医療現場においては様々な場面において安全性を保ちながら、効率的かつ精度の高い治療・検査・測定などのために医療現場の改善の試みがなされている。本発明においては、載置対象物を載置するテーブルを、多自由度(3自由度以上)を有するロボットアームによって支持したロボティックベッドを医療現場に導入することにより、これらを促進することを提案する。
[ロボティックベッドの構成]
(第1の構成例)
本発明の第1の構成例に係るロボティックベッドの斜視図を図1に、側面図を図2に示す。ロボティックベッドに用いられるロボットアーム201は、多自由度(3自由度以上)を有し、その先端で載置対象物が載置されるテーブル208を支持する。テーブル208およびロボットアーム201は、ロボティックベッドを構成する。
図2に示すように、ロボットアーム201は、ベース221と、複数の可動要素(本構成例では、第1〜第3可動要素222〜224)と、複数のジョイント(本構成例では、第1〜第5ジョイント231〜235)を含む。
ベース221と第1可動要素222の一端部は鉛直直進ジョイントである第1ジョイント231によって連結されており、第1可動要素222は第1軸方向(鉛直方向)に移動することができる。第1可動要素222の他端部と第2可動要素223の一端部は水平回転ジョイントで連結されており、第2軸(鉛直方向)まわりに第2可動要素223が回転することができる。第2可動要素223と第3可動要素224の間の第3〜第5ジョイント233〜235は、それぞれ、第3〜第5軸回りの回転ジョイントである。第3軸は第2可動要素223の延びる方向であり、第4軸は第3ジョイント233によって回転される、第3軸と直交する方向であり、第5軸は、第4ジョイント234によって回転される、第4軸と直交する方向である。
第1可動要素222と第2可動要素223は特定方向に延びる棒状となっており、長さはロボットアーム201の必要な可動範囲に応じて適宜設計される。特定方向に延びる可動要素の「一端部」とは、可動要素を特定方向(長手方向)に三等分したときの両側2つの領域のどちらかをいい、特定方向に延びる可動要素の「他端部」とは、可動要素を特定方向(長手方向)に三等分したときの両側2つの領域の一端部とは反対側の端部をいう。単に「端部」という場合には、一端部又は他端部のどちらかをいう。両端部の間にある部分は「中央部」という。
そして、第1可動要素222は水平面に平行な状態を維持して上下移動し、第2可動要素223は第1可動要素222と平行な状態を維持して第2軸まわりに回転する構成となっている。このような構成であれば、第2アクチュエータ242において鉛直方向の重力補償を行う必要がないためモータを小さくすることができる。これは、ロボットアーム201の小型化に有利な構成であり、限られたスペースしか確保できない医療現場に導入する場合や、治療や手術により多くのスペースを充てるのに有利な構成である。負荷のかかる第1ジョイント231は、例えばボールスクリューの構成を採用することができる。
また、本構成例のロボティックベッドは、鉛直方向上側から見下ろした場合に端部同士が水平回転ジョイントで連結された第1可動要素222と第2可動要素223を特定方向(長手方向)が平行となる状態において、テーブル208を水平面に平行な状態を維持しながらどのように回転させても(例えば360度回転させても)、テーブル208がロボットアーム201と接触することがないように構成されている。具体的には、端部同士が水平回転ジョイントで連結された第1可動要素222と第2可動要素223とテーブル208を水平面に平行な状態とした場合、テーブル208が他の可動要素と高さが被らずに最も上方に位置するように構成している。つまり、ロボットアーム201の先端が取りうる位置のうちで最も低い位置をとり、テーブル208が水平面に平行な姿勢とした場合において、ロボットアーム201の第1〜第2可動要素がテーブル208の下面よりも低い位置となるようにしている。そして、本構成例においてはテーブル208の高さ方向の調整幅を大きくとるため、ベース221については、ロボットアーム201の先端が取りうる位置のうちで最も低い位置をとり、テーブル208が水平面に平行な姿勢とした場合においてもテーブル208の下面よりも高くしている。以上のような構成とすれば、ロボットアーム201の各可動要素がテーブル208の下方に位置して収納される形となり、鉛直方向の移動幅を確保しながらも医療現場の限られたスペースを有効活用するのに有効である。
また、省スペース化のため、またテーブル208の支持強度を保つためのロボットアーム201のサイズも考慮して、テーブル208の長手方向においてロボットアームが隠れない寸法A(図2参照)は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以下とすることが好ましい。
このメリットは第1の構成例に係るロボティックベッドの動作を示した図6〜図8を参照すれば明らかである。図6から理解できる通り、本構成例におけるロボティックベッドはそれぞれの可動要素とテーブル208を鉛直方向上側から見下ろした場合に重ね合わさるような位置をとることができ、例えば治療スペースを確保するためにテーブルをできるだけベースに近くに位置するようにしても、可動要素が邪魔とならない。
そして、テーブル208の幅はロボットアーム201の各可動要素の幅よりも大きい方が好ましい。例えば、鉛直方向上側から見下ろした場合に端部同士が水平回転ジョイントで連結された第1可動要素222と第2可動要素223の特定方向(長手方向)及びテーブル208の特定方向(長手方向)が平行となる状態において、鉛直方向上側から見下ろした場合にテーブル208が特定方向(長手方向)で第1可動要素222と第2可動要素223と被る部分において、特定方向(第1可動要素222、第2可動要素223、及びテーブル208が延びている長手方向を平行とした方向)と直交する方向(テーブル208の幅方向)において第1可動要素222と第2可動要素223がテーブル208に隠れることが望ましい。このような構成であれば、少なくともテーブル208の幅方向(延びている特定方向と直交する方向)においてテーブル208の長さ方向で被っているロボットアーム201の部分(図2の例では、第1可動要素222の一端部以外と、第2可動要素223及び第3可動要素224の全体)はテーブル1008の下に収納されることになる(例えば、図6を参照)。
図1及び図2の例では互いの端部同士が水平回転ジョイントで接続された2つの可動要素(第1可動要素222と第2可動要素223)のひとつ(第1可動要素222)がベース221に直接連結されているが、例えばさらなる水平回転ジョイントや垂直回転ジョイントを介して間接的にベースに連結されていてもよく、この場合でも上述の位置関係が担保されて複数の可動要素がテーブル208の下に収納される限りスペース確保及びコンパクトという効果を得ることができる。
第3可動要素224は、ロボットアーム201の先端に位置している。本構成例では、ロボットアーム201の先端が、特定方向に延びるテーブル208の一端部の下面に固定されている。このような構成であれば、テーブル208の他端部をベース221よりできるだけ遠くに位置させるように動作させることができる。テーブル208を一端部で支持する方がテーブル208の移動範囲が広くなるが、支持強度を優先する場合にはテーブル208を中央部で支えてもよい。
ロボットアーム201は、第1〜第5ジョイント231〜235に対応して、第1〜第3可動要素222〜224を移動又は回転させる複数のアクチュエータ(本構成例では、第1〜第5アクチュエータ241〜245)と、それぞれのジョイントに組み込まれそれぞれの可動要素の位置を検出する複数の位置検出器(本構成例では第1〜第5位置検出器251〜255)と、それぞれのアクチュエータの駆動を制御する制御装置207(図2参照)を含む。制御装置207はベース221内に位置しているが、例えば外部の独立した装置としてもよい。
第1〜第5アクチュエータ241〜245は、例えばサーボモータである。位置検出器としてはエンコーダやレゾルバ、ポテンショメータを用いることができる。
ロボットアーム201はまた、第1〜第5ジョイント231〜235に対応して、それぞれ、第1〜第5電磁ブレーキ261〜265を含むことが望ましい。電磁ブレーキを備えていない場合は、複数のアクチュエータ241〜245の駆動によりロボットアーム201の姿勢を一定に保つことになるが、電磁ブレーキを含んでいると、ある部分のアクチュエータの駆動をオフにしても電磁ブレーキ機能をオンとすることにより、ロボットアーム201の姿勢を一定に保つことができる。
電磁ブレーキが設けられる場合の第1〜第5電磁ブレーキ261〜265それぞれは、アクチュエータへ駆動電流が供給されないときにブレーキ機能をオンにし、アクチュエータへ駆動電流が供給されたときにブレーキ機能をオフにするように構成されている。
アクチュエータとしてのモータ、位置検出器としてのエンコーダ、及びブレーキは、図3に示すように一体化したユニットとして構成されることが多い。さらに、第1〜第5アクチュエータ241〜245のそれぞれには、動力伝達用の減速機構およびカップリングなどが設けられる。
図2に示した例では、第1可動要素222が第2可動要素223の上側に位置するように水平回転ジョイント232によって連結されているが、本構成例の変形例として、第1可動要素422が第2可動要素423の下方に位置するように水平回転ジョイント432によって連結したロボットアーム401を図4に示す。
本変形例は、ベース421と第1可動要素422の一端部は鉛直直進ジョイントである第1ジョイント431によって連結されており、第1可動要素422は第1軸方向(鉛直方向)に移動することができる。第1可動要素422の他端部と第2可動要素423の一端部は水平回転ジョイントで連結されており、第2可動要素423が第1可動要素422の上方で第2軸(鉛直方向)まわりに回転することができる。第2可動要素423と第3可動要素424の間の第3〜第5ジョイント433〜435は、それぞれ、第3〜第5軸回りの回転ジョイントである。第3軸は第2可動要素423の延びる方向であり、第4軸は第3ジョイント433によって回転される、第3軸と直交する方向であり、第5軸は、第4ジョイント434によって回転される、第4軸と直交する方向である。
第3可動要素424は、ロボットアーム401の先端に位置している。本構成例では、ロボットアーム401の先端が、特定方向に延びるテーブル408の下面に中央部で固定されている。このような構成であれば、支持強度を優先してテーブル408を支持することができる。もちろん、テーブル408の移動範囲を優先してテーブル408を一端部で支持してもよい。ただし、その場合は、テーブル408を水平面に平行な状態を維持しながら自由に回転させてもロボットアーム401と接触しないように、各可動要素422〜424やテーブル408の寸法を適宜設計することが必要である。
以上、図2及び4に示したロボットアーム201・401は、自由度が5であるが、本発明のロボットアームの自由度は、必ずしも5である必要はなく、4以下であってもよいし6以上であってもよい。しかしながら、ロボットアームの自由度は、テーブル208・408を少なくとも空間内を直線的に移動できるように3以上であることが望ましい。図5に自由度が3であるロボティックベッドの例を示す。図5において、ロボットアーム501はベース521と2つの可動要素522及び523から構成され、ベース521と第1可動要素522の一端部は鉛直直進ジョイントである第1ジョイント531によって連結されており、可動要素522は第1軸方向(鉛直方向)に移動することができる。第1可動要素522の他端部と第2可動要素523の一端部は水平回転ジョイントである第2ジョイント532で連結されており、第2軸(鉛直方向)まわりに第2可動要素523が回転することができる。第2可動要素523の他端部がロボットアーム501の先端を構成し、テーブル508の一端部と水平回転ジョイントである第3ジョイント533で連結されている。
以上のように構成されたロボティックベッドを用いれば、テーブル上に載置対象物を載置した後、テーブル208・408・508を検査位置や治療位置といった目的とする位置に正確かつ迅速に移動させることができ、医療現場における検査や治療の効率を格段に向上させることができる。例えば、キャスター付きのテーブルにより患者を移動させるのと比較して、患者に大きな振動を与えることなくテーブル208・408・508をスムーズに移動させることができる他、医療室の床上に多数存在する医療機器に付随するコード類や医療器具に付随するチューブ類との絡まりやこれらを跨ぐことによるテーブルのがたつき回避することができ、安全性と移動効率を高めることができる。
また、本構成例に係るロボティックベッドは、参照符号232・432・532・533で示されるジョイントが、参照符号223、423、523で示される可動要素、及び参照符号508で示されるテーブルを常に水平面と平行な状態で回転することを可能とする水平回転ジョイントによって連結されているため、これを垂直回転ジョイントで連結されているのと比べて剛性を高くすることができる。すなわち、垂直回転ジョイントで連結されている場合は、テーブルの移動中、又はある姿勢の維持中、載置対象物の重量などが原因でアクチュエータの制御だけでは姿勢を完全に維持しきれず、撓みを生じさせることがあるが、水平回転ジョイントの場合は垂直方向に回転することがないため、そのような事態はほとんど生じない。さらに、常に水平面と平行な状態で回転することを可能とする水平回転ジョイントが設けられている個所では垂直方向の回転を考えなくてよいので、電源をオフしたときのことを想定したとしても電磁ブレーキを省略することができる。このように、本構成例は、剛性を高めながら、さらに治療スペース確保にも貢献する構成となっており、医療室に導入するのに適したデザインとなっている。
ロボティックベッドが目標とすべき位置としては、人体や動物などの載置対象を載置するための載置位置、特定の検査機器や測定機器によって検査を行うための検査位置、CT/MRI/血管造影などで載置対象物の特定部位を撮影する撮影位置、看護師などが治療前に手当てを施すための治療準備位置、医師や助手が治療(手術を含む)を行う治療位置(手術位置を含む)などである。例えば、異なる治療を複数か所で行う場合など、同じ目的でも異なる位置に移動させることもありえる。具体的には、テーブルをMRI撮影位置に移動させる前にMRI撮影に影響を与えるインプラントなどが載置対象物に含まれていないかを検査装置により検査するための検査位置に移動させたり、載置対象となる患者を手術位置に移動させる前に、放射線物質の付着量を検出装置により検出するための検査位置にテーブルを移動させたり、載置対象である患者に皮膚手術を行うために手術位置に移動させる前に、皮膚状態を検査するために検査位置に移動させたり、脳腫瘍摘出手術のために手術位置に移動させる前に、脳の断層撮影を行うためにMRI装置による撮影位置にテーブルを移動させたり、といった用途が考えられる。
本構成例に係るロボットアーム201に支持されたテーブル208を複数の位置の間で移動させる動作を図6〜図8に説明する。
図6は、ある載置対象である被験者を載置位置からある検査位置へ移動させる際に、テーブル208が載置位置(第1の位置)に位置している様子を示している。図7は、制御装置207による制御によって第2可動要素223及びテーブル208が矢印の如く動いて(場合によっては、第1可動要素222も鉛直方向に動いて高さが調節され、またテーブル208が第3軸又は/及び第4軸まわりの回転によりテーブルの長手方向又は/及び幅方向まわりの傾きが微調整され)被験者の頭部が検査装置614に対して斜めから移動してゆく様子を示している。図8はテーブル208が検査装置614の内部に挿入され、被験者が検査位置(第2の位置)に到達した様子を示している。なお、図6におけるテーブル208の位置(第1の位置)は治療位置でもあり得、テーブル208が図8の検査位置(第2の位置)から図6の位置まで各可動要素が逆方向に動いて元の位置に戻り、検査直後に検査結果を判断して医師612が治療を行うことができる。
図5に示したロボットアーム501でも同じような軌跡を辿ってテーブル508が移動することができる。図4に示したロボットアーム401は、第2可動要素423とテーブル408が図7に示した矢印とは逆回転しながら移動して(場合によっては第1可動要素422も鉛直方向に動いて高さが調節され、またテーブル408が第3軸又は/及び第4軸まわりの回転によりテーブルの長手方向又は/及びは幅方向まわりの傾きが微調整され)、検査位置まで到達することができる。
ロボットアーム201・401・501による各位置間でのテーブル208・408・508の移動は、指示器として例えばティーチペンダントによって制御装置207・407・507に指令を与え、ロボットアーム201・401・501の可動要素を動かすことによって行うことができる。しかしながら、治療位置および検査位置などの各位置を予め制御装置207・407・507に記憶させておけば、例えば前進指令を制御装置に与えるだけで目標とする位置に最短で移動するように可動要素が動作するので、目標とする位置へのテーブル208・408・508の移動をより早くかつスムーズに行うことができる。さらに、目標位置と移動させたい経路上のいくつかの位置を指定しておくと、例えば制御装置208・408・508に移動開始指令を与えるだけで、自動的に望む経路を辿って目標位置に到達することができる。各位置を記録させるには、ティーチペンダントによってロボットアーム201・401・501を実際に目標とする位置に移動させることによって直接的に記憶させてもよいし、x,y,z座標を入力することによって指定してもよい。なお、指示器としてはティーチペンダントに限らず、ハンドヘルドやリモートコントローラなどであってもよい。
(第2の構成例)
本発明の第2の構成例に係るロボティックベッドの斜視図を図9に、側面図を図10に示す。ロボティックベッドに用いられるロボットアーム1001は、多自由度(3自由度以上)を有し、その先端で載置対象物が載置されるテーブル1008を支持する。テーブル1008およびロボットアーム1001は、ロボティックベッドを構成する。
