、実施例1と同様の手順により解繊処理してセルロースザンテートのナノファイバーを得た。ナノファイバー生成率は72.1%で、ナノファイバーの硫化度は26.5mol%あった。
(実施例18)
実施例1において、作製したセルロースザンテートをビーカーに秤量し、蒸留水を添加して分散させた。GFPろ紙(ADVANTEC社製GS−25)を使用してろ過し、蒸留水で十分に洗浄して、不純物、アルカリ、二硫化炭素等を除去した。洗浄後のセルロースザンテートをすべて回収し、5wt%のテトラブチルアンモニウムヒドリド(TBAH)溶液を添加してセルロース固形分1質量%のスラリーとし、室温にて1時間撹拌した。撹拌後、再度GFPろ紙を使用してろ過し、蒸留水で十分に洗浄した。洗浄後のセルロースザンテートをすべて回収し、実施例1と同様の手順により解繊処理してセルロースザンテートのナノファイバーを得た。ナノファイバー生成率は73.6%で、ナノファイバーの硫化度は24.5mol%あった。
(比較例4)
実施例1において、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を11質量%に変更した以外は同様の手順により処理を行った。セルロースザンテートの平均硫化度は35.8mol%であり、解繊処理後にザンテートナノファイバーが得られずにゲル状の粉砕物が生じてしまった。作製したセルロースザンテートを再生処理して乾燥後、IRを測定した結果、セルロースII型となっていることが確認された。
(比較例5)
比較例1に置いて、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を10質量%に変更した以外は同様の手順により処理を行った。セルロースザンテートの平均硫化度は32.7mol%で、比較例1と同様にゲル状粉砕物が生じてしまった。
(比較例6)
実施例1において、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を3質量%に変更した以外は同様の手順により処理を行った。セルロースザンテートの平均硫化度は9.7mol%であり、解繊処理の際にナノファイバーの形状に解繊されず、パルプの状態を残した粉砕物のままとなってしまった。
(比較例7)
実施例1において、二硫化炭素の添加量を6g(対パルプ固形分6質量%)に変更した以外は同様の手順により処理を行った。セルロースザンテートの平均硫化度は9.4mol%であり、解繊はわずかに進みナノファイバーが得られたものの、全量が十分にナノファイバー化されず、解繊されない粉砕物が残ってしまった。
(比較例8)
実施例1において、二硫化炭素の添加量を70g(対パルプ固形分70質量%)に変更した以外は同様の手順により処理を行った。セルロースザンテートの平均硫化度は41.2mol%であり、実施例1と同様にナノファイバーが得られたが、ゲル状粉砕物も混在している結果となった。
<特殊温度環境における補足実験>
(実施例19)
実施例1において、水酸化ナトリウム水溶液濃度を7質量%とし、作業温度を4℃に変更して同様の手順を行った。ナノファイバー生成率がやや低下したものの、ザンテートナノファイバーが得られていることが確認された。
(参考例2)
実施例19において、水酸化ナトリウム水溶液濃度を8質量%としたところ、ナノファイバーが生成されず、ゲル状粉砕物のままとなってしまった。
<従来の手法との、解繊に必要とするエネルギーの比較>
(実施例20)
実施例1において、作製したセルロースザンテートを5L手付きビーカーに秤量し、スラリー濃度約5%となる様に蒸留水を添加して分散させた。遠心脱水機((株)コクサン社製H−110A、ろ布400メッシュ)を使用して遠心脱水し、蒸留水を添加しながら十分に洗浄して、不純物、アルカリ、二硫化炭素等を除去した。洗浄後のセルロースザンテートをすべて回収し、蒸留水を添加してセルロース固形分0.5質量%のスラリー10kgとした。このスラリーを、高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング(株) H20型)を用いて、流速2.5L/分、圧力38〜52MPaで計3回パスさせて解繊処理した。各パス終了時点におけるナノファイバーの生成率を表2に示す。各パスのセルロースザンテートの平均硫化度は30mol%〜31.8mol%で、3回目終了時点で解繊は問題なく行われており、ナノファイバーを得ることができた。