図10に示すように、ロボットアーム1001は、ベース1021と、複数の可動要素(本構成例では、第1〜第4可動要素1022〜1025)と、複数のジョイント(本構成例では、第1〜第6ジョイント1031〜1036)を含む。
ベース1021と第1可動要素1022の一端部は鉛直直進ジョイントである第1ジョイント1031によって連結されており、第1可動要素1022は第1軸方向(鉛直方向)に移動することができる。第1可動要素1022の他端部と第2可動要素1023の一端部は水平回転ジョイントで連結されており、第2可動要素1023は第2軸(鉛直方向)まわりに回転することができる。第2可動要素1023の他端部と第3可動要素1024の一端部は水平回転ジョイントで連結されており、第2軸によって回転され、第2軸と平行な第3軸(鉛直方向)まわりに第3可動要素1024が回転することができる。第3可動要素1024と第4可動要素1025の間の第4〜第6ジョイント1034〜1036は、それぞれ、第4〜第6軸回りの回転ジョイントである。第4軸は第3可動要素1024の延びる方向であり、第5軸は第4ジョイント1034によって回転される、第4軸と直交する方向であり、第6軸は、第5ジョイント1035によって回転される、第5軸と直交する方向である。
第2可動要素1023と第3可動要素1024は特定方向に延びる棒状となっており、これらの可動要素の長さはロボットアーム1001の必要な可動範囲に応じて適宜設計される。そして、第1可動要素1022は水平面に平行な状態を維持して上下移動し、第2可動要素1023及び第3可動要素1024は第1可動要素1022と平行な状態を維持して回転する構成となっている。このような構成であれば、第2及び第3のアクチュエータ1042、1043において鉛直方向の重力補償を行う必要がないためモータを小さくすることができる。これは、ロボットアーム1001の小型化に有利な構成であり、限られたスペースしか確保できない医療現場に導入する場合や、治療や手術でより多くのスペースを確保するのに有利である。
また、本構成例のロボティックベッドは、第1のジョイントによる第1可動要素1022の鉛直方向への移動量を制限する代わりに、ベース1021の高さを低くすることにより、テーブル1008が水平面に平行な状態を保ったまま第1可動要素1022を上下に(鉛直方向に)移動させても、またテーブル1008をどのように回転させても(例えば、360度回転させても)ロボットアーム1001に接触しないように構成されている。よって、本構成例においては、ロボットアームがどのような任意の姿勢をとっても、テーブル1008が水平面に平行な状態にあることが維持されていれば、テーブル1008をどのように回転させても、テーブルとロボットアームとが接触することはない。具体的には、端部同士が水平回転ジョイントで連結された第2可動要素1023と第3可動要素1024とテーブル1008が水平面に平行な状態とした場合に第1可動要素1022を一番下まで移動させても、さらにロボットアームの先端が最も低い位置をとったとしても、テーブル1008が他の可動要素ともベース1021とも高さで被らずに最も上方に位置するように構成している。このような構成とすれば、ロボットアーム1001の可動要素及びベース1021がテーブル1008の下方に位置して収納される形となり、医療現場の限られたスペースを活用するのに有効である。
そして、テーブル1008の幅はロボットアーム1001の各可動要素の幅よりも大きい方が好ましい。例えば、鉛直方向上側から見下ろした場合に端部同士が水平回転ジョイントで連結された第2可動要素1023と第3可動要素1024の特定方向(長手方向)が平行となる状態において、鉛直方向上側から見下ろした場合に全ての可動要素がテーブル1008に隠れることが可能であることが望ましい。さらに、本構成例においては、テーブル1008の長さもロボットアーム1001の各可動要素の長さよりも大きい方が好ましい。例えば、鉛直方向上側から見下ろした場合に端部同士が水平回転ジョイントで連結された第2可動要素1023と第3可動要素1024の特定方向(長手方向)が平行で第2可動要素と第3可動要素の中央部が被る状態において、鉛直方向上側から見下ろした場合にベース1021がテーブル1008に隠れることが望ましい。
図9及び図10の例では互いの端部同士が水平回転ジョイントで接続された2つの可動要素(第2可動要素1023と第3可動要素1024)のひとつ(第2可動要素1023)がベース1021に間接的に(第1可動要素1031を介して)連結されているが、例えば第2可動要素1023を直接鉛直直進ジョイントである第1ジョイント1031に連結されるようにしてもよい。また、さらなる水平回転ジョイントや垂直回転ジョイントを介してさらに間接的にベースに連結されていてもよい。この場合でも上述した位置関係が担保されている限り、スペース確保及びコンパクトという効果を得ることができる。
第4可動要素1025は、ロボットアーム1001の先端に位置している。本構成例では、ロボットアーム1001の先端が、特定方向に延びるテーブル1008の中央部の下面に固定されている。このような構成であれば、大きな支持強度でテーブル1008を支持することができ、また、テーブル1008の下にロボットアーム1001の可動要素及びベースを収納しやすくなる。ただし、例えば第3可動要素1024の長さを短くし、テーブル1008の支持位置を一端部とするようにしてもよく、この場合であってもスペース確保及びコンパクト化という効果を得られることに違いはない。
なお、上記説明における「一端部」「他端部」「端部」「中央部」の定義については、第1の構成例と同様である。
ロボットアーム1001は、第1〜第6ジョイント1031〜1036に対応して、第1〜第4可動要素1022〜1025を移動又は回転させる複数のアクチュエータ(本構成例では、第1〜第6アクチュエータ1041〜1046)と、それぞれのジョイントに組み込まれそれぞれの可動要素の位置を検出する複数の位置検出器(本構成例では第1〜第6位置検出器1051〜1056)と、それぞれのアクチュエータの駆動を制御する制御装置1007(図10参照)を含む。制御装置1007はベース1021内に位置しているが、例えば外部の独立した装置としてもよい。
第1〜第6アクチュエータ1041〜1046は、例えばサーボモータである。位置検出器としては第1の構成例と同様、エンコーダを用いてもよいしレゾルバやポテンショメータを用いても構わない。
ロボットアーム1001はまた、第1〜第6ジョイント1031〜1036に対応して、それぞれ、第1〜第6電磁ブレーキ1061〜1066を含むことが望ましい。電磁ブレーキを備えていない場合は、複数のアクチュエータ1041〜1046の駆動によりロボットアーム1001の姿勢を一定に保つことになるが、電磁ブレーキを含んでいると、ある部分のアクチュエータの駆動をオフにしても電磁ブレーキ機能をオンとすることにより、ロボットアーム1001の姿勢を一定に保つことができる。
電磁ブレーキが設けられる場合の第1〜第6電磁ブレーキ1061〜1066それぞれは、アクチュエータへ駆動電流が供給されないときにブレーキ機能をオンにし、アクチュエータへ駆動電流が供給されたときにブレーキ機能をオフにするように構成されている。
第1の構成例と同様、アクチュエータとしてのモータ、位置検出器としてのエンコーダ、及びブレーキは、図3に示すように一体化したユニットとして構成されることが多い。さらに、第1〜第6アクチュエータ1041〜1046のそれぞれには、動力伝達用の減速機構およびカップリングなどが設けられる。
図10に示した例では、第1可動要素1022が第2可動要素1023の上側に位置するように水平回転ジョイント1032によって連結されているが、第1可動要素1022が第2可動要素1023の下側に位置するように水平回転ジョイント1032によって連結されるように構成してもよい。このようにすれば、ベース1721を低くしたことによる高さの補償をすることができる。
以上、図9及び10に示したロボットアーム1001は、自由度が6であるが、本発明のロボットアームの自由度は、必ずしも6である必要はなく、5以下であってもよいし7以上であってもよい。しかしながら、ロボットアームの自由度は、テーブル1008を少なくとも空間内で直線的に移動できるように3以上であることが望ましい。図11に自由度が3である本構成に係るロボティックベッドの例を示す。図11において、ロボットアーム1101はベース1121と2つの可動要素1122及び1123から構成され、ベース1121と第1可動要素1122の一端部は鉛直直進ジョイントである第1ジョイント1131によって連結されており、第1可動要素1122は第1軸方向(鉛直方向)に移動することができる。第1可動要素1122の他端部と第2可動要素1123の一端部は水平回転ジョイントである第2ジョイント1132で連結されており、第2軸(鉛直方向)まわりに第2可動要素1123が回転することができる。第2可動要素1123の他端部がロボットアーム1101の先端を構成し、テーブル1108の中央部の下面と水平回転ジョイントである第3ジョイント1133で連結されている。
以上のように構成されたロボティックベッドを用いれば、テーブル上に載置対象物を載置した後、テーブル1008・1108を検査位置や治療位置といった目的とする位置に正確かつ迅速に移動させることができ、医療現場における検査や治療の効率を格段に向上させることができる。例えば、キャスター付きのテーブルにより載置対象としての患者を移動させるのと比較して、患者に大きな振動を与えることなくテーブル1008・1108をスムーズに移動させることができる他、医療室の床上に多数存在する医療機器に付随するコード類や医療器具に付随するチューブ類との絡まりやこれらを跨ぐことによるテーブルのがたつき回避することができ、安全性と移動効率を高めることができる。
ロボティックベッドが目標とすべき位置の例に関しては、第1の構成例と同様なのでここでは説明を省略する。
また、本構成例はロボットアームがテーブルの下に完全に隠れることが可能であるが、テーブルの長さを短くする、ベースの位置を外側に置いてテーブル下のスペースを大きくするなどにより、テーブルを鉛直方向上側から見下ろした場合に、ロボットアームの一部が、テーブルの長手方向及び幅方向の4辺のうち何れか一辺側においてロボットアームが前記テーブルに隠れない場合があってもよい。ただし、省スペースの観点から、そのはみ出し量は、第1の構成例と同様、前記テーブルの長手方向の寸法の1/4未満に抑えることが好ましい。
本構成例に係るロボットアームに支持されたテーブルを複数の位置の間で移動させる動作を、図10に示した6自由度のロボットアーム1001を用いた場合を例にして、図12〜図14に説明する。
図12は、ある載置対象である被験者を載置位置(第1の位置)からある検査位置(第2の位置)へ移動させる際に、テーブル1008が載置位置に位置している様子を示している。図13は、制御装置1007による制御によって第2可動要素1023及び第3可動要素1024が矢印の如く動き、またテーブル1008が第6軸まわりに回転して矢印の如く動いて(場合によっては、第1可動要素1022も鉛直方向に動いて高さが調節され、また第4軸又は/及び第5軸まわりの回転によりテーブル1008が長手方向又は/及び幅方向まわりに回転して傾きが微調整され)被験者の頭部が検査装置1214に対して斜めから移動してゆく様子を示している。図14はテーブル1008が検査装置1214の内部に挿入され、被験者が検査位置(第2の位置)に到達した様子を示している。なお、図12におけるテーブル1008の位置(第1の位置)は治療位置でもあり得、テーブル1008が図14の検査位置(第2の位置)から図12の位置(第1の位置)まで各可動要素が逆方向に動いて元の位置に戻り、検査直後に検査結果を判断して医師1212が治療を行うことができる。
図11に示したロボットアーム1101の場合は、第2及び第3ジョイントがスカラの動きをしてテーブル1108を第1の位置と第2の位置を往復移動することができる。
なお、被験者の頭の向きはテーブル1008・1108の長手方向において反対側でもよく、その場合はテーブル1008・1108の回転方向が図13に示したテーブルの移動方向とは逆に回りながら検査装置1214に移動することになる。このように、ベース1021・1121がテーブル1008・1108の下に収納されると、載置対象物の向きがどちらであってもよく、図12のテーブル1008・1108の位置が治療位置だとすると、術者1212はテーブル1008・1108のどちら側からでも手術を行うことができ、助手も含めてテーブルを取り囲んで手術にあたることができるという優れたメリットがある。ベース1021・1121が邪魔となることもないので、医師1212は座った状態で治療にあたることができる。
(第3の構成例)
本発明の第3の構成例に係るロボティックベッドの側面図を図15に示す。ロボティックベッドに用いられるロボットアーム1501は、多自由度(3自由度以上)を有し、その先端で載置対象物が載置されるテーブル1508を支持する。テーブル1508およびロボットアーム1501は、ロボティックベッドを構成する。
図15に示すように、ロボットアーム1501は、ベース1521と、複数の可動要素(本構成例では、第1〜第3可動要素1522〜1524)と、複数のジョイント(本構成例では、第1〜第5ジョイント1531〜1535)を含む。
ベース1521と第1可動要素1522の一端部は鉛直直進ジョイントである第1ジョイント1531によって連結されており、第1可動要素1522は第1軸方向(鉛直方向)に移動することができる。第1可動要素1522の他端部は開口して第2可動要素1523が一端部から嵌り込んでおり、第1可動要素1522と第2可動要素1523は水平直進ジョイントで連結されている。よって、第2軸方向(水平方向)に第2可動要素1523が直進移動することができる。第2可動要素1523と第3可動要素1524の間の第3〜第5ジョイント1533〜1535は、それぞれ、第3〜第5軸回りの回転ジョイントである。第3軸は第2可動要素1523の延びる方向であり、第4軸は第3ジョイント1533によって回転される、第3軸と直交する方向であり、第5軸は、第4ジョイント1534によって回転される、第4軸と直交する方向である。
第1可動要素1522と第2可動要素1523は特定方向に延びる棒状となっており、長さはロボットアーム1501の必要な可動範囲に応じて適宜設計される。そして、第1可動要素1522は水平面に平行な状態を維持して上下移動し、第2可動要素1523は第1可動要素1522と平行な状態を維持して第2軸方向(図15のJT2で示す左右方向)に移動する構成となっている。このような構成であれば、鉛直方向において第1可動要素と第2可動要素の位置が重なる(水平方向で一致する軸を有する)ため、テーブル908の位置を低くすることができる。これは、載置対象をテーブル1508に載置しやすくすることができる構成であり、治療室や検査室に導入するのに有利な構成である。
本構成例において、テーブル1508の幅はロボットアーム1501の各可動要素の幅よりも大きい方が好ましい。例えば、鉛直方向上側から見下ろした場合にテーブル1508、第1可動要素1522、及び第2可動要素1523の特定方向(長手方向)が一致する状態において、鉛直方向上側から見下ろした場合にテーブル1508が特定方向(長手方向)で第1可動要素1522と第2可動要素1523と被る部分において、特定方向(第1可動要素1522、第2可動要素1523、及びテーブル1508が延びている長手方向)と直交する方向(テーブルの幅方向)において第1可動要素1522と第2可動要素1523がテーブル1508に隠れることが望ましい。このような構成であれば、少なくともテーブル1508の幅方向(延びている特定方向と直交する方向)においてテーブル1508の長さ方向で被っているロボットアーム1501の部分(図15の例では、第1可動要素1522の一端部以外と、第2可動要素1523及び第3可動要素1524の全体)はテーブル1508の下に収納されることになる(例えば、図17を参照)。
また、本構成例においてはテーブル1508の高さ方向の調整幅を大きくとるため、ベース1521については、ロボットアーム1501の先端が取りうる位置のうちで最も低い位置をとり、テーブル1508が水平面に平行な姿勢とした場合においてもテーブル1508の下面よりも高くしている。以上のような構成とすれば、ロボットアーム1501の各可動要素がテーブル1508の下方に位置して収納される形となり、鉛直方向の移動幅を確保しながらも医療現場の限られたスペースを有効活用するのに有効である。
図15の例では第1可動要素1522がベース1521に直接連結されているが、例えばさらなる水平回転ジョイントや垂直回転ジョイントを介して間接的にベースに連結されていてもよく、この場合でも上述の位置関係(複数の可動要素が水平方向で重なるように同一水平面に位置させる)が担保されて複数の可動要素がテーブル1508の下に収納される限りスペース確保、コンパクト、及びテーブル高さの低位置化という効果を得ることができる。
なお、第1の構成例の場合と同様、省スペース化のため、またテーブル1508の支持強度を保つためのロボットアーム1501のサイズも考慮して、テーブル1508の長手方向においてロボットアームが隠れない寸法A(図15参照)は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以下とすることが好ましい。
第3可動要素1524は、ロボットアーム1501の先端に位置している。本構成例では、ロボットアーム1501の先端が、特定方向に延びるテーブル1508の一端部の下面に固定されている。このような構成であれば、テーブル1508の他端部をベース1521よりできるだけ遠くに位置させるように動作させることができる。テーブル1508を一端部で支持する方がテーブル1508の移動範囲が広くなるが、支持強度を優先する場合にはテーブル1508を中央部で支えてもよい。
なお、上記説明における「一端部」「他端部」「端部」「中央部」の定義については、第1及び第2の構成例と同様である。
ロボットアーム1501は、第1〜第5ジョイント1531〜1535に対応して、第1〜第3可動要素1522〜1524を移動又は回転させる複数のアクチュエータ(本構成例では、第1〜第5アクチュエータ1541〜1545)と、それぞれのジョイントに組み込まれそれぞれの可動要素の位置を検出する複数の位置検出器(本構成例では第1〜第5位置検出器1551〜1555)と、それぞれのアクチュエータの駆動を制御する制御装置1507(図15参照)を含む。制御装置1507はベース1521内に位置しているが、例えば外部の独立した装置としてもよい。
第1〜第5アクチュエータ1541〜1545は、例えばサーボモータである。位置検出器としては第1及び第2の構成例と同様、エンコーダやレゾルバ、ポテンショメータを用いることができる。
ロボットアーム1501はまた、第1〜第5ジョイント1531〜1535に対応して、それぞれ、第1〜第5電磁ブレーキ1561〜1565を含むことが望ましい。電磁ブレーキを備えていない場合は、複数のアクチュエータ1541〜1545の駆動によりロボットアーム901の姿勢を一定に保つことになるが、電磁ブレーキを含んでいると、ある部分のアクチュエータの駆動をオフにしても電磁ブレーキ機能をオンとすることにより、ロボットアーム1501の姿勢を一定に保つことができる。
電磁ブレーキが設けられる場合の第1〜第5電磁ブレーキ1561〜1565それぞれは、アクチュエータへ駆動電流が供給されないときにブレーキ機能をオンにし、アクチュエータへ駆動電流が供給されたときにブレーキ機能をオフにするように構成されている。
第1及び第2の構成例と同様、アクチュエータとしてのモータ、位置検出器としてのエンコーダ、及びブレーキは、図3に示すように一体化したユニットとして構成されることが多い。さらに、第1〜第5アクチュエータ1541〜1545のそれぞれには、動力伝達用の減速機構およびカップリングなどが設けられる。
以上のように構成されたロボティックベッドを用いれば、テーブル上に載置対象物を載置した後、テーブル1508を検査位置や治療位置といった目的とする位置に正確かつ迅速に移動させることができ、医療現場における検査や治療の効率を格段に向上させることができる。例えば、キャスター付きのテーブルにより患者を移動させるのと比較して、患者に大きな振動を与えることなくテーブル1508をスムーズに移動させることができる他、医療室の床上に多数存在する医療機器に付随するコード類や医療器具に付随するチューブ類との絡まりやこれらを跨ぐことによるテーブルのがたつき回避することができ、安全性と移動効率を高めることができる。
ロボティックベッドが目標とすべき位置の例に関しては、第1及び第2の構成例と同様なのでここでは説明を省略する。
また、第1及び第2の構成例においては、ロボットアームが可動要素の端部同士が水平回転ジョイントで接続された構成であったため、鉛直方向では可動要素の重なりが生じていたが、本構成例においては、ロボットアームに水平直進ジョイントを採用しているため、この鉛直方向の重なりを解消しており、テーブル1508を低い位置にするのにさらに有利な構成となっている。
本構成例に係るロボットアーム1501に支持されたテーブル1508を複数の位置の間で移動させる動作を図17〜図19に説明する。
図17は、ある載置対象である被験者を載置位置からある検査位置へ移動させる際に、テーブル1708が載置位置(第1の位置)に位置している様子を示している。図18は、制御装置1507による制御によって第2可動要素1523及びテーブル1508が矢印の如く動いて(場合によっては、第1可動要素1522も鉛直方向に動いて高さが調節され、またテーブル1508が第3軸又は/及び第4軸まわりの回転によりテーブル1508の長手方向又は/及び幅方向まわりの傾きが微調整され)被験者の頭部が検査装置1714に対して斜めから移動してゆく様子を示している。図19はテーブル1508が検査装置1714の内部に挿入され、被験者が検査位置(第2の位置)に到達した様子を示している。なお、図17におけるテーブル1508の位置(第1の位置)は治療位置でもあり得、テーブル1508が図19の検査位置から図17の位置まで各可動要素が逆方向に動いて元の位置に戻り、検査直後に検査結果を判断して医師1712が治療を行うことができる。
図15に示したロボットアーム1501は、自由度が5であるが、本発明のロボットアームの自由度は、必ずしも5である必要はなく、4以下であってもよいし6以上であってもよい。しかしながら、ロボットアームの自由度は、テーブル1508を少なくとも空間内を直線的に移動できるように3以上であることが望ましい。
図16に自由度が3であるロボティックベッドの例を示す。図16において、ロボットアーム1601はベース1621と2つの可動要素1622及び1623から構成され、ベース1621と第1可動要素1622の一端部は鉛直直進ジョイントである第1ジョイント1631によって連結されており、可動要素1622は第1軸方向(鉛直方向)に移動することができる。第1可動要素1622の他端部は開口して第2可動要素1623が一端部から嵌り込んでおり、第1可動要素1622と第2可動要素1623は水平直進ジョイントで連結されている。よって、第2軸方向(水平方向)に第2可動要素1623が移動することができる。第2可動要素1623の他端部がロボットアーム1601の先端を構成し、第2可動要素1623の他端部はテーブル1608の一端部と水平回転ジョイントである第3ジョイント1633によって連結されている。
図16に示したロボティックベッドであれば、テーブル1608の長手方向及び幅方向における軸まわりの傾きの調整は制限されることになるが、鉛直方向上側からテーブル1608を見下ろした場合に、図17〜19に示したような動作をすることは可能である。
なお、本構成例のように水平直進ジョイントを用いると、テーブルを単純に直進させる動きにおいて、第1及び第2構成例のようなスカラタイプのように可動要素がテーブルからはみ出ることがないという点でメリットがある。直進ジョイントは、例えばボールスクリューやラックピニオン機構を採用することができる。
(第4の構成例)
本発明の第4の構成例に係るロボティックベッドの側面図を図20に示す。ロボティックベッドに用いられるロボットアーム2001は、多自由度(3自由度以上)を有し、その先端で載置対象物が載置されるテーブル2008を支持する。テーブル2008およびロボットアーム2001は、ロボティックベッドを構成する。
図20に示すように、ロボットアーム2001は、ベース2021と、複数の可動要素(本構成例では、第1〜第4可動要素2022〜2026)と、複数のジョイント(本構成例では、第1〜第7ジョイント2031〜2037)を含む。
ベース2021と第1可動要素2022の一端部は水平回転ジョイントである第1ジョイント2031によって連結されており、第1可動要素2022は第1軸(鉛直方向)まわりに回転することができる。第1可動要素2022の他端部は少なくとも特定方向の他端部側において開口しており、該開口に第2可動要素2023が一端部から嵌り込んでおり、第1可動要素2022と第2可動要素2023は直進ジョイントで連結されている。よって、第2可動要素2023は第2軸方向(水平方向)に移動することができる。第2可動要素2023の他端部と第3可動要素2024の一端部は垂直回転ジョイントで連結されており、第3可動要素2024は長手方向(第3可動要素2024の延びる方向)と鉛直方向の両方に直交する第3軸まわりに回転することができる。第3の可動要素2024の他端部と第4の可動要素2025の一端部は垂直回転ジョイントで連結されており、第4可動要素2025は長手方向(第4可動要素2025の延びる方向)と鉛直方向の両方に直交し第3軸と平行な第4軸まわりに回転することができる。第3軸の回転と第4軸の回転は独立して制御可能であるが、例えば第3可動要素2024を第3軸の時計まわりに15度回転させると、第4可動要素2025は第4軸の反時計回りに15度回転するように連動させる(図21参照)ことにより、第4可動要素2025全体が水平面と平行な状態を維持したまま鉛直方向に上下移動することができる。第4可動要素2025と第5可動要素2026の間の第5〜第7ジョイント2035〜2037は、それぞれ、第5〜第7軸回りの回転ジョイントである。第5軸は第4可動要素2024の延びる方向であり、第6軸は第5ジョイント2035によって回転される、第5軸と直交する方向であり、第7軸は、第6ジョイント2036によって回転される、第6軸と直交する方向である。
第1可動要素2022〜第4可動要素2025は特定方向に延びる棒状となっており、これらの可動要素の長さはロボットアーム2001の必要な可動範囲及びテーブル2008を鉛直方向に移動させる範囲に応じて適宜設計される。そして、本構成例においては、テーブル2008の鉛直方向上下の移動を、同一水平面(同一の高さ)に位置することが可能な2つの回転ジョイント(第3の垂直回転ジョイント2033と第4の垂直回転ジョイント2034)で行うため、第1〜第3の構成例のようにベースの高さを確保する必要がない。すなわち、テーブル2008の鉛直方向の移動幅は、ベースの鉛直方向高さではなく、第3可動要素2024の長さで調整することができる。このように、テーブル2008を高さ方向に移動させるための垂直回転ジョイント(2033及び2034)により連結される2つの可動要素(2023及び2024、又は2024及び2025)が特定姿勢、例えばロボットアーム2001がテーブル2008を鉛直方向の可動範囲において最も低くする姿勢をとった場合に、同一水平面において重なる構成をとるため、テーブルの高さをさらに低くすることができ、低い治療ボジションの確保や低い位置での載置対象の載置も可能となる。また、ベース2021をテーブル2008の下に隠れるような構成とすることにより、限られたスペースしか確保できない医療現場に導入する場合や、治療や手術でより多くのスペースを確保するのに有利である。なお、テーブル2008の高さの調整は、第3可動要素の長さHで決定されるため、高さ方向の動作範囲を考慮してHの寸法を決定する。
なお、垂直回転ジョイントにより連結される2つの可動要素は、必ずしも図20に示されるような端部同士が連結される構成をとる必要はなく、例えば可動要素の側面同士が垂直回転ジョイントにより連結されるような構成であってもよい。また、垂直回転ジョイントにより連結される可動要素を同一水平面において重なる構成は必ずしも直動ジョイントとともに用いられる必要はなく、例えば第1の構成例や第2の構成例において垂直直進ジョイントの代わりに用いてもよく、本構成例の場合に限定されない、省スペース用のロボティックベッドを実現するための独立した特徴である。
また、第1及び第2の構成例においては、ロボットアームが可動要素の端部同士が水平回転ジョイントで接続された構成であったため、鉛直方向では可動要素の重なりが生じていたが、本構成例においては、ロボットアームに水平直進ジョイントを採用しているため、この重なりを解消しており、テーブル2008を低い位置にするのにさらに有利な構成となっている。
そして、本構成例のロボティックベッドは、テーブル2008が水平な状態を保ったテーブル2008が水平面に平行な状態を保ったまま上下に(鉛直方向に)移動させても、またテーブル2008をどのように回転させても(例えば、360度回転させても)ロボットアーム2001に接触しないように構成されている。よって、本構成例においては、ロボットアームがどのような任意の姿勢をとっても、テーブル2008が水平面に平行な状態にあることが維持されていれば、テーブル2008をどのように回転させても、テーブルとロボットアームとが接触することはない。
そして、テーブル2008の幅はロボットアーム2001の各可動要素及びベースの幅よりも大きく、鉛直方向上側から見下ろした場合にベース2021を含むロボットアーム2001の全体がテーブル2008の下に隠れることが好ましい。例えば、鉛直方向上側から見下ろした場合にテーブル2008の長手方向と第1及び第2可動要素2022・2023の特定方向が平行となる状態において、テーブル2008を鉛直方向上側から見下ろした場合に全ての可動要素及びベース2021がテーブル2008に隠れることが可能であることが望ましい。
本構成例において、第5可動要素2026はロボットアーム2001の先端に位置している。図20、21においては、ロボットアーム2001の先端が、特定方向に延びるテーブル2008の端部の下面に固定されている。従って、テーブル2008の可動範囲を大きくすることができる。
なお、上記説明における「一端部」「他端部」「端部」「中央部」の定義については、第1及び第2の構成例と同様である。
ロボットアーム2001は、第1〜第7ジョイント2031〜2037に対応して、第1〜第5可動要素2022〜2026を移動又は回転させる複数のアクチュエータ(本構成例では、第1〜第7アクチュエータ2041〜2047)と、それぞれのジョイントに組み込まれそれぞれの可動要素の位置を検出する複数の位置検出器(本構成例では第1〜第7位置検出器2051〜2057)と、それぞれのアクチュエータの駆動を制御する制御装置2007(図20参照)を含む。制御装置2007は本構成例においてベース2021内に位置しているが、例えば外部の独立した装置としてもよい。
第1〜第7アクチュエータ2041〜2047は、例えばサーボモータである。位置検出器としては第1〜第3の構成例と同様、エンコーダを用いてもよいしレゾルバやポテンショメータを用いても構わない。
ロボットアーム2001はまた、第1〜第6ジョイント2031〜2037に対応して、それぞれ、第1〜第7電磁ブレーキ2061〜2067を含むことが望ましい。電磁ブレーキを備えていない場合は、複数のアクチュエータ2041〜2047の駆動によりロボットアーム2001の姿勢を一定に保つことになるが、電磁ブレーキを含んでいると、ある部分のアクチュエータの駆動をオフにしても電磁ブレーキ機能をオンとすることにより、ロボットアーム2001の姿勢を一定に保つことができる。
電磁ブレーキが設けられる場合の第1〜第7電磁ブレーキ2061〜2067それぞれは、アクチュエータへ駆動電流が供給されないときにブレーキ機能をオンにし、アクチュエータへ駆動電流が供給されたときにブレーキ機能をオフにするように構成されている。
第1〜第3の構成例と同様、アクチュエータとしてのモータ、位置検出器としてのエンコーダ、及びブレーキは、図3に示すように一体化したユニットとして構成されることが多い。さらに、第1〜第7アクチュエータ2041〜2047のそれぞれには、動力伝達用の減速機構およびカップリングなどが設けられる。
(変形例)
次に、第4の構成例に係る変形例の側面図を図22に示す。第4の構成例と異なるところは、第3可動要素2024と、第3及び第4ジョイントが、パラレルリンク機構に置き換えられている点である。すなわち、第3可動要素2024が上側及び下側の2つのリンクで可動要素を形成し、当該可動要素の一端部において第2可動要素2023と第3軸に平行な軸で連結され、他端部において第4可動要素2025と第4軸に平行な軸で連結される。
パラレルリンクでは第2可動要素2023と接続される2つの回動軸、及び第4可動要素2025と接続される2つの回動軸、の合計4つの回動軸のうち、1つのみに対応付けられたアクチュエータが設けられている。図22に示した本変形例では第2可動要素2023との接続側かつ上側の回動軸に対してアクチュエータ(及び位置検出器、ブレーキ)が設けられている。
そして、本構成例におけるパラレルリンクは、アクチュエータが設けられた回動軸が時計回りに回動すると、同一端側にある回動軸は同じ回動量だけ時計回りに回転し、他端側にある2つの回動軸は同じ回動量だけ反時計回りに回転するような連動機構となっている。従って、第4可動要素2025は、水平面に対して同じ状態を維持しながら鉛直方向に上下運動をすることができる。図23は、本変形例でテーブル2008を上下に移動させた場合の側面図を示している。
このように、本変形例ではパラレルリンク機構を採用したので、テーブル2008を鉛直方向に上下動させる際に、テーブル2008に載置された載置対象の重量を受ける点がパラレルリンクの第2可動要素2023側ではなく第4可動要素2025側の回動軸になるので、テーブル2008を鉛直方向に上下動させるためのトルクを小さくすることができる。従って、パラレルリンクを駆動するためのアクチュエータを小型化することができ、ロボットアーム2001を小型化することができる。これは、ロボットアーム2001全体をテーブル2008下の空間に収納される構成とするのに有利である。
なお、本変形例においてはアクチュエータ(及び位置検出器、ブレーキ)の数が1つ少なくなったため、ジョイントをひとつ少なくすることができたということができる。すなわち、図20における第4ジョイント2034は省略され、図20における第5〜第7ジョイントは、図21において第4〜6ジョイントとなる。
以上のように構成されたロボティックベッドを用いれば、テーブル上に載置対象物を載置した後、テーブル2008を検査位置や治療位置といった目的とする位置に正確かつ迅速に移動させることができ、医療現場における検査や治療の効率を格段に向上させることができる。例えば、キャスター付きのテーブルにより載置対象としての患者を移動させるのと比較して、患者に大きな振動を与えることなくテーブル2008をスムーズに移動させることができる他、医療室の床上に多数存在する医療機器に付随するコード類や医療器具に付随するチューブ類との絡まりやこれらを跨ぐことによるテーブルのがたつき回避することができ、安全性と移動効率を高めることができる。
ロボティックベッドが目標とすべき位置の例に関しては、第1〜第3の構成例と同様なのでここでは説明を省略する。