実施例20において、解繊処理を繰り返した各パス時点におけるナノファイバースラリーにおいて、ナノファイバー生成率、平均繊維長、平均繊維径を測定したところ表2のような結果となった。実施例20のパス1のナノファイバー生成率が低い場合には未解繊の大きな繊維が観察された。この例の詳細を表3に示す。
Figure 2017111103
Figure 2017111103
(実施例21)
実施例20において、洗浄後のセルロースザンテートをすべて回収した後、蒸留水を添加するスラリー10kgの濃度をセルロース固形分1質量%に変更した。このスラリーを、同じ高圧ホモジナイザーを用いて、流速2.5L/分、圧力34〜42MPaで計3回パスさせて解繊処理した。各パス終了時点におけるナノファイバーの生成率を表3に示す。各パスのセルロースザンテートの平均硫化度は30.0mol%〜31.8mol%で、解繊は問題なく行われており、ナノファイバーを得ることができた。
(実施例22)
実施例20において、セルロース固形分0.5質量%のスラリー10kgを、超音波分散機(hieksher社製 UIP2000hd)を用いて、流速2.5L/分、2.34〜2.48kWの出力で計5回パスさせて解繊処理した。各パス終了時点におけるナノファイバーの生成率を表3に示す。5回目終了時点でのセルロースザンテートの平均硫化度は28.7mol%であった。したがって、5回目終了時点で解繊は問題なく行われており、ナノファイバーを得ることができた。
(比較例9)
実施例1において、作製したアルカリセルロースを5L手付きビーカーに秤量し、スラリー濃度約5%となる様に蒸留水を添加して分散させた。遠心脱水機((株)コクサン社製H−110A、ろ布400メッシュ)を使用して遠心脱水し、蒸留水を添加しながら十分に洗浄して、アルカリを除去した。洗浄後のアルカリセルロースをすべて回収し、蒸留水を添加してセルロース固形分0.5質量%のスラリー10kgとした。このスラリーを、高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング(株) H20型)を用いて、流速2.5L/分、圧力38〜52MPaで計3回パスさせて解繊処理したが、ナノファイバーの形状に解繊されず、パルプの状態を残した粉砕物のままとなってしまった。それぞれの解繊処理後のナノファイバー生成率を表4に示す。ザンテート化しない場合には、実施例17及び18と同じ圧力で解繊しようとしても、ほとんど解繊しないことが確認された。
Figure 2017111103
<ザンテート化後の洗浄処理による効果の検証>
(実施例11a〜g)
実施例11でザンテート化したセルロースザンテートについて、洗浄の度合いを変更して解繊処理のし易さを確認した。まず、ザンテート化した後の洗浄前におけるセルロースザンテートに蒸留水を添加して、0.5質量%の非洗浄スラリー50mLを調製した。この非洗浄スラリーを3000rpm、10minで遠心分離した上清をホールピペットで採取した。この採取した上清10mLを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N硫酸により中和滴定を行った。3回中和滴定を実施した平均を求めたところ、NaOH濃度は0.41g/Lであった。また、上清のpHをpH試験器で測定したところ11.2であった。
ナノファイバー生成率は次のように測定した。まず、セルロースザンテートに蒸留水を添加して0.5%濃度のスラリー50mLを作製し、3000rpm、10min.で遠心分離した。遠心分離後の上清を一部除去し、水を添加してNaOH濃度を元の溶液の3/4〜1/100に調製した希釈スラリーを用意した(実施例11a〜11gに対応)。また、比較として十分にろ過洗浄を行ったセルロースザンテート(スラリーpH約7、NaOH濃度0g/L、実施例11)と十分に洗浄を行ったセルロースザンテートに未洗浄時と同濃度となる様にNaOHを添加したスラリー(実施例11h)を用意した。これらについて、実施例1と同様に15000rpm、15min.にて解繊処理を行い、同様にナノファイバー生成率を求めた。その結果を表5に示す。
Figure 2017111103
この結果、希釈してNaOHの濃度を下げるほどナノファイバー生成率が向上することが確認された。また、pH10未満となる希釈で、ろ過洗浄に近いナノファイバー生成率を実現できることがわかった。さらに、一旦洗浄したセルロースザンテートにNaOHを添加して、実施例11aと同じ元通りのNaOH濃度に調整した実施例11hは、実施例11aとほぼ同様の解繊結果となった。このため、洗浄によって除去される不純物の残量によって生成率が変化するわけではないことも確認できた。