図24は、本構成例に係るロボティックベッドを用いて載置対象である被験者を載置位置(第1の位置)からある検査位置(第2の位置)へ移動させる際に、テーブル2008が載置位置に位置している様子を示している。図25は、制御装置2007による制御によって第1可動要素2022、第2可動要素2023、及びテーブル2008が矢印の如く動いて(場合によっては、第3可動要素2024により高さが調節され、またテーブル2008が第5軸又は/及び第6軸(変形例における第4軸又は/及び第5軸)まわりの回転によりテーブルの長手方向及び/又は幅方向まわりの傾きが微調整され)被験者の頭部が検査装置2414に対して斜めから移動してゆく様子を示している。図26はテーブル2008が検査装置2414の内部に挿入され、被験者が検査位置に到達した様子を示している。なお、図24におけるテーブル2008の位置は治療位置でもあり得、テーブル2008が図26の検査位置から図24の位置まで各可動要素が逆方向に動いて元の位置に戻り、検査直後に検査結果を判断して医師2412が治療を行うことができる。
以上、図20及び図22に示した本構成例に係るロボットアーム2001は、6又は7つの軸を有するが必ずしも6又は7である必要はなく、5又は6以下であってもよいし7又は8以上であってもよい。しかしながら、ロボットアームの自由度は、テーブル2008を少なくとも空間内で直線的に移動できるように3以上であることが望ましい。例えば、図22において第1ジョイント2031、第4ジョイント2035、第5ジョイント2036を省略すると図25において第1可動要素2022の動きは制限されるが、図17〜図19に示したのと類似した動作を行うことができる。
なお、本構成例においても第3の構成例と同様に水平直進ジョイントを用いているので、テーブルを単純に直進させる動きにおいて、第1及び第2構成例のようなスカラタイプのように可動要素がテーブルからはみ出ることがないという点でメリットがある。水平直進ジョイントは、例えばボールスクリューやラックピニオン機構を採用することができる。
また、本構成例もロボットアームがテーブルの下に完全に隠れることが可能であるが、第2の構成例と同様、テーブルの長さを短くする、ベースの位置を外側に置いてテーブル下のスペースを大きくする、などにより、テーブルを鉛直方向上側から見下ろした場合に、ロボットアームの一部が、テーブルの長手方向及び幅方向の4辺のうち何れか一辺側においてロボットアームが前記テーブルに隠れない場合があってもよい。ただし、省スペースの観点から、そのはみ出し量は、第1〜3の構成例と同様、前記テーブルの長手方向の寸法の1/4未満に抑えることが好ましい。
(第5の構成例)
本構成例に係るロボティックベッドは、第1〜第4の構成例のロボティックベッドにおけるテーブルにおいて、スライド機構を備えていることを特徴としている。
図27は、テーブル2708がレールを有する本体2781とレールの溝に嵌まり込むスライド板2782から構成されていることを示す図である。ロボティックベッドにおけるテーブルがこのような構成を備えていると、例えばロボティックアームによりテーブルを検査準備位置まで移動させた後、スライド板2282を人手でスライドさせることにより、載置対象物をさらに遠くの検査位置まで移動させることができる。
図28は、テーブル2808の下面にはスライド機構2809が嵌まり込む溝2883が形成されており、溝2883の両側には、複数の歯を有するラック2884が設けられていることを示す図である。スライド機構2809はロボットアームの先端と連結される本体2891と、本体2891に回転可能に支持された、ラック2884と噛み合う一対のピニオン2892と、ピニオン2892を回転させるアクチュエータ(図示せず)を含む。ロボティックベッドにおけるテーブル2808がこのような構成を備えていると、例えばロボティックアームによりテーブルを検査準備位置まで移動させた後、テーブル2808をアクチュエータの駆動によってスライドさせることにより、載置対象物をさらに遠くまで移動させることができる。アクチュエータは例えばサーボモータである。
なお、スライド機構を備えると、各構成例における自由度は1つ増えることになる。また、アクチュエータにより駆動可能な構成であれば、各構成例に係るロボットアームの複数のアクチュエータと同時に駆動させることにより、ロボットアームの可動要素とスライド機構が同時に動作して効率的に目的位置にテーブルを搬送することができる。
以下、第1の構成例に係るロボティックベッドおいてアクチュエータ駆動のスライド機構を採用した場合に載置対象を移動させる例を説明する。
図29に第1の構成例においてスライド機構を設けたロボティックベッドの側面図を示す。
ロボティックベッドに用いられるロボットアーム2901は、多自由度(3自由度以上)を有し、その先端で載置対象物が載置されるテーブル2908を支持する。テーブル2908およびロボットアーム2901は、ロボティックベッドを構成する。
ロボットアーム2901は、ベース2921と、複数の可動要素(本構成例では、第1〜第3可動要素2922〜2924)と、複数のジョイント(本構成例では、第1〜第5ジョイント2931〜2935)を含む。
ベース2921と第1可動要素2922の一端部は鉛直直進ジョイントである第1ジョイント2931によって連結されており、第1可動要素2922は第1軸方向(鉛直方向)に移動することができる。第1可動要素2922の他端部と第2可動要素2923の一端部は水平回転ジョイントで連結されており、第2軸(鉛直方向)まわりに第2可動要素2923が回転することができる。第2可動要素2923と第3可動要素2924の間の第3〜第5ジョイント2933〜2935は、それぞれ、第3〜第5軸回りの回転ジョイントである。第3軸は第2可動要素2923の延びる方向であり、第4軸は第3ジョイント2933によって回転される、第3軸と直交する方向であり、第5軸は、第4ジョイント2934によって回転される、第4軸と直交する方向である。
第1可動要素2922と第2可動要素2923は特定方向に延びる棒状となっており、長さはロボットアーム2901の必要な可動範囲に応じて適宜設計される。そして、第1可動要素2922は水平面に平行な状態を維持して上下移動し、第2可動要素2923は第1可動要素と平行な状態を維持して第2軸まわりに回転する構成となっている。このような構成であれば、第2のアクチュエータ2942において鉛直方向の重力補償を行う必要がないためモータを小さくすることができる。これは、ロボットアーム2901の小型化に有利な構成であり、限られたスペースしか確保できない医療現場に導入する場合や、治療や手術でより多くのスペースを確保するのに有利である。
第3可動要素2924は、ロボットアーム2701の先端に位置している。本構成例では、ロボットアーム2901の先端が、テーブル2908のスライド機構2909に連結されている。
ロボットアーム2901は、第1〜第5ジョイント2931〜2935及びスライド機構2909に対応して、第1〜第3可動要素2922〜2924及びスライド機構2909を移動又は回転させる複数のアクチュエータ(本構成例では、第1〜第5アクチュエータ2941〜2945及びスライド機構用アクチュエータ2949)と、それぞれのジョイントに組み込まれそれぞれの可動要素の位置を検出する複数の位置検出器(本構成例では第1〜第5位置検出器2951〜2955及びスライド機構用位置検出器2959)と、それぞれのアクチュエータの駆動を制御する制御装置2907を含む。制御装置2907はベース2921内に位置しているが、例えば外部の独立した装置としてもよい。
第1〜第5アクチュエータ2941〜2945及びスライド機構用アクチュエータ2949は、例えばサーボモータである。位置検出器としては第1〜第4の構成例と同様、エンコーダやレゾルバ、ポテンショメータを用いることができる。
ロボットアーム2901はまた、第1〜第5ジョイント2931〜2935及びスライド機構2909に対応して、それぞれ、第1〜第5電磁ブレーキ2961〜2965及びスライド機構用電磁ブレーキ2969を含むことが望ましい。電磁ブレーキを備えていない場合は、複数のアクチュエータ2941〜2945及びスライド機構用アクチュエータ2949の駆動によりロボットアーム2901の姿勢を一定に保つことになるが、電磁ブレーキを含んでいると、ある部分のアクチュエータの駆動をオフにしても電磁ブレーキ機能をオンとすることにより、ロボットアーム2901の姿勢を一定に保つことができる。
電磁ブレーキが設けられる場合の第1〜第5電磁ブレーキ2961〜2965それぞれは、アクチュエータへ駆動電流が供給されないときにブレーキ機能をオンにし、アクチュエータへ駆動電流が供給されたときにブレーキ機能をオフにするように構成されている。
図30に示す載置対象物の載置位置(第1の位置)は図6と同じである。しかし、スライド機構を有するロボティックベッドにおいて検査装置3014へ挿入するテーブル2908方向は逆である。すなわち、図6〜図8においてテーブル208を検査装置614にテーブル208の一端側から挿入していると表現すると、図30〜32においては検査装置3014へテーブル2908の他端側から挿入する構成となる。
図8に示す検査装置614に頭から挿入された位置(検査位置)は図32の位置と同じである。第1の構成例ではそのままロボットアーム201の可動要素を動かしてテーブル208を斜めから検査装置614内に搬送したが、本構成例においてはテーブル2908を検査準備位置に位置したあと、テーブル2908をアクチュエータ駆動によりスライドさせることにより、検査装置2914内へと移動させている。検査準備位置とは、検査位置以外の位置でテーブルの特定方向(長手方向)が検査装置614の開口部方向を向く位置であり、検査位置におけるテーブルの特定方向(長手方向)と平行である位置である。
以上のように、スライド機構を設けると、ロボットアームのサイズを小型化できるというメリットがある他、図6に示すような(ロボットアーム201がテーブル208の一端部を支持している)第1の構成例においては、載置位置(第1の位置)において載置対象をどちらの方向に向けるかを変更できるという効果がある。後者については、例えば第1の位置が脳や歯の上半身側の手術を行う手術位置でもある場合、図6のように患者が検査装置614より戻ってきた場合に頭部がベース221の方を向いていると、術者612はベース221が邪魔となって手術がしにくいが、図29のように患者が検査装置3014より戻ってきた場合に頭部がベース2921と逆の方を向いていると、上半身側の手術がしやすいといった効果がある。ベース2921が邪魔となることもないので、医師3012は座った状態で治療にあたることができる。
なお、ここで紹介した例ではロボットアームの先端がテーブルの端部を支持しているが、ロボットアームの先端がテーブルの中央部を支持している構成において手動スライド機構を採用してもよい。また、アクチュエータ駆動のスライド機構2909が嵌まり込むテーブルの溝2883の長さを中央部分だけに制限してもよく、この場合はスライド幅が短くなるが、スライド幅が大きい場合と比べて、テーブルの撓みは発生しにくくなる。
また、上述の例では、第1の構成例に対し、アクチュエータ駆動のスライド機構をそれぞれ適用する例を示したが、各構成例において手動操作のスライド機構とアクチュエータ駆動のスライド機構のどちらのスライド機構を適用してもよい。
第2及び第4の構成例においてスライド機構を設ける場合は、スライド機構によりテーブルの位置がどれだけ変更していようと、テーブルが水平面に平行な状態を維持していれば、テーブルをどのように回転してもテーブルとロボットアームが接触しないように構成していればよい。第1の構成例については、鉛直方向上側から見下ろした場合に、端部同士が水平回転ジョイントによって連結された2つの可動要素の特定方向が平行となる状態において、テーブル位置がスライド方向で移動することなくスライド機構を有するテーブルが最もベースに近づいた状態からテーブルを水平面に平行な状態でどのように回転させても(例えば360度回転させても)ロボットアームと接触しないように設計しておくことが好ましい。第3の構成例については、鉛直方向上側から見下ろした場合に、第2の可動要素1523が第1の可動要素1501の内部の一番奥に収納された状態において、テーブル位置がスライド方向で移動することなくスライド機構を有するテーブルが最もベースに近づいた状態からテーブルを水平面に平行な状態でどのように回転させても(例えば360度回転させても)ロボットアームと接触しないように設計しておくことが好ましい。このような設計により、各構成例におけるロボティックベッドのメリットを維持しつつ、スライド機構を付加したメリットも得ることができる。
[各構成例に共通する特徴]
以下には、第1〜第5の構成例全てに適用可能な追加の特徴を記す。
(チューブ類/コード類の固定具)
各構成例におけるテーブルへの載置対象が患者である場合、その患者が生命維持装置や点滴、その他治療に必要な装置を装着していることがある。例えば、患者は麻酔器616、1216、1716、2416、3016とチューブでつながっており、テーブルを動かす場合にはこれらの対策が必要である。
上述の通り、キャスター付きのテーブルを移動させることと比較すると、上記第1〜第5の構成例に係るロボティックベッドを導入することにより、載置対象の移動時にこのようなチューブ類(チューブおよび/またはケーブル)との絡まりやこれを跨ぐことによるがたつきを回避することができるが、さらに安全性を確保するために、本発明に係るロボティックベッドにおいては、テーブル、ロボットアームのベース、または可動要素の少なくとも1つには、これらの装置から延びているチューブ類を結束するための固定具271、471、571、1071、1171、1571、1671、2071、2971が取り付けられていることが望ましい。これにより、ロボットアームの動作時にチューブ類が絡まってしまうといった事態をさらに確実に回避することができる。医師や助手がチューブ類に足を引っ掛けてしまうということも予防し、さらに安全性を高めることができる。絡まり防止の対策が必要なチューブ類としては生命時装置などに接続されているものに限らず、医療機器やディスプレイなどの電気系コードなど(コード類)も同様の固定具で固定することが望ましい。また、テーブルを移動させる位置が決まっていれば、ロボットアームのだいたいの動きを予測して、余らせるチューブ類/コード類の長さとチューブ類/コード類側の固定具に嵌められる位置を決めておくことが望ましい。
(手動ブレーキオフ機能)
水平回転ジョイントに対応する電磁ブレーキが設けられている場合、アクチュエータへ駆動電流が供給されていないときに手動でブレーキ機能をオフとするスイッチやレバーが設けられていてもよい。
例えば、図2に示すロボットアーム201の場合、第1〜第5の電磁ブレーキ261〜265のうちの、水平回転ジョイントである第2ジョイント232及び第5ジョイント235に対応する第2電磁ブレーキ262及び第5の電磁ブレーキ265を手動でブレーキ機能をオフすることができる構成としてもよい。図10に示すロボットアーム1001の場合、第1〜第6の電磁ブレーキ1061〜1066のうちの、水平回転ジョイントである第2、第3、及び第6ジョイント1032、1033、及び1036に対応する第2、第3、及び第6の電磁ブレーキ1062、1063、及び1066が手動でブレーキ機能をオフすることができる構成としてもよい。図15に示すロボットアーム1501の場合、第1〜第5の電磁ブレーキ1561〜1566のうちの、水平回転ジョイントである第5ジョイント1535に対応する第5電磁ブレーキ1565、及び水平直進ジョイント1532に対応する第2電磁ブレーキ1562を手動でブレーキ機能をオフすることができる構成としてもよい。図20に示すロボットアーム2001の場合、第1〜第7の電磁ブレーキ2061〜2067のうちの、水平回転ジョイントである第7ジョイント2037に対応する第7電磁ブレーキ2067、及び水平直進ジョイント2032に対応する第2電磁ブレーキ2062を手動でブレーキ機能をオフすることができる構成としてもよい。さらに、図29のようにモータで駆動されるスライド機構を有するロボティックベッドの場合、スライド機構を駆動するモータにも電磁ブレーキを設け、当該電磁ブレーキのブレーキ機能を手動でオフとする構成としてもよい。
この構成によれば、万が一停電の場合でも、ブレーキ機能をオフしてロボットアームの可動要素を動かすことにより、医療従事者が例えば載置対象である患者を安全な場所に移動することができる。
なお、上記列挙した手動ブレーキオフ機能の適用個所全てに適用する必要はなく、少なくとも一部に設けたり、水平面に平行な状態にしか動くことがない個所に限定して適用したりしてもよいことはもちろんである。
(距離センサ)
各構成例におけるロボットアームには、ロボティックベッドの可動範囲を走査する距離センサ273、473、573、1073、1173、1573、1673、2073、2973(以下、273〜2973)が設けられていることが望ましい。
例えば、図2において、ロボットアーム201の可動範囲は、第2ジョイント232の回転中心である第2軸を中心とする、ロボットアーム201とテーブル208を最大に伸長させたときのテーブル208の末端までを半径とする扇状の範囲である。図10において、ロボットアーム1001の可動範囲は、第2ジョイント1032の回転中心である第2軸を中心とする、ロボットアーム1001とテーブル1008を最大に伸長させたときのテーブル1008の末端までを半径とする扇状の範囲である。図15において、ロボットアーム1501の可動範囲は、可動要素1523をベース1521と反対側に最大限伸ばしたときの、第5軸まわりにテーブル1508を回転させる場合の扇状の範囲である。図20において、ロボットアーム2001の可動範囲は、可動要素2023をベース2021と反対側に最大限伸ばしたときの、第7軸まわりにテーブル2008を回転させる場合の扇状の範囲である。図29において、ロボットアーム2901の可動範囲は、第2ジョイント2932の回転中心である第2軸を中心とする、ロボットアーム2901とスライド機構でテーブル2908を一端側(ベース2921と反対側)に寄せて最大に伸長させたときのテーブル2908の末端までを半径とする扇状の範囲である。
以上のような距離センサ273〜2973を設けていると、制御装置207、407、507、1007、1107、1507、1607、2007、2907(以下、207〜2907)は、距離センサによりロボットアームの可動範囲内に異物(人や物体)が検出された場合には、全てのアクチュエータの作動を停止または禁止する。この構成によれば、医療従事者のようなロボットの操作に熟達しておらず、ロボットアームの動作の予測が困難な人がロボティックベッドの近傍にいる場合であっても、人のロボットアームまたはテーブルへの接触および衝突などの危険が回避される。また、ロボットアームの医療機器への接触および衝突などの危険も回避される。
なお、例えばテーブルが治療位置に到達した場合には、治療にあたる医師や助手がテーブルを取り囲んでも反応しないように、テーブルの位置に応じて距離センサをアクティブとするか非アクティブとするかを制御するようにしておくことが好ましい。ただし、距離センサのアクティブ/非アクティブを手動で切り替える切り替えスイッチなどの手段を設けておくべきである。あるいは、距離センサのアクティブ/非アクティブの切り替えは、制御装置により行われてもよい。
(高さセンサ)
テーブルまたはロボットアームには、テーブル208、408、508、1008、1108、1508、1608、2008、2908(以下、208〜2908)の高さを検出する高さセンサ274、474、574、1074、1174、1574、1674、2074、2974(以下、274〜2974)4が設けられていることが望ましい。この場合、制御装置207〜2907は、テーブル208〜2908を検査装置内へ移動する前に、高さセンサ274〜2974により検出されるテーブル208〜2908の高さが所定範囲内にあるか否かを判定し、所定範囲内にない場合には、テーブル208〜2908を検査装置内へ移動しないように制御する。この構成によれば、テーブルまたは被験者の検査装置との接触や衝突の危険が回避される。なお、上記においては移動目標位置として検査位置を例に挙げたが、これが測定装置による測定位置、撮影装置による撮影位置など、医療に関連する装置内に挿入される場合であっても同様である。
(撓み補償)
また、各構成例におけるロボットアームは、テーブルやロボットアームの撓みに応じて制御装置207〜2907によってロボットアームを制御することによりこれを補償する機能を有している。載置対象物の重量などが原因でテーブル3308が撓んだ場合にこれを補正する例を図33に示す。例えばテーブル3308端部の側面に可視又は不可視のマーカー3390を設け、外部カメラによる画像検出や赤外線カメラなどの位置認識装置3380でマーカーの位置を検出することにより、テーブル3308の位置を検出し、制御装置207〜2907はこの位置を記憶させることができる(図33(a))。位置認識装置3380は、例えば撮像空間内でテーブルの位置を検出できるように設けられる。そして、図33(b)のようにテーブルが撓んだ場合、マーカー3390が例えば右下の方へ移動するため、テーブル3308の位置のズレを外部カメラにより検知し、制御装置はこのズレを補正するために予め記憶させたマーカーの位置に戻すようにアクチュエータの少なくともひとつを制御する。図33(c)の例では、ロボットアームのある可動要素を左側へ移動させるとともに、垂直回転ジョイントを時計回りに回転させて補正している。
図34に撓み補償の他の例を示す。例えば、マーカー3490を設ける位置をテーブル中央部とした場合、制御装置207〜2907はこの位置をテーブル3408の初期位置として記憶させることができる(図34(a))。そして、図34(b)のようにテーブルが撓んでマーカー3490が例えば下方へ移動する場合、マーカー3490の位置のズレをロボットアームの制御装置207〜2907で検知し、制御装置207〜2907はこのズレを補正するために予め記憶させたマーカーの位置3490に戻すようにアクチュエータの少なくともひとつを制御する。図34(c)の例では、ロボットアームの2つの垂直回転ジョイントを時計回りに回転させて補正している。
また、撓みを補正する他の例として、各ジョイントに設けたアクチュエータの電流値を測定する電流測定器を設け、測定した電流値から負荷を推定して、その負荷に応じた撓みの補正を行うことができる。この場合、各ジョイントは、負荷量に応じた撓み量を予めメモリに記憶しておくか、既知の適当な計算により撓み量を算出することで、撓みの補正量を決定することができる。補正量に応じた位置の修正は、図33及び図34と同じように各ジョイントの少なくともひとつを制御することにより実現することができる。
このような構成によれば、目標とする位置を常に維持することが可能となる。例えば、テーブルがスライド機構により位置がベースから遠ざかる動作を行う場合でも、動作中適宜高さ位置の修正が行われる。従って、例えば載置対象物の正確な移送が達成されるとともに、テーブルまたは載置対象物の検査装置、測定装置、撮影装置等への接触および衝突などの危険も回避される。
(重量センサ)
また、テーブルまたはロボットアームには、載置対象物の重量を計測する重量センサ275、475、575、1075、1175、1575、1675、2075、2975(以下、275〜2975)が設けられていることが望ましい。これは、例えば載置対象としての患者の体重を常に監視することを可能とする。この構成によれば、載置対象としての患者を体重面からモニタすることができ、例えば手術開始前の体重を記憶しつつ、出血により減った重量をモニタし、手術時の対応、方針変更の参考とすることができる。そのため、重量センサで検出した数値を表示するための表示部(例えば、表示窓、ディスプレイ)をテーブル又はロボットアームに設けておくことが好ましい。そして、この表示部には複数個の記録した値(例えば手術前と出血を伴う手術を行った直後)や記憶した値と現在の値の差(例えば手術前の値と現在の値の差)を表示できるようにしておくことが好ましい。そのために、メモリなどの記憶手段を設け、この記憶手段にある時点での載置対象物の重量を記憶するようにし、重量センサによって検出した載置対象物の現在の重量と記憶された重量との差を計算するCPUなどの計算部を備えておくことが好ましい。さらに、このような管理を載置対象としての患者ごとにするために、記憶手段は患者IDと対応付けて患者を選択できるようにし、患者ごとにある時点の重量を記憶し、現在の重量との差を計算して表示部に表示できるようにしておくことが好ましい。
(温度センサ)
また、テーブルには、載置対象物の温度を計測する温度センサ272、472、572、1072、1172、1572、1672、2072、2972(272〜2972)が設けられていることが望ましい。これは、例えば載置対象としての患者の温度を常に監視することを可能とする。この構成によれば、載置対象としての患者を体温面からモニタすることができ、例えば手術開始前、手術開始待機中、手術中、手術後の体温をモニタすることができる。そのため、温度センサで検出した数値を表示するための表示部をテーブル又はロボットアームに設けておくことが好ましい。
そして、患者の体温が低くなりすぎている、若しくは高くなりすぎている場合には、テーブル208〜2908の表面温度を上昇させるための昇温手段(ヒーターなど)、若しくは下降させるための降温手段(冷却装置など)を設けておくことが好ましい。これにより、患者を望ましい体温に保つことができる。
なお、図2、図4、図5、図10、図11、図15、図16、図20、図21、図22、図29において各温度センサはテーブル208〜2908の側面に配置されているが、埋め込まれていてもよい。
また、テーブルの周囲の温度を検出する別の温度センサを設け、手術開始待機中や手術後安静中において患者の体温を望ましい状態に保つために、周囲温度が高い場合にはテーブルの位置を温度が低いエリア(例えば低い位置や冷房装置の近く)に移動させたり、周囲温度が低い場合にはテーブルの位置を温度が高いエリア(例えば高い位置や暖房装置の近く)に移動させるようにロボットアームを制御するようにしてもよい。これらを自動的な移動を行うのは、手術後に患者が安静にしている場合や、治療前の待機中である場合が考えられ、テーブルの移動は載置されている者が移動を感じないくらいゆっくりと移動することが好ましい。ただし、手術中などにロボットアームが自動的に動いてしまうことは好ましくないため、テーブルの位置が治療位置にある場合は非アクティブとなるように設定したり、テーブルの位置するエリアに応じてセンサのアクティブ/非アクティブを切り替えるようにしてもよい。
なお、温度センサ/周囲温度センサについても、当該センサ機能のアクティブ/非アクティブを手動で切り替えられるようにしておくことが好ましい。
(物体センサ)
また、テーブルには、テーブルの周囲の物体を検出するための物体センサを1つ以上設け、ロボットアームの動作中に物体センサにより物体を検知した場合には、ロボットアームを駆動するアクチュエータの動作を停止又は禁止することが好ましい。第1〜第5の構成例で示したようなロボティックベッドを医療室に導入するに際しては、安全性の確保が極めて重要な位置づけを占めることから、このような手段により患者及び医療従事者の安全を確保することが好ましい。
なお、テーブルの位置が治療位置にある場合は非アクティブとなるように設定したり、載置対象物の載置位置から検査位置までの間だけでアクティブとなるようにしたり、テーブルの位置するエリアに応じて物体センサのアクティブ/非アクティブを切り替えるようにしてもよい。物体センサのアクティブ/非アクティブの切り替えは、制御装置により行われても良いし、物体センサに設けられた手動用の切り替え手段によって行われてもよい。
なお、温度センサ/周囲温度センサについても、当該センサ機能のアクティブ/非アクティブを手動で切り替えられるようにしておくことが好ましい。
(制御装置の構成)
制御装置207〜2907は、図48に示すように、ロボットアーム201、401、501、1001、1101、1501、1601、2001、2901(以下、201〜2901)のアクチュエータ、電磁ブレーキおよび位置検出器と接続される。また、制御装置207〜2907は、上述した距離センサ273〜2973、高さセンサ274〜2974、重量センサ275〜2975、および温度センサ272〜2972と接続され得る。また、制御装置207〜2907は、記憶手段を含むとともに、上述した撓み補償を実現するための構成として、目標点の位置を定める設定手段と、当該目標点をトラッキングするトラッキング手段を含んでもよい。記憶手段は、例えばROMなどの不揮発性メモリである。
また、制御装置207〜2907は、上述した記憶手段および計算部を含んでもよいし、上述した表示部と接続されてもよい。表示部は、ロボットアームのベースに組み込まれていてもよいし、ロボットアームとは独立したものであってもよい。また、制御装置の記憶手段に複数の異なる載置対象物の重量が記憶される場合には、制御装置が、図48に示すように、特定の載置対象物を選択する選択手段を含んでもよい。
また、制御装置207〜2907は、上述した昇温手段および降温手段と接続され得る。さらに、制御装置207〜2907は、上述した物体センサと接続され得る。
(テーブルの設計)
上記で説明した各構成例におけるテーブル208〜2908の設計は医療室の大きさや術式などの事情に応じて適宜可能であるが、テーブルトップとしての機能を考慮すると、載置対象として例えば長身の患者を載置可能なように210cm以上は確保すべきであるということができる。
図50(a)に示すように、ロボティックベッドが医療室において最も省スペースとなる姿勢においてロボットアームがテーブルよりはみ出ることを許容する構成を取る場合は、はみ出たロボットアームも考慮したロボティックベッド全体のサイズを検討することが望ましい。ロボットアームのはみ出しがテーブルの長手方向である場合、省スペース姿勢におけるロボティックベッドの全長は少なくとも300cm未満には抑えることが望ましいため、テーブルの長手方向の寸法は240cm未満とすべきである。すなわち、はみ出し量はテーブルの長手方向の寸法の1/4以下には抑えることが好ましいことから、テーブルの長手方向の寸法が約240cmの場合、省スペース姿勢においてロボットアームがテーブルよりはみ出す許容最大寸法は約60cmとなる。図50(a)に例示したテーブルの長手方向の寸法は230cmであり、テーブルに隠れないロボットアームの寸法を、テーブル長手方向の寸法230cmの1/4未満の55cmとしている。このようにテーブル長手方向の寸法が小さければ駆動力(モーター)も小さくできるためロボットアームがテーブルよりはみ出す量も若干小さくできる。
一方、ロボティックベッドが省スペースとなる姿勢において、図50(b)のようにロボットアームがテーブルの下に完全に隠れる構成を取る場合は、例えば200kg程度の耐荷重ロボットアームはそれなりに大きくなることから、ロボットアームをテーブル下に収めるためにはテーブルを大きめに形成することが要求される場合が多い。従って、テーブルの長手方向の寸法としては、例えばテーブルからのロボットアームのはみ出しを許容する構成よりも長い240cm以上とすることが好ましい。また、省スペース姿勢におけるロボティックベッドの全長は少なくとも300cm未満には抑えることが望ましいため、ロボットアームがテーブルの下に完全に隠れる場合のテーブルの長手方向の寸法も300未満とすることが好ましい。図50(b)に例示したテーブルの長手方向の寸法は260cmである。上記は240cmを基準としてロボットアームが完全に隠れる場合とはみ出る場合を切り分けたが、必ずしもある値で切り分ける必要はなく、それぞれのテーブル長さの寸法でオーバーラップする範囲が生じることを排除するものではない。
テーブルの幅方向の寸法については、小さすぎると例えば載置対象である患者が落下する危険が大きく、大きすぎると省スペースの妨げになることから、顧客要求に応じて適宜設計することが好ましい。だいたい45cm以上は確保し、一般的なシングルベッドほどには大きくない90cm未満とすることが好ましい。図50(a)の例では60cmとしている。図50(a)の例においては、T字型テーブルを採用しており、一端側(狭い方)が50cm、他端側(広い方)を70cmとしている。なお、本明細書において単に幅の寸法と記載する場合は、特に明示しない限りテーブルの最大幅を意味する。なお、鉛直方向上側から見下ろした場合のテーブルの形状が図50(a)のような長方形である場合や、図50(b)のようなT字型である場合は、ストレッチャーをぴったりとテーブル側部に隣接させて例えば載置対象である患者をテーブルに移動させやすくさせやすいというメリットがある。
[ハイブリッド手術への適用]
本明細書において、ハイブリッド手術とは、同一の医療室において、患者に対する手術と、特定部位(患部)の画像撮影とを、交互に(少なくとも1往復)行うことを意味し、ハイブリッド手術室とは、手術を行うために患者を載置する手術台と、特定部位(患部)の画像撮影を行うための医用画像診断装置(モダリティ)とを備えた手術室を意味する。医用画像診断装置には、コンピュータ断層撮影装置(CT)、磁気共鳴診断装置(MRI)、デジタルX線撮影装置(DR)、コンピュータ・ラジオグラフィ(CR)、血管造影X線診断装置(アンギオ装置、XA)、超音波診断装置(US)などが含まれる。
以下では、これまで説明してきた構成例に係るロボティックベッドをハイブリッド手術において利用し、ベースと、ジョイントにより接続された可動要素を有するロボットアームによりテーブルを支持するロボティックベッドと、医用画像診断装置とを備える、医療システムについて説明する。
以下で説明する医療システムでは、ロボットアームは、テーブルを鉛直方向上側から見下ろした場合に、ロボットアームのうち少なくともベースと該ベースと接続する可動要素の一端部以外の大部分が前記テーブルの下に隠れる第1の位置と、前記ロボットアームのうちベースと該ベースに接続する可動要素の一端部以外の少なくとも一部が前記テーブルの下に隠れない第2の位置との間で前記テーブルを移動可能であり、第2の位置とは、前記医用画像診断装置による撮影位置又は撮影準備位置であり、第1の位置とは、前記撮影位置における前記医用画像診断装置の位置又は前記医用画像診断装置の退避位置と、前記ロボティックベッドとの最短距離が一定距離以上離れた位置に設定されている。
また、ハイブリッド手術において、麻酔導入工程は、通常、患者をテーブルに載置する載置工程に続いて行われる。テーブルの麻酔導入位置は、テーブルを鉛直方向上方から見下ろした場合に、ロボットアームのうちベースと該ベースに直接連結される可動要素の一端部以外の少なくとも一部が前記テーブルの下に隠れない位置であって前記第2の位置とは異なる第3の位置に設定することが好ましい。例えば、手術位置(第1の位置)と麻酔導入位置(第3の位置)を同じにすると、麻酔導入時には麻酔器をテーブルに近接させ、手術時には麻酔器を退避させて手術スペースを確保するという作業が必要となるが、上述した種々の構成例に係るロボティックベッドを用いれば、麻酔器を動かすよりも、ロボティックベッドによって患者を移動させた方が効率的であり、麻酔器が転倒してしまうといった危険も防止できるためである。また、麻酔導入位置は撮影位置である第2の位置と同じであると、撮影装置と麻酔器が近接して、撮影工程や麻酔導入工程で不用な方の装置・機器が邪魔になり、効率や安全性で問題があるからである。
なお、患者の載置位置は、麻酔導入位置と同じであってもよいし、異なる位置であってもよい。載置位置が麻酔導入位置と同じであれば、載置位置から麻酔導入位置までの移動工程が省略できるし、載置位置が麻酔導入位置と異なる場合は、麻酔器とは離れたスペースのある場所で麻酔導入工程前段の準備を行うことができる。
(医用画像診断装置としてMRI装置を用いる場合)