<アンモニア存在下での解繊>
(実施例23)
実施例11と同様の操作を行い、セルロースザンテートを十分に洗浄した。洗浄後のセルロースザンテートに上記実施例11aと同モル量のアンモニアを添加することで(pH12.1)陽イオンをアンモニウムイオンに置換した後に、15000rpm、15min.にて解繊処理を行い、同様にナノファイバー生成率を求めた。その結果、ナノファイバー生成率は71.7%、ナノファイバーの硫化度は25.5mol%であった。
<α−セルロースを含有する他の材料について>
(実施例24)
実施例1において、用いるパルプ原料をNUKP(Needle Unbleached kraft pulp:針葉樹未晒しクラフトパルプ)に変更した以外は同様の手順により処理を行った。セルロースザンテートの平均硫化度は24.8mol%に減少したが、解繊は問題なく行われており、高い収率でナノファイバーを得ることができた。ナノファイバー生成率:81.4%であった。
(実施例25)
実施例1において、用いるパルプ原料をLUKP(Laubholz Unbleached kraft pulp:広葉樹未晒しクラフトパルプ)に変更した以外は同様の手順により処理を行った。セルロースザンテートの平均硫化度は25.8mol%に減少したが、解繊は問題なく行われており、高い収率でナノファイバーを得ることができた。ナノファイバー生成率:83.4%であった。
<ナノファイバー特性の確認>
(実施例20、21、参考例3)
ナノファイバー特有の性質である、粘度の非温度依存と、チクソ性とが発揮されているかを確認する。粘度の測定にあたっては、(株)トキメック製E形粘度計DVH−E(使用コーン:角度3°半径1.2cm)を使用して、20℃、30℃、40℃で測定回転数を1rpmから50rpmまで変更して粘度を測定した。実施例20、21において得られたセルロースザンテートナノファイバーを用いて、濃度0.5質量%としたスラリー(実施例20)と、濃度1.0質量%としたスラリー(実施例21)とについて粘度の測定を行った。実施例20aについては温度20℃、30℃、40℃について測定し、実施例21については温度20℃での測定のみ行った。また、ナノファイバーの挙動の比較対象として、従来知られたナノファイバーであるTEMPO酸化セルロースナノファイバー(非特許文献2記載の方法にて作製)の濃度0.5質量%スラリー(参考例3)についても、併せて粘度の測定を行った。その結果を表6〜8に示す。
Figure 2017111103
Figure 2017111103
Figure 2017111103
実施例20の表6と参考例3の表8では、いずれも温度の上昇によって粘度は変化しないことが確認された。一方、いずれの温度、いずれの濃度でも、撹拌速度の上昇とともに粘度は大きく低下するチクソ性を示すことが確認された。これらの性質が、TEMPO酸化セルロースナノファイバーである参考例3と共通していることから、実施例20、21で得られた試験材はナノファイバーとしての性質を有することが確認された。
<有機溶媒下での解繊処理>
(実施例26)
実施例18における洗浄後のセルロースザンテートを回収し、エタノールを添加してセルロース固形分0.5質量%のスラリーとした。このスラリーを、ホモジナイザー(日本精機製作所製:AM−7)を用いて17000rpmにて30分間かけて解繊処理してセルロースザンテートのナノファイバーを得た。ナノファイバー生成率は80.6%であった。この実施例により、有機溶媒であるエタノール中でも解繊処理ができることが確かめられた。
<他成分混合系での解繊処理>
(実施例27)
実施例1において、作製したセルロースザンテートをセルロースザンテート固形分が1.2gとなる様にビーカーに秤量し、蒸留水を添加して分散させた。GFPろ紙(ADVANTEC社製GS−25)を使用してろ過し、蒸留水で十分に洗浄して、不純物、アルカリ、二硫化炭素等を除去した。洗浄後のセルロースザンテートをすべて回収した。(回収量18g、固形分6.65%)。これと天然ゴムラテックス((株)レヂテックス社製 HA NR LATEX 固形分60%、アンモニア0.7%)40g、14%アンモニア水2gを混合し、ホモジナイザーにて解繊処理した。解繊処理後スラリーは解繊処理前と比較して増粘およびチクソ性がみられた。なお、粘度測定には、(株)トキメック製E形粘度計DVH−E(使用コーン:角度3°半径1.2cm)を使用して、20℃で測定回転数を1rpmから50rpmまで変更して粘度を測定した。解繊処理後スラリーを70℃にて2日間乾燥し、次いで減圧乾燥を行い、天然ゴムマスターバッチを作製した。得られた天然ゴムマスターバッチについてX線CTを測定したところ、明確な繊維像や凝集塊はほとんど観察されなかった。このCT画像を図7に示す。これにより、CTの分解能未満の大きさにまで解繊されており、天然ゴムラテックス中で分散していることが確かめられた。またSEM観察を行った結果、繊維径200nm以下のファイバーが観察された。この実施例により、天然ゴムラテックス中での解繊処理ができることが確かめられた。