上記で説明したロボティックベッドは、患部の手術とMRI装置による患部の撮影を交互に(少なくとも1往復)行う術中MRIにおいて用いることにより大きな効果を発揮することが期待できる。脳腫瘍摘出の術中MRIの場合、患者を移動させてMRI装置で脳を撮影する回数は2〜4回、平均3回とされており(「最先端の脳腫瘍完全摘出システムが可能にする生存率向上と術後QOL確保」、日立メディコ、月刊インナービジョン 2012年9月号付録 磁遊空間 Vol.25参照)、手術中に患者を正確かつ迅速にMRI装置による撮影位置と手術位置を往復させる必要性が高い。
以下では、第1〜第5の構成例で示したようなロボティックベッド(場合によっては上述の共通の特徴を付加したロボティックベッド)を、MRI装置で載置対象である患者の特定部位を撮影し、その後手術位置に移動させて直ちに手術に移行する術中MRIに適用する手法を説明する。
以下では、ロボットアーム201〜2901を駆動することにより、テーブル208〜2908を手術位置とMRI撮影位置との間で移動させる様子を、図面を参照しながら説明する。
各構成例のロボティックベッドを術中MRIに適用する場合、各構成例のテーブルの移動の説明において手術室に置かれた装置614、1214、1714、2414、3014はMRI装置である。
図35にオープン型MRI装置3514を示す。当該オープン型MRI装置3514は、前方および側方に開口するオープン型である。具体的には、中央部が前方に張り出すような略T字状の上側検査部(上部磁石)3515および下側検査部(下部磁石)3516を含み、これらの検査部3515,3516の間に患者が載置されたテーブルが挿入される空間が形成されている。上側検査部3515および下側検査部3516の両端部同士は、一対の支柱3517によって連結されている。MRI装置3514はドーナツ型であってもよいが、患者を斜めからMRI装置に挿入しやすいようなケース(図7のような場合)に適用する場合には、ドーナツ内側の空洞の正面にテーブルを位置させてから空洞内部へ挿入することとなるため、ロボットアームの動きが少し窮屈になる場合がある。
上側検査部(上部磁石)3515および下側検査部(下部磁石)3516で挟まれる空間で形成される部分が撮影空間である。テーブル208〜2908の少なくとも一部が当該撮影空間とオーバーラップする場合において、テーブル208〜2908がMRI撮影位置にあるということができる。撮影空間内でのテーブル208〜2908の位置は、患者の撮影部位や患者の身長・大きさによって異なるため、常に一定であるとは限らない。しかし、撮影空間内の特定位置を制御装置内の記憶装置に記憶させておくことはできる。ハイブリッド手術では手術位置と撮影位置を複数回往復することが普通なので、手術ごとに撮影位置及び/又は手術位置を記憶させてもよい。
図6は、第1の構成例に係るロボティックベッドを用いて、患者を載置するテーブル208を、第1の位置である手術位置から第2の位置であるMRI撮影位置へ移動させる際に、テーブル208が手術位置に位置している様子を示している。図6に示されるように、テーブル208は第1の位置にあるので、ロボットアーム201は、テーブル208を鉛直方向上側から見下ろした場合に、ロボットアーム201のうちベースと該ベースと接続する可動要素の一端部はテーブルの長手方向の一端側においてテーブル208の下に隠れていないが、その他の部分はテーブル208の下に隠れている。そして、テーブル208の下に隠れないロボットアーム201の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4未満である。
図7は、制御装置207による制御によって第2可動要素223及びテーブル208が矢印の如く動いて(場合によっては、第1可動要素222も鉛直方向に動いて高さが調節され、またテーブル208が第3軸又は/及び第4軸まわりの回転によりテーブルの長手方向又は/及び幅方向まわりの傾きが微調整され)患者の頭部がMRI装置614に対して斜めから移動してゆく様子を示している。図8はテーブル208の一端部がMRI装置614の内部に挿入され、患者が第2の位置であるMRI撮影位置に到達した様子を示している。図8に示されるように、ロボットアーム201のうちベース221に直接連結される可動要素222の全体がテーブル208の下に隠れておらず、またベース221に直接連結されていない可動要素223の一端部もテーブル208の下に隠れていない。そして、テーブル208の下に隠れないロボットアーム201の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以上となっている。
MRI装置614による撮影後、術者612が患者に手術を施すためにテーブル208を手術位置に移動させる場合には、制御装置207によって各可動要素が制御されることによってテーブル208が図8のMRI撮影位置(第2の位置)から図6の手術位置(第1の位置)まで逆方向に動いて元の手術位置に戻る。そして、術者612はMRI撮影画像を確認して直ちに適当な手術に移行することができる。
次に、第1の位置である手術位置、第2の位置である撮影位置に加え、テーブル208が第3の位置である麻酔導入位置にも移動する場合を説明する。
術中MRIにおいて、麻酔導入工程は、通常、患者をテーブルに載置する載置工程に続いて行われる。患者の載置位置は、麻酔導入位置と同じであってもよいし、異なる位置であってもよい。
図39は、患者の載置位置が麻酔導入位置とは異なり、手術位置と同じである場合において、テーブル208を第1の位置にある載置位置から第3の位置にある麻酔導入位置に移動する様子を示している。
第1の位置においてテーブル208上に患者が載置された後、第2及び第5ジョイント232、235が回動して(場合によっては、第1ジョイント231によってテーブル高さが調節され、また第3及び/又は第4ジョイント233、234によってテーブル208の長手方向及び/又は幅方向まわりの傾きが調節され)テーブル208は図39の矢印の如く動いてテーブル208の一端が麻酔器616に近接する位置まで移動する。麻酔医が一方の手でチューブ端部のマスクなどを患者の口元にあてがい、他方の手で麻酔器側のポンプを操作するため、テーブルと麻酔器との近接距離は、テーブル上の患者の位置にもよるが、10cm〜40cm程度である。図39に示す麻酔位置(第3の位置)においては、テーブル208を鉛直方向上側から見下ろした場合に、ベース221及びベース221に直接連結される可動要素222がテーブル208の下に隠れていない。そして、テーブル208の下に隠れないロボットアーム201の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以上となっている。なお、載置位置が麻酔導入位置と同じである場合、この移動工程は省略される。
そして、麻酔医615は患者に対して麻酔処置を行う。麻酔処置が完了すると、各可動要素を動作させてテーブル208を図39に示される矢印とは逆方向に動かし、第1の位置である手術位置へと移動する。そして、術者612は術前にMRI装置によって撮影した画像情報を元に患者に対して手術を施し、例えば脳腫瘍を摘出した時点で、上述したようにテーブル208を第2の位置である撮影位置へと移動させ、患部(例えば脳)のMRI撮影を行い、再びテーブル208を第1の位置にある手術位置に戻して、例えば残存腫瘍が認められた場合には、引き続き術者612による手術が継続される。
図12は、第2の構成例に係るロボティックベッドを用いて、患者を載置するテーブル1008を、第1の位置である手術位置から第2の位置であるMRI撮影位置へ移動させる際に、テーブル1008が手術位置に位置している様子を示している。図12に示されるように、テーブル1008は第1の位置にあるので、ロボットアーム1001は、テーブル1008を鉛直方向上側から見下ろした場合に、全体がテーブル1008の下に隠れている。
図13は、制御装置1007による制御によって第2可動要素1023及び第3可動要素1024が矢印の如く動き、またテーブル1008が第6軸まわりに回転して矢印の如く動いて(場合によっては、第1可動要素1022も鉛直方向に動いて高さが調節され、また第4軸又は/及び第5軸まわりにテーブル1008が回転してテーブルの長手方向又は/及び幅方向まわりの傾きが微調整され)患者の頭部がMRI撮影装置1214に対して斜めから移動してゆく様子を示している。図14はテーブル1008がMRI装置1214の内部に挿入され、テーブル1008がMRI撮影位置に到達した様子を示している。図14に示されるように、第2の位置である撮影位置においては、ロボットアーム1001のうちベース1021に直接連結される可動要素1022の全体がテーブル1008の下に隠れておらず、またベース1021に直接連結されていない第2可動要素1023の他端部以外もテーブル1008の下に隠れていない。そして、テーブル1008の下に隠れないロボットアーム1001の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以上となっている。
MRI装置1214による撮影後、術者1212が患者に手術を施すためにテーブル1008を手術位置に移動させる場合には、制御装置1007によって各可動要素が制御されることによってテーブル1008が図14のMRI撮影位置(第2の位置)から図12の手術位置(第1の位置)まで逆方向に動いて元の位置に戻る。そして、術者1201はMRI撮影画像を確認して、直ちに適当な手術に移行することができる。
第1の構成に係るロボティックベッドを用いた場合と同様に、第2の構成に係るテーブル1008も第3の位置である麻酔導入位置にも移動することができる。
図40は、患者の載置位置が麻酔導入位置とは異なり、手術位置と同じである場合において、テーブル1008を第1の位置にある載置位置から第3の位置にある麻酔導入位置に移動する様子を示している。
第1の位置においてテーブル1008上に患者が載置された後、第2、第3、及び第6ジョイント1032、1033、1036が回動して(場合によっては、第1ジョイント1031によってテーブル高さが調節され、また第4及び/又は第5ジョイント1034、1035によってテーブル1008の長手方向及/又は幅方向まわりの傾きが調節され)テーブル1008は図40の矢印の如く動いてテーブル1008の一端が麻酔器1216に近接する位置まで移動する。図40に示す麻酔位置(第3の位置)においては、テーブル1008を鉛直方向上側から見下ろした場合に、ベース1021及び可動要素1022のうちベース1021に直接連結される端部とは反対側の端部がテーブル1008の下に隠れていない。そして、テーブル1008の下に隠れないロボットアーム1001の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以上となっている。なお、載置位置が麻酔導入位置と同じである場合、この移動工程は省略される。
そして、麻酔医1215は患者に対して麻酔処置を行う。麻酔処置が完了すると、制御装置1007の制御により各可動要素が動作してテーブル1008を図40に示される矢印とは逆方向に動かし、第1の位置である手術位置へと移動する。そして、術者1212は術前にMRI装置によって撮影した画像情報を元に患者に対して手術を施し、例えば脳腫瘍を摘出した時点で、上述したようにテーブル1008を第2の位置である撮影位置へと移動させ、患部(例えば脳)のMRI撮影を行い、再びテーブル1008を第1の位置にある手術位置に戻して、例えば残存腫瘍が認められた場合には、引き続き術者1212による手術が継続される。
図17は、第3の構成例に係るロボティックベッドを用いて、患者を載置するテーブル1508を、第1の位置である手術位置から第2の位置であるMRI撮影位置へ移動させる際に、テーブル1508が手術位置に位置している様子を示している。図17に示されるように、テーブル1508は第1の位置にあるので、ロボットアーム1501は、テーブル1508を鉛直方向上側から見下ろした場合に、ロボットアーム1501のうちベースと該ベースと接続する可動要素の一端部はテーブルの長手方向においてテーブル1508の下に隠れていないが、その他の部分はテーブル1508の下に隠れている。そして、テーブル1508の下に隠れないロボットアーム1501の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4未満である。
図18は、制御装置1507による制御によって第2可動要素1523及びテーブル1508が矢印の如く動いて(場合によっては、第1可動要素1522も鉛直方向に動いて高さが調節され、またテーブル1508が第3軸又は/及び第4軸まわりの回転によりテーブルの長手方向又は/及び傾きが微調整され)患者の頭部がMRI装置1714に対して斜めから移動してゆく様子を示している。図19はテーブル1508がMRI装置1514の内部に挿入され、患者が第2の位置であるMRI撮影位置に到達した様子を示している。図19に示されるように、ロボットアーム1501のうちベース1521に直接接続される可動要素1522の全体がテーブル1508の下に隠れていない。そして、テーブル1508の下に隠れないロボットアーム1501の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以上となっている。
MRI装置1714による撮影後、術者1712が患者に手術を施すためにテーブル1508を手術位置に移動させる場合には、制御装置1507によって各可動要素が制御されることによってテーブル1508が図19のMRI撮影位置(第2の位置)から図17の手術位置(第1の位置)まで逆方向に動いて元の手術位置に戻る。そして、術者1712はMRI撮影画像を確認して直ちに適当な手術に移行することができる。
次に、第1の位置である手術位置、第2の位置である撮影位置に加え、テーブル1508が第3の位置である麻酔導入位置にも移動する場合を説明する。
図41は、患者の載置位置が麻酔導入位置とは異なり、手術位置と同じである場合において、テーブル1508を第1の位置にある載置位置から第3の位置にある麻酔導入位置に移動する様子を示している。
第1の位置においてテーブル1508上に患者が載置された後、第2ジョイント1532によって第2可動要素1523が直進移動し且つ第5ジョイント1535が回動して(場合によっては、第1ジョイント1531によってテーブル高さが調節され、また第3及び/又は第4ジョイント1533、1534によってテーブル1508の長手方向及び/又は幅方向まわりの傾きが調節され)テーブル1508は図41の矢印の如く動いてテーブル1508の一端が麻酔器1716に近接する位置まで移動する。図41に示す麻酔位置(第3の位置)においては、テーブル1508を鉛直方向上側から見下ろした場合に、ベース1521及びベース1521に直接連結される可動要素1522の全体がテーブル1508の下に隠れていない。そして、テーブル1508の下に隠れないロボットアーム1501の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以上となっている。なお、載置位置が麻酔導入位置と同じである場合、この移動工程は省略される。
そして、麻酔医1715は患者に対して麻酔処置を行う。麻酔処置が完了すると、各可動要素を動作させてテーブル1508を図41に示される矢印とは逆方向に動かし、第1の位置である手術位置へと移動する。そして、術者1712は術前にMRI装置によって撮影した画像情報を元に患者に対して手術を施し、例えば脳腫瘍を摘出した時点で、上述したようにテーブル1508を第2の位置である撮影位置へと移動させ、患部(例えば脳)のMRI撮影を行い、再びテーブル1508を第1の位置にある手術位置に戻して、例えば残存腫瘍が認められた場合には、引き続き術者1712による手術が継続される。
図24は、第4の構成例に係るロボティックベッドを用いて、患者を載置するテーブル2008を、第1の位置である手術位置から第2の位置であるMRI撮影位置へ移動させる際に、テーブル2008が手術位置に位置している様子を示している。図24に示されるように、テーブル2008は第1の位置にあるので、ロボットアーム2001は、テーブル1008を鉛直方向上側から見下ろした場合に、全体がテーブル2008の下に隠れている。
図25は、制御装置2007による制御によって第1可動要素2022、第2可動要素2023、及びテーブル2008が矢印の如く動いて(場合によっては、第3可動要素2024も第3軸まわりに回転して高さが調節され、また第5軸又は/及び第6軸まわりにテーブル2008が回転してテーブルの長手方向又は/及び幅方向まわりの傾きが微調整され)患者の頭部がMRI撮影装置2414に対して斜めから移動してゆく様子を示している。図26はテーブル2008がMRI装置2414の内部に挿入され、テーブル2008がMRI撮影位置に到達した様子を示している。図26に示されるように、第2の位置である撮影位置においては、ロボットアーム2001のうちベース2021に直接連結される可動要素2022の全体がテーブル2008の下に隠れておらず、またベース2021に直接連結されていない第2可動要素2023などもテーブル2008の下に隠れていない。そして、テーブル2008の下に隠れないロボットアーム2001の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以上となっている。
MRI装置2414による撮影後、術者2412が患者に手術を施すためにテーブル2008を手術位置に移動させる場合には、制御装置2007によって各可動要素が制御されることによってテーブル2008が図26のMRI撮影位置(第2の位置)から図24の手術位置(第1の位置)まで逆方向に動いて元の位置に戻る。そして、術者2412はMRI撮影画像を確認して、直ちに適当な手術に移行することができる。
第1〜第3の構成に係るロボティックベッドを用いた場合と同様に、第4の構成に係るテーブル2008も第3の位置である麻酔導入位置にも移動することができる。
図42は、患者の載置位置が麻酔導入位置とは異なり、手術位置と同じである場合において、テーブル2008を第1の位置にある載置位置から第3の位置にある麻酔導入位置に移動する様子を示している。
第1の位置においてテーブル2008上に患者が載置された後、第1及び第7ジョイント2031、2037が回動して(場合によっては、第3及び第4ジョイント2033、2034によってテーブル高さが調節され、第2ジョイント2032によってベース2021からの第6軸の距離が調整され、また第5及び/又は第6ジョイント2035、2036によってテーブル2008の長手方向及/又は幅方向まわりの傾きが調節され)テーブル2008は図42の矢印の如く動いてテーブル2008の一端が麻酔器2416に近接する位置まで移動する。図42に示す麻酔位置(第3の位置)においては、テーブル2008を鉛直方向上側から見下ろした場合に、ベース2021及びベース2021に直接連結される可動要素2032がテーブル208の下に隠れていない。そして、テーブル2008の下に隠れないロボットアーム2001の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以上となっている。なお、載置位置が麻酔導入位置と同じである場合、この移動工程は省略される。
そして、麻酔医2415は患者に対して麻酔処置を行う。麻酔処置が完了すると、制御装置2407の制御により各可動要素が動作してテーブル2008を図42に示される矢印とは逆方向に動かし、第1の位置である手術位置へと移動する。そして、術者2412は術前にMRI装置によって撮影した画像情報を元に患者に対して手術を施し、例えば脳腫瘍を摘出した時点で、上述したようにテーブル2008を第2の位置である撮影位置へと移動させ、患部(例えば脳)のMRI撮影を行い、再びテーブル2008を第1の位置にある手術位置に戻して、例えば残存腫瘍が認められた場合には、引き続き術者2412による手術が継続される。
図30〜図32に、第1の構成例に係るロボティックベッドにおいて、アクチュエータ駆動のスライド機構を採用してテーブル2908を動作することが可能な第5の構成例を術中MRIに適用した例を示す。
図30に示す第1の位置としての患者の手術位置は図6と同じである。しかし、スライド機構を有するロボティックベッドにおいてMRI装置3014方向へ移動するテーブル2908の回転方向は逆である。すなわち、図6〜図8においてテーブル208を検査装置614にテーブル208の一端側から挿入していると表現すると、図30〜32においてはMRI装置3014へテーブル2908の他端側から挿入する構成となる。
図8に示すMRI装置614に頭から挿入された位置(MRI撮影位置)は図32の位置と同じである。第1の構成例に係るロボティックベッドを用いた場合はそのままロボットアーム201の各可動要素を動かしてテーブル208を斜めからMRI撮影装置614内に搬送したが、第5の構成例に係るロボティックベッドを用いた場合においてはテーブル2908が一旦MRI装置3014に向くように位置したあと、テーブル2908をアクチュエータ駆動によりスライドさせることにより、MRI装置3014内へと移動させている
図36〜38に、第1の構成例に係るロボティックベッドにおいて、アクチュエータ駆動のスライド機構を採用した場合の第5の構成例を術中MRIに適用した場合のロボティックベッドの動きを斜視図を用いて示す。図36はテーブル2908が第1の位置である患者の載置位置及び手術位置にあり、第2の可動要素2923が第2軸まわりに水平回転し、同時にテーブル2908が第5軸まわりに軸回転して(場合によっては第1ジョイントによってテーブル2908の高さが調節され、また第3及び/又は第4ジョイントにより長手方向及び/又は幅方向まわりの傾きが調整され)、図37に示すMRI撮影準備位置に移動する。そして、テーブル2908がアクチュエータ駆動によりMRI装置の撮影空間とオーバーラップする位置までスライドし、テーブル2908が第2の位置であるMRI撮影位置へと移動する(図38)。
なお、図37のMRI撮影準備位置における第2可動要素2923は、図31から図32に遷移する間のMRI撮影準備位置にある場合とは向きが異なっている(図31と図32の間の場合は、第2可動要素2923がMRI装置3014に垂直に向いているが、図37の場合は第2可動要素2923がMRI装置3014に対して斜めを向いている)が、MRI装置の配置位置、ロボティックベッドの配置位置、及びロボットアームの各可動要素の寸法等によって、テーブルを移動させる場合のロボットアームの姿勢は異なる。
第5の構成例に係るロボティックベッドを用いた場合、スライド機構が設けられているので、テーブルの可動範囲を大きくとるために第1可動要素や第2可動要素を長くする必要がなくなるのでロボットアームのサイズを小型化できるというメリットがある他、図2に示すような、ロボットアーム201がテーブル208の一端部を支持している第1の構成例に係るロボティックベッドおいては、第1の位置である手術位置において患者の頭部をどちらの方向に向けるかを変更できるという効果がある。後者のメリットについては、例えば術中MRIを用いる目的が脳腫瘍摘出手術など上半身に関係する手術である場合、図2のようにテーブル208がMRI装置614より戻ってきた場合にテーブル208に載置されている患者の頭部がベース221の方を向いていると、術者612はベース221が邪魔となって手術がしにくいが、図29のようにテーブル2908がMRI撮影位置より戻ってきた場合にテーブル2908に載置されている患者の頭部がベース2921と逆の方を向いていると、頭部などの上半身側の手術がしやすいといった効果がある。手術時に上半身側においてベース2921が邪魔となることもないので、術者3012はテーブル2908の高さを低くして、座った状態で治療にあたることもできる。
なお、図37で示したMRI撮影準備位置とは、テーブル2908が撮影空間とオーバーラップしておらず、撮影位置に近接する位置(例えば、撮影空間との距離が10cm〜40cm)でテーブル2908の特定方向(長手方向)がMRI装置3314の開口部への方向を向く位置であり、撮影位置におけるテーブルの特定方向(長手方向)と平行である位置である。オープン型のMRIだと開口は広いので開口部の方向は複数あるが、ドーナツ型ではのMRI装置であると、開口部を向く方向はほぼ一意に決まる。この撮影準備位置において一旦移動を止め、例えば助手がMRI撮影のための準備(金属物がないことの確認や患者の位置・姿勢の修正)をし、その後MRI装置にテーブル2908を搬送するようにしてもよい。もちろん、MRI撮影準備位置は単なる経由で、テーブルをこの位置で一旦止めることなくスムーズにMRI撮影位置に移動させるようにしてもよい。
第5の構成に係るテーブル2908も第3の位置である麻酔導入位置にも移動することができる。
図43は、患者の載置位置が麻酔導入位置とは異なり、手術位置と同じである場合において、テーブル2908を第1の位置にある載置位置から第3の位置にある麻酔導入位置に移動する様子を示している。
第1の位置においてテーブル2908上に患者が載置された後、第2及び第5ジョイント2932、2935が回動し、スライド機構によってテーブル2908の位置を長手方向に変動させ(場合によっては、第1ジョイント2931によってテーブル高さが調節され、また第3及び/又は第4ジョイント2933、2934によってテーブル2908の長手方向及び/又は幅方向まわりの傾きが調節され)テーブル2908は図43の矢印の如く動いてテーブル2908の一端が麻酔器3016に近接する位置まで移動する。図43に示す麻酔位置(第3の位置)においては、テーブル2908を鉛直方向上側から見下ろした場合に、ベース2921及びベース2921に直接連結される可動要素2922がテーブル2908の下に隠れていない。そして、テーブル2908の下に隠れないロボットアーム2901の最大寸法は、テーブルの長手方向の寸法の1/4以上となっている。なお、載置位置が麻酔導入位置と同じである場合、この移動工程は省略される。
そして、麻酔医3015は患者に対して麻酔処置を行う。麻酔処置が完了すると、制御装置2907の制御により各可動要素及びスライド機構が動作してテーブル2908を図43に示される矢印とは逆方向に動かし、第1の位置である手術位置へと移動する。そして、術者2912は術前にMRI装置によって撮影した画像情報を元に患者に対して手術を施し、例えば脳腫瘍を摘出した時点で、上述したようにテーブル2908を第2の位置である撮影位置へと移動させ、患部(例えば脳)のMRI撮影を行い、再びテーブル2908を第1の位置にある手術位置に戻して、例えば残存腫瘍が認められた場合には、引き続き術者3012による手術が継続される。
上述した第1の位置としての手術位置とは、テーブルが撮影空間に近接しない、すなわち撮影空間と一定距離以上離れた位置である。そして、上記の例において、手術位置の近傍には、術者612、1212、1712、2412、3012(以下、612〜3012)が使用する手術器具を置くための手術器具台613、1213、1713、2413、3013が設置されており、これら手術器具がMRI装置の近くに配置されていると、MRI装置の永久磁石の影響を受けて(例えば浮揚して)患者や取り扱う者を傷つける恐れがあるため、治療位置はMRI装置より十分離れた位置に確保し、5ガウスラインLよりも離れていることが望ましい。
さらに、ロボットアームのベース221、421、521、1021、1121、1521、1621、2021、2921(以下、221〜2921)も、5ガウスラインLの外側に配置されていることが好ましい。ロボットアームのベース221〜2921には大きなモータが設けられており、モータは磁石を含んでいるため、これがMRI装置の近くに位置していると、MRI装置の撮影空間に形成された磁界が歪められ、撮影画像の劣化に繋がるためである。
よって、ロボットアームとテーブルにより構成されるロボティックベッドは、第1の位置である手術位置を、MRI装置との最短距離Sが一定距離以上離れた位置に設定することが好ましく、安全性を考慮すると、当該最短距離Sを5ガウスラインLに設定するのが好ましい。
5ガウスラインについては、低磁場のMRI装置が開発されており、例えば、静磁場強度が0.3テスラで5ガウスラインをガントリー辺縁より約1mとすることが可能になっている(「インテリジェントオペ室・MRI誘導手術対応システム」、MEDIX, 39 : 11-16, 2001参照)。従って、MRI装置と第1の位置にあるロボティックベッドとの最短距離は少なくとも1mに設定するのが好ましい。低磁場のMRI装置の開発状況によっては、上記最短距離Sをもう少し短く設定可能となることが期待される。
他の磁場が大きめのMRI装置を使用する場合や、より高い安全性を確保しようとする場合には、上記最短距離Sを例えば1.5m以上に設定することが好ましい。
ただし、ロボットアームがテーブルを支持することができる耐荷重なども考慮すると、第1の位置である治療位置をMRI装置より遠くに設置した場合、第2の位置である撮影位置にテーブルを移動させるには、大きな耐荷重に耐えうる大型のロボットアームが必要となる。そして、大型のロボットアームでは第1の位置である手術位置においてテーブル下にロボットアームの大部分を収納させることが困難となり(よって、術者や助手がテーブルを取り囲んで手術する際に邪魔となり)、またロボティックベッドをMRI装置より遠くに設置する分の大きめの手術室が必要となるため、第1の位置にあるロボティックベッドとMRI装置との最短距離Sが大きければ大きいほどよいという訳ではない。
従って、MRI装置との関係で十分な安全性を確保することができる限りにおいてはロボティックベッドの第1の位置の設定場所はMRI装置に近い方がよい。例えば1.5テスラのMRIだと、5ガウスラインは最短の箇所でガントリー(MRI装置)の2.8mくらいになる(「3T MRIの吸着事故を防ごう」、土橋俊男、月間インナービジョン2012年9月号)ため、5ガウスラインとロボットアームの剛性(テーブルの安定性)や小型化構造を考慮すると、MRI装置と第1の位置にあるロボティックベッドとの最短距離Sの上限は、例えば3m以下に設定することが好ましい。静磁場強度が0.3テスラで5ガウスラインが1m程度である場合は、手術器具を把持した人がMRI装置側に立てることも考慮して、上記最短距離Sの上限として2m程度を見ておけばよい。
なお、上記文献(「3T MRIの吸着事故を防ごう」、月間インナービジョン2012年9月号)にも記載している通り5ガウスラインはMRI装置まわりに楕円状に形成され、1.5テスラのMRIの場合、最短の箇所でMRI装置より2.8mであるが、最長の場合は5mである。現在ではほとんどの場合、術中MRIでは回転−昇降−天板スライド式の手術台が用いられているが、手術台の動作がこの3つに限定されているとテーブルの撮影位置への移動が可能な位置が制限され、手術台の設置場所を5ガウスラインの最短部分付近に設置することが困難な場合があるが、ロボティックベッドであればこれまで示したようにテーブルの移動方向の自由度が高いので、設置場所の自由度も高いというメリットがある。
第3の位置である麻酔導入位置は、テーブルが第1の位置である手術位置にある場合において、テーブル幅方向(長手方向に直交する方向)に関して、MRI装置とは反対側に設置することが好ましい。これは、テーブルを手術位置(第1の位置)と撮影位置(第2の位置)とで往復させる術中MRIでは、容易な移動を前提としない麻酔器を、手術位置(第1の位置)と撮影位置(第2の位置)の間に位置させない方が好ましいためである。そして、手術位置(第1の位置)と麻酔導入位置(第3の位置)との最短距離Mは、80cm以上であることが好ましい。これは、手術時に手術用顕微鏡(マイクロスコープ)などの医療機器をテーブルまわりに配置することを可能とするためである。例えばオリンパス製手術用顕微鏡OME-9000のベース部分の直径は80cmであり、手術位置(第1の位置)と麻酔導入位置(第3の位置)との最短距離Mとして80cm以上を確保すれば、麻酔器を移動させなくともテーブルまわりに手術用顕微鏡を配置することができる。
なお、移動式のMRI装置も存在するが、当該移動式MRI装置を採用してシステムを構築する場合は、手術中にMRI装置を移動させるか固定するかで上記最短距離や第1〜第3の位置の設定がなされる。例えば、MRI装置が隣の部屋より移動して、手術中に動かさない場合には、手術時における固定位置との関係で、上記最短距離Sを設定すればよい。撮影時にだけMRI装置を特定位置に移動させ、撮影後は退避位置に退避させる場合は、上記最短距離SはMRI装置の退避位置との関係で設定すればよい。
以上説明したように、第1乃至第5の構成例で示したロボティックベッドを術中MRIに導入することにより、ロボットアームの駆動によりテーブルに載置された患者を手術位置(第1の位置)とMRI撮影位置(第2の位置)との間で迅速かつ正確に移動させることができる。これにより、手術成績向上という際立って優れた効果を促進するのに貢献することができる。前出の文献(「最先端の脳腫瘍完全摘出システムが可能にする生存率向上と術後QOL確保」、日立メディコ、月刊インナービジョン 2012年9月号付録 磁遊空間 Vol.25)によれば、これまで別室でMRI撮影と手術を別室で行っていた脳腫瘍適用手術に対し、同室内でMRI撮影と手術を行う術中MRIを適用し(さらに情報誘導手術を適用し)たところ、別室手術では5年生存率がグレード3で約25%、グレード4で約7%であったのが、グレード3で78%、グレード4で19%と従来平均の約3倍の生存率が達成されている。第1乃至第5の構成例で示したロボティックベッドを術中MRIに導入することにより、これまで説明したような患者をテーブルの搬送を迅速かつ正確に行い、MRI撮影と脳適用手術とを効率的に行うことができ、生存率のさらなる向上にも貢献することが大いに期待できる。特に、先に説明した通り、脳適用手術については、MRI撮影と脳適用手術は一度きりではなく、何度か往復させることになるので、患者を治療位置とMRI撮影位置との間で迅速かつ正確に移動させることへの期待は大きい。
そして、第1乃至第5の構成例で示したロボティックベッドを術中MRIに導入する際には、テーブル208〜2908がMRI撮影装置614、1214、1714、2414、3014、3514に到達した後、テーブルに載置した撮影対象物の撮影を開始するまでに、ロボットアーム201〜2901に搭載された複数のアクチュエータへの駆動電流の供給を停止するとともに、アクチュエータに対応して設けられた複数の電磁ブレーキの機能をオンとするように、制御装置207〜2907により制御することが好ましい。これは、MRI装置が静磁場を作用させて画像撮影することから、アクチュエータ駆動時に生じている磁界の影響によりMRI撮影画像が劣化することを防止するためである。この制御はテーブルがMRI撮影位置に到達して一定時間静止したことを検知して自動的に行われても、手動で指令を与えてもよいが、MRI撮影の開始時(例えばMRI装置に主電源を投入したり、アクティブ状態とした時点)でロボットアームのアクチュエータの動作状態をチェックするように連動させ、アクチュエータが動作していれば強制的にオフしてブレーキ機能オンに切り替えるように制御することが好ましい。このため、制御装置207〜2907は、MRI稼動監視手段を備えるようにし、MRI装置に主電源が投入されたか、アクティブ状態にあるか、などを監視することが望ましい。
なお、第5の構成例に係るロボットアームでは、手動のスライド機構を備えることがあるため、テーブル208〜2908がMRI撮影準備位置に到達した時点で、ロボットアーム201〜2901に搭載された複数のアクチュエータへの駆動電流の供給を停止するとともに、アクチュエータに対応して設けられた複数の電磁ブレーキの機能をオンとするように、制御装置207〜2907により制御することもできる。アクチュエータの駆動をオフとし、電磁ブレーキの機能をオンとした後は、スライド板をスライドさせることにより、患者をMRI撮影位置に移動させる。