なお、X線CTの測定条件は次の通りである。
・装置 : 島津社製 SMX-160CT-SV3S
・空間分解能 : 1.4μm
・管電圧 : 90kV、管電流 : 70μm
・SID: 400mm、SOD : 5mm
・ビュー数 1200(ハーフスキャン)
(比較例10)
実施例27において、セルロースザンテートを天然ゴムラテックスに添加して解繊処理を行わないで作製したマスターバッチについても同様に評価を行った結果、X線CT(図8に示す。)、SEM画像ではセルロースザンテートの繊維が観察された。
<熱安定性についての検証>
<熱分解温度測定方法>
まず、試験に用いる各ナノファイバースラリーを凍結乾燥した。それぞれの手順は次の通りである。
・セルロースザンテートナノファイバー:実施例11で得られたセルロースザンテートナノファイバースラリーを凍結乾燥した。
・TEMPO酸化セルロースナノファイバー:非特許文献2に記載の方法でTEMPO酸化セルロースを作製し、解繊処理を行った後に凍結乾燥した(参考例3)。
・非本発明セルロースナノファイバー:スギノマシン製BinFi−s WMa10002を凍結乾燥した(参考例4)。
・セルロースザンテートナノファイバー加熱再生物:実施例11で得られた加熱再生処理物を、硫化ナトリウム溶液で脱硫処理、次亜塩素酸ナトリウム溶液で漂白処理後、水洗して凍結乾燥した(実施例11i)。
・セルロースザンテートナノファイバー酸再生物:実施例12で得られた酸再生処理物を、硫化ナトリウム溶液で脱硫処理、次亜塩素酸ナトリウム溶液で漂白処理後、水洗して凍結乾燥した(実施例12a)。
上記の各ナノファイバーの凍結乾燥物を、TG−DTA(Rigaku社製TG8120)を用いて室温から400℃まで10℃/分の速度で昇温して測定した。縦軸に重量減少率、横軸に温度をプロットしたグラフを描き、大きく重量減少する時の接線と重量減少前の接線との交点の温度を熱分解温度とした。その結果を表9に示す。
Figure 2017111103
<澱粉糊液への混合による紙力増強効果確認>
(実施例28、29)
実施例1にて作製したセルロースザンテートを使用し、実施例11と同様の洗浄、及び解繊処理を行い、0.5重量%のセルロースザンテートスラリーを得た。一方、酸化澱粉(GSL社製Dynakote68NB)に25重量%となる様に水を添加して澱粉スラリーを作製した。この澱粉スラリーを沸騰浴中で加熱して澱粉糊液を作製し、水浴中で冷却を行った。この澱粉糊液中の澱粉固形分に対して、セルロースザンテートが1重量%(実施例28)、又は2重量%(実施例29)となる様にセルロースザンテートスラリーを添加し、全体の濃度が15重量%となる様に水を添加した。水を添加したスラリーをホモジナイザーで撹拌混合(8000rpm、5min.)して塗工液を作製した。この塗工液を段ボール用中芯(レンゴー(株)製:坪量160g/m)にバーコーター(No.7)を用いて両面塗工し、回転型乾燥機(ジャポー(株)製:L−3D)により120℃の温度環境で2分間乾燥させた。得られた紙をその後1日間にわたって23℃、50%R.H.の環境で調湿した。調湿後の坪量、圧縮強度(比圧縮強度)、引張強度(裂断長)を下記の方法で測定した。その結果を表10に示す。
(比較例11,12)
実施例28において、セルロースザンテートスラリーを添加しない澱粉糊液をそのまま塗工液として塗工した塗工紙について同様に評価を行った(比較例11)。また、塗工液を塗工しない段ボール用中芯そのままについても同様に評価を行った(比較例12)。それらの結果も併せて表10に示す。
[塗工量測定方法]
得られた塗工液を塗工した紙を絶乾して坪量(g/m)を測定し、使用した原紙の絶乾坪量との差を求め、塗工量(g/m)を算出した。
[圧縮強度・比圧縮強度測定方法]
JIS P 8126(ISO12192に対応する。)の方法に従って圧縮強度(N)を測定し、さらに、得られた圧縮強度を坪量(g/m)で割り、比圧縮強度(N・m/g)を算出した。