ロボットアームによる手術位置とMRI撮影位置との間でのテーブルの移動は、ティーチペンダントによってロボットアーム201〜2901を操作することによって行ってもよい。しかしながら、手術位置およびMRI撮影位置を予め制御装置201〜2907に記憶させておけば、第1、第2、及び/又は第3の位置に関するテーブル208〜2908の移動制御プログラムに従って、手術位置とMRI撮影位置との間でのテーブル208〜2908の移動をより素早くかつスムーズに行うことができる。例えば、ティーチペンダント等により前進指令を与えている間だけこの移動制御プログラムに従って移動するようにしておけば、前進指令を解除(例えば、ボタンを離す)することによりプログラムの実行が中断されるため、安全性の面でも問題はない。
ロボットアームがテーブルを手術位置とMRI撮影位置との間で自動的に移動する場合は、ロボットアームの位置決めの正確さによって、MRI撮影後も確実に術野が同じ場所に戻される。また、ロボットアームを用いることの利点としては、手術中にロボットアームを操作して患者の位置および姿勢を変更すれば手術中の術野を広く確保することができる点もある。
(医用画像診断装置としてMRI装置以外を用いる場合)
医用画像診断装置としてMRI装置以外を用いる場合は、ロボティックベッドを導入することによる磁場対策を検討する必要はないという点で術中MRIの場合とは若干システムの設計が異なるが、テーブルの動作などは基本的に医用画像診断装置としてMRI装置を用いる場合と同様である。
医用画像診断装置としてMRI装置以外を用いる場合、例えば、各構成例においてテーブルの移動の説明において参照した図6−図8の装置614、図12−図14の装置1214、図17−図19の装置1714、図24−図26の装置2414、図30−図32の装置3014はアンギオ装置である。図6、図12、図17、図24、図30においては、テーブル208〜2908は第1の位置である手術位置に位置している。医用画像診断装置がMRI装置である場合と同様に、各可動要素とテーブル208〜2908は図7、図13、図18、図25、図31に矢印で示された方向に移動して、テーブル208〜2908は図8、図14、図19、図26、図32に示される撮影位置(第2の位置)に到達する。
撮影位置及び撮影準備位置についてもMRI装置を医用画像診断装置に用いる場合と同様に考えることができ、医用画像診断装置の撮影空間とテーブル208〜2908の少なくとも一部がオーバーラップする場合において、医用画像診断装置による撮影位置にあるということができる。医用画像診断装置がアンギオ装置である場合、撮影空間はX線管(X線照射側)と撮像系(X線受像側)で挟まれる空間が撮影空間であり、テーブル208〜2908が撮影空間とオーバーラップせず、撮影空間に近接する位置が撮影準備位置である。
第3の位置である麻酔導入位置の例としては、図39、図40、図41、図42、図43に示される。載置位置を手術位置と同じ第1の位置に設定する場合は、これらの位置が麻酔導入位置に到達した位置であり、載置位置を麻酔導入位置と同じ第3の位置に設定する場合は、これらの位置が載置位置かつ麻酔導入位置となる。麻酔導入位置(第3の位置)は医用画像診断装置がMRI装置である場合と同様に、テーブルが第1の位置に位置する場合のテーブルの幅方向に関してアンギオ装置とは反対に設置することが好ましい。
第2の位置である撮影位置においては、シングルプレーン又はバイプレーンのアンギオ装置により患者の特定部位(幹部)をX線透視撮影する。その後、テーブル208〜2908を手術位置(第1の位置)に移動させて、カテーテル治療などが施される。
アンギオ装置には、天井から吊るし天井に設けられたレールに沿って移動させる天井走行式、本体(Cの部分)が鉛直方向の軸まわりに回転可能なように支持部が床に固定された床固定式、支持部にキャスターなどが設けられ装置全体が床上を移動可能な床走行式などの種類が存在する。これら何れか1台のアンギオ装置で画像撮影を行う方式をシングルプレーンと呼び、2台のアンギオ装置(例えば天井走行式と床固定式)を組み合わせて1回で2方向の透視及び撮影を行う方式をバイプレーンと呼ぶ。バイプレーンシステムは、撮影時間の短縮、被曝線量の低減、使用する造影剤が少量、という点で患者の負担を軽減できるため、広く利用されている。
シングルプレーンでもマルチプレーンでも、第1〜第3の位置を設定するための考え方は同じである。
図44に、医用画像診断装置として天井走行式と床固定式を組み合わせたバイプレーンのアンギオ装置を用い、ロボティックベッドとして第4の構成例(図22に示したもの)にスライド機構が搭載されたものを用いて、手術位置(第1の位置)から撮影位置(第2の位置)にテーブルを移動させる様子を示す。図44(a)(c)(e)は斜視図であり、図44(b)(d)(f)は手術室を鉛直方向上方から見下ろした場合の平面図である。
図44(a)(b)では、テーブルの下にロボットアーム全体が隠れる第1の位置としての手術位置にテーブルが位置している。図44(c)(d)では、第1及び第6ジョイントが回転し、第2ジョイントが伸縮して第6ジョイントのベースからの距離が調整され(場合によっては、第3ジョイントの回動によりテーブル高さが調整され、また、第4又は/及び第5ジョイントによってテーブルの長手方向又は/及び幅方向まわりの傾きが調整され)テーブルが撮影準備位置に到達している。図44(e)(f)では、スライド機構の駆動によりテーブルが撮影位置(第2の位置)に到達している。
第1の位置の設定方法は、医用画像診断装置としてアンギオ装置を用いる場合でも、MRI装置を用いる場合と類似しており、第1の位置としての手術位置にあるロボティックベッドとアンギオ装置との最短距離Sで決定される。医用画像診断装置としてアンギオ装置を用いる場合、磁性の影響を考える必要はないため、5ガウスラインは考慮しなくてよい。しかし、テーブルが手術位置(第1の位置)にある場合に術者や助手がテーブルまわりを取り囲めるようにアンギオ装置との最短距離Sは一定距離以上離すことが好ましい。また、医用画像診断装置としてアンギオ装置を用いる場合のハイブリッド手術においても、手術時に手術用顕微鏡(マイクロスコープ)などの医療機器をテーブルまわりに配置することから、これらを配置可能とするためにも最短距離Sを一定距離以上とすることが好ましい。この最短距離Sは、例えば手術用顕微鏡のベース部分の直径寸法を考慮して、ロボティックベッドとアンギオ装置との間に手術用顕微鏡を配置可能なように80cm以上とすることができる。
また、医用画像診断装置としてMRI装置を用いる場合と同様に、ロボットアームがテーブルを支持することができる耐荷重と、手術位置(第1の位置)におけるロボットアームのテーブル下の収納可能性(ロボット構造の小型化)及びロボットアームの剛性(テーブルの安定性)を考慮すると、第1の位置にあるロボティックベッドとアンギオ装置との最短距離Sが大きければ大きいほどよいという訳ではない。従って、アンギオ装置と第1の位置にあるロボティックベッドとの最短距離Sは、例えば手術用顕微鏡(マイクロスコープ)の設置が可能な80cmに加えて、さらに人が通過可能な程度を考慮して2m以下に設定することが好ましい。
次に、医用画像診断装置が天井走行式や床固定式のアンギオ装置である場合は、手術中でもレールに沿って動かすことにより、または本体(Cの部分)を支持部に関して回転させることにより、撮影位置と退避位置とを往復させることも可能である。
図45に、アンギオ装置が退避位置にある場合の、手術位置(第1の位置)にあるテーブルとアンギオ装置との最短距離Sを示す。図45(a)はアンギオ装置が天井走行式のシングルプレーンである場合の退避位置を示す。図45(b)はアンギオ装置が床固定式のシングルプレーンである場合の退避位置を示す。図45(c)はアンギオ装置が天井走行式と床固定式のバイプレーンでる場合の退避位置を示す。
アンギオ装置が退避位置に移動可能な場合、ロボティックベッドとの関係におけるシステム構築としては、ハイブリッド手術の実施方法による。第1のシステム構築の考え方は、テーブルを手術位置(第1の位置)と撮影位置(第2の位置)を往復させる場合でもアンギオ装置を撮影位置(第2の位置)に位置させたままとし、ハイブリッド手術を行わないときのみアンギオ装置を退避位置に位置させる場合で、この場合は最短距離Sを図45に示す退避位置との関係ではなく、図44等に示す撮影位置(第2の位置)との関係で設定すればよい。上記の例では、最短距離Sを80cm〜2mに設定すればよい。第2のシステム構築の考え方は、テーブルが手術位置(第1の位置)に位置する場合はアンギオ装置を退避位置に位置させ、テーブルが撮影位置(第2の位置)に位置する場合にアンギオ装置を撮影位置に位置させる場合、すなわちハイブリッド手術中にロボティックベッドとの関係でアンギオ装置の位置を動かす場合であり、この場合は最短距離Sは図45(a)〜(c)に示すアンギオ装置の退避位置との関係で設定される。上記の例を用いると、テーブルが手術位置(第1の位置)に位置する場合のロボティックベッドとアンギオ装置の退避位置との最短距離Sが80cm〜2mであればよい。
なお、図46に示されるアンギオ装置が床走行方式の場合も、上記2つのシステム構築の考え方が適用できる。すなわち、ハイブリッド手術中にアンギオ装置を撮影位置に固定するか撮影ごとに移動させるかで、ロボティックベッドとアンギオ装置との最短距離Sを、撮影位置(第2の位置)で考えるか退避位置で考えるかを決定することができる。
以上では、MRI装置以外の医用画像診断装置として、アンギオ装置を例として説明したが、コンピュータ断層撮影装置(CT)、デジタルX線撮影装置(DR)、コンピュータ・ラジオグラフィ(CR)、超音波診断装置(US)などを用いても同様なシステム構築が可能である。
上記のハイブリッド手術において説明した、図6、図12、図17、図24、図30の第1の位置は、テーブルを鉛直方向上側から見下ろした場合に、ロボットアームのうち少なくともベースと該ベースと直接連結された可動要素の一端部以外の全てが前記テーブルの下に隠れる様子を示しているが、術者や助手がテーブルを取り囲むのに差支えの無い場合はロボットアームがベースと直接連結された可動要素の一端部以外の部分がテーブルに隠れない部分が僅かに生じてもよい。すなわち、ロボットアームのうち少なくともベースと該ベースと直接連結された可動要素の一端部以外の大部分が前記テーブルの下に隠れていればよい。例えば、図49では第1の位置(手術位置)におけるテーブルを図12の位置から若干傾けた位置に設定した場合に、ベースと直接連結された可動要素の一端部以外の部分(第2可動要素と第3可動要素)が若干テーブルよりはみ出した様子を表している。こういった位置でも、例えば図49に示した術者4912、助手4916、看護師4917がテーブルを取り囲んで手術を行うのに支障はなく、このようなはみ出しは、例えばテーブルの幅方向の一端側のみで生じ、はみ出し量の合計がテーブル幅方向の1/3未満であれば、当該僅かにはみ出た部分は無視して「テーブルに隠れないロボットアームの最大寸法はテーブル長手方向の寸法の1/4未満である」ということができ、また「ベースと直接連結された可動要素の一端部以外の大部分が前記テーブルの下に隠れている」ということができる。そして、テーブルからのロボットアームのはみ出し量がテーブルの幅方向の1/3以上である場合は、「ロボットアームのうち一定量がテーブルの下に隠れていない(テーブルからはみ出す)」ということができる。
また、第1の位置において、ロボットアームはテーブルの長手方向及び幅方向の何れか一辺側のみにおいてテーブルに隠れず、ロボットアームのテーブルに隠れない部分(例えば第1、第3、第5の構成例の場合、ベースと、ベースに直接連結される第1可動要素222、422、522、1522、1622、2922の一端部)はその一辺側において当該一辺に対応する寸法幅と重なっていることが好ましい。すなわち、長手方向と幅方向で規定される矩形のテーブルは4辺を有するが、ロボットアームがテーブル下に収納されないことを許容する場合は、これら4辺に対応する寸法幅の領域51a〜51d(図51参照)の何れかひとつのみの領域と重なる位置でロボットアームがはみ出るようにすべきである。第1及び第3の構成例に係るロボティックベッドでは、何れもロボットアームが長手方向における一辺側(領域51a又は51b)のみにおいてベースがはみ出し、対応する辺の寸法幅と重なる形となっている。例えば第2及び第4の構成例に係るロボティックベッドを第1の位置に設置する場合にロボットアームの一部がはみ出す構成をとる場合、幅方向における一辺側(領域51c又は51d)のみにおいてはみ出し、対応する辺の寸法幅と重なる構成としてもよい。第1の位置が手術位置である場合、このような構成をとっても少なくともテーブルの3辺において術者、助手、看護師などが隣接することができる。
また、上記ハイブリッド手術に用いられるロボティックベッドは、医用画像診断装置による画像撮影のみに用いられる場合とは違い、手術位置において術式に応じた適当な手術を行うことが要求されるため、床面を基準としたテーブルの高さ位置は、下方が70cm以下、望ましくは50cmまで下がり、上方は100cm以上、望ましくは120cmまで上がるように、ロボットアームを設計するようにすることが好ましい。例えば、図23に示すように、テーブルを水平面に平行な状態を保ったまま鉛直方向に動作させる場合において、テーブルが最も低くなる場合の床面からテーブル上面までの距離H1が50cm以上70cm以下であり、テーブルが最も高くなる場合の床面からテーブル上面までの距離H2が100cm以上120cm以下である。
また、上記ハイブリッド手術においては、医用画像診断装置(モダリティ)がひとつのみ用いられ、ロボティックベッドと組み合わせる例を示したが、複数の医用画像診断装置と組み合わせてもよい。ただし、その場合は上記の配置方法の考え方を利用することはできるが、医用画像診断装置どうしの配置関係や麻酔器の配置位置など考慮して医療システムを再設計することが好ましい。
以上のように、ハイブリッド手術においては術者、助手、看護師など複数人がテーブルを取り囲んで手術にあたることが要求されるため、加速器のような大きな治療機器をテーブルに近接して配置して治療を行う放射線治療等とは異なる。また、被ばくの危険性から手術時に術者がテーブルに近づくことができない放射線治療とも異なる。このような意味において、ハイブリッド手術における手術とは、術者、助手、看護師などが直接患者にアクセスして行う手術であるということができる。
このような手術性質上の理由もあり、ハイブリッド手術において用いる手術台は大掛かりなものではなくコンパクトなものが望まれる。これまでハイブリッド手術において昇降−回転−天板スライド式の手術台が主流であったのも、省スペース化の要請も要因として考えられる。
上記で説明した通り、各構成例で示したロボティックベッドは昇降−回転−スライド式の手術台と同程度かそれ以上に省スペースで用いることができる構成となっており、ハイブリッド手術にも好適に用いることができる。それでいて、昇降−回転−天板スライド式手術台と比較するとテーブルの動作範囲が広く、また動作範囲にある限りはテーブルを3次元空間で自由に移動させることができるという柔軟さも有する。さらに、テーブルの平面的な動作はスライド及び回転に限定されないため、医用画像診断装置との関係におけるロボティックベッドの配置場所も柔軟に選択することができる。
[他の治療等への適用]
第1〜第5の構成例で示したロボティックベッド(場合によっては上述の共通の特徴を付加したロボティックベッド)は、ハイブリッド手術のみならず、他の治療等にも適用することができる。
例えば、各構成例においてテーブルの移動の説明において参照した図6−図8の装置614、図12−図14の装置1214、図17−図19の装置1714、図24−図26の装置2414、図30−図32の装置3014はレントゲン撮影装置であり、テーブル208、1008、1508、1608、2008、2908に患者を載置した後、撮影位置に移動させて患者の歯をレントゲン撮影し、続けて治療位置に移動させて、歯の治療を行うことに用いられる。
その他、各構成例においてテーブルの移動の説明において参照した図6−図8、図12−図14、図17−図19、図24−図26、図30−図32の手術位置において手術ロボットを配置するようにし、手術準備位置でカニューラなどを患者に挿入して腹腔鏡手術の準備を整えた後、手術位置に移動させて手術ロボットにより遠隔操作で手術ロボットのマニピュレータを操作して腹腔鏡手術を行うことに用いられる。図47は、ロボティックベッドの第2の構成例のテーブル1008が、手術ロボットが配置される治療位置に移動した様子を示す。
これらのケースにおいても、上述した共通の特徴を付加することができ、例えば、第1〜第5の構成例で示したロボティックベッドがアンギオ装置による撮影位置への移動に用いられる場合、上述の高さセンサを備えるようにし、当該高さセンサにより検出したテーブルの高さがC型アームの開口範囲内にない場合には、アンギオ装置の移動またはロボットアームによるテーブルの移動を停止してもよい。
以上の通り、第1〜第5の構成例に係るロボティックベッドを医療現場における様々なシーンに適用する例を示したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、各図面においてテーブルの形状は全て長方形で示したが、T型など形状は何でもよい。何れの形状でも正方形、正三角形、円形などでなければテーブルの長手方向と幅方向は特定することができ、それぞれの寸法は最大幅とすればよい。また例えば、ロボットアームのベースは、全て固定されていることを前提に説明をしたが、医療室の設計によっては回転する床にベースを設置し、ベースが床の回転に応じて移動するような構成としてもよい。また、医療室にベースが移動できるレールを設け、当該レールに従ってベースが移動できるような構成としてもよい。このようにベース自体が動く構成としても、ロボットアームの制御と組み合わせてテーブルを移動させることにより、上述したそれぞれの位置への移動が可能となる。
なお、上記説明において用いたベッドとテーブルという用語は同義であり、引用する個所を明確にする目的で、異なる用語を用いている場合がある。