[引張強度・裂断長測定方法]
JIS P 8116(ISO1974に対応する。)に記載の方法に従って、引張強度(kN/m)を測定し、坪量の影響を除去するため、引張強度(kN/m)を(坪量×9.81÷1000)で割り、裂断長(km)を算出した。
Figure 2017111103
実施例28は塗工量が同一である比較例11に比べて引張強度が向上した。従って、澱粉糊液にセルロースザンテートナノファイバーを添加することにより塗工紙の引張強度が向上することがわかった。また、セルロースザンテートナノファイバーの比率を増やした実施例29は、実施例28よりもさらに引張強度が向上した。このため、セルロースザンテートナノファイバーの量に応じて引張強度をさらに向上させることができることが示された。
<ビスコースへの混合によるセルロースフィルム強度増強>
(実施例30)
実施例1にて作製したセルロースザンテートを使用し、実施例11と同様の操作を行い、0.5重量%のセルロースザンテートスラリーを得た。このセルロースザンテートスラリーを、ビスコース(レンゴー(株)製:セルロース濃度9.5%)に添加した。添加量は、ビスコース中のセルロース固形分に対して、セルロースザンテートが5重量%となるように調整した。このセルロースザンテート混合ビスコースを、ホモジナイザーで撹拌混合(8000rpm、5min.)後、遠心分離(3000rpm、3min.)することで脱泡処理をした。脱泡処理後のセルロースザンテート混合ビスコースを、アプリケーターを使用して厚さ10mil.(254μm)でガラス板にキャストして、凝固・再生(凝固浴:150g/L硫酸、180g/L硫酸ナトリウム 約30℃)を行い、その後水洗した。水洗後、脱硫浴:10g/L硫化ナトリウム(約55℃)で脱硫処理を行い、脱硫処理後にさらに水洗した上でガラス板から剥がし、ウェットフィルムを得た。このウェットフィルムを吸水ろ紙(アドバンテック東洋(株)製:No.26−WA)に挟んでクーチロールで脱水後、回転型乾燥機(ジャポー(株)製:L−3D)により120℃の温度環境で2分間乾燥させてセルロースフィルムを得た。得られたセルロースフィルムをその後1日間にわたって23℃、50%R.H.の環境で調湿した。調湿したフィルム(各3枚)から引張試験用の試験片(ダンベル8号)を打ち抜き(n=5)、各試験片の厚みを測定した。試験片はオートグラフにて引張試験(つかみ幅:30mm、速度:20mm/min.)を行った。引張強度、伸度は以下のように算出した。その結果を表11に示す。
・引張強度(MPa)= 破断点荷重(N)/ 断面積(厚み×4、mm
・伸度(%)= 破断点伸び(mm)/30mm × 100
(実施例31)
実施例30において、実施例1のセルロースザンテートを実施例7のセルロースザンテートに変更した以外は同様の手順によりフィルムを作製し、同様に評価を行った。
(比較例13)
実施例30において、セルロースザンテートスラリーを添加しないビスコースについても水を添加してセルロース濃度を調整してフィルムを作製し、同様に評価を行った。
Figure 2017111103
実施例30,31のどちらでも、セルロースザンテートナノファイバーを添加することによりセルロースフィルムの引張強度向上がみられた。
<セルロースザンテートナノファイバーの分散効果>
(実施例32a〜d)
実施例1にて作製したセルロースザンテートを使用し、実施例11と同様の操作を行い、0.5重量%のセルロースザンテートスラリーを得た。このスラリーに蒸留水を添加後、遠心分離(10000rpm、20分間)して未解繊物を沈降させ、上清をナノファイバースラリー(濃度0.13%)として回収した。一方、酸化澱粉(GSL社製Dynakote68NB)に25重量%となる様に水を添加して澱粉スラリーを作製した。この澱粉スラリー中の澱粉固形分に対してセルロースザンテートが1重量%〜5重量%となる様に、セルロースザンテートスラリーを添加し、全体の濃度が15重量%となる様に水を添加した。水を添加した後、ホモジナイザーでスラリーを撹拌混合(8000rpm、5min.)し、100mLのメスシリンダーに100mL計量した。このメスシリンダーを静置して時間毎に澱粉粉体が100mLからどの程度沈降するか測定した。その結果を表12に示す。また、比較例14として、セルロースザンテートを添加しない澱粉スラリーについても同様に測定した。比較例14に比べて、実施例32a〜32dはいずれも澱粉の沈降が遅くなることが確認された。
Figure 2017111103
<天然ゴムラテックスへの混合による天然ゴムシート強度増強効果確認>
(実施例33)
・マスターバッチの作製
実施例1にて作製したセルロースザンテートを使用し、実施例20と同様の操作を行い、0.5重量%のセルロースザンテートスラリーを得た。このスラリーと天然ゴムラテックス((株)レヂテックス社製 HA NR LATEX 固形分60%、アンモニア0.7%)、14%アンモニア水を混合し(セルロースザンテートスラリー添加量は天然ゴム固形分100重量部に対して5重量部)、ホモジナイザーにて撹拌した(8000rpm、5min.)。撹拌混合後スラリーを70℃にて2日間乾燥し、次いで減圧乾燥を行い、天然ゴムマスターバッチを作製した。
・コンパウンドの作製
得られたマスターバッチを50℃に加温した二本ロール(日本ロール製造(株) φ200mm×L500mmミキシングロール機)を使用して素練りし、次いで下記表13の配合通りにステアリン酸(ナカライテスク(株)製)、酸化亜鉛(ナカライテスク(株)製)、硫黄(ナカライテスク(株)製)、加硫促進剤(三新化学工業(株)製サンセラーNS−G)を添加混合し、厚さ2mm以上のコンパウンドシートを作製した。
Figure 2017111103
・加硫工程
得られたコンパウンドシートを金型に入れ、150℃、8分間圧縮成形して厚さ2mmの架橋体ゴムシート状を作製した。
・強度物性測定
得られた架橋ゴムシートからJIS3号形のダンベル形状に試験片を打ち抜き(n=5)、各試験片について厚みを測定した(n=3)。試験片は引張試験機((株)島津製作所 精密万能試験機 AG−1000D)にて引張試験(つかみ幅:50mm、速度:500mm/min.JIS K6251準拠)を行い、破断点応力、及びひずみを求めた。実施例33は下記の比較例15、16に比べて破断点のひずみ、応力が大きくなり、伸びを保ったまま、強度が向上し、ゴムの特性を損なわない結果となった。硫黄を含有するセルロースザンテートナノファイバーとなっていることで、ゴムとの相互作用が示唆された。
(比較例15、16)
上記実施例において、セルロースザンテートスラリーを添加しない天然ゴムラテックスをそのまま乾燥してマスターバッチとして作製した架橋ゴムシートについて同様に評価を行った(比較例15)。また、セルロースザンテートナノファイバーの代わりにセルロースナノファイバー((株)スギノマシン製BiNFi−sWMa−10002)を添加したマスターバッチを使用して作製した架橋ゴムシートについても同様に評価を行った(比較例16)。それらの結果も併せて表14に示す。
Figure 2017111103

Claims (7)

  1. セルロースザンテート又はセルロースザンテートのカチオン置換体を解繊処理する、セルロースザンテートナノファイバーの製造方法。
  2. セルロースを含有する材料を水酸化アルカリ金属水溶液で処理してセルロースI型を維持したアルカリセルロースを生成し、このアルカリセルロースを二硫化炭素と反応させてセルロースザンテートとし、
    このセルロースザンテートを用いた請求項1に記載のセルロースザンテートナノファイバーの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のセルロースザンテートナノファイバーの製造方法で得られたセルロースザンテートナノファイバーを再生処理する、セルロースナノファイバーの製造方法。
  4. セルロースの水酸基の何れかが下記式(1)で表されるザンテート基で置換されていることを特徴とするセルロースザンテートナノファイバー。
    −CSS-n+ (1)
    (カチオンMn+は、水素イオン、1価または多価金属イオン、アンモニウムイオン、脂肪族または芳香族アンモニウムイオンから選ばれる少なくとも1種。n=1,2,3)
  5. 平均硫化度が0.1mol%以上33.3mol%以下であり、平均繊維長が2μm以上100μm以下であり、平均繊維径が3nm以上250nm以下であることを特徴とする請求項4に記載のセルロースザンテートナノファイバー。
  6. 請求項4又は5に記載のセルロースザンテートナノファイバーを再生することにより得られる、
    平均繊維長が2μm以上100μm以下であり、平均繊維径が3nm以上250nm以下である、再生セルロースナノファイバー。
  7. 請求項4又は5に記載のセルロースザンテートナノファイバーを含有するゴム組成物。
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